(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-31
(45)【発行日】2024-08-08
(54)【発明の名称】マグネトロンプラズマ成膜装置
(51)【国際特許分類】
C23C 14/35 20060101AFI20240801BHJP
H01L 21/3205 20060101ALI20240801BHJP
H01L 21/768 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
C23C14/35 C
H01L21/88 B
(21)【出願番号】P 2020061332
(22)【出願日】2020-03-30
【審査請求日】2023-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】森地 健太
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 正一朗
【審査官】山本 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-232158(JP,A)
【文献】特表2014-527580(JP,A)
【文献】特開2011-225932(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/35
H01L 21/3205
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成膜ロールと、
前記成膜ロールと対向配置されるマグネトロンプラズマユニットとを備え、
前記マグネトロンプラズマユニットは、
前記成膜ロールの軸線と同一方向に軸線が延びるロータリーターゲットと、
前記ロータリーターゲットの径方向内側に配置されるマグネットユニットとを備え、
前記マグネットユニットは、
第1磁極部と、
前記第1磁極部に対して、前記成膜ロールの軸線および前記ロータリーターゲットの軸線を結ぶ線分に沿う第1方向に直交する第2方向において隣接する第2磁極部とを備え、
前記第1磁極部と前記第2磁極部とのそれぞれは、前記成膜ロールの軸線方向に沿って延びる四角柱形状を有し、
前記第1磁極部と前記第2磁極部とは、前記第2方向に隣接配置し、
前記第1磁極部および前記第2磁極部のそれぞれは、第1領域と、第2領域と、第3領域とを前記第2方向において順に有し、
前記第1領域と、前記第2領域と、前記第3領域とのそれぞれは、磁化方向を前記第1方向および前記第2方向に分解して得られる第1成分および第2成分の少なくとも一方を有し、
前記第1領域では、前記第1成分が、前記第2成分に対して大きく、
前記第2領域では、前記第1成分が、前記第2成分に対して小さく、
前記第3領域では、前記第1成分が、前記第2成分に対して大きく、前記第1領域における前記第1成分と逆向きであることを特徴とする、マグネトロンプラズマ成膜装置。
【請求項2】
前記第1領域と、前記第3領域とのそれぞれは、主として前記第1成分を有し、
前記第2領域は、主として前記第2成分を有することを特徴とする、請求項1に記載のマグネトロンプラズマ成膜装置。
【請求項3】
前記第1領域および前記第2領域は、連続し、
前記第2領域および前記第3領域は、連続し、
前記第1領域において、前記第2領域に向かうに従って、前記第1成分が小さくなり、
前記第3領域において、前記第2領域に向かうに従って、前記第1成分が小さくなることを特徴とする、請求項1に記載のマグネトロンプラズマ成膜装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マグネトロンプラズマ成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マグネトロンプラズマ成膜装置として、成膜ロールと、それに対向するマグネトロンプラズマユニットとを備えるマグネトロンスパッタリング成膜装置が知られている。
【0003】
このマグネトロンスパッタリング装置では、マグネトロンプラズマユニットによって磁界を生成し、これによって、ターゲットから放出された電子が長く保持されて、スパッタリングの効率が向上される。
【0004】
例えば、円筒状のターゲットと、その内部に配置され、互いに隣接する4つの磁石とを備えるマグネトロンスパッタリング成膜装置が提案されている(例えば、下記特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかるに、マグネトロンプラズマ成膜装置には、高い成膜速度が求められる。
【0007】
しかし、上記した特許文献1の構成では、高い成膜速度を得るには限界がある。
【0008】
本発明は、高速で成膜することのできるマグネトロンプラズマ成膜装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明(1)は、成膜ロールと、前記成膜ロールと対向配置されるマグネトロンプラズマユニットとを備え、前記マグネトロンプラズマユニットは、前記成膜ロールの軸線と同一方向に軸線が延びるロータリーターゲットと、前記ロータリーターゲットの径方向内側に配置されるマグネットユニットとを備え、前記マグネットユニットは、第1磁極部と、前記第1磁極部に対して、前記成膜ロールの軸線および前記ロータリーターゲットの軸線を結ぶ線分に沿う第1方向に直交する第2方向において隣接する第2磁極部とを備え、前記第1磁極部および前記第2磁極部のそれぞれは、第1領域と、第2領域と、第3領域とを前記第2方向において順に有し、前記第1領域と、前記第2領域と、前記第3領域とのそれぞれは、磁化方向を前記第1方向および前記第2方向に分解して得られる第1成分および第2成分の少なくとも一方を有し、前記第1領域では、前記第1成分が、前記第2成分に対して大きく、前記第2領域では、前記第1成分が、前記第2成分に対して小さく、前記第3領域では、前記第1成分が、前記第2成分に対して大きく、前記第1領域における前記第1成分と逆向きである、マグネトロンプラズマ成膜装置を含む。
