(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-31
(45)【発行日】2024-08-08
(54)【発明の名称】発光装置及び発光装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 33/54 20100101AFI20240801BHJP
H01L 33/58 20100101ALI20240801BHJP
H01L 33/56 20100101ALI20240801BHJP
H01S 5/0225 20210101ALI20240801BHJP
G02B 7/00 20210101ALI20240801BHJP
【FI】
H01L33/54
H01L33/58
H01L33/56
H01S5/0225
G02B7/00 F
(21)【出願番号】P 2021037864
(22)【出願日】2021-03-09
【審査請求日】2023-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000226242
【氏名又は名称】日機装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】櫻木 一義
(72)【発明者】
【氏名】一ノ倉 啓慈
【審査官】右田 昌士
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-169994(JP,A)
【文献】特開2006-250964(JP,A)
【文献】特開2016-111085(JP,A)
【文献】特表2021-508411(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0138443(US,A1)
【文献】特表2017-521872(JP,A)
【文献】国際公開第2020/022080(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00 - 33/64
H01S 5/00 - 5/50
G02B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子と、
前記発光素子に接着材を介して固定された光学部材と、を備え、
前記発光素子には、前記光学部材を外周側から囲むよう形成されるとともに前記光学部材の位置決めを行うガイド部が形成されて
おり、
前記ガイド部は、前記発光素子から発される光によって硬化する光硬化樹脂からなる、
発光装置。
【請求項2】
前記発光素子は、紫外光を発光し、
前記ガイド部は、紫外線硬化樹脂からなる、
請求項
1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記ガイド部は、前記光学部材の外周部に沿った複数箇所に点在している、
請求項1
又は2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記ガイド部は、前記光学部材の全周にわたって連続的に形成されている、
請求項1
又は2に記載の発光装置。
【請求項5】
発光素子と、前記発光素子に接着材を介して固定された光学部材と、を備え、前記発光素子に、前記光学部材を外周側から囲むよう形成されるとともに前記光学部材の位置決めを行うガイド部が形成されている、発光装置の製造方法であって、
前記発光素子に前記ガイド部を形成し、
前記ガイド部によって前記光学部材を前記ガイド部の内周側に案内しつつ、前記光学部材を前記発光素子に前記接着材を用いて接着させ
、
前記ガイド部は、前記発光素子から発される光によって硬化する光硬化樹脂からなり、
前記発光素子に前記ガイド部を形成する工程においては、溶融状態の前記光硬化樹脂を前記発光素子に配設し、前記発光素子を発光させることによって前記光硬化樹脂を硬化させて前記ガイド部を形成する、
発光装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置及び発光装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、紫外線を発光する半導体発光素子に、半導体発光素子から発された紫外線を外部に取り出しやすくするための光学部材(レンズ)を取り付けた発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)が開示されている。半導体発光素子と光学部材とは、これらの間に介在する接着材によって互いに接着されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、半導体発光素子と光学部材とを接着させる際、接着材が硬化するまでの間の接着材の流動性等により、半導体発光素子と光学部材との間の相対位置が、所望の位置からずれるおそれがある。半導体発光素子と光学部材との間の相対位置が所望の位置からずれると、発光ダイオード等の発光装置の配光特性、放射束強度等の光学特性が変動するおそれがあるため、発光素子と光学部材との間の相対位置のずれを抑制することが求められる。
