(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-31
(45)【発行日】2024-08-08
(54)【発明の名称】タイヤ温度予測システム、タイヤ温度予測プログラムおよびタイヤ温度予測方法
(51)【国際特許分類】
B60C 19/00 20060101AFI20240801BHJP
【FI】
B60C19/00 Z
B60C19/00 B
(21)【出願番号】P 2021070230
(22)【出願日】2021-04-19
【審査請求日】2023-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】豊田 憲司
(72)【発明者】
【氏名】秋葉 晃介
【審査官】上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-226392(JP,A)
【文献】特開2018-086892(JP,A)
【文献】特開2017-219477(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0015793(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第104517441(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の積荷物を積載可能な積荷車両について、前記積荷物の荷重に関するデータを時系列に取得する荷重時系列データ取得部と、
前記荷重の変化に応じて長さを変更可能な所定の単位期間を設定する単位期間設定部と、
前記積荷物の荷重に関する荷重時系列データを、前記単位期間で区切って分割するデータ分割部と、
前記データ分割部で区切られた前記荷重時系列データの各分割データについて、それぞれの代表値を算出する代表値算出部と、
各代表値に基づいて、前記積荷車両に装着されたタイヤの特定時点における温度を予測するタイヤ温度予測部と、
を備えるタイヤ温度予測システム。
【請求項2】
前記積荷車両の速度に関するデータを時系列に取得する速度時系列データ取得部をさらに備え、
前記データ分割部は、前記積荷車両の速度に関する速度時系列データを前記単位期間で区切って分割し、
前記代表値算出部は、前記データ分割部で区切られた前記速度時系列データの各分割データについて、それぞれの代表値を算出し、
前記タイヤ温度予測部は、前記速度時系列データの各分割データの代表値を勘案して、前記積荷車両に装着されたタイヤの特定時点における温度を予測する請求項1に記載のタイヤ温度予測システム。
【請求項3】
前記荷重の変化に関するデータを算出する荷重変化データ算出部をさらに備え、
前記単位期間設定部は、前記荷重の変化に関するデータが所定値を超えて変化した時点で、前記単位期間を区切って設定する請求項1または請求項2に記載のタイヤ温度予測システム。
【請求項4】
前記代表値は、前記単位期間における平均値、中央値、最頻値の何れかを含む請求項1から請求項3の何れか1項に記載のタイヤ温度予測システム。
【請求項5】
所定の積荷物を積載可能な積荷車両について、前記積荷物の荷重に関するデータを時系列に取得する荷重時系列データ取得ステップと、
前記荷重の変化に応じて長さを変更可能な所定の単位期間を設定する単位期間設定ステップと、
前記積荷物の荷重に関する荷重時系列データを、前記単位期間で区切って分割するデータ分割ステップと、
前記データ分割ステップで区切られた前記荷重時系列データの各分割データについて、それぞれの代表値を算出する代表値算出ステップと、
各代表値に基づいて、前記積荷車両に装着されたタイヤの特定時点における温度を予測するタイヤ温度予測ステップと、
を有しタイヤ温度予測システムで実行されるタイヤ温度予測プログラム。
【請求項6】
前記積荷車両の速度に関するデータを時系列に取得する速度時系列データ取得ステップをさらに有し、
前記データ分割ステップでは、前記積荷車両の速度に関する速度時系列データを前記単位期間で区切って分割し、
前記代表値算出ステップでは、前記データ分割ステップで区切られた前記速度時系列データの各分割データについて、それぞれの代表値を算出し、
前記タイヤ温度予測ステップでは、前記速度時系列データの各分割データの代表値を勘案して、前記積荷車両に装着されたタイヤの特定時点における温度を予測する請求項5に記載のタイヤ温度予測プログラム。
