IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友重機械工業株式会社の特許一覧

特許7530839処理装置及び処理方法並びに硫黄含有物質生成装置
<>
  • 特許-処理装置及び処理方法並びに硫黄含有物質生成装置 図1
  • 特許-処理装置及び処理方法並びに硫黄含有物質生成装置 図2
  • 特許-処理装置及び処理方法並びに硫黄含有物質生成装置 図3
  • 特許-処理装置及び処理方法並びに硫黄含有物質生成装置 図4
  • 特許-処理装置及び処理方法並びに硫黄含有物質生成装置 図5
  • 特許-処理装置及び処理方法並びに硫黄含有物質生成装置 図6
  • 特許-処理装置及び処理方法並びに硫黄含有物質生成装置 図7
  • 特許-処理装置及び処理方法並びに硫黄含有物質生成装置 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-31
(45)【発行日】2024-08-08
(54)【発明の名称】処理装置及び処理方法並びに硫黄含有物質生成装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/461 20230101AFI20240801BHJP
   C02F 3/28 20230101ALI20240801BHJP
   C02F 3/34 20230101ALI20240801BHJP
【FI】
C02F1/461 101C
C02F3/28 A
C02F3/34 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021012483
(22)【出願日】2021-01-28
(65)【公開番号】P2022115736
(43)【公開日】2022-08-09
【審査請求日】2023-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】清川 達則
【審査官】松浦 裕介
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-120492(JP,A)
【文献】特開2020-116525(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0001129(KR,A)
【文献】特開2016-031778(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0344400(US,A1)
【文献】特開2011-212599(JP,A)
【文献】特開昭55-114386(JP,A)
【文献】特開2020-099851(JP,A)
【文献】特開2014-008461(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC C02F 3/28 - 3/34
C02F 1/46 - 1/48
C02F 11/00 - 11/20
H01M 8/00 - 8/2495
C02F 3/00
C02F 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物に対する嫌気処理を行う処理装置であって、
前記被処理物が嫌気処理された後の処理水と電極を接触させ、発電及び/又は処理水中の硫黄成分を除去する反応部と、
前記反応部の電極表面に堆積した硫黄成分を除去する硫黄除去手段と、を備え、前記硫黄除去手段は、前記反応部に対する処理水の流路を切り替える流路切替部を有することを特徴とする、処理装置。
【請求項2】
前記処理装置は、複数の前記反応部と、前記反応部に電子受容体を供給する受容体供給手段と、を備え、
前記複数の反応部は、一方の反応部に前記処理水が供給され、他方の反応部に電子受容体が供給され、
前記流路切替部は、一方の前記反応部から他方の前記反応部へと処理水の流路を切り替える第1流路切替部と、他方の前記反応部から一方の前記反応部へと電子受容体の流路を切り替える第2流路切替部と、を有することを特徴とする、請求項1に記載の処理装置。
【請求項3】
前記硫黄除去手段は、硫黄酸化細菌を用いることを特徴とする、請求項1又は2に記載の処理装置。
【請求項4】
前記流路切替部は、前記反応部に対する処理水の供給・停止を制御する制御部を備えることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の処理装置。
【請求項5】
被処理物に対する嫌気処理を行う処理方法であって、
前記被処理物が嫌気処理された後の処理水と電極を接触させ、発電及び/又は処理水中の硫黄成分を除去する電極反応を行う反応工程と、
前記反応工程に用いる電極表面に堆積した硫黄成分を除去する硫黄除去工程と、を備え
前記硫黄除去工程は、前記反応工程に対する処理水の流路を切り替える流路切替工程を有することを特徴とする、処理方法。
【請求項6】
被処理物に対する嫌気処理を行う処理装置に接続される硫黄含有物質生成装置であって、
請求項1に記載の処理装置と、
前記硫黄除去手段により除去された硫黄成分を回収する硫黄成分回収手段と、
前記硫黄成分回収手段で回収した硫黄成分を硫黄含有物質として精製する精製手段と、 を備えることを特徴とする、硫黄含有物質生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理物の嫌気処理に係る処理装置及び処理方法に関するものである。また、本発明は、被処理物の嫌気処理に伴い、硫黄含有物質を生成する硫黄含有物質生成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
被処理物の処理に際しては、様々な処理方法が知られている。このような処理は、被処理物に含まれる成分や、排出される処理水の量などのように、被処理物自体に係る物性上の特徴や、処理効率とコストのバランスなどのように、処理を実施するための設備や運用に係る特徴などを考慮し、処理方法が選択されている。
また、処理においては、異なる処理方法を複数組み合わせることで、処理の効率化を図ることが行われている。
【0003】
例えば、特許文献1には、有機物を含む被処理水の処理として、被処理水中に一対の電極を浸漬し、電気化学処理を行った後、被処理水を生物処理する処理について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-330182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されるように、電気化学処理と生物処理とを組み合わせた処理においては、それぞれの処理ごとに反応効率のよい反応を進行させ、処理全体としての処理効率を向上させることが可能となる。その一方で、一般的に、電気化学処理は電力消費に係るランニングコストの負担が大きいという課題がある。特許文献1に記載された処理では、電気化学処理単独よりはランニングコストの低減が可能とされている。しかしながら、特許文献1に記載された処理では、処理の系外から電気化学処理及び生物処理に係るエネルギーを供給する必要がある。したがって、処理時における更なる省エネルギー化が求められている。
【0006】
近年、処理時における設備駆動電力を抑え、省エネルギー化に優れるものとするために、処理の工程上でエネルギーの回収・利用が可能な技術が検討されている。
このような技術の一つとして、生物処理により発生したバイオガスを利用したエネルギーの回収が行われているが、バイオガスの貯留・精製設備や、バイオガスの燃焼により得られた熱エネルギーをガスエンジンやガスタービンを介して電気エネルギーに変換する設備など、付帯設備が必要となる。したがって、処理において、より簡便かつ効率的にエネルギーを回収・利用する技術が求められている。
【0007】
処理においてエネルギーを簡便かつ効率的に回収する技術としては、処理工程上に電極を設け、電極反応により直接電気エネルギーを回収することが考えられる。このとき、電極反応に供する電子供与体として処理工程上の水溶液(被処理水や処理水)中に含まれる還元性物質を用いることで、電極反応によるエネルギー回収と同時に、被処理水や処理水に対する電気化学処理を行うことができ、処理の効率向上と省エネルギー化の実現が期待できる。本発明者らは、特に、嫌気処理に伴い発生する硫化水素を電子供与体として用いることにより、併せて処理水の脱硫処理も可能となることを既に見出している。
【0008】
一方、本発明者らは、検討を重ねる中で、嫌気処理工程上に電極を設けて電極反応を行う際、電極表面に硫黄成分が堆積して電極反応効率が低下すること、及び、電極表面に堆積した硫黄成分の後処理が必要となるという課題があることを見出した。
【0009】
本発明の課題は、被処理物に対する嫌気処理において、電極反応によるエネルギーの回収・利用や処理水の脱硫処理を可能とするとともに、電極反応効率の向上及び電極反応で生成する硫黄成分の活用を可能とする処理装置及び処理方法並びに硫黄含有物質生成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記の課題について鋭意検討した結果、被処理物を嫌気処理した後の処理水中に含まれる還元性物質を電子供与体として電極反応を行うことにより、効率的なエネルギーの回収・利用や処理水の脱硫処理が可能となること、及び、電極反応により電極表面に堆積した硫黄除去手段を設けることで、電極反応における電極反応の効率低下を抑制することが可能となることを見出した。さらに、本発明者は、硫黄除去手段で除去された硫黄成分を回収、精製することで、有益な硫黄含有物質として活用が可能となることを見出した。これにより、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の処理装置及び処理方法並びに硫黄含有物質生成装置である。
なお、本発明において、「硫黄成分の除去」には、硫黄成分を除去する対象や処理内容が異なる複数の工程が含まれる。したがって、以下、処理水中の硫黄成分を除去することを「(処理水の)脱硫処理」、電極表面に堆積した硫黄成分を除去することを「(電極表面の)硫黄除去」と呼び、それぞれの硫黄成分の除去に係る工程を区別する。
【0011】
上記課題を解決するための本発明の処理装置は、被処理物に対する嫌気処理を行う処理装置であって、被処理物が嫌気処理された後の処理水と電極を接触させ、発電及び/又は処理水中の硫黄成分を除去する反応部と、反応部の電極表面に堆積した硫黄成分を除去する硫黄除去手段と、を備えるという特徴を有する。
