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特許7530703亜鉛電池用負極の製造方法、及び亜鉛電池用負極
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-31
(45)【発行日】2024-08-08
(54)【発明の名称】亜鉛電池用負極の製造方法、及び亜鉛電池用負極
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/26 20060101AFI20240801BHJP
【FI】
H01M4/26 H
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019071905
(22)【出願日】2019-04-04
(65)【公開番号】P2020170652
(43)【公開日】2020-10-15
【審査請求日】2022-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】322013937
【氏名又は名称】エナジーウィズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100201226
【弁理士】
【氏名又は名称】水木 佐綾子
(72)【発明者】
【氏名】櫛部 有広
(72)【発明者】
【氏名】大沼 孟光
【審査官】村岡 一磨
(56)【参考文献】
【文献】特開昭52-151833(JP,A)
【文献】特開昭55-090078(JP,A)
【文献】特開平07-335207(JP,A)
【文献】特開平09-134722(JP,A)
【文献】特開平07-094175(JP,A)
【文献】特開2002-043192(JP,A)
【文献】特開平11-242957(JP,A)
【文献】特開昭61-077255(JP,A)
【文献】国際公開第2014/156433(WO,A1)
【文献】特表平10-509555(JP,A)
【文献】特開平01-194265(JP,A)
【文献】国際公開第2018/147226(WO,A1)
【文献】特開2008-006369(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00-4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負極集電体と、前記負極集電体の一方面に設けられた第1の負極材層と、前記負極集電体の他方面に設けられた第2の負極材層と、を備える両面塗工型の亜鉛電池用負極の製造方法であって、
前記負極集電体の両面に負極材ペーストが付着した状態で、互いに対向する第1の壁面及び第2の壁面に前記両面の前記負極材ペーストを接触させながら前記第1の壁面と前記第2の壁面との間に前記負極集電体を通過させて、前記第1の負極材層及び前記第2の負極材層を形成する負極材層形成工程を備え、
前記負極材層形成工程において、前記第1の壁面と前記負極集電体の前記一方面との距離に対する、前記第2の壁面と前記負極集電体の前記他方面との距離の比が0.7~1であり、
前記第1の壁面と前記負極集電体の前記一方面との距離、及び前記第2の壁面と前記負極集電体の前記他方面との距離が、それぞれ0.4mm以下であり、
前記第1の壁面と前記負極集電体の前記一方面との距離と、前記第2の壁面と前記負極集電体の前記他方面との距離の差が0.03mm以下である、亜鉛電池用負極の製造方法。
【請求項2】
前記比が1未満である、請求項1に記載の亜鉛電池用負極の製造方法。
【請求項3】
負極集電体と、前記負極集電体の一方面に設けられた第1の負極材層と、前記負極集電体の他方面に設けられた第2の負極材層と、を備える両面塗工型の亜鉛電池用負極であって、
前記第1の負極材層の厚みに対する前記第2の負極材層の厚みの比が0.7~1であり、
前記第1の負極材層の厚み及び前記第2の負極材層の厚みが、それぞれ0.4mm以下であり、
前記第1の負極材層の厚みと前記第2の負極材層の厚みとの差が0.03mm以下である、亜鉛電池用負極。
【請求項4】
前記比が1未満である、請求項に記載の亜鉛電池用負極。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、亜鉛電池用負極の製造方法、及び亜鉛電池用負極に関する。
【背景技術】
【0002】
亜鉛電池としては、ニッケル亜鉛電池、空気亜鉛電池、銀亜鉛電池等が知られている。例えば、ニッケル亜鉛電池は、水酸化カリウム水溶液等の水系電解液を用いる水系電池であることから、高い安全性を有するとともに、亜鉛電極とニッケル電極との組み合わせにより、水系電池としては高い起電力を有することが知られている。さらに、ニッケル亜鉛電池は、優れた入出力性能に加えて、低コストであることから、産業用途(例えば、バックアップ電源等の用途)及び自動車用途(例えば、ハイブリッド自動車等の用途)への適用可能性が検討されている。
【0003】
ニッケル亜鉛電池の充放電反応は、例えば、下記式に従って進行する(放電反応:右向き、充電反応:左向き)。
(正極)2NiOOH+2HO+2e → 2Ni(OH)+2OH
(負極)Zn+2OH → Zn(OH)+2e
【0004】
