(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-31
(45)【発行日】2024-08-08
(54)【発明の名称】車両用駆動装置
(51)【国際特許分類】
B60K 6/40 20071001AFI20240801BHJP
F16H 45/02 20060101ALI20240801BHJP
F16H 41/24 20060101ALI20240801BHJP
B60K 17/04 20060101ALI20240801BHJP
B60K 6/387 20071001ALI20240801BHJP
B60K 6/383 20071001ALI20240801BHJP
B60K 6/48 20071001ALI20240801BHJP
B60K 6/54 20071001ALI20240801BHJP
B60K 6/50 20071001ALI20240801BHJP
B60K 6/26 20071001ALI20240801BHJP
B60K 6/405 20071001ALI20240801BHJP
【FI】
B60K6/40
F16H45/02 Z
F16H41/24 A
F16H41/24 Z
B60K17/04 G
B60K6/387 ZHV
B60K6/383
B60K6/48
B60K6/54
B60K6/50
B60K6/26
B60K6/405
(21)【出願番号】P 2020149682
(22)【出願日】2020-09-07
【審査請求日】2023-08-10
(31)【優先権主張番号】P 2019163772
(32)【優先日】2019-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020006971
(32)【優先日】2020-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020027174
(32)【優先日】2020-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000149033
【氏名又は名称】株式会社エクセディ
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100091524
【氏名又は名称】和田 充夫
(74)【代理人】
【識別番号】100172236
【氏名又は名称】岩木 宣憲
(72)【発明者】
【氏名】河原 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】北田 賢司
(72)【発明者】
【氏名】北村 太一
(72)【発明者】
【氏名】村田 康介
【審査官】渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-086977(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107599822(CN,A)
【文献】特開2012-240556(JP,A)
【文献】特開2003-220842(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0081730(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 6/40
F16H 45/02
F16H 41/24
B60K 17/04
B60K 6/387
B60K 6/383
B60K 6/48
B60K 6/54
B60K 6/50
B60K 6/26
B60K 6/405
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンに接続される流体継手と、
前記エンジンに前記流体継手を介して接続される回転電機と
を備え、
前記流体継手が、
前記エンジンから出力されたトルクが入力され、前記エンジンの出力軸の回転軸まわりに回転するインペラと、
前記インペラと対向し、前記インペラから出力されたトルクが流体を介して入力されて、前記回転軸まわりに回転するタービンと
を有する、車両用駆動装置であって、
前記エンジンの前記出力軸と前記インペラとの間に設けられて、前記エンジンから出力されたトルクを、前記タービンを介さずに、前記インペラに伝達する経路と、
前記インペラに入力されたトルクを、前記インペラから前記タービンを介して、前記回転軸に対して前記インペラよりも径方向外側を通り、前記回転電機を介して出力する経路と
を
備え、
前記流体継手が、
前記タービンに接続されて、前記タービンから出力されるトルクが入力される外殻と、
固定部材に接続され、且つ、前記インペラと前記タービンとの間に配置されているステータと
を有し、
前記回転電機が、
前記外殻に接続された回転子と、
固定部に固定された固定子と
を有し、
前記流体継手の前記回転軸の軸方向の両端部にそれぞれ設けられて、前記流体継手を回転可能に支持する第1軸受と第2軸受とを備え、
前記第1軸受は、前記エンジンと前記インペラとの間でダンパ機構の入力部材に支持され、
前記第2軸受は、前記固定部に支持される、
車両用駆動装置。
【請求項2】
前記エンジンと前記回転電機との間に配置されるクラッチ要素を更に備え、
前記クラッチ要素が、前記インペラから前記タービンに向かう方向に前記回転軸に沿って摺動されて、前記クラッチ要素と前記外殻とが摩擦係合し、前記クラッチ要素と前記外殻とを締結可能とする、
請求項
1に記載の車両用駆動装置。
【請求項3】
前記クラッチ要素と前記インペラとが、一体に設けられている、
請求項
2に記載の車両用駆動装置。
【請求項4】
前記流体継手は、前記エンジンと変速機との間に配置され、
前記回転電機は、前記流体継手と前記変速機との間に配置され、
前記変速機には、前記エンジンから出力されるトルクが、前記流体継手の前記外殻及び前記回転電機を介して入力される、
請求項
1~
3のいずれか1つに記載の車両用駆動装置。
【請求項5】
前記外殻及び前記回転電機から出力されたトルクが、前記外殻及び前記回転電機に接続されている変速機の入力軸を介して、前記入力軸とは別に配置され、且つ、前記入力軸の回転軸と互いに平行な回転軸を有する軸に伝達される、請求項
