(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-31
(45)【発行日】2024-08-08
(54)【発明の名称】敷地内工事時のガス管損傷防止方法、及びガス管損傷防止ユニット
(51)【国際特許分類】
F16L 55/10 20060101AFI20240801BHJP
F16L 1/028 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
F16L55/10
F16L1/028 L
(21)【出願番号】P 2021006644
(22)【出願日】2021-01-19
【審査請求日】2023-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】522068452
【氏名又は名称】東邦ガスネットワーク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】北野 哲司
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 良裕
(72)【発明者】
【氏名】船戸 祐斗
【審査官】広瀬 雅治
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-169883(JP,A)
【文献】特開2008-248946(JP,A)
【文献】特開2007-192321(JP,A)
【文献】実開昭59-096462(JP,U)
【文献】特開平05-272692(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0097480(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 55/10
F16L 1/028
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス導管と連通して敷地内に埋設されていたガス供給管が不用となり、該ガス供給管のうち、一部が、予め敷地内で切断して撤去処分された後、敷地内で行う工事の実施中、ガス漏れのない閉塞処理を施した状態で、敷地内に残されているガス供給管残部の損傷を防ぐ敷地内工事時のガス管損傷防止方法において、
前記ガス供給管残部は、その径の中心に位置する軸線が距離Lで、前記ガス導管との境界から延びている樹脂製の管であること、
棒状の管保護具を複数備え、前記管保護具は、
前記ガス供給管残部の管の内壁との間で、許容範囲内にある所定の隙間を確保できる外径で形成した外周基部と、互いに接触した配置状態で隣り合う前記管保護具同士の間で、前記ガス供給管残部の
前記内壁との間に管内空間をなす形状に形成された外周縁部を、有すること、
複数の前記管保護具のうち、最初に前記ガス供給管残部の管内に挿入する先頭の前記管保護具には、前記ガス供給管残部の前記内壁との間を気密にするシール部材が、前記外周基部に設けられていること、
前記管保護具は、その軸心を前記ガス供給管残部の前記軸線側に向けた姿勢で、前記ガス供給管残部の管内に挿通可能であること、
前記ガス供給管残部を開
放した後、前記ガス供給管残部の管内に、前記軸線の距離Lに対応した数の前記管保護具を、
前記シール部材により、前記ガス供給管残部の前記内壁との間を気密にして直列状に挿入し、収容すること、
前記ガス供給管残部に収容された状態では、隣り合う前記管保護具同士は、相対的に移動可能な状態になっていること、
前記管保護具が収容された状態にある前記ガス供給管残部に、閉塞処理を施すこと、
を特徴とする敷地内工事時のガス管損傷防止方法。
【請求項2】
ガス導管と連通して敷地内に埋設されていたガス供給管が不用となり、該ガス供給管のうち、一部が、予め敷地内で切断して撤去処分された後、敷地内で行う工事の実施中、ガス漏れのない閉塞処理を施した状態で、敷地内に残されているガス供給管残部の損傷を防ぐ敷地内工事時のガス管損傷防止方法において、
前記ガス供給管残部は、その径の中心に位置する軸線が距離Lで、前記ガス導管との境界から延びている樹脂製の管であること、
棒状の管保護具を複数備え、
前記ガス供給管残部の管の内壁との間で、許容範囲内にある所定の隙間を確保できる外径で形成した外周基部と、互いに接触した配置状態で隣り合う前記管保護具同士の間で、前記ガス供給管残部の
前記内壁との間に管内空間をなす形状に形成された外周縁部を、有すること、
複数の前記管保護具のうち、最初に前記ガス供給管残部の管内に挿入する先頭の前記管保護具には、前記ガス供給管残部の前記内壁との間を気密にするシール部材が、前記外周基部に設けられていること、
前記管保護具は、その軸心を前記ガス供給管残部の前記軸線側に向けた姿勢で、前記ガス供給管残部の管内に挿通可能であること、
前記ガス供給管残部を開
放した後、前記ガス供給管残部の管内に、前記軸線の距離Lに対応した数の前記管保護具を、
前記シール部材により、前記ガス供給管残部の前記内壁との間を気密にして直列状に挿入し、収容すること、
前記管保護具が収容された状態にある前記ガス供給管残部に、閉塞処理を施すこと、
前記管保護具は、隣り合う前記管保護具と連結可能な接続手段を有し、
前記ガス供給管残部を開放した後、前記ガス供給管残部に収容されている全ての前記管保護具を、前記接続手段により、一体に連結させた状態で、前記ガス供給管残部から引き抜いて回収すること、
前記管保護具の回収中、前記全ての管保護具のうち、残り1つとなった未回収の前記管保護具により、前記ガス供給管残部の前記内壁との間が気密に保たれたまま、前記ガス供給管残部に閉塞処理を施すこと、
を特徴とする敷地内工事時のガス管損傷防止方法。
【請求項3】
請求項
2に記載する敷地内工事時のガス管損傷防止方法において、
前記ガス供給管残部に収容された状態では、隣り合う前記管保護具同士は、相対的に移動可能な状態になっていること、
を特徴とする敷地内工事時のガス管損傷防止方法。
【請求項4】
ガス導管と連通して敷地内に埋設されていたガス供給管が不用となり、該ガス供給管のうち、一部が、予め敷地内で切断して撤去処分された後、ガス漏れのない閉塞処理を施した状態で、敷地内に残されているガス供給管残部の管内に収容して用いられ、
請求項1または請求項2に記載する敷地内工事時のガス管損傷防止方法を行うのに必要なガス管損傷防止ユニットであり、