上記式に示されるように、亜鉛電池では、放電反応により水酸化亜鉛(Zn(OH))が生成する。水酸化亜鉛は電解液に可溶であり、水酸化亜鉛が電解液に溶解すると、テトラヒドロキシド亜鉛酸イオン([Zn(OH) )が電解液中に拡散する。その結果、負極の形態変化(変形)が進行するとともに充電電流の分布が不均一となること等により、負極上の局所で亜鉛の析出が起こり、デンドライト(樹枝状結晶)が発生する。従来の亜鉛電池では、充放電の繰り返しによりデンドライトが成長した場合、デンドライトがセパレータを貫通し短絡が発生する場合がある。そのため、このようなデンドライトによる短絡を防止し、寿命性能を向上させる種々の試みがなされている。例えば、下記特許文献1には、ニッケルメッキを施した不織布を電極間に介在させることで、デンドライトによる短絡を防止する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭58-126665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、亜鉛電池に対しては、更なる寿命性能の改善が求められている。
【0007】
本発明の一側面は、優れた寿命性能を得ることが可能な亜鉛電池用負極の製造方法、及び亜鉛電池用負極を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面は、負極集電体と、負極集電体の一方面に設けられた第1の負極材層と、負極集電体の他方面に設けられた第2の負極材層と、を備える亜鉛電池用負極の製造方法であって、負極集電体の両面に負極材ペーストが付着した状態で、互いに対向する第1の壁面及び第2の壁面に両面の負極材ペーストを接触させながら第1の壁面と第2の壁面との間に負極集電体を通過させて、第1の負極材層及び第2の負極材層を形成する負極材層形成工程を備え、負極材層形成工程において、第1の壁面と負極集電体の一方面との距離に対する、第2の壁面と負極集電体の他方面との距離に対する比が0.7~1である、亜鉛電池用負極の製造方法を提供する。この製造方法によって得られる亜鉛電池用負極を用いた亜鉛電池は、寿命性能に優れている。
【0009】
一側面において、上記の比が1未満であってもよい。
【0010】
一側面において、第1の壁面と負極集電体の一方面との距離と、第2の壁面と負極集電体の他方面との距離の差が、好ましくは0.03mm以下である。
【0011】
本発明の他の一側面は、負極集電体と、負極集電体の一方面に設けられた第1の負極材層と、負極集電体の他方面に設けられた第2の負極材層と、を備える亜鉛電池用負極であって、第1の負極材層の厚みに対する、第2の負極材層の厚みの比が、0.7~1である、亜鉛電池用負極を提供する。この亜鉛電池用負極を用いた亜鉛電池は、寿命性能に優れている。
【0012】
他の一側面において、上記の比が1未満であってもよい。
【0013】
他の一側面において、第1の負極材層の厚みと第2の負極材層の厚みとの差が、好ましくは0.03mm以下である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一側面によれば、優れた寿命性能を得ることが可能な亜鉛電池用負極の製造方法、及び亜鉛電池用負極を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】従来の両面塗工型の負極において、電池のサイクル数の経過に伴う負極の断面の様子を観察した顕微鏡写真である。
図2】一実施形態に係る亜鉛電池用負極の製造方法に用いられる装置の一例を示す模式図である。
図3図2に示す装置における層形成部を示す模式断面図である。
図4】負極材層の厚みの測定箇所の一例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。但し、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。各図における構成要素の大きさは概念的なものであり、構成要素間の大きさの相対的な関係は各図に示されたものに限定されない。
【0017】
本明細書において、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値と任意に組み合わせることができる。本明細書に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。「A又はB」とは、A及びBのどちらか一方を含んでいればよく、両方とも含んでいてもよい。本明細書に例示する材料は、特に断らない限り、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。本明細書において、組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。また、本明細書において「層」との語は、平面図として観察したときに、全面に形成されている形状の構造に加え、一部に形成されている形状の構造も包含される。また、本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。
【0018】
以下の実施形態に係る製造方法により得られる負極は、亜鉛電池に用いられる負極(亜鉛電池用負極)である。亜鉛電池(例えば亜鉛二次電池)としては、ニッケル亜鉛電池、空気亜鉛電池、銀亜鉛電池等が挙げられる。亜鉛電池の基本構成としては、従来の亜鉛電池と同様の構成を用いることができる。本明細書における亜鉛電池は、化成後又は未化成のいずれであってもよい。
