(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-31
(45)【発行日】2024-08-08
(54)【発明の名称】化学強化透明基板内の応力を特性決定するためのハイブリッドシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
G01L 1/24 20060101AFI20240801BHJP
C03C 21/00 20060101ALI20240801BHJP
G01N 21/41 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
G01L1/24 Z
C03C21/00 101
G01N21/41 Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020050974
(22)【出願日】2020-03-23
【審査請求日】2023-03-22
(32)【優先日】2019-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100123652
【氏名又は名称】坂野 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】ライアン クロード アンドリューズ
(72)【発明者】
【氏名】ピエール マイケル ブジ
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム ジョン ファーナス
(72)【発明者】
【氏名】ジェレマイア ロバート ジェイコブソン
(72)【発明者】
【氏名】グレン アブラム ニューカマー
(72)【発明者】
【氏名】エヴァン ルイス オルソン
(72)【発明者】
【氏名】ババク ロバート ラジ
(72)【発明者】
【氏名】ロスティスラフ ヴァチェフ ルセフ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィクトル ステパノフ
(72)【発明者】
【氏名】ナサニエル ディヴィッド ウェットモア
【審査官】大森 努
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/056121(WO,A1)
【文献】特表2018-527282(JP,A)
【文献】米国特許第04655589(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 1/24
C03C 21/00
G01N 21/17-21/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項2】
前記プリズム支持フレーム
(48
)は一体成型構造を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記プリズム支持フレーム
(48
)は、前記EPCS結合プリズム
(42A
)と前記LSP結合プリズム
(42B
)とを光学的に互いから隔離する隔離部材
(50
)を備える、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記隔離部材
(50
)は、前記EPCS結合プリズムの前記EPCS結合面
(45A
)と前記LSP結合プリズムの前記LSP結合面
(45B
)とを流体的に隔離
して、前記EPCS結合プリズム(42A)およびLSP結合プリズム(42B)が使用する屈折率適合用流体(5A、5B)の混合を防止する、請求項3に記載のシステム。
【請求項6】
【数1】
は、前記表面付近スパイク領域R1のTM屈折率及びTE屈折率であり、n
f=n
oilであり、
【数2】
は、それぞれTM臨界屈折率及びTE臨界屈折率であり、前記屈折率適合用流体
(5
)の前記屈折率n
oilは、以下の条件:
【数3】
のうちの少なくとも1つを満たすように選択される、請求
項5に記載のシステム。
【請求項8】
前記EPCS検出器システム
(100
)は、前記EPCS結合プリズム
(42A
)によって前記表面付近導波路
(18
)内へと結合される、及び前記表面付近導波路
(18
)から反射光
(116R
)として結合される、前記
EPCS光源
システム(110
)からの光
(116
)に基づいて、前記表面付近導波路
(18
)のモードスペクトル
(160
)をキャプチャするよう構成され、
前記EPCS検出器システム
(140
)は、デジタル検出器
(150
)に対する動作可能に配設された集束レンズ
(142
)を備え、
前記モードスペクトル
(160
)はコントラストを有し、
前記集束レンズ
(142
)は、前記モードスペクトル
(160
)の前記コントラストを調整するために、調整可能な位置及び調整可能な焦点距離のうちの少なくとも一方を有する、請求項1~7のいずれか1項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、米国特許法第119条(e)の下で、2019年3月22日出願の米国仮特許出願第62/822,437号の優先権の利益を主張するものであり、上記仮特許出願は参照によりその全体が本出願に援用される。
【技術分野】
【0002】
本開示は、透明化学強化基板内の応力を特性決定することに関し、特に化学強化透明基板内の応力を特性決定するためのハイブリッドシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
化学強化プロセスを経た透明基板は、擦傷及び破壊に対する耐性が上昇している。このような基板は、テレビのスクリーンから、コンピュータのスクリーン、移動体ハンドヘルドデバイスのスクリーン、そして腕時計にまで至る、多様なディスプレイ用途に極めて有用である。例示的な化学強化プロセスはイオン交換(IOX)プロセスであり、これにより、ガラス系基板の表面付近の領域のイオンが、例えば塩浴からの外部のイオンと交換される。
【0004】
透明化学強化(CS)基板の製造には、所与の用途に好適な所望のレベルの化学強化を該CS基板が有することを保証するために、該基板の応力を特性決定することが必要である。この特性決定には、典型的には、CS基板の表面から中央までの応力プロファイルと、圧縮応力、ニー応力、スパイク層深さ、合計層深さ、圧縮深さ、及び中央張力といった関連する応力パラメータとを、測定することが必要である。他の応力関連パラメータとしては、CS基板内への深さによる複屈折の変動が挙げられる。
【0005】
透明CS基板の応力の特性決定に使用される主要な方法は2つ存在する。第1の方法は、エバネッセントプリズム結合分光法(evanescent prism coupling spectroscopy:EPCS)を利用する。EPCS法は、結合プリズムを用いて、例えばIOXプロセスによって基板内に形成された表面付近導波路(near‐surface waveguide:NSWG)によってサポートされた導波モードへと結合する。結合プリズムはまた、NSWGの外の光を結合して導波モードスペクトルを形成するために使用される。導波モードスペクトルは、TEモード線を有する横電気(transverse electric:TE)モードスペクトル及びTMモード線を有する横磁気(transverse magnetic:TM)スペクトルを含む。TE及びTMモード線を分析して、応力プロファイルを含む応力関連特性を抽出する。EPCS法は、CS基板の表面付近領域の応力(例えば表面圧縮応力及びスパイク層深さ)を特性決定するために特に有用であるが、基板内のより深い位置にある中央張力(CT)及び圧縮深さ(DOC)を特性決定するためには有用ではない。
【0006】
第2の主要な方法は、光散乱偏光測定(light‐scattering polarimetry:LSP)を利用する。LSPでは、CS基板に、結合プリズムを通して比較的浅い角度で入力レーザ光を照射する。光補償板を用いて、レーザ光の偏光を、異なる偏光状態の間で連続的に変化させる。画像センサで散乱光を検出する。CS基板内の応力は、光経路に沿った光遅延を引き起こし、応力の量は光遅延の導関数に比例する。光遅延の量は、検出した散乱光強度分布から決定でき、これは、検出される光の異なる複数の有効経路長に関する強め合う干渉及び弱め合う干渉によって変化する。LSP法は、中央張力(CT)及び圧縮深さ(DOC)といった特定の応力関連特性の測定に有用であるが、表面付近の応力に関連する特性を測定するためには有用ではない。
【0007】
現在、CS基板の応力プロファイルを表面から中央まで完全に特性決定するためには、まずEPCS測定システムを用いてCS基板を測定した後、LSP測定システムへと移し、2つの測定をつなぎ合わせる。これには時間がかかり、またCS基板を2つの測定システム間で移動させる際にCS基板を操作しなければならないことにより、破壊のリスクが導入される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、EPCS測定及びLSP測定の両方を実施できる単一の測定システムを得ることが、より有利となる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書で開示されるハイブリッド測定システム及び方法は、表面応力S(0)、ニー応力Sk=S(xk)を含む表面付近圧縮応力プロファイルS(x)、層深さDOL、中央張力CT、及び圧縮深さDOCを含む、透明CS基板の全(full)応力の特性決定を可能とする。全応力の特性決定は、EPCS測定及びLSP測定の両方を用いた応力の計算を組み合わせることによって得られる。
【0010】
本開示のある実施形態は、上面と表面付近導波路とを有するCS基板内の応力を特性決定するためのシステムを対象とする。上記システムは:EPCS結合面を有するEPCS結合プリズムを通して光学的に連通したEPCS光源システム及びEPCS検出器システムを備える、EPCSサブシステム;LSP結合面を有するLSP結合プリズムを通して光学的に連通したLSP光源システム、光補償板、及びLSP検出器システムを備える、LSPサブシステム;上記EPCS結合面及び上記LSP結合面が概ね共通平面内にあるように、上記EPCS結合プリズム及び上記LSP結合プリズムを動作可能に支持するよう構成された、プリズム支持フレームを備える、結合プリズム組立体;並びに表面及び測定アパーチャを有する支持プレナムを備え、上記支持プレナムは、上記測定アパーチャの測定平面において上記CS基板を支持するよう構成され、また、上記EPCS結合面及び上記LSP結合面が概ね上記測定平面内にあるように、上記結合プリズム組立体を上記測定アパーチャにおいて動作可能に支持するよう構成される。
【0011】
本開示の別の実施形態は、表面と表面付近導波路とを有するCS基板の第1及び第2の応力特性を測定する方法を対象とし、上記方法は:上記CS基板の上記表面を、測定位置において結合プリズム組立体に対して動作可能に配置するステップであって、上記結合プリズム組立体は、それぞれ隣接するEPCS結合境界面及びLSP結合境界面を画定するEPCS結合プリズム及びLSP結合プリズムを備える、ステップ;上記EPCS結合境界面を用いて上記CS基板のEPCS測定を実施することにより、上記第1の応力特性を取得し、また、上記結合プリズム組立体又は上記CS基板を上記測定位置から取り外すことなく、上記LSP結合境界面を用いて上記CS基板のLSP測定を実施することにより、上記第2の応力特性を取得するステップ;並びに上記第1の応力特性及び上記第2の応力特性を組み合わせて、上記CS基板の全応力特性を確立するステップを含む。
【0012】
第1の実施形態では、上面と表面付近導波路とを有する化学強化(CS)基板内の応力を特性決定するためのシステムは:EPCS結合面を有するEPCS結合プリズムを通して光学的に連通したEPCS光源システム及びEPCS検出器システムを備える、エバネッセントプリズム結合分光法(EPCS)サブシステム;LSP結合面を有するLSP結合プリズムを通して光学的に連通したLSP光源システム、光補償板、及びLSP検出器システムを備える、散乱光偏光測定(LSP)サブシステム;上記EPCS結合面及び上記LSP結合面が概ね共通平面内にあるように、上記EPCS結合プリズム及び上記LSP結合プリズムを動作可能に支持するよう構成された、プリズム支持フレームを備える、結合プリズム組立体;並びに表面及び測定アパーチャを有する支持プレナムを備え、上記支持プレナムは、上記測定アパーチャの測定平面において上記CS基板を支持するよう構成され、また、上記EPCS結合面及び上記LSP結合面が概ね上記測定平面内にあるように、上記結合プリズム組立体を上記測定アパーチャにおいて動作可能に支持するよう構成される。
【0013】
第2の実施形態では、第1の実施形態に関して、上記CS基板は透明であり、ガラス材料、ガラスセラミック材料、又は結晶質材料を含む。
【0014】
第3の実施形態では、第1又は第2の実施形態に関して、上記CS基板の上記表面付近導波路は、少なくとも1つのイオン交換(IOX)領域によって画定される。
【0015】
第4の実施形態では、第1~第3の実施形態のいずれに関して、上記CS基板の上記表面付近導波路は、表面付近スパイク領域及び深部領域によって画定される。
【0016】
第5の実施形態では、第1~第4の実施形態のいずれに関して、上記プリズム支持フレームは一体成型構造を備える。
【0017】
第6の実施形態では、第1~第5の実施形態のいずれに関して、上記EPCS結合プリズム及び上記LSP結合プリズムは、共通の結合プリズムの第1及び第2のセクションによって構成される。
【0018】
第7の実施形態では、第1~第5の実施形態のいずれに関して、上記プリズム支持フレームは、上記EPCS結合プリズム及び上記LSP結合プリズムのうちの少なくとも一方を移動させるために調整可能である。
【0019】
第8の実施形態では、第1~第5の実施形態のいずれに関して、上記プリズム支持フレームは隔離部材を備え、上記隔離部材は:
i)上記EPCS結合プリズムと上記LSP結合プリズムとを流体的に互いから隔離する;及び
ii)上記EPCS結合プリズムと上記LSP結合プリズムとを光学的に互いから隔離する
のうちの少なくとも一方である。
【0020】
第9の実施形態では、第1~第8の実施形態のうちのいずれは、上記CS基板の上記上面が、上記EPCS結合プリズムの上記EPCS結合面及び上記LSP結合プリズムの上記LSP結合面と連結されることによって、EPCS結合境界面及びLSP結合境界面がそれぞれ画定されるように、上記支持プレナムの上記表面上に動作可能に支持された、又は上記支持プレナムの上記表面に隣接する、上記CS基板を更に備え、ここで上記EPCS結合境界面及び上記LSP結合境界面は、共通の屈折率適合用流体を共有し;
上記CS基板は、表面屈折率nSを有する表面付近スパイク領域と、上記スパイク領域のすぐ隣の、上記CS基板の上記上面とは反対側の深部領域とを含み、上記屈折率適合用流体は屈折率nfを有し、Δn=nf-nSは0.02~0.06であり;
λは測定波長であり、n(z)は上記表面付近スパイク領域の屈折率プロファイルであり、上記CS基板の上記表面付近スパイク領域は、正規化済み勾配Sn=|(λ/n)dn(z)/dz|<0.0005を有する。
【0021】
第10の実施形態では、第1~第9の実施形態のいずれに関して、
【0022】
【0023】
は、上記表面付近スパイク領域のTM屈折率及びTE屈折率であり、nf=noilであり、
【0024】
【0025】
は、それぞれTM臨界屈折率及びTE臨界屈折率であり、上記屈折率適合用流体の上記屈折率noilは、以下の条件のうちの少なくとも1つを満たすように選択される:
【0026】
【0027】
第11の実施形態では、第1~第10の実施形態のいずれに関して、上記CS基板は、上記支持プレナムの上記表面に沿って移動するよう構成された可動式基板ホルダによって、動作可能に支持される。
【0028】
第12の実施形態では、第1~第11の実施形態のいずれのシステムは、圧力‐真空(pressure‐Vacuum:PV)システムを更に備え、上記PVシステムは、PV源と、PVバーのアレイとを備え、上記PVバーは、上記PV源に空気圧的に結合され、また上記測定アパーチャ内において、上記測定平面付近及び上記結合プリズム組立体付近に配置され、これにより、上記CS基板が上記支持プレナムの上記表面によって支持されているときに、上記CS基板に空気圧で係合する。
【0029】
第13の実施形態では、第1~第12の実施形態のいずれに関して、上記EPCS検出器システムは、上記EPCS結合プリズムによって上記表面付近導波路内へと結合される、及び上記表面付近導波路から反射光として結合される、上記光源からの光に基づいて、上記表面付近導波路のモードスペクトルをキャプチャするよう構成され、また上記EPCS検出器システムは、デジタル検出器に対する光経路内に動作可能に配設された集束レンズを備え、上記モードスペクトルはコントラストを有し、上記集束レンズは、上記モードスペクトルの上記コントラストを調整するために、調整可能な位置及び調整可能な焦点距離のうちの少なくとも一方を有する。
【0030】
第14の実施形態では、第13の実施形態に関して、上記集束レンズは、支持部材によって支持された、焦点距離が異なる複数の集束レンズのうちの1つであり、上記支持部材を移動させることにより、上記集束レンズのうちの選択された1つを、上記光経路に挿入できる。
【0031】
第15の実施形態では、第1~第14の実施形態のいずれに関して、上記CS基板は、上記支持プレナムの上記表面に沿って移動するよう構成された可動式基板ホルダによって、動作可能に支持される。
【0032】
第16の実施形態では、第1~第15の実施形態のいずれに関して、上記LSP光源システムは可動式光拡散器を備える。
【0033】
第17の実施形態では、表面及び表面付近導波路を有する化学強化(CS)基板の第1及び第2の応力特性を測定する方法は:
上記CS基板の上記表面を、測定位置において結合プリズム組立体に対して動作可能に配置するステップであって、上記結合プリズム組立体は、それぞれ隣接するEPCS結合境界面及びLSP結合境界面を画定するエバネッセントプリズム結合分光法(EPCS)結合プリズム及び光散乱偏光測定(LSP)結合プリズムを備える、ステップ;
上記EPCS結合境界面を用いて上記CS基板のEPCS測定を実施することにより、上記第1の応力特性を取得し、また、上記結合プリズム組立体又は上記CS基板を上記測定位置から取り外すことなく、上記LSP結合境界面を用いて上記CS基板のLSP測定を実施することにより、上記第2の応力特性を取得するステップ;並びに
上記第1の応力特性と上記第2の応力特性とを組み合わせて、上記CS基板の全応力特性を画定するステップであって、上記第1の応力特性は、表面圧縮応力S(0)、合計層深さDOLT、スパイク層深さDOLsp、ニー応力CSk、及び複屈折Bを含む第1の応力特性の群から選択され、上記第2の応力特性は、圧縮深さDOC及び中央張力CTのうちの少なくとも一方を含む、ステップ
を含む。
【0034】
第18の実施形態では、第17の実施形態に関して、上記LSP測定を実施する上記ステップは:
デジタル検出器上にLSP画像を形成して、生デジタルLSP画像を画定するステップ;
