(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-31
(45)【発行日】2024-08-08
(54)【発明の名称】モータ駆動制御装置、ファンシステム、およびモータの異常判定方法
(51)【国際特許分類】
H02P 6/08 20160101AFI20240801BHJP
H02P 29/032 20160101ALI20240801BHJP
【FI】
H02P6/08
H02P29/032
(21)【出願番号】P 2020209137
(22)【出願日】2020-12-17
【審査請求日】2023-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】南 亮輔
(72)【発明者】
【氏名】久冨 祐也
(72)【発明者】
【氏名】民辻 敏泰
【審査官】島倉 理
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-010579(JP,A)
【文献】特開2018-061330(JP,A)
【文献】国際公開第2018/198734(WO,A1)
【文献】特開2011-058717(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 6/08
H02P 29/032
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータの回転速度を指示する駆動指令電圧を生成する電圧生成回路と、
前記駆動指令電圧によって指定された回転速度で前記モータが回転するように駆動信号を生成する制御回路と、
前記駆動信号に基づいて前記モータを駆動する駆動回路と、を備え、
前記制御回路は、前記モータが回転していない状態が第1時間継続した場合に、前記モータの駆動を停止させるように前記駆動信号を生成する第1処理と、前記第1処理によって前記モータの駆動を停止させてから第2時間が経過したとき、前記駆動指令電圧に応じた前記駆動信号の生成を再開する第2処理とを合わせて一つの処理サイクルとするロック保護処理を行い、
前記電圧生成回路は、前記モータの起動開始後の前記一つの処理サイクルに相当する第1サイクル期間に、第1回転速度を指示する前記駆動指令電圧を生成し、前記第1サイクル期間の次の前記一つの処理サイクルに相当する第2サイクル期間に、前記第1回転速度よりも大きい第2回転速度を指示する前記駆動指令電圧を生成
し、
前記電圧生成回路は、基準電圧を分圧して前記駆動指令電圧を生成する分圧回路であって、
前記モータの起動開始後に、前記分圧回路の分圧比が時間の経過とともに変化する
モータ駆動制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のモータ駆動制御装置において、
前記電圧生成回路は、前記第2サイクル期間の次の前記一つの処理サイクルに相当する第3サイクル期間に、前記第2回転速度よりも大きい第3回転速度を指示する前記駆動指令電圧を生成する
モータ駆動制御装置。
【請求項3】
請求項
1に記載のモータ駆動制御装置において、
前記電圧生成回路は、前記モータの入力電圧に応じて前記駆動指令電圧を調整する
モータ駆動制御装置。
【請求項4】
請求項
3に記載のモータ駆動制御装置において、
前記制御回路は、前記駆動指令電圧の大きさに対応するデューティ比を有するPWM信号を生成して前記駆動信号として出力し、
前記電圧生成回路は、前記モータの入力電圧が大きいほど前記駆動信号のデューティ比が小さくなるように、前記駆動指令電圧を生成する
モータ駆動制御装置。
【請求項5】
請求項
1に記載のモータ駆動制御装置において、
前記電圧生成回路は、
基準電圧が供給される第1ノードと、
前記基準電圧よりも低い固定電位に接続される第2ノードと、
第3ノードと、
前記第1ノードと前記第3ノードとの間に接続された第1抵抗と、
前記第3ノードと前記第2ノードとの間に接続された第2抵抗と、
前記第1ノードと前記第3ノードとの間に直列に接続された第3抵抗および第1キャパシタと、を含み、
前記第3ノードの電圧が前記駆動指令電圧として出力される
モータ駆動制御装置。
【請求項6】
請求項
3または
4に記載のモータ駆動制御装置において、
前記電圧生成回路は、
直流の基準電圧が供給される第1ノードと、
前記基準電圧よりも低い固定電位に接続される第2ノードと、
第3ノードと、
前記入力電圧が供給される第4ノードと、
前記第1ノードと前記第3ノードとの間に接続された第1抵抗と、
前記第3ノードと前記第2ノードとの間に接続された第2抵抗と、
前記第1ノードと前記第3ノードとの間に直列に接続された第3抵抗および第1キャパシタと、
前記第3ノードと前記第4ノードとの間に接続された入力抵抗と、を含み、
前記第3ノードの電圧が前記駆動指令電圧として出力される
モータ駆動制御装置。
【請求項7】
請求項
5または
6に記載のモータ駆動制御装置において、
前記電圧生成回路は、
制御電極、第1主電極、および第2主電極を有し、前記第1主電極と前記制御電極との間の電位差に応じて前記第1主電極と前記第3ノードに接続された前記第2主電極との間に電流経路を形成するトランジスタと、
前記トランジスタの前記第1主電極と前記第1ノードとの間に接続された第4抵抗と、
前記トランジスタの前記第1 主電極と前記制御電極との間に接続された第5抵抗と、
前記トランジスタの前記制御電極と前記第2ノードとの間に直列に接続された第6抵抗および第2キャパシタと、を更に含む
モータ駆動制御装置。
【請求項8】
モータと、
前記モータの回転力によって回転可能に構成されたインペラと、
前記モータを駆動するとともに、前記モータの回転速度に対応する周期で変化する回転速度信号を生成するモータ駆動制御装置と、
前記回転速度信号に基づいて、前記モータの回転状態を監視する上位装置と、を備え、
前記モータ駆動制御装置は、
前記モータの回転速度を指示する駆動指令電圧を生成する電圧生成回路と、
前記駆動指令電圧によって指定された回転速度で前記モータが回転するように駆動信号を生成する制御回路と、
前記回転速度信号を生成する回転速度信号生成部と、
前記駆動信号に基づいて前記モータを駆動する駆動回路と、を備え、
前記制御回路は、前記モータが回転していない状態が第1時間継続した場合に、前記モータの駆動を停止させるように前記駆動信号を生成する第1処理と、前記第1処理によって前記モータの駆動を停止させてから第2時間が経過したとき、前記駆動指令電圧に応じた前記駆動信号の生成を再開する第2処理とを合わせて一つの処理サイクルとするロック保護処理を行い、
前記電圧生成回路は、前記モータの起動開始後に、前記一つの処理サイクルに相当する第1サイクル期間において、第1回転速度を指示する前記駆動指令電圧を生成し、前記第1サイクル期間の次の前記一つの処理サイクルに相当する第2サイクル期間に、前記第1回転速度よりも大きい第2回転速度を指示する前記駆動指令電圧を生成し、
前記上位装置は、前記第1サイクル期間および前記第2サイクル期間における前記回転速度信号に基づいて、前記モータの異常の有無を判定
し、
前記電圧生成回路は、基準電圧を分圧して前記駆動指令電圧を生成する分圧回路であって、
前記モータの起動開始後に、前記分圧回路の分圧比が時間の経過とともに変化する
ファンシステム。
【請求項9】
請求項
8に記載のファンシステムにおいて、
前記上位装置は、前記モータの起動開始後に、前記第1サイクル期間において前記回転速度信号の変化が検出された場合に、前記モータが正常であると判定し、前記第1サイクル期間において前記回転速度信号の変化が検出されず、且つ、前記第2サイクル期間において前記回転速度信号の変化が検出された場合に、前記モータが第1異常状態であると判定し、前記第1サイクル期間および前記第2サイクル期間において前記回転速度信号の変化が検出されなかった場合に、前記モータが前記第1異常状態と異なる第2異常状態であると判定する
ファンシステム。
【請求項10】
請求項
8に記載のファンシステムにおいて、
前記電圧生成回路は、前記第2サイクル期間の次の前記一つの処理サイクルに相当する第3サイクル期間に、前記第2回転速度よりも大きい第3回転速度を指示する前記駆動指令電圧を生成し、
前記上位装置は、前記モータの起動開始後に、前記第1サイクル期間において前記回転速度信号の変化が検出された場合に、前記モータが正常であると判定し、前記第1サイクル期間において前記回転速度信号の変化が検出されず、且つ、前記第2サイクル期間において前記回転速度信号の変化が検出された場合に、前記モータが第1異常状態であると判定し、前記第1サイクル期間および前記第2サイクル期間において前記回転速度信号の変化が検出されず、且つ、前記第3サイクル期間において前記回転速度信号の変化が検出された場合に、前記モータが前記第1異常状態と異なる第2異常状態であると判定し、前記第1サイクル期間、前記第2サイクル期間、および前記第3サイクル期間において前記回転速度信号の変化が検出されなかった場合に、前記モータが前記第1異常状態および前記第2異常状態と異なる第3異常状態であると判定する
ファンシステム。
【請求項11】
モータと、前記モータの回転力によって回転可能に構成されたインペラと、前記モータを駆動するともに、前記モータの回転速度に対応する周期で変化する回転速度信号を生成するモータ駆動制御装置と、上位装置と、を備えるファンシステムによるモータの異常判定方法であって、
前記モータ駆動制御装置は、前記モータの回転速度を指示する駆動指令電圧を生成する電圧生成回路と、前記駆動指令電圧によって指定された回転速度で前記モータが回転するように駆動信号を生成する制御回路と、前記回転速度信号を生成する回転速度信号生成部と、前記駆動信号に基づいて前記モータを駆動する駆動回路と、を有し、前記制御回路は、前記モータが回転していない状態が第1時間継続した場合に、前記モータの駆動を停止させるように前記駆動信号を生成する第1処理と、前記第1処理によって前記モータの駆動を停止させてから第2時間が経過したとき、前記駆動指令電圧に応じた前記駆動信号の生成を再開する第2処理とを合わせて一つの処理サイクルとするロック保護処理を行い、前記電圧生成回路は、前記モータの起動開始後に、前記一つの処理サイクルに相当する第1サイクル期間において、第1回転速度を指示する前記駆動指令電圧を生成し、前記第1サイクル期間の次の前記一つの処理サイクルに相当する第2サイクル期間に、前記第1回転速度よりも大きい第2回転速度を指示する前記駆動指令電圧を生成し、
前記電圧生成回路は、基準電圧を分圧して前記駆動指令電圧を生成する分圧回路であって、前記モータの起動開始後に、前記分圧回路の分圧比が時間の経過とともに変化し、
前記上位装置が、前記第1サイクル期間における前記回転速度信号の変化の有無を判定する第1ステップと、
前記上位装置が、前記第2サイクル期間における前記回転速度信号の変化の有無を判定する第2ステップと、
前記上位装置が、前記第1ステップにおける判定結果と前記第2ステップにおける判定結果の少なくとも一つに基づいて、前記モータの異常の有無を判定する第3ステップと、
を含む
モータの異常判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ駆動制御装置、ファンシステム、およびモータの異常判定方法に関し、例えば、モータによって回転するファンの風量を制御するモータ駆動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、家電機器やOA機器等において、その内部に設けられた部品等を冷却するための装置として、モータによってインペラ(羽根車)を回転させて風を発生させるファン(以下、「ファンモータ」とも称する場合がある。)が知られている。
【0003】
ファンの中でも、オイルミスト、切削屑、煙、埃などが発生する環境下で使用される工作機械等に搭載されるファンは、汚れの固着や装置に取り付けられているフィルタの目詰まり等により、ファン自身の寿命より早くに、回転低下を起こし、冷却性能が低下してしまう場合がある。
【0004】
ファンの劣化等による冷却性能の低下、工作機器等の停止などを未然に防ぐために、ファンの汚れ度合い(劣化度合い)を判定し、適切なタイミングで、ユーザに対してファン等のメンテナンスの実施を促すことが望ましい。
【0005】
従来技術として、ファンの起動不良が発生する前にファンの劣化を検出する技術が知られている。例えば、特許文献1に開示された電子機器は、停止状態にあるファンを所定のトルク(起動トルク)で起動させ、ファンが正常に回転するか否かを判定することにより、ファンの劣化の有無を判定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した特許文献1に開示された技術によれば、モータ(ファン)の異常を検出することが可能である。しかしながら、近年のファンのコスト削減の要求に応えるためには、より簡単な構成でモータの異常を検出するための新たな技術が必要であると、本願発明者らは考えた。