【0019】
一実施形態に係る亜鉛電池用負極の製造方法は、負極集電体と、負極集電体の一方面に設けられた第1の負極材層と、負極集電体の他方面に設けられた第2の負極材層と、を備える亜鉛電池用負極の製造方法であって、負極集電体の両面に負極材ペーストが付着した状態で、互いに対向する第1の壁面及び第2の壁面に両面の負極材ペーストを接触させながら第1の壁面と第2の壁面との間に負極集電体を通過させて、第1の負極材層及び第2の負極材層を形成する負極材層形成工程を備え、負極材層形成工程において、第1の壁面と負極集電体の一方面との距離に対する、第2の壁面と負極集電体の他方面との距離に対する比が0.7~1である、亜鉛電池用負極の製造方法である。
【0020】
また、一実施形態に係る亜鉛電池用負極は、負極集電体と、負極集電体の一方面に設けられた第1の負極材層と、負極集電体の他方面に設けられた第2の負極材層と、を備える亜鉛電池用負極であって、第1の負極材層の厚みに対する、第2の負極材層の厚みの比が、0.7~1である、亜鉛電池用負極である。
【0021】
これらの実施形態に係る亜鉛電池用負極を用いることにより、亜鉛電池において優れた寿命性能を得ることができる。このような効果が得られる原因は明らかではないが、本発明者らは下記のように推察している。
【0022】
亜鉛電池用負極(以下、単に「負極」ともいう。)では、放電反応により、負極活物質である金属亜鉛がテトラヒドロキシド亜鉛酸イオン([Zn(OH) )として溶出する。[Zn(OH) は電解液中での過飽和状態を経て、負極材層上に酸化亜鉛(ZnO)として析出する。ここで、[Zn(OH) の濃度及びZnOの析出量は、負極における負極材層の厚みに影響を受けると考えられる。負極材層が厚い場合、負極材層から溶出する[Zn(OH) の濃度が高くなり、これに伴い、負極材層が厚い場合、負極材層上に析出するZnOの析出量も多くなる。ZnOは電解液にわずかに可溶であるため、ZnO粒子の近傍では、[Zn(OH) が過飽和状態で存在し、更にZnOの析出が促進される。
【0023】
負極には、集電体の両面にそれぞれ負極材層が設けられた、いわゆる両面塗工型の負極が存在する。上述のとおり、負極材層の厚みが大きいほどZnOの析出量は増加するため、両面塗工型の負極において、一方面の負極材層と他方面の負極材層との間で厚みの差が大きいと、厚みの大きな負極材層の表面に偏ってZnOが析出しやすい環境が作られ、更に電池のサイクル数の経過に伴い、同一負極における表裏で厚みの差が拡大すると考えられる。
【0024】
図1は、従来の両面塗工型の負極において、電池のサイクル数の経過に伴う負極の断面の様子を観察した顕微鏡写真(走査型電子顕微鏡使用、倍率200倍)である。図1(a)は使用前の負極の様子を示しており、図1(b)、図1(c)、及び図1(d)の順にサイクル数が増加していることを示している。図1に示す両面塗工型の負極10では、図1(a)に示すように、負極集電体11の一方面に設けられた第1の負極材層12と、負極集電体1の他方面に設けられた第2の負極材層13の厚みに差が生じている。すなわち、第1の負極材層12が、第2の負極材層13よりも厚くなっている。このような負極10では、図1(b)~図1(d)に示すように、サイクル数の経過に伴い、第1の負極材層12と第2の負極材層13との間で厚みの差が拡大していく。これは、上述の理由により、負極材層の厚みが大きいほどZnOが偏って析出するためであると考えられる。
【0025】
亜鉛電池では、微多孔膜、不織布等のセパレータを介して対向する正極と負極間を電荷キャリアである水酸化物イオン(OH)を拡散させることで充放電反応が進行する。図1のように、負極の一方の負極材層が偏って減量した場合、対向する正極との円滑なOHの授受ができなくなるため、充放電反応が阻害されると考えられる。
【0026】
より具体的には、まず放電反応では、正極から拡散してきたOHを負極で消費するため、正極と対向する負極材層中の活物質が最も円滑に反応できる。しかし、正極と対向する負極材層が減量した場合には、OHがパンチングメタル等の負極集電体を介して、正極対向面と反対側の負極材層中の活物質まで拡散する必要性が高まる。そのため、拡散抵抗が増加し、徐々に放電容量が損なわれていくと推定される。また、充電反応は放電反応と逆方向の反応であり、負極から正極側にOHを拡散させる必要がある。そのため、正極と対向する負極材層が減量した場合には、放電反応と同様に、拡散抵抗が増加することによって充電容量が損なわれる。充電容量が損なわれると、放電容量の低下を更に加速させると考えられる。
【0027】
一方、本実施形態に係る製造方法により得られる負極は、負極集電体の一方面に設けられた第1の負極材層の厚みと、負極集電体の他方面に設けられた第2の負極材層との厚みの差が小さいため、一方の負極材層に偏ってZnOが析出することを抑制できる。したがって、対向する正極との円滑なOHの授受が可能となり、充放電反応が阻害されることを抑制できる。結果として、亜鉛電池における寿命性能を向上できると考えられる。
【0028】
<亜鉛電池用負極の製造方法>