本発明の処理装置は、処理装置に電極を用いた反応部を設置することで、処理における一連の処理過程の中で発電を実施することが可能となる。これにより、設備を大型化することなく、効率的な発電を実施し、エネルギーの回収・利用が可能となる。また、処理水の脱硫処理のための設備を別途設けることなく、効率的な脱硫処理を実施することが可能となる。さらに、電極反応により電極表面に生じた硫黄を除去する手段を設けることにより、電極反応の効率が低下することを抑制し、発電及び脱硫処理の効率向上が可能となる。
【0012】
また、本発明の処理装置の一実施態様としては、硫黄除去手段は、硫黄酸化細菌を用いるという特徴を有する。
この特徴によれば、比較的簡易な構造及び操作により、電極表面に堆積した硫黄成分を除去することが可能となる。
【0013】
また、本発明の処理装置の一実施態様としては、硫黄除去手段は、反応部に対する処理水の流路を切り替える流路切替部を備えるという特徴を有する。
この特徴によれば、処理水の流路を変えることで、反応部におけるアノードとカソードを切り替えることができる。このとき、電極表面で生じる反応の種類が変わるため、電極表面に堆積した硫黄成分を除去する反応を進行させることができる。これにより、電極を取り出すことなく、電極表面に堆積した硫黄成分を除去することが可能となる。
【0014】
また、本発明の処理装置の一実施態様としては、流路切替部は、反応部に対する処理水の供給・停止を制御する制御部を備えるという特徴を有する。
この特徴によれば、硫黄除去に係る流路切替部の制御を、より精度高く、好適なタイミングで実行することが可能となる。また、処理水の時間変動に応じ、発電や脱硫処理を主に行う時間帯と、電極表面に堆積した硫黄成分の除去処理を主に行う時間帯を分けるなど、処理装置全体として効率的な運転を行うことが可能となる。
【0015】
また、本発明の処理装置の一実施態様としては、反応部の電極配置を入れ替える電極入替手段を設けるという特徴を有する。
この特徴によれば、簡便な操作により、反応部におけるアノードとカソードを入れ替えることができ、アノード側の電極反応が進行することで表面に硫黄成分が堆積した電極を、容易にカソード側の反応に供することが可能となる。これにより、電極表面に堆積した硫黄除去を行うことができるとともに、反応部における処理を連続して行うことが可能となる。
【0016】
また、上記課題を解決するための本発明の処理方法としては、被処理物に対する嫌気処理を行う処理方法であって、被処理物が嫌気処理された後の処理水と電極を接触させ、発電及び/又は処理水中の硫黄成分を除去する電極反応を行う反応工程と、反応工程に用いる電極表面に堆積した硫黄成分を除去する硫黄除去工程と、を備えるという特徴を有する。
本発明の処理方法は、水処理において電極を用いた電極反応工程を設けることで、水処理における一連の処理過程の中で発電を実施することが可能となる。これにより、設備を大型化することなく、効率的な発電を実施し、エネルギーの回収・利用が可能となる。また、脱硫処理のための設備を別途設けることなく、効率的な脱硫処理を実施することが可能となる。さらに、電極反応により電極表面に生じた硫黄を除去する手段を設けることにより、電極反応の効率が低下することを抑制し、発電及び脱硫処理の効率向上が可能となる。
【0017】
また、上記課題を解決するための本発明の硫黄含有物質生成装置としては、被処理物に対する嫌気処理を行う処理装置に接続される硫黄含有物質生成装置であって、処理装置は、被処理物が嫌気処理された後の処理水と電極を接触させ、発電及び/又は処理水中の硫黄成分を除去する反応部と、反応部の電極表面に堆積した硫黄成分を除去する硫黄除去手段と、を備えており、硫黄除去手段により除去された硫黄成分を回収する硫黄成分回収手段と、硫黄成分回収手段で回収した硫黄成分を硫黄含有物質として精製する精製手段と、を備えるという特徴を有する。
本発明の硫黄含有物質生成装置は、被処理物の嫌気処理を行い、電極反応による発電や脱硫処理を行う反応部と、電極表面に堆積した硫黄成分を除去する手段とを備える処理装置に対して接続され、この処理装置から硫黄成分を回収、精製することで、電極表面に堆積した硫黄成分の後処理を行うとともに、処理装置内外で活用できる有益な硫黄含有物質を得ることが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、被処理物に対する嫌気処理において、電極反応によるエネルギーの回収・利用や処理水の脱硫処理を可能とするとともに、電極反応効率の向上及び電極反応で生成する硫黄成分の活用を可能とする処理装置及び処理方法並びに硫黄含有物質生成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1の実施態様における処理装置の概略説明図である。
図2】本発明の第1の実施態様の処理装置における硫黄除去手段の別態様を示す概略説明図である。
図3】本発明の第1の実施態様の処理装置及び硫黄含有物質生成装置を示す概略説明図である。
図4】本発明の第2の実施態様における処理装置の概略説明図である。
図5】本発明の第3の実施態様における処理装置の概略説明図である。
図6】本発明の第4の実施態様における処理装置の概略説明図である。
図7】本発明の第5の実施態様における処理装置の概略説明図である。
図8】本発明の第6の実施態様における処理装置の概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る処理装置及び処理方法並びに硫黄含有物質生成装置の実施態様を詳細に説明する。本発明における処理方法は、本発明における処理装置の作動の説明に置き換えるものとする。
なお、実施態様に記載する処理装置及び処理方法並びに硫黄含有物質生成装置については、本発明に係る処理装置及び処理方法並びに硫黄含有物質生成装置を説明するために例示したにすぎず、これに限定されるものではない。
【0021】
本発明の処理装置において、処理対象である被処理物は、嫌気処理後の処理水中に電極と反応する還元性物質が含まれるものであれば特に限定されず、固体あるいは液体のいずれであってもよい。なお、還元性物質は、処理装置に導入する前の被処理物に含有されているものであってもよく、処理装置における処理経過に伴って生成され、処理水中に存在するものであってもよい。
具体的な被処理物の例としては、例えば、食品工場、化学工場、紙パルプ工場等の各種工場から排出される工業排水や、下水などの生活排水などのような排水(廃水)が挙げられる。また、被処理物の他の例としては、例えば、家庭や各種工場から排出する生ごみや食品廃棄物、木などバイオマスのほか、各種工場から排出される工業排水や下水などの生活排水を処理した後の余剰汚泥などのような固体廃棄物が挙げられる。ここで、被処理物が固体である場合、嫌気処理後の処理水とは、固体分を除去した濾液を指すものである。
なお、以下の実施態様においては、被処理物として、嫌気処理を経ることで処理水中に還元性物質が存在する排水(以下、「被処理水」と呼ぶ。)について主に説明するが、これに限定されるものではない。
【0022】
また、本発明において、処理水中に含まれる還元性物質とは、電子供与体として機能するものであればよく、特に限定されない。ある物質が電子供与体として機能するか否かは、電子受容体として機能する物質(以下、単に「電子受容体」と呼ぶ)との組み合わせによって相対的に決まるものである。つまり、本発明における還元性物質は、電子受容体よりも電子を放出しやすいもの、すなわち電子受容体よりも酸化還元電位が低いものとすることが挙げられる。例えば、電子受容体として酸素を用いた場合、本発明における還元性物質は、酸素よりも酸化還元電位が低いものであればよく、このような還元性物質としては、硫化水素、水素、アンモニアなどが挙げられる。
【0023】
〔第1の実施態様〕
[処理装置]
図1は、本発明の第1の実施態様における処理装置の構造を示す概略説明図である。
本実施態様における処理装置1Aは、図1に示すように、処理槽2と、反応部3と、硫黄除去手段4とを備えるものである。なお、本実施態様においては、処理対象となる被処理物が、嫌気処理を経ることで処理水中に還元性物質が存在する排水(以下、「被処理水W」と呼ぶ。)である場合について説明する。
また、本実施態様における処理装置1Aは、図1に示すように、処理槽2に被処理水Wを導入する導入配管L1と、処理槽2と反応部3を接続し、処理槽2で被処理水Wが処理された後の処理水W1を反応部3に供給する接続配管L2と、電極反応後の処理水W2を反応部3から排出する排出配管L3とを備えている。
【0024】
(処理槽)
処理槽2は、被処理水Wに対して嫌気処理を行うための槽である。
処理槽2で行う処理は、被処理水W中に含まれる処理対象に合った処理であり、処理後の処理水W1中に還元性物質を含むものであれば、特に制限されない。例えば、嫌気的な環境下での生物処理(嫌気処理)として、酸生成菌及びメタン生成菌によるメタン発酵や、脱窒菌により硝酸・亜硝酸の還元を行う脱窒処理や、硫酸還元菌により硫酸の還元を行う硫酸還元処理等が挙げられる。さらに、処理コストや生成ガスの有用性の観点から、メタンを生成するメタン発酵が特に好ましい。なお、処理槽2は、単一槽であってもよく、複数の槽からなるものであってもよい。例えば、処理槽2で行う処理がメタン発酵である場合、酸生成槽とメタン発酵槽のように複数槽の組み合わせを処理槽2として用いること等が挙げられる。
【0025】
処理槽2において、嫌気処理のうち、特にメタン発酵を行う場合、被処理水Wを処理した後の処理水W1中には、メタンのほか、硫化水素、水素、アンモニア等が生成する。なお、これら生成物は、本発明における還元性物質に相当するものである。
【0026】
処理槽2で処理された被処理水Wは還元性物質を含有する処理水W1となり、接続配管L2を介して、反応部3へ導入される。
【0027】
(反応部)
反応部3は、処理水W1中の還元性物質を電子供与体とした電極反応を行うためのものである。また、反応部3では、この電極反応によって発電や脱硫処理を行うことができる。
以下、本実施態様の反応部3の構造について、発電に係る観点から説明する。なお、本実施態様の反応部3による脱硫処理の詳細については後述する。
【0028】
