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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-31
(45)【発行日】2024-08-08
(54)【発明の名称】立型ポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04D 13/00 20060101AFI20240801BHJP
   F04D 29/66 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
F04D13/00 F
F04D29/66 A
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021113722
(22)【出願日】2021-07-08
(65)【公開番号】P2023009991
(43)【公開日】2023-01-20
【審査請求日】2024-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川下 倫平
(72)【発明者】
【氏名】黒木 勝也
【審査官】大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-197142(JP,A)
【文献】中国実用新案第212374838(CN,U)
【文献】実開昭61-082092(JP,U)
【文献】特開2010-228034(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 13/00
F04D 29/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒形状をなすケーシングと、
外周部に羽根車が設けられて前記ケーシングの内部に回転自在に支持される回転軸と、
前記回転軸の外周側に配置されて前記羽根車の回転により昇圧された流体を上方に移送する流路と、
前記ケーシングの外周部に周方向に所定間隔を空けて配置されて前記流路を移送される流体の圧力に応じて前記ケーシングの径方向の外方に移動して先端部が前記ケーシングの外周面から外方に突出可能な複数の移動ブロックと、
を備える立型ポンプ。
【請求項2】
前記移動ブロックは、少なくとも先端部に第1減衰部材が設けられる、
請求項1に記載の立型ポンプ。
【請求項3】
前記移動ブロックの前記ケーシングの径方向の外方への移動量を規制するストッパが設けられる、
請求項1または請求項2に記載の立型ポンプ。
【請求項4】
前記移動ブロックは、先端部が前記ケーシングの外周面から外方に突出可能な第1移動ブロックと、前記第1移動ブロックの後端部側に配置されて前記第1移動ブロックより鉛直方向または周方向に突出する突出部を有すると共に後端部が前記流路に露出する第2移動ブロックとを有し、前記ストッパは、前記突出部に対して前記ケーシングの径方向の外方に対向して配置される、
請求項3に記載の立型ポンプ。
【請求項5】
前記第2移動ブロックの突出部と前記突出部に対向する前記ストッパの少なくともいずれか一方に第2減衰部材が設けられる、
請求項4に記載の立型ポンプ。
【請求項6】
前記移動ブロックは、先端部における鉛直方向の上部および下部に傾斜面が設けられる、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の立型ポンプ。
【請求項7】
前記ケーシングは、径方向に沿って開口する収容部が設けられ、前記移動ブロックは、前記収容部に配置され、前記移動ブロックと前記収容部との間の隙間を塞ぐシール部材が設けられる、
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の立型ポンプ。
【請求項8】
前記移動ブロックを前記ケーシングの径方向の内方に付勢する第1付勢部材と、前記移動ブロックを前記ケーシングの径方向の外方に付勢する第2付勢部材とを有し、前記第1付勢部材の付勢力が前記第2付勢部材の付勢力より大きく設定される、
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の立型ポンプ。
【請求項9】
前記ケーシングと前記移動ブロックとの間にダンパブロックが設けられ、前記移動ブロックと前記ダンパブロックとの間に前記第2付勢部材が設けられ、前記ケーシングは、前記移動ブロックに対して前記流路を移送される流体の第1圧力が作用する第1通路と、前記ダンパブロックに対して前記流路を移送される流体の前記第1圧力より低圧の第2圧力が作用する第2通路とが設けられる、
請求項8に記載の立型ポンプ。
【請求項10】
前記ケーシングは、鉛直方向に沿って配置される生産管の内部に配置され、前記移動ブロックは、前記ケーシングの径方向の外方に移動して先端部が前記生産管の内周面に接触可能である、
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の立型ポンプ。
【請求項11】
前記生産管は、前記移動ブロックの少なくとも径方向に対向する領域に補強部が設けられる、
請求項10に記載の立型ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、流体を鉛直方向の上方に向けて移送する立型ポンプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
