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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-31
(45)【発行日】2024-08-08
(54)【発明の名称】凝集剤注入量調整方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/59 20060101AFI20240801BHJP
   G01N 21/17 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
G01N21/59 Z
G01N21/17 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021041922
(22)【出願日】2021-03-16
(65)【公開番号】P2022141986
(43)【公開日】2022-09-30
【審査請求日】2023-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】弁理士法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉崎 耕大
(72)【発明者】
【氏名】冨田 麻未
(72)【発明者】
【氏名】池田 俊一
【審査官】伊藤 裕美
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/175261(WO,A1)
【文献】特開2021-037471(JP,A)
【文献】特開平11-125596(JP,A)
【文献】特開平07-280792(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00-21/958
G01N 33/18
G01J 3/00-3/52
G01N 15/00-15/1492
C12M 1/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象液へ凝集剤を注入する際の凝集剤注入量調整方法であって、
明度の異なる第1および第2の領域を備えた標識と撮像装置との間に対象液を介在させた状態で、撮像装置を用いて標識を撮像する撮像工程と、
撮像工程で得られた標識の画像から、第1および第2の領域の明度を導出する明度導出工程と、
明度導出工程で得られた第1の領域の明度と第2の領域の明度との差に基づいて凝集剤の注入量を調整する注入量調整工程とを有することを特徴とする凝集剤注入量調整方法。
【請求項2】
注入量調整工程において、予め求めた明度の差と凝集剤の注入量との相関関係に基づいて対象液への凝集剤の注入量を調整することを特徴とする請求項1に記載の凝集剤注入量調整方法。
【請求項3】
第1および第2の領域のいずれか一方の領域が白色領域であり、他方の領域が黒色領域であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の凝集剤注入量調整方法。
【請求項4】
注入量調整工程において、第1の領域と第2の領域との明度差が小さくなる程、凝集剤の注入率を増やすように凝集剤の注入量を調整することを特徴とする請求項2に記載の凝集剤注入量調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、産業廃水処理の分野で行われる凝集沈殿処理等において、凝集剤注入量調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図11図12に示すように、水槽101内に貯留された対象液102の濁度を評価するため、標識103を水槽101内に設置し、この標識103を撮像するカメラ104を設けている。標識103は対象液102の液面下に没しており、標識103の表面103a(上面)は黒色から白色へと連続的に濃淡が変化するように着色されている。また、カメラ104は対象液102の液面の上方に設けられている。
【0003】
以下に、対象液102の濁度評価方法について説明する。
【0004】
先ず、カメラ104を用いて標識103を撮影し、得られた画像データを所定の閾値で二値化処理をする。そして、二値化処理によって得られた二値化データの黒色と判断された部分の面積を求める。
【0005】
図13は、対象液102の濁りが黒又は茶色(以下、「暗色系」と称する)の場合であって、(a)は濁度が80の時における標識103の画像であり、画像全体が黒っぽくなっている。また、(b)は、(a)で示した画像を二値化処理して得られた二値化データを示しており、黒色と判断された部分108と白色と判断された部分109とがほぼ同じ面積になっている。
