(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-31
(45)【発行日】2024-08-08
(54)【発明の名称】水性樹脂架橋剤、水性樹脂架橋剤含有液、水性樹脂組成物、硬化膜、及び物品
(51)【国際特許分類】
C08G 18/02 20060101AFI20240801BHJP
C08G 18/28 20060101ALI20240801BHJP
C08K 5/29 20060101ALI20240801BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20240801BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20240801BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20240801BHJP
C09D 5/00 20060101ALI20240801BHJP
C09D 5/02 20060101ALI20240801BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20240801BHJP
C09D 7/47 20180101ALI20240801BHJP
C09D 11/03 20140101ALI20240801BHJP
C09D 11/10 20140101ALI20240801BHJP
B32B 27/34 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
C08G18/02 050
C08G18/28 015
C08K5/29
C08L101/00
C09J201/00
C09J11/06
C09D5/00 D
C09D5/02
C09D201/00
C09D7/47
C09D11/03
C09D11/10
B32B27/34
(21)【出願番号】P 2020141977
(22)【出願日】2020-08-25
【審査請求日】2023-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】309012122
【氏名又は名称】日清紡ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塚本 奈巳
(72)【発明者】
【氏名】西川 直毅
【審査官】中落 臣諭
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/006950(WO,A1)
【文献】特開2019-143108(JP,A)
【文献】特開2009-235278(JP,A)
【文献】特開2013-112755(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G18/00-18/87
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカルボジイミド化合物(A)及びポリカルボジイミド化合物(B)を含有し、
前記ポリカルボジイミド化合物(A)は、両末端のイソシアネート基がそれぞれ親水性有機化合物で封止された構造であり、前記親水性有機化合物の少なくとも一方が分子量340以上であり、
前記ポリカルボジイミド化合物(B)は、両末端のイソシアネート基がそれぞれ
炭素数3~12の一級アルキルアルコールで封止された構造であり、
前記ポリカルボジイミド化合物(A)及び前記ポリカルボジイミド化合物(B)の合計100質量部中の前記ポリカルボジイミド化合物(A)が5~95質量部であり、
前記分子量340以上の親水性有機化合物が、下記式(1)で表される化合物である、水性樹脂架橋剤。
R
1
(OCHR
2
CH
2
)
n
OH (1)
(式(1)中、R
1
は、炭素数1~20の、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基である。R
2
は水素原子、メチル基、エチル基、又はプロピル基を示し、nは1~30の数である。)
【請求項2】
前記式(1)中のR
1がメチル基であり、R
2が水素原子である、
請求項1に記載の水性樹脂架橋剤。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の水性樹脂架橋剤、及び水性媒体を含有する、水性樹脂架橋剤含有液。
【請求項4】
前記水性媒体が、水、又は水と親水性溶媒との混合溶媒である、
請求項3に記載の水性樹脂架橋剤含有液。
【請求項5】
更に界面活性剤を含有する、
請求項4に記載の水性樹脂架橋剤含有液。
【請求項6】
前記界面活性剤が、アニオン性界面活性剤である、
請求項5に記載の水性樹脂用架橋剤含有液。
【請求項7】
前記アニオン性界面活性剤が、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、及びN-ココイルメチルタウリンナトリウムから選ばれる1種以上である、
請求項6に記載の水性樹脂用架橋剤含有液。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の水性樹脂架橋剤、及び水性樹脂を含有する、水性樹脂組成物。
【請求項9】
前記水性樹脂が、カルボキシ基、アミノ基及び水酸基から選ばれる基を有する、
請求項8に記載の水性樹脂組成物。
【請求項10】
前記水性樹脂が、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、スチレン-アクリル樹脂、メラミン樹脂、ポリオレフィン樹脂及びフッ素樹脂から選ばれる1種以上である、
請求項8又は9に記載の水性樹脂組成物。
【請求項11】
接着剤、繊維処理剤、コーティング剤、インキ又は塗料に用いられる、
請求項8~10のいずれかに記載の水性樹脂組成物。
【請求項12】
ウェット・オン・ウェット方式の塗装用である、
請求項8~10のいずれかに記載の水性樹脂組成物。
【請求項13】
請求項8~12のいずれか1項に記載の水性樹脂組成物により形成された硬化膜。
【請求項14】
請求項13に記載の硬化膜が、基材上に形成されてなる物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルボジイミド系の水性樹脂架橋剤、該水性樹脂架橋剤を含む水性樹脂架橋剤含有液及び水性樹脂組成物、該水性樹脂組成物により形成された硬化膜、並びに該硬化膜が形成されてなる物品に関する。
【背景技術】
【0002】
水溶性又は水分散性を有する水性樹脂は、環境面や安全面の点で取り扱い性に優れていることから、塗料やインキ、繊維処理剤、接着剤、コーティング剤等の各種用途で用いられている。水性樹脂は、樹脂自体に水溶性又は水分散性を付与するために、水酸基やカルボキシ基等の親水基が導入されている。それゆえに、水性樹脂は、油性樹脂に比べて、耐水性や耐久性の点で劣る傾向にある。
このため、水性樹脂の耐水性や耐久性、強度等の諸物性を向上させるために、該水性樹脂には、架橋剤が添加される。
【0003】
このような架橋剤の一例として、ポリカルボジイミド化合物が知られている。例えば、特許文献1には、所定の親水基を末端に有するポリカルボジイミド化合物を含む、2種のポリカルボジイミド化合物を、所定の比率で混合することにより、水性樹脂と併存させた場合の保存安定性に優れ、長期間併存させた場合であっても架橋性能が保持された水性樹脂架橋剤が得られることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、種々の水性樹脂の用途の拡大に伴い、水性樹脂の硬化物について、用途に応じた様々な物性が要求されている。例えば、合成皮革用途においては、水性樹脂の硬化物(塗膜)は、加熱によりグロス(鏡面光沢度)が低下してしまうことがあり、斯かる加熱後のグロス(鏡面光沢度)の低下を抑制することが要求されていた。
【0006】
このような要求に対して、本発明者は、上記のような保存安定性に優れたカルボジイミド系の架橋剤に着目して、水性樹脂の硬化物(塗膜)の物性の向上を図るべく検討を重ね、水性樹脂の硬化物(塗膜)の加熱後のグロス(鏡面光沢度)の低下を抑制することができる水性樹脂架橋剤を見出した。
【0007】
本発明は、加熱後のグロス(鏡面光沢度)の低下が抑制された硬化膜(水性樹脂塗膜)を得ることができる、水性樹脂架橋剤、該水性樹脂架橋剤を含む水性樹脂架橋剤含有液及び水性樹脂組成物、該水性樹脂組成物により形成された硬化膜、並びに該硬化膜が形成されてなる物品を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、水性樹脂架橋剤において、特定のポリカルボジイミド化合物の混合物を用いることにより、加熱後のグロス(鏡面光沢度)の低下が抑制された硬化膜(水性樹脂塗膜)が得られることを見出したことに基づくものである。
【0009】
本発明は、以下の手段を提供するものである。
[1]ポリカルボジイミド化合物(A)及びポリカルボジイミド化合物(B)を含有し、前記ポリカルボジイミド化合物(A)は、両末端のイソシアネート基がそれぞれ親水性有機化合物で封止された構造であり、前記親水性有機化合物の少なくとも一方が分子量340以上であり、前記ポリカルボジイミド化合物(B)は、両末端のイソシアネート基がそれぞれ炭素数3~18のモノオール化合物で封止された構造であり、前記モノオール化合物の炭素数が3~17の場合は、前記ポリカルボジイミド化合物(A)及び前記ポリカルボジイミド化合物(B)の合計100質量部中の前記ポリカルボジイミド化合物(A)が5~95質量部であり、前記モノオール化合物の炭素数が18の場合は、前記ポリカルボジイミド化合物(A)及び前記ポリカルボジイミド化合物(B)の合計100質量部中の前記ポリカルボジイミド化合物(A)が30~70質量部である、水性樹脂架橋剤。
[2]前記分子量340以上の親水性有機化合物が、下記式(1)で表される化合物である、上記[1]に記載の水性樹脂架橋剤。
R1(OCHR2CH2)nOH (1)
(式(1)中、R1は、炭素数1~20の、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基である。R2は水素原子、メチル基、エチル基、又はプロピル基を示し、nは1~30の数である。)
[3]前記式(1)中のR1がメチル基であり、R2が水素原子である、上記[2]に記載の水性樹脂架橋剤。
[4]前記モノオール化合物が、アルキルアルコール及び芳香族アルコールから選択される少なくとも1種である、上記[1]~[3]のいずれかに記載の水性樹脂架橋剤。
[5]前記モノオール化合物が、一級アルキルアルコールである、上記[4]に記載の水性樹脂架橋剤。
[6]上記[1]~[5]のいずれかに記載の水性樹脂架橋剤、及び水性媒体を含有する、水性樹脂架橋剤含有液。
[7]前記水性媒体が、水、又は水と親水性溶媒との混合溶媒である、上記[6]に記載の水性樹脂架橋剤含有液。
