(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-31
(45)【発行日】2024-08-08
(54)【発明の名称】灯具システム
(51)【国際特許分類】
B60Q 1/50 20060101AFI20240801BHJP
B60Q 1/04 20060101ALI20240801BHJP
B60Q 1/00 20060101ALI20240801BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
B60Q1/50 Z
B60Q1/04 Z
B60Q1/00 G
G08G1/16 C
(21)【出願番号】P 2020024281
(22)【出願日】2020-02-17
【審査請求日】2023-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【氏名又は名称】村田 雄祐
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【氏名又は名称】三木 友由
(74)【代理人】
【識別番号】100176810
【氏名又は名称】月成 俊介
(72)【発明者】
【氏名】多々良 直樹
(72)【発明者】
【氏名】望月 清隆
【審査官】五閑 統一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-030515(JP,A)
【文献】国際公開第2020/031917(WO,A1)
【文献】特開2019-051791(JP,A)
【文献】特開2018-122755(JP,A)
【文献】特開2011-192070(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 1/00 ー 1/56
B60R 21/00 ー 21/13
B60R 21/34 ー 21/38
G08G 1/00 ー 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビームを路面に照射する路面描画ランプと、
前記路面描画ランプを制御し、前記ビームによって、車両前方に規則性を有する模様の第1パターンを描画し、所定のイベントが開始すると前記第1パターンに代えて前記第1パターンと利用関係にある第2パターンを描画する制御部と、
を備え、
前記イベントは、歩行者との接近
または幅の狭い道路の走
行であることを特徴とする灯具システム。
【請求項2】
前記第2パターンは、前記第1パターンの少なくとも一部をアニメーション表示、拡大、縮小、回転、明るさ変更または色変更させたパターン、あるいは前記第1パターンの一部を間引いたパターンであることを特徴とする請求項1に記載の灯具システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記イベントが歩行者との接近である場合に歩行者または歩行者の前方位置に向かって伸びる第3パターンをさらに描画することを特徴とする請求項1または2に記載の灯具システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、灯具システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用の灯具の高機能化が進んでおり、その一例として、路面に光ビームのパターンを照射し、図形や文字を描画するランプが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
路面の大きな凹凸に気づかず凹凸上を車両が走行すると、車体が大きく揺れ、乗り心地が不快なものとなる。特許文献1には、路面の凹凸検知の支援のために路面に規則性を有する模様を描画する技術が提案されている。路面に凹凸がある場合、模様が歪むため、凹凸の存在に気づくことができる。
【0005】
一方、交通安全、具体的には車両と歩行者との衝突事故、接触事故を防止するためには、運転者が歩行者にいち早く気づくとともに、歩行者も車両に気づき、双方が回避行動を取ることが重要である。この双方の気づきの支援のために路面に描画する技術も提案されている。
【0006】
本発明者は、路面描画による路面上の凹凸検知の支援と車両と歩行者との間の双方の気づきの支援とを、より低コストに実現できる技術に想到した。
【0007】
本発明はこうした状況においてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、快適な乗り心地と交通安全に寄与する灯具システムを比較的低コストに実現する技術の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の灯具システムは、ビームを路面に照射する路面描画ランプと、路面描画ランプを制御し、ビームによって、車両前方に規則性を有する模様の第1パターンを描画し、所定のイベントが開始すると第1パターンと利用関係にある第2パターンを描画する制御部と、を備える。