上記生デジタルLSP画像のガウシアンぼかしを実施して、ガウシアンぼかし済みLSP画像を形成するステップ;
上記ガウシアンぼかし済み画像に対して大津しきい値処理プロセスを実施して、しきい値画像を画定するステップ;及び
上記しきい値画像を用いて、上記CS基板内への深さに対する光遅延を計算して、上記第2の応力特性を取得するステップ
を含む。
【0035】
第19の実施形態では、第17の実施形態に関して、上記LSP測定を実施する上記ステップは:
デジタル検出器上にLSP画像を形成して、生デジタルLSP画像を画定するステップ;
上記生デジタルLSP画像のガウシアンぼかしを実施して、ガウシアンぼかし済みLSP画像を形成するステップ;
上記ガウシアンぼかし済みLSP画像に対して二値化方法を実施して、画像輪郭を画定するステップ;及び
上記画像輪郭を用いて、上記CS基板内への深さに対する光遅延を計算して、上記第2の応力特性を取得するステップ
を含む。
【0036】
第20の実施形態では、第17の実施形態に関して、上記LSP測定を実施する上記ステップは:
デジタル検出器上にLSP画像を形成するステップ;
上記LSP画像を処理して、ORデータ点を含む光遅延(optical retardation:OR)対深さ(深さ:D)曲線を形成するステップ;並びに
線形関数と二次関数との組み合わせを用いて、上記ORデータ点に対する当てはめ曲線を取得するステップ
を含む。
【0037】
第21の実施形態では、第17~第20の実施形態のいずれに関して、上記第1の応力特性のうちの1つは、測定されたニー応力CSKを含み、また上記方法は:
上記ニー応力CSK(ind)の独立した測定を実施するステップ;
較正係数Kcal=CSk/CSk(ind)を定義するステップ;及び
上記較正係数Kcalを、上記第1の応力特性のうちの少なくとも1つに適用するステップ
を更に含む。
【0038】
第22の実施形態では、第17の実施形態に関して、上記LSP測定を実施する上記ステップは:
デジタル検出器上にLSP画像を形成するステップ;
上記LSP画像を処理して、第1及び第2の屈曲点を含むORデータ点を含む光遅延(OR)対深さ(D)曲線を形成するステップ;並びに
以下の行為:
i)力‐スパイク関数を用いて、上記ORデータ点に対する当てはめ曲線を取得するステップ;並びに
ii)上記第1の屈曲点及び上記第2の屈曲点が上記CS基板の中心面に関して対称となるように、上記ORデータ点をシフトすることにより、シフト済みORデータ点を画定すること;及び上記シフト済みORデータ点を用いて、上記CS基板に関する圧縮深さDOC測定を取得するステップ
のうちの少なくとも一方を実行するステップ
を含む。
【0039】
第23の実施形態では、第17の実施形態に関して、上記方法は:
デジタル検出器上にLSP画像を形成するステップ;
上記LSP画像を処理して、第1及び第2の屈曲点並びに第1及び第2の端部領域を画定するORデータ点を含む光遅延(OR)対深さ(D)曲線を形成するステップ;並びに
以下:
i)上記CS基板に関する中央張力CTを決定するための、上記第1の屈曲点及び上記第2の屈曲点をそれぞれ画定する、上記ORデータ点の第1及び第2の曲線当てはめ;
ii)上記CS基板に関する圧縮深さDOCを決定するための、上記第1の屈曲点と上記第2の屈曲点との間における上記ORデータ点の曲線当てはめ;並びに
iii)上記第1の端部領域及び上記第2の端部領域を除く全範囲にわたって、上記ORデータ点に対する曲線当てはめを実施することにより、OR‐当てはめ曲線を画定し、上記OR‐当てはめ曲線を用いて、上記CS基板に関する中央張力CT及び圧縮深さDOCのうちの少なくとも一方を決定するステップ
のうちの少なくとも1つを実行するステップ
を更に含む。
【0040】
第24の実施形態では、第17~第23の実施形態のいずれに関して、上記EPCS結合境界面及び上記LSP結合境界面は、異なる屈折率適合用流体を備え、上記方法は、上記異なる屈折率適合用流体を流体的に隔離するステップを含む。
【0041】
第25の実施形態では、第17~第24の実施形態のいずれに関して、上記方法は、上記EPCS結合プリズムと上記LSP結合プリズムとを光学的に隔離するステップを更に含む。
【0042】
第26の実施形態では、上記17の実施形態に関して、上記EPCS結合プリズム及び上記LSP結合プリズムは、共通の結合プリズムの第1及び第2のセクションによって構成される。
【0043】
第27の実施形態では、第17~第26の実施形態のいずれに関して、上記LSP測定はLSP光ビームを利用し、上記方法は、上記LSP光ビームを、上記LSP結合境界面の光学的に上流に配置された回転拡散器に通すステップを更に含む。
【0044】
第28の実施形態では、第17~第27の実施形態のいずれは:
上記CS基板を可動式基板ホルダで支持するステップ;
上記結合プリズム組立体を支持プレナムに対して、上記支持プレナムの測定アパーチャに設置するステップであって、上記支持プレナムは表面を有する、ステップ;及び
上記可動式基板を、上記支持プレナムの上記表面にわたって移動させるステップ
を更に含む。
【0045】
第29の実施形態では、第17~第28の実施形態のいずれに関して、上記CS基板は、ガラス材料、ガラスセラミック材料、又は結晶質材料を含む。
【0046】
第30の実施形態では、第17~第29の実施形態のいずれに関して、上記CS基板の上記表面付近導波路は、少なくとも1つのイオン交換(IOX)領域によって画定される。
【0047】
第31の実施形態では、第17~第30の実施形態のいずれに関して、上記CS基板の上記表面付近導波路は、表面付近スパイク領域及び深部領域によって画定される。
【0048】
第32の実施形態では、第17~第31の実施形態のいずれは、上記測定位置において、上記CS基板に真空を印加することにより、上記EPCS結合プリズム及び上記LSP結合プリズムのEPCS結合面及び上記LSP結合面それぞれに対して上記CS基板を押し付けるステップを更に含む。
【0049】
第33の実施形態では、第17~第32の実施形態のいずれに関して、上記EPCS測定を実施する上記ステップは:
少なくとも1つの集束レンズ及びデジタル検出器を備えるEPCS検出器システムを用いて、上記表面付近導波路のモードスペクトルをキャプチャするステップであって、上記モードスペクトルはコントラストを有し、上記少なくとも1つの集束レンズは光経路内にある、ステップ;並びに
上記少なくとも1つの集束レンズの集束レンズ位置及び集束レンズ焦点距離のうちの少なくとも一方を調整して、上記モードスペクトルの上記コントラストを改善するステップ
を含む。
【0050】
第34の実施形態では、第33の実施形態に関して、上記少なくとも1つの集束レンズは、可動式支持部材によって動作可能に支持された、焦点距離が異なる複数の集束レンズを含み、上記調整するステップは、上記可動式支持部材を移動させることにより、上記集束レンズのうちの選択された1つを、上記光経路内に配置するステップを含む。
【0051】
本明細書に記載の実施形態は、いずれの好適な組み合わせで組み合わせることができる。更なる特徴及び利点は、以下の「発明を実施するための形態」に記載され、またその一部は、当業者には「発明を実施するための形態」から明らかであり、又はこれらの実施形態を、本明細書の記述及び特許請求の範囲並びに添付の図面に記載されているように実施することによって認識されるだろう。上述の「発明の概要」及び以下の「発明を実施するための形態」はいずれも単なる例であり、特許請求の範囲の性質及び特徴を理解するための概観又は枠組みを提供することを意図したものであることを理解されたい。
【0052】
添付の図面は、更なる理解を提供するために含まれており、本明細書に組み込まれて本命細書の一部を構成する。これらの図面は1つ以上の実施形態を図示し、「発明を実施するための形態」と併せて、様々な実施形態の原理及び動作を説明する。従って本開示は、以下の「発明を実施するための形態」を、添付の図面と併せて解釈することで、より完全に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【
図1A】平坦なシートの形態の例示的な透明CS基板の立面図
【
図1B】表面付近スパイク領域(R1)、深部領域(R2)、及びバルク領域(R3)を示し、領域R1と領域R2との間の移行部分にニー(KN)が存在する、例示的な透明CS基板の例示的な屈折率プロファイルn(z)対z
【
図2A】透明CS基板の応力を完全に特性決定するための、本明細書で開示されるハイブリッドEPCS‐LSP測定システムの概略図
【
図2B】EPCS測定サブシステム及びLSP測定サブシステムに関する例示的な構成を示す、
図2AのハイブリッドEPCS‐LSPシステムの更に詳細な概略図
【
図3A】
図2AのハイブリッドEPCS‐LSPシステムの例示的なEPCSサブシステムの概略図
【
図3B】EPCSサブシステムによって得られる例示的なEPCSモードスペクトルの概略図であり、ここでEPCSモードスペクトルは、TMモード線(縞)を有するTMモードスペクトル及びTEモード線(縞)を有するTEモードスペクトルを含む
【
図4A】
図2AのハイブリッドEPCS‐LSPシステムの例示的なLSPサブシステムの概略図
【
図4B】
図2AのハイブリッドEPCS‐LSPシステムの例示的なLSPサブシステムの概略図
【
図4C】
図2AのハイブリッドEPCS‐LSPシステムの例示的なLSPサブシステムの概略図
【
図4D】LSPサブシステムのデジタル検出器上に形成されるLSP画像の近接図であり、ここでLSP画像は、クロス、即ち「X」パターンを形成する2つの線状の画像を含み、またLSP画像及びデジタル検出器はデジタルLSP画像を形成する
【
図5A】EPCS結合プリズム及び上記LSP結合プリズムを支持するための例示的なプリズム支持構造体の立面図
【
図5B】
図5Aのプリズム支持構造体上に設置されたカバープレートの立面図
【
図6A】安定プラットフォーム上に支持されたEPCS結合プリズム及び上記LSP結合プリズムの側面図であり、結合プリズム組立体のための一体成型プリズム支持構造体を形成する例示的な方法を示す
【
図6B】安定プラットフォーム上に支持されたEPCS結合プリズム及び上記LSP結合プリズムの側面図であり、結合プリズム組立体のための一体成型プリズム支持構造体を形成する例示的な方法を示す
【
図6C】例示的な結合プリズム組立体の側面図であり、ここでプリズム支持構造体は、EPCS結合プリズム及び上記LSP結合プリズムのうちの少なくとも一方が、他方に対して一方向(例えば図示されているようにz方向)に可動となるように構成される
【
図6D】例示的なハイブリッドEPCS‐LSP測定システムの概略図であり、2つの別個の結合プリズムの代わりに、単一の結合プリズムをEPCSサブシステム及びLSPサブシステムのために使用する
【
図7】ハイブリッドシステムの例示的な支持プレナムに取り付けられた例示的なプリズム支持構造体の断面図であり、CS基板上の測定位置を調整するために使用される例示的な可動式基板ホルダを示す
【
図8A】測定アパーチャ及び真空システムの圧力‐真空(PV)バーを示す、支持プレナムの立面図であり、上記真空システムは、CS基板に空気圧的に係合して、CS基板をEPCS結合プリズム及びLSP結合プリズムの結合面上へと牽引するように、測定アパーチャ内に動作可能に配置される
【
図8B】結合プリズム組立体及び真空システムの例示的な構成を示す、支持プレナム及び測定アパーチャの拡大断面図
【
図9】システムコントローラによって提示される例示的なユーザインタフェースの概略図であり、ユーザインタフェースは、EPCSモードスペクトルを示すEPCSセクションと、デジタルLSP画像のLSP線状画像を示すLSPセクションとを含む
【
図10A】例示的なデジタルLSP画像と、デジタルLSP画像の強度ヒストグラムとを示す、ユーザインタフェースのLSPセクションの例
【
図10B】例示的な初期、即ち生デジタルLSP画像、及びガウシアンぼかし済み(「ぼかし済み」)LSP画像
【
図10C】
図10Bのガウシアンぼかし済み画像に大津しきい値処理を適用することによって得られる、例示的なしきい値画像
【
図10D】例示的なガウシアンぼかし済みLSP画像に対する輪郭検出の実施の例
【
図10E】例示的なガウシアンぼかし済みLSP画像に対する輪郭検出の実施の例
【
図11A】CS基板、及び集束LSP光ビームの方向の近接図
【
図11B】CS基板の縁部の近接図であり、集束LSP光ビームに対するLSP検出器システムの視野角を示す
【
図11C】
図11Bと同様の図であり、LSP検出器システムに到達して線状画像を形成する散乱光ビームを示す
【
図11D】LSP検出器システム及びCS基板の、集束LSP光ビームを伴う別の図
【
図11E】CS基板の厚さを決定するために使用される寸法及び角度を示す概略図
【
図12A】ロックイン法(lock又はL)及びサイン法(sine又はS)の両方に関する、ノイズの多いLSP信号の位相φ対ノイズ係数Nを抽出するために必要な平均計算時間T(単位:ミリ秒(ms))のプロット
【
図12B】ノイズの多いLSP信号を処理するためのロックイン法(lock又はL)及びサイン法(sine又はS)に関する、絶対位相差|Δφ|対ノイズ係数のプロット
【
図13A】光遅延OR(ラジアン)対CS基板内への深さD(mm)のプロット(「OR対Dプロット」)であり、
図13Aは、スペックル低減を用いずにLSPサブシステムによって収集されたORデータを示す
【
図13B】光遅延OR(ラジアン)対CS基板内への深さD(mm)のプロット(「OR対Dプロット」)であり、
図13Bは、スペックル低減を用いてLSPサブシステムによって収集されたORデータを示す
【
図14】ORデータをシフトすることにより、屈曲点BP1及びBP2をCS基板の中心面に関して対称とする例示的な方法を示す、OR対Dプロット
【
図15A】離散データ点(円)、及びOR対Dデータ点に対する当てはめ線を含む、例示的なOR対Dプロットであり、当てはめ線は、本明細書で開示される「LinQuad」法を用いて形成される
【
図15B】
図15AのOR対Dデータ点に対するLinQuad当てはめに基づく、応力S(MPa)対深さD(mm)のプロット
【
図16A】離散データ点(円)、及びOR対Dデータ点に対する当てはめ線を含む、例示的なOR対Dプロットであり、当てはめ線は、本明細書で開示される力‐スパイク法を用いて形成される
【
図16B】
図16AのOR対Dデータ点に対する力‐スパイク当てはめに基づく、応力S(MPa)対深さD(mm)のプロット(「S対Dプロット」)
【
図17A】オリジナル(生)OR対Dデータ点に対するLinQuad曲線当てはめを示す、OR対Dプロット
【
図17B】対称成分を除去したOR対Dデータに対するLinQuad曲線当てはめを示す、OR対Dプロット
【
図18A】選択された応力パラメータを計算する際に、低面積当てはめ領域を用いることを図示した、OR対Dプロットであり、
図18Aは、圧縮深さDOCを計算するための、屈曲点BP1及びBP2における低面積当てはめ領域を示す
【
図18B】選択された応力パラメータを計算する際に、低面積当てはめ領域を用いることを図示した、OR対Dプロットであり、
図18Bは、中央張力CTを計算するための、屈曲点BP1と屈曲点BP2との間の低面積当てはめ領域を示す
【
図19A】
図19AはOR対Dプロットであり、ここではORデータの全セットに関して曲線当てはめが行われている。
【
図19B】
図19Bは対応するS対Dプロットであり、ここではORデータの全セットに関して曲線当てはめが行われている。
【
図19C】
図19CはOR対Dプロットであり、ここではデータのうち、反対側の端部の点付近の部分が排除された、ORデータの少数のセットに関して曲線当てはめが行われている
【
図19D】
図19Dは対応するS対Dプロットであり、ここではデータのうち、反対側の端部の点付近の部分が排除された、ORデータの少数のセットに関して曲線当てはめが行われている
【
図20】
図3Aと同様の図であり、EPCSサブシステムのある実施形態を示し、ここで検出器システムは、調整式集束レンズを含み、この調整可能性は、軸方向移動及び焦点距離の変更のうちの少なくとも一方を含む
【
図21A】キャプチャしたモードスペクトルのコントラストを調整するための手段を提供するための、EPCSサブシステムのための集束レンズ組立体を形成するために使用される例示的な支持部材の概略図
【
図21B】キャプチャしたモードスペクトルのコントラストを調整するための手段を提供するための、EPCSサブシステムのための集束レンズ組立体を形成するために使用される例示的な支持部材の概略図
【発明を実施するための形態】
【0054】
これより、本開示の様々な実施形態について詳細に言及する。これらの実施形態の例は添付の図面に図示されている。可能な限り、図面全体を通して、同一又は同様の部分を指すために同一又は同様の参照番号及び記号を用いる。図面の縮尺は正確でなく、当業者であれば、本開示の重要な側面を図示するために図面が簡略化されていることを認識するだろう。
【0055】
後に記載される特許請求の範囲は、この「発明を実施するための形態」に組み込まれてその一部を構成する。
【0056】
デカルト座標は、これらの図面のうちのいくつかにおいて、基準として示されているものであり、方向又は配向に関する限定を意図したものではない。
【0057】
本記載の一部では、z座標を基板内への深さ方向に関して使用するが、本記載の他の部分では異なる座標を使用する。
【0058】
頭字語「IOX」は、記載の文脈に応じて、「イオン交換(ion exchange)」又は「イオン交換済み(ion exchanged)」を表す。
【0059】
基板のタイプを記述するために使用される場合の(例えば「CS基板」の)頭字語「CS」は、「化学強化された(chemically strengthened)」を意味する。頭字語CSは「圧縮応力(compressive stress)」を意味する場合もあり、この頭字語がいずれの意味で使用されているかは、本記載の文脈によって明らかであろう。
【0060】
本明細書中で考察されるCS基板に関する用語「強化された(strengthened)」は、オリジナルのCS基板を、典型的にはこのCS基板をより強くすることで破壊されにくくすることを目的として、多様な形状を有し得る何らかの応力プロファイルを生成するあるプロセスに供したことを意味する。例示的な強化プロセスとしては、イオン交換、熱強化、アニーリング、及び同様の熱的プロセスが挙げられる。
【0061】
CS基板に関して使用される用語「透明(transparent)」は、所与の測定波長(即ちEPCS波長λA又はLSP波長λB)において、この所与の測定波長に関連する応力特性の十分に正確な測定をもたらすような、CS基板の十分な測定(即ちEPCS測定又はLSP測定)を行うために、十分な光透過率を有するCS基板を意味する。
【0062】
略語「ms」は「ミリ秒(millisecond)」を表す。
【0063】
略語「nm」は「ナノメートル(nanometer)」を表す。
【0064】