本実施態様の反応部3は、図1に示すように、処理槽2の後段に設けられ、第1のセル31a及び第2のセル31bと、セル31a、31bの間を仕切るように設けられたイオン交換体35と、セル31a、31bにそれぞれ配置された電極33a、33bとを備えている。ここで、第1のセル31aは、処理槽2から接続配管L2を介して導入された処理水W1が電極33aに接触するように形成されており、第1のセル31aに配置された電極33aはアノードとして機能する。一方、第2のセル31bは、電子受容体を貯留ないしは供給するように形成されており、第2のセル31bに配置された電極33bはカソードとして機能する。また、電極33a、33bは導線により外部回路と接続されている(不図示)。これにより、反応部3において、還元性物質が電子供与体として作用することで発生する電気エネルギーの回収及び利用が可能となる。
【0029】
第1のセル31aは、電極33aを備え、処理水W1が電極33aに接触するように形成されているものであればよく、特に素材や形状は問わない。例えば、図1に示すように、接続配管L2を介して処理水導入口32aから導入された処理水W1を一時的に貯留可能なスペースを有し、電極33aに接触した後の処理水W2を処理水排出口32bから排出するための排出配管L3を備えるものとすること等が挙げられる。これにより、処理水W1中の還元性物質は電子供与体として電極33aに電子を供与した後、排出配管L3を介して速やかに排出される。
なお、接続配管L2及び/又は排出配管L3に、バルブ等の流量調整機構を設けるものとしてもよい。これにより、電極33aに接触させる処理水W1の量及び流速を調整し、電極33aに対する物質移動速度を制御することが可能となる。
【0030】
排出配管L3を介して排出された処理水W2は、河川などへの放流が可能な水質を満たすものであれば、そのまま放流することが可能である。また、排出配管L3の後段に、処理水W2を更に処理するための処理設備を設け、処理水W2を処理した後、系外へ排出するものとしてもよい。このような処理設備としては、処理水W2が系外あるいは河川への放流が可能な水質となるように処理できるものであれば特に限定されない。例えば、曝気槽やpH調整槽などが挙げられる。
【0031】
なお、排出配管L3を処理槽2と接続し、処理水W2を系外に放出せずに、処理槽2に返送するものとしてもよい。これにより、被処理水Wが繰り返し処理されることになり、処理効率を向上させることが可能となる。
このとき、電極33aにおける反応後の処理水W2は、式1や式2に示すように水素イオン濃度が上昇し、pHが酸性を示す溶液となる。したがって、処理水W2をpH調整剤として利用することができる。特に、嫌気処理としてメタン発酵を行う場合、酸生成槽内の反応を好適に進行させるためには、酸生成槽内のpHは酸性寄りにあることが好ましいことが知られている。したがって、反応部3から排出配管L3を介して処理槽2(酸生成槽)に返送される処理水W2は、酸生成槽内の反応を好条件下で進行するためのpH調整剤として好適に利用される。
また、反応部3から処理槽2としてメタン発酵槽へと処理水W2を返送するように排出配管L3を接続するものとしてもよい。このとき、電極33aにおける反応後の処理水W2は、式1や式2に示すように溶存する硫化水素の濃度が低下した溶液となる。メタン発酵槽内のグラニュール層に含まれるメタン菌は、硫化水素により代謝を阻害されることが知られている。このため、反応部3から処理槽2(メタン発酵槽)に返送される処理水W2は、メタン発酵を阻害することなくメタン発酵槽内を循環することができるという効果を奏する。
【0032】
第2のセル31bは、電極33bを備え、処理水W1中の還元性物質に対する電子受容体を貯留ないしは供給するように形成されているものであればよく、特に素材や形状は問わない。
【0033】
ここで、電子受容体の形態は、気体、液体のいずれであってもよい。なお、液体としては、固体薬剤を溶解させた溶液であってもよく、気体を混合(溶解)させた溶液であってもよい。
【0034】
本実施態様において電子受容体の具体的な例については、例えば、気体としては、酸素及び酸素を含む気体が挙げられる。なお、酸素を含む気体とは、空気のように混合物として酸素を含むものや、二酸化炭素のように化合物を構成する元素として酸素を含むものが挙げられる。電子受容体として気体を用いた場合、反応後に排出したものの処理が不要(あるいは容易)であることや、入手に係るコストを低減できるという利点がある。なお、これらの利点を最大限活用するためには、電子受容体として、空気を用いることが特に好ましい。
また、本実施態様において電子受容体の他の例としては、例えば、液体として、溶存酸素を含む溶液や、フェリシアン化カリウム水溶液のような酸化剤の水溶液等が挙げられる。電子受容体として液体を用いた場合、電子受容体として効果の高い化合物(酸化剤)の取り扱いが容易となるため、電極反応効率をより向上させることができるという利点がある。なお、電極反応効率を向上させるという観点からすると、電子受容体としては、フェリシアン化カリウム水溶液を用いることが特に好ましい。
【0035】
第2のセル31bとしては、例えば、図1に示すように、第2のセル31bに、液体を貯留可能なスペースを設け、電子受容体供給口34a及び電子受容体排出口34bとして、それぞれ電子受容体の溶液の供給及び反応後の溶液の排出が可能なものを設けることが挙げられる。
第2のセル31bの他の例としては、第2のセル31bに、気体状の電子受容体(酸素、空気など)を電極33bに対して供給するために、気体を供給するための電子受容体供給口34a及び反応後の気体を排出するための電子受容体排出口34bを設けることが挙げられる。
これにより、電極33aからの電子を、電極33bを介して電子受容体が受け取ることができ、電極33aと電極33bの間に電流が流れて発電が行われる。また、反応後の電子受容体は電子受容体排出口34bを介して速やかに反応部3の外部に排出される。
なお、電子受容体供給口34a及び/又は電子受容体排出口34bにバルブ等の流量調整機構を設け、第2のセル31bにおける電子受容体の濃度を調整できるものとしてもよい。さらに、電極33aにおける反応により生成した電子量に応じた電子受容体濃度が維持されるように流量調整機構を制御する制御機構を設けるものとしてもよい。これにより、電極33a及び電極33b間の電子移動に係る反応効率の低下を抑制し、電極反応効率の低下を抑制することが可能となる。
【0036】
図1において、電子受容体供給口34a及び電子受容体排出口34bは、それぞれ1つずつ設けたものを示しているが、これに限定されるものではない。例えば、電子受容体供給口34a及び電子受容体排出口34bを複数設けるものとしてもよい。特に、電子受容体として酸素を含む気体を用いた場合、電極33bにおける反応によって水が生成する。したがって、電子受容体排出口34bを複数設ける場合、例えば、気体を排出するものと液体を排出するものをそれぞれ分けて設けること等が挙げられる。
【0037】
イオン交換体35は、イオンを透過することのできる公知の構成であればよく、特に限定するものではない。特に、電極33a(アノード側)で発生する水素イオンを透過することのできる陽イオン交換膜とすることが挙げられる。これにより、電極33a(アノード側)から電極33b(カソード側)へ水素イオンが移動することで、電極33bでの電子受容体の反応効率を高めることができ、電極反応効率を向上させることができる。また、イオン交換体35は、酸素透過性が低いものとすることがより好ましい。これにより、電極33b(カソード側)に供給される電子受容体(特に酸素)が電極33a側に移動することを抑制し、電極33aにおける電子供与体の反応効率が酸素により低下することを抑制することが可能となる。
なお、図1において、イオン交換体35は、電極33a及び電極33bと別体として設けるものを示しているが、これに限定されるものではない。例えば、イオン交換能を有する材料と電極33a及び/又は電極33bを一体とすること等が挙げられる。これにより、反応部3全体を小型化することが可能となるとともに、メンテナンス作業に係る時間短縮が可能となる。
【0038】
電極33aは、処理水W1中の還元性物質から電子を回収する電極であり、いわゆるアノードとして機能するものである。また、本実施態様における電極33aは、処理槽2で処理された後の処理水W1と接触するように第1のセル31a内に配置されている。
【0039】
電極33aとしては、アノードとして機能するものであればよく、材質及び形状については特に限定されない。電極33aの材質及び形状については、材料調達や加工に係るコスト、電極33aにおける還元性物質の反応効率などを鑑みて、適宜選択することができる。電極33aの材質の例としては、例えば、電気化学分野で電極材料として広く用いられている炭素や金属(ステンレス、白金、銅等)が挙げられる。また、電極33aの形状の例としては、例えば、平板状、棒状、メッシュ状などが挙げられる。
特に、本実施態様の電極33aとしては、電極反応効率を鑑み、多孔質体からなるものを用いることが好ましい。例えば、電極33aとしては、多孔質体であるカーボンペーパーやカーボンクロスのような炭素繊維を用いることのほか、発泡金属、多孔質金属、金属メッシュを用いることが挙げられる。
【0040】
電極33bは、電極33aの対極であって、電子受容体へ電子を受け渡す電極であり、いわゆるカソードとして機能するものである。また、本実施態様における電極33bは、第2のセル31b内に配置されている。
【0041】
電極33bとしては、カソードとして機能するものであればよく、材質及び形状については特に限定されない。電極33bの材質及び形状については、材料調達や加工に係るコスト、電極33bにおける電子受容体の反応効率などを鑑みて、適宜選択することができる。電極33bの材質の例としては、例えば、電気化学分野で電極材料として広く用いられている炭素や金属(ステンレス、白金、銅等)が挙げられる。また、電極33bの形状の例としては、例えば、平板状、棒状、メッシュ状などが挙げられる。
特に、本実施態様の電極33bとしては、電極反応効率を鑑み、多孔質体からなるものを用いることが好ましい。例えば、電極33bとしては、多孔質体であるカーボンペーパーやカーボンクロスのような炭素繊維を用いることのほか、発泡金属、多孔質金属、金属メッシュを用いることが挙げられる。
【0042】
