(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-31
(45)【発行日】2024-08-08
(54)【発明の名称】ガス漏洩防止具、及び設備作業時のガス漏洩防止方法
(51)【国際特許分類】
F17D 3/14 20060101AFI20240801BHJP
F16L 55/07 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
F17D3/14
F16L55/07 Z
(21)【出願番号】P 2021044381
(22)【出願日】2021-03-18
【審査請求日】2023-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】522068452
【氏名又は名称】東邦ガスネットワーク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 恒一
(72)【発明者】
【氏名】安田 裕介
(72)【発明者】
【氏名】本田 凌
(72)【発明者】
【氏名】大橋 拓真
(72)【発明者】
【氏名】光末 雅人
(72)【発明者】
【氏名】安達 俊彰
(72)【発明者】
【氏名】塩谷 学史
(72)【発明者】
【氏名】北野 哲司
【審査官】広瀬 雅治
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-185732(JP,A)
【文献】実開昭63-045288(JP,U)
【文献】実開昭54-138115(JP,U)
【文献】特開2003-194286(JP,A)
【文献】特開2010-148894(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0292658(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第109296940(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17D 3/14
F16L 55/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地下に埋設されているガス導管に対し、その内部と連通して接続された連絡管が、地上側の作業場に向けて配管され、該連絡管内の管路に対し、地上側の接続部がプラグで閉栓されている対象流体取出し設備で、
該プラグの開栓により、該連絡管の内径より径小な外径を有する抜取り管を、地上側から該連絡管の管路に挿通して、該抜取り管内の管路を通じて、ガス導管内に溜まった水を、対象流体として地上に取り出す溜水の抜き取り、または、流通する都市ガスの試料を、対象流体として地上に取り出すガスサンプリングを行うのに用いるガス漏洩防止具として、
前記抜取り管が挿通可能な貫通穴を有し、前記連絡管の前記接続部と連結可能に形成された本体部に、
前記貫通穴の内壁に配設されたシール部材と、
前記貫通穴を開閉する弁体を有する逆止弁と、を備え、
前記貫通穴の軸心方向に対し、一端側には、前記プラグを装着可能なプラグ装着部が形成されていること、
前記逆止弁は、前記軸心方向他端側に設けられ、前記一端側から前記貫通穴に挿入された前記抜取り管の先端が、前記貫通穴内を通過した状態で、前記弁体は開弁し、前記貫通穴内を通過する前の状態では、前記弁体は閉弁すること、
前記弁体は、ゴム製で板状に形成され、バネにより、前記貫通穴の開閉動作を行うこと、
を特徴とするガス漏洩防止具。
【請求項2】
地下に埋設されているガス導管に対し、その内部と連通して接続された連絡管が、地上側の作業場に向けて配管され、該連絡管内の管路に対し、地上側の接続部がプラグで閉栓されている対象流体取出し設備で、
該プラグの開栓により、該連絡管の内径より径小な外径を有する抜取り管を、地上側から該連絡管の管路に挿通して、該抜取り管内の管路を通じて、ガス導管内に溜まった水を、対象流体として地上に取り出す溜水の抜き取り、または、流通する都市ガスの試料を、対象流体として地上に取り出すガスサンプリングを行うのに用いるガス漏洩防止具として、
前記抜取り管が挿通可能な貫通穴を有し、前記連絡管の前記接続部と連結可能に形成された本体部に、
前記貫通穴の内壁に配設されたシール部材と、
前記貫通穴を開閉する弁体を有する逆止弁と、
前記連絡管と、を備え、
前記貫通穴の軸心方向に対し、一端側には、前記プラグを装着可能なプラグ装着部が形成されていること、
前記連
絡管は、前記軸心方向他端側に、前記本体部と一体構造で構成されていること、
前記逆止弁は、前記軸心方向他端側に設けられ、前記一端側から前記貫通穴に挿入された前記抜取り管の先端が、前記貫通穴内を通過した状態で、前記弁体は開弁し、前記貫通穴内を通過する前の状態では、前記弁体は閉弁すること、
前記弁体は、ゴム製で板状に形成され、バネにより、前記貫通穴の開閉動作を行うこと、
を特徴とするガス漏洩防止具。
【請求項3】
地下に埋設されているガス導管に対し、その内部と連通して接続された連絡管が、地上側の作業場に向けて配管され、該連絡管内の管路に対し、地上側の接続部がプラグで閉栓されている対象流体取出し設備で、
該プラグ
