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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-31
(45)【発行日】2024-08-08
(54)【発明の名称】ダイプレート面加工機
(51)【国際特許分類】
   B23C 1/20 20060101AFI20240801BHJP
   B21D 37/20 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
B23C1/20
B21D37/20 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020099652
(22)【出願日】2020-06-08
(65)【公開番号】P2021192935
(43)【公開日】2021-12-23
【審査請求日】2023-04-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003458
【氏名又は名称】芝浦機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100155608
【弁理士】
【氏名又は名称】大日方 崇
(72)【発明者】
【氏名】山崎 晋平
(72)【発明者】
【氏名】山田 大輔
【審査官】山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-160619(JP,A)
【文献】実開平02-110441(JP,U)
【文献】特開平05-285713(JP,A)
【文献】特開2011-143506(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23C 1/20,3/00-3/36,7/00-7/04;
B21D 37/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のダイプレートのうちの一方のダイプレートに取り付けられる取付部と、
前記取付部における他方のダイプレート側に設けられ、前記一対のダイプレートが対向する方向に沿う回転軸線回りの周方向に回転して前記一対のダイプレートのうち前記他方のダイプレートの金型取付面を切削する工具を公転させる回転部と、
前記回転部に設けられ、前記工具を前記回転部の回転軸線の延びる方向に直交する径方向に移動させる工具移動機構と、
前記工具とともに前記回転部により公転しつつ前記工具を自転させる切削用電動機を含、前記工具移動機構に設けられ、前記工具を保持した状態で前記工具の回転中心軸線に沿って前記工具を送り移動させる工具保持自転機構とを備え、
前記工具移動機構による前記径方向の前記工具の移動と、前記回転部による前記工具の公転移動とにより、前記工具による前記金型取付面の加工を行うように構成されており、
前記回転部は、前記回転部の回転中心軸線上に形成され、公転する前記切削用電動機に接続される第1電動機側電線が挿入される挿入孔を含む、ダイプレート面加工機。
【請求項2】
前記切削用電動機は、前記工具の回転中心軸線と同軸上に配置され、前記工具に接続されている、請求項1に記載のダイプレート面加工機。
【請求項3】
前記一対のダイプレートの対向する方向と上下方向とに直交する左右方向において、前記取付部および前記回転部の大きさは、前記左右方向に対向する一対のタイバー同士の間隔よりも小さく、かつ、上下方向において、前記取付部および前記回転部の大きさは、一方のダイプレート以下の大きさである、請求項1または2に記載のダイプレート面加工機。
【請求項4】
前記工具移動機構は、
前記工具保持自転機構の前記径方向への移動をガイドする第1ガイド部材と、
前記工具保持自転機構の前記工具の前記送り移動をガイドする第2ガイド部材とを含み、
前記第1ガイド部材は、前記回転部に取り付けられるとともに、前記第2ガイド部材は、前記工具保持自転機構が取り付けられた状態で、前記第1ガイド部材に取り付けられている、請求項1~3のいずれか1項に記載のダイプレート面加工機。
【請求項5】
前記第1ガイド部材は、前記第2ガイド部材の前記径方向の両端部が移動可能に取り付けられる一対のレール部を有している、請求項4に記載のダイプレート面加工機。
【請求項6】
記取付部内に配置される取付部側電線と、前記第1電動機側電線とを接続し、前記回転部とともに一体的に回転する回転接続用端子をさらに備える、請求項1~5のいずれか1項に記載のダイプレート面加工機。
【請求項7】
前記工具保持自転機構は、前記工具を前記送り移動させる送り用電動機を含み、
前記工具移動機構は、前記工具保持自転機構を前記径方向に移動させる移動用電動機を含み、
前記回転接続用端子は、前記取付部側電線と、公転する前記送り用電動機に接続される第2電動機側電線とを接続するとともに、前記取付部側電線と、公転する前記移動用電動機に接続される第3電動機側電線とを接続している、請求項6に記載のダイプレート面加工機。
【請求項8】
前記切削用電動機、前記送り用電動機および前記移動用電動機は、サーボモータである、請求項7に記載のダイプレート面加工機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ダイプレート面加工機に関し、特に、ダイプレートに取り付けられる取付部を備えるダイプレート面加工機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ダイプレートに取り付けられる取付部を備えるダイプレート面加工機が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、被加工面(ダイプレートの被加工面)に取り付けられるX方向送り機構を備えるフライスユニット(ダイプレート面加工機)が開示されている。フライスユニットは、フライスヘッドと、Z方向送りねじと、Y方向ガイド部材と、回転盤とを備えている。フライスヘッドは、被加工面を切削するカセット式刃具を含んでいる。
【0004】
上記特許文献1のX方向送り機構は、フライスヘッドをX方向(左右方向)に移動可能に構成されている。Z方向送りねじは、フライスヘッドをZ方向(上下方向)に移動可能に構成されている。Y方向ガイド部材は、フライスヘッドをY方向(前後方向)に移動可能に構成されている。回転盤は、Y方向に沿った回転中心軸線回りにフライスヘッドを回転可能に構成されている。
【0005】