第2のセル31b内に供給される電子受容体が気体(空気)である場合、電極33bは、一方の面は気体と接するが、もう一方の面は処理水W1と接する。このため、電極33bは、いわゆるエアカソードとして適した形態とすることが好ましい。エアカソードとして適した形態としては、例えば、気体透過性と不透水性の両方の性質を備えることが挙げられる。電極33bが気体透過性を備えた形態とすることにより、電子受容体である気体を電極33bで効果的に反応させることが可能となる。また、電極33bが不透水性を備えることにより、第1のセル31a内の処理水W1が電極33bを透過し、第2のセル31b内に流入することを抑制することが可能となる。このような電極33bの具体例としては、炭素繊維からなるものや、金属メッシュ表面に対して気体透過性及び不透水性を有する材料の塗布あるいはフィルムの積層等の表面処理を行ったもの等が挙げられる。なお、ここでの不透水性とは、水を通さないことを指し、例えば、電極33bを防水化、撥水化、疎水化、あるいは止水化することについても、不透水性を備えることに含まれるものである。
【0043】
以下、図1に基づき、本発明の第1の実施態様の処理装置における電極反応に係る反応及び工程を説明する。
本実施態様の処理装置1Aにおける電極反応に係る反応及び工程は、被処理水Wを嫌気処理することで生成した還元性物質を電子供与体として用い、酸素や酸化剤を含む溶液を電子受容体として用いるものについて説明するものである。
なお、図1に基づく反応及び工程に係る説明は、本実施態様における電極反応の一例について示すものであり、これに限定されるものではない。また、以下の説明は、処理槽2から反応部3に係る反応及び工程について述べたものであり、その他の構成(導入配管L1、排出配管L3など)に係る反応及び工程については説明を省略している。さらに、反応R1~R4及び工程S1~S3の表記については、説明のために番号を付したものであり、反応及び工程順序を特定するものではない。
【0044】
図1に示すように、処理槽2に導入された被処理水Wは、処理槽2内の嫌気性微生物(酸生成菌及びメタン生成菌)により嫌気処理される(工程S1)。このとき、メタンのほかに、還元性物質(水素、硫化水素、アンモニア等)が生成する。
【0045】
処理槽2で処理され、還元性物質を含む処理水W1は、接続配管L2を介して反応部3における第1のセル31a内に導入される(工程S2)。ここで、還元性物質(水素、硫化水素、アンモニア等)が電極33aに接触することで、還元性物質が電子供与体として機能し、電極33aへ電子が供与される。このとき、電子供与体として機能する還元性物質として、硫化水素を例にとると、電極33aにおける反応(反応R1)は、以下の反応式(式1)で示される。
【数1】
【0046】
また、硫化水素の一部は硫化水素イオンとして反応する。このときの反応は、以下の反応式(式2)で示される。
【数2】
【0047】
式1及び式2で示されるように、反応R1において、処理槽2で処理された後の処理水W1に含まれる硫化水素は電極33aに電子を供与するとともに、硫化水素自身は酸化処理されることで無害化、無臭化する。このため、本実施態様の処理装置1Aは、発電とともに、脱硫処理・脱臭処理が可能となる。なお、硫化水素以外の有害物質・臭気物質である還元性物質(アンモニア等)についても、同様に電子供与体として機能し、反応が進行することで、無害化・無臭化が可能になる。
【0048】
式1及び式2に示された反応式に基づき、電極33aにおける反応が進行した後、電子は電極33aから導線を介して電極33bへ移動する(反応R2)。なお、このとき、電極33aにおける反応で生成した水素イオンは、イオン交換体35を介して第2のセル31b側へ移動する(反応R3)。
【0049】
一方、第2のセル31bには、電子受容体供給口34aから電子受容体(溶液)を導入する(工程S3)。ここで、反応R2により、電極33aから電極33bに移動した電子を、電極33bを介して電子受容体が受け取る。また、このとき、反応R3により、イオン交換体35を介して第2のセル31b側に移動した水素イオンも電子受容体と反応する。このときの電極33bにおける反応(反応R4)は、以下の反応式(式3)で示される。なお、式3における酸素が、電子受容体に相当する。
【数3】
【0050】
上述した反応R1~R4及び工程S1~S3に基づき、電極33aと電極33bの間に電流が流れる。これにより、被処理水W中の還元性物質(処理水W1に含まれる還元性物質)を電子供与体とする反応が進行し、本実施態様の処理装置1Aにおける発電及び脱硫処理が行われる。
また、発電により得られた電気エネルギーは、電極33a及び電極33bに接続した外部回路を通じて回収・利用することができる。なお、電気エネルギーの利用については、特に限定されない。例えば、処理装置の設備駆動に用いるものであってもよく、処理装置外で利用するものであってもよい。
【0051】
本実施態様の処理装置における電極反応では、上述したように、反応R1によりアノード側で硫化水素(HS)や硫化水素イオン(HS)が反応することで、式1及び式2に基づく電極反応が進行する。反応部3における電極反応を継続して行うことで、アノード(電極33a)表面には、式1及び式2に基づく電極反応の生成物である硫黄(S)が堆積していく。これにより、電極33aと還元性物質の接触が阻害され、電極反応効率が低下するという問題が生じる。このため、本実施態様における処理装置1Aには、反応部3の電極表面に堆積した硫黄成分を除去する手段を設けるものとする。
【0052】
(硫黄除去手段)
硫黄除去手段4は、反応部3の電極表面に堆積した硫黄成分を除去することができるものであればよく、特に限定されない。硫黄除去手段4としては、例えば、物理的に硫黄除去を行うものや、化学的に硫黄除去を行うものが挙げられる。
ここで、硫黄除去に係る除去効率や作業コストを鑑み、本実施態様における硫黄除去手段4としては、化学的に硫黄除去を行うものについて主に説明する。
【0053】
以下、本実施態様における硫黄除去手段4の具体例について説明する。なお、以下に示す硫黄除去手段4に係る説明は、本実施態様における硫黄除去手段4の一例について示すものであり、これに限定されるものではない。
【0054】
図1に示すように、硫黄除去手段4としては、硫黄酸化細菌を含む水溶液が入った硫黄処理槽40を備えるものが挙げられる。そして、硫黄処理槽40内に、反応部3においてアノードとして機能し、表面に硫黄が堆積した電極(図1では、電極33a)を浸漬させる。
ここで、硫黄酸化細菌は、好気的な環境下で硫黄成分を酸化するものであり、特に硫黄成分が硫黄(S)であるときの反応は、以下の反応式(式4)で示される。
【数4】
【0055】
式4に示すように、酸素と水の存在下で、硫黄酸化細菌により、硫黄(S)が酸化されて、硫酸イオン(SO 2-)が生成する。
したがって、図1に示すように、表面に硫黄が堆積した電極33aを反応部3から取り出し、硫黄処理槽40に浸漬することで、硫黄酸化細菌によって電極33a表面上の硫黄が硫酸イオンとなり、硫黄除去を行うことができる。
そして、表面に堆積した硫黄が除去された電極33aを硫黄処理槽40から取り出して、反応部3に戻すことで、反応部3における電極反応効率の低下を抑制することが可能となる。
このとき、硫黄処理槽40から電極33aを取り出すタイミングについては特に限定されず、例えば、処理時間や電極表面の変化に基づくものとすることができる。より具体的には、電極33aを硫黄処理槽40に一定時間浸漬させた後、取り出すものとしてもよく、硫黄処理槽40に浸漬した電極33aの表面変化について目視や測定機器により観察・観測を行い、硫黄除去処理の進行程度を確認して取り出すものとしてもよい。
【0056】
本実施態様における硫黄処理槽40に用いられる硫黄酸化細菌は、入手経路や入手手段については特に限定されない。例えば、硫黄酸化細菌としては、処理装置1Aとは別の箇所で培養された培養株、培養液を用いるものとしてもよく、処理槽2における嫌気処理のように、処理装置1Aや別の処理装置における被処理物の生物処理によって発生する汚泥やグラニュールなどから馴養するものとしてもよい。なお、本実施態様における硫黄酸化細菌としては、処理装置1Aで発生する汚泥やグラニュールなどから馴養したものを用いることが好ましい。これにより、硫黄酸化細菌の入手に係るコストを削減することが可能となる。
【0057】
本実施態様における硫黄処理槽40には、硫黄酸化細菌の活性化あるいは維持・増殖のための手段を設けるものとすることが好ましい。例えば、硫黄酸化細菌の活性化に係る手段としては、硫黄処理槽40内に空気(酸素)を供給する曝気装置や、硫黄処理槽40の温度を調整する温度調整装置のほか、硫黄酸化細菌の栄養源を供給する供給機構を設けることなどが挙げられる。なお、硫黄酸化細菌の栄養源を供給する供給機構としては、栄養塩を添加することのほか、被処理水Wのような排水を供給することなどが挙げられる。また、硫黄酸化細菌の維持・増殖に係る手段としては、硫黄処理槽40内に硫黄酸化細菌を担持させる担体を設けることなどが挙げられる。
硫黄処理槽40に対し、上述した手段のうち、いずれか1つを設けることが好ましく、複数の手段を組み合わせて設けることがより好ましい。これにより、硫黄除去手段4としての処理効率を高めることが可能となる。
【0058】
本実施態様における硫黄除去手段4である硫黄処理槽40は、図1に示すように、反応部3から独立して設けるものとすることに限定されない。例えば、本実施態様における硫黄除去手段4(硫黄処理槽40)は、反応部3と接続させるものとしてもよい。
【0059】
図2は、本実施態様における硫黄除去手段4(硫黄処理槽40)の別態様を示すものである。なお、図2は、処理装置1Aにおける反応部3及び硫黄除去手段4周辺の拡大図であり、処理槽2については図示を省略している。
図2に示すように、硫黄除去手段4の別態様としては、バルブB1、B2を備えた配管L6、L7を介し、反応部3(図2では、第1のセル31a)と硫黄処理槽40とを接続させるものが挙げられる。
ここで、バルブB1、B2を備えた配管L6、L7は、硫黄処理槽40内の硫黄酸化細菌を含む水溶液を反応部3に供給、循環させるためのものである。なお、硫黄処理槽40からの水溶液の供給、循環に際し、ポンプなどの動力(不図示)を用いるものとしてもよい。また、バルブB1、B2以外の手段により、反応部3への水溶液の供給・停止を制御するものとしてもよい。
【0060】
図2における硫黄除去手段4による硫黄除去について具体的に説明する。
