IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日産自動車株式会社の特許一覧 ▶ ルノー エス.ア.エス.の特許一覧

<>
  • 特許-走行支援方法、及び、走行支援装置 図1
  • 特許-走行支援方法、及び、走行支援装置 図2
  • 特許-走行支援方法、及び、走行支援装置 図3
  • 特許-走行支援方法、及び、走行支援装置 図4
  • 特許-走行支援方法、及び、走行支援装置 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-31
(45)【発行日】2024-08-08
(54)【発明の名称】走行支援方法、及び、走行支援装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/16 20200101AFI20240801BHJP
【FI】
B60W30/16
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020215102
(22)【出願日】2020-12-24
(65)【公開番号】P2022100863
(43)【公開日】2022-07-06
【審査請求日】2023-08-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大澤 丈明
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 壮
(72)【発明者】
【氏名】高田 裕史
【審査官】吉村 俊厚
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-126701(JP,A)
【文献】特開2020-093740(JP,A)
【文献】特開2020-050323(JP,A)
【文献】特開2011-120393(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0344791(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00 - 60/00
G08G 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周囲の状況に応じて自車両の走行を支援し、同一車線内にある前方又は後方の停車目標物に対して第1目標停車間隔で停車制御を行う走行支援方法であって、
前記自車両が前記停車制御を行っている、又は、前記停車制御が完了して停車している場合において、前記同一車線内において前方及び後方のうちの一方で隣接し、前記自車両から所定距離よりも短い位置で停車制御又は停車をしていた他車両が、前記自車両に近づく場合には、前方及び後方のうちの他方にある前記停車目標物から前記第1目標停車間隔よりも短い第2目標停車間隔となる位置まで、前記自車両を移動させ
前記自車両が前記停車制御を行っている場合には、前記第1目標停車間隔は、前記自車両の速度が遅いほど、短い、走行支援方法。
【請求項2】
請求項1に記載の走行支援方法であって、
停車している前記他車両が発進して前記自車両に近づく場合には、前記停車目標物から前記第2目標停車間隔となる位置まで、前記自車両を移動させる、走行支援方法。
【請求項3】
請求項1に記載の走行支援方法であって、
停車制御を行っている前記他車両が所定の速度以下で前記自車両に近づく場合には、前記停車目標物から前記第2目標停車間隔となる位置まで、前記自車両を移動させる、走行支援方法。
【請求項4】
請求項1からのいずれか1項に記載の走行支援方法であって、
前記他車両が後方から前記自車両に近づく場合には、前方の前記停車目標物から前記第2目標停車間隔となる位置まで、前記自車両を前進させる、走行支援方法。
【請求項5】
請求項1からのいずれか1項に記載の走行支援方法であって、
前方に存在する前記停車目標物である前記他車両が前記自車両に近づく場合には、後方の前記停車目標物から前記第2目標停車間隔となる位置まで、前記自車両を後進させる、走行支援方法。
【請求項6】
請求項1からのいずれか1項に記載の走行支援方法であって、
前記停車目標物に関する状態情報に基づいて、前記自車両が発進可能と判断する場合には、前記自車両の移動を禁止する、走行支援方法。
【請求項7】
