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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-31
(45)【発行日】2024-08-08
(54)【発明の名称】Oリング弁座付きモジュラーバルブ
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/06 20060101AFI20240801BHJP
   H01F 7/16 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
F16K31/06 305M
F16K31/06 305K
F16K31/06 305L
H01F7/16 D
H01F7/16 R
【請求項の数】 16
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019075236
(22)【出願日】2019-04-11
(65)【公開番号】P2020003060
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2022-04-01
(31)【優先権主張番号】15/954815
(32)【優先日】2018-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】505296441
【氏名又は名称】エムエイシー・バルブス,インク
【氏名又は名称原語表記】MAC VALVES,INC
【住所又は居所原語表記】30569 BECK ROAD,P.O.BOX 111,WIXOM,MICHIGAN 48393,UNITED STATES OF AMERICA
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】ランデイカー ブレット アンソニー
(72)【発明者】
【氏名】ネフ マシュー
(72)【発明者】
【氏名】シモンズ ジェフリー
【審査官】藤森 一真
(56)【参考文献】
【文献】実開昭49-122425(JP,U)
【文献】特開2006-207695(JP,A)
【文献】実開昭55-073670(JP,U)
【文献】実開昭61-094663(JP,U)
【文献】実開昭60-137276(JP,U)
【文献】特開2015-197221(JP,A)
【文献】特表2016-537576(JP,A)
【文献】特表2012-532299(JP,A)
【文献】特開平08-219381(JP,A)
【文献】特開2003-240149(JP,A)
【文献】米国特許第03379214(US,A)
【文献】実開昭50-155627(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 1/00- 1/54
F16K 3/00- 3/36
F16K 5/00- 5/22
F16K11/00-11/24
F16K31/06-31/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁モジュラーバルブであって、
端面と、側面と、内部孔と、前記端面に設けられ前記内部孔と流体連通して配置される流出口と、前記側面に設けられ前記内部孔と流体連通して配置される流入口と、前記端面と反対側の接続端部と、前記流出口と前記内部孔の間に長手方向に配置されるバルブ本体当接面と、を有するバルブ本体と、
前記バルブ本体の前記内部孔に摺動可能に収容され、長手軸に沿って延出するバルブ部材と、
前記バルブ本体の前記接続端部と接続されるソレノイド本体と、前記ソレノイド本体の内部に配置され、前記長手軸回りを環状に延出するコイルとを備え、開位置と閉位置の間を、前記長手軸に沿って、前記バルブ本体に対して前記バルブ部材を移動させるように作動可能なソレノイドと、
前記バルブ本体の前記内部孔に配置され、前記バルブ部材を前記閉位置側へ付勢する付勢部材とを備え、
前記バルブ本体は、長手方向において前記内部孔と前記流出口の間に配置されるOリング弁座を備え、
前記バルブ本体当接面は、前記長手軸に対して斜角に配置され、前記バルブ本体の前記内部孔から前記流出口へ長手方向に向かうにしたがい狭くなる漏斗形状を有し、
前記バルブ部材は、円錐台形状のバルブ部材当接面を有するテーパー端部を有し、
前記バルブ部材が前記閉位置にある時、前記バルブ部材当接面の一部は、前記Oリング弁座と当接するように配置され、前記バルブ部材当接面の別の一部は、前記長手方向において前記内部孔と前記Oリング弁座との間の位置で前記バルブ本体当接面と当接するように配置され、前記バルブ部材の堅固なストッパが形成されるとともに、前記長手方向において前記Oリング弁座と前記流出口の間の位置には、前記バルブ本体と前記バルブ部材当接面との間に、流体が前記Oリング弁座から前記流出口へ流出することを可能にする間隔が形成され、
前記バルブ部材が前記開位置にある時、前記バルブ部材当接面は前記Oリング弁座から離間することを特徴とする電磁モジュラーバルブ。
【請求項2】
請求項に記載の電磁モジュラーバルブにおいて、
前記ソレノイドは第一端部と第二端部の間に亘って延出し、前記第一端部には前記バルブ本体が接続され、前記ソレノイドは、前記第二端部から前記コイル内に延出する磁極片を備え、前記バルブ部材は、前記ソレノイドの前記第一端部から前記コイル内に延出する電機子部を備えることを特徴とする電磁モジュラーバルブ。
【請求項3】
請求項に記載の電磁モジュラーバルブにおいて、
前記ソレノイドは、前記コイルを支持するボビンを備え、前記コイルは前記ボビン回りを環状に延出することを特徴とする電磁モジュラーバルブ。
【請求項4】
請求項に記載の電磁モジュラーバルブにおいて、
前記電磁モジュラーバルブはさらに第一ブッシュを備え、
前記第一ブッシュはブッシュフランジと、前記ブッシュフランジから延出する筒状部とを備え、
前記ブッシュフランジは、前記第一ブッシュの前記コイルに対する長手方向の移動を防
止するように、長手方向において前記バルブ本体の前記接続端部と前記コイルの間に配置され、