【0008】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、より簡単な構成でモータの異常を検出できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の代表的な実施の形態に係るモータ駆動制御装置は、モータの回転速度を指示する駆動指令電圧を生成する電圧生成回路と、前記駆動指令電圧によって指定された回転速度で前記モータが回転するように駆動信号を生成する制御回路と、前記駆動信号に基づいて前記モータを駆動する駆動回路と、を備え、前記制御回路は、前記モータが回転していない状態が第1時間継続した場合に、前記モータの駆動を停止させるように前記駆動信号を生成する第1処理と、前記第1処理によって前記モータの駆動を停止させてから第2時間が経過したとき、前記駆動指令電圧に応じた前記駆動信号の生成を再開する第2処理とを合わせて一つの処理サイクルとするロック保護処理を行い、前記電圧生成回路は、前記モータの起動開始後の前記一つの処理サイクルに相当する第1サイクル期間に、第1回転速度を指示する前記駆動指令電圧を生成し、前記第1サイクル期間の次の前記一つの処理サイクルに相当する第2サイクル期間に、前記第1回転速度よりも大きい第2回転速度を指示する前記駆動指令電圧を生成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るモータ駆動制御装置によれば、より簡単な構成でモータの異常を検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施の形態1に係るモータ駆動制御装置を備えたファンシステムの構成を示すブロック図である。
【
図3】駆動指令電圧と駆動信号(PWM信号)のデューティ比との対応関係の一例を示す図である。
【
図4】モータの起動開始時における駆動信号の生成が開始されるタイミングを説明するための図である。
【
図5】制御回路によるロック保護処理を説明するための図である。
【
図6】実施の形態1に係る駆動指令電圧の特性の一例を示す図である。
【
図7】実施の形態1に係る電圧生成回路の構成の一例を示す図である。
【
図8】実施の形態1に係る電圧生成回路に異なる入力電圧を印加したときの、駆動指令電圧の特性の一例を示す図である。
【
図9】実施の形態1に係るファンシステムによるモータの異常判定方法を説明するためのタイミングチャートである。
【
図10】実施の形態1に係るファンシステムによるモータの異常判定方法の流れを示すフローチャートである。
【
図11】本発明の実施の形態2に係るモータ駆動制御装置を備えたファンシステムの構成を示すブロック図である。
【
図12】実施の形態2に係る駆動指令電圧の特性の一例を示す図である。
【
図13】実施の形態2に係る電圧生成回路の構成の一例を示す図である。
【
図14】実施の形態2に係る電圧生成回路に異なる入力電圧を印加したときの、駆動指令電圧の特性の一例を示す図である。
【
図15】実施の形態2に係るファンシステムによるモータの異常判定方法を説明するためのタイミングチャートである。
【
図16A】実施の形態2に係るファンシステムによるモータの異常判定方法の流れを示すフローチャートである。
【
図16B】実施の形態2に係るファンシステムによるモータの異常判定方法の流れを示すフローチャートである。
【
図17】本発明の実施の形態3に係るモータ駆動制御装置を備えたファンシステムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.実施の形態の概要
先ず、本願において開示される発明の代表的な実施の形態について概要を説明する。なお、以下の説明では、一例として、発明の構成要素に対応する図面上の参照符号を、括弧を付して記載している。
【0013】
〔1〕本発明の代表的な実施の形態に係るモータ駆動制御装置(1,1A,1B)は、モータ(3,3B)の回転速度を指示する駆動指令電圧(Vsp,Vspa,Vspb)を生成する電圧生成回路(20,20A,20a,20b)と、前記駆動指令電圧によって指定された回転速度で前記モータが回転するように駆動信号(Sdr,Sdra,Sdrb)を生成する制御回路(12)と、前記駆動信号に基づいて前記モータを駆動する駆動回路(15,15a,15b)と、を備え、前記制御回路は、前記モータが回転していない状態が第1時間(判定時間T1)継続した場合に、前記モータの駆動を停止させるように前記駆動信号を生成する第1処理と、前記第1処理によって前記モータの駆動を停止させてから第2時間(ロック保護時間T2)が経過したとき、前記駆動指令電圧に応じた前記駆動信号の生成を再開する第2処理とを合わせて一つの処理サイクルとするロック保護処理を行い、前記電圧生成回路は、前記モータの起動開始後の前記一つの処理サイクルに相当する第1サイクル期間(Tc1)に、第1回転速度を指示する前記駆動指令電圧(Vsp=Va,Va1,Va2)を生成し、前記第1サイクル期間の次の前記一つの処理サイクルに相当する第2サイクル期間(Tc2)に、前記第1回転速度よりも大きい第2回転速度を指示する前記駆動指令電圧(Vsp=Vb,Vb1,Vb2)を生成することを特徴とする。
【0014】
〔2〕上記〔1〕に記載のモータ駆動制御装置において、前記電圧生成回路(20A)は、前記第2サイクル期間の次の前記一つの処理サイクルに相当する第3サイクル期間(Tc3)に、前記第2回転速度よりも大きい第3回転速度を指示する前記駆動指令電圧(Vsp=Vc)を生成してもよい。
【0015】
〔3〕上記〔1〕または〔2〕に記載のモータ駆動制御装置(1,1A,1B)において、電圧生成回路(20,20A,20a,20b)は、基準電圧(Vreg,Vrega,Vregb)を分圧して前記駆動指令電圧を生成する分圧回路であって、前記モータの起動開始後に、前記分圧回路の分圧比が時間の経過とともに変化してもよい。
【0016】
〔4〕上記〔3〕に記載のモータ駆動制御装置(1,1A,1B)において、前記電圧生成回路(20,20A,20a,20b)は、前記モータの入力電圧(Vin,Vina,Vinb)に応じて前記駆動指令電圧を調整してもよい。
【0017】
〔5〕上記〔4〕に記載のモータ駆動制御装置(1,1A,1B)において、前記制御回路(12)は、前記駆動指令電圧の大きさに対応するデューティ比を有するPWM信号を生成して前記駆動信号として出力し、前記電圧生成回路(20,20A,20a,20b)は、前記モータの入力電圧(Vin,Vina,Vinb)が大きいほど前記駆動信号(Sdr,Sdra,Sdrb)のデューティ比が小さくなるように、前記駆動指令電圧を生成してもよい。
【0018】
〔6〕上記〔3〕に記載のモータ駆動制御装置(1)において、前記電圧生成回路(20)は、基準電圧(Vreg)が供給される第1ノード(P1)と、前記基準電圧よりも低い固定電位(GND)に接続される第2ノード(P2)と、第3ノード(P3)と、前記第1ノードと前記第3ノードとの間に接続された第1抵抗(R1)と、前記第3ノードと前記第2ノードとの間に接続された第2抵抗(R2)と、前記第1ノードと前記第3ノードとの間に直列に接続された第3抵抗(R3)および第1キャパシタ(C1)と、を含み、前記第3ノードの電圧が前記駆動指令電圧(Vsp)として出力されてもよい。
【0019】
〔7〕上記〔4〕または〔5〕に記載のモータ駆動制御装置(1A)において、前記電圧生成回路(20A)は、基準電圧(Vreg)が供給される第1ノード(P1)と、前記基準電圧よりも低い固定電位(GND)に接続される第2ノード(P2)と、第3ノード(P3)と、前記入力電圧(Vin)が供給される第4ノード(P4)と、前記第1ノードと前記第3ノードとの間に接続された第1抵抗(R1)と、前記第3ノードと前記第2ノードとの間に接続された第2抵抗(R2)と、前記第1ノードと前記第3ノードとの間に直列に接続された第3抵抗(R3)および第1キャパシタ(C1)と、前記第3ノードと前記第4ノードとの間に接続された入力抵抗(Rin)と、を含み、前記第3ノードの電圧が前記駆動指令電圧(Vsp)として出力されてもよい。
【0020】
〔8〕上記〔6〕または〔7〕に記載のモータ駆動制御装置(1A)において、前記電圧生成回路(20A)は、制御電極(B)、第1主電極(E)、および第2主電極(C)を有し、前記第1主電極と前記制御電極との間の電位差に応じて前記第1主電極と前記第3ノードに接続された前記第2主電極との間に電流経路を形成するトランジスタ(Q1)と、前記トランジスタの前記第1主電極と前記第1ノードとの間に接続された第4抵抗(R4)と、前記トランジスタの前記第1主電極と前記制御電極との間に接続された第5抵抗(R5)と、前記トランジスタの前記制御電極と前記第2ノードとの間に直列に接続された第6抵抗(R6)および第2キャパシタ(C2)と、を更に含んでもよい。
【0021】
〔9〕本発明の代表的な実施の形態に係るファンシステム(200,200A,200B)は、モータ(3,3B)と、前記モータの回転力によって回転可能に構成されたインペラ(4)と、前記モータを駆動するとともに、前記モータの回転速度に対応する周期で変化する回転速度信号(fg,fga,fgb)を生成するモータ駆動制御装置(1,1A,1B)と、前記回転速度信号に基づいて、前記モータの回転状態を監視する上位装置(2,2A,2B)と、を備え、前記モータ駆動制御装置は、前記モータの回転速度を指示する駆動指令電圧(Vsp,Vspa,Vspb)を生成する電圧生成回路(20,20A,20a,20b)と、前記駆動指令電圧によって指定された回転速度で前記モータが回転するように駆動信号(Sdr,Sdra,Sdrb)を生成する制御回路(12)と、前記回転速度信号を生成する回転速度信号生成部(124)と、前記駆動信号に基づいて前記モータを駆動する駆動回路(15,15a,15b)と、を備え、前記制御回路は、前記モータが回転していない状態が第1時間(判定時間T1)継続した場合に、前記モータの駆動を停止させるように前記駆動信号を生成する第1処理と、前記第1処理によって前記モータの駆動を停止させてから第2時間(ロック保護時間T2)が経過したとき、前記駆動指令電圧に応じた前記駆動信号の生成を再開する第2処理とを合わせて一つの処理サイクルとするロック保護処理を行い、前記電圧生成回路は、前記モータの起動開始後に、前記一つの処理サイクルに相当する第1サイクル期間(Tc1)において、第1回転速度を指示する前記駆動指令電圧(Vsp=Va,Va1,Va2)を生成し、前記第1サイクル期間の次の前記一つの処理サイクルに相当する第2サイクル期間(Tc2)に、前記第1回転速度よりも大きい第2回転速度を指示する前記駆動指令電圧(Vsp=Vb,Vb1,Vb2)を生成し、前記上位装置は、前記第1サイクル期間および前記第2サイクル期間における前記回転速度信号に基づいて、前記モータの異常の有無を判定することを特徴とする。
【0022】
〔10〕上記〔9〕に記載のファンシステム(200,200B)において、前記上位装置(2,2B)は、前記モータの起動開始後に、前記第1サイクル期間において前記回転速度信号の変化が検出された場合に、前記モータが正常であると判定し、前記第1サイクル期間において前記回転速度信号の変化が検出されず、且つ、前記第2サイクル期間において前記回転速度信号の変化が検出された場合に、前記モータが第1異常状態(例えば、ファンが汚れた状態)であると判定し、前記第1サイクル期間および前記第2サイクル期間において前記回転速度信号の変化が検出されなかった場合に、前記モータが前記第1異常状態と異なる第2異常状態(例えば、ロック状態)であると判定してもよい。
【0023】
〔11〕上記〔9〕に記載のファンシステム(200A,200B)において、前記電圧生成回路は、前記第2サイクル期間の次の前記一つの処理サイクルに相当する第3サイクル期間(Tc3)に、前記第2回転速度よりも大きい第3回転速度を指示する前記駆動指令電圧(Vsp=Vc)を生成し、前記上位装置(2A,2B)は、前記モータの起動開始後に、前記第1サイクル期間において前記回転速度信号の変化が検出された場合に、前記モータが正常であると判定し、前記第1サイクル期間において前記回転速度信号の変化が検出されず、且つ、前記第2サイクル期間において前記回転速度信号の変化が検出された場合に、前記モータが第1異常状態(例えば、ファンが汚れた状態、汚れ度合:小レベル)であると判定し、前記第1サイクル期間および前記第2サイクル期間において前記回転速度信号の変化が検出されず、且つ、前記第3サイクル期間において前記回転速度信号の変化が検出された場合に、前記モータが前記第1異常状態と異なる第2異常状態(例えば、ファンが汚れた状態、汚れ度合:大レベル)であると判定し、前記第1サイクル期間、前記第2サイクル期間、および前記第3サイクル期間において前記回転速度信号の変化が検出されなかった場合に、前記モータが前記第1異常状態および前記第2異常状態と異なる第3異常状態(例えば、ロック状態)であると判定してもよい。