当該ガス管損傷防止ユニットは、複数の管保護具からなり、前記管保護具は、棒状で、
前記ガス供給管残部の前記内壁との間で、許容範囲内にある所定の隙間を確保できる外径で形成した前記外周基部と、互いに接触した配置状態で隣り合う前記管保護具同士の間で、前記ガス供給管残部の内壁との間に管内空間をなす形状に形成された
前記外周縁部と、前記ガス供給管残部の前記内壁との間を気密にする
前記シール部材を有すること、
前記シール部材は、複数の前記管保護具のうち、前記ガス供給管残部の管内に挿通されるときに、最初の挿入対象である先頭の前記管保護具の前記外周基部に設けられていること、
前記管保護具は、その軸心を前記ガス供給管残部の軸線側に向けた姿勢で、前記ガス供給管残部の管内に挿通可能であること、
を特徴とするガス管損傷防止ユニット。
【請求項5】
請求項4に記載するガス管損傷防止ユニットにおいて、
前記管保護具は、隣り合う前記管保護具と、一体化して連結可能な接続手段を有すること、
を特徴とするガス管損傷防止ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス導管と連通して敷地内に埋設されていたガス供給管の一部を、建物の解体等に伴い、官民両区域の境界付近でガス導管側と切り離して撤去した後、ガス漏れ処理を施した状態で、敷地内に残されているガス供給管残部に、敷地内の工事により損傷を及ぼすのを防ぐ敷地内工事時のガス管損傷防止方法、及びガス管損傷防止ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
周知の通り、ガス供給管は、民有区域下の敷地内に埋設され、道路や歩道等の公有区域下に埋設されているガス導管と連通して接続されており、ガス導管からガス供給管を通じて、都市ガスが、敷地内の建物に供給されている。建物が解体される場合には、ガス事業者は、解体工事前に、公有区域との境界付近で、敷地内のガス供給管を切断し、切断箇所を挟み、ガス導管側の管を閉塞させる処理を行った上で、切り離された建物側の管を撤去する。撤去後、埋設されていたガス供給管残部は、敷地内の地面下に、公有区域との境界から、切断して閉塞された管端部まで延びた状態で残されている。ガス供給管残部の存在は、この管端部の場所に立てられた標示杭により、報知されている。
【0003】
標示杭が立てられ、ガス供給管残部が埋設されている状況下で、解体工事業者は、敷地内で重機を使用して、建物や外構等の解体作業を行う。このとき、解体工事業者の作業員は、標示杭に気付かず、あるいは先に実施した別の解体工事で標示杭を紛失しまった等の理由により、ガス供給管残部の存在を把握していないことがある。そのため、この作業員は、ガス供給管残部の場所にある土砂を掘り起こす際に、無意識に重機でガス供給管残部を引掛けて持上げてしまい、損傷させてしまうこともある。ガス供給管残部は、ガス導管と連通しているため、ガス供給管残部で管が損傷してしまうと、都市ガスが管内から漏洩してしまう虞がある。そこで、ガス供給管残部で管が損傷を受けても、ガス漏れを防ぐことができるとして、その技術の一例が、特許文献1に開示されている。
【0004】
特許文献1は、不使用供給管の撤去側管端から内面シール装置をガス導管の分岐取出し部に移動させ、内面シール装置により、シール部材を分岐取出し部の管壁に密着させると共に、撤去側管端からシール部材の手前に供給したシール樹脂を、管壁に密着させることで、不使用供給管を閉塞してガス漏れを防ぐ不使用供給管の非開削漏洩防止工法である。特許文献1では、シール樹脂を管壁に密着後、不使用供給管のうち、シール樹脂による密着部位と撤去側管端との間で、不用な管が切断される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1では、不使用供給管に対し、その撤去側管端からガス導管の分岐取出し部まで、内面シール装置を送り込み、シール部材を膨らませて分岐取出し部の管壁に密着させる作業のほか、撤去側管端からシール部材の手前に供給したシール樹脂を管壁に密着させる作業があるため、一連の作業工程が煩雑である。しかも、実際の現場には、不使用供給管(ガス供給管残部)は、地中で一直線状に埋設されている以外にも、高低差や管の湾曲を伴って敷設されている現場や、不規則な配管形状を伴って敷設されている現場等もあり、ガス供給管残部の敷設態様は、現場毎に異なり、様々である。そのため、作業員は、現場毎に、不規則で一様ではない敷設態様の不使用供給管に対し、煩雑な作業工程を実施しなければならず、作業を実施する上で、高度な技能を有した熟練作業員が必要となり、不使用供給管を、簡単に閉塞することができない。
【0007】
加えて、特許文献1の技術では、分岐取出し部の管壁に対し、密着していたシール部材が、地表温度や地中湿度等の影響や、伝播する振動による影響等、外部環境の影響を受けて経時的に緩んでしまい易く、より確実に管の閉塞ができていないために、ガス漏れを招来してしまう虞がある。
【0008】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、一方側でガス導管と連通すると共に、その他方側の開放端に閉塞処理を施して埋設されているガス供給管残部に対し、重機が、万が一接触した場合でも、ガス供給管残部からのガス漏れを、より確かに、かつ簡単に防ぐことができる敷地内工事時のガス管損傷防止方法、及びガス管損傷防止ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係る敷地内工事時のガス管損傷防止方法は、以下の構成を有する。
【0010】
(1)ガス導管と連通して敷地内に埋設されていたガス供給管が不用となり、該ガス供給管のうち、一部が、予め敷地内で切断して撤去処分された後、敷地内で行う工事の実施中、ガス漏れのない閉塞処理を施した状態で、敷地内に残されているガス供給管残部の損傷を防ぐ敷地内工事時のガス管損傷防止方法において、前記ガス供給管残部は、その径の中心に位置する軸線が距離Lで、前記ガス導管との境界から延びている樹脂製の管であること、棒状の管保護具を複数備え、前記管保護具は、その軸心を前記ガス供給管残部の前記軸線側に向けた姿勢で、前記ガス供給管残部の管内に挿通可能であると共に、互いに接触した配置状態で隣り合う前記管保護具同士の間で、前記ガス供給管残部の内壁との間に管内空間をなす形状に形成された外周縁部を、有すること、前記ガス供給管残部を開塞した後、前記ガス供給管残部の管内に、前記軸線の距離Lに対応した数の前記管保護具を、前記ガス供給管残部の前記内壁との間を気密にして直列状に挿入し、収容すること、前記管保護具が収容された状態にある前記ガス供給管残部に、閉塞処理を施すこと、を特徴とする。