周囲の状況に応じて自車両の走行を支援し、同一車線内にある前方又は後方の停車目標物に対して第1目標停車間隔で停車制御を行うコントローラを備える走行支援装置であって、
前記コントローラは、
前記自車両が前記停車制御を行っている、又は、前記停車制御が完了して停車している場合において、前記同一車線内において前方及び後方のうちの一方で隣接し、前記自車両から所定距離よりも短い位置で停車制御又は停車をしていた他車両が、前記自車両に近づく場合には、前方及び後方のうちの他方にある前記停車目標物から前記第1目標停車間隔よりも短い第2目標停車間隔となる位置まで、前記自車両を移動させ
前記自車両が前記停車制御を行っている場合には、前記第1目標停車間隔を、前記自車両の速度が遅いほど、短くする、
走行支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行支援方法、及び、走行支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自車両が搭載したセンサを用いて前方車両を検出し、前方車両を追従するように車両の走行を支援する走行支援方法が知られている。例えば、特許文献1には、自車両が停車中において前方車両との車間距離が閾値を上回る場合に、自車両を発進させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-207425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
対向する他車両が渋滞車列を跨いで右折しようとする場合や、交差点内に存在する渋滞車列を交差方向から進行してくる他車両が跨いで直進しようとする場合には、渋滞車列の車両間隔を空けて通行可能なスペースを形成することで、他車両の通行が可能となる。ここで、自車両が他車両の進路上に停車していない場合でも、自車両の前後の車両が停車後に自車両に向かって再接近してくる場合には、前後の車両が後方/前方にスペースを形成するために接近している可能性がある。このような場合には、自車両が後進/前進することで、前後の車両によるスペース形成に協力することができる。
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された技術によれば、前方車両との車間距離が閾値を上回るまで自車両が発進を行わない。そのため、自車両は前後の車両の接近に応じて進行を開始することがないため、上述のような前後の車両によるスペースが形成されにくい。
【0006】
本発明の目的は、前後の車両によるスペース形成が実行しやすくすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様の走行支援方法によれば、周囲の状況に応じて自車両の走行を支援し、同一車線内にある前方又は後方の停車目標物に対して第1目標停車間隔で停車制御を行う。走行支援方法は、自車両が停車制御を行っている、又は、停車制御が完了して停車している場合において、同一車線内において前方及び後方のうちの一方で隣接し、自車両から所定距離よりも短い位置で停車制御又は停車をしていた他車両が、自車両に近づく場合には、前方及び後方のうちの他方にある停車目標物から第1目標停車間隔よりも短い第2目標停車間隔となる位置まで、自車両を移動させる。そして、自車両が停車制御を行っている場合には、第1目標停車間隔は、自車両の速度が遅いほど、短い。
【発明の効果】
【0008】
前後の車両によるスペース形成が実行しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、各実施形態に共通する走行支援装置の概略構成図である。
図2図2は、第1実施形態の走行支援制御が行われる場合における自車両の周囲の状況を示す図である。
図3図3は、走行支援制御を示すフローチャートである。
図4図4は、第1変形例における走行支援制御が行われる場合における自車両の周囲の状況を示す図である。
図5図5は、第2実施形態の走行支援制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面等を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
【0011】
(第1実施形態)
