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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-31
(45)【発行日】2024-08-08
(54)【発明の名称】樹脂成形装置及び樹脂成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 43/36 20060101AFI20240801BHJP
   B29C 43/18 20060101ALI20240801BHJP
   H01L 21/56 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
B29C43/36
B29C43/18
H01L21/56 R
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020141384
(22)【出願日】2020-08-25
(65)【公開番号】P2022037315
(43)【公開日】2022-03-09
【審査請求日】2023-06-27
(73)【特許権者】
【識別番号】390002473
【氏名又は名称】TOWA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】安井 隼人
(72)【発明者】
【氏名】大西 洋平
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 仁
【審査官】田村 佳孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-037947(JP,A)
【文献】特開2009-124012(JP,A)
【文献】国際公開第2015/159743(WO,A1)
【文献】特開2004-153045(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 43/36
B29C 43/18
H01L 21/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一部材及び前記第一部材に対して相対的に移動可能な第二部材を備え、前記第一部材及び前記第二部材によってキャビティを形成する第一成形型と、
基板を保持することが可能な第二成形型と、
前記第一部材に対して相対的に移動不能となるように支持され、前記第一成形型と前記第二成形型とが型締めされた際に前記基板の一部に接すると共に、前記第二部材によって加圧された前記キャビティ内の樹脂材料が流通可能な流通部が形成されているマスク部材と、
を具備し、
前記第一部材は、前記キャビティを側方から囲む枠状に形成され、
前記マスク部材の外周部は、前記第一部材に載せられた状態で配置され、
前記マスク部材の外周部には、第一テーパ部が形成され、
前記マスク部材は、前記第一テーパ部と前記第一部材とが接するように配置される、
樹脂成形装置。
【請求項2】
前記流通部は、前記マスク部材の外周部に形成されている、
請求項1に記載の樹脂成形装置。
【請求項3】
前記第一部材には、前記第一テーパ部と対応する形状の第二テーパ部が形成され、
前記マスク部材は、前記第一テーパ部と前記第二テーパ部とが接するように配置される、
請求項1又は請求項2に記載の樹脂成形装置。
【請求項4】
前記流通部は、少なくとも、前記マスク部材の中心を挟んで互いに向かい合う2箇所に形成されている、
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の樹脂成形装置。
【請求項5】
前記流通部は、樹脂材料の流通方向に向かって樹脂材料の流通経路を絞るように形成されている、
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の樹脂成形装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の樹脂成形装置を用いて樹脂成形品を製造する樹脂成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形装置及び樹脂成形品の製造方法の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、基板の一部(接続電極部等)を露出させて樹脂成形することが可能な樹脂成形装置が開示されている。この樹脂成形装置の下型は、側面部材と、側面部材の内側において昇降可能な底面部材を備え、この側面部材と底面部材によってキャビティが形成される。また、底面部材又は側面部材には凹状の空間が形成され、その空間に配置された弾性部材を介して基板押さえピンが支持されている。