処理装置1Aにおいて、第1のセル31a側をアノードとし、反応部3の電極反応が安定した出力で進行している間は、配管L6、L7上のバルブB1、B2は閉じた状態とする。
処理装置1Aにおける処理が継続され、反応部3の電極表面に硫黄が堆積し、電極反応効率(出力)が低下あるいは低下傾向となった場合、反応部3の第1のセル31aへの処理水W1の供給を停止し、第1のセル31a内の処理水W1を排出する。なお、処理水W1の供給・排出については、接続配管L2及び排出配管L3上にバルブを設けることや、処理水導入口32a及び処理水排出口32bに開閉機構を設けることなどにより実行される。
第1のセル31a内から処理水W1が排出された後、バルブB1を開放し、第1のセル31a内に硫黄処理槽40から硫黄酸化細菌を含む水溶液を供給する。これにより、電極33a表面に堆積した硫黄が除去される。
硫黄除去処理の完了後、バルブB2を開き、硫黄酸化細菌を含む水溶液を硫黄処理槽40に戻すことで、硫黄酸化細菌を繰り返し利用することが可能となる。
なお、第1のセル31a内から処理水W1を排出後、バルブB1及びB2を開き、硫黄処理槽40、配管L6、第1のセル31a、配管L7の順に硫黄酸化細菌を含む水溶液を循環させるようにしてもよい。これにより、反応部3から電極を取り出すことなく、電極表面に堆積した硫黄除去を行うことが可能となる。
【0061】
図2には、硫黄処理槽40と第1のセル31aを接続するものについて示しているが、これに限定されるものではなく、硫黄処理槽40と第2のセル31bを接続するものとしてもよい。例えば、後述する電極入替手段48により、反応部3において表面に硫黄が堆積した電極が第2のセル31bにある場合においても、硫黄酸化細菌による硫黄除去処理が可能となる。
【0062】
本実施態様における硫黄除去手段4として、硫黄酸化細菌を含む水溶液が入った硫黄処理槽40を用いた場合、電極表面から除去された硫黄は、硫酸イオンとなって硫黄処理槽40内の水溶液中に存在することになる。
【0063】
[硫黄含有物質生成装置]
硫黄除去手段4により除去された硫黄成分については、系外に排出するものとしてもよいが、活用可能な形態とすることが好ましい。
このため、本実施態様の硫黄除去手段4に対し、除去した硫黄成分を活用可能な形態とする手段を設けることが好ましい。より具体的には、硫黄除去手段4に対し、除去された硫黄成分を回収する硫黄回収手段と、硫黄回収手段で回収した硫黄成分を有益な硫黄含有物質として精製する精製手段とを備える硫黄含有物質生成装置を設けることが挙げられる。なお、本実施態様において、硫黄回収手段及び精製手段は、硫黄含有物質生成装置として、処理装置1Aから独立して設けるものを示しているが、処理装置1Aの一部として設けるものとしてもよい。
【0064】
図3は、本実施態様における硫黄含有物質生成装置を示す概略説明図である。なお、図3は、処理装置1Aにおける硫黄除去手段4及び硫黄含有物質生成装置5に係る拡大図であり、処理槽2及び反応部3については図示を省略している。
図3に示すように、本実施態様における硫黄含有物質生成装置5は、硫黄回収手段50と、精製手段51とを備え、硫黄除去手段4と接続されている。
【0065】
硫黄回収手段50は、硫黄除去手段4で除去された硫黄成分を回収するためのものである。また、硫黄回収手段50としては、硫黄成分を回収することができるものであればよく、具体的な構造については特に限定されない。
硫黄回収手段50としては、例えば、図3Aに示すように、硫黄処理槽40と接続する配管L8と、硫黄処理槽40内の水溶液が配管L8を介して導入される回収槽50aを備えるものが挙げられる。これにより、硫黄処理槽40内の硫酸イオンを含有する水溶液を硫黄成分として回収することが可能となる。
また、硫黄回収手段50の別の例としては、例えば、図3Bに示すように、硫黄処理槽40に対し、硫酸イオンと反応して塩を形成する物質を添加する添加手段50bと、硫黄処理槽40内で沈殿した硫酸塩を回収する回収機構50cとして、硫黄処理槽40底部に配管L9を設けることが挙げられる。これにより、硫黄処理槽40内の水溶液から硫酸塩の形態で硫黄成分を分離し、回収することが可能となる。なお、回収機構50cとしては、配管L9以外に、硫黄処理槽40の底部に沈殿した硫酸塩を効率的に収集するための構造を備えるものとしてもよい。より具体的には、硫黄処理槽40底部で回転して硫酸塩を掻き集めるブレードを設けることや、硫黄処理槽40底部に漏斗状構造を設けることなどが挙げられる。
ここで、添加手段50bにより添加される物質は、硫酸イオンと反応し、安定した硫酸塩を形成する金属イオンを含むものが好ましい。このような物質としては、具体的には、石灰、炭酸カルシウム、水溶性の金属酸化物及び金属水酸化物のほか、焼却灰や金属イオンを含む排水(廃水)などが挙げられる。特に、石灰や炭酸カルシウムのように、金属イオンとしてカルシウムを含むものを用いることが好ましい。これにより、硫酸塩の中でも特に有益性の高い硫酸カルシウム(石膏)が形成される。
【0066】
精製手段51は、硫黄回収手段50により回収された硫黄成分を、有益な硫黄含有物質として精製するためのものである。
精製手段51としては、回収された硫黄成分を有益な硫黄含有物質として精製することができるものであればよく、硫黄回収手段50により回収される硫黄成分の種類や形態、あるいは所望する硫黄含有物質の種類や形態に応じ、公知の精製技術を用いることができる。
例えば、硫黄回収手段50により回収された硫黄成分が、硫黄処理槽40内の硫酸イオンを含む水溶液であった場合、精製手段51としては、図3Aに示すように、硫黄酸化細菌や担体などの固体分を除去するための濾過装置51aを設けることが挙げられる。これにより、精製手段51を介した後、より純度の高い硫酸イオンの水溶液、すなわち硫酸を硫黄含有物質として得ることが可能となる。このとき、精製手段51(濾過装置51a)を設ける箇所については特に限定されないが、図3Aに示すように、配管L8上に濾過装置51aを設けることにより、回収槽50a内に精製処理済みの硫黄含有物質を貯留することが可能となり、回収槽50aを硫酸の供給源としても機能させることができる。
また、硫黄回収手段50により回収された硫黄成分が、硫酸塩のような固体成分であった場合、精製手段51としては、図3Bに示すように、配管L9と接続し、固体成分の分別(分級や再結晶等を含む)、洗浄、乾燥に係る操作を行う精製操作用装置51bを設けることが挙げられる。これにより、精製手段51を介した後、より純度の高い硫酸塩を硫黄含有物質として得ることが可能となる。
【0067】
上述したように、本実施態様における処理装置1Aは、被処理水W中の還元性物質を電子供与体として用い、電気化学反応(電極反応)により発電を行い、エネルギーを回収・利用するものである。一般に、電気化学反応を行う場合、実際に電気化学反応を行う箇所(反応部3)以外へ電子が移動することで、電気化学反応の効率が低下するという問題が生じる。したがって、本実施態様における処理装置1Aは電気化学反応を行う箇所(反応部3)以外を絶縁処理することが好ましい。絶縁処理の具体例としては、例えば、処理槽2を絶縁体の上部に設置することのほか、処理槽2の外壁あるいは内壁を絶縁体で構成することや、処理槽2の外壁あるいは内壁を絶縁材料でコーティングすることなどが挙げられる。また、導入配管L1、接続配管L2及び排出配管L3の絶縁処理としては、例えば、それぞれの配管を絶縁体からなるものとすることや、それぞれの配管に絶縁材料をコーティングすること等が挙げられる。
【0068】
以上のように、本実施態様の処理装置1A及び処理装置1Aを用いた処理方法により、被処理物の嫌気処理における一連の処理過程の中で電極反応を実施することが可能となる。これにより、設備を大型化することなく、効率的な発電を実施し、エネルギーの回収・利用が可能となる。また、脱硫処理のための設備を別途設けることなく、効率的な脱硫処理を実施することが可能となる。さらに、電極反応により電極表面に生じた硫黄を除去する手段を設けることにより、電極反応の効率が低下することを抑制し、発電及び脱硫処理の効率向上が可能となる。
【0069】
また、本実施態様の硫黄含有物質生成装置により、処理装置1Aにおいて電極表面から除去した硫黄成分の回収及び精製を行うことで、電極表面に堆積した硫黄成分の後処理とともに、有益な硫黄含有物質(硫酸や硫酸塩など)を得ることが可能となる。この硫黄含有物質は処理装置1A内外で活用することが可能であり、本実施態様の硫黄含有物質生成装置は硫黄含有物質の供給源としても利用することができる。
【0070】
〔第2の実施態様〕
図4は、本発明の第2の実施態様における処理装置を示す概略説明図である。
第2の実施態様に係る処理装置1Bは、第1の実施態様における処理装置1Aにおける硫黄処理槽40に代えて、硫黄除去手段4として、反応部3に対する処理水W1の流路を切り替える流路切替部41を備えるものである。なお、第1の実施態様の構成と同じものについては、説明を省略する。
【0071】
本実施態様の処理装置1Bは、硫黄除去手段4として、流路切替部41を設けることで、処理水W1の供給先となる反応部3のセルを変更することができ、反応部3における電極33aと電極33bについて、アノードとカソードを逆にすることが可能となる。これにより、表面に硫黄が堆積したアノード側の電極(電極33a)について、式1及び式2に基づき硫黄が生成する電極反応ではなく、硫黄を酸化あるいは還元する反応に供することが可能となる。これにより、電極表面に堆積した硫黄成分を除去することが可能となる。
【0072】
図4に基づき、本実施態様の硫黄除去手段4における流路切替部41の一例について説明する。
図4に示すように、流路切替部41としては、配管L10、L11と、配管L10、L11上に設けられた流路切替機構41a、41bからなるものが挙げられる。
【0073】
配管L10は、処理槽2からの処理水W1を反応部3に供給し、第1のセル31aに接続された分岐管L10a及び第2のセル31bに接続された分岐管L10bからなる。また、配管L10上には、流路切替機構41aを備えている。なお、流路切替機構41aは、配管L10内を流れる処理水W1の流路を分岐管L10aあるいは分岐管L10bに切り替えることができることができるものであればよく、分岐管ごとにバルブを設けることや、分岐管L10aと分岐管L10bの交点に分流型三方弁と呼ばれるものを設けることなどが挙げられる。