(2)(1)に記載する敷地内工事時のガス管損傷防止方法において、前記ガス供給管残部に収容された状態では、隣り合う前記管保護具同士は、相対的に移動可能な状態になっていること、を特徴とする。
(3)(1)または(2)に記載する敷地内工事時のガス管損傷防止方法において、前記管保護具は、隣り合う前記管保護具と連結可能な接続手段を有し、前記ガス供給管残部を開塞した後、前記ガス供給管残部に収容されている全ての前記管保護具を、前記接続手段により、一体に連結させた状態で、前記ガス供給管残部から引き抜いて回収すること、前記管保護具の回収中、前記全ての管保護具のうち、残り1つとなった未回収の前記管保護具により、前記ガス供給管残部の前記内壁との間が気密に保たれたまま、前記ガス供給管残部に閉塞処理を施すこと、を特徴とする。
【0011】
また、上記目的を達成するために、本発明に係るガス管損傷防止ユニットは、以下の構成を有する。
【0012】
(4)ガス導管と連通して敷地内に埋設されていたガス供給管が不用となり、該ガス供給管のうち、一部が、予め敷地内で切断して撤去処分された後、ガス漏れのない閉塞処理を施した状態で、敷地内に残されているガス供給管残部の管内に収容して用いられるガス管損傷防止ユニットであり、当該ガス管損傷防止ユニットは、複数の管保護具からなり、前記管保護具は、棒状で、その軸心を前記ガス供給管残部の軸線側に向けた姿勢で、前記ガス供給管残部の管内に挿通可能であると共に、互いに接触した配置状態で隣り合う前記管保護具同士の間で、前記ガス供給管残部の内壁との間に管内空間をなす形状に形成された外周縁部と、前記ガス供給管残部の前記内壁との間を気密にするシール部材を有すること、を特徴とする。
(5)(4)に記載するガス管損傷防止ユニットにおいて、前記管保護具は、隣り合う前記管保護具と、一体化して連結可能な接続手段を有すること、を特徴とする。
【0013】
なお、本発明に係る敷地内工事時のガス管損傷防止方法、及びガス管損傷防止ユニットで、ガス導管とは、例えば、公共施設である道路や歩道等、いわゆる公有区域下に埋設されているガス本管や、このガス本管から分岐したガス支管であり、ガス事業者から供給する都市ガスを、需要者に向けて提供する側にある管を意味するものである。これに対し、ガス供給管とは、例えば、公有地である敷地内の公共施設を含め、民有地である敷地内の建物等、いわゆる民有区域下に埋設され、前述のガス支管と連通して接続されているガス管であり、ガス事業者よりガス支管を通じて提供される都市ガスを、消費するために、需要者で受給する側にある管を意味するものである。
【発明の効果】
【0014】
上記構成を有する本発明に係る敷地内工事時のガス管損傷防止方法、及びガス管損傷防止ユニットの作用・効果について説明する。
【0015】
(1)ガス導管と連通して敷地内に埋設されていたガス供給管が不用となり、該ガス供給管のうち、一部が、予め敷地内で切断して撤去処分された後、敷地内で行う工事の実施中、ガス漏れのない閉塞処理を施した状態で、敷地内に残されているガス供給管残部の損傷を防ぐ敷地内工事時のガス管損傷防止方法において、ガス供給管残部は、その径の中心に位置する軸線が距離Lで、ガス導管との境界から延びている樹脂製の管であること、棒状の管保護具を複数備え、管保護具は、その軸心をガス供給管残部の軸線側に向けた姿勢で、ガス供給管残部の管内に挿通可能であると共に、互いに接触した配置状態で隣り合う管保護具同士の間で、ガス供給管残部の内壁との間に管内空間をなす形状に形成された外周縁部を、有すること、ガス供給管残部を開塞した後、ガス供給管残部の管内に、軸線の距離Lに対応した数の管保護具を、ガス供給管残部の内壁との間を気密にして直列状に挿入し、収容すること、管保護具が収容された状態にあるガス供給管残部に、閉塞処理を施すこと、を特徴とする。
【0016】
この特徴により、敷地内で建物等の解体作業を実施している間、万が一、作業員が、誤って重機でガス供給管残部を引掛けて持上げてしまった場合でも、ガス供給管残部のうち、管内空間に位置する変形促進部が、撓み、屈曲等による変形を局所的に吸収するものの、大きな破断に至る蓋然性は低い。それ故に、作業員が、ガス供給管残部を持上げてしまった直後に、速やかにガス事業者に連絡を取れば、現場に駆け付けたガス事業者が、このような事態に対し、必要な措置を行うまでの間、変形したガス供給管残部でも、ガス漏れを一時的により確実に抑えることが可能であるため、ガス漏れに繋がる大事に至ることが、効果的に回避できるようになる。
【0017】
従って、本発明に係る敷地内工事時のガス管損傷防止方法によれば、一方側でガス導管と連通すると共に、その他方側の開放端に閉塞処理を施して埋設されているガス供給管残部に対し、重機が、万が一接触した場合でも、ガス供給管残部からのガス漏れを、より確かに、かつ簡単に防ぐことができる、という優れた効果を奏する。
【0018】
(2)に記載する敷地内工事時のガス管損傷防止方法において、ガス供給管残部に収容された状態では、隣り合う管保護具同士は、相対的に移動可能な状態になっていること、を特徴とする。
【0019】
この特徴により、管内に管保護具を収容したガス供給管残部で、重機の持上げに起因して生じた変形を局部的に吸収する変形促進部になり得るとして、その管内空間が、形成され易くなる。
【0020】
(3)に記載する敷地内工事時のガス管損傷防止方法において、管保護具は、隣り合う管保護具と連結可能な接続手段を有し、ガス供給管残部を開塞した後、ガス供給管残部に収容されている全ての管保護具を、接続手段により、一体に連結させた状態で、ガス供給管残部から引き抜いて回収すること、管保護具の回収中、全ての管保護具のうち、残り1つとなった未回収の管保護具により、ガス供給管残部の内壁との間が気密に保たれたまま、ガス供給管残部に閉塞処理を施すこと、を特徴とする。
【0021】
この特徴により、ガス導管を流通するガスが、ガス供給管残部から漏れることなく、全ての管保護具を回収でき、回収された全ての管保護具は、再利用により、別の現場に埋設したガス供給管残部にも、使用することができる。
【0022】