【0003】
このように構成された下型と、基板が固定された上型とを型締めすると、基板押さえピンの先端に基板の一部が接触する。この際、基板押さえピンは基板に押されることによって下方へと移動し、弾性部材を収縮させる。このようにして基板押さえピンは、弾性部材の弾性力によって基板へと押し付けられた状態になる。この状態で樹脂成形を行うことで、基板の一部(基板押さえピンが接触している部分)が露出した樹脂成形品を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6525580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように基板の一部を露出させて樹脂成形する技術では、更なる製造コストの低減が求められている。
【0006】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、製造コストの低減が可能な樹脂成形装置及び樹脂成形品の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、この課題を解決するため、本発明に係る樹脂成形装置は、第一部材及び前記第一部材に対して相対的に移動可能な第二部材を備え、前記第一部材及び前記第二部材によってキャビティを形成する第一成形型と、基板を保持することが可能な第二成形型と、前記第一部材に対して相対的に移動不能となるように支持され、前記第一成形型と前記第二成形型とが型締めされた際に前記基板の一部に接すると共に、前記第二部材によって加圧された前記キャビティ内の樹脂材料が流通可能な流通部が形成されているマスク部材と、を具備し、前記第一部材は、前記キャビティを側方から囲む枠状に形成され、前記マスク部材の外周部は、前記第一部材に載せられた状態で配置され、前記マスク部材の外周部には、第一テーパ部が形成され、前記マスク部材は、前記第一テーパ部と前記第一部材とが接するように配置されるものである。
【0008】
また、本発明に係る樹脂成形品の製造方法は、前記樹脂成形装置を用いて樹脂成形品を製造するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、製造コストの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る樹脂成形装置の全体的な構成を示した側面断面図。
図2】下型とマスク部材の位置関係を示した上方斜視図。
図3】基板とマスク部材の位置関係を示した下方斜視図。
図4】マスク部材を底面側から見た図、及びA-A断面図。
図5】樹脂成形品の製造方法を示したフローチャート。
図6】フィルム配置工程及び搬入工程を説明するための樹脂成形装置の側面断面図。
図7】マスク部材配置工程を説明するための樹脂成形装置の側面断面図。
図8】型締め工程を説明するための樹脂成形装置の側面断面図。
図9】成形工程を説明するための樹脂成形装置の側面断面図。
図10】後処理工程を説明するための基板の側面断面図。
図11】マスク部材の変形例を示した図。
図12】マスク部材の配置方法の変形例を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図1から図3までを用いて、本発明の一実施形態に係る樹脂成形装置100について説明する。なお、以下の説明で用いる図面は樹脂成形装置100の構成を概念的に説明するためのものであり、説明の便宜上、各部の寸法等を誇張していたり、部材の形状等を適宜簡略化している場合がある。
【0013】
樹脂成形装置100は、基板10の表面10aに配置された半導体チップ11などの電子部品を樹脂封止し、樹脂成形品を製造するものである。なお、本実施形態では、一例として圧縮成形法による樹脂成形が可能な樹脂成形装置100を示している。
【0014】
まず、樹脂成形装置100による樹脂封止の対象となる基板10について説明する。
【0015】
図3に示すように、基板10は、矩形平板状に形成される。基板10の表面10aには、矩形平板状に形成された半導体チップ11が、適宜のピッチで複数配置される。
【0016】
なお、基板10としては、シリコンウェーハ等の半導体基板、リードフレーム、プリント配線基板、金属製基板、樹脂製基板、ガラス製基板、セラミック製基板等を用いることができる。また、基板10は、FOWLP(Fan Out Wafer Level Packaging)、FOPLP(Fan Out Panel Level Packaging)に用いられるキャリアであってもよい。
