(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-31
(45)【発行日】2024-08-08
(54)【発明の名称】X線断層撮影法
(51)【国際特許分類】
A61B 6/00 20240101AFI20240801BHJP
A61B 6/02 20060101ALI20240801BHJP
A61B 6/40 20240101ALI20240801BHJP
G01N 23/046 20180101ALI20240801BHJP
【FI】
A61B6/00 530Z
A61B6/02 501D
A61B6/40 523A
G01N23/046
(21)【出願番号】P 2020550789
(86)(22)【出願日】2019-03-18
(86)【国際出願番号】 US2019022820
(87)【国際公開番号】W WO2019183002
(87)【国際公開日】2019-09-26
【審査請求日】2022-03-17
(32)【優先日】2018-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520274736
【氏名又は名称】センスラボ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】XENSELAB, LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【氏名又は名称】金子 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【氏名又は名称】大西 渉
(72)【発明者】
【氏名】ジャオ, イン
【審査官】亀澤 智博
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-219708(JP,A)
【文献】特開2013-158444(JP,A)
【文献】国際公開第2017/130013(WO,A1)
【文献】特開2000-060835(JP,A)
【文献】特開平09-322891(JP,A)
【文献】特表2017-538471(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0022264(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0123902(US,A1)
【文献】特開2006-061692(JP,A)
【文献】特開2003-038482(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00 - 6/58
G01N 23/00 -23/18
G21K 1/00 - 7/00
H01J 35/00 -35/32
H05G 1/00 - 1/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の関心領域の定性的な3次元X線画像を決定できるX線測定装置であって、
前記関心領域にX線放射を放出するように構成されたX線源であって、複数の画像投影が
複数の異なるX線放出位置から放出されたX線放射によって取得され、隣接する相対的な
前記X線放出位置
が前記関心領域の
所定の軸または
所定の位置
の間に沿う解像度に略等しい距離だけ離間し、前記距離だけ移動されるように構成されてい
るX線源と、
前記X線源の反対側の、前記軸に略垂直な2次元平面内に配置された複数の検出器要素を含むX線検出器であって、前記対象の前記関心領域による前記X線放射の減衰後のX線放射を検出し、前記検出されたX線の表示を提供するように構成されたX線検出器と、
X線放射の前記減衰を計算し、または前記複数の各X線放出位置での少なくとも一つの物質の画像を導出し関心領域の3次元(3D)画像を再構成するように構成されたプロセッサと、
を含
み、
第一の位置、および第二の位置の2ステッププロセスの移動をさらに含み、前記第一の位置は、増分が要求される解像度か、または距離における画素ピッチかのいずれかであり、前記第二の位置は同じ移動領域内にあって、互いの間の増分が前記第一の位置のものよりも小さい、X線測定装置。
【請求項2】
前記X線源および/もしくは前記X線放出位置ならびに/または前記X線放射の前記相対空間位置は、前記対象に対して移動をし、かつ前記X線源および/もしくは前記X線放出位置ならびに/または前記X線放射は、二つの連続する測定間の一画素ピッチ未満および/または最も隣接する前記X線源間の距離未満の移動をするように構成される、請求項1に記載のX線測定装置。
【請求項3】
前記X線源および/もしくは前記X線放出位置ならびに/または前記X線放射の前記相対空間位置は、前記対象に対して移動をし、前記X線源および/もしくは前記X線放出位置ならびに/または前記X線放射は、二つの連続する測定間で一画素ピッチの移動をするように構成される、請求項1または2に記載のX線測定装置。
【請求項4】
前記X線源および/もしくは前記X線放出位置ならびに/または前記X線放射の前記相対空間位置は、前記対象に対して移動をし、前記X線源および/もしくは前記X線放出位置ならびに/または前記X線放射は、二つの連続する測定間で1未満から最大10画素ピッチ間の移動をするように構成される、請求項1~3のいずれか1項に記載のX線測定装置。
【請求項5】
前記プロセッサは、線形方程式系を解くことにより、前記検出されたX線放射または複数のX線放出位置における少なくとも一つの物質についての画像を3次元画像に解像するように構成される、請求項1~4のいずれか1項に記載のX線測定装置。
【請求項6】
前記線形方程式系は、前記対象の深さ表示に沿う、および/または前記検出器に垂直なz軸における、未知のボクセルを解く、請求項5に記載のX線測定装置。
【請求項7】
散乱X線の測定、考慮および/または除去を行うように構成されている、請求項1~6のいずれか1項に記載のX線測定装置。
【請求項8】
前記プロセッサは、散乱X線の測定、考慮および/または除去を行うように構成されている、請求項1~7のいずれか1項に記載のX線測定装置。
【請求項9】
対象の関心領域の3次元部分を示す3次元空間を解像し、前記3次元空間は未知の画素または3次元のボクセルを有する、請求項1~8のいずれか1項に記載のX線測定装置。
【請求項10】
前記3次元空間は、ボクセルまたは画素の単位に基づく、請求項9に記載のX線測定装置。
【請求項11】
散乱を無視する、請求項1~10のいずれか1項に記載のX線測定装置。
【請求項12】
散乱について、周波数領域分析を使用して測定、考慮、および/または除去を行う、請求項1~11のいずれか1項に記載のX線測定装置。
【請求項13】
散乱について、減衰遮断器を使用して測定、考慮、および/または除去を行う、請求項1~12のいずれか1項に記載のX線測定装置。
【請求項14】
前記再構成された3D画像の少なくとも一つの画像がコンピュータディスプレイに表示されるかまたは前記再構成された3次元画像を抽出された少なくとも一つの画像がコンピュータディスプレイに表示される、請求項1~13のいずれか1項に記載のX線測定装置。
【請求項15】
散乱について、時間領域方法を使用して測定、考慮、および/または除去を行う、請求項1~14のいずれか1項に記載のX線測定装置。
【請求項16】
散乱について、回折格子またはビーム分割を使用して測定、考慮、および/または除去を行う、請求項1~15のいずれか1項に記載のX線測定装置。
【請求項17】
散乱について、ビーム分割検出器を使用して測定、考慮、および/または除去を行う、請求項1~16のいずれか1項に記載のX線測定装置。
【請求項18】
散乱について、ビームセレクタを使用して測定、考慮、および/または除去を行う、請求項1~17のいずれか1項に記載のX線測定装置。
【請求項19】
前記X線源は、パルス状または連続的なX線を放出する、請求項1~18のいずれか1項に記載のX線測定装置。
【請求項20】
前記X線源は、X線管、冷陰極X線源、金属-液体ジェット、レーザーコンプトンX線、シンクロトロンもしくはシンクロトロン様X線源、線形加速器ベースの線源、コヒーレントもしくは部分コヒーレントX線源および/もしくは電界放出器ナノチューブ、または単色線源である、請求項1~19のいずれか1項に記載のX線測定装置。
【請求項21】
前記X線源は、二つの異なるエネルギーレベルのX線放射を放出する、請求項1~20のいずれか1項に記載のX線測定装置。
【請求項22】
前記X線源は、三つ以上の異なるエネルギーレベルのX線放射を放出する、請求項1~21のいずれか1項に記載のX線測定装置。
【請求項23】
前記X線源は、前記X線検出器に平行な平面内を移動する、請求項1~22のいずれか1項に記載のX線測定装置。
【請求項24】
前記X線源は、金属、グラフェン、シリコンベースの冷陰極および/または炭素電界放出器ナノ構造ベースの電界放出器である、請求項1~23のいずれか1項に記載のX線測定装置。
【請求項25】
前記X線源は、電界または磁場の印加によって移動するように構成される、請求項1~24のいずれか1項に記載のX線測定装置。
【請求項26】
合焦用の電磁レンズをさらに備える、請求項1~25のいずれか1項に記載のX線測定装置。
【請求項27】
前記X線源を物理的に移動させるように構成された2次元アクチュエータをさらに備える、請求項1~26のいずれか1項に記載のX線測定装置。
【請求項28】
前記X線源を物理的に回転させる2次元アクチュエータをさらに備える、請求項1~27のいずれか1項に記載のX線測定装置。
【請求項29】
前記X線放射は、内部全反射および/またはポリキャピラリー管を使用して移動する、請求項1~28のいずれか1項に記載のX線測定装置。
【請求項30】
前記X線放射を生成する電子は、帯電プレートおよび/または静電レンズを使用して移動する、請求項1~29のいずれか1項に記載のX線測定装置。
【請求項31】
前記X線放射を生成する電子は、磁気プレートを使用して移動する、請求項1~30のいずれか1項に記載のX線測定装置。
【請求項32】
前記X線放射を生成する電子は、電気光学レンズを使用して移動する、請求項1~31のいずれか1項に記載のX線測定装置。
【請求項33】
前記X線放射を生成する電子は、電磁コイルを使用して移動する、請求項1~32のいずれか1項に記載のX線測定装置。
【請求項34】
前記X線源は、電流変調を伴う相対論的電子ビームを使用する、請求項1~33のいずれか1項に記載のX線測定装置。
【請求項35】
前記X線源は、結晶干渉計である、請求項1~34のいずれか1項に記載のX線測定装置。
【請求項36】
関心領域の深さに沿ってn
2個の未知の画素を解像するために必要な画像データを取得するために、X線放出位置が領域n
2内の約n
2地点を移動し、単位測定は検出器の画素ピッチまたは達成可能な解像度のサイズである、請求項1~35のいずれか1項に記載のX線測定装置。
【請求項37】
前記プロセッサは、さらに、前記X線源および前記X線検出器間の予備的な幾何学的関係を決定するように構成される、請求項1~36のいずれか1項に記載のX線測定装置。
【請求項38】
前記予備的な幾何学的関係は、試験X線放出を使用して決定される、請求項37に記載のX線測装置。
【請求項39】
前記複数の検出器要素は、2次元平面内に行列形式で配置される、請求項1~38のいずれか1項に記載のX線測定装置。
【請求項40】
前記X線源および/もしくは前記X線放出位置ならびに/または前記X線放射は、アプリケーションによって要求される解像度によって定義される距離の増分で移動するように構成される、請求項1~39のいずれか1項に記載のX線測定装置。
【請求項41】
前記X線放射は、コーンビームで放出される、請求項1~40のいずれか1項に記載のX線測定装置。
【請求項42】
前記X線放射は、ファンビームで放出される、請求項1~41のいずれか1項に記載のX線測定装置。
【請求項43】
各位置での0.01msから10msの滞留時間をさらに含む、請求項1~
42のいずれか1項に記載のX線測定装置。
【請求項44】
前記2次元平面上の放出場所間の距離は、100μmの範囲内、または0.1μmである、請求項1~
43のいずれか1項に記載のX線測定装置。
【請求項45】
前記2次元平面上の放出場所間の距離が、0.01nmから0.1μmである、請求項1~
44のいずれか1項に記載のX線測定装置。
【請求項46】
X線源放出位置は、元の前記X線源放出位置から2度未満にある、請求項1~
45のいずれか1項に記載のX線測定装置。
【請求項47】
X線源放出位置は、元の前記X線源放出位置から7.5度未満である、請求項1~
46のいずれか1項に記載のX線測定装置。
【請求項48】
前記X線放射は、コーンビームで放出され、かつ散乱は前記一次X線の1%未満に減少した、請求項1~
47のいずれか1項に記載のX線測定装置。
【請求項49】
前記X線放射は、コーンビームで放出され、かつ散乱は前記一次X線の5%未満に減少した、請求項1~
48のいずれか1項に記載のX線測定装置。
【請求項50】
前記X線放射は、コーンビームで放出され、かつ散乱は前記一次X線の10%未満に減少した、請求項1~
49のいずれか1項に記載のX線測定装置。
【請求項51】
前記ビームセレクタは、複数のプレートのシステムであって、前記プレート上の穴のサイズは、前記X線源から離れるとより大きくなる、請求項1~
50のいずれか1項に記載のX線測定装置。
【請求項52】
3D画像再構成のために対象を撮影するX線源および/もしくはX線放出場所ならびに/またはX線放射位置で、前記対象を配置しないで、X線測定を行う較正手順を含む、請求項1~
51のいずれか1項に記載のX線測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(優先権出願への参照による援用)
【0002】
本願と共に提出された出願データシートにおいて特定される外国又は国内優先権主張に係る全ての出願は、37 CFR 1.57に基づいて参照により本明細書に援用される。
【0003】
本開示は、医療および産業用途3次元X線撮影に関する。
【背景技術】
【0004】
3次元(3D)X線画像は、典型的には、コンピュータ断層撮影(CT)を使用して生成され、当該CTは、ファンビーム、または点ビームを発生するX線源、および線形もしくは対応の点検出器または場合によって小型で弧形の2D検出器を含む。CTの変形であるコーンビームCTは、典型的には、C型アームに取り付けられたCT装置およびデジタルフラットパネル検出器を含み、対象または線源/検出器のいずれかは軸の周りに回転する。対象の3D画像を再構成するために、典型的には、180度よりも大きな角度で対象全体の画像を複数撮影する必要がある。これは、対象が比較的高線量の放射線を受けることを意味する。また、このプロセスには時間がかかる。現在の3D CTシステムは、特に病院や手術センターの外、または移動診断および手術ステーションの携帯性には適していない。
【0005】
現在のところ、非回転断層撮影法は、典型的には、一つ以上の2Dフラットパネル検出器を、線形アレイもしくは弧形アレイまたは2D平面もしくは3D空間上の二つ以上のX線源と組み合わせて使用することによって達成される。
【0006】
逆ジオメトリCT断層撮影法に基づく技術は、穴を有する2次元(2D)コリメータをスキャンするX線源と組み合わせて使用する必要があり、スキャンするX線源は対象を通過する前に、これらの穴を通じて放出する。
【0007】
非回転CTシステムで得られる断層画像は高解像度ではなく、3D CTスキャナーが一般的に備える定量的情報を提供することができない。
【0008】
散乱干渉は、回転CTおよび非回転CTの両方における主要な問題である。
【0009】
回転CTにおいて、散乱対一次X線比(SPR)は、X線コーンビームの回転軸の角度カバレージにほぼ比例する。しかし、回転軸カバレッジが低いと、断層撮影に必要な画像取得に長いスキャン時間が必要になる。
【0010】