上記特許文献1のフライスユニットでは、X方向(左右方向)送り機構およびZ方向(上下方向)送りねじにより、フライスヘッドのX-Z(上下左右方向)平面内の位置が調整されることによって、ダイプレートの被加工面への切削位置が調整される。フライスユニットでは、Y方向ガイド部材により、Y方向(前後方向)の位置が調整されることにより、ダイプレートの被加工面への切込量が調整される。そして、フライスユニットでは、X方向(左右方向)送り機構によりカセット式刃具をX方向(左右方向)に移動させつつ、回転盤を回転させるとともにフライスヘッドのカセット式刃具を回転させることにより、カセット式刃具による被加工面の切削が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平8-281511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1のフライスユニットでは、被加工面の切削の際、被加工面のX方向(左右方向)の全体にわたってカセット式刃具を移動させるためのX方向送り機構が設けられている。したがって、フライスユニットでは、X方向(左右方向)送り機構を設けた分だけ大型化および構造が複雑化しやすい。このため、上記特許文献1のフライスユニットでは、被加工面(金型取付面)に対するカセット式刃具(工具)の上下左右方向の位置を変更可能としつつ、大型化および構造の複雑化を抑制することが困難であるという問題点がある。
【0008】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、金型取付面に対する工具の上下左右方向の位置を変更可能としつつ、大型化および構造の複雑化を抑制することが可能なダイプレート面加工機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面におけるダイプレート面加工機は、一対のダイプレートのうちの一方のダイプレートに取り付けられる取付部と、取付部における他方のダイプレート側に設けられ、一対のダイプレートが対向する方向に沿う回転軸線回りの周方向に回転して一対のダイプレートのうち他方のダイプレートの金型取付面を切削する工具を公転させる回転部と、回転部に設けられ、工具を回転部の回転軸線の延びる方向に直交する径方向に移動させる工具移動機構と、工具とともに回転部により公転しつつ工具を自転させる切削用電動機を含、工具移動機構に設けられ、工具を保持した状態で工具の回転中心軸線に沿って工具を送り移動させる工具保持自転機構とを備え、工具移動機構による径方向の工具の移動と、回転部による工具の公転移動とにより、工具による金型取付面の加工をするように構成されており、回転部は、回転部の回転中心軸線上に形成され、公転する切削用電動機に接続される第1電動機側電線が挿入される挿入孔を含む
【0010】
この発明の一の局面によるダイプレート面加工機には、上記のように、工具移動機構による径方向の工具の移動と、回転部による工具の公転移動とにより、工具による金型取付面の加工をするように構成されている。これにより、工具の公転移動に沿って円周状に工具を移動させるとともに、径方向に工具を移動させることにより、金型取付面に対する工具の上下左右方向の位置を変更することができる。すなわち、上下方向に沿って直線状に工具を移動させる専用の移動機構および左右方向に沿って直線状に工具を移動させる専用の移動機構の両方を工具を公転移動させる機構とは別に設けることなく、回転部による工具の公転移動と工具移動機構による工具の径方向の移動とによって、金型取付面に対する工具の上下左右方向の位置を変更することができる。その結果、回転部による工具の公転移動を利用して金型取付面を加工することにより、金型取付面に対する工具の上下左右方向の位置を変更可能としつつ、大型化および構造の複雑化を抑制することができる。
【0011】
上記一の局面によるダイプレート面加工機において、好ましくは、切削用電動機は、工具の回転中心軸線と同軸上に配置され、工具に接続されている。このように構成すれば、切削用電動機と工具とを接続するために、切削用電動機と工具との間にアイドラ歯車、ベルトおよびスプライン軸などの動力伝達機構を配置する必要がない。その結果、ダイプレート面加工機の部品点数の増加および構造の複雑化を抑制することができるので、ダイプレート面加工機の大型化をより抑制することができる。
【0012】
上記一の局面によるダイプレート面加工機において、好ましくは、一対のダイプレートの対向する方向と上下方向とに直交する左右方向において、取付部および回転部の大きさは、左右方向に対向する一対のタイバー同士の間隔よりも小さく、かつ、上下方向において、取付部および回転部の大きさは、一方のダイプレート以下の大きさである。このように構成すれば、左右方向に対向する一対のタイバー同士の間隔よりも取付部および回転部を小さくすることにより、他方のダイプレートの加工の際に一対のタイバーの少なくともいずれかを取り外すことなく、ダイプレート面加工機を一対のダイバー同士の間に配置することができる。また、上下方向において、取付部および回転部の大きさを一方のダイプレート以下の大きさにすることにより、ダイプレート面加工機の上下方向の大型化を抑制することができる。したがって、一対のダイバー同士の間にダイプレート面加工機を上方から降ろして配置する場合であっても、ダイプレート面加工機を上昇させた際の上端位置を低く抑えることができる。これらの結果、他の構造物との干渉を抑制しつつ、一対のタイバーの少なくともいずれかを取り外すことなく、ダイプレート面加工機を上方から降ろして一対のタイバー同士の間に配置することができるので、ダイプレート面加工機を容易に設置することができる。
【0013】
上記一の局面によるダイプレート面加工機において、好ましくは、工具移動機構は、工具保持自転機構の径方向への移動をガイドする第1ガイド部材と、工具保持自転機構の工具の送り移動をガイドする第2ガイド部材とを含み、第1ガイド部材は、回転部に取り付けられるとともに、第2ガイド部材は、工具保持自転機構が取り付けられた状態で、第1ガイド部材に取り付けられている。このように構成すれば、回転部に取り付けられた第2ガイド部材に対して、工具保持自転機構が取り付けられた第1ガイド部材を取り付ける場合と比較して、第1ガイド部材の分だけ工具を送り移動させる際に第2ガイド部材にかかる荷重を小さくすることができる。その結果、より安定した状態で、工具保持自転機構の工具の送り移動を行うことができるので、ダイプレート面加工機による金型取付面の加工をより精度よく行うことができる。
【0014】
この場合、好ましくは、第1ガイド部材は、第2ガイド部材の径方向の両端部が移動可能に取り付けられる一対のレール部を有している。このように構成すれば、第2ガイド部材の径方向の一方の端部のみを支持する場合と異なり、第2ガイド部材を安定して支持することができる。その結果、より一層安定した状態で、工具保持自転機構の径方向への移動を行うことができる。
【0015】