油などの流体を深い井戸から汲み上げるポンプとして、電動水中ポンプ(ESP)がある。電動水中ポンプは、モータとポンプ本体とを有する。地上に設置された採油装置から地中に向けて生産管が配置され、電動水中ポンプは、生産管の内部に配置される。電動水中ポンプは、深い井戸から油を汲み上げ、油を加圧しながら上昇させて生産管の上方に移送する。このようなポンプとしては、例えば、下記特許文献1に記載されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-271800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電動水中ポンプは、ケーシングに鉛直方向に沿う回転軸が回転自在に支持され、回転軸に軸方向に所定間隔を空けて多数の羽根車が装着されて構成される。そのため、電動水中ポンプのケーシングは、全体として柔な構造となる。電動水中ポンプは、生産管の内部に配置されて作動する。このとき、ケーシングは、所定の周波数モードで振動する。ケーシング主体の振動モードは、周波数が低いことから回転軸とケーシングとの相対変位が小さい。そのため、回転軸を支持する軸受の減衰効果が十分に機能せず、減衰比が非常に小さくなり、不安定振動が生じるおそれがある。この対策として、生産管とケーシングとの間にダンパを入れることが考えられる。ところが、電動水中ポンプのメンテナンスを実施するとき、生産管から電動水中ポンプを引き抜く必要があり、生産管とケーシングとの間にダンパを入れることは、構造上困難である。
【0005】
本開示は、上述した課題を解決するものであり、ケーシングにおける振動の発生を抑制する立型ポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための本開示の立型ポンプは、円筒形状をなすケーシングと、外周部に羽根車が設けられて前記ケーシングの内部に回転自在に支持される回転軸と、前記回転軸の外周側に配置されて前記羽根車の回転により昇圧された流体を上方に移送する流路と、前記ケーシングの外周部に周方向に所定間隔を空けて配置されて前記流路を移送される流体の圧力に応じて前記ケーシングの径方向の外方に移動して先端部が前記ケーシングの外周面から外方に突出可能な複数の移動ブロックと、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示の立型ポンプによれば、ケーシングにおける振動の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1実施形態の電動水中ポンプを表す全体構成図である。
図2図2は、電動水中ポンプにおけるポンプ本体の要部を表す縦断面図である。
図3図3は、電動水中ポンプにおけるポンプ本体の要部を表す図2のIII-III縦断面図である。
図4図4は、移動ブロックの支持構造を表す縦断面図である。
図5図5は、移動ブロックの支持構造を表す水平断面図である。
図6図6は、移動ブロックの作動を表す縦断面図である。
図7図7は、移動ブロックの作動を表す水平断面図である。
図8図8は、第2実施形態の電動水中ポンプにおけるポンプ本体の要部を表す縦断面図である。
図9図9は、第3実施形態の電動水中ポンプにおけるポンプ本体の要部を表す縦断面図である。
図10図10は、電動水中ポンプにおけるポンプ本体の要部を表す水平縦断面図である。
図11図11は、移動ブロックの作動を表す縦断面図である。
図12図12は、第4実施形態の電動水中ポンプを表す全体構成図である。
図13図13は、電動水中ポンプの作動を表す概略図である。
図14図14は、第5実施形態の電動水中ポンプの要部を表す水平断面図である。
図15図15は、電動水中ポンプにおけるポンプ本体の要部を表す図14のXV-XV縦断面図である。
図16図16は、移動ブロックの作動を表す水平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に図面を参照して、本開示の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本開示が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。また、実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。
【0010】
[第1実施形態]
<電動水中ポンプ>
図1は、第1実施形態の電動水中ポンプを表す全体構成図である。第1実施形態では、本発明の立型ポンプを電動水中ポンプに適用して説明する。
【0011】
第1実施形態において、図1に示すように、採油装置10は、設置面11に設置される。設置面11は、油田12に対して鉛直方向の上方に設置される。油田12が海底にある場合、つまり、油田12が海底油田の場合、設置面11は、海上に設置される建造物となる。設置面11は、油田12が地面の地下にある場合、地面となる。油田12は、採油する対象の対象油Qが貯留される領域である。
【0012】
採油装置10は、地上設備13と、生産管14と、電動水中ポンプ15とを備える。地上設備13は、例えば、コイルタービンまたはワイヤ巻き取り装置などである。地上設備13は、ワイヤ16を繰り出したり、巻き取ったりすることができる。地上設備13は、案内管17が設けられる。案内管17は、採取した対象油Qを案内する。生産管14は、設置面11と油田12との間に鉛直方向に沿って配置される。生産管14は、上部が地上設備13に連結され、下部が油田12に位置する。
【0013】
電動水中ポンプ15は、油田12に貯留されている対象油Qを上方に移送するものである。電動水中ポンプ15は、生産管14の内部に配置される。電動水中ポンプ15は、上端部にワイヤ16の先端部が連結され、ワイヤ16の移動により生産管14の内部を昇降可能である。
【0014】
電動水中ポンプ15は、ポンプ本体21と、インテーク22と、シールセクション23と、電動モータ24とを備える。電動水中ポンプ15は、鉛直方向の上方から下方に向けて、ポンプ本体21、インテーク22、シールセクション23、電動モータ24が順に連結される。但し、電動水中ポンプ15は、この構成に限定されるものではない。ポンプ本体21は、電動モータ24により駆動可能である。電動モータ24は、図示しないが、地上設備13から生産管14の内部を通って電力ケーブルが接続される。
