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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-31
(45)【発行日】2024-08-08
(54)【発明の名称】シームレスギアボックス
(51)【国際特許分類】
   F16H 3/083 20060101AFI20240801BHJP
【FI】
F16H3/083
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021504197
(86)(22)【出願日】2019-07-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-02
(86)【国際出願番号】 EP2019068812
(87)【国際公開番号】W WO2020020664
(87)【国際公開日】2020-01-30
【審査請求日】2022-07-08
(31)【優先権主張番号】102018000007500
(32)【優先日】2018-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】502258392
【氏名又は名称】ドゥカティ モーター ホールディング エセ.ペー.アー.
【氏名又は名称原語表記】DUCATI MOTOR HOLDING S.p.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100177426
【弁理士】
【氏名又は名称】粟野 晴夫
(72)【発明者】
【氏名】ピエールルイジ ザンピエーリ
(72)【発明者】
【氏名】ダリオ カルギーニ
(72)【発明者】
【氏名】クリスチャン アントニウッティ
(72)【発明者】
【氏名】ティム ジー
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン フィリップ ホジソン
【審査官】畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-031857(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 3/083
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ギアを選択するための自動二輪車シームレスギアボックスシステムであって、
第1の複数のスプロケットに関連付けられている奇数ギア用の、第1の入力シャフト(101)と、
第2の複数のスプロケットに関連付けられ、前記第1の入力シャフトに対して同軸である、偶数ギア用の、第2の入力シャフト(103)と、
複数の出力スプロケットを有し、当該複数の出力スプロケットのそれぞれが、前記第1の入力シャフト又は前記第2の入力シャフトの前記スプロケットのいずれか1つに対応している、出力シャフト(117)と、
トルクを前記第1及び前記第2の入力シャフトのいずれか1つに交互にかつ排他的に伝達するように適合させたトルク管理システムと、を含んでおり、前記トルク管理システムは、第1のロック可能なローラベアリング(105)と、第2のロック可能なローラベアリング(107)と、入力ハブ(109)とを含んでおり、奇数ギア用の前記第1の入力シャフト(101)は、ギアチェンジ中において前記第1のロック可能なローラベアリングのローラが前記入力ハブと前記第1の入力シャフトとの間のランプによってロックされているときに、前記第1のロック可能なローラベアリング(105)からトルクを受け取り、偶数ギア用の前記第2の入力シャフト(103)は、ギアチェンジ中において前記第2のロック可能なローラベアリングのローラが前記入力ハブと前記第2の入力シャフトとの間のランプによってロックされているときに、前記第2のロック可能なローラベアリング(107)からトルクを受け取り、前記第1のロック可能なローラベアリングは、ギアチェンジ中の前記第1の入力シャフトと前記入力ハブとの相対回転速度に応じて、選択的かつ排他的にロックされるものであり、前記第2のロック可能なローラベアリングは、ギアチェンジ中の前記第2の入力シャフトと前記入力ハブとの相対回転速度に応じて、選択的かつ排他的にロックされるものであり、さらに、ギアの選択がライダーの足によって機械的に制御可能である、ギアを選択するための自動二輪車シームレスギアボックスシステム。
【請求項2】
前記トルク管理システムは、メインクラッチから前記入力ハブ(109)を介してトルクを受け取る、請求項1の自動二輪車ギアボックスシステム。
【請求項3】
前記第1及び第2の入力シャフトは、同軸に配置されている、請求項1の自動二輪車ギアボックスシステム。
【請求項4】
前記第1の入力シャフト(101)は、前記第2の入力シャフト(103)の内側に配置されている、請求項3の自動二輪車ギアボックスシステム。
【請求項5】
