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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-31
(45)【発行日】2024-08-08
(54)【発明の名称】塞ぎ部材付き排出用部材および収容容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 33/38 20060101AFI20240801BHJP
   B29C 45/26 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
B65D33/38
B29C45/26
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019221740
(22)【出願日】2019-12-06
(65)【公開番号】P2021091420
(43)【公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000143880
【氏名又は名称】株式会社細川洋行
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100166981
【弁理士】
【氏名又は名称】砂田 岳彦
(72)【発明者】
【氏名】市川 徹
(72)【発明者】
【氏名】小谷 隆行
(72)【発明者】
【氏名】篠原 知也
【審査官】矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-031328(JP,A)
【文献】国際公開第2007/102566(WO,A1)
【文献】特開2013-095487(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 33/38
B29C 45/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器に収容された内容物の排出に用いられる排出用部材と塞ぎ部材とを備える塞ぎ部材付き排出用部材であって、
前記排出用部材は、筒状に形成され、前記容器からの内容物が通り、軸方向における一端部に開口が形成され当該開口の周囲に環状の端面が設けられ、機能性樹脂層が中間層として配置された筒状部を有し
前記塞ぎ部材は、前記環状の前記端面に接触する環状の接触部を有し、前記筒状部の前記一端部に位置する前記開口を塞
前記筒状部の径方向における位置を比べた場合に、前記環状の前記接触部と前記環状の前記端面とが接触する接触箇所の方が、前記機能性樹脂層よりも、当該筒状部の軸心に近い側に位置する、
塞ぎ部材付き排出用部材。
【請求項2】
容器に収容された内容物の排出に用いられる排出用部材と塞ぎ部材とを備える塞ぎ部材付き排出用部材であって、
前記排出用部材は、
筒状に形成され、前記容器からの内容物が通り、軸方向における一端部に開口が形成され当該開口の周囲に環状の端面が設けられた筒状部であって、機能性樹脂層が中間層として配置された筒状部材が設けられた筒状部と、
前記筒状部材の前記一端部の端面を覆う樹脂層であって、少なくとも機能性樹脂層を覆う樹脂層と、
を有し、
前記塞ぎ部材は、前記樹脂層に接触する環状の接触部を有し、前記筒状部の前記一端部に位置する前記開口を塞
塞ぎ部材付き排出用部材。
【請求項3】
前記樹脂層の面であって前記接触部と接触する面は、前記筒状部材の前記一端部の前記端面に対して傾いていないことを特徴とする請求項2に記載の塞ぎ部材付き排出用部材。
【請求項4】
前記樹脂層の面であって前記接触部と接触する面は、前記筒状部材の前記一端部の前記端面に対して平行であることを特徴とする請求項2または3に記載の塞ぎ部材付き排出用部材。
【請求項5】
内容物を収容する容器と、当該容器に取り付けられ当該容器内の内容物の排出に用いられる塞ぎ部材付き排出用部材と、を備え、当該塞ぎ部材付き排出用部材が請求項1乃至4の何れか1項に記載の塞ぎ部材付き排出用部材を含んで構成された収容容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塞ぎ部材付き排出用部材および収容容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内容物を収容する容器に対して排出用部材が取り付けられ、容器に収容された内容物を、この排出用部材を通して、容器の外部へ排出させる構成が知られている。
特許文献1には、樹脂層の酸素透過度が、10000mL・μm/m2・24hrs・MPa(23℃・65%RH)以下であり、且つ樹脂層の水蒸気透過度が、1000g・μm/m2・24hrs(38℃・90%RH)以下であり、筒状成形体が、容器内の内容物を外部に注出させるための注出流路を形成する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-141061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
内容物を収容する容器に対して排出用部材が取り付けられ、容器に収容された内容物を、この排出用部材を通して、容器の外部へ排出させることがある。
ここで、機能性樹脂層を排出用部材に設けると、例えば、内容物に影響を与えうる成分や光線が排出用部材を通りにくくなり、容器に収容された内容物の品質をより長期に亘って保てる。その一方で、機能性樹脂層の設置位置によっては、例えば、機能性樹脂層が水分の影響を受けて機能性樹脂層の機能が低下し、内容物の品質の維持が難しくなることも想定される。
本発明の目的は、機能性樹脂層の機能の低下を抑制し、容器に収容された内容物の品質をより長期に亘って保てるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明が適用される排出用部材は、容器に収容された内容物の排出に用いられる排出用部材であって、前記容器に取り付けられる被取り付け部と、筒状に形成され、前記容器からの内容物が通り、径方向における内側に、機能性樹脂層が中間層として配置された筒状部材が設けられた筒状部と、を備え、前記筒状部材に設けられた前記機能性樹脂層が、当該筒状部材の外周面および内周面のうちの当該外周面側に寄せられて配置されている排出用部材である。
【0006】
ここで、前記筒状部を前記内容物が通る際、当該内容物は、一方向へ移動して当該筒状部の軸方向における一端部側へ向かい、前記筒状部には、前記筒状部材の径方向における外側に、筒状に形成され当該筒状部材を支持する筒状部本体が設けられ、前記筒状部本体の前記一方向における下流側に位置する下流側端面と、前記筒状部材の当該一方向における下流側に位置する下流側端面との位置を比べた場合に、当該筒状部材の当該下流側端面の方が、当該筒状部本体の当該下流側端面よりも、前記筒状部の軸方向における他端部側に位置することを特徴とすることができる。