図1は、本発明の各実施形態に共通する運転支援装置100の概略構成図である。この図に示すように、運転支援装置100は、カメラ110、GPS受信機120、センサ130、通信インターフェース140、地図データベース150、指示器160、アクチュエータ170、コントローラ180を備える。運転支援装置100は、例えば自動運転や運転支援機能を有する車両(自車両A)に搭載される。
【0012】
カメラ110は、自車両Aの外部状況を撮像する撮像機器であり、自車両Aの外部状況に関する撮像情報を取得する。カメラ110は、例えば、自車両Aのフロント、リア、左右ドアの車室外側に設けられるアラウンドビューモニタカメラ、フロントガラスの車室内側または外側に設けられるフロントカメラ、及び自車両Aの後部に設置されるリアカメラなどである。カメラ110は、外部状況に関する撮像情報をコントローラ180へ出力する。
【0013】
GPS受信機120は、GPS衛星から送信される位置情報を示す信号(GPSデータ)を周期的に受信する。GPS受信機120は、受信したGPSデータに示される位置情報をコントローラ180へ出力する。
【0014】
センサ130は、レーダー131、ジャイロセンサ132及び車速センサ133などを含み、自車両Aの走行状態、及び、自車両Aの周囲に存在する物体の状態を検出する。レーダー131は電波を利用して自車両Aの外部の物体を検出する。電波は、例えばミリ波であり、レーダー131は、電波を自車両Aの周囲に送信し、物体で反射された電波を受信して物体を検出する。レーダー131は、例えば周囲の物体までの距離または方向を物体情報として取得することができる。ジャイロセンサ132は、自車両Aの方位を検出する。車速センサ133は、自車両Aの車速を検出する。センサ130は、取得した物体情報、検出した自車両Aの方位、車速をコントローラ180へ出力する。
【0015】
通信インターフェース140は、無線通信により外部から自車両Aの周囲状況を取得する。通信インターフェース140は、例えば渋滞情報、交通規制情報等の交通情報や、天気情報等をリアルタイムに送信する高度道路交通システム(ITS)から種々の情報を受信する。ITSは、他車両との間の車車間通信、路側機との間の路車間通信等を含む。通信インターフェース140は、例えば、車車間通信により、自車両Aの周囲の他車両の加減速度、自車両Aに対する相対位置等を取得する。
【0016】
地図データベース150には、地図情報が記憶されている。地図情報には、カーブの曲率等を含む道路の形状、勾配、幅員、制限速度、交差点、信号機、車線数等に関する情報が含まれる。地図データベース150に記憶されている地図情報は、後述するコントローラ180により、いつでも参照可能な状態になっている。
【0017】
指示器160は、ウィンカーやブレーキランプであって、運転者の操作またはコントローラ180からの指令により作動及び停止される。指示器160の作動及び停止情報はコントローラ180に出力される。
【0018】
アクチュエータ170は、コントローラ180からの指令に基づいて自車両Aの走行制御を実行する装置である。アクチュエータ170は、駆動アクチュエータ171、ブレーキアクチュエータ172、及びステアリングアクチュエータ173等を含む。
【0019】
駆動アクチュエータ171は、自車両Aの駆動力を調節するための装置である。自車両Aが走行駆動源としてのエンジンを搭載している自動車である場合には、駆動アクチュエータ171はエンジンに対する空気の供給量(スロットル開度)を調節するスロットルアクチュエータ及びエンジンに対する燃料供給量(燃料噴射量)を調節する燃料噴射弁などで構成される。
【0020】
自車両Aが走行駆動源としてのモータを搭載しているハイブリッド車両または電気自動車である場合には、駆動アクチュエータ171はモータに供給する電力を調節可能な回路(インバータ及びコンバータなど)等で構成される。
【0021】
ブレーキアクチュエータ172は、コントローラ180からの指令に応じてブレーキシステムを操作し、自車両Aの車輪へ付与する制動力を調節する装置である。ブレーキアクチュエータ172は、油圧ブレーキまたは回生ブレーキ等で構成される。
【0022】
ステアリングアクチュエータ173は、電動パワーステアリングシステムのうちステアリングトルクを制御するアシストモータ等で構成される。コントローラ180によりステアリングアクチュエータ173の動作を制御して、車輪の舵角を制御することができる。
【0023】