一実施形態に係る亜鉛電池用負極の製造方法は、負極集電体の両面に負極材ペーストが付着した状態で、互いに対向する第1の壁面及び第2の壁面に両面の負極材ペーストを接触させながら第1の壁面と第2の壁面との間に負極集電体を通過させて、第1の負極材層及び第2の負極材層を形成する負極材層形成工程を備える。
【0029】
負極集電体は、例えば、平板状、シート状等の形状を有している。負極集電体は、発泡金属、エキスパンドメタル、パンチングメタル、金属繊維のフェルト状物等によって構成された3次元網目構造の集電体などであってもよい。負極集電体は、導電性及び耐アルカリ性を有する材料で構成されている。このような材料としては、例えば、負極の反応電位でも安定である材料(負極の反応電位よりも貴な酸化還元電位を有する材料、アルカリ水溶液中で基材表面に酸化被膜等の保護被膜を形成して安定化する材料など)を用いることができる。また、負極においては、副反応として電解液の分解反応が進行し水素が発生するが、水素過電圧の高い材料はこのような副反応の進行を抑制できる点で好ましい。負極集電体を構成する材料の具体例としては、亜鉛、鉛、スズ、スズ等の金属メッキを施した金属材料(銅、真鍮、鋼、ニッケル等)などが挙げられる。
【0030】
負極材ペーストは、負極材層を構成する成分を含有するペーストである。負極材ペーストは、例えば、負極材層を構成する成分を水等の分散媒に加えて混錬されたペーストであってよい。
【0031】
負極材ペーストは、亜鉛を含む負極活物質を含有する。負極活物質としては、金属亜鉛、酸化亜鉛、水酸化亜鉛等が挙げられる。負極材ペーストは、例えば、満充電状態では金属亜鉛を含有し、放電末状態では酸化亜鉛及び水酸化亜鉛を含有する。
【0032】
負極活物質の量は、負極材ペーストの不揮発分(負極材ペーストから分散媒を除いた成分)の全質量を基準として下記の範囲が好ましい。負極活物質の量は、優れた寿命性能と放電性能とを両立しやすい観点から、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、75質量%以上が更に好ましい。負極活物質の量は、優れた寿命性能と放電性能とを両立しやすい観点から、95質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましく、85質量%以下が更に好ましい。これらの観点から、負極活物質の量は、50~95質量%が好ましい。
【0033】
負極材ペーストは、負極活物質以外の添加剤を含有することができる。添加剤としては、結着剤、導電剤等が挙げられる。結着剤としては、ポリテトラフルオロエチレン、ヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレンオキシド、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。結着剤の量は、例えば、負極活物質100質量部に対して0.5~10質量部であってもよい。導電剤としては、インジウム化合物(酸化インジウム等)などが挙げられる。導電剤の量は、例えば、負極活物質100質量部に対して1~20質量部であってもよい。
【0034】
図2は、本実施形態に係る亜鉛電池用負極の製造方法に用いられる装置の一例を示す模式図である。本実施形態に係る亜鉛電池用負極は、例えば、図2に示す装置を用いて製造することができる。
【0035】
この製造方法では、まず、ロール状の負極集電体21を巻き出し部30により巻き出してから、この負極集電体21を負極材ペーストが投入された槽40を通過させることにより、負極集電体21に負極材ペーストを付着させる。この製造方法では、ロール状の負極集電体21を巻き出し部30によって巻き出しているが、平板状又はシート状の負極集電体を用意して、この負極集電体を槽40に投入してもよい。続いて、槽40から負極集電体を引き上げる。引き上げられた負極集電体21の両面(負極集電体21の一方面及び他方面)には、負極材ペーストが付着する。これにより、負極材ペーストが両面に付着した負極集電体22を得ることができる。負極材ペーストが両面に付着した負極集電体22においては、負極材ペーストは、負極集電体21の一方面及び他方面の一部に付着していてもよく、全面に付着していてもよい。
【0036】
次に、負極材ペーストが両面に付着した負極集電体22を、層形成部50に通過させる。
【0037】
図3は、図2に示す装置における、層形成部50を示す模式断面図である。層形成部50は、互いに対向する第1の壁面51及び第2の壁面52から形成される間隙53を有している。この間隙53に、負極材ペーストが両面に付着した負極集電体22を、矢印方向に通過させる。このとき、負極集電体21の一方面21aに付着した負極材ペースト23aを、第1の壁面51に接触させて、かつ、負極集電体21の他方面21bに付着した負極材ペースト23bを、第2の壁面52に接触させながら、負極材ペーストが両面に付着した負極集電体22を間隙53に通過させる。
【0038】
槽40から引き上げられた直後(層形成部50を通過させる前)の負極材ペーストが両面に付着した負極集電体22においては、図3に示すように、負極材ペーストの表面に凹凸が生じていたり、負極材ペーストの付着量にムラがあったりする場合がある。これを層形成部50における第1の壁面51と第2の壁面52に接触させながら層形成部50を通過させるよって、負極材ペースト23a、23bの表面の凹凸を均一にすることができる。