【0009】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、快適な乗り心地と交通安全に寄与する灯具システムを比較的低コストに実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施の形態に係る灯具システムのブロック図である。
【
図2】
図2(a)~(c)は、路面上の大きな凹凸の検知を支援するために
図1の配光可変ランプが路面に描画する第1パターンの一例を示す図である。
【
図3】
図3(a)、(b)は、
図1の灯具システムが搭載された車両が曲がるときの路面描画の様子を示す図である。
【
図4】自車両が歩行者と接近したときに
図1の配光可変ランプが路面に描画する第2パターンの一例を示す図である。
【
図5】
図5(a)~(c)は、変形例に係るパターンを示す図である。
【
図6】第2パターンが車幅表示を兼ねる例を説明する図である。
【
図7】路面上の大きな凹凸の検知を支援するために
図1の配光可変ランプが路面に描画するパターンの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。
【0013】
図1は、実施の形態に係る灯具システム100のブロック図である。灯具システム100は、配光可変ランプ(路面描画ランプ)110と、カメラ120と、制御部130と、ロービーム102と、ハイビーム104と、を備える。これらはすべて同じ筐体に内蔵されていてもよいし、いくつかの部材は、筐体の外部、言い換えれば車両側に設けられてもよい。
【0014】
本実施の形態では、配光可変ランプ110は、ロービーム102およびハイビーム104とは別に、追加で設けられている。したがって配光可変ランプ110を、追加ビームと称してもよい。
【0015】
配光可変ランプ110は、制御部130から路面900に描画すべきパターンPTNを指示する制御信号SCTRLを受け、制御信号SCTRLに応じた強度分布902を有するビームBMを車両前方の路面900に照射し、路面900にパターンPTNを描画する。パターンPTNは、ビームBMの照射エリア904内に形成される。
【0016】
配光可変ランプ110の構成は特に限定されず、たとえば、LD(レーザダイオード)やLED(発光ダイオード)などの半導体光源と、半導体光源を駆動して点灯させる点灯回路と、を含みうる。配光可変ランプ110は、配光パターンPTNに応じた照度分布の形成のために、DMD(Digital Mirror Device)や液晶デバイスなどのマトリクス型のパターン形成デバイスを含んでもよい。あるいは配光可変ランプ110は、発光素子のアレイ(μ-LEDともいう)であってもよい。
【0017】
配光可変ランプ110による照射エリアは、少なくとも路面900をカバーするように定められる。したがって配光可変ランプ110による照射エリアは、ロービーム102の照射エリアの一部とオーバーラップしてもよい。したがって配光可変ランプ110は、ロービームよりも明るい照度でパターンPTNを照射してもよい。
【0018】
カメラ120は、車両前方を撮像する。制御部130は、カメラ120が撮影した画像(以下、カメラ画像IMGという)にもとづいて、配光可変ランプ110が路面900に描画すべきパターンPTNを制御してもよい。
【0019】
ハイビーム104は、配光可変ランプ110と同様に、配光可変であってもよい。この場合、制御部130は、カメラ画像IMGにもとづいて、ハイビーム104の配光を制御してもよい。
【0020】
車両ECU(Electronic Control Unit)200から灯具システム100には、配光可変ランプ110、ロービーム102、ハイビーム104のオン、オフなどの指令が送信される。また配光制御に必要な情報が送信される。
【0021】
制御部130はデジタルプロセッサで構成することができ、たとえばCPUを含むマイコンとソフトウェアプログラムの組み合わせで構成してもよいし、FPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specified IC)などで構成してもよい。
【0022】
制御部130は、配光可変ランプ110を制御し、側溝、陥没穴または段差などの路面900上の大きな凹凸の検知を支援するための第1パターンPTN_1を、車両前方の路面900に描画する。詳しくは後述するが、灯具システム100が搭載された車両(以下、「自車両」という)の運転者は、路面900に描画された第1パターンPTN_1を見ることで、路面900上の大きな凹凸を知ることができる。
【0023】
また、制御部130は、所定のイベントが開始すると、第1パターンPTN_1に代えて、第1パターンPTN_1と利用関係にある第2パターンPTN_2を、車両前方の路面900に描画する。制御部130は、イベントが終了すると、第2パターンPTN_2に代えて、再度、第1パターンPTN_1を車両前方の路面900に描画する。
【0024】
所定のイベントは、特に限定されないが、たとえば、歩行者との接近(以下、接近イベントという)、幅の狭い道路の走行(以下、幅狭イベントという)、対向車とのすれ違い(以下、すれ違いイベントという)、交差点への進入(以下、進入イベントという)である。