【0017】
次に、樹脂成形装置100の具体的な構成について説明する。
【0018】
図1に示す樹脂成形装置100は、主として成形型110(下型110D及び上型110U)、型締め機構120及びマスク部材130等を具備する。
【0019】
成形型110は、下型110D及び上型110Uから構成され、樹脂材料30を成形するためのキャビティ110Cを形成するものである。なお、下型110D及び上型110Uは、本発明に係る第一成形型及び第二成形型の実施の一形態である。
【0020】
下型110Dは、主として下型ベース部材111、底面部材112、側面部材113及び弾性部材114等を具備する。
【0021】
図1に示す下型ベース部材111は、後述する底面部材112及び側面部材113等を支持するものである。
【0022】
図1及び図2に示す底面部材112は、キャビティ110Cの底面を形成するものである。なお、底面部材112は、本発明に係る第二部材の実施の一形態である。底面部材112は、平面視矩形状に形成される。底面部材112は、適宜の上下幅を有するように形成される。底面部材112は、下型ベース部材111の上面に載せられた状態で配置される。底面部材112の上面には、若干下方へ凹むような凹部112aが外周全体に亘って形成される(図1参照)。
【0023】
側面部材113は、キャビティ110Cの側面を形成するものである。なお、側面部材113は、本発明に係る第一部材の実施の一形態である。側面部材113は、平面視矩形状に形成される。側面部材113は、適宜の上下幅を有するように形成される。側面部材113は、主として中空部113a及びテーパ部113b等を具備する。
【0024】
中空部113aは、側面部材113の中央を上下に貫通するように形成される。中空部113aは、平面視矩形状に形成される。中空部113aは、平面視において、底面部材112の外形と概ね一致するような形状に形成される。
【0025】
テーパ部113bは、中空部113aに形成される傾斜面である。なお、テーパ部113bは、本発明に係る第二テーパ部の実施の一形態である。テーパ部113bは、中空部113aの上端部の全周に亘って形成される。テーパ部113bは、中空部113aの上端に向かって徐々に外側に拡がるように形成される(図1参照)。
【0026】
このように側面部材113は、平面視矩形状の枠状に形成される。側面部材113の中空部113aには底面部材112が配置される。側面部材113は、後述する弾性部材114を介して、下型ベース部材111の上面に載せられた状態で配置される。側面部材113の上面は、底面部材112の上面よりも上方に位置する。このようにして、底面部材112と側面部材113によって下方及び側方から囲まれた平面視矩形状のキャビティ110Cが形成される。
【0027】
図1に示す弾性部材114は、側面部材113と下型ベース部材111との間に配置される。弾性部材114は、例えば上下に伸縮可能な圧縮コイルばね等により形成される。
【0028】
なお、下型110D(底面部材112及び側面部材113)の上面には、離型フィルム20を吸着して保持するための吸着孔(不図示)が適宜形成される。この吸着孔を真空ポンプ等(不図示)によって負圧にすることで、離型フィルム20を吸着して保持することができる。
【0029】
上型110Uは、基板10を保持可能なものである。上型110Uは、適宜の上下幅を有するように形成される。上型110Uの底面には、基板10を吸着して保持するための吸着孔(不図示)が適宜形成される。この吸着孔を真空ポンプ等(不図示)によって負圧にすることで、基板10を吸着して保持することができる。
【0030】
型締め機構120は、下型110Dを昇降させて型締め及び型開き等を行うものである。型締め機構120は、主として基台121及び駆動機構122等を具備する。
【0031】
基台121は、成形型110等を支持するものである。基台121は、成形型110(下型110D)の下方に配置される。
【0032】
駆動機構122は、下型110Dを昇降させるためのものである。駆動機構122としては、ボールねじ機構、油圧シリンダ、トグル機構等を用いることができる。駆動機構122は、基台121と下型ベース部材111との間に配置される。なお、図2以降の図面では、型締め機構120の図示を適宜省略している。
【0033】