【0015】
<ポンプ本体>
以下、電動水中ポンプ15のポンプ本体21について詳細に説明する。図2は、電動水中ポンプにおけるポンプ本体の要部を表す縦断面図、図3は、電動水中ポンプにおけるポンプ本体の要部を表す図2のIII-III縦断面図である。
【0016】
図2および図3に示すように、ポンプ本体21は、ケーシング31と、回転軸32と、流路33と、複数(本実施形態では、4個)の移動ブロック34とを備える。
【0017】
生産管14は、円筒形状をなす。ケーシング31は、生産管14の内部に配置される。ケーシング31は、円筒形状をなす。ケーシング31は、外径が生産管14の内径より小さい寸法であり、ケーシング31の外周面と生産管14の内周面との間に隙間Sが確保される。
【0018】
回転軸32は、電動モータ24(図1参照)により駆動回転可能である。回転軸32は、ケーシング31の内部の中心位置に配置される。回転軸32は、円柱形状をなし、軸受41によりケーシング31に回転自在に支持される。回転軸32は、外周部に羽根車42が設けられる。羽根車42は、回転軸32の軸方向に沿って複数配置される。複数の羽根車42は、回転軸32に一体に設けられる。電動モータ24により回転軸32が駆動回転すると、複数の羽根車42も同方向に一体に回転する。
【0019】
流路33は、回転軸32の外周側に配置される。流路33は、ケーシング31および複数の羽根車42を鉛直方向に貫通して設けられる。流路33は、ケーシング31に設けられた複数のディフューザ43と、複数の羽根車42の翼44が配置される。流路33は、複数の羽根車42の回転により昇圧された対象油(流体)Qを鉛直方向の上方に移送する。羽根車42は、下流側(鉛直方向の上方側)にディフューザ43が配置される。羽根車42とディフューザ43は、鉛直方向に沿って交互に配置される。
【0020】
4個の移動ブロック34は、ケーシング31の外周部に周方向に所定間隔を空けて配置される。本実施形態にて、4個の移動ブロック34は、ケーシング31の外周部に周方向に均等間隔で配置されるが、不均等間隔であってもよい。また、移動ブロック34の個数は、4個に限定されず、2個でも、5個以上であってもよく、複数設けられていればよい。
【0021】
移動ブロック34は、ケーシング31の径方向に沿って移動自在に支持される。移動ブロック34は、流路33を移送される対象油(流体)Qの圧力に応じてケーシング31の径方向の外方に移動可能である。このとき、移動ブロック34は、先端部がケーシング31の外周面から外方に突出可能である。
【0022】
<移動ブロックの詳細構成>
図4は、移動ブロックの支持構造を表す縦断面図、図5は、移動ブロックの支持構造を表す水平断面図である。
【0023】
図4および図5に示すように、移動ブロック34は、第1移動ブロック51と、第2移動ブロック52とを有する。第1移動ブロック51と第2移動ブロック52は、一体に設けられる。但し、第1移動ブロック51と第2移動ブロック52は、別体に設けられていてもよい。第1移動ブロック51は、ケーシング31における径方向の外方側に設けられ、第2移動ブロック52は、第1移動ブロック51よりケーシング31における径方向の内方側に設けられる。第1移動ブロック51は、鉛直方向に長い直方体形状をなす。第2移動ブロック52は、鉛直方向に長い直方体形状をなし、第1移動ブロック51より鉛直方向および周方向に長い寸法である。
【0024】
ケーシング31は、収容部53が設けられる。収容部53は、ケーシング31の径方向に沿って設けられ、流路33とケーシング31の外方空間とを連通する。収容部53は、第1貫通孔54と、第2貫通孔55とを有する。第1貫通孔54は、ケーシング31における径方向の外方側に設けられ、第2貫通孔55は、第1貫通孔54ケーシング31における径方向の内方側に設けられる。第1貫通孔54は、矩形の開口である。第2貫通孔55は、矩形の開口であり、第1貫通孔54より鉛直方向および周方向に長い寸法である。
【0025】
移動ブロック34は、ケーシング31の収容部53に収容される。移動ブロック34は、第1移動ブロック51が第1貫通孔54に収容され、第2移動ブロック52が第2貫通孔55に収容される。移動ブロック34と収容部53は、両者の間に若干の隙間が設けられることで、移動ブロック34は、収容部53でケーシング31の径方向に沿って移動自在に支持される。移動ブロック34が収容部53をケーシング31の径方向の外側に移動したとき、第1移動ブロック51の先端部がケーシング31の外周面から外方に突出可能である。また、移動ブロック34は、第2移動ブロック52の後端部が流路33に露出する。
【0026】
ケーシング31は、移動ブロック34のケーシング31の径方向の外方への移動量を規制するストッパが設けられる。上述したように、移動ブロック34は、第1移動ブロック51と、第1移動ブロック51よりケーシング31における径方向の内方側で第1移動ブロック51より鉛直方向および周方向に長い寸法の第2移動ブロック52とを有する。一方、移動ブロック34が収容される収容部53は、第1移動ブロック51が収容される第1貫通孔54と、第1貫通孔54よりケーシング31における径方向の内方側で第1貫通孔54より鉛直方向および周方向に長い寸法での第2貫通孔55とを有する。そのため、移動ブロック34は、第1移動ブロック51と第2移動ブロック52との間に段部(突出部)56が設けられる。また、収容部53は、第1貫通孔54と第2貫通孔55との間に段部57が設けられる。
【0027】
