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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-31
(45)【発行日】2024-08-08
(54)【発明の名称】樹脂製容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 1/02 20060101AFI20240801BHJP
【FI】
B65D1/02 250
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020116067
(22)【出願日】2020-07-06
(65)【公開番号】P2022013987
(43)【公開日】2022-01-19
【審査請求日】2023-04-25
(73)【特許権者】
【識別番号】596126465
【氏名又は名称】アサヒ飲料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 きみか
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 悠太
【審査官】森本 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-261127(JP,A)
【文献】実開平03-019820(JP,U)
【文献】実開平04-010010(JP,U)
【文献】特開2002-337880(JP,A)
【文献】特開2007-297058(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
350ml以下の容量の樹脂製容器であって、
飲料を充填可能な多角形筒形状の容器本体を備え、
前記容器本体は、内圧が上がったときに前記内圧を受けて変形により前記内圧を低減する陽圧パネルを備え、
前記陽圧パネルは、
前記容器本体の基本外形面と滑らかに連なるとともに前記基本外形面から容器内側に湾曲状に凹む第一くぼみ曲面と、
前記第一くぼみ曲面と滑らかに連なるとともに前記第一くぼみ曲面から更に容器内側に湾曲状に凹む第二くぼみ曲面と、を有し、
前記容器本体は、4つの側面を有する略四角筒形状の胴部を備え、
前記陽圧パネルは、前記4つの側面のそれぞれに1つだけ設けられ
前記第二くぼみ曲面を通る前記容器本体の縦断面形状において、前記第二くぼみ曲面の境界部を通り前記基本外形面から容器内側に向けて弧状をなす仮想曲線を設定したとき、
前記基本外形面を基準とした前記仮想曲線の最大深さは、1mm以上であり、
前記4つの側面に設けられた前記陽圧パネルの凹みの合計体積は、3ml以上18ml以下であり、
前記第二くぼみ曲面を通る前記胴部の横断面形状において、前記胴部の外周全長を100とし、前記胴部の外周における曲線の割合をXとしたとき、
90/100≦X≦100/100を満たす
樹脂製容器。
【請求項2】
前記樹脂製容器はプラスチックボトルである
請求項1に記載の樹脂製容器。
【請求項3】
前記陽圧パネルは、ラベルの装着位置に設けられている
請求項1または2に記載の樹脂製容器。
【請求項4】
前記第二くぼみ曲面は、前記側面に垂直な方向から見て略円形をなしている
請求項1からのいずれか一項に記載の樹脂製容器。
【請求項5】
前記樹脂製容器は、無菌常温充填用のプラスチックボトルである
請求項1からのいずれか一項に記載の樹脂製容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製容器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プラスチックボトル等の樹脂製容器においては、環境負荷低減及び低コスト化を目的として、樹脂量低減による軽量化が図られている。これに伴い、樹脂製容器には、温度変化に伴い変化する内圧による変形を抑制するために補強構造を付与することが一般的である。
例えば、特許文献1には、4つの側面を有する略四角筒形状の胴部を備えるプラスチックボトルが開示されている。胴部の各側面には、それぞれ胴部内方へ凹むパネル部が形成されている。パネル部は、側面に垂直な方向から見て矩形状をなしている。パネル部の周囲には、矩形状の稜線が立っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-31900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ボトル内圧の変化に伴ってパネル部が変形したときに稜線が浮き出ることにより、外観が損なわれる可能性がある。