図1から図4までに示すマスク部材130は、樹脂成形時に基板10の半導体チップ11と接することで、半導体チップ11の下面(基板10と反対側の表面)に樹脂材料30が付着するのを防止するものである。マスク部材130は、矩形平板状に形成される。マスク部材130は、基板10に設けられた全ての半導体チップ11と接することができる程度の大きさに形成される(図3参照)。マスク部材130の外形は、平面視において、側面部材113の中空部113aの形状と概ね同一の形状に形成される(図2参照)。マスク部材130は、主としてテーパ部131及び注入口132等を具備する。
【0034】
図4に示すテーパ部131は、マスク部材130の外周部(図2に示すように、下型110Dに配置された状態における側面部分)に形成される傾斜面である。なお、テーパ部131は、本発明に係る第一テーパ部の実施の一形態である。テーパ部131は、マスク部材130の外周部全体に亘って形成される。テーパ部131は、マスク部材130の一側の面(下型110Dに配置される際に下を向く面、以下この面を「底面130a」と称する)から他側の面(以下この面を「上面130b」と称する)に向かって徐々に外側に拡がるように形成される。
【0035】
注入口132は、樹脂成形される際に樹脂材料30が流通するための流通経路である。なお、注入口132は、本発明に係る流通部の実施の一形態である。注入口132は、マスク部材130の外周部に形成される。注入口132は、マスク部材130の外周部を内側に向かって切り欠いたような凹状に形成される。注入口132は、マスク部材130の底面130aから上面130bに向かって徐々に外側に拡がるようなテーパ状に形成される。注入口132は、マスク部材130の中心を挟んで互いに向かい合うように、対になる位置に複数形成される。具体的には、注入口132は、矩形状に形成されたマスク部材130の各辺にそれぞれ形成される。注入口132は、マスク部材130の各辺の一端部近傍から他端部近傍に亘って形成される。このように注入口132が形成されることにより、テーパ部131はマスク部材130の四隅(4つの頂点部分)にのみ形成されることになる。
【0036】
マスク部材130の厚みは、樹脂材料30の種類や基板10の厚み、パッケージの厚みによって適宜設定することができる。後述の後処理工程S80において、注入口132に形成された不要な樹脂材料30(不要樹脂31)を容易に割断するためには、マスク部材130の厚みは、約0.5~3mmが好ましい。
【0037】
マスク部材130の材質は、後述のように、基板10を樹脂成形する際の圧力(成形圧)に耐えられるものであれば特に限定されない。成形圧に耐えられる材質として、例えば、ステンレスや鉄などの金属が挙げられる。
【0038】
また、マスク部材130には、離型シート133及び両面テープ134が設けられる。離型シート133は、マスク部材130の底面130aの全体に亘るように貼り付けられる。両面テープ134は、マスク部材130の上面130bの全体に亘るように貼り付けられる。
【0039】
なお、上述の樹脂成形装置100の各部の動作は、図示せぬ制御装置によって適宜制御される。
【0040】
次に、上述の如く構成された樹脂成形装置100を用いた樹脂成形品の製造方法について説明する。
【0041】
図5に示すように、本実施形態に係る樹脂成形品の製造方法は、主としてフィルム配置工程S10、搬入工程S20、マスク部材配置工程S30、型締め工程S40、成形工程S50、型開き工程S60、搬出工程S70及び後処理工程S80を含む。以下、順に説明する。
【0042】
フィルム配置工程S10は、下型110Dに離型フィルム20を配置する工程である。
【0043】
具体的には、フィルム配置工程S10において、離型フィルム20は、所定の搬送装置によって成形型110に搬入される。離型フィルム20は、図1に示すように、下型110Dの概ね全体(少なくともキャビティ110C)を覆うことができる程度の大さ、形状となるように形成されている。離型フィルム20は、下型110Dの上面に配置された後、下型110Dに吸着されて保持される。これによって、図6に示すように、離型フィルム20が下型110Dの上面の形状に沿うように配置される。
【0044】
離型フィルム20が下型110Dに吸着された後、フィルム配置工程S10から搬入工程S20に移行する。
【0045】
搬入工程S20は、成形型110に基板10及び樹脂材料30を搬入する工程である。
【0046】
具体的には、搬入工程S20において、基板10及び樹脂材料30は、所定の搬送装置によって成形型110に搬入される。図6に示すように、基板10は、半導体チップ11が配置された表面10aを下に向けた状態で、上型110Uに吸着されて保持される。樹脂材料30は、下型110Dのキャビティ110C内に収容される。なお、樹脂材料30としては、顆粒状、粉末状、粒状、ペースト状、液状など、各種状態の樹脂を用いることができる。