現在、主要な努力は、スキャンした患者または対象に関する追加情報を抽出するための、透過X線の分光情報を用いる、分光CTという新しいコンセプトに費やされている。分光CTではSPRが高い。エネルギーが低い場合、一次強度は、散乱放射線によってだんだん覆われてしまう。散乱対一次比が1の値を超えないことが推奨されるという制約のために、分光処理に使用する単一光子の測定エネルギーは、特定の制限、たとえば約30~35KeVを超えることが推奨される。
【0011】
CTにおいては、散乱対一次比(SPR)が増加すると、画像アーチファクトおよび画質劣化が出現する。
【0012】
散乱防止グリッド(ASG)は、CTにおいて散乱を低減するための重要なソリューションである。ASG補正を行っても、SPRは多くのエネルギーレベルで、たとえば20%以上に留まる。
【0013】
ASGを用いると、高解像度画像に対して、画像品質の指標であるコントラスト対ノイズ比(CNR)は有意に改善されず、かつ低コントラストの細部の視認性は低下する可能性がある。
【発明の概要】
【0014】
現在のCT再構成理論の大部分は、SPRが0である場合、すなわち、X線光子は、照射された対象に吸収されるか、または相互作用することなく通過することを前提としている。人体の撮影では、一次信号に対する散乱の比は、一般的に、50%~100%と同程度の高さである。本開示は、2次元スキャンプロセスから関心領域の完全な3D画像を生成することができるシステムを提供する。生成された画像は、三つ以上のデータ点を含む厚さもしくは深さ、または寸法(たとえば、z軸平面内の)を持つことができる。各データ点は、X線測定、光学測定、またはその他の寸法測定方法によって解像できる。これは、2D検出器を使用して測定数を最小限に抑えることで実行できる。これは、1D、2D、および3D空間の関心領域の外側にある未知の画素の導入を最小限に抑えることで実現できる。未知数の導入の最小化は、移動距離および移動寸法を最小化することにより、ハードウェアおよび移動の複雑さを最小化することにより、X線取得時間を最小化することにより、放射線被曝を最小化することにより、かつ/または従来技術の3D X線撮影方法および装置を簡素化することにより、行うことができる。
【0015】
可動部品を少数または全く有さないコンパクトなシステムを使用することにより、本開示は、2次元システムを用いた3次元X線撮影システムを提供する。このシステムは、内部に複数の成分を持つ対象の関心領域のX線測定を生成することもできる。これにより、成分の物理的および化学的特性について材質の分解、識別、および特性評価、決定を行う測定を含む定量分析が可能である。たとえば、成分について原子量、密度、空間内の詳細な寸法および微細構造ならびに機能、空間内の成分の位置特定、動的運動特性、流体力学、時間マーカーの識別および位置特定、柔軟性、分子間および/または細胞間相互作用などの成分間の相互作用、そのような特性の一つ以上に基づく成分の特定などの測定が可能である。このシステムは、上記のすべての利点を一つのシステムで提供できる。この種のシステムは、病院、手術センター、および移動ステーションで広く使用される。また、スポーツ医学、獣医、遠隔および外来診断、画像ガイダンス、現場での材質識別などのフィールドアプリケーション用に、機内持ち込みでき、折り畳み可能な、従来の携帯型の上記システムの携帯性を提供する。本開示は、また、3D画像の超高速画像構築を提供して、多次元撮影におけるリアルタイム測定および時間依存測定を可能にすることができる。
【0016】
本開示では、また、例えば、逆ジオメトリスキャン透視鏡、弧状もしくは線形に移動ができる電動X線源、および/または静的な複数のX線源に結合された2D検出器を使用する複数次元システムのような、より多くの機能を有する非回転断層撮影システムのための定量的な撮影が可能になり、X線源を有するシステムは、画素化された2DフラットパネルX線源、もしくは複数の個別にプログラム可能な電子放出部であって電界印加時に電子ビームを放出するものをそれぞれが備えた陰極、X線源を放出された電子ビームの衝突に曝されたときにX線ビームを放出する陽極ターゲットを含むX線源、および/または金属液体ジェット源を、1D、2Dもしくは3D次元で配置もしくは移動することができる。
【0017】
本開示は、高速および非回転CTシステムの提供、および場合によっては定量的な機能の提供をすることによって、X線顕微鏡およびフーリエ変換機能を含む干渉計、X線干渉計、コヒーレンスX線位相コントラストX線撮影、コヒーレンスコントラストX線撮影などの撮影方式を改善する。
【0018】
従来技術の高速3D画像を取得する際の速度隘路は、一般的に移動系の速度であり、本開示の速度制限要因は、検出器のフレームレートであることと対照的である。
【0019】
本開示の目的は、以下の図面及び開示の詳細な説明に照らして明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
本開示の性質及び目的をより完全に理解するために、添付の図面を参照されたい。
【
図1】本開示により使用する基本的なハードウェア構成の概略図である。
【
図2】三層検出器構造を備えた
図1のハードウェア構成の概略図である。固定焦点を備えたビームセレクタは、後方検出器の選択された位置からの一次X線を遮断する。
【
図3】三層検出器構造を備えた
図1のハードウェア構成の概略図である。固定焦点を備えたビームセレクタは、後方検出器の選択された位置からの散乱を遮断する。
【
図4】後方検出器の選択された位置からの散乱を遮断する、圧縮性材質を使用して調整可能な焦点を備えたビームセレクタの一部の側面図である。
【
図5】後方検出器の選択された場所からの散乱を遮断する、X線吸収性ビーズを使用して調整可能な焦点を備えたビームセレクタの一部の側面図である。
【
図6】ある焦点に調整した
図4のビームセレクタの一部の側面図である。
【
図7】剛性材質を使用する、可動焦点を備えたビームセレクタの斜視図であり、いくつかの管を示す。
【
図9】より近い中心焦点に調整した、
図7のビームセレクタの側面図である。
【
図10】中距離の中心焦点に調整した、
図7のビームセレクタの側面図である。
【
図11】遠くの中央焦点に調整した、
図7のビームセレクタの側面図である。
【
図12】中距離、左端の焦点に調整した、
図7のビームセレクタの側面図である。
【
図13】中距離、右端の焦点に調整した、
図7のビームセレクタの側面図である。
【
図14】積み重ねたプレートを使用する、可動焦点を備えたビームセレクタの側面図である。
【
図15】異なる焦点に調整した、
図14のビームセレクタの側面図である。
【
図17】z軸の未知数を求めるための一実施形態を示す図である。
【
図18】散乱遮断ビームセレクタおよび穴の基部のみに後方検出器セルを有する、検出器アセンブリの側面図である。
【
図19】異なる場所から放出されるX線ビームを生成するためにポリキャピラリー管の内部全反射を使用するX線源の概略図である。
【
図20】磁気偏向を使用するX線源の概略図である。
【
図21】結晶干渉法を使用するシステムの概略図である。
【
図22】本開示によって想定されるボクセルの図であり、D
x=D
y≠D
zである。
【
図23】ナノチューブ電界放出器システムを示す図である。
【
図25】3D撮影方法の基本的な手順の流れ図である。
【
図26】一次X線および散乱を分離するための追加手順を伴う3D撮影方法の基本的な手順の流れ図である。
【
図27】2Dおよび3D機能撮影のための追加手順を伴う3D撮影方法の基本的な手順の流れ図である。
【
図28】二つの異なるX線放出位置で撮られた少なくとも二つの2D画像からの多次元画像化を示す流れ図である。
【
図29】プログラム可能な電界放出部を備えたX線管内の操縦電子ビームの概略図である。
【
図30】投影された経路に沿ったいくつかの画素を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
分光撮影の一般的説明は、J.T.ドビンズIII著、「医療用撮影ハンドブック」2000年、pp161-219、デジタルシステムのための画質基準、に記載されている。検出要素からの投影信号は、エネルギーレベルΩについて
Ω∈{E1、E2、E3、・・・}
D(Ω)=qΩ∫ΦΩ(E)exp[-μ1(E)t1-μ2(E)t2-μ3(E)t3・・・]×SΩ(E)dE、(1)
【0022】
ここで、qは入射光子の数、Φは正規化された入射エネルギースペクトル、Sは検出器応答関数である。対象を構成する多くの材質の線形減衰係数および積分厚さは、μおよびtで示され、ランベルトビールの法則に従ってX線ビームを減衰させる。測定単位における時間をtとして、投影された経路に沿う対象の測定単位における減衰をμ(E)tと定義する場合、測定単位が画素ピッチのとき、μ(E)tが画素からの減衰Xとなる。検出器要素によって測定された投影経路に沿ってp画素がある場合、等式は次のように書き換えられる。
D(Ω)=qΩ∫ΦΩ(E)exp[-X
1-X
2-X
3・・・-X
z]×SΩ(E)dE、(2)
たとえば、
図30に示すように、z=12である。
【0023】
基本的な方法は、m×n×p個の変数およびm×n×p個の等式を有する線形方程式系を解くことである。現在のCTメソッドは、画素のサイズがXa=Xb=Xcであると想定しているが、XcがXcと等しくない場合に拡張されるであろう。画素を通過するX線を見るとき、現在の方法では、値1または0をとり、画素を通過するX線に対して値1、そうでない場合は0をとる。当該体積を通過するときは常に同じになる。本開示では、取得を行う前に、1、2、・・・、12を通過する信号を受信する各角度およびX線放出位置(I、j)の登録を行い、各サブ画素の透過率を計算できる。各画素内で、透過率は均一で体積に比例すると仮定している。
【0024】
本開示は、2次元(2D)のX線検出器を用いて、散乱を除去し、較正方法および新たな3D再構成法により、対象の3次元(3D)画像を生成するための方法およびシステムを含む。当該方法とシステムには、以下に説明するように、いくつかは任意の、いくつかの手順の実行を含めることができる。当該手順は、(1)較正し、(2)対象に対して少なくとも二つの異なるX線源の位置からの2D画像を取得し、(3)2D画像を処理して一次X線を散乱から分離し、(4)2D画像の機能処理をし、(5)2D画像から3D画像を生成する処理、3D画像の機能処理、および/または当該取得した情報の提示をする。
【0025】
本開示により使用される好ましい基本的なハードウェアを、
図1に概略的に示す。それは、X線源12および2次元(2D)X線検出器アセンブリ14を含む。画像対象2は、X線源12および検出器アセンブリ14の間に位置する。検出器アセンブリ14は、メモリ19を含むプロセッサ15と通信する。プロセッサは、例えば、表示画面、キーボード、および/またはマウスを含む、当業者には理解されるようなユーザ入力および出力17と通信する。本開示から当業者によって理解されるような、他のユーザインターフェース要素も使用することができる。
【0026】
手順(2)で上述したように、いくつかの数の2D画像を取得する。各画像について、対象2に対してX線30が放出される場所16は、検出器アセンブリ14の平面に平行な平面18内で移動する。結果として、X線源12は、そのような動作のための機構を含み、それについて以下で詳細に説明する。X線30が放出される場所を、本明細書の残りの部分では、放出場所16と呼ぶ。
【0027】
手順(3)で上述したように、一次X線およびX線散乱を、画像を使用する前に2D画像において分離する。典型的には、散乱は除去されて廃棄されるので、本明細書の残りの部分では、分離のことを、一般に、散乱除去と呼ぶ。ただし、場合によっては、たとえば、経血管撮影、材質の区別、および原子的zの低い組織のより良い視覚化のための識別および検査において、散乱を分離して使用することがある。
【0028】
(一次X線および散乱分離法)
図2を参照して、X線源12からのX線30が対象2に衝突し、X線30の一部は対象2を通過し、直接検出器アセンブリ14に伝播方向を変えることなく達する。これらは一次X線32と呼ばれ、対象2の減衰特性に関する真の情報を伝える。X線30の残りは、対象2の材質との相互作用の結果としてランダムに散乱する。これらは散乱34と呼ばれ、真の情報を歪める。場合によっては、そのような歪みも、分離された画像を形成するために使用され、対象に関する真の情報を表すために有用なことがある。
【0029】
いくつかの状況下では、散乱は無視することができる。例えば、検出器アセンブリ14が一次X線32および散乱34の両方を受信する単一の2D検出器20の場合、散乱34は存在するが十分小さいので定性的には正確な、ただ定量的には不正確な、撮影結果が、依然として、特定の状況下で取得できることを仮定している。分散34の量がどの程度許容されるかは、状況に依存し、状況固有の分析によって決定する必要がある。
【0030】
一次X線およびX線散乱は、また、高速X線源を使用する時間領域で分離することができる。この方法は、一次X線32が線源12から検出器アセンブリ14まで直線的に移動し、移動時間が最も短いという特徴を利用している。散乱34は、X線源12から検出器アセンブリ14まで直線で移動しないので、検出器アセンブリ14に到達するのにより長い時間がかかる。その結果、ある期間にわたって連続的に任意の所与の検出器セル28に到達するX線のうち、最初のX線のみが一次X線である。他のすべては散乱である。残念ながら、この時間分析を可能にするX線生成は非常に高価であり、実用的ではない。
【0031】
装置および方法について、チャオの開示である米国特許第6052433号、第5648997号、第5771269号、第6173034号、第6134297号明細書に記載されたものは、本開示の任意の実施形態の散乱除去に使用し得る。たとえば、本開示のビーム選択手段の使用が本質的に影響を受けないほどX線源放出位置が互いに接近している実施例が含まれる。先行の開示は、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0032】
この方法の一例では、X線源12は、たとえば、持続時間がピコ秒オーダーの、非常に短いパルスでX線を発生することが可能であり、検出器アセンブリ14は、非常に高速なピコ秒オーダーの画像を取り込むことが可能な2次元検出器20である。取り込まれた画像は、少なくとも一次X線32および、取り込み時間ウィンドウ中に検出器20に到達する散乱34を含む。取り込みウィンドウが十分に短い場合、取り込み画像における散乱34の量は最小化される。取り込みウィンドウが短くなるにつれて、取り込み画像における散乱34の成分は、より小さくなる。
【0033】
別の方法には、周波数領域における一次X線32および散乱34の分離がある。これは、減衰によって材質を通過するときのX線が空間で変調される一部の材質の特性を利用する。X線源12からのX線30を、対象2からの散乱X線の周波数とは異なる、通常ははるかに高い周波数で変調する。一次X線は、高周波の減衰変調されるX線となるので、散乱X線とポスト画像処理によって分離することができる。
【0034】
本開示の意図は、任意の形態のX線変調器を使用できることである。一例は、減衰遮断器からなる高空間周波数パターンボードである。
【0035】
別の例では、X線信号を一次X線および散乱によって空間、周波数、または時間領域において分離するために、変調器は、位相リターダ、高空間周波数パターンを有する回折格子ビームスプリッタである。一形態では、そのような変調器を、結晶またはビームスプリッタなどのX線光学系、たとえばキノフォーム構造で構成する。さらに、そのような材質は、少なくとも1次元では音波によって変調または調整可能である。別の例では、変調器は、MEMデバイスで、減衰遮断器、位相変調器、または極性変調器から成る高空間周波数パターンボードとして動作する。このような変調器は、アプリケーションに応じて、静的または調整可能な状態で動作できる。
【0036】