上記一の局面によるダイプレート面加工機において、好ましくは、取付部内に配置される取付部側電線と、第1電動機側電線とを接続し、回転部とともに一体的に回転する回転接続用端子をさらに備える。このように構成すれば、回転接続用端子を設けるだけで、切削用電動機を含む工具保持自転機構を回転部上に配置した場合でも、回転部とともに切削用電動機が公転することに起因して、第1電動機側電線が回転部などに絡まないようにすることができる。その結果、回転接続用端子を用いるだけで、切削用電動機が回転部に設けられたダイプレート面加工機を構成することができるので、ダイプレート面加工機の複雑化および大型化を抑制することができる。
【0016】
この場合、好ましくは、工具保持自転機構は、工具を送り移動させる送り用電動機を含み、工具移動機構は、工具保持自転機構を径方向に移動させる移動用電動機を含み、回転接続用端子は、取付部側電線と、公転する送り用電動機に接続される第2電動機側電線とを接続するとともに、取付部側電線と、公転する移動用電動機に接続される第3電動機側電線とを接続している。このように構成すれば、回転部に送り用電動機を配置することができるので、取付部に送り用電動機を配置した場合と比較して、送り用電動機と工具保持自転機構とを接続するために必要な動力伝達機構を減少させることができる。また、回転部に移動用電動機を配置することができるので、取付部に移動用電動機を配置した場合と比較して、移動用電動機と工具移動機構とを接続するために必要な動力伝達機構を減少させることができる。これらの結果、ダイプレート面加工機の部品点数の増加を抑制することができるので、ダイプレート面加工機の大型化および複雑化をより抑制することができる。また、回転接続用端子により、送り用電動機および移動用電動機を回転部上に配置した場合でも、回転部とともに送り用電動機および移動用電動機が公転することに起因して、第2電動機側電線および第3電動機側電線が回転部などに絡まないようにすることができる。その結果、回転接続用端子を用いるだけで、切削用電動機、送り用電動機および移動用電動機が回転部に設けられたダイプレート面加工機を構成することができるので、ダイプレート面加工機の複雑化および大型化をより抑制することができる。
【0017】
上記切削用電動機、送り用電動機および移動用電動機を備えるダイプレート面加工機において、好ましくは、切削用電動機、送り用電動機および移動用電動機は、サーボモータである。このように構成すれば、工具の位置を測定するセンサを別途設けることなく、工具の位置を検知することができるので、ダイプレート面加工機の複雑化および大型化をより一層抑制することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、上記のように、金型取付面に対する工具の上下左右方向の位置を変更可能としつつ、大型化および構造の複雑化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】ダイカストマシンの全体構成のうち移動金型が取り付けられた移動ダイプレートおよび固定金型が取り付けられた固定ダイプレートを示した図である。
図2】ダイカストマシンの全体構成のうち固定ダイプレートをX1方向側から視た正面図である。
図3】ダイカストマシンの全体構成のうち移動ダイプレートと固定ダイプレートとの間にダイプレート面加工機を配置した側面図である。
図4】第1実施形態によるダイプレート面加工機を示した斜視図である。
図5図4のダイプレート面加工機において工具を径方向に移動させた状態を示した斜視図である。
図6】第1実施形態によるダイプレート面加工機の取付部を外した状態を示した斜視図である。
図7】第1実施形態によるダイプレート面加工機の回転部を外した状態を示した斜視図である。
図8】第1実施形態によるダイプレート面加工機における取付部、回転盤および回転接続用端子を示した断面図である。
図9】第1実施形態によるダイプレート面加工機を固定ダイプレートに取り付けた状態を示した側面図である。
図10】第1実施形態によるダイプレート面加工機の取付部を固定ダイプレートに取り付けた状態を仮想的に示した正面図である。
図11】第1実施形態によるダイプレート面加工機による移動ダイプレートの金型取付面の加工を示した正面図である。
図12】第2実施形態によるダイプレート面加工機を示した斜視図である。
図13図12のダイプレート面加工機において工具を径方向に移動させた状態を示した斜視図である。
図14】第2実施形態によるダイプレート面加工機における取付部、回転盤および回転接続用端子を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
[第1実施形態]
図1および図2を参照して、ダイカストマシン100の構成について説明する。
【0022】
(ダイカストマシンの構成)
図1に示すように、ダイカストマシン100は、コールドチャンバ方式のマシンであり、ダイカストマシン100に取り付けられた金型に溶湯(液状の金属材料)を射出することによりダイカスト製品(成形品)を製造するように構成されている。
【0023】
金型は、ダイカスト製品(成形品)を成形するためのキャビティ(空洞部分)を形成するように構成されている。具体的には、金型は、固定金型101と、移動金型102とを含んでいる。キャビティは、固定金型101に移動金型102を当接させることにより形成されている。
【0024】
ダイカストマシン100は、移動金型102を水平方向に移動させる横型のマシンにより構成されている。具体的には、ダイカストマシン100は、固定ダイプレート103と、移動ダイプレート104と、一対のタイバー105と、ダイプレート移動機構106と、制御装置107とを備えている。固定ダイプレート103および移動ダイプレート104は、特許請求の範囲の「一対のダイプレート」の一例である。
【0025】
ここで、以下の説明では、上下方向をZ方向とし、Z1方向を上方向とし、Z2方向を下方向とする。また、固定ダイプレート103と移動ダイプレート104とが対向する方向をX方向とし、固定ダイプレート103から移動ダイプレート104に向かう方向をX1方向とい、X1方向とは逆の方向をX2方向とする。また、Z方向およびX方向に直交する方向をY方向とし、Y方向の一方側をY1方向とし、他方側をY2方向とする。また、Z方向は、特許請求の範囲の「上下方向」の一例である。また、Y方向は、特許請求の範囲の「左右方向」の一例である。
【0026】
固定ダイプレート103は、固定金型101を保持する鋼板により形成されている。固定ダイプレート103は、金型取付面103aを有している。金型取付面103aは、固定ダイプレート103の移動ダイプレート104に対向する面(X1方向側の面)である。
【0027】
移動ダイプレート104は、移動金型102を保持し、固定ダイプレート103に対してX方向に移動可能な鋼板により形成されている。移動ダイプレート104は、金型取付面104aを有している。金型取付面104aは、移動ダイプレート104の固定ダイプレート103に対向する面(X2方向側の面)である。
【0028】
