(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-31
(45)【発行日】2024-08-08
(54)【発明の名称】車体下部構造
(51)【国際特許分類】
B60K 1/04 20190101AFI20240801BHJP
B62D 21/00 20060101ALI20240801BHJP
B60L 5/00 20060101ALI20240801BHJP
B60L 53/12 20190101ALI20240801BHJP
H02J 50/70 20160101ALI20240801BHJP
H02J 50/10 20160101ALI20240801BHJP
【FI】
B60K1/04 Z
B62D21/00 B
B60L5/00 B
B60L53/12
H02J50/70
H02J50/10
(21)【出願番号】P 2020177378
(22)【出願日】2020-10-22
【審査請求日】2023-08-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】川▲崎▼ 嗣巨
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-156165(JP,A)
【文献】特開2019-006200(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 1/04
B62D 21/00
B60L 5/00
B60L 53/12
H02J 50/70
H02J 50/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サスペンションメンバと、
前記サスペンションメンバに連結されたサスペンションリンクと、
前記サスペンションメンバの近傍に配設された非接触給電用のコイルユニットと、
前記コイルユニットの周囲に設けられた磁気シールドと、
を備え、
前記磁気シールドは、前記サスペンションメンバへの前記サスペンションリンクの連結点近傍において前記サスペンションメンバに締結されて
おり、
前記サスペンションメンバは、車幅方向に互いに離間して配置された一対の辺部を備えており、
前記一対の辺部の各々には、前記サスペンションリンクの連結点が設けられており、
前記磁気シールドは、前記辺部に設けられた前記連結点近傍において前記サスペンションメンバに締結されており、
前記磁気シールドは、前記一対の辺部に締結されて当該辺部同士を架橋する補剛部材を有している、車体下部構造。
【請求項2】
サスペンションメンバと、
前記サスペンションメンバに連結されたサスペンションリンクと、
前記サスペンションメンバの近傍に配設された非接触給電用のコイルユニットと、
前記コイルユニットの周囲をとり囲んで設けられた磁気シールドと、
を備え、
前記磁気シールドは、前記サスペンションメンバへの前記サスペンションリンクの連結点近傍において前記サスペンションメンバに締結されている、車体下部構造。
【請求項3】
前記サスペンションメンバは、車幅方向に互いに離間して配置された一対の辺部を備えており、
前記一対の辺部の各々には、前記サスペンションリンクの連結点が設けられており、
前記磁気シールドは、前記辺部に設けられた前記連結点近傍において前記サスペンションメンバに締結されている、請求項
2に記載の車体下部構造。
【請求項4】
前記磁気シールドは、前記一対の辺部に締結されて当該辺部同士を架橋する第1補剛部材を有している、請求項
3に記載の車体下部構造。
【請求項5】
前記サスペンションリンクは、前側連結点と後側連結点とにおいて前記サスペンションメンバに連結されており、
前記磁気シールドは、前記後側連結点近傍において前記サスペンションメンバに締結されている、請求項1乃至
4のいずれか一項に記載の車体下部構造。
【請求項6】
前記サスペンションメンバは、車幅方向に互いに離間して配置された一対のステー部材を介して車体に固定されており、
前記磁気シールドは、前記一対のステー部材に締結されて当該ステー部材同士を架橋する第2補剛部材を有している、請求項1乃至
