(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-31
(45)【発行日】2024-08-08
(54)【発明の名称】押出ブロー成形のためのポリアミド成形組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 77/00 20060101AFI20240801BHJP
C08K 3/014 20180101ALI20240801BHJP
C08L 23/26 20060101ALI20240801BHJP
B29C 49/02 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
C08L77/00
C08K3/014
C08L23/26
B29C49/02
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019229013
(22)【出願日】2019-12-19
【審査請求日】2022-12-16
(32)【優先日】2018-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】510022808
【氏名又は名称】エーエムエス-パテント アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100168631
【氏名又は名称】佐々木 康匡
(72)【発明者】
【氏名】ボート ホフマン
(72)【発明者】
【氏名】オリヴァー トーマス
(72)【発明者】
【氏名】八田 実
(72)【発明者】
【氏名】藤井 孝昌
【審査官】佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-535164(JP,A)
【文献】特開平06-015783(JP,A)
【文献】特開昭60-177072(JP,A)
【文献】特開2005-042111(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0172484(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
B29C49/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)51~69.9質量%のポリアミドエラストマーであって、
ポリエーテルアミド、ポリエーテルエステルアミド、またはそれらの混合物からなる群から選択され、
PA6、PA66、PA6/66、PA610、PA612、PA614、PA616またはそれらの組合せからなる群から選択されるハードセグメントを有し、且つ
OH-またはNH
2-官能化ポリエーテルセグメントの形態のソフトセグメントを有する、
前記ポリアミドエラストマー、
(B)15~38質量%のエチレン-α-オレフィンコポリマーであって、
α-オレフィンが、ブタ-1-エン、ペンタ-1-エン、ヘキサ-1-エン、ヘプタ-1-エンおよびオクタ-1-エンまたはそれらの組合せからなる群から選択され、且つ
エチレン-α-オレフィンコポリマーが、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸からなる群から選択される少なくとも1つの系でグラフトされており、
ここで、グラフト度が、グラフトエチレン-α-オレフィンコポリマーに対して0.8~2.0質量%である、
前記エチレン-α-オレフィンコポリマー、
(C)PA6、PA66、PA6/66、PA610、PA612、PA614、PA616、PA6/610、PA66/610またはそれらの混合物からなる群から選択される、3~25質量%のポリアミド、
(D)銅および/もしくはヨウ化物、ランタノイド化合物、有機安定剤またはそれらの混合物をベースとする、0.1~2.0質量%の熱安定剤、
(E)(A)から(D)とは異なる、0~5.0質量%の添加剤
からなる熱可塑性成形組成物であって、
(A)から(E)の合計が、全成形組成物の100質量%になり、
ただし、(B)と(C)の合計が、全成形組成物に対して30~48質量%の範囲にあることを条件とする、
熱可塑性成形組成物。
【請求項2】
全成形組成物中の成分(A)の割合が、52~67.8質量%(例えば、53~64.6質量%
または56~63.5質量%
)の範囲にあることを特徴とする、請求項1に記載の成形組成物。
【請求項3】
成分(A)のポリアミドエラストマーのソフトセグメントが、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリテトラヒドロフラン(PTHF)、もしくはそれらの組合せからなる群から選択されること、ならびに/または
成分(A)のポリアミドエラストマーのハードセグメントが、PA6、PA66、PA6/66もしくはそれらの組合せからなる群から選択され
ること、ならびに/または
成分(A)のポリアミドエラストマーもしくは成分(A)のポリアミドエラストマーの混合物が、加熱速度20℃/分でISO11357-3(2013)に従って測定したときに、180~250℃
(例えば、200~220℃
)の範囲の融点、および/もしくはm-クレゾール100ml中にポリマー0.5gの濃度および20℃の温度でISO307(2013)に従って測定したときに、1.40~2.40
(例えば、1.50~2.20
)の範囲の相対粘度を有すること、ならびに/または
ソフトセグメントの数平均モル質量
が、200~5000g/mol
(例えば、400~3000g/mol
)であ
ること
を特徴とする、請求項1または2のいずれかに記載の成形組成物。
【請求項4】
ハードセグメントが、PA6によって専ら形成され;ならびに/または
前記ソフトセグメントがポリエーテルジオールおよび/もしくはポリエーテルジアミンの形態であり、且つポリエーテルジオールおよび/もしくはポリエーテルジアミンの数平均モル質量が、200~5000g/mol(例えば、400~3000g/mol)である、
請求項1から3のいずれか1項に記載の成形組成物。
【請求項5】
前記ソフトセグメントがポリエーテルジオールおよび/もしくはポリエーテルジアミンの形態であり、且つポリエーテルジオールおよび/もしくはポリエーテルジアミンの数平均モル質量が、400~3000g/molであり、ここで、ポリエーテルエステルアミドおよび/もしくはポリエーテルアミド中のソフトセグメントの割合が、5~60質量%(例えば、20~50質量%)である、
請求項1から4のいずれか1項に記載の成形組成物。
【請求項6】
全成形組成物中の成分(B)の割合が、18~36質量%
(例えば、20~33質量%
または25~33質量%
)の範囲にあることを特徴とする、請求項1から
5のいずれか1項に記載の成形組成物。
【請求項7】
成分(B)の全エチレン-α-オレフィンコポリマーが、専ら無水マレイン酸でグラフトされていること、ならびに/または
成分(B)のエチレン-α-オレフィンコポリマーのグラフト度が、0.9~1.6質量%
(例えば、1.0~1.4質量%
)の範囲にあること、ならびに/または
成分(B)が、グラフトエチレン-1-ブテンコポリマーに対して1.1~1.3質量%の範囲のグラフト度で、無水マレイン酸でグラフトされているエチレン-1-ブテンコポリマーから、専らなること、ならびに/または
成分(B)のエチレン-α-オレフィンコポリマーもしくは成分(B)のエチレン-α-オレフィンコポリマーの混合物が、40~80℃
(例えば、60~70℃
)の範囲の融点、および/もしくは-20℃未満
(例えば、-30℃未満
)のガラス転移点、および/もしくはASTM D1238に従って測定して、230℃および2.16kgで、0.5~5.0g/10分
(例えば、0.8~2.0g/10分
もしくは1.0~1.5g/10分
)の範囲のメルトフローインデックス(MFR)を有すること
を特徴とする、請求項1から
6のいずれか1項に記載の成形組成物。
【請求項8】
全成形組成物中の成分(C)の割合が、5~22質量%
(例えば、7~18質量%
または8~15質量%
)の範囲にあることを特徴とする、請求項1から
7のいずれか1項に記載の成形組成物。
【請求項9】
成分(C)のポリアミドが、PA6、PA66、PA6/66、PA610、PA612、PA614、PA616からなる群から選択され
ること、ならびに/または
成分(C)のポリアミドが、3.4~4.2
(例えば、3.6~4.0)(ISO307(2013)、硫酸、1.0質量%、20℃)
の範囲の相対粘度を有すること、ならびに/または
成分(C)のポリアミドが、PA6を含むもしくは専らPA6からなり、このPA6が、3.4~4.2
(例えば、3.5~4.1)(ISO307(2013)、硫酸、1.0質量%、20℃)
の範囲の相対粘度を有すること
を特徴とする、請求項1から
8のいずれか1項に記載の成形組成物。
【請求項10】
成分(C)のポリアミドが、専らPA6から形成されることを特徴とする、請求項1から9のいずれか1項に記載の成形組成物。
【請求項11】
全成形組成物中の成分(D)の割合が、0.2~2.0質量%
(例えば、0.3~2.0質量%
または0.3~1.5質量%
)の範囲にあることを特徴とする、請求項1から
10のいずれか1項に記載の成形組成物。
【請求項12】
成分(D)の熱安定剤が、ヨウ化銅(I)、ヨウ化カリウム、有機安定剤、もしくはそれらの混合物からなる群から選択される系を含むもしくは系からな
ること、または
成分(D)の熱安定剤が、ヨウ化銅(I)、ヨウ化カリウムの混合物を含む、もしくはヨウ化銅(I)、ヨウ化カリウムの混合物によって専ら形成され
ていること、また
は
成分(D)の熱安定剤が、ヨウ化銅(I)、ヨウ化カリウム、酢酸ランタン、水酸化ランタン、酸化ランタン、酢酸セリウム、四水酸化セリウム、酸化セリウム、もしくはそれらの混合物からなる群から選択される系を含むもしくは系からなること
を特徴とする、請求項1から
11のいずれか1項に記載の成形組成物。
【請求項13】
成分(D)の熱安定剤が、ペンタエリトリトールテトラキス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)の形態の、フェノール類からなる群から選択される有機安定剤からなる群から選択される系を含むもしくは系からなること;または