【0047】
基板10及び樹脂材料30の搬入が完了した後、搬入工程S20からマスク部材配置工程S30に移行する。
【0048】
マスク部材配置工程S30は、成形型110にマスク部材130を配置する工程である。
【0049】
具体的には、マスク部材配置工程S30において、マスク部材130は、所定の搬送装置によって成形型110に搬入される。図7に示すように、マスク部材130は、下型110Dの側面部材113に載せられる。この際、側面部材113のテーパ部113bと、マスク部材130のテーパ部131とが接するように(厳密には、離型フィルム20を介して接するように)配置される。テーパ部113b及びテーパ部131によって、マスク部材130が所定の位置へと案内されるため、下型110Dに対するマスク部材130の位置決めを容易に行うことができる。このようにしてマスク部材130は、キャビティ110C内に収容された樹脂材料30を上方から覆うように配置される。なお、図面では、離型フィルム20の断面を示すハッチングの図示を便宜上省略している。
【0050】
このように、マスク部材130が側面部材113に載せられた状態では、マスク部材130は側面部材113に対して相対的に移動不能となるように支持されている。すなわち、マスク部材130に対して意図的に外力を加える場合(例えば、マスク部材130を成形型110から搬出する場合など)を除いて、側面部材113とマスク部材130の位置関係(相対的な位置関係)は変わることがない。例えば、側面部材113が昇降する場合には、側面部材113と共にマスク部材130も昇降するため、側面部材113とマスク部材130の位置関係は変わらない。
【0051】
マスク部材130の配置が完了した後、マスク部材配置工程S30から型締め工程S40に移行する。
【0052】
型締め工程S40は、成形型110(下型110D及び上型110U)を閉める(型締めする)工程である。
【0053】
具体的には、型締め工程S40において、まず下型110Dに設けられた加熱機構(不図示)によってキャビティ110C内に収容された樹脂材料30が溶融される。次に、駆動機構122が駆動されることで、下型110Dが上型110Uに向かって上昇する。下型110Dが所定の位置まで上昇すると、図8に示すように、側面部材113の上面が基板10の下面(表面10a)と接触し、キャビティ110Cが基板10によって上方から塞がれる。
【0054】
またこの際、基板10に設けられた各半導体チップ11の下面は、側面部材113に配置されたマスク部材130の上面130bと接触する。マスク部材130は、マスク部材130の上面130bに設けられた両面テープ134(図4参照)によって基板10(半導体チップ11)に貼り付けられる。このようにして、マスク部材130によって半導体チップ11の下面が覆われることで、半導体チップ11の下面に樹脂が付着するのを防止することができる。
【0055】
なお、型締めを行う際には、キャビティ110C内の空気を吸引して、キャビティ110C内を減圧することが好ましい。これによって、樹脂材料30中の空気(気泡)を排出することができる。
【0056】
型締めが完了した後、型締め工程S40から成形工程S50に移行する。
【0057】
成形工程S50は、基板10に対して樹脂成形を行う工程である。
【0058】
具体的には、成形工程S50において、駆動機構122が駆動されることで、図9に示すように下型110Dの底面部材112が上型110Uに向かってさらに上昇する。この際、側面部材113は基板10(上型110U)に接しているため、上昇することはない。すなわち、底面部材112は側面部材113に対して相対的に上昇する。
【0059】
底面部材112が上昇すると、キャビティ110C内の樹脂材料30が加圧され、マスク部材130の外周部に形成された注入口132を介して、マスク部材130の上方の空間(基板10側の空間)へと注入される。上述のように、注入口132はテーパ状に形成されているため、樹脂材料30は、徐々に狭くなる(絞られる)流通経路を介して、図9の矢印によって模式的に示されるように、基板10側に向かって流通することになる。
【0060】
また注入口132は、矩形状に形成されたマスク部材130の各辺に形成されているため(図4参照)、注入口132から基板10側へと流入した樹脂材料30は、四方向(4つの注入口132)から基板10の中心側に向かって流通することになる。このようにして、溶融した樹脂材料30中に半導体チップ11が浸漬される。この際、半導体チップ11の下面はマスク部材130によって覆われているため、半導体チップ11の下面が樹脂材料30によって覆われることはない。すなわち、半導体チップ11の下面が露出するように樹脂成形を行うことができる。この状態で所定時間待つことで、樹脂材料30が硬化する。
