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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-31
(45)【発行日】2024-08-08
(54)【発明の名称】消火栓装置
(51)【国際特許分類】
   A62C 35/20 20060101AFI20240801BHJP
【FI】
A62C35/20
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020164746
(22)【出願日】2020-09-30
(65)【公開番号】P2022056802
(43)【公開日】2022-04-11
【審査請求日】2023-08-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002169
【氏名又は名称】彩雲弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 悠史
(72)【発明者】
【氏名】増田 有行
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-055024(JP,A)
【文献】実開昭60-138558(JP,U)
【文献】特開2002-291928(JP,A)
【文献】特開平11-128381(JP,A)
【文献】実開平07-021064(JP,U)
【文献】実開平06-034655(JP,U)
【文献】実開平04-090368(JP,U)
【文献】欧州特許出願公開第01224954(EP,A1)
【文献】中国特許出願公開第110694215(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 2/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端にノズルを有する消火用ホースを備え、トンネルに設置される消火栓装置であって、
前記ノズルを、前記トンネルの車道に沿って設けられる側溝に固定する固定手段を備え、
前記固定手段は、前記ノズルを支持する支持部と、前記側溝に挿入されて固定される固定部を有し、
前記固定部は、前記側溝に挿入されている状態で、形状が変化して前記側溝の内面と圧接する変形部を有することを特徴とする消火栓装置。
【請求項2】
先端にノズルを有する消火用ホースを備えて、トンネルに設置される消火栓装置であって、
前記ノズルを、前記トンネルの車道に沿って設けられる側溝に固定する固定手段を備え、
前記固定手段は、伸縮可能な脚部を有することを特徴とする消火栓装置。
【請求項3】
先端にノズルを有する消火用ホースを備えて、トンネルに設置される消火栓装置であって、
前記ノズルを、前記トンネルの車道に沿って設けられる側溝に固定する固定手段を備えると共に、
前記トンネル内の構造物に接触して、前記ノズルの放水時の反動を抑えるストック部を備えることを特徴とする消火栓装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、トンネルに設置される消火栓装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネルに設置される消火栓装置は、先端にノズルを有する消火用ホースを備えており、消火用ホースを介して供給される消火水をノズルから火元等に向けて放出し、トンネル内で発生する火災の消火(延焼防止を含む)を行うためのものである。
【0003】
この種の消火栓装置は、消防隊員による使用だけでなく、火災に遭遇した一般の人による初期消火のための使用も想定されている。
【0004】
しかしながら、一般の人には、火災が消火可能な段階かどうかの判断は困難である上に、火元等の消火対象に接近しての消火は恐怖と危険が伴うが、消火するか、避難するかの判断は、一般の人個々の判断に委ねるしかない。
【0005】
そこで、ノズルの固定手段を設けて、ノズルを固定した状態で放水することができるようにし、ノズルを固定して火元等に向けて放水を開始したら、すぐに避難することができるようにすることが考えられる。
【0006】
特開2002-291928号公報(特許文献1)には、ノズルが装着されるノズルホルダを消火栓ボックスに固定可能にする技術が開示されている。この技術を用いれば、ノズルを固定して火元等に向けて放水を開始したら、すぐに避難することができるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2002-291928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記の特許文献1に開示の技術の場合、トンネル内に固定のものとして設けられる消火栓ボックスに固定されるノズルから放水することになるため、火元等が遠すぎたり、火元等との間に障害物があったりすること等により、消火対象に向けての効果的な放水ができないことがあると考えられる。