また、前記機能性樹脂層は、前記筒状部材の軸方向に沿って形成されるとともに当該筒状部材の前記下流側端面まで達するように設けられ、前記筒状部材の前記下流側端面のうちの、前記機能性樹脂層が達する部分が、当該下流側端面に対向配置された樹脂層により覆われていることを特徴とすることができる。
また、前記筒状部材は、前記下流側端面とは反対側に上流側端面を有し、前記機能性樹脂層は、前記筒状部材の前記上流側端面まで達するように設けられ、前記筒状部材の前記上流側端面のうちの、前記機能性樹脂層が達する部分が、当該上流側端面に対向配置された樹脂層により覆われていることを特徴とすることができる。
また、中間層として配置された前記機能性樹脂層は、当該機能性樹脂層よりも内側に位置する他の層よりも酸素透過度が低く、当該機能性樹脂層よりも外側に位置する他の層よりも酸素透過度が低く、酸素の透過を抑制する層であることを特徴とすることができる。
【0007】
また、本発明を収容容器と捉えた場合、本発明が適用される収容容器は、内容物を収容する容器と、当該容器に取り付けられ当該容器内の内容物の排出に用いられる排出用部材と、を備え、当該排出用部材が上記の何れかに記載の排出用部材を含んで構成された収容容器である。
【0008】
また、本発明を排出用部材の製造方法と捉えた場合、本発明が適用される排出用部材の製造方法は、容器に収容された内容物の排出に用いられ内周面および外周面を有し機能性樹脂層が中間層として配置された筒状部材が設けられた排出用部材の製造方法であって、基端側に大径部を有するコアピンの先端側から、前記機能性樹脂層が中間層として配置され且つ当該機能性樹脂層が前記外周面側に寄せられて配置された前記筒状部材の取り付けを行うとともに、当該大径部のうちの当該コアピンの径方向に沿って延びる面に対して当該筒状部材を突き当て、当該コアピンへの当該筒状部材の取り付けを行う取り付け工程と、前記筒状部材が取り付けられた状態の前記コアピンの周囲の空間に溶融樹脂を充填する充填工程と、を有する排出用部材の製造方法である。
【0009】
ここで、前記径方向に沿って延びる面は、前記コアピンの軸方向と直交する方向に沿って延び、前記取り付け工程では、前記コアピンの軸方向と直交する方向に沿って延びる前記面に、前記筒状部材が突き当てられることを特徴とすることができる。
また、前記大径部の外径の方が、前記筒状部材の外径よりも小さく、前記径方向に沿って延びる前記面に対し、当該筒状部材の端面の一部が突き当てられることを特徴とすることができる。
また、前記大径部には、前記径方向に沿って延びる前記面である第1の面に接続され前記筒状部材の前記端面から離れる方向に沿って延びる第2の面が設けられ、前記充填工程では、前記離れる方向に沿って延びる前記第2の面の周囲の空間にも、溶融樹脂が充填され、前記離れる方向に沿って延びる前記第2の面は、前記コアピンの軸方向に沿って配置され、又は、当該コアピンの基端側へ向かって進むに従い当該コアピンの軸心から離れる方向へ向かうように傾斜した状態で形成されていることを特徴とすることができる。
また、前記機能性樹脂層の内径よりも前記大径部の外径の方が小さいことを特徴とすることができる。
また、前記大径部の外径の方が、前記筒状部材の外径よりも小さく、前記径方向に沿って延びる前記面である第1の面に対して前記筒状部材の端面が突き当たる際、当該筒状部材のうちの前記機能性樹脂層よりも径方向における内側に位置する部分が当該第1の面に突き当たり、当該機能性樹脂層が、当該第1の面に接触しないことを特徴とすることができる。
また、前記大径部の外径が、前記筒状部材の外径と内径との和を2で割った値よりも小さいことを特徴とすることができる。
【0010】
また、本発明を射出成形用金型と捉えた場合、本発明が適用される射出成形用金型は、容器に収容された内容物の排出に用いられ内周面および外周面を有し機能性樹脂層が中間層として配置された筒状部材が設けられた排出用部材の製造に用いる射出成形用金型であって、棒状に形成され、径方向に沿って延びる面が形成された大径部を基端側に有し、前記機能性樹脂層が中間層として配置され且つ前記外周面側に当該機能性樹脂層が寄せられて配置された前記筒状部材の取り付けが先端側から行われ、先端側から取り付けられた当該筒状部材が当該径方向に沿って延びる当該面に突き当てられるコアピンと、前記コアピンの周囲に配置され、溶融樹脂を充填するための空間を当該コアピンとの間に形成する型と、を備える射出成形用金型である。
【0011】
また、本発明を排出用部材と捉えた場合、本発明が適用される排出用部材は、容器に収容された内容物の排出に用いられる排出用部材であって、筒状に形成され、前記容器からの内容物が通り、軸方向における一端部に開口が形成され当該開口の周囲に環状の端面が設けられ、機能性樹脂層が中間層として配置された筒状部と、前記環状の前記端面に接触する環状の接触部を有し、前記筒状部の前記一端部に位置する前記開口を塞ぐ塞ぎ部材と、を備える、塞ぎ部材付き排出用部材である。
【0012】
ここで、前記筒状部の径方向における位置を比べた場合に、前記環状の前記接触部と前記環状の前記端面とが接触する接触箇所の方が、前記機能性樹脂層よりも、当該筒状部の軸心に近い側に位置することを特徴とすることができる。
また、前記機能性樹脂層は、前記筒状部の前記端面まで達しておらず、当該機能性樹脂層の当該端面側の端部と、前記接触部が接触する当該端面との間に、樹脂層が設けられていることを特徴とすることができる。
【0013】
また、本発明を収容容器と捉えた場合、本発明が適用される収容容器は、内容物を収容する容器と、当該容器に取り付けられ当該容器内の内容物の排出に用いられる塞ぎ部材付き排出用部材と、を備え、当該塞ぎ部材付き排出用部材が上記の何れかに記載の塞ぎ部材付き排出用部材を含んで構成された収容容器である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、機能性樹脂層の機能の低下を抑制し、容器に収容された内容物の品質をより長期に亘って保てるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態に係る収容容器を示した図である。
図2】排出用部材を説明する図である。
図3図2のIII-III線の断面図である。
図4】排出用部材の成形に用いる、射出成形金型の雄型を示した図である。
図5】コアピンに対して、筒状部材が取り付けられた後の状態を示した図である。
図6】(A)~(C)は、排出用部材の製造工程を示した図である。
図7】比較例を示す図である。
図8】収容容器の他の構成例を示した図である。
図9】収容容器の他の構成例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る収容容器1を示した図である。