【0005】
本発明は、前述の事情に鑑みてなされたものであり、発光素子と光学部材との間の相対位置のずれを抑制することができる発光装置及び発光装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記の目的を達成するため、発光素子と、前記発光素子に接着材を介して固定された光学部材と、を備え、前記発光素子には、前記光学部材を外周側から囲むよう形成されるとともに前記光学部材の位置決めを行うガイド部が形成されており、前記ガイド部は、前記発光素子から発される光によって硬化する光硬化樹脂からなる、発光装置を提供する。
【0007】
また、本発明は、前記の目的を達成するため、発光素子と、前記発光素子に接着材を介して固定された光学部材と、を備え、前記発光素子に、前記光学部材を外周側から囲むよう形成されるとともに前記光学部材の位置決めを行うガイド部が形成されている、発光装置の製造方法であって、前記発光素子に前記ガイド部を形成し、前記ガイド部によって前記光学部材を前記ガイド部の内周側に案内しつつ、前記光学部材を前記発光素子に前記接着材を用いて接着させ、前記ガイド部は、前記発光素子から発される光によって硬化する光硬化樹脂からなり、前記発光素子に前記ガイド部を形成する工程においては、溶融状態の前記光硬化樹脂を前記発光素子に配設し、前記発光素子を発光させることによって前記光硬化樹脂を硬化させて前記ガイド部を形成する、発光装置の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、発光素子と光学部材との間の相対位置のずれを抑制することができる発光装置及び発光装置の製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1の実施の形態における、発光装置の斜視図である。
【
図2】第1の実施の形態における、発光装置の正面図である。
【
図3】第1の実施の形態における、発光装置の平面図である。
【
図4】第1の実施の形態における、発光素子の構成を模式的に示した発光装置の正面図である。
【
図5】第1の実施の形態における、配置工程後の状態を示す正面図である。
【
図6】第1の実施の形態における、ガイド部形成工程の途中状態を示す正面図である。
【
図7】第1の実施の形態における、ガイド部形成工程後の状態を示す正面図である。
【
図8】第1の実施の形態における、光学部材配置工程における、治具にて光学部材4を下側へ押し込む状態を示す正面図である。
【
図9】第1の実施の形態における、光学部材配置工程後の状態を示す正面図である。
【
図10】第2の実施の形態における、発光装置の斜視図である。
【
図11】第2の実施の形態における、発光装置の正面図である。
【
図12】第2の実施の形態における、発光装置の平面図である。
【
図13】第3の実施の形態における、発光装置の斜視図である。
【
図14】第3の実施の形態における、発光装置の正面図である。
【
図15】第3の実施の形態における、発光装置の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1の実施の形態]
本発明の第1の実施の形態について、
図1乃至
図9を参照して説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、本発明を実施する上での好適な具体例として示すものであり、技術的に好ましい種々の技術的事項を具体的に例示している部分もあるが、本発明の技術的範囲は、この具体的態様に限定されるものではない。
【0011】
(発光装置1)
図1は、本形態における発光装置1の斜視図である。
図2は、発光装置1の正面図である。
図3は、発光装置1の平面図である。
図1乃至
図3において、発光素子2については、概略の外形形状を模式的に表している。また、
図1乃至
図3においては、便宜上、後述する
図5に示しているパッケージ基板(
図5における符号5参照)及びサブマウント(
図5における符号6参照)の図示を省略している。
【0012】
発光装置1は、発光素子2、接着材3、及び光学部材4を備える。本形態の発光装置1は、例えば発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)又は半導体レーザ(LD:Laser Diode)を構成するものとすることができる。本形態において、発光装置1は、発光素子2から光学部材4を通して深紫外光を外部に発する深紫外LEDを構成するものであり、例えば殺菌(例えば空気浄化、浄水等)、医療(例えば光線治療、計測・分析等)、UVキュアリング等の分野において用いることができる。
