IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社小糸製作所の特許一覧

<>
  • 特許-面状ヒーターおよび車両用灯具 図1
  • 特許-面状ヒーターおよび車両用灯具 図2
  • 特許-面状ヒーターおよび車両用灯具 図3
  • 特許-面状ヒーターおよび車両用灯具 図4
  • 特許-面状ヒーターおよび車両用灯具 図5
  • 特許-面状ヒーターおよび車両用灯具 図6
  • 特許-面状ヒーターおよび車両用灯具 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-31
(45)【発行日】2024-08-08
(54)【発明の名称】面状ヒーターおよび車両用灯具
(51)【国際特許分類】
   H05B 3/84 20060101AFI20240801BHJP
   F21S 45/60 20180101ALI20240801BHJP
   H05B 3/20 20060101ALI20240801BHJP
   F21W 102/00 20180101ALN20240801BHJP
【FI】
H05B3/84
F21S45/60
H05B3/20 312
F21W102:00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021012981
(22)【出願日】2021-01-29
(65)【公開番号】P2022116679
(43)【公開日】2022-08-10
【審査請求日】2023-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 雄祐
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 友由
(72)【発明者】
【氏名】志藤 雅也
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-212463(JP,A)
【文献】特開2020-107429(JP,A)
【文献】特開平02-284377(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0116329(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第108954222(CN,A)
【文献】特開2007-242292(JP,A)
【文献】特開2016-197513(JP,A)
【文献】特開2017-157461(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 3/84
F21S 45/60
H05B 3/20
F21W 102/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板と、
前記透明基板上に配置された透明な面状発熱部と、
前記透明基板上で前記面状発熱部と同じ側に前記面状発熱部とは非重複に配置された発光部と、を備え
前記面状発熱部は、その外縁部に前記面状発熱部への給電部を有し、
前記発光部の少なくとも一部が、前記面状発熱部の前記給電部よりも外側で、前記給電部に沿って延在することを特徴とする面状ヒーター。
【請求項2】
前記面状発熱部の前記給電部は、前記発光部の延在方向に垂直な方向の幅が、前記発光部に比べて小さいことを特徴とする請求項に記載の面状ヒーター。
【請求項3】
前記面状発熱部は、抵抗加熱型のヒーターとして機能する第1透明電極層を有し、
前記発光部は、発光層と、前記発光層と前記透明基板との間に介在する第2透明電極層とを有し、
前記第2透明電極層は、前記透明基板上で前記第1透明電極層から分離して配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の面状ヒーター。
【請求項4】
前記第1透明電極層は、前記第2透明電極層、または前記発光部への給電部のいずれかと同じ材料で形成されていることを特徴とする請求項に記載の面状ヒーター。
【請求項5】
透明基板と、
前記透明基板上に配置された透明な面状発熱部と、
前記透明基板上で前記面状発熱部と同じ側に前記面状発熱部とは非重複に配置された発光部と、を備え、
前記面状発熱部は、赤外発光層と、前記赤外発光層と前記透明基板との間に介在する透明電極層とを有し、
前記発光部は、発光層を有し、前記面状発熱部の前記透明電極層と同じ層である透明電極層が前記発光層と前記透明基板との間に介在することを特徴とする面状ヒーター。
【請求項6】
請求項1からのいずれかに記載の面状ヒーターと、
アウターレンズと、を備え、