1~
3のいずれか1つに記載の車両用駆動装置。
【請求項6】
前記外殻及び前記回転電機から出力されたトルクが、前記外殻及び前記回転電機に接続されている前記変速機の入力軸を介して、前記入力軸とは別に配置され、且つ、前記入力軸の回転軸と互いに平行な回転軸を有する軸に伝達される、請求項
4に記載の車両用駆動装置。
【請求項7】
エンジンに接続される流体継手と、
前記エンジンに前記流体継手を介して接続される回転電機と
を備え、
前記流体継手が、
前記エンジンから出力されたトルクが入力され、前記エンジンの出力軸の回転軸まわりに回転するインペラと、
前記インペラと対向し、前記インペラから出力されたトルクが流体を介して入力されて、前記回転軸まわりに回転するタービンと
を有し、
前記エンジンの前記出力軸と前記インペラとの間に設けられて、前記エンジンから出力されたトルクを、前記タービンを介さずに、前記インペラに伝達する経路と、
前記インペラに入力されたトルクを、前記インペラから前記タービンを介して、前記回転軸に対して前記インペラよりも径方向外側を通り、前記回転電機を介して出力する経路と、
前記エンジンと前記インペラとの間に配置されるワンウェイクラッチ
と
を備え、
前記ワンウェイクラッチは、前記ワンウェイクラッチの前記エンジン側から入力されて前記ワンウェイクラッチの前記インペラ側に出力されるトルクのみを伝達する、
車両用駆動装置。
【請求項8】
前記回転電機と前記変速機との間の伝達経路にポンプ駆動用入力軸が接続されるポンプを更に備える、請求項
4~
6のいずれか1つに記載の車両用駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンと変速機との間に配置される車両用駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両用駆動装置が開示されている。特許文献1の車両用駆動装置では、エンジンと変速機との間に、回転電機とトルクコンバータとが、エンジン側から順に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記車両用駆動装置では、エンジンと回転電機とが直接連結されている。このため、前記車両用駆動装置では、例えば、車両減速時に行われる回転電機によるエネルギー回生時に、エンジンを回転電機から切り離すことができないので、エンジンのフリクションロス等により、回転電機によるエネルギー回生効率が悪化する場合がある。
【0005】
従って、本発明の目的は、前記問題を解決することにあって、車両減速時の回転電機によるエネルギー回生効率を向上させることが可能な車両用駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明の1つの態様に係る車両用駆動装置は、
エンジンに接続される流体継手と、
前記エンジンに前記流体継手を介して接続される回転電機と
を備え、
前記流体継手が、前記エンジンから出力されたトルクが入力され、前記エンジンの出力軸の回転軸まわりに回転するインペラと、
前記インペラと対向し、前記インペラから出力されたトルクが流体を介して入力されて、前記回転軸まわりに回転するタービンと
を有する、車両用駆動装置であって、
前記エンジンの出力軸と前記インペラとの間に設けられて、前記エンジンから出力されたトルクを、前記タービンを介さずに、前記インペラに伝達する経路と、
前記インペラに入力されたトルクを、前記インペラから前記タービンを介して、前記回転軸に対して前記インペラよりも径方向外側を通り、前記回転電機を介して出力する経路とを有している。
【発明の効果】
【0007】
本発明の前記態様によれば、エンジンと回転電機とが、流体継手を介して接続されている。このような構成により、例えば、車両減速時に行われる回転電機によるエネルギー回生時に、エンジンのフリクションロス等の影響を低減して、回転電機によるエネルギー回生効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1A】本発明の第1実施形態の車両用駆動装置の概略入力経路図。
【
図2A】本発明の第2実施形態の車両用駆動装置の概略入力経路図。
【
図3A】
図1Aに示す第1実施形態の変形例の車両用駆動装置の概略入力経路図。
【
図3B】
図3Aに示す第1実施形態の変形例の車両用駆動装置の概略構成図。
【
図4A】
図2Aに示す第2実施形態の第1変形例の車両用駆動装置の概略入力経路図。
【
図4B】
図4Aに示す第2実施形態の第1変形例の車両用駆動装置の概略構成図。
【
図5A】
図2Aに示す第2実施形態の第2変形例の車両用駆動装置の概略入力経路図。
【
図5B】
図5Aに示す第2実施形態の第2変形例の車両用駆動装置の概略構成図。
【
図6A】
図2Aに示す第2実施形態の第3変形例の車両用駆動装置の概略入力経路図。
【
図6B】
図6Aに示す第2実施形態の第3変形例の車両用駆動装置の概略構成図。
【
図7A】
図2Aに示す第2実施形態の第4変形例の車両用駆動装置の概略入力経路図。
【
図7B】
図7Aに示す第2実施形態の第4変形例の車両用駆動装置の概略構成図。
【
図8A】
図2Aに示す第2実施形態の第5変形例の車両用駆動装置の概略入力経路図。
【
図8B】
図8Aに示す第2実施形態の第5変形例の車両用駆動装置の概略構成図。
【
図9A】
図2Aに示す第2実施形態の第6変形例の車両用駆動装置の概略入力経路図。
【
図9B】
図9Aに示す第2実施形態の第6変形例の車両用駆動装置の概略構成図。
【
図10A】本発明の第3実施形態の車両用駆動装置の概略入力経路図。
【
図10C】
図10Aの車両用駆動装置のクラッチ要素が外殻と締結した様子を示す概略構成図。
【
図11A】
図10Aに示す第3実施形態の第1変形例の車両用駆動装置の概略入力経路図。
【
図11C】
図11Aの車両用駆動装置のクラッチ要素が外殻と締結した様子を示す概略構成図。
【
図12】
図10Aに示す第3実施形態の第2変形例の車両用駆動装置の概略構成図。
【
図13】
図10Aに示す第3実施形態の第3変形例の車両用駆動装置の概略構成図。
