(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-31
(45)【発行日】2024-08-08
(54)【発明の名称】壁高欄
(51)【国際特許分類】
E01F 15/08 20060101AFI20240801BHJP
E01D 19/10 20060101ALI20240801BHJP
F21S 2/00 20160101ALI20240801BHJP
F21S 8/00 20060101ALI20240801BHJP
F21V 7/10 20060101ALI20240801BHJP
F21W 131/103 20060101ALN20240801BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20240801BHJP
【FI】
E01F15/08
E01D19/10
F21S2/00 600
F21S8/00 110
F21V7/10
F21W131:103
F21Y115:10
(21)【出願番号】P 2021098012
(22)【出願日】2021-06-11
【審査請求日】2023-02-06
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和2年11月1日に渡川ダム統合管理事務所の管理下の横瀬川ダムにて一般公開
(73)【特許権者】
【識別番号】592000886
【氏名又は名称】八千代エンジニヤリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117341
【氏名又は名称】山崎 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】小川 篤志
(72)【発明者】
【氏名】三浦 義典
(72)【発明者】
【氏名】森岡 晃史
(72)【発明者】
【氏名】神田 貴行
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-209321(JP,A)
【文献】特開平11-117228(JP,A)
【文献】実公昭63-040502(JP,Y2)
【文献】韓国公開特許第10-2010-0116282(KR,A)
【文献】特表2004-510297(JP,A)
【文献】実開平05-094322(JP,U)
【文献】特開平11-093118(JP,A)
【文献】特開平08-144232(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01F 15/08
E01D 19/10
F21S 2/00
F21S 8/00
F21V 7/10
F21W 131/103
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路の側部に設置される壁高欄であって、
前記壁高欄は、壁本体と、遮蔽部と、受光部と、手摺りと、照明器とを備えており、
前記遮蔽部は、前記壁本体の上に設けられ、かつ上方に延びており、
前記壁本体と前記遮蔽部とは、一体に形成されたコンクリートブロックであり、
前記遮蔽部は、前記道路側に向けられる内側面を有しており、
前記受光部は、前記内側面上に設けられており、
前記受光部は、少なくとも上方に向いており、
前記手摺りは、前記遮蔽部の前記内側面側に設けられており、
前記照明器は、前記手摺りに設けられており、
前記照明器は、前記照明器からの光が部分的に受光部に照射されるように、下向きに設けられており、
前記遮蔽部の上端は、前記照明器よりも高い位置に位置しており、前記遮蔽部は、前記照明器からの光が前記道路とは反対側に漏れることを防止している
壁高欄。
【請求項2】
請求項1に記載の
壁高欄であって、
前記受光部は、曲面で構成されている
壁高欄。
【請求項3】
請求項1
または請求項2に記載の
壁高欄であって、
前記壁本体は、前記道路から800mm以上となる高さを有しており、
前記壁本体は、前記道路側に向けられる平滑面を有している
壁高欄。
【請求項4】
請求項3に記載の
壁高欄であって、
前記平滑面を上方に延長した仮想平面によって空間を道路側空間と反対側空間とに分けた場合、前記照明器は前記反対側空間に位置している
壁高欄。
【請求項5】
請求項1から
請求項4までのいずれか一つに記載の
壁高欄であって、
前記
壁高欄は、前記壁本体から下方に延び、前記道路の側部を覆う裾部を更に有している
壁高欄。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路の側部に設置される壁高欄に関し、特に、環境配慮型壁高欄に関する。
【背景技術】
【0002】
道路の側部に設置される壁高欄の一例は、例えば特許文献1に開示されている。
【0003】
また、高欄に取り付けられる照明装置の一例が、例えば特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-160690号公報
