(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-31
(45)【発行日】2024-08-08
(54)【発明の名称】活性エネルギー線硬化型樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08F 290/06 20060101AFI20240801BHJP
C09D 4/02 20060101ALI20240801BHJP
C09D 123/00 20060101ALI20240801BHJP
E04F 15/16 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
C08F290/06
C09D4/02
C09D123/00
E04F15/16 A
(21)【出願番号】P 2020046882
(22)【出願日】2020-03-17
【審査請求日】2023-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】390033628
【氏名又は名称】中国塗料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100152423
【氏名又は名称】小島 一真
(72)【発明者】
【氏名】大橋 基弘
(72)【発明者】
【氏名】林 祐一
(72)【発明者】
【氏名】永瀬 貴教
【審査官】岡部 佐知子
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-143153(JP,A)
【文献】特開2018-141104(JP,A)
【文献】特開2017-105877(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 290/06
C09D 4/02
C09D 123/00
E04F 15/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)高分子量ポリオレフィン粒子と、(B)活性エネルギー線硬化型樹脂と、
(C)(メタ)アクリレートモノマーとを含み、
(A)高分子量ポリオレフィン粒子の含有量が、組成物の固形分換算100質量%を基準として
3質量%以上50質量%以下であ
り、重量平均分子量が、100,000以上4,000,000以下であり、かつ、体積平均粒子径が、5μm以上40μm以下であり、
(B)活性エネルギー線硬化型樹脂が、(b1)2つの不飽和二重結合をもつ2官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含み、(B)活性エネルギー線硬化型樹脂の含有量が、組成物の固形分換算100質量%を基準として15質量%以上70質量%以下であり、
(C)(メタ)アクリレートモノマーの(B)活性エネルギー線硬化型樹脂に対する重量比率は、(B)成分:(C)成分が、80:20~20:80である、塩化ビニル製床材用の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項2】
(A)高分子量ポリオレフィン粒子と、(B)活性エネルギー線硬化型樹脂と、(C)(メタ)アクリレートモノマーとを含み、
(A)高分子量ポリオレフィン粒子の含有量が、組成物の固形分換算100質量%を基準として3質量%以上50質量%以下であり、重量平均分子量が、100,000以上4,000,000以下であり、かつ、体積平均粒子径が、5μm以上40μm以下であり、
(B)活性エネルギー線硬化型樹脂が、(b1)2つの不飽和二重結合をもつ2官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含み、(B)活性エネルギー線硬化型樹脂の含有量が、組成物の固形分換算100質量%を基準として15質量%以上70質量%以下であり、
(C)(メタ)アクリレートモノマーが、少なくともフェノキシポリエチレングリコールアクリレートおよび1,6-へキサンジオールエトキシレートジアクリレートのいずれか1種を含み、(C)(メタ)アクリレートモノマーの(B)活性エネルギー線硬化型樹脂に対する重量比率は、(B)成分:(C)成分が、80:20~20:80である、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項3】
(C)(メタ)アクリレートモノマーが、少なくともフェノキシポリエチレングリコールアクリレートおよび1,6-へキサンジオールエトキシレートジアクリレートを含む、請求項1または2に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項4】
(C)(メタ)アクリレートモノマーが、トリプロピレングリコールジアクリレートをさらに含む、請求項3に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項5】
(D)光重合開始剤をさらに含む、請求項1~
4のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項6】
(D)光重合開始剤の含有量が、組成物の固形分換算100質量%を基準として1~10質量%である、請求項5に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項7】
(B)活性エネルギー線硬化型樹脂の重量平均分子量が、500以上100,000以下の範囲内にある、請求項1~6のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項8】
内装材用、または屋外もしくは半屋外の床材用である、請求項1~7のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項9】