【0010】
このマグネトロンプラズマ装置の第1磁極部および第2磁極部のそれぞれでは、磁化方向は、第1領域において第1方向に主に沿い、続いて、第2領域において第2方向に主に沿って第3領域に向かい、第3領域において、第1領域の第1方向と逆向きの第1方向に主に沿う略U字状の流れを構成する。そのため、第1磁極部のロータリーターゲットの表面においてトンネル形状の磁界が形成され、第2磁極部のロータリーターゲットの表面においてトンネル形状の磁界が形成され、それらを近接させることができる。つまり、スパッタリング角度(後述)を狭くできる。その結果、高速で成膜することができる。
【0011】
本発明(2)は、前記第1領域と、前記第3領域とのそれぞれは、主として前記第1成分を有し、前記第2領域は、主として前記第2成分を有する、(1)に記載のマグネトロンプラズマ成膜装置を含む。
【0012】
このマグネトロンスパッタリング成膜装置では、第1領域と、第3領域とのそれぞれは、主として第1成分を有し、第2領域は、主として第2成分を有するので、第1磁極部および第2磁極部のそれぞれの構成が簡単でありながら、高速で成膜できる。
【0013】
本発明(3)は、前記第1領域および前記第2領域は、連続し、前記第2領域および前記第3領域は、連続し、前記第1領域において、前記第2領域に向かうに従って、前記第1成分が小さくなり、前記第3領域において、前記第2領域に向かうに従って、前記第1成分が小さくなる、(1)に記載のマグネトロンプラズマ成膜装置を含む。
【0014】
このマグネトロンスパッタリング成膜装置では、第1磁極部および第2磁極部のそれぞれにおいて、第1領域と第2領域と第3領域とが連続するため、第1磁極部のロータリーターゲットの表面においてトンネル形状の磁界が確実に形成され、第2磁極部のロータリーターゲットの表面においてトンネル形状の磁界が確実に形成される。上記した2つのトンネル形状の磁界をより近接させることができる。そのため、高速で成膜できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のマグネトロンプラズマ成膜装置は、高速で成膜することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態であるマグネトロンスパッタリング成膜装置の断面図である。
【
図2】
図2は、
図1のマグネトロンスパッタリング成膜装置に備えられるマグネトロンプラズマユニットの拡大断面図である。
【
図3】
図3は、
図2に示すマグネットユニットの拡大図である。
【
図4】
図4は、磁束密度の接線方向成分と、スパッタリング角度θとの関係を示すグラフである。
【
図5】
図5は、
図3に示すマグネットユニットの変形例であって、磁極部が5つの領域を有する変形例である。
【
図6】
図6は、
図3に示すマグネットユニットの変形例であって、磁極部における磁化方向が
図3のそれと逆向きである変形例である。
【
図7】
図7は、
図3に示すマグネットユニットの変形例であって、隣接する2つの領域が連続する変形例である。
【
図8】
図8は、
図7に示す磁極部の変形例であり、その第2方向長さが短い変形例である。
【
図9】
図9は、比較例のマグネットユニットの拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<マグネトロンプラズマ成膜装置の一実施形態>
本発明のマグネトロンプラズマ成膜装置の一実施形態を、
図1~
図4を参照して説明する。なお、
図3では、マグネットユニット18(後述)をハッチング処理せず、第1領域23~第6領域28(後述)の磁化方向を矢印で描画している。
【0018】
図1に示すように、マグネトロンスパッタリング成膜装置1は、基材12を搬送しながら、膜13を基材12に対して形成(成膜)する、ロールトゥロール方式の成膜装置である。マグネトロンスパッタリング成膜装置1は、搬送部2と、成膜部3とを備える。
【0019】
搬送部2は、搬送ケーシング4と、送出ロール5と、巻取ロール6と、ガイドロール7と、真空ポンプ8とを備える。
【0020】
搬送ケーシング4は、一方向に長い略箱形状を有する。搬送ケーシング4は、送出ロール5、巻取ロール6およびガイドロール7を収容する。
【0021】
送出ロール5および巻取ロール6のそれぞれは、搬送ケーシング4内の一方向における一端部および他端部のそれぞれに配置されている。
【0022】
ガイドロール7は、送出ロール5および巻取ロール6の間において、複数配置されている。複数のガイドロール7は、基材12を成膜ロール10に巻回させるように、配置されている。
【0023】
真空ポンプ8は、搬送ケーシング4に設けられている。
【0024】