の開栓により、該連絡管の内径より径小な外径を有する抜取り管を、地上側から該連絡管の管路に挿通して、該抜取り管内の管路を通じて、ガス導管内に溜まった水を、対象流体として地上に取り出す溜水の抜き取り、または、流通する都市ガスの試料を、対象流体として地上に取り出すガスサンプリングを行うのにあたり、
請求項
1に記載するガス漏洩防止具が、前記プラグを外した状態の前記連絡管の前記接続部と、前記貫通穴と前記連絡管の前記管路とが連通した状態で、連結され、前記プラグが、開閉可能な状態で前記プラグ装着部に取付けられていること、
前記プラグの開栓後、前記抜取り管の先端を、前記軸心方向前記一端側から前記貫通穴に挿入し、前記抜取り管の外周面を前記シール部材に接触させた状態のまま、前記先端を、前記溜水の抜き取りまたは前記ガスサンプリングを行う位置まで送出して到達させる第1工程と、
前記溜水または前記都市ガスの試料を、前記抜取り管内の管路を通じて地上側に吸い上げる第2工程と、
前記第2工程の完了後、前記抜取り管を、地上側から引き上げて前記連絡管から引き抜いた後、前記プラグで前記貫通穴を閉栓する第3工程と、を有すること、
を特徴とする設備作業時のガス漏洩防止方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ガス導管内に侵入して地中下の貯留タンクに溜められた水を、吸込管を使用して、貯留タンクから地上に抜き取る作業を行うにあたり、作業中に、ガス導管から都市ガスの漏れを防ぐガス漏洩防止具、及び設備作業時のガス漏洩防止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
周知の通り、ガス導管は、本管と多岐にわたってこの本管と連通する支管とからなり、道路や歩道等の公有区域下の地中に埋設されている。都市ガスは、ガス事業者から本管を通じて提供され、支管を経て需要先に供給されている。ガス導管には、従来、継手を介して連結される鋼管や鋳鉄管等の金属製管が、長い間、一般的な管として用いられ続けてきた。近年、金属製管からポリエチレン(Polyethylene)製管(PE管)への更新が進められているが、ガス導管を埋設した現場のうち、その多くが、未だ鋳鉄管等のままである。
【0003】
ところで、ガス導管を埋設した現場には、ガス導管が、部分的に地面と水平に直線状に配管されている現場や、地形や、工事上の制約等の理由により、勾配を付けて配管されている現場もある。ガス導管が勾配している現場周辺では、下り勾配の付いたガス導管のうち、最も低くなっている場所では、雨水や、雪解け水等が残存して溜水となる。また、ガス導管の近くにある水道管の破損に起因して、水道管から勢い良く漏水が生じると、その水の影響を受けて、地中の土砂が、強い勢いでガス導管に衝撃を加えてしまうこともある。
【0004】
ガス導管が金属製管である場合、管自体や、連結する管同士の接合部が、このような溜水に晒されて腐食することがある。また、特に鋳鉄管では、ガス導管が、漏水に伴い、土砂の流動による強い衝撃を受けて、破損し易い。このような腐食や破損が、ガス導管に及ぶと、地中の溜水が、ガス導管内に侵入してしまう。溜水がガス導管内に入ると、需要先で都市ガスを使用する上で、支障を来してしまうことから、問題になる。ガス事業者は、この問題を回避するため、本管、支管を問わず、下り勾配の付いたガス導管のうち、最も低くなっている場所に溜水取出し部を設置し、溜水取出し部において、このような溜水を抜き取る作業を、必要に応じて行っている。
【0005】
ここで、溜水取出し部について、
図7を用いて簡単に説明する。
図7は、従来技術に係る水取器が設置された溜水取出し部の様子を模式的に示す説明図である。
【0006】
溜水取出し部40には、マンホール43が、地面GLに埋設されている。マンホール43直下には、貯留タンク45が埋設されている。貯留タンク45は、地中の土砂等との接触を遮断した気密な内部空間を有し、敷設されているガス導管41内と連通した態様で、都市ガスの流路の一部となっている。マンホール43内には、水取器50Xが、鉛直方向下側にある貯留タンク45に向けて設置されている。
【0007】
水取器50Xは、内径ΦD1の直管である水取立管51と、水取立管51上端(
図7中、上側)に位置する接続部53と、水取立管51の管路を塞ぐプラグ56を有してなる。プラグ56は、螺合により接続部53と着脱可能になっている。水取器50Xは、接続部53をマンホール43内に配置すると共に、水取立管51の下端部54を、貯留タンク45の内部空間に挿通して連通させた状態で、地面GL下に設けられている。ガス導管41内の溜水WTは、貯留タンク45の内部空間に溜められる。
【0008】
貯留タンク45内に溜まった溜水WTを、ガス事業者による作業で抜き取るのにあたり、吸込管61とポンプ(図示省略)等が、用いられる。吸込管61は、水取立管51の内径ΦD1より細い外径ΦD2(0<D2<D1)の管材であり、上端部側でポンプと連結されている。作業者は、第1工程として、接続部53からプラグ56を取り外した後、開栓した接続部53から水取立管51内に吸込管61を挿通し、吸込管61の先端62を、貯留タンク45の底まで到達させる。次の第2工程では、貯留タンク45内の溜水WTは、地面GL側に設置したポンプにより、吸込管61内を通じて吸い上げられる。
【0009】