【請求項7】
所定の積荷物を積載可能な積荷車両について、前記積荷物の荷重に関するデータを時系列に取得する荷重時系列データ取得過程と、
前記荷重の変化に応じて長さを変更可能な所定の単位期間を設定する単位期間設定過程と、
前記積荷物の荷重に関する荷重時系列データを、前記単位期間で区切って分割するデータ分割過程と、
前記データ分割過程で区切られた前記荷重時系列データの各分割データについて、それぞれの代表値を算出する代表値算出過程と、
前記各代表値に基づいて、前記積荷車両に装着されたタイヤの特定時点における温度を予測するタイヤ温度予測過程と、
を有するタイヤ温度予測方法。
【請求項8】
前記積荷車両の速度に関するデータを時系列に取得する速度時系列データ取得過程をさらに有し、
前記データ分割過程では、前記積荷車両の速度に関する速度時系列データを前記単位期間で区切って分割し、
前記代表値算出過程では、前記データ分割過程で区切られた前記速度時系列データの各分割データについて、それぞれの代表値を算出し、
前記タイヤ温度予測過程では、前記速度時系列データの各分割データの代表値を勘案して、前記積荷車両に装着されたタイヤの特定時点における温度を予測する請求項7に記載のタイヤ温度予測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉱山用のダンプトラック等の積荷車両に適用可能なタイヤ温度予測システム、タイヤ温度予測プログラムおよびタイヤ温度予測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、鉱山などで使用されるダンプトラックなどの積荷車両においてタイヤの温度を予測する技術が提案されている(特許文献1)。これにより、タイヤの内部温度等を把握して、タイヤ故障の予防や効率的な車両運用を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来技術では、タイヤ温度予測を行う際に、車両から荷重データおよび車速データ等を時系列に取得し、その時系列データの全てを用いてタイヤの温度予測を行っていた。そのため、温度予測時の計算量が膨大になり、処理装置における計算負荷の増大が問題となっていた。
【0005】
特に、複数台の車両について各タイヤの温度予測を運行管理サーバ等の外部装置で行う場合には、温度予測を行う際の計算負荷を如何にして軽減するかが課題となっていた。
【0006】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、タイヤの温度予測を行う際の計算負荷を軽減することができるタイヤ温度予測システム、タイヤ温度予測プログラムおよびタイヤ温度予測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係るタイヤ温度予測システムは、所定の積荷物を積載可能な積荷車両について、前記積荷物の荷重に関するデータを時系列に取得する荷重時系列データ取得部と、前記荷重の変化に応じて長さを変更可能な所定の単位期間を設定する単位期間設定部と、前記積荷物の荷重に関する荷重時系列データを、前記単位期間で区切って分割するデータ分割部と、前記データ分割部で区切られた前記荷重時系列データの各分割データについて、それぞれの代表値を算出する代表値算出部と、各代表値に基づいて、前記積荷車両に装着されたタイヤの特定時点における温度を予測するタイヤ温度予測部と、を備えることを要旨とする。
このような構成によれば、時系列データの全てを用いていた場合に比して、タイヤの温度予測を行う際の計算負荷を軽減することができる。
【0008】
また、前記積荷車両の速度に関するデータを時系列に取得する速度時系列データ取得部をさらに備え、前記データ分割部は、前記積荷車両の速度に関する速度時系列データを前記単位期間で区切って分割し、前記代表値算出部は、前記データ分割部で区切られた前記速度時系列データの各分割データについて、それぞれの代表値を算出し、前記タイヤ温度予測部は、前記速度時系列データの各分割データの代表値を勘案して、前記積荷車両に装着されたタイヤの特定時点における温度を予測するようにできる。
これにより、タイヤ温度予測の精度を向上すると共に、計算負荷を軽減することができる。
【0009】
また、前記荷重の変化に関するデータを算出する荷重変化データ算出部をさらに備え、前記単位期間設定部は、前記荷重の変化に関するデータが所定値を超えて変化した時点で、前記単位期間を区切って設定するようにできる。
