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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-31
(45)【発行日】2024-08-08
(54)【発明の名称】CD73遮断抗体
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/28 20060101AFI20240801BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240801BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20240801BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240801BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240801BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240801BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
A61K39/395 P
A61K39/395 U
A61P31/00
A61P35/00
C12N1/21
C12N5/10
C12N15/13
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021562979
(86)(22)【出願日】2020-04-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-29
(86)【国際出願番号】 EP2020060955
(87)【国際公開番号】W WO2020216697
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2023-04-17
(31)【優先権主張番号】62/837,214
(32)【優先日】2019-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506000184
【氏名又は名称】イナート・ファルマ・ソシエテ・アノニム
【氏名又は名称原語表記】INNATE PHARMA PHARMA S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【弁理士】
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(72)【発明者】
【氏名】ゴーティエ,ローラン
(72)【発明者】
【氏名】パトゥレル,カリーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ペロ,イヴァン
【審査官】山▲崎▼ 真奈
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-502051(JP,A)
【文献】国際公開第2017/064043(WO,A1)
【文献】特表2019-503709(JP,A)
【文献】特表2021-522780(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
C07K
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトCD73ポリペプチドに特異的に結合することができる抗体又は抗体断片であって、配列番号42のアミノ酸配列(2H4+鎖)を含む重鎖可変領域(VH)と、配列番号43(2L1鎖)、44(2L2鎖)、45(2L3鎖)及び46(2L4鎖)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む抗体又は抗体断片。
【請求項2】
配列番号42のアミノ酸配列(2H4+鎖)を含む重鎖可変領域(VH)及び配列番号43のアミノ酸配列(2L1鎖)を含む軽鎖可変領域(VL)を含む、請求項1に記載の抗体又は抗体断片。
【請求項3】
配列番号47のアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号48のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、請求項1に記載の抗体又は抗体断片。
【請求項4】
CD73ポリペプチドの5’-エクトヌクレオチダーゼ活性を中和することができる、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗体又は抗体断片。
【請求項5】
細胞の表面でヒトCD73ポリペプチドに特異的に結合し、且つその5’-エクトヌクレオチダーゼ活性を中和することができ、前記CD73ポリペプチドとその基質との間の結合を検出可能に低下させることなく、前記ヒトCD73ポリペプチドの活性を阻害する、請求項1~のいずれか一項に記載の抗体又は抗体断片。
【請求項6】
請求項1~のいずれか一項に記載の抗体又は抗体断片と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物。
【請求項7】
請求項1~のいずれか一項に記載の抗体又は抗体断片の重鎖及び/又は軽鎖をコードする核酸又は核酸のセット。
【請求項8】
請求項1~のいずれか一項に記載の抗体又は抗体断片を産生する組換え宿主細胞。
【請求項9】
患者における疾患の処置又は予防において使用するための、請求項1~のいずれか一項に記載の抗体又は抗体断片。
【請求項10】
前記疾患は、癌又は感染症である、請求項に記載の抗体又は抗体断片。
【請求項11】
前記癌は、白血病、膀胱癌、神経膠腫、神経膠芽腫、卵巣癌、黒色腫、前立腺癌、甲状腺癌、胃癌、食道癌、膵臓癌又は乳癌である、請求項10に記載の抗体又は抗体断片。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、任意の図面を含む、その全体において参照により本明細書中に組み込まれる2019年4月23日提出の米国仮特許出願第62/837,214号明細書の利益を主張する。
【0002】
配列表の参照
本願は、電子方式の配列リストと共に提出されている。本配列リストは、2020年4月1日作成の「CD73-6_ST25」という名称で提供されており、サイズは、62kBである。本配列リストの電子方式の情報は、その全体において参照により本明細書中に組み込まれる。
【0003】
本発明は、CD73に結合し、且つそれを阻害する抗体及びその断片に関する。本発明は、そのような化合物を産生する細胞;そのような化合物並びにその抗体、断片、変異体及び誘導体を作製する方法;それを含む医薬組成物;化合物を使用して疾患、例えば癌を診断、処置又は予防する方法にも関する。
【背景技術】
【0004】
CD73(エクト-5’-ヌクレオチダーゼ)は、70kDaのグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカー型タンパク質であり、通常、内皮細胞及び造血細胞のサブセットに発現する。CD73は、CD39と共にアデノシン三リン酸(ATP)の代謝を調節する。CD39(NTPDase-1)は、ATPをAMPに変換し、微量のADPのみが放出される一方、CD73は、AMPからアデノシンへの変換を触媒する。
【0005】
アデノシン三リン酸(ATP)並びにその代謝物であるAMP及びアデノシンは、細胞代謝、シグナル伝達及び免疫恒常性において重要な役割を有する。細胞死又は細胞ストレスに応答した細胞外アデノシン三リン酸(ATP)の放出は、免疫応答を活性化するように作用する。しかし、その代謝物であるアデノシンは、免疫抑制作用を有する。細胞外アデノシンは、癌性組織に蓄積し、腫瘍の免疫回避の重要なメカニズムを構成する。他の効果の中でも、腫瘍由来のアデノシンは、アデニル酸シクラーゼを活性化するA2A受容体を介して浸潤性エフェクターT細胞を大幅に阻害する。
【0006】
CD73発現は、白血病、膀胱癌、神経膠腫、神経膠芽腫、卵巣癌、黒色腫、前立腺癌、甲状腺癌、食道癌及び乳癌を含む様々な腫瘍細胞で報告されている。CD73発現は、黒色腫及び乳癌の転移促進性の表現型とも関連付けられている。マウスCD73に結合する抗体による治療は、マウスの乳房腫瘍の成長及び転移を阻害できることが報告されている(非特許文献1)。A2A受容体の遺伝子欠失は、T細胞依存性腫瘍拒絶反応を誘発できることが示されている(非特許文献2)。siRNAを使用したノックダウン又は腫瘍細胞でのCD73の過剰発現は、腫瘍の成長と転移を調節することができる(非特許文献3;非特許文献1;非特許文献4)。CD73-/-マウスは、移植及び自然発生の腫瘍から保護されている(非特許文献5)。ヒトでは、CD73の高発現がトリプルネガティブ乳癌の予後不良であることが示されていた(非特許文献6)。しかし、CD73は、腫瘍細胞で発現する一方、免疫系の異なる細胞、特にCD4及びCD8 T細胞並びにB細胞でも発現する。さらに、複雑な要因のさらなる1つは、文献に記載されている抗体の多くが一般にFcγ受容体に結合できるマウスアイソタイプであり、潜在的な遮断効果をFc媒介性の効果から分離することを困難にしていることである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】Stagg,et al.(2010)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 104:1547-1552
【文献】Ohta,et al.,(2006)Proc Natl Acad Sci USA 103:13132-13137
【文献】Beavis et al(2013 Proc.Natl.Acad.Sci.USA 110:14711-716
【文献】Jin et al.(2010)Cancer Res.70:2245-55
【文献】Stagg et al.(2010)Cancer Res.71:2892-2900