移動ブロック34が収容部53に収容されたとき、移動ブロック34の段部56と収容部53の段部57とは、ケーシング31の径方向に対向する。そして、移動ブロック34が収容部53をケーシング31の径方向の外方へ移動するとき、段部56が段部57に当接する。収容部53の段部57は、移動ブロック34の移動量を規制するストッパとして機能する。
【0028】
移動ブロック34は、第1移動ブロック51の先端部に第1減衰部材61が設けられる。また、移動ブロック34は、第2移動ブロック52の段部57に第2減衰部材62が設けられる。第1減衰部材61および第2減衰部材62は、高い減衰機能を有する部材であり、例えば、ゴムなどの弾性部材である。但し、第1減衰部材61および第2減衰部材62は、この構成に限定されるものではない。第1減衰部材61および第2減衰部材62は、樹脂や金属ばねなどであってもよい。なお、移動ブロック34は、金属や樹脂などにより構成される。また、第2減衰部材62は、収容部53の段部57に設けられていてもよい。さらに、第1減衰部材61だけを設けて第2減衰部材62をなくしてもよい。
【0029】
<移動ブロックの作動>
ここで、移動ブロックの作動について説明する。図6は、移動ブロックの作動を表す縦断面図、図7は、移動ブロックの作動を表す水平断面図である。
【0030】
流路33に対象油Qが流動していないとき、移動ブロック34は、収容部53におけるケーシング31の径方向の内方に位置する。このとき、移動ブロック34は、第1移動ブロック51の先端部が第1貫通孔54の内部に位置し、ケーシング31の外周面から突出していない。
【0031】
流路33に対象油Qが流動し、流路33を流れる対象油Qの圧力が上昇すると、対象油Qの圧力により移動ブロック34が押圧され、移動ブロック34は、収容部53におけるケーシング31の径方向の外方に移動する。すると、図6および図7に示すように、移動ブロック34は、第1移動ブロック51の先端部が第1貫通孔54の外方に移動し、ケーシング31の外周面から突出する。そして、移動ブロック34は、第1移動ブロック51の第1減衰部材61が生産管14の内周面に接触すると共に、第2移動ブロック52の第2減衰部材62が収容部53の段部57に接触する。
【0032】
このとき、第1移動ブロック51は、第1減衰部材61を介して生産管14の内周面を押圧し、第2移動ブロック52は、第2減衰部材62を介してケーシング31を押圧する。なお、第1移動ブロック51の第1減衰部材61が生産管14の内周面を所定力で押圧すると共に、第2移動ブロック52の第2減衰部材62がケーシング31を所定力で押圧するように、移動ブロック34、収容部53、減衰部材61,62の各種寸法を適正値に設定する必要がある。
【0033】
<電動水中ポンプの作動>
図1に示すように、電動水中ポンプ15は、生産管14の内部に配置される。電動モータ24によりポンプ本体21を駆動すると、油田12に貯留されている対象油Qが上方に移送される。すなわち、図2および図3に示すように、ポンプ本体21は、回転軸32が駆動回転すると、回転軸32と一体の複数の羽根車42が回転し、流路33にある対象油Qを昇圧し、上方に移送する。
【0034】
流路33を流れる対象油Qの圧力が上昇すると、対象油Qの圧力により移動ブロック34の後端部が押圧され、移動ブロック34をケーシング31の径方向の外方に移動する。すると、図6および図7に示すように、移動ブロック34は、先端部がケーシング31の外周面から外方に突出し、第1減衰部材61が生産管14の内周面に接触する。このとき、移動ブロック34は、第1減衰部材61を介して生産管14の内周面を押圧すると共に、第2減衰部材62を介してケーシング31を押圧する。
【0035】
電動水中ポンプ15は、作動中にケーシング31が低い周波数モードで振動しやすい。ところが、本実施形態では、電動水中ポンプ15の作動中、複数の移動ブロック34が減衰部材61,62を介して生産管14の内周面とケーシング31を押圧している。そのため、ケーシング31は、複数の移動ブロック34を介して生産管14と一体となる。そして、ケーシング31と移動ブロック34と生産管14との間に減衰部材61,62が介在する。そのため、ケーシング31の振動は、減衰部材61,62により減衰される。
【0036】
[第2実施形態]
図8は、第2実施形態の電動水中ポンプにおけるポンプ本体の要部を表す縦断面図である。なお、上述した第1実施形態と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0037】
第2実施形態において、図8に示すように、移動ブロック34は、第1移動ブロック51と、第2移動ブロック52とを有する。ケーシング31は、収容部53が設けられる。収容部53は、第1貫通孔54と、第2貫通孔55とを有する。移動ブロック34は、ケーシング31の収容部53に収容され、ケーシング31の径方向に沿って移動自在に支持される。移動ブロック34が収容部53をケーシング31の径方向の外側に移動したとき、第1移動ブロック51の先端部がケーシング31の外周面から外方に突出可能である。また、移動ブロック34は、第2移動ブロック52の後端部が流路33に露出する。
【0038】
移動ブロック34は、第1移動ブロック51の先端部に第1減衰部材61が設けられる。移動ブロック34は、第1移動ブロック51の先端部における鉛直方向の上部および下部に傾斜面71,72が設けられる。具体的に、移動ブロック34は、第1移動ブロック51の先端部における鉛直方向の上部および下部を切り欠くように傾斜面を形成し、第1減衰部材61を設ける。そのため、移動ブロック34は、第1減衰部材61の表面に傾斜面71,72が形成される。
【0039】
上傾斜面71は、第1移動ブロック51の先端上部で、鉛直方向の上方に向かうほどにケーシング31の径方向の内方に向かうように傾斜する。下傾斜面72は、第1移動ブロック51の先端下部で、鉛直方向の下方に向かうほどにケーシング31の径方向の内方に向かうように傾斜する。すなわち、上傾斜面71は、鉛直方向の上方に向かうほどに生産管14の内周面から離れるように傾斜する。下傾斜面72は、鉛直方向の下方に向かうほどに生産管14の内周面から離れるように傾斜する。