【文献】特開2004-288591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、安全性や防犯の観点から、道路には照明器具が設置される。道路に設置される照明器具としては、ポールの上部から下方に向かって光を照射するポール型照明器具(街灯)がよく知られている。そして、壁高欄が設置された道路においても、ポール型照明器具が用いられることが多い。
【0006】
しかしながら、ポール型照明器具の光は、比較的広い範囲に照射され、周囲に拡散する。壁高欄が設置された道路においても、ポール型照明器具の光は、道路側のみならず、道路の外側にも照射されて拡散する。そのため、夜になると周囲が暗くなる山間部等の地域においては、ポール型照明器具は、近隣住民への迷惑や生態系へ悪影響などの光害を引き起こす可能性がある。
【0007】
特許文献2の照明装置は、高欄の架木の下面に装着されている。そのため、ポール型照明器具に比べると光の照射範囲は限定される。しかしながら、特許文献2の高欄は、高欄を横切る方向の光を遮るものではない。そのため、たとえ、照明装置を道路側へ向けて設置したとしても、その光は、道路の外側にも拡散し、依然として光害を引き起こす可能性がある。
【0008】
そこで、本発明は、道路側に必要最低限の照度を与えるとともに、道路の外側へ拡散する光を遮ることができる環境配慮型壁高欄を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、第1の環境配慮型壁高欄として、道路の側部に設置される環境配慮型壁高欄であって、
前記環境配慮型壁高欄は、壁本体と、遮蔽部と、受光部と、手摺りと、照明器とを備えており、
前記遮蔽部は、前記壁本体の上に設けられ、かつ上方に延びており、
前記遮蔽部は、前記道路側に向けられる内側面を有しており、
前記受光部は、前記内側面上に設けられており、
前記手摺りは、前記遮蔽部の前記内側面側に設けられており、
前記照明器は、前記手摺りに設けられており、
前記照明器は、前記照明器からの光が部分的に受光部に照射されるように、下向きに設けられており、
前記遮蔽部の上端は、前記照明器よりも高い位置に位置しており、前記遮蔽部は、前記照明器からの光が前記道路とは反対側に漏れることを防止している
環境配慮型壁高欄を提供する。
【0010】
また、本発明は、第2の環境配慮型壁高欄として、第1の環境配慮型壁高欄であって、
前記受光部は、少なくとも上方に向いている
環境配慮型壁高欄を提供する。
【0011】
また、本発明は、第3の環境配慮型壁高欄として、第2の環境配慮型壁高欄であって、
前記受光部は、曲面で構成されている
環境配慮型壁高欄を提供する。
【0012】
また、本発明は、第4の環境配慮型壁高欄として、第1から第3までの環境配慮型壁高欄のいずれかであって、
前記壁本体は、前記道路から800mm以上となる高さを有しており、
前記壁本体は、前記道路側に向けられる平滑面を有している
環境配慮型壁高欄を提供する。
【0013】
また、本発明は、第5の環境配慮型壁高欄として、第4の環境配慮型壁高欄であって、
前記平滑面を上方に延長した仮想平面によって空間を道路側空間と反対側空間とに分けた場合、前記照明器は前記反対側空間に位置している
環境配慮型壁高欄を提供する。
【0014】
更に、本発明は、第6の環境配慮型壁高欄として、第1から第5までの環境配慮型壁高欄のいずれかであって、
前記環境配慮型壁高欄は、前記壁本体から下方に延び、前記道路の側部を覆う裾部を更に有している
環境配慮型壁高欄を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の環境配慮型壁高欄において、壁本体の上に設けられた遮蔽部の上端は、照明器よりも高い位置にある。照明器は、遮蔽部の内側面上に設けられた受光部に部分的に光が照射されるように、遮蔽部の内側面側に設けられた手摺りに下向きに設けられている。この構成により、照明器から道路とは反対側へ向かう光は、遮蔽部によって遮られる。一方、受光部は、照明器の近くに位置しているので、その表面において十分な照度を得ることができる。こうして、本発明の環境配慮型壁高欄は、道路側に必要最低限の照度を与えるとともに、道路の外側へ拡散する光を遮ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施の形態による環境配慮型壁高欄を示す正面図である。
【
図2】
図1の環境配慮型壁高欄を示すA-A線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1及び
図2を参照すると、本発明の一実施の形態による環境配慮型壁高欄(以下、単に壁高欄という)10は、道路50の一方の側部に設置されている。本実施の形態において、道路50は、車道及び歩道を含むダム天端道路を想定している。ただし、本発明は、これに限られない。道路50は、地上道路、高架道路、橋等であってもよい。また、道路50は、車道のみ又は歩道のみの道路であってもよい。
【0018】