これにより、荷重の変化に対応してタイヤの温度予測を行う際の計算負荷をより軽減することができる。
また、代表値は、前記単位期間における平均値、中央値、最頻値の何れかを含むようにできる。
これにより、タイヤの温度予測を行う際に種々の補正方法に対応することができる。
【0010】
本発明の他の態様に係るタイヤ温度予測プログラムは、所定の積荷物を積載可能な積荷車両について、前記積荷物の荷重に関するデータを時系列に取得する荷重時系列データ取得ステップと、前記荷重の変化に応じて長さを変更可能な所定の単位期間を設定する単位期間設定ステップと、前記積荷物の荷重に関する荷重時系列データを、前記単位期間で区切って分割するデータ分割ステップと、前記データ分割ステップで区切られた前記荷重時系列データの各分割データについて、それぞれの代表値を算出する代表値算出ステップと、各代表値に基づいて、前記積荷車両に装着されたタイヤの特定時点における温度を予測するタイヤ温度予測ステップと、を有しタイヤ温度予測システムで実行されることを要旨とする。
このような構成のプログラムによれば、時系列データの全てを用いていた場合に比して、タイヤの温度予測を行う際の計算負荷を軽減することができる。
【0011】
また、前記積荷車両の速度に関するデータを時系列に取得する速度時系列データ取得ステップをさらに有し、前記データ分割ステップでは、前記積荷車両の速度に関する速度時系列データを前記単位期間で区切って分割し、前記代表値算出ステップでは、前記データ分割ステップで区切られた前記速度時系列データの各分割データについて、それぞれの代表値を算出し、前記タイヤ温度予測ステップでは、前記速度時系列データの各分割データの代表値を勘案して、前記積荷車両に装着されたタイヤの特定時点における温度を予測するようにできる。
これにより、タイヤ温度予測の精度を向上すると共に、計算負荷を軽減することができる。
【0012】
本発明の他の態様に係るタイヤ温度予測方法は、所定の積荷物を積載可能な積荷車両について、前記積荷物の荷重に関するデータを時系列に取得する荷重時系列データ取得過程と、前記荷重の変化に応じて長さを変更可能な所定の単位期間を設定する単位期間設定過程と、前記積荷物の荷重に関する荷重時系列データを、前記単位期間で区切って分割するデータ分割過程と、前記データ分割過程で区切られた前記荷重時系列データの各分割データについて、それぞれの代表値を算出する代表値算出過程と、前記各代表値に基づいて、前記積荷車両に装着されたタイヤの特定時点における温度を予測するタイヤ温度予測過程と、を有することを要旨とする。
このような手順の方法によれば、時系列データの全てを用いていた場合に比して、タイヤの温度予測を行う際の計算負荷を軽減することができる。
【0013】
また、前記積荷車両の速度に関するデータを時系列に取得する速度時系列データ取得過程をさらに有し、前記データ分割過程では、前記積荷車両の速度に関する速度時系列データを前記単位期間で区切って分割し、前記代表値算出過程では、前記データ分割過程で区切られた前記速度時系列データの各分割データについて、それぞれの代表値を算出し、前記タイヤ温度予測過程では、前記速度時系列データの各分割データの代表値を勘案して、前記積荷車両に装着されたタイヤの特定時点における温度を予測するようにできる。
これにより、タイヤ温度予測の精度を向上すると共に、計算負荷を軽減することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、タイヤの温度予測を行う際の計算負荷を軽減することができるタイヤ温度予測システム、タイヤ温度予測プログラムおよびタイヤ温度予測方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態に係るタイヤ温度予測システムの概略構成を示す概略構成図である。
【
図2】実施形態に係るタイヤ温度予測システムの機能構成を示す機能ブロック図である。
【
図3】実施形態に係るタイヤ温度予測システムの運用例を示す説明図である。
【
図4】荷重時系列データの分割例を示す説明図である。
【
図5】速度時系列データの分割例を示す説明図である。
【
図6】実施形態に係るタイヤ温度予測システムで実行されるタイヤ温度予測計算処理の処理手順の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1および