図2に示すように、固定ダイプレート103および移動ダイプレート104には、後述するダイプレート面加工機10を取り付けるための複数(12個)の取付溝103bが形成されている。複数の取付溝103bは、同じ形状を有しており、固定ダイプレート103および移動ダイプレート104のいずれにも同じ形状の取付溝103bが形成されるので、そのうちの固定ダイプレート103に形成された取付溝103bについて説明する。
【0029】
図1に示すように、取付溝103bは、T字状の断面形状を有している。また、取付溝103bは、表面側溝103cと、奥側溝103dとを有している。奥側溝103dは、金型取付面103aにおいて、表面側溝103cの移動ダイプレート104側とは逆側の端部に形成されている。また、表面側溝103cおよび奥側溝103dは、移動ダイプレート104側から視て、金型取付面103aの中心Cに向かって直線状に延びている。
【0030】
一対のタイバー105は、Y方向において対向している。一対のタイバー105は、固定ダイプレート103を支持するとともに、移動ダイプレート104をX方向に移動可能に支持するように構成されている。具体的には、一対のタイバー105は、X方向に延びる棒形状を有している。一対のタイバー105は、2組設けられている。すなわち、一対のタイバー105は、一対の上側タイバー105aである。また、一対のタイバー105は、一対の下側タイバー105bである。一対の上側タイバー105aは、Z1方向側に配置されている。一対の下側タイバー105bは、Z2方向側に配置されている。このように、タイバーは、複数(4本)配置されている。なお、タイバーの本数は、2~3または5以上であってもよい。
【0031】
ダイプレート移動機構106は、移動ダイプレート104を一対の上側タイバー105aおよび一対の下側タイバー105bに沿ってX方向に移動させるように構成されている。
【0032】
制御装置107は、ダイカストマシン100の各部の駆動を制御するように構成されている。制御装置107は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)と、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)などの記憶部とを含んでいる。
【0033】
(ダイプレート面加工機)
図3に示すように、ダイカストマシン100では、固定ダイプレート103の金型取付面103aおよび移動ダイプレート104の金型取付面104aは、補修加工のため、ニッケルなどにより肉盛溶接を実施した後、ダイプレート面加工機10に取り付けられた工具11(フライスカッタなど)により加工(切削)される。これにより、金型取付面103aおよび金型取付面104aの面精度が改善される。金型取付面103aは、ダイプレート面加工機10を金型取付面104aに取り付けた状態で、ダイプレート面加工機10により加工される。金型取付面104aは、ダイプレート面加工機10を金型取付面103aに取り付けた状態で、ダイプレート面加工機10による加工が行われる。
【0034】
以下では、図3図10を参照して、第1実施形態によるダイプレート面加工機10について説明する。詳細には、金型取付面103aに取り付けられて金型取付面104aの加工を行う状態のダイプレート面加工機10を一例として説明する。なお、ダイプレート面加工機10は、金型取付面104aに取り付けられて金型取付面103aの加工を行う状態にも配置されるが、以下において説明は省略する。
【0035】
図3および図4に示すように、ダイプレート面加工機10は、一対のタイバー105の間に配置された状態で、工具11の自転移動、公転移動、径方向移動および送り移動を行うことにより、金型取付面104aを加工するように構成されている。
【0036】
具体的には、ダイプレート面加工機10は、工具保持自転機構2と、工具移動機構3と、回転部4と、回転接続用端子5(図7参照)と、取付部6と、一対の脚部7とを備えている。すなわち、ダイプレート面加工機10は、一対のタイバー105の間に配置された状態で、工具移動機構3によるD方向(径方向)の工具11の径方向移動と、回転部4による工具11の公転移動とにより、工具11による金型取付面104aの加工を行うように構成されている。
【0037】
ここで、自転移動とは、X方向に沿って平行な回転中心軸線C1回りのJ方向への工具11の回転を示す。径方向移動とは、回転中心軸線C3の延びる方向に直交する方向に沿ったD方向への工具11の移動を示す。公転移動とは、X方向に沿って平行な回転中心軸線C3回りのK方向への工具11の回転を示す。送り移動とは、回転中心軸線C1の延びる方向(A方向)への工具11の移動を示す。なお、回転中心軸線C3は、特許請求の範囲の「回転軸線」の一例である。また、K方向は、特許請求の範囲の「周方向」の一例である。
【0038】
図4に示すように、本実施形態のダイプレート面加工機10は、工具保持自転機構2および回転部4により、工具11を自転移動および公転移動させることによって、金型取付面104aを円周状に加工(切削)するように構成されている。また、ダイプレート面加工機10は、工具移動機構3により、工具11をD方向に移動させることによって、工具11により金型取付面104aを円周状に加工(切削)する際の直径を変更するように構成されている。
【0039】
〈工具保持自転機構〉
工具保持自転機構2は、金型取付面104aに工具11を当接させた状態を保持するとともに、工具11をJ方向に自転移動させるように構成されている。具体的には、工具保持自転機構2は、取付部材21と、切削用減速機22を有する切削用電動機23とを含んでいる。
【0040】
取付部材21は、切削用電動機23が固定される基台となるように構成されている。取付部材21は、工具移動機構3の後述する送りガイド部材32に、A方向へ送りスライド移動可能に取り付けられている。取付部材21は、D方向およびK方向への移動が規制された状態で、工具移動機構3の後述する送りガイド部材32に取り付けられている。このように、取付部材21と、工具移動機構3の後述する送りガイド部材32とは、A方向にスライド移動可能に係合している。具体的には、取付部材21は、D方向において、工具11側とは逆側に向かって突出する突出部21aを有している。突出部21aは、X1方向側から視て、工具11側とは逆側の先端部が他の部分よりも大きくなる略台形形状を有している。
【0041】
切削用電動機23は、サーボモータである。切削用電動機23は、工具11を自転移動させる。すなわち、切削用電動機23は、回転中心軸線C3回りのJ方向に工具11を駆動させるための駆動源である。切削用減速機22は、切削用電動機23の回転速度を減速させて、トルクを増加させるように構成されている。切削用減速機22には、工具11が取り付けられている。すなわち、切削用電動機23は、工具11の回転中心軸線C1と同軸上に配置され、工具11に接続されている。このように、切削用電動機23と工具11とは、ベルト、アイドラ歯車およびスプライン軸などの動力伝達機構を用いることなく、接続されている。
