(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-31
(45)【発行日】2024-08-08
(54)【発明の名称】電力変換装置及び電力変換制御装置
(51)【国際特許分類】
H02P 27/06 20060101AFI20240801BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20240801BHJP
【FI】
H02P27/06
H02M7/48 E
(21)【出願番号】P 2020116681
(22)【出願日】2020-07-06
【審査請求日】2023-05-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】柏▲ざき▼ 貴司
(72)【発明者】
【氏名】赤間 貞洋
(72)【発明者】
【氏名】塚本 康裕
(72)【発明者】
【氏名】岡田 浩幸
【審査官】谿花 正由輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-107045(JP,A)
【文献】特開2012-231556(JP,A)
【文献】特開2010-141958(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 27/06
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力を変換する電力変換装置(13)であって、
電源部(11)からの直流電力を交流電力に変換してモータ(12)に供給する電力変換部(30)と、
前記電源部から前記電力変換部に供給される直流電流を平滑化する平滑コンデンサ(21)と、
前記電源部と前記電力変換部との間に設けられた兼用抵抗(62,71a)と、
前記電源部と前記兼用抵抗との導通を遮断する電源スイッチ(22a,22b,22c)と、
前記平滑コンデンサと前記兼用抵抗との導通を遮断するコンデンサスイッチ(65,75)と、
前記電源部と前記平滑コンデンサとの導通を遮断する遮断スイッチ(22a,22b)として、前記電源部の低電位側と前記平滑コンデンサとの導通を遮断する低電位スイッチ(22b)と、
を備え、
前記兼用抵抗は、
前記コンデンサスイッチが遮断状態にある状況で前記平滑コンデンサの通電を管理する抵抗であって、前記電源スイッチが遮断状態にあり且つ前記コンデンサスイッチが導通状態にある状況で前記平滑コンデンサの放電を行う抵抗であ
り、
前記電源スイッチとして、前記兼用抵抗に直列に接続され、且つ前記低電位スイッチに並列に接続された低並列スイッチ(22c)が設けられており、
前記兼用抵抗と前記平滑コンデンサとは、前記電源部の高電位側と前記電力変換部とを接続している高電位側ライン(25)を介さずに接続線(66)により接続されており、
前記コンデンサスイッチは、前記接続線に設けられている、電力変換装置。
【請求項2】
前記兼用抵抗(62)は、
前記コンデンサスイッチ(65)が遮断状態にあることに加えて、前記遮断スイッチが遮断状態にあり且つ前記電源スイッチ(22c)が導通状態にある状況で、前記平滑コンデンサの電圧調整として前記平滑コンデンサのプリチャージを行うプリチャージ抵抗(62)である一方で、前記電源スイッチが遮断状態にあり且つ前記コンデンサスイッチが導通状態にあることに加えて、前記遮断スイッチが遮断状態にある状況で、前記平滑コンデンサの放電を行う抵抗である、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記遮断スイッチとして、前記電源部の高電位側と前記平滑コンデンサとの導通を遮断する高電位スイッチ(22a)が設けられており、
前記電源スイッチと
して、
前記兼用抵抗に直列に接続され、且つ前記高電位スイッチに並列に接続され
た高並列スイッチ(22c)が設けられている、請求項
1又は
2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記電源部と前記平滑コンデンサとの導通が遮断状態にある場合に、前記モータの回転数(Nm)に応じて前記コンデンサスイッチを導通状態にするスイッチ実行部(S106,S201,S202)を備えている、請求項1~
3のいずれかに記載の電力変換装置。
【請求項5】
電力を変換する電力変換装置(13)であって、
電源部(11)からの直流電力を交流電力に変換してモータ(12)に供給する電力変換部(30)と、
前記電源部から前記電力変換部に供給される直流電流を平滑化する平滑コンデンサ(21)と、
前記電源部と前記電力変換部との間に設けられた兼用抵抗(62,71a)と、
前記電源部と前記兼用抵抗との導通を遮断する電源スイッチ(22a,22b,22c)と、
前記平滑コンデンサと前記兼用抵抗との導通を遮断するコンデンサスイッチ(65,75)と、
前記兼用抵抗は、
前記コンデンサスイッチが遮断状態にある状況で前記平滑コンデンサの通電を管理する抵抗であって、前記電源スイッチが遮断状態にあり且つ前記コンデンサスイッチが導通状態にある状況で前記平滑コンデンサの放電を行う抵抗であ
り、
さらに、
前記兼用抵抗である第1兼用抵抗(62)と、
前記コンデンサスイッチとして、前記平滑コンデンサと前記第1兼用抵抗との導通を遮断する第1コンデンサスイッチ(65)と、
前記電源スイッチとして、前記電源部と前記第1兼用抵抗との導通を遮断する第1電源スイッチ(22c)と、
前記兼用抵抗であり前記第1兼用抵抗とは異なる第2兼用抵抗(71a)と、
前記コンデンサスイッチとして、前記平滑コンデンサと前記第2兼用抵抗との導通を遮断する第2コンデンサスイッチ(75)と、
前記電源スイッチとして、前記電源部と前記第2兼用抵抗との導通を遮断する第2電源スイッチ(22a,22b)と、
前記電源部と前記平滑コンデンサとの導通を遮断する遮断スイッチ(22a,22b)と、
前記平滑コンデンサに並列に接続され、前記第2電源スイッチ及び前記第2コンデンサスイッチがいずれも遮断状態にある状況で、前記平滑コンデンサの放電を行う放電抵抗(71)と、
を備え、
前記第1兼用抵抗は、
前記第1コンデンサスイッチが遮断状態にあることに加えて、前記遮断スイッチが遮断状態にあり且つ前記第1電源スイッチが導通状態にある状況で、前記平滑コンデンサの電圧調整として前記平滑コンデンサのプリチャージを行うプリチャージ抵抗であり、
前記放電抵抗は、第1抵抗体(71a)と、前記第1抵抗体に直列に接続された第2抵抗体(71b,71c)と、を有しており、
前記第2コンデンサスイッチは、前記第1抵抗体と前記第2抵抗体との間に接続されており、
前記第1抵抗体と前記第2コンデンサスイッチとは、互いに直列に接続された状態で前記平滑コンデンサに並列に接続されており、
前記第2兼用抵抗は前記第1抵抗体である、電力変換装置。
【請求項6】
前記電源部と前記平滑コンデンサとの導通が遮断状態にある場合に、前記モータの回転数(Nm)に応じて前記第1コンデンサスイッチ及び前記第2コンデンサスイッチの少なくとも一方を導通状態にするスイッチ実行部(S201,S202)を備えている、請求項
5に記載の電力変換装置。
【請求項7】
電源部(11)からの直流電力を交流電力に変換してモータ(12)に供給する電力変換部(30)と、
前記電源部から前記電力変換部に供給される直流電流を平滑化する平滑コンデンサ(21)と、
前記電源部と前記電力変換部との間に設けられた兼用抵抗(62,71a)と、
前記電源部と前記兼用抵抗との導通を遮断する電源スイッチ(22a,22b,22c)と、
前記平滑コンデンサと前記兼用抵抗との導通を遮断するコンデンサスイッチ(65,75)と、
前記電源部と前記平滑コンデンサとの導通を遮断する遮断スイッチ(22a,22b)として、前記電源部の低電位側と前記平滑コンデンサとの導通を遮断する低電位スイッチ(22b)と、
を備え、
前記兼用抵抗は、
前記コンデンサスイッチが遮断状態にある状況で前記平滑コンデンサの通電を管理する抵抗であって、前記電源スイッチが遮断状態にあり且つ前記コンデンサスイッチが導通状態にある状況で前記平滑コンデンサの放電を行う抵抗であ
り、
前記電源スイッチとして、前記兼用抵抗に直列に接続され、且つ前記低電位スイッチに並列に接続された低並列スイッチ(22c)が設けられており、
前記兼用抵抗と前記平滑コンデンサとは、前記電源部の高電位側と前記電力変換部とを接続している高電位側ライン(25)を介さずに接続線(66)により接続されており、
前記コンデンサスイッチは、前記接続線に設けられている、電力変換装置(13)に適用される電力変換制御装置(40)であって、
前記電源部と前記平滑コンデンサとの導通が遮断された状態にあるか否かを判定する遮断判定部(S101)と、
前記遮断判定部により前記電源部と前記平滑コンデンサとの導通が遮断された状態にあると判定された場合に、前記コンデンサスイッチを導通状態にするスイッチ実行部(S106,S201,S202)と、を備えている電力変換制御装置。
【請求項8】
電源部(11)からの直流電力を交流電力に変換してモータ(12)に供給する電力変換部(30)と、
前記電源部から前記電力変換部に供給される直流電流を平滑化する平滑コンデンサ(21)と、
前記電源部と前記電力変換部との間に設けられた兼用抵抗(62,71a)と、
前記電源部と前記兼用抵抗との導通を遮断する電源スイッチ(22a,22b,22c)と、
前記平滑コンデンサと前記兼用抵抗との導通を遮断するコンデンサスイッチ(65,75)と、
を備え、
前記兼用抵抗は、
前記コンデンサスイッチが遮断状態にある状況で前記平滑コンデンサの通電を管理する抵抗であって、前記電源スイッチが遮断状態にあり且つ前記コンデンサスイッチが導通状態にある状況で前記平滑コンデンサの放電を行う抵抗であ
り、
さらに、
前記兼用抵抗である第1兼用抵抗(62)と、
前記コンデンサスイッチとして、前記平滑コンデンサと前記第1兼用抵抗との導通を遮断する第1コンデンサスイッチ(65)と、
前記電源スイッチとして、前記電源部と前記第1兼用抵抗との導通を遮断する第1電源スイッチ(22c)と、
前記兼用抵抗であり前記第1兼用抵抗とは異なる第2兼用抵抗(71a)と、
前記コンデンサスイッチとして、前記平滑コンデンサと前記第2兼用抵抗との導通を遮断する第2コンデンサスイッチ(75)と、
前記電源スイッチとして、前記電源部と前記第2兼用抵抗との導通を遮断する第2電源スイッチ(22a,22b)と、
前記電源部と前記平滑コンデンサとの導通を遮断する遮断スイッチ(22a,22b)と、
前記平滑コンデンサに並列に接続され、前記第2電源スイッチ及び前記第2コンデンサスイッチがいずれも遮断状態にある状況で、前記平滑コンデンサの放電を行う放電抵抗(71)と、
を備え、
前記第1兼用抵抗は、
前記第1コンデンサスイッチが遮断状態にあることに加えて、前記遮断スイッチが遮断状態にあり且つ前記第1電源スイッチが導通状態にある状況で、前記平滑コンデンサの電圧調整として前記平滑コンデンサのプリチャージを行うプリチャージ抵抗であり、