【0025】
制御部130は、接近イベントの開始および終了を、たとえば、カメラ画像IMGにもとづいて判定してもよい。具体的には例えば、制御部130は、カメラ画像IMGから特定される自車両と歩行者との距離が所定値以下になると接近イベントの開始と判定し、自車両と歩行者との距離が所定値よりも大きくなったり自車両が歩行者の横を通り過ぎたりすると接近イベントの終了と判定してもよい。
【0026】
制御部130は、幅狭イベントの開始および終了を、たとえば、カーナビゲーションシステムの情報にもとづいて判定してもよく、あるいは、カメラ画像IMGにもとづいて判定してもよい。また、制御部130は、運転者が不図示のスイッチに開始、終了の操作入力をしたことをもって幅狭イベントの開始、終了と判定してもよい。
【0027】
制御部130は、すれ違いイベントの開始および終了を、たとえば、カメラ画像IMGにもとづいて判定してもよい。具体的には例えば、制御部130は、カメラ画像IMGにもとづいて、センターラインのない道路において対向車との距離が所定値以下になるとすれ違いイベントの開始と判定し、自車両と対向車両とがすれ違うとすれ違いイベントの終了と判定してもよい。また、制御部130は、運転者が不図示スイッチに開始、終了の操作入力をしたことをもってすれ違いイベントの開始、終了と判定してもよい。
【0028】
制御部130は、進入イベントの開始および終了を、たとえば、カーナビゲーションシステムの情報にもとづいて判定してもよく、あるいは、カメラ画像IMGにもとづいて判定してもよい。
【0029】
第1パターンPTN_1と第2パターンPTN_2とが利用関係にあるとは、第1パターンPTN_1が第2パターンPTN_2を利用したパターンであること、あるいは第2パターンPTN_2が第1パターンPTN_1を利用したパターンであることをいう。より具体的には、第1パターンPTN_1と第2パターンPTN_2とが利用関係にあるとは、たとえば、第1パターンPTN_1および第2パターンPTN_2の一方が、他方(すなわち利用元のパターン)の少なくとも一部をアニメーション表示、拡大、縮小、回転、明るさ変更(調光)または色変更させたパターンであること、あるいは他方の一部を間引いたパターンであることをいう。なお、本明細書におけるアニメーション表示には、点滅表示も含まれる。
【0030】
第1パターンPTN_1と第2パターンPTN_2とが利用関係にある場合、制御部130において実行されるソフトウェアプログラムであって、第1パターンPTN_1および第2パターンPTN_2の一方を描画するためのソフトウェアプログラムを、他方を描画するためのソフトウェアプログラムの作成に流用でき、したがってソフトウェアプログラムの製造コストを低減できる。一方で、第1パターンPTN_1と第2パターンPTN_2とは、利用関係にあるとはいえ別のパターンであるため、イベントの開始に伴って路面描画を第1パターンPTN_1から第2パターンPTN_2に変更し、イベントの終了に伴って路面描画を第2パターンPTN_2から第1パターンPTN_1に変更することで、イベントの開始および終了を自車両の運転手や歩行者に確実に知らせることができる。
【0031】
以上が灯具システム100の基本構成である。続いてその動作を説明する。
【0032】
図2(a)~(c)は、路面900上の大きな凹凸の検知を支援するために配光可変ランプ110が車両906の前方の路面900に描画する第1パターンPTN_1の一例を示す図である。この例では、第1パターンPTN_1は、車両906の進行方向に並ぶように同心円上に配置される複数(N個、この例ではN=7)の円弧状の図形F
1~F
Nを含む模様である。
【0033】
図2(a)では、照射エリア904内の路面900上に大きな凹凸がないため、実質的に歪みのない理想的な模様が描画されている。
【0034】
図2(b)では、照射エリア904内の路面900上に大きな凹凸があるため、凹凸を照射する部分の円弧状の模様(この例では図形F
4の一部分)が歪んでいる、すなわち模様の規則性が崩れている。車両906の運転者は、模様の歪みから、路面900上に大きな凹凸があることを直感的に知ることができる。
【0035】
図2(c)は、
図2(b)から僅かな時間の経過後の様子を示す。
図2(c)では、模様の歪んだ部分を、それ以外の部分とは異なる態様で描画している。より詳しくは、制御部130は、カメラ画像IMGに写る第1パターンPTN_1の模様の歪みを検知し、第1パターンPTN_1のうちの歪んだ部分をそれ以外の部分とは異なる態様で描画する。異ならせる態様は、特には限定しないが、たとえば、色、形状、点灯・点滅状態、照度である。
図2(c)では、歪んだ部分(この例では図形F
4の一部分)の点滅させている。これにより車両906の運転者は、模様の歪みすなわち路面900の凹凸に確実に気づきやすくなる。
【0036】
図3(a)、(b)は、自車両が曲がるときの路面描画の様子を示す図である。
図3(a)では、ビームBMの照射方向を車両906が曲がる方向に向けることで、車両906が曲がる方向に第1パターンPTN_1を描画している。