【0005】
以上のような事情に鑑み、本発明は、陽圧吸収性能に優れるとともに外観を良好に維持することができる樹脂製容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る樹脂製容器は、350ml以下の容量の樹脂製容器であって、飲料を充填可能な多角形筒形状の容器本体を備え、前記容器本体は、内圧が上がったときに前記内圧を受けて変形により前記内圧を低減する陽圧パネルを備え、前記陽圧パネルは、前記容器本体の基本外形面と滑らかに連なるとともに前記基本外形面から容器内側に湾曲状に凹む第一くぼみ曲面と、前記第一くぼみ曲面と滑らかに連なるとともに前記第一くぼみ曲面から更に容器内側に湾曲状に凹む第二くぼみ曲面と、を有し、前記容器本体は、4つの側面を有する略四角筒形状の胴部を備え、前記陽圧パネルは、前記4つの側面のそれぞれに1つだけ設けられ、前記第二くぼみ曲面を通る前記容器本体の縦断面形状において、前記第二くぼみ曲面の境界部を通り前記基本外形面から容器内側に向けて弧状をなす仮想曲線を設定したとき、前記基本外形面を基準とした前記仮想曲線の最大深さは、1mm以上であり、前記4つの側面に設けられた前記陽圧パネルの凹みの合計体積は、3ml以上18ml以下であり、前記第二くぼみ曲面を通る前記胴部の横断面形状において、前記胴部の外周全長を100とし、前記胴部の外周における曲線の割合をXとしたとき、90/100≦X≦100/100を満たす
【0007】
この構成によれば、内圧が上がったときに陽圧パネルが内圧を受けて変形により内圧を低減する。陽圧パネルは、容器本体の基本外形面から容器内側に湾曲状に凹む第一くぼみ曲面と、第一くぼみ曲面から更に容器内側に湾曲状に凹む第二くぼみ曲面とを有することで、陽圧パネルが一つのくぼみ曲面のみを有する場合と比較して、内圧を効果的に低減することができるため、陽圧吸収性能に優れる。加えて、陽圧パネルの第一くぼみ曲面は容器本体の基本外形面と滑らかに連なり、第二くぼみ曲面は第一くぼみ曲面と滑らかに連なっていることで、陽圧パネルが変形した場合でも稜線が浮き出ることはないため、外観を良好に維持することができる。したがって、陽圧吸収性能に優れるとともに外観を良好に維持することができる。加えて、胴部の4つの側面のそれぞれの陽圧パネルによって陽圧を吸収することができるため、陽圧吸収性能に優れる。仮に、仮想曲線の最大深さが1mm未満であると、陽圧を十分に吸収することができない可能性があるとともに、陽圧パネルが変形したときに容器本体の外方へ突出し外観が損なわれる可能性がある。仮に、陽圧パネルの凹みの合計体積が3ml未満であると、陽圧を十分に吸収することができない可能性があるとともに、陽圧パネルが変形したときに容器本体の外方へ突出し外観が損なわれる可能性がある。他方、陽圧パネルの凹みの合計体積が18ml超過であると、樹脂製容器の成形時(例えば、ブロー成形時)に過延伸等による白化が生じ外観が損なわれる可能性がある。加えて、90/100>Xの場合と比較して、胴部における圧力の局所的な集中を抑制することができる。
【0008】
上記の樹脂製容器において、前記樹脂製容器はプラスチックボトルであってもよい。
一般的に、低容量になるほどプラスチックボトルの表面積が小さくなり、陽圧パネルの面積も小さくなるため、陽圧吸収性能が低下する傾向にある。この構成によれば、350ml以下の低容量のプラスチックボトルにおいて、陽圧吸収性能に優れるとともに外観を良好に維持することができるため、実益が大きい。
【0009】
上記の樹脂製容器において、前記陽圧パネルは、ラベルの装着位置に設けられていてもよい。
この構成によれば、陽圧パネルがラベルに隠されて外から見えにくいため、外観に及ぼす影響が少ない。加えて、陽圧パネルが変形した場合でも稜線がラベルに浮き出ることはないため、外観を良好に維持することができる。例えば、ラベルが容器本体に密着するシュリンクラベルの場合でも、稜線が浮き出ることはないため、外観を維持する上で好適である。
【0012】
上記の樹脂製容器において、前記第二くぼみ曲面は、前記側面に垂直な方向から見て略円形をなしていてもよい。
この構成によれば、第二くぼみ曲面が側面に垂直な方向から見て矩形状をなす場合と比較して、第二くぼみ曲面における圧力の局所的な集中を抑制することができる。
【0015】
上記の樹脂製容器において、前記樹脂製容器は、無菌常温充填用のプラスチックボトルであってもよい。