CS基板の表面付近導波路又は表面付近スパイク領域について言及する際等の用語「表面付近(near‐surface)」は、基板本体のうちの、CS基板の所与の表面(例えば上面又は測定表面)のすぐ隣に存在する部分を指す。
【0065】
ある例では、ガラス系基板を用いてCS基板を形成する。本明細書中で使用される場合、用語「ガラス系基板(glass‐based substrate)」は、全体又は一部がガラス製のいずれの物体、例えばガラス材料と非ガラス材料との積層体、ガラス材料と結晶質材料との積層体、並びに(非晶質相及び結晶質相を含む)ガラスセラミックを含む。よってガラス系CS基板は、ある例では全体がガラス材料からなってよく、一方で別の例では、全体がガラスセラミック材料からなっていてよい。
【0066】
用語「画像(image)」及び「線状画像」は、本明細書では、LSPサブシステムによってデジタル検出器(CCDカメラ又はCMOSセンサ等)において散乱光で形成されたX字型のLSP画像の一部分の光の分布(即ち強度分布)を記述するために使用され、本明細書で考察されるようなLSP画像を形成するためには撮像システムは必要ない。
【0067】
以下の記載では、LSPサブシステムは、2つ以上の偏光状態(又は短縮して単に「偏光」)の間を循環するように構成される。ある例では、1つのサイクルあたり最大8つの異なる偏光状態が存在でき、これは当該技術分野で公知であるように、直線偏光、楕円偏光、及び円偏光を組み合わせたものである。更に多数、例えば最大100個以上の偏光が存在してもよい。
【0068】
本明細書中で使用される場合、用語「応力(stress)」は一般に、圧縮応力又は引張応力を意味することができる。
図15B、16B、19B、及び19Dのプロットでは、圧縮応力は負であり、引張応力は正である。応力が圧縮応力であるか引張応力であるかは、考察対象のCS基板の位置又は深さ範囲に左右される。圧縮応力に関する正の値は、圧縮応力の大きさを意味するものとして理解される。応力はS又はσで表され、特段の記載がない限り、又は記述の文脈によってそうでないと理解されない限り、圧縮応力を指すものと解釈される。いくつかの例では、圧縮応力は、ニー応力に関するCS
kのように、CSで表される。応力プロファイルは、CS基板内への深さの関数としての応力Sであり、深さ座標はいずれのローカル座標とすることができ、また以下の記述では、z及びxの両方をローカル座標として使用する。
【0069】
ある例では、CS基板の「特性決定(characterizing)」は、CS基板の1つ以上の応力系特性、例えば応力プロファイルS(z)、層深さDOL、表面応力S(0)、圧縮深さDOC、中央張力CT、及び複屈折プロファイルB(z)を決定することを含む。ある例では、特性決定は、EPCS及びLSP測定の両方を利用し、これらはそれぞれ、組み合わされたときにCS基板の応力特性の「全特性決定(full characterization)を提供する、第1及び第2の応力特性を提供し、ここで用語「全特性決定」は、EPCS測定の第1の応力特性のみ、又はLSP測定の第2の応力特性のみによって可能なものよりも更に完全な、応力及び応力関連特性の特性決定を意味する。
【0070】
頭字語「OR」は「光遅延」を表し、特段の記載がない限りラジアン(「rad」)で測定される。光遅延対CS基板内への深さのプロットは、これ以降「OR対D(OR vs. D)」曲線又はプロットと呼ばれ、Dは上面(測定表面)からCS基板本体内への深さであるものとして理解される。
【0071】
用語「屈折率適合用流体(index‐matching fluid)」は、光学的結合を促進するための、別の材料と略同一の屈折率を有する流体を意味する。ある例では、屈折率適合用流体は、オイル又は複数のオイルの混合物を含む。屈折率適合用流体の屈折率は、nf又はnoilで表され、即ちこれら2つの表現は以下において相互交換可能なものとして使用される。
【0072】
CS基板
図1Aは、平坦なシートの形態の、ある例示的なタイプのCS基板10の立面図である。CS基板10は、本体11、上面12、底面14、及び側部16を有する。CS基板10は、厚さTHと、上面12と底面14との間の中央にある、これらに対して平行な中心面MPとを有する。
【0073】
場合によっては、厚さTHは、0.020mm≦TH≦2mm、例えば0.050mm≦TH≦2mm、0.20mm≦TH≦2mm、0.25mm≦TH≦2mm、0.3mm≦TH≦2mm、又は0.3mm≦TH≦1mm、並びにこれらの端点の間に形成されるいずれの及び全ての部分範囲内とすることができる。
【0074】
CS基板10の例示的なタイプはガラス系であり、スマートフォン、タブレット、ラップトップコンピュータ、GPSデバイス等の移動体デバイスのためのディスプレイ及び/又はハウジングの保護カバーとして使用される。このようなCS基板10は、
図1Aに示されているように、薄く平坦なものである傾向がある。
【0075】
CS基板10は、本体11内の上面12付近に存在する表面付近導波路(NSWG)18を含む。ある例では、NSWG18はIOXプロセスを用いて形成され、様々な屈折率の少なくとも1つのIOX領域によって画定される。
【0076】
図1Bは、例示的なNSWG18に関する、屈折率n対CS基板内への深さzのプロットである。表面屈折率はn
Sで表され、バルク屈折率、即ち化学強化プロセスによる影響を受けていない基板材料の屈折率は、n
Bで表される。
【0077】
図1Bのプロットは、2つの(IOX)領域、即ち第1の表面付近スパイク領域R1及び第2の深部領域R2を定義する、例示的な屈折率プロファイルn(z)を示す。第2の深部領域より深い第3の領域R3も存在し、これは本明細書では、屈折率n
Bを有する「バルク」領域と呼ばれる。表面付近スパイク領域R1は、表面において最大屈折率n
sを有し、また第1の「スパイク」層深さDOL
spを画定する比較的浅い深さz=D1にわたって、深さ(z)と共に屈折率が値n
kまで急速に低下する。深部領域R2では、第3のバルク領域R3が始まる合計層深さDOL
Tを画定する深さD2まで、屈折率がn
kから比較的ゆっくりと減少する。第1の領域R1及び第2の領域R2は、上述のように屈折率n=n
kとなる、ニー(圧縮)応力CS
kに関連するz=z
kにおいて、ニーKNで出会う(従ってニーKNを画定する)。
【0078】
NSWG18内の2つの別個の屈折率領域R1及びR2によって、特定の導波モードは最上部のスパイク領域R1内のみで伝播し、他の導波モードは領域R1及びR2の両方内で伝播し、更に他の導波モードは深部領域R2内のみで伝播する。他の屈折率プロファイルn(z)は、より均一な屈折率の変化を含む。深部導波モードの一部は、バルク領域R3内まで延在し得る。
【0079】
図1Bの屈折率プロファイルn(z)は、デュアルIOX(DIOX)プロセスによって形成でき、このプロセスでは、あるIOXプロセスが深部領域R2を形成し、この第1のIOXプロセスとは異なる別のIOXプロセスがスパイク領域R1を形成する。
図1Bのプロットは、Li含有ガラス基板10において実施されたDIOXプロセスの代表例であり、ここではLiイオンが2回の別個のIOXプロセスによってカリウム及びナトリウムイオンと交換され、カリウムIOXプロセスがスパイク領域R1を生成する。
【0080】
ハイブリッドEPCS‐LSPシステム
図2Aは、例示的なCS基板10と共に図示された、本明細書で開示されるハイブリッドEPCS‐LSP測定システム(「ハイブリッドシステム」)20の概略図である。ハイブリッドシステム20は、結合プリズム組立体40、EPCS測定サブシステム(「EPCSサブシステム」)100、LSP測定サブシステム(「LSPサブシステム」)200、及びシステムコントローラ400を含む。結合プリズム組立体40は、CS基板10上の測定位置MLを画定する。
【0081】
EPCSサブシステム100は、NSWG18の導波モードのモードスペクトルとして実現される、測定位置MLにおけるCS基板の第1の応力特性を表すEPCS測定信号SAを生成する。この第1の応力特性は、以下のうちの1つ以上を含むことができる:表面圧縮応力S(0)、合計層深さDOLT、スパイク層深さDOLsp、ニー応力CSk、及び複屈折B。
【0082】
LSPサブシステム200は、深部領域R2を含むCS基板内への深さの関数としての光遅延(OR)情報として実現される、測定位置MLにおけるCS基板の第2の応力特性を表すLSP測定信号SBを生成する。第2の応力特性は、以下のうちの1つ以上を含むことができる:応力プロファイル、圧縮深さDOC、及び中央張力CT。
【0083】
ある例では、第1及び第2の応力特性のEPCS及びLSP測定は、測定位置MLを移動させることなく行われる。別の例では、第1及び第2の応力特性のEPCS及びLSP測定は、結合プリズム組立体40を並進移動させることによって行われ、これにより、EPCS及びLSP測定は、結合プリズム組立体の構成によって画定される、測定位置においてわずかに離間した複数の位置ではなく、基板上の同一の位置において行われる。
【0084】
ある例では、第1及び第2の応力特性のEPCS及びLSP測定は、結合プリズム組立体40又はCS基板10を測定位置MLから取り除くことなく行われる。これは、CS基板を異なる測定システムに移すためにCS基板を取り外す、又はその他の操作を行う必要なしに、EPCS及びLSP測定の両方を単一のシステムで実施できるという、従来技術に勝る利点を示す。
【0085】
EPCS測定信号SA及びLSP測定信号SBは、処理のためにシステムコントローラ400に送られる。システムコントローラ400は、例えばマイクロコントローラ、コンピュータ、プログラマブル論理コントローラ(PLC)等を備えることができる。ある例では、システムコントローラ400は、ハイブリッドシステム20の動作を制御して、CS基板10の第1及び第2の応力特性を、EPCS測定信号SA及びLSP測定信号SBに基づいて決定するための計算を実施するための、非一時的コンピュータ可読媒体(例えばソフトウェア)として実現される命令を伴って構成される。
【0086】
ある例では、システムコントローラ400は、EPCS測定信号SA及びLSP測定信号SBを処理して、CS基板10の上面12から少なくとも深部領域R2の底部までの応力プロファイル及び関連する応力特性を画定する。換言すれば、システムコントローラは、EPCSサブシステム100及びLSPサブシステム200から取得した第1及び第2の応力特性を組み合わせて、CS基板の、これらの測定サブシステムのうちの一方のみで可能なものよりも更に完全な、即ち「全」応力プロファイルを生成する。
【0087】
結合プリズム組立体40は、プリズム支持構造体46によって動作可能に支持されたEPCS結合プリズム42A及びLSP結合プリズム42Bを含む。結合プリズム組立体40は、CS基板10の上面12上、又はその付近に、動作可能に配置される。以下に記載の例では、EPCS結合プリズム42A及びLSP結合プリズム42Bは、別個の結合プリズムであっても、単一の(共通の)結合プリズムの異なるセクションであってもよい。
【0088】
引き続き
図2Aを参照すると、ハイブリッドシステム20は、寸法L1及びL2を有する例示的なハウジング21を含む。L1及びL2に関する例示的な寸法は、ハイブリッドシステム20の比較的小型の実施形態に関して、8インチ~12インチ(20.32cm~30.48cm)である。
【0089】
EPCSサブシステム100は、EPCS結合プリズム42Aによって光学的に結合された、EPCS光源システム110及びEPCS検出器システム140を含む。LSPサブシステム200は、LSP光源システム210、光補償板230、及びLSP結合プリズム42Bによって上記光補償板に光学的に結合されたLSP検出器システム240を含む。検出器システム140及び240は、システムコントローラ400に動作可能に接続される。EPCSサブシステム100の例は、米国特許第9,534,981号明細書、及び米国特許第9,696,207号明細書に記載されており、これらの文献は参照により本出願に援用される。LSPサブシステム100の例は、米国特許第4,655,589号明細書、及び米国公開特許第62/753,388号明細書に記載されており、これらの文献は参照により本出願に援用される。
【0090】
図2Bは、
図2AのハイブリッドEPCS‐LSPシステムの更に詳細な概略図であり、EPCS測定サブシステム100及びLSP測定サブシステム200に関する例示的な構成を示す。
図3Aは、例示的なEPCSサブシステム100の概略図である。
図4A~4Cは、例示的なLSPサブシステム200の概略図である。
【0091】
EPCSサブシステム
図2B及び
図3Aを参照すると、EPCSサブシステム100のEPCS光源システム110は、第1の軸A1に沿って第1の波長λ
AでEPCS光ビーム116を生成するEPCS光源112を含む。第1の波長λ
Aは、EPCS波長と呼ぶこともできる。
【0092】
EPCS光源システム110はまた、第1の光軸A1に沿って:任意の偏光子118;EPCS光源112の下流にある光拡散器122;及び光拡散器の下流にある集束レンズ120を含む。ある例では、光源は発光ダイオード(LED)を備え、更に、ある例では、このLEDは365nmのEPCS測定波長λAで動作する。EPCS検出器システム140は第2の軸A2に沿って存在し、第2の軸に沿って:集束レンズ142;波長λAを中心とするバンドパスフィルタ144;減衰器146;(図示されていないTMセクション及びTEセクションを有する)TM‐TE偏光子148;並びにTM‐TE偏光子148によって画定されるようなTMセクション及びTEセクション(図示せず)を有するデジタル検出器(例えばデジタルカメラ、画像センサ、CCDアレイ等)150をこの順序で含む。
【0093】
EPCS光源112からのEPCS光ビーム116は、光拡散器120によって拡散され、集束レンズ120によって集束して、集束EPCS光ビーム116Fを形成する。集束EPCS光ビーム116Fは、EPCS結合プリズム42Aに、入力面43Aにおいて入射する。これは、CS基板の上面12及びEPCS結合プリズム42Aの底面又は「結合(coupling)」面45Aによって画定される第1の(EPCS)結合境界面INT1において、集束EPCS光ビームをNSWG18に結合する。第1の結合境界面INT1は、以下で更に詳細に説明される屈折率適合用流体5Aを含むことができる。
【0094】
反射EPCS光ビーム116Rは、第1のEPCS結合境界面INT1において集束EPCS光ビーム116Fから形成され、EPCS結合プリズム42Aの出力面44Aを出て、第2の軸A2に沿って移動する。第1の軸A1及び第2の軸A2は、共通の平面(例えば
図3Aのx‐z平面)内に存在する。反射EPCS光ビーム116Rは、NSWG18の導波モードのモードスペクトルに関する情報を含む。反射EPCS光ビーム116Rは、EPCS検出器システム140内の集束レンズ142によって集束し、EPCSデジタル検出器150において、導波光のモードスペクトルの画像を形成する。
【0095】
バンドパスフィルタ144により、反射EPCS光ビーム116Rのみがデジタル検出器150へと通過することが保証される。減衰器146により、検出された反射EPCS光ビーム116Rが、効率的なデジタル検出に適した強度分布を有することが保証される。TM‐TE偏光子148は、デジタル検出器に関するTMセクション及びTEセクションを画定し、これにより、TMモードスペクトル及びTEモードスペクトルをデジタル検出器150がキャプチャできる。TMモードスペクトル及びTEモードスペクトルは、処理のためにシステムコントローラ400に送られる第1の検出器信号SAとして実現される。なお、バンドパスフィルタ144、減衰器146、及び集束レンズ142の順序は重要ではなく、この点を示すために、
図2Bと
図3Aとでは故意に異なる順序で図示されている。
【0096】
図3Bは、デジタル検出器150がキャプチャする理想的なモードスペクトル160の概略図である。ローカル(x,y)デカルト座標を基準として示す。モードスペクトル160は、TM及びTE導波モードにそれぞれ関連するTM全内部反射(TIR)セクション161TM及びTE全内部反射(TIR)セクション161TEと、TM及びTE放射モード並びにリーキーモードにそれぞれ関連する非TIRセクション162TM及び162TEとを含む。TIRセクション161TMは、1つ以上のTMモード線又はTM「縞」163TMを含み、TIRセクション161TEは、1つ以上のTEモード線又はTE「縞」163TEを含む。TMモード線163TM及びTEモード線163TEは、概ねx方向に整列し、y方向において離間している。
【0097】
TIRセクション161TM、161TEと非TIRセクション162TM、162TEとの間の移行領域(「移行部(transition)」)166TM及び166TEは、TM及びTE偏光に関する、CS基板10のNSWG18への及びNSWG18からの光結合に関する臨界角を画定し、臨界角移行部と呼ばれる。臨界角移行部166TM及び166TEの開始位置の差異はニー応力CS
kに比例し、この比例関係は、
図3Bにおいて「~CS
k」で示されている。
【0098】
TMモード線163TM及びTEモード線163TEは、EPCSサブシステム100の構成に応じて、明るい線又は暗い線となり得る。
図3Bでは、図示を容易にするために、TMモード線163TM及びTEモード線163TEは暗い線として示されている。
【0099】
EPCS測定に関する応力特性は、モードスペクトル160のTMモード線163TM及びTEモード線163TEのy位置の差異に基づいて計算される。複屈折Bは、TM偏光とTE偏光との有効屈折率の間の差であり、ここで有効屈折率は、モード線のy位置によって表される。表面圧縮応力S(0)=CSは、モード線(有効屈折率)間のy距離及び比B/SOCによって算出され、ここでSOCは応力光係数である。表面応力S(0)の計算には、少なくとも2つのTMモード線163TM及びTEモード線163TEが必要となる。圧縮応力プロファイルS(z)の計算には、更なるモード線が必要となる。層深さDOLTは、CS基板10の本体11内への応力貫入又はイオン貫入長さの測定値であり、IOXプロセスの場合には、これもまたモード線163TM及び163TEのy位置及び個数によって計算できる。従って、TM及びTEモード線のy軸に沿った位置は、CS基板10の応力関連特性を推測するための最も基本的な測定値である。EPCSサブシステム100を用いた、EPCS測定に基づくCS基板10の応力特性を決定するための計算は、システムコントローラ400において実行される。
【0100】
LSPサブシステム
ここで
図2B及び
図4A~4Cを参照すると、LSPサブシステム200のLSP光源システム210は、第3の軸A3に沿って波長λ
BのLSP光ビーム216を生成するLSP光源212を含む。ある例では、LSP光源212は、第2の波長λ
B=415nmで動作するレーザダイオードとして構成される。第2の波長λ
Bは、LSP波長と呼ぶこともできる。
【0101】
LSP光源システム210は、第3の軸A3に沿って:(
図2B及び4Aに示されている)任意の中性濃度フィルタ218;第1の集束レンズ220;可動式光拡散器222;並びに第2の集束レンズ224を含む。可動式光拡散器222は、波長λ