【0042】
工具保持自転機構2は、工具移動機構3に設けられ、工具11を保持した状態で工具11の回転中心軸線C1に沿って工具11を送り移動させるように構成されている。すなわち、工具保持自転機構2は、工具11をA方向に移動させることにより、工具11と金型取付面104aとの距離を調整するように構成されている。
【0043】
具体的には、工具保持自転機構2は、送りねじ24と、送り量調整部25とを含んでいる。送りねじ24のX1方向側の端部には、取付部材21が取り付けられている。送りねじ24と、送り量調整部25とは、機械的に接続されている。送り量調整部25は、送りねじ24のA方向のうちの工具11側への突出量またはA方向のうちの工具11とは反対側への退避量を調整するように構成されている。工具保持自転機構2では、送り調整部を作業者が手動で操作して送りねじ24の突出量または退避量を調整することにより、工具11のA方向への移動量が調整されている。
【0044】
〈工具移動機構〉
図4および図5に示すように、工具移動機構3は、回転部4に設けられ、金型取付面104a(図3参照)を切削する工具11をD方向にスライド移動させるように構成されている。具体的には、工具移動機構3は、移動ガイド部材31と、送りガイド部材32と、送りねじ33と、送り量調整部34とを含んでいる。なお、移動ガイド部材31は、特許請求の範囲の「第1ガイド部材」の一例である。送りガイド部材32は、特許請求の範囲の「第2ガイド部材」の一例である。
【0045】
移動ガイド部材31は、工具保持自転機構2のD方向への移動をガイドするように構成されている。移動ガイド部材31は、一対のレール部31aと、一対のレール支持部31bとを有している。一対のレール部31aおよび一対のレール支持部31bは、D方向に延びている。一対のレール部31aには、D方向に直交する方向において、送りガイド部材32の両端部がスライド移動可能に取り付けられている。一対のガイドレールは、それぞれ、一対のレール支持部31bに取り付けられている。移動ガイド部材31は、後述する回転部4の回転盤41に固定されている。
【0046】
送りガイド部材32は、工具保持自転機構2が取り付けられる基台となるように構成されている。送りガイド部材32は、移動ガイド部材31に、工具保持自転機構2を取り付けるための部材である。
【0047】
送りガイド部材32は、移動ガイド部材31にD方向にスライド移動可能に取り付けられている。具体的には、送りガイド部材32は、回転中心軸線C3の延びる方向のうち移動ガイド部材31側(X2方向側)に一対のスライド部32aを有している。一対のスライド部32aは、D方向およびX方向に直交する方向に対向している。一対のスライド部32aは、それぞれ、一対のガイドレールにD方向へスライド移動可能に取り付けられている。一対のスライド部32aの各々は、D方向において、2組配置されている。
【0048】
図4に示すように、送りねじ33は、D方向に延びている。送りねじ33には、送りガイド部材32が取り付けられている。送りねじ33と、送り量調整部34とは、機械的に接続されている。送り量調整部34は、送りねじ33を回転中心軸線C2回りに回転させて、工具11のD方向の位置を調整するように構成されている。工具移動機構3では、送り量調整部34により手動で送りねじ33の回転量を調整することにより、工具11のD方向への移動量が調整されている。
【0049】
送りガイド部材32には、工具保持自転機構2がA方向にスライド移動可能に取り付けられている。すなわち、送りガイド部材32は、工具保持自転機構2を工具11の送り移動をガイドする。具体的には、送りガイド部材32は、D方向において、工具11側とは逆側に向かって窪む凹部32bを有している。凹部32bは、D方向において、工具11側の端部に形成されている。凹部32bは、X1方向側から視て、工具11側とは逆側の底部が他の部分よりも大きくなる略台形形状を有している。送りガイド部材32の凹部32bには、取付部材21の突出部21aが嵌合される。すなわち、上記したように、送りガイド部材32の凹部32bと、取付部材21の突出部21aとは、A方向にスライド移動可能に係合している。
【0050】
このように、送りガイド部材32は、工具保持自転機構2が取り付けられた状態で、移動ガイド部材31に取り付けられている。
【0051】
〈回転部〉
図6および図7に示すように、回転部4は、取付部6における移動ダイプレート104側(X1方向側)に設けられ、回転中心軸線C3回りのK方向に回転して移動ダイプレート104の金型取付面104aを切削する工具11を公転させるように構成されている。ここで、回転部4は、工具保持自転機構2および工具移動機構3の両方を、K方向に公転移動させるように構成されている。具体的には、回転部4は、回転盤41と、回転駆動機構42と、挿入孔43とを含んでいる。
【0052】
回転盤41は、回転駆動機構42による回転に伴って一体的に回転するように構成されている。具体的には、回転盤41は、回転駆動機構42の後述するウォーム歯車42eが嵌合する嵌合部41aを有している。嵌合部41aは、円筒形状を有している。X方向において、嵌合部41aの長さは、回転駆動機構42の後述するウォーム歯車42eの厚みよりも大きい。嵌合部41aは、回転中心軸線C3の延びる方向のうち取付部6側(X2方向側)に突出している。回転盤41は、工具移動機構3が取り付けられる基台となるように構成されている。詳細には、回転盤41は、D方向に延びる板状に形成されている。回転盤41は、X2方向側から視て、回転中心軸線C3に対して点対称な略矩形形状を有している。
【0053】
回転駆動機構42は、駆動力を回転盤41に伝達することにより、回転盤41を回転中心軸線C3回りのK方向に回転させるように構成されている。具体的には、回転駆動機構42は、回転用電動機42aと、回転用駆動伝達部42bとを有している。
【0054】
回転用電動機42aは、サーボモータである。回転用電動機42aは、回転用減速機(図示せず)を有している。回転用減速機は、回転用電動機42aの回転を減速してトルクを増大させている。これにより、回転盤41を回転させるためのトルクを発生させることが可能となる。回転用駆動伝達部42bは、複数(4個)のアイドラ歯車42cと、ウォーム軸42dと、ウォーム歯車42eとを有している。
【0055】