5のいずれか一項に記載の車体下部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体下部構造に関し、特に、非接触給電用のコイルユニットを備えた車両の車体下部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
非接触給電用のコイルユニットは、サスペンションリンクが連結されたサスペンションメンバの近傍に配設されることがある。特許文献1は、関連する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、サスペンションメンバの近傍に上記コイルユニットを配設する場合、その配設位置によっては、サスペンションメンバの形状や断面寸法にレイアウト上の制約が及び、サスペンションリンクの支持剛性を高く維持するのが困難になる場合がある。
【0005】
本発明の目的は、非接触給電用のコイルユニットをサスペンションメンバの近傍に配設した車両において、サスペンションメンバによるサスペンションリンクの支持剛性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様にかかる車体下部構造では、非接触給電用のコイルユニットの周囲に設けられた磁気シールドが、サスペンションメンバへのサスペンションリンクの連結点近傍においてサスペンションメンバに締結されている。
【発明の効果】
【0007】
上記車体下部構造によれば、サスペンションメンバによるサスペンションリンクの支持剛性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る車体下部構造の平面図である。
【
図3】実施形態に係る車体下部構造の要部展開斜視図である。
【
図4】磁気シールドの締結部の一構造を示す一部断面図である。
【
図5】磁気シールドの締結部の一構造を示す一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態にかかる車両Vの車体下部構造Sについて、図面を参照して説明する。各図中のFR,RRは、車体前後方向前方、後方をそれぞれ示し、LH,RHは、車幅方向左方、右方を、UP,DNは、車体上下方向上方、下方をそれぞれ示す。なお、以下の説明では、車幅方向左方、右方、車体前後方向前方、後方、車体上下方向上方、下方を、それぞれ単に「左方」「右方」「前方」「後方」「上方」「下方」と称する。また、同一の機能を有する要素については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0010】
図1乃至
図3を参照するに、実施形態にかかる車両Vは、例えば、電動モータのみを駆動力源として走行する電気自動車(EV)である。車両Vの車体前部には、モータ室が設けられ、その内部に、車両駆動用モータMT、減速機RD、図示しないパワーデリバリーモジュール、図示しないインバータ等が配置されている。車両Vでは、車体フロアFLの下に、高電圧(例えば350V)の車両駆動用バッテリBTが配置されている。
【0011】
車体の前部には、
図1及び
図2に示すように、車幅方向両側において車両前後方向に延びる一対のサイドメンバSMが設けられている。両サイドメンバSMの下方側には、サスペンションメンバ1が、略水平に配置され、4隅に設けられたボルト等のマウント部材1
Mを介して、左右のサイドメンバSMによって上方から支持されている。サスペンションメンバ1の上には、車両駆動用モータMT、減速機RD、図示しないステアリングシステム等が搭載されている。サスペンションメンバ1は、サブフレームとも称される。
【0012】
サスペンションメンバ1は、
図1及び
図3に示すように、前辺部11、左辺部12、右辺部13、及び後辺部14から構成され、平面視で角枠状に形成されている。前辺部11及び後辺部14は、車体前後方向に互いに離間して配置され、各々、車幅方向に延伸している。また、左辺部12及び右辺部13は、車幅方向に互いに離間して配置され、各々、車体前後方向に延伸している。サスペンションメンバ1は、前辺部11と左辺部12と右辺部13と後辺部14とによって囲まれた開口部O
1を有している。前辺部11、左辺部12、右辺部13、及び後辺部14は、例えば鋼製の上側パネル1aと下側パネル1bとが互いのフランジ部で接合されることにより、中空閉断面状に形成されている。