【0009】
この発明は、前記の事情に鑑み、ノズルを固定して放水することができながら、消火対象に向けて効果的に放水することができる、消火栓装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、先端にノズルを有する消火用ホースを備えた、トンネルに設置される消火栓装置において、前記ノズルを、前記トンネルの車道に沿って設けられる側溝に固定する固定手段を設けたことを特徴とする消火栓装置、である。
【0011】
この発明において、前記固定手段は、前記ノズルを支持する支持部と、前記側溝に挿入されて固定される固定部を有するものとすることができる。また、前記固定部は、前記側溝に挿入されている状態で、形状が変化して前記側溝の内面と圧接する変形部を有するものとすることができる。また、前記変形部は、弾性部材からなるものであり、前記挿入部は、前記側溝に挿入されている状態で、前記変形部を押圧して形状を変化させる押圧部を有するものとすることができる。また、前記固定手段は、伸縮可能な脚部を有するものとすることができる。また、前記トンネル内の構造物に接触して、前記ノズルの放水時の反動を抑えるストック部をさらに設けたものとすることができる。
【発明の効果】
【0012】
この発明においては、ノズルをトンネル内の車道に沿って設けられる側溝に固定することができる。そのため、車道に沿ってノズルの固定位置を適宜、自由に決めることができ、消火対象との間の距離が適したものとなる位置に固定したり、消火対象との間の障害物を避けられる位置に固定したりすること等ができる。
【0013】
したがって、この発明によれば、ノズルを固定して放水することができながら、消火対象に向けて効果的に放水することができる、消火栓装置を得るこができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】この発明の消火栓装置の実施形態の一例を示したものであり、ノズルスタンドがノズルを支持しつつ、円形水路に固定している状態の一部(円形水路部分を含むトンネルの構造部分)断面、側面図である。
図2】同上のノズルとノズルスタンドを拡大して示したものである。(a)、(b)いずれも、一部断面(円形水路部分)断面、側面図であるが、(a)は弾性部材が変形していない状態を示したものであり、(b)は弾性部材が変形して円形水路の内面に圧接している状態(図1の状態)を示したものである。
図3】同上のノズルとノズルスタンドを拡大して示したものであり、弾性部材が変形しておらず、かつ、脚部が縮長している状態の側面図である。
図4】同上のノズルスタンドの押圧部を上下に移動させる移動機構部の一例を示したものであり、移動機構部が押圧部を上方に位置させて弾性部材を変形させている状態の、移動機構部が設けられるノズルスタンドの下部部分の断面図である。
図5】ノズルの反動を抑えるストック部の一例を示したものである。(a)、(b)いずれも側面図であるが、(a)はストック部が後方に移動しておらず、かつ、折りたたみ部が展開していない状態を示したものであり、(b)はストック部が後方に移動し、かつ、折り畳み部が展開して、監視員通路に当接する状態を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明の実施形態の一例について、図1乃至5を参照しつつ、消火栓装置1として説明する。
【0016】
[基本構成]
消火栓装置1は、図1に示したように、トンネル20に設置されるものであり、筐体2を備えていると共に、常時は筐体2の内部に収納される、先端にノズル4を有する消火用ホース3を備えており、火災発生時、消火用ホース3を筐体2から引き出して、消火用ホース3を介して供給される消火水をノズル4から火元等に向けて放出し、トンネル20内で発生する火災の消火(延焼防止を含む)を行うことができるものである。
【0017】
ここで、図1は、消火栓装置1のトンネル20への設置の態様として、筐体2が側壁21に設けられる箱抜き22内に設置される場合を示したものである。筐体の設置の態様としては、その他にも、側壁21に壁掛け式に設置されるもの、側壁21と車道23の間に設けられる監視員通路24上に設置されるもの、その監視員通路24内に埋設されるもの等がある。この発明は、そのような他の態様で筐体が設置される消火栓装置にも適用が可能なものである。
【0018】
[ノズルスタンド(固定手段の一例)]