成膜部3は、成膜ケーシング9と、成膜ロール10と、複数のマグネトロンプラズマユニット11とを備える。
【0025】
成膜ケーシング9は、搬送ケーシング4の一方向中間部に連続する。成膜ケーシング9は、略箱形状を有する。成膜ケーシング9は、複数の隔壁14を有する。複数の隔壁14は、成膜ロール10の周方向において、成膜ケーシング9を複数(3つ)の成膜室に区画するように、成膜ロール10に向かって延びる。なお、成膜ケーシング9には、図示しないスパッタガス供給機が設けられる。成膜ケーシング9は、成膜ロール10および複数のマグネトロンプラズマユニット11を収容する。
【0026】
成膜ロール10の軸線は、搬送ケーシング4の一方向に直交する。
【0027】
複数のマグネトロンプラズマユニット11のそれぞれは、複数の成膜室のそれぞれに配置され、成膜ロール10の径方向外側に対向配置されている。複数のマグネトロンプラズマユニット11は、成膜ロール10の周方向に沿って互いに間隔を隔てて配置されている。
【0028】
周方向に隣接するマグネトロンプラズマユニット11は、隔壁14によって仕切られている。複数のマグネトロンプラズマユニット11のそれぞれは、プラズマケーシング20と、第1ユニット15と、第2ユニット16とを備える。
【0029】
図2に示すように、プラズマケーシング20は、成膜ロール10に向かって一側が開口された略箱形状を有する。プラズマケーシング20は、成膜ロール10の軸線に沿って延びる。プラズマケーシング20は、第1ユニット15および第2ユニット16を収容する。第1ユニット15および第2ユニット16は、成膜ロール10の周方向に沿って互いに間隔を隔てて隣接配置されている。第1ユニット15および第2ユニット16は、プラズマケーシング20の開口を通して、成膜ロール10に面している。
【0030】
第1ユニット15および第2ユニット16は、ロータリーターゲット17(後述)の回転方向以外は、同一の構成である。そのため、第1ユニット15を詳説し、第2ユニット16を簡単に説明する。
【0031】
図3に示すように、第1ユニット15は、ロータリーターゲット17と、マグネットユニット18とを備える。
【0032】
ロータリーターゲット17は、円筒形状を有しており、成膜ロール10の軸線と平行する軸線(断面視における中心)を有する。ロータリーターゲット17は、例えば、成膜ロール10の回転方向と逆向きに回転可能(周回移動可能)である。ロータリーターゲット17は、カソード源(図示しない)と電気的に接続されており、これによって、カソードとして作用できる。また、ロータリーターゲット17の外周面には、ターゲット材料が積層されており、つまり、ロータリーターゲット17は、膜13を形成するための材料を外周面に有する。材料としては、例えば、In、Sn、Zn、Ga、Sb、Nb、Ti、Si、Zr、Mg、Al、Au、Ag、Cu、Pd、Wからなる群より選択される少なくとも1種の金属を含む金属酸化物が挙げられる。具体的には、例えば、インジウムスズ複合酸化物(ITO)、インジウムガリウム亜鉛複合酸化物(IGZO)、インジウムガリウム複合酸化物(IGO)、インジウムスズ複合酸化物(ITO)、アンチモンスズ複合酸化物(ATO)などが挙げられる。
【0033】
マグネットユニット18は、ロータリーターゲット17の径方向内側に収容されている。マグネットユニット18は、ヨーク19と、第1磁極部21と、第2磁極部22とを備える。
【0034】
ヨーク19は、成膜ロール10の軸線方向に延びる幅狭板形状を有する。ヨーク19は、成膜ロール10に対向する表面(第1方向一方面、第1主面)を少なくとも有する。ヨーク19の材料としては、例えば、鉄、ステンレスなどの金属などが挙げられる。
第1方向および第2方向に沿う断面視を意味する。
【0035】
第1磁極部21と第2磁極部22とのそれぞれは、成膜ロール10の軸線方向に沿って延びる四角柱形状を有する。第1磁極部21と第2磁極部22とは、ヨーク19の表面に固定されている。第1磁極部21と第2磁極部22とは、第2方向に隣接配置している。第2磁極部22は、第1磁極部21の第2方向一方側に位置する。具体的には、第1磁極部21の第2方向一方側面と、第2磁極部22の第2方向他方側面とは、互いに接触している。
【0036】
第1磁極部21は、断面視(成膜ロール10の軸線およびロータリーターゲット17の軸線を結ぶ線分に沿う第1方向と、第1方向に直交する第2方向に沿う断面視。以下、断面視は、この定義に従う。)において、第1領域23と、第2領域24と、第3領域25とを、第2方向一方側(第2磁極部22と隣接する側)に向かって順に有する。第1領域23と、第2領域24と、第3領域25とのそれぞれは、第1方向にわたって存在する。第1領域23と、第2領域24と、第3領域25とは、第2方向において第1磁極部21が3分割(例えば、3等分割)された分割領域である。第1領域23と、第2領域24と、第3領域25とのそれぞれは、所定の磁化方向を有する。磁化方向は、S極からN極に向かう方向(向き)方向であって、
図3における太線で矢印で示されている。
【0037】
第1領域23と、第2領域24と、第3領域25とは、上記した磁化方向を第1方向および第2方向に分解して得られる第1成分および第2成分の少なくとも一方を有する。本実施形態では、第1領域23および第3領域25は、主として第1成分を有し、第2領域24は、主として第2成分を有する。
【0038】