【0040】
なお、移動ブロック34の先端部における鉛直方向の上部および下部に傾斜面71,72を設けたが、傾斜面71,72の形状は、平坦面または曲面である。また、移動ブロック34の先端部の一部形状または全体形状を、曲面をなす傾斜面としてもよい。
【0041】
そのため、移動ブロック34が流路33を流動する対象油Qの圧力により押圧され、収容部53におけるケーシング31の径方向の外方に移動すると、移動ブロック34は、第1移動ブロック51の先端部がケーシング31の外周面から突出する。そして、移動ブロック34は、第1移動ブロック51の第1減衰部材61が生産管14の内周面を押圧する。すると、ケーシング31は、複数の移動ブロック34を介して生産管14と一体となる。そして、ケーシング31と移動ブロック34と生産管14との間に減衰部材61,62が介在する。そのため、ケーシング31の振動は、減衰部材61,62により減衰される。
【0042】
流路33における対象油Qの流動がなくなると、対象油Qの圧力が低下し、生産管14の内周面に対する移動ブロック34の先端部の押圧動作がなくなる。電動水中ポンプ15(図1参照)をメンテナンスするとき、電動水中ポンプ15を生産管14から上方に引き抜く。このとき、第1移動ブロック51は、先端部における鉛直方向の上部に上傾斜面71が設けられていることから、移動ブロック34の先端部における鉛直方向の上部の角部が生産管14の内面に引っ掛かることがなく、ポンプ本体21をスムースに上昇させることができる。
【0043】
また、電動水中ポンプ15を生産管14に挿入するとき、電動水中ポンプ15を下降させる。このとき、第1移動ブロック51は、先端部における鉛直方向の下部に下傾斜面72が設けられていることから、移動ブロック34の先端部における鉛直方向の下部の角部が生産管14の内面に引っ掛かることがなく、ポンプ本体21をスムースに下降させることができる。
【0044】
[第3実施形態]
図9は、第3実施形態の電動水中ポンプにおけるポンプ本体の要部を表す縦断面図、図10は、電動水中ポンプにおけるポンプ本体の要部を表す水平縦断面図、図11は、移動ブロックの作動を表す縦断面図である。なお、上述した第1実施形態と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0045】
第3実施形態において、図9および図10に示すように、移動ブロック34は、第1移動ブロック51と、第2移動ブロック52とを有する。ケーシング31は、収容部53が設けられる。収容部53は、第1貫通孔54と、第2貫通孔55とを有する。移動ブロック34は、ケーシング31の収容部53に収容され、ケーシング31の径方向に沿って移動自在に支持される。移動ブロック34が収容部53をケーシング31の径方向の外側に移動したとき、第1移動ブロック51の先端部がケーシング31の外周面から外方に突出可能である。また、移動ブロック34は、第2移動ブロック52の後端部が流路33に露出する。
【0046】
ケーシング31は、移動ブロック34と収容部53との間の隙間を塞ぐシール部材81が設けられる。移動ブロック34は、ケーシング31の収容部53に移動自在に支持されることから、第2移動ブロック52の外面と第2貫通孔55の内面との間に隙間が設けられる。シール部材81は、所定の大きさの矩形の平板形状をなし、第2貫通孔55の開口面積より大きい寸法である。シール部材81は、軟質性を有することが好ましく、例えば、ゴムシートや金属シートなどにより構成される。また、シール部材81は、対象油Qが浸透しない材質である必要がある。
【0047】
シール部材81は、外周部がケーシング3に固定される。本実施形態にて、シール部材81は、第2移動ブロック52の後端部に固定されるが、第2移動ブロック52の後端部に固定しなくてもよい。また、シール部材81は、第2貫通孔55の開口面積より大きい矩形の平板形状であるが、矩形のリング形状であってもよい。つまり、第2移動ブロック52の後端部の外側の周囲と第2貫通孔55の後端部の内側の周囲との間の隙間を閉塞できればよく、第2移動ブロック52の後端部を覆う必要はない。
【0048】
そのため、移動ブロック34が流路33を流動する対象油Qの圧力によりシール部材81を介して押圧され、収容部53におけるケーシング31の径方向の外方に移動すると、移動ブロック34は、第1移動ブロック51の先端部がケーシング31の外周面から突出する。そして、移動ブロック34は、第1移動ブロック51の第1減衰部材61が生産管14の内周面を押圧する。すると、ケーシング31は、複数の移動ブロック34を介して生産管14と一体となる。そして、ケーシング31と移動ブロック34と生産管14との間に減衰部材61,62が介在する。そのため、ケーシング31の振動は、減衰部材61,62により減衰される。
【0049】
このとき、移動ブロック34とケーシング31の収容部53との間の隙間がシール部材81により塞がれている。そのため、流路33を流動する対象油Qは、移動ブロック34と収容部53との間の隙間を通ってポンプ本体21と生産管14との間に隙間Sに漏れることがない。また、流路33を流動する対象油Qは、シール部材81を介して収容部53に収容された移動ブロック34の後端部を押圧する。そのため、対象油Qの圧力が低下することなく移動ブロック34に伝達され、移動ブロック34を適正に押圧することができる。
【0050】
[第4実施形態]
図12は、第4実施形態の電動水中ポンプを表す全体構成図、図13は、電動水中ポンプの作動を表す概略図である。なお、上述した第1実施形態と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0051】