前記第1の入力シャフト(101)は、奇数ギアスプロケットに噛み合わせることができ、前記第2の入力シャフト(103)は、偶数ギアスプロケットに噛み合わせることができ、前記第1及び第2の入力シャフトの各スプロケットは、出力シャフトの、対応しているスプロケットに関連付けられている、請求項1から4のいずれか1項の自動二輪車ギアボックスシステム。
【請求項6】
前記第1の入力シャフト(101)は、1stギアスプロケット(111)、3rdギアスプロケット(113)及び5thギアスプロケット(115)に噛み合わせることができ、前記第2の入力シャフト(103)は、2ndギアスプロケット(112)、4thギアスプロケット(114)及び6thギアスプロケット(116)に噛み合わせることができ、前記第1及び第2の入力シャフトの各スプロケットは、出力シャフト(117)の、対応しているスプロケット:1stギアのときは、1st対応スプロケット(111b)、3rdギアのときは、3rd対応スプロケット(113b)、5thギアのときは、5th対応スプロケット(115b)、2ndギアのときは、2nd対応スプロケット(112b)、4thギアのときは、4th対応スプロケット(114b)、6thギアのときは、6th対応スプロケット(116b):に関連付けられている、請求項5の自動二輪車ギアボックスシステム。
【請求項7】
ギアの選択が、選択バレルと複数のシフトフォークとによって、機械的に制御される、請求項1から6のいずれか1項の自動二輪車ギアボックスシステム。
【請求項8】
ギアの選択が、ドッグリングとレバーのシステムによって、機械的に制御される、請求項1から7のいずれか1項の自動二輪車ギアボックスシステム。
【請求項9】
ギアを選択するための自動二輪車シームレスギアボックスシステムであって、
第1の複数のスプロケットに関連付けられている奇数ギア用の、第1の入力シャフト(101)と、
第2の複数のスプロケットに関連付けられ、前記第1の入力シャフトに対して同軸である、偶数ギア用の、第2の入力シャフト(103)と、
複数の出力スプロケットを有し、当該複数の出力スプロケットのそれぞれが、前記第1の入力シャフト又は前記第2の入力シャフトの前記スプロケットのいずれか1つに対応している、出力シャフト(117)と、
トルクを前記第1及び前記第2の入力シャフトのいずれか1つに交互にかつ排他的に伝達するように適合させたトルク管理システムと、を備えており、
前記トルク管理システムは、第1のロック可能な転がりベアリング(105)と、第2のロック可能な転がりベアリング(107)と、入力ハブ(109)とを含んでおり、奇数ギア用の前記第1の入力シャフト(101)は、ギアチェンジ中に前記第1のロック可能な転がりベアリングのボールが前記入力ハブと前記第1の入力シャフトとの間のランプによってロックされているときに、前記第1のロック可能な転がりベアリング(105)からトルクを受け取り、偶数ギア用の前記第2の入力シャフト(103)は、ギアチェンジ中に前記第2のロック可能な転がりベアリングのボールが前記入力ハブと前記第2の入力シャフトとの間のランプによってロックされているときに、前記第2のロック可能な転がりベアリング(107)からトルクを受け取り、前記第1のロック可能な転がりベアリングは、ギアチェンジ中の前記第1の入力シャフトと前記入力ハブとの相対回転速度に応じて、選択的かつ排他的にロックされるものであり、前記第2のロック可能な転がりベアリングは、ギアチェンジ中の前記第2の入力シャフトと前記入力ハブとの相対回転速度に応じて、選択的かつ排他的にロックされるものあり、さらに、ギアの選択がライダーの足によって機械的に制御可能である、ギアを選択するための自動二輪車シームレスギアボックスシステム。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項の自動二輪車ギアボックスシステムを含んでいる、自動二輪車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シームレスギアボックスシステム、特に、自動二輪車用に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の自動二輪車ギアボックスは、当該ギアボックスが一方のギアと他方のギアとの間でニュートラルポジションにあるようにギアチェンジを操作し、当該ギアボックスが前記ニュートラルポジションにある間、トルク中断(駆動力ゼロ)を引き起こす。これによって、加速が不足し、車両に作用する力が不連続(不安定)になる。
【0003】
この問題を回避するため、自動車には、シームレスギアボックスの改変を実現するために、いくつかの試みが行われきた。自動二輪車の特定の領域では、エンジンの寸法制限(車のスペースに比べて比較的小さいスペースに収める必要がある)が問題解決の実現をより困難にさせている。前記シームレスギアボックスは、ギア間でニュートラル状態になる必要がないように動作するため、ギアシフト中(アップシフト及びダウンシフトの両方のギアチェンジにおいて)、トルク中断が生じることなく、車両の安定性が改善されるとともに、モーターレースでは、これがラップタイムにプラスの効果をもたらす。