【0061】
樹脂材料30が硬化した後、成形工程S50から型開き工程S60に移行する。
【0062】
型開き工程S60は、成形型110(下型110D及び上型110U)を開く(型開きする)工程である。
【0063】
具体的には、型開き工程S60において、駆動機構122が駆動されることで、下型110Dが上型110Uから離れるように下降する。これによって、下型110Dが基板10の下面(表面10a)から離れる。
【0064】
型開きが完了した後、型開き工程S60から搬出工程S70に移行する。
【0065】
搬出工程S70は、樹脂封止された基板10を成形型110から搬出する工程である。
【0066】
具体的には、搬出工程S70において、上型110Uから樹脂封止された基板10が取り外され、所定の搬送装置によって成形型110から搬出される。
【0067】
基板10の搬出が完了した後、搬出工程S70から後処理工程S80に移行する。
【0068】
後処理工程S80は、基板10の後処理を行う工程である。
【0069】
図10に示すように、成形型110から搬出された基板10には、マスク部材130や不要な樹脂材料30が付着している。そこで、後処理工程S80において、マスク部材130や不要な樹脂材料30が除去される。
【0070】
具体的には、図10(a)に示すように、マスク部材130の注入口132やその近傍には、基板10側へと流通しようとした樹脂材料30が硬化したもの(以下、「不要樹脂31」と称する)が付着している。また、マスク部材130の底面130aには、基板10側へ流通しなかった樹脂材料30が硬化したもの(以下、「不要樹脂32」と称する)が付着している。
【0071】
そこで後処理工程S80において、図10(a)に示すように、まず不要樹脂31が除去される。不要樹脂31は、マスク部材130の注入口132と概ね同じ形状に形成されている。すなわち不要樹脂31は、マスク部材130の上面130b側に向かって徐々に厚さが薄くなるように形成されている。このため、不要樹脂31に適宜力を加えることで、不要樹脂31の上端部(最も厚さが薄い部分)を容易に割断することができる。なお、不要樹脂31には、底面部材112の凹部112aに対応した凸部31aが形成されている。このため、凸部31aを掴むなどして不要樹脂31に力を加えることができ、不要樹脂31を容易に除去することができる。
【0072】
不要樹脂31を除去した後、図10(b)に示すように、基板10からマスク部材130が除去される。このようにして、半導体チップ11の一部(下面)が露出した状態で樹脂封止された基板10(樹脂成形品)を得ることができる。
【0073】
なお、図10(b)に示すように、マスク部材130の底面130aから不要樹脂32を除去し、マスク部材130に貼り付けられていた離型シート133及び両面テープ134(図4参照)を交換することで、マスク部材130を再利用することができる。
【0074】
以上の如く、本実施形態に係る樹脂成形装置100は、
側面部材113(第一部材)及び前記側面部材113に対して相対的に移動可能な底面部材112(第二部材)を備え、前記側面部材113及び前記底面部材112によってキャビティ110Cを形成する下型110D(第一成形型)と、
基板10を保持することが可能な上型110U(第二成形型)と、
前記側面部材113に対して相対的に移動不能となるように支持され、前記下型110Dと前記上型110Uとが型締めされた際に前記基板10の一部に接すると共に、前記底面部材112によって加圧された前記キャビティ110C内の樹脂材料30が流通可能な注入口132(流通部)が形成されているマスク部材130と、
を具備するものである。
【0075】
このように構成することにより、製造コストの低減を図ることができる。すなわち、下型110Dと上型110Uの型締めに応じてマスク部材130を可動させる機構を設けることなく、基板10の一部を露出させた状態で樹脂成形を行うことができるため、装置の構造の簡素化を図ることができ、ひいては製造コストの低減を図ることができる。
【0076】
また、前記注入口132は、前記マスク部材130の外周部に形成されているものである。
【0077】
このように構成することにより、製造コストの低減を図ることができる。すなわち、樹脂成形後に注入口132に形成される不要樹脂31を容易に除去することができるため、不要樹脂31を除去する工程や、不要樹脂31を除去するための機構の簡素化を図ることができ、ひいては製造コストの低減を図ることができる。