図1及び
図2に示されるように、壁高欄10は、コンクリートブロック12と、手摺り14と、照明器16とを備えている。コンクリートブロック12は、壁本体20と、遮蔽部22と、裾部24とを有している。また、遮蔽部22には、受光部225が設けられている。このように、壁高欄10は、壁本体20と、遮蔽部22と、受光部225と、裾部24とを備えている。
【0019】
図2から理解されるように、本実施の形態において、コンクリートブロック12は、壁本体20と、遮蔽部22と、裾部24とが一体に形成されたプレキャスト壁高欄ブロックである。コンクリートブロック12は、道路50に用いられるプレキャストPC(Prestressed Concrete)床板501に設けられたアンカーボルトを利用して、プレキャストPC床板501に固定されている。ただし、本発明において、道路50に対するコンクリートブロック12の固定方法は、特に限定されない。
【0020】
図1に示されるように、正面から見たとき、壁本体20は第1方向に長い矩形の形状を有している。第1方向における壁本体20の長さは、特に限定されない。本実施の形態において、第1方向は、X方向である。また、本実施の形態において、道路50は、第1方向に延びているものとする。この場合、道路50の幅方向は、Y方向に一致する。
【0021】
図2に示されるように、第1方向に沿って見たとき、壁本体20は、上下方向に長い略台形の形状を有している。本実施の形態において、上下方向はX方向である。+X方向が上方であり。-X方向が下方である。
【0022】
図2に示されるように、壁本体20は、道路50側に向けられる内側面201と、道路50とは反対側に向けられる外側面203とを有している。換言すると、内側面201は、少なくとも-Y方向に向いており、外側面203は、少なくとも+Y方向に向いている。詳しくは、内側面201は、-Y方向に向くとともに上方へ向いている。また、外側面203は、+Y方向に向くとともに上方へ向いている。
【0023】
図2から理解されるように、本実施の形態において、壁本体20の内側面201は、平滑面である。また、本実施の形態において、外側面203は、外部へ向かって膨らんだ曲面である。ただし、本発明は、これに限られない。内側面201は、外側へ膨らんだ又は内側へ窪んだ曲面であってもよい。また、外側面203は、平滑面又は内側へ窪んだ曲面であってもよい。しかしながら、車両が道路50の外側へ飛び出すのを防ぐ車両用防護柵としての機能を考慮すると、内側面201は、平滑面であることが好ましい。なお、ここでの「平滑」は、コンクリートを用いて実現できる程度の平滑さを意味する。
【0024】
図2に示されるように、本実施の形態において、壁本体20の内側面201は、部分的に道路50に含まれる歩道を構成する路盤(砂利等)503及び表層(アスファルト層)505で覆われている。換言すると、本実施の形態の壁高欄10は、部分的に道路50に埋め込まれている。ただし、本発明はこれに限られない。壁高欄10は、壁本体20の全体が道路50上に位置していてもよい。いずれの場合も、壁本体20の高さは、道路50の表面からの高さが800mm以上となるように設定される。これは、車両用防護柵に関する規格に基づくものである。
【0025】
図2から理解されるように、遮蔽部22は、壁高欄10の上部に位置している。詳しくは、遮蔽部22は、壁本体20上に設けられ、壁本体20から上方へ延びている。遮蔽部22は、道路50側に向けられる内側面221と、道路50とは反対側に向けられる外側面223とを有している。換言すると、内側面221は、少なくとも-Y方向に向いており、外側面203は、少なくとも+Y方向に向いている。外側面203は、壁本体20の外側面203と滑らかに連続している。
【0026】
図2に示されるように、遮蔽部22の内側面221上には、受光部225が設けられている。本実施の形態の形態において、内側面221の下側3/5程度の範囲が受光部225を形成している。受光部225は、少なくとも上方に向いている面を有している。本実施の形態において、受光部225は、内側へ窪んだ曲面で構成され、斜め上方を向いている。照明器16からの光を受けるためである。ただし、本発明はこれに限られない。受光部225は、単一の又は複数の平面で構成されてもよいし、一つ以上平面と一つ以上の曲面との組合せで構成されてもよい。しかしながら、受光部225の排水性や反射特性等を考慮すると、曲面で構成されていることが好ましい。
【0027】
図1から理解されるように、本実施の形態において、受光部225は、第1方向において遮蔽部22の一端から他端まで連続している。しかしながら、本発明はこれに限られない。遮蔽部22の内側面221のうち受光部225として機能させたい領域のみに、受光部225を形成するようにしてもよい。その場合、受光部225は、凹面とすることができる。しかしながら、第1方向への光の拡散(視認性)を考慮すると、受光部225は、第1方向において遮蔽部22の一端から他端まで連続していることが好ましい。
【0028】