前記放電抵抗は、第1抵抗体(71a)と、前記第1抵抗体に直列に接続された第2抵抗体(71b,71c)と、を有しており、
前記第2コンデンサスイッチは、前記第1抵抗体と前記第2抵抗体との間に接続されており、
前記第1抵抗体と前記第2コンデンサスイッチとは、互いに直列に接続された状態で前記平滑コンデンサに並列に接続されており、
前記第2兼用抵抗は前記第1抵抗体である、電力変換装置(13)に適用される電力変換制御装置(40)であって、
前記電源部と前記平滑コンデンサとの導通が遮断された状態にあるか否かを判定する遮断判定部(S101)と、
前記遮断判定部により前記電源部と前記平滑コンデンサとの導通が遮断された状態にあると判定された場合に、前記コンデンサスイッチを導通状態にするスイッチ実行部(S106,S201,S202)と、を備えている電力変換制御装置。
【請求項9】
前記スイッチ実行部は、
前記平滑コンデンサの電圧であるコンデンサ電圧(Vc)があらかじめ定められたコンデンサ閾値(Vcx)以上である場合に、前記コンデンサスイッチを導通状態にする、請求項
8に記載の電力変換制御装置。
【請求項10】
前記スイッチ実行部は、
前記モータの回転数があらかじめ定められた回転閾値(Nb)以上である場合に、前記コンデンサスイッチを導通状態にする、請求項
8又は
9に記載の電力変換制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書における開示は、電力変換装置及び電力変換制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、直流電力を交流電力に変換して3相モータに供給するインバータと、このインバータの制御を行う電子制御ユニットと、が搭載された車両について開示されている。この車両においては、バッテリからインバータに供給される直流電流を平滑化する平滑コンデンサがインバータに対して設けられている。
【0003】
電子制御ユニットは、車両の衝突発生時に、バッテリを平滑コンデンサ等から電気的に切り離した上で、モータの逆起電力が平滑コンデンサに供給されないようにインバータを制御する。この制御として、各相の上アームトランジスタを全てオフし、且つ各相の下アームトランジスタを全てオンする、という処理(以下、アクティブショートサーキットという)が行われる。アクティブショートサーキットが行われることで、モータの逆起電力による電流が平滑コンデンサに流れず、平滑コンデンサの過電圧が生じるということが抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1では、アクティブショートサーキットが行われると、モータから平滑コンデンサへの逆起電力の供給が規制される一方で、下アームトランジスタには電流が流れることになる。このため、モータの逆起電力がある程度大きいと、下アームトランジスタ等に流れる電流が大きくなり、下アームトランジスタ等の発熱に伴ってインバータが発熱する、ということが懸念される。例えば、モータの高出力化を図る場合には、モータの逆起電力が増加してインバータが発熱しやすくなる。
【0006】
本開示の主な目的は、インバータの発熱を抑制しつつ平滑コンデンサの過電圧を抑制できる電力変換装置及び電力変換制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この明細書に開示された複数の態様は、それぞれの目的を達成するために、互いに異なる技術的手段を採用する。また、特許請求の範囲およびこの項に記載した括弧内の符号は、一つの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例であって、技術的範囲を限定するものではない。
【0008】
上記目的を達成するため、開示された態様は、
電力を変換する電力変換装置(13)であって、
電源部(11)からの直流電力を交流電力に変換してモータ(12)に供給する電力変換部(30)と、
電源部から電力変換部に供給される直流電流を平滑化する平滑コンデンサ(21)と、
電源部と電力変換部との間に設けられた兼用抵抗(62,71a)と、
電源部と兼用抵抗との導通を遮断する電源スイッチ(22a,22b,22c)と、
平滑コンデンサと兼用抵抗との導通を遮断するコンデンサスイッチ(65,75)と、
電源部と平滑コンデンサとの導通を遮断する遮断スイッチ(22a,22b)として、電源部の低電位側と平滑コンデンサとの導通を遮断する低電位スイッチ(22b)と、
を備え、
兼用抵抗は、
コンデンサスイッチが遮断状態にある状況で平滑コンデンサの通電を管理する抵抗であって、電源スイッチが遮断状態にあり且つコンデンサスイッチが導通状態にある状況で平滑コンデンサの放電を行う抵抗であり、
電源スイッチとして、兼用抵抗に直列に接続され、且つ低電位スイッチに並列に接続された低並列スイッチ(22c)が設けられており、
兼用抵抗と平滑コンデンサとは、電源部の高電位側と電力変換部とを接続している高電位側ライン(25)を介さずに接続線(66)により接続されており、
コンデンサスイッチは、接続線に設けられている、電力変換装置である。
開示された態様は、
電力を変換する電力変換装置(13)であって、
電源部(11)からの直流電力を交流電力に変換してモータ(12)に供給する電力変換部(30)と、
電源部から電力変換部に供給される直流電流を平滑化する平滑コンデンサ(21)と、
電源部と電力変換部との間に設けられた兼用抵抗(62,71a)と、
電源部と兼用抵抗との導通を遮断する電源スイッチ(22a,22b,22c)と、
平滑コンデンサと兼用抵抗との導通を遮断するコンデンサスイッチ(65,75)と、
兼用抵抗は、
コンデンサスイッチが遮断状態にある状況で平滑コンデンサの通電を管理する抵抗であって、電源スイッチが遮断状態にあり且つコンデンサスイッチが導通状態にある状況で平滑コンデンサの放電を行う抵抗であり、
さらに、
兼用抵抗である第1兼用抵抗(62)と、
コンデンサスイッチとして、平滑コンデンサと第1兼用抵抗との導通を遮断する第1コンデンサスイッチ(65)と、
電源スイッチとして、電源部と第1兼用抵抗との導通を遮断する第1電源スイッチ(22c)と、
兼用抵抗であり第1兼用抵抗とは異なる第2兼用抵抗(71a)と、
コンデンサスイッチとして、平滑コンデンサと第2兼用抵抗との導通を遮断する第2コンデンサスイッチ(75)と、
電源スイッチとして、電源部と第2兼用抵抗との導通を遮断する第2電源スイッチ(22a,22b)と、
電源部と平滑コンデンサとの導通を遮断する遮断スイッチ(22a,22b)と、
平滑コンデンサに並列に接続され、第2電源スイッチ及び第2コンデンサスイッチがいずれも遮断状態にある状況で、平滑コンデンサの放電を行う放電抵抗(71)と、
を備え、
第1兼用抵抗は、
第1コンデンサスイッチが遮断状態にあることに加えて、遮断スイッチが遮断状態にあり且つ第1電源スイッチが導通状態にある状況で、平滑コンデンサの電圧調整として平滑コンデンサのプリチャージを行うプリチャージ抵抗であり、
放電抵抗は、第1抵抗体(71a)と、第1抵抗体に直列に接続された第2抵抗体(71b,71c)と、を有しており、
第2コンデンサスイッチは、第1抵抗体と第2抵抗体との間に接続されており、
第1抵抗体と第2コンデンサスイッチとは、互いに直列に接続された状態で平滑コンデンサに並列に接続されており、
第2兼用抵抗は第1抵抗体である、電力変換装置である。
【0009】
上記電力変換装置によれば、電源スイッチが遮断状態にあり且つコンデンサスイッチが導通状態にある状況で、兼用抵抗により平滑コンデンサの放電が行われる。このため、電力変換部が平滑コンデンサの放電を行って発熱するということを抑制できる。したがって、電力変換部の発熱抑制と平滑コンデンサの過電圧抑制とを両立することができる。
【0010】
しかも、兼用抵抗は、コンデンサスイッチが導通状態にある状況で平滑コンデンサの放電に用いられることに加えて、コンデンサスイッチが遮断状態にある状況で平滑コンデンサの通電管理に用いられる。このように、平滑コンデンサの放電に用いるための専用抵抗を設ける必要がないため、専用抵抗を用いない分だけ部品コストを低減できる。
【0011】
以上により、インバータの発熱を抑制しつつ平滑コンデンサの過電圧を抑制できる。
【0012】
開示された態様は、
電源部(11)からの直流電力を交流電力に変換してモータ(12)に供給する電力変換部(30)と、
電源部から電力変換部に供給される直流電流を平滑化する平滑コンデンサ(21)と、
電源部と電力変換部との間に設けられた兼用抵抗(62,71a)と、
電源部と兼用抵抗との導通を遮断する電源スイッチ(22a,22b,22c)と、
平滑コンデンサと兼用抵抗との導通を遮断するコンデンサスイッチ(65,75)と、
電源部と平滑コンデンサとの導通を遮断する遮断スイッチ(22a,22b)として、電源部の低電位側と平滑コンデンサとの導通を遮断する低電位スイッチ(22b)と、
を備え、
兼用抵抗は、
コンデンサスイッチが遮断状態にある状況で平滑コンデンサの通電を管理する抵抗であって、電源スイッチが遮断状態にあり且つコンデンサスイッチが導通状態にある状況で平滑コンデンサの放電を行う抵抗であり、
電源スイッチとして、兼用抵抗に直列に接続され、且つ低電位スイッチに並列に接続された低並列スイッチ(22c)が設けられており、
兼用抵抗と平滑コンデンサとは、電源部の高電位側と電力変換部とを接続している高電位側ライン(25)を介さずに接続線(66)により接続されており、
コンデンサスイッチは、接続線に設けられている、電力変換装置(13)に適用される電力変換制御装置(40)であって、
電源部と平滑コンデンサとの導通が遮断された状態にあるか否かを判定する遮断判定部(S101)と、
遮断判定部により電源部と平滑コンデンサとの導通が遮断された状態にあると判定された場合に、コンデンサスイッチを導通状態にするスイッチ実行部(S106,S201,S202)と、を備えている電力変換制御装置である。
開示された態様は、
電源部(11)からの直流電力を交流電力に変換してモータ(12)に供給する電力変換部(30)と、
電源部から電力変換部に供給される直流電流を平滑化する平滑コンデンサ(21)と、
電源部と電力変換部との間に設けられた兼用抵抗(62,71a)と、
電源部と兼用抵抗との導通を遮断する電源スイッチ(22a,22b,22c)と、
平滑コンデンサと兼用抵抗との導通を遮断するコンデンサスイッチ(65,75)と、
を備え、
兼用抵抗は、
コンデンサスイッチが遮断状態にある状況で平滑コンデンサの通電を管理する抵抗であって、電源スイッチが遮断状態にあり且つコンデンサスイッチが導通状態にある状況で平滑コンデンサの放電を行う抵抗であり、
さらに、
兼用抵抗である第1兼用抵抗(62)と、
コンデンサスイッチとして、平滑コンデンサと第1兼用抵抗との導通を遮断する第1コンデンサスイッチ(65)と、