溜水WTが貯留タンク45内から抜き取られたら、第3工程において、作業者は、吸込管61を、貯留タンク45から引き上げて水取立管51から引き抜いた後、プラグ56で接続部53を閉栓する。これにより、ガス導管41内を流通する都市ガスGSは、貯留タンク45から水取立管51内を通じて、マンホール43に向けて漏洩することもない。かくして、溜水WTの抜き取り作業は完了する。
【0010】
なお、このような従来技術に係る水取器を使用して、貯留タンクに溜まった水を吸い上げて抜き取る作業は、公然実施されている技術であるので、先行技術文献を開示しない。また、溜水取出し部40では、
図7に示すように、ガス導管41と連通した態様で貯留タンク45を設置し、水取器50Xの水取立管51を、貯留タンク45の内部空間に挿通して連通させた、通称「本水取器」の他に、貯留タンク45を設置せず、水取器50Xの水取立管51を直接、ガス導管41の管内に挿通して連通させた、通称「仮水取器」もある。通称「仮水取器」においても、ガス導管内に溜まった溜水を吸い上げて抜き取る作業は、公然と実施されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、水取立管と吸込管との間には、内径ΦD1と外径ΦD2との径差(D1-D2)があり、従来の水取器を使用した溜水の抜き取り作業では、第1工程から第3工程を実施している間、ガス導管内を流通している都市ガスは、多少なりとも貯留タンクから、水取立管と吸込管との僅かな隙間を通じて、大気中に放出されてしまう。
【0012】
そのため、作業者は、少しでも都市ガスの漏洩を抑えようと、溜水の抜き取り作業を、必然的に手際良く、かつ素早く行わなければならず、その作業性は、作業者にとって良くなかった。特に、産業界では近年、働き手の人材が不足しているという問題や、技術を伝承する後継者が不足しているという社会的な問題も顕在化しており、溜水の抜き取り作業でも、効率良く作業を行うことができるよう、作業内容の改善が望まれていた。
【0013】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、ガス導管内に対し、都市ガスの流通を遮断することなく、管状の器具を使用して、管内に溜まった水を抜き取る作業等を行う場合に、作業中、ガス導管からの都市ガスの漏れを、より確実に防ぐことができるガス漏洩防止具、及び設備作業時のガス漏洩防止方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明に係るガス漏洩防止具、及び設備作業時のガス漏洩防止方法は、以下の構成を有する。
【0015】
(1)地下に埋設されているガス導管に対し、その内部と連通して接続された連絡管が、地上側の作業場に向けて配管され、該連絡管内の管路に対し、地上側の接続部がプラグで閉栓されている対象流体取出し設備で、該プラグの開栓により、該連絡管の内径より径小な外径を有する抜取り管を、地上側から該連絡管の管路に挿通して、該抜取り管内の管路を通じて、ガス導管内に溜まった水を、対象流体として地上に取り出す溜水の抜き取り、または、流通する都市ガスの試料を、対象流体として地上に取り出すガスサンプリングを行うのに用いるガス漏洩防止具として、前記抜取り管が挿通可能な貫通穴を有し、前記連絡管の前記接続部と連結可能に形成された本体部に、前記貫通穴の内壁に配設されたシール部材と、前記貫通穴を開閉する弁体を有する逆止弁と、を備え、前記貫通穴の軸心方向に対し、一端側には、前記プラグを装着可能なプラグ装着部が形成されていること、前記逆止弁は、前記軸心方向他端側に設けられ、前記一端側から前記貫通穴に挿入された前記抜取り管の先端が、前記貫通穴内を通過した状態で、前記弁体は開弁し、前記貫通穴内を通過する前の状態では、前記弁体は閉弁すること、を特徴とするガス漏洩防止具。
(2)(1)に記載するガス漏洩防止具において、前記弁体は、ゴム製で板状に形成され、バネにより、前記貫通穴の開閉動作を行うこと、を特徴とする。
(3)(1)または(2)に記載するガス漏洩防止具において、前記対象流体取出し設備にある、前記接続部を含む既存の前記連絡管に代えて、前記連絡管に相当する連絡部として、前記抜取り管を内部に挿通可能で、前記ガス導管内と連通して接続可能に形成された管状の前記連絡部を有し、前記連絡部は、前記軸心方向他端側に、前記本体部と一体構造で構成されていること、を特徴とする。
【0016】
また、上記目的を達成するために、本発明に係る設備作業時のガス漏洩防止方法は、以下の構成を有する。
【0017】
(4)地下に埋設されているガス導管に対し、その内部と連通して接続された連絡管が、地上側の作業場に向けて配管され、該連絡管内の管路に対し、地上側の接続部がプラグで閉栓されている対象流体取出し設備で、該プラグに開栓により、該連絡管の内径より径小な外径を有する抜取り管を、地上側から該連絡管の管路に挿通して、該抜取り管内の管路を通じて、ガス導管内に溜まった水を、対象流体として地上に取り出す溜水の抜き取り、または、流通する都市ガスの試料を、対象流体として地上に取り出すガスサンプリングを行うのにあたり、(1)または(2)に記載するガス漏洩防止具が、前記プラグを外した状態の前記連絡管の前記接続部と、前記貫通穴と前記連絡管の前記管路とが連通した状態で、連結され、前記プラグが、開閉可能な状態で前記プラグ装着部に取付けられていること、前記プラグの開栓後、前記抜取り管の先端を、前記軸心方向一端側から前記貫通穴に挿入し、前記抜取り管の外周面を前記シール部材に接触させた状態のまま、前記先端を、前記溜水の抜き取りまたは前記ガスサンプリングを行う位置まで送出して到達させる第1工程と、前記溜水または前記都市ガスの試料を、前記抜取り管内の管路を通じて地上側に吸い上げる第2工程と、前記第2工程の完了後、前記抜取り管を、地上側から引き上げて前記連絡管から引き抜いた後、前記プラグで前記貫通穴を閉栓する第3工程と、を有すること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