基材の少なくとも片面が、請求項1~8のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物から形成された硬化被膜で被覆されてなる、硬化被膜付き基材。
【請求項10】
前記基材が、内装材用、または屋外もしくは半屋外の床材用である、請求項9に記載の硬化被膜付き基材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に関する。また、本発明は、基材の少なくとも片面が活性エネルギー線硬化型樹脂組成物から形成された硬化被膜で被覆されてなる、硬化被膜付き部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、大型商業施設、公共施設、オフィス等の各種建築物、鉄道やバス等の車両の内装、特に床面には、ポリ塩化ビニル等の合成樹脂製の材料が使用されている。内装材には、様々な汚れに対する汚染除去機能が求められており、油、薬品等に対する各汚染除去機能を有する材料が開発されている。例えば、合成樹脂製の材料は、表面に靴底等の汚れが付着しやすく、美観を保つためには定期的にワックス等による防汚処理(ワックスメンテナンス)を必要とするため、メンテナンスコストが掛かるという問題があった。そこで、ワックスメンテナンスを不要とするために、表面に活性エネルギー線硬化型樹脂組成物による硬化被膜を形成して、表面硬度を向上させることにより、汚染除去性を向上させた合成樹脂製床材が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1では、(メタ)アクリロイル基を有する化合物と光重合開始剤とを含む床材用活性エネルギー線硬化性被覆剤組成物であって、該組成物により形成された硬化塗膜の引張ひずみが25%以下であり、引張強さが10MPa以上であり、且つ引張弾性率が1000MPa以上であり、前記(メタ)アクリロイル基を有する化合物が、少なくともカルボキシル基含有ウレタン(メタ)アクリレートを含む組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、内装材等の基材には、油や薬品等の様々な汚れに対する汚染除去性が要求されており、依然として、汚染除去性の更なる改良の余地があった。
【0006】
したがって、本発明は、耐ヒールマーク性等の汚染除去性に優れた硬化被膜を形成可能な活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意検討した結果、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に特定の重量平均分子量を有する(A)高分子量ポリオレフィン粒子と、(B)活性エネルギー線硬化型樹脂とを含有させ、(A)高分子量ポリオレフィン粒子の含有量を特定の範囲内に調節することにより、上記課題を解決できることを知見した。本発明は、かかる知見に基づいて完成されたものである。
【0008】
すなわち、本発明によれば、以下の発明が提供される。
[1] (A)高分子量ポリオレフィン粒子と、(B)活性エネルギー線硬化型樹脂とを含み、
(A)高分子量ポリオレフィン粒子の含有量が、組成物の固形分換算100質量%を基準として3質量%以上50質量%以下である、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
[2] 前記(B)活性エネルギー線硬化型樹脂が、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含む、[1]に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
[3] 前記ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが、2つ以上の不飽和二重結合をもつ多官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含む、[2]に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
[4] 前記多官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが、(b1)2つの不飽和二重結合をもつ2官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含む、[3]に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
[5] (C)(メタ)アクリレートモノマーをさらに含む、[1]~[4]のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
[6] (D)光重合開始剤をさらに含む、[1]~[5]のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
[7] 活性エネルギー線硬化型樹脂(B)の重量平均分子量が、500以上100,000以下の範囲内にある、[1]~[6]のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
[8] 内装材用、または屋外もしくは半屋外の床材用である、[1]~[7]のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
[9] 基材の少なくとも片面が、[1]~[8]のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物から形成された硬化被膜で被覆されてなる、硬化被膜付き基材。