複数のアイドラ歯車42cは、回転用電動機42aとウォーム歯車42eとを接続している。ウォーム軸42dは、アイドラ歯車42cとウォーム歯車42eとを接続している。ウォーム歯車42eは、複数のアイドラ歯車42cのうち最も回転盤41側(X1方向側)に配置されたアイドラ歯車42cと同軸の回転中心軸線C4上に配置されている。ウォーム軸42dは、ウォーム歯車42eのZ2方向側の端部に接続されている。ウォーム軸42dは、回転中心軸線C4回りのW方向に回転することにより、ウォーム歯車42eを回転中心軸線C3回りのK方向に回転させる。このように、ウォーム軸42dは、回転中心軸線C4回りのW方向への回転を、回転中心軸線C3回りのK方向への回転に変換している。ウォーム歯車42eは、ウォーム軸42dにより、回転用電動機42aの駆動力が伝達されてK方向に回転する。ウォーム歯車42eは、嵌合部41aに嵌合されている。これにより、ウォーム歯車42eは、回転盤41を一体的にK方向に回転させる。
【0056】
図6および図8に示すように、挿入孔43は、回転部4の回転中心軸線C3上に形成され、公転する切削用電動機23に接続される切削用電線12が挿入されるように構成されている。すなわち、切削用電線12と回転接続用端子5とを接続するために形成されている。具体的には、挿入孔43は、回転盤41の嵌合部41aを回転中心軸線C3の延びる方向に沿って貫通している。挿入孔43は、回転中心軸線C3と同軸上に配置されている。挿入孔43は、X2方向側から視て、円形状を有している。なお、切削用電線12は、特許請求の範囲の「第1電動機側電線」の一例である。
【0057】
〈回転接続用端子〉
図7および図8に示すように、回転接続用端子5は、自転移動する回転盤41上に切削用電動機23を配置可能とするために設けられている。すなわち、回転接続用端子5は、取付部6内に配置される取付部側電線13と、切削用電線12とを接続し、回転部4とともに一体的に回転するように構成されている。具体的には、回転接続用端子5は、スリップリングにより構成されている。これにより、ダイプレート面加工機10では、回転盤41の回転に伴って、回転盤41上に配置された切削用電動機23に接続された切削用電線12が工具保持自転機構2、工具移動機構3および回転部4などに絡まることを防止している。
【0058】
回転接続用端子5は、リング状部51と、ブラシ部52とを有している。
【0059】
リング状部51は、ブラシ部52に対して相対的に回転可能に設けられている。リング状部51は、ブラシ部52に対して相対的に回転中心軸線C3回りのK方向に回転する。リング状部51は、回転盤41と一体的にK方向に回転するように構成されている。詳細には、リング状部51は、回転盤41の嵌合部41aの取付部6側の端面(X2方向側の端面)に取り付けられている。リング状部51は、ブラシ部52から供給された電力が流れる電路(図示せず)を有している。リング状部51の電路には、一端を切削用電動機23に電気的に接続した切削用電線12の他端が電気的に接続されている。リング状部51の電路に接続された切削用電線12は、挿入孔43を介して切削用電動機23に電気的に接続されている。
【0060】
ブラシ部52は、リング状部51に給電するように構成されている。ブラシ部52は、リング状部51と電気的に接続されている。ブラシ部52には、一端を制御部8に電気的に接続した取付部側電線13の他端が電気的に接続されている。ブラシ部52は、回転盤41と一体的に回転しない。詳細には、ブラシ部52は、取付部6内に取り付けられている。
【0061】
〈取付部〉
取付部6は、回転盤41を回転可能に支持している。すなわち、取付部6は軸受け62を介して回転盤41の嵌合部41aを支持している。詳細には、取付部6には、回転盤41の嵌合部41aが挿入される挿入孔61が形成されている。挿入孔61は、回転中心軸線C3と同軸上に配置されている。軸受け62は、挿入孔61に取り付けられている。軸受け62は、クロスローラベアリングなどであることが好ましい。なお、軸受け62の種類は、クロスローラベアリングに限られない。
【0062】
図9および図10に示すように、取付部6は、移動ダイプレート104および固定ダイプレート103のうちの固定ダイプレート103に取り付けられている。取付部6は、締結部材108が挿入される複数(4個)の締結孔63を有している。取付部材21は、固定ダイプレート103の取付溝103bの奥側溝103d内に配置されたナット(図示せず)に、締結孔63に挿入された締結部材108を螺合することにより、固定ダイプレート103に取り付けられている。
【0063】
ダイプレート面加工機10は、移動ガイド部材31がZ方向に沿って延びている状態において、X1方向側から視て、固定ダイプレート103のX1方向側の面内に収まるように構成されている。詳細には、Y方向において、取付部6および回転部4の大きさは、一対のタイバー105同士の間隔Mよりも小さい。すなわち、ダイプレート面加工機10が固定ダイプレート103に取り付けられた状態で、取付部6および回転部4は、一対のタイバー105同士の間に配置されている。また、Z方向において、取付部6および回転部4の大きさは、固定ダイプレート103以下の大きさである。ダイプレート面加工機10が固定ダイプレート103に取り付けられた状態で、取付部6および回転部4のZ1方向側の端部は、固定ダイプレート103のZ1方向側の端部Upに合わせた位置に配置されている。
【0064】
一対の脚部7は、床9に載置されるように構成されている。一対の脚部7は、Y方向において対向している。一対の脚部7は、取付部6のZ2方向側の端部に取り付けられている。
【0065】
(移動側金型取付面の加工)
以下では、図11を参照して、ダイプレート面加工機10による移動ダイプレート104の金型取付面104aの加工について説明する。なお、ダイプレート面加工機10は、金型取付面104aに取り付けられて金型取付面103aも加工されるが、以下において説明は省略する。
【0066】
作業者は、一対のタイバー105の間に配置されたダイプレート面加工機10を締結部材108により固定ダイプレート103の金型取付面103aに固定する。作業者は、金型取付面103aに加工範囲の最外周に合わせて、工具移動機構3により工具保持自転機構2をD方向の外側に手動で移動させる。そして、工具11を加工範囲の最外周に合わせた後、工具11は、切削用電動機23によりJ方向に自転移動するとともに、回転駆動機構42の回転用電動機42aによる回転盤41の回転によってK方向に公転移動する。このとき、金型取付面104aは、円周状にフライス加工される。
【0067】
作業者は、工具11により金型取付面103aの加工範囲の最外周を全周にわたってフライス加工した後、工具移動機構3により工具保持自転機構2をD方向の内側に手動で移動させる。すなわち、作業者は、工具11が金型取付面103aを1周する毎に、円周状のフライス加工の半径を小さくしていく。このようにして、金型取付面103aの加工範囲の全面をフライス加工した後、工具11は、送り移動機構によりA方向のうち金型取付面104a側(X1方向側)に送られる。
【0068】
上記したフライス加工を繰り返すことにより、金型取付面104aのうち補修加工のためニッケルなどにより肉盛溶接が実施された部分は、工具11によりフライス加工(切削)されて略平面に形成される。