【
図14A】本発明の第4実施形態の車両用駆動装置の概略入力経路図。
【
図14C】
図14Aの車両用駆動装置のクラッチ要素が外殻と締結した様子を示す概略構成図。
【
図15A】
図14Aに示す第4実施形態の第1変形例の車両用駆動装置の概略入力経路図。
【
図15B】
図15Aに示す第4実施形態の第1変形例の車両用駆動装置の概略構成図。
【
図16A】
図14Aに示す第4実施形態の第2変形例の車両用駆動装置の概略入力経路図。
【
図16B】
図16Aに示す第4実施形態の第2変形例の車両用駆動装置の概略構成図。
【
図17A】
図14Aに示す第4実施形態の第3変形例の車両用駆動装置の概略入力経路図。
【
図17B】
図17Aに示す第4実施形態の第3変形例の車両用駆動装置の概略構成図。
【
図18A】
図14Aに示す第4実施形態の第4変形例の車両用駆動装置の概略入力経路図。
【
図18B】
図18Aに示す第4実施形態の第4変形例の車両用駆動装置の概略構成図。
【
図19A】本発明の第5実施形態の車両用駆動装置の概略入力経路図。
【
図20A】
図1Aの車両用駆動装置の概略入力経路図にオイルポンプを追加した図。
【
図21A】
図2Aの車両用駆動装置の概略入力経路図にオイルポンプを追加した図。
【
図22A】
図3Aの車両用駆動装置の概略入力経路図にオイルポンプを追加した図。
【
図23A】
図5Aの車両用駆動装置の概略入力経路図にオイルポンプを追加した図。
【
図24A】
図6Aの車両用駆動装置の概略入力経路図にオイルポンプを追加した図。
【
図25A】
図7Aの車両用駆動装置の概略入力経路図にオイルポンプを追加した図。
【
図26A】
図8Aの車両用駆動装置の概略入力経路図にオイルポンプを追加した図。
【
図27A】
図9Aの車両用駆動装置の概略入力経路図にオイルポンプを追加した図。
【
図28A】
図19Aに示す第5実施形態の第1変形例の車両用駆動装置の概略入力経路図。
【
図29A】
図19Aに示す第5実施形態の第2変形例の車両用駆動装置の概略入力経路図。
【
図30A】
図19Aに示す第5実施形態の第3変形例の車両用駆動装置の概略入力経路図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明に係る実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0010】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態の車両用駆動装置1は、
図1Aに示すように、エンジン3と変速機4との間に配置される流体継手11と、流体継手11と変速機4との間に配置される回転電機2とを備える。
【0011】
車両用駆動装置1は、
図1Bに示すように、エンジン3の出力軸501及び変速機4の入力軸502と同軸の仮想の回転軸5と、エンジン3と変速機4との間の動力伝達経路50とを更に備え、一例として、HEV(ハイブリッド電気自動車)に適用できる。流体継手11及び回転電機2は、回転軸5から、回転軸5に対する径方向(以下、単に径方向という。)の外側に向かって順に配置されている。言い換えると、回転電機2は、流体継手11よりも径方向の外側に配置されている。
【0012】
動力伝達経路50は、第1経路51、第2経路52、第3経路53、及び第4経路54で構成されている。第1経路51は、エンジン3から出力されたトルクを後述する流体継手11のインペラ12に伝達する経路である。第2経路52は、インペラ12から出力されたトルクを、流体を介して、後述する流体継手11のタービン13に伝達する経路である。第3経路53は、タービン13から出力されたトルクを、後述する流体継手11の外殻を介して、変速機4に伝達する経路である。第4経路54は、径方向接続部材504に形成され、第1経路51の一部を構成する。なお、エンジン3の出力軸501と変速機4の入力軸502とは、同軸でなくてもよい。
【0013】
回転電機2は、固定子21と、回転子22とを有している。固定子21は、車両用駆動装置1のハウジング等の非回転部材である固定部6に固定されている。回転子22は、動力伝達経路50上で、固定子21と対向して固定子21よりも径方向の内側に配置されている。この回転子22は、後述する流体継手11の外殻14に接続され、外殻14と一体的に、固定部6に対して回転軸5まわりに回転可能に構成されている。なお、回転電機2の回転中心軸は、エンジン3の出力軸501又は変速機4の入力軸502とは、同軸でなくてもよい。
【0014】
流体継手11は、インペラ12と、タービン13と、外殻14と、ステータ15とを少なくとも有している。インペラ12は、第1経路51を経由して伝達されたエンジン3から出力されたトルクが入力され、回転軸5まわりに回転可能に構成されている。タービン13は、インペラ12に対向し、且つ、回転軸5が延びる方向においてインペラ12よりもエンジン3の近くに配置され、インペラ12から出力されたトルクがオイル等の流体を介して入力されて、回転軸5まわりに回転可能に構成されている。外殻14は、タービン13の径方向の外側に筒状に配置され、タービン13と変速機4の入力軸502とに接続され、固定部6に対して回転軸5まわりに回転可能に構成されている。ステータ15は、インペラ12とタービン13との間で、且つ、径方向に回転軸5の近傍に配置され、固定部材61を介して固定部6に接続されている。なお、ステータ15は、固定部材61を介して固定部6に接続されなくてもよく、例えば、ステータ15に内蔵されるワンウェイクラッチに接続されてもよい。
【0015】