[10] 前記基材が、内装材用、または屋外もしくは半屋外の床材用である、[9]に記載の硬化被膜付き基材。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ヒールマークによる汚染の除去性(以下、「耐ヒールマーク性」)等の汚染除去性に優れた硬化被膜を形成可能な活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を提供することができる。さらに、本発明によれば、耐ヒールマーク性等の汚染除去性に優れた硬化被膜付き基材を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明をより詳細に説明する。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」はアクリレートおよびメタクリレートを表し、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイルおよびメタクリロイルを表す。
「活性エネルギー線」とは、紫外線の他、可視光線、赤外線、電子線、X線、γ線、プロトン線、中性子線等を含むものを意味する。
「固形分」とは、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物から有機溶剤等の揮発成分を除いたものであり、硬化させたときに硬化被膜を構成する成分を示す。
【0011】
<活性エネルギー線硬化型樹脂組成物>
本発明による活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、少なくとも、(A)高分子量ポリオレフィン粒子と、(B)活性エネルギー線硬化型樹脂とを含むものである。本発明による活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、(C)(メタ)アクリレートモノマーや、(D)光重合開始剤をさらに含んでもよい。このような活性エネルギー線硬化型樹脂組成物から形成された硬化被膜は、耐ヒールマーク性等の汚染除去性に優れるものである。したがって、本発明による活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、耐ヒールマーク性等の汚染除去性に優れた基材用として、特に床材等の内装材、または屋外もしくは半屋外の床材に好適に使用できる。以下、本発明による活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の各成分について詳細に説明する。
【0012】
((A)高分子量ポリオレフィン粒子)
高分子量ポリオレフィン粒子に用いられるポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン及びエチレン-プロピレン等のオレフィンの共重合体等を用いることができる。これらの中では、ポリエチレン及び/又はポリプロピレンが好ましい。ポリエチレンとしては、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、分岐型低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン等が挙げられる。
【0013】
本発明においては、「高分子量ポリオレフィン粒子」とは、100,000以上の重量平均分子量を有するものを言う。高分子量ポリオレフィン粒子の重量平均分子量は、好ましくは100,000以上4,000,000以下であり、より好ましくは150,000以上3,500,000以下であり、さらに好ましくは200,000以上3,000,000以下である。(A)高分子量ポリオレフィン粒子の重量平均分子量が上記範囲内であれば、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物から形成された硬化被膜は、耐ヒールマーク性等の汚染除去性に優れたものとなる。なお、高分子量ポリオレフィン粒子の重量平均分子量は、従来公知の高温ゲルパーミネーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定され、標準物質としてポリスチレン、ジベンジルを用いたポリスチレン、ジベンジル換算重量平均分子量である。GPC測定条件は、カラムセットとして、ShodexHT-G(ガードカラム)、ShodexHT-806M(昭和電工製)を用い、溶離液として、1,2,4-トリクロロベンゼン(0.1%BHT添加)を用い、温度145℃で、流速1.0ml/minで測定した。高温GPCの測定装置としては、機器No.HT-GPC-1、Polymer Laboratories製PL-220を用いた。
【0014】
(A)高分子量ポリオレフィン粒子の体積平均粒子径は、特に限定されないが、好ましくは1μm以上100μm以下であり、より好ましくは3μm以上50μm以下であり、さらに好ましくは5μm以上40μm以下である。(A)高分子量ポリオレフィン粒子の体積平均粒子径が上記範囲内であれば、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物から形成された硬化被膜は、耐ヒールマーク性等の汚染除去性に優れたものとなる。なお、体積平均粒子径は、市販の粒度分布測定機を用いて測定することができる。
【0015】
(A)高分子量ポリオレフィン粒子の含有量は、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の固形分換算100質量%を基準として1質量%以上50質量%以下であり、好ましくは1質量%以上40質量%以下であり、より好ましくは3質量%以上30質量%以下であり、更に好ましくは3質量%以上20質量%以下である。(A)高分子量ポリオレフィン粒子の含有量が上記範囲内であれば、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物から形成された硬化被膜は、耐ヒールマーク性等の汚染除去性に優れたものとなる。
【0016】
((B)活性エネルギー線硬化型樹脂)