Bで光拡散を実施するよう構成されたホログラフィ素子を備えることができる。ある例では、可動式光拡散器は、回転式光拡散器又は発振式光拡散器を含むことができる。1つ以上の折り畳みミラーFMを用いて、LSPサブシステム200をより小型にするために折り畳むことができる。いくつかの実施形態では、中性濃度フィルタ218を半波長板に置き換えることができ、これは、PBSにおいて多少の回転が存在するように、偏光の主軸を制御する。
【0102】
光補償板230は(折り畳まれた)第3の軸A3に沿って存在し、偏光ビームスプリッタPBSの形態とすることができる偏光子232を含む。光補償板230はまた、半波長板234H及び1/4波長板234Qを含み、これらの波長板のうちの一方は、LSP光ビーム216の偏光の状態を変化させるために、他方に対して回転可能である。ある例では、光補償板230は、液晶系変調器又は強誘電性液晶系変調器又は同様の変調器といった、電子制御式偏光変調器を含むことができる。
【0103】
ある例では、光補償板230は、光補償板が実施する偏光切り替え動作を制御するコントローラ(図示せず)に動作可能に接続されるか、又はそうでない場合には上記コントローラを含む。ある例では、光補償板230は、単一の液晶デバイスを含むことができる。別の例では、光補償板230は、偏光子、波長板、フィルタ、プリズム(例えばウェッジプリズム)等といった複数の素子を含むことができる。ある例では、光補償板230により、LSP光ビーム216は、1秒未満から10秒までのいずれの範囲内で、全偏光サイクルを通過する(即ち2つ以上の選択された偏光の間で変化する。ある例では、光補償板230をシステムコントローラ400に動作可能に接続して、システムコントローラ400で制御できる。
【0104】
第3の集束レンズ236は、光補償板230の下流に存在し、LSP結合プリズム42Bへと配向される集束LSP光ビーム216Fを形成するために使用される。LSP結合プリズムは、それぞれ入力面43B及び出力面44B、並びに底面又は「結合」面45Bを有する。結合面45B及びCS基板10の上面12は、第2の(LSP)結合境界面IF2を画定する。ある例では、第2の結合境界面INT2は、以下で更に詳細に説明される屈折率適合用流体5Bを含む。
【0105】
LSP検出器システム240は、第3の軸A3に対して垂直な第4の軸A4に沿って存在し、即ち第4の軸A4はY‐Z平面内にある。
【0106】
ある例では、LSP検出器システム240は、集光システム243及びデジタル検出器(例えばCCDカメラ)246を含む。ある例では、集光システム243はテレセントリックであり、等倍倍率を有する。LSP検出器システム240もまた、第2の波長λ
Bを中心とするバンドパスフィルタ244を含むことができる。
図4Cに示す例では、デジタル検出器246は撮像ピクセル247のアレイを備え、これはある例では、1.1マイクロメートル~10マイクロメートル、又は1.8マイクロメートル~10マイクロメートルの寸法を有することができる。
【0107】
LSPサブシステム200の動作時、集束LSP光ビーム216Fは、LSP結合プリズム42Bの入力面43Bに入射し、結合面45Bへ、そして屈折率適合用流体5Bを通ってCS基板10の上面12へと移動して、CS基板の本体11に入る。集束LSP光ビーム216Fは、いずれの所与の時点において、光補償板230によって画定されるような、選択された偏光を有する。(偏光)入力LSP光ビーム216Fは、CS基板10の本体11内の特徴部分によって散乱されて、散乱LSP光ビーム216Sを形成する。散乱LSP光ビーム216SはCS基板10の上面12を出て、第2の結合境界面INT2を通って戻った後、LSP結合プリズム42Bの出力面44Bを出る。散乱LSP光ビーム216SはLSP検出器システム240へと移動し、集光システム243によってデジタル検出器246へと配向される。散乱LSP光ビーム216Sは、
図4Dの近接図に示すように、デジタル検出器246上にLSP画像248を形成する。これはデジタルLSP画像を画定する。以下で説明されるLSP画像248は、特段の記載がない限り、デジタルLSP画像であるものとして解釈される。LSP画像248の特徴的な「X」形状は、LSPの分野では公知であり、これは、CS基板10、LSP結合プリズム242B、及び屈折率適合用流体5Bによって画定される、LSP境界面INT2に関連する異なる複数の境界面からの散乱光ビーム216Sの反射によるものである。
【0108】
図4Dに示すように、LSP画像248のX形状は、交差した2つの線状画像LIによって画定され、これらはそれぞれ、その長さに沿って局所長座標x
Lを有する。各線状画像LIは、該線状画像と一致するピクセル247によって測定される強度分布I(x
L)を有する。デジタル検出器は強度分布I(x
L)を第2の検出器信号SBに変換し、これはシステムコントローラ400に送られる。測定の実施には、線状画像LIのうちの一方しか必要ない。ある例では、画像処理を用いて、以下で説明される光遅延情報を抽出するための後続の処理に使用するための、LSP画像248の一部分を識別する。
【0109】
ある例では、LSPサブシステム200を用いたCS基板10の所与の測定は、1秒~10秒の測定時間tMにわたって測定を行うステップを含む。測定時間tM中、LSP光ビーム216の偏光状態は、異なる偏光状態の間で変化し、好ましくはこれらの偏光状態を通る1つ以上のサイクルを形成する。その間、各偏光状態に関して、デジタル検出器246は露光時間tE中にLSP画像248をキャプチャする。ある例では、露光時間tEは、デジタル検出器246のフレームレートFRとおおよそ同一である。例示的な露光時間はtE=50msであり、これはフレームレートFR=20フレーム/秒に対応する。露光時間tEは、フレームレート未満とすることもできる。
【0110】
電子的にキャプチャされたLSP画像248は、入力LSP光ビーム216Rの偏光状態、及びビーム経路に沿って生じる応力誘発型光遅延に応じて、その強度分布I(xL)が異なる。この差異は、異なる偏光状態の間の、CS基板10内への深さDの関数としての、散乱LSP光ビーム216Sの長さに沿った弱め合う干渉と強め合う干渉との差によるものである。システムコントローラ400は、異なる偏光状態に関する複数の強度分布I(xL)の間の差を用い、当該技術分野で公知の関係を使用して、CS基板本体11内への深さDの関数として、光遅延ORを計算する。同様に、強度分布I(xL)の差を用いて、複数の光遅延曲線OR対深さD(「OR対Dプロット」)を計算する。例えば、画像センサのフレームレートFRが20フレーム/秒である、3秒の測定時間tMに関して、I(xL)対Dのプロットを合計60個生成でき、これを用いて、CS基板10の1つ以上の応力関連特性を計算できる。
【0111】
LSP画像248に関する強度分布I(xL)は、CS基板10内に応力が存在する場合、入力光ビーム216Rの複数の偏光状態の間で必然的に異なるが、測定された強度分布から計算される異なる複数のOR対D曲線(プロット)は、所与のCS基板に関して、応力プロファイルが(理想的には)一定であるCS基板の所与の測定位置において、理想的には同一となるはずである。
【0112】
LSP測定技法によって応力プロファイルS(z)を生成できるが、上記技法は一般に、CS基板10の表面付近領域における応力プロファイルの正確な表現を生成しない。LSPサブシステム200からのLSP測定を用いて、CS基板10に関する表面付近応力プロファイルの正確な特性決定を抽出するための課題を提示する、問題のある効果が、少なくとも2つ存在する。問題のある効果の1つは、「ファイアボール(fireball)」効果と呼ばれ、これはLSP境界面INT2における過剰な光散乱によって引き起こされる。過剰な光散乱はノイズを生成し、このノイズが表面付近領域に関するLSP測定データを破壊する。上記表面付近領域は、ある例では、CS基板10の上面12の下の最初の60マイクロメートル~100マイクロメートルである。
【0113】
もう一方の問題のある効果は、異なる複数の深さから散乱した光子の、ある特定の深さに対応する信号への畳み込みによって引き起こされる。この畳み込みは、応力が急速に変化する領域において信号を大きく変化させるが、上記領域は通常、表面付近領域内にあり、多くの場合、最初の80マイクロメートル、100マイクロメートル、又は150マイクロメートル以内であるが、場合によっては200マイクロメートルにもなる。変化が急速な領域は、Li系ガラスの厚さが大きいほど厚くなる。
【0114】
いくつかの従来技術のLSPシステムは、CS基板表面付近に、ビーム直径が10マイクロメートルもの小ささの、強く集束させたビームを用いることにより、これらの畳み込み効果を低減することを試みている。残念ながら、これは他の問題、例えば関心対象の同一の深さの領域におけるレーザノイズ(例えばスペックル)の増大につながり、表面付近領域において抽出される応力プロファイルの信頼性が更に低下する。
【0115】
結合プリズム組立体
ハイブリッドシステム20は、CS基板10のEPCS測定及びLSP測定を行う際に、EPCSサブシステム100及びLSPサブシステム200のプリズム結合を提供するために、EPCS結合プリズム42A及びLSP結合プリズム42Bを動作可能に支持する、上述の結合プリズム組立体40を利用する。
【0116】
図5Aは、例示的な支持フレーム48を示す、例示的な結合プリズム組立体40の上部の立面図である。
図5Bは
図5Aと同様の立面図であり、これはカバープレート60を更に含む。例示的な支持フレーム48は、EPCS結合プリズム42Aを支持するEPCSフレームセクション48Aと、LSP結合プリズム42Bを支持するLSPフレームセクション48Bとを含む。支持フレーム48はまた、EPCSフレームセクション48AとLSPフレームセクション48Bとの間に配置された隔離部材50を含み、これは、EPCS結合プリズム42AとLSP結合プリズム42Bとを光学的に隔離するよう構成される。ある例では、隔離部材50は、EPCS結合プリズム42A及びLSP結合プリズム42Bそれぞれが使用する屈折率適合用流体5A及び屈折率適合用流体5Bの混合も防止する。別の例では、隔離部材50によって、単一の屈折率適合用流体を、EPCS結合プリズム42A及びLSP結合プリズム42Bの両方で使用できるようになり、即ち、単一の屈折率適合用流体が、これら2つの異なるプリズムによって画定される、第1の境界面INT1及び第2の境界面INT2を流れることができる。ある例では、隔離部材50は、支持フレーム48から分離した部品であり、支持フレーム48に取り付けられている。別の例では、隔離部材50は支持フレーム48の一部であり、即ち支持フレームの形成中に、支持フレームと一体として形成される。
【0117】
ある例では、EPCSフレームセクション48A及びLSPフレームセクション48B、並びに隔離部材50は、固定用タブ52を含み、これは、固定部材(図示せず)を用いてカバープレート60をフレームセクションに固定できるようにする設置用孔53を含む。カバープレート60は、EPCS結合プリズム42Aの結合面45Aを収容するサイズの第1のアパーチャ62Aと、LSP結合プリズム42Bの結合面45Bを収容するサイズの第2のアパーチャ62Bとを含む。
【0118】
図6A及び6Bは、EPCSフレームセクション48A及びLSPフレームセクション48Bが、樹脂成形プロセスを用いて形成される、例示的な方法を示す。このプロセスは、EPCS結合プリズム42A及びLSP結合プリズム42Bの正確な整列を提供する。ある例では、この成形プロセスは、安定プラットフォーム75上の所定の位置にある例示的なEPCS結合プリズム42A及びLSP結合プリズム42Bを用いて実行される。このプロセスについて、以下で更に詳細に説明する。
【0119】
図7は、固定用タブ52と、設置用孔53を通過するネジ等の固定部材54とを用いて、ハイブリッドシステム20の例示的な支持プレナム70に取り付けられた、例示的なプリズム支持構造体46のx‐z断面図である。支持プレナム70は、上面71及び測定アパーチャ72を有する。上面71は、測定アパーチャ72において、例示的な測定平面MPを画定する。プリズム支持構造体46は、EPCS結合プリズム42A及びLSP結合プリズム42Bが測定アパーチャ72の位置に存在するように、支持プレナム70によって支持される。ある例では、EPCS結合プリズム42A及びLSP結合プリズム42BのEPCS結合面45A及びLSP結合面45Bは、測定平面MPの位置に存在するか、又は概ね測定平面MPの位置に存在する。
【0120】
ある例では、CS基板10は可動式基板ホルダ80によって動作可能に支持され、この可動式基板ホルダ80は、EPCS結合プリズム42A及びLSP結合プリズム42BをCS基板10の上面と連結することによって、第1の結合境界面INT1及び第2の結合境界面INT2を、測定平面MPにおいて又は概ね測定平面MPにおいて確立できるように、CS基板を測定アパーチャ72の上で保持する。ある例では、可動式基板ホルダ80は、ローラ、ホイール、スライダ、軸受等の搬送要素73を用いて、支持プレナム70の上面71上を搬送される。ある例では、CS基板10は、可動式基板ホルダ80の、CS基板の上面12の外側(外周)部分を支持する内縁部82によって、支持される。ある例では、内縁部82の平面は、例示的な測定平面MPを画定する。よって
図7は、測定平面MPの2つの異なる例示的な位置を示す。
【0121】
図8Aは、支持プレナム70がプレートの形態である例を示す立面図であり、このプレートは、真空(負圧)によってCS基板をEPCS結合プリズム42A及びLSP結合プリズム42Bの結合面45A及び45B上へと牽引した後、圧力(正圧)によってCS基板をプリズムから解放するために、CS基板10に空気圧的に係合するために使用される、圧力‐真空(PV)導管又はPV要素90(例えばPVバー)を含む。
図8Bは、
図8Aの構成の支持プレナム及び測定アパーチャの断面図であり、PV要素(PVバー)90及び真空源92を含む例示的な真空システム91を示す。
【0122】
なお、可動式基板ホルダ80の内縁部82は、真空システム91によってCS基板に真空を印加したときに、CS基板10の垂直移動を制限するための停止部材を画定する。
【0123】
単一の屈折率適合用流体を使用したハイブリッドシステム
図6Dに示されているようなハイブリッドシステム20の例示的な実施形態は、EPCSサブシステム100及びLSPサブシステム200の両方のために、屈折率がn
fの単一の屈折率適合用流体5を使用する。単一の屈折率適合用流体5は典型的には、少なくとも以下の理由から、両方のサブシステムから良好な測定結果を同時に生成できないと考えられているため、これは直感に反するアプローチである。
【0124】
EPCS測定を考慮して屈折率適合用流体を選択する場合、屈折率適合用流体は、導波モードへの光の結合を促進するため、並びにキャプチャされたTM及びTEモードスペクトルにおいて良好な縞コントラストを得るために、CS基板の表面屈折率nSより大幅に(例えば0.1以上)高い屈折率nfを有する。
【0125】
一方、屈折率適合用流体5の屈折率とCS基板10の表面12の屈折率との間の、上述のレベルの屈折率コントラスト(差)Δnは、表面の微小粗度に関連する屈折率のミスマッチにおけるビームの偏向を原因とする、結合境界面INT2における大きな表面散乱を引き起こす。これは、CS基板からの散乱光の受信及び処理に基づく、中程度の深さにおける遅延及び応力測定の正確な抽出にとって、問題となる。表面散乱の程度が大きいと、散乱光ビームの画像上に、「ファイアボール」、例えばデジタル検出器(CCDカメラ)246のピクセル247が光子で飽和した大きな明るいスポットが生成される。これは、応力関連情報の有意な量の損失をもたらす。十分に研磨された表面、又は(例えばフュージョンドローによって形成された)無傷の表面は、散乱が小さい傾向にある。
【0126】
低い表面散乱を保証するために、屈折率適合用流体の屈折率n
fを、CS基板10の表面屈折率n
Sに概ね一致させる(例えば同等とする、わずかに高くする、又はわずかに低くする)と、モードスペクトル160の縞コントラストは通常、例えばIOXプロセスによって生成されるK
2O濃度の狭い集中したスパイクによって引き起こされるようなスパイク領域R1(
図1B参照)等の、屈折率の急激な変化が、表面付近に存在する場合に、良好でないものとなる。更に、TM縞163TM及びTE縞163TEの位置及びコントラストは、屈折率適合用流体の厚さに応じたものとなる。これら2つの影響により、EPCSサブシステム100を用いて表面CS及びスパイクDOLを正確に測定することが極めて困難になる。
【0127】
屈折率適合用流体5を、CS基板10の基板(バルク)屈折率nBより低い(これは通常、表面屈折率よりも小さいことも意味する)屈折率nfを有するように選択すると、屈折率適合用流体の厚さは、表面CS測定のためにNSWG18の表面付近部分(スパイク領域R1)の導波モードへの光の結合を可能とするために、極めて小さく(例えば0.4マイクロメートル未満に)しなければならない。この小さな厚さは、表面スパイク領域R1とバルク領域R3との間の深部領域R2を移動する光を結合するための臨界角を測定するためにも必要である。小さな粒子による汚染の問題により、これを製造環境において一貫して達成するのは困難である。これらの問題は、デュアルIOX Li含有ガラス及びガラスセラミックに関する、表面(圧縮)応力S(0)、及び表面屈折率スパイク領域R1の底部における「ニー応力」Skの正確な測定に関して問題を引き起こす。
【0128】
EPCS及びLSP測定両方のための単一の屈折率適合用オイル5は、CS基板10のスパイク領域R1の正規化済み勾配がSn=|(λ/n)dn(z)/dz|<0.0005、又はより好ましくはSn<0.0004(ここでλは測定波長であり、n(z)は測定波長におけるCS基板10の屈折率である)となる選択された条件下で使用できることが分かる。
【0129】
一実施形態では、CS基板10のガラスの表面屈折率nSよりも、0.02~0.06の範囲内の量Δn=nf-nSだけ高い(大きい)屈折率nfを有する屈折率適合用流体5が、EPCS及びLSP測定の両方に関して十分な測定結果を生成することが分かっている。Sn<0.0004である場合、Δnは上述の範囲の上端、例えば0.05~0.06となることが好ましい。
【0130】
本発明の一態様では、上述の条件をより容易に満たすために、EPCS測定の測定波長λAを低減することにより、勾配Snを低減する。一例では、EPCS測定の測定波長λAを、LSP測定の測定波長λBより5%以上短くすることにより、より小さな正規化済み勾配Snの達成を支援する。ある例では、1つ以上の光ブロック(図示せず)を、EPCSサブシステム100のビーム経路上に選択的に位置決めすることにより、比較的高い有効屈折率に対応する比較的大きい入射角で伝播する光線を優先的に遮断できる。これにより、NSWG18の表面付近スパイク領域R1に関する導波モードの、キャプチャされるTM及びTE縞のコントラストが増強される。
【0131】