【0013】
本実施形態では、後辺部14もまた、平面視で角枠状に形成されている。具体的には、前側辺部14Aと、前側辺部14Aよりも後方側に位置する後側辺部14Bと、前側辺部14A及び後側辺部14Bの左端部を連結する左側辺部14Cと、前側辺部14A及び後側辺部14Bの右端部を連結する右側辺部14Dと、から構成されている。後辺部14は、前側辺部14Aと後側辺部14Bと左側辺部14Cと右側辺部14Dとによって囲まれた開口部O2を有している。左側辺部14Cと前側辺部14Aとで形成される後辺部14の左前角部14LFには、左辺部12の後端部が接続され、右側辺部14Dと前側辺部14Aとで形成される後辺部14の右前角部14RFには、右辺部13の後端部が接続されている。
【0014】
サスペンションメンバ1の後端部は、
図1乃至
図3に示すように、車幅方向に互いに離間して配置された左右のステー部材2(2
A,2
B)を介して車体に固定されている。左側ステー部材2
Aの先端部は、左側辺部14
Cと後側辺部14
Bとで形成される後辺部14の左後角部14
LR、即ち、サスペンションメンバ1の左後角部のマウント部材1
Mが設けられた部分に、図示しないボルト等の締結具を介して締結されている。右側ステー部材2
Bの先端部も、右側辺部14
Dと後側辺部14
Bとで形成される後辺部14の右後角部14
RR、即ち、サスペンションメンバ1の右後角部のマウント部材1
Mが設けられた部分に、図示しないボルト等の締結具を介して締結されている。左右のステー部材2
A,2
Bの後端部は、それぞれ車体フロアFLの骨格部材に、ボルト等の締結具2
T(
図2参照)を介して締結されている。
【0015】
図1に示すように、サスペンションメンバ1の車幅方向両側部には、左右のサスペンションリンク3
A,3
Bが、それぞれ前側連結点J
Fと後側連結点J
Rとにおいて連結されている。以下の説明において、前側連結点J
Fと後側連結点J
Rとを総称して、連結点Jと呼ぶこともある。サスペンションリンク3
A,3
Bの車幅方向外側の先端部31には、図示しない前輪が取り付けられている。サスペンションリンク3
A,3
Bの車幅方向内側には、前側連結点J
Fを構成する前側連結部32と、後側連結点J
Rを構成する後側連結部33とが形成されている。サスペンションリンク3
A,3
Bの形状は、平面視において、前側連結部32と先端部31とを結ぶ仮想線が車幅方向と略平行になるように、かつ、後側連結部33と前側連結部32とを結ぶ仮想線が車体前後方向と略平行になるように設定されている。サスペンションリンク3
A,3
Bは、例えばアルミ鍛造材から構成され、ロアアームとも称される。
【0016】
左右のサスペンションリンク3A,3Bの前側連結点JFは、サスペンションメンバ1の左辺部12と右辺部13とに、それぞれ設けられ、サスペンションメンバ1の後辺部14よりも前方に位置している。サスペンションリンク3A,3Bの前側連結部32は、各々、ブッシュを介した状態でサスペンションメンバ1に対して上下回動可能に連結されている。
【0017】
左右のサスペンションリンク3A,3Bの後側連結点JRは、サスペンションメンバ1の後辺部14の左側辺部14Cと右側辺部14Dとに、それぞれ設けられ、後辺部14の前側辺部14Aよりも後方に位置している。サスペンションリンク3A,3Bの後側連結部33は、各々、ブッシュを介した状態でサスペンションメンバ1に対して上下回動可能に連結されている。
【0018】
図1乃至
図3に示すように、車両Vは、非接触給電用のコイルユニット4を備えている。コイルユニット4は、図示しない高電圧ハーネス、整流器等を介して、バッテリBTに電気的に接続されており、例えば路面に設けられた外部の送電装置から非接触で電力供給を受け、バッテリBTへ充電を行う。
【0019】
本実施形態では、コイルユニット4は、サスペンションメンバ1の下方に略水平に配置され、後述する磁気シールド5に締結された状態で、当該磁気シールド5を介してサスペンションメンバ1に固定され、支持されている。なお、コイルユニット4は、磁気シールド5を介さずにサスペンションメンバ1の下面に直接締結され、支持されてもよい。
【0020】
コイルユニット4は、平面視で矩形状であり、