(B)活性エネルギー線硬化型樹脂(以下、(B)成分ともいう。)とは、少なくとも1つ以上の不飽和二重結合を有するオリゴマーおよびポリマーから選択される少なくとも1種である。(B)成分は、エネルギー照射された時に不飽和二重結合が重合することで、硬化被膜(硬化物)を形成する。前記不飽和二重結合を有する官能基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基、スチリル基等を挙げることができ、活性エネルギー線照射時の反応性の観点から、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0017】
(B)成分としては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマー、アクリル(メタ)アクリレートオリゴマー等が挙げられるが、これに限定されるものではない。これらの中でも、硬化被膜の汚染除去性の観点から、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましい。このような(B)成分は、従来公知の方法により製造することができる。
【0018】
上記ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、ポリイソシアネートと、水酸基含有(メタ)アクリレートと、必要に応じて水酸基含有(メタ)アクリレート以外のポリオールとを反応させることによって得られ、分子中に官能基としてアクリロイル基(CH2=CHCO-)および/またはメタクリロイル基(CH2=C(CH3)-CO-)と、ウレタン結合(-NH・COO-)とを有する。
【0019】
上記ポリイソシアネートとしては、本発明の効果を損なわない限り炭素数を限定するものではないが、たとえば、全炭素数が4~20、好ましくは6~15の直鎖状または分岐状のイソシアネート基含有炭化水素、イソシアネート基含有環状炭化水素、イソシアネート基含有芳香族炭化水素を用いることができる。
【0020】
具体的には、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等のイソシアネート基含有直鎖状炭化水素、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等のイソシアネート基含有分岐鎖状炭化水素、イソホロンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、水添キシレンジイソシアネート、水添トルエンジイソシアネート等のイソシアネート基含有環状炭化水素、p-フェニレンジイソシアネート、3,3’-ジメチルジフェニル-4,4’-ジイソシアネート、1,3-キシレンジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、4、4-ジフェニルメタンジイソシアネート等のジイソシアネート基含有芳香族炭化水素等が挙げられるが、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0021】
上記ポリイソシアネートは、イソシアヌレート等に変性されていてもよく、イソシアヌレート変性されたものとしては、たとえば、イソシアヌレート変性トルエンジイソシアネート等が挙げられる。また、上記以外のポリイソシアネートとして、ジメチルトリフェニルメタンテトライソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、イソシアネート基含有アクリレート等の多官能イソシアネートを用いてもよい。このようなポリイソシアネートは、1種単独でも、また2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0022】
上記水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、水酸基を少なくとも1個以上、好ましくは1~5個有する(メタ)アクリレートを用いることができる。また、このような水酸基含有(メタ)アクリレートは、本発明の効果を損なわない限りその炭素数を限定するものではないが、好ましくは炭素数が2~20の炭化水素部位を有することが望ましい。ここで、炭化水素部位とは、直鎖状または分岐状の脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、あるいは芳香族炭化水素基を有する有機基をいい、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基は、飽和でも不飽和でもよい。なお、当該炭化水素部位の一部には、エーテル結合(C-O-C結合)が含まれていてもよい。
【0023】
具体的には、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシ-3-クロロプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリシドールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート等が挙げられるが、かかる例示のみに限定されるものではない。また、上記以外にも、ポリカプロラクトン変性2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の変性体を用いてもよい。このような水酸基含有(メタ)アクリレートは、1種単独でも、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0024】
必要に応じて用いられる、上記水酸基含有(メタ)アクリレート以外のポリオールとしては、ポリエーテルポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール等の公知のポリオールを用いることができ、具体的には、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物、ポリカプロラクトンポリオール、アルキレンジオール等が挙げられるが、かかる例示のみに限定されるものではない。このようなポリオールは、1種単独でも、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0025】