[8]更に界面活性剤を含有する、上記[7]に記載の水性樹脂架橋剤含有液。
[9]前記界面活性剤が、アニオン性界面活性剤である、上記[8]に記載の水性樹脂用架橋剤含有液。
[10]前記アニオン性界面活性剤が、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、及びN-ココイルメチルタウリンナトリウムから選ばれる1種以上である、上記[9]に記載の水性樹脂用架橋剤含有液。
[11]上記[1]~[5]のいずれかに記載の水性樹脂架橋剤、及び水性樹脂を含有する、水性樹脂組成物。
[12]前記水性樹脂が、カルボキシ基、アミノ基及び水酸基から選ばれる基を有する、上記[11]に記載の水性樹脂組成物。
[13]前記水性樹脂が、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、スチレン-アクリル樹脂、メラミン樹脂、ポリオレフィン樹脂及びフッ素樹脂から選ばれる1種以上である、上記[11]又は[12]に記載の水性樹脂組成物。
[14]接着剤、繊維処理剤、コーティング剤、インキ又は塗料に用いられる、上記[11]~[13]のいずれかに記載の水性樹脂組成物。
[15]ウェット・オン・ウェット方式の塗装用である、上記[11]~[13]のいずれかに記載の水性樹脂組成物。
[16]上記[11]~[15]のいずれか1項に記載の水性樹脂組成物により形成された硬化膜。
[17]上記[16]に記載の硬化膜が、基材上に形成されてなる物品。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、加熱後のグロス(鏡面光沢度)の低下が抑制された硬化膜(水性樹脂塗膜)を得ることができる、水性樹脂架橋剤、該水性樹脂架橋剤を含む水性樹脂架橋剤含有液及び水性樹脂組成物、該水性樹脂組成物により形成された硬化膜、並びに該硬化膜が形成されてなる物品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の水性樹脂架橋剤、該水性樹脂架橋剤を含む水性樹脂架橋剤含有液及び水性樹脂組成物、該水性樹脂組成物により形成された硬化膜、並びに該硬化膜が形成されてなる物品について詳細に説明する。
なお、本発明で言う「水性」とは、水性媒体に対する溶解性又は分散性を有していることを意味する。また、「水性媒体」とは、水及び/又は親水性溶媒を指すものとする。また、「ポリカルボジイミド化合物」とは、2個以上のカルボジイミド基を有する化合物を指す。また、「モノオール化合物の炭素数が3~17の場合」とは、両末端を封止するモノオール化合物の炭素数がいずれも3~17の範囲内であることを意味する。さらに、「モノオール化合物の炭素数が18の場合」とは、両末端を封止するモノオール化合物の炭素数がいずれも18である(同一又は異性体同士である)ことを意味する。
【0012】
[水性樹脂架橋剤]
本発明の水性樹脂架橋剤は、ポリカルボジイミド化合物(A)及びポリカルボジイミド化合物(B)を含有し、ポリカルボジイミド化合物(B)が、両末端のイソシアネート基がそれぞれ炭素数3~17のモノオール化合物で封止された構造である場合、(A)及び(B)の両者の合計100質量部中のポリカルボジイミド化合物(A)が5~95質量部であり、両末端のイソシアネート基がそれぞれ炭素数18のモノオール化合物で封止された構造である場合、(A)及び(B)の両者の合計100質量部中のポリカルボジイミド化合物(A)が30~70質量部であることを特徴とする。すなわち、前記水性樹脂架橋剤は、(A)及び(B)の2種のポリカルボジイミド化合物を含むものである。
このような配合組成からなる水性樹脂架橋剤を用いることにより、加熱後のグロス(鏡面光沢度)の低下が抑制された硬化膜(水性樹脂塗膜)を得ることができる。
さらに、このような配合組成からなる水性樹脂架橋剤を用いることにより、保存安定性(ポットライフ)が優れた水性樹脂架橋剤含有液及び水性樹脂組成物を得ることができると共に、耐水性能及び複層塗膜を形成する場合の層間付着性が優れた硬化膜(水性樹脂塗膜)を得ることができる。
なお、モノオール化合物の炭素数が3~17の場合では、ポリカルボジイミド化合物(A)及びポリカルボジイミド化合物(B)の合計100質量部中のポリカルボジイミド化合物(A)が、5質量部以上30質量部以下、又は、70質量部以上95質量部以下の場合であっても(一方のポリカルボジイミド化合物の当量が大きくなった場合であっても)、良好な効果が得られる。その理由としては、ポリカルボジイミド化合物(B)の末端の炭素鎖疎水性が大きくなり過ぎないようにして、架橋が不十分になるのを抑制することによるものと推察される。
【0013】
(ポリカルボジイミド化合物(A))
ポリカルボジイミド化合物(A)は、両末端のイソシアネート基がそれぞれ親水性有機化合物で封止された構造のポリカルボジイミド化合物であり、前記親水性有機化合物の少なくとも一方が分子量340以上である。
【0014】
<親水性有機化合物>
前記親水性有機化合物は、イソシアネート基と反応性を有する官能基1個以上を有し、かつ、該官能基以外の構造中にヘテロ原子を1個以上有する化合物であることが好ましい。前記官能基としては、水酸基、第一級アミノ基、第二級アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基、及びカルボキシ基等が挙げられる。すなわち、前記親水性有機化合物は、水酸基、第一級アミノ基、第二級アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基、及びカルボキシ基から選ばれるいずれかの官能基を有し、かつ、該官能基以外の構造中にヘテロ原子を1個以上有する化合物であることがより好ましい。
【0015】
前記親水性有機化合物としては、モノアミン、モノイソシアネート、モノオール、モノエポキシド及びモノカルボン酸から選ばれる化合物であることが好ましい。より好ましくは、分子鎖の末端に、前記官能基として、水酸基、第一級アミノ基又は第二級アミノ基を1個有し、かつ、該官能基以外の構造中にヘテロ原子を1個以上有するモノオール又はモノアミンである。前記モノオール又はモノアミンは、アニオン性基及び/又はカチオン性基を有するものであってもよい。
【0016】
前記親水性有機化合物としては、例えば、ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル、モノヒドロキシポリエステル、モノヒドロキシアルキルスルホン酸塩、ジアルキルアミノアルコール、ヒドロキシカルボン酸アルキルエステル、ジアルキルアミノアルキルアミン、ポリオキシアルキレンモノアミン、ポリオキシアルキレンジアミン、ポリオキシアルキレングリコール等が挙げられる。これらの中でも、ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル、モノヒドロキシポリエステル、モノヒドロキシアルキルスルホン酸塩、ジアルキルアミノアルコール、ヒドロキシカルボン酸アルキルエステル、ジアルキルアミノアルキルアミン、ポリオキシアルキレンモノアミンが好ましく、ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテルがより好ましい。
【0017】
前記親水性有機化合物としては、具体的には、下記式(1)で表される化合物が挙げられる。
R1(OCHR2CH2)nOH (1)
【0018】
式(1)中、R1は、炭素数1~20、好ましくは1~10、より好ましくは1~5の、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、シクロヘキシル基、フェニル基等が挙げられる。R1は、炭素数1~4のアルキル基であることが好ましい。炭素数1~4のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、イソブチル基、及びt-ブチル基が挙げられ、ポリカルボジイミド化合物(A)の良好な塗膜のグロス向上の観点から、メチル基であることが好ましい。
R2は、水素原子、メチル基、エチル基、又はプロピル基であり、好ましくは水素原子又はメチル基であり、より好ましくは水素原子である。
nは1~30の数であり、ポリカルボジイミド化合物(A)の良好な親水性の観点から、好ましくは7~30、より好ましくは8~20である。
なお、式(1)で表される化合物は、オキシアルキレン基(OCHR2CH2)の数が異なる分子の集合体である場合もある。この場合は、各分子中のオキシアルキレン基の数の平均値をnとする。
【0019】
式(1)で表されるポリオキシアルキレンモノアルキルエーテルの具体例としては、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(R1:メチル基、R2:水素原子)、ポリエチレングリコールモノエチルエーテル(R1:エチル基、R2:水素原子)、ポリプロピレングリコールモノメチルエーテル(R1:メチル基、R2:メチル基)、ポリプロピレングリコールモノエチルエーテル(R1:エチル基、R2:メチル基)、ポリプロピレングリコールモノフェニルエーテル(R1:フェニル基、R2:メチル基)等のポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンモノフェニルエーテル等が挙げられ、取り扱い性や入手容易性及びポリカルボジイミド化合物(A)の良好な親水性等の観点から、特に、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルが好ましい。
【0020】
また、前記親水性有機化合物は、式(1)において、R1が水素原子又はヒドロキシアルキル基であるポリオキシアルキレングリコールであることも好ましい。
【0021】
また、前記親水性有機化合物がポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル又はポリオキシアルキレングリコールである場合、該親水性有機化合物としては、式(1)中のポリオキシアルキレン基〔(OCHR2CH2)n〕が、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールのブロック共重合体やランダム共重合体等の構造を有しているものであってもよい。
【0022】
モノヒドロキシアルキルスルホン酸塩としては、具体的には、下記式(2)で表される化合物が挙げられる。
HOR3SO3M (2)
【0023】
式(2)中、R3は炭素数1~10のアルキレン基であり、具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基等が挙げられる。
Mはアルカリ金属原子であり、好ましくは、Na又はKである。
【0024】
ジアルキルアミノアルコールとしては、具体的には、下記式(3)で表される化合物が挙げられる。
R4
2NCH2CHR5OH (3)
【0025】