【0024】
〔12〕本発明の代表的な実施の形態に係る方法は、モータ(3,3B)と、前記モータの回転力によって回転可能に構成されたインペラ(4)と、前記モータを駆動するともに、前記モータの回転速度に対応する周期で変化する回転速度信号(fg,fga,fgb)を生成するモータ駆動制御装置(1,1A,1B)と、上位装置(2,2A,2B)と、を備えるファンシステム(200,200A,200B)によるモータの異常判定方法である。本モータの異常判定方法において、前記モータ駆動制御装置(1,1A,1B)は、前記モータの回転速度を指示する駆動指令電圧(Vsp,Vspa,Vspb)を生成する電圧生成回路(20,20A,20a,20b)と、前記駆動指令電圧によって指定された回転速度で前記モータが回転するように駆動信号を生成する制御回路(12)と、前記回転速度信号を生成する回転速度信号生成部(124)と、前記駆動信号に基づいて前記モータを駆動する駆動回路(15,15a,15b)と、を有し、前記制御回路は、前記モータが回転していない状態が第1時間(判定時間T1)継続した場合に、前記モータの駆動を停止させるように前記駆動信号を生成する第1処理と、前記第1処理によって前記モータの駆動を停止させてから第2時間(ロック保護時間T2)が経過したとき、前記駆動指令電圧に応じた前記駆動信号の生成を再開する第2処理とを合わせて一つの処理サイクルとするロック保護処理を行い、前記電圧生成回路は、前記モータの起動開始後に、前記一つの処理サイクルに相当する第1サイクル期間(Tc1)において、第1回転速度を指示する前記駆動指令電圧(Vsp=Va,Va1,Va2)を生成し、前記第1サイクル期間の次の前記一つの処理サイクルに相当する第2サイクル期間(Tc2)に、前記第1回転速度よりも大きい第2回転速度を指示する前記駆動指令電圧(Vsp=Vb,Vb1,Vb2)を生成し、前記上位装置が、前記第1サイクル期間における前記回転速度信号の変化の有無を判定する第1ステップ(S14)と、前記上位装置が、前記第2サイクル期間における前記回転速度信号の変化の有無を判定する第2ステップ(S21)と、前記上位装置が、前記第1ステップにおける判定結果と前記第2ステップにおける判定結果の少なくとも一つに基づいて、前記モータの異常の有無を判定する第3ステップ(S24,S25,S25A,S26,S34,S35)と、を含むことを特徴とする。
【0025】
2.実施の形態の具体例
以下、本発明の実施の形態の具体例について図を参照して説明する。なお、以下の説明において、各実施の形態において共通する構成要素には同一の参照符号を付し、繰り返しの説明を省略する。
【0026】
≪実施の形態1≫
図1は、本発明の実施の形態1に係るモータ駆動制御装置1を備えたファンシステム200の構成を示すブロック図である。
【0027】
図1に示されるファンシステム200は、ファン(ファンモータ)100と上位装置2とを備えている。なお、本実施の形態では、ファンシステム200が一つのファン100と上位装置2とを備えるものとして説明するが、ファンシステム200におけるファン100の数は1つに限定されず、複数であってもよい。
【0028】
ファン(ファンモータ)100は、インペラ(羽根車)を回転させることによって風を発生させる装置である。ファン100は、機器の内部で発生する熱を外部へ排出し、その機器の内部を冷却する冷却装置の一つとして利用可能であり、例えば、サーバ等の情報処理装置の他に、オイルミスト、切削屑、煙、埃などが発生する環境下で使用される工作機械等に搭載可能である。ファン100は、例えば、軸流ファンである。
【0029】
上位装置2は、ファン100(モータ3)の状態を監視する装置である。上位装置2は、例えば、工作機械のNC(Numerical Control)装置である。
【0030】
図1に示すように、ファン100は、モータ3と、モータ3の回転位置に応じて位置信号を出力する位置検出器5、モータ3を駆動するモータ駆動制御装置1と、モータ3の回転力によって回転可能に構成されたインペラ4とを備えている。
【0031】
本実施の形態において、モータ3は、例えば、ティース(図示せず)に巻回された1系統のコイル30を備えた単相のブラシレスモータである。モータ駆動制御装置1は、モータ3の回転を制御するための装置である。モータ駆動制御装置1は、モータ3を構成する単相のコイル30に周期的に駆動電流を流すことで、モータ3を回転させる。
【0032】
位置検出器5は、モータ3のロータの位置に応じて位置検出信号Shを出力する装置である。本実施の形態において、位置検出器5は、例えば、ホール素子である。ホール素子は、位置検出信号Shとして、正負の極性を有するホール信号を出力する。位置検出器5から出力された位置検出信号Shとしてのホール信号は、モータ駆動制御装置1(制御回路12)に入力される。
【0033】
モータ駆動制御装置1には、外部から電源電圧Vdcが供給される。
モータ駆動制御装置1は、モータ3の回転状態を監視し、モータ3が所定の回転速度で回転するようにモータ3を駆動する。モータ駆動制御装置1は、上位装置2に接続されている。モータ駆動制御装置1は、上位装置2に対して、モータ3の状態に関する情報を出力する。例えば、後述するように、モータ駆動制御装置1は、モータ3の実回転速度(回転数)に応じた回転速度信号fg等を上位装置2に対して出力する。これにより、上位装置2は、モータ3の回転状態やモータ3の異常の有無等を知ることができる。
【0034】
本実施の形態において、モータ駆動制御装置1は、電圧生成回路20とモータ駆動回路10とを備えている。
【0035】
電圧生成回路20は、モータ3の目標となる動作状態を指示する駆動指令電圧Vspを生成する。ここで、モータ3の目標となる動作状態とは、例えば、モータ3の目標となる回転速度やモータ3の目標となるトルク等である。本実施の形態では、一例として、駆動指令電圧Vspによってモータ3の目標回転速度が指示されるものとする。
【0036】
なお、電圧生成回路20および駆動指令電圧Vspの詳細については、後述する。
【0037】
モータ駆動回路10は、電圧生成回路20から出力された駆動指令電圧Vspに基づいて、モータ3を駆動する回路である。具体的に、モータ駆動回路10は、制御回路12と、制御回路12による制御に基づいてモータ3のコイル30に通電するインバータ回路(駆動回路の一例)15とを有する。
【0038】
また、モータ駆動回路10は、一端が直流電源に接続されたヒューズ19を有している。モータ駆動回路10において、直流電源から供給される電源電圧Vdcが、ヒューズ19を経由して制御回路12に供給されるとともに、インバータ回路15を経由してモータ3のコイル30に印加される。
【0039】
以下の説明において、モータ3および制御回路12に印加される電源電圧をモータ3の入力電圧Vinと称する。本実施の形態において、モータ3の入力電圧Vinは、電源電圧Vdcとなる。
【0040】
インバータ回路15は、制御回路12から出力された駆動信号Sdrに基づいてモータ3のコイル30に通電する。駆動信号Sdrは、モータ3の駆動を制御するための信号であり、例えば、PWM(Pulse Width Modulation)信号である。
【0041】
インバータ回路15は、例えば、Hブリッジ回路であり、電源電圧Vdcの両端に設けられた2つのスイッチ素子(例えば、トランジスタ)の直列回路の対を2つ有している。各直列回路における2つのスイッチ素子同士の接続点がそれぞれ、コイル30に通電するための出力端子16,17である。インバータ回路15を構成する各スイッチ素子は、制御回路12から出力される、インバータ回路15の各スイッチ素子に対応する駆動信号(PWM信号)Sdrによって、オン・オフが制御される。これにより、インバータ回路15の出力端子16,17に接続されたコイル30の通電が制御される。
【0042】
制御回路12は、インバータ回路15を駆動することにより、モータ3の駆動を制御する回路である。制御回路12は、駆動指令電圧Vspに基づいて駆動信号Sdrを生成する機能を有している。具体的に、制御回路12は、駆動指令電圧Vspの大きさに対応するデューティ比を有するPWM信号を生成して駆動信号Sdrとして出力する。また、制御回路12は、位置検出器5から出力された位置検出信号Shに基づいて回転速度信号fgを生成する機能を有している。
【0043】
更に、制御回路12は、モータ3の異常を検出した場合に、モータ3の動作を拘束(ロック)するロック保護機能を有している。
制御回路12は、ロック保護機能として、モータ3が回転していない状態が第1時間T1(以下、「判定時間T1」とも称する。)継続した場合に、モータ3の駆動を停止させるように駆動信号Sdrを生成する第1処理と、第1処理によってモータ3の駆動を停止させてから第2時間T2(以下、「ロック保護時間T2」とも称する。)が経過したとき、駆動指令電圧Vspに応じた駆動信号Sdrの生成を再開する第2処理とを合わせて一つの処理サイクルとするロック保護処理を行う。ロック保護処理の詳細については後述する。
【0044】
制御回路12は、例えば、上述した機能を有する汎用IC(Integrated Circuit)によって実現されている。
【0045】
図2は、制御回路12の構成を示す図である。
図2に示すように、制御回路12は、上述した機能を実現するための機能ブロックとして、基準電圧生成回路121、駆動指令取得部122、駆動信号生成部123、回転速度信号生成部124、およびロック保護管理部125を有している。
【0046】
ここで、駆動指令取得部122、駆動信号生成部123、およびロック保護管理部125は、A/D変換回路、発振回路、およびロジック回路等を含む専用ハードウェア回路によって実現されていても良いし、マイクロコントローラ等のプログラム処理装置によって実現されていてもよい。これらの機能部を実現するためのハードウェア構成については、特に限定されない。
【0047】
基準電圧生成回路121は、電源電圧Vdcに基づいて、大きさが一定となる基準電圧Vregを生成する回路である。基準電圧生成回路121は、例えば、電源電圧Vdcを降圧して大きさが一定となる電圧を生成するシリーズレギュレータ等の電源回路である。
【0048】
基準電圧生成回路121は、例えば、電源電圧Vdc=12V~24Vに基づいて、基準電圧Vreg=3.3Vを生成する。基準電圧Vregは、例えば、電圧生成回路20による駆動指令電圧Vspの生成に利用されるとともに、制御回路12内の各種設定値を生成するために利用される。
【0049】
駆動指令取得部122は、モータ3が、電圧生成回路20から出力された駆動指令電圧Vspで指定された目標の動作状態になるためのモータ3の制御量を決定する機能部である。
【0050】
ここで、上記制御量は、例えば、インバータ回路15を駆動する駆動信号SdrとしてのPWM信号のデューティ比である。
【0051】
例えば、駆動指令取得部122は、駆動指令電圧Vspと駆動信号Sdr(PWM信号)のデューティ比との対応関係を示す対応関係情報を用いて、電圧生成回路20から出力された駆動指令電圧Vspから駆動信号Sdrのデューティ比を決定する。
【0052】
図3は、駆動指令電圧Vspと駆動信号Sdr(PWM信号)のデューティ比との対応関係の一例を示す図である。
図3において、横軸が駆動指令電圧Vspを表し、縦軸が駆動信号Sdrのデューティ比を表している。
【0053】
図3に示すように、例えば、駆動指令電圧Vspが大きくなるほど、駆動信号Sdrのデューティ比が小さくなるように、駆動指令電圧Vspと駆動信号Sdrのデューティ比との対応関係が設定されている。本実施の形態においては、駆動信号Sdrのデューティ比が大きくなるほど、モータ3の回転速度(トルク)が大きくなるように制御される。したがって、モータ駆動制御装置1では、駆動指令電圧Vspの大きさを調整することにより、モータ3の回転速度(トルク)を調整することが可能となっている。
【0054】
図3において、最大加速電圧V1は、駆動信号Sdrのデューティ比が最大、すなわちモータ3の回転速度およびトルクが最大となる電圧である。駆動指令電圧Vspが最大加速電圧V1以下の範囲では、駆動信号Sdrのデューティ比が最大値(例えば、100%)で一定となる。