前記面状ヒーターは、前記アウターレンズ上に、または前記アウターレンズに対向して配置されていることを特徴とする車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、面状ヒーター、および面状ヒーターを備える車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有機EL(Electroluminescence)などの面発光型表示パネルを用いた車両用標識灯において、融雪のために抵抗加熱型のヒーターを設けたものが知られている。表示パネルとヒーターは、アウターカバーの内側に配置され、アウターカバー、表示パネルおよびヒーターが互いに重なり一体とされている。このヒーターの発熱部は、酸化インジウムスズ(ITO)のような透明材料で形成され、光透過性を有する(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-212463号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、上記の車両用標識灯について検討したところ、以下の課題を認識するに至った。ヒーターには、その発熱部への給電のために給電部が設けられ、この給電部に電源からの配線が接続される。給電部は一般に、銅、アルミニウムなど不透明な導電材料で形成される。ヒーターはアウターカバー内側に接着され、またはフレームで支持されてアウターカバーに近接して配置され、外部から見てヒーター全体が露出されうる。発熱部が透明であるなかで、不透明な給電部やフレームが悪目立ちして灯具の見映えを損なう懸念がある。給電部やフレームに目隠しを設けるなどすれば見映えを改善しうるが、構造が複雑となり製造コストの増加につながりうる。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、製造コストの増加を抑えつつ見映えを向上した面状ヒーター、およびそうした面状ヒーターを備える車両用灯具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の面状ヒーターは、透明基板と、透明基板上に配置された透明な面状発熱部と、透明基板上で面状発熱部と同じ側に面状発熱部とは非重複に配置された発光部と、を備える。
【0007】
この態様によると、発光部が発光し、見る人の目をそこに引きつけることにより、面状発熱部への給電部が目立ちにくくなり、面状ヒーターの見映えが向上される。また、面状発熱部と発光部が透明基板の同じ側で非重複に配置されるので、例えばこれらを同時に成膜する(面状発熱部と発光部それぞれに含まれる層を同じ成膜工程を利用して透明基板上に形成する)等、製造コストの増加をなるべく抑える手法を採りながら、発光部を組み込んだ面状ヒーターを提供することができる。
【0008】
面状発熱部は、その外縁部に面状発熱部への給電部を有し、発光部の少なくとも一部が、面状発熱部の給電部よりも外側で、給電部に沿って延在してもよい。このようにすれば、発光部が給電部に沿って延在することから、発光部の発光により給電部がより目立ちにくくなり、これは面状ヒーターの見映え向上に役立つ。
【0009】
面状発熱部の給電部は、発光部の延在方向に垂直な方向の幅が、発光部に比べて小さい。このように、面状発熱部の給電部を発光部に比べて細幅とすることにより、給電部を目立ちにくくすることができる。
【0010】
面状発熱部は、抵抗加熱型のヒーターとして機能する第1透明電極層を有してもよい。発光部は、発光層と、発光層と透明基板との間に介在する第2透明電極層とを有してもよい。第2透明電極層は、透明基板上で第1透明電極層から分離して配置されていてもよい。このようにすれば、透明基板への面状発熱部と発光部の実用的な実装を提供できる。
【0011】
第1透明電極層は、第2透明電極層、または発光部への給電部のいずれかと同じ材料で形成されていてもよい。このようにすれば、同じ材料が使用されることから、第2透明電極層の成膜工程、または発光部への給電部の成膜工程を利用して第1透明電極層も同時に形成することができる。第1透明電極層を別の工程で形成する場合に比べて、効率的な製造が可能となり、製造コストの増加を抑えられる。
【0012】
面状発熱部は、赤外発光層と、赤外発光層と透明基板との間に介在する透明電極層とを有してもよい。発光部は、発光層を有し、面状発熱部の透明電極層と同じ層である透明電極層が発光層と透明基板との間に介在してもよい。このようにすれば、透明基板への面状発熱部と発光部の実用的な実装を提供できる。
【0013】
本発明の別の態様は、車両用灯具に関する。車両用灯具は、上記のいずれかの態様の面状ヒーターと、アウターレンズと、を備える。面状ヒーターは、アウターレンズ上に、またはアウターレンズに対向して配置されている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、製造コストの増加を抑えつつ見映えを向上した面状ヒーター、およびそうした面状ヒーターを備える車両用灯具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施の形態に係る車両用灯具を示す概略正面図である。