【0013】
以後、発光素子2と接着材3と光学部材4との並び方向(すなわち
図2の上下方向)を上下方向といい、上下方向の一方側であって発光素子2に対する光学部材4側(すなわち
図2の上側)を上側といい、その反対側(すなわち
図2の下側)を下側という。なお、上下の表現は便宜的なものであり、例えば発光装置1の使用時における、鉛直方向に対する発光装置1の姿勢を限定するものではない。
【0014】
発光素子2は、所定範囲の中心波長の光を発することができるよう構成されている。本形態において、発光素子2は、中心波長が200nm以上、350nm以下である深紫外光を発する。
【0015】
図4は、本形態における発光素子2の構成を模式的に示した、発光装置1の正面図である。発光素子2は、上側から順に基板21、n型半導体層22、発光層23、及びp型半導体層24を備えるとともに、n型半導体層22に接続されたn側電極25と、p型半導体層24に接続されたp側電極26とを備える。発光素子2は、基板21の上面である光取出面211から光を取り出し、発光素子2の下側に設けられたn側電極25及びp側電極26において後述のサブマウント6(
図5乃至
図9参照)に接続される、いわゆるフリップチップ実装型の発光素子である。
【0016】
n型半導体層22、発光層23、及びp型半導体層24を構成する半導体としては、直接遷移型の窒化物半導体のうち、例えばAlGaN(窒化アルミニウムガリウム)を採用することができる。AlGaNは、III族元素の組成(すなわちAl(アルミニウム)及びGa(ガリウム)の合計の組成)とN(窒素)の組成との比が1:1であり、Alの組成比とGaの組成比とを任意とした3元混晶又は2元混晶である。本形態において、基板21はサファイア基板であり、n型半導体層22はn型AlGaNを含み、発光層23はAlGaNを含み、p型半導体層24はp型AlGaNを含む。発光層23は、電子及びホールを再結合させて所定の波長の光(本形態においては深紫外光)を発生させる層であり、例えば単一量子井戸構造又は多重量子井戸構造とすることができる。なお、発光素子2の基本的な構成は、一般的な深紫外LEDの発光素子2の構成を採用することが可能である。
【0017】
図1及び
図3に示すごとく、光取出面211は、例えば一辺が1mm以下の四角形状を呈している。そして、光取出面211には、4つのガイド部27が形成されている。
【0018】
4つのガイド部27は、発光素子2に対する光学部材4の位置決めをする役割を有する。4つのガイド部27は、光学部材4に外周側から沿うよう形成されており、光学部材4の外周部に沿った周方向の4箇所に点在している。本形態において、4つのガイド部27は、周方向において等間隔に(すなわち90°置きに)配されている。上側から見たとき、4つのガイド部27は、四角形状の光取出面211の対角線上に形成されている。すなわち、4つのガイド部27は、光取出面211の四隅近傍に形成されている。上側から見たとき、4つのガイド部27の仮想的な内接円の直径は、光学部材4の直径(すなわち底面41の直径)以上、光学部材4の直径の1.01倍以下とすることができる。そして、4つのガイド部27は、光学部材4の外周部と近接対向している。少なくとも1つのガイド部27は、光学部材4の外周部と当接していてもよい。
【0019】
4つのガイド部27は、互いに同様の形状を有する。ガイド部27は、光取出面211から上側に突出するよう形成されており、上側に凸の半球状を呈している。なお、ガイド部27の形状は半球状に限られず、円柱状、多角柱状、円錐状、多角錐状等、半球状以外の形状とすることも可能である。
【0020】
図2に示すごとく、4つのガイド部27のそれぞれの上端位置は、光学部材4の底面41よりも上側に位置している。つまり、4つのガイド部27のそれぞれは、光学部材4の半球面42と径方向に対向している。各ガイド部27の上下方向の高さ寸法は、光学部材4の上下方向の高さ寸法の1/5の寸法以下であることが好ましく、1/7の寸法以下であることがさらに好ましい。この場合には、発光素子2から発される紫外光がガイド部27に吸収されて発光装置1の光取り出し効率が低下することを抑制しやすい。また、すべてのガイド部27の合計体積は、光学部材4の体積の1/100の体積以下であることが、発光装置1の光取り出し効率が低下することを抑制する観点から好ましい。同様の観点から、上側から見たときのすべてのガイド部27の合計面積は、上から見たときの光学部材4の面積の1/10の面積以下であることが好ましく、上から見たときの光学部材4の面積の1/30の面積以下であることがさらに好ましい。
【0021】