成分(D)の熱安定剤が、ヨウ化銅(I)とヨウ化カリウムの混合物を含むもしくは該混合物によって専ら形成され、ここで、それぞれの場合において全成形組成物に対して、ヨウ化銅(I)の割合が、0.02~0.1質量%の範囲にあり、かつ、ヨウ化カリウムの割合が、0.2~0.6質量%の範囲にあること
を特徴とする請求項1から12のいずれか1項に記載の成形組成物。
【請求項14】
全成形組成物中の成分(E)の割合が、0~4.0質量%
(例えば、0.1~3.0質量%
または0.2~2.5質量%
)の範囲にあること、ならびに/または
成分(E)の添加剤が、以下の群、結晶化促進剤もしくは遅延剤、流動助剤、潤滑剤、脱型剤、顔料、染料およびマーキング物質、加工助剤、帯電防止剤、カーボンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブ、重合工程からの残留物
(例えば、触媒、塩およびそれらの誘導体
)、抗酸化剤、オゾン劣化防止剤、光安定剤、UV安定剤、UV吸収剤もしくはUV遮断剤、IR吸収剤、NIR吸収剤、ブロッキング防止剤、核形成剤、連鎖移動剤、消泡剤、鎖延長添加剤、導電性添加剤、離型剤、
グラフェン、フォトクロミック剤、
光学的増白剤、ならびにまたそれらの混合物および組合せから選択される系を含む、もしくはこれらの系からな
ること
を特徴とする、請求項1から
13のいずれか1項に記載の成形組成物。
【請求項15】
全成形組成物中の成分(E)の割合が、0.2~2.5質量%の範囲にあること;
ならびに/または
成分(E)の添加剤が、以下の群、脱型助剤、光安定剤、顔料、染料、および鎖延長剤(例えば、4質量%を超えるグラフト度を有するアクリル酸修飾ポリオレフィン、および/もしくはポリカーボネートと酸末端ポリアミドとの組合せ)から選択される系を含む、もしくはこれらの系からなり、ここで、化学修飾ポリオレフィンが、グラフトポリエチレンに対して5~7質量%の範囲のグラフト度で、アクリル酸でグラフトされたポリエチレンとして選択されること
を特徴とする、請求項1から14のいずれか1項に記載の成形組成物。
【請求項16】
(B)と(C)の合計が、32~45質量%
(例えば、35~42質量%
または36~41質量%
)の範囲にあることを特徴とする、請求項1から
15のいずれか1項に記載の成形組成物。
【請求項17】
成形組成物が、30~70秒
(例えば、35~60秒
または40~55秒
)の範囲の溶融強度を有すること、ならびに/または
成形組成物が、最大で800MPa(例えば、100~700MPaまたは200~600MPa)(ISO527(2012)、乾燥状態)
の引張弾性率を有すること、ならびに/または
成形組成物が、150℃、交互の圧縮および引張荷重による、少なくとも130万サイクル後の動的機械的応力下で、層間剥離を示さないこと
を特徴とする、請求項1から
16のいずれか1項に記載の成形組成物。
【請求項18】
一体となった成分(A)~(E)を、
押出装置の形態の混合装置中へ、計量して入れることを特徴とする、請求項1から
17のいずれか1項に記載の成形組成物を生成する方法。
【請求項19】
混合装置が、2個以上のスクリューを有する押出装置の形態にある、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
射出成形法、押出
法もしくは共押出法における
請求項1から
17のいずれか1項に記載の成形組成物の使用
。
【請求項21】
押出ブロー成形法もしくは延伸ブロー成形法(例えば、3Dブロー成形法、共押出ブロー成形法、共押出3Dブロー成形法、逐次共押出法、共押出吸引ブロー成形法、および逐次ブロー成形法)における、請求項20に記載の使用であって、先行作業において従来の射出成形によって生成されたプリフォームを、第1の工程段階において加熱し、かつ、プリフォームの加熱の後、プリフォームを型の中へ流し入れるかまたはヒーターを型から取り出し、かつ、型を締めることでボトルネックで縦延伸させてもよく、それによってプリフォームを軸方向に保持し、かつ、その後にガスをプリフォーム中に導入し、圧縮応力下で膨張させ、そうすることで型の輪郭を生成する
前記使用。
【請求項22】
パイプまたは容器の形態
の、請求項1から
17のいずれか1項に記載の成形組成物から作られた成形物
。
【請求項23】
自動車分野での使用のための、中空体またはライン(例えば、自動車のための給気パイプ、平滑もしくはコルゲートであってよい、流体を保持する単層もしくは多層ライン(例えば、燃料ライン、油圧ライン、ブレーキライン、クラッチライン、もしくは冷却液ライン)、ブレーキ液容器、燃料容器)の形態にある、請求項22に記載の成形物であって、
成形物は、その他の熱可塑性材料から作られた、さらなる層を追加的に有してもよく、かかるさらなる1層が、以下の群、PA612、PA610、PA11、PA12、PA1010、PA1012、PA616、PA6、PA66、PA10T/612、PA9T/MT(M=2-メチルオクタン-1,8-ジアミン)、PA46またはそれらの混合物から選択される系からなっていてもよい、成形物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロー成形法にとって適切なポリアミド成形組成物、およびまたかかるポリアミド成形組成物を生成する方法、かかるポリアミド成形組成物から作製された物品、およびかかる成形組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミド全般は、機械的、熱的および耐化学的特性の良好なプロファイルを有するので、自動車製造では、ポリアミド成形組成物から作られたチューブおよびホースを、しばしば使用する。
したがって、例えば、欧州特許出願公開第2325260号は、半芳香族熱可塑性ポリアミドをベースとする、自動車分野における様々なラインシステムを作製するためのポリアミド成形組成物を記載している。
空気を運ぶ部品の作製のために、押出ブロー成形を使用することは、一般的な慣行であり、それは、3Dブロー成形または吸引ブロー成形などのバリエーションによって、経済的で、廃棄物を最小化する方法で、複雑な形状を作成できる。例えば、欧州特許出願公開第2325260号に記載された成形組成物は、高すぎる溶融強度が原因で、および特に結果としての成分の貧弱な表面が原因で、押出ブロー成形にとって不適切である。さらに、記載された成形組成物は、あまりに剛性が高く、フレキシブルチューブ、特に高い屈曲性の蛇腹付きチューブに利用できない。溶融強度および弾性率の定義された範囲内のポリアミド成形組成物のみが、かかる使用にとって適切である。
溶融強度が低すぎる場合、ポリアミドの垂直に押出されたパリソンは、一般的に、急速に伸び、滴り落ちるおよび/または自重でちぎれる傾向にある。その一方で、溶融強度が高すぎる場合、ホースの形状を作ることが不可能となるか、または達成可能な表面品質が不十分になるかの、いずれかである。
ポリアミド6をベースとする、欧州特許出願公開第2687554号に記載された成形組成物は、実際、ブロー成形可能であるが、あまりに剛性が高いので、フレキシブルラインは作製できない。
【0003】
欧州特許出願公開第1884356号は、中空プロファイルの形態の多層組成物、とりわけ、熱可塑性外層および少なくとも1つのさらなる層を含む、燃料ラインを記載していて、外層は、少なくとも1つのポリアミド、80~20質量部のおよび少なくとも1つのポリアミドエラストマー、20~80質量部をベースとする混合物から形成される。ポリアミドエラストマーの添加によって、破断点伸び(その出願公開中で引裂き強度と呼ばれている)の増大が意図される。外層は、ポリアミド12、ポリアミド-6-エーテルアミドおよび、相溶化剤として衝撃性改良剤を、好ましくは含む。しかし、交互の圧縮および引張せん断荷重ならびに同時熱暴露下で、かかる系システムは、層間剥離を起こす。
米国特許出願公開第20130172484号は、ポリエーテルエステルアミド、脂肪族ポリアミドおよび2つの異なるエチレンコポリマーを含む、エラストマー混合物を請求している。エラストマー混合物は、改善された耐摩耗性、および改善された復元力を有すると言われる。適用例は、特に、スポーツ分野における射出成形された物品、特に靴底である。成形組成物は、押出ブロー成形にとって低すぎる溶融強度を有する。
欧州特許第3126447号は同様に、スポーツ物品、特にスキーブーツまたはサッカーシューズを作製するための成形組成物に関する。半結晶ポリアミドによって形成された主要成分以外に、成形組成物は、ポリアミドエラストマーおよびまたさらなる任意の成分を含む。使用されるポリアミドは、専ら、PA11、PA12およびPA1010タイプのポリアミドおよびまたPA11およびPA12をベースとするポリエーテルエステルアミドである。
欧州特許出願公開第1482011号は、主成分としての熱可塑性ポリアミド樹脂とポリアミドエラストマーとの混合物を含む、熱可塑性成形組成物に関するものであり、ポリアミドエラストマーは、トリブロックポリエーテルジアミン化合物をポリアミド形成モノマーで重合することによって生成された、ポリエーテルイミドエラストマーを少なくとも50質量%を含有する。トリブロックポリエーテルジアミンの結果として、成形組成物は、加水分解に対する改善された安定性を持つ。実施例は、PA12を70および80質量%含む、PA12と様々なPA12トリブロックポリエーテルエラストマーとの混合物を使用する。
独国特許出願公開第102008044224号は、ポリアミドと、ポリエーテルエステルアミドおよびポリエーテルアミドの群から選択される、ポリアミドエラストマーとの混合物を少なくとも50質量%含む、成形組成物を開示している。成形組成物は、超臨界媒体と接触するための成形物を作製するために、好ましくは、超臨界媒体を運ぶ、ホースまたはパイプ中の内部の熱可塑性層を作製するために使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】欧州特許出願公開第2325260号
【文献】欧州特許出願公開第2687554号
【文献】欧州特許出願公開第1884356号
【文献】米国特許出願公開第20130172484号
【文献】欧州特許第3126447号
【文献】欧州特許出願公開第1482011号