図2を参照して、本発明の実施形態に係るタイヤ温度予測システムS1について説明する。
【0017】
なお、以下の図面の記載において、同一または類似の部分には、同一または類似の符号を付している。但し、図面は模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。
【0018】
したがって、具体的な寸法などは以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0019】
(タイヤ温度予測システムの概略構成)
図1の概略構成図を参照して、実施形態に係るタイヤ温度予測システムS1の概略構成について説明する。
タイヤ温度予測システムS1は、複数の積荷車両V1(V2、V3・・・)と、各積荷車両V1(V2、V3・・・)のタイヤ10(10a、10b・・・)に関する温度情報等を管理するタイヤ情報管理サーバ200と、積荷車両V1(V2、V3・・・)の運用を管理する車両運用センター300とから構成される。
【0020】
積荷車両V1(V2、V3・・・)は、特には限定されないが、例えば、採鉱現場600(
図3等参照)において各種鉱物資源を所定の目的地まで運搬する鉱山用ダンプトラックなどで構成できる。
なお、後出の
図3に示すように、積荷車両V1(V2、V3・・・)の荷台には、ショベルカー500等によって、所定荷重の鉱物資源などが積載される。
【0021】
また、積荷物としての鉱物資源を積載した積荷車両V1(V2、V3・・・)は、路面状況、傾斜状況、走行距離等が異なる走行路を通って複数の目的地610A、B等まで走行する(
図3参照)。
【0022】
各積荷車両V1(V2、V3・・・)は、各タイヤ10(10a、10b・・・)内に設置されて温度情報等を取得するセンサモジュールSN1と、センサモジュールSN1から温度情報等を無線回線N1を介して取得して各種処理を行う車載器150を備えている。車載器150は、後述するように、積荷物の荷重に関するデータを時系列に取得する荷重時系列データ取得部101と、積荷車両の速度に関するデータを時系列に取得する速度時系列データ取得部102と、各種データをタイヤ情報管理サーバ200に送信する通信部103等を備えている。なお、車載器150の構成例については後述する。
【0023】
タイヤ情報管理サーバ200は、車載器150との間で無線回線N2を介して各種データの送受信を行う通信部201、後述する単位期間設定部202等を構成するCPU250、各種情報を表示するモニタ等で構成される表示部207、各種データを記憶するハードディスク装置等で構成されるデータ格納部208等を備える。
【0024】
また、車両運用センター300は、無線回線N3を介してタイヤ情報管理サーバ200で予測されたタイヤ温度に関するデータ等を受信し、無線回線N4を介して各積荷車両V1(V2、V3・・・)に対して車両運用に関する情報を所定のタイミングで送信するよう構成されている。
【0025】
(タイヤ温度予測システムの機能構成)
各種鉱物資源等の積荷物を積載可能な積荷車両V1(V2、V3…)は、温度情報等を取得するセンサモジュールSN1を備えたタイヤ10a、10b…を装着している。センサモジュールSN1は、車載器150に対して無線回線N1を介して温度情報等を送信するようになっている。
なお、センサモジュールSN1で取得した温度情報等は、タイヤ温度予測部205で予測するタイヤ温度の補正に用いることができる。
【0026】
また、各積荷車両V1(V2、V3・・・)に搭載される車載器150は、積荷物の荷重に関するデータを時系列に取得する荷重時系列データ取得部101を備えている。
【0027】
荷重時系列データ取得部101が荷重に関するデータを取得する手法は特には限定されないが、例えば各積荷車両V1(V2、V3・・・)の軸重や輪重を検出する荷重センサSN2等から無線回線N5を介して取得するようにできる。また、荷重に関するデータを時系列に取得する間隔も特には限定されないが、例えば毎秒等に設定することができる。
また、車載器150は、各積荷車両V1(V2、V3・・・)の速度に関するデータを時系列に取得する速度時系列データ取得部102を備えている。
【0028】
速度に関するデータは、例えば各積荷車両V1(V2、V3・・・)が備える車速センサSN3等から無線回線N6を介して取得することができる。また、速度に関するデータを時系列に取得する間隔は、特には限定されないが、例えば毎秒等に設定することができる。