コントローラ180は、中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RΑM)及び入出力インターフェース(I/Oインターフェース)を備えたコンピュータで構成される。コントローラ180は、特定のプログラムを実行することにより、特定の制御を実現するための処理を実行する。なお、コントローラ180は、一つのコンピュータで構成しても良いし、複数のコンピュータで構成しても良い。
【0024】
コントローラ180は、運転支援プログラムを記憶しており、運転支援装置として動作する。コントローラ180は、自車両Aの周囲の情報に基づいて、走行経路及び走行経路に沿った走行車速を含む走行支援情報を生成し、生成した走行支援情報に沿って自車両Aの運転を支援する。コントローラ180の詳細な構成の説明の前に、以下では、本実施形態における走行支援制御について説明する。
【0025】
図2は、本実施形態の走行支援制御が行われる場合における自車両Aの周囲の状況を示す図である。図上方から下方に向かって示される(A)~(C)の図は、自車両A及び周囲の状況を時系列に順に示すものである。
【0026】
図2(A)に示されるように、走行車線L1において、前方の信号が停止表示(赤)であり、自車両Aは前方車両B及び後方車両Cとの間に停車している。また、対向車線L2においては、対向車両Dの方向指示器が右折を示しており、対向車両Dが走行車線L1を跨いで走行車線L1と交差する交差車線L3への右折を試みている。しかしながら、後方車両Cは対向車両Dの進路上に存在するため、対向車両Dは右折を行うことはできない。この状態において、自車両Aと前方車両Bとの車間距離、及び、自車両Aと後方車両Cとの車間距離は、共にd1であるものとする。なお、d1は、第1目標停車間隔の一例であって、一般的に車両が停車する際の適切な車間距離(3~8m)であり、運転支援システムによって推奨される距離である。
【0027】
図2(B)に示されるように、後方車両Cの運転支援装置(又は、後方車両Cの運転者)が対向車両Dが右折を試みようとしていることを認識すると、後方車両Cは前進して自車両Aとの車間距離をd1よりも短いd2とする。なお、d2は、d1(第1目標停車間隔)よりも短い第2目標停車間隔の一例である。d2は、車間距離として運転者の心理的に許容される最短距離(2~4m)であって、例えば、後方車両Cが後退しなくても自車両Aの側方へと移動することができる前進離脱可能な距離のうちの最短距離であってもよい。しかしながら、図示される状態では、後方車両Cの後方に、対向車両Dが右折するのに十分なスペースが確保されないものとする。
【0028】
図2(C)に示されるように、自車両Aの運転支援システムは、後方車両Cとの車間距離がd1よりも短くなり後方車両Cが自車両Aに接近したことを検出すると、自車両Aは前方車両Bとの車間距離をd1よりも短いd2となる位置まで前進する。これにより、後方車両Cは、自車両Aとの車間距離d2が保たれるように前進することができる。その結果、後方車両Cの後方には対向車両Dが右折するのに十分なスペースが確保されるため、対向車両Dは右折することができる。
【0029】
再び、図1を参照すれば、上記制御を行うコントローラ180は、各種制御処理を実行する機能部として、自車位置検出部181、走行支援情報生成部182、周囲情報取得部183、進行可否判断部184、及び、走行支援部185を有している。以下では、これらの構成の詳細について説明する。
【0030】
自車位置検出部181は、GPS受信機120からのGPSデータと、センサ130により検出された自車両Aの方位及び車速とから、自車両Aの現在位置、進行方位及び車速を常時検出する。また、自車位置検出部181は、地図データベース150を参照して、自車両Aの地図上の位置を検出する。
【0031】
自車位置検出部181は、検出された自車両Aの現在位置、進行方位、車速及び地図上における位置と、カメラ110により取得された外部状況に関する撮像情報と、センサ130により取得された物体情報とから、自車両Aの周囲の道路情報を取得する。道路情報には、自車両Aの周囲の道路の形状、勾配、幅員、制限速度、交差点、信号機、車線の種別、車線数等に関する情報が含まれる。
【0032】