この構成によれば、無菌常温充填用のプラスチックボトルにおいて、陽圧吸収性能に優れるとともに外観を良好に維持することができる。例えば、プラスチックボトルに常温で飲料を充填する場合には、容器材料には耐熱性が要求されないとともに加温時の耐圧性も要求されないため、樹脂材料の選択の自由度が高まる。加えて、この場合には、容器肉厚を薄くして軽量化することができ、使用後の廃棄処理及び再生処理が容易となるため、地球環境にやさしい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、陽圧吸収性能に優れるとともに外観を良好に維持することができる樹脂製容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態に係る樹脂製容器の斜視図。
図2】実施形態に係る樹脂製容器の正面図。
図3図2のIII-III断面における外形図。
図4図2のIV-IV断面における外形図。
図5図4の一部拡大図であり、実施形態の陽圧パネルの作用説明図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。以下の説明においては、樹脂製容器の一例としてポリエチレン・テレフタレート(PET)製の飲料用ボトル(プラスチックボトル)を挙げて説明する。本実施形態の樹脂製容器は、飲料を完全無菌状態で空容器に常温で充填するいわゆるアセプティック充填用(無菌常温充填用)である。例えば、樹脂製容器の容量は、330ml以上350ml以下である。
【0019】
<容器全体>
図1に示すように、樹脂製容器1は、一方向に長手を有する有底筒状に形成されている。以下、樹脂製容器1の中心軸C1に沿う方向を「軸方向」、軸方向と直交する方向を「径方向」、中心軸C1の周りの方向を「周方向」とする。
樹脂製容器1は、口部2と、容器本体3と、を備える。以下、樹脂製容器1を単に「容器」ということがある。
【0020】
口部2は、軸方向に沿う筒状をなしている。口部2は、容器内に連通する開口5を有する。開口5は、軸方向に開口する円形状をなしている。開口5は、容器内の飲料を流出可能な大きさに形成されている。口部2には、容器内を密封するための不図示のキャップが装着される。
【0021】
容器本体3は、略四角筒形状をなしている。容器本体3は、飲料を充填可能な大きさに形成されている。容器本体3は、肩部7と、胴部8と、底部9と、を備える。
肩部7は、軸方向において口部2と胴部8との間に設けられている。肩部7は、口部2の開口5と胴部8内とを連通する筒状をなしている。肩部7の外周面は、容器外方に向けて弧状に湾曲している。
底部9は、軸方向において胴部8の肩部7側とは反対側の部分に設けられている。底部9の底面は、容器内側(軸方向内側)に向けて凹んでいる(図3参照)。
【0022】
胴部8は、軸方向において肩部7と底部9との間に設けられている。胴部8は、4つの側面10を有する略四角筒形状をなしている。4つの側面10は、それぞれ同一の形状を有する。各側面10は、軸方向に沿って延びている。胴部8の周方向に隣り合う側面10同士の間には、容器外方(径方向外方)に向けて弧状に湾曲する対角面11が設けられている。
【0023】
図2に示すように、胴部8には、ラベル30が装着されている。例えば、ラベル30は、熱を加えてボトルに密着させるいわゆるシュリンクラベルである。例えば、ラベル30は、胴部8の全周にわたって設けられている。なお、図3図5においてはラベル30の図示を省略している。
【0024】
図1に示すように、容器本体3は、環状の第一溝15と、波状の第二溝16と、を有する。
第一溝15は、胴部8の肩部7寄りの部位を容器内側(径方向内側)に凹んでいる。第一溝15は、胴部8の全周にわたって設けられている。第一溝15は、胴部8の周方向に沿って一様の高さ位置(図2の紙面上下方向位置)に形成されている。
【0025】
第二溝16は、胴部8の底部9寄りの部位を容器内側(径方向内側)に凹んでいる。第二溝16は、胴部8の全周にわたって設けられている。第二溝16は、胴部8の周方向に対して波打つように形成されている。第二溝16は、胴部8の側面10部位では軸方向において底部9側(図2の紙面下側)に向けて弧状に湾曲し、胴部8の対角面11部位では軸方向において底部9とは反対側(図2の紙面上側)に向けて弧状に湾曲している。
【0026】
<陽圧パネル>
容器本体3は、容器内の圧力(内圧)が外部の圧力(外気圧)よりも上がったときに内圧を受けて変形により内圧を低減する陽圧パネル20を備える。図3に示すように、陽圧パネル20は、ラベル30の装着位置に設けられている。言い換えるとは、陽圧パネル20は、ラベル30の裏(胴部8の径方向においてラベル30よりも内側)に設けられている。