【0029】
また、車載器150は、タイヤ情報管理サーバ200との間で、荷重時系列データD1、速度時系列データD2等の送受信を無線回線N2を介して行う通信部103などを備える。
【0030】
一方、タイヤ情報管理サーバ200は、荷重の変化に応じて長さを変更可能な所定の単位期間(T1a、T1b、T1c等)を設定する単位期間設定部202を備える。単位期間の例については後述する。
【0031】
また、タイヤ情報管理サーバ200は、積荷物の荷重に関する荷重時系列データD1を、単位期間で区切って分割するデータ分割部203を備える。なお、データ分割部203は、積荷車両V1(V2、V3・・・)の速度に関する速度時系列データD2も単位期間で区切って分割する。各データの分割例については後述する。
【0032】
また、タイヤ情報管理サーバ200は、データ分割部203で区切られた荷重時系列データD1の各分割データについて、それぞれの代表値を算出する代表値算出部204を備える。
なお、代表値算出部204は、データ分割部203で区切られた速度時系列データD2の各分割データについても、それぞれの代表値を算出する。
また、上述の代表値は、単位期間における平均値、中央値、最頻値の何れかを含むようにできる。
【0033】
また、タイヤ情報管理サーバ200は、各代表値に基づいて、積荷車両V1(V2、V3・・・)に装着されたタイヤ10a、10b…の特定時点における温度を予測するタイヤ温度予測部205を備える。
【0034】
なお、タイヤ温度予測部205は、速度時系列データD2の各分割データの代表値を勘案して、タイヤ10a、10b…の特定時点における温度を予測するようにしてもよい。
【0035】
また、荷重の変化に関するデータを算出する荷重変化データ算出部206を備え、単位期間設定部202は、荷重の変化に関するデータが所定値を超えて変化した時点で、単位期間(T1a、T1b、T1c等)を区切って設定するようにできる。
【0036】
なお、単位期間設定部202、データ分割部203、代表値算出部204、タイヤ温度予測部205および荷重変化データ算出部206は、タイヤ情報管理サーバ200が備えるCPU250等で構成される。
【0037】
また、タイヤ情報管理サーバ200は、車載器150との間で、荷重時系列データD1、速度時系列データD2等の送受信を無線回線N2を介して行う通信部201を備える。なお、通信部201は、外部システムとしての車両運用センター300との間で、通信回線N3を介して、タイヤ温度予測部205で予測されたタイヤ温度に関するデータ等を送受信する機能も有する。
【0038】
また、タイヤ情報管理サーバ200は、タイヤ温度予測部205で予測されたタイヤ温度に関するデータ等を表示するモニタ等で構成される表示部207および予測されたタイヤ温度に関するデータ等を積荷車両V1(V2、V3・・・)ごとに格納するデータ格納部208等を備える。
【0039】
なお、車両運用センター300は、タイヤ温度予測部205で予測されたタイヤ温度に関するデータ等に基づいて、積荷車両V1(V2、V3・・・)の走行速度や走行経路等の変更を指示する指示情報D3等を車載器150に対して無線回線N4を介して送信する機能などを有する。
【0040】
また、積荷車両V1(V2、V3・・・)は、車両運用センター300からの走行速度や走行経路等の変更を指示する指示情報D3等に基づいて自動運転する自動運転装置を装備する車種でもよいし、指示情報等に基づいて運転手が手動で運転する車種であってもよい。
【0041】
(積荷車両の運用例等について)
図3を参照して、積荷車両V1(V2、V3・・・)の運用例等について説明する。
図3に示すタイヤ温度予測システムS1の運用例では、積荷車両V1(V2、V3・・・)は、採鉱現場600において、ショベルカー500によって鉱物資源が積載され、所定の走行経路1または走行経路2を通って、目的地610Aまたは目的地610Bまで運搬するものとする。
【0042】
ここで、走行経路1は、例えばタイヤ10(10a、10b・・・)への負担が比較的大きい(例えば、路面状態が悪い、勾配が大きい、起伏が激しい等)が、一方で距離は比較的短い経路であるものと仮定する。
【0043】
また、走行経路2は、例えばタイヤ10(10a、10b・・・)への負担が比較的小さい(例えば、路面状態が良い、勾配が小さい、起伏が少ない等)が、一方で距離は比較的長い経路であるものと仮定する。