【文献】独国特許出願公開第102008044224号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の目的は何よりも、ブロー成形可能であり、高い屈曲性および良好な耐塩化カルシウム性を持ち、非常に良好な耐熱変形性および動的機械的応力下、特に同時熱暴露を伴う下での高い耐性を示す、ポリアミド成形組成物を提供することであった。
特に、本発明の目的は、以下の特徴を、個別にまたは好ましくは組み合わせて有する、ブロー成形可能なポリアミド成形組成物を利用可能にすることであった。
・ ブロー成形可能:実験の項において記載された方法に従って、それぞれの場合において測定したときに、好ましくは30~70秒の範囲、より好ましくは35~60秒、とりわけ40~55秒の範囲の溶融強度(MST)。
・ 高い屈曲性:好ましくは最大で800MPa(ISO527(2012)、乾燥状態)、より好ましくは100~700MPa、とりわけ200~600MPaの範囲の引張弾性率。
・ 高い耐熱老化性:破断応力および破断点伸び(ISO527(2012)、乾燥状態)が、150℃での空気中での貯蔵、1000時間後、好ましくは依然として元の値の少なくとも50%である。
・ 動的機械的応力下での耐性:(実験の項において記載された試験-動的引張-伸長試験に従って)150℃、交互の圧縮および引張荷重による、好ましくは130万サイクル後、層間剥離なし。
・ 耐塩化カルシウム性:(実験の項において記載された試験に従って)20サイクル後、好ましくは、クラックなし、ならびに破断応力および破断点伸びの減少なし。
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、本発明は、ブロー成形可能であり、高い屈曲性を示し、非常に良好な耐熱老化性を示し、動的機械的応力下での層間剥離に対する改善された耐性を示す、ポリアミド成形組成物に関する。本発明はさらに、成形組成物から作製された成形物、とりわけ、押出ブロー成形によって作製され、有利な特性に基づいてラインとして、とりわけ、自動車の空気システムのためのラインとして使用できる、フレキシブルチューブまたはホースに関する。
【0007】
本発明は、特に、
(A)ポリエーテルアミド、ポリエーテルエステルアミド、またはそれらの混合物からなる群から選択され、
PA6、PA66、PA6/66、PA610、PA612、PA614、PA616またはそれらの組合せからなる群から選択されるハードセグメントを有し、
OH-またはNH2-官能化ポリエーテルセグメントの形態のソフトセグメントを有する、
51~69.9質量%のポリアミドエラストマー、
(B)α-オレフィンが、ブタ-1-エン、ペンタ-1-エン、ヘキサ-1-エン、ヘプタ-1-エンおよびオクタ-1-エンまたはそれらの組合せからなる群から選択され、
エチレン-α-オレフィンコポリマーが、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸からなる群から選択される少なくとも1つの系でグラフトされていて、
グラフト度が、グラフトエチレン-α-オレフィンコポリマーに対して0.8~2.0質量%である、
15~38質量%のエチレン-α-オレフィンコポリマー、
(C)PA6、PA66、PA6/66、PA610、PA612、PA614、PA616、PA6/610、PA66/610またはそれらの混合物からなる群から選択される、3~25質量%のポリアミド、
(D)銅および/もしくはヨウ化物、ランタノイド化合物、有機安定剤またはそれらの混合物をベースとする、0.1~2.0質量%の熱安定剤、
(E)(A)から(D)とは異なる、0~5.0質量%の添加剤
からなる熱可塑性成形組成物であって、
(A)から(E)の合計が、全成形組成物の100質量%になる、
熱可塑性成形組成物に関する。
【0008】
組成物はさらに、(B)と(C)の合計が、全成形組成物に対して30~48質量%の範囲にあるという条件に従う。好ましくは、(B)と(C)の合計は、32~45質量%の範囲、より好ましくは35~42質量%の範囲、特に好ましくは36~41質量%の範囲にある。
この種類の成形組成物は、上に記載の肯定的な特性、特に、ブロー成形性、高い屈曲性および良好な耐塩化カルシウム性ならびにまた良好な耐熱変形性および動的機械的応力下、特に、同時熱負荷を伴う下での高い耐性をもたらすことが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
成分(A)に関して、第1の好ましい実施形態による成形組成物は、全成形組成物中の成分(A)の割合が、52~67.8質量%の範囲、好ましくは53~64.6質量%の範囲、特に好ましくは56~63.5質量%の範囲にあることを特徴とする。
成分(A)のポリアミドエラストマーのソフトセグメントは、ポリプロピレングリコール、ポリテトラヒドロフラン、またはそれらの組合せからなる群から、好ましくは選択される。
成分(A)のポリアミドエラストマーのハードセグメントは、PA6、PA66、PA6/66またはそれらの組合せからなる群から、好ましくは選択される。特に好ましくは、ハードセグメントは、専らPA6によって形成される。
成分(A)のポリアミドエラストマーまたは成分(A)のポリアミドエラストマーの混合物は、180~250℃の範囲、好ましくは200~220℃の範囲の融点を、好ましくは持つ。代替方法としてまたは追加的に、成分(A)のポリアミドエラストマーまたは成分(A)のポリアミドエラストマーの混合物は、m-クレゾール100ml中にポリマー0.5gの濃度および20℃の温度で測定したときに、1.40~2.40の範囲、好ましくは1.50~2.20の範囲の相対粘度を持つ。ポリアミドエラストマー(A)は、好ましくは、PA6、PA66またはPA610ベースのハードセグメントおよびポリプロピレングリコールまたはポリテトラメチレングリコールベースでOHまたはNH2末端基を持つソフトセグメントを有する、ポリアミドエーテルアミド(ポリエーテルアミドともまた呼ばれる)、ポリアミドエーテルエステルアミド(ポリエーテルエステルアミドともまた呼ばれる)である。末端基はまた、混合形態で存在してもよい。
【0010】
ポリエーテルアミドおよびポリエーテルエステルアミドの生成は、例えば両方の鎖末端にカルボキシル基を有する、PA6またはPA66などのポリアミドブロックと、ポリアルキレンオキシドポリオールをベースとし、両方の鎖末端にアミノ基またはヒドロキシル基を有するポリエーテルブロックとの共凝縮によって、ここでは行われてよい。
成分(A)にとって好ましいのは、コポリエーテルエステルエーテルアミドのブロックを含む、ポリエーテルアミド、ポリエーテルエステルアミドのサブグループからのポリアミドエラストマーである。これらのコポリマーは、エステル結合および/またはアミド結合を形成するのに適切な反応性末端基、好ましくは、ヒドロキシルおよび/またはアミノ末端基を有するポリエーテルブロックから調製される。ポリエーテル骨格は、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリテトラメチルグリコール(PTMEG)、ポリブチレングリコール(PBG)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリネオペンチルグリコール(PNPG)ならびに/またはそれらの混合物および/もしくはそれらのコポリマーおよび/もしくはそれらのブロックポリマーからなってよい。
【0011】
ポリエーテルジオールおよび/またはポリエーテルジアミンの場合、ポリエーテル単位は、例えば、1,2-エタンジオール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオールまたは1,3-ブタンジオールをベースとしてよい。ポリエーテル単位はまた、例えば、ジオール由来の単位の統計的またはブロック様分布を有する、混合構造であってよい。ポリエーテルジオールおよび/またはポリエーテルジアミンの数平均モル質量は、200~5000g/molおよび好ましくは400~3000g/molであり、ポリエーテルエステルアミドおよび/またはポリエーテルアミド中のそれらの割合は、好ましくは5~60質量%、より好ましくは20~50質量%である。適切なポリエーテルジアミンは、還元的アミノ化またはアクリロニトリルへのカップリングとその後の水素化による、対応するポリエーテルジオールの転換によって入手可能であり、適切なポリエーテルジアミンは、例えば、Huntsman Corp.の場合、JEFFAMIN(登録商標)DもしくはED製品またはELASTAMINE(登録商標)製品の形態で、またはBASF SEの場合、ポリエーテルアミンDシリーズの形態で、市販されている。少量で、例えば、JEFFAMIN(登録商標)T製品などのポリエーテルトリアミンも同様に、使用することが可能である。
【0012】
成分(B)に関して、さらに好ましい実施形態による成形組成物は、全成形組成物中の成分(B)の割合が、18~36質量%の範囲、好ましくは20~33質量%の範囲または25~33質量%の範囲にあることを特徴とする。
好ましくは、成分(B)の全エチレン-α-オレフィンコポリマーは、専ら無水マレイン酸でグラフトされている。
成分(B)のエチレン-α-オレフィンコポリマーのグラフト度は、好ましくは0.9~1.6質量%の範囲、好ましくは1.0~1.4質量%の範囲にある。
成分(B)は、好ましくは専ら、グラフトエチレン-1-ブテンコポリマーに対して1.1~1.3質量%の範囲のグラフト度で、無水マレイン酸でグラフトされているエチレン-1-ブテンコポリマーからなる。
さらに、成分(B)のエチレン-α-オレフィンコポリマーまたは成分(B)のエチレン-α-オレフィンコポリマーの混合物が、40~80℃の範囲、好ましくは60~70℃の範囲の融点を有し、および/または-20℃未満、好ましくは-30℃未満のガラス転移点を有し、および/またはASTM D1238に従って測定して、230℃および2.16kgの場合における、0.5~5.0g/10分の範囲、好ましくは0.8~2.0g/10分の範囲または1.0~1.5g/10分の範囲のメルトフローインデックス(MFR)を有する場合、好ましい。
【0013】