【0027】
陽圧パネル20は、胴部8の4つの側面10のそれぞれに設けられている(図4参照)。図1に示すように、陽圧パネル20は、各側面10の長手方向(軸方向)に沿って設けられている。4つの側面10の陽圧パネル20は、それぞれ同じ形状を有している。なお、陽圧パネル20は、対角面11には設けられていない。
【0028】
陽圧パネル20は、容器本体3の基本外形面B(図4参照)から容器内側に向けてなだらかに凹んでいる。ここで、基本外形面Bは、容器本体3が陽圧パネル20を有しない場合の容器本体3(胴部8)の外形面を意味する。図4の断面視で、容器本体3における胴部8の基本外形面Bは、角丸を有する矩形状をなしている。陽圧パネル20には、稜線は立っていない。
【0029】
図4に示すように、陽圧パネル20は、容器本体3の基本外形面Bと滑らかに連なるとともに基本外形面Bから容器内側(径方向内側)に凹む第一くぼみ曲面21と、第一くぼみ曲面21と滑らかに連なるとともに第一くぼみ曲面21から更に容器内側(径方向内側)に凹む第二くぼみ曲面22と、を有する。
【0030】
第一くぼみ曲面21は、側面10に垂直な方向から見て(図2の正面視で)側面10の長手方向に沿う長円形状をなしている。図4の断面視で、第一くぼみ曲面21は、容器外方に向けて弧状をなすとともに対角面11と連続して湾曲している。
【0031】
第二くぼみ曲面22は、第一くぼみ曲面21の範囲内に設けられている。第二くぼみ曲面22は、図2の正面視で略円形をなしている。図4の断面視で、第二くぼみ曲面22は、容器内方に向けて弧状をなすとともに第一くぼみ曲面21と連続して湾曲している。第二くぼみ曲面22の曲率半径は、第二くぼみ曲面22の全周にわたって一様な大きさとなっている。
【0032】
図2に示すように、第二くぼみ曲面22は、側面10の長手方向に間隔をあけて複数(例えば、本実施形態では3つ)設けられている。3つの第二くぼみ曲面22は、それぞれ同一の形状を有する。3つの第二くぼみ曲面22は、第一くぼみ曲面21の範囲内において側面10の長手方向にそれぞれ同じ間隔をあけて配置されている。
【0033】
第一くぼみ曲面21は、第二くぼみ曲面22を囲む正面視円環状の環状部23を有する。環状部23は、3つの第二くぼみ曲面22のそれぞれの周囲に設けられている。環状部23の曲率半径は、環状部23の全周にわたって一様な大きさとなっている。
【0034】
第二くぼみ曲面22を通る容器本体3の縦断面形状(図3の断面形状)において、第二くぼみ曲面22の境界部24を通り容器内方に向けて弧状をなす仮想曲線Rを設定する。ここで、境界部24は、環状部23(図2参照)に隣接する部分に相当する。図3の断面視で、基本外形面Bを基準とした仮想曲線Rの最大深さL1は、1mm以上となっている。ここで、仮想曲線Rの最大深さL1は、3つのうち真ん中の第二くぼみ曲面22の中心線C2上における基本外形面Bからの仮想曲線Rの最大深さを意味する。なお、仮想曲線Rの最大深さL1は、1mm以上3mm以下であることがより好ましい。本実施形態では、仮想曲線Rの最大深さL1は、2mmとなっている。
【0035】
基本外形面Bを基準とした第二くぼみ曲面22の最大凹み寸法L2は、3mm以上となっている。ここで、第二くぼみ曲面22の最大凹み寸法L2は、第二くぼみ曲面22の中心線C2に平行な方向における基本外形面Bからの第二くぼみ曲面22の最大深さを意味する。言い換えると、第二くぼみ曲面22の最大凹み寸法L2は、図4の断面視で基本外形面Bと第二くぼみ曲面22の最内端(胴部8の径方向において最も内側の部位)との距離を意味する。なお、第二くぼみ曲面22の最大凹み寸法L2は、3mm以上5mm以下であることがより好ましい。本実施形態では、第二くぼみ曲面22の最大凹み寸法L2は、3mmとなっている。本実施形態では、3つの第二くぼみ曲面22の最大凹み寸法L2は、互いに同じとなっている(図3参照)。
【0036】
4つの側面10に設けられた陽圧パネル20の凹みの合計体積は、3ml以上18ml以下となっている。ここで、陽圧パネル20の凹みの合計体積は、4つの側面10に設けられた全ての陽圧パネル20(本実施形態では4個の陽圧パネル20)の凹みの合計体積を意味する。陽圧パネル20の凹みの合計体積には、第一くぼみ曲面21の凹み及び第二くぼみ曲面22の凹みの合計体積が含まれる。なお、4つの側面10に設けられた陽圧パネル20の凹みの合計体積は、3ml以上10ml以下であることがより好ましい。本実施形態では、4つの側面10に設けられた陽圧パネル20の凹みの合計体積は、5mlとなっている。
【0037】