そして、消火栓装置1は、同図に示したように、トンネル20内に車道23に沿って設けられる円形水路25(側溝の一例)にノズル2を固定するものとして、ノズルスタンド5(固定手段の一例)を備えている。
【0019】
消火栓装置1においては、ノズルスタンド5を備えていることにより、車道23に沿ってノズル4の固定位置を適宜、自由に決めることができ、消火対象との間の距離が適したものとなる位置に固定したり、消火対象との間の障害物を避けられる位置に固定したりすること等ができる。
【0020】
したがって、消火栓装置1によれば、ノズル4を固定して放水することができながらも、消火対象に向けて効果的に放水することができる。
【0021】
さらに、消火栓装置1においては、ノズル4の固定先を円形水路25のような側溝としていることにより、溝の凹状の形状部分を固定構造の一部をなすものとして利用することができ、その固定構造をしっかりとノズル2を固定できるものとすることができる。
【0022】
[ノズルスタンドの具体例]
・全体構成
ノズルスタンド5は、図2に詳細を示したように、本体部5aと、本体部5aの上部に設けられる、上下方向に回転可能にノズル4を支持するノズル支持部5bと、本体5aの下部に設けられる、長さ方向に伸縮可能な脚部5cと、脚部5cの下部に設けられる、円形水路25内に挿入されて固定される固定部5dを有している。
【0023】
・ノズル支持部
ノズル支持部5bは、前記の通り、上下方向に回転可能にノズル4を支持するものとしている。それにより、ノズル4の上下方向の角度を適宜、調節することができる。ノズル支持部5bは、それ自体を本体部5aに対して左右方向に回転可能に設けられるものとしてもよい。そのようにすることにより、ノズル4の左右方向の角度も適宜、調節することができるようになる。
【0024】
・脚部
なお、脚部5cは、前記の通り、伸縮可能に設けられるものとしている。それにより、常時は、脚部5cを縮長させておくことができ(図3参照)、筐体2内に収納しておくことができる。
【0025】
・固定の態様
ノズルスタンド5は、具体的には、ノズル4を円形水路25の上方の位置に固定するものであり、脚部5cが伸長し、本体5aと共に円形水路25上に起立する状態で、固定部5dが円形水路25内に挿入されて固定されることにより、円形水路25に固定されるものである(図1及び2参照)。
【0026】
・固定構造の具体例
ここで、円形水路25は、地中に位置する断面円形の水路部25aと、水路部25aの上方に位置して、上部側が地上に開口しつつ、下部側が水路部25aと連通する、細幅の溝として設けられる集水口25bを有している(図1及び2参照)。以下に説明する固定部5d等によるノズルスタンド5の固定構造は、固定先が円形水路25のような側溝である場合に好適なものである。
【0027】
・・挿入部、段部
脚部5cには、固定部5dと共に円形水路25内に挿入される挿入部5eが固定部5dの上方に設けられている(図2参照)。挿入部5eの上方には、円形水路25内への挿入の範囲を挿入部5eまでに制限する段部5fが設けられている(図2参照)。
【0028】
・・固定部、挿入部及び段部の大きさ等
固定部5dと挿入部5eは、円形水路25内に挿入可能な大きさ(固定部5dが有する弾性部材5hについては、自由状態にある時の大きさ)で形成されている(図2(a)参照)。具体的には、円形水路25の地上に開口する集水口25bから挿入可能な大きさに形成されている。一方、段部5fは、円形水路25の集水口25bの地上側の口縁部周囲に上方から接する位置、大きさで形成されている(図2(a)参照)。
【0029】
・・弾性部材(変形部の一例)、押圧部
固定部5dは、円形水路25内に挿入されている状態で、変形して円形水路25の内面25cに圧接する弾性部材5h(変形部の一例)と、弾性部材5hを下方から支持すると共に、弾性部材5hを下方から押圧して変形させる押圧部5iを有している(図2参照)。
【0030】
具体的には、弾性部材5hは、上方の挿入部5eと下方の押圧部5iの間に位置して、自由状態(変形していない状態)では、円柱状の形状をなしており(図2(a)参照)、円形水路25の内面25cとは接触していない。押圧部5iは、脚部5cに対して上下方向に移動可能に設けられており、上方に移動することにより、弾性部材5hを下方から押し潰すようにして、円形水路25の水路部25aの内面25cに圧接させるように平たく変形させる(図2(b)参照)。この際、押圧部5iと段部5fとの間の距離が短くなるので、段部5fと弾性部材5hによる、円形水路25の集水口25bの口縁部周囲を地上側と水路部側から上下方向に挟む構造が形成される(図2(b)参照)。これにより、固定部5dを円形水路25に固定する構造が形成されている。
【0031】
