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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-31
(45)【発行日】2024-08-08
(54)【発明の名称】シール構造
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/3204 20160101AFI20240801BHJP
   F16J 15/3284 20160101ALI20240801BHJP
【FI】
F16J15/3204 201
F16J15/3284
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019078611
(22)【出願日】2019-04-17
(65)【公開番号】P2020176673
(43)【公開日】2020-10-29
【審査請求日】2022-03-17
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100145481
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 昌邦
(74)【代理人】
【識別番号】100211122
【弁理士】
【氏名又は名称】白石 卓也
(72)【発明者】
【氏名】四十 薫
(72)【発明者】
【氏名】片岡 佑介
【審査官】羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-071377(JP,A)
【文献】実開平05-040658(JP,U)
【文献】特開2014-084933(JP,A)
【文献】特開2000-346206(JP,A)
【文献】特表平01-502841(JP,A)
【文献】実開平05-036166(JP,U)
【文献】国際公開第2014/030413(WO,A1)
【文献】独国特許出願公開第102017202608(DE,A1)
【文献】実開平04-136367(JP,U)
【文献】実開平05-045336(JP,U)
【文献】特開平02-173475(JP,A)
【文献】実開平01-132863(JP,U)
【文献】特開2015-155739(JP,A)
【文献】特開2008-069909(JP,A)
【文献】特開2017-227243(JP,A)
【文献】実開昭59-073670(JP,U)
【文献】特開平08-189563(JP,A)
【文献】実開平01-128020(JP,U)
【文献】特開2004-332829(JP,A)
【文献】特開平04-102769(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/16-15/38
F16J 15/46-15/53
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースと、
前記ケースの内部に配置される軸部材と、
前記ケースと前記軸部材との間をシールするシール部材と、
前記ケースに接触する前記シール部材の外周部と前記軸部材に接触する前記シール部材の内周部とを連結するとともに軸方向の内方に向かって凸状に湾曲する連結部と、を備え、
前記シール部材の外周部及び前記連結部は、埋設された芯部を有し、
前記芯部は、金属製の弾性材料により形成されており、
前記連結部は、外周側で前記軸方向の内方に向かって凸状に湾曲する湾曲部を備え、
前記湾曲部は、
前記外周部における前記軸方向の外方の端部から前記外周部における前記軸方向の内方の端部に至るまで延びる湾曲外周部と、
前記湾曲外周部における前記軸方向の内方の端部から折り返し、前記内周部における前記軸方向の外方の端部に至るまで延びる湾曲内周部と、
を有し、
前記外周部及び前記湾曲外周部は、前記軸部材の前記軸方向に延びており、
前記湾曲内周部は、前記軸部材の前記軸方向と交差する方向に延びており、
前記湾曲内周部の前記内周部側の面の面積は、前記湾曲外周部の前記外周部側の面の面積よりも大きく、
前記芯部は、前記外周部における前記軸方向の内方の端部から前記湾曲外周部及び前記湾曲内周部を通って前記湾曲内周部における前記内周部側の端部に至るまで埋設されている、
シール構造。
【請求項2】