図2に示されるように、裾部24は、壁本体20から下方に延びている。裾部24の外側面241は、壁本体20の外側面203と滑らかに連続している。裾部24は、道路50の側部を覆い、美観を向上させるものである。したがって、裾部24は、必ずしも必要ではない。特に、壁高欄10を地上道路に設置する場合には、裾部24は不要である。
【0029】
図1及び
図2から理解されるように、手摺り14は、断面が略円形又はC形の金属部材、例えば、アルミ部材を用いて構成される。本実施の形態において、金属部材の長さは、第1方向におけるコンクリートブロック12の長さよりも短い。即ち、手摺り14は、複数の金属部材を連結して構成される。よって、手摺り14を構成する金属部材は、コンクリートブロック12のサイズに基づいて専用設計されたものでなくてよい。
【0030】
図1及び
図2に示されるように、手摺り14は、遮蔽部22の内側面221側(道路50側)に設けられている。手摺り14は、遮蔽部22に取付金具を用いて取り付けられる。取付金具は、例えば、インサートアンカー及びボルトを用いて、遮蔽部22に固定される。
【0031】
図2から理解されるように、本実施例において、上下方向における手摺り14の上端の位置は、遮蔽部22の上端の位置と一致する。ただし、本発明は、これに限られない。上下方向における手摺り14の上端の位置は、遮蔽部22の上端の位置より高くてもよいし、低くてもよい。なお、本実施の形態において、上下方向における手摺り14位置は、道路50の路面から1100mm程度である。
【0032】
図1及び
図2に示されるように、照明器16は、手摺り14に設けられている。第1方向において、照明器16は任意の間隔で設置してよい。照明器16は、手摺り14に埋め込まれてもよいし、手摺り14の表面に取り付けられてもよい。本実施の形態において、手摺り14の下部に部分的に埋め込まれている。照明器16としては、LEDを用いることができる。照明器16用の配線は、手摺り14の中を通して設置することができる。
【0033】
図2から理解されるように、照明器16は、照明器16からの光が部分的に受光部225に照射されるように、下向きに設けられる。本実施の形態において、照明器16は、道路50側(-Y側)に向かって斜め下向きに設けられている。この構成により、照明器16から直接上方へ向かう光は存在しない。
【0034】
図2から理解されるように、上下方向における照明器16の位置は、遮蔽部22の上端よりも低い位置とする。換言すると、本実施の形態において、遮蔽部22の上端は、照明器16よりも高い位置に位置している。これにより、遮蔽部22は、照明器16からの光が道路50とは反対側(+Y側)に漏れることを防止する。
【0035】
また、照明器16は、
図2に示されるように、壁本体20の内側面(平滑面)221を上方に延長した仮想平面によって空間を道路側空間と反対側空間とに分けた場合、反対側空間に位置している。本実施の形態において、照明器16のみならず手摺り14の全体も反対側空間に位置している。これは、車両等の衝突した場合を考慮して、道路50側に突出した部分をできる限りなくすためである。
【0036】
以上のように構成された壁高欄10において、照明器16からの光は、部分的に受光部225に照射される。受光部225は、照明器16からの光を反射し拡散させる。受光部225は、照明器16の比較的近くに位置するため、その表面において高い照度が得られる。よって、受光部225からの反射光(拡散光)は、道路50側から見たとき容易に視認できる。特に、本実施の形態のように、受光部225が壁高欄10の端から端まで延びていると、第1方向において遠い位置からでも容易に視認できる。このように、本実施の形態よれば、比較的低い輝度を有する照明器16を用いて、十分な照度を得ることができる。
【0037】
一方、道路50とは反対側から壁高欄10を見ると、照明器16の光は、壁本体20及び遮蔽部22によって遮られる。また、受光部225から上方へ向かう反射光も手摺り14によって遮られる。その結果、道路50の外側から照明器16の光を視認することは困難である。こうして、本実施の形態の壁高欄10は、光害の発生を防止又は抑制することができる。
【0038】
以上、本発明について、実施の形態を掲げて説明してきたが、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変形、変更が可能である。例えば、上記実施の形態において、コンクリートブロック12はプレキャスト壁高欄ブロックであったが、在来工法を用いてコンクリートブロック12を形成してもよい。
【符号の説明】
【0039】
10 環境配慮型壁高欄(壁高欄)
12 コンクリートブロック
14 手摺り
16 照明器
20 壁本体
201 内側面
203 外側面
22 遮蔽部
221 内側面
223 外側面
225 受光部
24 裾部
241 外側面
50 道路
501 プレキャストPC(Prestressed Concrete)床板
503 路盤
505 表層