図2図1に示される車両用灯具のA-A線による概略断面図である。
図3図1に示される面状ヒーターの回路構成の一例を示す模式図である。
図4図1に示される面状ヒーターと接続回路基板の接続の一例を示す模式図である。
図5図1に示される面状ヒーターのB-B線による概略断面図である。
図6】他の実施の形態に係る面状ヒーターの概略断面図である。
図7】更なる他の実施の形態に係る車両用灯具の概略断面図である
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図に示す各部の縮尺や形状は、説明を容易にするために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。また、本明細書または請求項中に用いられる「第1」、「第2」等の用語は、いかなる順序や重要度を表すものでもなく、ある構成と他の構成とを区別するためのものである。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0017】
図1は、実施の形態に係る車両用灯具10を示す概略正面図である。図2は、図1に示される車両用灯具10のA-A線による概略断面図である。車両用灯具10は、車両(例えば自動車)の前部の左右に配置される一対の前照灯ユニットを有する車両用前照灯装置である。一対の前照灯ユニットは実質的に同一の構成であるため、図1および図2には車両用灯具10として左右いずれか一方側に配置される前照灯ユニットの構造を示す。
【0018】
車両用灯具10は、前方に開口された凹部を有するランプボディ12と、ランプボディ12の開口を閉塞するアウターレンズ14とを備える。アウターレンズ14は、光透過性をもつカバーであり、アウターカバーなどとも称される。ランプボディ12とアウターレンズ14が互いに結合されて両者間に車両用灯具10の構成要素を収納するための灯室16が形成される。
【0019】
また、車両用灯具10は、アウターレンズ14の内側(つまり灯室16内)に配置された面状ヒーター20を備える。この実施の形態では、面状ヒーター20は、アウターレンズ14上に配置されている。面状ヒーター20は、例えば、アウターレンズ14の内面に接着されることにより、アウターレンズ14に固定されてもよい。面状ヒーター20は、フィルム状に形成され、可撓性を有してもよく、それにより、アウターレンズ14の内面の形状に追従してもよい。
【0020】
あるいは、面状ヒーター20は、アウターレンズ14に対向して配置されてもよい。この場合、面状ヒーター20は、アウターレンズ14に(またはランプボディ12)に支持されることにより、アウターレンズ14からいくらかの隙間をあけて配置されてもよい。
【0021】
面状ヒーター20への給電のために、面状ヒーター20は、接続回路基板18を介して電源(図1および図2では図示を省略)に接続可能である。接続回路基板18は、例えばフレキシブルプリント基板(FPC)であってもよい。接続回路基板18は、面状ヒーター20の外縁部に接続され、そこからランプボディ12側に延びていてもよい。それにより、図1に示されるように、車両用灯具10を正面から見たとき接続回路基板18が見えないようにすることができる。あるいは、エクステンションなどの目隠し部材が灯室16内に設けられ、それによって接続回路基板18が正面から見えないように隠されてもよい。
【0022】
面状ヒーター20は、その長手方向に細長く延びている。面状ヒーター20の長手方向は、図1において左右方向であり、車幅方向に相当する。図2に示されるように、接続回路基板18は、例えば、面状ヒーター20の長手方向端部で面状ヒーター20に接続されてもよい。
【0023】
面状ヒーター20は、面状発熱部22と発光部24とを備える。面状発熱部22と発光部24は、正面から見て重なり合わないように、面状ヒーター20上で互いに隣接して配置されている。この実施の形態では、発光部24が面状発熱部22を少なくとも部分的に縁取るように設けられている。面状ヒーター20の中心部に面状発熱部22が配置され、その外周の少なくとも一部に沿って発光部24が配置されている。発光部24は、線状または面状の発光素子として構成される。
【0024】
一例として、面状ヒーター20上には1つの面状発熱部22と2つの発光部24が設けられている。面状ヒーター20のうち大部分の領域が面状発熱部22とされ、発光部24は、面状発熱部22の上縁と下縁に沿って配置されている。面状発熱部22は、面状ヒーター20の長手方向に細長く延びており、発光部24もこの長手方向に沿って面状発熱部22の両側で延びている。面状発熱部22と発光部24で長手方向に垂直な方向(以下、短手方向ともいう)の幅を比べると、発光部24の幅は面状発熱部22よりも小さい。面状ヒーター20の短手方向は、図1における上下方向であり、鉛直方向に相当する。