前記第一ブッシュの前記筒状部は、前記ボビンに収容され、前記バルブ部材の前記電機子部および前記磁極片の少なくとも一部の回りを環状に延出し、
前記電磁モジュラーバルブはさらに、前記磁極片回りに環状に延出し、径方向において前記磁極片と前記第一ブッシュの前記筒状部との間に配置される少なくとも1つの磁極片シールを備え、
前記少なくとも1つの磁極片シールは、前記バルブ部材全体が、前記バルブ本体の前記内部孔により形成される予圧室および前記内部孔と前記磁極片の間の前記第一ブッシュ内の空間の内部に配置されるように、前記第一ブッシュと前記磁極片の間に静的シールを形成する、ことを特徴とする電磁モジュラーバルブ。
【請求項5】
請求項に記載の電磁モジュラーバルブにおいて、
前記第一ブッシュの前記筒状部回りに環状に配置され、長手方向において前記コイルと前記第一ブッシュの前記ブッシュフランジとの間に配置される円盤形状の第二ブッシュをさらに備え、
前記ソレノイド本体および前記第二ブッシュは共働し、前記ソレノイドの断面形状を、前記コイルを収容する内向きU字形断面とし、
前記第一ブッシュは、非磁性材料で製造され、
前記ソレノイド本体および前記第二ブッシュで形成された前記内向きU字形断面が、前記長手軸に向かって内側へ磁束を集中させるように、前記ソレノイド本体および前記第二ブッシュは、磁性材料で製造されることを特徴とする電磁モジュラーバルブ。
【請求項6】
請求項に記載の電磁モジュラーバルブにおいて、
前記磁極片は、前記ボビン内に移動可能に配置され、さらに、前記ソレノイド本体と螺合し、前記ソレノイド本体に対して前記磁極片を回転させることによって、前記磁極片の長手方向位置、すなわち、前記バルブ部材のストローク長さを調整可能とするねじ端部を備えることを特徴とする電磁モジュラーバルブ。
【請求項7】
請求項に記載の電磁モジュラーバルブにおいて、
前記バルブ部材は、さらに、前記テーパー端部に隣接するプランジャ部と、長手方向において前記プランジャ部と前記電機子部の間に配置され、前記バルブ本体の前記内部孔と滑合して摺動可能に配置されるピストン部とを備え、
前記付勢部材は、長手方向において前記バルブ部材の前記ピストン部と第一ブッシュのブッシュフランジの間に配置されることを特徴とする電磁モジュラーバルブ。
【請求項8】
請求項に記載の電磁モジュラーバルブにおいて、
前記バルブ部材の前記電機子部は、筒状外面と、前記筒状外面に設けられた少なくとも1つの長手方向溝を有し、
前記長手方向溝は、前記長手軸と平行に延出し、前記開位置と前記閉位置の間の前記バルブ部材の長手方向の移動を、前記バルブ部材の前記電機子部に沿って、流体固着現象を防止する流体流路を提供することにより容易にする、ことを特徴とする電磁モジュラーバルブ。
【請求項9】
電磁モジュラーバルブであって、
端面と、側面と、内部孔と、前記端面に設けられ前記内部孔と流体連通して配置される流出口と、前記側面に設けられ前記内部孔と流体連通して配置される流入口と、前記端面と反対側の接続端部と、前記流出口と前記内部孔の間に長手方向に配置されるバルブ本体当接面と、を有するバルブ本体と、
前記バルブ本体の前記内部孔に摺動可能に収容され、長手軸に沿って延出するバルブ部
材と、
前記バルブ本体の前記接続端部と接続されるソレノイド本体と、前記ソレノイド本体の内部に配置され、前記長手軸回りを環状に延出するコイルとを備え、開位置と閉位置の間を、前記長手軸に沿って、前記バルブ本体に対して前記バルブ部材を移動させるように作動可能なソレノイドと、
前記バルブ本体の前記内部孔に配置され、前記バルブ部材を前記開位置側へ付勢する付勢部材とを備え、
前記バルブ本体は、長手方向において前記内部孔と前記流出口の間に配置されるOリング弁座を備え、
前記バルブ部材は、円錐台形状のバルブ部材当接面を有するテーパー端部を有し、
前記バルブ本体当接面は、前記長手軸に対して斜角に配置され、前記バルブ本体の前記内部孔から前記流出口へ長手方向に向かうにしたがい狭くなる漏斗形状を有し、
前記バルブ部材が前記閉位置にある時、前記バルブ部材当接面の一部は、前記Oリング弁座と当接するように配置され、前記バルブ部材当接面の別の一部は、前記長手方向において前記内部孔と前記Oリング弁座との間の位置で前記バルブ本体当接面と当接するように配置され、前記バルブ部材の堅固なストッパが形成されるとともに、前記長手方向において前記Oリング弁座と前記流出口の間の位置には、前記バルブ本体と前記バルブ部材当接面との間に、流体が前記Oリング弁座から前記流出口へ流出することを可能にする間隔が形成され、
前記バルブ部材が前記開位置にある時、前記バルブ部材当接面は前記Oリング弁座から離間することを特徴とする電磁モジュラーバルブ。
【請求項10】
請求項に記載の電磁モジュラーバルブにおいて、
前記ソレノイドは、第一端部と第二端部の間に亘って延出し、前記第一端部には前記バルブ本体が接続され、
前記ソレノイドは、長手方向において前記コイルと前記バルブ本体の前記接続端部との間に配置される磁極片フランジを有する磁極片と、前記磁極片フランジから前記コイル内部に前記ソレノイドの前記第一端部を通って延出するシリンダー部と、前記ソレノイドの前記第二端部から前記コイル内部に延出するエンドストッパと、前記磁極片の前記シリンダー部と前記エンドストッパの間で前記コイル内に摺動可能に配置される電機子とを備えることを特徴とする電磁モジュラーバルブ。
【請求項11】
請求項10に記載の電磁モジュラーバルブにおいて、
前記ソレノイドは、前記コイルを支持するボビンを備え、前記コイルは前記ボビン回りを環状に延出することを特徴とする電磁モジュラーバルブ。
【請求項12】
請求項11に記載の電磁モジュラーバルブにおいて、
前記電磁モジュラーバルブはさらに、ブッシュフランジと、前記ブッシュフランジから延出する筒状部とを備えるブッシュを備え、
前記ブッシュフランジは、前記ブッシュの前記コイルに対する長手方向の移動を防止するように、長手方向において前記磁極片フランジと前記コイルの間に配置され、
前記ブッシュの前記筒状部は、前記ボビンに収容され、前記磁極片の前記シリンダー部、前記電機子、および前記エンドストッパの少なくとも一部の回りを環状に延出し、