【0004】
最近の既知の解決策は、2つの異なるクラッチと、2つの別々のシャフトとを備えるデュアルクラッチトランスミッション(DCT)メカニズムに基づいており、一方は、奇数速度(例えば、1,3,5)用、他方は、偶数速度(例えば、2,4,6)用である。これは、2つの独立したトランスミッションメカニズム(1つは奇数速用、1つは偶数速用)の、それぞれのクラッチ及びシャフトが1つのハウジング内に収容され、1つのユニットとして動作していると説明することができる。それらは、電子中央ユニットによって制御されている。2つのクラッチを前記電子中央ユニットによって完全に管理することは、2つのシャフトメカニズムの間の競合を回避するために非常に重要である。さらに、DCTトランスミッションの作動メカニズムは、通常、圧力ポンプ、制御バルブ及びオイルリザーバを含む、電子油圧システムである。これは、装置を非常に複雑にし、自動二輪車の、総重量、コスト並びに製造及びサービスの複雑さを大幅に増加させる。上述した全ての欠点は、高性能自動二輪車には受け入れられないため、DCTトランスミッションの使用は不便である。
【0005】
シームレスギアボックスシステムのための、他の最近の既知の解決策は、メカニカルシステムの、非常に複雑で精密な組み合わせに基づいており、電子制御を使用せずに動作する。この複雑さ及び精密さは、非常に高い製造コストと、高度のスキルを有するオペレータによる頻繁なメンテナンスとを必要とする。こうした理由によって、これらの解決策は、現在、量産型自動二輪車には使用されておらず、その使用は、モーターレースの用途に限定されている。
【0006】
本発明の目的は、現在利用可能な先行技術システムの欠点の、少なくとも一部を軽減することである。
【発明の概要】
【0007】
本発明によれば、第1の複数のスプロケットに関連付けられている奇数ギア用の、第1の入力シャフトと、第2の複数のスプロケットに関連付けられ、前記第1の入力シャフトに対して平行な、偶数ギア用の、第2の入力シャフトと、複数の出力スプロケットを有し、当該複数の出力スプロケットのそれぞれが、前記第1の入力シャフト又は前記第2の入力シャフトの前記スプロケットのいずれか1つに対応している、出力シャフトと、トルクを前記第1及び前記第2の入力シャフトのいずれか1つに交互にかつ排他的に伝達するように適合させたトルク管理システムと、を含む、ギアを選択するための自動二輪車シームレスギアボックスを提供する。前記トルク管理システムは、第1及び第2の、ロック可能なローラベアリングと、入力ハブとを含んでいる。前記トルク管理システムは、メインクラッチから前記入力ハブを介してトルクを受け取り、当該トルクを前記2つの入力シャフトの一方のみに、排他的かつ選択的に伝達する。奇数ギア用の前記第1の入力シャフトは、ロックされているときに、前記第1のロック可能なローラベアリングからトルクを受け取り、偶数ギア用の前記第2の入力シャフトは、ロックされているときに、前記第2のロック可能なローラベアリングからトルクを受け取り、前記第1及び第2のローラベアリングは、前記2つの入力シャフトの相対回転速度に応じて、選択的かつ排他的にロックされる。本発明の好ましい実施形態では、前記第1及び第2の入力シャフトは、同軸に配置され、前記第1の入力シャフトは、好ましくは、前記第2の入力シャフトの内側に配置される。
【0008】
本発明の可能な実施形態では、前記第1の入力シャフトは、1stギアスプロケット、3rdギアスプロケット及び5thギアスプロケットに噛み合わせることができ、前記第2の入力シャフトは、2ndギアスプロケット、4thギアスプロケット及び6thギアスプロケットに噛み合わせることができ、前記第1及び第2の入力シャフトのスプロケットのそれぞれは、出力シャフトの、対応しているスプロケットに関連付けられている。
【0009】
上述の自動二輪車ギアボックスシステムでは、ギアの選択は、例えば、選択バレルと複数のシフトフォークとによって、機械的に制御される。さらに特に、ギアの選択は、好ましくは、ドッグリングとレバーのシステムによって、機械的に制御される。
【0010】
本発明の代替的な実施形態では、前記トルク管理システムの前記ロック可能なベアリングは、例えば、ボールベアリングなどの、異なる種類のベアリングとすることができる。前記ベアリングの本質的な特徴は、回転(即ち、転がること)ができ、ロックできること(即ち、ロック可能であること)である。
【0011】
本発明のさらなる態様によれば、上述のようなシームレスギアボックスシステムを含む、自動二輪車を提供される。
【0012】