【0006】
さらに、図14は二値化データの黒色と判断された部分の面積と対象液102の濁度との相関関係を示すグラフである。これによると、対象液102の濁りが暗色系の場合、対象液102の濁度が高くなるほど、二値化データの黒色と判断された部分の面積が増大し、対象液102の濁度が低くなるほど、二値化データの黒色と判断された部分の面積が減少する。
【0007】
図14のグラフのような相関関係を予め求めておき、その後、実際に求めた黒色と判断された部分の面積に基づいて、図14のグラフから対象液102の濁度を求める。
【0008】
また、産業廃水処理の分野で行われる凝集沈殿処理において、処理水に凝集剤を注入する際、上記のような方法で処理水の濁度を求め、濁度に応じて凝集剤の注入量を適正量に調整している。
【0009】
尚、例えば下記特許文献1には、黒色から白色へと連続的に濃淡が変化するように着色された標識が記載されている。また、下記特許文献2には、カメラで撮影した画像データを所定の閾値で二値化処理して濁度を測定することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】実開平7-23270
【文献】特許第3107700号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記のように、対象液102の濁りが暗色系の場合、図14のグラフに示すような相関関係に基づいて、対象液102の濁度を求めることができるが、対象液102の濁りが白っぽい(以下、「白色系」と称する)場合、図14のグラフに示すような相関関係ではなく、図15のグラフに示すように、対象液102の濁度が高くなるほど、二値化データの黒色と判断された部分の面積が減少し、対象液102の濁度が低くなるほど、二値化データの黒色と判断された部分の面積が増大する、といった相関関係になる。
【0012】
図16は、対象液102の濁りが白色系の場合であって、(a)は濁度が94の時における標識103の画像であり、画像全体が白っぽくなっている。また、(b)は、(a)で示した画像を二値化処理して得られた二値化データを示しており、黒色と判断された部分108の面積は白色と判断された部分109の面積に比べて大幅に減少している。これは、先に図13で示した対象液102の濁りが暗色系の場合の濁度80の時の二値化データと大幅に異なっているのがわかる。
【0013】
上記のように、二値化データの黒色と判断された部分の面積と濁度との相関関係は、対象液102の濁りが暗色系の場合(図14参照)と白色系の場合(図15参照)とにおいて、逆になる。従って、図14のグラフを用いて暗色系に濁った対象液102の濁度を求めているときに、濁質成分の色調が急に変わって対象液102の濁りが暗色系から白色系に変動した場合或いは暗色系の濁質成分に白色系の濁質成分が加わった混在状態になった場合、正確な濁度を求めることができないといった問題がある。
【0014】
同様に、図15のグラフを用いて白色系に濁った対象液102の濁度を求めているときに、濁質成分の色調が急に変わって対象液102の濁りが白色系から暗色系に変動した場合或いは白色系の濁質成分に暗色系の濁質成分が加わった混在状態になった場合も、正確な濁度を求めることができないといった問題がある。
【0015】
このように対象液102の濁り具合(色調)が途中で急に変動した場合、正確な濁度を求めることができないので、凝集沈殿処理において、処理水に凝集剤を注入する際、凝集剤の注入量を適正量に調整することが困難であった。
【0016】
本発明は、濁質成分の色調が急に変わって対象液の濁り具合が変動しても、凝集剤の注入量を適正量に調整することが可能な凝集剤注入量調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記目的を達成するために、本第発明は、対象液へ凝集剤を注入する際の凝集剤注入量調整方法であって、
明度の異なる第1および第2の領域を備えた標識と撮像装置との間に対象液を介在させた状態で、撮像装置を用いて標識を撮像する撮像工程と、
撮像工程で得られた標識の画像から、第1および第2の領域の明度を導出する明度導出工程と、
明度導出工程で得られた第1の領域の明度と第2の領域の明度との差に基づいて凝集剤の注入量を調整する注入量調整工程とを有するものである。
【0023】
これによると、濁質成分の色調に関わらず、対象液の濁りが暗色系や白色系等に変動しても、第1の領域の明度と第2の領域の明度との差を求めることができれば、注入量調整工程において、凝集剤の注入量を適正量に調整することができる。