式(3)中、R4は炭素数1~4のアルキル基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、イソブチル基、及びt-ブチル基が挙げられる。
R5は水素原子又は炭素数1~4のアルキル基である。アルキル基は、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、イソブチル基、及びt-ブチル基が挙げられる。
【0026】
式(3)で表されるジアルキルアミノアルコールの具体例としては、N,N-ジメチルイソプロパノールアミン、N,N-ジエチルイソプロパノールアミン等が挙げられる。
【0027】
ヒドロキシカルボン酸アルキルエステルとしては、具体的には、下記式(4)で表される化合物が挙げられる。
R6OCOCHR7OH (4)
【0028】
式(4)中、R6は炭素数1~3のアルキル基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、及びイソプロピル基が挙げられる。
R7は水素原子又は炭素数1~3のアルキル基であり、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、及びイソプロピル基が挙げられる。
【0029】
式(4)で表されるヒドロキシカルボン酸アルキルエステルの具体例としては、グリコール酸メチル、乳酸メチル等が挙げられる。
【0030】
ジアルキルアミノアルキルアミンとしては、具体的には、下記式(5)で表される化合物が挙げられる。
R8
2-N-R9-NH2 (5)
【0031】
式(5)中、R8は炭素数1~4のアルキル基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、イソブチル基、及びt-ブチル基が挙げられる。
R9は炭素数1~4のアルキレン基であり、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基等が挙げられる。
【0032】
ポリオキシアルキレンモノアミン又はポリオキシアルキレンジアミンとしては、具体的には、下記式(6)で表される化合物が挙げられる。
R10(OCHR11CH2)nOR12 (6)
【0033】
式(6)中、R10は炭素数1~4のアルキル基又はアミノアルキル基である。アルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、イソブチル基、及びt-ブチル基が挙げられる。
R11は水素原子又は炭素数1~4のアルキレン基である。炭素数1~4のアルキレン基は、具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基等が挙げられる。
R12は炭素数1~4のアミノアルキル基である。アミノアルキル基としては、具体的には、アミノメチル基、アミノエチル基、アミノプロピル基、アミノイソプロピル基、アミノ-n-ブチル基、アミノ-s-ブチル基、イソアミノブチル基、及びアミノ-t-ブチル基が挙げられる。
nは1~30の数であり、式(1)におけるnと同様である。
式(6)のポリオキシアルキレンモノアミン又はポリオキシアルキレンジアミンについても、式(6)中のポリオキシアルキレン基[(OCHR11CH2)n]は、式(1)中のポリオキシアルキレン基[(OCHR2CH2)n]と同様に、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールのブロック共重合体やランダム共重合体等の構造を有しているものであってもよい。
【0034】
親水性有機化合物としては、上記式(1)~(6)で表される化合物のうち、ポリカルボジイミド化合物(A)の良好な親水性等の観点から、式(1)で表されるポリオキシアルキレンモノアルキルエーテルが好ましい。
親水性有機化合物として、式(1)においてnが7~30であるポリオキシアルキレンモノアルキルエーテルを用いる場合、式(1)においてnが7未満のポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル、式(3)で表されるジアルキルアミノアルコール、及び式(4)で表されるヒドロキシカルボン酸アルキルエステルから選ばれる1種以上の化合物と併用することも好ましい。
【0035】
ポリカルボジイミド化合物(A)は、両末端のイソシアネート基がそれぞれ親水性有機化合物で封止された構造であり、少なくとも片末端のイソシアネート基を封止するための親水性有機化合物は、分子量340以上である。少なくとも片末端について、末端封止剤である親水性有機化合物が分子量340以上であることにより、ポリカルボジイミド化合物(A)の親水性が向上する。より良好な親水性の観点から、両末端における末端封止剤が、いずれも、分子量340以上の親水性有機化合物であることが好ましい。
【0036】
前記親水性有機化合物の分子量は、ポリカルボジイミド化合物(A)の良好な親水性の観点から、好ましくは350以上、より好ましくは400以上である。また、親水性有機化合物の良好な親水性を維持する観点から、3200以下であることが好ましい。
分子量が340以上の親水性有機化合物としては、式(1)で表されるポリオキシアルキレンモノアルキルエーテルが好ましい。保存安定性の観点から、分子量が450~600のポリオキシアルキレンモノアルキルエーテルがより好ましい。
例えば、ポリカルボジイミド化合物(A)の両末端のいずれについても、末端封止剤である親水性有機化合物が、式(1)においてnが7~30であり、分子量340以上の同一又は異なるポリオキシアルキレンモノアルキルエーテルであることが好ましい。また、ポリカルボジイミド化合物(A)の片末端の末端封止剤である親水性有機化合物が、式(1)においてnが7~30であり、分子量340以上のポリオキシアルキレンモノアルキルエーテルであり、他方の片末端の末端封止剤である親水性有機化合物が、式(1)においてmが7未満であり、分子量340未満のポリオキシアルキレンモノアルキルエーテルであることも好ましい。
【0037】
前記親水性有機化合物は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。すなわち、ポリカルボジイミド(A)は、両末端が同じ親水性有機化合物で封止されていても、異なる親水性有機化合物で封止されていてもよい。製造容易性の観点からは、1種の親水性有機化合物であることが好ましい。
【0038】
<ポリカルボジイミド化合物(A)の製造方法>
ポリカルボジイミド化合物(A)の製造方法は、特に限定されるものではなく、公知の製造方法を用いて行うことができる。例えば、下記(a1)~(a3)に示すような合成方法が挙げられる。
(a1)ジイソシアネート化合物(Da)を触媒の存在下でカルボジイミド化反応させて、イソシアネート末端ポリカルボジイミド化合物を得た後、次いで、親水性有機化合物(末端封止剤)を添加して末端封止反応を行う方法
(a2)ジイソシアネート化合物(Da)及び親水性有機化合物(末端封止剤)を混合して、触媒の存在下でカルボジイミド化反応及び末端封止反応を行う方法
(a3)ジイソシアネート化合物(Da)及び親水性有機化合物(末端封止剤)を反応させてイソシアネート基の末端封止反応を行った後、触媒の存在下でカルボジイミド化反応を行う方法
これらの合成方法のうち、カルボジイミド基の重合度の制御及び製造効率等の観点から、(a1)又は(a3)の方法が好ましい。
【0039】
ポリカルボジイミド化合物(A)の製造に用いられるジイソシアネート化合物(Da)は、特に限定されるものではなく、鎖状もしくは脂環状の脂肪族ジイソシアネート化合物、芳香族ジイソシアネート化合物、又は複素環ジイソシアネート化合物のいずれでもよく、これらは、1種単独で用いても、2種以上併用してもよい。
鎖状脂肪族ジイソシアネート化合物としては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等が挙げられる。
脂環状ジイソシアネート化合物としては、例えば、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、2,2-ビス(4-イソシアナトシクロヘキシル)プロパン、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート等が挙げられる。
芳香族ジイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4,6-トリイソプロピルベンゼン-1,3-ジイルジイソシアネート等が挙げられる。
また、芳香環を含む脂肪族ジイソシアネート化合物としては、例えば、キシリレンジイソシアネート、1,3-ビス(2-イソシアナト-2-プロピル)ベンゼン(慣用名:テトラメチルキシリレンジイソシアネート)等が挙げられる。
これらの中でも、ジイソシアネート化合物(Da)としては、入手容易性、水性樹脂架橋剤の良好な保存安定性等の観点から、脂環又は芳香環を有するジイソシアネート化合物であることが好ましい。具体的には、好ましくはジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネートであり、より好ましくはテトラメチルキシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネートであり、特に好ましくは、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネートである。
【0040】
前記カルボジイミド化反応は、例えば、ジイソシアネート化合物(Da)のカルボジイミド化触媒の存在下での重合(脱炭酸縮合反応)であることが好ましい(米国特許第2941956号明細書、特公昭47-33279号公報、J. Org. Chem. 28, p.2069-2075(1963)、Chemical Review 1981、Vol.81, No.4, p.619-621等参照)。
前記カルボジイミド化触媒としては、例えば、1-フェニル-2-ホスホレン-1-オキシド、3-メチル-1-フェニル-2-ホスホレン-1-オキシド、1-エチル-2-ホスホレン-1-オキシド、3-メチル-2-ホスホレン-1-オキシド及びこれらの3-ホスホレン異性体等のホスホレンオキシド等が挙げられる。これらの中でも、反応性や入手容易性等の観点から、3-メチル-1-フェニル-2-ホスホレン-1-オキシドが好ましい。
前記カルボジイミド化触媒の使用量は、通常、ジイソシアネート化合物(Da)100質量部に対して0.01~10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.05~5質量部、さらに好ましくは0.07~1質量部である。
【0041】