【0055】
停止電圧V2は、駆動信号Sdrのデューティ比が最小、すなわちモータ3を停止させる電圧である。駆動指令電圧Vspが停止電圧V2以上の範囲では、駆動信号Sdrのデューティ比が最小値(例えば、0%)で一定となる。
【0056】
なお、後述するように、電圧生成回路20が基準電圧Vregを分圧して駆動指令電圧Vspを生成する場合、駆動指令電圧Vspは基準電圧Vreg(例えば、3.3V)より低い電圧となる。
【0057】
制御回路12は、例えば、
図3に示すような駆動指令電圧Vspと駆動信号Sdr(PWM信号)のデューティ比との対応関係を示す対応関係情報を、制御回路12内の記憶装置(不図示)に予め記憶している。駆動指令取得部122は、上記記憶装置に記憶されている対応関係情報を用いて、電圧生成回路20から供給された駆動指令電圧Vspに対応するデューティ比Tdtyを選択し、駆動信号生成部123に指示する。
【0058】
駆動信号生成部123は、駆動信号Sdrを生成するための機能部である。駆動信号生成部123は、例えば、駆動指令取得部122によって指定されたデューティ比Tdtyを有するPWM信号を生成し、駆動信号Sdrとして出力する。
【0059】
駆動信号生成部123は、ロック保護管理部125からモータ3の駆動の停止が指示された場合には、駆動指令取得部122から指定されたデューティ比Tdty(駆動指令電圧Vsp)に関わらず、モータ3の駆動を停止させるように駆動信号Sdrを生成する。例えば、このとき、駆動信号生成部123は、インバータ回路15の上側アームのスイッチ素子をオフし、下側アームの少なくとも一つのスイッチ素子をオンさせるように、駆動信号Sdrを生成する。
【0060】
駆動信号生成部123は、モータ3の起動を開始するとき、所定の時間の経過後に駆動信号Sdrを生成する。
【0061】
図4は、モータ3の起動開始時における駆動信号Sdrの生成が開始されるタイミングを説明するための図である。
図4において、上段にモータ3の入力電圧Vinの波形が示され、中段に基準電圧Vregの波形が示され、下段に駆動信号Sdrの波形が示されている。
【0062】
図4に示すように、外部電源から電源電圧Vdcが制御回路12に印加されると、制御回路12の基準電圧生成回路121が基準電圧Vregを生成する。駆動信号生成部123は、基準電圧Vregが立ち上がってから起動待機時間Twの経過後に、駆動信号Sdrを生成する。すなわち、本実施の形態に係るファンシステム200では、制御回路12への電源電圧Vdcの投入により基準電圧Vregが生成されてから起動待機時間Twが経過した後に、モータ3の起動が開始される。
【0063】
回転速度信号生成部124は、モータ3の回転速度を示す回転速度信号fgとしてのFG(Frequency Generator)信号を生成する。回転速度信号生成部124は、例えば、位置検出器5としてのホール素子から出力された位置検出信号Shに基づいて、モータ3の回転速度に比例する周期(周波数)を有するFG信号を生成する。回転速度信号生成部124から出力されたFG信号は、回転速度信号fgとしてロック保護管理部125および上位装置2に入力される。
【0064】
例えば、回転速度信号生成部124は、ホール信号Shの正極側の信号と負極側の信号を比較するコンパレータ回路と、コンパレータ回路の比較結果に基づいてパルス状のFG信号を生成するロジック回路とによって構成されている。
なお、回転速度信号生成部124は、制御回路12が備えていなくてもよい。例えば、回転速度信号生成部124は、モータ3が搭載される基板(プリント基板)上に形成されたFGパターンであってもよい。
【0065】
ロック保護管理部125は、ロック保護処理を行う機能部である。
図5は、制御回路12(ロック保護管理部125)によるロック保護処理を説明するための図である。
【0066】
ロック保護管理部125は、第1処理として、回転速度信号fgの電圧の変化の有無を監視し、回転速度信号fgの電圧が変化しない時間が予め設定された判定時間T1となったとき、モータ3の駆動を停止させる。
【0067】
例えば、
図5に示すように、時刻t1において、何らかの原因でモータ3がロック状態となり、パルス状の回転速度信号fgの電圧が変化しなくなった場合を考える。このとき、ロック保護管理部125は、時間の計測を開始する。次に、時刻t2において計測時間が予め設定された判定時間(第1時間の一例)T1に到達したとき、ロック保護管理部125は、回転速度信号fgの電圧が変化しなかったことをもとに、モータ3が回転していないロック状態であると判定し、駆動信号生成部123を制御して、モータ3の駆動を停止させるように駆動信号Sdrを生成させ(第1処理)、モータ3のロック保護を行う。
【0068】
なお、判定時間T1の計測中に、パルス状の回転速度信号fgの電圧が変化した場合(例えば、回転速度信号fgの切り替わりエッジが検出された場合)には、ロック保護管理部125は、判定時間T1の計測を停止し、それまでの計測時間をリセットする。
【0069】
次に、ロック保護管理部125は、ロック保護処理における第2処理を行う。ロック保護管理部125は、第2処理として、モータ3のロック保護を一定期間継続させ、その後、ロック保護を解除する。例えば、
図5に示すように、時刻t2においてモータ3のロック保護を開始したとき、ロック保護管理部125は、時間の計測を開始する。次に、時刻t3において計測時間が予め設定されたロック保護時間(第2時間の一例)T2に到達したとき、ロック保護管理部125は、駆動信号生成部123を制御して駆動指令電圧Vspに基づく駆動信号Sdrの生成を再開させ、モータ3のロック保護を解除する(第2処理)。
【0070】
このように、ロック保護処理は、第1処理と第2処理とを合わせて一つの処理サイクルを構成している。したがって、ロック保護処理の1つの処理サイクルの期間は、第1時間T1と第2時間T2との合計期間となる。以下の説明において、ロック保護処理の1つの処理サイクルの期間を「サイクル期間」とも称する。
【0071】
本実施の形態において、駆動指令電圧Vspに基づいて駆動信号Sdrを生成してモータ3の駆動を制御する動作モードを通常駆動モードと称し、ロック保護処理によってモータ3の駆動を停止する動作モードをロック保護モードと称する。例えば、何らかの原因でモータ3が拘束されている状態(回転速度信号fgの電圧の変化しない状態)が継続している場合、制御回路12は、通常駆動モードとロック保護モードとを交互に繰り返すことになる(
図5参照)。
【0072】
本実施の形態において、モータ3の起動開始後、すなわち、モータ駆動制御装置1に電源電圧Vdcが印加され、基準電圧Vregが生成されてから起動待機時間Twの経過後(
図4参照)に、ロック保護処理の最初の処理サイクルが開始される。以下の説明では、モータ3の起動が開始されてからn(nは1以上の整数)回目に行われるロック保護処理の処理サイクルの期間を第nサイクル期間Tcnと称する。具体的には、モータ3の起動開始後に最初に行われるロック保護処理の処理サイクルに相当する期間を第1サイクル期間Tc1とし、第1サイクル期間Tc1の次に行われるロック保護処理の処理サイクルに相当する期間を第2サイクル期間Tc2とする。
【0073】
次に、電圧生成回路20の構成について詳細に説明する。
上述したように、電圧生成回路20は、モータ3の目標となる動作状態(例えば、目標の回転速度)を指示する駆動指令電圧Vspを生成する。また、上述したように、駆動指令電圧Vspは、モータ3を目標となる動作状態にするための駆動信号Sdrのデューティ比を指示する信号であって、駆動指令電圧Vspと駆動信号Sdrのデューティ比との対応関係が、予め制御回路12に記憶されている。
【0074】
電圧生成回路20は、モータ3(ファン100)の通常動作時において、目標となるファン100の風量に応じた大きさの駆動指令電圧Vsp(目標電圧)を生成する。本実施の形態では、一例として、電圧生成回路20が、通常動作時において、ファン100の風量が最大(モータ3の回転速度が最大)となる電圧、すなわち駆動信号Sdrのデューティ比が100%になる電圧を駆動指令電圧Vspとして出力するものとする。
図3の例の場合、電圧生成回路20は、通常動作時において、駆動信号Sdrのデューティ比が100%になる最大加速電圧V1以下の電圧を生成し、駆動指令電圧Vspとして出力する。
【0075】
電圧生成回路20は、モータ3の起動開始後に、ロック保護処理の処理サイクルに合わせてモータ3のトルクが漸次的に大きくなるように、駆動指令電圧Vspを漸次的に変化させて、通常動作時の目標電圧(駆動信号Sdrのデューティ比が100%になる電圧)まで到達させる。
【0076】
具体的には、電圧生成回路20は、モータ3の起動開始後、制御回路12によるロック保護処理の一つの処理サイクルに相当する第1サイクル期間に、第1回転速度(第1デューティ比)を指示する駆動指令電圧Vspを生成し、第1サイクル期間の次のロック保護処理の一つの処理サイクルに相当する第2サイクル期間に、第1回転速度よりも大きい第2回転速度(第1デューティ比よりも大きい第2デューティ比)を指示する駆動指令電圧Vspを生成する。
【0077】
図6は、実施の形態1に係る駆動指令電圧Vspの特性の一例を示す図である。
図6に示すグラフにおいて、横軸は時間を表し、縦軸は電圧を表している。参照符号300は、モータ3の起動を開始してからの駆動指令電圧Vspの時間的な変化を表している。
【0078】
図6に示すように、電圧生成回路20は、モータ3の起動開始後に基準電圧Vregが生成されてから起動待機時間Twの経過後(
図4参照)の、ロック保護処理の第1サイクル期間が開始される時刻t1において、駆動指令電圧Vspが第1判定電圧Vaとなるように駆動指令電圧Vspを生成する。また、
図6に示すように、電圧生成回路20は、ロック保護処理の第2サイクル期間が開始される時刻t2において、駆動指令電圧Vspが第2判定電圧Vbとなるように、駆動指令電圧Vspを生成する。
【0079】
ここで、第1判定電圧Vaは、最大加速電圧V1より大きく、且つ、停止電圧V2よりも小さい電圧であり、例えば、駆動信号Sdrのデューティ比=50%を指示する電圧である。第2判定電圧Vbは、最大加速電圧V1以下の電圧であり、例えば、駆動信号Sdrのデューティ比=100%を指示する電圧である。
【0080】
このように、電圧生成回路20は、モータ3の起動開始時において、制御回路12によるロック保護処理の処理サイクルに合わせて2種類の駆動指令電圧Vspを生成する。
【0081】
図7は、実施の形態1に係る電圧生成回路20の構成の一例を示す図である。
電圧生成回路20は、例えば、基準電圧Vregを分圧して駆動指令電圧Vspを生成する分圧回路である。電圧生成回路20としての分圧回路は、その分圧比が、モータ3の起動開始後に時間の経過とともに変化するように構成されている。
【0082】
例えば、
図7に示すように、電圧生成回路20は、基準電圧Vregが供給される第1ノードP1と、基準電圧Vregよりも低い固定電位(例えば、GND電位)に接続される第2ノードP2と、駆動指令電圧Vspを出力するための第3ノードP3と、を有している。また、電圧生成回路20は、第1ノードP1と第3ノードP3との間に接続された第1抵抗R1と、第3ノードP3と第2ノードP2との間に接続された第2抵抗R2と、第1ノードP1と第3ノードP3との間に直列に接続された第3抵抗R3および第1キャパシタC1とを有している。
【0083】
図7に示す電圧生成回路20において、基準電圧Vregの投入直後は、第1キャパシタC1に電荷が蓄えられていないため、主として第1抵抗R1~第3抵抗R3による分圧比に基づいて駆動指令電圧Vspが決定される。その後、第1キャパシタC1が充電され始めると、第3抵抗R3および第1キャパシタC1側の抵抗成分が大きくなり、駆動指令電圧Vspが低下する。そして、ロック保護処理の第1サイクル期間Tc1が開始されるタイミング(
図6の時刻t1)において、駆動指令電圧Vspが第1判定電圧Vaとなる。その後、更に第1キャパシタC1が充電され、第3抵抗R3および第1キャパシタC1側の抵抗成分が更に大きくなり、ロック保護処理の第2サイクル期間Tc2が開始されるタイミング(
図6の時刻t2)において、駆動指令電圧Vspが第2判定電圧Vbとなる。
【0084】
このように、電圧生成回路20として
図7に示す回路構成を採用し、第1乃至第3抵抗R1~R3および第1キャパシタC1の定数を適切な値に設定することにより、制御回路12によるロック保護処理の第1および第2サイクル期間Tc1,Tc2に合わせた所望の大きさの駆動指令電圧Vspを容易に生成することができる。