【文献】Loi et al(2013 Proc.Natl.Acad.Sci.USA 110:11091-11096
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
治療標的としてのCD73への長年にわたる関心にもかかわらず、CD73の酵素活性の阻害においてより高い効力を有し、ヒトの治療における使用に適した抗体の必要性が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、腫瘍細胞を含む細胞の表面に発現されるCD73上に存在するエピトープに結合し、且つCD73酵素の酵素(エクト-5’ヌクレオチダーゼ)活性を阻害する抗体を提供する。抗体は、最小限の非ヒト(例えば、マウス)配列含有量を有するヒト由来のフレームワーク領域を有する。抗体は、二量体内モードでCD73に結合することができ、細胞の表面に発現する可溶性CD73及び膜結合CD73タンパク質の両方の酵素活性を阻害できる。有利には、これらの抗体は、純粋なCD73遮断抗体として使用することができ、例えばFcγ受容体に実質的に結合することなく、且つ/又はADCCをCD73発現細胞に実質的に指向させることなく、細胞の表面で発現される膜結合CD73タンパク質の酵素活性を阻害する。任意選択により、抗体は、Fcドメインを保持し、ヒトFcRnへの結合を保持する。抗体は、免疫原性のリスクが低いことが有利であり、例えばヒトに投与した場合、ヒト抗マウス抗体(HAMA)応答を誘発する可能性が低いか又は低下している(マウス親抗体と比較して)。
【0010】
抗体は、腫瘍細胞を含むが、これに限定されない細胞の表面に発現されるヒトCD73ポリペプチド上に存在するエピトープに結合し、且つCD73酵素の酵素(エクト-5’ヌクレオチダーゼ)活性を阻害する。それらは、CD73によって媒介されるT細胞増殖の抑制を阻害する特に有利な能力を有し、その結果、例えばT細胞増殖アッセイで観察されるように、増殖を含むが、これに限定されない、細胞傷害性CD4及び/又はCD8T細胞の生物学的活性の増加を引き起こし得る。ある実施形態において、CD73の酵素活性の阻害又は中和は、T細胞がAMP(例えば、外因的に追加されたAMP)の存在下において(例えば、TCR共刺激を介して)インビトロで増殖するように誘導される場合、前記T細胞の増殖を増加させる抗体断片の抗体の能力を評価することによって決定される。
【0011】
ある実施形態において、配列番号37のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号33、34、35又は36のアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む抗体若しくは抗体断片又はその抗原結合ドメインが提供される。ある実施形態において、配列番号37のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号33のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む抗体若しくは抗体断片又はその抗原結合ドメインが提供される。
【0012】
ある実施形態において、配列番号42のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号43、44、45又は46のアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む抗体若しくは抗体断片又はその抗原結合ドメインが提供される。ある実施形態において、配列番号42のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号43のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む抗体若しくは抗体断片又はその抗原結合ドメインが提供される。
【0013】
ある実施形態において、配列番号38のアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号39のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む抗CD73抗体又は抗体断片が提供される。
【0014】
ある実施形態において、配列番号47のアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号48のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む抗CD73抗体又は抗体断片が提供される。
【0015】
ある実施形態において、配列番号2、3及び4に示されるそれぞれのアミノ酸配列と、ヒトIGHV1-3遺伝子からのフレームワークFR1、FR2及びFR3アミノ酸配列(及び任意選択によりヒトIGHJ4遺伝子からのさらなるフレームワーク4(FR4)アミノ酸配列)とを有するCDR1、CDR2及びCDR3を含む重鎖可変領域(VH);並びに配列番号5、6及び7に示されるそれぞれのアミノ酸配列と、ヒトIGKV1-33遺伝子からのフレームワークFR1、FR2及びFR3アミノ酸配列(及び任意選択によりヒトIGKJ2遺伝子からのさらなるフレームワーク4(FR4)アミノ酸配列)とを有する軽鎖可変領域(VL)CDR1、CDR2及びCDR3を含む抗CD73抗原結合ドメイン又はそれを含むタンパク質(例えば、抗体又は抗体断片、多重特異性結合タンパク質、二重特異性抗体など)が提供される。任意選択により、Kabat位置59(HCDR2)の重鎖可変領域に存在する残基は、ロイシン又はグルタミン残基である。任意選択により、Kabat位置60(HCDR2)の重鎖可変領域に存在する残基は、スレオニン又はリシン残基である。任意選択により、Kabat位置97(HCDR3)の重鎖可変領域に存在する残基は、グリシン又はアスパラギン残基である。任意選択により、Kabat位置30(LCDR1)の軽鎖可変領域に存在する残基は、セリン又はスレオニン残基である。任意選択により、Kabat位置53(LCDR2)の軽鎖可変領域に存在する残基は、スレオニン又はアスパラギン残基である。
【0016】
ある実施形態において、配列番号2、8及び9に示されるそれぞれのアミノ酸配列と、ヒトIGHV1-3遺伝子からのフレームワークFR1、FR2及びFR3アミノ酸配列(及び任意選択によりヒトIGHJ4遺伝子からのさらなるフレームワーク4(FR4)アミノ酸配列)とを有するCDR1、CDR2及びCDR3を含む重鎖可変領域(VH);並びに配列番号10、11及び7に示されるそれぞれのアミノ酸配列と、ヒトIGKV1-33遺伝子からのフレームワークFR1、FR2及びFR3アミノ酸配列(及び任意選択によりヒトIGKJ2遺伝子からのさらなるフレームワーク4(FR4)アミノ酸配列)とを有する軽鎖可変領域(VL)CDR1、CDR2及びCDR3を含む抗CD73抗原結合ドメイン又はそれを含むタンパク質(例えば、抗体又は抗体断片、多重特異性結合タンパク質、二重特異性抗体など)が提供される。ある実施形態において、VHは、59(HCDR2)、60(HCDR2)及び97(HCDR3)からなる群から選択されるKabat重鎖位置でのKabat重鎖CDRにおける1つ、2つ又は3つのアミノ酸置換をさらに含む。任意選択により、59位のロイシン残基は、グルタミン残基で置換される。任意選択により、60位のスレオニン残基は、リシン残基で置換される。任意選択により、97位のグリシン残基は、アスパラギン残基で置換される。ある実施形態において、VLは、Kabat軽鎖位置30(LDCR1)及び/又は53(LDCR2)でのKabat軽鎖CDRにおけるアミノ酸置換をさらに含み、任意選択によりさらに30位のセリン残基がスレオニン残基で置換され、任意選択によりさらに53位のスレオニン残基がアスパラギン残基で置換される。
【0017】
ある実施形態において、配列番号2、12及び13に示されるそれぞれのアミノ酸配列と、ヒトIGHV1-3遺伝子からのフレームワークFR1、FR2及びFR3アミノ酸配列(及び任意選択によりヒトIGHJ4遺伝子からのさらなるフレームワーク4(FR4)アミノ酸配列)とを有するCDR1、CDR2及びCDR3を含む重鎖可変領域(VH);並びに配列番号14、15及び7に示されるそれぞれのアミノ酸配列と、ヒトIGKV1-33遺伝子からのフレームワークFR1、FR2及びFR3アミノ酸配列(及び任意選択によりヒトIGKJ2遺伝子からのさらなるフレームワーク4(FR4)アミノ酸配列)とを有する軽鎖可変領域(VL)CDR1、CDR2及びCDR3を含む抗CD73抗原結合ドメイン又はそれを含むタンパク質(例えば、抗体又は抗体断片、多重特異性結合タンパク質、二重特異性抗体など)が提供される。
【0018】
本明細書の任意の実施形態のある態様において、重鎖可変領域(VH)は、2、30、48、69及び73からなる群から選択されるKabat重鎖位置に1、2、3、4又は5つのアミノ酸置換を含むことによって特徴付けられ得、任意選択により、特定の位置でヒト配列に存在する残基は、その特定の位置でマウスドナー配列に存在する残基で置換され;軽鎖可変領域(VL)は、Kabat軽鎖位置67にアミノ酸置換を含むことによって特徴付けられ得、任意選択により、特定の位置でヒト配列に存在する残基は、その特定の位置でマウスドナー配列に存在する残基で置換される。ある実施形態において、VLは、Kabat軽鎖位置67での置換及び任意選択により2、67及び87からなる群から選択されるKabat軽鎖位置でのさらに1つ、2つ又は3つのアミノ酸置換を含み、任意選択により、特定の位置でヒト配列に存在する残基は、その特定の位置でマウスドナー配列に存在する残基で置換される。ある実施形態において、抗体又は抗体結合ドメインは、アミノ酸置換V2I、T30A、M48I、I69L及びT73Kを含む重鎖可変領域並びにアミノ酸置換S67Yを含む軽鎖可変領域を含み、ここで、付番は、Kabatによる。
【0019】