【0025】
なお、面状発熱部22と発光部24は図示される特定の配置には限定されない。例えば、上縁と下縁をつなぐ側縁(例えば、接続回路基板18が接続される面状ヒーター20の縁部とは反対側であり、図1において面状発熱部22の右縁)にも発光部24が設けられてもよい。あるいは、面状発熱部22の全周にわたり発光部24が設けられてもよい。あるいは、図示の例とは逆に、面状ヒーター20の中心部に発光部24が配置され、その外周の少なくとも一部に沿って面状発熱部22が配置されてもよい。面状ヒーター20上に複数の面状発熱部22が設けられてもよい。また、面状ヒーター20上に単一または3以上の発光部24が設けられてもよい。そのほか様々な配置パターンで面状ヒーター20上に面状発熱部22と発光部24が配置されてもよい。
【0026】
図3は、図1に示される面状ヒーター20の回路構成の一例を示す模式図である。図4は、図1に示される面状ヒーター20と接続回路基板18の接続の一例を示す模式図である。
【0027】
面状ヒーター20の面状発熱部22には、第1陽極給電部26と第1陰極給電部28が設けられる。第1陽極給電部26は、接続回路基板18の第1陽極端子部30に接続され、第1陰極給電部28は、接続回路基板18の第1陰極端子部32に接続される。接続回路基板18は、第1陽極端子部30を第1電源34のプラス側電極に接続し、第1陰極端子部32を第1電源34のマイナス側電極に接続する。このようにして、第1電源34は、接続回路基板18を介して面状発熱部22に給電することができる。
【0028】
また、2つの発光部24にはそれぞれ、第2陽極給電部36と第2陰極給電部38が設けられる。第2陽極給電部36は、接続回路基板18の第2陽極端子部40に接続され、第2陰極給電部38は、接続回路基板18の第2陰極端子部42に接続される。接続回路基板18は、第2陽極端子部40を第2電源44のプラス側電極に接続し、第2陰極端子部42を第2電源44のマイナス側電極に接続する。このようにして、第2電源44は、接続回路基板18を介して発光部24に給電することができる。また、面状発熱部22と発光部24はそれぞれ個別の電源に接続されるので、別々に動作させることができる。
【0029】
図4に示されるように、面状発熱部22は、その外縁部に面状発熱部22への給電部(すなわち、第1陽極給電部26、第1陰極給電部28)を有する。この実施の形態では、第1陽極給電部26と第1陰極給電部28はそれぞれ、面状発熱部22の上縁と下縁に設けられ、長手方向に沿って延びている。
【0030】
面状発熱部22は、後述のようにITO等の透明導電材料で形成されうるが、一般に透明導電材料はその物性により、例えば銅などのよく用いられる不透明な導電材料に比べて電気抵抗値が高くなりがちである。面状発熱部22の給電部(すなわち、第1陽極給電部26、第1陰極給電部28)を長手方向に沿って配置することにより、これら給電部は面状発熱部22を挟んで短手方向に並ぶことになり、長手方向両端に給電部を設ける場合に比べて、給電部間の距離を短くすることができる。これにより、より低い電圧で面状発熱部22を動作させることができる。
【0031】
発光部24の少なくとも一部が、面状発熱部22の給電部よりも外側で、この給電部に沿って延在する。発光部24はその全長にわたって面状発熱部22の給電部に沿って延在してもよく、または、発光部24の一部が面状発熱部の給電部に沿って延在してもよい。言い換えれば、面状発熱部22への給電部はその少なくとも一部が面状発熱部22と発光部24の境界部分に配置されている。このようにすれば、発光部24が面状発熱部22の給電部に沿って延在することから、発光部24の発光により面状発熱部22の給電部が目立ちにくくなり、面状ヒーター20の見映え向上に役立つ。
【0032】
面状発熱部22の給電部は、発光部24の延在方向に垂直な方向(この例では短手方向)の幅W1が、発光部24の幅W2に比べて小さい(W1<W2)。給電部は典型的に、例えば銅、アルミニウムなど不透明な導電材料で形成される。しかしながら、面状発熱部22の給電部を発光部24に比べて細幅とすることにより、給電部を目立ちにくくすることができる。
【0033】
実際のところ、給電部は、実質的に視認不能となるように細線状に形成されうる。給電部は、例えば1mm以下(例えば100μm程度)の線状に形成されてもよい。このようにすれば、給電部をほとんどまたはまったく目立たないようにすることができる。
【0034】