前記ケース内の圧力の増大に伴い前記内周部が前記ケースを押す力を増大させる請求項1に記載のシール構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シール構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ロボットに搭載される減速機の稼働環境は、ロボットの動作の高速化及び高頻度化に伴って厳しくなっている。例えば、高速動作又は高温下の動作では、減速機の温度が上昇するとともに、減速機内部の圧力が所望の圧力よりも増大する場合がある。減速機の内部圧力の増大に伴い、オイルシールが減速機から抜け落ちるおそれがある。
また、潤滑剤又は外部からの溶剤によって、オイルシールのゴム材に硬化などの化学変化が生じ、外径の縮小などの変形が生じる場合がある。オイルシールの変形に伴い、オイルシールが減速機から抜け落ちるおそれがある。
これらの問題に対して、例えばオイルシールの外径を大きく形成することによって、オイルシールの装着部に対する押し付け力を増大させるだけでは、オイルシールが減速機から抜け落ちることを的確に抑制することは困難である。従来、オイルシールの抜け落ちを防ぐための抜け止め用の部材を備える密封装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-109190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記したような密封装置は、抜け止め用の部材を着脱可能に固定する固定部材を備える。これにより、密封装置の構成に要する特別な部材、例えば抜け止め用の部材、固定部材及び固定部材が装着される部材などを必要とし、装置構成が複雑になる可能性があった。
【0005】
本発明は、簡易な構成によって内部を適正にシールすることができるシール構を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様に係るシール構造は、ケースと、前記ケースの内部に配置される軸部材と、前記ケースと前記軸部材との間をシールするシール部材と、前記ケースに接触する前記シール部材の外周部と前記軸部材に接触する前記シール部材の内周部とを連結するとともに軸方向の内方に向かって凸状に湾曲する連結部と、を備え、前記シール部材の外周部及び前記連結部は、埋設された芯部を有し、前記芯部は、金属製の弾性材料により形成されており、前記連結部は、外周側で前記軸方向の内方に向かって凸状に湾曲する湾曲部を備え、前記湾曲部は、前記外周部における前記軸方向の外方の端部から前記外周部における前記軸方向の内方の端部に至るまで延びる湾曲外周部と、前記湾曲外周部における前記軸方向の内方の端部から折り返し、前記内周部における前記軸方向の外方の端部に至るまで延びる湾曲内周部と、を有し、前記外周部及び前記湾曲外周部は、前記軸部材の前記軸方向に延びており、前記湾曲内周部は、前記軸部材の前記軸方向と交差する方向に延びており、前記湾曲内周部の前記内周部側の面の面積は、前記湾曲外周部の前記外周部側の面の面積よりも大きく、前記芯部は、前記外周部における前記軸方向の内方の端部から前記湾曲外周部及び前記湾曲内周部を通って前記湾曲内周部における前記内周部側の端部に至るまで埋設されている
【0011】
このように構成することで、軸方向内方に向かって凸状に湾曲する連結部には軸方向内方からの内圧によって追加的にシール部材の外周部をケースの内周面に押し付ける力が作用する。例えば連結部が湾曲していない場合に比べて、シール部材をケースに向かってより強く押すことによって、シール部材が軸方向の外方に抜け外れることを抑制することができる。
また、湾曲部には軸方向内方からの内圧によって追加的に外周部をケースの内周面に押し付ける力が作用する。例えば湾曲部を備えない場合に比べて、シール部材をケースに向かってより強く押すことによって、シール部材が軸方向の外方に抜け外れることを抑制することができる。さらに、例えば内周側に湾曲部を備える場合に比べて、軸部材とシール部材との抵抗を抑制することができる。
【0018】
上記構成であって、前記ケース内の圧力の増大に伴い前記内周部が前記ケースを押す力を増大させてもよい
【0019】
このように構成することで、ケース内の圧力の増大に伴い、リップ部がケースをより強く押すことによって、シールが軸方向の外方に抜け外れることを抑制することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、簡易な構成によって内部を適正にシールすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の第1参考例に係るシール構造を備える回転機械の構成を示す断面図。
図2図1に示すシール部材の拡大断面図。
図3】本発明の第1参考例の変形例に係るシール部材の断面図。
図4】本発明の施形態に係るシール部材の断面図。