本実施形態の収容容器1には、容器10と、排出用部材20と、塞ぎ部材(キャップ)30が設けられている。
容器10は、密閉された袋体により構成されている。より具体的には、容器10は、樹脂フィルムとアルミニウム等のガスバリアー性の高い(酸素透過度及び水蒸気透過度の低い)材料とが積層された積層フィルムによって形成されている。
【0017】
排出用部材20は、樹脂材料からなる成形品である。排出用部材20は、容器10に取り付けられる。排出用部材20とは、容器10に収容された内容物が容器10の外部へ排出される際にこの内容物が通る部材である。本実施形態では、容器10内の内容物は、容器10に取り付けられたこの排出用部材20を通って、収容容器1の外部へ排出される。
ここで、内容物としては、ゼリー飲料、フルーツピューレ、ベビーフード、ケチャップなどの流動体(粘度の高い液体)や、水、ジュースなどの液体(粘度が低い液体)が一例に挙げられる。また、内容物としては、食品に限らず、食品以外のものであってもよい。
塞ぎ部材30とは、排出用部材20に設けられた開口を通過しようとする内容物の移動を規制する機能を有する部材であり、本実施形態では、塞ぎ部材30により、排出用部材20に設けられた開口が塞がれ、内容物の移動が規制される(容器10の外部への内容物の排出が規制される)。
【0018】
図2は、排出用部材20を説明する図である。
排出用部材20には、容器10(図1参照)に取り付けられる被取り付け部21が設けられている。
被取り付け部21とは、排出用部材20のうちの容器10に対して取り付けられる箇所を指す。この被取り付け部21は、容器10(図1参照)の内部に差し込まれる。また、本実施形態では、いわゆる溶着によって、この被取り付け部21に対して、容器10の内面が固定される。
【0019】
さらに、排出用部材20には、円筒状の筒状部22が設けられている。
筒状部22とは、貫通孔が形成され中空の形状となっている部位を指す。本実施形態では、容器10から内容物の排出が行われる際、容器10からの内容物は、この筒状部22を通る。
より具体的には、本実施形態では、筒状部22を内容物が通る際、この内容物は、筒状部22の軸方向における一端部22A側へ向かい、この一端部22A側から排出される。
【0020】
より具体的には、本実施形態では、筒状部22を内容物が通る際、この内容物は、筒状部22の軸方向における他端部22B側から筒状部22の内部へ入り、その後、筒状部22の軸方向における一端部22A側から排出される。
より具体的には、本実施形態では、筒状部22の他端部22B側に、開口22C(以下、「他端部側開口22C」と称する)が形成され、本実施形態では、この他端部側開口22Cを通って、筒状部22の内部に内容物が入る。
【0021】
そして、この内容物は、筒状部22の内部を通った後、筒状部22の一端部22Aに位置する開口22D(以下、「一端部側開口22D」と称する)へ達し、この一端部側開口22Dから筒状部22の外部へ排出される。
また、本実施形態では、図1に示すように、塞ぎ部材30が設けられているが、この塞ぎ部材30は、筒状部22の一端部22A側に取り付けられ、一端部側開口22Dを塞ぐ。
【0022】
本実施形態では、図1に示すように、筒状部22の外周面に、ねじ部22Eが設けられ、また、塞ぎ部材30の内周面にもねじ部(不図示)が設けられている。
本実施形態では、筒状部22、塞ぎ部材30の両者に設けられたねじ部によって、筒状部22に対して、塞ぎ部材30が着脱可能な状態で固定される。
【0023】
さらに、本実施形態では、図2に示すように、筒状部22の外周面から突出する突出部22Fが設けられている。この突出部22Fは、2つ設けられている。
また、この突出部22Fは、筒状部22の径方向に沿うように配置され、また、板状に形成されている。さらに、この2つの突出部22Fは、互いに間隙を有した状態で配置されている。
【0024】
図3は、図2のIII-III線の断面図である。
本実施形態の筒状部22には、機能性樹脂層22Gが中間層として配置されている。この機能性樹脂層22Gは、筒状に形成され、また、筒状部22と同軸上に配置されている。また、機能性樹脂層22Gは、筒状部22の軸方向に沿って配置されている。
より具体的には、本実施形態では、筒状部22には、筒状部本体22Hと、この筒状部本体22Hの内側に設けられた筒状部材22Kとが設けられている。
筒状部材22Kとは、貫通孔が形成され中空になっている部材であり、本実施形態では、この中空になっている部分を内容物が通る。また、筒状部本体22Hとは、筒状部22の基体となる部分であり、本実施形態では、この筒状部本体22Hにより、筒状部材22Kが支持される。
本実施形態では、筒状部22の径方向における内側に、筒状部材22Kが設けられている。また、本実施形態では、筒状部22には、筒状部材22Kの径方向における外側に、筒状に形成され筒状部材22Kを支持する筒状部本体22Hが設けられている。
本実施形態では、この筒状部材22Kに、機能性樹脂層22Gが設けられている。
【0025】
より具体的には、本実施形態では、後述するように、筒状部材22Kの周囲に、溶融樹脂を充填して、筒状部本体22Hを形成する。
この場合、溶融樹脂の充填時に、筒状部材22Kの外周面が溶融する。この場合、その後に、溶融樹脂が硬化すると、筒状部材22Kと、溶融樹脂が硬化することにより形成される筒状部本体22Hとが互いに固定され、筒状部材22Kと筒状部本体22Hとが一体化する。
【0026】
本実施形態では、機能性樹脂層22Gとして、酸素の透過を抑制する層が設けられている。より具体的には、本実施形態では、機能性樹脂層22Gとして、エチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂(EVOH)により構成された層が設けられている。
また、筒状部材22Kには、機能性樹脂層22Gよりも内側に位置する他の層の一例としての内側層22Mと、機能性樹脂層22Gよりも外側に位置する他の層の一例としての外側層22Nとが設けられている。
【0027】
内側層22Mや外側層22Nは、ポリエチレンやポリプロピレンなどの樹脂により構成される。
ポリエチレンとしては、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)などを一例に挙げることができる。これらの中でも水蒸気透過度や剛性に優れる点等からHDPEまたはPPが好ましいと言える。
HDPEまたはPPを選択することによって、排出用部材20の水蒸気透過度が低く(水蒸気が透過しづらく)なるので、内容物に含まれる水分や外気に含まれる水分の影響による機能性樹脂層22Gのガスバリア性の低下を防ぐことができる。