第4実施形態において、図12に示すように、採油装置10は、地上設備13と、生産管14と、電動水中ポンプ15とを備える。生産管14は、上部が地上設備13に連結され、下部が油田12に連結される。電動水中ポンプ15は、油田12に貯留されている対象油Qを上方に移送する。電動水中ポンプ15は、生産管14の内部に配置される。電動水中ポンプ15は、ポンプ本体21と、インテーク22と、シールセクション23と、電動モータ24とを備える。
【0052】
生産管14は、ポンプ本体21に設けられた複数の移動ブロック34の少なくとも径方向に対向する領域Hに補強部14aが設けられる。生産管14は、長い円筒形状をなし、鉛直方向に沿って配置される。生産管14は、ポンプ本体21の径方向に対向する領域Hの補強部14aの板厚が他の領域より厚い。この場合、生産管14は、内径が鉛直方向の全ての領域で同一寸法であるが、外径は、他の領域に比べて補強部14aの領域Hだけが大きい寸法である。生産管14は、板厚の厚い補強部14aが設けられた領域Hの曲げ剛性が、他の領域のまげ剛性に比べて高い。
【0053】
ポンプ本体21は、上述した各実施形態のように、複数の移動ブロック34が配置される。ポンプ本体21は、移動ブロック34によりケーシング31の振動を減衰することができる。しかし、ケーシング31と生産管14とが同期して同じ振幅・移送関係で振動すると、両者の相対変位がないことから、ケーシング31の振動を減衰することが困難となる。そのため、本実施形態では、移動ブロック34の径方向に対向する生産管14の領域Hに補強部14aを設け、曲げ剛性を高めている。
【0054】
そのため、図13に示すように、電動水中ポンプ15の駆動時に、ポンプ本体21と生産管14が同期して同じ振幅・移送関係で振動しても、生産管14の補強部14aは、曲げ剛性が高いことから、ポンプ本体21と同期して振動しない。つまり、ポンプ本体21と生産管14の補強部14aは、両者の間に相対変位が発生する。そのため、ポンプ本体21は、移動ブロック34が適正に機能することとなり、移動ブロック34によりケーシング31の振動を減衰することができる。
【0055】
[第5実施形態]
図14は、第5実施形態の電動水中ポンプの要部を表す水平断面図、図15は、電動水中ポンプにおけるポンプ本体の要部を表す図14のXV-XV縦断面図、図16は、移動ブロックの作動を表す水平断面図である。なお、上述した第1実施形態と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0056】
図14および図15に示すように、ポンプ本体101は、ケーシング111と、回転軸32と、流路33と、複数(本実施形態では、4個)の移動ブロック112と、ダンパブロック113と、第1圧縮コイルばね(第1付勢部材)114と、第2圧縮コイルばね(第2付勢部材)115とを備える。
【0057】
4個の移動ブロック112は、ケーシング111の外周部に周方向に所定間隔を空けて配置される。移動ブロック112は、ケーシング111の径方向に沿って移動自在に支持される。移動ブロック112は、流路33を移送される対象油Qの圧力に応じてケーシング111の径方向の外方に移動可能である。このとき、移動ブロック112は、先端部がケーシング111の外周面から外方に突出可能である。
【0058】
具体的に説明すると、ケーシング111は、収容部121が設けられる。収容部121は、ケーシング31の径方向における内方側に隔壁122が設けられ、外方側に貫通孔123が設けられ、収容部121がケーシング31の外方空間と連通する。また、ケーシング111は、隔壁122に貫通孔123側に突出する凸部124が設けられる。
【0059】
移動ブロック112は、ケーシング111の収容部121に収容される。移動ブロック112は、U字断面形状をなし、基端部側に外側に延出するフランジ部125が全周に設けられる。移動ブロック112は、フランジ部125がケーシング111の収容部121に移動自在に支持される。フランジ部125は、収容部121の壁面に接触するリング形状をなすシール部材126が設けられる。移動ブロック112が収容部121をケーシング111の径方向の外側に移動したとき、移動ブロック112の先端部がケーシング111の外周面から外方に突出可能である。また、移動ブロック112が収容部121をケーシング111の径方向の内側に移動したとき、移動ブロック112の先端部がケーシング111の外周面と同位置になる。収容部121は、移動ブロック112の移動量を規制するストッパとして機能する。
【0060】
ダンパブロック113は、ケーシング111の収容部121に収容される。ダンパブロック113は、ケーシング111の凸部124と移動ブロック112との間に設けられる。ダンパブロック113は、凸部124の壁面に接触するリング形状をなすシール部材127が設けられる。
【0061】
第1圧縮コイルばね114は、ケーシング111と移動ブロック112のフランジ部125との間に配置される。第1圧縮コイルばね114は、移動ブロック112をケーシング111の径方向の内方に付勢する。第2圧縮コイルばね115は、移動ブロック112の先端部とダンパブロック113との間に配置される。第2圧縮コイルばね115は、移動ブロック112をケーシング111の径方向の外方に付勢する。ここで、第1圧縮コイルばね114の付勢力は、第2圧縮コイルばね115の付勢力より大きく設定される。なお、付勢部材は、圧縮コイルばね114,115に限定されるものではなく、移動ブロック112に対して同様の付勢力を作用させることができるものであれば、例えば、引張ばね、樹脂、ゴムなどであってもよい。
【0062】