ジイソシアネート化合物の脱炭酸縮合反応は、溶媒中でも、無溶媒でも行うことができる。使用される溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、1,3-ジオキサン、ジオキソラン等の脂環式エーテル;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、パークレン、トリクロロエタン、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素;シクロヘキサノン等が挙げられる。これらは、1種単独でもよく、2種以上を併用してもよい。
溶媒中で反応を行う場合、ジイソシアネート化合物(Da)の濃度は、反応系の均一化の観点から、好ましくは5~80質量%であり、より好ましくは10~60質量%である。
【0042】
前記脱炭酸縮合反応の反応温度は、適度な反応促進やカルボジイミド基の重合度等に応じて適宜設定される。通常は、40~250℃であることが好ましく、より好ましくは90~230℃、さらに好ましくは100~200℃である。溶媒中で反応を行う場合は、40℃~溶媒の沸点の範囲内の温度であることが好ましい。
また、反応時間は、反応温度やカルボジイミド基の重合度等に応じて適宜設定される。通常、0.5~100時間であることが好ましく、より好ましくは1~70時間、さらに好ましくは2~30時間である。
また、窒素ガス、希ガス等の不活性ガス雰囲気下で反応を行うことが好ましい。
【0043】
ポリカルボジイミド化合物(A)において、カルボジイミド基の重合度は、特に限定されるものではないが、水性媒体中での水性樹脂架橋剤のゲル化抑制の観点から、好ましくは2~20、より好ましくは3~15である。
なお、本明細書における「カルボジイミド基の重合度」とは、前記カルボジイミド化反応により生成したカルボジイミド基の数を言う。
【0044】
前記末端封止反応は、例えば、上記(a1)の方法においては、イソシアネート末端ポリカルボジイミド化合物及び親水性有機化合物(末端封止剤)を加熱することにより行うことができる。
末端封止反応の反応温度は、副反応を抑制し、反応を促進し得る範囲内で適宜設定される。通常、50~250℃であることが好ましく、より好ましくは90~220℃、さらに好ましくは130~200℃である。
また、反応時間は、反応温度や副反応を抑制し得る範囲内で適宜設定される。通常、0.1~20時間であることが好ましく、より好ましくは0.5~10時間、さらに好ましくは0.5~5時間である。
例えば、イソシアネート末端ポリカルボジイミド化合物を、50~200℃、好ましくは100~180℃に加熱した後、親水性有機化合物を添加し、80~200℃で0.5~5時間反応させることにより、ポリカルボジイミド化合物(A)を得ることができる。
【0045】
(ポリカルボジイミド化合物(B))
ポリカルボジイミド化合物(B)は、両末端のイソシアネート基がそれぞれ炭素数3~18のモノオール化合物で封止された構造を有する。
【0046】
ポリカルボジイミド化合物(B)の製造に用いられるジイソシアネート化合物(Db)は、ポリカルボジイミド化合物(A)の製造に用いられるジイソシアネート化合物(Da)と同様であるが、ジイソシアネート化合物(Db)の好ましい態様もジイソシアネート化合物(Da)と異なる。
具体的には、好ましくはジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネートであり、より好ましくはジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、m-キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネートであり、さらにより好ましくは、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、m-キシリレンジイソシアネートであり、さらにより好ましくは、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートであり、さらにより好ましくは、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネートであり、特に好ましくは、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネートである。
【0047】
<モノオール化合物>
モノオール化合物としては、炭素数が3~18である限り、特に制限はなく、例えば、アルキルアルコール、芳香族アルコール、などが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上用いてもよい。これらの中でも、イソシアネート基との反応性の観点から、アルキルアルコールが好ましく、一級アルキルアルコールがより好ましい。
【0048】
モノオール化合物の炭素数としては、3~18である限り、特に制限はないが、グロス性能と架橋のバランスの観点で、3~12が好ましく、3~8がより好ましく、3~5がさらに好ましく、3が最も好ましい。
前記モノオール化合物の具体例としては、特に制限はなく、例えば、1-プロパノール、1-ブタノール、1-ペンタノール、1-ヘキサノール、1-ヘプタノール、1-オクタノール、1-ノナノール、1-デカノール、ウンデシルアルコール、1-ドデカノール(ドデシルアルコール、ラウリルアルコール)、1-トリデシルアルコール、1-テトラデシルアルコール(ミリスチルアルコール)、1-ペンタデシルアルコール、1-ヘキサデシルアルコール(セチルアルコール)、1-ヘプタデカノール(ヘプタデシルアルコール)、1-オクタデシルアルコール(ステアリルアルコール、オクタデカノール)、及びそれらの異性体(例えば、2-プロパノール(iso-プロパノール))、2-メチル-1-プロパノール(iso-ブタノール);オレイルアルコール等のアルケニルアルコール;オクタジエノール等のアルカジエノール;ポリエチレンブチレンモノオール等の脂肪族モノオール;シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール等の脂環族モノオール;ベンジルアルコール等の芳香脂肪族モノオール;などが挙げられる。
【0049】
ポリカルボジイミド化合物(B)は、ポリカルボジイミド化合物(A)よりも親水性の低い、より疎水性のポリカルボジイミド化合物であり、前記モノオール化合物は、イソシアネート基と反応する官能基としての水酸基を1個有し、該官能基以外の親水性基を有しないことが好ましい。
【0050】
モノオール化合物の分子量としては、特に制限はないが、300以下であることが好ましい。
末端封止剤として用いられるモノオール化合物の分子量が300以下である場合は、ポリカルボジイミド化合物(B)の分子内において、水性樹脂に対して架橋点となるカルボジイミド基の濃度が低くなるのを抑制して、良好な架橋作用が得られる。
【0051】
ポリカルボジイミド化合物(B)は、両末端のイソシアネート基がモノオール化合物で封止された構造を有している。
【0052】
前記モノオール化合物は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。すなわち、ポリカルボジイミド(B)は、両末端が同じモノオール化合物で封止されていても、異なるモノオール化合物で封止されていてもよい。製造容易性の観点からは、1種のモノオール化合物であることが好ましい。
【0053】
<ポリカルボジイミド化合物(B)の製造方法>
ポリカルボジイミド化合物(B)の製造方法は、特に限定されるものではなく、公知の製造方法を用いて行うことができる。例えば、下記(b1)~(b3)に示すような合成方法が挙げられる。
(b1)ジイソシアネート化合物(Db)を触媒の存在下でカルボジイミド化反応させて、イソシアネート末端ポリカルボジイミド化合物を得た後、次いで、モノオール化合物(末端封止剤)を添加して末端封止反応を行う方法
(b2)ジイソシアネート化合物(Db)及びモノオール化合物(末端封止剤)を混合して、触媒の存在下でカルボジイミド化反応及び末端封止反応を行う方法
(b3)ジイソシアネート化合物(Db)及びモノオール化合物(末端封止剤)を反応させてイソシアネート基の末端封止反応を行った後、触媒の存在下でカルボジイミド化反応を行う方法
これらの合成方法のうち、カルボジイミド基の重合度の制御及び製造効率等の観点から、(b1)又は(b3)の方法が好ましい。
【0054】
前記カルボジイミド化反応及び末端封止反応は、ポリカルボジイミド化合物(A)の合成方法と同様にして行うことができる。なお、原料化合物の種類によって反応性が異なるため、反応条件は、原料化合物の種類に応じて、適宜調整される。
【0055】
ポリカルボジイミド化合物(B)において、カルボジイミド基の重合度は、特に限定されるものではないが、水性樹脂架橋剤を水性媒体や水性樹脂と併存させた場合の良好な保存安定性等の観点から、好ましくは2~20、より好ましくは3~15、さらに好ましくは5~7である。
【0056】
(ポリカルボジイミド化合物(A)及びポリカルボジイミド化合物(B)の含有量)
前記水性樹脂架橋剤は、(i)ポリカルボジイミド化合物(B)が、両末端のイソシアネート基がそれぞれ炭素数3~17のモノオール化合物で封止された構造である場合、ポリカルボジイミド化合物(A)及びポリカルボジイミド化合物(B)の合計100質量部中のポリカルボジイミド化合物(A)の含有量が、5~95質量部であり、好ましくは15~85質量部、より好ましくは20~80質量部、更に好ましくは35~60質量部である。また、(ii)ポリカルボジイミド化合物(B)が、両末端のイソシアネート基がそれぞれ炭素数18のモノオール化合物で封止された構造である場合、ポリカルボジイミド化合物(A)及びポリカルボジイミド化合物(B)の合計100質量部中のポリカルボジイミド化合物(A)の含有量が、30~70質量部であり、好ましくは40~60質量部である。
【0057】
前記水性樹脂架橋剤において、ポリカルボジイミド化合物(A)は、親水性の高いポリカルボジイミド化合物であり、ポリカルボジイミド化合物(B)は、親水性の低い、より疎水性のポリカルボジイミド化合物である。このため、前記水性樹脂架橋剤は、水性媒体中で、ポリカルボジイミド化合物(A)がポリカルボジイミド化合物(B)を分散させる態様となっていると考えられる。ポリカルボジイミド化合物(A)が、水性媒体との親和性に寄与し、水性樹脂に対して水性樹脂架橋剤を均一に添加させやすくする作用を奏し、一方、ポリカルボジイミド化合物(B)が、水性樹脂に対して、ポリカルボジイミド化合物(A)よりも強い架橋作用を発揮することができる。このため、前記水性樹脂架橋剤によれば、加熱後のグロス(鏡面光沢度)の低下が抑制された硬化膜(水性樹脂塗膜)を得ることができるものと推測される。
【0058】
ポリカルボジイミド化合物(A)及びポリカルボジイミド化合物(B)の合計100質量部中のポリカルボジイミド化合物(A)の含有量が5質量部(炭素数18のモノオール化合物でポリカルボジイミド化合物(B)の両末端が封止されている場合は30質量部)未満であると、水性樹脂架橋剤の水性媒体との親和性が不十分となり、水性媒体や水性樹脂と併存させた場合に良好な保存安定性が得られず、また、水性樹脂に対する架橋作用が十分に発揮されず、耐水性能が向上した硬化膜(水性樹脂塗膜)が得られない。