更に、収容容器1に内容物を充填した後にレトルト殺菌する場合は、殺菌処理温度に応じて内側層22M、外側層22N及び接着剤層の樹脂を選定する必要がある。
殺菌処理温度100度未満であるボイル殺菌の場合及び殺菌処理温度が100℃以上120℃未満であるレトルト殺菌の場合は、PE系及びPP系どちらでも使用できる。一方、殺菌処理温度が120℃以上のレトルト殺菌場合は、樹脂の耐熱性の関係でPP系の樹脂を選定することが好ましい。
ここで、エチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂(EVOH)の酸素透過度(機能性樹脂層22Gの酸素透過度)は、ポリエチレンやポリプロピレンなどの樹脂の酸素透過度よりも小さく(低く)、本実施形態では、機能性樹脂層22Gが、主に酸素等の気体の透過を抑制するガスバリア層として機能する。
なお、本実施形態では、筒状部本体22Hも、ポリエチレンやポリプロピレンの樹脂により構成されている。
【0028】
また、図示は省略するが、機能性樹脂層22Gと外側層22Nとの間には、機能性樹脂層22Gと外側層22Nとを接着する接着剤層(接着剤樹脂)が設けられている。
また、機能性樹脂層22Gと内側層22Mとの間にも、機能性樹脂層22Gと内側層22Mとを接着する接着剤層が設けられている。
【0029】
この接着剤層を形成する接着性樹脂としては、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、およびエチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)などのエチレン系樹脂や、プロピレン単独重合体、およびプロピレンと他のα-オレフィンとの共重合体などのプロピレン系樹脂に、アクリル酸、あるいは、メタアクリル酸などの一塩基性不飽和脂肪酸、またはメチルアクリレート、メチルメタアクリレート、若しくはグリシジルメタアクリレートなどの一塩基性不飽和脂肪酸のエステル化合物、またはマレイン酸、フマル酸若しくはイタコン酸などの二塩基性脂肪酸の無水物などを化学的に結合させたポリオレフィン系接着性樹脂が好適に用いられる。
接着性樹脂の具体例としては、三井化学社製の商品名「アドマー」や三菱ケミカル社製の商品名「モディック」等を例示することができる。
【0030】
本実施形態の筒状部材22Kは、外側層22N、接着剤層、機能性樹脂層22G、接着剤層、内側層22Mを有し、5層構造となっている。
機能性樹脂層22Gの厚みは、好ましくは10μm~300μm、より好ましくは20μm~250μmである。外側層22Nの厚みは、好ましくは50μm~300μm、より好ましくは100μm~250μmである。内側層22Mの厚みは、好ましくは150μm~500μm、より好ましくは200μm~400μmである。接着剤層の厚みは、好ましくは10μm~50μm、より好ましくは15μm~40μmである。
また、内側層22Mの厚みは、少なくとも筒状部材22Kを形成する層の中で最も厚くする必要がある。また、内側層22Mの厚みは、外側層22Nの厚みに対して、少なくとも1.3倍以上あることが好ましい。
内側層22Mが厚ければ、水蒸気透過度が低くなり、内容物の湿度の影響を受けて機能性樹脂層22Gのガスバリア性が低下することを防止できる。
また、本実施形態の筒状部材22Kは、いわゆる押し出し成形により形成する。より具体的には、押し出し成形により形成した長尺状の部材を、予め定められた長さに切断することで、筒状部材22Kを形成する。
【0031】
より具体的には、本実施形態では、蒸気や熱水によって、内容物が収容された後の収容容器1の全体の殺菌が行われる場合があり、この場合、収容容器1は、水分に晒される。
この場合に、外側層22Nや内側層22Mの厚みが小さいと、水分が、外側層22Nや内側層22Mを通って機能性樹脂層22Gに達しやすくなる。
【0032】
この場合、機能性樹脂層22Gは、水分に弱く、水分の影響を受けると、その機能が低下し、酸素透過度が上昇しやすくなる。
これに対し、機能性樹脂層22Gの厚みを大きくせず、外側層22Nや内側層22Mの厚みが大きい状態にあると、機能性樹脂層22Gへ水分が達しにくくなり、機能性樹脂層22Gの性能が維持される。
【0033】
なお、本実施形態では、機能性樹脂層22Gとして、エチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂により構成された層を設けたが、これに限らず、機能性樹脂層22Gとして、例えば、PVA(Poly Vinyl Alchol)により構成された層を設けてもよい。この場合も、同様に、酸素の透過の抑制を行える。
また、機能性樹脂層22Gとして、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)により構成された層や、アルミニウム等の金属材料により構成された層を設けてもよい。
【0034】
また、本実施形態では、機能性樹脂層22Gとして、酸素の透過を抑制する層を設けた場合を一例に説明したが、これに限らず、機能性樹脂層22Gとして、例えば、紫外線などの光の透過を抑制する層を設けてもよい。
【0035】
本実施形態のように、筒状部22に対して、酸素の透過を抑制する機能性樹脂層22Gを設けると、筒状部22の外側から筒状部22の内側への酸素の移動が抑制される。また、収容容器1の外部の酸素が、筒状部22の内側へ侵入することが抑制される。
これにより、筒状部22の内部にて内容物が酸化することが抑制される。
なお、本実施形態では、容器10については、上記のとおり、アルミニウム等のガスバリアー性の高い材料が設けられおり、容器10においては、このガスバリアー性の高い材料により、酸素の透過が抑制される。
【0036】
また、本実施形態では、図3の符号3Xで示すように、筒状部22の内周面22P且つ筒状部22の先端部に、第1の径L1を有する第1内径部23Aが設けられている。
また、第1内径部23Aよりも筒状部22の一端部22A側に、第2内径部23Bが設けられている。
第2内径部23Bは、第1の径L1よりも大きい第2の径L2を有する。
【0037】
さらに、本実施形態では、第1内径部23Aと第2内径部23Bとを接続する接続面23Cが設けられている。
より具体的には、第1内径部23Aの端部(筒状部22の一端部22Aに近い側に位置する端部)と、第2内径部23Bの端部(筒状部22の他端部22B(図2参照)に近い側に位置する端部)とを接続する接続面23Cが設けられている。
この接続面23Cは、筒状部22の径方向に沿って延びるように配置されている。より具体的には、この接続面23Cは、筒状部22の軸方向と直交する方向に沿って延びている。
【0038】
また、本実施形態では、筒状部22の内周面22Pのうちの、第1内径部23Aに位置する部分は、筒状部22の軸方向に沿うように形成されている。