第1領域23における磁化方向は、第1方向他方側に向く。つまり、第1領域23の磁化方向は、成膜ロール10と反対側に向く。第1領域23における磁化方向を第1方向および第2方向に分解して得られる成分(以下、分解成分という)は、主として第1成分であり、第2成分はほとんどない。但し、第1領域23におけるわずかな第2成分の存在は許容される。第1領域23における第1成分は、第1方向他方側に向く。
【0039】
第2領域24における磁化方向は、第2方向一方側に向く。つまり、第2領域24の磁化方向は、第3領域25に向く。第2領域24における磁化方向の分解成分は、主として第2成分であり、第1成分はほとんどない。但し、第2領域24におけるわずかな第1成分の存在は許容される。第2領域24における第2成分は、第2方向一方側に向く。
【0040】
第3領域25における磁化方向は、第1方向一方側に向く。つまり、第1領域23の磁化方向は、成膜ロール10に向く。第3領域25における磁化方向の分解成分は、主として第1成分であり、第2成分はほとんどない。但し、第3領域25におけるわずかな第2成分の存在は許容される。第3領域25における第1成分は、第1領域23における第1成分と逆向きであり、具体的には、第1方向一方側に向く。
【0041】
第1磁極部21が、上記した分解成分を有する第1領域23と第2領域24と第3領域25とを有するので、第1磁極部21では、磁化方向は、第1領域23において第1方向他方側に主に沿い、続いて、第2領域24において第2方向一方側に主に沿って第3領域25に向かい、第3領域25において第1方向一方側に主に沿う略U字状の流れを構成する。そのため、第1磁極部21に対向するロータリーターゲット17の表面では、トンネル形状の磁界が形成される。この磁界は、第3領域25に対応する表面から成膜ロール10に一旦近づいた後、第1領域23に対応する表面に向かう放物線状である。
【0042】
第1磁極部21のサイズは、第1磁極部21に対応する磁束密度の絶対値の最大値が所定範囲(後述)となるように設定され、具体的には、第1方向長さに対する第2方向長さの比が、例えば、0.3以上、好ましくは、0.5以上、より好ましくは、0.7以上である。
【0043】
第1磁極部21の第2方向長さに対する第1領域23の第2方向長さの比は、例えば、0.2以上であり、また、例えば、0.4以下である。第1磁極部21の第2方向長さに対する第2領域24の第2方向長さの比は、上記と同様である。第1磁極部21の第2方向長さに対する第3領域25の第2方向長さの比は、上記と同様である。
【0044】
また、第1磁極部21の第1方向長さが、例えば、5mm以上、好ましくは、10mm以上であり、また、例えば、100mm以下、好ましくは、50mm以下である。第1磁極部21の第2方向長さが、例えば、5mm以上、好ましくは、10mm以上であり、また、例えば、100mm以下、好ましくは、50mm以下である。第1領域23と第2領域24と第3領域25とのそれぞれの第2方向長さは、例えば、1mm以上、好ましくは、3mm以上であり、また、例えば、50mm以下、好ましくは、15mm以下である。
【0045】
第2磁極部22は、第1領域の一例としての第4領域26と、第2領域の一例としての第5領域27と、第3領域の一例としての第6領域28とを、第2方向他方側に向かって順に有する。そのため、第4領域26と、第5領域27と、第6領域28とが、第2方向方他方側(第1磁極部21に隣接する側)に向かって順に配置されている。第4領域26と、第5領域27と、第6領域28とのそれぞれは、第2磁極部22において、第1方向にわたって存在するが、第2方向において3分割(例えば、3等分割)された分割領域である。第4領域26と、第5領域27と、第6領域28とのそれぞれは、第1磁極部21および第2磁極部22の境界線を基準として、第1領域23と、第2領域24と、第3領域25とのそれぞれと線対称な磁化方向を有する。
【0046】
第4領域26と、第5領域27と、第6領域28とは、磁化方向の分解成分である第1成分および第2成分の少なくとも一方を有する。本実施形態では、第4領域26および第6領域28は、主として第1成分を有し、第5領域27は、主として第2成分を有する。
【0047】
第4領域26における磁化方向は、第1方向他方側に向く。つまり、第1領域23の磁化方向は、成膜ロール10と反対側に向く。すなわち、第4領域26における磁化方向は、第1領域23における磁化方向と同じである。第4領域26における磁化方向の分解成分は、主として第1成分であり、第2成分はほとんどない。但し、第4領域26におけるわずかな第2成分の存在は許容される。第4領域26における第1成分は、第1領域23の第1成分と同じ向きであり、第1方向他方側に向く。
【0048】
第5領域27における磁化方向は、第2方向他方側に向く。つまり、第5領域27の磁化方向は、第6領域28に向く。これにより、第5領域27の磁化方向と、第2領域24の磁化方向とは、逆である。第5領域27における磁化方向の分解成分は、主として第2成分であり、第1成分はほとんどない。但し、第5領域27におけるわずかな第1成分の存在は許容される。第5領域27における第2成分は、第2領域24における第2成分と逆向きであり、第2方向他方側に向く。
【0049】