図2に示すように、受電コイル41と、シールド部42と、樹脂カバー43とを備えている。シールド部42は、矩形状の下向き開口を有する有底箱状の形状を有している。樹脂カバー43は、シールド部42の下向き開口を覆う樹脂製の板材であり、コイルユニット4の下面を構成している。受電コイル41は、銅線、アルミ線等のリッツ線を扁平な渦巻状に巻回したものであり、シールド部42と樹脂カバー43との間に形成される収容空間内に収容されている。シールド部42は、例えばアルミニウム等の非磁性材料から構成されており、受電コイル41が形成する磁束が、コイルユニット4の上方へ漏れることを抑制する。
【0021】
コイルユニット4は、平面視においてサスペンションメンバ1の後辺部14と重複する位置に配設されている。本実施形態では、
図1及び
図2に示すように、コイルユニット4の平面視中央部が、後辺部14の開口部O
2に望むように配設されている。そして、受電コイル41の一部が、後辺部14の前側辺部14
A及び後側辺部14
Bの直下に位置するように配設されている。
【0022】
磁気シールド5は、例えばアルミニウム等の非磁性材料から構成されたパネル材であり、サスペンションメンバ1より下方に、略水平に配置されて、コイルユニット4の周辺に搭載された各種機器、車体の構造部材などを下方から覆う。これにより、受電コイル41が形成する磁束が、コイルユニット4周辺の各種機器等に与える影響を抑制することができる。
【0023】
磁気シールド5は、
図1乃至
図3に示すように、プレート部51と、プレート部51を補剛する第1補剛部材である前側スティフナ52と、プレート部51を補剛する第2補剛部材である後側スティフナ53とから構成されている。
【0024】
本実施形態では、プレート部51は、平面視で矩形状の外形を有している。プレート部51の平面視中央部には、コイルユニット4を装着するための開口O3が形成されており、コイルユニット4は、開口O3内に開口O3をふさぐ姿勢で配置され、開口O3の周縁部に固定されて支持されている。
【0025】
具体的には、コイルユニット4のシールド部42の周囲に、フランジ部44が形成されており、フランジ部44の所定位置に、ボルト等の締結具4Tが挿通される締結孔44aが形成されている。そして、プレート部51の開口O3の周縁部には、締結孔44aに対応する位置にブラケット部51aが形成されており、当該ブラケット部51aが締結孔44aに挿通された締結具4Tによりフランジ部44に締結されている。
【0026】
なお、開口O3の大きさ、形状は、図示したものに限らない。また、例えば、プレート部51の剛性をより高めるべく、開口O3を形成せずに、プレート部51の下面に直接コイルユニット4を締結してもよい。
【0027】
プレート部51は、平面視において、少なくともコイルユニット4の周囲をとり囲むように配設されている。具体的には、プレート部51のうち、コイルユニット4の前方に位置する部分と、後方に位置する部分と、左方に位置する部分と、右方に位置する部分とが、コイルユニット4の周囲において一体的に連続している。
【0028】
前側スティフナ52は、プレート部51の開口O3よりも前方側の位置において、車幅方向に延設されており、後側スティフナ53は、開口O3よりも後方側の位置において、車幅方向に延設されている。前側スティフナ52及び後側スティフナ53は、各々、下方に向けて開口するハット形断面を有しており、それぞれのフランジ部がプレート部51の上面に接合されている。
【0029】
磁気シールド5は、サスペンションリンク3A,3Bの前側連結点JF近傍においてサスペンションメンバ1に締結されており、サスペンションリンク3A,3Bの後側連結点JR近傍においてもサスペンションメンバ1に締結されている。
【0030】
本実施形態では、
図1及び
図2に示すように、プレート部51の開口O
3よりも左側に位置する部分と右側に位置する部分とに、それぞれ4箇所ずつ締結点T(T
1~T
4)が設けられている。片側における4つの締結点Tを前から順に第1~第4締結点T
1~T
4と呼ぶこととすると、第1~第3締結点T
1~T
3では、
図4に示すように、プレート部51が、ボルト等の締結具5
Tによってサスペンションメンバ1の下側パネル1bに締結されている。また、第4締結点T