ケーシング111は、流路33と収容部121に位置する移動ブロック112のフランジ部125の背面側とを連通する第1通路128が設けられる。ケーシング111は、流路33と収容部121に位置するダンパブロック113の背面側とを連通する第2通路129が設けられる。また、ダンパブロック113は、ケーシング111の凸部124側と移動ブロック112の先端部側とを連通する第3通路130が設けられる。第1通路128は、移動ブロック112に対して流路33を移送される高圧流体Q1の第1圧力が作用する。第2通路129は、ダンパブロック113に対して流路33を移送される低圧流体Q2の第2圧力が作用する。ここで、高圧流体Q1の第1圧力は、低圧流体Q2の第2圧力より高圧である。
【0063】
すなわち、ポンプ本体101は、回転軸32が駆動回転すると、回転軸32と一体の複数の羽根車42(図2参照)が回転し、流路33にある対象油Qを昇圧して上方に移送する。このとき、流路33は、対象油Qの高圧領域と低圧領域が発生する。ケーシング111の第1通路128は、流路の高圧領域に連通し、ケーシング111の第2通路129は、流路の低圧領域に連通する。
【0064】
流路33に対象油Qが流動していないとき、移動ブロック112は、収容部121におけるケーシング111の径方向の内方に位置する。すなわち、第1圧縮コイルばね114の付勢力が第2圧縮コイルばね115の付勢力より大きいことから、移動ブロック112は、収容部121に留まっている。このとき、移動ブロック112は、先端部が貫通孔123の内部に位置し、ケーシング111の外周面から突出していない。
【0065】
流路33に対象油Qが流動し、流路33を流れる対象油Qの圧力が上昇すると、対象油Qの圧力により移動ブロック112が押圧され、移動ブロック112は、収容部121におけるケーシング111の径方向の外方に移動する。すなわち、第1圧縮コイルばね114の付勢力が第2圧縮コイルばね115の付勢力より大きいものの、流路33の高圧流体Q1が第1通路128を通って収容部121に供給され、移動ブロック112を押圧するため、移動ブロック112は、径方向の外方に移動する。
【0066】
つまり、第2圧縮コイルばね115の付勢力と高圧流体Q1の第1圧力との合計圧力は、第1圧縮コイルばね114の付勢力よりも高くなる。すると、図16に示すように、移動ブロック112は、先端部が貫通孔123の外方に移動し、ケーシング111の外周面から突出する。そして、移動ブロック112は、先端が生産管14の内周面に接触する。
【0067】
このとき、流路33から第1通路128を通って収容部121に供給された高圧流体Q1は、一部が第3通路130を通って突出部144とダンパブロック113との間の空間部に流れ、第2通路129から流路33に排出される。すなわち、第2圧縮コイルばね115の付勢力と高圧流体Q1の第1圧力との合計圧力は、シール部材127の弾性力(復元力)と突出部144とダンパブロック113との間の油膜圧力との合計圧力より高くなる。すると、ダンパブロック113が突出部144側に押圧され、シール部材127により区画されたダンパブロック113と突出部144との間の空間部の対象油Qの一部が第2通路129から流路33に排出され、ここに油膜が形成される。
【0068】
移動ブロック112は、先端部が生産管14の内周面を押圧し、ダンパブロック113が油膜を介してケーシング111の突出部144を押圧する。そのため、ケーシング111の振動は、ダンパブロック113とケーシング111との間に形成された油膜が減衰部材となって減衰される。
【0069】
[本実施形態の作用効果]
第1の態様に係る立型ポンプは、円筒形状をなすケーシング31,111と、外周部に羽根車42が設けられてケーシング31,111の内部に回転自在に支持される回転軸32と、回転軸32の外周側に配置されて羽根車42の回転により昇圧された対象油(流体)Qを上方に移送する流路33と、ケーシング31,111の外周部に周方向に所定間隔を空けて配置されて流路33を移送される対象油Qの圧力に応じてケーシング31,111の径方向の外方に移動して先端部がケーシング31の外周面から外方に突出可能な複数の移動ブロック34,112とを備える。
【0070】
第1の態様に係る立型ポンプによれば、流路33を流れる昇圧された対象油Qにより移動ブロック34,112がケーシング31,111の径方向の外方に移動すると、移動ブロック34,112の先端部がケーシング31,111の外周面から外方突出して生産管14の内周面を押圧する。ここで、ケーシング31,111が振動すると、移動ブロック34,112の先端部と生産管14の内周面との相対変位によりケーシング31,111の振動が減衰される。その結果、ケーシング31,111における振動の発生を抑制することができる。
【0071】
第2の態様に係る立型ポンプは、移動ブロック34の少なくとも先端部に第1減衰部材61が設けられる。これにより、移動ブロック34は、第1減衰部材61を介して生産管14の内周面を押圧することとなり、第1減衰部材61によりケーシング31の振動を効果的に減衰することができる。
【0072】
第3の態様に係る立型ポンプは、移動ブロック34のケーシング31の径方向の外方への移動量を規制するストッパ(段部57)が設けられる。これにより、移動ブロック34を適正な圧力で生産管14の内周面に押圧させることができる。
【0073】
第4の態様に係る立型ポンプは、移動ブロック34として、先端部がケーシング31の外周面から外方に突出可能な第1移動ブロック51と、第1移動ブロック51の後端部側に配置されて第1移動ブロック51より鉛直方向または周方向に突出する突出部しての段部56を有すると共に後端部が流路33に露出する第2移動ブロック52とを設け、ストッパは、段部57に対してケーシング31の径方向の外方に対向して配置される。これにより、簡単な構成で容易に移動ブロック34を収容部53に移動自在に支持することができる。
【0074】