【0074】
配管L11は、反応部3で反応した処理水W2をセル外へ排出するものであり、第1のセル31aに接続された分岐管L11a及び第2のセル31bに接続された分岐管L11bからなる。ここで、配管L11は、処理水W2を系外に排出するものであってもよく、図4に示すように、処理水W2を処理槽2に返送し、循環させるものとしてもよい。また、配管L11上には、流路切替機構41bを備えている。なお、流路切替機構41bは、セルから排出される処理水W2の流路を分岐管L11aあるいは分岐管L11bに切り替えることができることができるものであればよく、分岐管ごとにバルブを設けることや、分岐管L11aと分岐管L11bの交点に分流型三方弁と呼ばれるものを設けることなどが挙げられる。
【0075】
本実施態様における流路切替部41を用いて硫黄除去を行う場合、反応部3における第1のセル31aには、電子受容体供給口34c及び電子受容体排出口34dと、それぞれに接続する配管L12、L13を設ける一方、第2のセル31bには、処理水導入口32c及び処理水排出口32dを設けることが好ましい。そして、配管L10の分岐管L10aを処理水導入口32a、分岐管L10bを処理水導入口32cに接続し、配管L11の分岐管L11aを処理水排出口32b、分岐管L11bを処理水排出口32dに接続する。これにより、流路切替部41による処理水W1の流路の切り替えを容易とするとともに、反応部3におけるアノードとカソードの切り替えをスムーズに行うことが可能となる。
【0076】
本実施態様における硫黄除去手段4として流路切替部41を用いた場合の硫黄除去に係る工程について具体的に説明する。
処理装置1Bにおいて、第1のセル31a側をアノードとし、反応部3の電極反応が安定した出力で進行している間は、配管L10、L11上の流路切替機構41a、41bにより、分岐管L10a及び分岐管L11aを介し、第1のセル31a側への処理水W1の流路を形成する。
処理装置1Bにおける処理が継続され、反応部3の電極表面に硫黄が堆積し、電極反応効率(出力)が低下あるいは低下傾向となった場合、流路切替機構41aにより、配管L10内の処理水W1の流路を分岐管L10aから分岐管L10bに切り替え、反応部3の第1のセル31aへの処理水W1の供給を停止して、第2のセル31bへ処理水W1を供給する。このとき、流路切替機構41bは第1のセル31a内の処理水W1を排出し、第2のセル31bが処理水W1で満たされた後、流路を分岐管L11aから分岐管L11bに切り替える。これにより、分岐管L10b及び分岐管L11bを介し、第2のセル31b側への処理水W1の流路が形成される。
そして、第1のセル31aに、電子受容体供給口34c及び電子受容体排出口34dを介して電子受容体の供給・排出を行う。これにより、アノードとカソードが逆になった状態で電極反応が進行する。
このとき、表面に硫黄が堆積した電極33aでは、式3に基づくカソードとしての電極反応とともに、以下の反応式(式5)に基づく電極反応が進行する。
【数5】
【0077】
式5に示すように、電極33a表面に堆積した硫黄(S)が還元され、硫黄イオン(S2-)として電極33a表面から除去される。
また、電子受容体として酸素を含むものを用いた場合、電極33aでは、以下の反応式(式6)に基づく反応も進行する。
【数6】
【0078】
式6に示すように、電極33a表面に堆積した硫黄(S)が酸素により酸化され、二酸化硫黄(SO)としてガス化して電極33a表面から除去される。
以上の工程により、本実施態様における硫黄除去手段4である流路切替部41を用いることで、式5及び式6に基づく反応が進行し、電極33a表面に堆積した硫黄が除去される。
硫黄除去処理の完了後、流路切替部41により、処理水W1の流路を第1のセル31a側に戻すことで、再び反応部3におけるアノードとカソードを入れ替える。これにより、反応部3から電極を取り出すことなく、電極表面に堆積した硫黄除去を行うことができるとともに、反応部3における処理を連続して行うことが可能となる。
【0079】
また、上述した硫黄除去工程の実行に際し、流路切替部41による流路の切り替えは作業者が手動で行うものとしてもよく、プログラム等に基づく自動制御を行うものとしてもよい。作業の効率化等を鑑み、本実施態様における流路切替部41には、反応部3に対する処理水W1の供給・停止を制御する制御部42を備えることが好ましい。
本実施態様における制御部42は、流路切替機構41a及び41bの開閉動作に係る制御を行うものである。また、制御部42は、反応部3における電極反応の反応効率(出力)に係るデータ取得を行うデータ取得部と、データ取得部で取得した出力データに基づき硫黄除去工程の実行タイミングを演算する演算部を備えることがより好ましい。これにより、硫黄除去に係る流路切替部41の制御(流路切替機構41a及び41bの開閉動作)を、より精度高く、好適なタイミングで実行することが可能となる。
【0080】
また、本実施態様の硫黄除去手段4(流路切替部41)により電極表面から除去された硫黄成分(硫化物イオン、二酸化硫黄等)については、上述した硫黄回収手段50及び精製手段51を備える硫黄含有物質生成装置5により、有益な硫黄含有物質として活用させることができる。
本実施態様の硫黄除去手段4(流路切替部41)では、電子受容体が供給されているときの第1のセル31aあるいは第2のセル31b内に、電極表面から除去された硫黄成分が存在することになる。
したがって、本実施態様の処理装置1Bに対して設けられる硫黄回収手段50の一例としては、電子受容体排出口34b及び配管L4、あるいは電子受容体排出口34d及び配管L13を介して硫黄成分を回収槽50aに回収することが挙げられる。
このとき、精製手段51として触媒を用い、回収槽50a内で、回収した硫黄成分である二酸化硫黄(SO)を硫酸にする反応を進行させることが挙げられる。また、精製手段51の別の例としては、回収槽50a内で硫黄成分を固液分離することが挙げられる。このとき、液面に浮遊した硫黄成分を回収するものとしてもよく、槽内に沈降した硫黄成分を回収するものとしてもよい。
また、本実施態様の処理装置1Bに対して設けられる硫黄回収手段50の他の例としては、添加手段50bとして、電子受容体供給口34a及び配管L5、あるいは電子受容体供給口34c及び配管L12を介して、硫化物イオンや二酸化硫黄などの硫黄成分と反応して塩を形成する物質を供給することが挙げられる。このような物質としては、具体的には、石灰、炭酸カルシウム、水溶性の金属酸化物及び金属水酸化物のほか、焼却灰や金属イオンを含む排水(廃水)などが挙げられる。特に、石灰や炭酸カルシウムのように、金属イオンとしてカルシウムを含むものを用いることが好ましい。これにより、二酸化硫黄との反応により、還元剤として有益性の高い亜硫酸カルシウムなどが形成される。
【0081】
以上のように、本実施態様における処理装置1B及び処理装置1Bを用いた処理方法は、反応部3に供給する処理水の流路を切り替えることで、反応部におけるアノードとカソードを入れ替えることができる。このとき、反応部3における電極反応は進行させたまま、表面に硫黄成分が堆積した電極に対し、硫黄成分を除去する反応も同時に進行させることが可能となる。これにより、反応部3から電極を取り出すことなく、電極表面に堆積した硫黄除去を行うことができるとともに、反応部3における処理を連続して行うことが可能となる。
【0082】
〔第3の実施態様〕
図5は、本発明の第3の実施態様における処理装置を示す概略説明図である。
第3の実施態様に係る処理装置1Cは、処理槽2、反応部3、硫黄除去手段4を備える処理装置であって、図5に示すように、複数の反応部3A,3Bを設け、硫黄除去手段4として、それぞれの反応部3A、3Bの第1のセル31a、31cに供給する処理水W1の流路を切り替える流路切替部43と、流路切替部43と連動して、それぞれの反応部3A、3Bの第1のセル31a、31cに供給する電子受容体の流路を切り替える流路切替部44と、それぞれの反応部3A、3Bの第2のセル31b、31dにおける電子受容体供給口34a及び電子受容体排出口34b間を接続し、電子受容体を循環させる循環流路45を備えるものである。なお、反応部3A、3Bの構造は、第1の実施態様における反応部3と同じであり、第1の実施態様の構成と同じものについては、説明を省略する。
【0083】
本実施態様の処理装置1Cは、複数の反応部3A、3Bを設け、反応部3A、3Bにおける第1のセル31a、31cに供給する処理水W1と電子受容体の流路を切り替えるとともに、それぞれの反応部3A、3Bにおける第2のセル31b、31dに供給する電子受容体を循環させることで、電極反応を進行させる反応部(図5では反応部3A)と、電極に堆積した硫黄成分を除去する反応部(図5では反応部3B)とを並行して稼働させることができる。これにより、電極反応効率を低下させることなく、電極表面に堆積した硫黄成分の除去も効果的に行うことが可能となる。また、反応部3A、3Bの第2のセル31b、31dに供給される電子受容体について、循環させて利用することが可能となるため、電子受容体に係るコスト低減ができるという効果も奏する。
【0084】
図5に基づき、本実施態様の硫黄除去手段4における流路切替部43、44及び循環流路45の一例について説明する。
図5に示すように、流路切替部43としては、処理槽2からの処理水W1を反応部3A、3Bの第1のセル31a、31cに供給するための配管L14と、配管L14上に設けられた流路切替機構43aからなるものが挙げられる。
また、流路切替部44としては、電子受容体供給槽44b内の電子受容体を反応部3A、3Bの第1のセル31a、31cに供給するための配管L15と、配管L15上に設けられた流路切替機構44aからなるものが挙げられる。なお、電子受容体供給槽44b内に収容される電子受容体は特に限定されないが、調製の容易性や、入手に係るコスト面などから、空気を曝気した水を用いることが挙げられる。
なお、流路切替機構43a、44aとしては、図5に示すように、分流型三方弁を用いるほか、各配管にバルブを設けるものとしてもよい。
【0085】