前記電磁モジュラーバルブはさらに、
前記磁極片の前記シリンダー部回りに環状に延出し、径方向において前記磁極片の前記シリンダー部と前記ブッシュの前記筒状部との間で配置され、前記ブッシュと前記磁極片の間に第一静的シールを形成する少なくとも1つの磁極片シールと、
前記エンドストッパ回りに環状に延出し、径方向において前記エンドストッパと前記ブッシュの前記筒状部の間に配置され、前記ブッシュと前記エンドストッパの間に第二静的シールを形成する少なくとも1つのエンドストッパシールとを備えることを特徴とする電
磁モジュラーバルブ。
【請求項13】
請求項12に記載の電磁モジュラーバルブにおいて、
前記磁極片は、内部に貫通する長手方向孔を有し、
前記バルブ部材は、前記テーパー端部に隣接するプランジャ部と、前記磁極片の前記長手方向孔を貫通して延出し、前記電機子と当接するステム部と、長手方向において前記プランジャ部と前記ステム部の間で配置され、前記バルブ本体の前記内部孔と滑合して摺動可能に配置されるピストン部とを備え、
前記付勢部材は、長手方向において、前記バルブ部材の前記ピストン部と、前記バルブ本体当接面に隣接する前記バルブ本体の前記内部孔内に設けられる支持面との間に配置されることを特徴とする電磁モジュラーバルブ。
【請求項14】
請求項13に記載の電磁モジュラーバルブにおいて、
前記第一静的シールおよび前記第二静的シールは、前記バルブ部材全体および前記電機子全体が内部に配置される予圧室を形成し、
前記予圧室は、前記バルブ本体の前記内部孔と、前記磁極片の前記長手方向孔と、前記磁極片の前記シリンダー部と前記エンドストッパとの間で前記ブッシュの内部の空間とから形成されることを特徴とする電磁モジュラーバルブ。
【請求項15】
請求項12に記載の電磁モジュラーバルブにおいて、
前記ブッシュおよび前記エンドストッパは、非磁性材料で製造され、
前記ソレノイド本体および前記磁極片が共働して前記長手軸に向かって内側へ磁束を集中させるように、前記ソレノイド本体および前記磁極片は、磁性材料で製造されることを特徴とする電磁モジュラーバルブ。
【請求項16】
請求項10に記載の電磁モジュラーバルブにおいて、
前記エンドストッパはボビン内に移動可能に配置され、さらに、前記ソレノイド本体と螺合し、前記ソレノイド本体に対して前記エンドストッパを回転させることによって、前記エンドストッパの長手方向位置、すなわち、前記バルブ部材のストローク長さを調整可能とするねじ端部を備えることを特徴とする電磁モジュラーバルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電磁モジュラーバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
このセクションは、本発明の開示に関連する背景技術情報を提供するが、これは必ずしも先行技術ではない。
【0003】
電磁弁は、ソータ、包装機、フードプロセッサ等の様々な異なる用途で頻繁に用いられる。これらのバルブは、流体の流れの制御に用いられ、数百万回にわたり作動する可能性がある。電磁弁は、通常、コイルと電機子を備える。コイルに電力が供給されると(すなわち、ソレノイドに通電すると)、コイルは、電機子に電磁力を印加する。バルブ部材は、電機子の動きに応じて、開位置と閉位置の間を、電磁弁のバルブ本体内で、長手方向に移動する。バルブ本体は弁座を有し、バルブ部材は当接面を有する。バルブ部材の当接面は、バルブ部材が開位置にある時にバルブ本体の弁座から離間し、バルブ部材が閉位置にある時にバルブ本体の弁座と当接する。バネ等の付勢部材は、コイルが電機子に印加する電磁力に抵抗するのに用いられる。
電磁バルブの構成に応じて、付勢部材は、バルブ部材を弁座に押しつける(一般に常時閉バルブと呼ばれるもの)、または、弁座から離間させる(一般に常時開バルブと呼ばれる)。
【0004】
漏れ止めシールを提供するために、バルブ部材の当接面は、エラストマー材料で形成されることが多い。従来、バルブ部材は金属またはプラスチックで製造され、エラストマー材料はバルブ部材の金属またはプラスチックに被覆成形されるか接合される。他の構成では、エラストマー材料は、バルブ部材に接着剤で固定される。このようなバルブで使用されるエラストマー材料の種類は、バルブ部材または接着剤に接合されるのに適した材料に限定される。このような材料の欠点の一つは、特定の流体と接触すると、しばしば劣化および/または腐食しやすいことである。その結果、このようなバルブは、電磁弁を流れる流体が、当接面を形成するエラストマー材料に対して腐食性がある場合や、エラストマー材料をバルブ部材に固定する接合剤または接着剤に対して腐食性がある用途にはあまり適していない。
【発明の概要】
【0005】
このセクションは、本開示の概要を提供するが、全範囲または特徴の全ての包含的開示ではない。
【0006】
本開示は、バルブ本体と、バルブ本体の内部孔に摺動可能に収容されるバルブ部材と、開位置と閉位置の間を長手軸に沿って、バルブ本体に対してバルブ部材を移動させるソレノイドと、を備える電磁モジュラーバルブを提供する。バルブ本体は端面と側面を有する。端面の流出口も、バルブ本体の内部孔と流体連通して設けられる。側面の流入口も、バルブ本体の内部孔と流体連通して設けられる。バルブ本体は、端面とは反対側に接続端部を備える。ソレノイドは、バルブ本体の接続端部に接続されるソレノイド本体と、ソレノイド本体の内部に配置されるコイルとを備える。ソレノイドのコイルが通電されると、ソレノイドは、開位置および/または閉位置の間で長手軸に沿って、バルブ本体に対してバルブ部材を移動させる。
【0007】
本開示によれば、バルブ本体は、長手方向において内部孔と流出口の間に配置されるOリング弁座を備える。さらに、バルブ部材は、円錐台形状のテーパー端部、およびバルブ部材当接面を有する。バルブ部材当接面は、バルブ部材が閉位置にある時、Oリング弁座と当接し、バルブ部材が開位置にある時、Oリング弁座から離間する。その結果、バルブ部材は、開位置では、内部孔の内部および流入口と流出口の間を流体が流れるのを可能にし、閉位置ではその流れを遮断する。
【0008】