第6領域28における磁化方向は、第1方向一方側に向く。つまり、第6領域28の磁化方向は、成膜ロール10に向く。第6領域28における磁化方向は、第3領域25における磁化方向と同じである。第6領域28における磁化方向の分解成分は、主として第1成分であり、第2成分はほとんどない。但し、第6領域28におけるわずかな第2成分の存在は許容される。第6領域28における第1成分は、第3領域25における第1成分と同じ向きであり、第1方向一方側に向く。
【0050】
第2磁極部22が、上記した分解成分を有する第4領域26と第5領域27と第6領域28とを有するので、第2磁極部22に対向するロータリーターゲット17の表面では、トンネル形状の磁界が形成される。この磁界は、第6領域28に対応する表面から成膜ロール10に一旦近づいた後、第4領域26に対応する表面に向かう放物線状である。
【0051】
第2磁極部22の寸法は、第1磁極部21の寸法と同様である。
【0052】
第1磁極部21および第2磁極部22の材料として、例えば、ネオジム磁石などの永久磁石が挙げられる。
【0053】
図2に示すように、第2ユニット16は、成膜ロール10の回転方向と同じ向きに回転可能なロータリーターゲット17、および、上記したマグネットユニット18を備える。
【0054】
そして、この一実施形態では、下記で求められるスパッタリング角度θを狭くできる。
【0055】
ロータリーターゲット17の外周面上において、ロータリーターゲットの円周方向の一方向に向かって、磁束密度の接線方向成分を測定する。磁束密度の最大の接線方向成分に相当する点MAX_Pおよびロータリーターゲット17の中心を結ぶ線分LS1と、磁束密度の最小の接線方向成分に相当する点MIN_Pおよびロータリーターゲット17の中心を結ぶ線分LS2とが成すスパッタリング角度θを、求める。スパッタリング角度θは、例えば、市販のソフトウェアを用いる、磁場のシミュレーションによって、求められる。
【0056】
ここで、上記したシミュレーションによって得られる磁束密度の接線方向成分を説明する。
【0057】
図3に示すように、第1磁極部21では、第1領域23の磁化方向が第1方向他方側に向き、第2領域24の磁化方向が第2方向一方側に向き、第3領域25の磁化方向が第1方向一方側に向くので、第1領域23に対応するロータリーターゲット17の表面から、第3領域25に対応するロータリーターゲット17の表面に向かって、磁束密度の接線方向成分を測定すれば、
図4に示すように、磁束密度の最小MIN_P(つまり、マイナス側における磁界の最強値)が得られる。
【0058】
図3に示すように、第2磁極部22では、第4領域26の磁化方向が第1方向他方側に向き、第5領域27の磁化方向が第2方向他方側に向き、第6領域28の磁化方向が第1方向一方側に向くので、第6領域28に対応するロータリーターゲット17の表面から、第4領域26に対応するロータリーターゲット17の表面に向かって、磁束密度の接線方向成分を測定すれば、
図4に示すように、磁束密度の最大MAX_P(つまり、プラス側における磁界の最強値)が得られる。
【0059】
従って、ロータリーターゲット17の周方向であって、第1領域23から第4領域26に向かう一方向に、磁束密度の接線方向成分を測定すれば、
図4に示すように、通常、磁束密度の最小MIN_Pと最大MAX_Pとが順に観察される。
【0060】
第2ユニット16についても、第1ユニット15と同様である。
【0061】
なお、磁束密度の最小MIN_Pの絶対値は、磁束密度の最大MAX_Pと、例えば、近似し、具体的には、同一である。
【0062】
上記したスパッタリング角度θは、例えば、40度以下、好ましくは、35度以下、より好ましくは、30度以下、さらに好ましくは、25度以下である。スパッタリング角度θが上記した上限以下であれば、ロータリーターゲット17の径方向外側において、磁束密度の最小MIN_Pに対応するプラズマと、磁束密度の最大のMAX_Pに対応するプラズマとの、周方向における距離が近くなる。そのため、ロータリーターゲット17から放出される電子の密度が濃い領域を集約できる。そのため、高速で成膜することができる。
【0063】
他方、スパッタリング角度θは、例えば、5度以上である。
【0064】
成膜速度は、市販のソフトウェアを用いる、希薄流体のシミュレーションによって、求めることができる。成膜速度は、ダイナミックレートとも称呼される。
【0065】
磁束密度の絶対値の最大値は、例えば、40mT以上、好ましくは、80mT以上、より好ましくは、120mT以上であり、また、例えば、10,000mT以下である。磁束密度の絶対値の最大値が上記した下限以上であれば、プラズマを安定して維持できる。
【0066】
次に、このマグネトロンスパッタリング成膜装置1を用いて、基材12に膜13を形成する方法を説明する。
【0067】
まず、
図1に示すマグネトロンスパッタリング成膜装置1を準備する。
【0068】
続いて、長尺の基材12をマグネトロンスパッタリング成膜装置1にセットする。基材12としては、特に限定されず、例えば、高分子フィルム、ガラスフィルム(薄膜ガラス)などが挙げられる。高分子フィルムとしては、例えば、ポリエステル系フィルム(ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルムなど)、ポリカーボネート系フィルム、オレフィン系フィルム(ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、シクロオレフィンフィルムなど)、アクリル系フィルム、ポリエーテルスルフォン系フィルム、ポリアリレート系フィルム、メラミン系フィルム、ポリアミド系フィルム、ポリイミド系フィルム、セルロース系フィルム、ポリスチレン系フィルムが挙げられる。