別の実施形態では、表面スパイク領域R1の正規化済み勾配はSn>0.0005であってよい。ある例では、屈折率適合用流体を、EPCS測定波長λBにおいて、ニーKN、即ちスパイク領域R1底部のz位置zkにおける有効屈折率に極めて近い屈折率nfを有するように選択してよい。この場合、nf≒ncritであり、ここでncritは、スパイク領域の臨界角に関連する屈折率、即ち、これ未満の角度では光がスパイク領域R1内を導波として移動しない角度である。
【0132】
実用上の関心対象となる多くの場合において、表面スパイク領域R1の底部に対応する位置におけるTM導波とTE導波との間の有効屈折率の差は、比較的小さい。例えば、実用上の関心対象となるほとんどの場合において、上述の差は、0.0006屈折率単位(refractive‐index unit:RIU)未満、であり、またほとんどの場合、0.00015~0.0005RIUである。ある例では、以下のようになる:
【0133】
【0134】
いくつかの例では、nf≒ncritを指定するだけで十分であり、これは:
【0135】
【0136】
及び/又は
【0137】
【0138】
を意味する。より具体的には、nfは、TM臨界屈折率及びTE臨界屈折率のうちの小さい方よりも大幅に小さくならず、またTM臨界屈折率及びTE臨界屈折率のうちの大きい方よりも大幅に大きくならない。よって、ある例では(以上の内容を数学的に表現すると)、以下のようになる:
【0139】
【0140】
すぐ上に記載されている等式の上限は、屈折率適合用流体が存在しない場合の、スパイク領域R1に関連する縞の有効屈折率よりも、nfを高くすることによって、上記縞を見逃す可能性を低減するために定義されている。よって、(ある例ではカリウムIOXプロセスによって画定される)表面スパイク領域R1の深さを正確に計算する目的で、全てのモードを適切に考慮できるようにするために、nfは、TM臨界屈折率及びTE臨界屈折率:
【0141】
【0142】
のうちの大きい方よりも大幅に大きくないだけでなく、理想的には、これら2つの臨界屈折率のうちの小さい方よりも大幅に大きくないことが好ましい。
【0143】
一実施形態では、特定の偏光状態(TM又はTE)における最後の縞の有効屈折率と、対応する臨界屈折率:
【0144】
【0145】
又は
【0146】
【0147】
との間に、有意な有効屈折率の差が存在する場合、スパイク領域R1に関連するTM及びTEモードスペクトルのモード縞は、有効屈折率範囲内で大きく離間しており、例えば0.0015RIU超、好ましくは0.002RIU超、更に好ましくは0.0025RIU超だけ離間している。この実施形態では、屈折率適合用流体の屈折率noilは、上記2つの臨界屈折率のうちの高い方に近くなるように、また場合によってはこれらのうちの大きい方より高くなるように、選択してよく、以下のようになる:
【0148】
【0149】
又は
【0150】
【0151】
これらの有効屈折率の差は、EPCSサブシステム100を用いて、明るい全内部反射からセンサ上の暗い箇所(部分反射)への強度移行部166TM及び166TE並びに/又は縞の位置に対応する臨界角の位置の差を測定することによって、並びに機器の較正(角度/RIU、又はピクセル/RIU、又はセンサ平面上の点の間隔/RIU)を考慮することによって、容易に確立される。
【0152】
より一般的な用途を有する別の実施形態では、屈折率適合用流体の屈折率noilは、TM有効屈折率及びTE有効屈折率のうちの低い方に近くなるように選択される。これにより、有効屈折率が臨界屈折率に近くなり得るものの、EPCS結合プリズム42Aの結合面45AとCS基板10の上面12との間の比較的近い近接度(例えば波長数個分)を必要とし得る、TM及びTE縞のキャプチャが可能となる。
【0153】
より具体的には、この実施形態では:
【0154】
【0155】
又は
【0156】
【0157】
とすることが好ましい。
【0158】
更に、臨界角移行の形状の大幅な変化を低減するために:
【0159】
【0160】
又は更に
【0161】
【0162】
とすることが好ましい場合がある。
【0163】
実用上の関心対象となるいくつかの場合において、有効屈折率が最も低い導波モードは、臨界屈折率に極めて近い、約0.0002RIU以内の有効屈折率を有する。この場合、屈折率適合用流体の屈折率を上から制限するために、より厳格な要求を課すことが理想的となる場合もある:
【0164】
【0165】
noilが上記2つの臨界屈折率のうちの少なくとも一方より小さい場合、臨界屈折率ncritの適切な測定のために高コントラストの移行部を得るには、EPCS結合プリズム42Aの結合面45AとCS基板10の上面12との間の上述の近い近接度(例えば波長数個分)が必要となり得る。ある例では、この近い近接度は、PV源92に空気圧的に接続されたPV導管90によって試験片をプリズムに向かって引きつける真空システムの使用によって実現できる。
【0166】
別の実施形態では、屈折率適合用流体屈折率noilが、表面圧縮応力CSの計算に使用される導光モードの有効屈折率と大幅に異ならない場合に、表面圧縮応力S(0)=CSの計算における系統誤差に関して補正を行う。特に、このような補正は:
【0167】
【0168】
である場合に利用することが好ましいものとなり得る。
【0169】
ある例示的実施形態では、この補正は、例えば、本発明の好ましい二重用途屈折率適合用流体を用いて測定された表面圧縮応力CSと、バルク屈折率nBが1.45~1.55のCS基板10の測定に使用される、λA=590nmにおいてnoil=1.72であるオイル等の、比較的大きな屈折率noilを有する従来の屈折率適合用流体を用いて測定されたCSとの比較によって、系統誤差を較正することにより、規定される。
【0170】
関連する実施形態では、系統誤差は、TM縞163TM及びTE縞163TEの幅に対しても較正してよい。というのは、上記幅は、屈折率適合用流体の厚さに関連し得、また同時に表面圧縮応力CSの測定における系統誤差の量に関連し得るためである。なお、系統誤差は、CS基板10の表面スパイク領域R1の屈折率プロファイルの屈折率勾配Snにも左右される。これは、比較的狭い範囲に収まる表面屈折率勾配Snを有する、ある特定のタイプのCS基板に関して、系統誤差を画定できることを意味する。このような狭い範囲は、IOXプロセスを用いて強化されたLi系ガラスを採用したCS基板に典型的である。
【0171】
2つの異なる屈折率適合用流体を用いたハイブリッドシステム
ハイブリッドシステム20のある例示的実施形態は、EPCSサブシステム100及びLSPサブシステム200それぞれに関する、2つの異なる屈折率適合用流体5(5A及び5Bと呼ばれる)を採用し、ここでこれら2つの異なる屈折率適合用流体5A及び5Bは、それぞれの屈折率nfA及びnfB(又はnoil‐A及びnoil‐B)を有する。
【0172】
2つの異なる屈折率適合用流体5A及び5Bを採用するには、これら2つの屈折率適合用流体を、互いと混合されないように分離した状態に維持する必要がある。
図5A及び5Bに関連して上述したある例では、プリズム支持構造体46は、EPCS結合プリズム42AとLSP結合プリズム42Bとの間に配置された隔離部材50を含み、これにより2つの屈折率適合用流体5A及び5Bを、互いから流体的に分離する、即ち流体隔離状態とする。
【0173】
別の実施形態、過圧ガスを、EPCS結合プリズム42AとLSP結合プリズム42Bとの間に加圧ガス(例えば空気)を導入することにより、CS基板10をハイブリッドシステム20内で測定している間に屈折率適合用流体5A及び5Bが互いと相互作用しないことを保証する「エアカーテン(air curtain)」30(
図2B参照)を画定する。そしてこの分離により、屈折率適合用流体5A及び5BをそれぞれEPCS結合プリズム42A及びLSP結合プリズム42B上に同時に自動的に滴下でき、従って同時測定が可能となる。ある例では、エアカーテン30は、PVシステム91を用いて形成できる(例えば
図8B参照)。
【0174】
クロストークが低減されたハイブリッドシステム
EPCS結合プリズム42AとLSP結合プリズム42Bとの近接度を考えると、EPCSサブシステム100とLSPサブシステム200との間のクロストークが発生し得る。このようなクロストークは、各サブシステムの応力測定の精度を低下させる場合がある。以下で説明される、クロストークの低減(排除を含む)のための様々な実施形態は、別個に使用しても、組み合わせて使用してもよい。
【0175】
ある例では、EPCSサブシステム100のためのEPCS検出器システム140は、EPCS測定波長λAを中心とする上述のバンドパスフィルタ144を含む。一方、LSPサブシステム200のためのLSP検出器システム240は、LSP測定波長λBを中心とするバンドパスフィルタ244を含む。ある例では、バンドパスフィルタ144及び244それぞれの帯域幅は、他方のサブシステムの測定波長を実質的に除去できる程度に十分に狭い。バンドパスフィルタを極めて狭くする(例えば数ナノメートル)ことができるため、測定波長のごくわずかな差(例えば10nm)でも、バンドパスフィルタを用いたクロストークの低減又は排除には十分すぎるほどである。ある例では、所与のバンドパスフィルタを、対応する結合プリズムと検出器システムとの間のいずれの位置に挿入できる。
【0176】
別の実施形態では、測定EPCS波長λ
A及び測定LSP波長λ
Bに対して光学的に不透明であるバリアを、EPCS結合プリズム42AとLSP結合プリズム42Bとの間に配置する。ある例では、上記バリアは、
図5Aに関連して上述した隔離部材50の形態を取る。隔離部材50は、EPCS結合プリズムとLSP結合プリズムとの間でEPCS測定光及びLSP測定光が通信されるのを止めることができさえすれば、アルミニウム等の剛性材料で形成しても、ゴム等の合成材料で形成してもよい。上述のように、隔離部材50は、光学的隔離及び流体的隔離の二重の目的を果たすように構成することもできる。
【0177】
結合プリズムの整列
ハイブリッドシステム20は、EPCS結合プリズム42A及びLSP結合プリズム42Bが互いに対して整列され、これらの結合面45A及び45Bが共通の平面内にあるときに、最も正確な測定を提供する。
【0178】
このような整列を達成するために、結合プリズム組立体40は上述のプリズム支持構造体46を使用する。プリズム支持構造体46の形成の一例では、まず、EPCS結合プリズム42A及びLSP結合プリズム42Bの結合面45A及び45Bを、程度の高い平坦性及び垂直性が得られるまで研削及び研磨する。再び
図6Aを参照すると、EPCS結合プリズム42A及びLSP結合プリズム42Bは続いて、精密平坦グラナイトバー等の安定プラットフォーム75上に配置され、結合面45A及び45Bは、この安定プラットフォームの表面76に載置される。
【0179】
ここで
図6Bを参照すると、鋳型49を安定プラットフォーム75の表面76に設置した後、樹脂49Rを鋳型に注ぎ込む。樹脂の硬化後、鋳型49の壁を除去して、
図5Bに示されているような結合プリズム組立体40のプリズム支持構造体46を画定する。ある例では、成形されたプリズム支持構造体46は、
図6Cに示すように、EPCS結合プリズム42AとLSP結合プリズム42Bとの間に、薄い壁47の形態の隔離部材50を含む。ある例では、成形されたプリズム支持構造体46は、プリズムのうちの少なくとも1つを部分的に格納してクロストークを回避するように、形成される。ある例では、成形されたプリズム支持構造体46は、一体成形型構造体を含むか又は一体成形型構造体からなり、即ち単一の材料製の単一の部品(即ちモノリシックな部品)であり、従って2つ以上の構成部品の接合によって形成されたものではない。
【0180】
ある例では、成形されたプリズム支持構造体46は固定用タブ52を含み、これは、プリズム支持構造体46を支持プレナム70に固定するための設置用孔53を含む(
図5Aも参照)。
図7に示されている、上述の可動式基板ホルダ80の使用により、EPCS測定及びLSP測定を、CS基板10上の同一の位置で実施できる。可動式基板ホルダ80を、精密リニアモータ(例えば圧電アクチュエータ)を用いて、システムコントローラ40の動作下で移動させることにより、EPCSサブシステム100及びLSPサブシステム200のための測定位置を設定できる。
【0181】
ある例では、プリズム支持構造体46は、EPCS結合プリズム42A及びLSP結合プリズム42Bを互いに対して、例えば軸方向、即ち
図6Cに示すz方向に移動させることができるように、互いに対して移動可能なセクションを含む。ある例では、プリズム支持構造体の支持フレーム48は、隣接する壁47を含み、これらは、一方の壁を他方に対して制御下で摺動させることができるように構成される。
図6Cの例では、EPCS結合プリズム42Aは、LSP結合プリズム42Bに対してz方向に移動した状態で図示されている。
【0182】
図6Dは
図4Cと同様の図であり、EPCSサブシステム100及びLSPサブシステム200が共通の結合プリズム42を共有している、即ち共通の結合プリズム42がECSP結合プリズム42A及びLSP結合プリズム42Bの両方として機能する、ハイブリッドシステム20の実施形態を示す。また、単一の屈折率適合用流体5が使用される。結合プリズム42の様々な表面は二重の目的を有し、例えば結合面は、EPCS結合及びLSP結合を実施するという二重の目的を果たすため、45A及び45Bで表される。ある例では、EPCSサブシステム100のバンドパスフィルタ144及びLSPサブシステム200のバンドパスフィルタ244を、(例えば少なくともバンドパスフィルタ144及び244のうちの一方の帯域幅だけ波長が離間した)異なる波長λ
A及びλ
Bで使用することにより、これらのサブシステム間のクロストークを大幅に低減する、又は排除する。共通の結合プリズム42の例では、結合プリズムはECSPセクションPS1及びLSPセクションPS2を有することができ、更にこの例では、これらのセクションは離間させることができ、即ち、ECSP測定光116及びLSP測定光216が、少量の散乱光を除いて、概ねそれぞれのセクション内に留まる。
【0183】
基板の反りの低減
CS基板10は、正確なEPCS及びLSP応力の測定の実施が問題のあるものとなる点まで反る可能性がある程度に、十分大きい場合がある。特に、CS基板10が反っていると、EPCS及びLSP測定の実施に必要なEPCS結合境界面INT1及びLSP結合境界面INT2の確立が困難になる場合がある。
【0184】
再び
図8A及び8Bを参照すると、基板の反りを低減又は排除するために、PVシステム91が使用される。PV導管(PVバー)90は、支持プレナム70のアパーチャ72を通して、CS基板10の上面12と空気圧的に連通し、支持プレナム70は、上面12が概ね測定平面MPにあるようにCS基板を支持する。PV源92を起動すると、PVバー90を介して結合プリズム組立体40付近に減圧が生成され、2つの大きな矢印によって示されているような、周囲の高圧によるCS基板上の下向きの力FDがもたらされる。PVバー90は、支持プレナム70の上面72に対する(従って測定平面MPに対する)、±5マイクロメートル以内でのCS基板の高さ制御を可能とする。PVシステム91を使用すると、振動も低減され、また、CS基板を真空チャックに対して安定化させる必要なしに動的な処理及び検査を行うための、CS基板の非接触制御が可能となる。
【0185】
PVバー90は市販されており、
図8A及び8Bに示すように、反りを低減するために構成できる。PVバー90のうち、結合プリズム組立体40に近接したいくつかは、EPCS測定光ビーム116及びLSP測定光ビーム216、並びに支持プレナム70のすぐ下にあるEPCSサブシステム100及びLSPサブシステム200の様々な構成部品との干渉を避けるために、省略する必要がある場合がある。ある例では、1つ以上の停止部材94を用いて、CS基板10を支持プレナム70上の所定の位置に保持できる。
【0186】
場合によっては、EPCS結合プリズム42A及びLSP結合プリズム42Bのうちの少なくとも一方を、他方と独立して調整できることが望ましいいことがある。このような場合、結合プリズム組立体40は2つの別個のプリズム支持構造体46を備えることができ、これらのうちの一方又は両方が調整可能である。ある例では、モードスペクトルのTMモード縞及びTEモード縞のコントラストを最適化するために、EPCS結合プリズム42Aがz方向に調整可能である。これは、EPCS結合プリズムを可動構成で保持するプリズム支持構造体46に動作可能に取り付けられた、単軸微小位置決め装置を用いて達成できる。
【0187】
EPCS及びLSP測定の処理
図9は、ハイブリッドシステム20のシステムコントローラ400が表示する例示的なユーザインタフェース410の概略図である。ユーザインタフェース410は、EPCSサブシステム100が生成したモードスペクトル160を示すEPCSセクション412Aと、LSPサブシステム200が生成したデジタルLSP画像248を示すLSPセクション412Bとを含む。システムコントローラ400のソフトウェアは、EPCSサブシステム100からのEPCS測定(即ちモードスペクトル160)を用いてCS基板の第1の応力特性を計算し、またLSPサブシステム200からのLSP測定(即ちデジタルLSP画像248D)を用いてCS基板の第2の応力特性を計算し、続いてこれらの測定を組み合わせて、CS基板の完全な、即ち全応力特性を生成するよう構成される。
【0188】
LSP測定の処理
ある例では、システムコントローラ400は、(例えばソフトウェアによって)LSP画像248を処理して、LSPサブシステム200から得られる「第2の」、即ちLSP応力特性を抽出するよう構成される。これは、光遅延対深さ(OR対D)の計算を容易にするために、ガウシアンぼかし大津しきい値処理を用いたLSP画像248の輪郭のデジタル特性決定を、輪郭検出方法の一部として実施することを含む。
【0189】
図10Aは、ユーザインタフェース410のLSPセクション412Bに示されるLSP画像248の例示的な表示である。デジタル検出器246によるLSP画像248の検出は、デジタルLSP画像248Dを形成し、これは生LSP画像又は生デジタルLSP画像と呼ばれる場合もある。ユーザインタフェースのLSPセクション412Bはまた、デジタルLSP画像248D及びいくつかの関連する統計的測定を構成する散乱光強度のヒストグラムも示す。この例示的な図では、CSの基板への一次ビーム入射は、十字型の右下から中央へのものである。十字型の中央から右上へ向かって、デジタルカメラは、全内部反射による、ビームの側部のCS基板の空気面からの反射を捉える(下の
図11Cを参照)。十字型の中央から左下へ向かって、直接ビームはCS基板の空気面から反射して、LSP結合プリズムに向かって戻るようにCS基板の厚さを横切る。十字型の中央から左上へ向かって、デジタルカメラは、反射したビームの反射を捉える。
【0190】
デジタルLSP画像248Dの大部分は、極めて明るいピクセルと、露光がわずかであるか又は全く無いピクセルとで構成される。