したがって、成分(B)は、エチレン(エテン)と少なくとも1つのα-オレフィンとのコポリマーを含み、α-オレフィンは、ブタ-1-エン、ペンタ-1-エン、ヘキサ-1-エン、ヘプタ-1-エンおよびオクタ-1-エンからなる群から選択され、ブタ-1-エンが、特に好ましい。コポリマー(B)中のα-オレフィンの割合は、好ましくは25~60質量%、特に好ましくは28~55質量%である。エチレン-α-オレフィンコポリマーは、0.8~2.0質量%、好ましくは0.9~1.6質量%のアクリル酸、メタクリル酸または無水マレイン酸でグラフトされていて、この量の数値は、グラフトエチレン-α-オレフィンコポリマーに対するものである。特に好ましいのは、無水マレイン酸でグラフトされ、無水マレイン酸の量が、0.9~1.6質量%の範囲にある、エチレン-ブチレンコポリマーである。
成形組成物は、請求の通り、特に、エチレン-プロピレンコポリマーがなく、特に、かかる系は、成分(B)の構成要素としても、その他の成分の一部としても生じない。
成分(C)に関して、さらに好ましい実施形態による成形組成物は、全成形組成物中の成分(C)の割合が、5~22質量%の範囲、好ましくは7~18質量%の範囲または8~15質量%の範囲にあることを特徴とする。
成分(C)のポリアミドは、PA6、PA66、PA6/66、PA610、PA612、PA614、PA616からなる群から、好ましくは選択され、PA6、PA66、PA6/66からなる群から、特に選択される。
【0014】
特に好ましい一実施形態によれば、成分(C)は、PA6によって、専ら形成される。
成分(C)のポリアミドは、3.2~4.2または3.4~4.2の(硫酸中1.0質量%、20℃、ISO307(2013))、好ましくは3.5~4.1または3.6~4.0の範囲の相対粘度(ηrel)を、好ましくは持つ。
成分(C)のポリアミドが、PA6を含むまたは専らPA6からなり、このPA6が、3.4~4.2の(硫酸中1.0質量%、20℃、ISO307(2013))、好ましくは3.5~4.1の範囲の相対粘度を有する場合が、特に非常に好ましい。
したがって、成分(c)は、PA6、PA66、PA6/66、PA610、PA6/610、PA66/610またはそれらの混合物からなる群から好ましくは選択される、脂肪族ポリアミドである。好ましいのは、ポリアミドPA6およびPA6/66を使用することであり、特に好ましいのは、PA6を使用することである。
溶融強度が、押出ブロー成形法のための正確な範囲内にあるために、使用されるポリアミド(C)は好ましくは、3.2~4.2(硫酸、1%)、より好ましくは3.5~4.1の相対粘度を有するポリアミドである。特に好ましいのは、3.5~4.1の相対粘度を有するポリアミド6である。
【0015】
成分(D)に関して、さらに好ましい実施形態による成形組成物は、全成形組成物中の成分(D)の割合が、0.2~2.0質量%の範囲、好ましくは0.25~2.0質量%または0.3~2.0質量%の範囲、特に好ましくは0.3~1.5質量%の範囲にあることを特徴とする。
成分(D)の熱安定剤は、ヨウ化銅(I)、ヨウ化カリウム、有機安定剤またはそれらの混合物からなる群から選択される、系を含むまたは系からなり、好ましくは、有機安定剤は、フェノール類、特に好ましくはペンタエリトリトールテトラキス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、テトラキスメチレン(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナマト)メタンまたはこれらの系の混合物の形態のフェノールからなる群から選択される。
成分(D)の熱安定剤は、好ましくは、ヨウ化銅(I)、ヨウ化カリウムの混合物を含む、またはヨウ化銅(I)、ヨウ化カリウムの混合物によって専ら形成され、好ましくは、それぞれの場合において全成形組成物に対して、ヨウ化銅(I)の割合が、0.02~0.1質量%の範囲であり、ヨウ化カリウムの割合が、0.2~0.6質量%の範囲にある。
【0016】
成分(D)の熱安定剤は、ペンタエリトリトールテトラキス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)とテトラキスメチレン(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナマト)メタンとの混合物を、好ましくは質量比1:1~3:1の、好ましくは2:1~8:3の範囲もしくは7:3の範囲で、含むまたは専ら形成される。
成分(D)の熱安定剤は、好ましくは、ヨウ化銅(I)、ヨウ化カリウム、酢酸ランタン、水酸化ランタン、酸化ランタン、酢酸セリウム、四水酸化セリウムおよび酸化セリウム、またはそれらの混合物からなる群から選択される、系を含むまたは系から専ら形成される。
したがって、本発明の成形組成物は、熱安定剤(D)(または、同義語として、温度安定剤)を、好ましくは0.2~2質量%、より好ましくは0.30~1.50質量%の濃度で含む。
【0017】
好ましい実施形態において、熱安定剤は、以下からなる群から選択される。
・ 一価または二価の銅の化合物、例えば、無機もしくは有機酸とのまたは一価もしくは二価のフェノールとの一価もしくは二価の銅の塩、一価もしくは二価の銅の酸化物、またはアンモニアとの、アミンとの、アミドとの、ラクタムとの、シアン化物とのもしくはホスフィンとの銅塩の錯化合物、好ましくは、ハロゲン化水素酸もしくはシアン化水素酸のCu(I)もしくはCu(II)塩、または脂肪族カルボン酸の銅塩。特に好ましいのは、一価銅化合物CuCl、CuBr、CuI、CuCNおよびCu2O、ならびにまた二価銅化合物CuCl2、CuSO4、CuO、酢酸銅(II)またはステアリン酸銅(II)である。銅化合物が使用される場合、銅の量は、その他の成分の合計に対して、すなわち、全ポリアミド成形組成物に対して、好ましくは0.02~0.5、とりわけ0.03~0.35、非常に好ましくは0.05~0.25質量%である。銅化合物は、それ自体、市販されているおよび/または銅化合物の精製は、当業者に公知である。銅化合物は、そのままで、または濃縮物の形態で使用されてよい。この文脈における濃縮物とは、ポリマー、好ましくはポリアミド(A)または(B)と同じ化学的性質のポリマーであると理解され、高濃度で銅塩を含む。濃縮物の使用は、通例の方法であり、非常に少量の成分を計量して入れる必要がある場合、特に頻繁に使用される。銅化合物は、さらなるハロゲン化金属、特にハロゲン化アルカリ金属、例えば、NaI、KI、NaBr、KBrと、有利に組み合わせて使用され、ハロゲン化金属対ハロゲン化銅のモル比は、0.5対20、好ましくは1対10、より好ましくは3対8である。
【0018】
・ ランタノイドである、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウムおよびルテチウムのフッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酸塩化物、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、クロム酸塩、過塩素酸塩、1~20個の炭素原子を有する、モノおよびジカルボン酸のカルボン酸塩、特に酢酸塩、ギ酸塩、プロピオン酸塩およびシュウ酸塩、イオウ、セレンおよびテルルのモノカルコゲナイド、炭酸塩、水酸化物、酸化物、トリフルオロメタンスルホン酸塩、アセチルアセトン酸塩、アルコキシド、2-エチルヘキサン酸塩、およびまた上述の塩の水和物、およびまた上述の化合物の混合物からなる群から選択された、ランタノイドの化合物。特に好ましい化合物は、ランタンおよびセリウムの化合物であり、特に好ましくは、酢酸ランタン、水酸化ランタン、酸化ランタン、酢酸セリウム、四水酸化セリウムおよび酸化セリウムが、使用される。
・ 第二芳香族アミンベースの安定剤。これらの安定剤は、好ましくは0.2~2.0、より好ましくは0.2~1.5質量%の量で存在する。
・ 立体障害フェノールベースの安定剤。これらの安定剤は、好ましくは0.1~1.5、より好ましくは0.2~1.0質量%の量で存在する。
・ ならびに、ホスファイトおよびホスホナイト。
・ ならびにまた、上述の安定剤の混合物。
【0019】
第二芳香族アミンベースで、本発明に従って使用可能な安定剤の特に好ましい例は、フェニレンジアミンのアセトンとの付加体(Naugard A)、フェニレンジアミンのリノレン(linolene)との付加体、Naugard445、N,N’-ジナフチル-p-フェニレンジアミン、N-フェニル-N’-シクロヘキシル-p-フェニレンジアミンまたはそれらの2つ以上の混合物である。
立体障害フェノールベースで、本発明に従って使用可能な安定剤の好ましい例は、N,N’-ヘキサメチレンビス-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド、グリコールビス(3,3-ビス(4’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチルフェニル)-ブタノエート)、2,1’-チオエチルビス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、トリエチレングリコール-3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネートまたはこれらの安定剤の2つ以上の混合物である。
【0020】