図3(b)では、ビームBMの照射範囲を車幅方向に広げることで第1パターンPTN_1を車幅方向に広く描画し、車両906が曲がる方向も描画している。これにより、たとえばカーブ走行時に、曲がる方向の路面900上の凹凸に気づくことができる。また、道路脇の駐車場に入る場合などに、縁石の段差の具合を認識できる。
【0037】
制御部130は、カーナビゲーションシステムの情報、方向指示器(ウィンカー)の操作、およびステアリング角の少なくとも1つにもとづいて、車両が曲がることおよびその方向を特定すればよい。なお、
図3(b)の例では、車両が曲がることを特定した場合に車幅方向に広く描画してもよいが、予め車幅方向に広く描画していてもよい。
【0038】
図4は、車両906が歩行者910と接近したとき、すなわち接近イベントが発生したときに配光可変ランプ110が路面900に描画する第2パターンPTN_2の一例を示す図である。この例では、第2パターンPTN_2は、第1パターンPTN_1の複数の複数の図形F
1~F
Nをアニメーション表示したパターンである。なお、実際には車両906は走行しているが、ここでは説明の簡潔化のため、車両906を同じ位置に示す。
【0039】
制御部130は、配光可変ランプ110を制御し、第2パターンPTN_2に含まれる複数の円弧状の図形F1~FNを、車両906側から進行方向に向かって順に描画する。制御部130は、図形F1~FNをすべて描画したら、再度、図形F1~FNを車両906側から進行方向に向かって順に描画する。制御部130は、これを繰り返し実行する。
【0040】
第2パターンPTN_2をアニメーション表示することにより、歩行者910に、車両906が接近していることを直感的に示すことができ、適切な行動対処を促すことができる。また、これにより、自車両が歩行者910を検知しながら走行していることが歩行者910に伝わり、歩行者910に安心感を与えることができる。
【0041】
また、第2パターンPTN_2は第1パターンPTN_1と同様に規則性を有するパターンであるため、第2パターンPTN_2によって路面900上の大きな凹凸の検知も支援できる。
【0042】
第2パターンPTN_2のアニメーションの速度、すなわち図形F1~FNを順に描画する速度は、車両906と歩行者910との距離に応じて変化してもよい。これにより、歩行者910は、アニメーションの速度にもとづいて、車両906までの距離を知ることができ、ひいては追い抜かれるタイミングを知ることができる。また、距離が短いほどアニメーションの速度を高めることで、適切な行動対処をより強く促すことができる。
【0043】
また、
図4の例では、制御部130は、配光可変ランプ110を制御し、第2パターンPTN_2に加えて、歩行者910の足下に向かって延びる第3パターンPTN_3をさらに描画する。なお、第3パターンPTN_3の点灯・点滅状態、第3パターンPTN_3の色と第2パターンPTN_2の色の異同、第3パターンPTN_3の照度と第2パターンPTN_2の照度の異同は特に問わない。第3パターンPTN_3を描画することで、歩行者910に対して適切な行動対処をさらに強く促すことができる。
【0044】
以上説明したように、本実施の形態によれば、路面900上の凹凸検知のために第1パターンPTN_1が描画され、歩行者の接近などの所定のイベントが発生した場合には第1パターンPTN_1と利用関係にある第1パターンPTN_1とは別の第2パターンPTN_2が描画される。そのため、製造コストを低減しつつも、路面の凹凸検知を支援して車両の快適な乗り心地を実現でき、かつ、車両と歩行者との間の双方の気づきを支援して交通安全を実現できる。
【0045】
以上、本発明について、実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例について説明する。
【0046】
(第1変形例)
図5(a)~(c)は、変形例に係る第2パターンPTN_2の一例を示す図である。
図5(a)~(c)の第2パターンPTN_2は、
図2の第1パターンPTN_1と利用関係にある。
【0047】
図5(a)の第2パターンPTN_2は、第1パターンPTN_1の複数の円弧状の図形が1つおきに間引いたパターンである。この場合、イベントが発生していないときは
図2のように円弧状の図形が密に並んだパターンが描画され、イベント中は
図5(a)のように円弧状の図形が疎に並んだパターンが描画される。
【0048】
図5(b)の第2パターンPTN_2は、第1パターンPTN_1の複数の円弧状の図形のそれぞれを車両進行方向に引き伸ばしたすなわち拡大したパターン、言い換えると複数の円弧状の図形のそれぞれを太くしたパターン、さらに言い換えると複数の円弧状の図形のそれぞれを太くした結果、複数の円弧状の図形がより密に並んだパターンである。この場合、イベントが発生していないときは
図2のように細い円弧状の図形が並んだパターンが描画され、イベント中は
図5(b)のように太い円弧状の図形が並んだパターンが描画される。
【0049】