電源スイッチとして、電源部と第1兼用抵抗との導通を遮断する第1電源スイッチ(22c)と、
兼用抵抗であり第1兼用抵抗とは異なる第2兼用抵抗(71a)と、
コンデンサスイッチとして、平滑コンデンサと第2兼用抵抗との導通を遮断する第2コンデンサスイッチ(75)と、
電源スイッチとして、電源部と第2兼用抵抗との導通を遮断する第2電源スイッチ(22a,22b)と、
電源部と平滑コンデンサとの導通を遮断する遮断スイッチ(22a,22b)と、
平滑コンデンサに並列に接続され、第2電源スイッチ及び第2コンデンサスイッチがいずれも遮断状態にある状況で、平滑コンデンサの放電を行う放電抵抗(71)と、
を備え、
第1兼用抵抗は、
第1コンデンサスイッチが遮断状態にあることに加えて、遮断スイッチが遮断状態にあり且つ第1電源スイッチが導通状態にある状況で、平滑コンデンサの電圧調整として平滑コンデンサのプリチャージを行うプリチャージ抵抗であり、
放電抵抗は、第1抵抗体(71a)と、第1抵抗体に直列に接続された第2抵抗体(71b,71c)と、を有しており、
第2コンデンサスイッチは、第1抵抗体と第2抵抗体との間に接続されており、
第1抵抗体と第2コンデンサスイッチとは、互いに直列に接続された状態で平滑コンデンサに並列に接続されており、
第2兼用抵抗は第1抵抗体である、電力変換装置(13)に適用される電力変換制御装置(40)であって、
電源部と平滑コンデンサとの導通が遮断された状態にあるか否かを判定する遮断判定部(S101)と、
遮断判定部により電源部と平滑コンデンサとの導通が遮断された状態にあると判定された場合に、コンデンサスイッチを導通状態にするスイッチ実行部(S106,S201,S202)と、を備えている電力変換制御装置である。
【0013】
上記電力変換制御装置によれば、電源部と平滑コンデンサどの導通が遮断された状態にある場合、コンデンサスイッチが導通状態にされることで、兼用抵抗により平滑コンデンサの放電が行われる。したがって、上記電力変換装置と同様の効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1実施形態における駆動システムの構成を示す図。
【
図4】プリチャージ抵抗の抵抗値について適用範囲を示す図。
【
図6】第2実施形態における駆動システムの構成を示す図。
【
図7】第3実施形態における駆動システムの構成を示す図
【
図8】第4実施形態における駆動システムの構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、図面を参照しながら本開示を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。各実施形態で具体的に組み合わせが可能であることを明示している部分同士の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても実施形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0016】
<第1実施形態>
図1に示す駆動システム10は、例えば電気自動車(EV)やハイブリッド自動車(HV)、燃料電池車などの車両に搭載されている。駆動システム10は、バッテリ11、モータ12、電力変換装置13を有している。駆動システム10は、モータ12を駆動して車両の駆動輪を駆動するシステムである。
【0017】
バッテリ11は、充放電可能な2次電池で構成された直流電圧源であり、電力変換装置13を介してモータ12に電力を供給する電源部に相当する。二次電池は、たとえばリチウムイオン電池、ニッケル水素電池である。バッテリ11は、インバータ30に高電圧(たとえば数100V)を供給する。
【0018】
モータ12は、3相交流方式の回転電機である。モータ12は、3相としてU相、V相、W相を有している。モータ12は、車両の走行駆動源である電動機として機能する。モータ12は、回生時に発電機として機能する。モータ12は、界磁を形成する永久磁石と、電機子を形成する巻線12aとを有している。このモータ12では、永久磁石を含んで回転子が構成され、巻線12aを含んで固定子が構成されている。なお、モータ12をモータジェネレータや電動モータと称することもできる。
【0019】
電力変換装置13は、バッテリ11とモータ12との間で電力変換を行う。電力変換装置13は、平滑コンデンサ21、インバータ30、制御装置40を有している。
【0020】
平滑コンデンサ21は、バッテリ11から供給される直流電圧を平滑化する。平滑コンデンサ21は、高電位側の電力ラインであるPライン25と低電位側の電力ラインであるNライン26とに接続されている。Pライン25はバッテリ11の正極に接続され、Nライン26はバッテリ11の負極に接続されている。バッテリ11においては、正極が高電位側であり、負極が低電位側である。平滑コンデンサ21の正極は、バッテリ11とインバータ30との間において、Pライン25に接続されている。また、平滑コンデンサ21の負極は、バッテリ11とインバータ30との間において、Nライン26に接続されている。平滑コンデンサ21は、バッテリ11に並列に接続されている。電力変換装置13においては、Pライン25、Nライン26がバスバー等により形成されている。
【0021】
電力変換装置13において、平滑コンデンサ21とバッテリ11との間には開閉器22が設けられている。開閉器22は、バッテリ11と平滑コンデンサ21及びインバータ30との導通を遮断することが可能になっている。開閉器22は、Pスイッチ22a、Nスイッチ22b及びプリチャージスイッチ22cを有している。Pスイッチ22a、Nスイッチ22b及びプリチャージスイッチ22cは、いずれもスイッチやリレーなどにより形成されており、開状態と閉状態とに移行可能になっている。なお、Pスイッチ22a、Nスイッチ22b及びプリチャージスイッチ22cのそれぞれについては、開状態が遮断状態に相当し、閉状態が導通状態に相当する。
【0022】
Pスイッチ22aは、Pライン25に設けられており、バッテリ11の高電位側と平滑コンデンサ21との導通を遮断する高電位スイッチに相当する。Nスイッチ22bは、Nライン26に設けられており、バッテリ11の低電位側と平滑コンデンサ21との導通を遮断する低電位スイッチに相当する。Pスイッチ22a及びNスイッチ22bの両方が閉状態にある状況では、バッテリ11と平滑コンデンサ21とが互いに導通した状態になっている。Pスイッチ22a及びNスイッチ22bの少なくとも一方が開状態にある状況では、バッテリ11と平滑コンデンサ21との導通が遮断された状態になっている。プリチャージスイッチ22cについての説明は後述する。
【0023】
電力変換装置13には、バッテリ電圧センサ23及びコンデンサ電圧センサ24が設けられている。バッテリ電圧センサ23は、バッテリ11の電圧を検出するセンサであり、バッテリ11の電圧に応じた検出信号を制御装置40に対して出力する。バッテリ電圧センサ23は、バッテリ11と平滑コンデンサ21との間に設けられており、Pライン25及びNライン26のそれぞれに接続されている。コンデンサ電圧センサ24は、平滑コンデンサ21の電圧を検出するセンサであり、平滑コンデンサ21の電圧に応じた検出信号を制御装置40に対して出力する。コンデンサ電圧センサ24は、平滑コンデンサ21とインバータ30との間に設けられており、Pライン25及びNライン26のそれぞれに接続されている。
【0024】
インバータ30は、DC-AC変換回路である。インバータ30は、3相分の上下アーム回路31を備えて構成されている。上下アーム回路31は、レグと称されることがある。上下アーム回路31は、上アーム31aと、下アーム31bをそれぞれ有している。上アーム31aと下アーム31bは、上アーム31aをPライン25側として、Pライン25とNライン26との間で直列接続されている。上アーム31aと下アーム31bとの接続点は、モータ12における対応する相の巻線12aに出力ライン27を介して接続されている。上下アーム回路31及び出力ライン27は、モータ12のU相、V相、W相のそれぞれに対して設けられている。インバータ30は、上アーム31a及び下アーム31bを3つずつ有している。電力変換装置13においては、出力ライン27がバスバー等により形成されている。
【0025】
アーム31a,31bは、スイッチング素子であるnチャネル型のIGBT32と、還流用のダイオード33(以下、FWD33という)とをそれぞれ有している。FWD33は、IGBT32に逆並列に接続されている。上アーム31aにおいて、IGBT32のコレクタが、Pライン25に接続されている。下アーム31bにおいて、IGBT32のエミッタが、Nライン26に接続されている。そして、上アーム31aにおけるIGBT32のエミッタと、下アーム31bにおけるIGBT32のコレクタが相互に接続されている。FWD33のアノードは対応するIGBT32のエミッタに接続され、カソードはコレクタに接続されている。
【0026】
インバータ30は、図示しない半導体装置により構成される。半導体装置は、半導体モジュールと称されることがある。半導体装置は、複数の半導体素子を有している。半導体素子では、シリコン(Si)、シリコンよりもバンドギャップが広いワイドバンドギャップ半導体などを材料とする半導体基板に素子が形成されている。半導体素子は、素子が形成された半導体チップである。ワイドバンドギャップ半導体は、たとえばシリコンカーバイド(SiC)、窒化ガリウム(GaN)、酸化ガリウム(Ga2O3)、ダイヤモンドである。
【0027】
本実施形態において、1つの半導体素子に、1つのアームを構成するIGBT32およびFWD33が形成されている。すなわち、RC(Reverse Conducting)-IGBTが形成されている。半導体装置は、各アームを構成する6つの半導体素子を有している。
【0028】
インバータ30は、制御装置40によるスイッチング制御にしたがって直流電圧を交流電圧に変換し、モータ12へ出力する。これにより、モータ12は所定の回転トルクを発生するように動作する。すなわち、インバータ30は、バッテリ11からの直流電力を3相交流電力に変換し、電力変換部に相当する。インバータ30は、車両の回生制動時、駆動輪からの回転力を受けてモータ12が発電した交流電圧を、制御装置40によるスイッチング制御にしたがって直流電圧に変換し、Pライン25へ出力する。このように、インバータ30は、バッテリ11とモータ12との間で双方向の電力変換を行う。
【0029】
制御装置40は、例えばECUであり、インバータ30の駆動を制御する。ECUは、Electronic Control Unitの略称である。制御装置40は、例えばプロセッサ、メモリ、I/O、これらを接続するバスを備えるマイクロコンピュータ(以下、マイコン)を主体として構成される。制御装置40は、メモリに記憶された制御プログラムを実行することで、インバータ30の駆動に関する各種の処理を実行する。ここで言うところのメモリは、コンピュータによって読み取り可能なプログラム及びデータを非一時的に格納する非遷移的実体的記憶媒体(non-transitory tangible storage medium)である。また、非遷移的実体的記憶媒体は、半導体メモリ又は磁気ディスクなどによって実現される。