第1経路51は、エンジン3の出力軸501と、伝達部材503と、インペラ12に接続された径方向接続部材504とで構成された第1経路形成部に形成されているトルク伝達経路である。伝達部材503は、出力軸501と径方向接続部材504とに接続され、径方向接続部材504(言い換えると、インペラ12)に近い方の端部が、径方向においてインペラ12よりも回転軸5に近い領域に配置されている回転部材である。径方向接続部材504は、インペラ12よりも回転軸5に近い領域から径方向の外側に延びて、インペラ12に接続されている。言い換えると、車両用駆動装置1では、エンジン3から出力されたトルクが、伝達部材503を介して回転軸5が延びる方向に伝達され、径方向接続部材504に形成された第4経路54を介して、径方向の内側から外側に向かってインペラ12に伝達される。なお、径方向接続部材504は、伝達部材503と一体に形成してもよいし、別体に形成してもよい。第2経路52は、インペラ12から流体を介してタービン13に至るトルク伝達経路であり、インペラ12から出力されたトルクが、流体継手11の流体を介してタービン13に伝達される。第3経路53は、タービン13から、外殻14及び回転電機2の回転子22を介して、変速機4の入力軸502に至るトルク伝達経路であり、タービン13から出力されたトルクが、外殻14及び回転電機2の回転子22を介して、変速機4の入力軸502に伝達される。
【0016】
第1実施形態の車両用駆動装置1のトルク伝達動作及びエネルギー回生動作について説明する。
【0017】
エンジン駆動の開始時等のエンジン3から変速機4に向けてのトルクは、次のように伝達される。
【0018】
エンジン駆動等によりエンジン3から出力されたトルクは、第1経路51を介して、具体的には、エンジン3の出力軸501、伝達部材503及び径方向接続部材504を順に介してインペラ12に伝達される。インペラ12に伝達されたトルクは、第2経路52を介して、具体的には、インペラ12及びタービン13間の流体を介してタービン13に伝達される。タービン13に伝達されたトルクは、第3経路53を介して、具体的には、流体継手11の外殻14及び回転電機2の回転子22、変速機4の入力軸502を介して変速機4に入力される。
【0019】
一方、エネルギー回生時等の変速機4からエンジン3に向けてのトルクは、次のように伝達される。
【0020】
車両減速等により変速機4から出力されたトルクは、第3経路53を介して、具体的には、変速機4の入力軸502、流体継手11の外殻14及び回転電機2の回転子22を介してタービン13に伝達される。このとき、回転電機2の回転子22に伝達されたトルクが、エネルギー回生に用いられる。
【0021】
タービン13に伝達されたトルクは、実質的にインペラ12に伝達されない。これは、流体継手11が、実質的にインペラ12からタービン13に向けての一方向にのみ動力を伝達する特性を有しているからである。このため、車両用駆動装置1では、エネルギー回生時において、エンジン3は、実質的に回転電機2と切り離されている。
【0022】
要するに、車両用駆動装置1によれば、流体継手11のトルク伝達経路は、トルクが、エンジン側から、インペラ12とタービン13とを経て、外殻14から出力されるように構成している。よって、流体継手11の外殻14にモータなどの回転電機2を接続するだけで、変速機側に回転電機2を接続することができる。このような構成により、例えば、車両減速時に行われる回転電機2によるエネルギー回生時に、流体継手11によりエンジン3が回転電機2から切り離されて、エンジンのフリクションロス等の影響を低減することができる。その結果、回転電機2によるエネルギー回生効率を向上させることができる。これに対して、従来技術に記載したように流体継手にモータを接続する場合には、エンジン側に接続することになり、例えば、エネルギー回生時などにおいてエンジンフリクションが発生する原因となる。
【0023】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態の車両用駆動装置1は、
図2Aに示すように、クラッチ要素7を備えている点で、第1実施形態と異なっている。なお、第2実施形態では、第1実施形態と同一部分に同一参照番号を付して説明を省略し、第1実施形態と異なる点について説明する。
【0024】
クラッチ要素7は、エンジン3と回転電機2との間に流体継手11と並列に配置され、第1経路51の中間と回転電機2との間に第5経路55を形成する。第5経路55は、動力伝達経路50の一部を構成する。
【0025】
クラッチ要素7は、
図2Bに示すように、インペラ12と外殻14とを締結可能に配置されている。クラッチ要素7によりインペラ12と外殻14とが締結されることで、エンジン3から出力されたトルクが、タービン13を介さずに、第5経路55を介して変速機4に入力される。
【0026】
クラッチ要素7は、エンジン駆動時に、動作モードにより締結又は解放され、エネルギー回生時に、解放される。クラッチ要素7は、ノーマルクローズ又はノーマルオープンのどちらでもよい。
【0027】
流体継手11は、インペラ12とタービン13との間で発生する場合がある滑りによって、トルクの伝達効率が悪化するおそれがある。
【0028】
第2実施形態の車両用駆動装置1によれば、エンジン3と回転電機2との間に、流体継手11と並列に配置されたクラッチ要素7を有している。このような構成により、流体継手11で発生した滑りによるトルクの伝達効率の悪化を防ぎ、車両の燃費を向上させることができる。
【0029】
(変形例)
車両用駆動装置は、
図3A~
図9Bに示すように、ダンパ機構8を更に備えることができる。ダンパ機構8は、例えば、振動を減衰するばね部材などで構成される。このダンパ機構8は、
図3A~
図4B及び
図7A~
図7Bに示すように、エンジン3と流体継手11との間に配置してもよいし、
図5A~
図5B及び
図8A~
図8Bに示すように、クラッチ要素7と回転電機2との間に配置してもよいし、
図6A~
図6B及び
図9A~
図9Bに示すように、エンジン3とクラッチ要素7との間に配置してもよい。
【0030】
まず、第1実施形態の変形例として、
図3A及び
図3Bに示すように、ダンパ機構8をエンジン3と流体継手11との間に、第1経路51上に配置してもよい。これにより、エンジン3で発生した振動を減衰させて、この振動が第2経路52及び第3経路53を介して回転電機2及び変速機4に伝達されるのを回避することができる。
【0031】
第2実施形態の第1変形例として、
図4A及び