一方、前記含有量が95質量部(炭素数18のモノオール化合物でポリカルボジイミド化合物(B)の両末端が封止されている場合は70質量部)超の場合は、水性樹脂架橋剤の水性媒体との親和性が大きすぎて、水性媒体や水性樹脂と併存させた場合に粘度が上昇したり、ゲル化したりしやくなり、良好な保存安定性が得られない。また、この場合も、水性樹脂に対する架橋作用が十分に発揮されず、耐水性能が向上した硬化膜(水性樹脂塗膜)が得られない。
【0059】
(その他の成分)
前記水性樹脂架橋剤は、ポリカルボジイミド化合物(A)及びポリカルボジイミド化合物(B)以外に、本発明の効果を損なわない範囲において、溶剤や、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、消泡剤等の添加剤を含んでいてもよい。この場合、水性樹脂架橋剤による架橋作用が十分に発揮されるようにする観点から、水性樹脂架橋剤中のポリカルボジイミド化合物(A)及びポリカルボジイミド化合物(B)の合計含有量は、好ましくは85質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上である。
【0060】
(水性樹脂架橋剤の製造方法)
水性樹脂架橋剤は、ポリカルボジイミド化合物(A)、ポリカルボジイミド化合物(B)、及び、必要に応じて、その他の成分の添加剤等を撹拌混合することにより、製造することができる。また、これらの混合の際に水性媒体を用い、水性樹脂架橋剤を、予め、後述する水性樹脂架橋剤含有液として製造してもよい。
水性樹脂架橋剤を得るための撹拌混合の方法は、特に限定されるものではなく、例えば、回転羽根やマグネチックスターラー等を用いた公知の方法により行うことができる。
混合時の温度や時間等の条件は、ポリカルボジイミド化合物(A)及びポリカルボジイミド化合物(B)の種類等によって異なるが、効率的に均一に混合する観点から、例えば、60~200℃で1~48時間混合することが好ましい。
【0061】
[水性樹脂架橋剤含有液]
本発明の水性樹脂架橋剤含有液は、前記水性樹脂架橋剤及び水性媒体を含むものである。前記水性樹脂架橋剤を、これを含む含有液としておくことにより、架橋する水性樹脂に対して均一に添加混合することが容易となり、取り扱い性に優れたものとすることができる。
【0062】
水性樹脂架橋剤含有液中の水性樹脂架橋剤の濃度は、水性樹脂に対して均一に添加混合する際の取り扱い性や、架橋反応の効率性等の観点から適宜定められるが、10~100質量%であることが好ましく、より好ましくは20~80質量%、さらに好ましくは30~50質量%である。
【0063】
(水性媒体)
水性媒体は、前記水性樹脂架橋剤中の各含有成分を均一に溶解又は分散可能である媒体が用いられ、水や、アルコール類、エーテル類、ケトン類、エステル類等のうちの親水性溶媒が挙げられる。これらは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらのうち、水、又は水と親水性溶媒との混合溶媒であることが好ましく、環境配慮やコスト等の観点からは、水のみであることが好ましい。
アルコール類としては、例えば、メタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、2-エチルヘキシルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等が挙げられる。エーテル類としては、例えば、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、3-メトキシ-3-メチルブタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラヒドロフラン等が挙げられる。ケトン類としては、例えば、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、アセチルアセトン等が挙げられる。エステル類としては、例えば、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等が挙げられる。
【0064】
(界面活性剤)
前記水性樹脂架橋剤含有液には、界面活性剤が含まれていてもよい。界面活性剤を用いることにより、ポリカルボジイミド化合物(A)及びポリカルボジイミド化合物(B)を水性媒体に均一に溶解又は分散し、水性樹脂架橋剤含有液の保存安定性をより向上させることができる。また、界面活性剤は、水性樹脂の硬化物の耐水性能の向上にも寄与し得る。
【0065】
界面活性剤が水性樹脂架橋剤含有液に含まれる場合、その含有量は、水性樹脂架橋剤含有液及びこれを用いた水性樹脂組成物の保存安定性の十分な向上効果や、水性樹脂の硬化物の耐水性能の向上効果等の観点から、ポリカルボジイミド化合物(A)及びポリカルボジイミド化合物(B)の合計100質量部に対して、好ましくは0.1~20質量部、より好ましくは0.2~10質量部、さらに好ましくは0.3~8質量部である。
【0066】
界面活性剤としては、水性樹脂架橋剤含有液及びこれを用いた水性樹脂組成物の保存安定性、また、水性樹脂との相溶性等の観点から、アニオン性界面活性剤又はノニオン性界面活性剤が好ましく、より好ましくはアニオン性界面活性剤が用いられる。これらのうちの1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
アニオン性界面活性剤としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、ドデシル硫酸ナトリウムやラウリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸塩、N-ココイルメチルタウリンナトリウム、ジ-2-エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、硫酸ナトリウム-2-エチルヘキシル、α-スルホ脂肪酸メチルエステルナトリウム塩等が挙げられる。これらのうち、入手容易性等の観点から、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムが好適に用いられる。
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレン-2-エチルヘキシルエーテル、ポリオキシエチレンイソデシルエーテル等が挙げられる。これらのノニオン性界面活性剤の分子量は、100~2000であることが好ましく、添加混合のしやすさ等の観点から、より好ましくは100~1000、さらに好ましくは300~1000である。
【0067】
(その他の成分)
水性樹脂架橋剤含有液は、前記水性樹脂架橋剤、水性媒体、及び、必要に応じて添加される界面活性剤を含み、これら以外の任意成分として、本発明の効果を損なわない範囲において、水性樹脂架橋剤中の溶剤や添加剤とは別に、さらに、溶剤や、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、消泡剤等の添加剤が添加されてもよい。
【0068】
(水性樹脂架橋剤含有液の製造方法)
水性樹脂架橋剤含有液は、前記水性樹脂架橋剤、水性媒体、及び、必要に応じて、界面活性剤、さらに、その他の成分の添加剤等を混合することにより、製造することができる。撹拌混合の方法は、特に限定されるものではなく、例えば、回転羽根やマグネチックスターラー等を用いた公知の方法により行うことができる。
混合時の温度や時間等の条件は、水性樹脂架橋剤の組成や水性媒体の種類等によって異なるが、効率的に均一に混合する観点から、例えば、水性樹脂架橋剤と水性媒体とを混合する場合には、20~100℃で0.5~5時間撹拌混合することが好ましい。
【0069】
[水性樹脂組成物]
本発明の水性樹脂組成物は、前記水性樹脂架橋剤及び水性樹脂を含むものである。上述した本発明の水性樹脂架橋剤は、水性樹脂と併存させた状態での保存安定性に優れているため、前記水性樹脂組成物は、製造後長期間、少なくとも1週間程度経過した後でも、加熱等により架橋反応を良好に行うことができる。また、前記水性樹脂組成物を用いることにより、良好な耐水性能を有する水性樹脂の硬化物が得られる。
【0070】
(水性樹脂)
前記水性樹脂は、水溶性又は水分散性を有する樹脂である。前記水性樹脂は、水性樹脂架橋剤により架橋され得るものであり、特に、カルボジイミド基により架橋され得る架橋性基を有しているものであることが好ましい。
前記水性樹脂は、具体的には、架橋性基として、カルボキシ基、アミノ基及び水酸基から選ばれる官能基を有しているものであることが好ましく、アルコール性水酸基及び/又はカルボキシ基を有していることがより好ましい。前記水性樹脂としては、例えば、このような架橋性基を有する水性樹脂である、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、スチレン-アクリル樹脂、メラミン樹脂、ポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。これらは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらのうち、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂が、特に好適に用いられる。
【0071】
(水性樹脂架橋剤)
水性樹脂組成物中の水性樹脂架橋剤の含有量は、水性樹脂の種類や、水性樹脂の硬化物に求められる物性等に応じて適宜定められるが、架橋反応性及びコストのバランス等の観点から、水性樹脂100質量部に対して、0.5~40質量部であることが好ましく、より好ましくは1~30質量部、さらに好ましくは1.5~20質量部である。
【0072】
(その他の成分)
前記水性樹脂組成物は、前記水性樹脂架橋剤及び水性樹脂以外に、本発明の効果を損なわない範囲において、その他の成分を含んでいてもよい。具体的には、水性樹脂架橋剤又は水性樹脂架橋剤含有液中の溶剤や添加剤とは別に、使用目的や用途等に応じて、必要により、溶剤や、例えば、着色剤、充填剤、分散剤、可塑剤、増粘剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等の各種添加剤が、さらに添加されてもよい。
【0073】
(水性樹脂組成物の製造方法)
水性樹脂組成物は、前記水性樹脂架橋剤、水性樹脂、及び、前記のその他の成分等を、任意の順序で添加し、撹拌混合することにより、製造することができる。撹拌混合の方法は、特に限定されるものではなく、例えば、回転羽根やマグネチックスターラー等を用いた公知の方法により行うことができる。