【0039】
また、本実施形態の製造方法においては、第1の壁面51と負極集電体21の一方面21aとの距離Dに対する、第2の壁面52と負極集電体21の他方面21bとの距離Dの比(D/D)が、0.7~1である。これにより、最終的に負極集電体21の一方面21a上に形成される第1の負極材層の厚みと、負極集電体21の他方面21b上に形成される第2の負極材層の厚みとの差が小さい負極を得ることができる。第1の壁面51と負極集電体21の一方面21aとの距離Dは、第2の壁面52と負極集電体21の他方面21bとの距離Dよりも長い距離であるか、第2の壁面52と負極集電体21の他方面21bとの距離Dと同じ距離である。
【0040】
距離の比(D/D)は、寿命性能に優れた亜鉛電池用負極を得やすくする観点から、好ましくは0.8以上、より好ましくは0.9以上、更に好ましくは0.95以上である。距離の比(D/D)は、1であることが特に好ましいが、1未満であってもよい。
【0041】
第1の壁面51と負極集電体21の一方面21aとの距離Dに対する、第2の壁面52と負極集電体21の他方面21bとの距離Dの比は、間隙53において、負極集電体21が通過する位置を調節することにより調整することができる。
【0042】
第1の壁面51と負極集電体21の一方面21aとの距離D、及び負極集電体21の他方面21bとの距離Dの差は、寿命性能に優れた亜鉛電池用負極を得やすくする観点から、好ましくは0.03mm以下、より好ましくは0.02mm以下、更に好ましくは0.01mm以下である。第1の壁面51と負極集電体21の一方面21aとの距離D、及び負極集電体21の他方面21bとの距離Dの差は0であることが特に好ましいが、0より大きくてもよい。
【0043】
第1の壁面51と負極集電体21の一方面21aとの距離D、及び第2の壁面52と負極集電体21の他方面21bとの距離Dは、充電リザーブ(負極側において過剰に充電可能な容量)確保の観点から、それぞれ、好ましくは0.2mm以上、より好ましくは0.3mm以上、更に好ましくは0.35mm以上である。第1の壁面51と負極集電体21の一方面21aとの距離D、及び第2の壁面52と負極集電体21の他方面21bとの距離Dは、エネルギー密度確保の観点から、それぞれ、好ましくは0.5mm以下、より好ましくは0.45mm以下、更に好ましくは0.4mm以下である。
【0044】
第1の壁面51と負極集電体21の一方面21aとの距離D、及び第2の壁面52と負極集電体21の他方面21bとの距離Dは、例えば、層形成部50に設けられた、間隙調節部54により調整できる。間隙調節部54は、第1の壁面51及び第2の壁面52の位置を変更することができ、間隙53の大きさを調整することができる。結果として、第1の壁面51と負極集電体21の一方面21aとの距離D、及び第2の壁面52と負極集電体21の他方面21bとの距離Dの大きさも調整される。第1の壁面51と負極集電体21の一方面21aとの距離D、及び第2の壁面52と負極集電体21の他方面21bとの距離Dを調節する方法はこれに限定されない。
【0045】
続いて、図2に示すように、層形成部50を通過後の、負極材ペーストが両面に付着した負極集電体22を、乾燥炉60に通過させる。乾燥炉60としては、例えば、減圧乾燥炉、赤外線ヒータを備えた乾燥炉等が挙げられる。
【0046】
乾燥炉60内の温度は、例えば、90℃以上、100℃以上、又は110℃以上であってよく、150℃以下、140℃以下、又は130℃以下であってよい。乾燥炉60を通過させる時間(乾燥時間)は、例えば、1分以上、3分以上、又は5分以上であってよく、60分以下、30分以下、又は20分以下であってよい。
【0047】
乾燥炉60を通過させることにより、負極材ペースト中に含まれる分散媒が揮発して、負極集電体21の一方面に第1の負極材層が形成され、他方面に第2の負極材層が形成された、未化成の負極24を得ることができる。図2に示すように連続的に製造された負極24は、所定の大きさに切断されて、亜鉛電池の製造に用いることができる。
【0048】
以上説明した実施形態に係る亜鉛電池用負極の製造方法は、種々の変形例をとり得る。
【0049】
例えば、亜鉛電池用負極の製造方法において、負極集電体に負極材ペーストを付着させる方法は、アプリケータ等による塗布であってもよい。または、既に負極材ペーストが付着した負極集電体を用意してもよい。
【0050】
層形成部は、分離した2つの部材を含んでいてもよく、これらの分離した2つの部材のそれぞれの壁面に負極材ペーストを接触させながら、2つの部材の間に負極材ペーストが付着した負極集電体を通過させてもよい。
【0051】
両面に負極材ペーストが付着した負極集電体を層形成部に通過させた後、必要に応じてプレス等を行ってもよい。これにより、負極材層の密度を高めた負極を得ることができる。
【0052】
負極材ペーストを乾燥させる方法では、乾燥炉を用いずに、例えば室温環境下に負極材ペーストの層が形成された負極集電体を静置してもよい。
【0053】
上述した実施形態では、図2に示すような、一連の工程によって亜鉛電池用負極を製造できる装置を用いたが、負極集電体に負極材ペーストを付着させる工程、負極材ペーストを層形成部に通過させる工程、及び負極材ペーストを乾燥させる工程を別々の装置で行ってもよい。