発光部24への給電部は、発光部24の外縁部に設けられている。第2陽極給電部36は、発光部24が有する透明陽極(後述)への効率的な給電のために、発光部24の上縁または下縁に設けられ、長手方向に沿って延びている。図示される例では、第2陽極給電部36は、発光部24に対し外側に設けられているが、発光部24に対し内側(つまり面状発熱部22と発光部24の境界部分)に設けられてもよい。第2陽極給電部36も、実質的に視認不能となるように細線状に形成されうる。第2陰極給電部38は、発光部24の陰極に銅などの電気抵抗値の低い材料を使用可能であるため、長手方向に延在する必要は無く、発光部24の端部に配置されている。
【0035】
面状ヒーター20と接続回路基板18は、異方性導電膜(ACF)を用いて接続される。図4に示される接続回路基板18を裏返して異方性導電膜により面状ヒーター20と貼り合わせることにより、対応する面状ヒーター20の給電部と接続回路基板18の端子部とが異方性導電膜を挟んで電気的に接続される。
【0036】
図5は、図1に示される面状ヒーター20のB-B線による概略断面図である。図5には、面状ヒーター20の面状発熱部22と発光部24それぞれの層構造が模式的に示されている。
【0037】
面状ヒーター20は、透明基板50を有し、この透明基板50上に面状発熱部22と発光部24が形成されている。発光部24は、透明基板50上で面状発熱部22と同じ側に面状発熱部22とは非重複に配置されている。面状発熱部22と発光部24は、透明基板50上で互いに隣接しているが、分離して配置されている。
【0038】
透明基板50は、一例として、光透過性を有する合成樹脂材料で形成されたフィルム状の基板である。あるいは、透明基板50は、例えばガラスなど他の透明材料で形成されてもよい。透明基板50は、例えば無色透明であるが、用途に応じて有色透明とされてもよい。透明基板50は、外部から発光部24への水分や酸素等の侵入を防ぐためのバリア層としての役割も果たす。面状ヒーター20がアウターレンズ14に接着される場合、面状発熱部22と発光部24が設けられた面(図5において上面)とは反対側の透明基板50の面(図5において下面)に接着剤が塗布されてもよい。
【0039】
面状発熱部22は、透明基板50上に形成され、抵抗加熱型のヒーターとして機能する第1透明電極層52を備える。第1透明電極層52は、光透過性を有する。そのために、第1透明電極層52は、例えばITO等の透明導電材料で形成される。あるいは、第1透明電極層52は、例えば銅などの不透明な導電材料で形成されたメッシュ電極であってもよい。第1透明電極層52についても、例えば無色透明であるが、用途に応じて有色透明とされてもよい。第1陽極給電部26と第1陰極給電部28はそれぞれ、第1透明電極層52の縁に沿って設けられ、第1透明電極層52と電気的に接続される。このようにして、面状発熱部22は、透明フィルムヒーターとして構成される。
【0040】
発光部24は、透明基板50上に形成され、この実施の形態では発光部24の陽極として機能する第2透明電極層54を備える。第2透明電極層54は、例えばITO等の透明導電材料で形成されている。第2透明電極層54は、透明基板50上で面状発熱部22の第1透明電極層から分離して配置されている。
【0041】
第2透明電極層54は、第1透明電極層52と同じ材料(例えばITO)で形成されてもよい。このようにすれば、同じ材料が使用されることから、第1透明電極層52と第2透明電極層54を同じ成膜工程を利用して同時に形成することができる。第1透明電極層52と第2透明電極層54を別の工程で形成する場合に比べて、効率的な製造が可能となり、製造コストの増加を抑えられる。
【0042】
あるいは、第1透明電極層52が、発光部24(または面状発熱部22)への給電部と同じ材料(例えば銅)で形成されてもよい。この場合、第1透明電極層52は、メッシュ電極であってもよい。このようにすれば、第1透明電極層52と給電部を同じ成膜工程を利用して同時に形成することができる。第1透明電極層52と給電部を別の工程で形成する場合に比べて、効率的な製造が可能となり、製造コストの増加を抑えられる。
【0043】
発光部24は、第2透明電極層54に加えて、発光層56、陰極層58、バリア層60を備え、これらは透明基板50上に順に積層されている。第2透明電極層54は、発光層56と透明基板50との間に介在する。発光層56は、有機EL材料で形成されている。第2透明電極層54と陰極層58との間に電圧が印加されるとき、発光層56は可視光で発光することができる。陰極層58は、例えば銅、アルミニウムなど不透明な導電材料で形成される。バリア層60は、透明基板50とともに発光部24への水分や酸素等の侵入を防ぐために設けられている。第2陽極給電部36は、第2透明電極層54の縁に沿って設けられ、第2透明電極層54と電気的に接続される。図4を参照して上述したように、第2陰極給電部38は、発光部24の端部に配置され、陰極層58と電気的に接続される。このようにして、発光部24は、フィルム状の有機EL素子として構成される。
【0044】