別の例では、干渉図形を、空間、時間、もしくは周波数、又は二つ以上の領域の組み合わせの変調を適用することによって生成し、一次X線および散乱は、周波数、もしくは時間、または空間位置の差に基づいて分離される。
【0037】
別の機構では、二つ以上のX線源は、透過ビーム結合器を使用して合成される。あるエネルギーレベルまたはX線の特定の波長でのX線源の干渉縞は、X線源のX線ビーム間の位相差が相対的に変化するとき、あるいはX線の波長が変化するとき、移動する。その結果、変調された空間パターンを作成する変調された干渉図形となり、散乱されたX線のパターンから分離することができる。
【0038】
同様に、一つ以上の回折格子を使用して、X線源12の小線源を二つ以上生成する。回折格子は、MEMSとして形成されたような動的もしくは調整可能なもの、または結晶格子のような静的なものがあり得る。小線源からのX線ビームは互いに干渉し、回折格子を調整すると、移動干渉縞パターンが作成される。その結果、変調された空間パターンを作成する変調された干渉図形となる。
【0039】
同様に、回折格子またはビームスプリッタを使用して、少なくとも一つのX線源12から可変位相を備えた二つ以上の小線源に分割することができる。X線の波長またはエネルギーが変化すると、干渉縞が空間を移動する。散乱は干渉縞測定を生じる信号から分離されるので、散乱および一次X線は分離される。
【0040】
散乱および一次X線を分離する別の方法は、米国特許第6134297号明細書に詳細に記載されている。検出器アセンブリ14は、
図2に示すように、光源12に最も近い前方2D検出器22、2Dビームセレクタ24、および後方2D検出器26の三層構造である。一次X線32および散乱34の組み合わせは、前方検出器22に到達して通過する。ビームセレクタ24は、後方検出器26の選択位置54への散乱34のみを通過させる。
【0041】
ビームセレクタ24は、X線吸収材を含みかつX線吸収が無視できる程度の薄いプラスチックシート60によって支持された、円筒形状のシリンダ62の配列であり得る。シリンダ62は、それらの軸が一次X線32の進行方向と一致するように製造される。その結果、シリンダ62は、それらの断面積内で、X線源12から直接来るすべてのX線を遮断する。したがって、各シリンダ62は、後方X線検出器26上に選択された「影の」位置54を生成し、当該位置では一次X線32の強度は本質的にゼロであり、散乱34の強度は本質的に影響を受けない。
【0042】
シリンダ62は有限サイズを有しているので、散乱34の小さな部分は、影の位置54に到達しないだろう。しかし、シリンダ62が小さい限り、この散乱34は無視できるほど小さくなるように制御することができる。シリンダ62が大きすぎるか、または数が多過ぎる場合、散乱34が後方検出器26に到達することを妨げ過ぎるであろう。ビームセレクタ24内のシリンダ62の数は多いほど、後方検出器26での測定の精度は高くなる。
【0043】
シリンダ62は、その軸が一次X線32の進行方向に一致するように製造されるが、このことは、シリンダ62は互いに平行でなく、X線源に対して動径方向であることを意味する。
【0044】
シリンダ62の材質は、実質的にすべての一次X線32を吸収すること、さらに、任意の二次X線放射を生成せずまたは任意のさらなる散乱を起こさないことを保証する必要がある。これらの要件を満たすには、中程度の原子番号Zを持つ化学元素、たとえば、Z=20~34の材質が好ましい。シリンダ62は、コアに高Z材質があり、外部に中程度のZ材質を有する多層構造もあり得る。高Z材質はX線を最も効率的に吸収し、コア材質からの二次X線放出は、外層によってさらなる二次放出を引き起こすことなく効率的に吸収される。
【0045】
シリンダ62の厚さまたは高さは、X線エネルギーに依存し、より高いエネルギーは、厚いシリンダを必要とする。より低いエネルギーのX線撮影、例えばマンモグラフィーでは、シリンダ62は薄いディスクであり得る。
【0046】
上記検出器アセンブリ14を、以下のように画像から散乱34を除去するために使用する。低解像度の散乱画像を、後方検出器26の選択位置54から読み取る。低解像度の合成画像について、一次X線32および散乱34の両方を受信し、かつ後方検出器26の画像平面全体を均一にカバーし、かつ選択位置54に近い、後方検出器26の選択位置56から読み取る。散乱のみの画像を、選択位置56に補間によって拡張する。散乱34の物理的性質により、補間によって重大なエラーが発生することはない。データ点の数が十分に多い限り、補間により発生するエラーは、X線光子数の統計的変動などの他のエラー源と比較して無視できるからである。
【0047】
前述の散乱のみの補間画像を前述の低解像度の合成画像から減算して、選択位置56での低解像度の一次X線画像を生成する。低解像度の一次X線の前方検出画像を、選択した後方検出器位置56とは一直線上にある前方検出器位置40から算出する。低解像度の散乱画像は、前述の低解像度の一次X線後方検出器画像を、前述の低解像度の前方検出器合成画像から減算することによって決定する。高解像度の散乱画像を、前述の低解像度の散乱画像を補間することによって計算する。前述の高解像度の散乱画像を高解像度の合成画像から減算して、高解像度の一次X線画像を生成する。
【0048】
上記ビームセレクタ24は、
図1に示すようなX線放出場所16に対して固定したままでなければならない。シリンダ62が適切に作動するためにはX線放出場所16からの線源X線30と一直線上になければならないからである。検出器22、26を移動する必要はないが、ビームセレクタ24を検出器22、26に固定する場合は移動する必要があろう。放出場所16の移動する距離が十分に小さい場合、シリンダ62は線源X線から十分に一直線上にあるので、ビームセレクタ24を移動する必要はない。
【0049】
散乱除去の別の方法は、米国特許第5648997号および第5771269号明細書に詳細に記載されている。検出器アセンブリ14は、
図3に示すように、線源12に最も近い前方2D検出器22、2Dビームセレクタ24、および後方2D検出器26の三層構造である。一次X線32および散乱34の組み合わせは、前方検出器22に到達し、通過する。ビームセレクタ24により、一次X線32のみが後方検出器26の選択位置38に通過することが可能になる。
【0050】
ビームセレクタ24の最も単純な構成は、真っ直ぐなスルーホール48を多数有するX線吸収材のシート46である。スルーホール48は、一次X線と進行方向の軸が一致するように製造され、つまり、X線は本質的に点線源から放出されるため、スルーホール48は互いに平行ではなく、X線源12と放射状に向きが一致する。
【0051】
この配向により、スルーホール48はその軸線に沿って進行する全てのX線の通過を可能にするが、その軸からわずかにずれた方向に進行するほぼ全てのX線はビームセレクタ24バルク材質によって完全に吸収される。したがって、一次X線32のみが後方検出器26に到達する。スルーホール48は常に有限のサイズを有するので、散乱34のごく一部は後方検出器26に到達する。しかし、スルーホール48のサイズは小さく、ビームセレクタ24の厚さは十分に大きいので、散乱34のこの部分は、他のエラー源と比較して無視できるほど小さくなるように制御できる。
【0052】
スルーホール48は、実用的な程度に小さいのが、好ましい。スルーホール48が大きすぎる場合、散乱34が後方検出器26に到達するのを十分に防げないであろう。ビームセレクタ24には、スルーホールが実用的な程度に多数存在するのが、好ましい。スルーホール48の数が多いほど、後方検出器26の測定精度が高くなるからである。
【0053】
ビームセレクタ24の材質は、すべての散乱34を吸収すること、ならびにスルーホール48を通過した一次X線32を除いて、一次X線32または散乱34のいずれかによって引き起こされた散乱34および二次放出を含む、他の放射のいずれも後方検出器26に到達しないことを保証する必要がある。
【0054】
上記検出器アセンブリ14を、以下のように画像から散乱34を除去するために使用する。低解像度の一次X線画像を、後方検出器26の選択位置38から読み取る。高解像度の合成(一次X線32および散乱34)画像を、前方検出器22から読み取る。低解像度の前方検出器合成画像を、選択された後方検出器位置38と一直線上の前方検出器位置40から読み取るか、または計算する。低解像度の前方検出器散乱画像を、低解像度の後方検出器一次X線画像を低解像度の前方検出器合成画像から減算することによって決定する。高解像度の前方検出器散乱画像を、低解像度の前方検出器散乱画像を補間することによって計算する。当該高解像度の前方検出器散乱画像を、前述の高解像度の前方検出器合成画像から減算し、高解像度一次X線画像を生成する。
【0055】
後方検出器26上の選択位置38のみを使用するので、後方検出器26の別の構造では、大部分が不使用の2D全体を検出器としたものでなく、各スルーホール48の基部に一つ以上の検出器セルを配置する。
【0056】
上記ビームセレクタ24は、X線放出場所16に対して固定したままでなければならない。スルーホール48が適切に作動するためにはX線放出場所16からの線源X線30と一直線上になければならないからである。検出器22、26を移動する必要はないが、ビームセレクタ24を検出器22、26に固定する場合は移動する必要があろう。放出場所16の移動する距離が十分に小さい場合、スルーホール48は線源X線から十分に一直線上にあるので、ビームセレクタ24を移動する必要はない。
【0057】
ごく少数の放出場所16のみがある場合、ビームセレクタ24は、放出場所16のそれぞれに対する異なる焦点を有するスルーホール48の組を有することができる。スルーホール48の異なる組は、異なる選択位置38を有し、その結果、一つの線源位置から生じる散乱34は、他の線源位置からの信号に影響を与えない。この構成のビームセレクタ24は、放出場所16と共に移動する必要はない。
【0058】
以下のビームセレクタ24は、調整可能な焦点を有するので、X線放出場所16の移動に合わせて移動する必要がない。
【0059】
図4のビームセレクタ24は、多数の真っ直ぐなスルーホール70を有するX線吸収材を含む。各スルーホール70は、異なるX線エネルギー吸収特性を備えた複数の層78内の一つ以上のX線吸収材から作られた剛性の中空管76によって形成される。
図4に示すように、管76は、異なるX線吸収材の三つの層78a、78b、78cを含むことができる。複数のX線吸収材は、エネルギーが15KeV~500KeVなどの広範囲に広がる、複数エネルギーのシステムまたは単一エネルギーのシステムに、効率的な吸収を提供する。可能な材質には、タングステン(W)、スズ(Sn)、および銅(Cu)などがある。異なるエネルギーレベルで最も効率的に吸収するように材質を選択すると、管壁78の厚さを最小にすることができる。
【0060】
管76の間の領域80は、例えば、X線吸収材と混合したエラストマーなど、圧縮可能な、X線吸収材を含む。管壁78と同様に、領域80は、異なるX線エネルギー吸収特性を有する複数の層を含むことができる。
図4に示すように、領域80は、例えば、タングステンと混合したエラストマー80a、スズと混合したエラストマー80b、および銅と混合したエラストマー80cなどの異なるX線吸収材の三つの層80a、80b、80cを含む。X線吸収材に対するエラストマーの比率は、エラストマーの圧縮特性およびX線吸収材の吸収能力を維持するように選択する必要がある。通常、X線吸収材質に対するエラストマーの比率は1:1から4:1の範囲である。
【0061】
図5に示すように、管76の間の領域80の両側を、ポリマー、エラストマー、スマート金属、および/またはこれらのいくつかの組み合わせのプレート92によって遮断する。領域80を、X線吸収材のビーズ90または粉末で満たす。ビーズ90または粉末の厚さを、所望のX線に減衰させるために必要に応じて調整する。
【0062】
あるいは、スマート金属および/またはスマートワイヤによって、管64を接続する。スマート金属および/またはワイヤは、コンピュータ制御の下で、少なくとも1次元で伸びる、圧縮する、折れ曲がることができる。
【0063】
典型的には、スルーホール70は、その静止状態において、互いに平行であり、いかなる焦点を持っていない。焦点を作成するために、
図6のように、四つの側部84の上端86を内側に変位させる。四つの側部84が等しい長さであり、領域80の圧縮率がビームセレクタ24全体にわたって一定であると仮定すると、四つの上端86のすべてを同じ量だけ変位させると、ビームセレクタ24の中心上に焦点を形成する。焦点の距離は、変位量に依存する。各上端86の変位量を個別に変えることにより、焦点の位置を3次元で変えることができる。(焦点線とは対照的に)焦点を達成するために、上端86の隣接する少なくとも二つを変位させなければならない。
【0064】
あるいは、管76の間の領域80は、X線吸収性でない。一つ以上のX線吸収材で構成される管壁78が、選択場所38からの散乱34のすべてを実質的に遮断する限り、領域80は、ポリマー、エラストマー、および/または十分な構造的支持を提供できる任意の材質で満たすだけでよい。
【0065】
ビームセレクタの別の例では、集束もしくは平行グリッド、直線グリッド、または二つの直線グリッドによって形成した十字グリッドがある。直線グリッドは、一般に、X線吸収材および隙間の交互の直線、または非X線吸収特性および低X線吸収特性の材質の交互の直線で構成される。直線状のX線吸収材により一次X線が遮断され、もう片方の隙間により一次X線が通過できる。十字パターンまたはグリッド版は、上記の2Dビームセレクタの変形例かも知れない。この場合、一次X線が通過する配置は、低X線吸収材または非X線吸収材の領域によって決定される。集束グリッドとは、一次X線の通過するグリッド領域が、X線ファンビームの形状を考慮して設計されているものである。一次X線領域の焦点は、X線ファンビームの経路の直線上にあるため、一次X線は検出器の分布した領域に透過する。ここで説明した構成は、X線コリメータで一般的に使用されているグリッドを利用した前述のビームセレクタを僅かに変形した例である。
【0066】
調節可能な焦点を有するビームセレクタ24の別の実施形態を
図7~13に示す。ビームセレクタ24は、一次X線32のみが後方検出器26の選択位置38まで通過することを可能にする。
【0067】
図7を参照すると、一構成では、ビームセレクタ24は、多数の剛性の中空管104を備えた、二つ以上の剛性のX線吸収プレート100、102を備える。管104は、X線吸収材もしくは制限された臨界角でのビームの内部全反射が可能なポリキャピラリー管、または散乱が管104および上部プレート102を通過して他の管の底部の検出器に影響を与えるような長さの散乱を生成しない非X線吸収材で形成される。管104は、
図4のビームセレクタの実施形態のものと同様に形成することができる。
【0068】
一次X線32のみを後方検出器26の選択位置38に通過させる上記ビームセレクタの実施形態は、X線吸収壁を備えた中空管104を使用する。本開示は、前述の管104の代替例が使用され得ることを企図する。
【0069】
必要に応じて、
図7に示す実施形態について、X線吸収材のビーズまたは粉末を、後方検出器26の直上の各管104を取り囲む金属またはポリマーでできたポケット内に追加することができる。ポケットの厚さおよび幅は、実質的にすべて(99.99%)の一次X線および散乱が管104の周りの後方検出器26に到達するのを防ぐように設計されている。それにより、X線信号がない領域を選択位置38の周囲に作り出す。
【0070】
必要に応じて、エラストマーを用いた実施形態について、プレート100、102間にエラストマーでなく、X線吸収材のビーズ及び/又は粉末を使用することができる。
【0071】
調整可能な焦点のビームセレクタの一構成では、ベースプレート100は、開口106の所定ピッチによる正方行列を有しており、集束プレート102は、
図8に示すように、それよりも僅かに小さいピッチによる開口108の正方行列を有する。たとえば、ベースプレートのピッチが10mmの場合、集束プレートのピッチは9.8mmになる。