図10Bを参照すると、輪郭検出方法の一部として、ガウシアンぼかしをオリジナルの(生)デジタルLSP画像に適用し、いずれの残留ノイズを低減する。その結果がぼかしLSP画像である。画像248Dは、オリジナルの(生)デジタルLSP画像の一例である。画像248Bは、ぼかしLSP画像の一例である。ガウシアンぼかしは、デジタルLSP画像248Dの強度変化に符号化された光遅延情報を不明瞭にしないような方法で適用される。
【0191】
ここで
図10Cを参照すると、大津しきい値処理を
図10Bの(ガウシアン)ぼかしLSP画像248Bに適用することにより、しきい値LSP画像248Tが得られる。大津しきい値処理メカニズムは、画像ヒストグラム(
図10A参照)を用いて、それ未満では全てのピクセルがゼロに設定される強度値を選択する。
図10Cの明るいセクションは、該しきい値より高い強度を有する全てのピクセルを表す。
【0192】
図10Dは次のプロセスステップを示し、このプロセスステップは、例えばオープンソース画像処理アルゴリズムから(例えばOpenCVを介して)入手できるような公知のオープンソース二値化アルゴリズムの適用等によって、二値化方法を用いてLSP画像輪郭248Cを画定するために、しきい値LSP画像248Tを使用することを含む。この例は、左上に0.0を有し、右(x)方向及び下(y)方向に向かって値が増大する、画像座標系を用いる。LSP画像輪郭248Cは複数の点のアレイからなり、これを四分円に分割することにより、十字型の画像の以下の5つの臨界点を見つけることができる:左上、右上、左下、右下、及び中央。
図10Dの近接図は、該領域において最も低いX値及び最も高いY値を見つけることによって得られる、左下点方向の例である。同一のプロセスを四隅全てに関して繰り返し、中央は隅のX値及びY値を平均することによって決定する。
【0193】
図10Eは、完全に画定された輪郭及び処理済み領域を有する、最終的なLSP画像輪郭248Cを示す。ある例では、処理済みの「X字型」LSP画像輪郭248C(台形領域を参照)の右下の脚を、LSP応力特性の計算に使用する。
図10EのLSP画像輪郭248C内の水平な線は、一定の深さにある。光源の偏光の変調中に取得された各画像からの水平な線にわたる、強度(例えば合計、ピーク、又は平均)のガウシアンぼかしを、OR対Dデータを得るための後続の分析のための入力として使用する。
【0194】
よって、しきい値LSP画像248T及びLSP画像輪郭248Cを用いて、上述のように光遅延ORをCS基板10内への深さ(D)の関数として計算するために使用される、キャプチャされた又はガウシアンぼかしが施されたLSP画像248Bの1つ又は複数の部分を識別する「マスク」を画定する。
【0195】
CS基板の厚さの抽出及びビーム角度の計算
図11AはCS基板10の図である。
図11Aは、LSP結合プリズム42B(図示せず)を通過した後の、CS基板10の本体11内の集束LSP光ビーム216Fの一部分のビーム経路も示す。
図11Bは、CS基板厚さTHの計算のための関心領域としてCS基板10の縁部を示す近接図である。
図11C~11Eは、CS基板内の集束LSP光ビーム216Fの経路の更なる図である。図示を簡単にするために、LSP結合プリズム42Bは図示されていない。
【0196】
集束LSP光ビーム216Fの伝播の方向に沿ってCS基板10の縁部を見ることにより、LSP検出器システム240のデジタル検出器246が捉えたCS基板10の厚さを、
図11Bに示すように強調できる。デジタル検出器246は、角度付きの(例えば45°の角度が付いた)LSP結合プリズム42Bを通して集束LSP光ビーム216Fを見ているため、CS基板10の実際の厚さTHは:
TH=x/{Cos(45°)
として計算でき、ここでxはデジタル検出器246の平面における経路の長さを表す。
【0197】
厚さTHを計算した後、デジタル検出器246の方向に沿ってCS基板10の縁部を見ることによって、また
図11Eの概略図を用いて、以下の式:
A=ArcTan(W/TH)
を用いて伝播角度Aを決定することによって、CS基板内での集束LSP光ビーム216Fの伝播角度A(
図11E参照)を決定でき、ここでWは、画像輪郭248Cの中央の交点Cと、上述の輪郭検出方法から得られた画像輪郭の右下(lower right:LR)の臨界点との間の水平距離である。処理領域を選択した後、デジタル検出器246は、入力偏光の関数として複数の画像248を記録する。続いて、当該技術分野で公知の技法を用いて、CS基板内への深さの関数としての光遅延情報を抽出する。
【0198】
ロックイン検出法
ロックイン検出法は、ノイズで不明瞭になっている信号の取得において非常に巧妙かつ迅速であることが分かっている、信号分析技術である。この方法が機能するためには、信号の周期が分かっている必要がある。
【0199】
LSPサブシステム200の測定(検出器)信号SBは、光補償板230の偏光回転の速度に依存する周期を有する。回転式半波長板234Hを光補償板230に使用する場合、1回の完全な回転は、散乱光216Sの偏光状態の4回の振動に対応する。
【0200】
LSP測定信号SB=s(t)(ここでtは時間である)に適用されるようなロックイン法の導出は、以下の通りである。LSP測定信号s(t)が、ゼロを中心とし、あるノイズの量(「ノイズ係数」)Nを有するものと考える。システムコントローラ400が受信する測定データD(t)は:
D(t)=s(t)+N
として表すことができる。測定信号s(t)は:
s(t)=Acos(ft+φ)
の形に一般化でき、ここでφは抽出される位相値であり、fは信号の既知の周波数である。この信号を、等しい負の周期(及び任意の位相)の一般的なテスト波W(t)=cos(-f-θ)を乗算して、以下の式を得ることにより、「ロック」できる:
【0201】
【0202】
D(t)*W(t)に関するすぐ上の式の最初の2項は、時間変数tによって振動する。しかしながら、最後の項は一定であり、積の波の強力なローパスフィルタリングによって抽出できる。ある波の平均は、複数回の振動にわたってその波のオフセット値に近づくため、これは上記積の波を平均することによって達成される。
【0203】
この近似は、測定信号s(t)が多数の振動を有していない(例えば完全な振動1回未満)場合、又は上記信号が非整数の半サイクル数を有する場合に、わずかな量の誤差を発生させる。この誤差は、信号の半サイクルの最大量のみにわたって信号の平均を取ることによって低減できる。例えば信号が約3.7回の振動を有している場合、3.5サイクルまでの信号の平均を取る。
【0204】
公知の手段を用いてローパスフィルタリングを実施した後、積D(t)*W(t)は、定数項[A/2]cos(-θ+φ)まで減少する。φは所望の位相値であり、θはテスト波の任意の位相であることに留意されたい。従って、θが一連の数によってインクリメントされる場合、各インクリメントに関して積波のローパスフィルタリングから生じる定数は、非時変余弦関数[A/2]cos(-θ+φ)に従って振動することになる。この余弦波の波数は-1であり、振幅はA/2であり、位相はφである。これが分かっていると、余弦を(例えば最小二乗当てはめを用いて)これらの定数に当てはめることができ、位相φを抽出できる。信号Aの振幅も抽出できる。
【0205】
信号抽出のためのロックイン法は、通常の正弦当てはめよりもはるかに高速であることが分かっている。
図12Aは、ロックイン法(L又は黒色の曲線)及び正弦法(S又は灰色の曲線)の両方に関する、ノイズの多い信号の位相φの抽出に必要な平均計算時間(ミリ秒(ms))対ノイズ係数Nのプロットである。
図12Aのためのデータは、一連の複数の試験にわたって収集された。これらの試験では、ランダムなノイズをあるセット信号に付加し、これに対して、正弦当てはめ法及びロックイン検出法の両方を用いて位相を抽出した。各ノイズレベルにおいて、ランダム化したノイズを用いて100回の試験を実施した。ロックイン法は、正弦当てはめ法にかかる時間のおよそ半分の時間で計算を実施した。
【0206】
図12Bは、ロックイン法(L又は黒色の曲線)及び正弦法(S又は灰色の曲線)に関する、絶対位相差|Δφ|対ノイズ係数Nのプロットである。
図12Bは、これら両方の方法が、全ての試験にわたっておおよそ同じレベルの精度と確度を保持していたことを示す。
【0207】
ロックイン法は、当てはめのために正弦パラメータを予測する必要を取り除く。実施される唯一の当てはめは、ローパスフィルタリング定数に対する余弦波の当てはめであり、これは、良好でない当てはめをほとんど全く生成しないように制限されている。ただし、正弦当てはめを使用すると、これは、データに当てはめられる正弦波が一定の周期を有する場合に、はるかに高い精度で機能することが分かっている。この周期を他のパラメータと共に当てはめることができる場合、処理時間はより長くなり、得られる結果は正確なものでなくなることが多い。
【0208】
LSP測定におけるノイズの低減
LSPサブシステム200からのLSP測定を用いた第2の応力特性の抽出は、2つの主要なパート、即ちデータ取得パート及びデータ分析パートからなる。測定のデータ取得パートでは、散乱光216Sを、LSP光源212からの初期LSP光ビーム216の入力偏光状態の関数として撮像する。この撮像は、デジタル検出器246において、1つ以上のIOXプロセスによる本体CS基板10内の特徴(例えば粒子、屈折率の変化)からの散乱光の強度を記録することによって達成される。
【0209】
システムコントローラ400は、記録された画像248を処理して、レーザビームに沿った強度を抽出し、これを入力偏光に対して分析することによって、光ビームの2つの直交する状態の間の光遅延の量を抽出する。観察された遅延をモデル化することによって、応力プロファイルを再構築する。その結果、
LSPで測定された応力プロファイルの品質は、典型的にはレーザベースのノイズが支配的である撮像プロセスのノイズによって基本的に制限される。このようなレーザベースのノイズの一例はスペックルであり、これは、LSP光源212の高度なコヒーレンス、並びに光学的表面の不完全性(粗度、平坦性等)並びに光学素子の体積特性(不純物、密度の不均一性及び異質性等)によって発生する。
【0210】
LSPサブシステム200を通したLSP光ビーム216の伝播の間、光(レーザ)ビーム216とシステムの不完全性との間の相互作用により、光ビームの波面内にランダムな振幅及び位相の変動が生じる。LSP光ビーム216がレイリー散乱によってコヒーレントに撮像される場合、波面の歪みは、画像平面内の静的干渉パターンにつながり、これはスペックルパターンと呼ばれ、所望の信号に重ね合わされた高い空間周波数を伴う大きな強度変動を特徴とする。所望の信号からの強度偏差は、LSP測定においてノイズとみなされる。レーザスペックルの影響を低減するために、ビーム波面の偏光、振幅又は位相の変調によって、個々のスペックルパターンにわたって撮像を平均化できる。
【0211】
一実施形態では、レーザベースのノイズは、LSPサブシステム200において、ある例ではホログラフィ拡散器を含むことができる可動式光拡散器222に初期光(レーザ)ビーム216を通すことによって、低減される。これにより、拡散角度内の光ビームの光線は、拡散器の局所的構造に応じた拡散角度内で「撹拌(stir)」される。この「光線撹拌(ray stirring)」によって引き起こされるビームの発散を最小化するために、光拡散器222は、
図4Aの例示的構成において示されているように、ケプラー望遠鏡構成の画像平面内に配置される。LSP光ビーム216は、まず第1の集束レンズ220によって光拡散器222上に集束し、透過した光ビームは第2の集束レンズ224によって再びコリメートされる。
【0212】
光拡散を経た後のLSP光ビーム216の発散を軽減することにより、CS基板において、より効率的な(即ち収差が小さい)集束LSP光ビーム216Fが提供される。移動する光拡散器222を使用すると、デジタル検出器246におけるレーザベースのノイズ(例えばスペックルパターン)の変動が、回転する拡散器の回転速度ν
Dで生成される。ノイズの平均化の最大の効果は、ν
Dτ
C>1の条件において達成され、ここでτ
Cは、デジタル検出器246の露光時間である。この条件はまた、光拡散器222にわたる光透過の変動によって引き起こされる、撮像に起こり得る明滅も排除する。拡散器ベースのノイズ低減の実装により、光遅延の測定は改善される。これは、光遅延OR(ラジアン)対CS基板内への深さD(mm)のプロットである
図13A及び13Bに図示されている。
図13Aのプロットは、上述のノイズ低減装置及び方法を用いずに得られたものである。
図13Bのプロットは、上述のノイズ低減装置及び方法を用いて得られたものである。
図13Bのプロットの平滑性は、本明細書で開示されているノイズ低減装置及び方法の直接的な結果である。
【0213】
ノイズを低減するための別の方法は、基板を移動させることである。
【0214】
屈曲点及びCS基板の中心面を用いた、ORプロットのシフト
CS基板10の表面12の位置をLSP画像248から決定するのは困難である場合があるため、応力プロファイルを、遅延曲線(OR対D)の概形に基づいた位置へとシフトさせることができる。OR遅延曲線は、導関数がゼロとなる2つの屈曲点を有する。実際のOR対D曲線の例が、2つの屈曲点BP1及びBP2と共に、
図14Aに示されている。データ点は中抜きの円で示されている。2つの屈曲点は、応力プロファイルが圧縮応力から引張応力へ、又は引張応力から圧縮応力へと変化する点に対応する。
【0215】
応力プロファイルが対称である場合、2つの屈曲点BP1及びBP2も、CS基板の中心面MP(
図1A参照)に関して対称となるはずである。従って、CS基板10の厚さTHが分かっており、かつ光遅延OR曲線の2つの屈曲点BP1及びBP2を見つけることができれば、ORプロファイルを正確な位置へと水平にシフトさせることができる。これにより、CS基板10の表面12の位置が、既知の対称性及びCS基板の厚さに基づいて選択されるため、圧縮深さDOCを更に正確に決定できる。
図14Bは
図14Aと同様であるが、上述のプロットシフト(データシフト)技法を用いて、
図14Aに比べて左にシフトされたOR曲線を示す。
【0216】
曲線当てはめを用いたORプロットのシフト
対称な応力プロファイルに関するDOCを抽出する別の方法は、遅延プロファイル、即ちOR対D曲線の形状を分析することを含む。CS基板の厚さTHが分かっており、かつ屈曲点BP1及びBP2の相対位置を多項式当てはめによって決定できれば、CS基板の圧縮深さDOCは、式:
DOC=[TH-(BP2-BP1)]/2
によって決定でき、ここでBP1及びBP2は屈曲点の相対深さ位置である。
【0217】
OR対D曲線に関する曲線当てはめ
本開示のある実施形態は、OR対D曲線のデータに対する優れた当てはめを得る方法を対象とする。この方法は、一次関数と二次関数との組み合わせを用いて曲線当てはめを得ることを含む。この方法は、以下ではLinQuad法と呼ばれる。
【0218】
図15AはOR対Dデータのプロット(円)であり、LinQuad法を用いたORデータに対する例示的な当てはめ曲線FC(実線)を示す。LinQuad法は、以下のモデル応力関数を想定し、ここでσは応力であり、xはCS基板10内への深さの座標であり、Rは以下のように定義される:
【0219】
【0220】
対応する遅延を抽出して、関心対象の生データに対して当てはめることにより、応力プロファイルを再現できる。ここでCは、CS基板中のイオンの正規化済みモデル化濃度を表す。その式は以下の通りである。
【0221】
【0222】
ここでdlは直線領域の深さであり、dcは湾曲領域の深さであり、C0は定数である乗数であり、tはCS基板の厚さである。
【0223】
別の式は:
【0224】
【0225】
よって与えられる。ここでCTは応力プロファイルの中央張力であり、
【0226】
【0227】
は、
【0228】
【0229】
周辺の(部分的に任意の)定数である。真のLinQuad関数は上で定義されており、dc、dl、C0のみが当てはめられる。しかしながら、この最新のσ(x)の式により、第4のパラメータ、即ち中央張力CTを変化させることができ、これは上記関数によるデータの更に厳密な当てはめを支援できる。
【0230】
図15Bは、
図14AのOR対D曲線に対するLinQuad当てはめに基づく、応力S(x)=σ(x)対深さD(mm)(又はx座標)のプロットである。
【0231】
力‐スパイク関数
力‐スパイク関数は:
【0232】
【0233】
として定義され、ここでCTspは、スパイク領域R1のスパイクの中央張力であり、midは厚さTHの半分であり、CSspはスパイクの圧縮応力であり、DOLspはスパイクに関する層深さである。パラメータLeffは、スパイク領域R1の有効長(深さ)である。この関数は、両端に2つのエラー関数スパイクを有するべき乗プロファイルのスティッチである。CSsp値及びDOLsp値は各ガラスタイプに固有であり、定数として入力される。当てはめが必要なパラメータは、上記関数のべきp及びピーク中央張力CTpのみである。
【0234】
図16Aは、力‐スパイク関数を用いた例示的な当てはめ曲線FCを示す、OR対Dプロットである。
図16Bは、
図16AのOR対D曲線に対する力‐スパイク関数の当てはめに基づく、応力プロファイルS(x)(MPa)対CS基板10内への深さDのプロットである。
【0235】
対称な応力プロファイルに適合させるための、系統誤差の除去
LSP測定データを用いたCS基板の応力プロファイルは、OR対D曲線を微分することによって得られる。従って、対称な応力プロファイルは常に、非対称なOR対D曲線に対応する。しかしながら、LSPサブシステム200内の様々な構成部品に由来する系統誤差は、OR対D遅延データに対称成分を導入することにより、応力プロファイルの正確な抽出を妨げる場合がある。この効果は、遅延データを対称成分及び反対称成分に分解して、反対称部分(即ち非対称データ点)のみを当てはめることにより、軽減できる。
【0236】
光遅延ORが関数f(x)の形であるとすると、上述の分解は:
f(x)=fs(x)+fa(x)
のように達成でき、ここでfs及びfaは、遅延fの対称成分及び反対称成分であり、以下の式によって表される:
【0237】
【0238】
図17Aは、オリジナルのORデータに基づくOR対Dプロットに対する当てはめであり、
図17Bは、上述の技法を用いてデータの対称成分を除去したOR対Dプロットに対する当てはめである。
図17Bの測定データに対する当てはめ曲線FCの当てはめ誤差は0.006であるが、
図17Aにおいては約0.46である。
【0239】
正確なCT及びDOCのために調整可能な当てはめ領域
OR対D曲線に対する1回の当てはめは、中央張力CT及び圧縮深さDOCの両方を正確に決定するために常に十分であるわけではないかもしれない。これは、LSP結合プリズム42B又は結合境界面INT2からの散乱によって、CS基板10の上面12付近のデータ収集が妨げられる場合があるためである。
【0240】
ある例では、OR対D曲線に対する当てはめは、中央張力CT及び圧縮深さDOCそれぞれに関連する曲線の別個の領域に対する当てはめを用いて実施され、正確なCT及びDOCの抽出のために、ORデータの当てはめ範囲を調整する。