【0085】
ところで、一般にモータのトルクは、モータの入力電圧に依存し、入力電圧が大きくなるほどトルクが大きくなる傾向がある。そのため、モータ3を駆動するための駆動信号Sdrのデューティ比の指令値が一定であったとしても、入力電圧Vinに応じてモータ3のトルクが変わる。
【0086】
そこで、実施の形態1に係る電圧生成回路20は、入力電圧Vinによるモータ3のトルクの変動を低減するために、モータ3の入力電圧Vinに応じて駆動指令電圧Vspを調整する。具体的には、電圧生成回路20は、モータ3の入力電圧が大きいほど駆動信号Sdrのデューティ比が小さくなるように駆動指令電圧Vspを生成する。例えば、
図7に示すように、電圧生成回路20は、入力電圧Vinが供給される第4ノードP4と、第4ノードP4と第3ノードP3との間に接続された入力抵抗Rinとを更に有する。
【0087】
図8は、実施の形態1に係る電圧生成回路20に異なる入力電圧Vinを印加したときの、駆動指令電圧Vspの特性の一例を示す図である。
図8に示すグラフにおいて、横軸は時間を表し、縦軸は電圧を表している。参照符号400は、
図7に示した回路構成を有する電圧生成回路20に入力電圧Vin=12Vを印加したときの駆動指令電圧Vspの時間的な変化を表し、参照符号401は、
図7に示した回路構成を有する電圧生成回路20に入力電圧Vin=24Vを印加したときの駆動指令電圧Vspの時間的な変化を表している。
【0088】
図8に示すように、電圧生成回路20において入力抵抗Rinを介して第3ノードP3に入力電圧Vinを印加することにより、駆動指令電圧Vspは、入力電圧Vinが大きくなるほど大きくなる。換言すれば、入力電圧Vinが大きくなるほど、駆動信号Sdrのデューティ比の指示値が小さくなる。
【0089】
このように、入力電圧Vinが大きくなるほど駆動信号Sdrのデューティ比の指示値が小さくなるように駆動指令電圧Vspを生成することにより、入力電圧Vinが変化してもモータ3のトルクが一定になるようにすることが可能となる。
【0090】
例えば、入力電圧Vinが12Vであるときに駆動信号Sdrのデューティ比が55%となるように駆動指令電圧Vsp(第1判定電圧Va1)を生成し、入力電圧Vinが24Vであるときに駆動信号Sdrのデューティ比が45%となるように駆動指令電圧Vsp(第1判定電圧Va2)を生成する。これによれば、入力電圧Vinが12Vである場合と入力電圧Vinが24Vである場合のいずれの場合においても、モータ3の起動開始後の第1サイクル期間が開始される時刻t1にモータ3を同程度のトルクで回転させることができる。
【0091】
したがって、電圧生成回路20によれば、後述するように上位装置2がモータ3の異常判定処理を行うときのモータ3のトルクを、入力電圧Vinによらず一定にすることが可能となるので、上位装置2によるモータ3の異常判定の精度を向上させることが可能となる。
【0092】
次に、上位装置2について説明する。
上位装置2は、電源電圧Vdcを監視することにより、ファン100への電源電圧Vdcの供給の有無を判定する。
【0093】
なお、
図1には、電源電圧Vdcが直流電源からファン100(モータ駆動制御装置1)に直接供給される場合が例示されているが、これに限られない。例えば、上位装置2が、電源電圧Vdcを監視するだけでなく、ファン100(モータ駆動制御装置1)への電源電圧Vdcの供給と遮断を切り替えるようにしてもよい。
【0094】
また、上位装置2は、回転速度信号fgを監視することにより、ファン100(モータ3)の回転の有無を判定する。上述したように、回転速度信号fgはモータ3の回転速度に応じて変化する周期信号である。上位装置2は、回転速度信号fgを監視することにより、モータ3が回転しているか否かを判定するとともに、必要に応じてモータ3の回転速度を算出する。
【0095】
上位装置2は、回転速度信号fgに基づいて、ファン100(モータ3)側の異常の有無を判定する異常判定処理を実行する。以下、上位装置2による異常判定処理について、詳細に説明する。
【0096】
図9は、実施の形態1に係るファンシステムによるモータの異常判定方法を説明するためのタイミングチャートである。
【0097】
上位装置2は、モータ駆動制御装置1側のロック保護処理の第1サイクル期間Tc1および第2サイクル期間Tc2における回転速度信号fgに基づいて、モータ3の異常の有無を判定する。
【0098】
具体的には、上位装置2は、最大デューティ比よりも低い第1デューティ比(例えば、50%)の駆動信号Sdrの生成が指示される第1サイクル期間Tc1におけるモータ3の回転の有無と、第1デューティ比よりも大きい第2デューティ比(例えば、最大デューティ比100%)の駆動信号Sdrの生成が指示される第2サイクル期間Tc2におけるモータ3の回転の有無に基づいて、モータ3の異常の有無を判定する。
【0099】
より具体的には、上位装置2は、駆動指令電圧Vspが第1デューティ比(例えば、50%)を指示する第1判定電圧Vaとなる第1サイクル期間Tc1において、回転速度信号fgの変化が検出された場合に、モータ3が正常であると判定する。
【0100】
例えば、
図9に示すように、時刻t1においてロック保護処理の第1サイクル期間が開始されてから判定時間T1が経過した時刻t2以降において、上位装置2は、回転速度信号fgの変化の有無を判定する(異常判定処理1)。このとき、
図9の(i)に示すように、回転速度信号fgの変化が検出された場合には、上位装置2は、モータ3(ファン100)が正常に動作していると判定する。
【0101】
一方、第1サイクル期間Tc1において回転速度信号fgの変化が検出されず、且つ、駆動指令電圧Vspが第2デューティ比(例えば、100%)を指示する第2判定電圧Vbとなる第2サイクル期間Tc2において回転速度信号fgの変化が検出された場合には、上位装置2は、モータ3が第1異常状態、すなわちファン100が汚れている状態であると判定する。
【0102】
例えば、
図9の(ii)に示すように、第1サイクル期間Tc1における異常判定処理1において、回転速度信号fgが一定(例えば、ハイレベル一定)であり、回転速度信号fgの変化が検出されなかった場合、上位装置2は、時刻t3において次のロック保護処理の第2サイクル期間Tc2が開始されてから判定時間T1が経過した時刻t4以降において、回転速度信号fgが変化したか否かを判定する(異常判定処理2)。このとき、
図9の(ii)に示すように、回転速度信号fgの変化が検出された場合には、上位装置2は、ファン100が汚れている状態であると判定する。
【0103】
また、ロック保護処理の第1サイクル期間Tc1および第2サイクル期間Tc2において回転速度信号fgの変化が検出されなかった場合に、上位装置2は、モータ3が第2異常状態、すなわちモータ3がロック状態であると判定する。
【0104】
例えば、
図9の(iii)に示すように、第1サイクル期間Tc1および第2サイクル期間Tc2において回転速度信号fgが一定(例えば、ハイレベル一定)であった場合、上位装置2は、ファン100(モータ3)がロック状態であると判定する。
【0105】
このように、上位装置2は、モータ起動後にモータ駆動制御装置1によって行われる2回のロック保護処理の処理サイクルに合わせて回転速度信号fgの変化の有無を判定することにより、モータ3の異常の有無のみならず、異常の種類(ファン100の汚れ、またはモータ3のロック状態)を特定することが可能となる。
【0106】
なお、モータ駆動制御装置1側のロック保護処理が開始されるタイミングや判定時間T1等の情報は予め上位装置2に記憶されており、上位装置2は、それらの情報に基づいて、適切なタイミングでモータ3の異常判定処理を実行する。
【0107】
次に、本実施の形態に係るファンシステム200によるモータ3の異常判定方法の流れについて説明する。
【0108】
図10は、実施の形態1に係るファンシステム200によるモータの異常判定方法の流れを示すフローチャートである。
【0109】
図10に示すように、ファンシステム200において、電源電圧Vdcがモータ駆動制御装置1に投入されると、先ず、制御回路12が基準電圧Vregを生成し、電圧生成回路20が基準電圧Vregに基づいて、駆動指令電圧Vspの生成を開始する(ステップS10)。
【0110】
基準電圧Vregが生成されてから起動待機時間Twの経過後(
図9における時刻t1)に、制御回路12が通常駆動モードとなり、駆動指令電圧Vspに基づくモータ駆動制御を開始することにより、モータ3の起動を開始する(ステップS11)。これにより、ロック保護処理の第1サイクル期間Tc1が開始される。
【0111】
このとき、駆動指令電圧Vspが第1判定電圧Vaとなる(ステップS12)。具体的には、ステップS11において制御回路12がモータ3の起動を開始した時(
図9における時刻t1)、駆動指令電圧Vspが、例えば、駆動信号Sdrのデューティ比=50%を指示する第1判定電圧Vaとなる。
【0112】
制御回路12は、第1判定電圧Vaに対応するデューティ比(50%)の駆動信号Sdrを生成して、モータ3を駆動する(ステップS13)。
【0113】
制御回路12および上位装置2は、第1サイクル期間Tc1において、モータ3が回転しているか否かを判定する(ステップS14)。具体的には、上述したように、制御回路12において、ロック保護管理部125が、回転速度信号生成部124によって生成された回転速度信号fgの変化の有無を判定する。また、上位装置2も同様に、異常判定処理として、制御回路12(回転速度信号生成部124)から上位装置2に入力される回転速度信号fgの変化の有無を判定する。
【0114】
第1サイクル期間Tc1においてモータ3が回転している場合(ステップS14:Yes)、パルス状の回転速度信号fgが出力される。この場合、上位装置2は、回転速度信号fgの変化を検出し、モータ3(ファン100)が正常であると判定する(ステップS26)。すなわち、上位装置2は、モータ3のトルク(回転速度)が低レベルである第1サイクル期間Tc1においてモータ3が回転していることを検出できたため、モータ3が正常であると判定する。
このとき、制御回路12も同様に、回転速度信号fgの変化を検出するため、通常駆動モードによるモータ駆動制御を継続する。
【0115】
一方、第1サイクル期間Tc1においてモータ3が回転していない場合(ステップS14:No)、回転速度信号fgが一定(ローレベル一定またはハイレベル一定)となる。この場合、制御回路12は、回転速度信号fgの変化を検出できないため、ロック保護処理の判定時間T1の計測を開始し、判定時間T1が経過したか否かを判定する(ステップS15)。
【0116】
判定時間T1が経過していない場合(ステップS15:No)、制御回路12は、ステップS14に戻り、モータ3が回転しているか否かを判定し、モータ3が回転していない場合には、判定時間T1の計測を継続する。判定時間T1が経過した場合(ステップS15:Yes)、制御回路12は、通常駆動モードからロック保護モードに移行し、ロック保護管理部125が駆動信号生成部123を制御することにより、モータ3の駆動を停止させるための駆動信号Sdrを生成する(ステップS16)。これにより、モータ3はロック保護状態となる。このとき、ロック保護管理部125は、ロック保護時間T2の計測も開始する。また、上位装置2は、第1サイクル期間Tc1における異常判定処理では回転速度信号fgの変化が検出されなかったこと(モータ3が回転しなかったこと)を内部の記憶部(不図示)に記憶しておく。
【0117】
次に、制御回路12は、ロック保護時間T2が経過したか否かを判定する(ステップS17)。ロック保護時間T2が経過していない場合(ステップS17:No)、制御回路12は、引き続きロック保護モードで動作する。
【0118】
ロック保護時間T2が経過した場合(ステップS17:Yes)、制御回路12は、ロック保護モードから通常駆動モードに移行し、駆動指令電圧Vspに基づくモータ駆動制御を再開する(ステップS18)。これにより、制御回路12によるロック保護処理の第1サイクル期間Tc1が終了し、新たな第2サイクル期間Tc2が開始される。
【0119】
第2サイクル期間Tc2が開始されたとき、駆動指令電圧Vspが第2判定電圧Vbとなる(ステップS19)。具体的には、ステップS18において制御回路12が通常駆動モードでの動作を再開し、第2サイクル期間Tc2が開始された時(
図9における時刻t3)に、駆動指令電圧Vspが、例えば、駆動信号Sdrのデューティ比を100%にすることを指示する第2判定電圧Vbとなる。
【0120】
制御回路12は、第2判定電圧Vbに対応するデューティ比(100%)の駆動信号Sdrを生成して、モータ3を駆動する(ステップS20)。