面状発熱部22の給電部(すなわち第1陽極給電部26、第1陰極給電部28)は、発光部24とは電気的に接続されていない。図示されるように、面状発熱部22の給電部と発光部24の各層との間にバリア層60が介在することにより、面状発熱部22と発光部24が電気的に絶縁されてもよい。
【0045】
なお、陰極層58に透明導電材料が用いられてもよい。この場合、発光部24の両方の電極層が透明となるので、第2透明電極層54を陰極として利用し、他方の透明電極(図5の陰極層58)を陽極として利用することもできる。また、バリア層60も透明材料で形成されてもよく、発光部24が透明な有機EL素子として構成されてもよい。
【0046】
ところで、車両用灯具10が車両に設置されているとき、アウターレンズ14の外面は外部環境にさらされる。降雪時にはアウターレンズ14に雪が付着したり凍結したりすることがある。実施の形態に係る面状ヒーター20によれば、第1電源34から接続回路基板18を通じて面状発熱部22に給電することにより、面状発熱部22を発熱させてアウターレンズ14を加熱し、付着した雪や氷を溶かすことができる。
【0047】
また、実施の形態に係る面状ヒーター20によれば、第2電源44から接続回路基板18を通じて発光部24に給電することにより、発光部24を発光させることができる。発光部24が発する光は灯室16からアウターレンズ14を通じて外部に出射される。発光部24が発光し、見る人の目をそこに引きつけることにより、面状発熱部22への給電部が目立ちにくくなり、面状ヒーター20の見映えが向上される。発光部24は、車両用灯具10の光源として機能してもよい。
【0048】
上述のように、面状発熱部22と発光部24が透明基板50の同じ側で非重複に配置されるので、例えばこれらを同時に成膜する(面状発熱部22の第1透明電極層52と発光部24の第2透明電極層54を同じ成膜工程を利用して透明基板50上に形成する)等、製造コストの増加をなるべく抑える手法を採りながら、発光部24を組み込んだ面状ヒーター20を提供することができる。
【0049】
図6は、他の実施の形態に係る面状ヒーター20の概略断面図である。図6には、図5と同様に、面状ヒーター20の面状発熱部22と発光部24それぞれの層構造が模式的に示されている。この実施の形態では、面状発熱部22が赤外発光素子、例えば赤外発光有機EL素子として構成される点で、面状発熱部22が抵抗加熱型の加熱素子である上述の実施の形態と異なるが、その余については上述の実施の形態と同様の構成とすることができる。
【0050】
面状発熱部22は、透明基板50上に形成され、この実施の形態では面状発熱部22の陽極として機能する透明電極層62を備える。面状発熱部22は、透明電極層62に加えて、赤外発光層64、陰極として機能するもう1つの透明電極層66、バリア層68を備え、これらは透明基板50上に順に積層されている。陽極としての透明電極層62は、赤外発光層64と透明基板50との間に介在する。これら2つの透明電極層は、例えばITO等の透明導電材料で形成されている。赤外発光層64は、2つの透明電極層間に電圧が印加されるとき赤外発光可能な有機EL材料で形成されている。こうした赤外発光可能な有機EL材料は、公知のものを利用可能である。赤外発光層64は、薄膜であり(例えば数百μm程度の厚さ)、実質的に透明である。バリア層68は、透明基板50とともに面状発熱部22への水分や酸素等の侵入を防ぐために設けられている。バリア層68は、透明材料で形成されてもよい。このようにして、面状発熱部22は、透明なフィルム状の赤外発光有機EL素子として構成される。面状発熱部22は、例えば無色透明であるが、用途に応じて有色透明とされてもよい。
【0051】
発光部24は、透明基板50上に形成され、この実施の形態では発光部24の陽極として機能する透明電極層62を備える。図6から理解されるように、この透明電極層62は、面状発熱部22の透明電極層62と同じ層である。発光部24は、透明電極層62に加えて、発光層56と陰極層58を備え、これらは透明基板50上に順に積層されている。透明電極層62は、発光層56と透明基板50との間に介在する。発光層56は、有機EL材料で形成され、透明電極層62と陰極層58との間に電圧が印加されるとき、発光層56は可視光で発光することができる。陰極層58は、例えば銅、アルミニウムなど不透明な導電材料で形成される。また、バリア層68は、面状発熱部22だけでなく発光部24への水分や酸素等の侵入を防ぐように発光部24も被覆している。
【0052】
透明電極層62が面状発熱部22と発光部24に共通していることから、これを1回の成膜工程で透明基板50上に形成することができる。面状発熱部22と発光部24に別々の透明電極層を形成する場合に比べて、効率的な製造が可能となり、製造コストの増加を抑えられる。
【0053】