【0069】
基材12をマグネトロンスパッタリング成膜装置1にセットするには、
図1に示すように、基材12を送出ロール5に巻回し、続いて、基材12の長手方向一端部を、複数のガイドロール7でガイドしながら、成膜ロール10に巻回させて、巻取ロール6に巻き取らせる。
【0070】
続いて、真空ポンプ8を駆動して、搬送ケーシング4内および成膜ケーシング9内を真空にする。これとともに、図示しないスパッタガス供給機からスパッタガスを成膜ケーシング9内に供給する。スパッタガスとしては、例えば、アルゴンなどの不活性ガス、例えば、さらに酸素を含む反応性ガスなどが挙げられる。
【0071】
続いて、送出ロール5から巻取ロール6に向けて、基材12を連続して搬送しながら、ロータリーターゲット17にカソード電圧を印加する。これにより、ロータリーターゲット17から電子が放出される。
【0072】
すると、上記した電子は、第1ユニット15および第2ユニット16のそれぞれにおいて、長く保持される。
【0073】
すると、スパッタガスに由来する原子(具体的には、アルゴン原子)が、ロータリーターゲット17に効率よく衝突し、これによって、ロータリーターゲット17からその材料の粒子が、成膜ロール10の外周面上の基材12に付着する。これによって、スパッタリングによって、
図1に示すように、膜13が基材12に形成される。
【0074】
<一実施形態の作用効果>
そして、このマグネトロンスパッタリング成膜装置1の第1磁極部21では、磁化方向は、第1領域23において第1方向他方側に主に沿い、続いて、第2領域24において第2方向一方側に主に沿って第3領域25に向かい、第3領域25において第1方向一方側に主に沿う略U字状の流れを構成する。そのため、第1磁極部21のロータリーターゲット17の表面においてトンネル形状の磁界が形成される。
【0075】
また、マグネトロンスパッタリング成膜装置1の第2磁極部22では、磁化方向は、第4領域26において第1方向他方側に主に沿い、続いて、第5領域27において第2方向他方側に主に沿って第6領域28に向かい、第6領域28において第1方向一方側に主に沿う略U字状の流れを構成する。そのため、第2磁極部22のロータリーターゲット17の表面においてトンネル形状の磁界が形成される。
【0076】
第1磁極部21のロータリーターゲット17の表面において形成されるトンネル形状の磁界と、第2磁極部22のロータリーターゲット17の表面において形成されるトンネル形状の磁界とが近接できる。つまり、上記したスパッタリング角度θを狭くできる。その結果、第1ユニット15におけるロータリーターゲット17から放出される電子の密度が濃い領域と、第2ユニット16におけるロータリーターゲット17から放出される電子の密度が濃い領域とを集約することができる。
【0077】
従って、このマグネトロンスパッタリング成膜装置1によれば、膜13を高速で成膜することができる。
【0078】
また、この一実施形態では、第1領域23と第3領域25とのそれぞれは、主として第1成分を有し、第2領域24は、主として第2成分を有する。第4領域26と、第6領域28とのそれぞれは、主として第1成分を有し、第5領域27は、主として第2成分を有する。そのため、第1磁極部21および第2磁極部22のそれぞれの構成が簡単でありながら、高速で成膜できる。
【0079】
<変形例>
以下の各変形例において、上記した一実施形態と同様の部材および工程については、同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。また、各変形例は、特記する以外、一実施形態態と同様の作用効果を奏することができる。さらに、一実施形態およびその変形例を適宜組み合わせることができる。
【0080】
一実施形態では、第1磁極部21と第2磁極部22とを別部材で構成しているが、一部材とし、一体的に構成することができる。
【0081】
また、第1磁極部21において、第1領域23と第2領域24と第3領域25とは、独立する3つの部材から構成されていてもよく、または、例えば、極異方性磁石のような部材を用いて1つの部材から一体的に構成されてもよい。第2磁極部22において、第4領域26と第5領域27と第6領域28とは独立する3つの部材から構成されていてもよく、または、例えば、極異方性磁石のような部材を用いて1つの部材から一体的に構成されてもよい。
【0082】
一実施形態では、第1磁極部21を3つの領域(第1領域23、第2領域24、第3領域25)を有するが、領域の数は、特に限定されず、4以上であってもよい。また、一実施形態では、第2磁極部22を3つの領域(第4領域26、第5領域27、第6領域28)を有するが、領域の数は、特に限定されず、4以上であってもよい。
【0083】
図5は、第1磁極部21が5つの領域を有し、第2磁極部22が5つの領域を有する変形例を示す。
図5において、第1磁極部21は、第1主領域31と、第1補助領域32と、第2領域24と、第3補助領域33と、第3主領域34とを、第2方向一方側に向かって順に有する。この変形例の第1主領域31と第1補助領域32とは、一実施形態の第1領域23に相当する。変形例の第3補助領域33と第3主領域34とは、一実施形態の第3領域25に相当する。