また、本実施形態では、筒状部22の内周面22Pのうちの、第2内径部23Bに位置する部分も、筒状部22の軸方向に沿うように形成されている。
なお、筒状部22の内周面22Pのうちの、第2内径部23Bに位置する部分は、破線3Aで示すように、筒状部22の一端部22A側へ進むに従い筒状部22の径方向における外側方向へ向かうように傾斜させてもよい。
【0039】
さらに、本実施形態では、筒状部22の径方向における位置を比べた場合に、機能性樹脂層22Gの方が、接続面23Cと第2内径部23Bとの接続部Xよりも、筒状部22の径方向における外側に位置する。
また、本実施形態では、筒状部22の軸方向における位置を比べた場合に、筒状部22の一端部22A側に位置する端面22Tよりも、機能性樹脂層22Gのこの一端部22A側に位置する端部22Sの方が、筒状部22の他端部22B(図2参照)に近い側に位置する。
【0040】
また、本実施形態では、図3の符号3Xで示すように、筒状部材22Kに設けられた機能性樹脂層22Gが、筒状部材22Kの外周面K1および内周面K2のうちの、外周面K1側に寄せられて配置されている。
また、本実施形態では、内周面K2の径LXと外周面K1の径LYとを足した値を2で割った値の径を有する仮想の円3Cよりも、この円3Cの径方向における外側に、機能性樹脂層22Gが位置する。
また、本実施形態では、内側層22Mの厚みの方が、外側層22Nの厚みよりも大きくなっている。
【0041】
ここで、本実施形態では、機能性樹脂層22Gが設けられており、これにより、筒状部22の外側から筒状部22の内側への酸素の移動が抑制される。また、収容容器1の外部の酸素が、筒状部22の内側へ移動することが抑制される。
これにより、筒状部22の内部にて内容物が酸化することが抑制される。
【0042】
さらに、本実施形態では、機能性樹脂層22Gが、外周面K1側に寄せられて配置されており、内周面K2側に寄せられて配置されている場合に比べ、内容物の影響を受けにくくなっている。
ここで、機能性樹脂層22Gが、内周面K2側に寄せられて配置されていると、内側層22Mの厚みが薄くなり、内容物に含まれる水分が、薄いこの内側層22Mを通って、機能性樹脂層22Gに達しやすくなる。
【0043】
この場合、機能性樹脂層22Gの酸素透過度が大きくなる。機能性樹脂層22Gは水分による影響を受けやすく、機能性樹脂層22Gが、内周面K2側に寄せられて配置されていると、内容物に含まれる水分が、機能性樹脂層22Gに達しやすくなり、機能性樹脂層22Gの酸素透過度が大きくなる。
これに対し、本実施形態のように、機能性樹脂層22Gが外周面K1側に寄り、内側層22Mが厚くなる構成であると、機能性樹脂層22Gは、水分による影響を受けにくくなり、機能性樹脂層22Gの酸素透過度が大きくなることが抑制される。
【0044】
さらに、本実施形態では、筒状部22を内容物が通る際、この内容物は、一方向(図3における上方)へ移動して筒状部22の軸方向における一端部22A側へ向かう。
さらに、本実施形態では、筒状部本体22Hに下流側端面K3が設けられている。下流側端面K3は、筒状部本体22Hが有する2つの端面のうちの、上記の一方向における下流側に位置する端面である。
また、本実施形態では、筒状部材22Kにも下流側端面K4が設けられている。下流側端面K4は、筒状部材22Kが有する2つの端面のうちの、上記の一方向における下流側に位置する端面である。
そして、本実施形態では、この2つの下流側端面K3,K4の位置を比べた場合に、筒状部材22Kの下流側端面K4の方が、筒状部本体22Hの下流側端面K3よりも、筒状部22の他端部22B(図2参照)側に位置する構成となっている。
【0045】
さらに、本実施形態では、機能性樹脂層22Gは、筒状部材22Kの軸方向に沿って形成されるとともに筒状部材22Kの下流側端面K4まで達するように設けられている。
さらに、本実施形態では、筒状部材22Kの下流側端面K4のうちの、機能性樹脂層2Gが達する部分3Sが、この下流側端面K4に対向配置された樹脂層3Gにより覆われている。より具体的には、機能性樹脂層2Gが達する部分3Sは、筒状部本体22Hを構成する樹脂材料により覆われている。
【0046】
また、本実施形態では、筒状部材22Kは、下流側端面K4とは反対側に上流側端面K5を有する。そして、本実施形態では、機能性樹脂層22Gは、筒状部材22Kのこの上流側端面K5まで達するように設けられている。
さらに、本実施形態では、筒状部材22Kの上流側端面K5のうちの、機能性樹脂層22Gが達する部分3Tが、この上流側端面K5に対向配置された樹脂層3Hにより覆われている。より具体的には、機能性樹脂層22Gが達する部分3Tは、筒状部本体22Hを構成する樹脂材料により覆われている。
【0047】
なお、本実施形態のように、機能性樹脂層22Gが外周面K1側に寄り、外側層22Nの厚さが内側層22Mの厚さよりも小さくなる場合は、外側層22Nを構成する材料の収縮率(温度が所定の単位温度だけ低下した際の収縮率)が、内側層22Mを構成する材料の収縮率(温度が所定の単位温度だけ低下した際の収縮率)よりも大きくなるように、外側層22Nを構成する材料、内側層22Mを構成する材料の各々を選定することが好ましい。
【0048】
なお、外側層22Nを構成する材料、内側層22Mを構成する材料としては、互いに種類の異なる材料を用いてもよいし、例えば、同じ材料であって密度が互いに異なる材料を用いてもよい。
本実施形態のように、内側層22Mの厚さが外側層22Nの厚さよりも大きい場合において、内側層22M、外側層22Nの材料として同じ材料を用いると、内側層22Mの変形の程度が外側層22Nの変形の程度よりも大きくなり、筒状部材22Kの胴部が外側に向かって突出するなど、筒状部材22Kが変形するおそれがある。
これに対し、外側層22Nを構成する材料の収縮率が、内側層22Mを構成する材料の収縮率が大きいと、この変形の度合いが小さくなる。
【0049】
また、その他に形態として、機能性樹脂層22Gを、筒状部22の内周面22Jおよび外周面22Lのうちの、外周面22L側に寄せて設けるようにしてもよい。
機能性樹脂層22Gを、筒状部22の外周面22L側に寄せると、機能性樹脂層22Gが、筒状部22の内部の内容物からさらに離れるようになり、機能性樹脂層22Gが、この内容物の水分の影響をさらに受けにくくなる。
なお、機能性樹脂層22Gを、筒状部22の外周面22L側に寄せる場合には、例えば、筒状部本体22Hの肉厚を小さくし、また、筒状部材22Kの外周面K1の径を大きくする。
【0050】
排出用部材20の製造方法について説明する。
図4は、排出用部材20の成形に用いる、射出成形金型の雄型41を示した図である。
雄型41には、基台42が設けられるとともに、この基台42から突出する円柱状のコアピン43が設けられている。