【0121】
次に、制御回路12および上位装置2は、ステップS14と同様に、第2サイクル期間Tc2においてモータ3が回転しているか否かを判定する(ステップS21)。
【0122】
第2サイクル期間Tc2においてモータ3が回転している場合(ステップS21:Yes)、上位装置2は、ファン100(モータ3)が汚れている状態であると判定する(ステップS25)。すなわち、上位装置2は、モータ3のトルク(回転速度)が低レベルとなる第1サイクル期間Tc1ではモータ3が回転していることを検出できなかったが、モータ3のトルクが高レベルとなる第2サイクル期間Tc2においてモータ3が回転していることを検出できたため、ファン100(モータ3)が汚れている状態であると判定する。
このとき、制御回路12も同様に、回転速度信号fgの変化を検出するため、通常駆動モードによるモータ駆動制御を継続する。
【0123】
一方、第2サイクル期間Tc2においてモータ3が回転していない場合(ステップS21:No)、制御回路12は、回転速度信号fgの変化を検出できないため、ロック保護処理の判定時間T1の計測を開始し、判定時間T1が経過したか否かを判定する(ステップS22)。
【0124】
第2サイクル期間Tc2において判定時間T1が経過していない場合(ステップS22:No)、制御回路12は、ステップS21に戻り、モータ3が回転しているか否かを判定し、モータ3が回転していない場合には、判定時間T1の計測を継続する。一方、第2サイクル期間Tc2において判定時間T1が経過した場合(ステップS22:Yes)、制御回路12は、通常駆動モードからロック保護モードに移行し、モータ3の駆動を停止させるように駆動信号Sdrを生成する(ステップS23)。その後、制御回路12は、上述したロック保護処理の処理サイクルを繰り返す。
【0125】
このとき、上位装置2は、モータ3がロック状態であると判定する(ステップS24)。すなわち、上位装置2は、モータ3のトルク(回転速度)が低レベルとなる第1サイクル期間Tc1およびモータ3のトルクが高レベルとなる第2サイクル期間Tc2の両期間において回転速度信号fgの変化を検出できなかったため、ファン100(モータ3)がロック状態であると判定する。
【0126】
以上、実施の形態1に係るモータ駆動制御装置1によれば、モータ3の起動開始後に、電圧生成回路20が、制御回路12によるロック保護処理の処理サイクルに合わせて、モータ3の回転速度(トルク)が漸次的に大きくなるように駆動指令電圧Vspを生成するので、モータ3(ファン100)の異常の有無を容易に判定することが可能となる。
【0127】
具体的には、電圧生成回路20は、モータの起動開始後の、ロック保護処理の一つの処理サイクルに相当する第1サイクル期間Tc1に、第1回転速度(例えば、第1デューティ比=50%)を指示する駆動指令電圧Vsp(=Va)を生成し、第1サイクル期間Tc1の次の一つの処理サイクルに相当する第2サイクル期間Tc2に、第1回転速度よりも大きい第2回転速度(例えば、第2デューティ比=100%)を指示する駆動指令電圧Vsp(=Vb)を生成する。
【0128】
これによれば、上位装置2は、モータ駆動制御装置1側のロック保護処理の第1サイクル期間Tc1と第2サイクル期間Tc2の夫々の期間において、回転速度信号fgの変化の有無を判定することにより、モータ3(ファン100)の異常の有無を容易に判定することが可能となる。
【0129】
例えば、上位装置2は、モータの起動開始後の第1サイクル期間Tc1において回転速度信号fgの変化が検出された場合に、モータ3が正常であると判定する。また、上位装置2は、第1サイクル期間Tc1において回転速度信号fgの変化が検出されず、且つ、第2サイクル期間Tc2において回転速度信号fgの変化が検出された場合に、モータ3が第1異常状態(例えば、モータ3/ファン100が汚れた状態)であると判定する。更に、上位装置2は、第1サイクル期間Tc1および第2サイクル期間Tc2において回転速度信号fgの変化が検出されなかった場合に、モータ3が第2異常状態(例えば、ロック状態)であると判定する。
【0130】
このように、モータ起動開始後に行われるロック保護処理の各処理サイクルでの回転速度信号fgの変化の有無を監視することにより、モータ3の異常の有無のみならず、異常の種類を推定することが可能となる。
【0131】
本実施の形態に係るモータ駆動制御装置1は、制御回路12としてロック保護機能を備えた汎用ICを採用する場合に、特に有益である。例えば、制御回路12としてモータのロック保護機能を備えた汎用ICを採用している既存のファンシステムに対して、ファン(モータ)の異常判定機能を新たに追加したい場合には、既存のシステム構成に電圧生成回路20を追加するだけでよい。すなわち、モータ駆動制御装置1によれば、既存の制御回路12が備えているロック保護機能の処理サイクルに合わせてモータ3の回転速度(トルク)を可変させるので、ロック保護機能とは別に、ファンの異常判定を行うために回転速度(トルク)を可変させる機能等を制御回路12側に追加する必要がなく、電圧生成回路20を追加するだけでよい。
【0132】
また、電圧生成回路20として
図7に示した回路構成を採用することにより、抵抗やキャパシタの定数を調整するだけで、ロック保護機能の処理サイクルに合わせて漸次的に大きさが変化する駆動指令電圧Vspを容易に生成することができる。
【0133】
このように、実施の形態1に係るモータ駆動制御装置1によれば、既存のファンシステムのシステム構成を大幅に変更することなく、より簡単な構成でモータ3(ファン100)の異常の有無を判定することが可能となる。
【0134】
≪実施の形態2≫
図11は、本発明の実施の形態2に係るモータ駆動制御装置1Aを備えたファンシステムの構成を示すブロック図である。
【0135】
図11に示される実施の形態2に係るファンシステム200Aは、電圧生成回路20Aの構成および上位装置2Aによるモータの異常判定処理において実施の形態1に係るファンシステム200と相違し、その他の点においてはファンシステム200と同様である。以下、ファンシステム200Aの実施の形態1に係るファンシステム200との相違点について、詳細に説明する。
【0136】
電圧生成回路20Aは、実施の形態1に係る電圧生成回路20の機能に加えて、制御回路12のロック保護処理の第2サイクル期間Tc2の次の一つの処理サイクルに相当する第3サイクル期間Tc3に、第2回転速度(第2デューティ比)よりも大きい第3回転速度(第3デューティ比)を指示する駆動指令電圧Vspを生成する機能を有する。
【0137】
図12は、実施の形態2に係る駆動指令電圧Vspの特性の一例を示す図である。
図12に示すグラフにおいて、横軸は時間を表し、縦軸は電圧を表している。参照符号600は、モータ3の起動を開始してからの駆動指令電圧Vspの時間的な変化を表している。
【0138】
図12に示すように、電圧生成回路20Aは、基準電圧Vregが生成されてから起動待機時間Twの経過後(
図4参照)、ロック保護処理の第1サイクル期間Tc1が開始される時刻t1において駆動指令電圧Vspが第1判定電圧Vaとなり、ロック保護処理の第2サイクル期間Tc2が開始される時刻t2において駆動指令電圧Vspが第2判定電圧Vbとなり、ロック保護処理の第3サイクル期間Tc3が開始される時刻t3において駆動指令電圧Vspが第3判定電圧Vcとなるように、駆動指令電圧Vspを生成する。
【0139】
ここで、第1判定電圧Vaは、最大加速電圧V1より大きく且つ停止電圧V2より小さい電圧であり、例えば、駆動信号Sdrのデューティ比が25%になる電圧である。第2判定電圧Vbは、最大加速電圧V1より大きく、且つ、第1判定電圧Vaより小さい電圧であり、例えば、駆動信号Sdrのデューティ比が70%になる電圧である。第3判定電圧Vcは、最大加速電圧V1以下の電圧であり、例えば、駆動信号Sdrのデューティ比が100%になる電圧である。
【0140】
このように、電圧生成回路20Aは、モータ3の起動開始時において、制御回路12によるロック保護処理の処理サイクルに合わせて3種類の駆動指令電圧Vspを生成する。
【0141】
図13は、実施の形態2に係る電圧生成回路20Aの構成の一例を示す図である。
【0142】
図13に示す電圧生成回路20Aは、基準電圧Vregが供給される第1ノードP1と、基準電圧Vregよりも低い固定電位(例えば、GND電位)に接続される第2ノードP2と、駆動指令電圧Vspを出力するための第3ノードP3と、を有している。また、電圧生成回路20Aは、第1ノードP1と第3ノードP3との間に接続された第1抵抗R1と、第3ノードP3と第2ノードP2との間に接続された第2抵抗R2と、第1ノードP1と第3ノードP3との間に直列に接続された第3抵抗R3および第1キャパシタC1とを有している。
【0143】
また、電圧生成回路20Aは、制御電極、第1主電極、および第2主電極を有するトランジスタQ1を有している。トランジスタQ1は、第1主電極と制御電極との間の電位差に応じて第1主電極と第2主電極との間に電流経路を形成する。トランジスタQ1は、例えば、PNP型のバイポーラトランジスタである。トランジスタQ1において、制御電極はベース電極Bであり、第1主電極はエミッタ電極Eであり、第2主電極はコレクタ電極Cである。トランジスタQ1のコレクタ電極Cは、第3ノードP3に接続されている。
【0144】
電圧生成回路20Aは、トランジスタQ1のエミッタ電極(第1主電極)Eと第1ノードP1との間に接続された第4抵抗R4と、トランジスタQ1のエミッタ電極Eとベース電極(制御電極)Bとの間に接続された第5抵抗R5と、トランジスタQ1のベース電極Bと第2ノードP2との間に直列に接続された第6抵抗R6および第2キャパシタC2と、を有している。
【0145】
上述した回路構成を有する電圧生成回路20Aにおいて、基準電圧Vregの投入直後は、第2キャパシタC2に電荷が蓄えられていないため、トランジスタQ1がオンし、主として第1抵抗R1~第4抵抗R4による分圧比に基づいて駆動指令電圧Vsp(第1判定電圧Va)が決定される。トランジスタQ1がオンしている間は、駆動指令電圧Vspがクランプされ、第1判定電圧Vaに制限される。この期間内の何れかのタイミングにおいて、ロック保護処理の第1サイクル期間Tc1(
図12の時刻t1)が開始される。
【0146】
その後、第2キャパシタC2が充電され、トランジスタQ1のベース電位が上昇すると、トランジスタQ1がオフし始める。これにより、時間の経過とともに、第1抵抗R1~第4抵抗R4による分圧比が変化して、駆動指令電圧Vspが低下する。そして、第2サイクル期間Tc2が開始されるタイミング(
図12の時刻t2)において駆動指令電圧Vspが第2判定電圧Vbとなる。その後、更にトランジスタQ1のベース電位が上昇し、トランジスタQ1が完全にオフすると、第3サイクル期間Tc3が開始されるタイミング(
図12の時刻t3)において、駆動指令電圧Vspが第3判定電圧Vcとなる。
【0147】
このように、電圧生成回路20Aとして
図13に示す回路構成を採用し、第1乃至第6抵抗R1~R6、第1キャパシタC1および第2キャパシタC2の定数を適切な値に設定することにより、制御回路12によるロック保護処理の第1乃至第3サイクル期間Tc1,Tc2,Tc3に合わせて、所望の大きさの駆動指令電圧Vspを容易に生成することができる。
【0148】
また、電圧生成回路20Aは、実施の形態1に係る電圧生成回路20と同様に、入力電圧Vinが供給される第4ノードP4と、第4ノードP4と第3ノードP3との間に接続された入力抵抗Rinとを更に有していてもよい。これによれば、電圧生成回路20と同様に、入力電圧Vinによるモータ3のトルクの変動を低減することが可能となる。
【0149】
図14は、実施の形態2に係る電圧生成回路20Aに異なる入力電圧Vinを印加したときの、駆動指令電圧Vspの特性の一例を示す図である。
図14に示すグラフにおいて、横軸は時間を表し、縦軸は電圧を表している。参照符号700は、
図13に示した回路構成を有する電圧生成回路20Aに入力電圧Vin=12Vを印加したときの駆動指令電圧Vspの時間的変化を表し、参照符号701は、
図13に示した回路構成を有する電圧生成回路20Aに入力電圧Vin=24Vを印加したときの駆動指令電圧Vspの時間的変化を表している。
【0150】
図14に示すように、電圧生成回路20Aにおいて入力抵抗Rinを介して第3ノードP3に入力電圧Vinを印加することにより、駆動指令電圧Vspは、入力電圧Vinが大きくなるほど大きくなる。換言すれば、入力電圧Vinが大きくなるほど、駆動信号Sdrのデューティ比の指示値が小さくなる。
【0151】