第二くぼみ曲面22を通る胴部8の横断面形状(図4の断面形状)において、胴部8の外周全長を100とし、胴部8の外周における曲線の割合をXとする。ここで、胴部8の外周全長は、図4の断面視の胴部8の基本外形面Bの全長を意味する。
胴部8の外周における曲線の割合Xは、90/100≦X≦100/100を満たす。曲線の割合Xは、陽圧パネル20を含む胴部8の外周における曲線の割合を意味する。なお、胴部8の外周における曲線の割合Xは、95/100≦X≦100/100を満たすことがより好ましい。
【0038】
<陽圧パネルの作用>
陽圧パネル20は、容器内圧が上がったときに内圧を受けて変形により内圧を低減する。図5に示すように、陽圧パネル20は、容器内圧が上がったときに変形し容器外方(図5の矢印V方向)へ膨らむ(図5の破線参照)。図5において、変形前の陽圧パネル20を実線で示し、変形後の陽圧パネル20を破線で示す。変形後の陽圧パネル20(破線)は、容器外方へ胴部8の基本外形面Bよりも径方向内側に配置される。すなわち、変形後の陽圧パネル20は、容器外側へ突出しない。
なお、陽圧パネル20の変形時に第二くぼみ曲面21が図5の矢印W方向へ膨らむ場合は、陽圧パネル20の変形前後において第二くぼみ曲面22の形状はほとんど変わらない可能性がある。
【0039】
本実施形態では、変形前の陽圧パネル20に稜線は立っていないため、変形後の陽圧パネル20に稜線が浮き出ることはない。変形後の陽圧パネル20も、胴部8の基本外形面Bとなだらかに連なっている。陽圧パネル20の第一くぼみ曲面21及び第二くぼみ曲面22は、変形前後において互いに滑らかに連なっている。
【0040】
<飲料入りボトルの製造方法>
例えば、飲料入りボトルは、以下の手順で製造される。
まず、樹脂製容器1をブロー成形により作製する。
次に、樹脂製容器1を洗浄水により予備洗浄する。
次に、予備洗浄した樹脂製容器1に対し薬剤リンスによる殺菌処理を施す。例えば、殺菌薬剤としては、過酢酸系殺菌剤を用いる。
次に、殺菌処理を施した樹脂製容器1に対し滅菌水によるリンス(仕上げリンス)を行う。
次に、仕上げリンスを行った樹脂製容器1に対し常温による飲料の充填を行う。例えば、飲料は、殺菌した乳入りコーヒー飲料である。
【0041】
一方、キャップは、樹脂製容器1とは別工程により殺菌処理される。
例えば、キャップに対し、樹脂製容器1と同様の予備洗浄、薬剤リンス、仕上げリンスを順に行う。
次に、仕上げリンスを行ったキャップを、飲料が充填された樹脂製容器1に対し巻締により装着する。
次に、キャップが装着された樹脂製容器1に対しラベル30を装着する。
以上の工程により、飲料入りボトルが得られる。
【0042】
<作用効果>
以上のように、本実施形態の樹脂製容器1は、飲料を充填可能な略四角筒形状の容器本体3を備え、容器本体3は、内圧が上がったときに内圧を受けて変形により内圧を低減する陽圧パネル20を備え、陽圧パネル20は、容器本体3の基本外形面Bと滑らかに連なるとともに基本外形面Bから容器内側に湾曲状に凹む第一くぼみ曲面21と、第一くぼみ曲面21と滑らかに連なるとともに第一くぼみ曲面21から更に容器内側に湾曲状に凹む第二くぼみ曲面22と、を有する。
【0043】
この構成によれば、内圧が上がったときに陽圧パネル20が内圧を受けて変形により内圧を低減する。陽圧パネル20は、容器本体3の基本外形面Bから容器内側に湾曲状に凹む第一くぼみ曲面21と、第一くぼみ曲面21から更に容器内側に湾曲状に凹む第二くぼみ曲面22とを有することで、陽圧パネル20が一つのくぼみ曲面のみを有する場合と比較して、内圧を効果的に低減することができるため、陽圧吸収性能に優れる。加えて、陽圧パネル20の第一くぼみ曲面21は容器本体3の基本外形面Bと滑らかに連なり、第二くぼみ曲面22は第一くぼみ曲面21と滑らかに連なっていることで、陽圧パネル20が変形した場合でも稜線が浮き出ることはないため、外観を良好に維持することができる。したがって、陽圧吸収性能に優れるとともに外観を良好に維持することができる。
【0044】
樹脂製容器1は、350ml以下の容量のプラスチックボトルである。
一般的に、低容量になるほどプラスチックボトルの表面積が小さくなり、陽圧パネルの面積も小さくなるため、陽圧吸収性能が低下する傾向にある。この構成によれば、350ml以下の低容量のプラスチックボトルにおいて、陽圧吸収性能に優れるとともに外観を良好に維持することができるため、実益が大きい。
【0045】
陽圧パネル20は、ラベル30の装着位置に設けられている。