【0024】
本第発明における凝集剤注入量調整方法は、注入量調整工程において、予め求めた明度の差と凝集剤の注入量との相関関係に基づいて対象液への凝集剤の注入量を調整するものである。
【0025】
本第発明における凝集剤注入量調整方法は、第1および第2の領域のいずれか一方の領域が白色領域であり、他方の領域が黒色領域である。
本第4発明における凝集剤注入量調整方法は、注入量調整工程において、第1の領域と第2の領域との明度差が小さくなる程、凝集剤の注入率を増やすように凝集剤の注入量を調整するものである。
【発明の効果】
【0026】
以上のように本発明によると、濁質成分の色調が急に変わって対象液の濁り具合が変動しても、凝集剤の注入量を適正量に調整することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の第1の実施の形態における濁度評価装置の断面図である。
図2図1におけるX-X矢視図である。
図3】同、濁度評価装置を用いた濁度評価方法の各工程を示す図である。
図4】同、濁度評価装置の標識の平面図である。
図5】同、濁度評価方法において使用される汚泥の明度差と濁度との相関関係を示すグラフである。
図6】同、濁度評価方法において汚泥の濁りが暗色系である場合の標識の白色領域と黒色領域との明度差を示す図である。
図7】同、濁度評価方法において汚泥の濁りが白色系である場合の標識の白色領域と黒色領域との明度差を示す図である。
図8】本発明の第2の実施の形態における凝集剤注入量調整方法の各工程を示す図である。
図9】同、凝集剤注入量調整方法において使用される凝集剤の注入率と汚泥の明度差との相関関係を示すグラフである。
図10】本発明の第3の実施の形態における濁度評価装置の模式図である。
図11】従来の濁度評価装置の図である。
図12】同、濁度評価装置の標識の平面図である。
図13】同、標識の画像と、画像を二値化処理した二値化データの図であり、対象液の濁りが暗色系の場合を示す。
図14】同、対象液の濁りが暗色系の場合における、二値化データの黒色と判断された部分の面積と対象液の濁度との相関関係を示すグラフである。
図15】同、対象液の濁りが白色系の場合における、二値化データの黒色と判断された部分の面積と対象液の濁度との相関関係を示すグラフである。
図16】同、標識の画像と、画像を二値化処理した二値化データの図であり、対象液の濁りが白色系の場合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明における実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0029】
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態では、図1に示すように、産業廃水処理の分野で行われる凝集沈殿処理設備として凝集槽1が備えられ、凝集槽1内には汚泥2(対象液の一例)が貯留されている。凝集槽1には、汚泥2の濁度を評価する濁度評価装置10と、凝集剤11を汚泥2に注入する注入装置12とが設けられている。凝集剤11を注入装置12から凝集槽1内の汚泥2に注入し、汚泥2を攪拌装置(図示省略)で攪拌することにより、径の大きな凝集フロック14(粗大フロック)が汚泥2中に形成される。
【0030】
図1図2に示すように、濁度評価装置10は、上端が閉口し下端が開口する円形の筒部材20と、筒部材20内に設けられた標識21と、標識21を上方から撮像可能なカメラ22(撮像装置の一例)と、照明装置23と、筒部材20内に圧縮空気24(気体の一例)を供給する空気供給装置25(気体供給装置の一例)と、筒部材20内の汚泥2を揚水して筒部材20外へ排出する揚水管26と、筒部材20を凝集槽1に取り付ける取付部材27とを有している。
【0031】
筒部材20は、金属製又は樹脂製の遮光体からなり、下端に形成された下端開口部29を有している。筒部材20内の液面31は筒部材20外の液面32よりも低く、標識21は筒部材20内の液面31下に没している。
【0032】
カメラ22は、筒部材20の天井部20aに取り付けられて、筒部材20内の液面31よりも上方に位置している。カメラ22にはケーブル34を介して画像処理装置(図示省略)が接続されている。
【0033】
照明装置23は、円環状の照明であり、カメラ22のレンズ部分の周囲を取り囲むようにして筒部材20の天井部20aに取り付けられており、筒部材20内の液面31よりも上方位置から標識21を照射する。