【0084】
第1主領域31の磁化方向の分解成分は、第1成分である。第1成分は、第1方向他方側に向く。
【0085】
第1補助領域32の磁化方向の分解成分は、第1成分と第2成分とである。第1成分は、第1方向他方側に向く。第2成分は、第2方向一方側に向く。第1補助領域32の第2方向長さは、例えば、第1主領域31のそれと近似し、具体的には、同じである。そのため、第1主領域31および第1補助領域32からなる第1領域23では、第1成分が、第2成分に対して大きい。
【0086】
第3主領域34の分解成分は、第1成分である。第1成分は、第1方向一方側に向く。
【0087】
第3補助領域33の磁化方向の分解成分は、第1成分と第2成分とである。第1成分は、第1方向一方側に向く。第2成分は、第2方向一方側に向く。第3補助領域33の第2方向長さは、第3主領域34のそれと近似し、具体的には、同じである。そのため、第3主領域34および第3補助領域33からなる第3領域25では、第1成分が、第2成分に対して大きい。
【0088】
第2磁極部22は、第4主領域35と、第4補助領域36と、第5領域27と、第6補助領域37と、第6主領域38とを、第2方向他方側に向かって順に有する。この変形例の第4主領域35と第4補助領域36とは、一実施形態の第4領域26に相当する。変形例の第6補助領域37と第6主領域38とは、一実施形態の第6領域28に相当する。
【0089】
第4主領域35の磁化方向の分解成分は、第1成分である。第1成分は、第1方向他方側に向く。
【0090】
第4補助領域36の磁化方向の分解成分は、第1成分と第2成分とである。第1成分は、第1方向他方側に向く。第2成分は、第2方向他方側に向く。第4補助領域36の第2方向長さは、例えば、第4主領域35のそれと近似し、具体的には、同じである。そのため、第4主領域35および第4補助領域36からなる第1領域23では、第1成分が、第2成分に対して大きい。
【0091】
第6主領域38の分解成分は、第1成分である。第1成分は、第1方向一方側に向く。
【0092】
第6補助領域37の磁化方向の分解成分は、第1成分と第2成分とである。第1成分は、第1方向一方側に向く。第2成分は、第2方向他方側に向く。第6補助領域37の第2方向長さは、第6主領域38のそれと近似し、具体的には、同じである。そのため、第6主領域38および第6補助領域37からなる第6領域28では、第1成分が、第2成分に対して大きい。
【0093】
第1磁極部21と第2磁極部22とにおける磁化方向の向きは、ロータリーターゲット17の表面に上記したトンネル形状の磁界が形成されれば、限定されない。一実施形態における第1領域23と第2領域24と第3領域25と第4領域26と第5領域27と第6領域28との磁化方向のそれぞれが、反転してもよい。具体的には、
図6に示すように、第1領域23および第4領域26における磁化方向は、第1方向一方側に向く。第2領域24における磁化方向は、第2方向他方側に向く。第5領域27における磁化方向は、第2方向一方側に向く。第3領域25および第6領域28における磁化方向は、第1方向他方側に向く。
図6に示す変形例では、第1磁極部21に対向するロータリーターゲット17の表面に形成されるトンネル形状の磁界は、第1領域23に対応する表面から成膜ロール10に一旦近づいた後、第3領域25に対応する表面に向かう放物線状である。第2磁極部22に対向するロータリーターゲット17の表面に形成されるトンネル形状の磁界は、第4領域26に対応する表面から成膜ロール10に一旦近づいた後、第6領域28に対応する表面に向かう放物線状である。
【0094】
図7に示す変形例では、第1磁極部21において、第1領域23および第2領域24は、連続し、第2領域24および第3領域25は、連続する。
【0095】
第1領域23において、第2領域24に向かうに従って、第1成分が小さくなる。つまり、第1領域23における磁化方向は、第2領域24に近づくにつれて、次第に(連続的に)第1方向に対する傾斜が強くなる。第1領域23の第1成分は、第1方向他方側に向く。
【0096】
また、第3領域25において、第2領域24に向かうに従って、第1成分が小さくなる。つまり、第3領域25における磁化方向は、第2領域24に近づくにつれて、次第に(連続的に)第1方向に対する傾斜が強くなる。第3領域25の第1成分は、第1方向一方側に向く。
【0097】
第2領域24において、第1領域23に近接する一端部領域では、第1成分が、第1方向他方側に向き、微小であり、また、第3領域25に近接する他端部領域では、第1成分が、第1方向一方側に向き、微小であり、それらの間の中間領域では、分解成分として、実質的に第1成分がなく、第2成分のみとなる。
【0098】
第1磁極部21における磁化方向は、第1領域23の第1方向一方面から、第2領域24の第1方向他方面に一旦近づき、その後、第3領域25の第1方向一方面に至るような、略放物線を構成する。
【0099】
第2磁極部22において、第4領域26および第5領域27は、連続し、第5領域27および第6領域28は、連続する。
【0100】
第4領域26において、第5領域27に向かうに従って、第1成分が小さくなる。つまり、第4領域26における磁化方向は、第5領域27に近づくにつれて、次第に(連続的に)第1方向に対する傾斜が強くなる。第4領域26の第1成分は、第1方向他方側に向く。
【0101】