本実施形態では、このコアピン43の基端(根本)43X側に、大径部43Aが設けられ、また、この大径部43Aよりもコアピン43の先端部43Y側に、小径部43Bが設けられている。本実施形態は、この小径部43Bの外径よりも、大径部43Aの外径の方が大きくなっている。
【0051】
ここで、大径部43Aが有する面のうち、コアピン43の先端部43Y側に位置する面(コアピン43の先端部43Y側を向く面)(以下、「先端面43C」と称する)は、コアピン43の径方向に沿って延びるよう配置されている。
本実施形態では、大径部43Aの外面の一部を構成する面であるこの先端面43C(第1の面の一例)は、コアピン43の径方向に沿って延びるよう配置されている。より具体的には、コアピン43の軸方向と直交する方向に沿って延びるように配置されている。
【0052】
本実施形態では、排出用部材20の製造にあたり、まず、矢印4Aで示すように、コアピン43に対して、上記にて説明した筒状部材22Kを取り付ける。
より具体的には、本実施形態では、コアピン43の先端部43Y側からこのコアピン43への筒状部材22Kの取り付けを行う。より具体的には、筒状部材22Kの内側にコアピン43を通すようにして、コアピン43への筒状部材22Kの取り付けを行う。
【0053】
また、本実施形態では、コアピン43への筒状部材22Kの取り付けにあたり、大径部43Aに設けられた上記の先端面43Cに対して、筒状部材22Kの端面Yを突き当てる。
ここで、本実施形態では、筒状部材22Kのこの端面Yは、筒状部材22Kの径方向に沿って延びるように配置されている。言い換えると、筒状部材22Kのこの端面Yは、筒状部材22Kの軸方向と直交する方向に沿って延びるように配置されている。
【0054】
また、本実施形態では、コアピン43の先端部43Yに対し、先端に向かって細くする処理(テーパ処理)を行っており(コアピン43の先端部43Yにテーパ形状を付与しており)、コアピン43への筒状部材22Kの取り付けを容易に行える。
また、コアピン43の先端部43Yにテーパ形状を付与すると、コアピン43の先端部43Yが、筒状部材22Kに接触しにくくなり、筒状部材22Kが削られることが抑制される。この場合、筒状部材22Kが削られることにより生じる異物の内容物への混入を抑制できる。
【0055】
なお、コアピン43の基端(根本)43X(基端43Xのうちの大径部43Aよりも先端部43Y側に位置する部分)の外径を外径a、コアピン43の先端部43Y(先端部43Yのうちのテーパ形状が付与されている部分よりも基端43X側に位置する部分)の外径を外径b、筒状部材22Kの一端部(コアピン43に取り付けられる際に移動する筒状部材22Kの移動方向下流側に位置する端部)の内径を内径c、筒状部材22Kの他端部(筒状部材22Kの移動方向上流側に位置する端部)の内径を内径dとした場合に、外径aと内径cとの寸法差、外径bと内径dとの寸法差の各々を、好ましくは0~0.2mm、より好ましくは0.05~0.15mmとするとよい。
寸法差が、これらの範囲の下限値以下だと、筒状部材22Kをコアピン43に取り付けにくい又は取り付けることができない状態となる。
また、上限値以上だと、溶融樹脂が、筒状部材22Kとコアピン43との間に入ってしまうおそれがある。この場合、筒状部材22Kの内部に、樹脂が付着した状態となり、この樹脂がその後に脱落して、異物混入の原因となるおそれがある。
【0056】
また、コアピン43への筒状部材22Kの取り付けを容易にするため、コアピン43の外面および筒状部材22Kの内面にテーパを付与し、外径a>外径b、内径c>内径dとしてもよい。
ここで、本実施形態の筒状部材22Kは、押し出し成形により形成するため、内径c=内径dとなっているが、これに限らず、上記のように、コアピン43への筒状部材22Kの取り付けを容易にするため、内径c>内径dとしてもよい。
【0057】
図5は、コアピン43に対して、筒状部材22Kが取り付けられた後の状態を示した図である。
本実施形態では、図5に示すように、大径部43Aの外径G1の方が、筒状部材22Kの外径G2よりも小さく、コアピン43の先端面43Cに対し、筒状部材22Kの端面Yの一部が突き当てられる。
本実施形態では、端面Yは、環状に形成されており、本実施形態では、コアピン43の先端面43Cに対し、環状の端面Yの一部が突き当たる。
【0058】
さらに説明すると、本実施形態では、筒状部材22Kに設けられた機能性樹脂層22Gの内径G3よりも、大径部43Aの外径G1の方が小さくなっている。
このため、本実施形態では、筒状部材22Kのうち、機能性樹脂層22Gよりも径方向における内側に位置する部分が、先端面43Cに突き当たる。
【0059】
本実施形態では、第1の面の一例である先端面43Cに対して筒状部材22Kの端面Yが突き当たる際、筒状部材22Kのうち、機能性樹脂層22Gよりも径方向における内側に位置する部分が、この先端面43Cに突き当たる。
機能性樹脂層22Gについては、先端面43Cに接触しない。
本実施形態では、機能性樹脂層22Gの端部22Sの対向位置に、先端面43Cが位置せず、機能性樹脂層22Gの端部22Sが、露出した状態となる。
【0060】
さらに、本実施形態では、コアピン43の大径部43Aに、第2の面の一例である外周面22Zが設けられている。この外周面22Zは、第1の面の一例である先端面43Cに接続されている。
また、この外周面22Zは、コアピン43に取り付けられた状態にある筒状部材22Kの端面Yから離れる方向に沿って延びるように形成されている。
また、外周面22Zは、先端面43Cとの接続部を始点とした場合に、筒状部材22Kの端面Yから離れる方向に向かうように形成されている。
【0061】
また、外周面22Zは、コアピン43の軸方向に沿って配置されている。
なお、これに限らず、符号5Aで示すように、外周面22Zは、コアピン43の基端43X側に向かって進むに従い、コアピン43の軸心G8から離れる方向へ向かうように傾斜させてもよい。
この場合、図3における破線3Aで示したように、筒状部22の内周面22Pのうちの、第2内径部23Bに位置する部分が傾斜する。
本実施形態では、後に説明する充填工程において、この外周面22Z(図5参照)の周囲の空間にも溶融樹脂が充填される。
【0062】
なお、大径部43A(図5参照)の外周面22Zを傾斜させる場合、この外周面22Zの傾斜角度α(コアピン43の軸方向と直交する方向に対する傾斜角度)は、60°よりも大きくすることが好ましい。
60°よりも大きいと、筒状部材22Kの端面Yと外周面22Zとの間に形成されるくさび状の領域R5の先端角度を大きくでき、このくさび状の領域R5に溶融樹脂が充填されにくくなるなどの不具合が生じにくくなる。
【0063】
さらに、本実施形態では、大径部43Aの外径G1が、筒状部材22Kの外径G2と内径G5との和を2で割った値よりも小さくなっている。