上記構成を有する本発明に係るガス漏洩防止具、及び設備作業時のガス漏洩防止方法の作用・効果について説明する。
【0019】
本発明に係るガス漏洩防止具では、
(1)地下に埋設されているガス導管に対し、その内部と連通して接続された連絡管が、地上側の作業場に向けて配管され、連絡管内の管路に対し、地上側の接続部がプラグで閉栓されている対象流体取出し設備で、プラグの開栓により、連絡管の内径より径小な外径を有する抜取り管を、地上側から連絡管の管路に挿通して、抜取り管内の管路を通じて、ガス導管内に溜まった水を、対象流体として地上に取り出す溜水の抜き取り、または、流通する都市ガスの試料を、対象流体として地上に取り出すガスサンプリングを行うのに用いるガス漏洩防止具として、抜取り管が挿通可能な貫通穴を有し、連絡管の接続部と連結可能に形成された本体部に、貫通穴の内壁に配設されたシール部材と、貫通穴を開閉する弁体を有する逆止弁と、を備え、貫通穴の軸心方向に対し、一端側には、プラグを装着可能なプラグ装着部が形成されていること、逆止弁は、軸心方向他端側に設けられ、一端側から貫通穴に挿入された抜取り管の先端が、貫通穴内を通過した状態で、弁体は開弁し、貫通穴内を通過する前の状態では、弁体は閉弁すること、を特徴とする。
【0020】
この特徴により、地下に溜まった溜水を地上側から抜き取る作業を行う上で、抜取り管が、ガス導管と連通した連絡管内に挿入されても、溜水の水抜き作業開始から完了までの間、連絡管に対し、抜取り管の挿入に起因した都市ガスの漏洩を、効果的に抑制することができる。
【0021】
従って、本発明に係るガス漏洩防止具によれば、ガス導管内に対し、都市ガスの流通を遮断することなく、抜取り管を使用して、ガス導管内からの溜水の抜き取り作業や、都市ガスのガスサンプリング作業を行う場合に、作業中、ガス導管からの都市ガスの漏れを、より確実に防ぐことができる、という優れた効果を奏する。
【0022】
(2)に記載するガス漏洩防止具において、弁体は、ゴム製で板状に形成され、バネにより、貫通穴の開閉動作を行うこと、を特徴とする。
【0023】
この特徴により、金属や樹脂等に比べ、軟質なゴム製の弁体は、本体部の弁座と、密着し易くなり、都市ガスは、弁体と弁座との間からほとんど漏れることはない。
【0024】
(3)に記載するガス漏洩防止具において、対象流体取出し設備にある、接続部を含む既存の連絡管に代えて、連絡管に相当する連絡部として、抜取り管を内部に挿通可能で、ガス導管内と連通して接続可能に形成された管状の連絡部を有し、連絡部は、軸心方向他端側に、本体部と一体構造で構成されていること、を特徴とする。
【0025】
この特徴により、新たに対象流体取出し設備を設置して、連絡管とプラグ等を有した水取器を新設する場合や、既設の水取器において、既存の連絡管を、その老朽化や破損等に起因して更新する必要がある場合に、本発明に係るガス漏洩防止具を使用することができるようになる。そのため、本発明に係るガス漏洩防止具を用いた水取器は、余分な部品を有さず、合理的に構成することができる。
【0026】
また、本発明に係る設備作業時のガス漏洩防止方法では、
(4)地下に埋設されているガス導管に対し、その内部と連通して接続された連絡管が、地上側の作業場に向けて配管され、連絡管内の管路に対し、地上側の接続部がプラグで閉栓されている対象流体取出し設備で、プラグに開栓により、連絡管の内径より径小な外径を有する抜取り管を、地上側から連絡管の管路に挿通して、抜取り管内の管路を通じて、ガス導管内に溜まった水を、対象流体として地上に取り出す溜水の抜き取り、または、流通する都市ガスの試料を、対象流体として地上に取り出すガスサンプリングを行うのにあたり、(1)または(2)に記載するガス漏洩防止具が、プラグを外した状態の連絡管の接続部と、貫通穴と連絡管の管路とが連通した状態で、連結され、プラグが、開閉可能な状態でプラグ装着部に取付けられていること、プラグの開栓後、抜取り管の先端を、軸心方向一端側から貫通穴に挿入し、抜取り管の外周面をシール部材に接触させた状態のまま、先端を、溜水の抜き取りまたはガスサンプリングを行う位置まで送出して到達させる第1工程と、溜水または都市ガスの試料を、抜取り管内の管路を通じて地上側に吸い上げる第2工程と、第2工程の完了後、抜取り管を、地上側から引き上げて連絡管から引き抜いた後、プラグで貫通穴を閉栓する第3工程と、を有すること、を特徴とする。
【0027】
この特徴により、地下に溜まった溜水を地上側から抜き取る作業を行う上で、シール部材と逆止弁を具備した、本発明に係るガス漏洩防止具を用いていることで、抜取り管が、ガス導管と連通した連絡管内に挿入されても、溜水の水抜き作業開始から作業完了までの間、連絡管に対し、抜取り管の挿入に起因した都市ガスの漏洩を、効果的に抑制することができる。
【0028】