ガイド部27は、発光素子2から発される光(本形態においては深紫外光)によって硬化する光硬化樹脂(本形態においては紫外線硬化樹脂)からなる。本形態において、ガイド部27は、紫外線硬化樹脂として、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂等を採用することができる。詳細は後述するが、本形態の発光装置1の製造方法においては、発光素子2から紫外光を発し、当該紫外光を受けてガイド部27が硬化する。ガイド部27を構成する紫外線硬化樹脂の波長感度のピーク値は、発光素子2が発する紫外線の波長ピーク値と略一致していることが、紫外線硬化樹脂の硬化速度を早めて発光装置1の生産性を向上させる観点から好ましい。そして、発光素子2の光取出面211上であって、上側から見たときの4つのガイド部27の内周側に、接着材3を介して光学部材4が接着されている。
【0022】
接着材3は、紫外光の吸収が少なく(すなわち紫外光の透過率が高く)、光取出面211及び光学部材4の双方に接着する材料からなる。接着材3は、例えばシリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂等からなる。耐熱性、耐光性、及び紫外線帯域での屈折率の観点からは、接着材3をシリコーン樹脂から構成することが好ましい。また、接着材3として、低融点ガラス等、樹脂以外の素材を採用することも可能である。接着材3は、発光素子2の光取出面211と光学部材4の底面41との対向領域の全体に少なくとも充填されている。
【0023】
光学部材4は、発光素子2から発される光を透過する。本形態において、光学部材4は、上側に凸の半球レンズであり、上側から見たとき、光取出面211の外郭よりも内側に収まる大きさを有する。光学部材4の表面は、底面41と半球面42とを備える。底面41は、上下方向に直交する円状に形成されており、発光素子2の光取出面211と上下方向に対向している。底面41の略全体に接着材3が配されている。光学部材4の底面41の位置は、各ガイド部27の上下方向の中央位置よりも下側に位置している。これにより、光学部材4の下端部は、4つのガイド部27に囲まれる領域に入り込んでいる。
【0024】
発光素子2から発された紫外光は、底面41から光学部材4に入射され、半球面42から光学部材4の外部(空気等)へ出力される。発光素子2に光学部材4を取り付けることより、光学部材4から光学部材4の外部への紫外光の入射角を小さくすることができ、全反射の発生を低減することができる。その結果、発光装置1の光取り出し効率が向上する。
【0025】
本形態において、光学部材4は、例えばサファイア(Al2O3)、石英(SiO2)、サファイア含有石英、又はホウケイ酸ガラスからなる。光学部材4と接着材3との間の屈折率差、及び、接着材3と光取出面211を構成する基板21との間の屈折率差は、可能な限り小さいことが好ましい。これにより、光学部材4と接着材3との界面、及び、接着材3と基板21との界面において発光素子2から発された光が全反射等することを防ぎやすく、光取り出し効率を向上させやすい。
【0026】
なお、光学部材4は、半球レンズに限られず、複数のガイド部27によって発光素子2に対して位置決め可能な光学部材4であれば他のレンズを採用することが可能である。光学部材4は、光取出面211に対向する平面を有することが好ましい。光学部材4としては、半球レンズの他、例えば、シリンドリカルレンズ、複合放射面型集光レンズ(CPC:Compound Parabolic Concentrator)、又はこれらが複合的に組み合わされたレンズ等を採用することが可能である。
【0027】
(発光装置1の製造方法)
次に、
図5乃至
図9を参照しつつ、本形態の発光装置1の製造方法につき説明する。本形態の発光装置1の製造方法は、配置工程、ガイド部形成工程、光学部材配置工程をこの順に行う。
図5は、配置工程後の状態を示す正面図である。
図6は、ガイド部形成工程の途中状態を示す正面図である。
図7は、ガイド部形成工程後の状態を示す正面図である。
図8は、光学部材配置工程における、治具7にて光学部材4を下側へ押し込む状態を示す正面図である。
図9は、光学部材配置工程後の状態を示す正面図である。
【0028】
図5に示すごとく、配置工程においては、パッケージ基板5上にサブマウント6を配置し、サブマウント6上に発光素子2を配置する。パッケージ基板5及びサブマウント6のそれぞれには、図示しない配線パターンが形成されている。発光素子2は、基板21の光取出面211がサブマウント6と反対側に向けられ、n側電極25(
図4参照)とp側電極26(