第5の態様に係る立型ポンプは、第2移動ブロック52の段部56とケーシング31の段部57の少なくともいずれか一方に第2減衰部材62が設けられる。これにより、移動ブロック34は、第2減衰部材62を介してケーシング31を押圧することとなり、第2減衰部材62によりケーシング31の振動を効果的に減衰することができる。
【0075】
第6の態様に係る立型ポンプは、移動ブロック34の先端部における鉛直方向の上部および下部に傾斜面71,72が設けられる。これにより、ポンプ本体21を生産管14の内部で昇降させるとき、移動ブロック34の先端部における鉛直方向の上部および下部の各角部が生産管14の内面に引っ掛かることがなく、ポンプ本体21をスムースに昇降させることができる。
【0076】
第7の態様に係る立型ポンプは、ケーシング31に径方向に沿って開口する収容部53が設けられ、移動ブロック34は、収容部53に配置され、移動ブロック34と収容部53との間の隙間を塞ぐシール部材81が設けられる。これにより、流路33を流動する対象油Qが移動ブロック34と収容部53との間の隙間を通ってポンプ本体21と生産管14との間に隙間Sに漏れることがなく、対象油Q外部漏洩を抑制することができる。
【0077】
第8の態様に係る立型ポンプは、移動ブロック112をケーシング111の径方向の内方に付勢する第1圧縮コイルばね(第1付勢部材)114と、移動ブロック112をケーシング111の径方向の外方に付勢する第2圧縮コイルばね(第2付勢部材)115とを有し、第1圧縮コイルばね114の付勢力が第2圧縮コイルばね115の付勢力より大きく設定される。これにより、流路33に昇圧された対象油Qが流れていないとき、移動ブロック112を収容部121内に適正に維持することができる。
【0078】
第9の態様に係る立型ポンプは、ケーシング111と移動ブロック112との間にダンパブロック113が設けられ、移動ブロック112とダンパブロック113との間に第2圧縮コイルばね115が設けられ、ケーシング111は、移動ブロック112に対して流路33を移送される対象油Q第1圧力が作用する第1通路128と、ダンパブロック113に対して流路33を移送される対象油Qの第1圧力より低圧の第2圧力が作用する第2通路129とが設けられる。これにより、流路33を流れる昇圧された対象油Qが第1通路128から収容部121に供給されることで、移動ブロック112がケーシング111の径方向の外方に移動すると、移動ブロック112の先端部がケーシング111の外周面から外方突出して生産管14の内周面を押圧する。このとき、ダンパブロック113がケーシング111を押圧し、両者の間に油膜が形成される。ここで、ケーシング111が振動すると、油膜によりケーシング111の振動を減衰することができる。
【0079】
第10の態様に係る立型ポンプは、ケーシング31が鉛直方向に沿って配置される生産管14の内部に配置され、移動ブロック34は、ケーシング31の径方向の外方に移動して先端部が生産管14の内周面に接触可能である。これにより、移動ブロック34の先端部を生産管14の内周面に容易に押圧させることができ、ケーシング31の振動を適正に減衰させることができる。
【0080】
第11の態様に係る立型ポンプは、生産管14における移動ブロック34の少なくとも径方向に対向する領域に補強部14aが設けられる。これにより、ポンプ本体21と生産管14が同期して振動しても、生産管14の補強部14aの剛性が高いことから、ポンプ本体21と補強部14aとの間に相対変位が発生するため、移動ブロック34によりケーシング31の振動を適切に減衰することができる。
【0081】
なお、上述した実施形態では、移動ブロック34に減衰部材61,62を設けたが、減衰部材61,62を省略してもよい。すなわち、移動ブロック34の先端部が生産管14の内周面を直接押圧するように構成してもよい。電動水中ポンプ15の作動中にケーシング31に振動が発生しても、移動ブロック34の先端部と生産管14の内周面との摩擦によりケーシング31の振動を減衰することが可能である。また、移動ブロック34事態を減衰部材により構成してもよい。
【0082】
また、上述した実施形態では、移動ブロック34を第1移動ブロック51と第2移動ブロック52とから構成したが、移動ブロック34は、このような形状に限定されるものではない。移動ブロックは、ケーシングを径方向に移動自在であり、外方への移動量が規制される構成であれば、どのような形状であってもよい。
【0083】
また、ポンプ本体21の構成は、上述した実施形態に限定されるものではなく、ケーシングに回転軸と流路と移動ブロックが設けられている構成であればよい。
【0084】
また、上述した実施形態では、流体を油として説明したが、水や温泉などの流体であってもよい。
【符号の説明】
【0085】
10 採油装置
11 設置面
12 油田
13 地上設備
14 生産管
14a 補強部
15 電動水中ポンプ(立型ポンプ)
16 ワイヤ
17 案内管
21,101 ポンプ本体
22 インテーク
23 シールセクション
24 電動モータ
31,111 ケーシング
32 回転軸
33 流路
34,112 移動ブロック
41 軸受
42 羽根車
43 ディフューザ
44 翼
51 第1移動ブロック
52 第2移動ブロック
53,121 収容部
54 第1貫通孔
55 第2貫通孔
61 第1減衰部材
62 第2減衰部材
71 上傾斜面
72 下傾斜面
81 シール部材
113 ダンパブロック
114 第1圧縮コイルばね(第1付勢部材)
115 第2圧縮コイルばね(第2付勢部材)
122 隔壁
123 貫通孔
124 凸部
125 フランジ部
126,127 シール部材
128 第1通路
129 第2通路
130 第3通路
H 領域
Q 対象油(流体)
Q1 高圧流体
Q2 低圧流体
S 隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16