有利なことには、Oリング弁座の材料は、バルブ部材に接合したり、接着剤で固定する必要がない。これは、Oリング弁座の材料が、バルブ部材の材料または接着剤に対する接合性ではなくて、特定の流体による劣化および/または腐食に対する化学的耐性の点で選択可能であることを意味する。したがって、特に、従来のバルブ部材の当接面を形成するのに使用されるエラストマー材料、接合剤および/または接着剤を攻撃する(例えば、腐食させる)流体の流れを制御するために電磁モジュラーバルブが使用される用途において、本発明の電磁モジュラーバルブにより、より十全に密封可能である。
【0009】
さらなる利用分野は、ここに示される記載から明らかになるであろう。この概要における説明および特定の実施例は、説明のためのみであり、本開示の範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本明細書における図面は、選択された実施形態の図解のためのみであり、全ての可能な実施のためではなく、本開示の範囲を限定するものではない。
図1】本開示に従って構成された、例示的な常時閉モジュラーバルブの正面斜視図である。
図2】閉位置のバルブ部材を示す、図1の例示的な常時閉電磁モジュラーバルブの切断線A―A線に沿った側面断面図である。
図3】開位置のバルブ部材を示す、図1の例示的な常時閉電磁モジュラーバルブの切断線A―A線に沿った側面断面図である。
図4図1に示される例示的な常時閉電磁モジュラーバルブの展開斜視図である。
図5】本開示に従って構成された、例示的な常時開電磁モジュラーバルブの正面斜視図である。
図6】開位置のバルブ部材を示す、図5の例示的な常時開電磁モジュラーバルブの切断線B―B線に沿った側面断面図である。
図7】閉位置のバルブ部材を示す、図5の例示的な常時開電磁モジュラーバルブの切断線B―B線に沿った側面断面図である。
図8図5に示される例示的な常時開電磁モジュラーバルブの展開斜視図である。
図9図1に示される常時閉電磁モジュラーバルブの例示的な電機子の背面からの斜視図である。
図10図9に示される例示的な電機子の側面図である。
図11】常時閉電磁モジュラーバルブが例示的バルブマニホールドに装着される、図1の例示的な常時閉電磁モジュラーバルブの側面断面図である。 図面のいくつかの図を通じ対応する符号は対応する部分を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
添付の図面を参照して、より詳細に実施形態を説明する。
【0012】
この開示が詳細かつ当業者に発明範囲を十分伝えるように、実施形態を示す。特定部品、装置および方法の例として多くの特定の詳細が記載され、本開示の実施形態を完全に理解させる。特定の詳細が用いられる必要はないこと、実施形態は多くの異なる形状で具現化可能なこと、およびどちらも発明の範囲を限定するものと解釈すべきでないことは、当業者にとって自明であろう。いくつかの実施例において、公知のプロセス、公知の装置構造、および公知の技術は詳細には記載されない。
【0013】
本明細書で用いられる用語は、特定の実施例を記載するためのみであり、限定的であることを意図しない。本明細書で使用される際、単数形は、明示されていない限り複数形も含むことを意図する。用語「備える」、「備えて」、「含んで」および「有して」は包括的であり、述べられた特徴、整数、工程、操作、要素、および/または部品の存在を特定する。しかし、1以上の特徴、整数、工程、操作、要素、部品および/または群の存在または追加を排除するものではない。本明細書で記載される方法工程、プロセスおよび操作は、実行順序として詳細に特定されない限り、必ずしも記載または図示された特定の順序で実行を要するものと解釈されるべきではない。追加工程または代替工程が用いられてもよいことも理解される。
【0014】
要素または層が、他の要素または層「上に」ある、「に係合」、「に接続」または「に連結」すると記される場合、この要素または層は直接に他の要素または層上にあるか、係合、接続、または連結してもよい。または、介在要素または層があってもよい。一方、要素が、他の要素または層の「直接上に」ある、「に直接係合」、「に直接接続」または「に直接連結」すると記される場合、介在要素または層は存在しなくてよい。要素同士の関係を説明するのに使用される他の文言(例えば、「の間に」と「直接~の間に」、「隣接して」と「直接隣接して」など)は、同様に解釈されるべきである。本明細書で用いられる際、用語「および/または」は1以上の関連づけられたリスト項目の全ての組み合わせを含む。
【0015】
第一、第二、第三等の用語が各種要素、部品、領域、層および/または切断面を説明するために本明細書で使用されるが、これらの要素、部品、領域、層および/または切断面はこれらの用語により限定されるものではない。これらの用語は、ある要素、部品、領域、層および/または切断面を他の領域、層または切断面から区別するためにのみ使用されてもよい。本明細書で使用される際の「第一」「第二」のような用語および他の数に関する用語は、文脈で明示されない限り、配列または順序を意味しない。したがって、下記で論じられる第一要素、部品、領域、層および/または切断面は、実施例の教示から逸脱することなく第二要素、部品、領域、層および/または切断面と称されることも可能である。
【0016】
「インナー」、「アウター」、「真下に」、「下に」、「下側の」「上に」、「上部に」等のような空間的に相対的な用語が、図示する際、ある要素または特徴と他の要素または特徴との関係の記載を容易にするために、本明細書で使われてもよい。空間的に相対的な用語は、図示される向きに加えて、使用時または操作時における装置の異なる向きを包含するとしてもよい。例えば、図の装置がひっくり返ると、他の要素または特徴の「下に」または「真下に」と記載される要素は、他の要素または特徴の「上に」置かれるだろう。このように、例示的な用語「下に」は上と下両方への向きを包含することが可能である。装置は他方向に向かされてもよい(90度回転または他の向きに)。本明細書で使用される空間関連記述子は適宜解釈される。本明細書で使用される用語「磁性材料」は、0.000005ヘンリーパーメーター(H/m)を超える透磁率を有する材料を意味し、用語「非磁性材料」は、0.000005ヘンリーパーメーター(H/m)未満の透磁率を有する材料を意味する。