図4参照)とのそれぞれがサブマウント6の配線パターンにAuバンプ等を介して電気的に接続されている。すなわち、発光装置1において、発光素子2はフリップチップ実装されている。そして、発光装置1は、パッケージ基板5及びサブマウント6のそれぞれの配線パターンを介して、発光素子2のn側電極25及びp側電極26のそれぞれに電力供給可能に構成されている。そして、配置工程の後、ガイド部形成工程に移る。なお、ガイド部形成工程に移る前に、光取出面211上の有機物を酸素プラズマ又はUV等によって洗浄してもよい。さらに、ガイド部27を構成する紫外線硬化樹脂に対する光取出面211の濡れ性を調整するために、ガイド部形成工程の前に光取出面211に表面改質処理を行ってもよい。
【0029】
次に、
図6に示すごとく、ガイド部形成工程においては、光取出面211の所定の4箇所に、溶融状態の紫外線硬化樹脂270を塗布する。具体的には、まず、カメラ等を用いて発光素子2の光取出面211の外周位置を読み取る。次いで、光取出面211の外周位置を基準として、紫外線硬化樹脂270が塗布される光取出面211の4箇所の塗布予定位置の座標を決定する。例えば、光取出面211の外周位置に基づいた塗布予定位置の座標を、塗布装置に人為的に入力することによって塗布予定位置の座標を決定することができる。また、光取出面211の外周位置に基づいた塗布予定位置が自動的に算出されるよう、塗布装置に予め設定することも可能である。塗布装置は、例えばディスペンサ、インクジェット等の塗布装置とすることができる。そして、塗布装置において、ヘッド(ノズル)を塗布予定位置に合わせて移動させ、4箇所の塗布予定位置に溶融状態の紫外線硬化樹脂270を塗布する。前述のごとく、光取出面211は一辺が1mm以下の四角形状と非常に小さいところ、例えばディスペンサ又はインクジェット等を用いて光取出面211に溶融状態の紫外線硬化樹脂270を所定の位置に高精度で塗布することが可能である。このとき、光取出面211の濡れ性及び紫外線硬化樹脂270の表面張力により、紫外線硬化樹脂270は上側に凸の半球状に形成される。
【0030】
そして、
図7に示すごとく、紫外線硬化樹脂270が光取出面211上において濡れ広がる前に、発光素子2に電力を供給し、発光素子2から深紫外光(
図7において矢印にて示す。)を発光させる。これに伴い、紫外線硬化樹脂270が深紫外光を浴びて硬化してガイド部27が形成される。
【0031】
次に、
図8に示すごとく、光学部材配置工程においては、接着材3を介して光学部材4を光取出面211上に配置する。このとき、まず、光学部材4の底面41に接着材3を塗布する。ここで、接着材3は、Bステージの熱硬化性樹脂の状態において光学部材4の底面41に配される。
図8において、Bステージの状態の接着材3に点々のハッチングをつけている。次いで、接着材3付きの光学部材4を、光取出面211における4つのガイド部27に囲まれる領域に配置する。このとき、本形態においてガイド部27は半球状に形成されているため、光学部材4は、4つのガイド部27のそれぞれの球面に案内され、光学部材4の中心部が4つのガイド部27の内接円の中心に近付くよう位置決めされる。かかる効果を得るためには、ガイド部27における光学部材4側を向く面部が、下側に向かうほど内周側に向かうよう湾曲又は傾斜していればよい。
【0032】
次いで、
図8に示すごとく、治具7を用いて光学部材4を下側に押し付ける。これにより、
図9に示すごとく、接着材3が押し広げられて薄くなって光学部材4が光取出面211に近付くとともに、光学部材4において上下方向に直交する方向に変位しようとする力が生じ得る。これは、流動性のある接着材3に光学部材4を押し付けたことにより、光学部材4が上下方向に直交する方向に滑るためである。そこで、本形態においては、光取出面211に4つのガイド部27を設け、前述のような光学部材4の滑りを規制している。
【0033】
光学部材4は、治具7によって所定の高さ位置まで押し込まれる。このとき、光学部材4と光取出面211との間に介在する接着材3は、光学部材4と光取出面211との対向領域から外側に押し出され、例えば一部がガイド部27に付着してもよい。光学部材4が所定高さ位置まで押し込まれた後、Bステージの熱硬化性樹脂からなる接着材3を加熱して硬化させ、光学部材4を発光素子2に接着させる。なお、このとき、接着材3を硬化させるための熱が治具7から逃げることを抑制すべく、可能な限り治具7と工具部材との接触面積は小さく、例えば点接触とすることが好ましい。
以上のように、本形態の発光装置1を製造することが可能である。
【0034】
(第1の実施の形態の作用及び効果)