本発明により、従来のギアボックスに組み込まれた、量産品及びレース用自動二輪車の両方に適したシームレスギアボックスを実現することできる。本発明の好ましい実施形態による、前記システムは、完全に機械的(電気制御を必要としない)であり、事前選択システムに基づいている。「次の」ギアは、「前の」ギアがまだ噛み合っている間に噛み合って、トルクはまだ、「前の」ギアによって伝達される。「次の」ギアがオーバーランすると、前記トルク管理システムは、トルク接続を「前の」ギアから「次の」ギアにシフトし、その後、「前の」ギアの噛み合いは解除される。本発明の好ましい実施形態による、前記システムは、アップシフト及びダウンシフトの両方の、全てのギアシフトで動作する。
【0013】
本発明の好ましい実施形態による前記システムのレイアウトは、入力クラッチ、出力シャフトおよび出力チェーンスプロケット、選択バレル及びギアシフト用フォークを含む、従来の自動二輪車ギアボックスのレイアウトにほぼ対応している。その特徴は、前記入力シャフトが、それぞれが「次の」又は「前の」ギアに接続された2つの要素に分割され、当該2つの要素は、前記システムを介して入力(クラッチ)にリンクされていることである。本発明の好ましい実施形態による、前記システムは、機械的機能のみを介して、前記2つの要素の間の相対回転速度に基づいて、トルクを伝達するために当該2つの要素のうちの適切なもののみを選択することを可能とし、同時に両方の要素に同時トルクを伝達させることを回避する。
【0014】
本発明によって提供される解決策の利点の1つは、ギアチェンジ機構が従来のオートバイと概念的に変わらないままであることであり、したがって、ギアシフトは、ライダーが足のよって作動させる機械的メカニズムによって作動され、ドッグ・トゥ・ドッグ噛み合いによって連続的なギアチェンジが得られることである。
【0015】
本明細書では、自動二輪車を対象としているが、当業者によれば、同じ発明が、他の任意の種類の自動車のトランスミッションにも適用できることは容易に理解されることである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本発明の、これら及び他の、利点、目的及び特徴は、以下の説明と、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の範囲を限定するものとして解釈されない実施形態を例示した補助的な添付図面とによって、当業者であれば容易に理解されることである。
図1】本発明の好ましい実施形態によるギアボックスアセンブリを示す図であり、2つの入力シャフトと出力シャフトとが示されている。
図2】トルク管理システムを介してトルクを入力シャフトに伝達するメインクラッチを追加した、図1に示した、本発明の好ましい実施形態による、ギアボックスアセンブリを示す図である。
図3】シフトドラムとラチェット機構とを追加した、図2に示すギアボックスアセンブリを3次元的に示す図である。
図4図3に示すギアボックスアセンブリのレンダリング図である。
図5図4に示すギアボックスアセンブリの構成要素の一部が他の構成要素から分離された状態を示すレンダリング図である。
図6図4に示すギアボックスアセンブリの構成要素の一部が他の構成要素から分離された状態を示すレンダリング図である。
図7】本発明の好ましい実施形態による、2つの、ロック可能なローラベアリングが、入力軸の一方に排他的かつ選択的にトルクを伝達する様子を模式的に示す図である。
図8】2つの、ロック可能なローラベアリングの断面を概略的に示す図であり、前記ロック可能なローラベアリングの構成要素と、それらが駆動中のコースティング段階において、どのように動作するかを示す。
図9a】本発明の好ましい実施形態によるギアボックスが、駆動段階かつコースティング段階におけるギアチェンジ中に、どのように動作するのかを示す図であり、特に、5thギアから6thギアへのアップシフト及び6thギアから5thギアへのダウンシフトが概略的に示されている。
図9b】本発明の好ましい実施形態によるギアボックスが、駆動段階かつコースティング段階におけるギアチェンジ中に、どのように動作するのかを示す図であり、特に、5thギアから6thギアへのアップシフト及び6thギアから5thギアへのダウンシフトが概略的に示されている。
図10a】本発明の好ましい実施形態によるギアボックスが、駆動段階かつコースティング段階におけるギアチェンジ中に、どのように動作するのかを示す図であり、特に、5thギアから6thギアへのアップシフト及び6thギアから5thギアへのダウンシフトが概略的に示されている。
図10b】本発明の好ましい実施形態によるギアボックスが、駆動段階かつコースティング段階におけるギアチェンジ中に、どのように動作するのかを示す図であり、特に、5thギアから6thギアへのアップシフト及び6thギアから5thギアへのダウンシフトが概略的に示されている。
