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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-31
(45)【発行日】2024-08-08
(54)【発明の名称】CAE解析方法およびCAE解析装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/13 20200101AFI20240801BHJP
   G06F 30/20 20200101ALI20240801BHJP
【FI】
G06F30/13
G06F30/20
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020100303
(22)【出願日】2020-06-09
(65)【公開番号】P2021196650
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-04-04
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】安部 則弘
(72)【発明者】
【氏名】高橋 弥生
【審査官】合田 幸裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-168838(JP,A)
【文献】国際公開第2017/043571(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第107045567(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106096078(CN,A)
【文献】吉川弘道 ほか,数値シミュレーションで考える構造解析 -ソフトで学ぶ非線形解析と応答解析-,第1版,日本,株式会社建通新聞社,2009年11月18日,pages 172-173
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/10 - 30/28
IEEE Xplore
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建具のフレーム部材に、前記フレーム部材と等価な曲げ剛性およびねじり剛性を有する板要素を適用してモデル化するモデル化工程と、
前記モデル化された建具のフレーム部材の強度解析を行う解析工程と、を有し、
前記モデル化工程は、
前記板要素を、前記板要素の短手方向の見付け幅が、前記フレーム部材の短手方向の見付け幅と等しい直方体状の板とし、さらに前記板の板厚を定義する形状定義過程を有するCAE解析方法。
【請求項2】
前記モデル化工程はさらに
前記見付け幅と前記板厚から、前記板要素の断面2次モーメントおよびねじり定数を算出する第1算出過程と、
曲げ剛性をヤング率と断面2次モーメントの積で、ねじり剛性を横弾性係数とねじり定数の積で表し、前記フレーム部材と前記板要素について、曲げ剛性およびねじり剛性をそれぞれ等置して方程式を立式する等置立式過程と、
前記第1算出過程で算出された前記板要素の断面2次モーメントおよびねじり定数と前記方程式から、前記板要素のヤング率と横弾性係数を算出する第2算出過程と、
前記第2算出過程で算出されたヤング率と横弾性係数を板要素の材料物性として適用することで、板要素の曲げ剛性およびねじり剛性を定義する剛性定義過程と、を有する、請求項1に記載のCAE解析方法。
【請求項3】
前記解析工程は、
モデル化された前記板要素の曲げ応力をモデル化前の前記フレーム部材の断面係数で除することで、前記フレーム部材の曲げ応力を算出する曲げ応力換算過程を有する、請求項1または2に記載のCAE解析方法。
【請求項4】
建具のフレーム部材に、前記フレーム部材と等価な曲げ剛性およびねじり剛性を有する板要素を適用してモデル化するモデル適用部と、
前記モデル化された建具のフレーム部材の強度解析を行う解析部と、を有し、
前記モデル適用部は、
前記板要素を、前記板要素の短手方向の見付け幅が、前記フレーム部材の短手方向の見付け幅と等しい直方体状の板とし、さらに前記板の板厚を定義する形状定義部を有するCAE解析装置。
【請求項5】
前記モデル適用部はさらに
前記見付け幅と前記板厚に基づいて前記板要素のヤング率と横弾性係数を算出する算出部と、
前記算出部で算出されたヤング率と横弾性係数を前記板要素の材料物性として適用して、前記板要素の曲げ剛性およびねじり剛性を定義する剛性定義部と、を有する、請求項4に記載のCAE解析装置。
【請求項6】
前記解析部は、