【0072】
ベースプレートの開口106は、管104が焦点距離500mmに対して垂直より約11°だけ開口106内で傾けることができるように、管104の直径よりわずかに大きく、集束プレートの開口108は、焦点距離500mmに対して管が開口部108内でスライドし垂直から最大約11°の角度まで傾けることができるように、管104の直径よりわずかに大きい。
【0073】
集束プレート102を、中央の管104が垂直となるようにベースプレート上の中心に配置した場合、焦点は集束プレート102の中央部の直上となる。
図9~11に示すように、集束プレート102を垂直に動かすと、焦点の垂直位置が変わる。
図13に示すように、集束プレート102を水平に動かすと、焦点の水平位置が変わる。
【0074】
一構成では、ビームセレクタ24は、ポリキャピラリー導管のような内部全反射要素のアレイを有するので、当該導管を臨界角の非常に狭い範囲で貫くX線のみが後方検出器26まで通過する。
【0075】
調節可能な焦点を有するビームセレクタ24の別の例を
図14~15に示す。この実施形態では、管を排除し、穿孔116を、実質的にすべてのX線が吸収されるように設計した厚さを有するX線吸収材を複数積み重ねたプレート114に配置する。穿孔116は、一次X線32を後方検出器26に通過させる穴118を形成するように整列する。焦点を移動させるために、プレート114を、2Dアクチュエータによって互いに沿って移動する。
【0076】
他の構成では、ビームセレクタ24は、たとえば、静的および空間的可変もしくは変調MEMSまたは変形MEMSなどの回折要素のアレイ、および選択領域でのX線透過のための超音波変調空間可変結晶のような結晶、または回折格子ならびに関連するX線光学系など、X線光学系を含む。
【0077】
結晶を照射する入射X線ビームの方向が変化するとき、変調が変化するかまたは同一のままかは、一次X線を通過させることができるかに応じて決まる。
【0078】
ビームセレクタ24は、X線光学系またはX線レンズアセンブリなどの屈折要素のアレイを有することができる。
【0079】
一次X線または散乱の分離は、入射X線ビームに対する臨界角に基づくことができる。X線光学系の使用と組み合わせて、一つのビームを臨界角の範囲内にし、他のビームを臨界角の外にする可能性がある。たとえば、ビームセレクタの一部として屈折X線レンズを使用すると、一次X線または散乱の分離は、入射X線ビームの受光角に基づく可能性がある。いくつかの例では、そのようなビームセレクタを後方検出器の前ウィンドウの一部として、選択領域のX線を通過させて検出することを可能にし、それによって一次X線および散乱を分離できる。あるいは、後方検出器で受信される信号の方向は、X線ビームの入射角に対応するので、既知のX線放出場所、形状、および予測される入射X線ビーム角を用いて、一次X線および散乱を後方検出器で区別する。
【0080】
散乱遮断ビームセレクタを使用する上記構成では、完全な2D後方検出器26を使用することもできる。これらの構成では、穴48と一直線上にない検出器セル28は、使用されない。ビームセレクタ24により、全てのX線が受信を遮断されるからである。
【0081】
別の例として、
図18に示すように、後方検出器28は、完全な2D検出器を使用するのではなく、一つ以上の検出器セル28のグループ42を含み、グループ42のそれぞれをビームセレクタの穴48の基部に配置する。
【0082】
二つの検出器の間に挟まれたビームセレクタを含む構成の変形例では、二重検出器層を使用する。一例では、前方検出器は、一次X線または散乱のいずれかを選択的に透過し、一方、一次X線および散乱の両方を含む投影画像を検出することができる。透過領域である画素領域は、少なくとも一つの透過画素を含む。一例では、前方検出器は、一次X線が通過できる透過性および不透明領域が交互になるチェッカーボードパターンを有する。二つの領域の交互のパターンおよび寸法は、アプリケーションの要件および一次X線から除去または分離する必要がある散乱の割合によって決まる。一例では、一つ以上の画素を含む透過領域の下に、一ダイオードにつき一画素を備えた単一のダイオードまたは複数のダイオードを検出器として使用することができる。あるいは、一つまたは複数画素を備えた小さな検出器を使用してもよい。したがって、平面状の後方検出器の場所にある検出器は単一である必要はなく、それぞれが前方検出器よりも小さい、検出器が複数あってもよい。
【0083】
別の構成では、前方検出器の各画素は、部分的に透過し、部分的に検知する。後方検出器は、前方検出器から出てくる透過信号を取り込む。
【0084】
別の変形例では、そのような透過性または透明的な特徴を、後方検出器に組み込んでもよい。したがって、X線は、後方検出器の検知領域の前に、吸収されるかまたは透過する。
【0085】
あるいは、そのような検出器アセンブリを、上記特徴および二重検出面を内蔵する、一つの検出器に組み込む。
【0086】
ビームセレクタの別の変形では、第二の検出器層に到達する散乱の割合を減少させるためのフィルタならびに当該フィルタに取り付けられた一次X線および散乱の両方を取り込むための第一のセンサを使用する。
【0087】
前方検出器および後方検出器の間に配置したビームセレクタ116のさらに別の例では、
図14および
図15に示すように、二つ以上のプレート114を備える。各プレートは、タングステン、銅、または合金などのX線吸収材を含む。各プレートの厚さは、単独もしくは組み合わせのいずれであっても、一つ以上のエネルギーレベルのほぼすべてのX線を吸収できるような厚さである。プレート間の距離を維持するために、プレート間にスペーサーがあってもよい。必要に応じて、検出器に面していないプレートの四つの側面の周りにX線吸収枠をビームストッパーとして配置する。
【0088】
各プレートは、様々な形状の穴を有することができる。第一のプレート114が前方検出器に最も近いプレートの場合、第二のプレート114、第三のプレート114、第四のプレート114、第五のプレート114は、第一のプレート114のものと同様、またはより大きいサイズの対応する穴を有し得る。
【0089】
場合によっては、各プレート114は、一つ以上の線形アクチュエータによって移動し、X線源、および各プレートにわたって分布する穴を揃えて、一次X線が通過できるようにすることができる。
【0090】
あるいは、穴が後方検出器により近いプレート上でより大きくなる場合、プレートを移動する必要はないかも知れない。一次X線ビーム経路が投影される検出器の領域のみを、選択した一次信号として使用する。当該ビーム経路の外側にあるX線信号については、前方検出器上の高解像度の一次X線信号の導出では考慮しない。一次X線ビーム経路が投影されるこれらの領域は、検出器に対するX線源の相対位置および前述のビームセレクタプレートの位置によって、またはあらかじめ、撮影対象が存在する場合の撮影構成に対応するX線放出位置を用いて当該対象が存在しないときの測定を行うことによって決定できる可能性がある。
【0091】
(X線源および放出場所)
本開示は、制御可能なエネルギーでパルスまたは連続X線を放出することが可能なX線源12を使用する。このようなX線源は、従来のX線管X線源、冷陰極X線源、金属-液体ジェット、レーザーコンプトンX線、線形加速器ベースのX線源、またはシンクロトロンもしくはシンクロトロン様X線源、コヒーレントもしくは部分コヒーレントX線源、単色線源、広域スペクトルX線源および/または電界放出器ナノ構造ベースのX線源が可能である。
【0092】
X線源の例としては、電界が印加されたとき電子ビームを放出する個別にプログラム可能な複数の電子放出部、コリメータを備えたX線源から放出された電子ビームの衝突を受けたときにX線ビームを放出する陽極ターゲットが含まれる。
【0093】
各電子放出部は、電子電界放出材を含むことができる。各電子電界放出材は、ナノ構造材を含むことができる。電子電界放出材は、複数のナノチューブまたはナノワイヤを含むことができる。ナノチューブ(炭素、ホウ素および/または窒素を含む)の例は、硫黄および/またはタングステンからなる群から選択される少なくとも一つの電界放出材を含む。ナノワイヤ(シリコン、ゲルマニウム、炭素、酸素、インジウム、カドミウム、ガリウム、亜鉛、酸化物および/または窒化物を含む)の例は、ケイ化物および/またはホウ化物からなる群から選択される少なくとも一つの電界放出材を含み得る。
【実施例】
【0094】
(携帯電界放出器ナノチューブベースX線源の例)
(携帯性のためのX線源)
本開示では、X線源を提供し、その一例を
図32に示す。
当該X線源は、以下を含む。
【0095】
・高効率、軽量、およびコンパクトなサイズのX線発生装置、例えば、真空封止された電界放出管s-1がある。s-1は、冷陰極X線管を含み得る。
・パルス動作の電気エネルギーを貯蔵するための、例えばコンデンサーまたは静電容量などの電気エネルギー貯蔵装置S-3がある。S-3は、前段で構築することができ、たとえば5kV~10kVのようなはるかに低い電圧で動作できる。
・たとえば100kV~150kVの高エネルギーパルスを提供するための、たとえば、高電圧パルストランスなどの電圧増幅器S-2がある。
【0096】
パルス持続時間は、たとえば、0.1ms~10msの間に制御してよい。放出管内を流れる対応する電流は、高品質のX線撮影に必要な量のエネルギーを提供するために、10mA~1Aの間になる場合がある。パルス幅と電流は、コンデンサーの静電容量、パルストランスのインダクタンス、および放出管のV-1特性曲線のパラメータによって決定される。
【0097】
フラッシュX線源は、パルストランスをトリガーするため、例えば、高電流出力を提供する高電圧源によって駆動された電界放出管の使用に基づくことができる。たとえば、HV半導体装置、HVサイリスタによってトリガーしたパルストランス、または
図32に示すような統合ゲートバイポーラトランジスタなどである。Thyratron Spark Gapsなどの真空または気体型の装置は、高電圧(HV)装置の例であり、HVパルサーに高電流出力を提供できる。
【0098】
高電圧サイリスタまたはIGBTは、スイッチングデバイスS-5として機能することができる。二つ以上のこのようなHVデバイスを直列に接続し、5~15KVの電圧などで高電流出力を提供するために必要な初期HV電圧に達する可能性がある。
【0099】
X線源の出力で可変エネルギー生成を行うために、回転陽極上の異なるターゲットを使用し、それぞれのターゲットは特定のエネルギーレベルのX線を生成する。
【0100】
X線管は、冷陰極X線管に基づく可能性がある。例えば、複数のプログラム可能な電子放出部を備える電界放出X線源であって、各電子放出部は、円錐型で出荷される陽極ターゲット、または上記の静電レンズ、電気光学集束レンズなどの集束手段のいずれかによって集束される可能性がある。
図23~24Cに示すゲートメッシュは任意である。
【0101】
本開示では、一般的なパラメータを有する主要部品を含むX線源を提供し、たとえば、2.5kVのDC電源、たとえば2μFの静電容量を有するコンデンサーのような高電圧電流貯蔵手段、電子トリガー回路、一例ではシルガードシリコーンに封入した高電圧パルストランス、および冷陰極X線源の可能性があるX線管が含まれる。HV=50kVの場合、単一のX線パルスを生成するためにコンデンサーに蓄えられる総エネルギーは、30Jとなる可能性がある。X線源全体の寸法は、約8インチ×8インチ×16インチもしくはそれ以下、重量は約30ポンド未満である。各部品の選択に応じて、より小さい寸法が可能である。X線エネルギーレベルは、125KV~250KVであり得る。
【0102】
そのようなX線源を、2次元撮影システムで使用してもよく、携帯機能があってもよい。
【0103】
可動部品を有しない断層撮影システムを提供するためには、
図20で示すように、電子ビームまたは荷電粒子について、磁気プレートもしくは磁気ベースの操縦装置などの磁気手段、または金属手段、例えば電気光学レンズなどにより、本開示に記載するような多次元撮影能力を有するシステム内を操縦する可能性がある。
【0104】
X線源装置は、単一または複数のエネルギーを生成する可能性がある。以下で説明するシステムの一つ以上に使用し得る。
すなわち、
・単一、二重または複数エネルギーのX線システム
・ハードウェアとソフトウェアを含む、散乱および一次X線を分離するX線システム
・X線多次元または3D撮影システム
・診断、産業および研究用途向けのX線撮影システム
である。
【0105】
典型的なX線源のパラメータを示す。
・焦点:0.1mm~10mm
・画面領域:60cm×60cm
・スキャンポイント:通常30×30~最大50×50
・一地点の滞留時間:0.01ms~10ms
・一地点の典型的な時間:1ms
上記は、検出器フレームレートにより決定される、一つの完全な組の画像についての値である。
【0106】
線源12は、各撮影動作のための制御可能なエネルギーを有する二つ以上の連続したX線パルスを放出することができ、すなわち、平均エネルギーレベルHの高エネルギーパルスに続いて平均エネルギーレベルLの低エネルギーパルスを放出できる。各パルスは、単一の再現可能なエネルギースペクトルを持ち、これは、制動放射および離散的な直線放射を含む。
【0107】
別の構成では、線源12は、各撮影動作のための制御可能なエネルギーを有する三つの連続的なパルスを放出し、すなわち、平均エネルギーレベルHの高エネルギーパルスに続いて平均エネルギーレベルMの中エネルギーパルス、さらに続いて平均エネルギーレベルLの低エネルギーパルスを放出する。各パルスは、単一の、本質的に変化しないエネルギースペクトルを有する。
【0108】
別の構成では、線源12は、二つ以上のエネルギーピークを有するパルスであって、それぞれがパルス持続時間内に他のピークから時間的に分離されているものを放出する。
【0109】
別の構成では、線源12は、広域スペクトルパルスを放出する。
【0110】
各検出器または当該検出器を含むX線測定アセンブリは、フォトダイオードアレイもしくはエネルギー感受性検出器またはX線分光計のような、エネルギー感受性のものであってよい。
【0111】
(X線放出場所の移動)
X線放出位置は、機械的、電気的、および/または磁気的エネルギー手段によって移動させることができる。
【0112】
図1および19を参照すると、X線放出場所16は、検出器アセンブリ14に平行な平面18内で対象2に対して動くことができる。あるいは、本開示は、放出場所16が対象2に対して検出器アセンブリ14に垂直な平面内または検出器アセンブリ14に平行および垂直以外の平面内を動くことができることを企図する。機械的、電気的または磁気的機構により、所望の運動を提供する。
【0113】
別の構成では、当該機構は、放出場所16を角度的に、線形に、または両方の組み合わせのいずれかで移動する。移動は、対象2内の関心領域4の3次元内の未知の画素を解くために行われることが好ましく、各移動における新しい未知の画素の導入を最小限に抑えつつ、かつ関心領域4の3次元内の未知の画素を完全に導出するための新しい未知の画素の総数の導入を最小限に抑えながら、画素ピッチの整数倍で行うことが好ましい。
【0114】
本開示では、総撮影時間および放射線被曝を最小限にするために、当該機構が放出場所16の素早い移動を提供することを、要求ではないものの、企図する。例えば、当該機構は、画素ピッチ(隣接する検出器セル28間の距離)の整数倍の増分でこの移動を提供することができる。
【0115】
本開示では、特に、撮影時に対象2は既に移動している産業用途などの用途において、対象2を放出場所16に対して物理的に移動することを意図する。総撮影時間および放射線被曝を最小限に抑えるために、角度または線形の各移動により、3次元の未知の画素を、好ましくは画素ピッチの整数倍で解像すると同時に、このプロセスに新しい未知の画素が導入され、関心領域に加えて、このような未知の画素を解像するための必要ないくつかの測定を考慮する必要がある。