好ましいホスファイトおよびホスホナイトは、トリフェニルホスファイト、ジフェニルアルキルホスファイト、フェニルジアルキルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジステアリルペンタエリトリトールジホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、ジイソデシルペンタエリトリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリトリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリトリトールジホスファイト、ジイソデシルオキシペンタエリトリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチル-6-メチルフェニル)ペンタエリトリトールジホスファイト、ビス(2,4,6-トリス(tert-ブチルフェニル))ペンタエリトリトールジホスファイト、トリステアリルソルビトールトリホスファイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)4,4’-ビフェニレンジホスホナイト、6-イソオクチルオキシ-2,4,8,10-テトラ-tert-ブチル-12H-ジベンゾ[d,g]-1,3,2-ジオキサホスホシン、6-フルオロ-2,4,8,10-テトラ-tert-ブチル-12-メチルジベンゾ[d,g]-1,3,2-ジオキサホスホシン、ビス(2,4-ジ-tert-ブチル-6-メチルフェニル)メチルホスファイトおよびビス(2,4-ジ-tert-ブチル-6-メチルフェニル)エチルホスファイトである。特に好ましいのは、トリス[2-tert-ブチル-4-チオ(2’-メチル-4’-ヒドロキシ-5’-tert-ブチル)フェニル-5-メチル]フェニルホスファイトおよびトリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイトである。
【0021】
好ましいのは、例えば、専らCuIおよびKIベースの熱安定化剤を使用することであり、その場合、好ましくは0.2~0.6質量%のヨウ化カリウムおよび0.02~0.10質量%のヨウ化銅(I)が使用される。銅または銅化合物の添加と同様に、さらなる遷移金属化合物、特に、周期表のVB、VIB、VIIBまたはVIIIB族の金属塩または金属酸化物を使用することが、さらに可能である。さらに、本発明の成形組成物は例えば、好ましくは、鉄粉または鋼粉などの周期表のVB、VIB、VIIBまたはVIIIB族の遷移金属と混合される。特に好ましいのは、無機および有機の安定化剤、とりわけ、CuIおよびKIベースの無機および有機の安定化剤の組合せ、ならびにまたIrganox1010ならびにAnox20であり、その場合、とりわけ、0.2~0.6質量%のヨウ化カリウムおよび0.02~0.10質量%のヨウ化銅(I)、ならびにまた0.5~1.5質量%のIrganox1010またはIrganox1010とAnox20(7:3)の混合物が使用される。
【0022】
したがって、一般的に言えば、別の好ましい実施形態によれば、成分(D)は、0.2~2質量%の範囲、好ましくは0.30~1.5質量%の範囲の割合で成形組成物中に存在し、以下の群、一価もしくは二価の銅の化合物、第二芳香族アミンベースの安定剤、立体障害フェノールベースの安定剤、ホスファイト、ホスホナイト、およびそれらの混合物から選択される系である。
好ましい有機安定剤は、例えば、Irganox245、Irganox1010、Irganox1098、Hostanox PAR24、Anox20またはIrgafos168などのフェノール化合物および/またはホスファイト化合物である。特に好ましいのは、0.2~0.4質量%のAnox20と特に組み合わせた、0.5~1.0質量%の濃度のIrganox1010である。
成分(E)に関して、さらに好ましい実施形態による成形組成物は、全成形組成物中の成分(E)の割合が、0~4.0質量%の範囲、好ましくは0.1~3.0質量%の範囲または0.2~2.5質量%の範囲にあることを特徴とする。
【0023】
成分(E)の添加剤は、以下の群、結晶化促進剤または遅延剤、流動助剤、潤滑剤、脱型剤、顔料、染料およびマーキング物質、加工助剤、帯電防止剤、カーボンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブ、重合工程からの残留物、例えば、触媒、塩およびそれらの誘導体、抗酸化剤、オゾン劣化防止剤、光安定剤、UV安定剤、UV吸収剤またはUV遮断剤、IR吸収剤、NIR吸収剤、ブロッキング防止剤、核形成剤、連鎖移動剤、消泡剤、鎖延長添加剤、導電性添加剤、離型剤、有機顔料、カーボンブラック、グラファイト、グラフェン、フォトクロミック剤、脱型剤、光学的増白剤、ならびにまたそれらの混合物および組合せから、好ましくは選択される系である。
成分(E)の添加剤は好ましくは、以下の群、脱型助剤、光安定剤、顔料、染料、鎖延長剤から選択される系である。鎖延長剤は好ましくは、4質量%を超えるグラフト度を有するアクリル酸修飾ポリオレフィンおよび/またはポリカーボネートと酸末端ポリアミドとの組合せの形態をとり、化学修飾ポリオレフィンは、グラフトポリエチレンに対して好ましくは5~7質量%の範囲のグラフト度を有する、アクリル酸でグラフトされたポリエチレンとして特に選択され、ポリエチレンは、好ましくはHDPEである。
したがって、ポリアミド成形組成物の混合物はまた、最大5.0質量%の割合で、その他の成分(A)から(D)とは異なる、さらなる補助剤および/または添加剤を、成分(E)の形態で含んでもよい。
【0024】
好ましい一実施形態によれば、成分(E)は、全ポリアミド成形組成物に対して、0.1~4.0質量%の範囲、特に好ましくは0.5~3.5質量%の範囲の割合で存在する。
成分(E)として好ましいのは、上述の通り、鎖延長添加剤(鎖延長剤)であり、熱可塑性加工の場合、ポリアミド、ポリエーテルアミドまたはポリエーテルエステルアミド分子の鎖延長によって分子質量の増加をもたらす。好ましい鎖延長剤は、4質量%を超えるグラフト度を有するアクリル酸修飾ポリエチレンおよびまたポリカーボネートと酸末端ポリアミドとの組合せである。
1つのかかる鎖延長剤は、例えばBruggemann Chemical(ドイツ)からBruggolen(登録商標)M1251の名称で市販されており、酸末端ポリアミド6中の低粘度ポリカーボネートから構成されるマスターバッチを含む。
鎖延長剤の別の好ましいバリエーションは、6質量%のアクリル酸でグラフトされた、例えばPolybond(登録商標)1009の商品名のChemturaからの、好ましくは4.5%~7%の範囲のグラフト度を有する、高密度のアクリル酸修飾ポリエチレンである。
【0025】
さらに好ましい鎖延長剤は、芳香族ポリカルボジイミドであり、例えばRhein-Chemie(ドイツ)によってStabaxol(登録商標)Pの名称で販売されている。その他の好ましい鎖延長剤は、例えばOKA-Tecによって販売されているOkabest(登録商標)2400などの低密度のアクリル酸修飾直鎖状ポリエチレンである。さらに好ましい鎖延長剤は、例えばDSMによってAllinco(登録商標)CBCの名称で販売されている1,1’-カルボニルビスカプロラクタメートであり、およびまた、例えば、1,4-フェニレンビス(2-オキサゾリン)などのビスオキサゾリンである。
本発明の鎖延長剤は、上に記載の成分(A)から(E)から構成されている、ポリアミド成形組成物100質量パーセントに対して、0.5~2.5質量パーセント、好ましくは0.7~2.2質量パーセント、より好ましくは1~2質量パーセントで使用される。
【0026】
好ましい一実施形態において、熱可塑性成形組成物は、
(A)ポリエーテルアミド、ポリエーテルエステルアミド、またはそれらの混合物からなる群から選択され、
PA6、PA66、PA6/66、PA610、PA612、PA616またはそれらの組合せからなる群から選択されるハードセグメントを有し、
OH-またはNH2-官能化ポリエーテルセグメント、ポリプロピレングリコール(PPG)およびポリテトラヒドロフラン(PTHF)の形態のソフトセグメントを有する、
52~67.8質量%のポリアミドエラストマー、
(B)α-オレフィンが、ブタ-1-エンおよびオクタ-1-エンまたはそれらの組合せからなる群から選択され、
エチレン-α-オレフィンコポリマーが、無水マレイン酸でグラフトされていて、
グラフト度が、グラフトエチレン-α-オレフィンコポリマーに対して0.9~1.6質量%である、
18~36質量%のエチレン-α-オレフィンコポリマー、
(C)PA6、PA66、PA6/66、PA610、PA612、PA616またはそれらの混合物からなる群から選択される、5~22質量%のポリアミド、
(D)銅および/もしくはヨウ化物、ランタノイド化合物、有機安定剤またはそれらの混合物をベースとする、0.2~2.0質量%の熱安定剤、
(E)(A)から(D)とは異なる、0~4.0質量%の添加剤
からなり、
(A)から(E)の合計は、全成形組成物の100質量%になる。
【0027】
組成物は、(B)と(C)の合計が、全成形組成物に対して32~45質量%の範囲にあるという条件にさらに従う。
別の好ましい実施形態において、熱可塑性成形組成物は、
(A)ポリエーテルアミド、ポリエーテルエステルアミド、またはそれらの混合物からなる群から選択され、
PA6、PA66、PA6/66またはそれらの組合せからなる群から選択されるハードセグメントを有し、
OH-またはNH2-官能化ポリエーテルセグメント、ポリプロピレングリコール(PPG)およびポリテトラヒドロフラン(PTHF)の形態のソフトセグメントを有する、
53~64.6質量%のポリアミドエラストマー、
(B)α-オレフィンが、ブタ-1-エンおよびオクタ-1-エンまたはそれらの組合せからなる群から選択され、
エチレン-α-オレフィンコポリマーが、無水マレイン酸でグラフトされていて、
グラフト度が、グラフトエチレン-α-オレフィンコポリマーに対して0.9~1.6質量%である、
20~33質量%のエチレン-α-オレフィンコポリマー、
(C)PA6、PA66、PA6/66、PA610、PA612、PA616またはそれらの混合物からなる群から選択される、7~18質量%のポリアミド、
(D)銅および/もしくはヨウ化物、ランタノイド化合物、有機安定剤またはそれらの混合物をベースとする、0.3~2.0質量%の熱安定剤、
(E)(A)から(D)とは異なる、0.1~3.0質量%の添加剤
からなり、
(A)から(E)の合計は、全成形組成物の100質量%になる。
【0028】
組成物は、(B)と(C)の合計が、全成形組成物に対して35~42質量%の範囲にあるという条件にさらに従う。
本発明の成形組成物は好ましくは、30~70秒の範囲または35~60秒の範囲、好ましくは40~55秒の範囲の溶融強度を持つ。
成形組成物はさらに好ましくは、最大で800MPa(ISO527(2012)、乾燥状態)、好ましくは100~700MPaの範囲、特に好ましくは200~600MPaの範囲の引張弾性率を持つ。