陽極給電部70が、透明電極層62の両縁に沿って設けられ、透明電極層62と電気的に接続される。陽極給電部70は、面状発熱部22と発光部24に共通のプラス側給電部として設けられている。陽極給電部70は、接続回路基板18を介して電源のプラス側電極に接続される。また、面状発熱部22用の陰極給電部72は、透明電極層66の縁に沿って設けられ、透明電極層66と電気的に接続される。図4を参照して上述したように、発光部24用の第2陰極給電部38は、発光部24の端部に配置され、陰極層58と電気的に接続される。陰極給電部72と第2陰極給電部38は、接続回路基板18を介して電源のマイナス側電極に接続される。このようにして、電源から接続回路基板18を通じて面状ヒーター20に給電することにより、面状発熱部22を発熱させるとともに、発光部24を発光させることができる。
【0054】
このようにしても、製造コストの増加を抑えつつ見映えを向上した面状ヒーター20、およびそうした面状ヒーター20を備える車両用灯具10を提供することができる。
【0055】
なお、陰極層58に透明導電材料が用いられてもよい。この場合、透明電極層66と陰極層58は同じ材料で形成されてもよい。このようにすれば、透明電極層66と陰極層58を同じ成膜工程を利用して同時に形成することができる。透明電極層66と陰極層58を別の工程で形成する場合に比べて、効率的な製造が可能となり、製造コストの増加を抑えられる。
【0056】
本発明は、上述した実施の形態及び変形例に限定されるものではなく、実施の形態及び変形例を組み合わせたり、当業者の知識に基づいて各種の設計変更などのさらなる変形を加えたりすることも可能であり、そのような組み合わせ、もしくはさらなる変形が加えられた実施の形態や変形例も本発明の範囲に含まれる。上述した実施の形態や変形例、及び上述した実施の形態や変形例と以下の変形との組合せによって生じる新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態、変形例及びさらなる変形それぞれの効果をあわせもつ。
【0057】
図7は、更なる他の実施の形態に係る車両用灯具10の概略断面図である。車両用灯具10は、面状ヒーター20とともに追加の発光体80を備えてもよい。追加の発光体80は、面状ヒーター20と同様に、灯室16内に配置され、アウターレンズ14またはランプボディ12に支持されている。この発光体80は、例えば有機EL発光素子などの面状発光素子、またはLEDなどその他の光源であってもよい。
【0058】
一例として、発光体80は、面状ヒーター20の背後に配置されてもよい。発光体80は、面状ヒーター20と例えば接着により一体化されてもよく、または面状ヒーター20から隙間をあけて配置されてもよい。この場合、発光体80の発光部が面状ヒーター20の面状発熱部22の背後に配置されてもよい。面状発熱部22は透明であるから、発光体80の光は面状ヒーター20とアウターレンズ14を通じて外部に出射される。
【0059】
なお、発光体80の非発光部(例えば給電部など)が面状ヒーター20の発光部24の背後に配置されてもよい。このようにすれば、発光体80の非発光部も発光部24により目立たなくして車両用灯具10の見映えを向上することができる。
【0060】
上述の実施の形態では、面状ヒーター20がアウターレンズ14の内側に設けられているが、本発明はこれに限られない。ある実施の形態では、面状ヒーター20は、アウターレンズ14の外側に設けられてもよく、例えば、アウターレンズ14の外面に接着されてもよい。
【0061】
面状ヒーター20の発光部24は、有機EL素子には限定されない。発光部24は、無機ELなど他のEL素子、またはその他の発光素子でもよい。
【0062】
上述の実施の形態では、車両用灯具10としてヘッドランプを例示した。しかしながら、車両用灯具はこれに限定されず、実施の形態に係る面状ヒーター20は、ターンシグナルランプ、ストップランプ、クリアランスランプ、デイタイムランニングランプ、コーナーリングランプ、ハザードランプ、ポジションランプ、バックランプ、フォグランプ等の各種の車両用灯具に広く適用することができる。
【0063】
実施の形態にもとづき、具体的な語句を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用の一側面を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【符号の説明】
【0064】
10 車両用灯具、 14 アウターレンズ、 20 面状ヒーター、 22 面状発熱部、 24 発光部、 50 透明基板、 52 第1透明電極層、 54 第2透明電極層、 56 発光層、 62 透明電極層、 64 赤外発光層。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7