モデル化された前記板要素の曲げ応力をモデル化前の前記フレーム部材の断面係数で除することで、前記フレーム部材の曲げ応力を算出する曲げ応力換算部を有する、請求項4または5に記載のCAE解析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、CAE解析方法およびCAE解析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、サッシ業界においてはサッシフレームの断熱化・スリム化が進められており、サッシ設計にコンピュータ支援による解析(以下、CAE解析)が欠かせない技術となっている。強風・突風に対するサッシの耐風圧強度性能をCAE解析で評価するには、フレーム部材の曲げやねじれ挙動を再現し、サッシフレーム部材やガラスの変形と応力、固定部品の反力などを計算する技術が求められる。
【0003】
サッシフレーム部材や金物部品を精細にモデル化した立体要素による3次元モデルを作成してもよいが、サッシ全体の精細な3次元モデルを作成した場合にはモデリング作業や計算時間に多大な工数を要する。
【0004】
特許文献1には、複数の部材間の溶接部についてシェル要素、ソリッド要素およびビーム要素を用いてモデル化するCAE解析手法が開示されている。これにより、部材間の溶接部についてモーメントの伝達を表現することを可能としながら簡易に適切なモデル化を行うことができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-109021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の手法は、部材間の溶接部についてモーメントの伝達を表現しつつ簡易にモデル化を行うものであり、部材の曲げ剛性及びねじれ剛性に基づいて、部材自体に生じる曲げやねじれ挙動を再現するものではない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、建具のフレーム部材に、前記フレーム部材と等価な曲げ剛性およびねじり剛性を有する板要素を適用してモデル化するモデル化工程と、前記モデル化された建具のフレーム部材の強度解析を行う解析工程と、を有するCAE解析方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態の建具を示す斜視図である。
図2】本実施形態の建具の下框部材を示す斜視図である。
図3】下框部材を板要素でモデル化したものを示す図である。
図4】本実施形態の建具を板要素でモデル化したものを示す図である。
図5】耐風圧試験のシミュレーションを示す図である。
図6】本開示の解析方法を示すフローチャートである。
図7】本開示の解析装置の構成を示すブロック図である。
【0009】
(解析対象)
本開示のCAE解析方法は、例えば図1に示すような建具100に適用することができる。本実施形態の建具100は引き違い窓であり、例えば面材6および面材6を保持するサッシ部分の耐風圧強度性能の評価に用いることができる。本開示のCAE解析方法の適用先は、引き違い窓に限定されない。框などのフレーム部材のような細長形状の部材を有する建具であれば、本開示のCAE解析方法を適用できる。
【0010】
建具100は、枠体1と、上框2と、下框3と、縦框4と、召合せ框5と、面材6と、を有して構成される。上框2と、下框3と、縦框4と、召合せ框5は、面材6の四方を囲むように保持して引き違い窓の障子部分を構成し、枠体1は、引き違い窓の障子部分を枠内に保持する。枠体1や各框は、例えばアルミなどの金属や樹脂など、種々の材質で構成されるものを使用できる。面材6は、例えばガラスで構成される。
【0011】
本実施形態において解析対象としての建具100は、細長形状の各部材で構成されるフレーム部材と、フレーム部材に囲まれる面材6と、に分けられる。本開示の解析方法は、細長形状のフレーム部材を、前記フレーム部材と等価な曲げ剛性およびねじり剛性を有する板要素でモデル化するCAE解析方法である。
【0012】
本実施形態において建具100の細長形状の各部材とは、枠体1と、上框2と、下框3と、縦框4と、召合せ框5である。例えば下框3は図2に示すような細長形状の部材であり、その延びる方向に沿って、ガラス溝31、レール溝32、中間部33を有する。ガラス溝31は面材6の下端と対向する部分である。ガラス溝31は面材6の端部を挿入されて、面材6を保持する。レール溝32は枠体1の下部と対向する部分である。レール溝32は枠体1から上方に向けて延びるレールが挿入され、枠体1にスライド可能に取り付けられる。中間部33はガラス溝31およびレール溝32の中間に位置する部分であり、中空構造を有する。本実施形態においては、上框2と、下框3と、縦框4と、召合せ框5と、面材6についての解析を考える。
【0013】
(部材のモデル化)