活性エネルギー線硬化型樹脂(B)のゲルパーミエーションクロマトグラフィーの重量平均分子量は、通常500~100,000、好ましくは600~50,000、より好ましくは1,000~30,000である。本明細書において、重量平均分子量は、(GPC)法により測定される標準ポリスチレン換算の値である。
【0026】
活性エネルギー線硬化型樹脂(B)の含有量は、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の固形分換算100質量%を基準として、通常5質量%以上99質量%以下、好ましくは10質量%以上90質量%以下、より好ましくは15質量%以上70質量%以下である。活性エネルギー線硬化型樹脂(B)の含有量が上記範囲内であれば、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物から形成された硬化被膜は、油や薬品等の各種の汚れに対する汚染除去性により優れたものとなる。
【0027】
((b1)2つの不飽和二重結合をもつ2官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー)
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、(B)活性エネルギー線硬化型樹脂として、2つの不飽和二重結合をもつ2官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(以下、(b1)成分ともいう。)を用いることが好ましい。(b1)成分を含む活性エネルギー線硬化型樹脂組成物から形成される硬化被膜は、汚染除去性により優れる。
【0028】
(b1)2官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、前記のポリイソシアネート、水酸基含有(メタ)アクリレートおよび必要に応じて水酸基含有(メタ)アクリレート以外のポリオールと反応させることによって得られるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーのうち、2官能のものを適宜選択して利用することができる。市販されているものとしては、具体的には、UV-841、UV-71、UV-72、UV-73、UV-820、UV-822、UV-831(商品名、以上、大竹明新化学株式会社製)、EBECRYL210、EBECRYL215、EBECRYL230、EBECRYL244、EBECRYL245、EBECRYL270、EBECRYL284、EBECRYL285、EBECRYL8402、EBECRYL9270、(商品名、以上ダイセル・オルネクス株式会社製)、紫光UV-3310B、紫光UV-6630B、紫光UV-6640B(商品名、以上日本合成化学工業株式会社製)、UA-122P、U-200PA、UA-4200(商品名、以上新中村化学工業株式会社製)、アートレジンUN-333、アートレジンUN-2600、アートレジンUN-2700、アートレジンUN-9000PEP(商品名、以上根上工業株式会社製)等が挙げられる。このような2官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(b1)は、1種単独でも、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0029】
(b1)2官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの重量平均分子量は、通常500~50,000、好ましくは600~20,000、より好ましくは1,000~15,000である。
【0030】
((b2)3つ以上の不飽和二重結合をもつ3官能以上のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー)
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、(B)活性エネルギー線硬化型樹脂として、2官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(b1)とともに、あるいは2官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(b1)の代わりに、3つ以上の不飽和二重結合をもつ3官能以上のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(b2)(以下、(b2)成分ともいう。)を含有しても良い。(b2)成分を用いる本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物から形成される硬化被膜は、表面硬度が向上することによって、より汚れが付着しにくくなり、汚染除去性が向上する。(b1)成分と(b2)成分を併用する場合、得られる硬化被膜は、汚染除去性により優れたものとなる。
【0031】
(b2)3官能以上のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、前記のポリイソシアネート、水酸基含有(メタ)アクリレートおよび必要に応じて水酸基含有(メタ)アクリレート以外のポリオールとを反応させることによって得られるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーのうち、3官能以上のものを適宜選択して利用することができる。市販されているものとしては、具体的には、UV-55(商品名、大竹明新株式会社製)、EBECRYL 4738、EBECRYL 4740、EBECRYL 8254(商品名、ダイセル・オルネクス株式会社製)等が挙げられる。このような3官能以上のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(b2)は、1種単独でも、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0032】