図5】本発明の第2参考例に係るシール部材の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(第1参考例
以下、本発明の回転機械のシール構造の第1参考例について添付図面を参照しながら説明する。
図1は、第1参考例に係るシール構造を備える回転機械1の構成を示す断面図である。図2は、図1に示すシール部材10の拡大断面図である。
【0031】
図1及び図2に示すように、本参考例の回転機械1は、ケース2と、軸部材3と、2つの軸受4と、シール部材10とを備える。
ケース2の外形は、例えば円筒状に形成されている。
軸部材3の外形は、例えば円筒状に形成されている。軸部材3は、ケース2の内部に配置されている。軸部材3の中心軸Oは、ケース2の中心軸と同軸である。軸部材3は、中心軸Oの軸周りにケース2に対して相対回転する。
2つの軸受4は、回転機械1の軸方向Dの第1端部1a側及び第2端部1b側の各々でケース2と軸部材3との間に配置されている。2つの軸受4は、ケース2に対して中心軸Oの軸周りに回転可能に軸部材3を支持する。なお、軸方向Dは、軸部材3の中心軸Oに平行な方向である。
【0032】
各軸受4は、例えば、アウターレース5と、インナーレース6と、複数の玉7とを備える。
アウターレース5の外形は、例えば円環状に形成されている。アウターレース5は、ケース2の内側に嵌め込まれ、ケース2の内周面2Aに接している。
インナーレース6の外形は、例えば円環状に形成されている。インナーレース6は、軸部材3の外側に嵌め込まれ、軸部材3の外周面3Bに接している。
複数の玉7の各々の外形は、例えば球形状に形成されている。複数の玉7は、アウターレース5とインナーレース6との間に配置されている。複数の玉7は、周方向に所定間隔を置いて全周に亘って配置されている。各玉7は、アウターレース5とインナーレース6との間で転動する。
【0033】
シール部材10の外形は、例えば円環状に形成されている。シール部材10は、回転機械1の軸方向Dの第1端部1a側で軸受4よりも外方側に配置されている。シール部材10は、ケース2と軸部材3との間に形成される環状空間をシールする。
シール部材10は、例えば、ベース部11と、リップ部12とを備える。
ベース部11の外形は、例えば軸方向D及び径方向Rに沿う断面がL字状に屈曲する円環状に形成されている。ベース部11は、芯部21と、芯部21を被覆する被覆部22とを備える。芯部21は、例えば金属などの弾性材料によって形成されている。被覆部22は、例えばゴム又は樹脂などの弾性材料によって形成されている。
【0034】
ベース部11は、ケース2の内周面2Aに接する外周部11aと、外周部11aとリップ部12とを連結する連結部11bとを備える。外周部11a及び連結部11bは、一体に形成されている。
外周部11aの外形は、軸方向Dに沿って延びる円環状に形成されている。
連結部11bの外形は、外周部11aの軸方向外方側の端部11cから径方向内方に延びる円環状に形成されている。
【0035】
ベース部11は、例えばベース部11の外周部11aが径方向内方に向かって弾性的に変形した状態でケース2の内周面2Aに嵌め込まれることによって、シール部材10をケース2に保持させる。外周部11aは、径方向内方に向かって弾性的に変形することによって、弾性力によってケース2の内周面2Aに押し付けられる。
【0036】
リップ部12の外形は、例えば連結部11bの端部11dから径方向内方に突出する円環状に形成されている。リップ部12は、例えばゴム又は樹脂などの弾性材料によって形成されている。リップ部12は、例えば連結部11bと一体に形成されている。
リップ部12は、ダストリップ31と、接触リップ32と、スプリングリング33とを備える。
ダストリップ31の外形は、例えば連結部11bの端部11dから軸方向外方側に傾くように径方向内方に突出する円環状に形成されている。ダストリップ31の先端31aは軸部材3の外周面3Bに押し付けられるようにして接している。ダストリップ31は、回転機械1の外部で浮遊する異物が回転機械1の内部空間(ケース2と軸部材3とによって囲まれた空間)に侵入することを抑制する。
【0037】
接触リップ32の外形は、例えば連結部11bの端部11dから軸方向内方側に傾くように径方向内方に突出する円環状に形成されている。接触リップ32の先端32aは軸部材3の外周面3Bに押し付けられるようにして接している。