建具100の各框は、いずれも板要素でモデル化することができる。各框は、曲げ剛性およびねじり剛性が等価な板要素でモデル化され、各部材の構造特性を再現する。例えば図3に示すように、下框3は、板要素3aでモデル化される。板要素3a見付け幅bは元の下框3の見付け幅に等しい。板厚tは見付け幅bに比例する値で定義される。例えば板厚tは、t=b/10で定義される。
【0014】
ガラス溝31やレール溝32、および中空構造を有する中間部33を有し、複雑な断面形状を呈する下框3は、曲げ剛性(E・I)とねじり剛性(G・J)が等価な1枚の板要素3aに単純化してモデル化することができる。以下にその手順を示す。
【0015】
実際の下框3の曲げ剛性とねじり剛性を、それぞれE・I、G・Jとする。ここで、EおよびGは、それぞれ下框3のヤング率および横弾性係数を表し、Iは当該部材の断面二次モーメント、Jはねじり定数を表す。EおよびGは下框3を構成する材料による固有の値である。IおよびJは下框3の形状等から算出することができる。
【0016】
一方、モデル化した板要素3aの曲げ剛性とねじり剛性をそれぞれE'・I'、G'・J'とする。ここで、E'およびG'は、モデル化した板要素3aのヤング率および横弾性係数を表し、I'はモデル化した板要素3aの断面二次モーメント、J'はねじり定数を表す。
【0017】
下框3の見付け幅bを用いて、板の肉厚tを例えばt=b/10と定義する。板における断面二次モーメントおよびねじり定数の定義と、板要素3aの形状変数bおよびtから、I'とG'はそれぞれ
I’=(b・t)/12=b/12000 …(1)
J’=(b・t)/3=b/3000 …(2)
で算定できる。
【0018】
モデル化前後で曲げ剛性およびねじり剛性が等しいとすれば、E・I=E'・I'、G・J=G’・J'である。したがって残る未知数E'およびG'はそれぞれ、(1)式、(2)式および既知の変数E、G、I、J、b、t(=b/10)を用いて、
E’=E・I/I'=12(E・I)/(b・t)=12000(E・I)/b
…(3)
G’=G・J/J'=3(G・J)/(b・t)=3000(G・J)/b
…(4)
で表される。
【0019】
上記算定式にて板要素3aのヤング率E’と横弾性係数G’を求め、これを板に置換された下框3の材料物性として定義すれば、曲げ剛性とねじり剛性が等価な板要素3aに置換された下框3のCAE解析モデルを作成することができる。
【0020】
図4に示すように、上框2、縦框4および召合せ框5についても同様にして、それぞれ板要素2a、4aおよび5aとしてモデル化することができる。板要素2a、4aおよび5aの見付け幅をb、bおよびbとし、板要素3aの見付け幅をbとする。各板要素について、板厚t=b/10の関係が成り立つものとする(iは2から5までの整数)。
【0021】
図5に示すように、建具100に板要素を適用したモデルには、板要素上にグリッドで示す複数の節面が定義される。この節面ごとに載荷される荷重の大きさや変位をコンピュータ解析することで、建具全体の強度性能を得ることができる。
【0022】
モデリングを板要素のような単純な要素で行い、当該板要素に元の部材の曲げ剛性及びねじり剛性を適用することで、部材の曲げやねじれなどの挙動を再現可能となっている。これにより、各框の変形による影響を加味しつつ、精細な3次元モデルの作成にかかる時間と工数を短縮し建具100の耐風圧強度性能を短時間で計算・確認することができる。
【0023】
一度モデル化した建具の部材を一部変更する場合には、変更した部材の断面性能値を適用して修正することで、新たな物体について簡単にモデル化することができる。すなわち、引き違い窓において框の断面形状や肉厚などを設計変更した場合には、作成済みの引き違い窓モデルについて変更した框の断面性能値を適用すれば、瞬時に新たなモデルに反映されるので、モデリング時間や工数が削減され好適である。
【0024】
本実施形態のCAE解析方法では、フレーム部材のたわみやねじれなどの変形量はCAE解析の計算結果をそのまま採用することができるが、曲げ応力の算定には以下の換算が必要となる。
【0025】
実際のフレーム部材の曲げ応力を求めるには、先ず、モデル化した板の曲げ応力σ'から、曲げモーメントM=b・t/6・σ'を求める。これを実際のフレーム部材の断面係数Zで除すれば、曲げ応力σ=M/Zが算定できる。これにより、フレーム部材の実機において、塑性変形リスクまたは許容応力に対する余裕度を考慮できるとともに、過剰品質を避けて経済設計を行うことができる。
【0026】
(解析装置)
本実施形態に係るCAE解析を実行する装置を、CAE解析装置20と称する。図7に示すようにCAE解析装置20は、CADデータ取得部21と、モデル適用部22と、解析部23と、を有して構成される。