【0116】
X線源および移動システムの一例は、金属、グラフェン、また「冷陰極」としても知られ、温度でなく印加電界によって駆動されるシリコンまたは炭素ナノチューブ(CNT)ベースの電界放出器がある。CNTでは、電流を印加電圧によって正確かつ瞬時に制御する。
【0117】
CNT放出器c-3は、炭素ナノチューブなどの電界放出器ナノチューブを二つ以上含むX線管において、導電性基板上に垂直に配置して用いることができる。一構成では、カーボンナノチューブの幅は1ナノメートルの範囲である。カーボンナノチューブの先端は、放出が発生する場所である。一例では、CNTは、
図23に示すように配置される。チューブ壁の内側の電極に接続されたグリッドまたはゲートメッシュ構造C-2は、CNTの先端の少し上に配置される。グリッドメッシュおよび基板間に外部から電圧勾配をかけることができる。当該電圧は、CNTの先端に非常に強い電界を生成する。CNTの先端に集中する電界強度により、負に帯電した電子の電界放出がCNTの先端で発生する。露出をオンにすると、電子はCNTの先端から放出され、グリッドメッシュC-2に向かって飛ぶ。大部分は通過して陽極の高電圧によって加速され、電子が陽極c-1に衝突するとX線が発生する。内部にある電気光学集束レンズC-4を使用して、X線放射の焦点地点サイズを動的に調整する、または陽極上の焦点地点を別の場所に移動することができる。
【0118】
図24Aに示すように、CNT放出器の異なる領域を活性化し、電気光学電極C-4と組み合わせて使用して電子ビームを制御し、陽極上の電子c-5の焦点サイズを調整してもよい。
【0119】
焦点上の電子の大きさを制御するために、他のタイプの静電レンズまたは電磁レンズを使用することができ、例えば、電磁コイル、アインツェルレンズ、四重極レンズ、磁気レンズ、または多極子レンズを使用することができる。
【0120】
追加の電磁手段、例えば、電磁コイルc-6を使用して、X線ビームが検出器に平行なX-Y平面の陽極上の様々な場所から放出されるように、当該ビームを操縦することができる。別の実施形態では、電子ビーム操縦のために、一組の磁気プレートまたは金属プレートを使用することができる。
【0121】
一構成では、CNT放出器要素c-3は、本構成の異なる実装である
図24A、24Bおよび24Cに示すように、一つ以上の電界放出器ナノチューブ放出器をそれぞれに含むc-7領域を含む。各領域は、他の領域とは独立して活性化および非活性化できる。一つ以上の電界放出器ナノチューブ放出器から発生する電子ビームを、電気光学装置によって電子的に、もしくは磁気プレートによって磁気的に、または電磁コイルc-5によって電磁的に操縦し、陽極上の焦点地点についてプログラム可能なパターンでその位置を移動させる。陽極上の全体的なX線放出位置の面積または距離を、例えば、そのような領域を二つ以上使用することにより、拡張することができ、その結果、X線放出位置のパターンを、陽極上のX線放出領域全体にわたって連続的とし得る。
【0122】
ビームセレクタ24のようなビームセレクタを用いるシステムには、特有の言及が必要であろう。あるビームセレクタの実施形態では、固定焦点を有するので、放出場所16に対して固定したままでなければならず、また、別のビームセレクタの実施形態では、調節可能な焦点を持つので、放出場所16に対して固定したままである必要はない。
【0123】
放出場所16の移動、および、必要に応じて、検出器アセンブリ14の移動を提供するためのいくつかの異なる機構を以下に説明する。
【0124】
一機構では、二つ以上のX線源12が平面18内の異なる位置に配置され、それらの場所から順次パルスを放出する。検出器アセンブリ14は固定されている。この機構では、ビームセレクタ24は、複数の固定焦点または調整可能な焦点のいずれかを有さなければならない。
【0125】
他の機構では、単一のX線源12が平面18上の異なる位置から順次X線パルスを放出する。本開示では、これを達成することができるいくつかの異なる構成を企図する。
【0126】
一構成では、2次元アクチュエータによって、物理的に、X線源12およびX線検出器アセンブリ14を移動させる。当該アクチュエータは、好ましくは、X線源12およびX線検出器アセンブリ14を、平面18内において一検出器の画素ピッチの整数倍かつ検出器アセンブリ14のフレームレート以上の速さで移動させることができる。この構成では、ビームセレクタ24は固定焦点を有することができる。
【0127】
別の構成では、2次元アクチュエータによって、物理的に、X線源12のみを移動させる。好ましくは、当該アクチュエータは、X線源12を、検出器アセンブリ14に平行な面内において画素ピッチの最小の整数倍の単位で移動させることができ、これにより、検出器アセンブリ14のフレームレート以上の速さで、以前の測定位置に対するX線ビーム測定位置は一画素ピッチの平面運動をする。この構成では、ビームセレクタ24は、放出場所16に配向を一致させる必要がある。いくつかの構成では、ビームセレクタ24は、調整可能な焦点を有する必要があるかも知れない。
【0128】
別の構成では、2次元アクチュエータは、物理的に、X線源12のみを回転させ、放出場所16は弧状に動くようにする。当該アクチュエータは、好ましくは、X線源12を、弧に沿って一画素ピッチまたは一検出器画素ピッチの整数倍の平面運動を模擬する角度に相当する角度かつ検出器アセンブリ14のフレームレート以上の速さで回転させることができる。この構成では、ビームセレクタ24は、放出場所16に配向を一致させる必要があり、いくつかの構成では、その焦点を調整する必要があるかも知れない。
【0129】
別の構成では、
図19に示すように、X線源12は単一のX線源200であり、X線ビームを、例えば、ポリキャピラリー管202の内部全反射を使用して、異なる放出場所16に移動させる。
【0130】
他の機構では、X線源12内の電子ビームを偏向させて陽極の異なる場所に衝突させ、それによりX線ビームを異なる放出場所16から放出させる方法を使用する。
【0131】
一構成では、
図20に示すように、例えば、X線管210の筐体に取り付けたソレノイドコイル212によって生成される変動する磁場により、X線ビームを偏向させる。エネルギーを与えられたコイル212は、磁場および関連するローレンツ力をX線管210内の電子ビームに生成し、X線が放出される陽極ターゲット214上の衝突地点を移動させる。放出場所16は、陽極214上のコーンビームの焦点地点の変位により移動する。その結果、放出場所16は、ある位置から別の位置に移動する。コイル212を注意深く制御することにより、1次元または2次元内における一画素ピッチ程度の小さな動きを生み出すことができる。
【0132】
別の構成では、荷電した金属プレートを通過する際に電子ビームを偏向させる。偏向の方向は、プレートの極性と帯電量によって異なる。
【0133】
別の構成では、発光ダイオード(LED)またはレーザーなどの光源を、電子ビームを生成するための光源として使用し、次いで、電子増倍管によって増幅する。光学系また鏡などの光偏向器、および音響光学偏向器を使用して、光を偏向させる。超高速レーザーを使用して紫外光を放出する紫外線放出器を、電子を放出する紫外線発光ダイオードに動作可能に結合された光電陰極、入射電子を増倍する光電陰極に動作可能に結合された電子増倍管、およびX線を生成するように構成された電子増倍管に動作可能に結合された陽極とともに使用してもよい。紫外線放出器を、電子ビームの出力を制御するために異なる角度に操縦してもよく、それは、次に、陽極から放出されるX線ビームの方向または位置を変える。
【0134】
別の構成では、ナノワイヤなどの金属部品のアレイを強いフェムト秒レーザーパルスで照射して、高輝度のピコ秒X線パルスを生成する。放出場所16は、光学操縦装置を使用して、金属部品上のレーザービームの衝撃位置を変更することによって移動させることができる。
【0135】
複数の光電陰極または増倍管を使用して、操縦したレーザービームを収集させ、電子ビームを出力することができる。場合によっては、電子ビームは、電子的、磁気的、光学的、および/もしくは結晶ならびに超音波、または他の手段を介して迅速に操縦できる可能性がある。これを行う一方法には、2Dアレイのコリメータ、一画素ピッチの整数倍離間した穴、磁気的手段を含む異なる機構を使用するラスタースキャンのX線ビームを使用することがある。
【0136】
別の構成では、X線源は、放出場所を制御するために変調し、かつオンおよびオフを切り替えることができる1ミクロン程度の金属X線放出器を備える。
【0137】
別の構成では、米国特許出願公開第2010/189223号明細書に記載されており、X線源12は、X線源をデジタル的にアドレス指定するフラットパネルであり、一つ以上の放出器を、2Dフラット上の各画素に配置する。
【0138】
別の構成では、超音波により、X線ビームを空間および時間において変調することができる。たとえば、X線ビームの時空間変調は、表面弾性波によって変調したLiNbO/sub3/結晶のYZカットでの外部全反射によって行われる。X線回折は、表面弾性波の振幅および波長によって決まる。X線ビームは結晶に向けられ、結晶は変調音波によって結晶の回折特性がどのように変化するかに応じて動的にビームを操縦する。X線の結晶からの出力位置は変化する可能性がある。例えば、X線ビームは、XY平面上の様々な場所で結晶から出るように変調することも可能である。
【0139】
別の構成では、1ナノメートル程度以下での電流変調による相対論的電子ビームを使用してコヒーレントX線を生成してもよい。電流変調は、完全なシリコン結晶内で相対論的電子を回折し、回折ビームを加速して結晶構造を画像化し、エミッタンス交換を介して時間次元にその画像を転送することによって生成される。変調周期は、回折後の電子光学系を調整することで調整できる。調整可能な縦変調は、数オングストローム程度の短周期を持つことができ、装置から全長が数メートルの逆コンプトン散乱に基づくコヒーレントな硬X線の生成が可能になる。
【0140】
電子ビームが陽極に当たる電子ビームの空間的位置は、レーザーポンプからのレーザービームの位置を操縦することによって変調することができ、それによりX線放出位置が変化する。本開示は、また、例えば、干渉図形、部分コヒーレントおよびコヒーレントX線撮影システムなどを組み合わせた撮影システムの使用を企図している。たとえば、位相コントラスト撮影法において使用するシステム、コヒーレントX線撮影または干渉図形ベースシステムの検出器の上流について、様々なX線の放出場所を実現するか、または様々なX線源を生成するように変更する。例えば、X線がX線干渉計の上流で複数の線源に分割される線源格子を、X線放出位置の生成に使用することができる。これは、選択されたX線放出場所を遮断する調整可能なグリッド、または一時的にX線吸収領域によって行うことができる。このような調整可能なグリッドシステムは、線源格子ハードウェア内に設計することも、分離することもできる。別の実施形態では、線源の下流でX線放出場所を変え、線源の下流、すなわち、線源および検出器間の任意の場所で線源と同様の遮断機構を使用するか、または、任意のハードウェアを移動もしくは変更するかのいずれかにより、関心領域について異なる時刻のさまざまな照射経路を利用して、当該関心領域を測定する最終目的を達成する。例えば、G1およびG2格子を変更してもよい。
【0141】
X線干渉計の別の実施形態には、結晶干渉計、又は結晶元素に基づく干渉計がある。
【0142】
図21に示すように、結晶干渉法または結晶に基づくX線干渉法の一例は、互いに平行に配置されたラウエ形状の三つのビームスプリッタ150、152、154から成る。X線源12からの入射ビーム30は、通常、前にモノクロメータ(ブラッグ結晶)156によってコリメートおよびフィルタリングされ、ラウエ回折によって最初の結晶150で二つのコヒーレントビームである、乱されない参照ビーム160および対象2を透過するビーム162に分割される。第二の結晶152は、透過鏡として働き、ビーム160、162を互いに向かって収束させる。二つのビーム160、162は、時々アナライザー結晶と呼ばれる第三の結晶154の平面で出会い、干渉パターンを作り出し、その形態は、対象2によって引き起こされる、二つのビーム160、162間の光路差に依存する。この干渉パターンを、アナライザー結晶154背後のX線検出器14によって検出する。
【0143】
ハードウェア要素の一つ、例えば、ブラッグ結晶156、X線放出場所16、または対象2を移動させ、上述の方法を使用して異なる照射経路からの投影を記録することにより、屈折率の3D分布、つまり対象の断層画像を取得できる。
【0144】
以下の方法とは対照的に、結晶干渉計は位相自体を測定し、空間的変化を測定しない。干渉パターンから位相シフトを取得するには、位相ステッピングまたは縞スキャンと呼ばれる手法を使用する。位相シフタ(くさび形を有する)を参照ビームに導入する。位相シフタは、一定の間隔で真っ直ぐな干渉縞、いわゆるキャリア縞を作成する。対象が他方のビーム内に置かれると、キャリア縞が変位する。対象によって引き起こされた位相シフトは、キャリア縞の変位に対応する。いくつかの干渉パターンを、参照ビーム160の異なるシフトについて記録し、それらを分析することにより、2πを法とする位相情報を抽出することができる。この位相の曖昧さは、位相ラッピング効果と呼ばれ、いわゆる「位相アンラッピング技術」によって取り除くことができる。これらの手法は、画像のS/N比が十分に高く、位相変化が急激でない場合に使用ができる。
【0145】
縞スキャン法に代わるものとして、フーリエ変換方法を、たった一つの干渉図形から位相シフト情報を抽出するために使用でき、したがって露光時間は短縮されるものの、空間分解能はキャリア縞の間隔により制限されるという欠点を有する。
【0146】
「コヒーレンスコントラストX線撮影」は、干渉図形の別の実施形態であり、位相シフトに代わり、対象によって引き起こされるコヒーレンスの度合いの変化が、画像のコントラストに関連する。
【0147】
あるいは、ラウエ結晶をブラッグ結晶によって置き換えることができ、その結果、ビームは結晶を通過せず、表面で反射される。
【0148】
いくつかの場合には、一つではなく二つの結晶を使用し、視野を拡大する。
【0149】
全てではないにせよ、ほとんどの位相コントラスト測定および干渉法では、X線入力ビームの振幅またはX線入力ビームの強度を、いくつかの測定のために変調し得ることに留意されたい。
【0150】
超音波、または他のエネルギーもしくは電子的方法による変調を使用してビームスプリッタの位置を操縦することができる結晶ベースの干渉図形またはアナライザーを使用することができる。例えば、液晶ベースの結晶アナライザーを使用して、ビーム分割位置を調整し、異なる照射経路を生成することができる。
【0151】
本開示は、携帯形式で実施することができる。たとえば、ハンドヘルド、機内持ち込み版などである。携帯版における本開示の別の例では、現場検査もしくは診断または画像案内もしくは材質特性評価に適合した折り畳み可能なシステムがある。
【0152】
(追加の高度なハードウェア)
以下のハードウェアの使用を含むことは、本開示の一態様である。
・マイクロ電子ミラー(MEM)装置であって、(1)干渉計の静的または動的もしくは調整可能な回折格子として、または(2)高空間周波数のX線ビームを生成するための一次変調器として、あるいは(3)入射X線ビームの臨界角を調整することによるコリメータとして使用するものである。
・結晶もしくは液晶ベースの装置であって、(1)干渉計の静的または動的もしくは調整可能な回折格子として、または(2)高空間周波数のX線ビームを生成して散乱および一次X線を分離するための一次次変調器として、あるいは(3)入射X線ビームの臨界角を調整することによるコリメータとして使用するものである。
【0153】
(方法)