本明細書の任意の実施形態のある態様において、Kabat重鎖位置2のアミノ酸は、イソロイシンである。
【0020】
本明細書の任意の実施形態のある態様において、Kabat重鎖位置30のアミノ酸は、アラニンである。
【0021】
本明細書の任意の実施形態のある態様において、Kabat重鎖位置48のアミノ酸は、イソロイシンである。
【0022】
本明細書の任意の実施形態のある態様において、Kabat重鎖位置69のアミノ酸は、ロイシンである。
【0023】
本明細書の任意の実施形態のある態様において、Kabat重鎖位置73のアミノ酸は、リシンである。
【0024】
ある実施形態において、VHは、Kabat位置2にイソロイシン残基を、位置30にアラニンを、位置48にイソロイシンを、位置69にロイシンを、且つ位置73にリシンを含む。
【0025】
本明細書の任意の実施形態のある態様において、Kabat軽鎖位置67のアミノ酸は、チロシンである。
【0026】
本明細書の任意の実施形態のある態様において、Kabat軽鎖位置60のアミノ酸は、アスパラギン酸である。
【0027】
本明細書の任意の実施形態のある態様において、Kabat軽鎖位置2のアミノ酸は、イソロイシンである。
【0028】
本明細書の任意の実施形態のある態様において、Kabat軽鎖位置87のアミノ酸は、フェニルアラニンである。
【0029】
ある実施形態において、VLは、Kabat位置67にチロシン残基を含み、任意選択により、VLは、非ヒト残基によるKabatフレームワーク内の他の置換を含まず、且つ/又は残基67での置換以外には完全なヒトのVL Kabatフレームワークを有する。
【0030】
ある実施形態において、VLは、Kabat位置67にチロシン残基を、且つ位置60にアスパラギン酸を含む。
【0031】
ある実施形態において、VLは、Kabat位置67にチロシン残基を、位置60にアスパラギン酸を、且つ位置2にイソロイシンを含む。
【0032】
ある実施形態において、VLは、Kabat位置67にチロシン残基を、位置60にアスパラギン酸を、位置2にイソロイシンを、且つ位置87にフェニルアラニンを含む。
【0033】
ある実施形態において、配列番号37のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、90%、95%、97%、98%又は99%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)と、配列番号33、34、35又は36のいずれかのアミノ酸配列に対して少なくとも80%、90%、95%、97%、98%又は99%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む抗CD73抗原結合ドメイン又はその抗原結合ドメインを含むタンパク質(例えば、抗体又は抗体断片、多重特異性結合タンパク質、二重特異性抗体など)が提供される。ある実施形態において、VHは、配列番号2、12及び13に示されるそれぞれのアミノ酸配列を有するCDR1、CDR2及びCDR3を含み、及びVLは、配列番号14、15及び7に示されるそれぞれのアミノ酸配列を有するCDR1、CDR2及びCDR3を含む。ある実施形態において、VHは、Kabat位置2にイソロイシン残基を、位置30にアラニンを、位置48にイソロイシンを、位置69にロイシンを、且つ位置73にリシンを含む。ある実施形態において、VLは、Kabat位置67にチロシン残基を含む。
【0034】
ある実施形態において、配列番号2、3及び4に示されるそれぞれのアミノ酸配列と、ヒトフレームワーク(例えば、ヒト由来のFR1、FR2、FR3及びFR4)とを有するCDR1、CDR2及びCDR3を含む重鎖可変領域(VH);並びに配列番号5、6及び7に示されるそれぞれのアミノ酸配列と、ヒトフレームワーク(例えば、ヒト由来のFR1、FR2、FR3及びFR4)とを含む軽鎖可変領域(VL)CDR1、CDR2及びCDR3を含む抗CD73抗原結合ドメイン又はその抗原結合ドメインを含むタンパク質(例えば、抗体又は抗体断片、多重特異性結合タンパク質、二重特異性抗体など)が提供され、ここで、(VH)は、配列番号37又は42のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、90%、95%、97%、98%又は99%同一であるアミノ酸配列を含み、及び軽鎖可変領域(VL)は、配列番号33~36又は43~46)のいずれかのアミノ酸配列に対して少なくとも80%、90%、95%、97%、98%又は99%同一であるアミノ酸配列を含む。任意選択により、Kabat位置59(HCDR2)の重鎖可変領域に存在する残基は、ロイシン又はグルタミン残基である。任意選択により、Kabat位置60(HCDR2)の重鎖可変領域に存在する残基は、スレオニン又はリシン残基である。任意選択により、Kabat位置97(HCDR3)の重鎖可変領域に存在する残基は、グリシン又はアスパラギン残基である。任意選択により、Kabat位置30(LCDR1)の軽鎖可変領域に存在する残基は、セリン又はスレオニン残基である。任意選択により、Kabat位置53(LCDR2)の軽鎖可変領域に存在する残基は、スレオニン又はアスパラギン残基である。ある実施形態において、VHは、Kabat位置2にイソロイシン残基を、位置30にアラニンを、位置48にイソロイシンを、位置69にロイシンを、且つ位置73にリシンを含む。ある実施形態において、VLは、Kabat位置67にチロシン残基を含む。
【0035】
任意の実施形態において、VHは、ヒトVHアクセプターフレームワークアミノ酸配列を含むものとして特徴付けられ得、VLは、ヒトVLアクセプターフレームワークアミノ酸配列を含む。ある実施形態において、VHヒトアクセプターフレームワークのVHセグメントは、ヒトIGHV1-3遺伝子セグメントからのものであり、Jセグメントは、ヒトIGHJ4遺伝子セグメントからのものである。ある実施形態において、VHヒトアクセプターフレームワークは、ヒトIGHV1-3*01遺伝子セグメントからのものである。ある実施形態において、VLドメインヒトアクセプターフレームワークは、ヒトIGKV1-33遺伝子セグメントからのものであり、任意選択により、VLドメインヒトアクセプターフレームワークは、ヒトIGKV1-33*01遺伝子セグメントからのものである。ある実施形態において、VLドメインヒトアクセプターフレームワークは、ヒトIGKJ2遺伝子セグメントからのJセグメントを含む。
【0036】
ある実施形態において、抗体又は抗体断片は、H4+VHドメイン及びL1、L2、L3又はL4 VLドメインを含む。ある実施形態において、抗体は、抗体H4+L1である。
【0037】
ある実施形態において、配列番号37のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号33、34、35又は36のアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む抗CD73抗原結合ドメイン又はその抗原結合ドメインを含むタンパク質(例えば、抗体又は抗体断片、多重特異性結合タンパク質、二重特異性抗体など)が提供される。
【0038】
ある実施形態において、ヒトCD73に結合し、且つCD73のATPase活性を中和する抗体又は抗体断片が提供され、ここで、抗体又は抗体断片は、抗体H4+L1の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む。
【0039】
ある実施形態において、ヒトCD73ポリペプチドに結合し、且つCD73のATPase活性を中和する抗体又は抗体断片が提供され、ここで、抗体又は抗体断片は、配列番号37のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号33のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0040】
ある実施形態において、ヒトCD73ポリペプチドに結合し、且つCD73のATPase活性を中和する抗体又は抗体断片が提供され、ここで、抗体又は抗体断片は、配列番号38のアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号39のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0041】
ある実施形態において、抗体又は抗体断片は、2H4+VHドメイン及び2L1、2L2、2L3又は2L4 VLドメインを含む。ある実施形態において、抗体は、抗体2H4+2L1である。
【0042】
ある実施形態において、配列番号42のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号43、44、45又は46のアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む抗CD73抗原結合ドメイン又はその抗原結合ドメインを含むタンパク質(例えば、抗体又は抗体断片、多重特異性結合タンパク質、二重特異性抗体など)が提供される。
【0043】
ある実施形態において、ヒトCD73に結合し、且つCD73のATPase活性を中和する抗体又は抗体断片が提供され、ここで、抗体又は抗体断片は、抗体2H4+2L1の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む。
【0044】
ある実施形態において、ヒトCD73ポリペプチドに結合し、且つCD73のATPase活性を中和する抗体又は抗体断片が提供され、ここで、抗体又は抗体断片は、配列番号42のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号43のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0045】