この構成によれば、陽圧パネル20がラベル30に隠されて外から見えにくいため、外観に及ぼす影響が少ない。加えて、陽圧パネル20が変形した場合でも稜線がラベル30に浮き出ることはないため、外観を良好に維持することができる。例えば、ラベル30が容器本体3に密着するシュリンクラベルの場合でも、稜線が浮き出ることはないため、外観を維持する上で好適である。
【0046】
基本外形面Bを基準とした仮想曲線Rの最大深さL1は、1mm以上である。
この構成によれば、陽圧吸収性能に優れるとともに外観を良好に維持することができる。仮に、仮想曲線Rの最大深さL1が1mm未満であると、陽圧を十分に吸収することができない可能性があるとともに、陽圧パネル20が変形したときに容器本体3の外方へ突出し外観が損なわれる可能性がある。
【0047】
容器本体3は、4つの側面10を有する略四角筒形状の胴部8を備え、陽圧パネル20は、4つの側面10のそれぞれに設けられている。
この構成によれば、胴部8の4つの側面10のそれぞれの陽圧パネル20によって陽圧を吸収することができるため、陽圧吸収性能に優れる。
【0048】
第二くぼみ曲面22は、側面10に垂直な方向から見て略円形をなしている。
この構成によれば、第二くぼみ曲面22が側面10に垂直な方向から見て矩形状をなす場合と比較して、第二くぼみ曲面22における圧力の局所的な集中を抑制することができる。
【0049】
4つの側面10に設けられた陽圧パネル20の凹みの合計体積は、3ml以上18ml以下である。
この構成によれば、陽圧吸収性能に優れるとともに外観を良好に維持することができる。仮に、陽圧パネル20の凹みの合計体積が3ml未満であると、陽圧を十分に吸収することができない可能性があるとともに、陽圧パネル20が変形したときに容器本体3の外方へ突出し外観が損なわれる可能性がある。他方、陽圧パネル20の凹みの合計体積が18ml超過であると、樹脂製容器1の成形時(例えば、ブロー成形時)に過延伸等による白化が生じ外観が損なわれる可能性がある。
【0050】
第二くぼみ曲面22を通る胴部8の横断面形状において、胴部8の外周全長を100とし、胴部8の外周における曲線の割合をXとしたとき、90/100≦X≦100/100を満たす。
この構成によれば、90/100>Xの場合と比較して、胴部8における圧力の局所的な集中を抑制することができる。
【0051】
樹脂製容器1は、無菌常温充填用のプラスチックボトルである。
この構成によれば、無菌常温充填用のプラスチックボトルにおいて、陽圧吸収性能に優れるとともに外観を良好に維持することができる。例えば、プラスチックボトルに常温で飲料を充填する場合には、容器材料には耐熱性が要求されないとともに加温時の耐圧性も要求されないため、樹脂材料の選択の自由度が高まる。加えて、この場合には、容器肉厚を薄くして軽量化することができ、使用後の廃棄処理及び再生処理が容易となるため、地球環境にやさしい。
【0052】
<変形例>
なお、上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、設計要求等に基づき種々変更可能である。
例えば、上記実施形態においては、容器本体3が略四角筒形状をなしている例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、容器本体3は、四角筒形状以外の多角形筒形状をなしていてもよい。例えば、容器本体3の形状は、要求仕様に応じて変更することができる。
【0053】
例えば、上記実施形態においては、陽圧パネル20が胴部8に設けられている例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、陽圧パネル20は、肩部7に設けられていてもよい。例えば、陽圧パネル20の設置位置は、要求仕様に応じて変更することができる。
【0054】
例えば、上記実施形態においては、樹脂製容器1が350ml以下の容量である例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、樹脂製容器1は、350mlを超える容量であってもよい。例えば、容器の容量は、要求仕様に応じて変更することができる。
【0055】
上記実施形態においては、陽圧パネル20がラベル30の装着位置に設けられている例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、陽圧パネル20は、ラベル30の装着されていない位置に設けられていてもよい。例えば、陽圧パネル20は、ラベル30を有しない容器に設けられていてもよい。
【0056】