従って、本発明に係る設備作業時のガス漏洩防止方法によれば、ガス導管内に対し、都市ガスの流通を遮断することなく、抜取り管を使用して、ガス導管内からの溜水の抜き取り作業や、都市ガスのガスサンプリング作業を行う場合に、作業中、ガス導管からの都市ガスの漏れを、より確実に防ぐことができる、という優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本実施形態に係るガス漏洩防止具を取付けた水取器が設置された溜水取出し部の様子を模式的に示す説明図である。
【
図2】本実施形態に係るガス漏洩防止具の正面図である。
【
図3】本実施形態に係るガス漏洩防止具をその下端側から見た平面図である。
【
図5】本実施形態に係るガス漏洩防止具の逆止弁で、弁体が閉弁した状態を示す説明図である。
【
図6】本実施形態に係るガス漏洩防止具の逆止弁で、弁体が開弁した状態を示す説明図である。
【
図7】従来技術に係る水取器が設置された溜水取出し部の様子を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明に係るガス漏洩防止具、及び設備作業時のガス漏洩防止方法について、実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。本発明に係るガス漏洩防止具は、対象流体取出し設備で用いられる。対象流体取出し設備では、地下に埋設されているガス導管に対し、その内部と連通して接続された連絡管が、地上側の作業場に向けて配管され、連絡管内の管路に対し、地上側にある接続部は通常、プラグで閉栓されている。対象流体取出し設備では、必要に応じて、溜水の抜き取り作業やガスサンプリング作業が、プラグの開栓後、連絡管の内径より径小な外径を有する抜取り管を、接続部から連絡管の管路に挿通して行われる。溜水の抜き取り作業は、対象流体として、ガス導管内に溜まった水を、抜取り管内の管路を通じて、地上に取り出す作業であり、ガスサンプリング作業は、対象流体として、ガス導管に流通する都市ガスの試料を、抜取り管内の管路を通じて、地上に取り出す作業である。
【0031】
本発明に係るガス漏洩防止具は、このような溜水の抜き取り作業やガスサンプリング作業を行う設備で用いられる。また、その設備で、このような溜水の抜き取り作業等は、本発明に係る設備作業時のガス漏洩防止方法により、本発明に係るガス漏洩防止具を用いて行われる。
【0032】
本実施形態では、背景技術で前述したように、地下に埋設されているガス導管に対し、下り勾配の付いたガス導管のうち、最も低くなっている場所にある溜水取出し部で、地下の貯留タンクに溜まった溜水を抜き取り、地上に取り出す作業行う場合を挙げて、説明する。なお、溜水取出し部で行う溜水の抜き取り作業等の概要は、背景技術で、
図7と共に、既に説明されている。そのため、本実施形態では、従来技術に係る部分と共通する部分は、説明を省略、または従来技術と同符号を用いながら簡単に説明し、以下、本発明に関する本質的な部分について、重点的に説明する。
【0033】
<溜水取出し部40について>
はじめに、本実施形態に係るガス漏洩防止具1を取付けた水取器50が設置された溜水取出し部40について、
図1を用いて簡単に説明する。
図1は、本実施形態に係るガス漏洩防止具を取付けた水取器が設置された溜水取出し部の様子を模式的に示す説明図である。公有区域下にある地下には、
図1に示すように、ガス導管41が、埋設されている。溜水取出し部40(対象流体取出し設備)は、下り勾配の付いたガス導管41のうち、最も低くなっている場所に設置されている。
【0034】
溜水取出し部40では、マンホール43(作業場)が地面GLを掘削して設けられており、マンホール43直下には、貯留タンク45が、敷設されているガス導管41の管路42Sと連通した態様で、都市ガスGSの流路の一部となって埋設されている。マンホール43には、水取器50が、鉛直方向HT下側の貯留タンク45に向けて設置されている。水取器50は、内径ΦD1(管路52Sの径)の直管である水取立管51(連絡管)と、水取立管51上端(
図1中、上側)に位置する接続部53と、プラグ56を有してなる。水取立管51の地上側(
図1中、上端側)は、プラグ56の雄ネジと螺合可能な雌ネジ部55(
図5参照)を含む接続部53となっている。
【0035】
<ガス漏洩防止具1の構成について>
次に、ガス漏洩防止具1の構成について、
図2~
図4を用いて簡単に説明する。
図2は、本実施形態に係るガス漏洩防止具の正面図である。
図3は、本実施形態に係るガス漏洩防止具をその下端側から見た平面図であり、
図3中、A-A矢視断面図を、
図4に示す。
【0036】
図2~
図4に示すように、ガス漏洩防止具1は、本体部10と、シール部材20と、逆止弁30とを備える。本体部10は、その上方を六角形状の外形とし、下方に雄ネジ部14を有したガス用の金属製配管具である。
【0037】
本体部10には、軸心AXを中心とする貫通穴11が形成されている。溜水の抜き取り作業で使用する吸込管61(抜取り管)に対し、貫通穴11は、水取立管51の内径ΦD1より径小な外径ΦD2の吸込管61を挿通可能な径で形成されている。
【0038】