【0030】
制御装置40は、車両に搭載された統合ECUなどの上位ECUから入力される信号や、バッテリ電圧センサ23などの各種センサから入力される信号を用いて駆動指令を生成し、この駆動指令に応じてIGBT32にオン駆動やオフ駆動を行わせる。なお、制御装置40が電力変換制御装置に相当する。
【0031】
制御装置40には、各種センサとして、バッテリ電圧センサ23、コンデンサ電圧センサ24、電流センサ28、回転センサ29が電気的に接続されている。なお、これらセンサ23,24,28,29は駆動システム10に含まれている。これらセンサ23,24,28,29のうち電圧センサ23,24及び電流センサ28は電力変換装置13に含まれている。
【0032】
電流センサ28は、モータ12に流れる3相電流を検出する電流検出部である。電流センサ28は、3相の巻線12aのそれぞれに流れる電流に応じた検出信号を制御装置40に対して出力する。本実施形態の電流センサ28は、出力ライン27に対して設けられていることで巻線12aに対して設けられており、出力ライン27を流れる電流を検出することで巻線12aを流れる電流を検出する。電流センサ28は、巻線12aに流れる電流を所定のサンプリング周期で離散的にサンプリングしており、離散信号を検出信号として出力する。なお、巻線12aに流れる電流を電機子電流と称することもできる。
【0033】
回転センサ29は、モータ12に設けられており、モータ12の回転数を検出する回転検出部である。回転センサ29は、モータ12の回転数に応じた検出信号を制御装置40に対して出力する。回転センサ29は、例えばエンコーダやレゾルバなどを含んで構成されている。
【0034】
図2に示す制御装置40は、インバータ30を介してモータ12のベクトル制御を行う。ベクトル制御では、U相、V相、W相により示される3相交流座標を、d軸及びq軸により示されるdq座標に変換する。dq座標は、例えば回転子のS極からN極に向かう方向をd軸とし、このd軸に直交する方向をq軸として、これらd軸及びq軸によって定義される回転座標である。
【0035】
制御装置40は、機能ブロックとして、指令部41、3相2相変換部42、d軸減算部43、q軸減算部44、電流制御部45、2相3相変換部46を有している。これら機能ブロックは、少なくとも1つのIC等によりハードウェア的に構成されていてもよく、プロセッサによるソフトウェアの実行とハードウェアとの組み合わせにより実行されていてもよい。
【0036】
3相2相変換部42には、電流センサ28により検出されたU相電流Iu、V相電流Iv、W相電流Iwが入力される。これら相電流Iu,Iv,Iwは、モータ12において各相の巻線12aを実際に流れる電流の検出値である。なお、制御装置40は、電流センサ28の検出信号を用いて各相電流Iu,Iv,Iwを取得する電流取得部を有している。この電流取得部は3相2相変換部42に含まれていてもよい。
【0037】
3相2相変換部42には、回転センサ29により検出されたモータ回転数Nmが入力される。このモータ回転数Nmは、モータ12の実際の回転数を示す検出値である。モータ回転数Nmは、例えば単位時間当たりのモータ12の回転数であり、回転速度を示す値である。
【0038】
3相2相変換部42は、3相交流座標系のU相電流Iu、V相電流Iv及びW相電流Iwをdq座標に座標変換して、dq座標系のd軸電流Id及びq軸電流Iqを算出する。d軸電流Idはdq座標においてd軸方向の成分であり、q軸電流Iqはdq座標においてq軸方向の成分である。3相2相変換部42は、各相電流Iu,Iv,Iwに加えてモータ回転数Nmを用いてd軸電流Id及びq軸電流Iqを算出する。例えば、3相2相変換部42は、モータ回転数Nmを基準として、各相電流Iu,Iv,Iwをdq座標に変換してd軸電流Id及びq軸電流Iqを算出する。d軸電流Id及びq軸電流Iqはd軸減算部43に入力される。
【0039】
なお、3相2相変換部42が座標変換部に相当する。また、d軸電流Id及びq軸電流Iqを、検出値である各相電流Iu,Iv,Iwを座標変換した実電流であるとして実d軸電流や実q軸電流と称することもできる。さらに、d軸電流Idを界磁電流と称し、q軸電流Iqを駆動電流と称することもできる。
【0040】
指令部41は、d軸電流Id及びq軸電流Iqのそれぞれについて目標にするべき値をd軸電流指令値Id*及びq軸電流指令値Iq*として設定する。指令部41により設定された指令値Id*,Iq*は、d軸電流指令値Id*がd軸減算部43に入力され、q軸電流指令値Iq*がq軸減算部44に入力される。指令部41には、モータ12が発生するべき回転トルクとしてトルク指令値が上位ECUからの信号として入力される。指令部41は、バッテリ11からモータ12への電力供給が行われている場合などに、トルク指令値に応じて指令値Id*,Iq*を設定する。
【0041】
d軸減算部43は、d軸電流指令値Id*とd軸電流Idとの偏差をd軸電流偏差として算出する。q軸減算部44は、q軸電流指令値Iq*とq軸電流Iqとの偏差をq軸電流偏差として算出する。これらd軸電流偏差及びq軸電流偏差は電流制御部45に入力される。
【0042】
電流制御部45は、dq座標系について、d軸電流偏差及びq軸電流偏差がゼロになるようにd軸電圧指令値Vd*及びq軸電圧指令値Vq*を算出する。電流制御部45は、d軸電流Idがd軸電流指令値Id*に一致するように且つq軸電流Iqがq軸電流指令値Iq*に一致するようにフィードバック制御を行ってd軸電圧指令値Vd*及びq軸電圧指令値Vq*を算出する。電流制御部45は、フィードバック制御として例えばPI制御を行う。d軸電圧指令値Vd*及びq軸電圧指令値Vq*は2相3相変換部46に入力される。
【0043】
2相3相変換部46は、dq座標系のd軸電圧指令値Vd*及びq軸電圧指令値Vq*を3相交流座標に座標変換して、3相座標系のU相電圧指令値Vu*、V相電圧指令値Vv*及びW相電圧指令値Vw*を算出する。これら電圧指令値Vu*,Vv*,Vw*は、3相の巻線12aのそれぞれに出力するべき電圧値であり、駆動指令に含まれる情報である。これら電圧指令値Vu*,Vv*,Vw*を含む駆動指令がインバータ30に入力される。
【0044】
制御装置40は、機能ブロックとして、図示しないPWM信号生成部を有している。PWM信号発生部は、電圧指令値Vu*,Vv*,Vw*を用いて、IGBT32を駆動するためのPWM信号を生成する。制御装置40は、このPWM信号に応じてIGBT32にオン駆動やオフ駆動が行わせることで、電圧指令値Vu*,Vv*,Vw*に対応する電圧をU相、V相、W相のそれぞれの巻線12aに印加する。
【0045】
図1に示すように、電力変換装置13は、プリチャージ回路61を有している。プリチャージ回路61は、平滑コンデンサ21のプリチャージを行うプリチャージ部である。プリチャージ回路61がプリチャージを行うことで、平滑コンデンサ21に流れる突入電流が抑制される。プリチャージ回路61は、開閉器22のNスイッチ22bに並列になるようにNライン26に接続されている。プリチャージ回路61は、プリチャージ抵抗62と、開閉器22のプリチャージスイッチ22cとを有している。プリチャージ抵抗62とプリチャージスイッチ22cとは互いに直列に接続されている。プリチャージ回路61の一端は、Nライン26においてバッテリ11とNスイッチ22bとの間に接続されており、他端は、Nライン26においてNスイッチ22bと平滑コンデンサ21との間に接続されている。
【0046】
プリチャージスイッチ22cは、プリチャージ回路61においてプリチャージ抵抗62よりもバッテリ11側に設けられている。プリチャージスイッチ22cは、バッテリ11の低電位側とプリチャージ抵抗62及び平滑コンデンサ21との導通を遮断するスイッチである。プリチャージスイッチ22cが閉状態にある状況では、バッテリ11とプリチャージ抵抗62及び平滑コンデンサ21とを導通させることが可能になっている。プリチャージスイッチ22cが開状態にある状況では、バッテリ11とプリチャージ抵抗62及び平滑コンデンサ21との導通が遮断された状態になっている。プリチャージ抵抗62は抵抗素子を含んで構成されている。
【0047】
開閉器22においては、Pスイッチ22aとNスイッチ22bとプリチャージスイッチ22cとが互いに独立して開閉動作することが可能になっている。制御装置40は、スイッチ22a,22b,22cの開閉制御を行う。開閉器22には、スイッチ22a,22b,22cを開閉駆動させる駆動部が設けられている。制御装置40は、この駆動部の駆動制御を行うことで、スイッチ22a,22b,22cに開動作又は閉動作を行わせる。制御装置40は、例えばスイッチ22a,22b,22cがいずれも開状態にある場合に、Nスイッチ22bを開状態に保持する一方で、Pスイッチ22a及びプリチャージスイッチ22cを閉状態に切り替えることが可能になっている。
【0048】
開閉器22のスイッチ22a,22b,22cは、基本的に、イグニッションスイッチ等の車両スイッチがオフ状態である場合にいずれも開状態になっている。例えば、車両スイッチのオンに伴ってモータ12が駆動される場合に、プリチャージスイッチ22cが開状態のまま保持される一方で、Pスイッチ22a及びNスイッチ22bが閉状態に切り替えられることを想定する。この場合、バッテリ11からの給電開始に伴って平滑コンデンサ21に突入電流が流れることが懸念される。
【0049】
これに対して、制御装置40は、平滑コンデンサ21のプリチャージを行うプリチャージ処理を実行する。プリチャージ処理では、車両スイッチのオンに伴って、Nスイッチ22bを開状態のまま保持する一方で、Pスイッチ22a及びプリチャージスイッチ22cを閉動作させて閉状態に切り替える。この場合、バッテリ11からの給電に伴って流れる電流は、Nスイッチ22bではなくプリチャージ回路61を通る。プリチャージ回路61を流れる電流は、プリチャージ抵抗62により低減されることで、例えば電流がNスイッチ22bを流れる場合に比べて小さくなる。このように、平滑コンデンサ21に流れる突入電流が低減される。プリチャージ処理においては、プリチャージ抵抗62が平滑コンデンサ21の通電を管理することになる。このため、プリチャージ抵抗62が通電を管理する抵抗に相当する。
【0050】
制御装置40は、Pスイッチ22a及びプリチャージスイッチ22cを閉状態に切り替えてプリチャージ処理を開始した後、例えば1秒など所定時間が経過した場合に、プリチャージ処理を終了させる終了処理を行う。この終了処理では、Pスイッチ22aを閉状態に保持する一方で、プリチャージスイッチ22cを開状態に切り替え、且つNスイッチ22bを閉状態に切り替える。これにより、バッテリ11からインバータ30やモータ12に供給される電力がプリチャージ抵抗62の分だけ低下するということが回避される。