また、第6領域28において、第5領域27に向かうに従って、第1成分が小さくなる。つまり、第6領域28における磁化方向は、第5領域27に近づくにつれて、次第に(連続的に)第1方向に対する傾斜が強くなる。第6領域28の第1成分は、第1方向一方側に向く。
【0102】
第5領域27において第4領域26に近接する一端部領域では、第1成分が、第1方向他方側に向き、微小であり、また、第5領域27において第6領域28に近傍する他端部領域では、第1成分が、第1方向一方側に向き、微小であり、それらの間の中間領域では、分解成分として、実質的に第1成分がなく、第2成分のみとなる。
【0103】
そのため、第2磁極部22における磁化方向は、第4領域26の第1方向一方面から、第5領域27の第1方向他方面に一旦近づき、その後、第6領域28の第1方向一方面に至るような、略放物線を構成する。
【0104】
図7に示すマグネトロンスパッタリング成膜装置1では、第1磁極部21において、第1領域23と第2領域24と第3領域25とが連続するため、放物線状の磁化方向を構成する。そのため、第1磁極部21に対応するロータリーターゲット17の表面において、トンネル形状の磁界が確実に形成される。
【0105】
第2磁極部22では、第4領域26と第5領域27と第6領域28とが連続するため、放物線状の磁化方向を構成する。そのため、第2磁極部22に対応するロータリーターゲット17の表面において、トンネル形状の磁界が確実に形成される。
【0106】
上記した2つのトンネル形状の磁界がより近接でき、第1ユニット15におけるロータリーターゲット17から放出される電子の密度が濃い領域と、第2ユニット16におけるロータリーターゲット17から放出される電子の密度が濃い領域とをより集約することができる。従って、高速で成膜できる。
【0107】
図8は、
図7に示す第1磁極部21および第2磁極部22のそれぞれの第2方向長さが過度に短い変形例である。
【0108】
この変形例でも、第1磁極部21は、上記した第1領域23と第2領域24と第3領域25とを有する。第2磁極部22は、上記した第4領域26と第5領域27と第6領域28とを有する。
【実施例】
【0109】
以下に実施例および比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は、何ら実施例および比較例に限定されない。また、以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
【0110】
実施例1
図1~3に示す一実施形態に記載のマグネトロンスパッタリング成膜装置1についてシミュレーションした。
第1磁極部21および第2磁極部22の寸法は、表1に記載の通りである。
【0111】
実施例2
第1領域23~第6領域28の磁化方向のそれぞれを反転させた以外は、実施例1と同様に、
図6に示すマグネトロンスパッタリング成膜装置1についてシミュレーションした。
【0112】
実施例3
図7に示すように、第1磁極部21の磁化方向が放物線を構成するように、第1領域23と第2領域24とを連続させ、第2領域24と第3領域25とを連続させ、また、第2磁極部22の磁化方向が放物線を構成するように、第4領域26と第5領域27とを連続させ、第5領域27と第6領域28とを連続させた以外は、実施例1と同様にして、
図7に示すマグネトロンスパッタリング成膜装置1についてシミュレーションした。
【0113】
実施例4
第1磁極部21および第2磁極部22のそれぞれの第2方向長さを20mmから8mmに変更した以外は、実施例3と同様にして、
図8に示すマグネトロンスパッタリング成膜装置1についてシミュレーションした。
【0114】
比較例1
第1磁極部21が、第1領域23を有さず、また、第2磁極部22が、第4領域26を有さず、また、寸法を表2の通りに変更した以外は、実施例1と同様にして、
図9に示すマグネトロンスパッタリング成膜装置1についてシミュレーションした。
【0115】
<評価>
マグネトロンスパッタリング成膜装置1について、下記の項目を評価した。それらの結果を表3に記載する。
【0116】
(1)スパッタリング角度θおよび
実施例1~実施例4および比較例1のそれぞれのマグネトロンスパッタリング成膜装置1に関し、スパッタリング角度θ、磁束密度の最大値および最小値を、以下のソフトウェアを用いる、有限要素法による磁場のシミュレーションにより求めた。
【0117】
ソフトウェア名:JMAG(JSOL社製)
計算手法:有限要素法
【0118】
(2)成膜速度
実施例1~実施例3および比較例1のそれぞれのマグネトロンスパッタリング成膜装置1の成膜速度を、以下のソフトウェアを用いる、希薄流体のシミュレーションにより求めた。実施例1~実施例3の成膜速度は、比較例1の成膜速度を100としたきの比率として求めた。
【0119】
ソフトウェア名:DSMC-Neutrals(ウェーブフロント社製)
計算手法:Direct Simulation Monte Carlo(DSMC)法
【0120】
【0121】
【0122】
【符号の説明】
【0123】
1 マグネトロンスパッタリング成膜装置
10 成膜ロール
11 マグネトロンプラズマユニット
13 膜
17 ロータリーターゲット
18 マグネットユニット
21 第1磁極部
22 第2磁極部
23 第1領域
24 第2領域
25 第3領域
26 第4領域
27 第5領域
28 第6領域