図4Bに示すように、ダンパ機構8を、エンジン3と、流体継手11及びクラッチ要素7との間に、第1経路51上に配置してもよい。これにより、エンジン3で発生した振動を減衰させて、この振動が第2経路52及び第3経路53を介して、又は第5経路55及び第3経路53を介して回転電機2及び変速機4に伝達されるのを回避することができる。
【0032】
第2実施形態の第2~第6変形例として、
図5A~
図9Bに示すように、ダンパ機構8を、エンジン3と第3経路53、例えば回転電機2との間の伝達経路上でクラッチ要素7と直列に配置してもよい。
【0033】
図5A及び
図5Bでは、第2変形例としてダンパ機構8がクラッチ要素7と第3経路53、例えば回転電機2との間に配置されている。
図6A及び
図6Bでは、第3変形例としてダンパ機構8がエンジン3とクラッチ要素7との間に配置されている。このような構成によって、エンジン3で発生した振動を減衰させて、この振動が第5経路55及び第3経路53を介して回転電機2及び変速機4に伝達されるのを回避することができる。
【0034】
図7A及び
図7Bでは、第2実施形態の第4変形例として、第1変形例と比べてインペラ12とタービン13の配置が互いに対向したまま入れ替わって配置されている。言い換えれば、回転軸5の軸方向にエンジン3側から変速機4に向かってインペラ12とタービン13との順に配置されている。なお、後述する
図8A~
図9Bにおいても、同じ順に配置されている。
図7A及び
図7Bに示すように、ダンパ機構8を、エンジン3と、流体継手11及びクラッチ要素7との間に、第1経路51上に配置してもよい。なお、
図7Aから
図9Bまでにおいて、それぞれ対応する第1変形例~第3変形例と比べて、第1経路51が、エンジン3の出力軸501と、伝達部材503と、インペラ12に接続された径方向接続部材504とで構成されることに変わりはない。
【0035】
図8A及び
図8Bでは、第5変形例としてダンパ機構8がクラッチ要素7と第3経路53、例えば回転電機2との間に配置されている。
図9A及び
図9Bでは、第6変形例としてダンパ機構8がエンジン3とクラッチ要素7との間に配置されている。このような構成によっても、エンジン3で発生した振動をダンパ機構8で減衰させて、この振動が第5経路55及び第3経路53を介して回転電機2及び変速機4に伝達されるのを回避することができる。
【0036】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態の車両用駆動装置1は、
図10Bに示すように、外殻14及び回転電機2から出力されたトルクが変速機4の入力軸502を介して副軸505に伝達される点で、第1実施形態とは異なっている。なお、第3実施形態では、第1実施形態又は第2実施形態と同一部分に同一参照番号を付して説明を省略し、第1実施形態又は第2実施形態と異なる点について説明する。
【0037】
第3実施形態の車両用駆動装置1は、動力伝達機構16と、副軸505とを更に備えている。動力伝達機構16は、流体継手11と変速機4との間に配置されている。動力伝達機構16は、例えば入力軸502に固定された歯車16Aと、この歯車16Aとかみ合い、且つ、入力軸502の回転軸と互いに平行な回転軸を有して変速機4にトルクを伝達する副軸505に固定された別の歯車16Bとで構成されている。なお、動力伝達機構16は、このような歯車機構に限定されずに、例えば、ベルト駆動機構又はチェーン駆動機構であってもよい。
副軸505は、変速機4の入力軸502とは別に配置され、且つ、変速機4の入力軸502の回転軸と互いに平行な回転軸を有している。つまり、流体継手11が有する外殻14及び回転電機2から出力されたトルクは、入力軸502と動力伝達機構16とを介して、副軸505に伝達される。なお、「平行」とは、副軸505が変速機4の入力軸502に対して略平行な状態も含む。
【0038】
第3実施形態の車両用駆動装置1は、入力軸502から出力されたトルクを、動力伝達機構16と副軸505とを介して、変速機4に伝達する第6経路56を有している。つまり、第3実施形態の車両用駆動装置1によれば、外殻14及び回転電機2から出力されたトルクは、第3経路53と、第6経路56とを介して変速機4に伝達される(
図10A参照)。このような構成により、変速機4の配置位置が変速機4の入力軸502上に限定されることなく、動力伝達機構16と副軸505とを介して、変速機4の入力軸502上以外の位置にも配置可能となり、設計の自由度が向上する。その結果、例えば、入力軸502の回転軸上の変速機4が配置されていないスペースに、入力軸502によって駆動されるオイルポンプ111を配置することができる。
【0039】
なお、後述するクラッチ要素7と外殻14とが離間している場合、エンジン3から出力されたトルクは、第1経路51、第2経路52、第3経路53、第4経路54および第6経路56で構成された動力伝達経路50Aを経由して、変速機4に伝達される。
【0040】
図10Bに示すように、流体継手11の回転軸5の軸方向の両端部には、それぞれ第1軸受91と第2軸受92とが設けられている。第1軸受91は、ダンパ機構8の入力部材81に支持されて、流体継手11に接続されている軸部材14Aを回転可能に支持する。第2軸受92は、タービン13と変速機4との間の固定部6に支持されて、入力軸502を回転可能に支持する。言い換えると、流体継手11は、ダンパ機構8に支持される第1軸受91と、非回転部材に支持される第2軸受92とによって回転可能に支持されている。このような構成によって、流体継手11は、流体継手11の回転軸5の軸方向の両端部が第1軸受91と第2軸受92とで挟まれて位置決めされていることになり、流体圧力によって流体継手11が軸方向に膨張するのを規制することができ、変形を抑制することができる。なお、車両用駆動装置1は、第1軸受91と第2軸受92とにそれぞれ隣接する第1封止部93と第2封止部94とを更に備えている。第1封止部93及び第2封止部94によって、流体継手11及び変速機4の内部からのオイルの流出を封止している。
【0041】