【0078】
また、前記側面部材113は、前記キャビティ110Cを側方から囲む枠状に形成され、
前記マスク部材130の外周部は、前記側面部材113に載せられた状態で配置されるものである。
【0079】
このように構成することにより、樹脂成形装置100の構造の簡略化を図ることができ、ひいては製造コストの低減を図ることができる。
【0080】
また、前記マスク部材130の外周部には、テーパ部131(第一テーパ部)が形成され、
前記マスク部材130は、前記テーパ部131と前記側面部材113とが接するように配置されるものである。
【0081】
このように構成することにより、マスク部材130の位置決めを容易に行うことができる。すなわち、マスク部材130を配置する際に、テーパ部131によってマスク部材130を所定の位置に案内することができる。
【0082】
また、前記側面部材113には、前記テーパ部131と対応する形状のテーパ部113b(第二テーパ部)が形成され、
前記マスク部材130は、前記テーパ部131と前記テーパ部113bとが接するように配置されるものである。
【0083】
このように構成することにより、マスク部材130の位置決めを容易に行うことができる。すなわち、マスク部材130を配置する際に、テーパ部131及びテーパ部113bによってマスク部材130を所定の位置に案内することができる。
【0084】
また、前記注入口132は、少なくとも、前記マスク部材130の中心を挟んで互いに向かい合う2箇所に形成されているものである。
【0085】
このように構成することにより、互いに向かい合う2箇所の注入口132から樹脂材料30を流通させることで、樹脂材料30を充填させ易くなり、ひいては成形不良が発生するのを抑制することができる。
【0086】
また、前記注入口132は、樹脂材料30の流通方向に向かって樹脂材料30の流通経路を絞るように形成されているものである。
【0087】
このように構成することにより、注入口132において硬化した不要樹脂31を容易に除去することができる。すなわち、流通経路が絞られた部分に力を加えることで、不要樹脂31を容易に割断することができる。
【0088】
また、本実施形態に係る樹脂成形品の製造方法は、樹脂成形装置100を用いて樹脂成形品を製造するものである。
【0089】
このように構成することにより、製造コストの低減を図ることができる。
【0090】
また、本実施形態に係る樹脂成形品の製造方法は、
キャビティ110Cに樹脂材料30が収容された下型110D(第一成形型)に対して、マスク部材130を相対的に移動不能となるように配置するマスク部材配置工程S30と、
前記マスク部材配置工程S30の後に、前記下型110Dと、基板10を保持した上型110U(第二成形型)とを型締めすると共に、前記マスク部材130を前記基板10の一部に接触させる型締め工程S40と、
前記キャビティ110C内の樹脂材料30を加圧することで、前記マスク部材130に形成された注入口132(流通部)を介して樹脂材料30を流通させ、前記基板10に対して樹脂成形を行う成形工程S50と、
を含むものである。
【0091】
このように構成することにより、製造コストの低減を図ることができる。すなわち、下型110Dと上型110Uの型締めに応じてマスク部材130を可動させることなく、基板10の一部を露出させた状態で樹脂成形を行うことができるため、製造工程の簡素化を図ることができ、ひいては製造コストの低減を図ることができる。
【0092】
また、前記注入口132は、前記マスク部材130の外周部に形成されているものである。
【0093】
このように構成することにより、製造コストの低減を図ることができる。すなわち、樹脂成形後に注入口132に形成される不要樹脂31を容易に除去することができるため、製造コストの低減を図ることができる。
【0094】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の技術的思想の範囲内で適宜の変更が可能である。
【0095】
例えば、本実施形態においては、矩形状のキャビティ110C及び矩形状の基板10を用いた樹脂成形装置100を例示したが、キャビティ110C及び基板10の形状はこれに限るものではない。例えば円形状の基板10を用いることも可能であり、この場合、基板10の形状に合わせてキャビティ110Cの形状を平面視円形状に形成することも可能である。
【0096】
また、本実施形態においては、キャビティ110Cの形状に対応した矩形状のマスク部材130を用いる例を示したが、マスク部材130の形状はこれに限るものではなく、任意の形状にすることが可能である。例えば上述のように、キャビティ110Cを平面視円形状に形成する場合には、マスク部材130を円形状に形成してもよい。