スプリングリング33は、接触リップ32の外周面32A上に形成された環状凹部32bに嵌め込まれている。スプリングリング33は、いわゆるガーターばね(ガータースプリング)であって、例えばコイルばねの両端が連結されることによって形成された円環状のばね等である。スプリングリング33は、弾性材料により形成されている。スプリングリング33は、接触リップ32に装着された状態で弾性的に伸びている。スプリングリング33は、弾性力によって接触リップ32の先端を径方向に軸部材3の外周面3Bに押し付け、接触リップ32を圧縮変形させる。
接触リップ32は、回転機械1の外部からダストリップ31を通じて内部空間に液体状の異物が流入すること、及び、回転機械1の内部空間から外部へと液体状の潤滑剤が流出することを抑制する。
【0038】
シール部材10はベース部11を介してケース2に固定される。リップ部12のダストリップ31及び接触リップ32は、ケース2及び軸部材3の少なくともいずれかの相対回転時に軸部材3の外周面3Bに接触した状態で相対回転する。
【0039】
シール部材10に接するケース2の内周部2aは、軸方向Dの外方側から内方側に向かうことに伴って内径の長さが増大傾向に変化する内径変化部41を備える。内径変化部41の内周面41Aは、例えば軸方向Dに対して所定角度θだけ傾斜するテーパ状に形成されている。
内径変化部41の内周面41Aの法線方向は、径方向Rに対して所定角度θだけ傾いている。これにより、シール部材10の外周部11aからケース2の内周部2aに作用する力に対するケース2の内径変化部41の法線反力RFは、軸方向Dの外方側から内方側に向かって傾いて径方向内方に作用する。
【0040】
上述したように、第1参考例の回転機械1のシール構造では、ケース2の内径変化部41の内周面41Aは、軸方向Dに対して所定角度θだけ傾斜するテーパ状に形成されている。これにより、ケース2の内径変化部41の法線反力RFは、軸方向Dの外方側から内方側に向かって傾いて径方向内方に作用する。例えばケース2の内周部2aの法線反力が径方向に平行である場合に比べて、シール部材10を軸方向Dの内方に向かって押すことによって、シール部材10が軸方向Dの外方に抜け外れることを抑制することができる。
【0041】
なお、上述した第1参考例では、ベース部11は外周部11aのみによって構成され、シール部材10は、ベース部11(外周部11a)と、連結部11bと、リップ部12とによって構成されてもよい。この場合、ベース部11(外周部11a)はケース2に固定され、連結部11bはベース部11(外周部11a)とリップ部12とを接続する。
また、上述した第1参考例では、リップ部12は軸部材3に接するとしたが、これに限定されず、ケース2の内周に配置された他の部材に接してもよい。
【0042】
(第1参考例の変形例)
以下、第1参考例の変形例について説明する。なお、上述した第1参考例と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略又は簡略化する。
図3は、第1参考例の変形例に係るシール部材10の断面図である。
上述した参考例では、シール部材10に接するケース2の内周部2aは内径変化部41を備えるとしたが、これに限定されず、シール部材10の外周部11aは外径変化部42を備えてもよい。
【0043】
図3に示すように、第1参考例の変形例では、シール部材10に接するケース2の内周部2aの内周面2Aは軸方向Dに平行である。
シール部材10の外周部11aは、ケース2に装着されるより前の自然状態で軸方向Dの外方側から内方側に向かうことに伴って外径の長さが増大傾向に変化する外径変化部42を備える。外径変化部42の外周面42B(例えば、図3に示す破線による外周面42B)は、ケース2に装着されるより前の自然状態では、例えば軸方向Dに対して所定角度θだけ傾斜するテーパ状に形成されている。
シール部材10の外周部11aがケース2に装着された状態で、外周部11aがケース2の内周面2Aに押し付けられる力は、軸方向Dの外方側よりも内方側でより大きくなる。これにより、シール部材10の外周部11aからケース2の内周部2aに作用する力に対するケース2の内周部2aの法線反力RFは、軸方向Dの外方側よりも内方側でより大きくなる。
【0044】
上述したように、第1参考例の変形例に係る回転機械1のシール構造では、シール部材10の外径変化部42の外周面42Aは、ケース2に装着されるより前の自然状態で軸方向Dに対して所定角度θだけ傾斜するテーパ状に形成されている。これにより、シール部材10の外周部11aからケース2の内周部2aに作用する力に対するケース2の内周部2aの法線反力RFは、軸方向Dの外方側よりも内方側でより大きくなる。例えばケース2の内周部2aの法線反力RFが軸方向Dの外方側及び内方側でほぼ同じ大きさである場合に比べて、シール部材10を軸方向Dの内方側でより強く保持することによって、シール部材10が軸方向Dの外方に抜け外れることを抑制することができる。