図10Cに示すように、第3実施形態の車両用駆動装置1では、クラッチ要素7が、流体継手11内で外殻14と接離可能に対向しつつインペラ12と一体に設けられている。クラッチ要素7は、インペラ12からタービン13に向かう方向に回転軸5に沿って摺動し、クラッチ要素7と外殻14とを接離可能に接続させる。クラッチ要素7と外殻14とは、摩擦係合によって締結する。クラッチ要素7と外殻14とが締結することで、エンジン3から出力されたトルクが、第2経路52を経由せず、第1経路51と、第3経路53と、第4経路54と、第5経路55と、第6経路56とで構成される動力伝達経路50Bを経由して、変速機4に伝達される。
【0042】
第2実施形態におけるクラッチ要素7と同様に、第3実施形態におけるクラッチ要素7は、エンジン駆動時に、動作モードにより締結又は解放され、エネルギー回生時に、解放される。クラッチ要素7は、ノーマルクローズ又はノーマルオープンのどちらでもよい。
【0043】
このような第3実施形態により、クラッチ要素7と外殻14とを締結させて、流体継手11で発生した滑りによるトルクの伝達効率の悪化を防ぎ、車両の燃費を向上させることができる。また、クラッチ要素7は、外殻14と締結するときに流体継手11に流入する方向の流体流れと同方向に、具体的には、インペラ12からタービン13に向けて摺動して、応答性の低下を抑制することができる。
【0044】
(変形例)
車両用駆動装置1は、第3実施形態の第1変形例として、
図11B及び
図11Cに示すように、クラッチ要素7をインペラ12と別に、流体継手11内でインペラ12よりも流体継手11の上流側でかつ外殻14と接離可能に対向して配置してもよい。第3実施形態の第1変形例の車両用駆動装置1によれば、第3実施形態の車両用駆動装置1と同様に、外殻14及び回転電機2から出力されたトルクは、第3経路53と、第6経路56とを介して変速機4に伝達される(
図11A参照)。
このような構成によっても、クラッチ要素7と外殻14とを締結させて、流体継手11で発生した滑りによるトルクの伝達効率の悪化を防ぎ、車両の燃費を向上させることができる。
【0045】
また、第3実施形態の第2及び第3変形例として、
図12及び
図13に示すように、外殻14に支持されて、伝達部材503を回転可能に支持する第1軸受91を流体継手11の流体中に配置してもよい。例えば、流体継手11内でインペラ12よりも流体継手11の上流側の外殻14の回転軸部付近に第1軸受91を配置してもよい。このような構成によって、第1軸受91で生じた熱を流体継手11の流体を介して放熱することができ、また、伝達部材503の支持剛性を向上させることができる。
【0046】
(第4実施形態)
本発明の第4実施形態の車両用駆動装置1は、
図14Aに示すように、ワンウェイクラッチ71を備えている点で、第1実施形態と異なっている。なお、第4実施形態では、第1~第3実施形態と同一部分に同一参照番号を付して説明を省略し、第1~第3実施形態と異なる点について説明する。
【0047】
第4実施形態の車両用駆動装置1は、
図14Bに示すように、ワンウェイクラッチ71がインペラ12のエンジン3側に隣接するように配置されている。言い換えると、ワンウェイクラッチ71は、径方向接続部材504とインペラ12との間に配置されている。径方向接続部材504の中間部には、分岐点72が設けられている。第4実施形態において分岐点72とは、エンジン3から出力されたトルクをインペラ12又はクラッチ要素7に伝達するために、トルクの伝達経路が分かれる箇所を意味する。ワンウェイクラッチ71は、エンジン3側からワンウェイクラッチ71に入力され、且つ、ワンウェイクラッチ71からインペラ12側に出力されるトルクのみを伝達する。このような構成によれば、インペラ12からエンジン3に向かう方向にトルクが伝達されるのを防ぐことができる。その結果、車両減速時にタービン13の回転速度がインペラ12の回転速度を上回ることで生じるドラッグトルクによって回転電機2によるエネルギー回生効率が悪化するのを抑制することができる。なお、ワンウェイクラッチ71は、インペラ12のエンジン3側に隣接せずに、分岐点72とインペラ12との間の径方向接続部材504に配置されてもよい。
【0048】
第4実施形態の車両用駆動装置1によれば、エンジン3から出力されたトルクは、エンジン3の出力軸501、伝達部材503、径方向接続部材504、及びワンウェイクラッチ71を順に介して、インペラ12に伝達される。これは、第1~第3実施形態における第1経路51と同様のトルク伝達経路である。
【0049】
また、第4実施形態の車両用駆動装置1によれば、
図14Cに示すように、クラッチ要素7がインペラ12と別に、流体継手11内でインペラ12よりも流体継手11の上流側で、且つ、外殻14と接離可能に対向して配置されている。クラッチ要素7は、インペラ12からエンジン3に向かう方向に回転軸5に沿って摺動し、クラッチ要素7と外殻14とを接離可能に接続させる。クラッチ要素7と外殻14とは、摩擦係合によって締結する。クラッチ要素7と外殻14とが締結することで、エンジン3から出力されたトルクが、第2経路52を経由せず、第1経路51と、第3経路53と、第4経路54と、第5経路55と、第6経路56とで構成される動力伝達経路50Bを経由して、変速機4に伝達される。このような構成によれば、外殻14を介してクラッチ要素7と流体継手11の出力側とを係合できるため、エンジンブレーキを使用することができる。
【0050】
更に、第4実施形態の車両用駆動装置1によれば、
図14B及び
図14Cに示すように、クラッチ要素7の径方向の最外端の位置を流体継手11の径方向の最外端の位置と同程度にすることができる。このような構成によれば、
図13に示す第3実施形態の第3変形例と比較して、クラッチ要素7の径方向の最外端の位置が径方向の内側になる。その結果、回転電機2が占める空間をより大きくして、回転電機2による出力を向上させることができる。
【0051】
(変形例)
車両用駆動装置1は、第4実施形態の第1変形例として、
図15A及び
図15Bに示すように、ダンパ機構8を、エンジン3と、流体継手11及びクラッチ要素7との間に、第1経路51上に配置してもよい。このような構成によれば、回転電機2によるエネルギー回生効率が悪化するのを抑制しつつ、エンジン3で発生した振動を減衰させることができる。その結果、エンジン3で発生した振動が第2経路52及び第3経路53を介して、又は第5経路55及び第3経路53を介して回転電機2及び変速機4に伝達されるのを回避することができる。