図11a】本発明の好ましい実施形態によるギアボックスが、駆動段階かつコースティング段階におけるギアチェンジ中に、どのように動作するのかを示す図であり、特に、5thギアから6thギアへのアップシフト及び6thギアから5thギアへのダウンシフトが概略的に示されている。
図11b】本発明の好ましい実施形態によるギアボックスが、駆動段階かつコースティング段階におけるギアチェンジ中に、どのように動作するのかを示す図であり、特に、5thギアから6thギアへのアップシフト及び6thギアから5thギアへのダウンシフトが概略的に示されている。
図12a】本発明の好ましい実施形態によるギアボックスが、駆動段階かつコースティング段階におけるギアチェンジ中に、どのように動作するのかを示す図であり、特に、5thギアから6thギアへのアップシフト及び6thギアから5thギアへのダウンシフトが概略的に示されている。
図12b】本発明の好ましい実施形態によるギアボックスが、駆動段階かつコースティング段階におけるギアチェンジ中に、どのように動作するのかを示す図であり、特に、5thギアから6thギアへのアップシフト及び6thギアから5thギアへのダウンシフトが概略的に示されている。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本発明の好ましい実施形態を示す。トルクは、エンジンから、プライマリギア(図示省略)、メインクラッチ(図示省略)を介して、図示のギアボックスシステム100に伝達される。前記ギアボックスシステムは、2つの入力シャフトを含んでおり、一方は、奇数ギア用入力シャフト101であり、他方は、偶数ギア用入力シャフト103である。本実施形態では、奇数シャフト101は、前記偶数ギアに対して同軸かつ内側に配置されているが、異なる配置(例えば、偶数シャフトが内側に配置される場合、或いは、2つのシャフトが同軸に配置されない場合)が可能である。各入力シャフトは、専用のロック可能なローラベアリングに関連付けられており、本実施形態では、奇数シャフト101はロック可能なローラベアリング105に関連付けられ、偶数シャフト103はロック可能なローラベアリング107に関連付けられている。トルク管理システムは、入力ハブ109を介してメインクラッチからトルクを受け取り、当該トルクを、2つの入力シャフト101及び103の一方のみに、排他的及び選択的に伝達する。奇数ギア用の第1の入力シャフト101は、ロックされているときに、第1の、ロック可能なローラベアリング105からトルクを受け取り、偶数ギア用の第2入力シャフト103は、ロックされているときに、第2の、ロック可能なローラベアリング107からトルクを受け取り、前記第1及び第2の、ローラベアリングは、2つの入力シャフトの相対回転速度にしたがって選択的かつ排他的にロックされる。本発明の好ましい実施形態では、前記第1及び第2の、入力シャフトは、同軸に配置され、第1の入力シャフト101は、好ましくは、第2の入力シャフト103の内側に配置される。この説明では、駆動トルク流れで説明されている(即ち、エンジンから車輪に伝達されている)が、当業者によれば、コースティング時に、前記トルクは、反対方向に伝達されることは容易に理解されることである。好ましい実施形態では、奇数入力シャフト101は、1stギアスプロケット111,3rdギアスプロケット113及び5thギアスプロケット115を噛み合わせることができ、偶数入力シャフト103は、2ndギアスプロケット112,4thギアスプロケット114及び6thギアスプロケット116に噛み合わせることができる。前記入力シャフトの各スプロケットは、出力シャフト117の対応するスプロケットに関連付けられている。1stギアのときは111b、3rdギアのときは113b、5thギアのときは115b、2ndギアのときは112b、4thギアのときは114b、6thギアのときは116bである。本発明では、6速ギアボックスの場合で示すが、他の構成も可能である。当業者によれば、ギアボックスシステムの適切な改良が必要であることは理解されることである。本実施形態では、トルク管理システムの、ロック可能なベアリングは、ローラベアリングとして説明されているが、その代わりに、任意の種類のころがりベアリング、例えば、ボールベアリングを使用することができる。
【0018】
ギア選択は、従来の自動二輪車ギアボックスのように、選択バレル(図1には示されていない)と、シフトフォーク(図示省略)とによって、機械的に制御される。従来のギアボックスでは、一対のスプロケット(例えば、111及び111b)のみしか任意の時点で相対シャフトに噛み合わせることができないが、本発明にしたがって説明されたシステムでは、二対のスプロケット(例えば、111及び111bに加えて、112及び112b)を同時に噛み合わせることができる。特に、奇数入力シャフトに関連付けられた1つのギアと、偶数入力シャフトに関連付けられた1つギアとは、ギアシフト操作中に同時に噛み合う場合がある。好ましい実施形態では、同時に噛み合う二対のスプロケットは、2つの連続するギア(例えば、1st及び2nd、2nd及び3rdなど)に対応する。同じ二重噛み合いは、アップシフト操作とダウンシフト操作との両方で生じる。