【0054】
<亜鉛電池用負極>
一実施形態に係る亜鉛電池用負極は、負極集電体の一方面に設けられた第1の負極材層と、負極集電体の他方面に設けられた第2の負極材層と、を備える亜鉛電池用負極であって、第1の負極材層の厚みに対する、第2の負極材層の厚みの比が、0.7~1である。亜鉛電池用負極は、化成後又は未化成のいずれであってもよい。未化成の亜鉛電池用負極は、例えば、上述した亜鉛電池用負極の製造方法によって得ることができる。
【0055】
負極集電体の態様は、上述した亜鉛電池用負極の製造方法における負極集電体の態様と同様であってよい。
【0056】
負極材層は、亜鉛を含む負極活物質を含有する。負極活物質の態様は上述した負極材ペーストに含まれる負極活物質と同様であってよい。負極材層は、負極活物質以外に、上述した添加剤を添加することもできる。
【0057】
本明細書における「負極材層の厚み」とは、負極集電体の一方面と、一方面上に設けられた負極材層の負極集電体とは反対側の表面との距離であり、負極材層上における9箇所において測定された平均値を意味する。9箇所の測定箇所は、負極を積層方向から見たときの、左上隅部、上中央部、右上隅部、左中央部、中央部、右中央部、左下隅部、下中央部、及び右下中央部の9箇所であってよい。図4は、負極材層の厚みの測定箇所の一例を示す平面図である。図4に示すように、負極集電体21に設けられた負極材層25の厚みは、左上隅部a、上中央部b、右上隅部c、左中央部d、中央部e、右中央部f、左下隅部g、下中央部h、及び右下中央部iの9箇所において測定され、それら測定値の平均値とすることができる。負極の各箇所における厚みは、例えば、マイクロメータを用いて測定することができる。
【0058】
第1の負極材層の厚みに対する、第2の負極材層の厚みの比(第2の負極材層の厚み/第1の負極材層の厚み)は、寿命性能に優れた亜鉛電池用負極を得やすくする観点から、好ましくは0.8以上、より好ましくは0.9以上、更に好ましくは0.95以上である。厚みの比(第2の負極材層の厚み/第1の負極材層の厚み)は、1であることが特に好ましいが、1未満であってもよい。第1の負極材層の厚みは、第2の負極材層の厚みよりも厚い(厚みが大きい)か、第2の負極材層と同じ厚みである。
【0059】
第1の負極材層の厚みと第2の負極材層の厚みとの差は、寿命性能に優れた亜鉛電池用負極を得やすくする観点から、好ましくは0.03mm以下、より好ましくは0.02mm以下、更に好ましくは0.01mm以下である。第1の負極材層の厚みと第2の負極材層の厚みとの差は0であることが特に好ましいが、0より大きくてもよい。
【0060】
第1の負極材層の厚み、及び第2の負極材層の厚みは、充電リザーブ確保の観点から、それぞれ、好ましくは0.2mm以上、より好ましくは0.3mm以上、更に好ましくは0.35mm以上である。第1の負極材層の厚み、及び第2の負極材層の厚みは、エネルギー密度確保の観点から、それぞれ、好ましくは0.6mm以下、より好ましくは0.5mm以下、更に好ましくは0.4mm以下である。第1の負極材層の厚み、及び第2の負極材層の厚みは、上述した製造方法における、第1の壁面51と負極集電体21の一方面21aとの距離D、及び第2の壁面52と負極集電体21の他方面21bとの距離Dにそれぞれ対応してよい。
【0061】
<亜鉛電池>
以下、本実施形態に係る亜鉛電池の一例として、ニッケル亜鉛電池を例として説明する。一実施形態に係るニッケル亜鉛電池は、例えば、電槽、電解液及び電極群(例えば極板群)を備えている。電極群及び電解液は、電槽内に収容されている。
【0062】
電極群は、例えば、セパレータと、当該セパレータを介して対向する正極(正極板等)及び負極(負極板等)によって構成されている。電極群において、正極同士及び負極同士は、例えば、ストラップで連結されている。負極は、上述した実施形態に係る亜鉛電池用負極であってよい。
【0063】
正極は、例えば、正極集電体と、正極集電体の一方面に設けられた第1の正極材層と、正極集電体の他方面に設けられた第2の正極材層と、を備える。正極は、化成前及び化成後のいずれであってもよい。
【0064】
正極集電体は、例えば、平板状、シート状等の形状を有している。正極集電体は、発泡金属、エキスパンドメタル、パンチングメタル、金属繊維のフェルト状物等によって構成された3次元網目構造の集電体などであってもよい。正極集電体は、導電性及び耐アルカリ性を有する材料で構成されている。このような材料としては、例えば、正極の反応電位でも安定である材料(正極の反応電位よりも貴な酸化還元電位を有する材料、アルカリ水溶液中で基材表面に酸化被膜等の保護被膜を形成して安定化する材料など)を用いることができる。また、正極においては、副反応として電解液の分解反応が進行し酸素ガスが発生するが、酸素過電圧の高い材料はこのような副反応の進行を抑制できる点で好ましい。正極集電体を構成する材料の具体例としては、白金;ニッケル(発泡ニッケル等);ニッケル等の金属メッキを施した金属材料(銅、真鍮、鋼等)などが挙げられる。これらの中でも、発泡ニッケルで構成される正極集電体が好ましく用いられる。高率放電性能を更に向上させることができる観点から、少なくとも正極集電体における正極材を支持する部分(正極材支持部)が発泡ニッケルで構成されていることが好ましい。