(4)ガス導管と連通して敷地内に埋設されていたガス供給管が不用となり、該ガス供給管のうち、一部が、予め敷地内で切断して撤去処分された後、ガス漏れのない閉塞処理を施した状態で、敷地内に残されているガス供給管残部の管内に収容して用いられるガス管損傷防止ユニットであり、当該ガス管損傷防止ユニットは、複数の管保護具からなり、管保護具は、棒状で、その軸心をガス供給管残部の軸線側に向けた姿勢で、ガス供給管残部の管内に挿通可能であると共に、互いに接触した配置状態で隣り合う管保護具同士の間で、ガス供給管残部の内壁との間に管内空間をなす形状に形成された外周縁部と、ガス供給管残部の内壁との間を気密にするシール部材を有すること、を特徴とする。
【0023】
この特徴により、本発明に係るガス管損傷防止ユニットをガス供給管残部の管内に収容しておくだけで、敷地内で建物等の解体作業を実施している間、万が一、作業員が、誤って重機でガス供給管残部を引掛けて持上げてしまった場合でも、ガス導管を流通するガスが、ガス供給管残部から漏れ出すのを、簡単に防止することができるようになる。
【0024】
従って、本発明に係る本発明に係るガス管損傷防止ユニットによれば、一方側でガス導管と連通すると共に、その他方側の開放端に閉塞処理を施して埋設されているガス供給管残部に対し、重機が、万が一接触した場合でも、ガス供給管残部からのガス漏れを、より確かに、かつ簡単に防ぐことができる、という優れた効果を奏する。
【0025】
(5)に記載するガス管損傷防止ユニットにおいて、管保護具は、隣り合う管保護具と、一体化して連結可能な接続手段を有すること、を特徴とする。
【0026】
この特徴により、ガス供給管残部に収容したガス管損傷防止ユニットを、管内から回収して、再利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本実施形態に係る敷地内工事時のガス管損傷防止方法の適用対象となるガス管の配管状況を説明する模式図であり、ガス管損傷防止ユニットを収容した状態のガス供給管残部を示す図である。
【
図2】実施形態に係るガス管損傷防止ユニットを示す模式図であり、(a)は第1管保護具を、(b)は第2管保護具を、それぞれ示す図である。
【
図3】本実施形態に係る敷地内工事時のガス管損傷防止方法に基づき、第1次ガス管工事時に、ガス管損傷防止ユニットをガス供給管残部に収容するユニット収容工程の第1工程図であり、閉塞処理を施した状態のガス供給管残部を示す図である。
【
図4】
図3に続く、第1次ガス管工事に関する第2工程図である。
【
図5】
図4に続く、第1次ガス管工事に関する第3工程図である。
【
図6】
図5に続く、第1次ガス管工事に関する第4工程図である。
【
図7】
図6に続く、第1次ガス管工事に関する第5工程図である。
【
図8】
図7に続く、第1次ガス管工事に関する第6工程図である。
【
図9】本実施形態に係る敷地内工事時のガス管損傷防止方法の作用を説明する模式図であり、閉塞キャップ寄りの場所でガス供給管残部を引掛けて持上げてしまった場合を示す図である。
【
図10】
図9と同じ模式図であり、官民境界M寄りの場所でガス供給管残部を引掛けて持上げてしまった場合を示す図である。
【
図11】本実施形態に係る敷地内工事時のガス管損傷防止方法に基づき、第2次ガス管工事時にガス管損傷防止ユニットをガス供給管残部から回収するユニット回収工程の第1工程図であり、第1次ガス管工事に関する第6工程図を再掲した図でもある。
【
図12】
図11に続く、第2次ガス管工事に関する第2工程図である。
【
図13】
図12に続く、第2次ガス管工事に関する第3工程図である。
【
図14】
図13に続く、第2次ガス管工事に関する第4工程図である。
【
図15】
図14に続く、第2次ガス管工事に関する第5工程図である。
【
図16】
図15に続く、第2次ガス管工事に関する第6工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明に係る敷地内工事時のガス管損傷防止方法、及びガス管損傷防止ユニットについて、実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。本実施形態では、一例として、民有区域下にある敷地内の建物を解体するにあたり、敷地内に敷設されていたガス供給管に対し、ガス導管からの都市ガスの供給を遮断する場合を挙げて、本発明に係る敷地内工事時のガス管損傷防止方法を説明する。
【0029】
図1は、本実施形態に係る敷地内工事時のガス管損傷防止方法の適用対象となるガス管の配管状況を説明する模式図であり、ガス管損傷防止ユニットを収容した状態のガス供給管残部を示す図である。
図1に示すように、公有区域下にある道路や歩道等の公共道路等71には、ガス本管31とガス支管32が、埋設されている。ガス本管31とガス支管32は、都市ガスを需要者に向けて提供するためのガス導管30となっている。ガス供給管40は、民有区域下にある敷地72内に埋設されている。ガス供給管40は、公有区域と民有区域との境界である官民境界Mの位置で、ガス本管31から分岐したガス支管32と連通して接続されている。ガス供給管40は、例えば、ある程度可撓性を有したポリエチレン(PE: polyethylene)等、ガス供給管をなす管として近年、主流となっている樹脂製の管である。都市ガスは、ガス導管30からガス供給管40を通じて、敷地72内の建物74に供給されている。
【0030】
<第1次ガス管工事の概要>
建物74を解体する場合、ガス事業者は、解体工事の実施前に、ガス支管32からガス供給管40への都市ガスの供給を遮断するため、なるべく官民境界M付近の敷地72内でガス供給管40を切断し、分離したガス支管32側の管を閉塞する第1次ガス管工事を行う。このとき、敷地72内で官民境界Mに近接した場所に、例えば、外構、植木、物置等の障害物75がある場合には、ガス供給管40は、障害物75を回避して、官民境界Mから離れた場所に位置する管切断箇所N1で切断され、ガス供給管一部41とガス供給管残部42とに分離される。ガス供給管一部41は、ガス供給管40のうち、管切断箇所N1から建物74側に延びる管である。ガス供給管残部42は、その径の中心に位置する軸線Pの距離L(0<L)で、官民境界Mから管切断箇所N1まで延びる管である。
【0031】