循環流路45としては、反応部3A、3Bの第2のセル31b、31dにおける電子受容体供給口34a及び電子受容体排出口34b間を接続して、第2のセル31b、31dの間で電子受容体を循環させるためのものである。例えば、図5に示すように、反応部3Aの第2のセル31bに電子受容体を供給する配管L16a、反応部3Aの第2のセル31bで反応した後の電子受容体を排出する配管L16b、反応部3Bの第2のセル31dに反応部3Aで反応した後の電子受容体を供給する配管L16c、反応部3Bの第2のセル31dで反応した後の電子受容体を排出する配管L16dを備え、配管L16bと配管L16cを接続し、配管L16dと配管L16aを接続して、循環流路45を形成する。
【0086】
なお、反応部3A、3Bの第1のセル31a、31cで反応した処理水W2は、それぞれのセル31a、31cに設けられた処理水排出口及び配管L17、L18を介してセル外に排出される。ここで、配管L17、L18は、図5に示すように、処理水W2を系外に排出するものであってもよく、処理水W2を処理槽2に返送し、循環させるものとしてもよい。
なお、処理槽2における反応を阻害しないよう、処理槽2に返送する処理水W2としては、電子受容体供給槽44bから電子受容体が供給されたものが含まれないようにすることが好ましい。
このため、処理水W2の流路を系外あるいは処理槽2へと切り替えるものとしてもよい。例えば、配管L17、L18上に流路切替機構を備えることや、それぞれの処理水排出口に接続する配管を2本とし、電子受容体供給槽44bから供給された電子受容体を含む処理水W2を系外に排出する配管と、それ以外の処理水W2を処理槽2に返送する配管とを設けることなどが挙げられる。
【0087】
本実施態様における硫黄除去手段4として流路切替部43、44及び循環流路45を用いた場合の硫黄除去に係る工程について具体的に説明する。
処理装置1Cにおいて、反応部3Aの第1のセル31a側をアノードとし、反応部3Aの電極反応が安定した出力で進行している間は、配管L14上の流路切替機構43aにより、第1のセル31a側への処理水W1の流路を形成する。一方、流路切替部44は、反応部3Bの第1のセル31cに電子受容体供給槽44b内の電子受容体を供給する流路を形成する。また、このとき、反応部3Aの第2のセル31bには、配管L16aから電子受容体が供給され、反応後の電子受容体は配管L16b及び配管L16cを介して、反応部3Bの第2のセル31d内に供給される。
このとき、反応部3Aでは、電極33aをアノードとし、電極33bをカソードとする電極反応が進行する。一方、反応部3Bでは、第2のセル31dに対し、反応後の電子受容体、すなわち還元性の高い物質が供給され、第1のセル31cには、電子受容体供給槽44b内の電子受容体が供給される。したがって、反応部3Bでは、電極33cをカソードとし、電極33dをアノードとする電極反応が進行することになる。
そして、処理装置1Cにおける処理が継続され、反応部3Aの電極(電極33a)表面に硫黄が堆積し、電極反応効率(出力)が低下あるいは低下傾向となった場合、流路切替機構43aにより、処理水W1の流路を反応部3A側の第1のセル31aから反応部3B側の第1のセル31cに切り替え、反応部3Aの第1のセル31aへの処理水W1の供給を停止して、反応部3Bの第1のセル31cへ処理水W1を供給する。このとき、流路切替機構44aも切り替えを行い、電子受容体供給槽44bからの電子受容体が、反応部3Aの第1のセル31aに供給されるようにする。このとき、第2のセル31bには還元性の高い物質(反応後の電子受容体)が供給されるようにする。これにより、反応部3Aでは、電極33aをカソード、電極33bをアノードとする反応が進行し、式5及び式6に基づき、電極33a表面に堆積した硫黄成分が除去される。
【0088】
なお、循環流路45上に電子受容体または反応後の電子受容体を貯留する貯留部を設けるものとしてもよい。これにより、第1のセル31a、31cに係る処理水W1と電子受容体の流路切り替えに応じ、第2のセル31bに適した電子受容体(あるいは反応後の電子受容体)の供給を容易に行うことが可能となる。
【0089】
また、本実施態様の硫黄除去手段4で除去された硫黄成分を、硫黄含有物質として活用するために、硫黄含有物質生成装置5を用い、有益な硫黄含有物質として活用することが好ましい。なお、本実施態様の硫黄除去手段4により除去される硫黄成分は、第2の実施態様で説明したものと同様のものが回収される。したがって、本実施態様の硫黄含有物質生成装置5は、第2の実施態様において説明したものと同様の構成を用いることができる。
【0090】
以上のように、本実施態様における処理装置1C及び処理装置1Cを用いた処理方法は、複数の反応部を設け、反応部に供給する処理水及び電子受容体の流路を切り替えること及び電子受容体を循環利用することで、反応部におけるアノードとカソードを入れ替えることができる。これにより、電極反応を進行させる反応部と、表面に硫黄成分が堆積した電極に対し、硫黄成分を除去する反応を進行させる反応部とを並行に処理させることが可能となる。これにより、反応部から電極を取り出すことなく、電極表面に堆積した硫黄除去を行うことができるとともに、反応部における処理を連続して行うことが可能となる。
【0091】
〔第4の実施態様〕
図6は、本発明の第4の実施態様における処理装置を示す概略説明図である。
第4の実施態様に係る処理装置1Dは、処理槽2、反応部3、硫黄除去手段4を備える処理装置であって、第3の実施態様に係る処理装置1Cにおいて、反応部3を1つにし、流路切替部43、44に対する制御部46を設けたものである。
図6に示すように、本実施態様における処理装置1Dは、反応部3に対し、硫黄除去手段4として、反応部3の第1のセル31aに供給する処理水W1の流路を切り替える流路切替部43と、流路切替部43と連動して、反応部3の第1のセル31aに供給する電子受容体の流路を切り替える流路切替部44と、処理水W1の供給・停止を行う制御部46とを備え、反応部3の第2のセル31bには、電子受容体あるいは反応後の電子受容体を貯留する貯留槽47a、47bを設けるものである。なお、第3の実施態様の構成と同じものについては、説明を省略する。
【0092】
本実施態様の処理装置1Dは、2つの流路切替部を備える1つの反応部3において、流路切替部の制御により処理水W1の供給・停止を行うことで、電極反応を進行させる反応部と、電極に堆積した硫黄成分を除去する反応部とを時間差で稼働させることができる。これにより、電極反応効率を低下させることなく、電極表面に堆積した硫黄成分の除去も効果的に行うことが可能となる。
【0093】
流路切替部43及び44は、上述した第3の実施態様で説明した構造を用いることができる。なお、本実施態様においては、図6に示すように、配管L14及び配管L15に分岐を設ける必要がないため、流路切替機構43a、44aとしては、各配管にバルブを設けるものとすることが挙げられる。
【0094】
制御部46は、流路切替部43及び44における流路切替機構43a及び44aの開閉動作に係る制御を行うものである。
本実施態様における制御部46による制御の一例としては、日中など、処理槽2による嫌気処理が活発に行われ、処理水W1量が増加する時間帯には、電極反応による発電や脱硫処理を積極的に行うように、流路の切り替えを行うことが好ましい。すなわち、処理槽2からの処理水W1を第1のセル31aに供給し、電極33aをアノード、電極33bをカソードとする電極反応を行うように流路切替部43及び44を制御することが挙げられる。また、このとき、第2のセル31bの配管L16bから排出される反応後の電子受容体を貯留槽47aに貯留しておくことが好ましい。
一方、夜間など処理槽2からの処理水W1量が低減する時間帯には、電極表面に堆積した硫黄成分を除去する操作を主に行うように、流路の切り替えを行うことが好ましい。すなわち、処理槽2からの処理水W1を停止し、第1のセル31aに電子受容体供給槽44bからの電子受容体を供給するように流路切替部43及び44を制御することが挙げられる。また、併せて、貯留槽47aに貯留した反応後の電子受容体を、配管L16aを介して第2のセル31bに供給することで、電極33aをカソード、電極33bをアノードとする電極反応が進行し、電極(電極33a)表面に堆積した硫黄成分を除去することが可能となる。なお、このとき第2のセル31bの配管L16bから排出される電子受容体を貯留槽47bに貯留し、再び電極33aをアノードとする電極反応を行う際に再利用するものとしてもよい。
また、制御部46は、反応部3における電極反応の反応効率(出力)に係るデータ取得を行うデータ取得部と、データ取得部で取得した出力データに基づき硫黄除去工程の実行タイミングを演算する演算部を備えることがより好ましい。これにより、硫黄除去に係る流路切替部43、44の制御(流路切替機構43a及び44aの開閉動作)を、より精度高く、好適なタイミングで実行することが可能となる。
【0095】
以上のように、本実施態様における処理装置1D及び処理装置1Dを用いた処理方法は、1つの反応部において、反応部に供給する処理水及び電子受容体の流路の切り替えについて、処理水の供給・停止を制御する制御部を設け、反応部に対する処理水の供給と電子受容体の供給に時間差を設けることで、アノードとカソードを入れ替えることができる。これにより、反応部から電極を取り出すことなく、電極表面に堆積した硫黄除去を行うことができるとともに、反応部における処理を連続して行うことが可能となる。また、制御部を設けることにより、処理水W1量の時間変動に応じ、発電や脱硫処理を主に行う時間帯と、電極表面に堆積した硫黄成分の除去処理を主に行う時間帯を分けるなど、処理装置全体として効率的な運転を可能とする制御を行うことが可能となる。
【0096】
〔第5の実施態様〕
図7は、本発明の第5の実施態様における処理装置を示す概略説明図である。
第5の実施態様に係る処理装置1Eは、処理槽2、反応部3、硫黄除去手段4を備える処理装置であって、硫黄除去手段4として、反応部3における電極33aと33bの配置を入れ替える電極入替手段48を設けたものである。なお、第1の実施態様の構成と同じものについては、説明を省略する。
【0097】
上述したように、本発明に係る処理装置における硫黄除去手段4は、流路の切り替えにより、反応部におけるアノードとカソードを入れ替えるものとしてもよいが、本実施態様の処理装置1Eにおける硫黄除去手段4のように、反応部3における電極配置を直接入れ替える電極入替手段48を設けるものとしてもよい。これにより、処理装置1Eにおいて流路を増やすことなく、アノードとカソードを簡便に変更することができる。