このように、入力電圧Vinが大きくなるほど駆動信号Sdrのデューティ比の指示値が小さくなるように駆動指令電圧Vspを生成することにより、実施の形態1に係るファンシステム200と同様に、ファンシステム200Aにおいて、入力電圧Vinによらずモータ3のトルクが変動しないようにすることが可能となる。
【0152】
例えば、時刻t1において、入力電圧Vinが12Vであるときに駆動信号Sdrのデューティ比が27%となるように駆動指令電圧Vsp(第1判定電圧Va1)を生成し、入力電圧Vinが24Vであるときに駆動信号Sdrのデューティ比が23%となるように駆動指令電圧Vsp(第1判定電圧Va2)を生成する。また、時刻t2において、入力電圧Vinが12Vであるときに駆動信号Sdrのデューティ比が72%となるように駆動指令電圧Vsp(第2判定電圧Vb1)を生成し、入力電圧Vinが24Vであるときに駆動信号Sdrのデューティ比が68%となるように駆動指令電圧Vsp(第2判定電圧Vb2)を生成する。これによれば、入力電圧Vinが12Vである場合と入力電圧Vinが24Vである場合のいずれの場合においても、第1サイクル期間Tc1が開始される時刻t1および第2サイクル期間Tc2が開始される時刻t2にモータ3を同程度のトルクで回転させることができる。
【0153】
したがって、電圧生成回路20Aによれば、上位装置2Aがモータ3の異常判定処理を行うときのモータ3のトルクを、入力電圧Vinによらず一定にすることが可能となるので、上位装置2Aによるモータ3の異常判定の精度を向上させることが可能となる。
【0154】
次に、上位装置2Aについて説明する。
上位装置2Aは、電源電圧Vdcと回転速度信号fgに基づいて異常判定処理を実行する。
【0155】
図15は、実施の形態2に係るファンシステム200Aによるモータの異常判定方法を説明するためのタイミングチャートである。
【0156】
上位装置2Aは、モータ駆動制御装置1側のロック保護処理の第1サイクル期間Tc1、第2サイクル期間Tc2、および第3サイクル期間Tc3における回転速度信号fgに基づいて、モータ3の異常の有無を判定する。
【0157】
具体的には、上位装置2Aは、最大デューティ比よりも低い第1デューティ比(例えば、25%)の駆動信号Sdrの生成が指示される第1サイクル期間Tc1におけるモータ3の回転の有無と、第1デューティ比よりも大きい第2デューティ比(例えば、70%)の駆動信号Sdrの生成が指示される第2サイクル期間Tc2におけるモータ3の回転の有無と、第2デューティ比よりも大きい第3デューティ比(例えば、最大デューティ比100%)の駆動信号Sdrの生成が指示される第3サイクル期間Tc3におけるモータ3の回転の有無に基づいて、モータ3の異常の有無を判定する。
【0158】
より具体的には、上位装置2Aは、駆動指令電圧Vspが第1デューティ比(例えば、25%)を指示する第1判定電圧Vaとなる第1サイクル期間Tc1において、回転速度信号fgの変化が検出された場合に、モータ3が正常であると判定する。
【0159】
例えば、
図15に示すように、時刻t1においてロック保護処理の第1サイクル期間が開始されてから判定期間T1(第1時間の一例)が経過した時刻t2以降において、上位装置2Aは、回転速度信号fgの変化の有無を判定する(異常判定処理1)。このとき、
図15の(i)に示すように、回転速度信号fgの変化が検出された場合には、上位装置2Aは、モータ3(ファン100A)が正常に動作していると判定する。
【0160】
一方、第1サイクル期間Tc1において回転速度信号fgの変化が検出されず、且つ、駆動指令電圧Vspが第2デューティ比(例えば、70%)を指示する第2判定電圧Vbとなる第2サイクル期間Tc2において回転速度信号fgの変化が検出された場合には、上位装置2Aは、モータ3が第1異常状態、すなわちファン100Aが汚れている状態(汚れ度合:小レベル)であると判定する。
【0161】
例えば、
図15の(ii)に示すように、第1サイクル期間Tc1における異常判定処理1において、回転速度信号fgが一定(例えば、ハイレベル一定)であり、回転速度信号fgの変化が検出されなかった場合、上位装置2Aは、時刻t3において次のロック保護処理の第2サイクル期間Tc2が開始されてから判定時間T1が経過した時刻t4以降において、回転速度信号fgが変化したか否かを判定する(異常判定処理2)。このとき、
図15の(ii)に示すように、回転速度信号fgの変化が検出された場合には、上位装置2Aは、ファン100Aが汚れている状態(汚れ度合:小レベル)であると判定する。
【0162】
また、第1サイクル期間Tc1および第2サイクル期間Tc2において回転速度信号fgの変化が検出されず、且つ、駆動指令電圧Vspが第3デューティ比(例えば、100%)を指示する第3判定電圧Vcとなる第3サイクル期間Tc3において回転速度信号fgの変化が検出された場合に、上位装置2Aは、モータ3が第2異常状態、すなわちファン100Aが汚れている状態(汚れ度合:大レベル)であると判定する。
【0163】
例えば、
図15の(iii)に示すように、第1サイクル期間Tc1および第2サイクル期間Tc2における異常判定処理1,2において、回転速度信号fgが一定(例えば、ハイレベル一定)であり、回転速度信号fgの変化が検出されなかった場合、上位装置2Aは、時刻t5において次のロック保護処理の第3サイクル期間Tc3が開始されてから判定時間T1が経過した時刻t6以降において、回転速度信号fgが変化したか否かを判定する(異常判定処理3)。このとき、
図15の(iii)に示すように、回転速度信号fgの変化が検出された場合には、上位装置2Aは、ファン100Aが汚れている状態(汚れ度合:大レベル)であると判定する。
【0164】
更に、ロック保護処理の第1サイクル期間Tc1、第2サイクル期間Tc2、および第3サイクル期間Tc3において回転速度信号fgの変化が検出されなかった場合に、上位装置2Aは、モータ3が第3異常状態、すなわちモータ3がロック状態であると判定する。
【0165】
例えば、
図15の(iv)に示すように、第1サイクル期間Tc1、第2サイクル期間Tc2、および第3サイクル期間Tc3において、回転速度信号fgが一定(例えば、ハイレベル一定)であった場合、上位装置2Aは、ファン100A(モータ3)がロック状態であると判定する。
【0166】
このように、上位装置2Aは、モータ起動後にモータ駆動制御装置1によって行われる3回のロック保護処理の処理サイクルに合わせて回転速度信号fgの変化の有無を判定することにより、モータ3の異常の有無のみならず、ファン100Aの汚れ度合を特定することが可能となる。
【0167】
次に、実施の形態2に係るファンシステム200Aによるモータ3の異常判定方法の流れについて説明する。
【0168】
図16Aおよび
図16Bは、実施の形態2に係るファンシステム200Aによるモータの異常判定方法の流れを示すフローチャートである。
【0169】
図16Aに示すフローチャートのうち、ステップS10からステップS21までの処理フローは、実施の形態1に係るファンシステム200と同様である(
図10参照)。ただし、ステップS12およびステップS19における駆動指令電圧Vspの大きさは、
図10に示したフローチャートと相違する。
【0170】
図16Aに示すように、ファンシステム200Aにおいて、電源電圧Vdcがモータ駆動制御装置1に投入されると、基準電圧Vregおよび駆動指令電圧Vspが生成され(ステップS10)、基準電圧Vregが生成されてから起動待機時間Twの経過後(
図15における時刻t1)に、制御回路12が通常駆動モードとなり、モータ3の起動が開始される(ステップS11)。これにより、ロック保護処理の第1サイクル期間Tc1が開始される。
【0171】
このとき、駆動指令電圧Vspが第1判定電圧Vaとなる(ステップS12)。具体的には、駆動指令電圧Vspが、例えば、駆動信号Sdrのデューティ比=25%を指示する第1判定電圧Vaとなる。
【0172】
制御回路12は、第1判定電圧Vaに対応するデューティ比(25%)の駆動信号Sdrを生成して、モータ3を駆動する(ステップS13)。
【0173】
制御回路12および上位装置2Aは、第1サイクル期間Tc1において、モータ3が回転しているか否かを判定する(ステップS14)。第1サイクル期間Tc1においてモータ3が回転している場合(ステップS14:Yes)、パルス状の回転速度信号fgが出力される。この場合、上位装置2Aは、回転速度信号fgの変化を検出し、モータ3(ファン100A)が正常であると判定する(
図16BのステップS26)。すなわち、上位装置2Aは、モータ3のトルク(回転速度)が低レベルである第1サイクル期間Tc1においてモータ3が回転していることを検出できたため、モータ3が正常であると判定する。
このとき、制御回路12も同様に、回転速度信号fgの変化を検出するため、通常駆動モードによるモータ駆動制御を継続する。
【0174】
一方、第1サイクル期間Tc1においてモータ3が回転していない場合(ステップS14:No)、回転速度信号fgが一定(ローレベル一定またはハイレベル一定)となる。この場合、制御回路12は、回転速度信号fgの変化を検出できないため、ロック保護処理の判定時間T1の計測を開始し、判定時間(第1時間の一例)T1が経過したか否かを判定する(ステップS15)。
【0175】
判定時間T1が経過していない場合(ステップS15:No)、制御回路12は、ステップS14に戻り、モータ3が回転しているか否かを判定し、モータ3が回転していない場合には、判定時間T1の計測を継続する。判定時間T1が経過した場合(ステップS15:Yes)、制御回路12は、通常駆動モードからロック保護モードに移行する(ステップS16)。これにより、モータ3はロック保護状態となり、ロック保護時間(第2時間の一例)T2の計測が開始される。また、上位装置2Aは、第1サイクル期間Tc1における異常判定処理では回転速度信号fgの変化が検出されなかったこと(モータ3が回転しなかったこと)を内部の記憶部(不図示)に記憶しておく。
【0176】
次に、制御回路12は、ロック保護時間T2が経過したか否かを判定する(ステップS17)。ロック保護時間T2が経過していない場合(ステップS17:No)、制御回路12は、引き続きロック保護モードで動作する。
【0177】
ロック保護時間T2が経過した場合(ステップS17:Yes)、制御回路12は、ロック保護モードから通常駆動モードに移行し、駆動指令電圧Vspに基づくモータ駆動制御を再開する(ステップS18)。これにより、制御回路12によるロック保護処理の第1サイクル期間Tc1が終了し、第2サイクル期間Tc2が開始される。
【0178】
第2サイクル期間Tc2が開始されたとき、駆動指令電圧Vspが第2判定電圧Vbとなる(ステップS19)。具体的には、駆動指令電圧Vspが、例えば、駆動信号Sdrのデューティ比=70%を指示する第2判定電圧Vbとなる。
【0179】
制御回路12は、第2判定電圧Vbに対応するデューティ比(70%)の駆動信号Sdrを生成して、モータ3を駆動する(ステップS20)。
【0180】
制御回路12および上位装置2Aは、ステップS14と同様に、第2サイクル期間Tc2において、モータ3が回転しているか否かを判定する(ステップS21)。
【0181】
第2サイクル期間Tc2においてモータ3が回転している場合(ステップS21:Yes)、上位装置2Aは、ファン100A(モータ3)が汚れている状態であり、その汚れ度合が“小”レベルであると判定する(ステップS25A)。すなわち、上位装置2Aは、モータ3のトルクが低レベルである第1サイクル期間Tc1では回転速度信号fgの変化(モータ3の回転)を検出できなかったが、モータ3のトルクが中レベルである第2サイクル期間Tc2では回転速度信号fgの変化を検出できたため、ファン100A(モータ3)の汚れ度合が“小”レベルであると判定する。このとき、制御回路12も同様に回転速度信号fgの変化を検出するため、通常駆動モードによるモータ駆動制御を継続する。
【0182】
一方、第2サイクル期間Tc2においてモータ3が回転していない場合(ステップS21:No)、制御回路12は、回転速度信号fgの変化を検出できないため、ロック保護処理の判定時間T1の計測を開始し、判定時間T1が経過したか否かを判定する(ステップS22A)。
【0183】
判定時間T1が経過していない場合(ステップS22A:No)、制御回路12は、ステップS21に戻り、モータ3が回転しているか否かを判定し、モータ3が回転していない場合には、判定時間T1の計測を継続する。判定時間T1が経過した場合(ステップS22A:Yes)、制御回路12は、通常駆動モードからロック保護モードに移行する(