【0019】
図2は、メインクラッチを追加したギアボックス100を示し、前記メインクラッチ(実質的に、従来の自動二輪車クラッチに対応して、外部バスケット201、ディスク203、内部ドラム205を含む)は、(エンジンクランクシャフトに噛み合わせた、図示されていない)プライマリギアスプロケット207と、入力ハブ109とに接続されている。
【0020】
図3は、本発明の好ましい実施形態による、ギアボックスシステムを前向きで示し、選択バレル301、シフトフォーク303及びラチェット機構305を表示している。 従来の6速自動二輪車ギアボックスでは、通常、異なるギアスプロケットを操作するための3つのシフトフォークが存在するが、本発明の好ましい実施形態では、3rd及び4thギアスプロケットが2つの異なる入力シャフトに関連付けられているため、付加的なシフトフォークが必要となる。
【0021】
図4は、上述のギアボックスアセンブリのレンダリング図を示す(各構成要素を示すために同じ参照符号が使用されている)。図5及び図6は、図4に示すギアボックスアセンブリの構成要素の一部が他の構成要素から分離された状態を示すレンダリング図である。
【0022】
図7は、好ましい実施形態の、二重式の、ロック可能なローラベアリングシステムを示し、ロック可能なローラベアリング107は偶数入力シャフト103に結合し、ロック可能なローラベアリング105は奇数入力シャフト101に結合している。それぞれの、ロック可能なローラベアリング107及び105は、ローラケージ707及び705のそれぞれによって所定の位置に維持された複数のローラ701によって構成されている。2つのローラケージ707及び705は、ドッグツードッグシステムと一緒に係合され、一定の角度クリアランスを可能にする。本発明の好ましい実施形態では、前記角度クリアランスは、10°から25°までの間で構成されている。
【0023】
図8は、2つの、ロック可能なローラベアリングの断面を示し、エンジンから、入力ハブ109、ローラ701及び偶数入力シャフト103又は奇数入力シャフト101を介して車輪に伝達されるときのトルクの方向がともに示されている。
【0024】
以下では、本発明の好ましい実施形態による、ギアボックスアセンブリがどのように機能するのかが例示されている。特に、ドライブモードにおいて5thギアを噛み合わせ、その後、6thギアにアップシフトさせた前記ギアボックスシステムを示している。ダウンシフト操作は、反対方向に働く。図9a~9bでは、5thギアが噛み合っており、エンジンは、入力シャフトを介して車輪を駆動させる。当該入力シャフトは、図9aに示すように、一対のスプロケット(入力スプロケット及び出力スプロケット)が互いに噛み合った状態で、ロック可能なローラベアリング(この場合、奇数のロック可能なローラベアリング)からトルクを受け取り、出力シャフト117にトルクを伝達する。図9bは、2つの、ロック可能なローラベアリングの動作を示しており、前記偶数入力シャフトがアイドリングしている間、奇数のロック可能なローラベアリングのローラが接触してトルクを伝達している。
【0025】
図10a~10bでは、ギアが5thから6thにシフトされる。図中、ωは、角速度を示し、Tは、伝達比を示す。ωin、ωout、ωodd、ωevenは、それぞれ、入力ハブ、出力シャフト、第1及び第2の入力シャフトの、回転速度を表している。図10aは、前記トルク伝達が、5thギアに対応している一対のスプロケットから、6thギアに対応している一対のスプロケットにどのように伝えられているのかを示す。図10bは、2つのロック可能なローラベアリングの動作を示す。偶数シャフトは遅いため、前記トルクは偶数ローラに伝達され、前記入力は偶数シャフト速度(6thギア比)に減速される。図11aに示すように、奇数シャフトは、オーバーランし、ケージ及びローラを引きずる。.偶数ケージは、ローラによって所定の位置にロックされ、奇数ケージは、ランプに戻る回転を防ぐ。図11bは、5thギアから6thギアにアップシフトしたときの、前記ケージのアライメントを示す。
【0026】
thギアを噛み合わせて駆動させるとして説明した場合と同様、図12aは、6thギアに対応している一対のスプロケット(入力シャフト上の1つと、出力シャフト上の1つ)の噛み合いによって、入力シャフト(この場合、それは、偶数入力シャフトである。)から出力シャフトにトルクが伝達される様子を示している。図12bは、前記2つのロック可能なローラベアリングの動作を示し、ローラが偶数シャフトに接触してトルクを伝達し、一方、奇数シャフトはアイドリング状態になり、偶数シャフト速度に減速させる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9a
図9b
図10a
図10b
図11a
図11b
図12a
図12b