本形態の発光素子2には、前記光学部材4を外周側から囲むよう形成されるとともに光学部材4の位置決めを行うガイド部27が形成されている。これにより、ガイド部27によって光学部材4をガイド部27の内周側に案内しつつ、光学部材4を発光素子2に接着材3を用いて接着させることができる。それゆえ、光学部材4を発光素子2の光取出面211に接着材3を用いて接着させる際、硬化前の接着材3の流動性に起因して光学部材4が上下方向に直交する方向に滑って光学部材4と発光素子2との間の相対位置関係が所望の位置からずれることを防止することができる。発光素子2と光学部材4との間の相対位置が所望の位置からずれると、発光装置1の配光特性、放射束強度等の光学特性が変動するおそれがあるところ、本形態によれば、発光素子2と光学部材4との間の相対位置のずれを抑制することができ、発光装置1の光学特性が所望の特性から変動する(例えば光取り出し効率が低下する)ことを抑制することができる。
【0035】
また、接着材3を介して光学部材4を発光素子2上に配置する際に、光学部材4が所望位置から上下方向に直交する方向に滑ることが抑制されることにより、治具7等によって光学部材4に上下方向に作用する荷重が上下方向に直交する方向に抜けることが抑制される。これにより、光学部材4が所望の姿勢から傾いて光取出面211上に固定されることを防止することができる。さらに、例えば接着材3を用いて光学部材4を発光素子2に接着させる際において、光学部材4の上側から作業を行う場合、光学部材4越しに光取出面211の位置を確認することとなり、光取出面211における光学部材4を配置する予定の位置が歪んで認識されるおそれがある。この場合においても、光学部材4と発光素子2との相対位置が所望の位置からずれるおそれがあるが、本形態においては、このような理由による光学部材4と発光素子2との相対位置のずれも抑制することができる。
【0036】
また、ガイド部27は、発光素子2から発される光によって硬化する光硬化樹脂からなる。本形態において、発光素子2は紫外光を発光し、ガイド部27は紫外線硬化樹脂270からなる。それゆえ、溶融状態の紫外線硬化樹脂270を光取出面211に配設し、発光素子2を発光させることによって紫外線硬化樹脂270を硬化させてガイド部27を形成することができる。これによって、ガイド部27の形成を容易にし、発光装置1の生産性を向上させることができる。このことにつき、以下説明する。
【0037】
本形態のように発光素子2が発する光によって紫外線硬化樹脂270を硬化させるのではなく、例えば別途UVランプ等を用意し、UVランプの発光により紫外線硬化樹脂270を硬化させる場合について検討する。この場合、UVランプによって接着材3全体に均一に紫外光を照射する必要が生じ、紫外線硬化樹脂270を硬化させる作業が難しくなりやすい。一方、本形態のように発光素子2自体を発光させて紫外線硬化樹脂270を硬化させることにより、紫外線硬化樹脂270とこれを硬化させるための光源とが非常に近く、照度の均一性を考慮しなくとも極短時間で紫外線硬化樹脂270全体を硬化させてガイド部27を形成することができる。また、UVランプを用いた場合、UVランプのメンテナンスが必要となったり、UVランプの劣化を監視する必要が生じたりするため手間が多くなるが、本形態においては前述のような手間がなくなる。以上のように、本形態によれば、ガイド部27の形成を容易にし、発光装置1の生産性を向上させることができる。
【0038】
また、ガイド部27は、光学部材4の外周部に沿った複数箇所に点在している。それゆえ、光取出面211に形成されるガイド部27の総体積が大きくなることに起因して発光素子2が発する光をガイド部27が吸収し、発光装置1の光取り出し効率が低下することを抑制することができる。
【0039】
以上のごとく、本形態によれば、発光素子2と光学部材4との間の相対位置のずれを抑制することができる発光装置1及び発光装置1の製造方法を提供することができる。
【0040】
[第2の実施の形態]
図10は、本形態における発光装置1の斜視図である。
図11は、発光装置1の正面図である。
図12は、発光装置1の平面図である。
【0041】
本形態は、ガイド部27を4つから3つに変更した形態である。本形態において、3つのガイド部27は、周方向に等間隔に(すなわち120°置きに)配されている。
【0042】
その他は、第1の実施の形態と同様である。
なお、第2の実施の形態以降において用いた符号のうち、既出の形態において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、既出の形態におけるものと同様の構成要素等を表す。
【0043】
(第2の実施の形態の作用及び効果)
本形態においては、光取出面211に3つのガイド部27が点在している。それゆえ、光取出面211に形成されるガイド部27の総体積を小さくしやすく、発光装置1の光取り出し効率を向上させやすい。
その他、本形態においても、第1の実施の形態と同様の作用効果を有する。
【0044】
[第3の実施の形態]
図13は、本形態における発光装置1の斜視図である。
図14は、発光装置1の正面図である。
図15は、発光装置1の平面図である。
【0045】