本開示の要素には、対象の関心領域の3D画像を迅速に、高解像度で再構成する方法が含まれ、検出器に対するX線源放出場所の位置を、たとえば、画素単位の可能な最小単位で、XY平面内の約n2の領域内の少数の位置にのみ移動させることにより、Z軸に沿ったn2個の未知の画素を解像するために必要な画像データを取得する。ここで、nは、2次元平面でのX線の放出場所を表すx軸またはy軸の最大単位数である。これにより、より少ない2D投影画像、より少ない移動要件、もしくはより少ない移動またはこれらの要素の組み合わせを必要とするシステムが可能になり、従来技術より少ない時間および放射線被曝で多次元画像の再構成ができる。
【0154】
2D検出器を使用するX線測定では、nの単位測定は、検出器の画素ピッチのそれである。
【0155】
場合によって、互いに隣接するX線放出場所の相対位置は、一画素ピッチよりも小さい可能性もあるが、検出器に垂直なz軸の未知のボクセルを解像するために使用する可能性のある投影経路の測定値を生成する。
【0156】
X線顕微鏡検査装置などの場合では、カメラの解像度、したがって画素ピッチは、対象の測定単位または対象において達成される解像度よりはるかに大きい可能性がある。たとえば、ナノメートルまたはサブナノメートルの範囲である。結果として、nの測定単位または隣接するX線放出位置間の距離は、サブナノメートルまたは一桁ナノメートルなどの対象において達成すべき解像度、または達成可能な解像度が許す限り小さい解像度の範囲内にある可能性がある。これは、隣接するX線の放出場所間の距離についての画素ピッチを測定しなくても、当該距離は光学カメラの画素ピッチよりも何倍も小さい可能性があることを意味する。場合によっては、最短のX線波長と同じくらい小さい、たとえば0.01nmである。
【0157】
本開示では、また、対象が組立ライン上の部品であるなど、X線源および検出器に対して移動する場合の方法を説明する。X線の3D測定は、部品が組み立てラインを移動するときに、部品の位置に対するX線の放出位置、検出器の要素を較正して登録することで実行できる。3D画像の取得は、部品の動きによって導入される未知の体積とは関係なく達成される可能性がある。部品の動きは、z軸に沿った未知のボクセルを解像するために行う測定の一部として利用することもできる。X線放出位置の数および位置を、同様の戦略に基づいて決定できる。目標は、移動の総面積を最小化し、移動距離を最小化して、関心領域の未知のボクセルを解像するプロセスで導入される新しい未知の体積の深さまたはz軸を最小化することである。
【0158】
当該方法は、以下の要素を含む。
【0159】
所望の3D画像の再構成に必要な2D画像の数を決定する。
【0160】
例えば、2D検出器アレイがm×n検出器セルを有する場合、任意の数pの2D画像、ここで、pは、第三軸の未知の変数であって、p<nかつp<m、かつp>3である。この結果、pの数の、それぞれはm×n画素を有する2D画像が生じる。
【0161】
基本的な方法は、m×n×pの数の変数およびm×n×pの数の方程式を有する線形方程式系を解くことである。現在の方法では、対象の関心領域内の各ボクセルが立方体である、つまり、各ボクセルの辺は同じ長さDx=Dy=Dzであるとは想定していない。現在の方法は、
図22に概略的に示すように、Dzの辺はDxおよびDyに等しくない場合に適用される。
【0162】
検出器に対するX線放出位置16の場所は、検出器と平行にxまたはy方向に一画素ピッチ移動し、新たな放出位置から、関心領域を前の位置とは異なる投影経路で照射するX線ビームを生成することができる。つまり、各投影経路において、m×n×p(m、n、p)内の異なる空間位置を持つボクセルが存在し、それぞれの経路は検出器上の異なるX線測定位置に至る。
【0163】
検出器上のそのような位置(i、j)について、
図1、
図14、および
図15に示す線源12上の地点であるX線放位置16に関連付けた場合、対象を照射経路に配置すると、様々な場所の検出器は関心領域の体積内の投影された経路信号の減衰信号xを測定し、各測定は、X線源および検出器の相対位置と、先に導出した幾何学的情報から決定されるように関連付けられる。ここで、投影された各経路はpボクセルを含み、それぞれは特定の減衰係数を含む。
【0164】
m×n×pの体積において、pは、関心領域における第三の軸の厚さまたは変数である。さまざまなX線源の放出位置をp回変えることにより、異なる2D投影画像を生成し、関心領域からの投影線信号を測定する検出器の各画素は、画素要素間の空間関係が固定した一意の画素の組を含む。各2D画像は、少なくともm×nの測定値を含み、p回測定するため、m×n×p個の既知の測定値を作成する。次に、このデータセットを使用して、m×n×p個の空間内の未知のボクセルを解像する。当該ボクセルは、様々なX線放出位置での検出器の対応する場所での様々なX線測定値を生成するための変数である。
【0165】
対象の未知の画素が対象の既知の画素の体積内に埋め込まれている場合には、未知の画素を解像するため、X線放出位置を画素ピッチの一部分だけ移動してよい。より細かいステップでサンプリングする投影経路を作成し、当該投影経路は少なくとも一つの未知の画素を含むが、同時に新しい未知の画素を導入しないようにできるからである。
【0166】
さらに、解像度要求が検出器の画素サイズほど高くない場合、必要な解像度および対応する測定解像度を定義することは、本開示の範囲内である。例えば、必要な解像度は500μmであり、検出器の各画素は100μmの画素ピッチを有する場合、X線放出位置を500μmで移動することが、本開示の一つの態様である。関心領域に対して500μmの解像度で得た3D画像を取得した場合、さらに細かいステップである、たとえば100μmでの測定を使用して、関心領域内の選択した領域のより細かい詳細を解像する可能性がある。
【0167】
また、材質組成が決定され、解剖学的マーカーおよび寸法について、複数エネルギーの材質分解もしくはより低解像度の3D撮影法のいずれかを用いて導出し、又は単に与えられ、もしくは既知の事実に基づいて導出されている状況では、そのような情報を使用して、さらに細かい解像度の撮影のための一つ以上の領域を選択することができる。
【0168】
3D画像を決定するために、以下の一般的な手順を実行することができる。すなわち、(1)較正と、(2)2D撮影と、(3)2D画像散乱除去と、(4)2D機能撮影と、(5)3D/多次元画像計算と、(6)3D/多次元機能撮影と、(7)3D画像表示/合成2D画像表示/多次元画像表示と、である。各手順は任意であり、手順は異なる順序で実行できる。
【0169】
(較正)
対象の画像取得を実行する前に、予備的な幾何学的関係を、対象が無い場合の各X線源位置および検出器について決定することができる。
図30に示すように、サブ画素または画素透過を、検出器22上の各セル(i、j)について計算することができる。ここで、i、jは、検出器22上のx、y位置の画素または領域を表し、その場所で投影経路、1、2、3、・・・、11、12などのボクセルを通過するX線信号を受信する。画素ピッチは、X線源の移動ステップ間の距離、または隣接するX線放出位置間の距離である。検出器の画素ピッチXaは、検出器に垂直な軸または深さ方向の測定単位もしくは解像度Xcと同一であってよい。場合によっては、XaはXc、つまりZ軸に必要な解像度Xcよりも小さいことがある。X線の放出位置は、必要な解像度を実現するためにXcの増分で移動する。
【0170】
基本的な方法は、m×n×p個の変数、およびm×n×p個の方程式を有する線形方程式系を解くことである。現在のCT法では、画素がサイズXa=Xb=Xcを有すると仮定しているが、本開示は、XcがXcと等しくない場合にまで及ぶ。画素を通過するX線を見ると、現在の方法は、画素を通過する光線に対して値1、またはそうでない場合に値0を取る。本開示では、関心領域についての取得を実行する前に、各角度およびX線放出位置で登録がなされ、(i、j)が1、2、・・・、12を通過する信号を受信し、各サブ画素の透過率を計算することができる。各画素内で、透過率は均一で体積に比例すると仮定する。
この幾何学的計算は、事前に行うことができ、コンピュータに保存できる。あるいは、数値形式の方程式系をどのように記述するかについて、一般的な公式を導出することができる。
【0171】
m×n×p個の変数を有する、m×n×p個の等式からなる方程式系から始めて、X線源又はX線放出位置の各放射方向について、m×n×p個の放射データ点があり、m×n個の検出器セルによって記録する。各方程式にはm×n×p個の変数があり、(m×n)×p方程式があるため、線形方程式系は反復法または行列法のいずれかで解くことができる。
【0172】
一つの好ましい実施形態では、特定の寸法の対象を撮影する場合、関心領域のZ方向の厚さまたは寸法の測定値を事前に提供することができる。これは、以下により実行することができる。
1.ユーザ入力、もしくは
2.たとえば、機械的測定器具からの導出データ、もしくは
3.同一または類似材質の以前の測定データを利用する確立したデータベースに基づいて厚さを決定するための、複数エネルギーの2DのX線測定、もしくは
4.単一もしくは二つまたはそれ以上のエネルギーでの一つ以上の2D画像と組み合わせて、シミュレーションしたデータ、もしくは
5.二つ以上の異なる放出場所でのX線測定、または
6.一つ以上の非放射線センサ、
である。
【0173】
さらに、X線源および検出器に対する、関心領域の場所は、1~6に記載したような技術を使用して決定してよい。
【0174】
例えば、造影剤でラベル付けしたxyz寸法が2cmの部品サイズ、もしくは関節炎同定のための骨およびその直接領域における関心領域、骨の歪んだ応力領域または半導体組立ラインの特定領域、セキュリティ検査のための荷物の関心領域、組立ラインの部品の詳細検査のための関心領域などである。
【0175】
図30に示すように、必要な解像度Xcに基づいて、X線放出位置の数および場所を、対象の3D撮影のために決定する。異なるX線放出場所から対象を照射する前に、計算または計算および測定を実行し、対象の関心領域が配置される体積内の対応する投影経路に対して相対的なX線源場所および検出器上の画素位置の相関を取ることができる。このように、関心領域の3D次元の各投影経路に対して、X線源の場所、および投影されたX線信号を測定する検出器上の画素または画素領域を関連付ける。
【0176】
2D画像を撮影後、m×n×p個の変数を有するm×n×p個の等式の方程式系を解く。X線源の各放出場所は、サイズm×nの画像を生成する。そして、検出器の各要素は、所定の投影経路を透過したX線を受信し、一部の要素は、3D空間の対象領域で減衰後に透過したX線を受信する。関心領域の完全な3D画像を提供するために解像する必要がある第三軸変数または未知の画素の総数は、pである。たとえば、総減衰量は、以下のようになる。
・画素数の総数がZである任意の所定の投影経路に沿った減衰X
totalは、
X
total=X1+X2…+Xz、(3)
ここで、
図30に示すように、各画素の減衰は、以下である。
X1、X2・・・、Xz
【0177】
これらは、関心領域のm×n×p体積内の固有のサブ画素または画素に対応する。
【0178】
例えば、X線源および検出器の相対位置が移動するときに、関心領域外の未知の画素が測定に導入されるとき、完全性の問題が生じる。三つの状況がある。すなわち、(a)対象の関心領域が画像領域内に十分に入っている場合、線形方程式系は通常正しい解を与えるため、3D画像の完全性を仮定する。(b)関心領域が1次元で画像領域を超えて延在する場合、以下で説明する問題がある。(c)関心領域が2次元で画像領域を超えて延在する場合、以下でさらに説明する問題もある。
【0179】
領域Aは関心領域であり、領域Bは領域Aに隣接すると仮定する。しかし、領域Aの投影データを取得するため、領域Bのデータを扱う必要がある。X線源を異なるように移動させる2ステップ撮影プロセスか、または陽極ターゲットの様々な場所をスキャンするために操縦する電子ビームによりX線放出位置を異なるように移動させるならば2ステップスキャンを行うことによって、領域Aを、領域Bで囲む。これにより、さまざまな場所でX線を生成する。領域Bの情報を、さらに広い領域に拡張することなく正確に取得できる。本開示の方法により、多次元画像を再構成するために必要とされるX線測定を最小化することが可能になる。たとえば、2D領域での二方向移動またはラスタースキャンを使用して、X方向とY方向に沿った投影画像を取得する。
図16に示すように、それぞれをNXデータ点およびNYデータ点とすると、2D平面上の総投影数は、(NAX+NBX)(NAY+NBY)である。
・領域Aは、NAX×NAY画素を有する。
・領域Bは、NBX×NBY画素を有する。
・総計は、(NAX+NBX)(NAY+NBY)画素=NAX×NAY+NAX×NBY+NAY×NBX+NBX×NBY、
・新しい未知の画素数は、NAX×NBY+NAY×NBXである。
【0180】
例えば、関心領域Aは、X寸法20cm、Y寸法20cm、およびZ寸法20cmを有する。X線検出器の画素ピッチが200μmの場合、データ点は1000個になる。つまり、解像すべき未知のデータ点は1000個ある。したがって、線源からのX線を検出器に平行なXY平面内でスキャンすると、X線画像を少なくとも1000の異なる放出位置でサンプリングする。隣接する放出位置のそれぞれの間の距離について、最小数の未知数を生成し、同時にサンプリング時間を最小にするように選択することができる。
【0181】
たとえば、33×33の領域内の1000個の第一の位置にx軸およびy軸に沿ってX線の放出場所を操縦し、各位置での測定値を取得する。隣接する放出位置間の距離は、検出器の画素ピッチの200μmである。
【0182】
しかしながら、X線放出位置を領域Aが照射されるように変化させると、領域Bの未知の画素、つまり領域Aを囲む領域が導入される。
【0183】
上記の問題に対する解決策は、第二の位置におけるスキャンステップの微細化を行うことであり、その結果、領域B内の全ての情報を正確に、さらにより大きな領域に拡張することなく、得ることができる。
【0184】
X線源またはX線放出位置のスキャンを、第一の位置におけるスキャン領域内のままにし、ただし、今度は、X線源をより細かいステップでスキャンし、関心領域および領域Bの未知の画素にX線を照射する。たとえば、X線を、前のX線放出位置から移動ステップサイズの一部分、または画素ピッチの一部分だけ移動してサンプリングし得る。各放出位置は、前の放出位置と前述のステップにおいて異なるが、同時に、領域Aおよび領域B内の解像すべき未知の画素のみを照射している場合は、追加測定により、関心領域Aにおける既存の未知数もしくは領域Aの未知数の部分集合および関心領域外の領域Bに前述のステップで新たに導入された未知数の新たな関係を明らかにする新しい線形方程式を定式化できる可能性がある。線形方程式の組は、方程式(3)に示されているような完全な解を生成するように導出できる。ここで、投影経路の各画素は、関心領域Aおよび領域Aの外側のいくつかの部分の一意の画素またはボクセルの組を含む。新たに導入される未知の領域は、
図17のように、p=n
2のようなz軸の深さまたは測定値を持ち、導入された新しい未知の領域の総量は4n×n
2となり、n
2は関心領域の深さ、測定単位は、移動分解能または移動ステップである。たとえば、領域Aのz軸に沿って100個の未知数がある場合、X線放出位置がXY平面の10×10の領域内で移動すると、新しく導入される未知数の合計は4×10×100となる。ただし、X線放出位置をより大きな領域(15×15など)内で移動させる場合、元の位置から最も遠い領域が高くなり、その結果、導入される新しい未知数ははるかに多くなり、未知数の総数は、今度は、100+4×15=160となる。15×15は、必要以上である。
【0185】
深さn2が1000のとき、z軸の1000個の未知数を解くためのXY方向の動きは、1000の平方根である約32、新たに導入される未知数は4×32=130として総未知数は1130個、もしくは約34となり、理想的には、X線放出位置を1130の異なる第一の位置にし、それぞれを最も隣接する地点から一画素ピッチ離し、当該X線放出位置を元の位置からx方向およびy方向に34未満または約32画素ピッチ離すと、撮影時間が最小となる。