(b2)3官能以上のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの重量平均分子量は、通常500~50,000、好ましくは600~20,000、より好ましくは1,000~15,000である。
【0033】
((C)(メタ)アクリレートモノマー)
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、(メタ)アクリレートモノマー(以下、(C)成分ともいう。)が含有されていてもよい。(C)(メタ)アクリレートモノマーは、少なくとも1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有するモノマーであり、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の粘度を調整する反応性希釈剤としての役割を有し、樹脂組成物に対して活性エネルギー線照射した際、(B)活性エネルギー線硬化性樹脂とともに硬化被膜を形成する。
【0034】
(C)(メタ)アクリレートモノマーとしては、たとえば、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、1,6-へキサンジオールエトキシレートジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-へキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2-(2-エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエトキシレートジ(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等を挙げることができるが、これに限定されるものではない。また、このような(メタ)アクリレート系モノマーは、たとえばε-カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールの(メタ)アクリレート等のラクトン変性体であってもよい。
【0035】
上記のうちでも、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の粘度調整および硬化被膜の硬度調整の観点から、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、および1,6-へキサンジオールエトキシレートジアクリレートが好ましい。フェノキシポリエチレングリコールアクリレートまたはメトキシトリエチレングリコールアクリレートを用いると、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の粘度調整が行いやすい。また、トリプロピレングリコールジアクリレートまたは1,6-へキサンジオールエトキシレートジアクリレートを用いると硬化被膜の硬度調整が行いやすい。特に、フェノキシポリエチレングリコールアクリレートとトリプロピレングリコールジアクリレートを併用すると、耐摩耗性に優れる。このような(メタ)アクリレートモノマーは、1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0036】
(C)(メタ)アクリレートモノマーを用いる場合は、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物中に、組成物の固形分換算100質量%を基準として、通常95質量%以下の量で含まれ、好ましくは10~90質量%、より好ましくは20~70質量%の割合で含有される。また、(C)(メタ)アクリレートモノマーの(B)活性エネルギー線硬化型樹脂に対する重量比率は、(B)成分:(C)成分が、通常は100:0~5:95、好ましくは80:20~20:80、さらに好ましくは70:30~30:70の比率にあることが望ましい。
【0037】
((D)光重合開始剤)
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を紫外線等の光により重合硬化させる場合には、光重合開始剤(以下、(D)成分ともいう。)を使用する。電子線により重合硬化させる場合は、通常用いない。
【0038】
(D)光重合開始剤としては、具体的には、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン系光重合開始剤;ベンジルジメチルケタール(別名、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン)、ジエトキシアセトフェノン、4-フェノキシジクロロアセトフェノン、4-t-ブチル-ジクロロアセトフェノン、4-t-ブチル-トリクロロアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、1-(4-ドデシルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1、メチルベンゾイルホルメート等のアセトフェノン系光重合開始剤;ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系光重合開始剤;チオキサントン、2-クロルチオキサントン、2-メチルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン系光重合開始剤;2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤等が挙げられる。中でも、ベンゾフェノン系光重合開始剤が好ましく、ベンゾフェノンがより好ましい。このような光重合開始剤(D)は、1種単独でも、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0039】