混合時の温度や時間等の条件は、水性樹脂架橋剤の組成や水性樹脂の種類等によって異なるが、効率的に均一に混合する観点から、混合温度は0~100℃であることが好ましく、より好ましくは10~50℃である。水性樹脂架橋剤及び水性樹脂等の混合物の反応性や混合効率の観点から、20~30℃であることがより好ましい。混合時間は0.1~2時間であることが好ましく、より好ましくは0.3~1時間である。
なお、前記水性樹脂組成物は、水性樹脂との均一な混合性や取り扱い容易性等の観点から、上述したような水性樹脂架橋剤含有液として、水性樹脂と混合することにより製造してもよい。
【0074】
(水性樹脂組成物の硬化物)
前記水性樹脂組成物は、加熱等により架橋反応し、水性樹脂(水性樹脂組成物)の硬化物を生成する。前記硬化物は、水性樹脂組成物を所定の基材上に塗布した後、加熱して架橋反応させることにより、硬化膜として形成することができる。
水性樹脂組成物の塗布方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、刷毛塗り、タンポ塗り、吹付塗り、ホットスプレー塗り、エアレススプレー塗り、ローラ塗り、カーテンフロー塗り、流し塗り、浸し塗り、ナイフフェッジコート等を採用することができる。
加熱方法は、特に限定されるものではなく、例えば、電気加熱炉、赤外線加熱炉、高周波加熱炉等を用いることができる。加熱温度は、水性樹脂架橋剤の組成や水性樹脂の種類等に応じて、水性樹脂組成物が変色したり、熱分解したりしない範囲内において、架橋反応を促進する観点から適宜設定される。
【0075】
前記水性樹脂組成物を用いることにより、良好な耐水性能を有する水性樹脂の硬化物が得られるため、前記水性樹脂組成物は、例えば、塗料やインキ、繊維処理剤、接着剤、コーティング剤、成形物等の種々の用途に好適に用いることができ、特に、接着剤、繊維処理剤、コーティング剤、インキ、塗料に好適である。
例えば、前記水性樹脂組成物を塗料として適用することにより、耐水性能に優れた水性樹脂の硬化膜(塗膜)が得られ、任意の基材上に、このような硬化膜が形成された物品を得ることもできる。なお、前記基材は、無機材料又は有機材料であるかを問わず、例えば、金属、セラミックス、樹脂、木材、布、繊維等の任意の材質でよい。
【0076】
また、前記水性樹脂組成物は、ウェット・オン・ウェット方式の塗装にも好適に適用できる。ウェット・オン・ウェット方式の場合、前記水性樹脂組成物で形成された塗工膜は、架橋反応が促進されることにより、積層された塗工膜同士のにじみや接着性不良を生じにくく、層間付着性が良好な硬化膜を効率的に形成することができる。
【0077】
また、前記水性樹脂組成物は、それ以外の優れた架橋性に基づく諸物性をも発揮し得るものであり、例えば、前記硬化膜が基材上に形成されてなる物品は、高い引張強度や、優れた耐熱性、耐久性、接着性、密着性、耐チッピング性、耐スクラッチ性及び相溶性が求められる用途にも適用することができる。具体的には、自動車、建築、重防食塗装、食品包装、ヘルスケア等の分野で好適に適用することができる。
【実施例】
【0078】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
【0079】
[ポリカルボジイミド化合物の合成]
まず、下記実施例及び比較例で用いられる各ポリカルボジイミド化合物を合成した。
【0080】
〔原料化合物〕
下記合成例において用いた原料化合物の詳細は、以下のとおりである。なお、本明細書における分子量は、計算値又はカタログ値である。
<ジイソシアネート化合物>
・HMDI:ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート(東京化成工業株式会社製、分子量262.35)
・TMXDI:テトラメチルキシリレンジイソシアネート(東京化成工業株式会社製、分子量244.29)
・IPDI:イソホロンジイソシアネート(東京化成工業株式会社製、分子量222.29)
・HDI:ヘキサメチレンジイソシアネート(東京化成工業株式会社製、分子量168.19)
・XDI:m-キシリレンジイソシアネート(東京化成工業株式会社製、分子量188.19)
・MDI:4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(東京化成工業(株)製、分子量250.25)
・TDI:トリレンジイソシアネート(東京化成工業(株)製、分子量174.16)
<末端封止化合物>
・MPEG(550):ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(東京化成工業(株)製、分子量525~575)
・AA:1-ジエチルアミノ-2-プロパノール(東京化成工業株式会社製、分子量131.22)
・BzOH:ベンジルアルコール(東京化成工業株式会社製、分子量108.14)
・GM:グリコール酸メチル(東京化成工業株式会社製、分子量90.08)
・C1:メタノール(東京化成工業(株)製、分子量32.04)
・C3:1-プロパノール(東京化成工業(株)製、分子量60.10)
・C5:1-ペンタノール(東京化成工業(株)製、分子量88.15)
・C7:1-ヘプタノール(東京化成工業(株)製、分子量102.18)
・C8:n-オクタノール(1-オクタノール)(東京化成工業(株)製、分子量130.23)
・C10:1-デカノール(東京化成工業(株)製、分子量158.29)
・C12:1-ドデシルアルコール(東京化成工業(株)製、分子量186.34)
・C17:1-ヘプタデカノール(東京化成工業(株)製、分子量256.47)
・C18:1-オクタデカノール(東京化成工業(株)製、分子量270.50)
・C20:1-エイコサノール(東京化成工業(株)製、分子量298.56)
・MP208:テトラエチレングリコールモノメチルエーテル(東京化成工業株式会社製、分子量208.25)
・MP(296):ヘキサエチレングリコールモノメチルエーテル(東京化成工業(株)製、分子量296.36)
・CHI:シクロヘキシルイソシアネート(東京化成工業株式会社製、分子量125.17)
・CHA:シクロヘキシルアミン(東京化成工業株式会社製、分子量99.18)
・PEG400:ポリエチレングリコール400(東京化成工業株式会社製、分子量380~420)
・ED-900:ポリアルキレングリコールジアミン;「ジェファーミン(登録商標)ED-900」、ハンツマン・コーポレーション製、分子量900
・M-1000:ポリアルキレングリコールモノアミン;「ジェファーミン(登録商標)M-1000」ハンツマン・コーポレーション製、分子量1000
<カルボジイミド化触媒>
・3-メチル-1-フェニル-2-ホスホレン-1-オキシド(東京化成工業株式会社製)
<溶剤>
・シクロヘキサノン(東京化成工業株式会社製)
【0081】
〔分析装置・方法〕
下記合成例における各分析は以下の装置及び方法にて行った。
<赤外吸収(IR)スペクトル>
・測定装置:「FTIR-8200PC」、株式会社島津製作所製
<重合度>
(1)ジイソシアネート化合物及び末端封止化合物を同時に配合してポリカルボジイミド化合物を合成した場合は、カルボジイミド基の重合度は計算に基づく値である。
(2)ジイソシアネート化合物のポリカルボジイミド化反応によりイソシアネート末端ポリカルボジイミドを合成した後、末端封止化合物を用いて末端イソシアネート基の封止反応を行い、ポリカルボジイミド化合物を合成した場合は、イソシアネート末端ポリカルボジイミドについて、電位差滴定法により(使用装置:自動滴定装置「COM-900」、平沼産業(株)製)、カルボジイミド基の重合度を求めた。具体的には、カルボジイミド化反応により得られたイソシアネート末端ポリカルボジイミドに、既知濃度のジ-n-ブチルアミンのトルエン溶液を混合して、末端イソシアネート基とジ-n-ブチルアミンとを反応させ、残存するジ-n-ブチルアミンを塩酸標準液で中和滴定し、イソシアネート基の残存量(末端NCO量[質量%])を算出した。この末端NCO量から、カルボジイミド基の重合度を求めた。
【0082】
(合成例1-1)
HMDI 100質量部、及びカルボジイミド化触媒0.5質量部を、還流管及び撹拌機付き反応容器に入れ、窒素気流下、170℃で20時間撹拌し、両末端にイソシアネート基を有するイソシアネート末端ポリカルボジイミド化合物(末端イソシアネート基量5.34質量%)を得た。IRスペクトル測定により波数2150cm-1前後のカルボジイミド基による吸収ピークを確認した。
得られたイソシアネート末端ポリカルボジイミド化合物85.6質量部を150℃で溶解し、これに、末端封止化合物としてMP550 59.9質量部(イソシアネート末端ポリカルボジイミド化合物の末端イソシアネート基と同モル当量)を添加し、180℃まで加熱して撹拌しながら2時間反応させた。反応生成物について、IRスペクトル測定により波数2200~2300cm-1のイソシアネート基の吸収が消失したことを確認した後、反応容器から取り出し、室温(25℃)まで冷却し、ポリカルボジイミド化合物(A1)を得た(Mn(数平均分子量理論値;以下、同様。):2672、1分子中のカルボジイミド基の数6)。
【0083】
(合成例1-2~1-3)
合成例1-1において、MP550を、AA(7.2質量部)とMP550(30.0質量部)(合成例1-2)、GM(4.9質量部)とMP550(30.0質量部)(合成例1-3)に変更し、それ以外は、合成例1-1と同様にして、ポリカルボジイミド化合物(A2)~(A3)をそれぞれ得た。
【0084】
(合成例1-4)
TMXDI 100質量部、及びカルボジイミド化触媒2.0質量部を、還流管及び撹拌機付き反応容器に入れ、窒素気流下、170℃で18時間撹拌混合して、カルボジイミド化反応を行い、両末端にイソシアネート基を有するイソシアネート末端ポリカルボジイミド化合物(末端イソシアネート基量6.74質量%)を得た。IRスペクトル測定により波数2150cm-1前後のカルボジイミド基による吸収ピークを確認した。
得られたイソシアネート末端ポリカルボジイミド化合物85.0質量部を150℃で溶解し、これに、末端封止剤としてMP550 75.0質量部(イソシアネート末端ポリカルボジイミド化合物の末端イソシアネート基と同モル当量)を添加し、180℃まで加熱して撹拌しながら2時間反応させた。反応生成物について、IRスペクトル測定にて、波数2200~2300cm-1のイソシアネート基の吸収が消失したことを確認した後、反応容器から取り出し、室温(25℃)まで冷却し、ポリカルボジイミド化合物(A4)を得た(Mn:2346、1分子中のカルボジイミド基の数5)。
【0085】
(合成例1-5)
HMDI 100質量部、及びカルボジイミド化触媒0.5質量部を、還流管及び撹拌機付き反応容器に入れ、窒素気流下、170℃で6時間撹拌し、両末端にイソシアネート基を有するイソシアネート末端ポリカルボジイミド化合物(末端イソシアネート基量9.16質量%)を得た。IRスペクトル測定により波数2150cm-1前後のカルボジイミド基による吸収ピークを確認した。