【0186】
より細かいスキャンの手順に対して、第二の点、つまりX線放出位置を、第一の位置とは異なる中心点とすることができ、かつ/または一画素ピッチの一部分だけの移動増分とすることができる。そして、この手順は、XY領域の一つ以上の領域、移動増分のサイズを事前に決定することにより、前の手順と組み合わせることができる。したがって、これらの領域では、X線放出位置の地点の密度が高くなる。一部のアプリケーションでは、第一の位置または第二の位置への移動の順序は重要ではなく、選択された領域に織り込まれている可能性があるため、一回のスキャンで実行できる。
【0187】
本開示では、また、3D撮影測定とは独立して、関心領域または対象のX線源に対する相対空間位置が任意の6D次元で(たとえば、関心領域の移動もしくは回転により、またはX線源の移動もしくは回転により)変化するならば、システムは、この移動を使用して3D画像を解像できる方法を提供する。6Dでの移動のため、検出器の要素は、関心領域内の異なる投影経路に対応するであろう。前述の移動を少なくとも一つの測定単位の増分で分割し、移動中の対象の空間的位置ごとに異なるX線測定値を有してもよい。X線源および検出器に対する前述の移動の幾何学的形状を、空間的に較正する。対応する検出器要素もしくは画素または二つ以上の画素を備えた検出器の要素領域によって検出した各投影経路は、関心領域についてのZ軸の未知の画素またはボクセルを解く際のデータ点として役立つ可能性がある。前述の移動のために新たに導入された未知数は、ケースバイケースで決定されるであろう。
【0188】
X線放出位置が検出器に平行なxy平面内で移動するシステムは、そのような移動をしている最中の上記X線測定と組み合わせることができる。
・このような3D撮影方法は高速かつ簡単である。
・しかし、このようなシステムを利用できない場合でも、本開示の一構成は、2D検出器に基づいて他の代替3D断層撮影システムを改善する、本開示の一部としてここで説明する3D撮影方法の代替手順としての、当業者に知られている多次元断層撮影を含む。
【0189】
(2D撮影)
多次元画像を、少なくとも二つの異なるX線放出場所から撮った2D画像から生成する。以下に、X線装置を使用して2D画像を決定する手順の一例を示す。
【0190】
対象または対象における関心領域の形状および寸法の決定をすることができる。そのような情報が事前に決定されているか、事前に設定されている場合、この手順は省略できる。
【0191】
対象に、その後、第一のX線放出場所からX線を照射する。次に、画像を検出器アセンブリで読み取る。
【0192】
次に、X線放出場所を検出器アセンブリの平面に平行なXY平面内の第二の位置に移動させる。ここで、第一の位置から第二の位置への変位は、検出器の画素ピッチの整数倍である。当該変位が一画素ピッチの場合、対象の関心領域の投影画像は、以前の投影画像とは、関心領域の画像の外縁が検出器アセンブリ上の画素の正確に一行だけ変化の方向軸に沿って拡張されることにより、異なる。言い換えると、X線源または放射位置を移動すると、定義された寸法の関心領域に対して二つの異なる投影画像を生成し、同一の関心領域の検出器上の投影画像の位置を、一画素ピッチだけ移動方向に拡張する。
【0193】
X線放出場所手順および測定手順を繰り返す。
【0194】
あるいは、3D撮影プロセスにおける投影された経路内の関心領域の外側の新しい未知の画素を最小化するという最終目標を有しつつ、検出器上に投影された画像を生成する方法には様々なものがある。例えば、X線源の放出位置を、3D空間または少なくとも1次元で移動するように変更してもよい。撮影プロセスの特定の態様または一部が、完全な撮影プロセスでなくとも、本方法を使用する限り、従来技術の撮影方法を改善し得る。あるいは、対象物または関心領域が、たとえばコンベヤーベルト、もしくは空洞内の未知の部品を追跡するなど関心領域内の動く部品内を移動する場合、当該移動によって部品の照射経路が変化すると同時に、部品の照射経路に新しい未知の画素を生成する。3D撮影データセットを完成するには、当該移動だけで十分な場合がある。場合によっては、3D撮影を完了するために、X線放出位置またはX線源の相対位置を移動して、3D照射および撮影データセットを完成させる必要があるかも知れない。未知の画素の数は、増加または変化する可能性がある。ただし、照射経路は、関心領域の完全な3D体積および新しく導入された未知の画素を解像するのに十分なほど変化している限り、完全な3D撮影を実現できる。Z軸の望ましい解像度の3D画像を生成するために、必要に応じて、X線源の異なる場所でX線測定を繰り返す。
【0195】
(一次X線および散乱分離)
この手順では、以上で取得した2D画像のそれぞれについて、散乱を一次X線から分離する。いくつかの異なる散乱除去または散乱および一次X線分離法を以上に記載した。
【0196】
本開示には、複数のX線エネルギー源を使用する、散乱および一次X線分離の好ましい方法を含み、散乱および一次X線は、各エネルギーレベルで分離され、材質分解の方法および詳細はPCT出願PCT/US19/14391に見出すことができ、その全体は本明細書に援用される。
【0197】
図4~15、
図8、および
図9における調整可能なビームセレクタの構成は、X線放出源またはX線放出場所が、一次X線が通過するビームセレクタの穴の配置から外れるアプリケーションにおいて使用される。ビームセレクタ手段は、X線放出場所に影響されず位置合わせされたままであるか、または必要に応じて、2D X線画像取得間に上記のようなX線源と再び位置合わせするように調整されるかのいずれかである。
【0198】
(2D機能撮影)
機能撮影について、任意選択の独立した手順として上記で説明したけれども、実際には、2D撮影に対する変形として実行する。機能撮影は、散乱および一次X線分離の有無にかかわらず、単一エネルギーX線源で撮影した場所または2D視覚化に追加情報を提供する。機能撮影方法およびシステムの例を以下に説明する。各例は他の例から独立しており、アプリケーションの必要に応じて、より多くの情報を提供するために組み合わせることができる。
【0199】
(材質分解および種々の材質画像化)
この方法は、2D画像に対してまたは多次元画像もしくは3D画像を再構成後に行うことができる。たとえば、材質分解は、測定した投影2Dもしくは合成2Dもしくは多次元画像、または二もしくは多エネルギー、あるいは時には単一レベルの3D画像で行うことができる。
【0200】
分解は、二エネルギーまたは複数エネルギーのX線を使用し、関心領域における成分について原子zおよび密度または他のX線感受性特性に基づいて対象中の成分を定量的に分析および分離するプロセスである。
【0201】
一つの構成では、X線源は、各X線源場所から二つのX線パルスを放出する。すなわち、平均エネルギーレベルHの高エネルギーパルス、続いて平均エネルギーレベルLの低エネルギーパルスである。別の構成では、X線源は、各X線源場所から三つのX線パルスを放出する。すなわち、平均エネルギーレベルHの高エネルギーパルスに続いて、平均エネルギーレベルMの中エネルギーパルス、その後に平均エネルギーレベルLの低エネルギーパルスが続く。各構成では、各パルスは、単一の、本質的に変化しない単エネルギースペクトルを有する。別の構成では、四つ以上のエネルギーパルスをX線源が放出する。
【0202】
一つの構成では、異なるエネルギーレベルを区別できない上記の2D検出器ではなく、検出器アセンブリは、エネルギー感受性を有する光子計数検出器を使用する。これらの検出器は、従来のX線源またはピコ秒X線源などの飛行時間型X線源とともに使用して、様々な原子zを持つ種々の成分の濃度測定および定量分析ならびに画像分離のための一次X線を収集する。従来のX線源と使用する場合、エネルギー感受性光子計数検出器により、二重検出器およびビームセレクタアセンブリの前方検出器、後方検出器、または双方を置き換え、一次X線および散乱の分離を保証すると同時に、対象中の種々の材質または成分の二、三、もしくは多エネルギーおよびスペクトルエネルギーの撮影ならびに分光が可能になる。
【0203】
二または複数のエネルギー源を使用する材質分解の詳細は、PCT出願PCT/US19/14391に見出すことができ、その全体は本明細書に援用される。
【0204】
本開示は、また、単一エネルギーX線測定を材質分解のために使用する方法を提供する。この方法には、次の任意選択の要素を含めることができる。
・関心領域の多次元または3D X線撮影を実行する。
・このような画像は、散乱を一次信号の1%未満、場合によっては5%未満、場合によっては10%未満に減少させた一次X線画像である。
・原子番号および密度、空間位置、および、時間マーカーもしくは解剖学的マーカー、または同一もしくは類似対象における同一もしくは類似関心領域の複数源から導出したデータに対して実行したデジタル分析アルゴリズムから推定された事実によって定義したマーカーの一つ、によって定義される他の特性、などの一つ以上の推定材質特性を決定する。
・関心領域内に複数の測定単位を有するシステムに対して、本開示に記載した断層撮影再構成法を使用する(これらの推定材質特性は、格納された既知の材質特性データを参照することによって変更できる)。
・再構成中の関心領域内の体積の成分を決定することは、それぞれが共通の組成を有する成分に一つ以上の関心領域を区分化することを含む。
・区分化は、反復再構成の完了時に決定されたボクセル特性に基づく代わりに、反復再構成中に実行することができる。
・断層撮影再構成アルゴリズムの一つ以上の追加反復であって、各反復では、関心領域の成分の一つ以上の推定材質特性を更新する。
【0205】
一次X線および散乱を分離すると、機能撮影は改善する。
【0206】
(材質分離と撮影)
(干渉)
一つの構成では、干渉計を、散乱除去の有無に関係無く使用する。これにより、吸収、暗視野、および/または位相コントラスト画像の2D画像をすべて取得できる。このような画像を、3D干渉図形を作成するために使用する。
【0207】
干渉計は、下流に特定の距離で干渉縞を導入する位相格子を通してX線を放出することによって動作する。対象がビームの経路に置かれると、対象は吸収、屈折、および小角散乱を介して観測された干渉パターンを変える。これらの信号が検出器によって読み取られると、対象の特性およびその成分をアルゴリズムで決定できる。一例では、広い視野を得るためにタルボット・ラウ干渉法を使用する。タルボット・ラウ干渉法では、ビームスプリッタ格子(G1)を、X線源(S)および検出器(D)の間のビーム経路に配置する。部分的なタルボット効果により、ビームスプリッタ格子の周期構造を示す強度分布(I)が、当該格子の後ろの特定の距離で発生する。物体(O)がビームスプリッタ格子の前に配置されている場合、当該物体の吸収、散乱、および屈折特性により、強度分布が変化する。部分タルボット効果には、空間的にコヒーレントな放射が必要である。この要件を満たすために、焦点地点が十分に小さいマイクロフォーカスX線管を使用できる。あるいは、スリットマスク(G0)を従来のX線管の焦点地点の前に配置することもできる。当該マスクは、X線ビームの特定の部分を吸収し、それによって空間的にコヒーレントなスリット光源を作成する。これらのスリット光源はそれぞれ、ビームスプリッタ格子の自己像を生成する。このラウ効果を利用することにより、これらの自己像が鮮明な強度分布に重畳することを保証する。一般に、これらの干渉縞は小さすぎて、従来のX線検出器では解像できない。この課題を克服するために、干渉縞と同一周期の吸収アナライザー回折格子(G2)をこれらの縞の平面に配置する。このアナライザー格子を使用して、格子バーに垂直な平面内で段階的にシフトすることにより、周期的な強度分布をサンプリングする。
【0208】
コヒーレントなX線ビームを生成するために、干渉計は、例えば、画素化されたX線源またはコヒーレント源格子を使用する。別の例では、干渉計は、MEMベース、結晶ベース、または音響変調結晶格子を使用する回折格子を有する。
【0209】
(3D撮影)
定義された寸法を有する対象の高解像度3D撮影は、以下の手順を有する。
【0210】
較正は上記の通りである。
【0211】
一次X線および散乱分離ならびに/又は機能撮影の例は、米国仮特許出願第62/620158号、第62/628370号、および第62/628351号に記載され、上記で説明したように、二および多エネルギー撮影である。
【0212】
X線放出場所は、対象に対して検出器アセンブリの平面に平行なXY平面内を第二の位置に移動する。X線放出位置間の移動距離は、次のように設定する。すなわち、後続の各画像が対象の関心領域の投影画像を含み、その場所は、以前の画像とは、関心領域の検出画像の外縁が検出器アセンブリ上の画素の一行だけ、かつ移動方向の軸に沿って拡張されることにより異なる、ように設定する。各X線放出場所でX線測定を繰り返す。その場所は、一画素の一行未満、または一行以上だけシフトすることもできる。
【0213】
対象または対象における関心領域の形状および寸法の決定をする。そのような情報が事前に決定されており、かつ計算装置に格納されている場合、この手順を省略する。
【0214】
X線平面に垂直なZ軸における厚さに基づいて、完全な3D画像を生成するために必要なX線放出場所の画素幅の合計数Pを決定する。ここで、P=厚さ/画素ピッチ(またはz軸に必要な解像度)=n2+4nである。そのような情報が事前に決定されている場合は、この手順を省略する。
【0215】
√(n2+4n)に等しいかまたはそれより少ないX軸またはY軸上の座標によって制限される移動領域内の放出位置で、X線放出位置を第一の位置に移動してX線測定を行う動作をXY平面内で少なくともP回繰り返す。4nがPと比較して十分に小さい場合、p-4nの第一の位置は、3D画像再構成に十分である。新しいX線放出位置に導入された未知数を解像するために、二番目の位置をスキャンする。これは、X線放出位置は、隣接する第一の位置よりも隣接する第二の位置に近い距離にあるが、第一の位置と同じ領域を移動する場合である。
画素化したX線源を用いたX線の場合、X線源を移動するまたは物理的にX線放出位置を移動する代わりに、画像を撮影するたびに異なる画素のX線源を使用することに留意されたい。
【0216】
X線測定を上記の通り組み合わせて、m×n×p個の線形方程式系における関心領域に対するZ軸の未知の画素を解き、決定する。前述の第一の場所以外の全てのX線放出場所から作成された新しい未知の画素について解き、決定する。
【0217】
計算装置により、解いた未知の画素値を単に代入して先の手順に基づく関心領域の3D画像を導出することを含む、従来のコンピュータ断層撮影画像化アルゴリズムを使用する。当該計算装置により、対象の関心領域に対する様々な解像度の2D画像の多軸表現を多次元表現と組み合わせた両方を提供する。
【0218】
X線放出場所は、5mm×5mm未満、つまり4mm×4mm、3mm×3mm、2mm×2mm、または1mm×1mmの平面空間内を移動して、20cm×20cm×20cmの胸部画像について100μm解像度の完全な3D画像を導出することができる。これにより、3D画像を取得するために必要な測定速度が大幅に向上し、かつ必要な放射線量が大幅に減少する。その結果、患者の安全性および快適性が劇的に向上する。
【0219】
本開示には、20cm×20cm×20cmの対象のX線測定について、完全な3D画像を導出するために、100μmの解像度の1150未満の画像を使用する、またはある場合には1000の画像を使用し、ある場合には、散乱は一次X線信号の10%もしくは5%もしくは1%未満となる、実施形態が含まれる。100nmまたは10nmなどのより高い解像度では、比例して、測定するX線の数は増加し、たとえば、100万画像となる。しかし、10mm×10mm×10mmのサンプルの場合、100nmの解像度では、100000回の測定、つまりXY平面でのX線放出場所の30μm×30μmの移動により、完全な3D画像が得られる。