上記実施形態においては、基本外形面Bを基準とした仮想曲線Rの最大深さL1が1mm以上である例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、仮想曲線Rの最大深さL1は、1mm未満であってもよい。例えば、仮想曲線Rの最大深さL1は、要求仕様に応じて変更することができる。
【0057】
上記実施形態においては、容器本体3が4つの側面10を有する略四角筒形状の胴部8を備える例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、容器本体3は、5つ以上の側面10を有する多角形筒形状の胴部8を備えていてもよい。例えば、容器本体3の態様は、要求仕様に応じて変更することができる。
【0058】
上記実施形態においては、陽圧パネル20が胴部8の4つの側面10のそれぞれに設けられている例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、陽圧パネル20は、胴部8の4つの側面10の少なくとも一つに設けられていてもよい。例えば、陽圧パネル20の設置数は、要求仕様に応じて変更することができる。
【0059】
上記実施形態においては、第二くぼみ曲面22が側面10に垂直な方向から見て略円形をなしている例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、第二くぼみ曲面22は、側面10に垂直な方向から見て矩形状をなしていてもよい。例えば、第二くぼみ曲面22の正面視形状は、要求仕様に応じて変更することができる。
【0060】
上記実施形態においては、4つの側面10に設けられた陽圧パネル20の凹みの合計体積が3ml以上18ml以下である例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、陽圧パネル20の凹みの合計体積は、3ml未満であってもよいし、18ml超過であってもよい。例えば、陽圧パネル20の凹みの合計体積は、要求仕様に応じて変更することができる。
【0061】
上記実施形態においては、胴部8の外周における曲線の割合Xが90/100≦X≦100/100を満たす例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、胴部8の外周における曲線の割合Xは、90/100>Xを満たしてもよい。例えば、胴部8の外周における曲線の割合Xは、要求仕様に応じて変更することができる。
【0062】
上記実施形態においては、樹脂製容器1が無菌常温充填用(アセプティック充填用)である例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、樹脂製容器1は、高温(70℃以上100℃以下)に加熱した飲料を空容器に充填するいわゆるホットパック充填用であってもよい。例えば、飲料の充填方式は、要求仕様に応じて変更することができる。
【0063】
上記実施形態においては、樹脂製容器1がPETボトルである例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、樹脂製容器1は、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等の熱可塑性樹脂を材料としたプラスチックボトルであってもよい。例えば、樹脂製容器1は、2層以上の多層成形ボトルであってもよい。例えば、樹脂製容器1は、熱可塑性樹脂同士をブレンドしたブレンドボトルであってもよい。例えば、樹脂製容器1の形成材料は、要求仕様に応じて変更することができる。
【0064】
上記実施形態においては、容器内に充填される飲料が殺菌した乳入りコーヒー飲料である例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、容器内に充填される飲料は、お茶系飲料であってもよい。例えば、容器内に充填される飲料は、要求仕様に応じて変更することができる。
【0065】
なお、上記において実施形態又はその変形例として記載した各構成要素は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜組み合わせることができるし、また、組み合わされた複数の構成要素のうち一部の構成要素を適宜用いないようにすることもできる。
【符号の説明】
【0066】
1…樹脂製容器、3…容器本体、8…胴部、10…側面、20…陽圧パネル、21…第一くぼみ曲面、22…第二くぼみ曲面、24…境界部、30…ラベル、B…基本外形面、L1…仮想曲線の最大深さ、R…仮想曲線
図1
図2
図3
図4
図5