第1次ガス管工事では、ガス供給管残部42は、ガス支管32と連通して接続したまま、敷地72内に埋設されているため、都市ガスが漏れないよう、管切断箇所N1側の端部43(
図3参照)に、閉塞処理が施される。本実施形態に係る敷地内工事時のガス管損傷防止方法は、このような処理を行う段階にあるガス供給管残部42を対象に、適用される工法である。
【0032】
次に、本実施形態に係る敷地内工事時のガス管損傷防止方法について、詳細に説明する。本実施形態に係る敷地内工事時のガス管損傷防止方法は、本実施形態に係るガス管損傷防止ユニットを用いて実施されるため、先にガス管損傷防止ユニットについて、
図2を用いて説明した後、ガス管損傷防止方法の説明を行う。
【0033】
<管損傷防止ユニットについて>
図2は、実施形態に係るガス管損傷防止ユニットを示す模式図であり、(a)は第1管保護具を、(b)は第2管保護具を、それぞれ示す図である。
【0034】
図1及び
図2に示すように、ガス管損傷防止ユニット1は、敷地72に埋設されているガス供給管残部42の管内45Sに収容して用いられる道具である。ガス管損傷防止ユニット1は、断面を円板状、または円筒形状とした棒状の管保護具10を複数(本実施形態では、
図8等に例示した数は4本)、一列状に配置して使用される。管保護具10は、互いに接触した配置状態で隣り合う管保護具同士10,10の間で、ガス供給管残部42の内壁44との間に管内空間45Saをなす形状に形成された外周縁部14を有する。また、管保護具10は、隣り合う管保護具10と、一体化して連結可能な接続手段を有し、接続手段は、本実施形態では、雌ネジ部17と、一対をなす雄ネジ部16とのネジ締結である。
【0035】
具体的に説明する。管保護具10は、その軸心Kをガス供給管残部42の軸線P側に向けた姿勢で、ガス供給管残部42の管内45Sに挿通可能となっており、ガス供給管残部42の内壁44との間に、許容範囲内にある所定の隙間を確保できる外径で外周基部13を形成したロッドである。管保護具10は、例えば、ポリエチレン(PE: polyethylene)等、樹脂製である。管保護具10は、1本当たり、概ね250~500mmの範囲内の長さであり、好ましくは、300mm程度が最適な長さであると、数多くの実験を経て知得している。
【0036】
管保護具10は、
図2に示すように、ガス管損傷防止ユニット1の先頭として、最初にガス供給管残部42の管内45Sに挿入される第1管保護具11と、第1管保護具11に続いてガス管損傷防止ユニット1の末尾まで管内45Sに挿入される第2管保護具12との2種である。
【0037】
第1管保護具11は、
図2(a)に示すように、ガス供給管残部42の内壁44との間を気密にするシール部材15を、外周基部13に具備している。軸心K方向一端側(
図2(a)中、左側)である前方端側は、外周基部13のままとなっている。シール部材15は、ガス供給管残部42の内壁44との摺動に適す材質からなるOリング等である。なお、内壁44に対し、シール部材15の滑りを向上させるために、潤滑剤が、シール部材15に付されていても良い。また、第1管保護具11の軸心K方向他端側(
図2(a)中、右側)である後方端側は、外周縁部14となっており、外周縁部14は、外周基部13から遠ざかる側に向けて、R状の輪郭をなして徐々に径小化しながら窄む形状に、形成されている。この外周縁部14には、雌ネジ部17が螺設されている。
【0038】
第2管保護具12は、
図2(b)に示すように、外周基部13を挟む軸心K方向両側に、外周縁部14を有している。外周縁部14は、外周基部13から遠ざかる側に向けて、R状の輪郭をなして徐々に径小化しながら窄む形状に、形成されている。軸心K方向一端側(
図2(b)中、左側)にある外周縁部14に、雄ネジ部16が螺設されていると共に、軸心K方向他端側(
図2(b)中、右側)にある外周縁部14には、雌ネジ部17が螺設されている。
【0039】
<敷地内工事時のガス管損傷防止方法の概要>
次に、本実施形態に係る敷地内工事時のガス管損傷防止方法について、説明する。本実施形態に係る敷地内工事時のガス管損傷防止方法は、第1次ガス管工事時に、ガス供給管残部42にガス管損傷防止ユニット1を収容するユニット収容工程と、第2次ガス管工事時に、ガス供給管残部42に収容されているガス管損傷防止ユニット1を回収するユニット回収工程と、を有する。
【0040】
<ユニット収容工程について>
ユニット収容工程は、第1次ガス管工事時に、ガス供給管残部42を開塞した後、ガス供給管残部42の管内45Sに、軸線Pの距離Lに対応した数(本実施形態では、4つ)の管保護具10を、ガス供給管残部42の内壁44との間を気密にして直列状に挿入し、収容する。
【0041】
図3は、本実施形態に係る敷地内工事時のガス管損傷防止方法に基づき、第1次ガス管工事時に、ガス管損傷防止ユニットをガス供給管残部に収容するユニット収容工程の第1工程図であり、閉塞処理を施した状態のガス供給管残部を示す図である。その第2工程図を
図4に、第3工程図を
図5に、第4工程図を
図6に、第5工程図を
図7に、及び第6工程図を
図8に、それぞれ示す。
【0042】
具体的に説明する。前述したように、第1次ガス管工事では、ガス供給管40を切断して、ガス供給管一部41とガス供給管残部42に分離する際に、都市ガスがガス供給管残部42の管内45Sから漏れないよう、
図3に示すように、端部43にスクイズオフ48を施すことにより、ガス供給管残部42を一時的に閉塞する。
【0043】
ユニット収容工程の実施にあたり、
図4に示すように、ガス管損傷防止ユニット1の先頭である第1管保護具11の前方端側を、ガス供給管残部42の端部43からスクイズオフ48の手前まで挿入する。このとき、第1管保護具11のシール部材15は、ガス供給管残部42の内壁44と密着させる。シール部材15が内壁44と密着できた状態で、スクイズオフ48による閉塞処理を解除する。
【0044】
都市ガスは、ガス供給管残部42の管内45Sに存在するが、都市ガスの端部43への流通は、シール部材15により、遮断できているため、
図5に示すように、スクイズオフ48による閉塞が完全に解除されても、管内45Sを流通する都市ガスは、端部43を通じて外部に漏れ出ることはない。
【0045】
次に、