【0045】
また、上述した第1参考例の変形例では、上述したシール部材10の外径変化部42に限定されず、他の構成によってベース部11に作用するケース2の力が軸方向Dの内方側よりも外方側で大きくされてもよい。
これにより、例えばベース部11に作用するケース2の力が軸方向Dの内方側よりも外方側で小さくされる場合に比べて、シール部材10を軸方向Dの内方側でより強く保持することによって、シール部材10が軸方向Dの外方に抜け外れることを抑制することができる。
【0046】
施形態)
以下、本発明の回転機械のシール構造の施形態について添付図面を参照しながら説明する。なお、上述した第1参考例と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略又は簡略化する。
図4は、施形態に係るシール部材50の断面図である。
図4に示すように、施形態のシール部材50は、上述した第1参考例のシール部材10と比較して、第1参考例のベース部11の代わりにベース部51を備える点で相違している。
シール部材50は、例えば、ベース部51と、リップ部12とを備える。ベース部51は、芯部52と、芯部52を被覆する被覆部53とを備える。ベース部51は、外周部11aと、連結部51bとを備える。外周部11a及び連結部51bは、一体に形成されている。
リップ部12は、連結部51bの端部51dから径方向内方に突出している。リップ部12は、連結部51bと一体に形成されている。
【0047】
連結部51bの外形は、外周部11aの軸方向外方側の端部11cから軸方向内方に向かって凸状に湾曲しながら径方向内方に延びる円環状に形成されている。連結部51bは、例えば、径方向外周側に湾曲部54を備える。湾曲部54の外形は、軸方向Dの内方に向かって凸状に湾曲する円環状に形成されている。
湾曲部54は、例えば、外周部11aの軸方向外方側の端部11cから湾曲部54の内方先端部54aに向かって延びる湾曲外周部54bと、内方先端部54aから連結部51bの端部51dに向かって延びる湾曲内周部54cとを備える。
【0048】
湾曲部54の内方先端部54aは、湾曲部54が連結部51bの径方向外周側に配置されていることによって、外周部11aとリップ部12との間で径方向外周側に配置されている。これに伴い、湾曲内周部54cの内面54Cの面積は、相対的に湾曲外周部54bの内面54Bの面積よりも大きく形成されている。
また、湾曲外周部54bの内面54Bに作用する内圧IPの方向(受圧方向)は、軸方向外方及び径方向内方に向かう方向である。湾曲内周部54cの内面54Cに作用する内圧IPの方向(受圧方向)は、軸方向外方及び径方向外方に向かう方向である。なお、内圧IPは、例えば回転機械1の内部空間の圧力である。
これらにより、湾曲部54には内圧IPによって追加的に外周部11aをケース2の内周面2Aに押し付ける力が作用する。
【0049】
上述したように、施形態に係る回転機械1のシール構造では、シール部材50は、外周部11aとリップ部12とを連結する連結部51bの径方向外周側に軸方向内方に向かって凸状に湾曲する湾曲部54を備える。これにより、湾曲部54には内圧IPによって追加的に外周部11aをケース2の内周面2Aに押し付ける力が作用する。例えば第1参考例の連結部11bのように湾曲部54を備えない場合に比べて、シール部材50をケース2に向かってより強く押すことによって、シール部材50が軸方向Dの外方に抜け外れることを抑制することができる。
【0050】
また、湾曲部54は連結部51bに形成されているので、ベース部11には追加的に連結部51bがケース2を押す力が作用する。例えば湾曲部54が連結部51bに形成されていない場合に比べて、シール部材50をケース2に向かってより強く押すことによって、シール部材50が軸方向Dの外方に抜け外れることを抑制することができる。
なお、上述した施形態では、シール部材50は、連結部51bに1つの湾曲部54を備えるとしたが、これに限定されず、複数の湾曲部を備えてもよい。
【0051】
また、上述した施形態では、ケース2内の圧力の増大に伴いリップ部12がケース2を押す力を増大させる増大手段を備えてもよい。増大手段は、上述したように連結部51bに形成されることに限定されず、シール部材50の他の部位に形成されてもよい。
また、増大手段は、上述したように連結部51bに形成される湾曲部54に限定されず、他の構成を備えてもよい。これにより、ケース2内の圧力の増大に伴い、リップ部12がケース2をより強く押すことによって、シール部材50が軸方向Dの外方に抜け外れることを抑制することができる。