【0017】
図1~4を参照し、常時閉電磁モジュラーバルブ20を説明する。常時閉電磁モジュラーバルブ20は、バルブ本体22と、バルブ本体22に摺動可能に収容されるバルブ部材24と、閉位置(図2)と開位置(図3)の間を長手軸28に沿って、バルブ本体22に対してバルブ部材24を移動させるソレノイド26とを備える。バルブ本体22は、端面30、側面32および内部孔34を有する。端面30にある流出口36は、バルブ本体22の内部孔34と流体連通して設けられる。側面32にある流入口38は、バルブ本体22の内部孔34と流体連通して設けられる。バルブ本体22は、端面30とは反対側に接続端部40も備える。バルブ本体22は、多種多様な異なる材料で製造されてもよい。限定的でない例として、バルブ本体22は、金属またはポリマー製であってもよい。バルブ本体22の側面32に沿って、1つ以上のアウターシール42を設けてもよい。限定的でない例として、アウターシール42a、42bは、ゴム製のOリングのようなエラストマー材料で製造されてもよい。
【0018】
バルブ部材24は、プランジャ部44、ピストン部46および電機子部48を備える。
バルブ部材24のプランジャ部44は、バルブ本体22の内部孔34内に配置され、流出口36に向かって長手軸28に沿って延出する。バルブ部材24の電機子部48は、長手軸28に沿って、バルブ本体22の内部孔34からソレノイド26内部に延出する。バルブ部材24のピストン部46は、長手方向において、プランジャ部44と電機子部48との間で配置される。
バルブ部材24は、バルブ部材直径50を有する。バルブ部材直径50は、プランジャ部44や電機子部48よりも、ピストン部46において大きい。バルブ部材24のピストン部46は、バルブ本体22の内部孔34と滑合して摺動可能に配置される。とは言うものの、ピストン部46は、バルブ本体22の内部孔34を密封してもよいし、しなくてもよい。図示される例のように、ピストン部46がバルブ本体22の内部孔34を封止しない構成において、流入口38を介して内部孔34に流入する流体は、バルブ部材24のピストン部46とバルブ本体22との間を流通可能である。バルブ部材24は、複数の部品を組み立てたものであってもよいが、図示される例では、プランジャ部44、ピストン部46および電機子部48が一体として、バルブ部材24をなす一体型構造である。
【0019】
ソレノイド26は、第一端部52と第二端部54との間で長手方向に延出する。ソレノイド26は、ソレノイド本体56、コイル58、ボビン60、および磁極片62を備える。ソレノイド本体56は、ソレノイド26の第一端部52で、バルブ本体22の接続端部40に接続される。バルブ本体22の接続端部40は、様々な異なる方法で、ソレノイド本体56に接続されてもよい。図示される例では、バルブ本体22の接続端部40は、ソレノイド26の第一端部52に設けられた螺合部64によってソレノイド本体56に接続される。ソレノイド本体56は、ソレノイド26の第一端部52に設けられるねじ山68を有する外側面66を備えてもよい。コイル58は、ソレノイド本体56内部に配置される。ソレノイド本体56は、ソレノイド26の第二端部54で、コイル58を覆って径方向内側に延出し、エンドキャップ70に装着される。他の構成も可能であるが、図示される例では、コイル58は、ボビン60の回りに環状に巻きつけられる導電性ワイヤである。限定的でない例として、コイル58は、銅線からなってもよい。電気コネクタ72は、コイル58に電気的に接続される。電気コネクタ72は、ソレノイド本体56およびエンドキャップ70を貫通して延出し、図示されない電源と接続するためのインターフェースとなる。
【0020】
コイル58は、コイル58を通して流れる電流に応じて電磁場を発生させる。磁極片62は、ソレノイド26の第二端部54からコイル58内部に延出する。バルブ部材24の電機子部48は、ソレノイド26の第一端部52からコイル58に延出する。閉位置(図2)において、磁極片62とバルブ部材24の電機子部48とは、長手方向に隙間74だけ離間している。磁極片62およびバルブ部材24の電機子部48は、磁性材料で製造されている。コイル58により発生した電磁場により、磁極片62は、バルブ部材24に電磁力76を加え、磁極片62側にバルブ部材24の電機子部48を引っ張る(すなわち、引き寄せる)。ソレノイド26がバルブ部材24に加える電磁力76により、バルブ部材24は、バルブ本体22に対して長手軸28に沿って、開位置側に移動する。その結果、バルブ部材24の電機子部48と磁極片62との間の隙間74は、バルブ部材24が開位置にくると、狭まるか消失する(図3)。
【0021】
磁極片62は、ボビン60内に移動可能に配置され、さらに、ソレノイド本体56と螺合するねじ端部78を備えてもよい。磁極片62のねじ端部78により、ボビン60に対する磁極片62の長手方向位置が調整可能である。ソレノイド本体56に対して磁極片62が回転することで、バルブ部材24のストローク長さ(すなわち、バルブ部材24が開位置と閉位置との間を長手軸28に沿って移動する距離)が変わる。図示される例に示されるように、磁極片62のねじ端部78は、ソレノイド本体56に対する磁極片62の回転調整を容易にするツールインターフェイス80を備えてもよい。
【0022】