本形態は、ガイド部27が、光学部材4の全周にわたって連続的に形成された形態である。ガイド部27の延在方向に直交する断面は、上側に凸の半円状となる。本形態において、ガイド部27は、光取出面211の外郭に沿った角丸四角形状に形成されている。すなわち、ガイド部27は、光取出面211の外郭に沿った4つの直線部271と、直線部271同士を滑らかに接続する曲線部272とを備える。上下方向から見たとき、4つの直線部271における外周側の端部は、光取出面211の外郭と同等の位置に形成されている。また、ガイド部27は、光取出面211から外側にはみ出ないように形成されている。
その他は、第1の実施の形態と同様である。
【0046】
(第3の実施の形態の作用及び効果)
本形態においては、ガイド部27が、光学部材4の全周にわたって連続的に形成されている。それゆえ、光学部材4を光取出面211に接着させる際に光学部材4と光取出面211との間から押し出される接着材3を、ガイド部27によってせき止めることができる。これにより、接着材3が光取出面211よりも外側に漏出することを防止することができる。
その他、本形態においても、第1の実施の形態と同様の作用効果を有する。
【0047】
なお、本形態において、ガイド部27は、例えば光取出面211の外郭に沿った四角形状(すなわち角が丸まっていない四角形状)、光学部材4を囲う円環状等、光学部材4の全周にわたって連続的に形成されていれば他の形状とすることも可能である。
【0048】
(実施の形態のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号等は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0049】
[1]発光素子(2)と、前記発光素子(2)に接着材(3)を介して固定された光学部材(4)と、を備え、前記発光素子(2)には、前記光学部材(4)を外周側から囲むよう形成されるとともに前記光学部材(4)の位置決めを行うガイド部(27)が形成されている、発光装置(1)。
【0050】
[2]前記ガイド部(27)は、前記発光素子(2)から発される光によって硬化する光硬化樹脂からなる、前記[1]に記載の発光装置(1)。
【0051】
[3]前記発光素子(2)は、紫外光を発光し、前記ガイド部(27)は、紫外線硬化樹脂からなる、前記[2]に記載の発光装置(1)。
【0052】
[4]前記ガイド部(27)は、前記光学部材(4)の外周部に沿った複数箇所に点在している、前記[1]乃至[3]のいずれか1つに記載の発光装置(1)。
【0053】
[5]前記ガイド部(27)は、前記光学部材(4)の全周にわたって連続的に形成されている、前記[1]乃至[3]のいずれか1つに記載の発光装置(1)。
【0054】
[6]発光素子(2)と、前記発光素子(2)に接着材(3)を介して固定された光学部材(4)と、を備え、前記発光素子(2)に、前記光学部材(4)を外周側から囲むよう形成されるとともに前記光学部材(4)の位置決めを行うガイド部(27)が形成されている、発光装置(1)の製造方法であって、前記発光素子(2)に前記ガイド部(27)を形成し、前記ガイド部(27)によって前記光学部材(4)を前記ガイド部(27)の内周側に案内しつつ、前記光学部材(4)を前記発光素子(2)に前記接着材(3)を用いて接着させる、発光装置(1)の製造方法。
【0055】
[7]前記ガイド部(27)は、前記発光素子(2)から発される光によって硬化する光硬化樹脂からなり、前記発光素子(2)に前記ガイド部(27)を形成する工程においては、溶融状態の前記光硬化樹脂を前記発光素子(2)に配設し、前記発光素子(2)を発光させることによって前記光硬化樹脂を硬化させて前記ガイド部(27)を形成する、前記[6]に記載の発光装置(1)の製造方法。
【0056】
(付記)
以上、本発明の実施の形態を説明したが、前述した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。
【0057】
例えば、前記各実施の形態において、発光素子は深紫外光を発するものとし、ガイド部は紫外光によって硬化する紫外線硬化樹脂としたが、これに限られない。例えば、発光素子としては、青色、白色等、紫外線以外の光を発光するものを採用することができ、ガイド部は、発光素子が発光する光によって硬化する光硬化樹脂とすることができる。
【0058】
また、第1の実施の形態においはガイド部を4つ設け、第2の実施の形態においてはガイド部を3つ設けたが、ガイド部を複数箇所に点在させる場合は、ガイド部を5つ以上設けてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1…発光装置
2…発光素子
27…ガイド部
270…紫外線硬化樹脂
3…接着材
4…光学部材