【0220】
また、本開示の一態様は、例えば、25cm×25cm×25cmなどの大きな対象を、5mmもしくは場合によってはさらに小さい、たとえば1mmなど、のxおよびy方向の小さな移動で、撮影することである。対象に対するX線放出場所の相対移動を、必要な解像度および達成可能な解像度に応じて、解像度もしくは隣接するX線放出場所間の距離が100μm、または0.1umである2次元平面で実行する。ここで、達成可能な解像度とは、検出器ハードウェアの画素ピッチによって定義される。最小数の2D画像を取得して完全な3D撮影を実現するには、元の位置から最も遠いX線放出位置は、5度未満、もしくは4度、もしくは2度、または1.5度未満の可能性がある。500umなどの低解像度測定の場合、厚さまたは深さが25cmの対象の場合、最も遠いX線放出位置は元の位置から7.5cmになる可能性があり、100umや0.1umなどの高解像度に対してより、3D画像の再構成を完成するために撮影される画像の数は大幅に少なくなる。
【0221】
本開示では、たとえば、0.01nmまたは0.1nmなどの1ナノメートル以下の範囲における対象の測定およびそれによる3D画像構築が可能になる。たとえば、寸法が10μm×10μm×10μmで、厚さが10μmの対象の場合、X線顕微鏡を使用すると、解像度は1ナノメートル以下の範囲になる。X線顕微鏡は、
図31(35)に示すように、コンデンサーレンズm-1、開口m-2、対物レンズm-4、およびX線検出器アセンブリm-5を持つ。m-5は、例えば、X線検出器もしくはフォトダイオードアレイまたは光子計数器、格子などのエネルギー分散型X線光学系を含む分光計、および/あるいは空間感受性検出器であり得る。場合によっては、X線信号を光学的な光に変換するシンチレータは、信号を測定するために以下を利用できる。すなわち、カメラセンサー、光子感受性カメラ、またはPMT、PMTアレイである。対象を、開口部の直後に配置し得る。電子(または陽電子)格納リングへの挿入装置であるアンジュレーターから放出されたX線は、単色化され、m-7、ゾーンプレートの可能性があるコンデンサーm-1によって対象m-3に集束する。これにより、対物レンズは信号を検出器m-5に拡大する。対象をラスタースキャンし、透過強度をX線検出器m-5によって監視する。最も隣接するX線放出位置間の距離は、アプリケーションでの必要性に応じて、0.01nmから100nmまで小さくできる。コンデンサーレンズm-1は、二つの垂直な方向を向いたレンズである多層ラウエレンズ(MLL)と呼ばれる特殊なX線光学系にすることもできる。これらのレンズは、ナノメートルの厚さの二つの異なる材質の交互の層で構成される。
【0222】
MLLを用いると、X線顕微鏡の解像度は1nmに達することができる。実際には、本開示では、X線顕微鏡の限界はX線コンデンサー光学系であり、本開示では、理論的にz軸に沿った分解能がX線波長の回折限界となるようにすることが可能である。しかし、現在の制限は、0.01nm程度の小さな地点にX線を集束するためのX線光学系である。
【0223】
コリメータは、対象への放射線を低減するために放射の領域を選択するように使用する可能性がある。又は代替的に、陽極ターゲットを変調及び回転して、陽極ターゲット上の領域をX線発生のために選択する可能性がある。別の構成では、電子ビーム放出源について、電子放出部を選択的に活性化するように変更し、X線放射を選択した領域でのみ生成するようにできる。たとえば、電界放出器ベースのX線源では、電界放出器の選択された領域のみが活性化する。たとえば、ナノチューブまたはナノワイヤなどの電界放出材は、200要素がアプリケーションに必要なX線を生成するのに十分な電子電流を生成するために必要な場合、ナノチューブまたはナノワイヤなどの一つ以上の電界放出器要素で一つの電界放出部を形成してよい。これはまた、計算装置を含むことができ、互いに独立して起動することができる。例えば、各電界放出部は、
図24、C7に示すように、同様の数の電界放出要素を有してよい。しかしながら、他の構成では、各電界放出領域は、残りの電界放出領域とは異なる数の電界放出要素を有する可能性がある。
【0224】
各電界放出部を作動させるための機構は、当業者に知られているものと同一または同様であり得る。コンピュータプロセッサは、どの領域をいつ活性化するかを決定するであろう。二つ以上の独立した電界放出領域の活性化を異なる時間に多重化することも、本開示の一部である。
【0225】
(多次元または3D画像)
本開示の態様は、また、既述の3D撮影方法を使用した、関心領域における二つ以上の対象の多次元撮影のため、二つ以上のX線放出場所または二つ以上のX線源を含むことである。各X線源または放出場所は、それぞれの対象の関心領域の別個の経路を照射する。このような撮影を同期させることができる。選択領域の多次元撮影は、異なるX線源またはX線放出場所で同時に実行できるが、互いに同期していなくてよい。これは、各X線放出場所を移動させて指定対象の異なる投影経路を照射するか、または所定の放出場所の異なるX線放出場所を次の照射のためにオンにすることを意味する。その結果、関心領域内の異なる対象の別々の2D画像を、同期して同時にもしくは非同期で、またはアプリケーションの必要に応じて異なる時間に取得する。
【0226】
多次元X線撮影測定および再構成の上記プロセスの代替として、3D画像取得および生成の別の実施形態では、スキャンビームデジタルX線(SBDX)に基づく。SBDXは、大面積透過型タングステンターゲットに入射する電磁的スキャン電子ビームを使用する。電子ビームは、1/15秒ごとに2Dアレイの光源焦点位置でラスタースキャンされる。多孔型コリメータは、2D検出器に収束する一連の狭い重なり合うX線ビームを定義する。狭いビーム投影間の幾何学的関係は、SBDXコリメータの正確で厳密な形状および固定された検出器の位置によって制約される。典型的なSBDXシステムの形状は、光源検出器距離(SDD)=1500mm、ソース軸距離(SAD)=450mm、焦点地点位置=71×71、焦点地点ピッチ=2.3×2.3mm、原検出器配列=320×160、原検出器要素ピッチ=0.33mm、検出器ビンモード=2×2である。
【0227】
SBDXは、逆ジオメトリビームスキャンの使用による固有の断層撮影能力を有する。従来の透視に類似した生映像表示は、GPUベースのリアルタイム画像再構成機能を使用して生成される。表示される各2D画像フレームを、二段階の再構成手順によって生成する。最初に、移動加算のデジタル断層撮影を実行して、たとえば5mm平面間隔の、たとえば32の単一平面画像のスタックを生成する。断層撮影画像の当該スタックの画素中心は、スタック内の固定画素位置(たとえば、行100、列100)が検出器中心からのX線に対応するように定義する。次に、勾配フィルタリング手順を各単一平面画像に適用して、シャープネスおよびコントラストの高い局所領域を識別する。それから、各画素位置について、最高のコントラストおよびシャープネスを備えた単一平面の画像から画素値を選択することにより、最終的な2D「合成」画像を形成する。断層撮影画素中心の形状および合成手順により、最終的な合成画像は、対象体積内の焦点の合った物体の逆「仮想」コーンビーム投影として見ることができる。仮想SBDX投影は、検出器の中心から始まり、光源面に落ちる。光源平面における仮想検出器要素のピッチは、例えば、設定された形状に基づくと、0.23mmである。
【0228】
あるいは、様々な3Dコンピュータ断層撮影構成および方法を利用することができる。これらには、たとえば、電動X線源を使用して重要な角度を拡げ、1D、2D、3Dもしくは6D空間内を線形に移動すること、画素化されたX線源、または上記以外の3D再構成の方法を使用することが含まれる。これらはすべて、上記と同様の派生もしくは同一の一次X線および散乱分離法と組み合わせて、必要な解像度および定量的なX線断層撮影を散乱および一次X線の分離によって実現し、一次X線信号の10%未満もしくは5%未満または1%未満の散乱を実現する。
【0229】
多次元X線撮影法を含むシステムにおいて、例えば、低散乱サンプルまたは小動物において、散乱が一次X線と比較して小さい場合、多次元画像の構築を、一次X線および散乱を分離する手順を含むこと無く行うことができる。
【0230】
本開示の一態様は、手順を含む方法の実施形態を含むことである。
【0231】
未知のボクセルの単位としての一つ以上の画素もしくは複数画素の領域を用いて、上記のように、低解像度3Dまたは2D映像を導出する。上記で導出した一つ以上の画像に基づいて、より高い解像度、たとえば単一の画素と同じくらい高い解像度で撮影する対象領域を選択する。より高い解像度は、可視光、光学検出器をX線シンチレータの下流で使用し、X線を可視光に変換し、可視光、光学検出器もしくは可視光フォトダイオードまたはフォトダイオードアレイによって取り込む方法にも適用できる。この場合、画素サイズの解像度は、カメラもしくは可視光検出器またはフォトダイオードの解像度になる。
【0232】
高解像度画像は上記のように導出することができ、対象の低解像度画像は当該対象を追跡するための上記方法を使用して導出することができる。低解像度とは、一画素ではなく、二画素または数画素の測定単位で定義され得る。たとえば、20cm厚の対象の場合、5画素の解像度および各画素100μmの画素ピッチで、各測定単位は5×100μm=500μmとなる。これにより、20cm/500μm=400の未知の単位または400の位置を解像する必要がある。したがって、X線放出場所の20単位×20単位の領域、または<4mm×4mmの領域のみ、X線放出場所をXY平面内でスキャンする必要がある。
【0233】
医学的用途には、心血管異常の検出、障害および他の筋骨格損傷の検出、神経疾患の診断の支援、歯科、癌のスクリーニング、胸部合併症および状態の診断、外科的および手順ガイダンスならびに生検ガイダンス、治療管理および監視が含まれるが、これらに限定されない。産業用アプリケーションには、X線検査および識別、セキュリティ、ならびに環境問題が含まれるが、これらに限定されない。
【0234】
本開示の一態様には、2Dおよび多次元ならびに3Dにおいて、ミリ秒以上の時間マーカーおよび動的イベントの検出が可能になるという事実により、既存のハードウェア構成に基づく以下の方法を含めることがある。
・時刻:2Dもしくは3D、または多次元で撮影した各画像に時刻スタンプを付ける。たとえば、DICOMラベルを添付するか、または時刻ラベルを追加するなどである。
・流体力学、流れの方向、6Dでの動的な動き:X線測定高感度マーカー、ナノ粒子標識マーカー、または一つ以上の段階で投与するマイクロバブルなどの造影剤を使用する。投与は、例えば、経口摂取、または注射もしくは吸入、または生体内造影剤の摂取方法に精通している者に知られている手段によるものがあり得る。これらの方法は、例えば、血流、マイクロ流体工学もしくはチップ上実験室の液体の流れ、インプラントもしくは外科用ツールもしくは生検プローブなどの部品の追跡、または身体の領域における疾患マーカーを追跡するためである。3D画像、多次元画像、またはゲートX線測定は、関心のある一つ以上の時間間隔で個別の時間に行われ、マーカーは、多次元画像もしくは2D画像によって、または関心領域でのスペクトルまたは複数エネルギーX線分解を使用して配置ができる。これは、追跡対象の成分が、X線測定でバックグラウンドと区別できる一つ以上の領域を含む場合に有用である。たとえば、当該成分のそのような領域が、バックグラウンドの材質とは原子zが大きく異なる場合などである。
・X線およびその様式が共有する一つ以上の造影剤、一つ以上の空間マーカーもしくは解剖学的マーカーの識別および/または位置特定、または一つ以上の材質の時間的または空間的両方での位置特定による、光学分光法、内視鏡、光断層撮影、超音波、電気生理学、MRIもしくはSPECT、またはPETもしくは他のX線ベース測定など、他の測定様式との共同設置:
いくつかの構成におけるそのような装置には、カテーテルおよびガイドワイヤーなどの腔内プローブがある。本開示のX線撮影は、そのようなプローブおよび装置の場所を識別および誘導する方法について、材質分解法を使用することによって、または指定されたX線エネルギーレベルで見えるように設計された一つ以上の領域を有するプローブを使用することによって、その方法を提供する。異なる化学マーカーまたは分子マーカーを使用する事象において、X線マーカーまたは造影剤が他の様式で使用するものと異なる場合、X線造影剤は、他の様式の造影剤と結合するか、または空間的に他の様式の造影剤と関係する可能性がある。
【0235】
心臓や腎臓などの組織の薬品など化学に基づく摂動または超音波もしくはレーザーもしくはRF切除などでの無線周波数手段などの電磁波のエネルギー摂動、または毛細血管もしくは他の組織のさまざまな超音波摂動を使用する、関心領域内の成分の3D撮影およびX線分析、組織組成における切除もしくは影響を受けた領域の変化は、エネルギー摂動中に異なるX線測定値を与える可能性がある。RFなどのエネルギーを送達する光学プローブもしくは超音波プローブ装置またはカテーテルを使用することができる。そのようなプローブは、バックグラウンドとは異なる材質組成の領域を持つ可能性があり、その結果、様々なX線が測定される。さらに、材質分解法を含む2D機能撮影および/または3D機能撮影法を使用して、そのような変化を特定し、場所を特定することができる。摂動の各段階における変化に関連するマーカーのデータベースを事前に確立し、摂動の段階の診断および識別に役立てる参照とすることができる。
【0236】
画像または画像の組の識別:たとえば、各画像には、少なくとも対象もしくは関心領域の名前および/もしくは説明のラベルを付し、または少なくとも一意の識別番号もしくはバイナリ識別番号、あるいは前述のすべてのID情報のラベルを付する。
【0237】
DICOMラベルまたは各撮影プロセスまたは各撮影セッションまたは各研究もしくは治療もしくは診断もしくは監視もしくは治療計画もしくは研究プロジェクトもしくは追跡期間に対する一意の識別子に基づいて、対象ごとに撮影した画像の番号を記録する。
【0238】
コンピュータ、X線ハードウェアおよびソフトウェア、メモリ記憶装置部を含む各X線システムに対して撮影および処理した画像の記録および集計を行う。メモリ記憶装置部は、一つ以上の書類を格納し、それぞれは、システムが使用されてから一日、一か月、一年などの時間枠内で、撮影した画像の数に関する報告または最新記録を有する。当該報告もしくは書類へのアクセスは、コンピュータおよび関連するX線撮影システムもしくは電子メモリ記憶装置部に、インターネットもしくはイントラネットを介して遠隔から物理的にアクセスするか、たとえば、デジタル情報を保存および処理できるメモリスティックもしくはセキュリティキーなどの直接物理アクセスのいずれかによって行うことができ、コンピュータは、当該書類に基づく報告を生成し、当該報告について、電子的に保存し、定期的に電子メールもしくはハードコピーまたはその他の電子的手段、たとえば、サーバー上に保存し、パスワードで保護し、所定の受信者はX線システムの場所および/または遠隔場所のいずれかからパスワードを使用してログインし前述の記録にアクセスできるなどの手段を介して、所定の受信者に自動的に送信するようにプログラムができる。
【0239】
上記は、最小の各隣接取得画像間の空間ばらつきおよび元の結像位置からの総偏差、最小の画像取得時間、最小の放射および複雑さを備えたX線撮影ベースCT(3MR-CT)を説明し、その変形であるスペクトルまたは多エネルギー版は、3MR-SPECTRAL CTとして説明し、さらにその変形である機能撮影版は、3MR-F-CTとして説明する。
【0240】
以上、3D撮影方法について示し、説明した。本開示の範囲から逸脱することなく本開示に特定の変更を加えることができるので、前述の明細書に記載し、添付図面に示したすべての事柄は、例示であり、限定する意味で解釈されないことを意図している。
【図 】
【図 】