図6に示すように、第1管保護具11に続き、1つ目の第2管保護具12を、雄ネジ部16のある前方端側からガス供給管残部42の端部43に挿入する。この後、1つ目の第2管保護具12に続いて、2つ目の第2管保護具12を、雄ネジ部16のある前方端側からガス供給管残部42の端部43に挿入する。同様に、2つ目の第2管保護具12に続いて、3つ目の第2管保護具12を、雄ネジ部16のある前方端側からガス供給管残部42の端部43に挿入する。
【0046】
これにより、
図7に示すように、ガス管損傷防止ユニット1として、全部で4つの管保護具10(第1管保護具11を1つ、第2管保護具12を3つ)が、ガス供給管残部42の管内45Sに、挿入されて直列状の配置形態で収容される。ガス管損傷防止ユニット1の先頭である第1管保護具11は、ガス供給管残部42の管内45Sのうち、官民境界Mと近接する位置まで挿入される。このとき、ガス管損傷防止ユニット1がガス供給管残部42に収容された状態では、隣り合う管保護具同士10,10(第1管保護具11と第2管保護具12、双方とも第2管保護具12)は、雄ネジ部16と雌ネジ部17で連結されておらず、互いに相対的に移動可能な状態となっている。
【0047】
次いで、
図8に示すように、ガス管損傷防止ユニット1が収容された状態にあるガス供給管残部42の端部43を、融着により閉塞キャップ49で閉塞する。なお、後述するユニット回収工程で、閉塞キャップ49を取り除く際に、端部43を切断する場合もある。この場合、ガス管損傷防止ユニット1の末尾となる第2管保護具12と閉塞キャップ49との間に、切断部位のスペース分を確保できるよう、末尾の第2管保護具12を、その損傷を回避する上で、閉塞キャップ49から少し離れた位置に配置しておくことが好ましい。
【0048】
次に、
図1に示すように、敷地72内の管切断箇所N1のある場所に、ガス供給管残部42の存在を報知する標示杭73を立てる。かくして、建物74等の解体工事の事前作業として、本実施形態に係る敷地内工事時のガス管損傷防止方法で、ユニット収容工程を伴った第1次ガス管工事は、終了する。
【0049】
ここで、第1次ガス管工事を終えた敷地72内で、解体工事業者が、重機を使用して、建物74等の解体工事を行っている間、ガス供給管残部42にユニット収容工程を実施したことにより、ガス供給管残部42に及ぼす影響について、
図9及び
図10を用いて説明する。
図9及び
図10は、本実施形態に係る敷地内工事時のガス管損傷防止方法の作用を説明する模式図である。
【0050】
解体工事業者が、第1次ガス管工事を終えた敷地72内で、建物74等の解体作業を実施している間、作業員は、ガス供給管残部42の場所にある土砂を掘り起こす際に、標示杭73の存在に気付かず、または標示杭73の紛失等の理由により、
図9及び
図10に示すように、誤って重機でガス供給管残部42を引掛けて持上げてしまう場合もある。ガス供給管残部42は、ポリエチレン製管等の管内45Sに、ガス管損傷防止ユニット1を収容した状態となっている。このような場合、埋設されていたガス供給管残部42が重機で持上げられても、ガス供給管残部42のうち、管保護具10の外周基部13が位置する部分では、外周基部13が、ガス供給管残部42の芯として機能する。そのため、ガス供給管残部42単体による中空状態に比べ、管自体が、いわば剛体となり、大きく変形し難くなっている。
【0051】
その一方で、ガス管損傷防止ユニット1において、互いに接触した配置状態で隣り合う管保護具10,10の外周縁部14,14同士の間には、ガス供給管残部42の管内45Sに存在する空間の一部として、ガス供給管残部42の内壁44から軸線P側にせり出す管内空間45Saを確保することができる。しかも、ガス供給管残部42の管内45では、ガス管損傷防止ユニット1は、その後方端側(
図9及び
図10中、右側)に位置する端部43を閉塞キャップ49で閉じた状態の下、前方端側(
図9及び
図10中、左側)で、シール部材15を内壁44と密着させているため、ガス管損傷防止ユニット1は、その移動を規制した状態下で、管内45に収容されている。
【0052】
そのため、ガス供給管残部42が持上げられても、ガス管損傷防止ユニット1は、ガス供給管残部42の管内45Sで、ほとんど動くことなく収容されており、ガス供給管残部42において、ちょうど管内空間45Saに位置する部位が、局所的な変形促進部46となる。ガス供給管残部42自体は、可撓性を有していることから、
図9及び
図10に示すように、ガス供給管残部42は、変形促進部46で、積極的に屈曲して変形するようになる。しかも、管保護具10の外周縁部14は、R状の輪郭をなす円みを帯びた形状になっている。
【0053】
そのため、管保護具10の接触に起因したガス供給管残部42自体の損傷を抑制することができている。また、変形促進部46において、たとえガス供給管残部42の変形や、破裂等の損傷が、多少なりとも生じたとしても、ガス支管32を流通する都市ガスの漏れを、第1管保護具11(管保護具10)のシール部材15により、簡易的に防止することができている。従って、万が一、解体工事業者の作業員が、誤って重機でガス供給管残部42を引掛けて持上げてしまった場合でも、変形したガス供給管残部42では、ガス漏れが一時的に抑えられているため、作業員は、すぐにガス事業者に連絡を取って、ガス事業者で必要な対策を講じてもらうことで、ガス漏れに繋がる大事に至ることが、回避できる。
【0054】
<ユニット回収工程について>
次に、本実施形態に係る敷地内工事時のガス管損傷防止方法のユニット回収工程について、説明する。ユニット回収工程は、第2次ガス管工事時に、ガス供給管残部42を開塞した後、ガス供給管残部42に収容されている4本全ての管保護具10(ガス管損傷防止ユニット1)を、連結部18(接続手段)により、一体に連結させた状態で、ガス供給管残部42から引き抜いて回収する。管保護具10の回収中、4本全ての管保護具10のうち、残り1つとなった未回収の第1管保護具11により、ガス供給管残部42の内壁44との間が気密に保たれたまま、ガス供給管残部42に閉塞処理を施す。
【0055】
図11は、本実施形態に係る敷地内工事時のガス管損傷防止方法に基づき、第2次ガス管工事時にガス管損傷防止ユニットをガス供給管残部から回収するユニット回収工程の第1工程図であり、第1次ガス管工事に関する第6工程図を再掲した図でもある。第2次ガス管工事に関する第2工程図を
図12に、その第3工程図を
図13に、第4工程図を
図14に、第5工程図を
図15に、及び第6工程図を