本実施態様の硫黄除去手段4(電極入替手段48)により、アノード側で使用することで硫黄成分が堆積した電極について、カソード側で使用することで、式5及び式6に基づき、堆積した硫黄成分を除去することが可能となる。
このとき、電極入替手段48としては、電極33a及び電極33bの表面が露出した状態で筐体内に配置し、反応部3から取り出し可能とした電極ユニットとして反応部3に設け、この電極ユニットを取り出して半回転させて再度設置することなどが挙げられる。これにより、電極33a及び33bの配置を容易に入れ替えることが可能となるとともに、電極33a及び電極33bのメンテナンス時においても、反応部3から取り出すことが容易となるため、メンテナンス作業が容易となる。
【0098】
以上のように、本実施態様における処理装置1E及び処理装置1Eを用いた処理方法は、電極配置を入れ替えることで、反応部におけるアノードとカソードを入れ替えることができる。これにより、アノード側の電極反応が進行することで表面に硫黄成分が堆積した電極を、容易にカソード側の反応に供することが可能となる。これにより、電極表面に堆積した硫黄除去を行うことができるとともに、反応部における処理を連続して行うことが可能となる。
【0099】
本発明の処理装置は、被処理水Wのような液体成分を処理槽2において嫌気処理するものに限定されない。また、反応部3に供給する処理水は、処理槽2から直接排出されるものに限定されない。
以下、本発明の処理装置における別態様として、処理対象である被処理物がバイオマスなどの固体成分からなるものについて例示する。
【0100】
〔第6の実施態様〕
図8は、本発明の第6の実施態様における処理装置を示す概略説明図である。
第6の実施態様に係る処理装置1Fは、図8に示すように、処理槽2と反応部3の間に、固液分離部6を備え、さらに硫黄除去手段4を備えるものである。なお、図8には、硫黄除去手段4として、硫黄処理槽40を用いるものを示しているが、これに限定されるものではなく、本実施態様における処理装置1Fには、上述した硫黄除去手段4を適宜選択することができる。
また、処理装置1Fは、処理槽2に被処理物Sを導入する導入配管L20、処理槽2と固液分離部6を接続する接続配管L21、固液分離部6で分離された処理水W4を反応部3に導入する導入配管L22、固液分離部6で分離された固形物を系外に排出する排出配管L23、反応部3から処理水W2を系外に排出する排出配管L24を備えている。
【0101】
図8に示した処理装置1Fでは、被処理物Sに対して処理槽2による嫌気処理を行い、固液分離部6において嫌気処理を経た後の排出物(処理液W3)を処理水W4(濾液)と固形物に分離し、処理水W4を反応部3に導入する。これにより、被処理物Sの嫌気処理後の排出物を活用し、より効率的なエネルギーの回収・利用あるいは脱硫処理が可能となる。
以下、処理装置1Fの構成について説明する。
【0102】
(処理槽)
本実施態様における処理槽2は、バイオマスなどの固体成分に対して嫌気処理を行うものである。
本実施態様における処理槽2で行う嫌気処理としては、処理コストや生成ガスの有用性の観点から、メタンを生成するメタン発酵が特に好ましい。したがって、処理槽2は、被処理物Sの消化を行う消化設備として機能する構造を有することが好ましい。より具体的には、処理槽2は、消化槽として公知の構造を有することが好ましく、消化槽に係る具体的な構造については特に限定されない。
【0103】
処理槽2において、嫌気処理のうち、特にメタン発酵を行う場合、被処理物Sを処理した後の排出物(処理液W3)中には、メタンのほか、硫化水素、水素、アンモニア等が生成する。なお、これら生成物は、本発明における還元性物質に相当するものである。
【0104】
処理槽2で処理された被処理物Sは還元性物質を含有する排出物(処理液W3)となり、接続配管L2を介して、固液分離部6へ導入される。
【0105】
(固液分離部)
固液分離部6は、処理槽2から導入された処理液W3を、固形物と処理水W4に分離処理するためのものである。
ここで、固液分離部6で分離処理される処理液W3は、処理槽2で嫌気処理された後の排出物であり、余剰汚泥などの泥状物を含む固液混合物(スラッジ)である。また、処理液W3中には、メタン発酵により生成した還元性物質が含有されている。
したがって、固液分離部6で処理液W3を固液分離し、還元性物質を含有する処理水W4を回収して後段の反応部3に導入することで、還元性物質を電子供与体とする反応を進行させることが可能となる。
【0106】
固液分離部6としては、処理液W3中に含まれる固形物と処理水W4とを分離することができるものであればよく、特に限定されない。例えば、凝集沈殿槽、沈殿槽のような沈降分離式によるものや、遠心分離機を備える遠心分離式によるもののほか、ベルトプレス脱水機やスクリュープレス脱水機のような加圧濾過装置を備えるものなどが挙げられる。
【0107】
固液分離部6で分離された処理水W4は、還元性物質を含有する処理水(処理水W1に相当)として導入配管L22を介し、反応部3へ導入される。一方、固液分離部6で分離された固形物は、排出配管L23を介して系外に排出される。このとき、排出配管L23の後段に、固形物を処理する処理設備を設けるものとしてもよい。
【0108】
そして、処理水W4が導入された反応部3では、上述した処理水W1を用いた場合と同様に、処理水W4中の還元性物質を電子供与体として発電を行うとともに、処理水W4中の還元性物質のうち、硫化水素などの硫黄含有化合物を電子供与体とすることで、脱硫処理を行うことも可能となる。
【0109】
以上のように、本実施態様の処理装置1F及び処理装置1Fを用いた処理方法により、被処理物の嫌気処理後の排出物を活用し、固体成分からなる被処理物の嫌気処理においても、発電による効率的なエネルギーの回収・利用や脱硫処理を行うことが可能となる。特に、嫌気処理後の排出物を固液分離した濾液中に含まれる還元性物質を用いた電極反応を可能とすることで、嫌気処理で用いる微生物による物質移動の阻害や、微生物の代謝速度に基づく律速段階がなく、発電効率や脱硫処理効率の向上が可能となる。また、微生物燃料電池による発電と比べて設備を小型化することができる。さらに、脱硫処理のための設備を別途設けることなく、効率的な脱硫処理を実施することが可能となる。
【0110】
なお、上述した実施態様は、処理装置及び処理方法並びに硫黄含有物質生成装置の一例を示すものである。本発明に係る処理装置及び処理方法並びに硫黄含有物質生成装置は、上述した実施態様に限られるものではなく、請求項に記載した要旨を変更しない範囲で、上述した実施態様に係る処理装置及び処理方法並びに硫黄含有物質生成装置を変形してもよい。
【0111】
例えば、本実施態様における処理装置は、絶縁機構を設けるものとしてもよい。絶縁機構は、反応部3で反応する処理水W1以外の処理水(処理水W2)を絶縁することができるものであればよく、特に限定されない。
絶縁機構による絶縁手段としては、例えば、反応部3の電極33aと処理水W2との電気的な接触(液絡)の解消あるいは液絡時間の短縮が挙げられる。このような液絡解消手段又は液絡時間の短縮手段の例としては、処理水W2の流れを不連続(断続的)とする手段や、処理水W2に空気などの絶縁体を介在させる手段、あるいはこれらの手段を組み合わせるもの等が挙げられる。これにより、反応部3で生成した電子が電極33a及び電極33bの間以外に流れることを防ぎ、電極反応効率を向上させるものである。
なお、本実施態様における処理装置は、第1の実施態様に示したような処理装置を構成する構造物(処理槽や配管)に係る絶縁を併せて行うものとしてもよい。これにより、より一層の絶縁効果を得ることができ、反応部3における電極反応効率を向上させることが可能となる。
【0112】
また、例えば、本実施態様における処理装置は、一部の構造を省略し、装置構成をより簡略化するものとしてもよい。
省略可能な構造としては、例えば、イオン交換体35が挙げられる。これにより、反応部3の簡略化が可能となるとともに、メンテナンス作業が容易となる。
また、省略可能な構造の他の例としては、第2のセル31bにおける電子受容体供給口34a及び電子受容体排出口34bが挙げられる。これにより、反応部3をより簡略化することが可能となる。このとき、電極33bの一面が処理水W1又はイオン交換体35に接触し、もう一方の面が全体的に外気(空気)に直接接触する構造とすること等が挙げられる。さらに、外気側の電極33b表面に交換又は洗浄容易な通気性素材を設けることが好ましい。これにより、塵などの固体不純物が電極33b表面に付着することを抑制することができる。
【0113】
また、例えば、本実施態様における処理装置は、各実施態様で示した硫黄除去手段4を複数組み合わせるものとしてもよい。複数の硫黄除去手段4を組み合わせることで、電極表面に堆積した硫黄成分を確実に除去し、電極反応効率を向上させることができる。また、処理装置に接続される硫黄含有物質生成装置において得られる有益な硫黄含有物質の量を増加させることも可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明の処理装置及び処理方法並びに硫黄含有物質生成装置は、被処理水を処理する処理に利用される。特に、被処理水を処理することにより還元性物質が発生する処理において、好適に利用されるものである。
【符号の説明】
【0115】
1A,1B,1C,1D,1E,1F 処理装置、2 処理槽、3,3A,3B 反応部、31a,31c 第1のセル、31b,31d 第2のセル、32a,32c 処理水導入口、32b,32d 処理水排出口、33a~33d 電極、34a,34c 電子受容体供給口、34b,34d 電子受容体排出口、35 イオン交換体、4 硫黄除去手段、40 硫黄処理槽、41,43,44 流路切替部、41a,41b,43a,44a 流路切替機構、42,46 制御部、44b 電子受容体供給槽、45 循環流路、47a,47b 貯留槽、48 電極入替手段、5 硫黄含有物質生成装置、50 硫黄回収手段、50a 回収槽、50b 添加手段、50c 回収機構、51 精製手段、51a 濾過装置、51b 精製操作用装置、6 固液分離部、B1,B2 バルブ、L1,L20 導入配管、L2,L21 接続配管、L3,L23 排出配管、L4~L18 配管、L10a,L10b,L11a,L11b 分岐管、S 被処理物、W 被処理水、W1~W4 処理水(処理液)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8