これにより、本実施形態では、大径部43Aの外周面22Zが、筒状部材22Kの内周面23Mと外周面23Nとの間に位置する中間地点Cよりも、コアピン43の軸心G8に近い側に位置するようになる。
【0064】
ここで、大径部43Aの外径G1が、筒状部材22Kの外径G2と内径G5との和を2で割った値よりも大きいと、コアピン43の大径部43Aの外周面22Zが、機能性樹脂層22Gに近づくようなり、場合によっては、機能性樹脂層22Gの端部22Sの対向位置に、大径部43Aが位置してしまう。
より具体的には、筒状部材22Kの位置ずれや筒状部材22Kの寸法誤差などが想定され、この場合、機能性樹脂層22Gの端部22Sの対向位置に、大径部43Aが位置することが起こりうる。
【0065】
この場合、機能性樹脂層22Gの端部22Sが、樹脂により覆われない事態が生じやすくなる。そして、この場合、機能性樹脂層22Gの端部22Sが露出し、機能性樹脂層22Gが、水分の影響を受けやすくなる。
これに対し、本実施形態のように、大径部43Aの外径G1を、筒状部材22Kの外径G2と内径G5との和を2で割った値よりも小さくすると、機能性樹脂層22Gの端部22Sの対向位置に、大径部43Aが位置することが起こりにくくなる。
そして、この場合、機能性樹脂層22Gの端部22Sが樹脂により覆われないなどの事態が生じにくくなる。
【0066】
図6(A)~(C)は、排出用部材20の製造工程を示した図である。
図6(A)では、雌型80を示している。
雌型80は、左雌型81と右雌型82とにより構成され、左右に分割できるようになっている。雌型80の内部には、キャビティ32が形成されている。
また、雌型80の内面の形状は、排出用部材20(図1参照)の外形形状と同じとなっている。ここで、雌型80には、キャビティ32を16個~48個設けるなど、キャビティ32を複数設けることが好ましい。
【0067】
本実施形態では、キャビティ32内に、コアピン43が入ると(後述)、左雌型81と右雌型82とが、コアピン43の周囲に配置され、左雌型81と右雌型82は、溶融樹脂を充填するための空間をコアピン43との間に形成する。
また、雌型80にはゲート33が設けられ、本実施形態では、射出成形機の射出口からの溶融樹脂は、このゲート33を通ってキャビティ32へ入る。
さらに、本実施形態では、雄型41が、雌型80に対して進退するようになっており、排出用部材20の形成時には、雌型80内に雄型41が配置される。
【0068】
排出用部材20(図1参照)は、射出成形用金型および射出成形機によって形成される。ここで、射出成形用金型は、上記の雄型41と雌型80とにより構成される。
排出用部材20の製造の際には、まず、ロボットなどの自動取り付け装置を用いて、図6(A)に示すように、雄型41のコアピン43に対して筒状部材22Kを取り付ける。このとき、本実施形態では、先端面43C(図5参照)に対してこの筒状部材22Kの端面Y(図5参照)を突き当てる。
【0069】
その後、本実施形態では、図6の(B)に示すように、筒状部材22Kが取り付けた状態のコアピン43を、雌型80のキャビティ32に入れる。
次いで、図6の(C)に示すように、射出成形機を用い、溶融樹脂を、ゲート33を通じてキャビティ32に射出する。これにより、キャビティ32に溶融樹脂が充填される。本実施形態では、筒状部材22Kが取り付けられた状態のコアピン43の周囲の空間に、溶融樹脂が充填される。
【0070】
ここで、溶融樹脂の充填を行うと、筒状部材22Kは、溶融樹脂からの圧力を受け、コアピン43の大径部43A(図5参照)に設けられた先端面43Cへ付勢される。
ここで、本実施形態では、この先端面43Cは、コアピン43の径方向に沿っており、これにより、本実施形態では、この先端面43Cによって、筒状部材22Kが安定的に支持される。
【0071】
ここで、比較例として、図7(比較例を示す図)に示す態様も考えられる。この比較例では、本実施形態の先端面43Cに相当する面400が傾斜している。
この場合、筒状部材22Kの支持が不安定となりやすい。
より具体的には、筒状部材22Kには、寸法のばらつきがあり、この場合、本来の位置よりもコアピン43の基端43X側にて、筒状部材22Kの位置決めが行われたり、コアピン43の径方向に筒状部材22Kがずれた状態で、筒状部材22Kの位置決めが行われたりする。
【0072】
また、先端面43Cに相当する面400が傾斜していると、符号7Aで示すように、鋭角状のくさび状の領域が形成され、このくさび状の領域には、溶融樹脂が入りにくくなる。このように、くさび状の領域に溶融樹脂が入りにくくなると、本来、充填が予定されていた箇所に、溶融樹脂が充填されない事態が生じやすくなる。
そして、この場合、機能性樹脂層22Gの端部22Sが、樹脂により覆われなくなる事態が生じうる。
【0073】
これに対し、本実施形態のように、コアピン43の径方向に沿った先端面43Cに、筒状部材22Kが突き当たる構成では、筒状部材22Kの軸方向における位置ずれが起きにくくなる(コアピン43の基端43X側への筒状部材22Kの移動が起きにくくなる)。この場合、筒状部材22Kが安定的に支持される。
【0074】
また、本実施形態では、図5に示した通り、大径部43Aの外周面22Zがコアピン43の軸方向に沿っており、又は、コアピン43の軸方向と直交する方向に対する外周面22Zの傾斜角度αが、60°よりも大きくなっている。
この場合、くさび状の領域が形成されず、又は、くさび状の領域R5(図5参照)の先端角度は大きくなる。
この場合、充填が予定されている箇所に、溶融樹脂が充填されないという上記の不具合が生じにくくなる。そして、この場合、機能性樹脂層22Gの端部22Sが、樹脂により覆われる。
【0075】
本実施形態では、溶融樹脂の充填を行うと、図6(C)に示すように、外周面22Zの周囲の空間にも溶融樹脂が充填される。
より具体的には、外周面22Zの周囲の空間であって、基台42と筒状部材22Kの端面Yとの間に位置する空間に、溶融樹脂が充填される。
【0076】
これにより、本実施形態では、機能性樹脂層22Gの端部22Sが、樹脂により覆われるようになる。
なお、本実施形態では、図6(B)に示すように、機能性樹脂層22Gの他端部22Wも、キャビティ32内に位置しており、機能性樹脂層22Gの他端部22Wも、樹脂により覆われる。
【0077】
ここで、機能性樹脂層22Gの端部(一端部)22Sや他端部22Wが露出した状態にあると、機能性樹脂層22Gが水分による影響を受けやすく、機能性樹脂層22Gの酸素透過度が大きくなる。
具体的には、本実施形態では、上記のとおり、収容容器1への内容物の充填後に、蒸気や熱水によって、収容容器1の全体の殺菌が行われる場合があり、この場合、収容容器1は、水分に晒される。