常時閉電磁モジュラーバルブ20は、第一ブッシュ82および第二ブッシュ84を備える。第一ブッシュ82は、ブッシュフランジ86および筒状部88を有する。ブッシュフランジ86は、長手方向においてバルブ本体22の接続端部40とコイル58との間に配置される。したがって、ブッシュフランジ86は、コイル58に対して第一ブッシュ82が長手方向に移動するのを防止する。インナーシール90を、バルブ本体22の接続端部40とブッシュフランジ86との間に配置してもよい。他の構成も可能であるが、インナーシール90は、ゴム製Оリングであってもよい。第一ブッシュ82の筒状部88は、ブッシュフランジ86から延出し、ボビン60に収容される。第一ブッシュ82の筒状部88は、磁極片62とバルブ部材24の電機子部48との間の隙間74を越えて延出する長手方向長さ92を有する。その結果、第一ブッシュ82の筒状部88は、バルブ部材24の電機子部48および磁極片62の少なくとも一部の回りを環状に延出する。したがって、第一ブッシュ82の筒状部88は、径方向においてボビン60とバルブ部材24の電機子部48との間に配置され、かつ、径方向においてボビン60と磁極片62との間に配置される。第一ブッシュ82は、複数の部品を組み立てたものであってもよいが、図示される例では、ブッシュフランジ86および筒状部88が一体として、第一ブッシュ82をなす一体型構造である。
【0023】
第二ブッシュ84は、円盤形状である。第二ブッシュ84は、第一ブッシュ82の筒状部88回りに環状に配置され、長手方向においてコイル58と第一ブッシュ82のブッシュフランジ86との間に配置される。ソレノイド本体56および第二ブッシュ84は共働して、ソレノイド26の断面形状を、コイル58を収容する内向きU字形断面94とする。第一ブッシュ82は、非磁性材料で製造されるが、ソレノイド本体56および第二ブッシュ84は磁性材料で製造される。その結果、ソレノイド本体56および第二ブッシュ84により形成される内向きU字形断面94は、コイル58により発生する磁場(すなわち、磁場の磁束線)を、長手軸28に向かって内側に集める。これにより、ソレノイド26の性能が向上し、その結果、より小さなコイル58が使用可能となり、重量およびコストの節約となる。
【0024】
図示される実施例において、常時閉電磁モジュラーバルブ20は、バルブ部材24に付勢力98を加える付勢部材96を備える。付勢力98は、ソレノイド26により発生する電磁力76とは反対方向に作用し、バルブ部材24を閉位置に向けて付勢する(図2)。その結果、付勢部材96は、コイル58が通電されていない場合は、バルブ部材24を閉位置に戻す。付勢部材96は、バルブ本体22の内部孔34内に配置される。他の構成であってもよいが、図示される実施例では、付勢部材96は、バルブ部材24の電機子部48を中心に螺旋状に延出し、かつ、バルブ部材24のピストン部46から第一ブッシュ82のブッシュフランジ86まで長手方向に延出するコイルばねである。ラッチソレノイド、またはバルブ部材24を押したり引いたりするソレノイドを利用し、付勢部材96を不要とする構成も可能であることが理解される。
【0025】
常時閉電磁モジュラーバルブ20のバルブ本体22は、長手方向において内部孔34と流出口36との間に位置する溝100を備える。バルブ本体22の溝100は、Oリング弁座102を収容し支持する。その結果、Oリング弁座102も、長手方向においてバルブ本体22の内部孔34と流出口36との間に位置する。バルブ本体22は、長手方向においてOリング弁座102を保持する溝100とバルブ本体22の内部孔34との間に位置するバルブ本体当接面104をさらに有する。バルブ本体当接面104は、長手軸28に対して斜角106に配置され、それにより、バルブ本体22の内部孔34から流出口36へ長手方向に向かうにしたがい狭くなる漏斗形状を有する。
【0026】
バルブ部材24は、円錐台形状のテーパー端部108、およびバルブ部材当接面110を有する。バルブ部材24が閉位置にある時(図2)、バルブ部材当接面110の少なくとも一部がOリング弁座102に当接する。バルブ部材24が閉位置にある時、バルブ部材当接面110の一部がバルブ本体当接面104にも当接し、バルブ部材24の堅固なストッパとなってもよい。バルブ部材24が開位置にある時(図3)、バルブ部材当接面110はOリング弁座102からバルブクリアランス量112だけ離間する。バルブクリアランス量112は、上述の通り、磁極片62の長手方向位置を調節することにより変更できる。その結果、流体の流路114は、バルブ部材24が開位置にある時、バルブ部材24のバルブ本体当接面104とOリング弁座102との間に形成される。この流路114は、バルブ部材24が閉位置にある時、バルブ部材当接面110により閉鎖される(すなわち、遮断される)。
【0027】
他の構成も可能であるが、図示される実施例では、バルブ本体当接面104の斜角106は、バルブ部材24のテーパー端部108の円錐台形状と一致する。すなわち、バルブ本体当接面104およびバルブ部材当接面110は、長手軸28に対して同一の斜角(すなわち、非垂直)106で配置されてもよい。非限定的な実施例として、斜角106は、40度以上50度以下であってもよい。
【0028】
Oリング弁座102は、種々の異なる材料から製造されてもよい。限定的でない例として、Oリング弁座102は、種々のゴム化合物または他のエラストマー性材料の一つから製造されてもよい。有利なことには、Oリング弁座102の材料は、バルブ部材24に接合したり、接着剤で固定する必要がない。これは、Oリング弁座102の材料が、バルブ部材24の材料または接着剤に対する接合性ではなくて、特定の流体による劣化および/または腐食に対する化学的耐性の点で選択可能であることを意味する。限定的でない例として、Oリング弁座102はパーフルオロエラストマー(FFKM)で製造されてもよい。したがって、特に、従来のバルブ部材の当接面において密封を形成するために使用される通常のゴム(ニトリルゴム等)、接合剤および/または接着剤を攻撃する(例えば、腐食させる)流体(インク等)と一緒に本発明の電磁モジュラーバルブ20が使用される用途において、本発明の電磁モジュラーバルブ20により、より十全に密閉可能である。
【0029】
図示される実施形態のような、バルブ部材24のピストン部46が、バルブ本体22の内部孔34を封止しない構成において、1つ以上の磁極片シール116が磁極片62に設けられる。磁極片シール116は、磁極片62回りに環状に延出し、径方向において磁極片62と第一ブッシュ82の筒状部88との間で配置される。バルブ部材24の全体が、バルブ本体22の内部孔34と、内部孔34と磁極片62の間の第一ブッシュ82内の空間とで形成される予圧室120内に位置するように、磁極片シール116は、第一ブッシュ82と磁極片62との間に静的シール118を形成する。したがって、磁極片シール116は、予圧室120の流体および汚染物がコイル58に達するのを防ぐ。