成形組成物は好ましくは、150℃、交互の圧縮および引張荷重による、少なくとも100万サイクル、とりわけ130万サイクル後の動的機械的応力下で、層間剥離を示さない。
本発明はさらに、上に記載の成形組成物を生成する方法に関するものであり、前記方法は、融解した形態であってもよい、一体となった、成分(A)~(E)を、好ましくは2個以上のスクリューを有する、好ましくは押出装置の形態の混合装置中へ計量して入れることを特徴とする。
【0029】
本発明は同様に、射出成形法、押出成形法もしくは共押出法における、好ましくはブロー成形法、好ましくは押出ブロー成形法もしくは延伸ブロー成形法、例えば、3Dブロー成形、共押出ブロー成形、共押出3Dブロー成形、逐次共押出、共押出吸引ブロー成形、および逐次ブロー成形における、上に記載の成形組成物の使用に関するものであり、好ましくは、先行作業において従来の射出成形によって生成されたプリフォームを、第1の工程段階において、好ましくは赤外線エミッターで加熱し、プリフォームの加熱の後、プリフォームを型の中へ流し入れ、またはヒーターを型から取り出し、型を締めることで、ボトルネックで縦延伸させてもよく、それによって、プリフォームを軸方向に保持して、次に、ガスをプリフォーム中に導入し、圧縮応力下で膨張させ、そうすることで型の輪郭を生成する。
【0030】
例えば、ブロー成形にとって適切である、本発明の成形組成物は、射出成形、押出または共押出などの様々な方法によって加工できる。好ましい加工方法は、押出ブロー成形、3Dブロー成形、共押出ブロー成形、共押出3Dブロー成形、逐次共押出および逐次ブロー成形である。しかし、射出成形、射出成形プラス溶接、熱成形、共押出吸引ブロー成形、ハード/ソフト複合体の作製、GIT(内部ガス圧技術による)およびWIT(内部水圧技術による)ならびに匹敵する加工方法もまた、可能である。
本発明のポリアミド成形組成物は、一般的に、ブロー成形性、耐熱老化性、および交互の機械的動的荷重に対する高い耐性を要求する全ての適用例にとって、適切である。
さらに、本発明は、自動車のための給気パイプ、平滑もしくはコルゲート(corrugated)であってよい、流体を保持する単層もしくは多層ライン、例えば、燃料ライン、油圧ライン、ブレーキライン、クラッチラインもしくは冷却液ライン、ブレーキ液容器もしくは燃料容器などのパイプまたは容器を含む、好ましくは自動車分野での使用のための、好ましくはパイプまたは容器の形態、特に好ましくは中空体またはラインの形態の、上に記載の成形組成物から作られた成形物に関するものであり、成形物は、その他の熱可塑性材料から作られた、さらなる層を追加的に有してよく、好ましくは、かかるさらなる1層は、以下の群、PA612、PA610、PA11、PA12、PA1010、PA1012、PA616、PA6、PA66、PA10T/612、PA9T/MT(M=2-メチルオクタン-1,8-ジアミン)、PA46またはそれらの混合物から選択される系からなる。
【0031】
本発明の成形組成物から作られた単層または多層中空体は、原理上、押出ブロー法またはその方法に充てられた特別な方法によって、作製できる。この場合において作製された製品ならびに瓶、小型缶、ドラム缶等などの包装分野における通常の中空体の範囲は、例えば、ガス状媒体などの流体のために使用され得る、例えばチューブおよびパイプラインシステムなどの多くの産業技術の成形物を包含する。3D法(3Dホース操作、3D吸引ブロー法)によって、加圧媒体および非加圧媒体のためのチューブおよびホースのいずれの考え得る形も作製することが可能である。
本発明のポリアミド成形組成物は、ブロー成形可能であり、使用される加工温度で、好ましくは30~70秒の範囲、特に好ましくは35~60秒の範囲、より好ましくは40~55秒の範囲にある溶融強度を有する。
本発明のポリアミド成形組成物からチューブ部品を作製する好ましい方法は、記載された組成を有するポリアミド成形組成物が押出ブロー成形を受けることによる。
押出ブロー成形について、好ましいのは、3Dブロー成形または吸引ブロー成形のバリエーションを使用することである。様々な3D技術を用いる従来のブロー成形から逐次ブロー成形および共押出ブロー成形にいたるまで、全ての一般的なバリエーションを伴う押出ブロー成形作業の記載が、例えば、1998年、2月、EMSからのテクニカルデータシート「Verarbeitung von Grilamid und Grilon durch Extrusionsblasformen(押出ブロー成形によるGrilamidおよびGrilonの加工)」中にある。
【0032】
本発明の成形組成物の、本発明の成形組成物から作製された成形物のまたはかかる成形組成物から成形物を作製する方法の好ましい使用は、自動車における空気システムのためのラインの使用にある。かかる使用の場合、空気システムのためのラインは、特にガソリンまたはディーゼルエンジン、より好ましくは排気ターボチャージャー付きエンジンに設置される。
本発明のポリアミド成形組成物は、例えば、クリーンエアライン、給気フィードチューブおよび/または給気リターンチューブを形成するために使用されてよい。しかし、本発明のポリアミド成形組成物または本発明の成形組成物から作製されたラインは、クランクシャフトベントライン用または恐らく排気再循環クーラーの下流領域中の排気再循環ラインとしてさえもまた検討される。
空気を運ぶラインは、通常、単層形態である。代替方法として、空気を運ぶラインは、1つまたは複数の追加の層を含み得る。さらなる層は、原理上、請求の成形組成物に接着する、全てのポリアミドからなってよく、好ましいのは、PA616、PA612、PA610、PA11、PA12、PA1010、PA1012、PA6、PA66、PA10T/612、PA9T/MT(M=2-メチルオクタン-1,8-ジアミン)およびPA46である。
【0033】
本発明の成形物の例は、以下の通りである。クーラーチューブ、クーラーウォーターボックス、バッファーコンテナならびにその他の媒体を運ぶチューブおよび容器、特に比較的高い温度で使用され得る、空気を運ぶ部品、例えばターボチャージャー中のチューブ。
さらに、本発明の成形組成物は、例えば、チューブまたは容器などの単層または多層中空体を作製するために使用されてよい。これらの例としては、好ましくは、射出成形、押出もしくはブロー成形によって作製された、自動車のための給気チューブ、平滑もしくはコルゲートであってよい、流体を運ぶ単層もしくは多層ライン、例えば、燃料ライン、油圧ライン、ブレーキライン、クラッチラインまたは冷却液ライン、ブレーキ液容器または燃料容器が、挙げられる。
【0034】
成形物は、流体(ガスおよび/または液体)を運ぶ部品もしくはラインまたは通常の働きの過程で流体と接触する部品を特に含み、流体は、とりわけ、水、グリコール、オイル、燃料(ガソリン、ディーゼル)、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール)、空気もしくは排出ガス、またはそれらの混合物である。成形された部品は、自動車分野のための、帯電防止処理をされていてもまたよい、好ましくは、ライン、蛇腹、ポート、コネクタまたは取り付け具および容器である。具体的な部品としては、平滑およびコルゲートチューブ、チューブ断面、ポート(吸気口、排気口、注水口および排水口)、ホースを接続するための取り付け具、コルゲートチューブおよび媒体を運ぶライン、多層ラインの構成要素(外層、中間層、内層)、容器、容器の部品(例えば、閉鎖具)、多層容器の個々の層、カバーまたは、例えば自動車分野におけるクランクケースのためのベントなどのクランクケースの部品、油圧ライン、ブレーキライン、ブレーキ液容器、冷却液ラインが、挙げられる。
さらなる実施形態は、従属請求項に明記される。
本発明の好ましい実施形態は、実施例を用いて下記で説明され、単に、例証に資するものであり、いかなる制限を課すものとしても解釈されるべきではない。
【実施例】
【0035】
成形組成物の生成
表1および2に特定された成形組成物を、Werner und PfleidererからのZSK25二軸押出機で、240から300℃の間の温度、スクリュー速度200rpmおよび処理量10kg/時間で生成した。この目的のために、一覧にした成分を、押出機の取込口に計量して入れた。融解物を、直径3mmのダイからストランドとして引き出し、水冷後にペレット化した。ペレットを、30mbarの減圧下、80℃で、24時間乾燥させた。
試験試料の作製
化合物を、Arburg Allrounder320-210-750射出成形機を使用して成形して、ゾーン1から4の定義されたバレル温度240から280℃および成形型温度100℃で、試料を形成した。
【0036】
【0037】
【0038】
PA6-ポリエーテルブロックアミド
PA6-カルボン酸(76質量%)およびポリプロピレングリコール-ジアミンセグメント(24質量%)から構成されるポリエーテルアミド、融点=210℃、相対粘度=1.85、EMS-CHEMIE(CH)。
Tafmer MH5020C
Tafmer MH5020Cは、三井化学株式会社(JP)からの50質量%のブタ-1-エンを有するエチレン-1-ブテンコポリマーである。1.2質量%の無水マレイン酸、密度0.866g/cm3、ASTM D1238に従って測定して、230℃および2.16kgでのMFR1.2g/10分。
Tafmer MH7020
Tafmer MH7020は、三井化学株式会社(JP)からの30質量%のブタ-1-エンを有するエチレン-1-ブテンコポリマーである。1.2質量%の無水マレイン酸、密度0.873g/cm3、ASTM D1238に従って測定して、230℃および2.16kgでのMFR1.5g/10分。
【0039】
Pebax5533SA01
融点155℃およびショア硬度54(ISO868)を有する、PA12ハードセグメントおよびポリテトラヒドロフランエーテルセグメントをベースとするポリエーテル-ブロック-アミド、Arkema(FR)。
Tafmer MC201
Tafmer MC201は、三井化学株式会社(JP)からの、0.5質量%の無水マレイン酸でグラフトされた、67質量%のエチレン-プロピレンコポリマー(20質量%のプロピレン)と33質量%のエチレン-ブタ-1-エンコポリマー(15質量%のブタ-1-エン)との混合物である。