走行支援情報生成部182は、自車位置検出部181により検出された自車両Aの位置や周囲の道路状況、及び、設定された目的地等の情報を用いて、自車両Aの走行経路を生成する。さらに、走行支援情報生成部182は、走行経路に沿って自車両Aを走行させる場合の運転操作情報(加減速や操舵のタイミング等を含む)を生成する。このように生成される走行経路及び運転操作情報によって走行支援情報が生成され、生成された走行支援情報に基づいて自車両Aの走行が支援される。
【0033】
周囲情報取得部183は、カメラ110により取得された外部状況に関する撮像情報と、センサ130により取得された物体情報と、通信インターフェース140により取得された自車両Aの周囲状況とから、周囲車両情報を取得する。周囲車両情報には、自車両Aの周囲において停車する前方車両B及び後方車両Cの状況が含まれる。
【0034】
そして、周囲情報取得部183は、取得した周囲車両情報を用いて、車線L1の前方の信号の表示内容、前方車両B及び後方車両Cの走行状況、及び、前方車両B及び後方車両Cと自車両Aとの車間距離を取得する。また、周囲情報取得部183は、車両以外の周囲にある目標物(例えば、停止線)までの距離を取得することもできる。
【0035】
進行可否判断部184は、自車両Aの周囲に存在する車両等との間の距離に応じて、自車両の進行の可否を判断する。図2の例においては、進行可否判断部184は、後方車両Cが自車両Aからの車間距離がd1となる位置で停車した後に、さらに自車両Aの側に近づいた場合であって、自車両Aと前方車両Bとの車間距離がd2よりも長い場合には、前方への進行を許可する。そして、進行可否判断部184は、自車両Aと前方車両Bとの車間距離がd2となるまで、自車両Aを進行させる。進行可否判断部184により判断される進行の可否は、走行支援情報生成部182により生成される走行支援情報に記録される。
【0036】
走行支援部185は、生成された走行支援情報に基づいて自車両Aの走行支援を行う。なお、走行支援部185は、経路情報及び速度情報を示す走行支援情報に沿って自車両Aを操作するだけでなく、自車両Aのディスプレイへのアイコン表示や音声メッセージでの伝達により、運転者に走行支援情報の提供を行ってもよい。そのため、自動運転レベルが低い場合などにおいては、本実施形態に係る走行支援制御を表示により実現することができる。
【0037】
図3は、コントローラ180により実行される走行支援制御のフローチャートである。なお、この走行支援制御は、所定の周期で繰り返し実行される。また、走行支援制御は、コントローラ180に記憶されたプログラムが実行されることにより行われてもよい。
【0038】
ステップS11において、コントローラ180(進行可否判断部184)は、自車位置検出部181により検出される位置を用いて、自車両Aが停車目標である前方車両Bに向かって所定の目標停車間隔となる位置で停車するように減速している停車制御中、または、停車制御が完了して車速がゼロとなる停車中であるか否かを判定する。図2に示されるように自車両Aが停車中である場合には(S11:Yes)、次にステップS12の処理が行われる。自車両Aが停車制御中または停車中でない場合には(S11:No)、本走行支援制御を終了する。
【0039】
ステップS12において、コントローラ180(進行可否判断部184)は、周囲情報取得部183により取得される情報を用いて、前方車両Bが停車状態であるか否かを判定する。前方車両Bが停車中である場合には(S12:Yes)、次にステップS13の処理が行われる。前方車両Bが停車中でない場合には(S12:No)、本走行支援制御を終了する。
【0040】
ステップS13において、コントローラ180(進行可否判断部184)は、周囲情報取得部183により取得される情報を用いて、後方車両Cが停車状態に向かって減速している停車制御中または停車中であり、かつ、自車両Aと後方車両Cとの車間距離がd1よりも短いか否かを判定する。後方車両Cが停車制御中または停車中であり、かつ、車間距離がd1よりも短い場合には(S13:Yes)、次にステップS14の処理が行われる。後方車両Cが停車制御中または停車中であり、かつ、車間距離がd1よりも長い(短くない)場合には(S13:No)、本走行支援制御を終了する。
【0041】
ステップS14において、コントローラ180(進行可否判断部184)は、周囲情報取得部183により取得される情報を用いて自車両Aと後方車両Cとの車間距離をモニタし、当該車間距離が短くなっているか否かを判断する。これにより、コントローラ180は、後方車両Cが自車両Aに向かって進行しているか否かを判定する。後方車両Cが自車両Aに向かって進行している場合には(S14:Yes)、次にステップS15の処理が行われる。後方車両Cが自車両Aに向かって進行していない場合には(S14:No)、本走行支援制御を終了する。