4では、
図5に示すように、プレート部51が、ステー部材2に締結具5
Tにより締結されている。
【0031】
左右の第1締結点T1は、各々、プレート部51における、サスペンションメンバ1の左辺部12と右辺部13とに対応する位置に設けられている。左右の第2締結点T2は、各々、プレート部51における、左辺部12の後端部と右辺部13の後端部とに対応する位置に設けられている。左右の第3締結点T3は、各々、プレート部51における、左側辺部14Cと右側辺部14Dとに対応する位置に設けられている。左右の第4締結点T4は、各々、プレート部51における、各ステー部材2の中央部に対応する位置に設けられている。なお、締結点Tの個数は、図示したものに限らず、片側あたり3箇所以下であってもよく、5箇所以上であってもよい。
【0032】
図1及び
図2に示すように、サスペンションメンバ1の左辺部12には、左辺部12から車幅方向内側へ張り出すブラケット6
Lが形成されており、当該ブラケット6
Lに前側スティフナ52の左端部が締結されている。また、サスペンションメンバ1の右辺部13には、右辺部13から車幅方向内側へ張り出すブラケット6
Rが形成されており、当該ブラケット6
Rに前側スティフナ52の右端部が締結されている。
【0033】
各ブラケット6L,6Rは、天板61と、その下面に接合されたハット形断面部材62とから構成されている。各ブラケット6L,6Rには、締結具5Tを挿通するための挿通孔63が形成されており、前側スティフナ52の両端部における、挿通孔63に対応する位置にも挿通孔54が形成されている。前側スティフナ52の両端部は、それぞれ挿通孔63と挿通孔54とに挿通された締結具5Tによって、左右のブラケット6L,6Rに締結される。即ち、この状態において、前側スティフナ52は、サスペンションメンバ1の左辺部12と右辺部13とに締結され、それらを架橋する。なお、ブラケット6L,6Rの形状は、図示したものに限らず、前側スティフナ52の端部の形状に合わせて適宜設定可能である。
【0034】
後側スティフナ53の両端部には、締結具5Tを挿入するための挿通孔55が形成されている。また、左右のステー部材2A,2Bにおける、挿通孔55に対応する位置にも挿通孔21が形成されている。後側スティフナ53の両端部は、それぞれ挿通孔21と挿通孔55とに挿通された締結具5Tによって、左右のステー部材2A,2Bに締結される。即ち、この状態において、後側スティフナ53は、左右のステー部材2A,2Bに締結され、当該ステー部材2同士を架橋する。
【0035】
以下、本実施形態の作用効果について説明する。
【0036】
(1)車体下部構造Sでは、磁気シールド5が、サスペンションリンク3A,3Bの連結点J近傍においてサスペンションメンバ1に締結されている。このため、磁気シールド5が連結点J近傍で締結されていない場合と比較して、連結点Jからサスペンションメンバ1に入力された荷重のうちより多くの部分が、磁気シールド5に入力されるようになる。即ち、車体下部構造Sによれば、上記荷重のより多くの部分をサスペンションメンバ1及び磁気シールド5の両方で負担することができるため、サスペンションメンバ1によるサスペンションリンク3A,3Bの支持剛性を向上させることができる。
【0037】
(2)また、車体下部構造Sでは、磁気シールド5が、左辺部12及び右辺部13に設けられた前側連結点JF近傍においてサスペンションメンバ1に締結されている。このため、前側連結点JF近傍において締結されていない場合と比較して、前側連結点JFから左辺部12または右辺部13に入力された車幅方向の荷重(タイヤ横力など)のうちより多くの部分が磁気シールド5にも入力されるようになる。即ち、当該車幅方向の荷重のより多くの部分を、左辺部12または右辺部13だけでなく磁気シールド5でも負担することができる。これにより、左辺部12または右辺部13の変形を抑制して、サスペンションリンク3A,3Bの支持剛性を向上させることができる。
【0038】