【0051】
駆動システム10では、車両走行時などにバッテリ11からの電力供給によりモータ12が駆動回転している状態で、開閉器22のオープン異常が発生した場合、バッテリ11からモータ12への給電が停止する。このように開閉器22のオープン異常が発生した場合、モータ12の逆起電力が回生電力としてインバータ30や平滑コンデンサ21に供給されることがある。この場合、回生電力によるインバータ30への印加電圧が過剰に大きくなることや、回生電力が平滑コンデンサ21に過剰に溜まって平滑コンデンサ21の過電圧が生じることなどが懸念される。本実施形態では、モータ12が駆動回転している状態で、開閉器22においてPスイッチ22a及びNスイッチ22bの少なくとも一方が意図せずに開状態になり且つこれら開状態が保持されていることをオープン異常と称する。なお、開閉器22のオープン異常としては、プリチャージスイッチ22cが開状態になっていることを想定している。
【0052】
これに対して、本実施形態では、開閉器22のオープン異常が発生した場合に、モータ12や平滑コンデンサ21から供給される電力をプリチャージ抵抗62にて消費することが可能になっている。
【0053】
本実施形態では、平滑コンデンサ21の過電圧を抑制するために、電力変換装置13がコンデンサスイッチ65を有している。コンデンサスイッチ65は、Pライン25とプリチャージ回路61とにかけ渡されている。コンデンサスイッチ65の一端は、平滑コンデンサ21とPスイッチ22aとの間においてPライン25に接続されていることで、平滑コンデンサ21のPライン25側に接続されている。コンデンサスイッチ65の他端は、プリチャージ回路61においてプリチャージスイッチ22cとプリチャージ抵抗62との間に接続されている。Pライン25とプリチャージ回路61とを接続する経路を接続線66と称すると、コンデンサスイッチ65はこの接続線66に設けられている。コンデンサスイッチ65とプリチャージ抵抗62とは、互いに直列に接続された状態で、平滑コンデンサ21に並列に接続されている。コンデンサスイッチ65とプリチャージスイッチ22cとは、プリチャージ抵抗62に対して互いに並列に接続された状態になっている。
【0054】
コンデンサスイッチ65は、スイッチやリレーなどにより形成されており、開状態と閉状態とに移行可能になっている。コンデンサスイッチ65については、開状態が遮断状態に相当し、閉状態が導通状態に相当する。制御装置40は、コンデンサスイッチ65の開閉制御を行う。コンデンサスイッチ65には、このコンデンサスイッチ65を開閉駆動させる駆動部が設けられている。制御装置40は、この駆動部の駆動制御を行うことで、コンデンサスイッチ65を開状態と閉状態とに切り替える。
【0055】
開閉器22のスイッチ22a,22b,22cがいずれも開状態にあり、且つコンデンサスイッチ65が閉状態にある状況では、プリチャージ抵抗62が平滑コンデンサ21に直列に接続された状態になっている。この状態では、平滑コンデンサ21に溜まっている電荷がプリチャージ抵抗62に向けて放出される。この場合、平滑コンデンサ21からの電力がプリチャージ抵抗62により消費され、平滑コンデンサ21の放電が行われる。
【0056】
制御装置40は、オープン異常が発生した場合に平滑コンデンサ21の放電を行うという放電制御処理を実行する。この放電制御処理について、
図3のフローチャートを参照しつつ説明する。なお、制御装置40は放電制御処理を所定周期で繰り返し実行する。
【0057】
図3において、ステップS101では、開閉器22のオープン異常が発生したか否かを判定する。ここでは、車両スイッチがオン状態であるにもかかわらずPスイッチ22a及びNスイッチ22bの少なくとも一方が開状態に移行したか否かの判定や、この開状態が保たれている継続時間が所定時間に達したか否かの判定などを行う。スイッチ22a,22bが開状態に移行したか否かの判定は、例えば、スイッチ22a,22bに設けられたセンサからの検出信号や上位ECUからの信号を用いて行う。なお、制御装置40におけるステップS101の処理を実行する機能が遮断判定部に相当する。
【0058】
開閉器22のオープン異常が発生していない場合、そのまま本放電制御処理を終了する。一方、開閉器22のオープン異常が発生した場合、ステップS102に進む。ステップS102では、コンデンサ電圧センサ24の検出信号を用いて平滑コンデンサ21の両端電圧をコンデンサ電圧Vcとして取得する。このコンデンサ電圧Vcは、平滑コンデンサ21の両端電圧を検出した検出値である。なお、制御装置40におけるステップS102の処理を実行する機能が電圧取得部に相当する。
【0059】
ステップS103では、コンデンサ電圧Vcがあらかじめ定められたコンデンサ閾値Vcx以上であるか否かを判定する。コンデンサ閾値Vcxは、例えば平滑コンデンサ21の最大許容電圧や定格電圧に応じて設定されている。コンデンサ閾値Vcxは、インバータ30への印加電圧の上限値よりも小さい値になっている。インバータ30への印加電圧の上限値は、例えばインバータ30の定格値や最大許容電圧に応じて設定されている。コンデンサ閾値Vcxは、試験やシミュレーション等により取得された情報であり、制御装置40においてメモリ等の記憶部に記憶されている。
【0060】
なお、インバータ30への印加電圧の上限値を耐電圧値と称することもできる。インバータ30の耐電圧値としては、インバータ30において最も耐電圧値の低い部品や機器の耐電圧値が設定されている。例えば、インバータ30において最も耐電圧値の低い部品がIGBT32であれば、IGBT32の定格値や最大許容電圧に応じて耐電圧値が定められ、この耐電圧値に応じてコンデンサ閾値Vcxが設定されている。
【0061】
コンデンサ電圧Vcがコンデンサ閾値Vcxに達していない場合、平滑コンデンサ21の過電圧が発生する可能性が低いとして、そのまま本放電制御処理を終了する。一方、コンデンサ電圧Vcがコンデンサ閾値Vcxに達した場合、平滑コンデンサ21の過電圧が発生する可能性があるとして、ステップS104に進む。ステップS104では、回転センサ29の検出信号を用いてモータ回転数Nmを取得する。制御装置40におけるステップS104の処理を実行する機能が回転取得部に相当する。
【0062】
ステップS105では、モータ回転数Nmがあらかじめ定められた回転閾値Nb以上であるか否かを判定する。回転閾値Nbは、試験やシミュレーション等により取得された情報であり、制御装置40の記憶部に記憶されている。モータ回転数Nmが回転閾値Nbに達していない場合、平滑コンデンサ21の過電圧が発生する可能性が低いとして、そのまま本放電制御処理を終了する。
【0063】
モータ12においては、モータ回転数Nmが大きいほど逆起電力が大きくなる。これに対して、モータ12の逆起電力による電圧を逆起電圧と称すると、ステップS105では、回転閾値Nbがモータ12の逆起電圧がインバータ30への印加電圧の上限値以下になる回転数に設定されている。また、回転閾値Nbは、モータ12の逆起電力によるコンデンサ電圧Vcの上昇が過剰にならない程度の回転数になっている。このため、ステップS105にてコンデンサ電圧Vcがコンデンサ閾値Vcx以上であると判断された場合でも、モータ回転数Nmが回転閾値Nbに達していなければ、平滑コンデンサ21の過電圧が生じにくくなっている。なお、上述したように、インバータ30の耐電圧値としては、インバータ30において最も耐電圧値の低い部品や機器の耐電圧値が設定されており、この耐電圧値に応じて回転閾値Nbが設定されている。
【0064】
モータ回転数Nmが回転閾値Nbに達した場合、ステップS106に進み、放電処理を実行する。放電処理では、指令信号を出力することでコンデンサスイッチ65を開状態から閉状態に切り替える。上述したように、本実施形態では、開閉器22のオープン異常が発生した場合に、プリチャージスイッチ22cが開状態になっていることを想定している。このため、コンデンサスイッチ65を開状態に切り替えると、平滑コンデンサ21からプリチャージ抵抗62に電力が供給される。この場合、平滑コンデンサ21の電力がプリチャージ抵抗62により消費されるため、平滑コンデンサ21の過電圧がプリチャージ抵抗62により抑制される。
【0065】
なお、制御装置40におけるステップS106の処理を実行する機能がスイッチ実行部に相当する。また、本実施形態では、プリチャージ抵抗62が兼用抵抗に相当し、プリチャージスイッチ22cが電源スイッチに相当し、Nスイッチ22bが遮断スイッチに相当する。さらに、プリチャージ抵抗62による平滑コンデンサ21の放電を異常時放電と称することができる。
【0066】
ステップS106にて放電処理を行った後は、再びステップS104,S105の処理を行う。そして、モータ回転数Nmが回転閾値Nbより小さくなるまでステップS106の放電処理を繰り返し行う。その後、モータ回転数Nmが回転閾値Nbより小さくなった場合、平滑コンデンサ21の過電圧が発生する可能性が低くなったとして、そのまま本放電制御処理を終了する。
【0067】
プリチャージ抵抗62の抵抗値は、コンデンサスイッチ65を介した平滑コンデンサ21の放電に適した値になっている。プリチャージ抵抗62の抵抗値が放電処理に適した値に設定されていることについて、
図4を参照しつつ説明する。ここでは、放電処理によりコンデンサスイッチ65が閉状態にされた場合について、プリチャージ抵抗62の抵抗値を放電抵抗値Rdと称し、プリチャージ抵抗62の電圧を放電抵抗電圧Vpと称し、プリチャージ抵抗62の温度を放電抵抗温度Tpと称する。また、プリチャージ抵抗62への印加電圧の上限値を上限電圧値Vdmaxと称し、プリチャージ抵抗62の温度の上限値を上限温度Tdmaxと称する。上限電圧値Vdmaxは、プリチャージ抵抗62の定格値や最大許容電圧などに応じて設定されている。上限温度Tdmaxは、プリチャージ抵抗62の保証温度や定格温度などに応じて設定されている。
【0068】
放電処理が行われた場合、放電抵抗値Rdに応じて、放電抵抗電圧Vd及び放電抵抗温度Tdが異なる値になる。そこで、電力変換装置13について、放電抵抗値Rdを異なる値に設定していった場合の放電抵抗電圧Vdの変化態様と放電抵抗温度Tdの変化態様とについて、試験やシミュレーションにより取得された結果を
図4に示す。
【0069】
図4に示すように、放電抵抗値Rdが大きいほど放電抵抗電圧Vdが大きい値になっている。ここでは、放電抵抗値Rdの増加に伴って放電抵抗電圧Vdが上限電圧値Vdmaxに達した時の放電抵抗値Rdを第2基準値DA2と称する。この場合、放電抵抗値Rdが第2基準値DA2以下である場合に放電抵抗電圧Vdが上限電圧値Vdmax以下になっている。
【0070】