【0034】
筒部材20の円筒状の周壁部20bは標識21よりも下方に延伸されており、周壁部20bの内部において、標識21の下方には、汚泥2中の凝集フロック14が沈降する沈降領域35が形成されている。
【0035】
空気供給装置25は、エアポンプ等からなり、給気管36を介して筒部材20の天井部20aに接続されている。
【0036】
揚水管26は、一端が筒部材20内で開口するとともに、他端が筒部材20外で開口している逆L形の管である。
【0037】
標識21は、上面(表面)が白色に着色された白色領域41(第1の領域の一例)と黒色に着色された黒色領域42(第2の領域の一例)とを有しており、取付軸44を介して筒部材20に取り付けられている。
【0038】
上記のような濁度評価装置10を用いて汚泥2の濁度を評価する濁度評価方法を以下に説明する。
【0039】
図3に示すように、濁度評価方法は撮像工程46と明度導出工程47と濁度評価工程48とを有している。
【0040】
先ず、撮像工程46において、図1に示すように、照明装置23で標識21を照射し、カメラ22を用いて標識21を撮像する。
【0041】
この際、筒部材20内の沈降領域35において汚泥2中の凝集フロック14が沈降するため、筒部材20内の液面31付近には、粗大化した凝集フロック14が少ない上澄み液50が出現し、標識21は筒部材20内の液面31下に没した状態で上澄み液50中に存在する。
【0042】
そして、空気供給装置25から筒部材20内に圧縮空気24を供給することにより、筒部材20内の上澄み液50が、揚水管26の一端開口部26aから流入する圧縮空気24の気泡に同伴して押し上げられて揚水管26内を上昇し、他端開口部26bから筒部材20外に排出される。
【0043】
このようなエアリフト作用によって筒部材20内の上澄み液50が揚水管26を通って筒部材20外に排出されると、これに伴って、凝集槽1内の汚泥2が筒部材20の下端開口部29から筒部材20内に流入するため、筒部材20内の汚泥2が筒部材20の外部との間でゆっくりと循環して入れ替えられる。これにより、常に最新の性状の汚泥2を筒部材20内に導入し、汚泥2中の凝集フロック14に妨げられることなく、標識21を撮像することができる。
【0044】
次に、明度導出工程47において、上記撮像工程46で得られた標識21の画像から、白色領域41の明度と黒色領域42の明度を求める。この際、色の明度をグレースケールで置き換えたときの255段階に分けて0~255の数字で表しており、図4に示すように、白色は明度255と表示され、黒色は明度0と表示される。
【0045】
その後、濁度評価工程48において、上記明度導出工程47で得られた白色領域41の明度と黒色領域42の明度との差(以下、「明度差」と称する)に基づいて汚泥2の濁度を評価する。
【0046】
尚、明度差[%]は以下のような式1で定義される。
明度差=(白色領域41の明度-黒色領域42の明度)×100/255・・・(式1)
また、汚泥2の明度差と濁度との間には相関関係があり、図5は、予め求めておいた明度差と濁度との相関関係を示すグラフG1である。このグラフG1の四角形の実測点Aは汚泥2の濁り(濁質成分)が白色系である場合を示し、丸形の実測点Bは汚泥2の濁り(濁質成分)が暗色系である場合を示している。
【0047】
すなわち、上記明度差がわかれば、汚泥2の濁質成分の色調に関わらず、図5のグラフG1に基づいて、汚泥2の濁度が求められる。例えば、図6に示すように、筒部材20内の汚泥2の上澄み液50の濁りが暗色系であり、明度導出工程47において、白色領域41の明度が118であり、黒色領域42の明度が69である場合、式1により明度差は19%になり、グラフG1により、濁度が70度になる。
【0048】
或いは、図7に示すように、汚泥2の上澄み液50が白色系であり、明度導出工程47において、白色領域41の明度が158であり、黒色領域42の明度が117である場合、式1により明度差は16%になり、グラフG1により濁度が75度になる。
【0049】
上記のような濁度評価方法によると、明度差と濁度とは図5のグラフG1で示されるような相関関係があるため、濁質成分の色調に関わらず、汚泥2の濁りが暗色系から白色系或いは白色系から暗色系に変動しても、明度差を求めることができれば、汚泥2の濁度を正確に求めることができる。
【0050】
(第2の実施の形態)
先述した第1の実施の形態は、凝集槽1内の汚泥2の濁度を評価する濁度評価方法を説明したが、以下に示す第2の実施の形態では、図1に示すように凝集剤11を注入装置12から凝集槽1内の汚泥2へ注入する際の凝集剤注入量調整方法を説明する。尚、上記第1の実施の形態で説明した部材と同じものについては、同一の符号を付記して詳細な説明を省略する。