ある実施形態において、ヒトCD73ポリペプチドに結合し、且つCD73のATPase活性を中和する抗体又は抗体断片が提供され、ここで、抗体又は抗体断片は、配列番号47のアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号48のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0046】
ある実施形態において、抗体は、非枯渇性であり、腫瘍環境におけるCD73の酵素活性を中和する。
【0047】
ある実施形態において、抗体は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4アイソタイプ抗体である。例えば、抗体は、ヒトIgG4アイソタイプのFcドメインを含む抗体又はFcドメインとヒトFcγ受容体との間の結合を低下又は欠失させるように修飾され(例えば、CD16)、任意選択によりFcドメインと複数のヒトFcγ受容体、例えばCD16A、CD16B、CD32A、CD32B及びCD64)との間の結合を低下させるように修飾された任意のヒトIgGアイソタイプ(例えばIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4)のFcドメインを含む抗体であり得る。ある実施形態において、抗体は、CD16A、CD16B、CD32A、CD32B、CD64のそれぞれに対する結合の(野生型ヒトIgG1 Fcドメインを含む抗体と比較した)減少又は実質的に完全な喪失をもたらすアミノ酸修飾を含むヒトIgGサブタイプ(例えば、IgG1)のFcドメインを含む。
【0048】
任意の実施形態において、抗体重鎖は、任意選択により、ヒトIgG1アイソタイプのヒトCH1定常ドメイン及び修飾ヒトFcドメインを含み、任意選択により配列番号16、17、18又は19のいずれか1つのアミノ酸配列をさらに含む。任意の実施形態において、抗体軽鎖は、ヒト軽鎖定常ドメインを含み、任意選択により、定常ドメインは、ヒトカッパドメインである。
【0049】
ある態様において、本開示の抗体は、細胞表面に発現されたCD73ポリペプチドの細胞内内在化又はより一般的にはダウンモジュレーションを誘導しないか又は増加させず、且つ/又はそれらのCD73阻害活性に依存しない。本開示の抗体は、CD73の内在化を引き起こすことによってCD73を阻害する抗体よりも大きい阻害効力(CD73酵素活性を実質的に中和する能力)を提供することができる。他のメカニズムによって可溶性CD73を阻害する(例えば、CD73抗体オリゴマー形成を引き起こす)抗体とは対照的に、本開示の抗体は、高(例えば、10倍)過剰の抗体:酵素でCD73の酵素活性を阻害することができる。さらに、細胞表面CD73で修飾されているか又は存在しない可能性のある組換えCD73上のエピトープに結合する抗体(例えば、抗体7G2)と異なり、又はCD73発現細胞での有効性に変換するには低すぎる親和性により、本抗体は、細胞表面CD73に存在し、且つ/又は無傷のままであるエピトープに高い親和性で結合し、細胞性CD73の酵素活性を強力に中和する能力を抗体に提供する。本抗体は、細胞内のCD73酵素活性を阻害するが、任意選択により可溶性組換えCD73のエクト-5’ヌクレオチダーゼ活性を阻害することもできる(可溶性二量体CD73ポリペプチドを使用した無細胞アッセイで観察される)。
【0050】
ある態様において、本開示の抗体は、CD73ポリペプチドの酵素活性部位に結合することなくヒトCD73ポリペプチドの活性を阻害することができ、且つ/又はCD73の非競合的阻害剤であり、例えば、それらは、CD73ポリペプチドとその天然基質との間の結合を検出可能に低下させることなく、ヒトCD73ポリペプチドの活性を阻害する。
【0051】
ある態様において、本開示の抗体は、残基K136に置換を有するCD73変異体への結合を失う。ある態様において、本開示の抗体は、残基K136に置換を有するCD73変異体への結合が減少しており(配列番号1の配列に関して;且つ配列番号1のアミノ酸配列を含む野生型CD73と比較して);任意選択により、抗体は、残基A99、E129、K133、E134及びA135に置換を有するCD73変異体への結合も減少しており(配列番号1の配列に関して;且つ配列番号1のアミノ酸配列を含む野生型CD73と比較して;任意選択によりさらに、抗体は、残基K97、E125、Q153及びK330に置換を有するCD73変異体への結合が減少している(配列番号1の配列に関して;且つ配列番号1のアミノ酸配列を含む野生型CD73と比較して。
【0052】
ある実施形態において、抗体は、CD73二量体内の各CD73ポリペプチド鎖上のエピトープに結合し(すなわち二量体内様式でCD73に結合する)、任意選択によりさらに、エピトープは、CD73二量体の同じ面に存在する。したがって、抗体は、とりわけ、抗体結合部位が「開いた」位置よりも空間的に離れている、より「閉じた」位置において1つのCD73二量体に二価で結合することができる。リガンド結合CD73への結合を考慮すると、本明細書に記載の抗体は、例えば、上流のADP及び/又はAMPが処置前に有意なレベルで存在する)腫瘍環境によって特徴付けられる(例えば、それによって特徴付けられることが知られているか又は疑われる)個体又は癌を処置するために、AMPに結合したときにCD73に結合するのに有用であり得る。抗体は、高レベルのADP(例えば、死滅する細胞によって生成され、間質及び細胞浸潤(例えば、TReg細胞)上のCD73によって取り込まれて、高レベルのAMPを得る)及びより一般的にはAMP、アデノシン、CD73発現又はCD73発現細胞の存在又はレベル、高いCD73発現細胞の数又は頻度(例えば、健常組織と比較して)及び/又は細胞での高いCD73発現のレベル(例えば、免疫組織化学アッセイによって評価される)、(例えば、健常組織と比較して)高可溶性CD73ポリペプチド(例えば、ELISA又は一般的に任意の抗体ベースの検出アッセイによって評価される)又はアデノシン受容体発現又はアデノシン受容体発現細胞の存在又はレベルによって特徴付けられる腫瘍環境を有する(例えば、それを有することが知られているか又は疑われる)個体又は癌を処置するために有用であり得る。腫瘍環境におけるCD73分子は、基質結合立体構造であり得、非基質結合CD73に加えて、基質結合細胞CD73(例えば、AMPなどの基質とプレインキュベートされたCD73を発現する細胞)に結合し、阻害する能力は、インビボでCD73を阻害するより大きい能力を提供し得る。任意選択により、可溶性CD73タンパク質、CD73発現細胞の数若しくは頻度及び/又は細胞上のCD73発現のレベルを処置前に腫瘍環境で評価することができる。抗体は、腫瘍試料において、有意なレベル(例えば、参照と比較して高レベル)の可溶性CD73タンパク質、CD73発現細胞の数若しくは頻度及び/又は細胞におけるCD73発現のレベルを有する個体の処置に特定の利点を有し得る。
【0053】
したがって、ある態様において、本開示は、細胞の表面で発現されるヒトCD73ポリペプチドに結合し、且つCD73ポリペプチドの酵素(エクト-5’ヌクレオチダーゼ)活性を阻害するヒト化抗体又は抗体断片を提供し、ここで、抗体は、単一のCD73ポリペプチド二量体(可溶性CD73ポリペプチド二量体又は細胞によって発現されるCD73ポリペプチド二量体)に二価で結合することができる。任意選択により、抗体は、第1の抗原結合ドメインで二量体内の第1のCD73ポリペプチドに、且つ第2の抗原結合ドメインで第2のCD73ポリペプチドに結合する。ある態様において、抗体は、CD73ポリペプチドのアロステリック阻害剤である。
【0054】
抗体が結合するCD73上のエピトープは、様々な細胞(例えば、癌細胞、CD4 T細胞、CD8 T細胞、B細胞、遺伝子導入された細胞)によって発現されるCD73ポリペプチド上に存在し、フローサイトメトリーによって決定される高い親和性で結合する。例えば、抗体は、CD73ポリペプチドを表面に発現する細胞への結合について、5μg/ml以下、任意選択により2μg/ml以下、1μg/ml以下、0.5μg/ml以下、0.1μg/ml以下又は0.05μg/ml以下の、フローサイトメトリーによって決定されるEC50によって特徴付けられ得る。ある実施形態において、細胞は、それらの表面でCD73を発現するように作製された細胞である。ある実施形態において、細胞は、それらの表面で内因的にCD73を発現する細胞であり、例えば癌細胞、白血病細胞、膀胱癌細胞、神経膠腫細胞、神経膠芽腫細胞、卵巣癌細胞、黒色腫細胞、前立腺癌細胞、甲状腺癌細胞、食道癌細胞又は乳癌細胞である。
【0055】
ある実施形態において、CD73中和抗体は、CD73の細胞の5’-エクトヌクレオチダーゼ活性を少なくとも60%、75%又は80%減少させることができることによって特徴付けられ得る。ある実施形態において、CD73中和抗体は、1μg/ml以下、任意選択により0.5μg/ml以下、任意選択により0.2μg/ml以下の細胞によって発現されるCD73の5’-エクトヌクレオチダーゼ活性の阻害についてのEC50によって特徴付けられ得る。
【0056】
任意選択により、細胞によって発現されるCD73の5’-エクトヌクレオチダーゼ活性の阻害は、AMPのアデノシンへの加水分解を定量化することにより、CD73発現細胞(例えば、MDA-MB-231細胞)における5’エクトヌクレオチダーゼ活性の中和を評価することによって決定される。
【0057】
任意選択により、細胞によって発現されるCD73の5’-エクトヌクレオチダーゼ活性の阻害は、T細胞(例えば、健常ヒトドナーからのもの)がAMP(例えば、外因的に追加されたAMP)の存在下において、(例えば、TCR共刺激、CD3及びCD28シグナル伝達の刺激を介して、例えばT細胞を、CD3アゴニスト及びCD28アゴニストで機能化されたビーズと接触させることによって)インビトロで増殖するように誘導される場合、前記T細胞の増殖を増加させる抗体断片の抗体の能力を評価することによって決定される。任意選択により、T細胞増殖は、本明細書の実施例に記載されているアッセイを使用して評価される(実施例5及び方法を参照されたい)。
【0058】