【0052】
第4実施形態の第2~第3変形例として、
図16A~
図17Bに示すように、ダンパ機構8を、エンジン3と第3経路53、例えば回転電機2との間の伝達経路上でクラッチ要素7と直列に配置してもよい。
【0053】
図16A及び
図16Bでは、第2変形例としてダンパ機構8がクラッチ要素7と第3経路53、例えば回転電機2との間に配置されている。
図17A及び
図17Bでは、第3変形例としてダンパ機構8がエンジン3とクラッチ要素7との間に配置されている。これらのような構成によっても、回転電機2によるエネルギー回生効率が悪化するのを抑制することができる。更に、第4実施形態の第2~第3変形例において、ダンパ機構8は、流体継手11の内部に配置されている湿式ダンパであるため、エンジン3で発生した振動をダンパ機構8でより減衰させることができる。その結果、エンジン3で発生した振動が第5経路55及び第3経路53を介して回転電機2及び変速機4に伝達されるのを回避することができる。
【0054】
第4実施形態の第4変形例として、
図18A及び
図18Bに示すように、ダンパ機構8を、エンジン3と、流体継手11及びクラッチ要素7との間に、第1経路51上に配置してもよい。このような構成によれば、車両用駆動装置1は、ワンウェイクラッチ71が分岐点72とインペラ12との間に配置される場合よりも簡素な構造にして、回転電機2によるエネルギー回生効率が悪化するのを抑制することができる。また、エンジン3で発生した振動を減衰させて、この振動が第2経路52及び第3経路53を介して、又は第5経路55及び第3経路53を介して回転電機2及び変速機4に伝達されるのを回避することができる。
【0055】
(第5実施形態)
本発明の第5実施形態の車両用駆動装置1は、
図19Aに示すように、オイルポンプ112を備えている点で、第1実施形態と異なっている。なお、第5実施形態では、第1~第4実施形態と同一部分に同一参照番号を付して説明を省略し、第1~第4実施形態と異なる点について説明する。
【0056】
第5実施形態の車両用駆動装置1は、
図19Bに示すように、オイルポンプ112の駆動用入力軸が回転電機2と変速機4との間の第3経路53に接続されている。オイルポンプ112は、例えば、メカニカルポンプである。オイルポンプ112が駆動されることで、オイルポンプ112は、流体継手11、及び油圧で駆動されるクラッチ要素7それぞれを動作させるための所定の作動圧力を供給する。オイルポンプ112の駆動用入力軸は、回転電機2と変速機4との間において、第3経路53を経由して伝達されたトルクにより駆動される。ここで、第3経路53は、タービン13から、外殻14及び回転電機2の回転子22を介して、変速機4の入力軸502に至るトルク伝達経路であり、タービン13から出力されたトルクが、外殻14及び回転電機2の回転子22を介して、変速機4の入力軸502と共にオイルポンプ112の駆動用入力軸に伝達される。
次に、第5実施形態の車両用駆動装置1に係るエンジン3の始動又は再始動の流れの一例を説明する。まず、回転電機2を駆動させてオイルポンプ112を駆動させる。オイルポンプ112が駆動されることで、オイルポンプ112は、所定の作動圧力を流体継手11及びクラッチ要素7にそれぞれ供給することができる。その後、エンジン3を始動又は再始動させて、流体継手11の所定の性能により車両を発進させる。また、クラッチ要素7の所定の性能により流体継手11のインペラ12と外殻14とを直結させて車両を駆動させる。
これに対して、回転電機2でオイルポンプ112を駆動させない場合、オイルポンプ112は、所定の作動圧力を流体継手11及びクラッチ要素7に供給することができない。そのため、エンジン3からのトルクは、流体継手11及びクラッチ要素7を介して変速機側に十分に伝達できない。
【0057】
すなわち、オイルポンプ112の駆動用入力軸は、エンジン3の始動前又は再始動前に回転電機2により駆動されない場合、エンジン3の始動後又は再始動後にタービン13が駆動されるまで駆動しない。
オイルポンプ112が駆動されなければ、流体継手11で伝達可能なトルク容量が小さくなり、又はクラッチ要素7によりインペラ12と外殻14とが締結できなくなる。その結果、オイルポンプ112を駆動させることが困難になってしまう。
そのため、流体継手11及びクラッチ要素7に所定のトルクが入力されるまでに回転電機2を駆動させ、回転子22が回転軸5まわりに回転することで、オイルポンプ112は駆動される。ここで、所定のトルクとは、エンジン3から入力され、オイルポンプ112を駆動させるために、又は車両を発進させるために必要なトルクのことである。
このような構成によれば、流体継手11及びクラッチ要素7に所定のトルクが入力されるよりも先に回転電機2を駆動させることで、回転電機2で発生したトルクが第3経路53を経由してオイルポンプ112の駆動用入力軸に伝達され、オイルポンプ112を駆動させる。その結果、流体継手11がオイルポンプ112から所定の作動圧力を供給されているため、エンジン3から変速機4へのトルク伝達を円滑に行うことができる。また、クラッチ要素7もオイルポンプ112から所定の作動圧力を供給されているため、エンジン3から変速機4へのトルク伝達を円滑に行うことができる。
【0058】
本発明の第5実施形態に係るオイルポンプ112は、オイルポンプ112よりも第3経路53における上流側の構成によらず、車両用駆動装置1に設けることができる。つまり、オイルポンプ112の駆動用入力軸は、例えば、
図20A~
図27Bに示すような構成においても、回転電機2と接続され、回転電機2により駆動されることができる。
このような構成によれば、流体継手11及びクラッチ要素7に所定のトルクが入力されるよりも先に回転電機2を駆動させることで、回転電機2で発生したトルクが第3経路53を経由してオイルポンプ112の駆動用入力軸に伝達され、オイルポンプ112を駆動させる。その結果、流体継手11がオイルポンプ112から所定の作動圧力を供給されているため、エンジン3から変速機4へのトルク伝達を円滑に行うことができる。また、クラッチ要素7もオイルポンプ112から所定の作動圧力を供給されているため、エンジン3から変速機4へのトルク伝達を円滑に行うことができる。