【0044】
そして、積荷車両V1(V2、V3・・・)の車載器150は、取得した荷重時系列データD1および速度時系列データD2をタイヤ情報管理サーバ200に対して無線回線N2を介して送信する。
なお、荷重データは、ショベルカー500の稼働情報から取得することもできる。
【0045】
荷重時系列データD1および速度時系列データD2を受信したタイヤ情報管理サーバ200は、後述するタイヤ温度予測計算処理のプログラムを実行して、各タイヤ10(10a、10b・・・)の温度を予測する。
タイヤ情報管理サーバ200は、予測されたタイヤ温度に関するデータ等を車両運用センター300に対して無線回線N3を介して送信する。
車両運用センター300では、予測されたタイヤ温度に関するデータ等に基づいて、各積荷車両V1(V2、V3・・・)の運用の変更等の指示を行う。
【0046】
より具体的には、例えばタイヤ10(10a、10b・・・)の温度が上昇している場合には、タイヤ10(10a、10b・・・)への負担を軽減するように、走行経路を1から2に変更したり、走行速度を下げるように指示する指示情報D3等を車載器150に対して無線回線N4を介して送信する。
【0047】
これにより、各積荷車両V1(V2、V3・・・)のタイヤ10(10a、10b・・・)への負担を軽減することができ、より安全で効率的な車両運用を行うことが可能となる。
【0048】
なお、積荷車両V1(V2、V3・・・)としては、車両運用センター300からの指示情報D3等に基づいて自動運転する自動運転装置を装備する車種を運用してもよいし、指示情報等に基づいて運転手が手動で運転する車種を運用するようにしてもよい。
(荷重時系列データの分割例について)
図4を参照して、荷重時系列データD1の分割例について説明する。
図4に示す例では、荷重時系列データD1を単位時間T1a、T1b、T1c…で区切って分割した場合を示している。
【0049】
そして、単位時間T1a、T1b、T1c…は、例えば積荷車両V1(V2、V3・・・)において、積載物について空車状態から積車状態に移行し、さらに空車状態に移行したタイミングt10、t11、t12…で区切って分割されている。
積車状態から空車状態への変化は、荷重の変化に関するデータを算出する荷重変化データ算出部206の算出結果に基づいて検出するようにできる。
なお、各積荷車両V1(V2、V3・・・)の積載物の荷重の変化に応じて単位時間T1a、T1b、T1c…のそれぞれの長さを変更するようにできる。
【0050】
これにより、単位時間T1a、T1b、T1c…で区切られた荷重時系列データD1の各分割データについて、それぞれの代表値を算出し、各代表値に基づいてタイヤ10(10a、10b・・・)の特定時点における温度を予測することができ、時系列データの全てを用いていた場合に比して、タイヤの温度予測を行う際の計算負荷を軽減することが可能となる。
【0051】
(速度時系列データの分割例について)
図5を参照して、速度時系列データD2の分割例について説明する。
図5に示す例では、速度時系列データD2を単位時間T1a、T1b、T1c…で区切って分割した場合を示している。
そして、単位時間T1a、T1b、T1c…は、例えば積荷車両V1(V2、V3・・・)において、積載物について空車状態から積車状態に移行し、さらに空車状態に移行したタイミングt20、t21、t22…で区切って分割されている。
【0052】
積車状態から空車状態への変化は、上述のように荷重の変化に関するデータを算出する荷重変化データ算出部206の算出結果に基づいて検出するようにできる。
なお、各積荷車両V1(V2、V3・・・)の積載物の荷重の変化に応じて単位時間T1a、T1b、T1c…のそれぞれの長さを変更するようにできる。
【0053】
これにより、単位時間T1a、T1b、T1c…で区切られた速度時系列データD2の各分割データについて、それぞれの代表値を算出し、各代表値を勘案してタイヤ10(10a、10b・・・)の特定時点における温度を予測することができ、時系列データの全てを用いていた場合に比して、タイヤの温度予測を行う際の計算負荷を軽減することが可能となる。
【0054】
(タイヤ温度予測計算処理について)
図6のフローチャートを参照して、タイヤ温度予測システムS1で実行されるタイヤ温度予測計算処理の処理手順について説明する。