得られたイソシアネート末端ポリカルボジイミド化合物87.4質量部を150℃で溶解し、これに、末端封止化合物としてMP550 104.8質量部(イソシアネート末端ポリカルボジイミド化合物の末端イソシアネート基と同モル当量)を添加し、180℃まで加熱して撹拌しながら2時間反応させた。反応生成物について、IRスペクトル測定により波数2200~2300cm-1のイソシアネート基の吸収が消失したことを確認した後、反応容器から取り出し、室温(25℃)まで冷却し、ポリカルボジイミド化合物(A5)を得た(Mn:2017、1分子中のカルボジイミド基の数3)。
【0086】
(合成例1-6)
HMDI 100質量部、及びカルボジイミド化触媒0.5質量部を、還流管及び撹拌機付き反応容器に入れ、窒素気流下、170℃で24時間撹拌し、両末端にイソシアネート基を有するイソシアネート末端ポリカルボジイミド化合物(末端イソシアネート基量9.16質量%)を得た。IRスペクトル測定により波数2150cm-1前後のカルボジイミド基による吸収ピークを確認した。
得られたイソシアネート末端ポリカルボジイミド化合物84.8質量部を150℃で溶解し、これに、末端封止化合物としてMP550 38.1質量部(イソシアネート末端ポリカルボジイミド化合物の末端イソシアネート基と同モル当量)を添加し、180℃まで加熱して撹拌しながら2時間反応させた。反応生成物について、IRスペクトル測定により波数2200~2300cm-1のイソシアネート基の吸収が消失したことを確認した後、反応容器から取り出し、室温(25℃)まで冷却し、ポリカルボジイミド化合物(A6)を得た(Mn:3546、1分子中のカルボジイミド基の数10)。
【0087】
(合成例1-7)
HMDI 100質量部、及びカルボジイミド化触媒0.5質量部を、還流管及び撹拌機付き反応容器に入れ、窒素気流下、170℃で32時間撹拌し、両末端にイソシアネート基を有するイソシアネート末端ポリカルボジイミド化合物(末端イソシアネート基量9.16質量%)を得た。IRスペクトル測定により波数2150cm-1前後のカルボジイミド基による吸収ピークを確認した。
得られたイソシアネート末端ポリカルボジイミド化合物84.3質量部を150℃で溶解し、これに、末端封止化合物としてMP550 26.2質量部(イソシアネート末端ポリカルボジイミド化合物の末端イソシアネート基と同モル当量)を添加し、180℃まで加熱して撹拌しながら2時間反応させた。反応生成物について、IRスペクトル測定により波数2200~2300cm-1のイソシアネート基の吸収が消失したことを確認した後、反応容器から取り出し、室温(25℃)まで冷却し、ポリカルボジイミド化合物(A7)を得た(Mn:4638、1分子中のカルボジイミド基の数15)。
【0088】
(合成例1-8~1-10)
合成例1-1において、MP550を、PEG400(43.6質量部)(合成例1-8)、ED-900(98.0質量部)(合成例1-9)、M-1000(108.9質量部)(合成例1-10)に変更し、それ以外は、合成例1-1と同様にして、ポリカルボジイミド化合物(A8)~(A10)をそれぞれ得た。
【0089】
(合成例2-1)
HMDI 100質量部、及びカルボジイミド化触媒0.5質量部を、還流管及び撹拌機付き反応容器に入れ、窒素気流下、170℃で18時間撹拌し、両末端にイソシアネート基を有するイソシアネート末端ポリカルボジイミド化合物(末端イソシアネート基量6.20質量%)を得た。IRスペクトル測定により波数2150cm-1前後のカルボジイミド基による吸収ピークを確認した。
得られたイソシアネート末端ポリカルボジイミド化合物86.0質量部を150℃で溶解し、これに、末端封止化合物としてC3 7.6質量部(イソシアネート末端ポリカルボジイミド化合物の末端イソシアネート基と同モル当量)を添加し、180℃まで加熱して撹拌しながら2時間反応させた。反応生成物について、IRスペクトル測定により波数2200~2300cm-1のイソシアネート基の吸収が消失したことを確認した後、反応容器から取り出し、室温(25℃)まで冷却し、ポリカルボジイミド化合物(B1)を得た(Mn:1474、1分子中のカルボジイミド基の数5)。
【0090】
(合成例2-2)
合成例1-5において、MP550をC3(11.5質量部)に変更し、それ以外は、合成例1-5と同様にして、ポリカルボジイミド化合物(B2)を得た。
【0091】
(合成例2-3)
合成例1-6において、MP550をC3(4.2質量部)に変更し、それ以外は、合成例1-6と同様にして、ポリカルボジイミド化合物(B3)を得た。
【0092】
(合成例2-4)
合成例1-7において、MP550をC3(2.9質量部)に変更し、それ以外は、合成例1-7と同様にして、ポリカルボジイミド化合物(B4)を得た。
【0093】
(合成例2-5)
HMDI 100質量部、及びカルボジイミド化触媒0.5質量部を、還流管及び撹拌機付き反応容器に入れ、窒素気流下、170℃で3時間撹拌し、両末端にイソシアネート基を有するイソシアネート末端ポリカルボジイミド化合物(末端イソシアネート基量14.24質量%)を得た。IRスペクトル測定により波数2150cm-1前後のカルボジイミド基による吸収ピークを確認した。
得られたイソシアネート末端ポリカルボジイミド化合物89.9質量部を150℃で溶解し、これに、末端封止化合物としてC3 18.3質量部(イソシアネート末端ポリカルボジイミド化合物の末端イソシアネート基と同モル当量)を添加し、180℃まで加熱して撹拌しながら2時間反応させた。反応生成物について、IRスペクトル測定により波数2200~2300cm-1のイソシアネート基の吸収が消失したことを確認した後、反応容器から取り出し、室温(25℃)まで冷却し、ポリカルボジイミド化合物(B5)を得た(Mn:710、1分子中のカルボジイミド基の数1.5)。
【0094】
(合成例2-6)
HMDI 100質量部、及びカルボジイミド化触媒0.5質量部を、還流管及び撹拌機付き反応容器に入れ、窒素気流下、170℃で40時間撹拌し、両末端にイソシアネート基を有するイソシアネート末端ポリカルボジイミド化合物(末端イソシアネート基量1.81質量%)を得た。IRスペクトル測定により波数2150cm-1前後のカルボジイミド基による吸収ピークを確認した。
得られたイソシアネート末端ポリカルボジイミド化合物84.0質量部を150℃で溶解し、これに、末端封止化合物としてC3 2.2質量部(イソシアネート末端ポリカルボジイミド化合物の末端イソシアネート基と同モル当量)を添加し、180℃まで加熱して撹拌しながら2時間反応させた。反応生成物について、IRスペクトル測定により波数2200~2300cm-1のイソシアネート基の吸収が消失したことを確認した後、反応容器から取り出し、室温(25℃)まで冷却し、ポリカルボジイミド化合物(B6)を得た(Mn:4750、1分子中のカルボジイミド基の数20)。
【0095】
(合成例2-7)
合成例1-4において、MP550をC3(8.2質量部)に変更し、それ以外は、合成例1-4と同様にして、ポリカルボジイミド化合物(B7)を得た。
【0096】
(合成例2-8)
IPDI 100質量部、及びC3 9.0質量部を、還流管及び撹拌機付き反応容器に入れ、窒素気流下、150℃で2時間撹拌混合して反応させた後、容器内温度25℃まで冷却した。カルボジイミド化触媒2.0質量部を投入し、再度加熱して、150℃で12時間撹拌混合して反応させ、IRスペクトル測定にて、波数2200~2300cm-1のイソシアネート基の吸収ピークと波数2000~2200cm-1のカルボジイミド基の吸収ピークの比率が0.05以下に減少したことを確認した。
そして、反応生成物を反応容器から取り出し、室温(25℃)まで冷却し、ポリカルボジイミド化合物(B8)を得た(Mn:1234、1分子中のカルボジイミド基の数5)。
【0097】
(合成例2-9)
XDI 100質量部、及びC3 10.7質量部、及び、溶媒としてシクロヘキサノン 170質量部を、還流管及び撹拌機付き反応容器に入れ、窒素気流下、150℃で2時間撹拌混合して反応させた後、容器内温度25℃まで冷却した。カルボジイミド化触媒2.0質量部を投入し、再度加熱して、150℃で12時間撹拌混合して反応させ、IRスペクトル測定にて、波数2200~2300cm-1のイソシアネート基の吸収ピークと波数2000~2200cm-1のカルボジイミド基の吸収ピークの比率が0.05以下に減少したことを確認した。
そして、溶媒を減圧留去して、反応生成物を反応容器から取り出し、室温(25℃)まで冷却し、ポリカルボジイミド化合物(B9)を得た(Mn:1029、1分子中のカルボジイミド基の数5)。
【0098】
(合成例2-10)
HDI 100質量部、及びC3 11.9質量部、及び、溶媒としてシクロヘキサノン 170質量部を、還流管及び撹拌機付き反応容器に入れ、窒素気流下、150℃で2時間撹拌混合して反応させた後、容器内温度25℃まで冷却した。カルボジイミド化触媒2.0質量部を投入し、再度加熱して、150℃で12時間撹拌混合して反応させ、IRスペクトル測定にて、波数2200~2300cm-1のイソシアネート基の吸収ピークと波数2000~2200cm-1のカルボジイミド基の吸収ピークの比率が0.05以下に減少したことを確認した。
そして、溶媒を減圧留去して、反応生成物を反応容器から取り出し、室温(25℃)まで冷却し、ポリカルボジイミド化合物(B10)を得た(Mn:909、1分子中のカルボジイミド基の数5)。
【0099】
(合成例2-11)
TDI 100質量部、及びC3 11.5質量部、及び、溶媒としてシクロヘキサノン 170質量部を、還流管及び撹拌機付き反応容器に入れ、窒素気流下、120℃で2時間撹拌混合して反応させた後、容器内温度25℃まで冷却した。カルボジイミド化触媒0.5質量部を投入し、再度加熱して、120℃で10時間撹拌混合して反応させ、IRスペクトル測定にて、波数2200~2300cm-1のイソシアネート基の吸収ピークと波数2000~2200cm-1のカルボジイミド基の吸収ピークの比率が0.05以下に減少したことを確認した。
そして、溶媒を減圧留去して、反応生成物を反応容器から取り出し、室温(25℃)まで冷却し、ポリカルボジイミド化合物(B11)を得た(Mn:945、1分子中のカルボジイミド基の数5)。
【0100】
(合成例2-12)
MDI 100質量部、及びC3 8.0質量部、及び、溶媒としてシクロヘキサノン 160質量部を、還流管及び撹拌機付き反応容器に入れ、窒素気流下、120℃で2時間撹拌混合して反応させた後、容器内温度25℃まで冷却した。カルボジイミド化触媒0.5質量部を投入し、再度加熱して、120℃で12時間撹拌混合して反応させ、IRスペクトル測定にて、波数2200~2300cm-1のイソシアネート基の吸収ピークと波数2000~2200cm-1のカルボジイミド基の吸収ピークの比率が0.05以下に減少したことを確認した。