貫通穴11の内壁12には、シール部材20が、本実施形態では、一例として、2つ配設されている。シール部材20は、例えば、ニトリルゴム(nitrile rubber)製のOリング等のように、配管材との間で密着することにより、ガス漏れを防止することを可能とした部材である。シール部材20には、潤滑剤が塗布されていても良い。貫通穴11内に挿通される吸込管61に対し、挿通時に、吸込管61の外周面61aとシール部材20との摩擦を、潤滑剤により低減させて、吸込管61を挿通し易くするためである。
【0039】
軸心AX方向に対し、貫通穴11の一端側(
図2及び
図4中、上側)は、プラグ56を装着可能なプラグ装着部13として、プラグ56の雄ネジと螺合可能な雌ネジ部となっている。また、本体部10には、軸心AX方向に対し、プラグ装着部13とは反対側(他端側)に、雄ネジ部14が、水取立管51の接続部53にある雌ネジ部55と螺合可能に形成されている。
【0040】
ガス漏洩防止具1には、実施例1に係るガス漏洩防止具1A(1)と、実施例2に係るガス漏洩防止具1B(1)との2種がある。ガス漏洩防止具1Aは、水取器50に取付けるのにあたり、プラグ56と共に、既設の水取立管51をそのまま利用して取付けられる仕様で構成されている。また、ガス漏洩防止具1Bは、水取器50に取付けるのにあたり、水取器の更新または新設に合わせて、水取器50内の水取立管51(接続部53を含む)に代えて、軸心AX方向他端側に、水取立管51の機能に相当する管状の連絡部35を本体部10と一体構造とした仕様で構成されている。連絡部35は、その内部にある管路に吸込管61を挿通可能で、ガス導管41の管路42Sと連通して接続可能に形成されている。ガス漏洩防止具1Aとガス漏洩防止具1Bとは、連絡部35の有無以外、実質的に同じ構成となっている。
【0041】
次に、ガス漏洩防止具1を水取器50への取付け方法について、説明する。なお、
図1等では、図を見易くするため、本体部10(ガス漏洩防止具1)と水取立管51とを気密に連結するのに必要なシール材等の図示を省略している。
【0042】
実施例1の場合、ガス漏洩防止具1Aのうちの本体部10は、プラグ装着部13を鉛直方向HT上側(
図1中、上側)に、プラグ56と水取立管51の接続部53との間に挟まれて配置され、雄ネジ部14と雌ネジ部55との締結により、ガス漏洩防止具1Aが、水取立管51と連結される。また、既存のプラグ56は、本体部10のプラグ装着部13に、螺合により取付けられる。
【0043】
実施例2の場合、ガス漏洩防止具1Bのうちの連絡部35は、その下端部(
図1中、水取立管51の下端部54に相当)を、地中の貯留タンク45内と連通した態様で、貯留タンク45に接続して配管される。また、ガス漏洩防止具1Bのうちの本体部10のプラグ装着部13には、既存のプラグ56が、螺合により取付けられる。
【0044】
次に、逆止弁30について、説明する。
図3に示すように、本体部10のうち、軸心AX方向他端側(
図3中、下側)で、貫通穴11外周にある端面は、弁座15となっている。弁座15には、逆止弁30が装着されている。逆止弁30は、板状の弁体31と、弁座15に向けて弁体31を常時付勢する線状のバネ32等からなる。弁体31は、例えば、ニトリルゴム(nitrile rubber)等、可撓性を有したゴム材からなる。弁体31は、本実施形態では、円盤状をなし、
図4に示すように、外周縁の一部分を、弁座15に局部的に密着させて固着した固定部を支点に、その固定部を除く他の部分を屈曲させて、弁座15と自在に密着または離間できるようになっている。
【0045】
図5は、本実施形態に係るガス漏洩防止具の逆止弁で、弁体が閉弁した状態を示す説明図であり、弁体が開弁した状態を示す説明図を、
図6に示す。
図5及び
図6に示すように、マンホール43から貯留タンク45に向けた吸込管61の挿入や、貯留タンク45からマンホール43に向けた吸込管61の引抜きの過程を通じて、一端側(
図5及び
図6中、上側)から貫通穴11に挿入された吸込管61の先端62が、
図5に示すように、貫通穴11内を通過する前の状態では、弁体31は、弁座15に当接して着座し、閉弁している。その一方、その吸込管61の先端62が、
図6に示すように、貫通穴11内を通過した状態になると、弁体31は、当接していた弁座15から離間し、吸込管61の外周面61aに沿って屈曲した態様で、開弁する。
【0046】
次に、本実施形態に係る設備作業時のガス漏洩防止方法により、溜水取出し部40で行う溜水の抜き取りの作業要領について、実施例1に係るガス漏洩防止具1A(1)を用いた場合を挙げて、説明する。なお、ここでは、ガス漏洩防止具1Aを、水取器50にある既設の水取立管51をそのまま利用して取付けた溜水取出し部40で、溜水の抜き取り作業を行う場合を説明する。しかしながら、実施例2に係るガス漏洩防止具1Bを、水取器50に取付けた溜水取出し部40でも、溜水の抜き取りの作業要領は、ガス漏洩防止具1Aの下で行う作業内容と、実質的に同じである。
【0047】
溜水取出し部40では、ガス漏洩防止具1A(1)が、プラグ56を外した状態にある水取立管51の接続部53と、貫通穴11と水取立管51の管路52Sとが連通した状態で、連結され、プラグ56が、開閉可能な状態でプラグ装着部13に取付けられている。本実施形態に係る設備作業時のガス漏洩防止方法は、第1工程と、第2工程と、第3工程と、を有し、この順に各工程を実施する。
【0048】
第1工程は、まずプラグ56の開栓後、吸込管61の先端62を、軸心AX方向一端側(