放電抵抗温度Tdについては、放電抵抗値Rdが境界値Rxに達するまでは、放電抵抗値Rdが大きいほど放電抵抗温度Tdが高くなる。その一方で、放電抵抗値Rdが境界値Rxを超えると、放電抵抗値Rdが大きいほど放電抵抗温度Tdが低くなる。すなわち、放電抵抗温度Tdは、放電抵抗値Rdが境界値Rxにある場合に最も高くなっている。ここでは、放電抵抗値Rdについて、境界値Rxよりも大きく、且つ放電抵抗値Rdの減少に伴って放電抵抗温度Tdが上限温度Tdmaxに達した時の放電抵抗値Rdを第1基準値DA1と称する。この場合、放電抵抗値Rdが第1基準値DA1以上である場合に放電抵抗温度Tdが上限温度Tdmax以下になっている。
【0071】
放電抵抗値Rdについて、第1基準値DA1以上であり且つ第2基準値DA2以下である範囲を放電処理の適用範囲DAと称すると、プリチャージ抵抗62の抵抗値は、この適用範囲DAに含まれる値に設定されている。このため、プリチャージ抵抗62を流れる電流が平滑コンデンサ21の放電にとって大きすぎたり小さすぎたりするということが生じにくくなっている。
【0072】
プリチャージ抵抗62の抵抗値について、プリチャージが適正に行われる範囲をプリチャージ処理の適用範囲PAと称する。例えば、プリチャージ抵抗62の抵抗値が適用範囲PAの下限値PA1より小さい場合、平滑コンデンサ21のプリチャージが過剰に行われることが懸念される。また、プリチャージ抵抗62の抵抗値が適用範囲PAの上限値PA2より大きい場合、平滑コンデンサ21のプリチャージが不足することが懸念される。
【0073】
放電処理の適用範囲DAは、プリチャージ処理の適用範囲PAに含まれている。例えば、放電処理についての第1基準値DA1は、プリチャージ処理についての下限値PA1よりも大きい値に設定されている。また、放電処理についての第2基準値DA2は、プリチャージ処理についての上限値PA2よりも小さい値に設定されている。
【0074】
上述したように、プリチャージ抵抗62の抵抗値は、放電処理の適用範囲DAに含まれた値になっているため、プリチャージ処理の適用範囲PAにも含まれている。したがって、プリチャージ抵抗62の抵抗値は、放電処理及びプリチャージ処理の両方にとって過不足なく適正な値に設定されている。
【0075】
次に、開閉器22のオープン異常が発生した場合のコンデンサ電圧Vcの変化について、
図5を参照しつつ説明する。
【0076】
図5に示すタイミングt1は、モータ12が回転駆動している状態が保たれたまま開閉器22においてPスイッチ22a及びNスイッチ22bの少なくとも一方が閉状態から開状態に切り替わったタイミングである。タイミングt1では、モータ12から平滑コンデンサ21への回生電力の供給が開始されたことに伴って、コンデンサ電圧Vcが上昇し始める。
【0077】
図5では、Pスイッチ22a及びNスイッチ22bのうち開状態に切り替わったスイッチがタイミングt1の後も閉状態に復帰せず、制御装置40は、スイッチが閉状態に復帰しないことをオープン異常の発生として判断する。そして、制御装置40は、放電制御処理において、コンデンサ電圧Vcがコンデンサ閾値Vcx以上であり、且つモータ回転数Nmが回転閾値Nb以上である場合に、放電処理を実行する。そして、この放電処理によりコンデンサスイッチ65が閉状態に切り替えられたタイミングをタイミングt2と称すると、コンデンサ電圧Vcは、タイミングt2を過ぎてもある程度増加し続ける。その後、コンデンサ電圧Vcは、平滑コンデンサ21の電圧の上限値である電圧上限値Vcmaxあたりで減少し、電圧上限値Vcmaxよりも小さい値に保たれている。電圧上限値Vcmaxは、平滑コンデンサ21の最大許容電圧や定格電圧に応じて設定されており、例えばコンデンサ閾値Vcxよりも大きい値である。平滑コンデンサ21については、電圧上限値Vcmaxを耐電圧値と称することもできる。
【0078】
ここまで説明した本実施形態によれば、開閉器22のオープン異常が発生した場合などコンデンサスイッチ65が閉状態にある状況では、プリチャージ抵抗62により平滑コンデンサ21の放電が行われる。この場合、モータ12の逆起電力や平滑コンデンサ21に溜まった電力がプリチャージ抵抗62により消費されるため、これら電力がIGBT32等で消費されてインバータ30が発熱するということが生じにくくなっている。したがって、インバータ30の発熱を抑制すること、及び平滑コンデンサ21の過電圧を抑制することの両方を実現できる。
【0079】
しかも、開閉器22のオープン異常が発生していない場合などコンデンサスイッチ65が開状態にある状況では、プリチャージ抵抗62により平滑コンデンサ21のプリチャージが行われる。このように、プリチャージ抵抗62を平滑コンデンサ21についての放電とプリチャージとの両方に用いることができるため、放電とプリチャージとのそれぞれについて専用の抵抗素子を設ける必要がない。したがって、抵抗素子について部品コストを低減できる。
【0080】
ここで、開閉器22のオープン異常が発生した場合に、本実施形態とは異なり、例えばインバータ30についてアクティブショートサーキットが行われる構成を想定する。アクティブショートサーキットは、制御装置40が、上アーム31a及び下アーム31bのうち一方について3相全てのIGBT32をオン駆動し、他方について3相全てのIGBT32をオフ駆動することで実現される。アクティブショートサーキットが行われると、モータ12と平滑コンデンサ21とを電気的に接続する経路が遮断された状態になるため、モータ12の逆起電力が平滑コンデンサ21に供給されることが規制される。
【0081】
一方で、モータ12の逆起電力による電流が上アーム31aや下アーム31bのIGBT32を流れる。この場合、モータ12の高出力化が図られると、モータ12にて発生する界磁磁束である鎖交磁束が増加するため、アクティブショートサーキットが行われた状態ではIGBT32を流れる電流が鎖交磁束に比例して増加する。このため、IGBT32を流れる電流によりインバータ30において発生する熱が過剰に大きくなることが懸念される。この結果、インバータ30の冷却が発熱に追い付かなくなるという「熱成立しない状態」になってしまう。
【0082】
これに対して、本実施形態によれば、上述したように、モータ12の逆起電力がプリチャージ抵抗62により消費されるため、インバータ30での電力消費を抑制できる。したがって、インバータ30が「熱成立しない状態」になることを抑制できる。
【0083】
本実施形態によれば、プリチャージ回路61においてプリチャージスイッチ22cがバッテリ11の低電位側に接続されている。この構成では、プリチャージスイッチ22cは、プリチャージ回路61において低電位の経路を開閉すればよいため、プリチャージスイッチ22cについて動作精度や安全性を高めることができる。また、コンデンサスイッチ65がプリチャージスイッチ22cに直列に接続されているため、プリチャージスイッチ22cの動作精度や安全性を高めることで、コンデンサスイッチ65の動作精度や安全性を高めることができる。
【0084】
本実施形態によれば、開閉器22のオープン異常が発生し且つコンデンサ電圧Vcがコンデンサ閾値Vcx以上である場合に、平滑コンデンサ21の放電処理が行われる。このため、コンデンサ電圧Vcが適正な値であるにもかかわらず、コンデンサ電圧Vcを更に小さくするための処理を行うということを回避できる。これにより、制御装置40の処理負担を低減できる。
【0085】
本実施形態によれば、開閉器22のオープン異常が発生し且つモータ回転数Nmが回転閾値Nb以上になった場合に、平滑コンデンサ21の放電処理が行われる。このため、平滑コンデンサ21の過電圧が懸念されるほどにモータ回転数Nmが増加してモータ12の逆起電力が大きくなった場合を対象として、プリチャージ抵抗62により平滑コンデンサ21の放電を行うことができる。これにより、平滑コンデンサ21の電圧を適正に管理することができる。
【0086】
<第2実施形態>
上記第1実施形態では、プリチャージ回路61がNライン26に接続されていたが、第2実施形態では、プリチャージ回路61がPライン25に接続されている。本実施形態で特に説明しない構成、作用、効果については上記第1実施形態と同様である。本実施形態では、上記第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0087】
図6に示すように、プリチャージ回路61は、開閉器22のPスイッチ22aに
並列になるようにPライン25に接続されている。プリチャージ回路61の一端は、Pライン25においてバッテリ11とPスイッチ22aとの間に接続されており、他端は、Pライン25においてPスイッチ22aと平滑コンデンサ21との間に接続されている。
【0088】
本実施形態では、プリチャージ処理でのPスイッチ22aとNスイッチ22bとの開閉動作が上記第1実施形態とは逆になっている。具体的には、プリチャージ処理において、車両スイッチのオンに伴って、Pスイッチ22aを開状態のまま保持する一方で、Nスイッチ22b及びプリチャージスイッチ22cを閉状態に切り替える。この場合、バッテリ11からの給電に伴って流れる電流は、Pスイッチ22aではなくプリチャージ回路61を通る。プリチャージ回路61を流れる電流は、プリチャージ抵抗62により低減されることで、例えば電流がPスイッチ22aを流れる場合に比べて小さくなる。
【0089】
制御装置40は、Nスイッチ22b及びプリチャージスイッチ22cを閉状態に切り替えてプリチャージ処理を開始した後、所定時間が経過した場合に、プリチャージ処理を終了させる終了処理を行う。この終了処理では、Nスイッチ22bを閉状態に保持する一方で、プリチャージスイッチ22cを開状態に切り替え、且つPスイッチ22aを閉状態に切り替える。なお、本実施形態では、上記第1実施形態とは異なり、Pスイッチ22aが遮断スイッチに相当する。
【0090】
本実施形態では、プリチャージ回路61がPライン25に接続されていることに伴って、コンデンサスイッチ65がプリチャージ回路61とNライン26とにかけ渡されている。コンデンサスイッチ65において、プリチャージ回路61とは反対側の端部が、平滑コンデンサ21とNスイッチ22bとの間においてNライン26に接続されている。この場合、コンデンサスイッチ65が設けられた接続線66は、プリチャージ回路61とNライン26とを接続している。
【0091】
本実施形態によれば、コンデンサスイッチ65がNライン26に接続されている。この構成では、コンデンサスイッチ65が平滑コンデンサ21の低電位側に接続されているため、接続線66が電力変換装置13において低電位の経路になっている。このため、コンデンサスイッチ65が低電位の経路を開閉すればよいため、コンデンサスイッチ65について動作精度や安全性を高めることができる。
【0092】
<第3実施形態>