【0030】
バルブ部材24が開位置と閉位置の間を移動する際、第一ブッシュ82および磁極片62は互いに移動しないので、磁極片シール116により形成されるシール118は静的である。有利なことに、この構成により、例えば、バルブ部材24とバルブ本体22の内部孔34との間、または、バルブ部材24と第一ブッシュ82との間のような摺動シールの構成に比べて、摩擦が減る。本願の設計では、バルブ部材24のプランジャ部44、ピストン部46および電機子部48はシールされないので、摩擦は最小限に留められる。バルブ部材24と当接する唯一のシールは、Oリング弁座102であり、バルブ部材24が閉位置または閉位置付近にある場合にのみ、バルブ部材24はOリング弁座102に当接する。
【0031】
図5-8を参照し、常時開電磁モジュラーバルブ20’を説明する。図5-8に示される常時開電磁モジュラーバルブ20’は、図1-4に示される上記常時閉電磁モジュラーバルブ20と略同一のバルブ本体22、Oリング弁座102、ソレノイド本体56、コイル58、ボビン60、およびエンドキャップ70を有する。さらに、図5-8に示される常時開電磁モジュラーバルブ20’は、バルブ部材24’を有する。バルブ部材24’のテーパー端部108、プランジャ部44およびピストン部46は、図1-4に示される上記常時閉電磁モジュラーバルブ20のバルブ部材24と略同一である。しかし、図5-8に示される常時開電磁モジュラーバルブ20’のバルブ部材24’は、バルブ部材24’のピストン部46から延出するステム部122を有する。図1-4に示される常時閉電磁モジュラーバルブ20と異なり、常時開電磁モジュラーバルブ20’のバルブ部材24’は、非磁性材料で製造されている。その結果、バルブ部材24’のステム部122は、コイル58により発生する磁界に影響されず、ステム部122は電機子として作動しない。
【0032】
常時開電磁モジュラーバルブ20’は、磁極片62’を有するソレノイド26’を備える。磁極片62’は、上述の構成のようにソレノイド26’の第二端部54ではなく、ソレノイド26’の第一端部52に配置される。磁極片62’は、長手方向においてコイル58とバルブ本体22の接続端部40の間に配置される磁極片フランジ124と、磁極片フランジ124からボビン60内部にソレノイド26の第一端部52をから延出するシリンダー部125を有する。磁極片フランジ124は、磁極片62’が、コイル58に対して長手軸28に沿って長手方向に移動するのを防ぐ。本実施形態において、インナーシール90は、長手方向において、バルブ本体22の接続端部40と磁極片フランジ124の間で配置されてもよい。ソレノイド26’は、さらに、ソレノイド26’の第二端部54からボビン60内部に延出するエンドストッパ126と、磁極片62’のシリンダー部125とエンドストッパ126の間でボビン60内に摺動可能に配置される電機子128とを備える。
【0033】
磁極片62’は、長手軸28と整列配置され、磁極片62’を貫通して延出する長手方向孔130を有する。バルブ部材24のステム部122は、磁極片62’の長手方向孔130に摺動可能に収容される。ステム部122は、磁極片62’の長手方向孔130を貫通して延出し、バルブ部材24’が開位置にある時、電機子128と当接する(図6)。磁極片62’および電機子128は、磁性材料で製造されている。コイル58により発生した電磁場により、磁極片62’は、電機子128に電磁力76’を加え、磁極片62’側(ソレノイド26の第一端部52側)に電機子128を引っ張る(すなわち、引き寄せる)。バルブ部材24が、磁極片62’側へ引っ張られると、電機子128は、バルブ部材24のステム部122と当接し、それにより、バルブ部材24’は、バルブ本体22に対して、長手軸28に沿って閉位置側へ移動する(図7)。
【0034】
常時開電磁モジュラーバルブ20’は、バルブ本体22の内部孔34に配置され、バルブ部材24’を開位置に付勢する付勢部材96’を備える(図6)。開位置において、電機子128は、ソレノイド26’の第二端部54のエンドストッパ126に長手方向に隣接し当接するように配置される。他の構成であってもよいが、図示される実施例では、付勢部材96’は、バルブ部材24’のプランジャ部44を中心に螺旋状に延出し、かつ、バルブ部材24’のピストン部46からバルブ本体22の内部孔34内でバルブ本体当接面104に隣接する支持面132まで長手方向に延出するコイルばねである。したがって、付勢部材96’は、電機子128に印加される電磁力76’とは反対方向に作用する付勢力98’をバルブ部材24に加える。その結果、付勢部材96’は、コイル58が通電されていない場合には、バルブ部材24’を開位置に戻す(図6)。
【0035】
エンドストッパ126は、ボビン60内に移動可能に配置され、さらに、ソレノイド本体56と螺合するねじ端部78’を備えてもよい。エンドストッパ126のねじ端部78’により、ボビン60に対するエンドストッパ126の長手方向位置を調整することが可能となる。ソレノイド本体56に対してエンドストッパ126が回転することで、電機子128のストローク長さを変え、それにより、バルブ部材24’のストローク長さ(すなわち、バルブ部材24’が開位置と閉位置との間を長手軸28に沿って移動する距離)を変える。図示される例に示されるように、エンドストッパ126のねじ端部78’は、ソレノイド本体56に対するエンドストッパ126の回転調整を容易にするツールインターフェイス80’を備えてもよい。
【0036】