(D)光重合開始剤を用いる場合は、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物中に、組成物の固形分換算100質量%を基準として、通常1~10質量%、好ましくは3~7質量%の割合で用いることが望ましい。
【0040】
(その他の成分)
本発明に係る活性エネルギー線硬化型樹脂組成物中には、上記成分の他に、更に必要に応じて、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、アクリルオリゴマー、シリコーンアクリレート、シリコーン変性ウレタンアクリレート、フッ素変性ウレタンアクリレート、およびフッ素変性アクリレート等の上記成分以外のアクリレート、重合禁止剤、非反応性希釈剤、艶消し剤、消泡剤、沈降防止剤、レベリング剤、分散剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、防汚性向上剤、基材密着性向上剤、光増感剤、帯電防止剤、抗菌剤、防カビ剤、抗ウイルス剤、シランカップリング剤、可塑剤等を、本発明の目的を損なわない範囲で用いることができる。
【0041】
なお、本実施形態に係る活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、シンナーやアルコール等の有機溶剤(非反応性希釈剤)で希釈する溶剤型樹脂組成物、また、有機溶剤で希釈する必要が無い無溶剤型樹脂組成物のどちらとしても構わない。ただし、揮発性有機化合物(VOC)の残留がないため、人体への影響がなく環境対応性に優れる等の理由から、無溶剤型樹脂組成物であることが好ましい。
【0042】
(活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の調製方法)
本発明に係る活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、上記の諸成分を従来より公知の混合機、分散機、撹拌機等の装置を用い、混合・撹拌することにより得られる。このような装置としては、たとえば混合・分散ミル、モルタルミキサー、ロール、ペイントシェーカー、ホモジナイザー等が挙げられる。
本発明の組成物の25℃における粘度は、通常10~100,000mPa・s、好ましくは100~30,000mPa・sである。粘度の測定はB型粘度計を用いる。
【0043】
[硬化被膜付き基材]
本発明に係る硬化被膜付き基材は、少なくとも片面が、上記の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物から形成された硬化被膜で被覆されてなる。硬化被膜は、基材の片面全面に設けられていてもよく、片面の一部にのみ設けられていてもよく、また基材の両面に設けられていてもよい。一部に設ける場合の硬化被膜の態様は特に制限されず、たとえば、海島状の海部または島部、格子状、モザイク状など任意の態様を特に制限することなく採用できる。
【0044】
(基材)
本発明において、基材は、内装材として用いることができる。内装材とは、建築物や車両等の内部で使用される部材をいう。例えば、窓、壁、天井、床、屋根、建具、壁紙などが挙げられる。また、基材は、屋外や半屋外の床材としても用いることもできる。特に、汚染除去性が要求される床材や壁材等が好ましく、床材がより好ましい。基材としては、例えば、合成樹脂からなる基材が挙げられる。合成樹脂としては、熱可塑性樹脂および熱硬化型樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、具体的にはポリ塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂等が挙げられる。また熱硬化型樹脂としては、具体的にはフェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、尿素系樹脂、メラミン系樹脂等が挙げられる。それらのうち、合成樹脂製床材用とする場合は、加工性や床材としての施工容易性の面から、熱可塑性樹脂が好ましく、中でも塩化ビニル系樹脂がより好ましい。基材の厚さは特に制限されないが、0.2~10mmが好ましく、1~5mmがより好ましい。
【0045】
(硬化被膜)
硬化被膜は、上記の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物から形成される。硬化被膜の膜厚は特に限定されないが、汚染除去性の長期的な維持の観点から、通常1~100μm、好ましくは3~70μm、さらに好ましくは5~50μmが望ましい。本発明における膜厚とは、硬化被膜の断面を光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡(SEM)等にて観察した際の、硬化被膜の厚さを指す。このような膜厚の被膜を形成する際は、1回の塗装で、所望の厚みの被膜を形成してもよいし、複数回の塗装で、所望の厚みの被膜を形成してもよい。
【0046】
<硬化被膜付き基材の製造方法>
本発明による硬化被膜付き基材は、基材の少なくとも片面に、上記の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を塗布する工程(塗布工程)と、該塗布面に活性エネルギー線を照射して、該組成物を硬化させる工程(硬化工程)とを含むものである。
【0047】
(塗布工程)