【0051】
図8に示すように、凝集剤注入量調整方法は撮像工程46と明度導出工程47と注入量調整工程60とを有している。このうち、撮像工程46と明度導出工程47とは第1の実施の形態で説明したものと同じである。
【0052】
注入量調整工程60において、上記明度導出工程47で得られた白色領域41の明度と黒色領域42の明度との差(明度差)に基づいて、凝集剤11の注入装置12から汚泥2への注入量を調整する。
【0053】
ここで、1リットルの汚泥2に対する凝集剤11の注入量[mg]を凝集剤11の注入率[mg/L]とすると、予め基本の注入率S[mg/L]を設定しており、汚泥2の濁度が高くなるほど、凝集剤11の注入率を基本の注入率Sから増加させ、汚泥2の濁度が低くなるほど、凝集剤11の注入率を基本の注入率Sから減少させることで、凝集剤11の注入量を調整する。
【0054】
この際、汚泥2の濁度と明度差とは図5のグラフG1で示した相関関係を有するので、凝集剤11の注入率と汚泥2の明度差とは相関関係があり、図9は、予め求めておいた凝集剤11の注入率と汚泥2の明度差との相関関係を示すグラフG2である。尚、このグラフG2の縦軸は、凝集剤11の基本の注入率Sからの増減を示し、横軸は明度差を示している。このグラフG2において、例えば凝集剤11の基本の注入率Sを200[mg/L]に設定しており、明度差が小さくなる(すなわち汚泥2の濁度が高くなる)ほど、凝集剤11の注入率を基本の注入率Sから段階的に増加させ、明度差が大きくなる(すなわち汚泥2の濁度が低くなる)ほど、凝集剤11の注入率を基本の注入率Sから段階的に減少させる。
【0055】
注入量調整工程60において、例えば、得られた明度差が50~70[%]の場合、凝集剤11の基本の注入率Sからの増減が0[mg/L]となり、凝集剤11の注入率を基本の注入率Sである200[mg/L]に調整する。
【0056】
また、得られた明度差が30~50[%]の場合、凝集剤11の基本の注入率Sからの増減が100[mg/L]となり、凝集剤11の注入率を300[mg/L]に調整する(すなわち、100+200=300mg/L)。また、得られた明度差が70~90[%]の場合、凝集剤11の基本の注入率Sからの増減が-80[mg/L]となり、凝集剤11の注入率を120[mg/L]に調整する(すなわち、200-80=120mg/L)。
【0057】
上記のような凝集剤注入量調整方法によると、濁質成分の色調に関わらず、汚泥2の濁りが暗色系から白色系或いは白色系から暗色系に変動しても、明度差を求めることができれば、凝集剤11の注入率(注入量)を適正な注入率(注入量)に調整することができる。
【0058】
(第3の実施の形態)
先述した第1の実施の形態では、図1に示すように、標識21を汚泥2中に設置し、カメラ22を汚泥2の液面31よりも上方に設置した濁度評価装置10を用いているが、第3の実施の形態として、図10に示すように、標識21と防水仕様のカメラ22とを汚泥2中に浸漬して設置した濁度評価装置を用いてもよい。
【0059】
上記各実施の形態では、対象液の一例として、汚泥2を挙げたが、汚泥2以外の液でもよい。
【0060】
上記各実施の形態では、標識21の第1の領域の一例として白色領域41を挙げ、第2の領域の一例として黒色領域42を挙げたが、第1の領域を黒色領域42とし、第2の領域を白色領域41としてもよい。
【0061】
上記各実施の形態では、標識21の第1および第2の領域を白色と黒色との組み合わせにしているが、このような組み合わせに限定されるものではなく、対象液中の濁質成分の色調に応じて、第1および第2の領域を白色および黒色以外の色同士の組み合わせにしてもよい。
【0062】
上記各実施の形態では、明度の異なる第1および第2の領域の一例として、白色領域41と黒色領域42とを標識21の上面に形成しているが、第1および第2の領域は明度が異なっていればよいため、例えば、図12に示すように、従来から用いられている標識103において明度の異なる領域R1,R2を第1および第2の領域としてもよい。
【符号の説明】
【0063】
2 汚泥(対象液)
11 凝集剤
21 標識
22 カメラ(撮像装置)
41 白色領域(第1の領域)
42 黒色領域(第2の領域)
46 撮像工程
47 明度導出工程
48 濁度評価工程
60 注入量調整工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16