ある態様において、抗CD73抗体は、可溶性CD73及び細胞表面で発現されるCD73の両方に存在する共通の抗原決定基に結合する。
【0059】
ある態様において、抗CD73抗体は、例えば、抗原決定基がCD73二量体の共通の面に存在する、CD73二量体内の各CD73ポリペプチド鎖内の抗原決定基に結合する(二量体内モードにおいて)。
【0060】
ある態様において、抗CD73抗体は、残基K136(配列番号1に関して)を含むCD73上のエピトープに結合する。
【0061】
ある態様において、抗CD73抗体は、K97、E125、Q153及びK330(配列番号1に関して)からなる群から選択される1、2、3又は4つの残基を含むCD73上のエピトープに結合する。
【0062】
ある態様において、抗CD73抗体は、A99、E129、K133、E134及びA135(配列番号1に関して)からなる群から選択される1、2、3、4又は5つの残基を含むCD73上のエピトープに結合する。
【0063】
ある態様において、抗CD73抗体は、ヒトCD73タンパク質(例えば、CD73ホモ二量体タンパク質)上の、アミノ酸残基K97、A99、E125、E129、K133、E134、A135、K136、Q153及びK330(配列番号1に関して)を含むアミノ酸残基のドメイン又はセグメント内で少なくとも部分的に結合する。ある態様において、抗CD73抗体は、K97、A99、E125、E129、K133、E134、A135、K136、Q153及びK330(配列番号1に関して)からなる群から選択される少なくとも1、2、3、4若しくは5つ又はそれを超える数の残基を含むCD73上のエピトープに結合する。
【0064】
ある態様において、抗CD73抗体は、配列番号1のアミノ酸配列を含む野生型CD73ポリペプチドと比較して、残基K136に突然変異を有するCD73ポリペプチドへの減少した結合を有し(配列番号1に関して)、任意選択により、突然変異体CD73ポリペプチドは、変異K136Aを有する。
【0065】
ある態様において、抗CD73抗体は、配列番号1のアミノ酸配列を含む野生型CD73ポリペプチドと比較して、K97、E125、Q153及びK330からなる群から選択される残基に突然変異を有するCD73ポリペプチドへの減少した結合を有し(配列番号1に関して)、任意選択により、突然変異体CD73ポリペプチドは、変異K97A、E125A、Q153A及び/又はK330A(例えば、K97A、E125A及びK330A;K97A、E125A及び/又はQ153A)を有する。
【0066】
ある態様において、抗CD73抗体は、配列番号1のアミノ酸配列を含む野生型CD73ポリペプチドと比較して、A99、E129、K133、E134及びA135からなる群から選択される残基に突然変異を有するCD73ポリペプチドへの減少した結合を有し(配列番号1に関して)、任意選択により、突然変異体CD73ポリペプチドは、突然変異A99S、E129A、K133A、E134N及びA135Sを有する。
【0067】
ある実施形態において、疾患、例えば感染症又は癌の処置又は予防において抗体を使用する方法が提供される。ある態様において、抗体は、腫瘍微小環境におけるCD73の活性を中和するのに十分な量及び頻度において、癌を有する個体に投与される。ある実施形態において、抗体は、腫瘍微小環境におけるアデノシンの生成及び/又は濃度を減少させるのに十分な量及び頻度で投与される。ある実施形態において、抗体は、腫瘍微小環境におけるATPの生成及び/又は濃度を増加させるのに十分な量及び頻度で投与される。ある実施形態において、抗体は、腫瘍細胞によって発現されるCD73の活性を中和するのに十分な量及び頻度で投与される。ある実施形態において、抗体は、CD4 T細胞、CD8 T細胞及び/又はB細胞によって発現されるCD73の活性を中和するのに十分な量及び頻度で投与される。
【0068】
抗体は、AMPのアデノシンへのCD73媒介性異化を阻害する、例えば腫瘍微小環境におけるアデノシンの濃度を低下させるのに有用である。したがって、これらの抗体は、例えば、癌の処置において、アデノシン受容体を発現するT細胞、B細胞及び他の細胞に対するCD73及び/又はアデノシンの免疫抑制効果を逆転させるのに有用である。ある実施形態において、抗CD73抗体は、T細胞における増殖、サイトカイン産生、細胞傷害性及び/又はNFκB活性のアデノシン媒介性阻害を中和する。
【0069】
AMPのアデノシンへのCD73媒介性異化は、不可逆的であるのに対して、CD73によるATPからADPへの異化及びADPからAMPへの異化は、可逆的であるため(それぞれNDKキナーゼ及びアデニル酸キナーゼによる)、不可逆的なCD73媒介性異化を遮断する抗体は、AMPのプールを増やし、それにより例えば腫瘍微小環境でADP及びATPの濃度を上げるのに役立つ。抗体は、AMPからのADPの形成及びADPからのATPの形成を増加させるのに有用であり得る。ATPは、免疫活性化の役割を有するため、抗CD73抗体は、T細胞の活性化、例えば癌の処置に役立ち得る。
【0070】
抗体は、腫瘍微小環境へのアデノシンの産生、量及び/又は濃度を阻害するのに有用であろう。
【0071】
可溶性ヒトCD73ポリペプチド二量体の活性を中和する抗体は、他の適切な状況(例えば、CD73を発現するように作製されたレポーター細胞において、T細胞においてなど)でCD73をさらに中和することができる。
【0072】
個体を処置するための方法が提供され、この方法は、本明細書に記載の抗CD73抗原結合化合物のいずれかの治療活性量を個体(例えば、疾患、腫瘍などを有する個体)に投与することを含む。ある態様において、個体を処置するための方法が提供され、この方法は、本開示の抗原結合化合物の治療活性量を個体(例えば、疾患、腫瘍などを有する個体)に投与することを含むか、それから本質的になるか又はそれからなる。
【0073】
ある態様において、CD73発現細胞(例えば、個体の免疫細胞及び/又は腫瘍細胞)によって産生されるアデノシンを減少させる方法又は細胞性CD73の酵素活性を中和する方法が提供され、方法は、CD73発現細胞を本開示の抗原結合化合物(例えば、抗CD73抗体若しくは抗体断片又はそれを含む組成物)と接触させることを含むか、それから本質的になるか又はそれからなる。ある実施形態において、CD73発現細胞を本開示の抗原結合化合物と接触させるステップは、治療活性量の抗原結合化合物を個体に投与することを含む。ある実施形態において、個体は、癌を有する。
【0074】
ある態様において、腫瘍環境(例えば、個体)に存在するアデノシンを減少させるための方法が提供され、方法は、治療活性量の本開示の化合物(例えば、抗CD73抗体若しくは抗体断片又はそれを含む組成物)を個体に投与することを含むか、それから本質的になるか又はそれからなる。ある実施形態において、個体は、癌を有する。任意選択により、個体は、癌を有するか又は癌になりやすいヒトである。
【0075】
抗体は、任意選択により、SPR(例えば、実施例の方法による)によって決定される、ヒトCD73ポリペプチド(例えば、CD73二量体として)に対する10-9M未満(それより良好な)、好ましくは10-10M未満又は好ましくは10-11M未満の結合親和性(K)及び/又はヒトCD73ポリペプチドを1μg/ml未満(それより良好な結合)のEC50で結合することによって特徴付けられる。任意選択により、結合親和性を二価として指定することができる。
【0076】
ある実施形態において、抗体は、細胞表面でヒトCD73を発現する細胞(例えば、腫瘍細胞、MDA-MB-231細胞)への結合について、0.5μg/ml以下、任意選択により0.2μg/ml以下、任意選択により0.1μg/ml以下のEC50を有する。
【0077】
抗体は、任意選択により、CD73発現細胞(例えば、腫瘍細胞、MDA-MB-231細胞)におけるCD73の酵素活性の中和について、1μg/ml未満(それより良好な)、任意選択により0.5μg/ml未満のEC50によって特徴付けられる。
【0078】
ある実施形態において、抗体は、結合特異性及びCD73の酵素活性を中和する能力(例えば、T細胞がAMP(例えば、外因的に追加されたAMPの存在下においてインビトロで増殖するように誘導される場合、前記T細胞の増殖を増加させる抗体又は抗体断片の能力を評価することによって決定される)を保持するモノクローナル抗体又はその断片である。ある実施形態において、抗体は、CD73の酵素活性を中和することにおいて、配列番号40及び41のそれぞれのVH及びVLアミノ酸配列を有する親抗体と実質的に同程度に強力であるか又は少なくとも同程度に強力であり、任意選択により、抗体は、CD73の酵素活性を中和することにおいて、親抗体のEC50の1log、0.5log以内であるEC50を有する。ある実施形態において、抗体は、CD73の酵素活性を中和することにおいて、配列番号40及び41のそれぞれのVH及びVLアミノ酸配列を有する親抗体よりも強力であり、任意選択により、抗体は、CD73の酵素活性を中和することにおいて、配列番号40及び41のそれぞれのVH及びVLアミノ酸配列を有する親抗体よりも低いEC50を有する。
【0079】
ある実施形態において、抗体は、CD73の酵素活性を中和することにおいて、配列番号27及び28のそれぞれのVH及びVLアミノ酸配列を有する親抗体と実質的に同程度に強力であるか又は少なくとも同程度に強力であり、任意選択により、抗体は、CD73の酵素活性を中和することにおいて、親抗体のEC50の1log又は0.5log以内であるEC50を有する。ある実施形態において、抗体は、CD73の酵素活性を中和することにおいて、配列番号27及び28のそれぞれのVH及びVLアミノ酸配列を有する親抗体よりも強力であり、任意選択により、抗体は、CD73の酵素活性を中和することにおいて、配列番号27及び28のそれぞれのVH及びVLアミノ酸配列を有する親抗体よりも低いEC50を有する。
【0080】