図16に、それぞれ示す。
【0056】
具体的に説明する。前述したように、第1次ガス管工事により、ガス供給管残部42の端部43は、
図11に示すように、ガス管損傷防止ユニット1を管内45Sに収容された状態で、閉塞キャップ49によって閉塞されている。第2次ガス管工事にあたり、まず、
図12に示すように、閉塞キャップ49をガス供給管残部42の端部43から取り除いた後、ガス管損傷防止ユニット1の末尾となる第2管保護具12を、軸心Kを中心にネジ締結方向Rに回転させる。第1管保護具11は、シール部材15をガス供給管残部42の内壁44に密着しており、ネジ締結方向Rに回転せず不動状態となっている。末尾の第2管保護具12の回転を、その直前にある2つ目の第2管保護具12に伝達すると、第1管保護具11に続く1つ目の第2管保護具12や、第1管保護具11にも伝達される。
【0057】
これにより、末尾の第2管保護具12の雄ネジ部16と2つ目の第2管保護具12の雌ネジ部17の締結により、末尾の第2管保護具12と2つ目の第2管保護具12が、連結部18で繋がる。同様に、2つ目の第2管保護具12の雄ネジ部16と1つ目の第2管保護具12の雌ネジ部17の締結により、2つ目の第2管保護具12と1つ目の第2管保護具12が、連結部18で繋がる。同様に、1つ目の第2管保護具12の雄ネジ部16と第1管保護具11の雌ネジ部17の締結により、1つ目の第2管保護具12と第1管保護具11が、連結部18で繋がる。かくして、4本の管保護具10は、連結部18を介して、一体に連結した状態のガス管損傷防止ユニット1となる。
【0058】
次に、
図13に示すように、ガス供給管残部42の端部43から末尾の第2管保護具12を把持してガス管損傷防止ユニット1を手前側Fに引き寄せ、
図14に示すように、末尾の第2管保護具12と2つ目の第2管保護具12との連結解除を行い、ガス管損傷防止ユニット1から末尾の第2管保護具12を外す。これに続き、同じ要領で、2つ目の第2管保護具12を把持して、手前側Fに引き寄せられた2つ目の第2管保護具12と1つ目の第2管保護具12との連結解除を行い、ガス管損傷防止ユニット1から2つ目の第2管保護具12を外す。同様に、1つ目の第2管保護具12を把持して、手前側Fに引き寄せられた1つ目の第2管保護具12と第1管保護具11との連結解除を行い、ガス管損傷防止ユニット1から1つ目の第2管保護具12を外す。
【0059】
次に、
図15に示すように、第1管保護具11だけが、ガス供給管残部42の端部43に配置されたら、第1管保護具11の前方側(
図15中、左側)で、端部43にスクイズオフ48を施すことにより、ガス供給管残部42を完全に閉塞する。閉塞後、
図16に示すように、第1管保護具11をガス供給管残部42の端部43から取出す。かくして、建物74等の解体工事後に、ガス管損傷防止ユニット1が、ガス供給管残部42の管内45Sから回収され、本実施形態に係る敷地内工事時のガス管損傷防止方法で、ユニット回収工程を伴った第2次ガス管工事は、終了する。
【0060】
なお、建物74等の解体工事を終えたことで、
図1に示すように、官民境界Mに近接した場所にあった障害物75がなくなった場合には、追加のガス管工事により、官民境界Mに近接する追加管切断箇所N2でガス供給管残部42を切断し、ガス支管32側の端部43にスクイズオフ48を施すことがある。この場合には、ガス供給管残部42のうち、管切断箇所N1と追加管切断箇所N2の間にあった不使用管部47は、廃棄処分される。
【0061】
次に、本実施形態に係る敷地内工事時のガス管損傷防止方法、及びガス管損傷防止ユニット1の作用・効果について説明する。
【0062】
本実施形態に係る敷地内工事時のガス管損傷防止方法は、ガス導管30と連通して敷地72内に埋設されていたガス供給管40が不用となり、該ガス供給管40のうち、ガス供給管一部41が、予め敷地72内で切断して撤去処分された後、敷地72内で行う工事の実施中、ガス漏れのない閉塞処理を施した状態で、敷地72内に残されているガス供給管残部42の損傷を防ぐ敷地内工事時のガス管損傷防止方法において、ガス供給管残部42は、その径の中心に位置する軸線Pが距離Lで、ガス導管30との境界から延びている樹脂製の管であること、棒状の管保護具10を複数備え、管保護具10は、その軸心Kをガス供給管残部42の軸線P側に向けた姿勢で、ガス供給管残部42の管内45Sに挿通可能であると共に、互いに接触した配置状態で隣り合う管保護具同士10,10の間で、ガス供給管残部42の内壁44との間に管内空間45Saをなす形状に形成された外周縁部14を、有すること、ガス供給管残部42を開塞した後、ガス供給管残部42の管内45Sに、軸線Pの距離Lに対応した数の管保護具10を、ガス供給管残部42の内壁44との間を気密にして直列状に挿入し、収容すること、管保護具10が収容された状態にあるガス供給管残部42に、閉塞処理を施すこと、を特徴とする。
【0063】
この特徴により、第1次ガス管工事を終えた敷地72内で、建物74等の解体作業を実施している間、万が一、作業員が、誤って重機でガス供給管残部42を引掛けて持上げてしまった場合でも、ガス支管32を流通する都市ガスが、ガス供給管残部42から漏れ出すのを、より確実に防止することができる。特に、可撓性を有しているガス供給管残部42が、敷地72内の土壌から重機で持上げられた際に、ガス供給管残部42のうち、管内空間45Saの位置する変形促進部46が、撓み、屈曲等による変形を局所的に吸収するものの、大きな破断に至る蓋然性は低い。それ故に、作業員が、ガス供給管残部42を持上げてしまった直後に、速やかにガス事業者に連絡を取れば、現場に駆け付けたガス事業者が、このような事態に対し、必要な措置を行うまでの間、変形したガス供給管残部42でも、ガス漏れを一時的に抑えることが可能であるため、ガス漏れに繋がる大事に至ることが、効果的に回避できるようになる。
【0064】
従って、本実施形態に係る敷地内工事時のガス管損傷防止方法によれば、一方側でガス導管30と連通すると共に、その他方側の開放端に閉塞処理を施して埋設されているガス供給管残部42に対し、重機が、万が一接触した場合でも、ガス供給管残部42からのガス漏れを、より確かに、かつ簡単に防ぐことができる、という優れた効果を奏する。
【0065】
また、本実施形態に係る敷地内工事時のガス管損傷防止方法では、ガス供給管残部42に収容された状態では、隣り合う管保護具同士10,10は、相対的に移動可能な状態になっていること、を特徴とする。