なお、弾性部材5eは、例えば、ゴム材料から形成されるものとすることができる。
【0032】
・・押圧部の移動機構
押圧部5iの上下の移動機構としては、例えば、図4に示したように、弾性部材5hを上下方向に貫通し、下端が押圧部5iに接続される支柱部5jを設け、その支柱部5jを上下に移動させることにより、押圧部5fを上下に移動させるものとすることができる。また、支柱部5jの上下に移動させる機構は、例えば、回転力を直線の動きに変える歯車機構とすることができる。すなわち、同図に示したように、支柱部5jの脚部5c内に至る部分に上下方向に形成される歯すじ5kを設けると共に、その歯すじ5kと噛み合う歯車5mを設け、歯車5mを回転させることにより、支柱部5jを上下に移動させるものとすることができる。なお、歯車5mの回転は、図示は省略するが、一方の端部が脚部5cの内部で歯車5mに接続されると共に、他方の端部がハンドル部として脚部5cの外部に露出するアーム部材によるものとすることができる。
[ストック部]
消火栓装置1は、図5に示したような、トンネル20の監視員通路24(トンネルの構造物の一例)に当接して、ノズル4の放水時の反動を抑えるストック部6が設けられるものとすることができる。ストック部6は、図示の例のように、ノズル4の側部に設けられるものとすることができると共に、前後方向に移動可能なスライド部分6aと、展開可能な折り畳み部分6bを有するものとすることができる。常時は、スライド部6aが前方に位置し、かつ、折り畳み部6bが折り畳まれた状態で、スライド部6全体がノズル4の側部に位置するものとすることができる(図5(a)参照)。使用時(消火時)は、スライド部6aが後方に移動しつつ、折り畳み部6bが下方に展開するものとすることができ、例えば、ノズルスタンド5により、ノズル4が円形水路25の上方に固定されている状態で、ストック部6の展開状態の折り畳み部6bが監視員通路24に当接可能なものとすることができる(図5(b)参照)。なお、ストック部6は、監視員通路24に当接するものとするのに代えて、別の構造部分に当接するものとしてもよいし、また、ノズル4に設けられるものとするのに代えて、ノズルスタンド5に設けられるものとしてもよい。
【0033】
[構成の変更例]
消火栓装置1においては、例えば、以下のように構成を変更することができる。
【0034】
押圧部5iの上下の移動機構については、脚部5cに対して押圧部5iを上下に移動させるものとするのに代えて、図示は省略するが、段部5fを形成する部分を脚部5cと別体のものとすると共に、その部分を脚部5cの周囲に螺着される筒状のものとし、その筒状の部分を回転させることにより、その部分に対して脚部5c側が押圧部5iと共に上下に移動するものとしてもよい。
【0035】
なお、この筒状の部分については、脚部5cの周囲に螺着されるものとするのに代えて、脚部5cの周囲に上下方向に摺動可能に装着されると共に、脚部5cとの間の係合構造により所定位置で固定可能なものとしてもよい。その場合、押圧部5iの上下の移動は、脚部5c側を手動で上下に移動させることにより行うことになるが、円形水路25への固定の際には、脚部5c側を上方に移動させて、筒状の部分の段部を含む固定部5dによる前記の固定構造が形成される状態で、筒状の部分が脚部5cに係合、固定されるものとすることができる。
【0036】
また、ノズルスタンド5は、消火時に円形水路25に固定されるものとするのに代えて、ノズル4とは別体のものとしつつ、予め円形水路25に固定されるものとし、消火時にノズル4が取り付けられるものとしてもよい。そのようにすることにより、ノズル4を筐体2から取り出す際や、ノズルスタンド5を使用せずに、ノズル4を把持しながら消火する際に、ノズルスタンド5が邪魔にならないようにすることができる。
【0037】
さらに、ノズル4の固定手段については、車道23に停車している車両に固定されるものとすることが考えられる。そのようにすることにより、ノズル4の固定位置は、固定先の車両の停車位置に限定されることになるが、火元等の消火対象の位置次第では、近い位置にノズル4を固定することができると考えられる。なお、この場合の固定手段は、磁石を用いるものとすることができる。
【符号の説明】
【0038】
1:消火栓装置 2:筐体 3:消火用ホース 4:ノズル
5:ノズルスタンド 5a:本体部 5b:ノズル支持部 5c:脚部
5d:固定部 5e:挿入部 5f:段部 5h:弾性部材
5i:押圧部 5j:支柱部 5k:歯すじ 5m:歯車
6:ストック部 6a:スライド部 6b:折り畳み部
20:トンネル 21:側壁 22:箱抜き 23:車道
24:監視員通路 25:円形水路 25a:水路部 25b:集水口
25c:内面
図1
図2
図3
図4
図5