【0042】
ステップS15において、コントローラ180(進行可否判断部184)は、周囲情報取得部183により取得される情報を用いて自車両Aと前方車両Bとの車間距離を求め、当該車間距離がd2よりも長いか否かを判断する。前方車両Bと自車両Aとの車間距離がd2よりも長い場合には(S15:Yes)、次にステップS16の処理が行われる。前方車両Bと自車両Aとの車間距離がd2よりも短い場合には(S15:No)、本走行支援制御を終了する。
【0043】
ステップS16において、コントローラ180(進行可否判断部184)は、自車両Aと前方車両Bとの車間距離がd2となるまで、自車両Aを前進させる。
【0044】
なお、ステップS13において自車両Aと後方車両Cとの車間距離の判定に用いたd1と、自車両Aの走行支援装置において停車制御を行う場合に用いられる停車制御処理において用いられる前方車両Bとの目標車間距離(図2(A)の自車両Aと前方車両Bとの車間距離)とでは、同じ値を用いたがこれに限らない。自車両Aと後方車両Cとの車間距離は、後方車両Cの運転支援装置(又は、運転者)の制御に起因するものであるため、ステップS13に用いられる判定閾値は、自車両Aにおいて推奨される停車時の前方車両との車間距離と異なってもよい。また、ステップS13、S15の判定処理において、判定閾値をd1及びd2からマージンを持たせた値としてもよい。
【0045】
このような走行支援制御を行われた後においては図2(B)から図2(C)に至る状態となるため、後方車両Cは、自車両Aが前進した分だけ前へ移動することができる。その結果、図2(C)に示されるように、後方車両Cの後方には、対向車両Dが通行するスペースを確保することができる。
【0046】
なお、図2の例においては、自車両Aは停車していたがこれに限らない。自車両Aは前方の停車目標に向かって停車制御中であり徐行していてもよい。なお、自車両Aの目標停車位置は、前方車両Bから第1目標停車間隔d1だけ手前の位置である。このような場合であっても、後方車両Cが自車両Aに後方から近付いてきた場合、すなわち、自車両Aと後方車両Cとの車間距離が短くなる場合には、自車両Aの目標停車位置を前方車両Bから第2目標停車間隔d2だけ手前の位置とすることで、後方車両Cがさらに前進でき、その後方に対向車両Dの通行スペースを確保できる。
【0047】
また、自車両Aが徐行しており、かつ、前方の停車目標物も前進している場合の第1目標停車間隔は、自車両Aの速度が遅くなるほど短い。これは、速度が速い方が運転者は前方車両Bに近づくことを好まないためであり、速度が小さくなるほど第1目標停車間隔を短くすることで、運転者に違和感を生じさせない制御を行うことができる。
【0048】
また、本実施形態においては、自車両Aの前方には前方車両Bが存在していたが、これに限らない。自車両Aは、道路上の停車目標物(例えば、信号機や停止線等)の前において第1目標停車間隔d1だけ手前の位置に停車していてもよい。このような場合でも、後方車両Cが後方から近付いてきた場合に、自車両Aを停車目標物から第2目標停車間隔d2だけ手前の位置に停車させることで、後方車両Cが移動して後方にスペースを確保できる。
【0049】
第1実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
【0050】
第1実施形態の走行支援方法によれば、自車両Aが停車制御又は停車をしている場合に(S11:Yes)、同一車線の後方で隣接し、自車両Aから第1目標停車間隔d1よりも短い位置で停車制御又は停車をしていた他車両Cが(S13:Yes)、自車両Aに近づく場合には(S14:Yes)、前方にある停車目標物から第2目標停車間隔d2となる目標停車位置まで、自車両Aを移動させる(S16)。
【0051】
詳細には、自車両Aは、前方に存在する前方車両B又は停止線との間隔が第1目標停車間隔d1となるように停車しており、後方車両Cが自車両Aに向かって近づいてくる場合に、自車両Aを前進させる。
【0052】