開閉器22のオープン異常が発生した場合に、上記第1実施形態では、プリチャージ抵抗62を用いて平滑コンデンサ21の放電が行われていたが、第3実施形態では、放電抵抗71の一部を用いて平滑コンデンサ21の放電が行われる。本実施形態で特に説明しない構成、作用、効果については上記第2実施形態と同様である。本実施形態では、上記第2実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0093】
図7に示すように、本実施形態の電力変換装置13には、上記第1実施形態と同様にプリチャージ回路61が設けられている一方で、上記第1実施形態とは異なりコンデンサスイッチ65が設けられていない。
【0094】
電力変換装置13は放電抵抗71を有している。放電抵抗71は、モータ12の駆動回転が停止した場合など駆動システム10が停止した状況で、平滑コンデンサ21の放電を行う抵抗である。放電抵抗71は、Pライン25とNライン26とにかけ渡された状態で平滑コンデンサ21に並列に接続されている。放電抵抗71の一端は、Nスイッチ22bと平滑コンデンサ21との間においてNライン26に接続されている。放電抵抗71の他端は、Pスイッチ22aと平滑コンデンサ21との間においてPライン25に接続されている。
【0095】
例えば、車両スイッチのオフに伴って開閉器22のスイッチ22a,22b,22cが閉状態に切り替えられた場合、バッテリ11からモータ12への給電が停止されることで駆動システム10が停止する。この場合、平滑コンデンサ21に溜まっていた電力が放電抵抗71にて消費されることで、放電抵抗71による平滑コンデンサ21の放電が行われる。本実施形態では、駆動システム10が停止した状況での放電抵抗71による平滑コンデンサ21の放電を停止時放電と称する。停止時放電においては、放電抵抗71が平滑コンデンサ21の通電を管理することになる。このため、放電抵抗71が通電を管理する抵抗に相当する。
【0096】
放電抵抗71は、平滑コンデンサ21の放電を行うために十分に大きな抵抗値を有している。放電抵抗71の抵抗値は例えば数百kΩである。このように放電抵抗71の抵抗値が十分に大きい値になっていることで、駆動システム10が駆動状態にある場合には放電抵抗71に流れる電流が十分に小さくなっている。これにより、放電抵抗71でのエネルギ損失が低減されている。
【0097】
本実施形態では、開閉器22のオープン異常が発生した場合に、モータ12や平滑コンデンサ21から供給される電力を放電抵抗71の一部にて消費することが可能になっている。すなわち、放電抵抗71の一部を用いて平滑コンデンサ21の放電を行うことが可能になっている。本実施形態では、この放電を異常時放電と称する。
【0098】
放電抵抗71は、第1抵抗71a、第2抵抗71b及び第3抵抗71cを有している。これら抵抗71a,71b,71cはいずれも抵抗素子を含んで構成されている。抵抗71a,71b,71cは、互いに直列に接続されていることで放電抵抗71を構成している。このため、抵抗71a,71b,71cの各抵抗値は、いずれも放電抵抗71の抵抗値よりも小さい値になっている。また、第1抵抗71aの抵抗値は、第2抵抗71bの抵抗値と第3抵抗71cの抵抗値との和である合成抵抗値よりも大きい値になっている。
【0099】
放電抵抗71においては、第1抵抗71aの一端が放電抵抗71の一端としてNライン26に接続されている。第3抵抗71cの一端は、放電抵抗71の他端としてPライン25に接続されている。第2抵抗71bは第1抵抗71aと第3抵抗71cとの間に設けられている。
【0100】
本実施形態では、開閉器22のオープン異常が発生した場合について平滑コンデンサ21の過電圧を抑制するために、電力変換装置13がコンデンサスイッチ75を有している。コンデンサスイッチ75は、Pライン25と放電抵抗71とにかけ渡されている。コンデンサスイッチ75の一端は、平滑コンデンサ21とPスイッチ22aとの間においてPライン25に接続されている。コンデンサスイッチ75の他端は、放電抵抗71において第1抵抗71aと第2抵抗71bとの間に接続されている。Pライン25と放電抵抗71とを接続する経路を接続線76と称すると、コンデンサスイッチ75はこの接続線76に設けられている。コンデンサスイッチ75と第1抵抗71aとは、互いに直列に接続された状態で、平滑コンデンサ21に並列に接続されている。コンデンサスイッチ75と第2抵抗71b及び第3抵抗71cとは、第1抵抗71aに対して互いに並列に接続された状態になっている。
【0101】
コンデンサスイッチ75は、上記第1実施形態のコンデンサスイッチ65と同様に、スイッチやリレーなどにより形成されており、開状態と閉状態とに移行可能になっている。コンデンサスイッチ75については、開状態が遮断状態に相当し、閉状態が導通状態に相当する。制御装置40は、コンデンサスイッチ75の開閉制御を行う。コンデンサスイッチ75には、このコンデンサスイッチ75を開閉駆動させる駆動部が設けられている。制御装置40は、この駆動部の駆動制御を行うことで、コンデンサスイッチ75を開状態と閉状態とに切り替える。
【0102】
開閉器22のスイッチ22a,22b,22cがいずれも開状態にあり、且つコンデンサスイッチ75が閉状態にある状況では、第1抵抗71aが第2抵抗71b及び第3抵抗71cを介さずに平滑コンデンサ21に直列に接続された状態になっている。この状態では、平滑コンデンサ21に溜まっている電荷が第1抵抗71aに向けて放出される。この場合、平滑コンデンサ21からの電力が第1抵抗71aにより消費され、平滑コンデンサ21の異常時放電が行われる。
【0103】
制御装置40は、上記第1実施形態と同様に放電制御処理を行う。ただし、制御装置40の制御対象は、上記第1実施形態とは異なり、コンデンサスイッチ75になっている。例えば、放電制御処理においてステップS107の放電処理では、制御装置40が指令信号を出力することでコンデンサスイッチ75を開状態から閉状態に切り替える。なお、本実施形態では、第1抵抗71aが第1抵抗体及び兼用抵抗に相当し、第2抵抗71b及び第3抵抗71cが第2抵抗体に相当する。
【0104】
第1抵抗71aの抵抗値は、上記第1実施形態のプリチャージ抵抗62の抵抗値と同様に、コンデンサスイッチ75を介した平滑コンデンサ21の異常時放電に適した値になっている。例えば、第1抵抗71aの抵抗値は、放電処理の適用範囲DA(
図4参照)に含まれる値に設定されている。このため、開閉器22のオープン異常が発生した場合に、第1抵抗71aを流れる電流が平滑コンデンサ21の異常時放電にとって大きすぎたり小さすぎたりするということが生じにくくなっている。
【0105】
本実施形態によれば、開閉器22のオープン異常が発生した場合などコンデンサスイッチ75が閉状態にある状況では、第1抵抗71aにより平滑コンデンサ21の異常時放電が行われる。この場合、モータ12の起電力や平滑コンデンサ21に溜まった電力が第1抵抗71aにより消費されるため、インバータ30の発熱を抑制すること、及び平滑コンデンサ21の過電圧を抑制することの両方を実現できる。
【0106】
しかも、開閉器22のオープン異常が発生していない場合などコンデンサスイッチ75が開状態にある状況では、第1抵抗71aを含む放電抵抗71により平滑コンデンサ21の通常放電が行われる。このように、第1抵抗71aを停止時放電と異常時放電との両方に用いることができるため、停止時放電と異常時放電とのそれぞれについて専用の抵抗素子を設ける必要がない。したがって、抵抗素子について部品コストを低減できる。
【0107】
本実施形態によれば、放電抵抗71において第1抵抗71aの抵抗値が第2抵抗71bと第3抵抗71cとの合成抵抗値よりも小さくなっている。この場合、第1抵抗71aの抵抗値を十分に小さい値に設定することが可能になるため、モータ12や平滑コンデンサ21からの電流が第1抵抗71aに流れ込みやすくなり、異常時放電を適正に実施できる。また、この場合、第2抵抗71bと第3抵抗71cとの合成抵抗値を十分に大きい値に設定することが可能になり、その結果、放電抵抗71の抵抗値を十分に大きい値に設定することが可能になる。このため、モータ12の駆動回転が行われている状況でバッテリ11からの電流が放電抵抗71に流れ込みにくくなり、放電抵抗71でのエネルギ損失を低減できる。
【0108】
本実施形態によれば、第1抵抗71aが平滑コンデンサ21の異常時放電を行う兼用抵抗になるように、コンデンサスイッチ75が平滑コンデンサ21のPライン25側に接続されている。この構成では、停止時放電と異常時放電とのいずれにおいても、第1抵抗71aと平滑コンデンサ21とがNライン26にて接続された状態を保持できる。このため、放電抵抗71及び平滑コンデンサ21について低電位側を適正に管理することができる。例えば、本実施形態とは異なり、コンデンサスイッチ75が平滑コンデンサ21のNライン26側に接続された構成では、停止時放電では第1抵抗71aがNライン26に接続される一方で、異常時放電では第2抵抗71bがNライン26に接続されてしまう。
【0109】
<第4実施形態>
第4実施形態では、電力変換装置13が、上記第1実施形態のコンデンサスイッチ65と上記第3実施形態のコンデンサスイッチ75との両方を有している。本実施形態で特に説明しない構成、作用、効果については上記第1実施形態及び第3実施形態と同様である。本実施形態では、上記第3実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0110】
図8に示すように、コンデンサスイッチ65におけるプリチャージ回路61とは反対側の端部と、コンデンサスイッチ75における放電抵抗71とは反対側の端部とが、いずれも平滑コンデンサ21のPライン25側に接続されている。本実施形態では、プリチャージ抵抗62を用いた異常時放電を第1放電と称し、コンデンサスイッチ65を第1コンデンサスイッチ65と称する。また、放電抵抗71の第1抵抗71aを用いた異常時放電を第2放電と称し、コンデンサスイッチ75を第2コンデンサスイッチ75と称する。
【0111】
なお、プリチャージ抵抗62が第1兼用抵抗に相当し、プリチャージスイッチ22cが第1電源スイッチに相当する。また、第1抵抗71aが第2兼用抵抗に相当し、Pスイッチ22a及びNスイッチ22bが第2電源スイッチに相当する。
【0112】
本実施形態では、プリチャージ抵抗62の抵抗値と第1抵抗71aの抵抗値とが異なる値になっている。例えば、プリチャージ抵抗62の抵抗値が第1抵抗71aの抵抗値よりも大きい値になっている。このため、プリチャージ抵抗62により第1放電が行われた場合と、第1抵抗71aにより第2放電が行われた場合とでは、平滑コンデンサ21の放電態様が異なる。また、プリチャージ抵抗62による第1放電と第1抵抗71aによる第2放電の両方が行われた場合と、これら第1放電及び第2放電のうち一方の放電だけが行われた場合とで歯、平滑コンデンサ21の放電態様が異なる。
【0113】
制御装置40は、第1コンデンサスイッチ65と第2コンデンサスイッチ75とを個別に開閉させることが可能になっている。制御装置40は、上記第1実施形態と同様の放電制御処理を、コンデンサスイッチ65,75を制御対象として行う。この放電制御処理について、