そして、溶媒を減圧留去して、反応生成物を反応容器から取り出し、室温(25℃)まで冷却し、ポリカルボジイミド化合物(B12)を得た(Mn:1402、1分子中のカルボジイミド基の数5)。
【0101】
(合成例2-13~2-25)
合成例2-1において、C3を、C5(11.2質量部)(合成例2-13)、C7(14.8質量部)(合成例2-14)、BzOH(13.7質量部)(合成例2-15)、C8(16.6質量部)(合成例2-16)、C10(20.1質量部)(合成例2-17)、C12(23.7質量部)(合成例2-18)、C17(32.6質量部)(合成例2-19)、C18(34.4質量部)(合成例2-20)、C1(4.1質量部)(合成例2-21)、C20(37.9質量部)(合成例2-22)、MP208(26.5質量部)(合成例2-23)、MP296(37.7質量部)(合成例2-24)、CHA(12.6質量部)(合成例2-25)に変更し、それ以外は、合成例2-1と同様にして、ポリカルボジイミド化合物(B13)~(B25)をそれぞれ得た。
【0102】
(合成例2-26)
HMDI 100質量部、CHI 23.9質量部及びカルボジイミド化触媒0.6質量部を、還流管及び撹拌機付き反応容器に入れ、窒素気流下、180℃で45時間撹拌して反応させ、IRスペクトル測定にて、波数2200~2300cm-1のイソシアネート基の吸収ピークと波数2000~2200cm-1のカルボジイミド基の吸収ピークの比率が0.05以下に減少したことを確認した。
そして、反応生成物を反応容器から取り出し、室温(25℃)まで冷却し、ポリカルボジイミド化合物(B26)を得た(Mn:1080、1分子中のカルボジイミド基の数5)。
【0103】
[水性樹脂架橋剤含有液の調製]
上記合成例で得られた各ポリカルボジイミド化合物を用いて、水性樹脂架橋剤含有液を調製した。
下記実施例及び比較例で用いた界面活性剤の詳細は以下のとおりである。
<界面活性剤>
・LA:ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アニオン性
【0104】
(実施例1~19、22、23、25~31及び34~45、比較例1~10)
ポリカルボジイミド化合物(A)及びポリカルボジイミド化合物(B)を、下記表1に示す各種類及び配合量で、160℃で4時間撹拌混合した後、80℃に冷却し、イオン交換水150質量部で希釈して撹拌混合し、各水性樹脂架橋剤含有液を得た。
【0105】
(実施例20、21、24、32及び33)
ポリカルボジイミド化合物(A)及びポリカルボジイミド化合物(B)を、下記表1に示す各種類及び配合量で、160℃で4時間撹拌混合後、80℃に冷却し、界面活性剤の水溶液3質量部(有効成分換算)をそれぞれ添加して、イオン交換水150質量部で希釈して撹拌混合し、各水性樹脂架橋剤含有液を得た。
【0106】
【0107】
[水性樹脂組成物の調製]
(水性ポリウレタン樹脂組成物)
上記実施例及び比較例で製造した各水性樹脂用架橋剤含有液5質量部(架橋剤として2質量部)と、カルボキシ基含有水性ポリウレタン樹脂(「ハイドラン(登録商標) WLS-210」、DIC株式会社製、樹脂固形分35質量%)285質量部(樹脂固形分換算100質量部)とを撹拌混合し、水性ポリウレタン樹脂組成物をそれぞれ調製した。
【0108】
(水性ポリエステル樹脂組成物)
上記実施例及び比較例で製造した各水性樹脂用架橋剤含有液5質量部(架橋剤として2質量部)と、カルボキシ基変性水性ポリエステル樹脂(「プラスコート(登録商標) Z-730」、互応化学工業株式会社製、樹脂固形分25質量%)400質量部(樹脂固形分換算100質量部)とを撹拌混合し、水性ポリエステル樹脂組成物をそれぞれ調製した。
【0109】
(水性アクリル樹脂組成物の調製)
上記実施例及び比較例で製造した各水性樹脂用架橋剤含有液5質量部(架橋剤として2質量部)と、カルボキシ基含有水性アクリル樹脂(「ボンコート(登録商標) VF-1060」、DIC株式会社製、樹脂固形分50質量%)200質量部(樹脂固形分換算100質量部)とを撹拌混合し、水性アクリル樹脂組成物をそれぞれ調製した。
【0110】
[水性樹脂組成物の評価]
上記において調製した各水性樹脂組成物について、以下に示す各種項目についての評価を行った。これらの評価結果を下記表2に示す。
【0111】
〔ポットライフ(保存安定性)〕
水性樹脂組成物の調製直後及び40℃で30日間保管した後の粘度を測定した。製造直後の粘度に対する30日保管後の粘度の変化率を求めることにより、ポットライフ(保存安定性)の評価を行った。
粘度の測定は、B型粘度計(「TVB-10M」、東機産業株式会社製;ローター:TM2、サンプル量50mL、温度20℃、回転数60rpm)にて行った。
粘度変化率を下記の評価基準で評価した。粘度変化率が0%に近いほど、保存安定性に優れており、評価A~Cの場合は、保存安定性が良好であると言える。また、評価Dの場合は、許容範囲であると言える。
<評価基準>
A:粘度変化率20%未満
B:粘度変化率20%以上30%未満
C:粘度変化率30%以上50%未満
D:粘度変化率50%以上100%未満
E:粘度変化率100%以上
【0112】
〔塗膜のグロス(鏡面光沢度)〕
(1)水性樹脂組成物を、アルミニウム板上に、バーコーター(ワイヤーロッドNo.32)を用いて塗布し、130℃で5分間乾燥させたものを塗膜試験片とした。
上記塗膜試験片について、ハンディング光沢度計(PG-1M)にて60℃の光沢度を測定した。
更に、上記塗膜試験片について、170℃5時間加熱する耐熱性試験を行った。この耐熱性試験後の塗膜試験片について、ハンディング光沢度計(PG-1M)にて60℃の光沢度を測定し、耐熱性試験前後の光沢度の変化量を算出した。なお、変化量は、光沢度が低下する場合は負の値となり、光沢度が増加する場合は正の数となる。
(2)一方、上記水性樹脂組成物でポリカルボジイミド化合物(A)及びポリカルボジイミド化合物(B)を含んでいない水性樹脂組成物を調製し、斯かる水性樹脂組成物を、アルミニウム板上に、バーコーター(ワイヤーロッドNo.32)を用いて塗布し、130℃で5分間乾燥させたものを比較用塗膜試験片(ブランク)とした。
上記比較用塗膜試験片(ブランク)について、ハンディング光沢度計(PG-1M)にて60℃の光沢度を測定した。
更に、上記比較用塗膜試験片(ブランク)について、170℃5時間加熱する耐熱性試験を行った。この耐熱性試験後の比較用塗膜試験片(ブランク)について、ハンディング光沢度計(PG-1M)にて60℃の光沢度を測定し、耐熱性試験前後の光沢度の変化量を算出した。なお、変化量は、光沢度が低下する場合は負の値となり、光沢度が増加する場合は正の数となる。
(3)そして、耐熱性試験前後の光沢度の変化量について、上記比較用塗膜試験片(ブランク)と上記塗膜試験片との比較を、下記式(A)から得られた評価点数により行った。
(塗膜試験片の耐熱性試験前後の光沢度の変化量)-(比較用塗膜試験片(ブランク)の耐熱性試験前後の光沢度の変化量)=評価点数・・・式(A)
下記の評価基準で、硬化膜(水性樹脂塗膜)の加熱後のグロス(鏡面光沢度)を評価した。評価点数が高いほど、硬化膜(水性樹脂塗膜)の加熱後のグロス(鏡面光沢度)の低下が抑制され、評価A~Cの場合は、硬化膜(水性樹脂塗膜)の加熱後のグロス(鏡面光沢度)の低下が十分に抑制されていると言える。また、評価Dの場合は、許容範囲であると言える。なお、耐熱性試験(加熱)前における鏡面光沢度(グロス)について、比較用塗膜試験片(ブランク)と塗膜試験片とではほぼ同等であった。
<評価基準>
A:0超
B:0以下-3超
C:-3以下-5超
D:-5以下-8超
E:-8以下
【0113】
〔塗膜の耐水性能〕
水性樹脂組成物を、アルミニウム板上に、バーコーター(ワイヤーロッドNo.32)を用いて塗布し、80℃で10分間乾燥させた後、室温(25℃)で1日間放置したものを塗膜試験片とした。
前記塗膜試験片上にイオン交換水を染み込ませた脱脂綿を載せ、24時間放置した後の塗膜試料の状態を目視観察し、下記の点数基準にて点数化し、試験回数10回の平均点を求めて、塗膜の耐水性能を評価した。
<点数基準>
4点:変化なし
3点:全体的に輪郭跡あり
2点:透明性がやや低下
1点:全体的に不透明または一部発泡あり
0点:全体的に発泡または塗膜に割れ
【0114】
得られた平均点について、下記の評価基準で、塗膜の耐水性能を評価した。点数が高いほど、該水性樹脂組成物から形成された塗膜が耐水性能に優れ、評価A~Cの場合は、塗膜の耐水性能が十分に高いと言える。また、評価Dの場合は、許容範囲であると言える。
<評価基準>
A:4点
B:3点以上4点未満
C:2点以上3点未満
D:1点以上2点未満
E:1点未満
【0115】
[ウェット・オン・ウェット塗装]
上記実施例及び比較例で調製した水性樹脂組成物を、アルミニウム板上に、エアースプレーにて塗布し(乾燥膜厚30μm)、10分間のセッティングを行った。その上に、同じ水性樹脂組成物を、エアースプレーにて塗布し(乾燥膜厚15μm、合計45μm)、80℃で3分間のプレヒートを行い、下塗りした。下塗りの塗工膜(未硬化塗膜)の上に、2液硬化型ポリウレタンクリア塗料(「ボデーペンウレタンクリア」、株式会社ソフト99コーポレーション製)を上塗りし(乾燥膜厚30μm)、80℃で焼き付けて、複層塗膜(ウェット・オン・ウェット塗装による硬化膜)を形成した。
前記複層塗膜は、いずれの水性樹脂組成物を用いた場合も、目視観察による異常は認められなかった。
上記においてウェット・オン・ウェット塗装で作製した複層塗膜について、下記に示す方法により層間付着性の評価を行った。この評価結果も下記表2に併せて示す。
【0116】
〔複層塗膜の層間付着性〕
前記複層塗膜の下塗り塗膜の層と上塗り塗膜の層との層間の付着性を、ASTM D3359-17に準じたクロスカット試験(碁盤目試験)により評価した。
試験条件は、前記複層塗膜に、2mm間隔で6×6の碁盤目をカッターで作成し、25℃にて、粘着力6.7N/cmのテープを貼り付け、テープを剥がした時の剥離状態(剥離面積割合)に基づいて、下記の評価基準で層間付着性の評価を行った。剥離面積割合が小さいほど、層間付着性が高く、評価A~Cの場合は、層間付着性が十分に高いと言える。また、評価Dの場合は、許容範囲であると言える。
<評価基準>
A:剥離面積割合0%
B:剥離面積割合0%以上5%未満
C:剥離面積割合5%以上15%未満
D:剥離面積割合15%以上35%未満
E:剥離面積割合35%以上
【0117】
【0118】
表1及び2に示した結果から分かるように、本発明の水性樹脂架橋剤は、これを用いて調製した水性樹脂組成物の保存安定性にも優れ、さらに、各種水性樹脂組成物の硬化物(水性樹脂塗膜)について、加熱後のグロス(鏡面光沢度)の低下を抑制することができることが認められた。また、ウェット・オン・ウェット塗装においても、層間付着性が良好な複層塗膜による硬化膜を形成できることが認められた。