図5中、上側)から貫通穴11に挿入し、吸込管61の外周面61aをシール部材20に接触させた状態のまま、吸込管61の先端62を、
図1に示すように、溜水WT抜きを行う貯留タンク45の底まで送出して到達させる。第2工程は、貯留タンク45内の溜水WTを、地面GL側に設置したポンプにより、吸込管61内を通じて、地面GLまで吸い上げる。溜水WTが貯留タンク45内から抜き取られたら、第3工程を実施する。第3工程は、吸込管61を、地面GL側から引き上げて水取立管51から引き抜いた後、プラグ56で本体部10のプラグ装着部13を閉栓する。かくして、溜水WTの抜き取り作業は完了する。
【0049】
次に、本実施形態に係るガス漏洩防止具、及び設備作業時のガス漏洩防止方法の作用・効果について説明する。
【0050】
本実施形態に係るガス漏洩防止具1は、地下に埋設されているガス導管41に対し、その管路42Sと連通して接続された水取立管51が、地上GL側のマンホール43に向けて配管され、水取立管51内の管路52Sに対し、地上GL側の接続部53がプラグ56で閉栓されている溜水取出し部40で、プラグ56の開栓により、水取立管51の内径ΦD1より径小な外径ΦD2を有する吸込管61を、地上GL側から水取立管51の管路52Sに挿通して、吸込管61内の管路61Sを通じて、ガス導管41内に溜まった溜水WTを、対象流体として地上GLに取り出す溜水の抜き取りを行うのに用いるガス漏洩防止具として、吸込管61が挿通可能な貫通穴11を有し、水取立管51の接続部53と連結可能に形成された本体部10に、貫通穴11の内壁12に配設されたシール部材20と、貫通穴11を開閉する弁体31を有する逆止弁30と、を備え、貫通穴11の軸心AX方向に対し、一端側には、プラグ56を装着可能なプラグ装着部13が形成されていること、逆止弁30は、軸心AX方向他端側に設けられ、一端側から貫通穴11に挿入された吸込管61の先端62が、貫通穴11内を通過した状態で、弁体31は開弁し、貫通穴11内を通過する前の状態では、弁体31は閉弁すること、を特徴とする。
【0051】
この特徴により、貯留タンク45に溜まった溜水WTの水抜きを行う上で、吸込管61が、ガス導管41と連通した水取立管51内に挿入されても、溜水WTの水抜き作業開始から完了までの間、水取立管51に対し、吸込管61の挿入に起因した都市ガスGSの漏洩を、効果的に抑制することができる。
【0052】
すなわち、水取立管51の管路52Sは、都市ガスGSに晒された雰囲気となっている。溜水WTの水抜き作業を実施するにあたり、プラグ56が開栓され、
図5及び
図6に示すように、吸込管61が、ガス漏洩防止具1の本体部10の貫通穴11に挿入される。このとき、吸込管61の先端62が、
図5に示すように、水抜き作業開始に伴う吸込管61の挿入時や、水抜き作業終了に伴う吸込管61の引抜時に、貫通穴11内を通過する前の状態では、貫通穴11は、弁体31により、水取立管51の管路52Sとの連通を遮断した状態になっている。そのため、水取立管51内の都市ガスGSが、貫通穴11に流入せず、マンホール43等、外部に漏洩することはない。
【0053】
そして、吸込管61の先端62が、貫通穴11を通過して貯留タンク45の底に向けて送出される過程や、貯留タンク45内の溜水WTを吸引している間の過程、吸引を終えた後、地面GL側への吸込管61の引き上げ途中の過程で、吸込管61の先端62が、
図6に示すように、貫通穴11内を通過した状態になると、弁体31が開いて、貫通穴11は、水取立管51の管路52Sと連通した状態になる。これにより、水取立管51内の都市ガスGSは、貫通穴11に流入する。貫通穴11を挿通した吸込管61の外周面61aと、貫通穴11の内壁12との間には、隙間mが存在する。しかしながら、吸込管61は、その外周面61aを、内壁12にあるシール部材20に密着させて貫通穴11に挿入されているため、都市ガスGSは、シール部材20により、隙間mを通じてマンホール43等の外部に漏洩することない。
【0054】
従って、本実施形態に係るガス漏洩防止具1によれば、ガス導管41内に対し、都市ガスGSの流通を遮断することなく、吸込管61を使用して、ガス導管41内からの溜水WTの抜き取り作業等を行う場合に、作業中、ガス導管41からの都市ガスGSの漏れを、より確実に防ぐことができる、という優れた効果を奏する。
【0055】
また、本実施形態に係るガス漏洩防止具1では、弁体31は、ゴム製で板状に形成され、バネ32により、貫通穴11の開閉動作を行うこと、を特徴とする。
【0056】
この特徴により、金属や樹脂等に比べ、軟質なゴム製の弁体31は、金属製の本体部10の弁座15と、密着し易くなり、都市ガスGSは、弁体31と弁座15との間からほとんど漏れることはない。特に、水取立管51の管路52Sでは、都市ガスGSは、大気圧より大きい圧力下にあり、閉弁した弁体31は、その板状の面全体で、都市ガスGSによる加圧力を弁座15に向けて受けている。そのため、弁体31が閉弁している状態では、弁体31と弁座15との間から、都市ガスGSは、ほとんど漏れない。
【0057】
また、本実施形態に係るガス漏洩防止具1B(1)では、溜水取出し部40にある既存の水取立管51(接続部53を含む)に代えて、水取立管51に相当する連絡部35として、吸込管61内の管路61Sに挿通可能で、ガス導管41内と連通して接続可能に形成された管状の連絡部35を有し、連絡部35は、軸心AX方向他端側に、本体部10と一体構造で構成されていること、を特徴とする。