【0097】
また、本実施形態においては、平板状のマスク部材130を用いる例を示したが、本発明はこれに限るものではない。例えば、基板10に異なる高さの半導体チップ11が複数配置されている場合には、各半導体チップ11に接触できるように、各半導体チップ11に応じた凹凸をマスク部材130の上面130bに形成することも可能である。これによって、異なる高さの半導体チップ11をそれぞれ露出させた状態で樹脂成形することができる。
【0098】
また、本実施形態においては、マスク部材130及び側面部材113のそれぞれにテーパ部(テーパ部131及びテーパ部113b)を形成した例を示したが、本発明はこれに限るものではない。例えば、マスク部材130又は側面部材113のいずれか一方にのみテーパ部を形成することも可能である。また、一般的にキャビティ110Cの側面にはテーパ部(樹脂成形品を型から取り出すための抜き勾配)が形成されているため、このテーパ部を利用してマスク部材130を配置することも可能である。この場合、既存の樹脂成形装置にマスク部材130を追加することのみによって、チップ等の露出成形を簡単に行うことができる。
【0099】
また、本実施形態においては、マスク部材130の各辺に注入口132を形成した例(図4参照)を示したが、本発明はこれに限るものではなく、任意の位置に、任意の個数だけ注入口132を形成することが可能である。
【0100】
例えば図11(a)に示すように、マスク部材130の中心を挟んで互いに向かい合う2箇所にのみ注入口132を形成することも可能である。具体的には、図11(a)には、矩形状のマスク部材130の対向する一対の辺(2辺)にのみ注入口132を形成した例を示している。このように構成することにより、成形工程S50において紙面(図11(a))の左右の注入口132からマスク部材130の中央側へと樹脂材料30を流通させる際に、キャビティ内の空気が紙面の上下方向へと逃げ易くなる。これによって、ボイドや未充填等の不具合の発生を抑制することができる。
【0101】
また図11(b)に示すように、マスク部材130の外周部以外の部分にも、注入口を形成することが可能である。図11(b)には、マスク部材130の中央部分を貫通するように注入口135を形成した例を示している。このように、マスク部材130の外周部以外の部分にも適宜注入口135を形成することで、ボイドや未充填等の不具合の発生を抑制することができる。なお、このような注入口135を、適宜の位置に複数形成することも可能である。
【0102】
また、本実施形態においては、マスク部材130を側面部材113のテーパ部113bに載せた状態で配置する例(図7参照)を示したが、本発明はこれに限るものではない。
【0103】
例えば図12(a)に示すように、側面部材113の中空部113aに段差を設けることで、水平な面113cを形成し、この面113cの上にマスク部材130を配置することも可能である。
【0104】
また図12(b)に示すように、マスク部材130を側面部材113の上面に載せた状態で配置し、側面部材113と基板10(又は、上型110U)とでマスク部材130を挟み込んで保持することも可能である。この場合、マスク部材130には、側面部材113と基板10とによって挟み込まれる鍔状の部分136が形成される。またこの場合、例えばマスク部材130を貫通するように形成された孔(注入口137)を介して樹脂材料30を基板10側へと流通させることができる。
【0105】
また、本実施形態においては、半導体チップ11を露出させた状態で成形する例を示したが、露出させる対象はこれに限るものではなく、基板10の任意の部位(例えば、電極やヒートシンク等)を露出させることが可能である。
【0106】
また、本実施形態において例示した樹脂成形品の製造方法(工程の順序や、各工程における作業内容や手順等)は一例であり、任意に変更することが可能である。
【符号の説明】
【0107】
10 基板
30 樹脂材料
100 樹脂成形装置
110 成形型
110D 下型
110U 上型
110C キャビティ
112 底面部材
113 側面部材
113b テーパ部
120 型締め機構
130 マスク部材
131 テーパ部
132 注入口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図9
図10
図11
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