常時開電磁モジュラーバルブ20’は、ブッシュフランジ86’を有するブッシュ82’と、ブッシュフランジ86’から長手方向に延出する筒状部88’とを備える。ブッシュフランジ86は、コイル58に対するブッシュ82’の長手方向の移動を防止するように、長手方向において磁極片フランジ124とコイル58の間に配置される。ブッシュ82’の筒状部88’は、ボビン60内に収容され、磁極片62’のシリンダー部125、電機子128、およびエンドストッパ126の少なくとも一部の回りを環状に延出する。その結果、ブッシュ82’の筒状部88’は、(1)径方向においてボビン60と磁極片62’のシリンダー部125の間に、(2)径方向においてボビン60と電機子128の間に、および(3)径方向においてボビン60とエンドストッパ126の少なくとも一部の間に、配置される。ソレノイド本体56および磁極片62’が共働して長手軸28側である内側へ磁束を集中させるように、ブッシュ82’およびエンドストッパ126は、非磁性材料で製造され、ソレノイド本体56および磁極片62’は、磁性材料で製造される。
【0037】
図示される実施形態のような、バルブ部材24’のピストン部46が、バルブ本体22の内部孔34を封止しない構成において、磁極片シール116’が磁極片62’に設けられ、1つ以上のエンドストッパシール134がエンドストッパ126に設けられる。磁極片シール116’は、磁極片62’のシリンダー部125回りに環状に延出し、径方向において磁極片62’のシリンダー部125とブッシュ82’の筒状部88’との間で配置される。エンドストッパシール134は、エンドストッパ126回りに環状に延出し、径方向においてエンドストッパ126とブッシュ82’の筒状部88’との間で配置される。バルブ部材24’の全体が、バルブ本体22の内部孔34と、磁極片62’の長手方向孔130と、磁極片62’とエンドストッパ126の間のブッシュ82’内の空間とで形成される予圧室120’内に配置されるように、磁極片シール116は、ブッシュ82’と磁極片62’との間に第一静的シール118aを形成し、エンドストッパシール134は、ブッシュ82’とエンドストッパ126の間に第二静的シール118bを形成する。したがって、磁極片シール116’およびエンドストッパシール134は、予圧室120’の流体および汚染物がコイル58に達するのを防ぐ。
【0038】
磁極片シール116’およびエンドストッパシール134によりなされるシール118aおよび118bは静的とされるのは、バルブ部材24’が開位置と閉位置の間を移動する際、ブッシュ82’は磁極片62’およびエンドストッパ126に対して移動しないからである。有利なことに、これにより、摺動シールの構成に比べて、摩擦が減る。本願の設計では、バルブ部材24’のプランジャ部44、ピストン部46およびステム部122はシールされないので、摩擦は最小限に留められる。バルブ部材24’と当接する唯一のシールは、Oリング弁座102であり、バルブ部材24’が閉位置または閉位置付近にある場合にのみ、バルブ部材24’はOリング弁座102に当接する。
【0039】
図9および図10は、常時閉電磁モジュラーバルブ20に使用される別のバルブ部材24”の実施形態を図示する。図9および図10において、バルブ部材24”のテーパー端部108、プランジャ部44、およびピストン部46は、図1から図4に示される上述のバルブ部材24と略同一である。しかし、図9および図10に示されるバルブ部材24は、1つ以上の長手方向溝136を有する電機子部48”を有する。長手方向溝136は、筒状外面138から径方向に、バルブ部材24”の電機子部48”の内側へ延出する。長手方向溝136は、長手軸28と平行に伸び、バルブ部材24”の電機子部24”に沿って流体流路140を提供することにより、閉位置と閉位置の間をバルブ部材24”が長手方向に移動するのを容易にする。この流体流路140は、バルブ部材24”と、内部孔34および/または第一ブッシュ82との間の流体固着現象を防止するのを助ける。
【0040】
図11を参照して、図1から図4に示される常時閉電磁モジュラーバルブ20は、マニホールド142に装着される。バルブ本体22は、マニホールド142のメインキャビティ146の孔壁144に収容される。アウターシール42a、42bは、孔壁144に当接し密封する。図示される実施例において、バルブ本体22の端面30は、メインキャビティ146の末端壁148と直に当接する。しかしながら、他の構成であってもよく、バルブ本体22の端面30が、メインキャビティ146の末端壁148から軸方向に離間していてもよい。バルブ本体22の流入口38は、マニホールド142の流入路150と流体連通して配置され、バルブ本体22の流出口36は、マニホールド142の流出路152と流体連通して配置される。バルブ部材24が開位置の場合、流体は流路154に沿って流通可能である。流路154は、マニホールド142の流入路150から、バルブ本体22の流入口38、バルブ本体22の内部孔34、Oリング弁座102とバルブ部材当接面110の間、および、バルブ本体22の流出口36を通って、マニホールド142の流出路152へと延出する。バルブ部材24が閉位置の場合、バルブ部材24は流路154を塞ぐ。他の構成であってもよいが、常時閉電磁モジュラーバルブ20は、ソレノイド本体56の外側面66にあるねじ山68が、ソレノイド26の第一端部52付近の孔壁144と係合することによって、メインキャビティ146内に固定される。図1-4に示される常時閉電磁モジュラーバルブ20が図11に示されるが、図5-8に示される常時開電磁モジュラーバルブ20’を、同様に同一のマニホールド142に装着可能であると理解される。
【0041】
実施形態に関する上記記載は、図解および説明の目的で提供される。網羅的または発明を限定することを意図しない。本明細書で記載されるモジュラーバルブ20、20’のサイズおよび流動特性は、本開示の範囲を逸脱することなく変更してもよいことが理解される。さらに、本明細書で記載されるモジュラーバルブ20、20’を通る流れは、逆向きにして、流体が開口部36から流入し、開口部38から流出するようにしてもよいことが理解される。特定の実施形態の個別の要素または特徴は、一般にその特定の実施形態に限定されないが、適用可能な場合には、詳細に図示または説明されないとしても選択された実施形態で交換可能であり、使用可能である。同じものが多くの点で変更されてもよい。そのような変更は本開示からの逸脱とはみなされない。そのような修正は全て本開示の範囲内に含まれることが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11