この処理が開始されると、まずステップS10で積荷車両V1(V2、V3・・・)についての荷重時系列データD1を取得してステップS11に移行する。
ステップS11では、積荷車両V1(V2、V3・・・)についての速度時系列データD2を取得してステップS12に移行する。
ステップS12では、所定の単位期間を設定してステップS13に移行する。なお、単位時間の長さは、各積荷車両V1(V2、V3・・・)の積載物の荷重の変化等に応じて変更するようにしてもよい。
ステップS13では、荷重変化データを算出してステップS14に移行する。
ステップS14では、荷重変化データは所定値(閾値等)を超えて変化したか否かが判定される。
判定結果が「No」の場合にはステップS10に戻り、「Yes」の場合にはステップS15に移行する。
【0055】
ステップS15では、荷重変化データが所定値(閾値等)を超えて変化したタイミングで単位期間を区切って、荷重時系列データD1および速度時系列データD2を分割してステップS16に移行する。
【0056】
ステップS16では、区切られた荷重時系列データD1および速度時系列データD2の各分割データの代表値(平均値、中央値、最頻値等)を算出してステップS17に移行する。
【0057】
ステップS17では、算出された代表値(平均値、中央値、最頻値等)に基づいてタイヤ10(10a、10b・・・)の温度を予測してステップS10に戻る。
【0058】
なお、温度予測については、特開2007-210527号公報、特開2007-210528号公報、特開2018-86892号公報等に開示の技術などを適用することができる。
このような処理により、時系列データの全てを用いていた場合に比して、タイヤの温度予測を行う際の計算負荷を軽減することができる。
そして、上記処理によって予測された予測されたタイヤ温度に関するデータ等を車両運用センター300に対して送信するようにできる。
【0059】
車両運用センター300では、予測されたタイヤ温度に関するデータ等に基づいて、各積荷車両V1(V2、V3・・・)の運用の変更等の指示を行うことができる。
【0060】
より具体的には、例えばタイヤ10(10a、10b・・・)の温度が上昇している場合には、タイヤ10(10a、10b・・・)への負担を軽減するように、
図3に例示した走行経路を1から2に変更したり、走行速度を下げるように指示する指示情報D3等を車載器150に対して無線回線N4を介して送信するようにできる。
【0061】
これにより、各積荷車両V1(V2、V3・・・)のタイヤ10(10a、10b・・・)への負担を軽減することができ、より安全で効率的な車両運用を行うことが可能となる。
【0062】
以上、本発明のタイヤ温度予測システム、タイヤ温度予測プログラムおよびタイヤ温度予測方法を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置き換えることができる。
例えば、タイヤの内部温度は、タイヤの内部温度の実測データを活用し、既存データの学習により、予測するようにできる。
また、FEM(有限要素法)解析を活用し、理論上のタイヤ内の温度勾配を利用して、タイヤの内部温度を予測するようにしてもよい。
なお、FEMを活用して得られるタイヤ内の温度勾配は、環境やオペレーションの変化を考慮して、逐次的に算出して予測するようにできる。
また、温度予測は、車種、タイヤの摩耗状態、外気温によって温度予測補正を行うようにしてもよい。
また、平均速度は、GPSデータなどから算出するようにしてもよい。また、単位期間を区切る基準は、荷重の変化の大きさに加えて、変化する速度を考慮するようにしてもよい。
荷重データは、積荷車両V1(V2、V3・・・)の車載センサ、ショベルカー500等から取得するようにできる。
荷重変化データは、車載センサのデータの変化、ドライバーによる入力、ジオフェンス等から取得するようにできる。
【符号の説明】
【0063】
S1 タイヤ温度予測システム
SN1 センサモジュール
SN2 荷重センサ
SN3 車速センサ
V1、V2、V3… 積荷車両
10(10a、10b…) タイヤ
101 荷重時系列データ取得部
102 速度時系列データ取得部
103 通信部
150 車載器
202 単位期間設定部
203 データ分割部
204 代表値算出部
205 タイヤ温度予測部
206 荷重変化データ算出部
200 タイヤ情報管理サーバ
300 外部システム(車両運用センター)