【0027】
CADデータ取得部21は、予め用意された建具100の各部材の解析対象領域を表すCADデータを取得し、モデル化処理用のデータに変換する。モデル適用部22は、取得した建具100の解析領域を示すデータに基づき、図5に示すように当該解析領域に存在する各部材のモデルとして板要素を適用する。解析部23は、モデル化された建具100全体について解析を行う。
【0028】
モデル適用部22は、板要素の形状および寸法を定義して設定する形状定義部221と、板要素の見付け幅と板厚に基づいて、フレーム部材と曲げ剛性及びねじり剛性が等しくなる板要素のヤング率と横弾性係数を算出する算出部222と、算出部222で算出されたヤング率と横弾性係数を板要素の材料物性として適用することで板要素の曲げ剛性およびねじり剛性を定義する剛性定義部226と、を有する。
【0029】
算出部222は、板要素の見付け幅と板厚から板要素の断面2次モーメントおよびねじり定数を算出する第1演算部223と、フレーム部材と板要素について、曲げ剛性およびねじり剛性をそれぞれ等置して方程式を立式する等置立式部224と、前記方程式に基づいて板要素のヤング率と横弾性係数を算出する第2演算部225と、を有する。
【0030】
解析部23は、実際のフレーム部材の曲げ応力を換算する曲げ応力換算部24を有する。曲げ応力換算部24は、モデル化された板要素の曲げ応力σ'から求めた曲げモーメントMを実際のフレーム部材の断面係数Zで除することによって、実際のフレーム部材の曲げ応力σ=M/Zを換算する。
【0031】
(解析方法)
本開示のCAE解析方法は、細長形状のフレーム部材を有する建具の強度性能を解析する方法であって、モデル化工程と、解析工程と、を有する。
【0032】
モデル化工程は、板要素の形状および寸法を定義して設定する形状定義過程と、板要素の断面2次モーメントおよびねじり定数を算出する第1算出過程と、フレーム部材と板要素と、の曲げ剛性およびねじり剛性を等置して方程式を立式する等置立式過程と、板要素のヤング率と横弾性係数を算出する第2算出過程と、第2算出過程で算出されたヤング率と横弾性係数を板要素の材料物性として適用することで、板要素の曲げ剛性およびねじり剛性を定義する剛性定義過程と、を有する。解析工程は、フレーム部材の曲げ応力を算出する曲げ応力換算過程を有する。各工程および過程について、図6に示すフローチャートに沿って説明する。
【0033】
モデル化工程では、CADデータ取得部21が解析対象物体のCADデータを受け取ってモデル化処理用のデータに変換する(ステップS1)。次いで、取得したCADデータに基づいて、図7に示すように当該解析領域に存在する各部材のモデルとして板要素を適用する(ステップS2)。このとき、次の過程に従って板要素の寸法を定義するとともに、もとのフレーム部材と同じ曲げ剛性およびねじり剛性を適用する。
【0034】
形状定義過程では、形状定義部221が、フレーム部材を構成する框を、同じ見付け幅および長さを有する直方体状の板で置換し、さらに板厚を見付け幅に比例する値として仮定して定義する。
【0035】
第1算出過程では、第1演算部223が、形状定義過程で設定した板要素の寸法と、上記(1)式および(2)式に基づいて、前記板要素の見付け幅と板厚から、板要素の断面2次モーメントおよびねじり定数を算出する。この時点で、板要素のヤング率と横弾性係数は未知数である。
【0036】
等置立式過程では、等置立式部224が、フレーム部材および対応する板要素の、曲げ剛性をヤング率と断面2次モーメントの積で、ねじり剛性を横弾性係数とねじり定数の積で表す。これを用いて、フレーム部材と板要素について、曲げ剛性およびねじり剛性をそれぞれ等置して方程式(上記(3)および(4)式)を立式する。
【0037】
第2算出過程では、第2演算部225が、第1算出過程で算出された板要素の断面2次モーメントおよびねじり定数と前記方程式から、未知数であった板要素のヤング率と横弾性係数を算出する。
【0038】
剛性定義過程では、剛性定義部226が、算出された板要素のヤング率と横弾性係数をモデル化された板要素の材料物性として適用する。これにより、板要素にフレーム部材と等しい曲げ剛性およびねじり剛性が定義される。
【0039】
解析工程では、解析部23が、モデル化された建具100について風圧載荷時の荷重伝達を再現して解析を行い、結果を出力する(ステップS5)。図5に示す解析シミュレーション結果では、グリッドの色が明るくなるほど風圧載荷時のモデルの変位が大きいことを示している。
【0040】