本開示の抗体(又はその重鎖若しくは軽鎖)或いはVH及び/又はVLドメインをコードする単離及び/又は組換え核酸(例えば、核酸のセット)、そのような核酸を含むベクター又はベクターのセット、そのようなベクターを含む細胞及び抗CD73抗体又は抗体断片の発現に適した条件下でそのような細胞を培養することを含む、ヒト抗CD73抗体又は抗体断片を産生する方法も提供される。本開示は、このようなタンパク質、核酸、ベクター及び/又は細胞並びに典型的には活性成分又は本組成物の処方、送達、安定性若しくは他の特徴を促進する不活性成分であり得る1つ以上のさらなる成分(例えば様々な担体)を含む組成物、例えば薬学的に許容可能な組成物及びキットにも関する。本開示は、CD73介在性生物学的活性の調整などにおいて、例えばそれに関連する疾患、特に癌の処置において、このような抗体、核酸、ベクター、細胞、生物及び/又は組成物を作製及び使用する、様々な新規の及び有用な方法にさらに関する。
【0081】
本開示は、CD73に結合し、且つその酵素活性を中和する抗体又は抗体断片を産生又は試験する方法も提供する。
【0082】
本開示は、リンパ球(例えば、T細胞)の活性を、それを必要とする対象において増強する方法、又はリンパ球(例えば、T細胞)の活性を回復するための方法、又はリンパ球活性(例えば、T細胞)のアデノシン媒介性阻害を軽減する方法も提供し、この方法は、対象に前述の組成物のいずれかの有効量を投与することを含む。ある実施形態において、対象は、癌に罹患している患者である。例えば、患者は、固形腫瘍、例えば結直腸癌、腎臓癌、卵巣癌、肺癌、乳癌又は悪性黒色腫の罹患者であり得る。代わりに、患者は、造血系の癌、例えば急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、多発性骨髄腫又は非ホジキンリンパ腫の罹患者であり得る。
【0083】
これらの態様がより詳細に記載され、本明細書中で提供される説明からさらなる態様、特性及び長所が明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0084】
図1A-1B】ヒト(図1A)又はカニクイザル(図1B)CD73タンパク質を発現する遺伝子導入された細胞株で試験した、H0、H1、H2、H3及びH4重鎖可変領域を有し、それぞれL0、L1、L2、L3及びL4軽鎖可変領域と組み合わされたヒト化変異体及び親マウス抗体HPLPで得られた滴定曲線を示す。
図2】可溶性組換えCD73の酵素活性の遮断を示す。左上のパネル(A)は、ATP及びCTG基質を混合すると、高レベルの発光が測定されたことを示す。AMPを反応ミックスに添加すると、CTG反応が阻害され、発光が減少した。AMPを加水分解するrhCD73タンパク質の存在下で発光レベルが回復した。異なるヒト化変異体によるCD73酵素活性の遮断が示されている。
図3A-4C】T細胞増殖のAMP媒介性阻害を逆転させる効力においてヒト化抗体を比較するための2つの一連の実験を示す。図3A及び4Aは、一連の実験ごとにT細胞増殖の制御及びAMPによるその阻害を示す。図3B及び4Bは、CD4+を回復するための抗CD73抗体の有効性を示し、図3C及び4Cは、CD8+T細胞増殖を回復するための抗CD73抗体の有効性を示す。細胞増殖は、Cell Trace Violetマーカーの希釈によって決定される。データは、重複の平均+/-標準偏差として表される。
図5A-5C】T細胞増殖が全ての抗CD73抗体によって回復することを示す。図5Aは、T細胞亜集団の増殖の制御及びAMPによるその阻害を示す。図5Bは、CD4+及びCD8+T細胞の増殖を回復するためのH4+Lx抗体及び親抗体HPLPの有効性を示す。図5Cは、CD4+及びCD8+T細胞の増殖を回復するための2H4+2Lx抗体(2L1、2L2、2L3又は2L4鎖と組み合わせた2H4+鎖)及び親抗体2HP2LPの有効性を示す。データは、重複の平均+/-標準偏差として表される。
図6A-6B】ヒト化変異体によって回復されたT細胞増殖が、それぞれ2人の代表的なヒトドナーで再現可能であることを示す。CD4及びCD8T細胞の増殖を回復するための2H4+2Lx抗CD73抗体変異体の有効性が示されている。データは、重複の平均+/-標準偏差として表される。
図7】CD4+T細胞の増殖がATPによって阻害され、2H4+2Lx抗体変異体で回復することを示す。2つの代表的なドナーであるD795(図7A)及びD664(図7B)について試験したものとして示される、100μMのATPによるCD4+T細胞の増殖及び阻害の制御。データは、重複の平均+/-標準偏差として表される。
【発明を実施するための形態】
【0085】
定義
本明細書で使用される場合、「1つの(a)」又は「1つの(an)」は、1つ以上を意味し得る。請求項で使用される場合、「含む」という語と組み合わせて使用されるとき、「1つの(a)」又は「1つの(an)」という語は、1つ又は2つ以上を意味し得る。本明細書中で使用される場合、「別の」は、少なくとも第2又はそれを超えるものを意味し得る。
【0086】
「含む」が使用される場合、これは、任意選択により、「から基本的になる」又は「からなる」により置き換えられ得る。
【0087】
エクト-5’-ヌクレオチダーゼ及び5-プライムリボヌクレオチドホスホヒドロラーゼとしても知られるヒトCD73、EC3.1.3.5は、NT5E遺伝子によってコードされ、5’-ヌクレオチダーゼ、とりわけAMP-、NAD-及びNMN-ヌクレオチダーゼ活性を示す。CD73は、プリン5-プライムモノヌクレオチドの中性pHでのヌクレオシドへの変換を触媒し、好ましい基質は、AMPである。酵素は、原形質膜の外面にグリコシルホスファチジルイノシトール結合によって結合された2つの同一の70kDサブユニットの二量体からなる。アミノ酸1~26にシグナル配列を含むヒトCD73プレタンパク質(モノマー)のアミノ酸配列は、以下のようにGenbankにおいて受託番号NP_002517で示され、この開示全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【化1】
【0088】
本明細書に関連して、「CD73の酵素活性を中和する」とは、CD73の5’-ヌクレオチダーゼ(5’-エクトヌクレオチダーゼ)活性が阻害されるプロセスを指す。これは、とりわけ、CD73を介したアデノシンの生成の阻害、すなわちCD73を介したAMPのアデノシンへの異化の阻害を含む。これは、例えば、直接又は間接的に、AMPのアデノシンへの変換を阻害する試験化合物の能力を測定する無細胞アッセイで測定することができる。ある実施形態において、抗体調製物は、例えば、本明細書に記載のアッセイを参照して、AMPからアデノシンへの変換の少なくとも50%の減少、AMPからアデノシンへの変換の少なくとも70%の減少又はAMPからアデノシンへの変換の少なくとも80%の減少を引き起こす。
【0089】
本明細書全体において、「癌の処置」などが抗CD73結合物質(例えば、抗体)に関して言及される場合には常に、(a)癌の処置の方法であって、このような治療を必要とする個体、哺乳動物、特にヒトに、癌の処置を可能にする用量で(治療的有効量)、好ましくは本明細書中で指定されるような用量(量)で(好ましくは薬学的に許容可能な担体物質中で)抗CD73結合物質を投与する(少なくとも1回の処置)ステップを含む方法;(b)(特にヒトにおける)癌の処置のための抗CD73結合物質の使用又はその処置における使用のための抗CD73結合物質;(c)癌の処置用の医薬品の製造のための抗CD73結合物質の使用、抗CD73結合物質を薬学的に許容可能な担体と混合することを含む、癌の処置用の医薬品又は有効用量の癌の処置に適切な抗CD73結合物質を含む医薬品の製造のために抗CD73結合物質を使用する方法;又は(d)本願が提出される国で特許を得ることを可能とする主題に従う、a)、b)及びc)のいずれかの組み合わせを意味する。
【0090】
「抗体」という用語は、本明細書中で使用される場合、ポリクローナル及びモノクローナル抗体を指す。重鎖における定常ドメインのタイプに依存して、抗体は、5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMの1つに割り当てられる。これらの一部は、サブクラス又はアイソタイプ、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4などにさらに分類される。代表的な免疫グロブリン(抗体)構造単位は、四量体を含む。各四量体は、ポリペプチド鎖の2つの同一の対から構成され、各対は、1本の「軽」鎖(約25kDa)及び1本の「重」鎖(約50~70kDa)を有する。各鎖のN末端は、抗原認識に主に関与する約100~110又はそれを超えるアミノ酸の可変領域を定める。可変軽鎖(V)及び可変重鎖(V)という用語は、これらの軽鎖及び重鎖をそれぞれ指す。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、「アルファ」、「デルタ」、「イプシロン」、「ガンマ」及び「ミュー」とそれぞれ呼ばれる。免疫グロブリンの異なるクラスのサブユニット構造及び三次元立体配置は、周知である。IgGは、生理学的状況において最も共通する抗体であるため及び実験室で最も容易に作製されるため、本明細書中で使用される抗体の代表的なクラスである。任意選択により、本抗体は、モノクローナル抗体である。抗体の特定の例は、ヒト化、キメラ、ヒト又はそうでなければヒトに適切な抗体である。「抗体」は、本明細書中に記載の抗体のいずれかの何らかの断片又は誘導体も含む。
【0091】
「特異的に結合する」という語は、単離標的細胞の表面上に存在するタンパク質、その中のエピトープ又はネイティブタンパク質のいずれかの組み換え形態を用いて評価した場合、抗体が好ましくは競合的結合アッセイにおいて結合パートナー、例えばCD73に結合し得ることを意味する。競合的結合アッセイ及び特異的な結合を決定するための他の方法を以下でさらに記載し、これらは、当技術分野で周知である。
【0092】
抗体が特定のモノクローナル抗体と「競合する」と言われる場合、これは、本抗体が、組み換えCD73分子又は表面発現CD73分子のいずれかを用いた結合アッセイにおいて、モノクローナル抗体と競合することを意味する。例えば、試験抗体が結合アッセイにおいて参照抗体のCD73ポリペプチド又はCD73発現細胞への結合を減少させる場合、本抗体は、参照抗体とそれぞれ「競合する」と言われる。