本実施形態のように、機能性樹脂層22Gの端部22Sや他端部22Wが、樹脂により覆われる構成であると、機能性樹脂層22Gは、水分による影響を受けにくくなり、機能性樹脂層22Gの酸素透過度が大きくなることが抑制される。
【0078】
さらに、本実施形態では、溶融樹脂の充填を行うと、筒状部材22K(図5参照)の外周面23Nが、溶融樹脂からの熱により溶融する。
これにより、本実施形態では、溶融樹脂が後に硬化すると、溶融樹脂が硬化することにより形成される筒状部本体22H(図3参照)と、筒状部材22Kとが互いに固定された状態となる。
その後、本実施形態では、予め定められた時間が経過した後に、雌型80(図6(C)参照)を開いて、完成した排出用部材20を取り出す。
【0079】
図8は、収容容器1の他の構成例を示した図である。
この構成例では、筒状部材22Kの端面Yが、樹脂により覆われずに、露出した状態となっている。
ここで、この構成例においても、上記と同様の製造方法で、排出用部材20を製造する。
但し、図8にて示すこの排出用部材20の製造のあたっては、コアピン43に設ける大径部43A(図5参照)の厚さ(コアピン43の軸方向における厚さ)を小さくしたうえで、また、筒状部材22Kの端面Yのほぼ全面を先端面43C(図5参照)に突き当てたうえで、溶融樹脂の充填を行う。
【0080】
この構成例では、上記と同様に、筒状部22の一端部側開口22Dの周囲に、環状の端面Yが設けられている。また、この構成例では、筒状部材22Kの端面Y(筒状部22の一端部22A側に位置する端面Y)が、樹脂により覆われずに露出している。
さらに、この構成例では、塞ぎ部材30に、環状の端面Yに接触する環状の接触部34が設けられている。
この接触部34は、塞ぎ部材30のうちの、端面Yに対向する対向面30Vから突出している。さらに、この接触部34は、円筒状に形成された塞ぎ部材30と同心軸上に配置され、また、筒状部22と同心軸上に配置されている。
【0081】
また、この構成例では、筒状部22の径方向における位置を比べた場合に、環状の接触部34と環状の端面Yとが接触する接触箇所SP1の方が、機能性樹脂層22Gよりも、筒状部22の軸中心22Rに近い側に位置する。
さらに、この構成例では、塞ぎ部材30の軸中心30R上に、筒状部22側に向かって突出し、その先端が、筒状部22の内側に入り込む円柱状の突出部30Tが設けられている。
【0082】
機能性樹脂層22Gは、上記のとおり、水分による影響を受けやすく、水分が機能性樹脂層22Gへ与えられると、酸素透過度が上昇しやすい。
この構成例では、筒状部22の内部の内容物が、筒状部材22Kの端面Yの対向位置まで移動すると、水分が機能性樹脂層22Gへ与えられる形となり、機能性樹脂層22Gの酸素透過度が上昇しやすい。
【0083】
これに対し、本実施形態では、接触部34が設けられているため、筒状部22の内部の内容物の移動が、この接触部34により規制されるようになり、筒状部材22Kの端面Yと対向面30Vとの間を通って、内容物が機能性樹脂層22Gに達することが起きにくくなる。
本実施形態では、筒状部材22Kの内周面23Mに突出部30Tが接触し、この突出部30Tによっても、機能性樹脂層22Gへの内容部の移動が規制されるが、本実施形態では、接触部34が設けられることによって、機能性樹脂層22Gへの内容物の移動がさらに規制される。
この場合、機能性樹脂層22Gの酸素透過度が上昇することが抑制され、収容容器1に収容された内容物の品質をより長期に亘って保てるようになる。
【0084】
なお、図8にて示した塞ぎ部材30は、図1~3にて示した構成において用いてもよい。
図8にて示した塞ぎ部材30を、図1~3にて示した排出用部材20に対して取り付けると、図9(収容容器1の他の構成例を示した図)に示す構成となる。
この構成では、図8にて示した構成とは異なり、筒状部材22Kの端面Yに対して接触部34が接触するのではなく、溶融樹脂の硬化によって形成された樹脂層220に対して、接触部34が接触する。
図9にて示すこの構成では、筒状部材22Kの端面Yを覆う部分(樹脂層220)に対して、接触部34が接触する。
【0085】
この構成では、機能性樹脂層22Gは、筒状部22の端面22Tまで達しておらず、機能性樹脂層22Gの端部22Sと、接触部34が接触する端面22Tとの間に、筒状部材22Kの端面Yを覆う樹脂層220が設けられている。
そして、この構成では、筒状部材22Kの端面Yを覆うこの樹脂層220に対して、接触部34が接触する。
また、この構成では、上記と同様、筒状部22の径方向における位置を比べた場合に、環状の接触部34と環状の端面22Tとが接触する接触箇所SP2の方が、機能性樹脂層22Gよりも、筒状部22の軸心22Rに近い側に位置している。
【0086】
この構成例でも、符号10Aで示す空間(以下、「空間10A」と称する)への内容物の移動が起きにくくなり、機能性樹脂層22Gへ水分が供給されることが起きにくくなる。
この構成例では、端面Yを覆う樹脂層220を挟み、端部22Sが位置する側とは反対側に、空間10Aが存在するが、この空間10Aへの内容物の移動が起きにくくなる。
【0087】
この場合、この空間10Aへ内容物が達しやすい構成に比べ、機能性樹脂層22Gに水分が供給されることが起きにくくなる。
本実施形態では、基本的に、上記の樹脂層220を設けることで、機能性樹脂層22Gへの水分の供給を抑えることができるが、接触部34を設けることで、機能性樹脂層22Gへの水分の供給をさらに抑えることができる。
【0088】
(その他)
本実施形態では、図6にて説明した処理によって、排出用部材20が製造される。
その後、本実施形態では、製造されたこの排出用部材20が、容器10に取り付けられる。そして、排出用部材20の一端部側開口22D(図2参照)を通じて、容器10の内部に、内容物が充填される。次いで、塞ぎ部材30が取り付けられ、収容容器1が完成する。
【0089】
また、その他に、例えば、排出用部材20が製造されたら、まず、この排出用部材20に塞ぎ部材30を取り付けてもよい。
この場合は、内容物が充填された後の容器10に対して、塞ぎ部材30が取り付けられたこの排出用部材20を取り付け、収容容器1を完成させる。
【符号の説明】
【0090】
1…収容容器、3G…樹脂層、3H…樹脂層、10…容器、20…排出用部材、21…被取り付け部、22…筒状部、22A…一端部、22B…他端部、22G…機能性樹脂層、22H…筒状部本体、22K…筒状部材、22R…軸心、22Z…外周面、23A…第1内径部、23B…第2内径部、23C…接続面、30…塞ぎ部材、34…接触部、41…雄型、43…コアピン、43A…大径部、43C…先端面、K1…外周面、K2…内周面、K3…下流側端面、K4…下流側端面、K5…上流側端面、Y…端面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9