このように自車両Aが移動することで、他車両Cは、自車両Aが移動した分だけ、さらに自車両Aの側である前方へと移動することができるので、他車両Cの後方には、対向車両Dのような他の車両の通行するスペースを確保することができる。その結果、対向車両Dは右折することができるため、対向車線の渋滞が抑制され、全体として交通効率の改善を図ることができる。
【0053】
第1実施形態の走行支援方法によれば、第1目標停車間隔d1は、自車両Aの車速が遅いほど短く、車速が速いほど長い。自車両Aが徐行しており、前方車両Bも前進している場合には、運転者は比較的速い速度で前方車両Bに近づくことを好まないため、車速が速いほど第1目標停車間隔d1を長くすることで、自車両Aの運手者に対して違和感を与えることを防ぐことができる。
【0054】
(第1変形例)
第1実施形態においては、対向車両Dが右折できるように後方車両Cが前進して自車両Aに近づく場合について説明したが、これに限らない。本変形例においては、対向車両Dが右折できるように前方車両Bが後進して自車両Aに近づく場合について説明する。
【0055】
図4は、本変形例の走行支援制御が行われる場合における自車両Aの周囲の状況を示す図である。
【0056】
図4(A)に示されるように、前方車両Bが対向車両Dの進路上に存在する場合、対向車両Dは右折を行うことはできない。そこで、図4(B)に示されるように、前方車両Bは後進して自車両Aとの車間距離をd1よりも短いd2とする。しかしながら、この時点では、前方車両Bの前方には、対向車両Dが右折するのに十分なスペースが確保されない。
【0057】
そこで、図4(C)に示されるように、自車両Aの運転支援システムは、前方車両Bとの車間距離がd1よりも短くなり前方車両Bが自車両Aに接近したことを検出すると、自車両Aは後方車両Cとの車間距離をd1よりも短いd2となるような位置に移動する。その後、前方車両Bは、自車両Aとの車間距離d2が保たれるように後進する。これにより、前方車両Bの前方には対向車両Dが右折するのに十分なスペースが確保されるため、対向車両Dは右折することができる。
【0058】
このような場合には、コントローラ180は、図3に示される走行支援制御において、ステップS12~S16において前方車両Bと後方車両Cとを入れ替えて制御を行う。このようにすることで、前方車両Bの前方に、対向車両Dが通行するスペースを確保することができるので、全体として交通状況の最適化を図ることができる。
【0059】
第1変形例の走行支援方法によれば、自車両Aが停車制御又は停車をしている場合に(S11:Yes)、自車両から第1目標停車間隔d1よりも短い位置で停車をしていた前方車両Bが(S13:Yes)、後進して自車両Aに近づく場合には(S14:Yes)、後方車両Cから第2目標停車間隔d2となる位置まで、自車両Aを後進させる(S16)。
【0060】
このように自車両Aが後進することで、前方車両Bは、自車両Aが後方に移動した分だけ、さらに自車両Aの側である後方へと移動することができる。その結果、前方車両Bの前方には、対向車両Dの通行するスペースを確保することができ、対向車両Dは右折することができる。これにより、対向車線の渋滞が抑制され、全体として交通効率の改善を図ることができる。また、図2に示されるような後方車両Cが接近してくる場合における制御を実行するプログラムを流用して開発できるので、ソフトウェア開発工数を低減しながら、より多くの場面で交通状況の最適化を図ることができる。
【0061】
(第2変形例)
第1実施形態においては、図2に示されるように、後方車両Cが停車中であり(S13:Yes)、かつ、後方車両Cが自車両Aに接近することを検出する場合に(S14:Yes)、ステップS16に示されるように、自車両Aを前進させたがこれに限らない。第2変形例においては、後方車両Cが完全に停車した後に再発進することを検出する場合の制御について説明する。
【0062】
後方車両Cが完全に停車した後に再発進する場合には、後方車両Cの運転支援装置は、後方のスペースを空ける等の特定の目的で再発進することが多い。そのため、後方車両Cが停車中であり(図2:S13)、かつ、後方車両Cが自車両Aに再発進して接近する場合に(S14)、ステップS16に示されるように、自車両Aを前進させる。このように、図2に示されるように後方車両Cの自車両Aへの接近を検出することに替えて、後方車両Cの停止後の再発進を検出することで、さらに、後方車両Cによる後方のスペース形成の必要性を精度よく検出することができる。その結果、さらに交通効率の改善を図ることができる。