【0052】
(第2参考例
以下、本発明の回転機械のシール構造の第2参考例について添付図面を参照しながら説明する。なお、上述した第1参考例と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略又は簡略化する。
図5は、第2参考例に係るシール部材60の断面図である。
図5に示すように、第2参考例のシール部材60は、上述した第1参考例のシール部材10と比較して、ケース2に装着されるより前の自然状態における外形が同一形状に形成されている。また、上述した第1参考例の変形例と同様にシール部材60に接するケース2の内周部2aの内周面2Aは軸方向Dに平行である。
2参考例のシール部材60は、相対的にケース2よりも熱膨張係数が大きい点で上述した第1参考例及び変形例と相違している。
例えば、シール部材60の芯部21は、相対的にケース2よりも熱膨張係数が大きい金属材料によって形成されている。
【0053】
上述したように、第2参考例に係る回転機械1のシール構造では、シール部材60は、相対的にケース2よりも熱膨張係数が大きい。これにより、シール部材60は、回転機械1の作動に伴う温度上昇時にケース2よりも膨張しやすい。例えばシール部材60及びケース2の熱膨張係数がほぼ同一である場合又はシール部材60の熱膨張係数が相対的にケース2の熱膨張係数よりも小さい場合に比べて、シール部材60がケース2によってより強く保持されることによって、シール部材60が軸方向Dの外方に抜け外れることを抑制することができる。
【0054】
なお、上述した第2参考例では、芯部21は、相対的にケース2よりも熱膨張係数が大きい金属材料によって形成されているとしたが、これに限定されず、例えば相対的にケース2よりも熱膨張係数が大きい樹脂材料などの素材によって形成されてもよい。
また、上述した第2参考例では、芯部21の熱膨張係数はケース2の熱膨張係数よりも大きいとしたが、これに限定されない。例えば、芯部21の代わりに又は芯部21に加えて、被覆部22の熱膨張係数をケース2の熱膨張係数よりも大きくしてもよい。
【0055】
また、上述した第2参考例では、シール部材60を構成するベース部11の外周部11a及び連結部11bとリップ部12とのうち少なくとも一部は、ケース2よりも熱膨張係数が大きい素材によって形成されてもよい。これにより、シール部材60を構成するベース部11の外周部11a及び連結部11bとリップ部12とのうち少なくとも一部は、温度上昇時にケース2よりも膨張しやすい。例えばリップ部12及びベース部11とケース2との熱膨張係数がほぼ同一である場合又はリップ部12及びベース部11の熱膨張係数がケース2の熱膨張係数よりも小さい場合に比べて、シール部材60がケース2によってより強く保持されることによって、シール部材60が軸方向Dの外方に抜け外れることを抑制することができる。
【0056】
また、上述した第2参考例では、ケース2の温度上昇に伴いリップ部12がケース2を押す力を増大させる増大手段を備えてもよい。増大手段は、上述したようにシール部材60の少なくとも一部をケース2よりも熱膨張係数が大きい素材によって形成することに限定されず、他の構成を備えてもよい。これにより、ケース2内の温度上昇に伴い、リップ部12がケース2をより強く押すことによって、シール部材60が軸方向Dの外方に抜け外れることを抑制することができる。
【0057】
なお、上述した参考例、実施形態及び変形例では、回転機械1は、例えば、偏心揺動型減速機などの減速機又は回転電機などでもよい。
また、上述した参考例、実施形態及び変形例では、各シール部材10,50,60は、ケース2の代わりに、例えばモータフランジ及びオイルシールフランジなどの部材に装着されてもよい。
また、上述した参考例、実施形態及び変形例では、各シール部材10,50,60は、単に、各シール10,50,60と称してもよい。
【0058】
本発明の実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0059】
1…回転機械、2…ケース、2a…内周部、3…軸部材、10,50,60…シール部材
(シール)、11…ベース部、11a…外周部、11b,51b…連結部、12…リップ
部(内周部)、21…芯部、22…被覆部、41…内径変化部、41A…内周面41A、
42…外径変化部、42B…外周面、54…湾曲部、54B,54C…内面(面)、54b…湾曲外周部、54c…湾曲内周部
図1
図2
図3
図4
図5