【0058】
この特徴により、新たに溜水取出し部40を設置して、水取器50を新設する場合や、既設の水取器50X(
図7参照)において、既存の水取立管51を、その老朽化や破損等に起因して更新する必要がある場合に、ガス漏洩防止具1Bを使用することができるようになる。そのため、ガス漏洩防止具1Bを用いた水取器50は、余分な部品を有さず、合理的に構成することができる。
【0059】
また、本実施形態に係る設備作業時のガス漏洩防止方法は、地下に埋設されているガス導管41に対し、その管路41Sと連通して接続された水取立管51が、地上GL側のマンホール43に向けて配管され、水取立管51内の管路52Sに対し、地上GL側の接続部53がプラグ56で閉栓されている溜水取出し部40で、プラグ56の開栓により、水取立管51の内径ΦD1より径小な外径ΦD2を有する吸込管61を、地上GL側から水取立管51の管路52Sに挿通して、吸込管61内の管路61Sを通じて、ガス導管41内に溜まった溜水WTを、対象流体として地上GLに取り出す溜水の抜き取り等を行うのにあたり、本実施形態に係るガス漏洩防止具1A(1)が、プラグ56を外した状態にある水取立管51の接続部53と、貫通穴11と水取立管51の管路52Sとが連通した状態で、連結され、プラグ56が、開閉可能な状態でプラグ装着部13に取付けられていること、プラグ56の開栓後、吸込管61の先端62を、軸心AX方向一端側から貫通穴11に挿入し、吸込管61の外周面61aをシール部材20に接触させた状態のまま、吸込管61の先端62を、溜水WT抜きを行う貯留タンク45の底まで送出して到達させる第1工程と、貯留タンク45内の溜水WTを、地面GL側に設置したポンプにより、吸込管61内を通じて、地面GLまで吸い上げる第2工程と、第2工程の完了後、吸込管61を、地面GL側から引き上げて水取立管51から引き抜いた後、プラグ56で本体部10のプラグ装着部13を閉栓する第3工程と、を有すること、を特徴とする。
【0060】
この特徴により、貯留タンク45に溜まった溜水WTの水抜きを行う上で、シール部材20と逆止弁30を具備したガス漏洩防止具1Aを用いていることで、吸込管61が、ガス導管41と連通した水取立管51内に挿入されても、溜水WTの水抜き作業開始から完了までの間、水取立管51に対し、吸込管61の挿入に起因した都市ガスGSの漏洩を、効果的に抑制することができる。
【0061】
従って、本実施形態に係る設備作業時のガス漏洩防止方法によれば、ガス導管41内に対し、都市ガスの流通を遮断することなく、吸込管61を使用して、ガス導管41内からの溜水の抜き取り作業等を行う場合に、作業中、ガス導管41からの都市ガスの漏れを、より確実に防ぐことができる、という優れた効果を奏する。
【0062】
以上において、本発明を実施形態に即して説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できる。
【0063】
(1)例えば、実施形態では、溜水取出し部40で、地下の貯留タンク45に溜まった溜水WTを抜き取り、地上GLに取り出す作業で使用する水取器50に、ガス漏洩防止具1を装着した。しかしながら、本発明に係るガス漏洩防止具は、対象流体取出し設備で、ガス導管に流通する都市ガスの試料を、抜取り管内の管路を通じて、地上に取り出すガスサンプリング作業に用いることもできる。ガスサンプリング作業の一例として、簡単に説明する。
【0064】
都市ガスは、原料である天然ガス(NG:Natural Gas)と、熱量の増大を図るために加える液化石油ガス(LPG:Liquefied Petroleum Gas)との混合により、必要とされる熱量に調整され、乾燥した状態になっているガスである。溜水がガス導管内に入り、貯留タンク内に溜められても、溜水が貯留タンクから抜き取られた後、ガス事業者は、ガス導管内を流通する都市ガスの湿度を計測することにより、都市ガスの乾燥状態を確認することがある。このような場合、ガス事業者は、ガス導管に流通する都市ガスの試料を、抜取り管内の管路を通じて、地上に取り出すガスサンプリング作業を行う。
【0065】
(2)また、実施形態では、シール部材20を2つ具備したガス漏洩防止具1を挙げたが、配設するシール部材の数量は、実施形態に限定されるものではなく、種々変更可能である。
【0066】
(3)また、実施形態では、本体部10にある貫通穴11の内壁12に、シール部材20を配設したガス漏洩防止具1を挙げた。しかしながら、本体部10の貫通穴11の内壁12と、この貫通穴11内に挿通される吸込管61の外周面61aとの隙間をシールするために、シール部材20の有無を問わず、吸込管61の外周面61aにシール部材を設けても良い。
【符号の説明】
【0067】
1、1A、1B ガス漏洩防止具
10 本体部
11 貫通穴
12 貫通穴の内壁
13 プラグ装着部
20 シール部材
30 逆止弁
31 弁体
32 バネ
35 連絡部
40 溜水取出し部(対象流体取出し設備)
41 ガス導管
42S 管路(内部)
43 マンホール(作業場)
51 水取立管(連絡管)
53 接続部
52S 管路
56 プラグ
61 吸込管(抜取り管)
61S 管路
62 先端
61a 外周面
AX 軸心
GL 地面、地上
GS 都市ガス
WT 水、溜水