(3)さらに、車体下部構造Sでは、一対の辺部である左辺部12と右辺部13とが第1補剛部材である前側スティフナ52によって架橋されている。このため、例えば、左のサスペンションリンク3Aから前側連結点JFを介して左辺部12に入力された荷重が、前側スティフナ52を介して右辺部13にも伝達されやすくなる。換言すれば、一方の前側連結点JFから入力された荷重のより多くの部分を磁気シールド5と左辺部12と右辺部13とで負担することができる。このため、サスペンションメンバ1の変形をさらに抑制することができる。
【0039】
(4)また、車体下部構造Sでは、磁気シールド5が、後側連結点JR近傍においてサスペンションメンバ1に締結されている。このため、後側連結点JRからサスペンションメンバ1に入力される荷重の一部を磁気シールド5で負担することができる。これにより、サスペンションリンク3A,3Bの後側連結点JRの支持剛性を高め、車両Vのシャシー剛性を向上させることができる。
【0040】
(5)さらに、車体下部構造Sでは、左右のステー部材2A,2Bが第2補剛部材である後側スティフナ53によって架橋されている。このため、左右のステー部材2A,2Bの変形が抑制され、左右のステー部材2A,2Bを介して車体に固定されたサスペンションメンバ1の支持剛性が向上する。これにより、車両Vのシャシー剛性がさらに向上する。
【0041】
(6)また、車体下部構造Sでは、コイルユニット4が後辺部14の前側辺部14A及び後側辺部14Bの直下に位置するように配設されている。このため、コイルユニット4全体が後辺部14よりも前方に配設された場合のボンネットの上昇や、後辺部14よりも後方側の位置に配設された場合の車体フロアFLの上昇を抑制することができる。
【0042】
(7)なお、前側連結点J
Fから締結点Tまでの距離は、短ければ短いほど、前側連結点J
Fからサスペンションメンバ1に入力される荷重のより多くの部分が磁気シールド5に入力されるようになり、好ましい。上記実施形態では、
図1に示すように、前側連結点J
Fから第2締結点T
2までの距離が、前側連結点J
Fからコイルユニット4のシールド部42のうち前側連結点J
Fに最も近い部位までの距離(第1距離)よりも小さい。また、前側連結点J
Fから第1締結点T
1までの距離は、前側連結点J
Fから第2締結点T
2までの距離よりも小さい。従って、前側連結点J
Fからの荷重をより効率的に磁気シールド5に伝達して、当該荷重のより多くの部分を磁気シールド5に負担させることができる。なお、
図1に示した例では、前側連結点J
Fから第2締結点T
2までの距離が上記第1距離の1/2より小さいため、ここで述べた効果をより確実に得ることができる。さらに、図示は省略するが、前側連結点J
Fから車幅方向に延びる直線上に締結点Tを配置してもよい。この変形例によれば、車幅方向の荷重が前側連結点J
Fからサスペンションメンバ1に入力されたときに、当該荷重をより効率的に磁気シールド5に伝達することができる。
【0043】
(8)また、後側連結点J
Rから締結点Tまでの距離も、短ければ短いほど、後側連結点J
Rからサスペンションメンバ1に入力される荷重のより多くの部分が磁気シールド5に入力されるようになり、好ましい。上記実施形態では、
図1に示すように、後側連結点J
Rから第3締結点T
3までの距離が、後側連結点J
Rからコイルユニット4のシールド部42のうち後側連結点J
Rに最も近い部位までの距離(第2距離)よりも小さい。従って、後側連結点J
Rからの荷重をより効率的に磁気シールド5に伝達して、当該荷重のより多くの部分を磁気シールド5に負担させることができる。なお、
図1に示した例では、後側連結点J
Rから第3締結点T
3までの距離は、上記第2距離の1/2よりも小さいため、ここで述べた効果をより確実に得ることができる。
【0044】
上記実施形態は、発明の理解を容易にするために記載された単なる例示に過ぎない。発明の技術的範囲は、上記実施形態で開示した具体的な技術事項に限らず、そこから容易に導きうる様々な変形、変更、代替技術なども含むものである。
【符号の説明】
【0045】
S 車体下部構造
1 サスペンションメンバ
12,13 左辺部,右辺部(一対の辺部)
2A,2B 左側ステー部材、右側ステー部材(一対のステー部材)
3A,3B サスペンションリンク
J 連結点
JF 前側連結点
JR 後側連結点
4 コイルユニット
5 磁気シールド
52 前側スティフナ(第1補剛部材)
53 後側スティフナ(第2補剛部材)