【0063】
(第3変形例)
また、第3変形例においては、さらに他の状況であって、後方車両Cが停車制御中である場合の制御について説明する。
【0064】
後方車両Cの運転支援装置は、例えば、再発進時のエネルギー消費を抑制するために、完全に停車状態とならずに低速での徐行時間が長くなるように停車制御を行っていることがある。このように後方車両Cが徐行している間に、図2(A)に示されるように、後方車両Cが対向車両Dが右折しようとしていることを検出し、後方スペースを空ける制御を行うことがある。
【0065】
このような場合には、自車両Aと後方車両Cとの車間距離がd1を下回り(S13:Yes)、さらに後方車両Cが停車制御中であり徐行を行うことで自車両Aへと接近する場合には(S14:Yes)、ステップS16に示されるように、自車両Aを前進させる。その結果、特定の状況に特化した判定を含めることで、さらに交通状況の最適化を図ることができる。
【0066】
(第2実施形態)
第1実施形態においては、前方車両Bの運転状態等の前方の状況に関わらず、自車両Aを発進させたが、これに限らない。本実施形態においては、前方の状況に応じてさらに自車両Aの発進可否を判断する制御について説明する。
【0067】
図5は、第2実施形態の走行支援制御を示すフローチャートである。この図によれば、図3に示された第1実施形態の走行支援制御と比較すると、ステップS15とS16との間に、ステップS21の制御が追加されている。
【0068】
ステップS21において、コントローラ180(進行可否判断部184)は、自車両Aが所定時間内(例えば、3秒)以内に、進行可能な状態となるか否かが判定される。具体的に、コントローラ180は、周囲情報取得部183により取得される周囲状況に基づいて、所定時間内に前方の信号機が進行不可(赤)から進行可(青)の表示に変化することを検知した場合、前方車両Bのブレーキランプが点灯から消灯への変化を検知した場合等には、自車両Aが所定時間内に進行可能な状態となると判定される。自車両Aが所定時間内に進行可能な状態となると判定されない場合には(S21:No)、さらに、ステップS16の処理が実行される。自車両Aが所定時間内に進行可能な状態となると判定される場合には(S21:Yes)、本走行支援制御を終了する。
【0069】
このようにすることで、後方車両Cが自車両Aに接近する場合であっても、後方車両Cが発進可能な状態となる場合には、後方車両Cは後方スペースを形成しようとしておらず発進の準備としている。そのため、このような場合に、自車両Aの前進を抑制することで、不必要な自車両Aのスペース形成支援を抑制できるため、発進回数の低減による燃費低減や、自車両Aの運手者に対して違和感を与えることを防ぐことができる。
【0070】
他の例として、前方車両Bが自車両Aに向かって後進する場合であっても、前方車両Bが自車両の側方に存在する駐車スペースに縦列駐車をしようとしていることがある。このような場合においても、自車両Aのスペース形成支援を抑制することで、不必要な自車両Aのスペース形成支援を抑制できる。
【0071】
(第4変形例)
第2実施形態においては、自車両Aが所定時間内に進行可能な状態となると判定される場合には(S21:Yes)、本走行支援制御を行わなかったがこれに限らない。他にも、自車両が前方または後方への移動先が駐停車可能でない場合には、本走行支援制御を行わない。
【0072】
地図情報等を用いて移動先が停車が禁止された場所(警察及び消防署の出入口)と判断できる場合には、本走行支援制御を行うことで、緊急車両の発進を妨げるおそれがある。また、移動先の位置に自車両Aが停車してしまうと、側方から本線に合流する駐車車両、及び、側方への縦列駐車を試みる前方車両Bの進路を妨げるおそれがある。このような場合には、自車両Aのスペース形成支援を抑制することで全体として交通効率の最適化を図ることができる。
【0073】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。また、上記した実施形態及び変形例は、それぞれ単独の実施形態及び変形例として説明したが、適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0074】
100 運転支援装置
180 コントローラ
183 周囲情報取得部
184 進行可否判断部
185 走行支援部
図1
図2
図3
図4
図5