塗布工程は、基材の少なくとも片面に、従来公知の方法により、上記の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を塗布する工程である。塗布には、例えば、バーコーター、グラビアコーター、ロールコーター(ナチュラルロールコーターおよびリバースロールコーター等)、エアナイフコーター、スピンコーターおよびブレードコーター等の塗布機が使用できる。これらの中でも、作業性および生産性の観点からロールコーターを用いた塗布方法が好ましい。
【0048】
塗布膜厚は、硬化乾燥後の膜厚として、1~100μmであることが好ましい。乾燥性、硬化性の観点から更に好ましい上限は100μmであり、耐摩耗性、汚染除去性の観点から更に好ましい下限は1μmである。
【0049】
活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を溶剤で希釈して使用する場合は、塗布後に乾燥することが好ましい。乾燥方法としては、例えば熱風乾燥(ドライヤー等)が挙げられる。乾燥温度は、好ましくは10~200℃、塗膜の平滑性および外観の観点から更に好ましい上限は150℃、乾燥速度の観点から更に好ましい下限は30℃である。
【0050】
(硬化工程)
硬化工程は、基材の塗布面に活性エネルギー線を照射して、塗布された活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を硬化させて、硬化被膜を形成する工程である。活性エネルギー線としては、紫外線(遠紫外線、近紫外線等)、赤外線等の光線に加えて、電子線等が挙げられ、中でも、硬化速度、照射装置の入手のし易さ、価格等の面から、紫外線が好ましい。
【0051】
本発明による活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を、上記紫外線等の光線により硬化させる場合は、光重合開始剤を使用する。一方、上記電子線等により硬化させる場合は、通常、光重合開始剤を使用しなくてもよい。
【0052】
紫外線で硬化させる方法としては、200~500nm波長域の光を発する高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、UV-LED等を用いて、紫外線を照射する方法等が挙げられる。紫外線の照射量は、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の硬化性および硬化物の可撓性の観点から、好ましくは100~3,000mJ/cm2であり、より好ましくは200~2,000mJ/cm2である。
【実施例】
【0053】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0054】
<活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の調製>
まず、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の調製のために、以下の原材料を準備した。
・高分子量ポリエチレン粒子1、(体積平均粒子径:26~34μm、SHAMROCK製、商品名:UMFI-30N)
・高分子量ポリエチレン粒子2(重量平均分子量:533,000、体積平均粒子径:26~34μm、SHAMROCK製、商品名:UMFI-30X)
・他のポリエチレン粒子1(重量平均分子量:22,400、体積平均粒子径:15μm、SHAMROCK製、商品名:TABER TIGER5512)
・2官能ウレタンアクリレート(大竹明新化学株式会社製、商品名:UV-841)
・単官能アクリレート(共栄社化学株式会社製、商品名:ライトアクリレートP-200A)
・2官能アクリレート1(Miwon Specialty Chemical社、商品名:Miramer M-220)
・2官能アクリレート2(Miwon Specialty Chemical社製、商品名:Miramer M-202)
・光重合開始剤1(ChemFine International社製、商品名:HYCURE BENZOPHENONE)
・光重合開始剤2(IGM Resin社製、商品名:Omnirad MBF)
・重合禁止剤(宇部興産株式会社製、ハイドロキノン)
・レベリング剤(東レ・ダウコーニング株式会社製、商品名:DC 57 ADDITIVE(ペインタッド57))
・消泡剤(ビックケミー株式会社製、商品名:BYK-1790)
【0055】
[実施例1~4、比較例1~2]
<活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の調製>
表1に記載の配合に従って、(A)成分または(A)成分以外の粒子、(B)成分、(C)成分、(D)成分、およびその他の成分を、ホモディスパーを用いて混合・攪拌して、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を得た。
【0056】
<硬化被膜付き基材の製造>
上記の実施例1~4と比較例1~2で調製した活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を、ポリカーボネート(ホワイト)板(TP技研株式会社製、厚さ2mm)に4ミルのフィルムアプリケーターを用いて塗工し、高圧水銀ランプ(アイグラフィックス社製)にて、紫外線を積算光量600mJ/cm2で照射し、硬化させて硬化被膜付き基材を得た。
【0057】
<評価>
(汚染除去性)
上記で製造した硬化被膜付き基材の硬化被膜表面に、JFPA規格-11耐ヒールマーク性試験に用いる標準ゴムブロックで5回擦り付けた。擦り付けた際に付着したゴム汚れをキムタオル(日本製紙クレシア株式会社製)にて拭き取り、ゴム汚れの除去性の程度を観察した。下記の基準で評価し、評価結果を表1に示した。評価が「○」であるものを合格とした。
[評価基準]
○:ゴム汚れが除去されていた。
×:ゴム汚れが残っていた。
【0058】