【0093】
「親和性」という用語は、本明細書中で使用される場合、エピトープへの抗体の結合の強度を意味する。抗体の親和性は、[Ab]×[Ag]/[Ab-Ag](式中、[Ab-Ag]は、抗体-抗原複合体のモル濃度であり、[Ab]は、未結合抗体のモル濃度であり、[Ag]は、未結合抗原のモル濃度である)として定められる解離定数Kdにより与えられる。親和性定数Kは、1/Kdにより定義される。mAbの親和性を決定するための方法は、Harlow,et al.,Antibody:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1988),Coligan et al.,eds,Current Protocols in Immunology,Greene Publishing Assoc.and Wiley Interscience,N.Y.,(1992,1993)及びMuller,Meth.Enzymol.92:589-601(1983)に見出すことができ、この参考文献は、全体的に参照により本明細書中に組み込まれる。mAbの親和性を決定するための当技術分野で周知のある標準的な方法は、表面プラズモン共鳴(SPR)スクリーニング(BIAcore(商標)SPR分析装置による分析など)の使用である。
【0094】
本明細書に関連して、「決定基」は、ポリペプチド上の相互作用又は結合の部位を指す。
【0095】
「エピトープ」という用語は、抗原性決定基を指し、抗体が結合する抗原上のエリア又は領域である。タンパク質エピトープは、直接結合に関与するアミノ酸残基並びに特異的な抗原結合抗体又はペプチドにより効果的に阻止されるアミノ酸残基、すなわち抗体の「フットプリント」内のアミノ酸残基を含み得る。これは、例えば、抗体又は受容体と組み合わせ得る複合抗原分子上の最も単純な形態又は最小構造領域である。エピトープは、直鎖状又は立体構造/構造であり得る。「直鎖状エピトープ」という用語は、アミノ酸の直鎖状配列(一次構造)上で隣接するアミノ酸残基から構成されるエピトープとして定義される。「立体構造又は構造エピトープ」という用語は、全てが隣接しておらず、したがって分子の折り畳みにより互いに対して近接するようになるアミノ酸の直鎖状配列の分離部分を表す(二次、三次及び/又は四次構造)アミノ酸残基から構成されるエピトープとして定義される。立体構造エピトープは、三次元構造に依存する。したがって、「立体構造」という用語は、「構造」と交換可能に使用されることが多い。
【0096】
「枯渇させる」又は「枯渇させること」という用語は、CD73発現細胞に関して、結果として、試料又は対象中に存在するこのようなCD73発現細胞の数に負の影響を与えるように死滅させるか、排除するか、溶解するか、又はこのような死滅、排除若しくは溶解の誘導を引き起こす過程、方法又は化合物を意味する。
【0097】
「内在化」という用語は、「細胞内内在化」と互換的に使用され、細胞の細胞外表面から細胞の細胞内表面に分子を移動させるプロセスに関連する分子的、生化学的及び細胞的事象を指す。分子の細胞内内在化に関与するプロセスは、周知であり、とりわけ細胞外分子(ホルモン、抗体、有機小分子など);膜関連分子(細胞表面受容体など);細胞外分子に結合した膜結合分子の複合体(例えば、膜貫通受容体に結合したリガンド又は膜結合分子に結合した抗体)の内在化に関与し得る。したがって、「内在化の誘導及び/又は増加」は、細胞内内在化が開始され、且つ/又は細胞内内在化の速度及び/又は程度が増加する事象を含む。
【0098】
「薬剤」という用語は、本明細書中では、化学的化合物、化学的化合物の混合物、生体高分子又は生体物質から作製される抽出物を指すために使用される。「治療剤」という用語は、生物学的活性を有する薬剤を指す。
【0099】
本明細書中での目的のために、「ヒト化」又は「ヒト」抗体は、1つ以上のヒト免疫グロブリンの定常及び可変フレームワーク領域が動物免疫グロブリンの結合領域、例えばCDRと融合される抗体を指す。このような抗体は、結合領域が由来する非ヒト抗体の結合特異性を維持するが、非ヒト抗体に対する免疫反応を回避するために設計される。このような抗体は、抗原負荷に反応して特異的なヒト抗体を作製させるために「操作」されているトランスジェニックマウス又は他の動物から入手し得る(例えば、全体的な教示が参照により本明細書中に組み込まれるGreen et al.(1994)Nature Genet 7:13;Lonberg et al.(1994)Nature 368:856;Taylor et al.(1994)Int Immun 6:579を参照されたい)。全て当技術分野で公知である、遺伝学的又は染色体導入法並びにファージディスプレイ技術によって完全ヒト抗体も構築し得る(例えば、McCafferty et al.(1990)Nature 348:552-553を参照されたい)。ヒト抗体は、インビトロ活性化B細胞によっても作製し得る(例えば、参照によりそれらの全体において組み込まれる米国特許第5,567,610号明細書及び同第5,229,275号明細書を参照されたい)。
【0100】
「超可変領域」という用語は、本明細書中で使用される場合、抗原結合に関与する抗体のアミノ酸残基を指す。超可変領域は、一般に、「相補性決定領域」又は「CDR」(例えば、軽鎖可変ドメイン中の残基24~34(L1)、50~56(L2)及び89~97(L3)及び重鎖可変ドメイン中の31~35(H1)、50~65(H2)及び95~102(H3);Kabat et al.1991)及び/又は「超可変ループ」からの残基(例えば、軽鎖可変ドメイン中の残基26~32(L1)、50~52(L2)及び91~96(L3)及び重鎖可変ドメイン中の26~32(H1)、53~55(H2)及び96~101(H3);Chothia and Lesk,J.Mol.Biol1987;196:901-917)又は抗原結合に関与する必須アミノ酸を決定するための同様の系からのアミノ酸残基を含む。一般的には、この領域中のアミノ酸残基の付番は、Kabat et al.、前出に記載の方法により行われる。「Kabat位置」、「Kabatにおけるような可変ドメイン残基付番」及び「Kabatによる」などの句は、本明細書中では、重鎖可変ドメイン又は軽鎖可変ドメインに対するこの付番系を指す。Kabat付番系を用いて、ペプチドの実際の直鎖状アミノ酸配列は、可変ドメインのFR若しくはCDRの短縮又はそれへの挿入に対応する少数の又はさらなるアミノ酸を含有し得る。例えば、重鎖可変ドメインは、CDR H2の残基52の後に1つのアミノ酸挿入(Kabatによる残基52a)及び重鎖FR残基82の後に残基の挿入(例えば、Kabatによる残基82a、82b及び82cなど)を含み得る。残基のKabat付番は、「標準的な」Kabat付番配列での抗体の配列の相動性の領域でのアライメントにより、特定の抗体に対して決定され得る。
【0101】
「フレームワーク」又は「FR」残基は、本明細書中で使用される場合、CDRとして定められる領域を除く抗体可変ドメインの領域を意味する。各抗体可変ドメインフレームワークは、CDRによって分離される近接領域(FR1、FR2、FR3及びFR4)にさらに分けられ得る。
【0102】
「Fcドメイン」、「Fc部分」及び「Fc領域」という用語は、例えば、ヒトγ(ガンマ)重鎖の約アミノ酸(aa)230~約aa450からの、抗体重鎖のC末端断片又は他のタイプの抗体重鎖(例えば、ヒト抗体の場合、α、δ、ε及びμ)におけるその対応配列又はその天然のアロタイプを指す。別段の指定がない限り、免疫グロブリンに対する一般的に受容されるKabatアミノ酸付番は、この開示を通して使用される(Kabat et. al.(1991)Sequences of Protein of Immunological Interest,5th ed.,United States Public Health Service,National Institute of Health,Bethesda,MDを参照されたい)。
【0103】
「単離」、「精製」又は「生物学的に純粋」という用語は、実質的に又は基本的に、そのネイティブ状態で見られるような通常それに付随する成分を含まない物質を指す。純度及び均一性は、一般的にはポリアクリルアミドゲル電気泳動又は高速液体クロマトグラフィーなどの分析学的化学技術を用いて決定される。標品中に存在する主要な種であるタンパク質は、実質的に精製されている。
【0104】
「ポリペプチド」、「ペプチド」及び「タンパク質」という用語は、アミノ酸残基のポリマーを指すために本明細書中で交換可能に使用される。この用語は、1つ以上のアミノ酸残基が対応する天然のアミノ酸の人工的な化学模倣物であるアミノ酸ポリマー並びに天然のアミノポリマー及び非天然のアミノポリマーに適用される。
【0105】
「組み換え」という用語は、例えば、細胞又は核酸、タンパク質又はベクターに関して使用される場合、細胞、核酸、タンパク質又はベクターが異種核酸若しくはタンパク質の導入又はネイティブ核酸若しくはタンパク質の改変により修飾されているか、又は細胞が、そのように修飾された細胞に由来することを示す。したがって、例えば、組み換え細胞は、細胞のネイティブ(非組み換え)形態内で見出されない遺伝子を発現するか、又はそうでなければ異常に発現されるか、発現が少ないか又は全く発現されないネイティブ遺伝子を発現する。
【0106】
本明細書に関連して、ポリペプチド又はエピトープに「結合」する抗体という用語は、特異性及び/又は親和性をもって前記決定基に結合する抗体を指す。
【0107】