図5(c)の第2パターンPTN_2は、第1パターンPTN_1の複数の円弧状の図形が1つおきに間引き、かつ、残った図形のそれぞれを太くしたパターンである。つまり、
図5(a)と
図5(b)とを組み合わせたパターンである。この場合、イベントが発生していないときは
図2のように細い円弧状の図形が密に並んだパターンが描画され、イベント中は
図5(c)のように太い円弧状の図形が疎に並んだパターンが描画される。
【0050】
本変形例によれば、実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0051】
(第2変形例)
図6は、第2パターンPTN_2が車幅表示を兼ねる例を説明する図である。
図6の第2パターンPTN_2は、
図2の第1パターンPTN_1と利用関係にある。具体的には、第2パターンPTN_2は、第1パターンPTN_1の複数の円弧状の図形F
1~F
Nのそれぞれについて、自車両が上を通過すると予測される部分を拡大すなわち太くしたパターンである。当該部分の幅Wは、車幅に相当する。ここでの車幅は、ミラーを除いた車両の最大幅すなわち車体の幅であってもよく、ミラーを含めた車両の最大幅であってもよく、左右の一方のタイヤから他方のタイヤまでの距離であってもよく、あるいはこれらのいずれかに余裕を持たせた幅であってもよい。車両の通過予測は、たとえば、カーナビゲーションシステムの情報にもとづいて実施されてもよく、ステアリング角にもとづいて実施されてもよい。第2パターンPTN_2は、自車両が上を通過すると予測される第1パターンPTN_1の部分を、アニメーション表示、点滅、縮小、明るさ変更、または色変更したパターンであってもよい。本変形例によれば、自車両の運転者、歩行者および対向車が、自車両が通過すると予測される路面上の領域、言い換えると自車両の車幅を知ることができるため、適切な行動対処を促すことができる。なお、本変形例は、接近イベント、幅狭イベントおよびすれ違いイベントに特に有効である。
【0052】
(第3変形例)
実施の形態では、路面900の凹凸又は障害物の存在を検知するための模様が同心円である場合について説明したが、これには限定されない。当該模様は、規則性を有する模様であればよく、例えば縞模様、格子模様、その他の模様であってもよい。
図7は、第1パターンPTN_1の変形例を示す。
図7の模様は、水玉が規則的に配列された模様である。水玉は、円形状であっても、楕円などの略円形状であってもよい。配光可変ランプ110は、認識すべき凹凸よりも各水玉の最大幅が小さく、水玉の間隔が小さくなるように、第1パターンPTN_1を形成すればよい。灯具システム100は、水玉を光で描画してもよいし、水玉が影として描画してもよい。
【0053】
(第4変形例)
灯具システム100が搭載される車両は、自動運転可能な車両であってもよい。第1パターンPTN_1、第2PTN_Bおよび第3パターンPTN_3は、自動運転中の場合も、手動運転の場合と同様に描画されればよい。制御部130は、カメラ画像IMGを画像処理してカメラ画像IMGに写る第1パターンPTN_1の模様の歪みすなわち路面900の凹凸を検知してもよい。車両ECU200は、この検知結果に基づいて、路面900の凹凸を回避するよう車両を走行させればよい。第2パターンPTN_2および第3PTN_3が描画されることにより、自動運転中の自車両が歩行者を検知しながら走行していることが歩行者に伝わり、歩行者に安心感を与えることができる。
【0054】
(第4変形例)
実施の形態および上述の変形例では特に言及しなかったが、配光可変ランプ110は、赤外光や近赤外光などの非可視光により、第1パターンPTN_1および第2パターンPTN_Bを描画してもよい。この場合、対向車、例えばすれ違いイベントの対向車は、少なくとも非可視光の波長域に感度を有するカメラを備えていれば、カメラ画像に基づいて、自車両が描画するパターンが第1パターンPTN_1から第2パターンPTN_Bに切り替わったこと、すなわち自車両が当該対向車に近接していること検知できる。その結果、対向車は、いち早く適切な行動対処をとることができる。
【0055】
(第6変形例)
実施の形態では、制御部130はカメラ120が撮影したカメラ画像IMGにもとづいて歩行者の接近を判定したが、灯具システム100がステレオカメラ、ToFカメラ、LiDAR、または赤外線センサを含み、その検出結果に基づいて歩行者の接近を判定してもよい。
【0056】
(第7変形例)
実施の形態では、配光可変ランプ110が、ロービーム140およびハイビーム150に対する付加的な光源であったが、ロービーム140およびハイビーム150の少なくとも一方の機能と、配光可変ランプ110とを統合してもよい。
【0057】
実施の形態にもとづき、具体的な語句を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用の一側面を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【符号の説明】
【0058】
100 灯具システム、 110 配光可変ランプ、 130 制御部、 900 路面。