【0065】
正極材層は、ニッケルを含む正極活物質を含有する。正極活物質としては、オキシ水酸化ニッケル(NiOOH)、水酸化ニッケル等が挙げられる。正極材層は、例えば、満充電状態ではオキシ水酸化ニッケルを含有し、放電末状態では水酸化ニッケルを含有する。正極活物質の含有量は、例えば、正極材層の全質量を基準として50~95質量%であってもよい。
【0066】
正極材層は、添加剤として、正極活物質以外の他の成分を更に含有してよい。添加剤としては、結着剤、導電剤、膨張抑制剤等が挙げられる。
【0067】
結着剤としては、親水性又は疎水性のポリマー等が挙げられる。具体的には、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリアクリル酸ナトリウム(SPA)、フッ素系ポリマー(ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等)などを結着剤として用いることができる。結着剤の含有量は、例えば、正極活物質100質量部に対して0.01~5質量部である。
【0068】
導電剤としては、コバルト化合物(金属コバルト、酸化コバルト、水酸化コバルト等)などが挙げられる。導電剤の含有量は、例えば、正極活物質100質量部に対して1~20質量部である。
【0069】
膨張抑制剤としては、酸化亜鉛等が挙げられる。膨張抑制剤の含有量は、例えば、正極活物質100質量部に対して0.01~5質量部である。
【0070】
セパレータは、例えば、平板状、シート状等の形状を有するセパレータであってもよい。セパレータとしては、ポリオレフィン系微多孔膜、ナイロン系微多孔膜、耐酸化性のイオン交換樹脂膜、セロハン系再生樹脂膜、無機-有機セパレータ、ポリオレフィン系不織布等が挙げられる。セパレータは、正極及び/又は負極を収容可能なように、袋状に加工されていてもよい。この場合、正極及び/又は負極はセパレータに収容されていてよい。セパレータは一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いてよい。
【0071】
以上説明したニッケル亜鉛電池の製造方法は、亜鉛電池の構成部材を得る構成部材製造工程と、構成部材を組み立てて亜鉛電池を得る組立工程と、を備える。構成部材製造工程では、少なくとも電極(正極及び負極)を得る。負極の製造方法は、上述した亜鉛電池用負極の製造方法である。
【0072】
正極は、正極材層の原料に対して分散媒(例えば、水)を加えて混錬することにより得られる正極材ペーストを用いる。正極を得る方法としては、例えば、上述した亜鉛電池用負極の製造方法と同様の方法、正極材ペーストを正極集電体に塗布又は浸漬した後に乾燥する方法等が挙げられる。
【0073】
組立工程では、例えば、構成部材製造工程で得られた正極及び負極を、セパレータを介して交互に積層した後、正極同士及び負極同士をストラップで連結させて電極群を作製する。次いで、この電極群を電槽内に配置した後、電槽の上面に蓋体を接着して未化成の亜鉛電池(ニッケル亜鉛電池)を得る。
【0074】
続いて、電解液を未化成の亜鉛電池の電槽内に注入した後、一定時間放置する。次いで、所定の条件にて充電を行うことで化成することにより亜鉛電池(ニッケル亜鉛電池)を得る。化成条件は、正極活物質及び負極活物質の性状に応じて調整することができる。
【0075】
以上、正極がニッケル電極であるニッケル亜鉛電池(例えばニッケル亜鉛二次電池)の例を説明したが、亜鉛電池は、正極が空気極である空気亜鉛電池(例えば空気亜鉛二次電池)であってもよく、正極が酸化銀極である銀亜鉛電池(例えば銀亜鉛二次電池)であってもよい。
【実施例
【0076】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。但し、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0077】
(実施例1)
<亜鉛電池用負極の作製>
酸化亜鉛、金属亜鉛、酸化ビスマス、ヒドロキシエチルセルロース及びイオン交換水を所定量秤量して混合し、得られた混合液を撹拌することにより負極材ペーストを作製した。この際、負極材ペーストにおける不揮発分の質量比を「酸化亜鉛:金属亜鉛:酸化ビスマス:ヒドロキシエチルセルロース=72:20.5:5:2.5」に調整した。ヒドロキシエチルセルロースとしては、住友精化株式会社製のAV-15F(商品名)を使用した。負極材ペーストの水分量は、負極材ペーストの全質量基準で20.5質量%に調整した。
【0078】
図2に示す装置を用いて、亜鉛電池用負極を製造した。巻き出し部30にロール状の負極集電体(銅製パンチングメタル)をセットした。負極集電体を、負極材ペーストを入れた槽40に通過させて、負極集電体の両面に負極材ペーストを付着させた。次に、負極材ペーストが付着した負極集電体を層形成部50に通過させた。このとき、層形成部50における第1の壁面51と負極集電体の一方面との距離D、及び第2の壁面52と負極集電体の他方面との距離Dの距離が0.4mmになるように、層形成部50における間隙53の幅及び負極集電体の通過する位置を調整した。続いて、炉内の温度が110℃である乾燥炉に、層形成部50を通過した負極集電体を10分かけて通過させて、負極材ペーストに含まれる水を揮発させた。乾燥後の負極を50mm×60mmの矩形状となるように切断して、実施例1に係る、未化成の亜鉛電池用負極を得た。