【0241】
図18A及び18Bは例示的なOR対D曲線を示し、データ(円)によって画定された屈曲点BP1及びBP2周辺の領域を当てはめことにより、圧縮深さDOCが抽出される。
図18Bは、中央張力CTを抽出するために当てはめられる、屈曲点BP1と屈曲点BP2との間の中央の直線領域を示す。いずれの場合においても、OR対Dデータの範囲は、このOR対D曲線の、所与の応力パラメータに関連する部分にまで、大幅に削減される。
【0242】
図19A~19Dは、(垂直の破線で示された)データ範囲の選択の、当てはめの品質に対する影響を更に示す。
図19Aは、全データ範囲が考慮され、当てはめ曲線によって屈曲点BP1及びBP2が極めて厳密には当てはめられていない、OR対Dプロットを示す。
図19Bは、圧縮応力CT及び圧縮深さDOCを示す、
図19Aに対応する応力S(x)対D(深さ)のプロットである。
【0243】
図19Cは、データ範囲が垂直な破線の間の領域へと削減され、従って測定データの第1の「端部領域」ER1及び第2の「端部領域」ER2が省略されていることを除いて、
図19Aと同様の、OR対Dプロットである。
図19Cの当てはめ曲線FCは、屈曲点BP1及びBP2を厳密にたどっている。対応するS(x)対Dプロットが
図19Dに示されており、圧縮応力CT及び圧縮深さDOCに関する値は、データの全範囲を使用した
図19Bにおけるものとは大きく異なっている。
【0244】
EPCS測定及びLSP測定の同時考慮
LSPサブシステム200を用いた圧縮深さ(DOC)の測定に関して良好な精度を達成する1つの方法は、CS基板を停止面(例えば支持プレナム70)に対して押し付けることによって、CS基板10の上面12が、深さz=0を割り当てることができる所定の表面と同一平面となることを保証することである。この押圧は、CS基板10を停止面に対して押すことによって、又は周囲の大気圧が、CS基板10の上面12をz=0の位置へと押す力を提供するように、真空を印加することによって、達成できる(例えば
図8A、8B参照)。
【0245】
一方、NSWG18の表面付近領域R1の正確な応力測定を得るために、EPCSサブシステム100を用いて鮮明な(即ち高コントラストの)モードスペクトル160を達成するには、通常、EPCS測定領域におけるCS基板の良好な平坦性も必要となり、これもまた真空システム91によって達成できる。
【0246】
EPCS測定領域及びLSP測定領域がCS基板の異なる位置にあることにより、LSP測定領域に真空を印加すると、CS基板をEPCS測定領域において変形させてしまう場合があり、これはEPCS測定領域の、最適未満の、又は平坦性が極めて悪い、若しくは大きく変形した表面をもたらす。これは、コントラストが良好でなく、「焦点が合っていない(out of focus)」EPCSモードスペクトル160をもたらす。これらの条件は、精度と確度の低下、並びに測定の失敗につながる場合がある。というのは、良好でないコントラストにより、システムコントローラが、応力の計算を実施するために使用するモードスペクトル160の標的特徴部分の一部の識別に失敗する可能性があるためである。
【0247】
ある例示的実施形態では、EPCSサブシステム100のEPCS検出器システム140は、CS基板をLSPサブシステム200による最良のLSP測定のために整列させたときに、EPCSサブシステムを用いた最良の(最も正確な)DOC測定及び表面付近応力測定のために、CS基板10を支持プレナム70上に適切に整列させることができるように、適応焦点調節を利用する。
【0248】
図20に示されている一実施形態では、これは、EPCS検出器システム140の集束レンズ142を、調整可能なものとすること、例えば集束レンズを並進移動ステージ143上に設置することによって軸方向に移動可能とすることによって、達成され、この並進移動ステージ143は、ある例では、システムコントローラ400に動作可能に接続されて、システムコントローラ400によって制御される。ある例では、並進移動ステージ143は、圧電アクチュエータ等の精密リニアアクチュエータを備える。別の例では、並進移動ステージ143はボールネジアクチュエータを備える。これは、集束レンズ142を第2の光軸A2に沿って並進移動させて、デジタル検出器150がキャプチャするモードスペクトル160のコントラストを改善又は最大化できる。ある例では、モードスペクトル160のコントラストを改善することにより、TM縞163TM及びTE縞163TE並びに臨界角移行部166TM及び166TEといった標的のスペクトル特性が強化される。
【0249】
軸方向に移動可能な集束レンズ142の位置をシステムコントローラ400で電子的に監視して、「光経路長(optical path length)」即ちOPL、例えば集束レンズ142からデジタル検出器150までの距離を考慮することによってEPCSサブシステムの較正を補正できる。一実施形態では、OPLが所定の許容可能な範囲の外とならない限り、元の較正が正確なままとなるように、このような考慮を簡略化できる。別の実施形態では、この較正をOPLに基づいて補正し、補正された較正に基づいて、表面応力S(0)=CS及び/又は層深さDOLを計算する。
【0250】
別の実施形態では、集束レンズf1は可変有効焦点距離を有し、システムコントローラ400がこれを能動的に制御することにより、LSPサブシステム200のための圧縮深さDOCの最も正確な測定を保証するように試験片を整列させた場合に、高コントラストのモードスペクトル160が得られる。この可変焦点距離集束レンズ142は、(2つ以上の光学素子を備える写真用多部品レンズと同様の)複合レンズを含むことができ、又はそうでない場合、流体の圧力を変化させることによってレンズの形状が変化し、従って焦点距離が変化する流体充填レンズ等の適応性レンズを含む場合もあり得る。可変焦点距離レンズ142を用いる場合、集束レンズ142の位置のシフトを必須でないものとすることができる。というのは、多くの場合に、焦点距離の変化が、LSP測定領域での最良の測定のために試験片を整列させた結果としてのEPCS測定領域内での試験片の形状の変形の補償に十分なものとなり得るためである。
【0251】
別の実施形態では、集束レンズ142の有効焦点距離の変化は、鏡面の形態の適応性レンズの表面によって実現でき、これは、固定された単純なレンズと組み合わせることによって、CS基板の整列がLSPサブシステム200に対して最適化されている場合であっても、高コントラストのモードスペクトル160を生成するために十分な範囲にわたって変化させることができる正味の有効焦点距離を生成できる。
【0252】
CS基板10の変形はあまり大きくならない傾向があるため、可変焦点集束レンズ142に関する屈折力の変化は、補償のために特に大きくする必要がない。ある例では、集束レンズ142の焦点距離は、最大15%まで変化させることができ、又は別の例では最大10%まで変化させることができる。
【0253】
一方、CS基板10の厚さが0.6mm未満である場合、上記屈折力は、15%よりも大きく、例えば20%も、又は25%も変化させる必要があり得る。よってある例では、集束レンズ142の焦点距離を変化させるための適応システムは、焦点距離を、平均焦点距離の25%を表す焦点距離範囲にわたって変化させるよう較正されるが、多くの場合、平均焦点距離の20%、15%、又は10%で十分となり得る。
【0254】
同様に、平坦なCS基板の測定に関して、集束レンズ142の系は、無限遠点を焦点とするため、集束レンズ142が固定焦点距離を有し、かつ集束レンズの位置を軸方向に調整することによって高コントラストのモードスペクトル160を生成する場合、集束レンズがアクセス可能な軸方向位置の範囲は、該レンズの焦点距離の約25%を表すのが理想的であるが、場合によっては焦点距離の20%、15%、又は10%が、十分な位置の範囲を表すことができる。
【0255】
図21A及び21Bは、わずかに焦点距離がわずかに異なる2つ以上の集束レンズ142が支持部材152上に設置されて集束レンズ組立体153を画定する例示的実施形態の概略図である。支持部材152は、集束レンズ142のうちの選択された1つを、反射光ビーム116Rの光経路内に(即ち第2の軸A2に沿って)配置するために、移動可能である。これにより、ユーザは、集束レンズ142の焦点距離を、焦点距離の個別のセットから選択できる。
図21Aは、支持部材152が、回転軸AWの周りで回転可能な回転ホイールの形態である例を示す。
図21Bは、支持部材152が直線状に並進移動可能な支持フレームの形態である例を示す。4つの例示的な集束レンズ142が示されている。一般に、集束レンズ組立体153は、2つ以上の集束レンズ142を支持できる。
【0256】
モードスペクトル160内の関心対象の特徴(例えばTMモード線163TM及びTEモード線163TE、TM臨界角移行部166TM及びTE臨界角移行部166TE等)のコントラストが十分であるとみなされる場合、測定は通常どおりに進行する。関心対象の特徴のコントラストが不十分であるとみなされる場合、焦点距離が異なる集束レンズ142を、反射光ビーム116Rの光経路内へと移動させて、新たなモードスペクトル160をEPCSデジタル検出器150によってキャプチャし、コントラストを分析する。十分なコントラストのモードスペクトル160が得られるまで、このプロセスを繰り返す。
【0257】
ある例では、集束レンズ142の焦点距離の差は、支持部材上のレンズの、焦点距離カバー範囲の所望の合計範囲、及び総数によって設定できる。一例では、6個の集束レンズが支持部材に支持されており、これらの集束レンズは、集束レンズのセット全体の平均焦点距離の20%~30%の範囲をカバーし、焦点距離の間隔は、平均焦点距離の3%~7%である。
【0258】
別の例では、焦点距離は不均一に離間しており、従って隣接する焦点距離のペアそれぞれの間隔は、隣接する焦点距離の平均の、おおよそ固定されたパーセンテージであり、このパーセンテージは、2%~20%、より好ましくは3%~10%である。
【0259】
別の関連実施形態では、集束レンズ142のうちのいくつか又は全てがフレネルレンズを含む。別の実施形態では、集束レンズ142は異なる焦点距離を有する必要がなく、選択した集束レンズを光経路内に配置したときに、デジタル検出器150からの距離が他の集束レンズとは異なるものとなるように、可動式支持部材上に位置決めできる。この実施形態では、関心対象の特徴に関して十分なコントラストを有するスペクトルを得ることは、特別に選択した、間隔が密な別個の焦点距離の完全なセットを有することによっては必ずしも保証されないが、デジタル検出器までの距離及び/又は利用可能な焦点距離のセットによって保証される。これにより、標準的な既成品の集束レンズを利用すること、及び各集束レンズを、CS基板10のある特定の範囲の反り/湾曲に関する鮮明な画像を生成するために位置決めすることで、EPCSサブシステム100のコストを削減できる。
【0260】
ある例では、システムコントローラ400は、キャプチャされたモードスペクトル160の関心対象の特徴のコントラストの測定に基づいて、集束レンズ142のうちの1つを選択できる。
【0261】
別の実施形態では、キャプチャされた全てのモードスペクトルのうち、最良のコントラストを有する2つ又は3つの好ましいモードスペクトル160を用いて、測定を行うことができ、そして、これら2つ又は3つの好ましいモードスペクトルの平均として、好ましい結果を計算できる。ある例では、上記好ましい結果は、上記2つ又は3つの好ましいモードスペクトルの重み付け平均として計算できる。関連する例では、好ましいスペクトルそれぞれに関する重みは、該好ましいモードスペクトルの関心対象の特徴のコントラストに比例していてよい。
【0262】
応力測定の較正のための、独立した応力測定の使用
EPCSサブシステム100は、Li系ガラスを用いたIOXプロセスによって形成されたCS基板に関して、高コントラストのモードスペクトル160を得ることにおいて、極めて良好なものとなり得、例えば上記IOXプロセスでは、Kイオンがガラスの表面付近領域のLi及び/又はNaイオンを置換する。これは、TM臨界角移行部166TM及びTE臨界角移行部166TEの相対位置に基づいて複屈折を測定することによる、ニー応力CS
kの極めて良好な測定を可能とする(
図3B参照)。
【0263】
一方、ニー応力CSkのEPCS測定は、表面応力S(0)の測定に比べて相対的な精度が低い場合が多い。特に、ニー応力CSkの測定の標準偏差は、その平均値の数%となることが多く、一方で表面応力S(0)の標準偏差はその平均値の1%~2%程度となることが多い。更に、検出された臨界角の複屈折Bと応力光係数(SOC)との比として単純に得られるニー応力CSkの値は、応力プロファイルの破壊的RNF測定から得られるニー応力CSkの値とわずかに異なる。
【0264】
ニー応力CSkのEPCS測定の精度が、可能と思われていたもの又は必要であるものよりも低いと考えられる場合、その原因は、臨界角の複屈折の測定の系統誤差であり得る。この系統誤差は、TMモード線163TM及びTEモード線163TEが、TM臨界角移行部166TM及びTE臨界角移行部166TEに近すぎることによって、また更にTM及びTE屈折率プロファイルの特定の形状によって、引き起こされ得る。
【0265】
品質管理測定を行う際、このような系統誤差は、対応する独立した基準応力測定を用いて、ニー応力CSk測定のEPCSベースの測定を較正することによって軽減され、上記基準応力測定は、同一のプロセスを用いて形成された、又は同一のプロセス中に同一のバッチから形成されたCS基板のセットから取られたあるCS基板に対する破壊的測定であってよい。ある例では、これは、独立した測定に基づく較正乗数Kcalを、以下の関係:
CSk(EPCS,較正済み)=Kcal・CSk(独立).
によって適用することによって達成される。ある例では、較正乗数Kcalは、式:
S(EPCS,較正済み)=Kcal・S(オリジナル)
により、EPCSサブシステム100によって計算された応力プロファイルに関する一般的な較正係数として使用でき、ここでS(オリジナル)は、初めに測定された(未較正の)応力プロファイルS(z)である。
【0266】
張力ゾーンの応力プロファイルの抽出
CS基板10を形成するために使用されるIOXプロセスは、NSWG18を画定する圧縮ゾーンを形成する。この圧縮ゾーンは、基板内へと延在して、ゼロ値に到達し、これは圧縮深さDOCを画定する。DOCにおいて圧縮ゾーンは終端し、張力ゾーンが始まる。
【0267】
張力ゾーンの応力プロファイルを略正確に抽出できれば、これは、圧縮ゾーンの応力プロファイルのかなり正確な表現の抽出を支援する強力なツールとして機能できる。これは、CS基板10全体における応力の力平衡化、又はCS基板の半分における応力の力平衡化(即ちいわゆる「半力平衡化(half force balancing)」)を利用して実施できる。
【0268】
一実施形態では、(一方の圧縮深さから反対側の圧縮深さまでの引張応力の深さ積分で表される)張力ゾーンの応力プロファイルの範囲の他に、信頼できる勾配の抽出の深さにおける、応力プロファイルの勾配の信頼できる値も、LSPベースの測定から得られる。
【0269】
ある例では、信頼できる勾配の抽出の深さは、圧縮深さDOCであってよい。圧縮応力領域において、表面圧縮応力はEPCS法で決定される。場合によっては、圧縮応力プロファイルの一部分もまた、IWKB、又は信頼できるIWKB抽出のための十分な導波モードが存在しない場合には、線形プロファイル、erfc形状プロファイル、指数プロファイル、若しくはLinQuadプロファイル近似といった、従来技術の技法を用いて、EPCS法によって抽出される。そして、このEPCSベースの方法は、表面応力値S(0)を有する表面における、又はより深い接続点(例えばニー深さz
k;
図1B参照)における、標的接続点を提供し、最大でこの点まで、応力プロファイルS(z)の表面部分をEPCS測定によって抽出できる。後者の場合、EPCS測定の限界により、ニー応力CS
kが高精度で特定されない場合がある。
【0270】
それにもかかわらず、ニー応力CS
kのこのような値は、反復的な改善によって、圧縮ゾーン(例えば概ね
図1BのゾーンR1及びR2)における応力プロファイルの抽出を遂行するための適切な始点を提供できる。最初の反復では、表面応力値S(0)を有する表面付近接続点を、二次多項式を用いて、高い信頼性で抽出された応力勾配を有する深い接続点(例えばニー応力CS
k又は圧縮深さDOC)と接続してよい。これにより、第1の接続点までの(即ちニー深さz
kにおける)EPCSによって得られた第1の部分と、上記2つの接続点の間の多項式補間によって得られた第2の部分とを有する、圧縮ゾーンの応力プロファイルの第1の近似が決定され、ここで第2の接続点では、表面応力S(0)だけでなく応力プロファイルの勾配も一致している。
【0271】
ある特定の例では、第2の接続点は圧縮深さDOCとすることができるが、そうである必要はない。応力プロファイルS(z)の第1の近似を積分する。応力プロファイルが非対称である場合、EPCSで測定を試験片の両側において実施して、各側に関して応力プロファイルの第1の近似を上述のように得てよい。応力プロファイルS(z)が設計及び実装によって対称となる場合、試験片の裏側は、裏側圧縮領域において、表側圧縮領域と同一の応力プロファイルを有すると想定できる。
【0272】
表側圧縮ゾーン及び裏側圧縮ゾーン両方からの応力プロファイルの第1の近似を、各圧縮ゾーンにわたる深さに関して積分し、張力ゾーンにわたる張力の深さ積分と比較する。差の絶対値が所定の許容限界よりも大きい場合、補正ステップを実施してこの差を低減する。ある例では、所定の許容限界は、張力ゾーンの応力範囲の5%であるが、漸進的に良好となる許容限界には、3%、2%、1%、及び0.5%が含まれる。
【0273】
許容限界は、張力ゾーンの応力プロファイルの抽出の精度の程度の推定に基づいて決定できる。一実施形態では、応力プロファイルに関する複数の第1の近似を、異なる複数の方法で得る。これらは全て、第1の接続点におけるニー応力CSk、並びに第2の接続点、即ち圧縮深さDOCにおける応力値及び応力勾配と一致する。第1の近似の異なる複数のタイプとしては:二次、三次、及び四次多項式;指数プロファイル;erfc形状プロファイル;ガウシアンプロファイル;並びにローレンツプロファイルが挙げられる。次に、これらの第1の近似のそれぞれに関して、第1の近似の圧縮ゾーンにおける応力範囲と、LSPベースの測定を用いて抽出された張力ゾーンにおける応力範囲との間の差を得る。続いて、これらの第1の近似の応力プロファイルの線形結合を、線形結合応力プロファイルの応力範囲が張力ゾーンの応力範囲と等しくなるように、得る。
【0274】
別の実施形態では、ニー応力CSkの範囲の標的を、ニー応力CSkのEPCSベースの初期推定付近とすることにより、ニー応力CSkのEPCSベースの測定の制限された精度を考慮に入れる。応力プロファイルの圧縮応力部分の第1の近似において、ニー応力CSkのEPCSベース初期値との接続が、圧縮ゾーンの補間領域に関する好ましい標的形状関数を用いて、作成される。ある例では、好ましい標的形状関数は二次多項式である。