【0069】
(第1実施形態の効果)
第1実施形態の効果について説明する。
【0070】
第1実施形態では、上記のように、ダイプレート面加工機10を、工具移動機構3による径方向の工具11の移動と、回転部4による工具11の公転移動とにより、工具11による金型取付面104a(金型取付面103a)の加工をするように構成する。これにより、工具11の公転移動に沿って円周状に工具11を移動させるとともに、D方向に工具11を径方向移動させることにより、金型取付面104a(金型取付面103a)に対する工具11のZ方向およびY方向の位置を変更することができる。すなわち、Z方向に沿って直線状に工具11を移動させる専用の移動機構およびY方向に沿って直線状に工具11を移動させる専用の移動機構の両方を工具11を公転移動させる機構とは別に設けることなく、回転部4による工具11の公転移動と工具移動機構3による工具11のD方向の移動とによって、金型取付面104a(金型取付面103a)に対する工具11のZ方向およびY方向の位置を変更することができる。その結果、回転部4による工具11の公転移動を利用して金型取付面104a(金型取付面103a)を加工することにより、金型取付面104a(金型取付面103a)に対する工具11のZ方向およびY方向の位置を変更可能としつつ、大型化および構造の複雑化を抑制することができる。
【0071】
また、第1実施形態では、上記のように、切削用電動機23を、工具11の回転中心軸線C1と同軸上に配置され、工具11に接続する。これにより、切削用電動機23と工具11とを接続するために、切削用電動機23と工具11との間にアイドラ歯車、ベルトおよびスプライン軸などの動力伝達機構を配置する必要がない。この結果、ダイプレート面加工機10の部品点数の増加および構造の複雑化を抑制することができるので、ダイプレート面加工機10の大型化をより抑制することができる。
【0072】
また、第1実施形態では、上記のように、Y方向において、取付部6および回転部4の大きさを、Y方向に対向する一対のタイバー105同士の間隔よりも小さくする。Z方向において、取付部6および回転部4の大きさを、一方の固定側ダイプレート(移動側ダイプレート)以下の大きさにする。これにより、Y方向に対向する一対のタイバー105同士の間隔よりも取付部6および回転部4を小さくすることにより、他方の移動側ダイプレート(固定側ダイプレート)の加工の際に一対のタイバー105の少なくともいずれかを取り外すことなく、ダイプレート面加工機10を一対のダイバー同士の間に配置することができる。また、Z方向において、取付部6および回転部4の大きさを一方の固定側ダイプレート(移動側ダイプレート)以下の大きさにすることにより、ダイプレート面加工機10のZ方向の大型化を抑制することができる。したがって、一対のダイバー同士の間にダイプレート面加工機10を上方から降ろして配置する場合であっても、ダイプレート面加工機10を上昇させた際の上端位置を低く抑えることができる。これらの結果、他の構造物との干渉を抑制しつつ、一対のタイバー105の少なくともいずれかを取り外すことなく、ダイプレート面加工機10を上方から降ろして一対のタイバー105同士の間に配置することができるので、ダイプレート面加工機10を容易に設置することができる。
【0073】
また、第1実施形態では、上記のように、送りガイド部材32を、工具保持自転機構2が取り付けられた状態で、移動ガイド部材31に取り付ける。これにより、回転部4に取り付けられた送りガイド部材32に対して、工具保持自転機構が取り付けられた移動ガイド部材を取り付ける場合と比較して、移動ガイド部材の分だけ工具11を送り移動させる際に送りガイド部材32にかかる荷重を小さくすることができる。この結果、より安定した状態で、工具保持自転機構2の工具11の送り移動(A方向への移動)を行うことができるので、ダイプレート面加工機10による金型取付面104a(金型取付面103a)の加工をより精度よく行うことができる。
【0074】
また、第1実施形態では、上記のように、移動ガイド部材31に、送りガイド部材32のD方向における両端部がスライド移動可能に取り付けられる一対のレール部31aを設ける。これにより、送りガイド部材32のD方向の一方の端部のみを支持する場合と異なり、送りガイド部材32を安定して支持することができる。この結果、より一層安定した状態で、工具保持自転機構2の径方向への移動を行うことができる。
【0075】
また、第1実施形態では、上記のように、ダイプレート面加工機10に、取付部6内に配置される取付部側電線13と、切削用電線12とを接続し、回転部4とともに一体的に回転する回転接続用端子5を設ける。これにより、回転接続用端子5を設けるだけで、切削用電動機23を含む工具保持自転機構2を回転部4上に配置した場合でも、回転部4とともに切削用電動機23が公転することに起因して、切削用電線12が回転部4などに絡ないようにすることができる。この結果、回転接続用端子5を用いるだけで、切削用電動機23が回転部4に設けられたダイプレート面加工機10を構成することができるので、ダイプレート面加工機10の複雑化および大型化を抑制することができる。
【0076】
[第2実施形態]
次に、図12および図13を参照して、本発明の第2実施形態によるダイプレート面加工機210の構成について説明する。第2実施形態のダイプレート面加工機210では、工具11の送り機構および工具移動機構3が手動で調節される第1実施形態のダイプレート面加工機10とは異なり、工具11の送り機構および工具移動機構203が自動で調節される例について説明する。なお、第2実施形態において、第1実施形態と同様の構成に関しては、同じ符号を付して説明を省略する。
【0077】
図12図14に示すように、第2実施形態のダイプレート面加工機210は、工具保持自転機構202と、工具移動機構203と、回転部4と、回転接続用端子5と、取付部6とを備えている。
【0078】
〈工具保持自転機構〉
工具保持自転機構202は、送りねじ24と、送り用電動機225とを含んでいる。送りねじ24のX1方向側の端部には、取付部材21が取り付けられている。送り用電動機225は、サーボモータである。送りねじ24と、送り用電動機225とは、機械的に接続されている。送り用電動機225は、送りねじ24のX1方向への突出量またはX2方向への退避量を調整するように構成されている。これにより、送り用電動機225は、工具11を送り移動させている。工具保持自転機構202では、送り用電動機225により自動で送りねじ24の突出量または退避量を調整することにより、工具11のA方向への移動量が調整されている。
【0079】
〈工具移動機構〉