【0079】
実施例1に係る負極について、第1の負極材層及び第2の負極材層の厚みを測定した。厚みの測定は、図4における9箇所、すなわち、当該負極を積層方向からみて、左上隅部a、上中央部b、右上隅部c、左中央部d、中央部e、右中央部f、左下隅部g、下中央部h、及び右下中央部iの9箇所について、マイクロメータ(PMU150-25MX、(株)ミツトヨ製)を用いて厚みを測定した。各箇所における厚み、第1の負極材層の厚みと第2の負極材層の厚みとの差、及び、第1の負極材層の厚みに対する第2の負極材層の厚みの比(第2の負極材層の厚み/第1の負極材層の厚み)を表1に示す。
【0080】
<亜鉛電池の作製>
空隙率95%の発泡ニッケルからなる格子体を用意し、格子体を加圧成形することで正極集電体を得た。次いで、コバルトコート水酸化ニッケル粉末、金属コバルト、水酸化コバルト、酸化イットリウム、カルボキシメチルセルロース、ポリテトラフルオロエチレン、イオン交換水を所定量秤量して混合し、混合液を攪拌することにより、正極材ペーストを作製した。この際、固形分の質量比を、「水酸化ニッケル:金属コバルト:酸化イットリウム:水酸化コバルト:カルボキシメチルセルロース:ポリテトラフルオロエチレン=88:10.3:1:0.3:0.3:0.1」に調整した。正極材ペーストの水分量は、正極材ペーストの全質量基準で27.5質量%に調整した。次いで、正極材ペーストを正極集電体の両面に塗布した後、80℃で30分乾燥した。その後、ロールプレスにて加圧成形し、正極材層を有する未化成の正極を得た。
【0081】
セパレータには、微多孔膜として、UP3355(宇部興産社製、商品名、透気度:440秒/100mL)、不織布として、不織布(ニッポン高度紙工業株式会社製、商品名:VL-100、透気度:0.3秒/100mL)を、それぞれ用いた。微多孔膜は、電池組立て前に、界面活性剤Triton-X100(シグマアルドリッチジャパン合同会社製)で、親水化処理した。親水化処理は、Triton-X100が1質量%の量で含まれる水溶液に微多孔膜を24時間浸漬した後、室温で1時間乾燥する方法で行った。なお、微多孔膜の透気度は親水化処理後の値を示す。さらに、微多孔膜は、所定の大きさに裁断し、それを半分に折り、側面を熱溶着することで袋状に加工した。不織布は、所定の大きさに裁断したものを使用した。
【0082】
袋状に加工した微多孔膜に、正極及び負極のそれぞれを1枚収納した。袋状の微多孔膜に収納された正極と、袋状の微多孔膜に収納された負極と、不織布とを積層した後、同極性の極板同士をストラップで連結させて電極群(極板群)を作製した。電極群は、正極が11枚及び負極が12枚で、正極と負極の間(正極側の微多孔膜と負極側の微多孔膜との間)に不織布を1枚ずつ配置した構成とした。この電極群を電槽内に配置した後、電槽の上面に蓋体を接着し、上記電解液を電槽内に注入することにより、未化成のニッケル亜鉛電池を得た。その後、800mA、15時間の条件で充電を行い、公称容量が8000mAhのニッケル亜鉛電池を作製した。
【0083】
(比較例1)
<亜鉛電池用負極の準備>
従来の方法によって製造された、未化成の亜鉛電池用負極を用意した。この負極は、負極集電体の両面に負極材ペーストを付着させた後、付着した負極材ペースト23a及び23bを、第1の壁面51又は第2の壁面52に接触させながら、負極材ペーストが両面に付着した負極集電体22を間隙53に通過させる工程自体は実施例1と同様であるが、第1の壁面51と負極集電体21の一方面21aとの距離Dに対する、第2の壁面52と負極集電体21の他方面21bとの距離Dの比は、調節することなく目視で負極集電体が間隙53の中央付近にくるように配置し製造された。
【0084】
実施例1と同様の方法により、第1の負極材層及び第2の負極材層の厚みを測定した。各箇所における厚み、第1の負極材層の厚みと第2の負極材層の厚みとの差、及び第1の負極材層の厚みに対する第2の負極材層の厚みの比(第2の負極材層の厚み/第1の負極材層の厚み)を表1に示す。
【0085】
<亜鉛電池の作製>
実施例1における負極を、上述した比較例1に係る負極に変更した以外は、実施例1と同様の方法によってニッケル亜鉛電池を作製した。
【0086】
<寿命性能の評価>
25℃、8000mA(1C)、1.9Vの定電圧で、電流値が400mA(0.05C)に減衰するまでニッケル亜鉛電池の充電を行った後、電池電圧が1.1Vに到達するまで8000mA(1C)の定電流でニッケル亜鉛電池の放電を行うことを1サイクルとする試験を行った。放電容量が1サイクル目の放電容量に対して60%を下回った場合に試験を終了し、試験終了までに行ったサイクル数によってサイクル寿命性能を評価した。試験終了までに行ったサイクル数を表1に示す。表1に示すように、実施例1に係るニッケル亜鉛電池は、比較例1に係るニッケル亜鉛電池と比較して、サイクル数が増加しており、寿命性能に優れていた。
【0087】
【表1】
【符号の説明】
【0088】
21…負極集電体、21a…負極集電体の一方面、21b…負極集電体の他方面、50…層形成部、51…第1の壁面、52…第2の壁面、23a、23b…負極材ペースト、24…負極(亜鉛電池用負極)。
図1
図2
図3
図4