【0275】
各反復の後に、2つの結合された圧縮ゾーン(試験片の各側に1つ)からの圧縮応力プロファイルの応力範囲を、張力ゾーンの応力範囲から減算する。差の絶対値が、標的である所定の許容限界より大きい場合、ニー応力CSkの標的値を、EPCSベースの方法から得られるニー応力測定の推定精度に従って決定されるニー応力CSkに関する所定の許容範囲内で、変化させてよい。
【0276】
ある例では、推定ニー応力精度は約10MPaであるが、場合によっては7MPa又は5MPa又は3MPaにおいてより良好である。表面スパイクが存在せず、導波モードが利用できない場合、同じ技法を用いて、表面応力測定の制度によって決定される範囲内で変化させることができる標的表面応力S(0)に接続できる。
【0277】
ある例では、標的表面応力S(0)又はニー応力CSkに関する許容可能な値の範囲は、表面応力又はニー応力の測定値のいずれかの側において、最大6標準偏差幅、例えば3標準偏差幅であってよい。一実施形態では、標的表面応力値S(0)は反復的に変化させる必要がなく、第1の近似の応力プロファイルと張力ゾーンの応力プロファイルとの間の範囲の測定された差、及び圧縮応力領域の補間部分に関して選択される好ましい関数形式を用いて、代数的計算によって決定してよい。
【0278】
添付の請求項において定義される本開示の精神又は範囲から逸脱することなく、本明細書に記載されているような本開示の好ましい実施形態に対して様々な修正を実施できることは、当業者には明らかであろう。従って本開示は、添付の請求項及びその均等物の範囲内である限り、そのような修正及び変形を包含する。
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
実施形態1
上面と表面付近導波路とを有する化学強化(CS)基板内の応力を特性決定するためのシステムであって、
前記システムは:
EPCS結合面を有するEPCS結合プリズムを通して光学的に連通したEPCS光源システム及びEPCS検出器システムを備える、エバネッセントプリズム結合分光法(EPCS)サブシステム;
LSP結合面を有するLSP結合プリズムを通して光学的に連通したLSP光源システム、光補償板、及びLSP検出器システムを備える、散乱光偏光測定(LSP)サブシステム;
前記EPCS結合面及び前記LSP結合面が概ね共通平面内にあるように、前記EPCS結合プリズム及び前記LSP結合プリズムを動作可能に支持するよう構成された、プリズム支持フレームを備える、結合プリズム組立体;並びに
表面及び測定アパーチャを有する支持プレナムであって、前記測定アパーチャの測定平面において前記CS基板を支持するよう構成され、また、前記EPCS結合面及び前記LSP結合面が概ね前記測定平面内にあるように、前記結合プリズム組立体を前記測定アパーチャにおいて動作可能に支持するよう構成される、前記支持プレナム
を備える、システム。
実施形態2
前記CS基板は透明であり、ガラス材料、ガラスセラミック材料、又は結晶質材料を含む、実施形態1に記載のシステム。
実施形態3
前記CS基板の前記表面付近導波路は、少なくとも1つのイオン交換(IOX)領域によって画定される、実施形態1又は2に記載のシステム。
実施形態4
前記CS基板の前記表面付近導波路は、表面付近スパイク領域及び深部領域によって画定される、実施形態1~3のいずれか1つに記載のシステム。
実施形態5
前記プリズム支持フレームは一体成型構造を備える、実施形態1~4のいずれか1つに記載のシステム。
実施形態6
前記EPCS結合プリズム及び前記LSP結合プリズムは、共通の結合プリズムの第1及び第2のセクションによって構成される、実施形態1~5のいずれか1つに記載のシステム。
実施形態7
前記プリズム支持フレームは、前記EPCS結合プリズム及び前記LSP結合プリズムのうちの少なくとも一方を移動させるために調整可能である、実施形態1~5のいずれか1つに記載のシステム。
実施形態8
前記プリズム支持フレームは隔離部材を備え、前記隔離部材は:
i)前記EPCS結合プリズムと前記LSP結合プリズムとを流体的に互いから隔離する;及び
ii)前記EPCS結合プリズムと前記LSP結合プリズムとを光学的に互いから隔離する
のうちの少なくとも一方である、実施形態1~5のいずれか1つに記載のシステム。
実施形態9
前記CS基板の前記上面が、前記EPCS結合プリズムの前記EPCS結合面及び前記LSP結合プリズムの前記LSP結合面と連結されることによって、EPCS結合境界面及びLSP結合境界面がそれぞれ画定されるように、前記支持プレナムの前記表面上に動作可能に支持された、又は前記支持プレナムの前記表面に隣接する、前記CS基板を更に備え、ここで前記EPCS結合境界面及び前記LSP結合境界面は、共通の屈折率適合用流体を共有し;
前記CS基板は、表面屈折率n
S
を有する表面付近スパイク領域と、前記スパイク領域のすぐ隣の、前記CS基板の前記上面とは反対側の深部領域とを含み、前記屈折率適合用流体は屈折率n
f
を有し、Δn=n
f
-n
S
は0.02~0.06であり;
λは測定波長であり、n(z)は前記表面付近スパイク領域の屈折率プロファイルであり、前記CS基板の前記表面付近スパイク領域は、正規化済み勾配S
n
=|(λ/n)dn(z)/dz|<0.0005を有する、実施形態1~8のいずれか1つに記載のシステム。
実施形態10
【数27】
は、前記表面付近スパイク領域のTM屈折率及びTE屈折率であり、n
f
=n
oil
であり、
【数28】
は、それぞれTM臨界屈折率及びTE臨界屈折率であり、前記屈折率適合用流体の前記屈折率n
oil
は、以下の条件:
【数29】
のうちの少なくとも1つを満たすように選択される、実施形態1~9のいずれか1つに記載のシステム。
実施形態11
前記CS基板は、前記支持プレナムの前記表面に沿って移動するよう構成された可動式基板ホルダによって、動作可能に支持される、実施形態1~10のいずれか1つに記載のシステム。
実施形態12
圧力‐真空(PV)システムを更に備え、前記PVシステムは、PV源と、PVバーのアレイとを備え、前記PVバーは、前記PV源に空気圧的に結合され、また前記測定アパーチャ内において、前記測定平面付近及び前記結合プリズム組立体付近に配置され、これにより、前記CS基板が前記支持プレナムの前記表面によって支持されているときに、前記CS基板に空気圧で係合する、実施形態1~11のいずれか1つに記載のシステム。
実施形態13
前記EPCS検出器システムは、前記EPCS結合プリズムによって前記表面付近導波路内へと結合される、及び前記表面付近導波路から反射光として結合される、前記光源からの光に基づいて、前記表面付近導波路のモードスペクトルをキャプチャするよう構成され、
前記EPCS検出器システムは、デジタル検出器に対する光経路内に動作可能に配設された集束レンズを備え、
前記モードスペクトルはコントラストを有し、
前記集束レンズは、前記モードスペクトルの前記コントラストを調整するために、調整可能な位置及び調整可能な焦点距離のうちの少なくとも一方を有する、実施形態1~12のいずれか1つに記載のシステム。
実施形態14
前記集束レンズは、支持部材によって支持された、焦点距離が異なる複数の集束レンズのうちの1つであり、前記支持部材を移動させることにより、前記集束レンズのうちの選択された1つを、前記光経路に挿入できる、実施形態13に記載のシステム。
実施形態15
前記CS基板は、前記支持プレナムの前記表面に沿って移動するよう構成された可動式基板ホルダによって、動作可能に支持される、実施形態1~14のいずれか1つに記載のシステム。
実施形態16
前記LSP光源システムは可動式光拡散器を備える、実施形態1~15のいずれか1つに記載のシステム。
実施形態17
表面及び表面付近導波路を有する化学強化(CS)基板の第1及び第2の応力特性を測定する方法であって、
前記方法は:
前記CS基板の前記表面を、測定位置において結合プリズム組立体に対して動作可能に配置するステップであって、前記結合プリズム組立体は、それぞれ隣接するEPCS結合境界面及びLSP結合境界面を画定するエバネッセントプリズム結合分光法(EPCS)結合プリズム及び光散乱偏光測定(LSP)結合プリズムを備える、ステップ;
前記EPCS結合境界面を用いて前記CS基板のEPCS測定を実施することにより、前記第1の応力特性を取得し、また、前記結合プリズム組立体又は前記CS基板を前記測定位置から取り外すことなく、前記LSP結合境界面を用いて前記CS基板のLSP測定を実施することにより、前記第2の応力特性を取得するステップ;並びに
前記第1の応力特性と前記第2の応力特性とを組み合わせて、前記CS基板の全応力特性を画定するステップであって、前記第1の応力特性は、表面圧縮応力S(0)、合計層深さDOL
T
、スパイク層深さDOL
sp
、ニー応力CS
k
、及び複屈折Bを含む第1の応力特性の群から選択され、前記第2の応力特性は、圧縮深さDOC及び中央張力CTのうちの少なくとも一方を含む、ステップ
を含む、方法。
実施形態18
前記LSP測定を実施する前記ステップは:
デジタル検出器上にLSP画像を形成して、生デジタルLSP画像を画定するステップ;
前記生デジタルLSP画像のガウシアンぼかしを実施して、ガウシアンぼかし済みLSP画像を形成するステップ;
前記ガウシアンぼかし済み画像に対して大津しきい値処理プロセスを実施して、しきい値画像を画定するステップ;及び
前記しきい値画像を用いて、前記CS基板内への深さに対する光遅延を計算して、前記第2の応力特性を取得するステップ
を含む、実施形態17に記載の方法。
実施形態19
前記LSP測定を実施する前記ステップは:
デジタル検出器上にLSP画像を形成して、生デジタルLSP画像を画定するステップ;
前記生デジタルLSP画像のガウシアンぼかしを実施して、ガウシアンぼかし済みLSP画像を形成するステップ;
前記ガウシアンぼかし済みLSP画像に対して二値化方法を実施して、画像輪郭を画定するステップ;及び
前記画像輪郭を用いて、前記CS基板内への深さに対する光遅延を計算して、前記第2の応力特性を取得するステップ
を含む、実施形態17に記載の方法。
実施形態20
前記LSP測定を実施する前記ステップは:
デジタル検出器上にLSP画像を形成するステップ;
前記LSP画像を処理して、ORデータ点を含む光遅延(optical retardation:OR)対深さ(深さ:D)曲線を形成するステップ;並びに
線形関数と二次関数との組み合わせを用いて、前記ORデータ点に対する当てはめ曲線を取得するステップ
を含む、実施形態17に記載の方法。
実施形態21
前記第1の応力特性のうちの1つは、測定されたニー応力CS
K
を含み、
前記方法は:
前記ニー応力CS
K
(ind)の独立した測定を実施するステップ;
較正係数K
cal
=CS
k
/CS
k
(ind)を定義するステップ;及び
前記較正係数K
cal
を、前記第1の応力特性のうちの少なくとも1つに適用するステップ
を更に含む、実施形態17~20のいずれか1つに記載の方法。
実施形態22
前記LSP測定を実施する前記ステップは:
デジタル検出器上にLSP画像を形成するステップ;
前記LSP画像を処理して、第1及び第2の屈曲点を含むORデータ点を含む光遅延(OR)対深さ(D)曲線を形成するステップ;並びに
以下の行為:
i)力‐スパイク関数を用いて、前記ORデータ点に対する当てはめ曲線を取得するステップ;並びに
ii)前記第1の屈曲点及び前記第2の屈曲点が前記CS基板の中心面に関して対称となるように、前記ORデータ点をシフトすることにより、シフト済みORデータ点を画定すること;及び前記シフト済みORデータ点を用いて、前記CS基板に関する圧縮深さDOC測定を取得するステップ
のうちの少なくとも一方を実行するステップ
を含む、実施形態17に記載の方法。
実施形態23
デジタル検出器上にLSP画像を形成するステップ;
前記LSP画像を処理して、第1及び第2の屈曲点並びに第1及び第2の端部領域を画定するORデータ点を含む光遅延(OR)対深さ(D)曲線を形成するステップ;並びに
以下:
i)前記CS基板に関する中央張力CTを決定するための、前記第1の屈曲点及び前記第2の屈曲点をそれぞれ画定する、前記ORデータ点の第1及び第2の曲線当てはめ;
ii)前記CS基板に関する圧縮深さDOCを決定するための、前記第1の屈曲点と前記第2の屈曲点との間における前記ORデータ点の曲線当てはめ;並びに
iii)前記第1の端部領域及び前記第2の端部領域を除く全範囲にわたって、前記ORデータ点に対する曲線当てはめを実施することにより、OR‐当てはめ曲線を画定し、前記OR‐当てはめ曲線を用いて、前記CS基板に関する中央張力CT及び圧縮深さDOCのうちの少なくとも一方を決定するステップ
のうちの少なくとも1つを実行するステップ
を更に含む、実施形態17に記載の方法。
実施形態24
前記EPCS結合境界面及び前記LSP結合境界面は、異なる屈折率適合用流体を備え、
前記方法は、前記異なる屈折率適合用流体を流体的に隔離するステップを含む、実施形態17~23のいずれか1つに記載の方法。
実施形態25
前記EPCS結合プリズムと前記LSP結合プリズムとを光学的に隔離するステップを更に含む、実施形態17~24のいずれか1つに記載の方法。
実施形態26
前記EPCS結合プリズム及び前記LSP結合プリズムは、共通の結合プリズムの第1及び第2のセクションによって構成される、実施形態17に記載の方法。
実施形態27
前記LSP測定はLSP光ビームを利用し、
前記方法は、前記LSP光ビームを、前記LSP結合境界面の光学的に上流に配置された回転拡散器に通すステップを更に含む、実施形態17~26のいずれか1つに記載の方法。
実施形態28
前記CS基板を可動式基板ホルダで支持するステップ;
前記結合プリズム組立体を支持プレナムに対して、前記支持プレナムの測定アパーチャに設置するステップであって、前記支持プレナムは表面を有する、ステップ;及び
前記可動式基板を、前記支持プレナムの前記表面にわたって移動させるステップ
を更に含む、実施形態17~27のいずれか1つに記載の方法。
実施形態29
前記CS基板は、ガラス材料、ガラスセラミック材料、又は結晶質材料を含む、実施形態17~28のいずれか1つに記載の方法。
実施形態30
前記CS基板の前記表面付近導波路は、少なくとも1つのイオン交換(IOX)領域によって画定される、実施形態17~29のいずれか1つに記載の方法。
実施形態31
前記CS基板の前記表面付近導波路は、表面付近スパイク領域及び深部領域によって画定される、実施形態17~30のいずれか1つに記載の方法。
実施形態32
前記測定位置において、前記CS基板に真空を印加することにより、前記EPCS結合プリズム及び前記LSP結合プリズムのEPCS結合面及び前記LSP結合面それぞれに対して前記CS基板を押し付けるステップを更に含む、実施形態17~31のいずれか1つに記載の方法。
実施形態33
前記EPCS測定を実施する前記ステップは:
少なくとも1つの集束レンズ及びデジタル検出器を備えるEPCS検出器システムを用いて、前記表面付近導波路のモードスペクトルをキャプチャするステップであって、前記モードスペクトルはコントラストを有し、前記少なくとも1つの集束レンズは光経路内にある、ステップ;並びに
前記少なくとも1つの集束レンズの集束レンズ位置及び集束レンズ焦点距離のうちの少なくとも一方を調整して、前記モードスペクトルの前記コントラストを改善するステップ
を含む、実施形態17~32のいずれか1つに記載の方法。
実施形態34
前記少なくとも1つの集束レンズは、可動式支持部材によって動作可能に支持された、焦点距離が異なる複数の集束レンズを含み、
前記調整するステップは、前記可動式支持部材を移動させることにより、前記集束レンズのうちの選択された1つを、前記光経路内に配置するステップを含む、実施形態33に記載の方法。
【符号の説明】
【0279】
5 屈折率適合用流体、屈折率適合用オイル
5A、5B 屈折率適合用流体
10 CS基板
11 本体
12 上面、表面
14 底面
16 側部
18 表面付近導波路、NSWG
20 ハイブリッドEPCS‐LSP測定システム、ハイブリッドシステム
21 ハウジング
30 エアカーテン
40 結合プリズム組立体
42 結合プリズム
42A EPCS結合プリズム
42B LSP結合プリズム
43A EPCS結合プリズム42Aの入力面
43B LSP結合プリズム42Bの入力面
44A EPCS結合プリズム42Aの出力面
44B LSP結合プリズム42Bの出力面
45A EPCS結合プリズム42Aの底面、結合面
45B LSP結合プリズム42Bの底面、結合面
46 プリズム支持構造体
48 支持フレーム
48A EPCSフレームセクション
48B LSPフレームセクション
49 鋳型
49R 樹脂
50 隔離部材
52 固定用タブ
53 設置用孔
54 固定部材
60 カバープレート
62A 第1のアパーチャ
62B 第2のアパーチャ
70 支持プレナム
71 支持プレナム70の上面
72 測定アパーチャ
75 安定プラットフォーム
76 プラットフォーム75の表面
80 可動式基板ホルダ
82 内縁部
90 PV要素、PV導管、PVバー
91 真空システム、PVシステム
92 真空源、PV源
94 停止部材
100 EPCS測定サブシステム、EPCSサブシステム
110 EPCS光源システム
112 EPCS光源
116 EPCS光ビーム、ECSP測定光
116F 集束EPCS光ビーム
116R 反射EPCS光ビーム
118 偏光子
120 集束レンズ
122 光拡散器
140 EPCS検出器システム
142 集束レンズ、可変焦点距離集束レンズ、可変焦点距離レンズ、可変焦点集束レンズ
143 並進移動ステージ
144、244 バンドパスフィルタ
146 減衰器
148 TM‐TE偏光子
150、246 デジタル検出器
152 支持部材
153 集束レンズ組立体
160 モードスペクトル
161TE TE全内部反射(TIR)セクション
161TM TM全内部反射(TIR)セクション
162TE、162TM 非TIRセクション
163TE TE縞、TEモード線
163TM TM縞、TMモード線
166TE 移行領域、移行部、臨界角移行部、強度移行部、TE臨界角移行部
166TM 移行領域、移行部、臨界角移行部、強度移行部、TM臨界角移行部
200 LSP測定サブシステム、LSPサブシステム
210 LSP光源システム
212 LSP光源
216 LSP光ビーム、LSP測定光
216F 集束LSP光ビーム
216S 散乱LSP光ビーム
218 中性濃度フィルタ
220 第1の集束レンズ
222 可動式光拡散器
224 第2の集束レンズ
230 光補償板
232 偏光ビームスプリッタ、偏光子
234H 半波長板
234Q 1/4波長板
236 第3の集束レンズ
240 LSP検出器システム
243 集光システム
247 撮像ピクセル
248 LSP画像
248B ぼかしLSP画像、LSP画像、ガウシアンぼかしが施されたLSP画像
248C LSP画像輪郭
248D デジタルLSP画像
248T しきい値LSP画像
400 システムコントローラ
410 ユーザインタフェース
412A EPCSセクション
412B LSPセクション