【0066】
この特徴により、管内45Sにガス管損傷防止ユニット1を収容したガス供給管残部42で、重機の持上げに起因して生じた変形を局部的に吸収する変形促進部46になり得るとして、その管内空間45Saが形成され易くなる。
【0067】
また、本実施形態に係る敷地内工事時のガス管損傷防止方法では、管保護具10は、隣り合う管保護具10と連結可能な接続手段(雌ネジ部17と雄ネジ部16)を有し、ガス供給管残部42を開塞した後、ガス供給管残部42に収容されている全ての管保護具10(ガス管損傷防止ユニット1)を、雌ネジ部17と雄ネジ部16により、一体に連結させた状態で、ガス供給管残部42から引き抜いて回収すること、管保護具10の回収中、全ての管保護具10のうち、残り1つとなった未回収の管保護具10(第1管保護具11)により、ガス供給管残部42の内壁44との間が気密に保たれたまま、ガス供給管残部42に閉塞処理を施すこと、を特徴とする。
【0068】
この特徴により、ガス支管32を流通する都市ガスが、ガス供給管残部42から漏れることなく、ガス管損傷防止ユニット1を回収でき、回収されたガス管損傷防止ユニット1は、再利用により、別の現場に埋設したガス供給管残部42にも、使用することができる。また、建物74等の解体作業を終えた敷地72内で、新たに建物等が新設される等の理由により、都市ガスの需要が生じ、
図16に示すように、管切断箇所N1で寸断されたガス供給管残部42を再利用して、新設の建物等側に敷設するガス供給管と接続する工事を行う場合に、ガス管損傷防止ユニット1は、この工事を行う上で、阻害要因とならない。
【0069】
他方、本実施形態に係るガス管損傷防止ユニット1は、ガス導管30と連通して敷地72内に埋設されていたガス供給管40が不用となり、該ガス供給管40のうち、ガス供給管一部41が、予め敷地72内で切断して撤去処分された後、ガス漏れのない閉塞処理を施した状態で、敷地72内に残されているガス供給管残部42の管内45Sに収容して用いられるガス管損傷防止ユニットであり、当該ガス管損傷防止ユニット1は、複数の管保護具10からなり、管保護具10は、棒状で、その軸心Kをガス供給管残部42の軸線P側に向けた姿勢で、ガス供給管残部42の管内45Sに挿通可能であると共に、互いに接触した配置状態で隣り合う管保護具同士10,10の間で、ガス供給管残部42の内壁44との間に管内空間45Saをなす形状に形成された外周縁部14と、ガス供給管残部42の内壁44との間を気密にするシール部材15を有すること、を特徴とする。
【0070】
この特徴により、ガス管損傷防止ユニット1をガス供給管残部42の管内45Sに収容しておくだけで、第1次ガス管工事を終えた敷地72内で、建物74等の解体作業を実施している間、万が一、作業員が、誤って重機でガス供給管残部42を引掛けて持上げてしまった場合でも、ガス支管32を流通する都市ガスが、ガス供給管残部42から漏れ出すのを、簡単に防止することができるようになる。
【0071】
従って、本実施形態に係るガス管損傷防止ユニット1によれば、一方側でガス導管30と連通すると共に、その他方側の開放端に閉塞処理を施して埋設されているガス供給管残部42に対し、重機が、万が一接触した場合でも、ガス供給管残部42からのガス漏れを、より確かに、かつ簡単に防ぐことができる、という優れた効果を奏する。
【0072】
また、本実施形態に係るガス管損傷防止ユニット1では、管保護具10は、隣り合う管保護具10(第1管保護具11と第2管保護具12、第2管保護具12,12同士)と、一体化して連結可能な接続手段(雌ネジ部17と雄ネジ部16)を有すること、を特徴とする。
【0073】
この特徴により、ガス供給管残部42に収容したガス管損傷防止ユニット1を、管内45Sから回収して、再利用することができる。
【0074】
以上において、本発明を実施形態に即して説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できる。
【0075】
(1)例えば、実施形態では、隣り合う管保護具10,10同士を、雌ネジ部17と雄ネジ部16との螺合によって接続し連結したが、隣り合う管保護具同士の接続手段は、実施形態に限定されることなく、適宜変更可能である。
【0076】
すなわち、接続手段は、一方の管保護具と他方の管保護具とを、一例として、自在に連結またはその解除することができるワイヤやロープ、鎖のほか、U字状や環状の係合部材を、一方の管保護具と他方の管保護具にそれぞれ設け、双方の係合部材同士を、自在に係合またはその解除を行うことができる係合手段等であっても良い。このような接続手段であれば、ガス供給管残部が、地中で一直線状に埋設されている以外にも、高低差や管の曲りを伴って敷設されている現場でも、このようなガス供給管残部に対し、管内への管保護具の収容と、管内からの管保護具の回収ができることから、本発明に係る敷地内工事時のガス管損傷防止方法の適用が可能となる。
【0077】
(2)また、実施形態では、
図2に示すように、外周縁部14を半球状に形成した管保護具10を挙げたが、外周縁部は、隣り合う管保護具同士の間で、ガス供給管残部の内壁との間に管内空間をなす形状で形成されるものであれば良く、実施形態に限定されるものではない。
【0078】
(3)また、実施形態では、ガス供給管残部42の管内45Sに収容する管保護具10の数を、4本と例示したが、管保護具の数は、実施形態に限定されるものではない。すなわち、ガス供給管残部の管内に管保護具を収容する数の設定にあたり、1本当たりの管保護具の長さとガス供給管残部の軸線距離Lを考慮して、管内に収容するガス管損傷防止ユニットの全長は、軸線距離Lより小さくする。ガス管損傷防止ユニットは、複数の管保護具を直列に配置してなるため、管内に収容可能となる管保護具の数は、複数の管保護具を一体的に連結したガス管損傷防止ユニットの全長を超えない数である。
【符号の説明】
【0079】
1 ガス管損傷防止ユニット
10 管保護具
14 外周縁部
15 シール部材
16 雄ネジ部(接続手段)
17 雌ネジ部(接続手段)
18 連結部(接続手段)
30 ガス導管
40 ガス供給管
41 ガス供給管一部
42 ガス供給管残部
44 内壁
45S 管内
45Sa 管内空間
72 敷地
K 軸心
M 官民境界(境界)
P 軸線