図16BのステップS23A)。これにより、モータ3はロック保護状態となり、ロック保護時間T2の計測が開始される。また、上位装置2Aは、第2サイクル期間Tc2における異常判定処理では回転速度信号fgの変化が検出されなかったこと(モータ3が回転しなかったこと)を内部の記憶部(不図示)に記憶しておく。
【0184】
次に、制御回路12は、ロック保護時間T2が経過したか否かを判定する(ステップS27)。ロック保護時間T2が経過していない場合(ステップS27:No)、制御回路12は、引き続きロック保護モードで動作する。
【0185】
ロック保護時間T2が経過した場合(ステップS27:Yes)、制御回路12は、ロック保護モードから通常駆動モードに移行し、駆動指令電圧Vspに基づくモータ駆動制御を再開する(ステップS28)。これにより、制御回路12によるロック保護処理の第2サイクル期間Tc2が終了し、第3サイクル期間Tc3が開始される。
【0186】
第3サイクル期間Tc3が開始されたとき、駆動指令電圧Vspが第3判定電圧Vcとなる(ステップS29)。具体的には、駆動指令電圧Vspが、例えば、駆動信号Sdrのデューティ比=100%を指示する第3判定電圧Vcとなる。
【0187】
制御回路12は、第3判定電圧Vcに対応するデューティ比(100%)の駆動信号Sdrを生成して、モータ3を駆動する(ステップS30)。
【0188】
制御回路12および上位装置2Aは、ステップS14と同様に、第3サイクル期間Tc3において、モータ3が回転しているか否かを判定する(ステップS31)。
【0189】
第3サイクル期間Tc3においてモータ3が回転している場合(ステップS31:Yes)、上位装置2Aは、ファン100A(モータ3)が汚れている状態であり、その汚れ度合が“大”レベルであると判定する(ステップS35)。すなわち、上位装置2Aは、モータ3のトルク(回転速度)が低レベル(デューティ比:25%)である第1サイクル期間Tc1、およびモータ3のトルクが中レベル(デューティ比:70%)である第2サイクル期間Tc2において回転速度信号fgの変化(モータ3の回転)を検出できなかったが、モータ3のトルクが高レベル(デューティ比:100%)である第3サイクル期間Tc3では回転速度信号fgの変化を検出できたため、ファン100A(モータ3)が汚れている状態であり、その汚れ度合が“大”レベルであると判定する。このとき、制御回路12も同様に回転速度信号fgの変化を検出するため、通常駆動モードによるモータ駆動制御を継続する。
【0190】
一方、第3サイクル期間Tc3においてモータ3が回転していない場合(ステップS31:No)、制御回路12は、回転速度信号fgの変化を検出できないため、ロック保護処理の判定時間T1の計測を開始し、判定時間T1が経過したか否かを判定する(ステップS32)。
【0191】
第3サイクル期間Tc3において判定時間T1が経過していない場合(ステップS32:No)、制御回路12は、ステップS31に戻り、モータ3が回転しているか否かを判定し、モータ3が回転していない場合には、判定時間T1の計測を継続する。一方、第3サイクル期間Tc3において判定時間T1が経過した場合(ステップS32:Yes)、制御回路12は、通常駆動モードからロック保護モードに移行し、モータ3の駆動を停止させるように駆動信号Sdrを生成する(ステップS33)。その後、制御回路12は、上述したロック保護処理の処理サイクルを繰り返す。
【0192】
次に、上位装置2Aは、モータ3がロック状態であると判定する(ステップS34)。すなわち、上位装置2Aは、モータ3のトルク(回転速度)が低レベル(デューティ比:25%)である第1サイクル期間Tc1、モータ3のトルクが中レベル(デューティ比:70%)である第2サイクル期間Tc2、およびモータ3のトルクが高レベル(デューティ比:100%)である第3サイクル期間Tc3のいずれの期間においても回転速度信号fgの変化(モータ3の回転)を検出できなかったため、ファン100A(モータ3)がロック状態であると判定する。
【0193】
以上、実施の形態2に係るモータ駆動制御装置1Aによれば、モータ3の起動開始後に、電圧生成回路20Aが、制御回路12によるロック保護処理の処理サイクルに合わせてモータ3の回転速度(トルク)が漸次的に大きくなるように駆動指令電圧Vspを生成するので、モータ3(ファン100A)の異常の有無を容易に判定することが可能となる。
【0194】
また、モータ駆動制御装置1Aは、モータ3の起動開始後に行われる3回のロック保護処理の期間(第1サイクル期間Tc1、第2サイクル期間Tc2、および第3サイクル期間Tc3)に合わせて、駆動指令電圧Vspを3つの異なる大きさに設定して各サイクル期間におけるモータ3のトルク(回転速度)を3つのレベルにそれぞれ設定する。
これによれば、上位装置2Aは、上述した3回のロック保護処理の各サイクル期間におけるモータ3の回転の有無を判定することにより、モータ3(ファン100A)の汚れの有無のみならず、汚れ度合いを特定することができるので、より高精度なモータの異常判定処理を実現することが可能となる。
【0195】
このように、実施の形態2に係るモータ駆動制御装置1Aによれば、既存のファンシステムのシステム構成を大幅に変更することなく、より簡単な構成で、モータ3(ファン100A)の異常状態を高精度に判定することが可能となる。
【0196】
≪実施の形態3≫
図17は、本発明の実施の形態3に係るモータ駆動制御装置1Bを備えたファンシステムの構成を示すブロック図である。
実施の形態3に係るファンシステム200Bは、2系統のモータ駆動回路10a,10bによってモータ3Bの駆動が可能な構成を有する点において、実施の形態1,2に係るファンシステム200,200Aと相違する。
【0197】
図17に示すように、ファン100Bは、ティース(図示せず)に巻回された第1系統のコイル30a及び第2系統のコイル30bを有するモータ3Bを備えている。なお、第1系統のコイル30a及び第2系統のコイル30bは、それぞれ1つのコイルにより構成されていてもよい。
【0198】
ファン100Bは、モータ3Bの回転位置に応じて位置信号を出力する2個の位置検出器(例えば、ホール素子)5a,5bを更に備えている。位置検出器5aは、第1系統のコイル30aに対応する位置に配置されている。位置検出器5bは、第2系統のコイル30bに対応する位置に配置されている。
【0199】
実施の形態3に係るモータ駆動制御装置1Bは、2つのモータ駆動回路10a,10bと、モータ駆動回路10a,10bにそれぞれ対応して設けられた2つの電圧生成回路20a,20bと、を備えている。
【0200】
モータ駆動回路10aおよびモータ駆動回路10bは、実施の形態1に係るモータ駆動回路10と同様の回路構成を有している。
【0201】
モータ駆動回路10aは、電圧生成回路20aから出力された駆動指令電圧Vspaに基づいて、モータ3Bを駆動する。モータ駆動回路10aの制御回路12は、インバータ回路15aを制御することにより、位置検出器5aから出力された位置検出信号Shaに応じたタイミングで第1系統のコイル30aに流れる電流の向きを切り替える。また、モータ駆動回路10aの制御回路12は、位置検出器5aから出力された位置検出信号Shaに基づいて、モータ3Bの実回転数に応じた回転速度信号fgaを生成して上位装置2Bに出力する。
【0202】
モータ駆動回路10bは、電圧生成回路20bから出力された駆動指令電圧Vspbに基づいて、モータ3Bを駆動する。モータ駆動回路10bの制御回路12は、インバータ回路15bを制御することにより、位置検出器5bから出力された位置検出信号Shbに応じたタイミングで第2系統のコイル30bに流れる電流の向きを切り替える。また、モータ駆動回路10bの制御回路12は、位置検出器5bから出力された位置検出信号Shbに基づいて、モータ3Bの実回転数に応じた回転速度信号fgbを生成して上位装置2Bに出力する。
【0203】
電圧生成回路20a,20bは、実施の形態1に係る電圧生成回路20または実施の形態2に係る電圧生成回路20Aと同様の回路構成を有している。
【0204】
電圧生成回路20aは、駆動信号Sdraのデューティ比を指定する駆動指令電圧Vspaを生成し、第1系統側のモータ駆動回路10aの制御回路12に供給する。電圧生成回路20aは、実施の形態1,2に係る電圧生成回路20,20Aと同様に、モータ3Bの起動後に駆動指令電圧Vspaを生成するとき、第1系統側の制御回路12によるロック保護処理の処理サイクルに合わせて駆動指令電圧Vspaを漸次的に変化させる。
【0205】
電圧生成回路20bは、駆動信号Sdrbのデューティ比を指定する駆動指令電圧Vspbを生成し、第2系統側のモータ駆動回路10bの制御回路12に供給する。電圧生成回路20bは、実施の形態1,2に係る電圧生成回路20,20Aと同様に、モータ3Bの起動後に駆動指令電圧Vspbを生成するとき、第2系統側の制御回路12によるロック保護処理の処理サイクルに合わせて駆動指令電圧Vspbを漸次的に変化させる。
【0206】
上位装置2Bは、第1系統のモータ駆動回路10aから出力される回転速度信号fgaと第2系統のモータ駆動回路10bから出力される回転速度信号fgbの少なくとも一方に基づいて、実施の形態1,2と同様の手法により、モータ3Bの異常判定処理を行う。
【0207】
以上のように構成されたモータ駆動制御装置1Bによれば、2系統のモータ駆動回路10a,10bによってモータ3Bの2つのコイル30a,30bを互いに独立して駆動するファンシステム200Bにおいても、1系統のモータ駆動回路10を有する実施の形態1,2に係るファンシステム200,200Aと同様に、より簡単な構成で、モータ3B(ファン100B)の異常状態を判定することが可能となる。
【0208】
また、電圧生成回路20を系統毎に設けることにより、一方の系統側の電圧生成回路20(20aまたは20b)が故障した場合であっても、故障していない他方の系統側の電圧生成回路20(20bまたは20a)によって駆動指令電圧Vsp(VspbまたはVspa)が生成されるので、モータ3Bの駆動を継続させることができるとともに、故障していない他方の系統側の回転速度信号fg(fgbまたはfga)を用いることにより、モータの異常判定処理を行うことができる。
【0209】
≪実施の形態の拡張≫
以上、本発明者らによってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
【0210】
例えば、上記実施の形態では、モータ3が単相のブラシレスモータである場合を例示したが、モータ3の種類や相数等はこれに限定されない。例えば、3相のブラシレスモータであってもよい。
【0211】
また、上述のフローチャートは、動作を説明するための一例を示すものであって、これに限定されない。すなわち、フローチャートの各図に示したステップは具体例であって、このフローに限定されるものではない。例えば、一部の処理の順番が変更されてもよいし、各処理間に他の処理が挿入されてもよいし、一部の処理が並列に行われてもよい。
【符号の説明】
【0212】
1,1A,1B…モータ駆動制御装置、2,2A,2B…上位装置、3,3B…モータ、4…インペラ、5,5a,5b…位置検出器、10,10a,10b…モータ駆動回路、12…制御回路、15,15a,15b…インバータ回路(駆動回路の一例)、16,16a,16b,17,17a,17b…出力端子、19…ヒューズ、20,20A,20a,20b…電圧生成回路、30,30a,30b…コイル、100,100A,100B…ファン、121…基準電圧生成回路、122…駆動指令取得部、123…駆動信号生成部、124…回転速度信号生成部、125…ロック保護管理部、200,200A,200B…ファンシステム、Vdc…電源電圧、Vin,Vina,Vinb…入力電圧、Vreg,Vrega,Vregb…基準電圧、Vsp,Vspa,Vspb…駆動指令電圧、V1…最大加速電圧、V2…停止電圧、Va,Va1,Va2…第1判定電圧、Vb,Vb1,Vb2…第2判定電圧、Vc…第3判定電圧、fg,fga,fgb…回転速度信号、Sh,Sha,Shb…位置検出信号、Tdty…デューティ比、Sdr,Sdra,Sdrb…駆動信号、T1…判定時間(第1時間の一例)、T2…ロック保護時間(第2時間の一例)、Tc1…第1サイクル期間、Tc2…第2サイクル期間、Tc3…第3サイクル期間、Tw…起動待機時間、R1…第1抵抗、R2…第2抵抗、R3…第3抵抗、R4…第4抵抗、R5…第5抵抗、R6…第6抵抗、Rin…入力抵抗、C1…第1キャパシタ、C2…第2キャパシタ、Q1…トランジスタ、P1…第1ノード、P2…第2ノード、P3…第3ノード、P4…第4ノード。