Fusabond N493
Fusabond N493は、DuPont(USA)からの、無水マレイン酸(0.5質量%)でグラフトされた、エテン-オクタ-1-エンコポリマーである。ASTM D1238に従って測定して、230℃および2.16kgでのMFR1.6g/10分。
【0040】
Exxelor VA1801
Exxelor VA1801は、ExxonMobil Chemicals(USA)からの、0.7質量%の無水マレイン酸でグラフトされたエテン-プロペンコポリマーである。密度0.88g/cm3、ISO1133に従って測定して、230℃および10.0kgでのMFR9.0g/10分、Tg=-44℃。
PA6
融点222℃および相対粘度3.6(硫酸、1質量%、20℃、ISO307(2013))を有するポリカプロラクタム、EMS-CHEMIE(CH)
ヨウ化カリウム
AJAY Europe S.A.R.L.(FR)からのKI。
ヨウ化銅(I)
William Blythe(UK)からのCuI。
Irganox/Anox
Irganox1010(CAS6683-19-8、BASFからのフェノール系抗酸化剤)とAnox20(CAS6683-19-8、Addivantからのフェノール系抗酸化剤)の7:3の比の混合物。
【0041】
Euthylen Black00-6005C4
40質量%の顔料のカーボンブラックを有する、ポリエチレンをベースとする、顔料のカーボンブラックマスターバッチ、BASF Color Solutions。
Polybond
Polybond1009は、グラフト度6.0質量%、密度0.95g/cm3を有する、Addivantからのアクリル酸グラフト高密度ポリエチレン(AA-HDPE)である。ASTM D1238に従って測定して、190℃および2.16kgでのMFR5.0g/10分、Tm=127℃。
測定を、以下の規格に従って、以下の試験試料に対して実行した。
射出成形後の乾燥状態の試験試料を、乾燥した環境、すなわちシリカゲル上で、室温で、少なくとも48時間貯蔵する。
熱挙動、融点(Tm)、融解エンタルピー(ΔHm)およびガラス転移温度(Tg)を、ISO規格11357-1、-2および-3(2013)を使用して、ペレットについて測定した。示差走査熱量測定(DSC)を、加熱速度20K/分で実行した。
【0042】
成分(A)のポリアミドエラストマーの相対粘度(ηrel)を、20℃の温度で、m-クレゾール100ml中に溶解されたポリマー0.5gの溶液に対して、DIN EN ISO307(2013)に従って測定した。
成分(C)のポリアミドの相対粘度(ηrel)を、20℃の温度で、硫酸(98%)中に溶解された1.0質量%のポリマーの溶液に対して、DIN EN ISO307(2013)に従って測定した。使用された試料は、ペレットであった。
引張弾性率、破断応力および破断点伸び:引張弾性率、破断応力および破断点伸びを、乾燥状態、23℃で、ISO引張試験片、規格ISO/CD3167(2014)、タイプA1、170×20/10×4mmに対して、引張速度1mm/分(引張弾性率)または引張速度50mm/分(破断応力、破断点伸び)で、ISO527(2012)に従って測定した。
【0043】
溶融強度(MST)の測定:溶融強度とは、押出ブロー成形の間のプリフォームの「安定性」のことである。すでに上に述べたように、押出ブロー成形にとって適切な成形組成物は、その溶融強度が、ある特定の範囲内、すなわち適切な加工ウィンドウ内にある成形組成物のみである。本出願人は、溶融強度が上述の範囲内にあるかどうかを評価する、独立した、実践に基づく方法を開発した。この方法によって、単軸押出機(スクリュー直径=45mm、L/D=25、Schwabenthan SM30U、ベルリン)を使用して、パリソンを、アングルヘッドによって連続的に押出す。測定される変数は、パリソンがダイから床までの距離を移動するために必要とする時間である。使用された配置によって、この距離は、100cmである。溶融強度測定を、1分毎に成形組成物融解物100立方メートルの一定の放出速度によって、およびポリマーのタイプに適応させた温度によって、運用する(表1および2の値を参照)。パリソンが、円環状押出ダイから連続的に出現して、スパチュラによって押出ダイから取り出される瞬間から出発して、時間を測定する。パリソンの新しく出現した、下方へ移動する部分が、床に接触するや否や、時間を停止する(欧州特許第1841824号の
図2を参照)。この様に測定された溶融強度は、秒で報告される。(連続的に押出された融解物の結果として)それ自体の増加する質量を保持する能力が貧弱なために、粘着性のある伸長を示し始める材料は、より大きい度合で伸びることになり、それ故に、パリソンの先端は、床により早く接触することになる。換言すれば、より短い測定時間が、より低い溶融強度に相当する。ブロー成形性を測定するためのこの方法の実際の利点は、この方法が、ポリアミドの分子質量または粘度などの、孤立して見られる単一の特性のみに基づくのではなく、代わりに、押出されたパリソンプリフォームの挙動に関する全てのさらなる影響変数が、測定された時間中に自動的および一体的に含まれることである。
【0044】
耐塩化カルシウム性の測定:耐塩化カルシウム性を、規格ISO/CD3167(2014)、タイプA1、170×20/10×4mm、に従って、ISO引張試験片を使用して測定した。試験を、20サイクル実行し、各サイクルにおいて、
・ 試験試料を、80℃および相対湿度95%で、2時間貯蔵し、
・ 次に、濃縮塩化カルシウム水溶液を両側から噴霧し[CaCl2濃度は、74.5g/溶液100mlであった(冬に車を運転するときの「塩ミスト」のシミュレーション)]、
・ 5時間、100℃で、空気中で貯蔵した。
【0045】
5、10、15および20サイクル後、試験試料を、クラッキングについて、顕微鏡を用いて(拡大率5~10倍)目視検査し、引張-伸長試験を、破断応力および破断点伸びの測定とともに、ISO527(2012)(乾燥状態で)に従って実行した(それぞれの場合において5個の試料を測定した)。
クラッキングのための評価:++は、クラッキングなし、+は、少数の小さなクラック、oは、いくつかの大きなクラック、ooは、多数の大きなクラック。
動的引張-伸長試験(層間剥離):使用された試験試料は、100×100×3mmの寸法の射出成形プレートから打ち抜かれた、ISO37(2011)タイプ2引張試験片であった。2つのクランプデバイスの間の自由な試験試料の長さが45mm(最初の位置)になるように、引張試験片を、温度調節可能な引張-伸長装置Instron E3000中へクランプした。装置を150℃まで加熱した後、引張試験片を、周期的に伸ばし、次に、振動数10Hzおよびストローク9mmで再び圧縮し、引張試験片の20%の伸長に相当した。この種類の130万サイクル後、動的引張-伸長試験を、終了する。層間剥離の最初の兆候が生じた後、サイクル数を測定した。
【0046】
耐熱老化性(TAR)
耐熱老化性の測定のために、ISO引張試験片、規格ISO/CD3167(2014)、タイプA1、170×20/10×4mmを、強制空気炉(Binder FD115)中150℃で貯蔵した。1000時間の貯蔵時間後、引張-伸長試験を、乾燥した引張試験片に対して、引張速度50mm/分、23℃で、ISO527(2012)に従って実行し(成形組成物毎に、それぞれ5個の試験試料)、破断応力および破断点伸びを測定した。上の表は、熱貯蔵の前のそれぞれの値と比較して、貯蔵1000時間後、破断応力および破断点伸び、それぞれの保持パーセンテージを報告している。
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕(A)51~69.9質量%のポリアミドエラストマーであって、
ポリエーテルアミド、ポリエーテルエステルアミド、またはそれらの混合物からなる群から選択され、
PA6、PA66、PA6/66、PA610、PA612、PA614、PA616またはそれらの組合せからなる群から選択されるハードセグメントを有し、且つ
OH-またはNH
2
-官能化ポリエーテルセグメントの形態のソフトセグメントを有する、
前記ポリアミドエラストマー、
(B)15~38質量%のエチレン-α-オレフィンコポリマーであって、
α-オレフィンが、ブタ-1-エン、ペンタ-1-エン、ヘキサ-1-エン、ヘプタ-1-エンおよびオクタ-1-エンまたはそれらの組合せからなる群から選択され、且つ
エチレン-α-オレフィンコポリマーが、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸からなる群から選択される少なくとも1つの系でグラフトされており、
ここで、グラフト度が、グラフトエチレン-α-オレフィンコポリマーに対して0.8~2.0質量%である、
前記エチレン-α-オレフィンコポリマー、
(C)PA6、PA66、PA6/66、PA610、PA612、PA614、PA616、PA6/610、PA66/610またはそれらの混合物からなる群から選択される、3~25質量%のポリアミド、
(D)銅および/もしくはヨウ化物、ランタノイド化合物、有機安定剤またはそれらの混合物をベースとする、0.1~2.0質量%の熱安定剤、
(E)(A)から(D)とは異なる、0~5.0質量%の添加剤
からなる熱可塑性成形組成物であって、
(A)から(E)の合計が、全成形組成物の100質量%になり、
ただし、(B)と(C)の合計が、全成形組成物に対して30~48質量%の範囲にあることを条件とする、
熱可塑性成形組成物。
〔2〕全成形組成物中の成分(A)の割合が、52~67.8質量%の範囲、好ましくは53~64.6質量%の範囲、特に好ましくは56~63.5質量%の範囲にあることを特徴とする、前記〔1〕に記載の成形組成物。
〔3〕成分(A)のポリアミドエラストマーのソフトセグメントが、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリテトラヒドロフラン(PTHF)、もしくはそれらの組合せからなる群から選択されること、ならびに/または