フレーム部材の曲げ剛性およびねじり剛性をモデルに反映したことにより、曲げやねじれなどの挙動を再現した解析が可能になるとともに、解析モデルを簡易化して短時間で強度解析できる。また、部材変更の際には変更後の部材の断面性能値を反映させるだけで、瞬時に新たなモデルに反映される。これにより、実機試験の試験数を削減し、開発期間の短縮が期待できる。
【0041】
さらに解析工程は、実際のフレーム部材の曲げ応力を換算する曲げ応力換算過程を有する。曲げ応力換算過程では、モデル化された板要素の曲げ応力σ'から求めた曲げモーメントMを実際のフレーム部材の断面係数Zで除することによって、実際のフレーム部材の曲げ応力σ=M/Zを換算する(ステップS6)。
【0042】
本実施形態のCAE解析方法について説明した。本実施形態の解析方法によれば、以下の効果を奏する。
【0043】
本実施形態のCAE解析方法は、建具100のフレーム部材(上框2、下框3、縦框4、召合わせ框5)に、前記フレーム部材と等価な曲げ剛性およびねじり剛性を有する板要素を適用してモデル化するモデル化工程と、前記モデル化された建具のフレーム部材の強度解析を行う解析工程と、を有する。これにより、曲げやねじれなどの挙動を再現した解析が可能になるとともに、解析モデルを簡易化して短時間で強度解析できる。実機試験の試験数の削減や、開発期間の短縮が期待できる。
【0044】
前記モデル化工程は、前記板要素を、その見付け幅が前記フレーム部材の見付け幅と等しい直方体状の板とし、さらに前記板の板厚を定義する形状定義過程と、前記見付け幅と前記板厚から、前記板要素の断面2次モーメントおよびねじり定数を算出する第1算出過程と、曲げ剛性をヤング率と断面2次モーメントの積で、ねじり剛性を横弾性係数とねじり定数の積で表し、前記フレーム部材と前記板要素について、曲げ剛性およびねじり剛性をそれぞれ等置して方程式を立式する等置立式過程と、前記第1算出過程で算出された前記板要素の断面2次モーメントおよびねじり定数と前記方程式から、前記板要素のヤング率と横弾性係数を算出する第2算出過程と、前記第2算出過程で算出されたヤング率と横弾性係数を板要素の材料物性として適用することで、板要素の曲げ剛性およびねじり剛性を定義する剛性定義過程と、を有する。これにより、算出した曲げ剛性およびねじり剛性を板要素に反映することができる。
【0045】
前記解析工程は、モデル化された前記板要素の曲げ応力をモデル化前の前記フレーム部材の断面係数で除することで、前記フレーム部材の曲げ応力を算出する曲げ応力換算過程を有する。これにより、実際のフレーム部材の曲げ応力を算出することができる。
【0046】
本実施形態のCAE解析装置20は、建具100のフレーム部材に、前記フレーム部材と等価な曲げ剛性およびねじり剛性を有する板要素を適用してモデル化するモデル適用部22と、モデル化された建具100のフレーム部材の強度解析を行う解析部23と、を有する。これにより、曲げやねじれなどの挙動を再現した解析が可能になるとともに、解析モデルを簡易化して短時間で強度解析できる。実機試験の試験数の削減や、開発期間の短縮が期待できる。
【0047】
モデル適用部22は、前記板要素を、その見付け幅が前記フレーム部材の見付け幅と等しい直方体状の板とし、さらに前記板の板厚を定義する形状定義部221と、前記見付け幅と前記板厚に基づいて前記板要素のヤング率と横弾性係数を算出する算出部222と、算出部222で算出されたヤング率と横弾性係数を前記板要素の材料物性として適用して、前記板要素の曲げ剛性およびねじり剛性を定義する剛性定義部226と、を有する。これにより、算出した曲げ剛性およびねじり剛性を板要素に反映することができる。
【0048】
解析部23は、モデル化された前記板要素の曲げ応力をモデル化前の前記フレーム部材の断面係数で除することで、前記フレーム部材の曲げ応力を算出する曲げ応力換算部24を有する。これにより、実際のフレーム部材の曲げ応力を算出することができる。
【0049】
本開示のCAE解析方法およびCAE解析装置は、上記の実施形態に限定されない。例えば建具100以外にも、細長形状の部材を有する物体であれば、本開示のCAE解析方法を適用することができる。また、本開示のCAE解析方法を耐風圧強度以外の強度解析に適用してもよい。
【符号の説明】
【0050】
100…建具、1…枠体、2…上框、3…下框、31…ガラス溝、32…レール溝、33…中間部、4…縦框、5…召合せ框、6…面材、2a…モデル化後の上框、3a…モデル化後の下框、4a…モデル化後の縦框、5a…モデル化後の召合せ框、20…CAE解析装置、21…CADデータ取得部、22…モデル適用部、221…形状定義部、222…算出部、223…第1演算部、224…等置立式部、225…第2演算部、226…剛性定義部、23…解析部、24…曲げ応力換算部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7