図9のフローチャートを参照しつつ説明する。
【0114】
図9において、ステップS101~S105では、上記第1実施形態のステップS101~S105と同じ処理を実行する。ステップ105において、モータ回転数Nmが回転閾値Nb以上であると判断された場合、ステップS201に進む。
【0115】
ステップS201では、プリチャージ抵抗62と第1抵抗71aとをどのような組み合わせで放電に用いるのか、を選択する選択処理を行う。この選択処理では、検出値としてのモータ回転数Nmを用いてプリチャージ抵抗62と第1抵抗71aとの組み合わせを選択する。例えば、平滑コンデンサ21の放電を行うための抵抗の抵抗値とモータ回転数Nmとの相関関係を示す相関マップ等の相関情報を用いて、モータ回転数Nmから放電に必要な抵抗値を取得する。そして、この抵抗値に応じて、プリチャージ抵抗62と第1抵抗71aとの組み合わせを選択する。なお、相関情報は、試験やシミュレーション等により取得された情報であり、制御装置40においてメモリ等の記憶部に記憶されている。
【0116】
ステップS202では、上記ステップS201にて選択された抵抗を用いて放電処理を実行する。この放電処理では、プリチャージ抵抗62と第1抵抗71aとの組み合わせに応じて指令信号を出力し、第1コンデンサスイッチ65及び第2コンデンサスイッチ75の少なくとも一方を開状態から閉状態に切り替える。制御装置40におけるステップS201,S202の各処理を実行する機能がスイッチ実行部に相当する。
【0117】
駆動システム10においては、コンデンサスイッチ65,75を介してプリチャージ抵抗62や第1抵抗71aをモータ12に電気的に接続した場合について、モータ12の状態や抵抗62,71aの状態がモータ回転数Nmに応じて異なる。モータ12の状態としては、モータ12による回生ブレーキ量が挙げられ、抵抗62,71aの状態としては、これら抵抗62,71aの発熱量が挙げられる。そこで、プリチャージ抵抗62と第1抵抗71aとの組み合わせをモータ回転数Nmに応じて選択することで、オープン異常が発生した場合に過度な回生ブレーキが生じにくくなり、ドライバビリティの悪化を抑制しつつ退避走行を行うことが可能になる。また、平滑コンデンサ21の放電に用いる抵抗の抵抗値が適正に選択されるため、抵抗の発熱を許容範囲に抑えることができるという「抵抗の熱成立」を達成できる。
【0118】
<他の実施形態>
この明細書の開示は、例示された実施形態に制限されない。開示は、例示された実施形態と、それらに基づく当業者による変形態様を包含する。例えば、開示は、実施形態において示された部品、要素の組み合わせに限定されず、種々変形して実施することが可能である。開示は、多様な組み合わせによって実施可能である。開示は、実施形態に追加可能な追加的な部分をもつことができる。開示は、実施形態の部品、要素が省略されたものを包含する。開示は、一つの実施形態と他の実施形態との間における部品、要素の置き換え、または組み合わせを包含する。開示される技術的範囲は、実施形態の記載に限定されない。開示される技術的範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内での全ての変更を含むものと解されるべきである。
【0119】
上記各実施形態において、開閉器22はPスイッチ22a及びNスイッチ22bのうち一方だけを有していてもよい。ただし、上記第1実施形態では、Pスイッチ22a及びNスイッチ22bのうち、プリチャージを行うために少なくともNスイッチ22bが設けられている必要がある。同様に、上記第2実施形態では、Pスイッチ22a及びNスイッチ22bのうち、プリチャージを行うために少なくともPスイッチ22aが設けられている必要がある。
【0120】
上記各実施形態において、プリチャージスイッチ22cはPスイッチ22a及びNスイッチ22bから独立して設けられていてもよい。
【0121】
上記各実施形態において、プリチャージ回路61は、Pライン25及びNライン26のそれぞれに設けられていてもよい。この場合、Pライン25に接続されたプリチャージ抵抗62と、Nライン26に接続されたプリチャージ抵抗62とのそれぞれに対してコンデンサスイッチ65が接続されていてもよい。この構成では、Pライン25側のプリチャージ抵抗62と、Nライン側のプリチャージ抵抗62とのそれぞれを用いて平滑コンデンサ21の異常時放電を行うことができる。
【0122】
上記第1、第2、第4実施形態において、制御装置40は、プリチャージスイッチ22cが開状態になっていることを条件として、コンデンサスイッチ65を開状態から閉状態に切り替えてもよい。これにより、プリチャージスイッチ22c及びコンデンサスイッチ65の両方が開状態になったことに起因して短絡等の異常が電力変換装置13にて発生する、ということを回避できる。
【0123】
上記第1~第3実施形態において、ステップS106の放電処理は、開閉器22のオープン異常が発生した場合であれば、コンデンサ電圧Vc及びモータ回転数Nmの少なくとも一方に関係なく行われてもよい。上記第4実施形態のステップS201の選択処理及びステップS202の放電処理についても同様である。
【0124】
上記第3、第4実施形態においては、コンデンサスイッチ75が第1抵抗71aと第2抵抗71bとの間に接続されているのではなく、第2抵抗71bと第3抵抗71cとの間に接続されていてもよい。すなわち、第1抵抗体の抵抗値が第2抵抗体の抵抗値より大きくてもよい。
【0125】
上記第3、第4実施形態では、コンデンサスイッチ75が平滑コンデンサ21のPライン25側ではなく、平滑コンデンサ21のNライン26側に接続されていてもよい。この場合、放電抵抗71においては、第1抵抗71aではなく、第2抵抗71b及び第3抵抗71cが平滑コンデンサ21の異常時放電を行う兼用抵抗に相当する。なお、上記第3実施形態においては、第1コンデンサスイッチ65がプリチャージ回路61に接続されていないのであれば、このプリチャージ回路61は設けられていなくてもよい。
【0126】
上記第4実施形態では、プリチャージ抵抗62の抵抗値と第1抵抗71aの抵抗値とが同じ値になっていてもよい。
【0127】
上記各実施形態では、バッテリ11と平滑コンデンサ21との導通が遮断された状態にある場合として、開閉器22が開状態にある場合の他に、バッテリ11と平滑コンデンサ21との間にてPライン25やNライン26の切断が生じた場合などが挙げられる。
【0128】
上記各実施形態において、コンデンサ閾値Vcxや回転閾値Nbは、インバータ30の耐電圧値に応じて設定されるのではなく、平滑コンデンサ21の耐電圧値や、駆動システム10の耐電圧値に応じて設定されていてもよい。平滑コンデンサ21や駆動システム10については、それぞれの定格値や最大許容電圧に応じて、これら平滑コンデンサ21や駆動システム10への印加電圧の上限値が耐電圧値として設定されている。例えば、駆動システム10において最も耐電圧の低い部品や機器の耐電圧値が駆動システム10の耐電圧値として設定されている。
【0129】
上記各実施形態において、制御装置40は、少なくとも1つのコンピュータを含む制御システムによって提供される。制御システムは、ハードウェアである少なくとも1つのプロセッサ(ハードウェアプロセッサ)を含む。ハードウェアプロセッサは、下記(i)、(ii)、又は(iii)により提供することができる。
【0130】
(i)ハードウェアプロセッサは、ハードウェア論理回路である場合がある。この場合、コンピュータは、プログラムされた多数の論理ユニット(ゲート回路)を含むデジタル回路によって提供される。デジタル回路は、プログラム及びデータの少なくとも一方を格納したメモリを備える場合がある。コンピュータは、アナログ回路によって提供される場合がある。コンピュータは、デジタル回路とアナログ回路との組み合わせによって提供される場合がある。
【0131】
(ii)ハードウェアプロセッサは、少なくとも1つのメモリに格納されたプログラムを実行する少なくとも1つのプロセッサコアである場合がある。この場合、コンピュータは、少なくとも1つのメモリと、少なくとも1つのプロセッサコアとによって提供される。プロセッサコアは、例えばCPUと称される。メモリは、記憶媒体とも称される。メモリは、プロセッサによって読み取り可能な「プログラム及びデータの少なくとも一方」を非一時的に格納する非遷移的かつ実体的な記憶媒体である。
【0132】
(iii)ハードウェアプロセッサは、上記(i)と上記(ii)との組み合わせである場合がある。(i)と(ii)とは、異なるチップの上、又は共通のチップの上に配置される。
【0133】
すなわち、制御装置40が提供する手段及び機能の少なくとも一方は、ハードウェアのみ、ソフトウェアのみ、又はそれらの組み合わせにより提供することができる。
【0134】
上記各実施形態において、インバータ30を構成するスイッチング素子は、IGBT32に限定されない。例えばMOSFETなどを用いてもよい。
【0135】
上記各実施形態では、モータ12において、界磁を形成する永久磁石を含んで固定子が構成されていてもよく、電機子を形成する巻線12aを含んで回転子が構成されていてもよい。また、モータ12は、複数相の交流モータであれば、3相の交流モータでなくてもよい。例えば、モータ12として、2相の交流モータや、4相以上の交流モータが用いられてもよい。
【0136】
上記各実施形態において、電力変換装置13が搭載された車両としては、乗用車やバス、建設作業車、農業機械車両などがある。また、車両は移動体の1つであり、電力変換装置13が搭載される移動体としては、車両の他に電車や飛行機などある。電力変換装置13としては、インバータ装置やコンバータ装置などがある。このコンバータ装置としては、交流入力直流出力の電源装置、直流入力直流出力の電源装置、交流入力交流出力の電源装置などがある。
【符号の説明】
【0137】
11…電源部としてのバッテリ、12…モータ、13…電力変換装置、21…平滑コンデンサ、22a…遮断スイッチ、高電位スイッチ、電源スイッチ及び第2電源スイッチとしてのPスイッチ、22b…遮断スイッチ、低電位スイッチ、電源スイッチ及び第2電源スイッチとしてのNスイッチ、22c…電源スイッチ及び第1電源スイッチとしてのプリチャージスイッチ、30…電力変換部としてのインバータ、40…電力変換制御装置としての制御装置、62…兼用抵抗及び第1兼用抵抗としてのプリチャージ抵抗、65…コンデンサスイッチとしての第1コンデンサスイッチ、71…放電抵抗、71a…兼用抵抗、第1抵抗体及び第2兼用抵抗としての第1抵抗、71b…第2抵抗体としての第2抵抗、71c…第2抵抗体としての第3抵抗、75…コンデンサスイッチとしての第2コンデンサスイッチ、Nb…回転閾値、Nm…回転数としてのモータ回転数、Vc…コンデンサ電圧、Vcx…閾値としてのコンデンサ閾値、S101…遮断判定部、S106,S201,S202…スイッチ実行部。