成分(A)のポリアミドエラストマーのハードセグメントが、PA6、PA66、PA6/66もしくはそれらの組合せからなる群から選択され、好ましくはハードセグメントが、PA6によって専ら形成されること、ならびに/または
成分(A)のポリアミドエラストマーもしくは成分(A)のポリアミドエラストマーの混合物が、加熱速度20℃/分でISO11357-3(2013)に従って測定したときに、180~250℃の範囲、好ましくは200~220℃の範囲の融点、および/もしくはm-クレゾール100ml中にポリマー0.5gの濃度および20℃の温度でISO307(2013)に従って測定したときに、1.40~2.40の範囲、好ましくは1.50~2.20の範囲の相対粘度を有すること、ならびに/または
ソフトセグメントの数平均モル質量、特に、ポリエーテルジオールおよび/もしくはポリエーテルジアミンの数平均モル質量が、200~5000g/mol、好ましくは400~3000g/molであり、好ましくは、ポリエーテルエステルアミドおよび/もしくはポリエーテルアミド中のソフトセグメントの割合が、好ましくは5~60質量%、より好ましくは20~50質量%であること
を特徴とする、前記〔1〕または〔2〕のいずれかに記載の成形組成物。
〔4〕全成形組成物中の成分(B)の割合が、18~36質量%の範囲、好ましくは20~33質量%の範囲または25~33質量%の範囲にあることを特徴とする、前記〔1〕から〔3〕のいずれか1項に記載の成形組成物。
〔5〕成分(B)の全エチレン-α-オレフィンコポリマーが、専ら無水マレイン酸でグラフトされていること、ならびに/または
成分(B)のエチレン-α-オレフィンコポリマーのグラフト度が、0.9~1.6質量%、好ましくは1.0~1.4質量%の範囲にあること、ならびに/または
成分(B)が、グラフトエチレン-1-ブテンコポリマーに対して1.1~1.3質量%の範囲のグラフト度で、無水マレイン酸でグラフトされているエチレン-1-ブテンコポリマーから、専らなること、ならびに/または
成分(B)のエチレン-α-オレフィンコポリマーもしくは成分(B)のエチレン-α-オレフィンコポリマーの混合物が、40~80℃の範囲、好ましくは60~70℃の範囲の融点、および/もしくは-20℃未満、好ましくは-30℃未満のガラス転移点、および/もしくはASTM D1238に従って測定して、230℃および2.16kgで、0.5~5.0g/10分もしくは0.8~2.0g/10分の範囲、好ましくは1.0~1.5g/10分の範囲のメルトフローインデックス(MFR)を有すること
を特徴とする、前記〔1〕から〔4〕のいずれか1項に記載の成形組成物。
〔6〕全成形組成物中の成分(C)の割合が、5~22質量%の範囲、好ましくは7~18質量%の範囲または8~15質量%の範囲にあることを特徴とする、前記〔1〕から〔5〕のいずれか1項に記載の成形組成物。
〔7〕成分(C)のポリアミドが、PA6、PA66、PA6/66、PA610、PA612、PA614、PA616からなる群から選択され、成分(C)のポリアミドが、好ましくはPA6、PA66、PA6/66からなる群から選択され、特に好ましくは、成分(C)が、専らPA6から形成されること、ならびに/または
成分(C)のポリアミドが、3.4~4.2の(ISO307(2013)、硫酸、1.0質量%、20℃)、好ましくは3.6~4.0の範囲の相対粘度を有すること、ならびに/または
成分(C)のポリアミドが、PA6を含むもしくは専らPA6からなり、このPA6が、3.4~4.2の(ISO307(2013)、硫酸、1.0質量%、20℃)、好ましくは3.5~4.1の範囲の相対粘度を有すること
を特徴とする、前記〔1〕から〔6〕のいずれか1項に記載の成形組成物。
〔8〕全成形組成物中の成分(D)の割合が、0.2~2.0質量%の範囲、好ましくは0.3~2.0質量%の範囲、特に0.3~1.5質量%の範囲にあることを特徴とする、前記〔1〕から〔7〕のいずれか1項に記載の成形組成物。
〔9〕成分(D)の熱安定剤が、ヨウ化銅(I)、ヨウ化カリウム、有機安定剤、もしくはそれらの混合物からなる群から選択される系を含むもしくは系からなり、好ましくは、有機安定剤が、フェノール類、特に好ましくはペンタエリトリトールテトラキス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、テトラキスメチレン(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナマト)メタンの形態のフェノールもしくはこれらの系の混合物からなる群から選択されること、ならびに/または
成分(D)の熱安定剤が、ヨウ化銅(I)、ヨウ化カリウムの混合物を含む、もしくはヨウ化銅(I)、ヨウ化カリウムの混合物によって専ら形成され、好ましくは、それぞれの場合において全成形組成物に対して、ヨウ化銅(I)の割合が、0.02~0.1質量%の範囲にあり、ヨウ化カリウムの割合が、0.2~0.6質量%の範囲にあること、ならびに/または
成分(D)の熱安定剤が、ペンタエリトリトールテトラキス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)とテトラキスメチレン(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナマト)メタンとの混合物を、好ましくは1:1~3:1、好ましくは2:1~8:3の範囲もしくは7:3の範囲の質量比で、含むもしくは専ら形成されること、ならびに/または
成分(D)の熱安定剤が、ヨウ化銅(I)、ヨウ化カリウム、酢酸ランタン、水酸化ランタン、酸化ランタン、酢酸セリウム、四水酸化セリウム、酸化セリウム、もしくはそれらの混合物からなる群から選択される系を含むもしくは系からなること
を特徴とする、前記〔1〕から〔8〕のいずれか1項に記載の成形組成物。
〔10〕全成形組成物中の成分(E)の割合が、0~4.0質量%の範囲、好ましくは0.1~3.0質量%の範囲または0.2~2.5質量%の範囲にあること、ならびに/または
成分(E)の添加剤が、以下の群、結晶化促進剤もしくは遅延剤、流動助剤、潤滑剤、脱型剤、顔料、染料およびマーキング物質、加工助剤、帯電防止剤、カーボンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブ、重合工程からの残留物、例えば、触媒、塩およびそれらの誘導体、抗酸化剤、オゾン劣化防止剤、光安定剤、UV安定剤、UV吸収剤もしくはUV遮断剤、IR吸収剤、NIR吸収剤、ブロッキング防止剤、核形成剤、連鎖移動剤、消泡剤、鎖延長添加剤、導電性添加剤、離型剤、有機顔料、カーボンブラック、グラファイト、グラフェン、フォトクロミック剤、脱型剤、光学的増白剤、ならびにまたそれらの混合物および組合せから選択される系を含む、もしくはこれらの系からなり、好ましくは、成分(E)の添加剤が、以下の群、脱型助剤、光安定剤、顔料、染料、鎖延長剤から、好ましくは、4質量%を超えるグラフト度を有するアクリル酸修飾ポリオレフィンおよび/もしくはポリカーボネートと酸末端ポリアミドとの組合せとして、選択される系を含む、もしくはこれらの系からなり、化学修飾ポリオレフィンが、グラフトポリエチレンに対して好ましくは5~7質量%の範囲のグラフト度で、アクリル酸でグラフトされたポリエチレンとして特に選択され、ポリエチレンが、好ましくはHDPEであること
を特徴とする、前記〔1〕から〔9〕のいずれか1項に記載の成形組成物。
〔11〕(B)と(C)の合計が、32~45質量%の範囲、好ましくは35~42質量%の範囲、特に好ましくは36~41質量%の範囲にあることを特徴とする、前記〔1〕から〔10〕のいずれか1項に記載の成形組成物。
〔12〕成形組成物が、30~70秒の範囲、好ましくは35~60秒の範囲もしくは40~55秒の範囲の溶融強度を有すること、ならびに/または
成形組成物が、最大で800MPa(ISO527(2012)、乾燥状態)、好ましくは100~700MPaの範囲、特に好ましくは200~600MPaの範囲の引張弾性率を有すること、ならびに/または
成形組成物が、150℃、交互の圧縮および引張荷重による、少なくとも130万サイクル後の動的機械的応力下で、層間剥離を示さないこと
を特徴とする、前記〔1〕から〔11〕のいずれか1項に記載の成形組成物。
〔13〕融解した形態であってもよい、一体となった成分(A)~(E)を、混合装置、好ましくは2個以上のスクリューを有する、好ましくは押出装置の形態の混合装置中へ、計量して入れることを特徴とする、前記〔1〕から〔12〕のいずれか1項に記載の成形組成物を生成する方法。
〔14〕射出成形法、押出成形法もしくは共押出法における、好ましくはブロー成形法、好ましくは押出ブロー成形法もしくは延伸ブロー成形法、例えば、3Dブロー成形、共押出ブロー成形、共押出3Dブロー成形、逐次共押出、共押出吸引ブロー成形、および逐次ブロー成形における、前記〔1〕から〔13〕のいずれか1項に記載の成形組成物の使用であって、好ましくは、先行作業において従来の射出成形によって生成されたプリフォームを、第1の工程段階において、好ましくは赤外線エミッターで加熱し、プリフォームの加熱の後、プリフォームを型の中へ流し入れ、またはヒーターを型から取り出し、型を締めることで、ボトルネックで縦延伸させてもよく、それによって、プリフォームを軸方向に保持して、次に、ガスをプリフォーム中に導入し、圧縮応力下で膨張させ、そうすることで型の輪郭を生成する、成形組成物の使用。
〔15〕自動車のための給気パイプ、平滑もしくはコルゲートであってよい、流体を保持する単層もしくは多層ライン、例えば、燃料ライン、油圧ライン、ブレーキライン、クラッチラインもしくは冷却液ライン、ブレーキ液容器もしくは燃料容器などのパイプまたは容器を含む、好ましくは自動車分野での使用のための、好ましくはパイプまたは容器の形態、特に好ましくは中空体またはラインの形態の、前記〔1〕から〔12〕のいずれか1項に記載の成形組成物から作られた成形物であって、成形物が、その他の熱可塑性材料から作られた、さらなる層を追加的に有してよく、好ましくは、かかるさらなる1層が、以下の群、PA612、PA610、PA11、PA12、PA1010、PA1012、PA616、PA6、PA66、PA10T/612、PA9T/MT(M=2-メチルオクタン-1,8-ジアミン)、PA46またはそれらの混合物から選択される系からなる、成形物。