工具移動機構203は、移動ガイド部材31と、送りガイド部材32と、送りねじ33と、移動用電動機234とを含んでいる。なお、移動ガイド部材31は、特許請求の範囲の「第1ガイド部材」の一例である。送りガイド部材32は、特許請求の範囲の「第2ガイド部材」の一例である。
【0080】
送りねじ33は、D方向に延びている。移動用電動機234は、サーボモータである。送りねじ33と、移動用電動機234とは、機械的に接続されている。移動用電動機234は、送りねじ33を回転中心軸線C2回りに回転させて、工具11のD方向の位置を調整するように構成されている。工具移動機構203では、移動用電動機234により自動で送りねじ33の回転量を調整することにより、工具11のD方向への移動量が調整されている。このようにして、移動用電動機234は、工具保持自転機構202をD方向に移動させている。
【0081】
〈回転接続用端子〉
図14に示すように、回転接続用端子5は、自転移動する回転盤41上に切削用電動機23、送り用電動機225および移動用電動機234を配置可能とするために設けられている。すなわち、回転接続用端子5は、取付部側電線13と、公転移動する送り用電動機225に接続される送り用電線214とを接続している。回転接続用端子5は、取付部側電線13と、公転移動する移動用電動機234に接続される移動用電線215とを接続している。なお、送り用電線214は、特許請求の範囲の「第2電動機側電線」の一例である。また、移動用電線215は、特許請求の範囲の「第3電動機側電線」の一例である。また、第2実施形態のその他の構成は、第1実施形態と同様である。
【0082】
(第2実施形態の効果)
第2実施形態の効果について説明する。
【0083】
第2実施形態では、上記のように、ダイプレート面加工機210を、工具移動機構203によるD方向の工具11の移動と、回転部4による工具11の公転移動とにより、工具11による金型取付面104a(金型取付面103a)の加工をするように構成する。これにより、金型取付面104a(金型取付面103a)に対する工具11のZ方向およびY方向の位置を変更可能としつつ、大型化および構造の複雑化を抑制することができる。
【0084】
また、第2実施形態では、上記のように、回転接続用端子5に、取付部側電線13と、公転する送り用電動機225に接続される送り用電線214とを接続するとともに、取付部側電線13と、公転する移動用電動機234に接続される移動用電線215とを接続する。これにより、回転部4に送り用電動機225を配置することができるので、取付部に送り用電動機を配置した場合と比較して、送り用電動機225と工具保持自転機構202とを接続するために必要な動力伝達機構を減少させることができる。また、回転部4に移動用電動機234を配置することができるので、取付部に移動用電動機を配置した場合と比較して、移動用電動機234と工具移動機構203とを接続するために必要な動力伝達機構を減少させることができる。これらの結果、ダイプレート面加工機210の部品点数の増加および構造の複雑化を抑制することができるので、ダイプレート面加工機210の大型化をより抑制することができる。
【0085】
また、第2実施形態では、上記のように、回転接続用端子5に、取付部側電線13と、公転する送り用電動機225に接続される送り用電線214とを接続するとともに、取付部側電線13と、公転する移動用電動機234に接続される移動用電線215とを接続する。これにより、回転接続用端子5により、送り用電動機225および移動用電動機234を回転部4上に配置した場合でも、回転部4とともに送り用電動機225および移動用電動機234が公転することに起因して、送り用電線214および移動用電線215が回転部4などに絡まないようにすることができる。この結果、回転接続用端子5を用いるだけで、切削用電動機23、送り用電動機225および移動用電動機234が回転部4に設けられたダイプレート面加工機210を構成することができるので、ダイプレート面加工機210の複雑化および大型化をより抑制することができる。
【0086】
また、第2実施形態では、上記のように、切削用電動機23、送り用電動機225および移動用電動機234に、サーボモータを設ける。これにより、工具11の位置を測定するセンサを別途設けることなく、工具11の位置を検知することができるので、ダイプレート面加工機210の複雑化および大型化をより一層抑制することができる。なお、第2実施形態のその他の効果は、第1実施形態と同様である。
【0087】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0088】
たとえば、上記第1および第2実施形態では、回転接続用端子5は、スリップリングにより構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、回転接続用端子は、ロータリーコネクタなどにより構成されてもよい。
【0089】
また、上記第1実施形態では、切削用電動機23は、サーボモータである例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、切削用電動機は、インダクションモータまたはインバータモータなどであってもよい。
【0090】
また、上記第1および第2実施形態では、送り用電動機225および移動用電動機234は、サーボモータである例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、送り用電動機および移動用電動機は、インダクションモータまたはインバータモータなどであってもよい。
【0091】
また、上記第1および第2実施形態では、取付部6は、締結部材108が挿入される複数(4個)の締結孔63を有している例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、取付部は、締結部材が挿入される締結孔を1~3個または5個以上有している例を示したが、本発明はこれに限られない。
【符号の説明】
【0092】
2、202 工具保持自転機構
3、203 工具移動機構
4 回転部
5 回転接続用端子
6 取付部
10、210 ダイプレート面加工機
11 工具
12 切削用電線(第1電動機側電線)
13 取付部側電線
23 切削用電動機
31 移動ガイド部材(第1ガイド部材)
31a 一対のレール部
32 送りガイド部材(第2ガイド部材)
43 挿入孔
103 固定ダイプレート(一対のダイプレート)
103a 固定側金型取付面(金型取付面)
104 移動ダイプレート(一対のダイプレート)
104a 移動側金型取付面(金型取付面)
105 一対のタイバー
214 送り用電線(第2電動機側電線)
215 移動用電線(第3電動機側電線)
225 送り用電動機
234 移動用電動機
C3 回転中心軸線(回転軸線)
C1 回転中心軸線
M 間隔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14