【0059】
(変形例)
車両用駆動装置1は、第5実施形態の第1変形例として、
図28A及び
図28Bに示すように、ワンウェイクラッチ771を設けていてもよい。ワンウェイクラッチ771は、インペラ12のエンジン3側に隣接するように配置されている。言い換えると、ワンウェイクラッチ771は、径方向接続部材504とインペラ12との間に配置されている。径方向接続部材504の中間部には、分岐点772が設けられている。第5実施形態の第1変形例において分岐点772とは、エンジン3から出力されたトルクをインペラ12又はクラッチ要素7に伝達するために、トルクの伝達経路が分かれる箇所を意味する。エンジン3が停止しているとき、回転電機2で発生したトルクでオイルポンプ112を駆動させると、回転電機2から出力されたトルクは、外殻14を介して回転電機2の回転子22と接続されているタービン13も駆動させる。このとき、タービン13の回転速度は、停止しているエンジン3に接続されているインペラ12の回転速度を上回る。そのため、流体継手11における流体によりドラッグトルクが発生する。つまり、オイルポンプ112を駆動させるとき、回転電機2は、オイルポンプ112の駆動に必要なトルクと、流体継手11で発生するドラッグトルクとを合わせたトルクを発生させる必要がある。これを解消するものが本変形例である。
【0060】
本発明の第5実施形態の第1変形例に係る構成によれば、ワンウェイクラッチ771は、エンジン3側からワンウェイクラッチ771に入力され、且つ、ワンウェイクラッチ771からインペラ12側に出力されるトルクのみを伝達する。そのため、インペラ12からエンジン3に向かう方向にトルクが伝達されるのを防ぎ、ドラッグトルクの増加を抑えることができる。その結果、オイルポンプ112を駆動させるとき、回転電機2で発生させる必要があるトルクを低下させることができる。なお、ワンウェイクラッチ771は、インペラ12のエンジン3側に隣接せずに、分岐点772とインペラ12との間の径方向接続部材504に配置されてもよい。
【0061】
また、車両用駆動装置1は、第5実施形態の第2~第3変形例として、
図29A~
図30Bに示すように、動力切断機構701を、オイルポンプ112とタイヤ401との間に、伝達経路が直列となるように配置してもよい。
【0062】
図29A及び
図29Bでは、本発明の第5実施形態の第2変形例として、動力切断機構701が変速機4の内部に、トルク伝達上、直列的に配置されている。動力切断機構701は、例えば、クラッチ要素である。動力切断機構701は、伝達部材を介して、流体継手11の外殻14及び回転電機2の回転子22と接続されている。また、動力切断機構701は、変速機4の出力軸に接続されている。すなわち、流体継手11及び回転電機2から第3経路53を経由して変速機4に入力されたトルクは、動力切断機構701を介して切断可能に、変速機4から出力される。
図30A及び
図30Bでは、本発明の第5実施形態の第3変形例として、動力切断機構701が変速機4とタイヤ401との間に配置されている。すなわち、流体継手11及び回転電機2から第3経路53と変速機4とを経由したトルクは、動力切断機構701を介して切断可能に、タイヤ401に入力される。つまり、本発明の第5実施形態の第2~第3変形例において、動力切断機構701は、オイルポンプ112よりも伝達経路の下流側で且つタイヤ401よりも上流側に配置されている。
ここで、もし動力切断機構701を設けない構成において、エンジン3の駆動に備えて流体継手11及びクラッチ要素7の作動圧力を供給するために、流体継手11及び回転電機2の回転子22がオイルポンプ112を駆動させるために回転すると、回転電機2で発生したトルクがタイヤ401に伝達されてしまい、意図せずに車両が発進してしまう。これを解消するものが本変形例である。
【0063】
本発明の第5実施形態の第2~第3変形例のような構成によれば、回転電機2で発生したトルクの伝達を動力切断機構701において切断することができる。動力切断機構701においてトルクの伝達を切断している状態は、変速機4において車両の変速モードをニュートラルにしている状態と同様である。つまり、回転電機2で発生したトルクがタイヤ401に伝達されない。その結果、回転電機2の回転子22がオイルポンプ112を駆動させるために回転しても、タイヤ401にはトルクが伝達されず、車両が意図せずに発進することを回避することができる。
【0064】
なお、前記様々な実施形態又は変形例のうちの任意の実施形態又は変形例を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。また、実施形態同士の組み合わせ又は実施例同士の組み合わせ又は実施形態と実施例との組み合わせが可能であると共に、異なる実施形態又は実施例の中の特徴同士の組み合わせも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の前記態様に係る車両用駆動装置は、例えば、HEV(ハイブリッド電気自動車)に適用可能である。
【符号の説明】
【0066】
1 車両用駆動装置
11 流体継手
12 インペラ
13 タービン
14 外殻
14A 軸部材
15 ステータ
16 動力伝達機構
16A 歯車
16B 歯車
111 オイルポンプ
112 オイルポンプ
2 回転電機
21 固定子
22 回転子
3 エンジン
4 変速機
401 タイヤ
5 回転軸
50 動力伝達経路
50A 動力伝達経路
50B 動力伝達経路
51 第1経路
52 第2経路
53 第3経路
54 第4経路
55 第5経路
56 第6経路
501 出力軸
502 入力軸
503 伝達部材
504 径方向接続部材
505 副軸
6 固定部
61 固定部材
7 クラッチ要素
71 ワンウェイクラッチ
72 分岐点
701 動力切断機構
771 ワンウェイクラッチ
772 分岐点
8 ダンパ機構
81 入力部材
91 第1軸受
92 第2軸受
93 第1封止部
94 第2封止部