「同一性」又は「同一である」という用語は、2つ以上のポリペプチドの配列間の関係において使用される場合、2つ以上の一連のアミノ酸残基間の一致数により決定される場合のポリペプチド間の配列関連性の度合いを指す。「同一性」は、特定の数学的モデル又はコンピュータープログラム(すなわち「アルゴリズム」)により扱われるギャップアライメント(存在する場合)を用いた2つ以上の配列のより小さいものの間の完全な一致のパーセントを評価する。関連ポリペプチドの同一性は、公知の方法により容易に計算され得る。このような方法としては、Computational Molecular Biology,Lesk,A.M.,ed.,Oxford University Press,New York,1988;Biocomputing:Informatics and Genome Projects,Smith,D.W.,ed.,Academic Press,New York,1993;Computer Analysis of Sequence Data,Part 1,Griffin,A.M.and Griffin,H.G.,eds.,Humana Press,New Jersey,1994;Sequence Analysis in Molecular Biology,von Heinje,G.,Academic Press,1987;Sequence Analysis Primer,Gribskov,M.and DevereuX,J.,eds.,M.Stockton Press,New York,1991;及びCarillo et al.,SIAM J.Applied Math.48,1073(1988)に記載のものが挙げられるが、限定されない。
【0108】
同一性を決定するための方法は、試験される配列間の一致が最大となるように設計される。同一性を決定する方法は、公開されているコンピュータープログラムに記載されている。2つの配列間の同一性を決定するためのコンピュータープログラム法としては、GAP(Devereux et al.,Nucl.Acid.Res.12,387(1984);Genetics Computer Group,University of Wisconsin,Madison,Wis.),BLASTP、BLASTN and FASTA(Altschul et al.,J.Mol.Biol.215,403-410(1990))を含むGCGプログラムパッケージが挙げられる。BLASTXプログラムは、National Center for Biotechnology Information(NCBI)及び他のソース(BLAST Manual,Altschul et al.NCB/NLM/NIH Bethesda,Md.20894;Altschul et al.、前出)から公開されている。周知のSmith Watermanアルゴリズムも同一性を決定するために使用し得る。
【0109】
抗体の産生
本発明は、部分的に、結果として生じる抗CD73可変領域がヒトCD73の酵素活性の中和において高い効力を有するように、抗体CDRを組み込むことができる改変されたヒトアクセプターフレームワーク配列の発見に基づく。抗体は、ヒトにおける免疫原性が低いか又は低下しているという利点を有し、例えばヒトへの投与時、望ましくない抗CD73抗体に向けられた免疫応答を引き起こす能力又は可能性が低い。本開示のそのような抗体の例には、L1、L2、L3、L4、2L1、2L2、2L3又は2L4 VLドメインと組み合わされたH4+又は2H4+ VHドメインを含む抗体が含まれる。本開示の抗体の例には、抗体H4+L1、H4+L2、H4+L3、H4+L4、2H4+L1、2H4+L2、2H4+L3又は2H4+L4のいずれか1つのVH及びVLドメイン対を含む抗体が含まれる。
【0110】
ある態様において、ヒトCD73ポリペプチドに結合する抗体又は抗体断片は、ヒト起源のVH及びVLフレームワーク(例えば、FR1、FR2、FR3及びFR4)を含む。ある態様において、抗体又は抗体断片は、配列番号2に記載のアミノ酸配列SYNMYを含むHCDR1(重鎖CDR1);配列番号12に記載のアミノ酸配列YIDPYNGGSSYNQKFKGを含むHCDR2(重鎖CDR2)であって、任意選択によりさらに、配列番号12の13位のグルタミン残基(Q)は、ロイシン残基(L)で置換され得、配列番号12の14位のリシン残基(K)は、任意選択により、スレオニン残基(T)で置換され得る、配列;配列番号13に記載のアミノ酸配列GYNNYKAWFAYを含むHCDR3(重鎖CDR3)であって、任意選択によりさらに、配列番号13の3位のアスパラギン残基(N)は、グリシン残基(G)で置換され得る、配列;配列番号14に記載のアミノ酸配列KASQSVTNDVAを含むLCDR1(軽鎖CDR1)であって、任意選択によりさらに、配列番号14の7位のスレオニン残基(T)は、セリン残基(S)で置換され得る、配列;配列番号15に記載のアミノ酸配列YASNRYTを含むLCDR2(軽鎖CDR2)であって、任意選択により、配列番号15の4位のアスパラギン残基(N)は、スレオニン残基(T)で置換され得る、配列;配列番号7に記載のアミノ酸配列QQDYSSLTを含むLCDR3(軽鎖CDR3)を含む。
【0111】
ある実施形態において、HDCR2は、式Iのアミノ酸配列:
Y-I-D-P-Y-N-G-G-S-S-Y-N-Xaa-Xaa-F-K-G(配列番号3)又はその部分配列を含み、ここで、XaaはQ(Gln)又はL(Leu)であり、XaaはK(Lys)又はT(Thr)である。
【0112】
ある実施形態において、HDCR3は、式IIのアミノ酸配列:G-Y-Xaa-N-Y-K-A-W-F-A-Y(配列番号4)又はその部分配列を含み、ここで、Xaaは、N(Asp)又はG(Gly)である。
【0113】
ある実施形態において、LDCR1は、式IIIのアミノ酸配列:K-A-S-Q-S-V-Xaa-N-D-V-A(配列番号5)又はその部分配列を含み、ここで、Xaaは、T(Thr)又はS(Ser)である。
【0114】
ある実施形態において、LDCR2は、式IVのアミノ酸配列:Y-A-S-Xaa-R-Y-T(配列番号6)又はその部分配列を含み、ここで、Xaaは、T(Thr)又はN(Asn)である。
【0115】
ある態様において、ヒトCD73ポリペプチドに結合する単離抗体は、配列番号2に記載のアミノ酸配列SYNMYを含むHCDR1;配列番号8に記載のアミノ酸配列YIDPYNGGSSYNLTFKGを含むHCDR2;配列番号9に記載のアミノ酸配列GYGNYKAWFAYを含むHCDR3;配列番号10に記載のアミノ酸配列KASQSVSNDVAを含むLCDR1;配列番号11に記載のアミノ酸配列YASTRYTを含むLCDR2;及び配列番号7に記載のアミノ酸配列QQDYSSLTを含むLCDR3を含む。
【0116】
ある態様において、ヒトCD73ポリペプチドに結合する単離抗体は、配列番号2に記載のアミノ酸配列SYNMYを含むHCDR1;配列番号12に記載のアミノ酸配列YIDPYNGGSSYNQKFKGを含むHCDR2;配列番号13に記載のアミノ酸配列GYNNYKAWFAYを含むHCDR3;配列番号14に記載のアミノ酸配列KASQSVTNDVAを含むLCDR1;配列番号15に記載のアミノ酸配列YASNRYTを含むLCDR2;及び配列番号7に記載のアミノ酸配列QQDYSSLTを含むLCDR3を含む。
【0117】
ある実施形態において、抗体は、ヒトサブグループIGHV1-3からの重鎖フレームワークを含み(任意選択によりIGHJ4と共に)、任意選択により、IGHV1-3は、IGHV1-3*01である。ある実施形態において、ヒト化抗体は、ヒトサブグループIGKV1-33(任意選択によりIGKJ2と共に)、任意選択によりIGKV1-33*01からの軽鎖フレームワークを含む。
【0118】
抗体は、例えば、抗体の親和性、安定性又は他の特性を強化するために、ヒト重鎖及び/又は軽鎖フレームワーク全体にわたる1、2、3、4、5つ又はそれを超える数のアミノ酸置換をさらに含み得る。
【0119】
抗CD73抗体のVH及びVLアミノ酸配列の例を実施例6(H4+鎖を示し、2H4+2Lx抗体について表5に示す)に示し、L1-L4鎖について表1に示す。
【0120】
ある態様において、本発明は、
(a)配列番号2のアミノ酸配列を含むCDR-H1;
(b)配列番号3、8又は12のアミノ酸配列を含むCDR-H2、
(c)配列番号4、9又は13のアミノ酸配列を含むCDR-H3;
(d)配列番号5、10又は14のアミノ酸配列を含むCDR-L1;
(e)配列番号6、11又は15のアミノ酸配列を含むCDR-L2;
(f)配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR-L3;及び
(g)ヒト重鎖及び軽鎖フレームワーク配列
を含む、ヒトCD73ポリペプチドに結合する抗原結合ドメイン又は抗体又は抗体断片を提供する。
【0121】
ある実施形態において、抗体は、IGHJ4と共に、ヒトサブグループIGHV1-3からの重鎖フレームワークを含み、任意選択により、抗体は、IGHJ4と共に、IGHV1-3*01を含む。ある実施形態において、ヒト化抗体は、IGKJ2と共に、ヒトサブグループIGKV1-33、任意選択によりIGKV1-33*01からの軽鎖フレームワークを含む。
【0122】
任意選択により、任意の実施形態において、抗体は、ネズミ親抗体以外の抗体、例えば配列番号27及び28)のそれぞれのVH及びVLを有するか、又は配列番号40及び41)のそれぞれのVH及びVLを有するマウス親抗体であると特定することができる。
【0123】
任意選択により、ヒトフレームワークは、1つ以上の突然変異、例えば非ヒト哺乳動物(例えば、マウス)の特定の位置に存在する残基を導入するための逆突然変異を含む。
【0124】
本明細書の任意の実施形態のある態様において、Kabat重鎖位置2のアミノ酸は、イソロイシンである。
【0125】
本明細書の任意の実施形態のある態様において、Kabat重鎖位置30のアミノ酸は、アラニンである。
【0126】
本明細書の任意の実施形態のある態様において、Kabat重鎖位置48のアミノ酸は、イソロイシンである。
【0127】
本明細書の任意の実施形態のある態様において、Kabat重鎖位置69のアミノ酸は、ロイシンである。
【0128】
本明細書の任意の実施形態のある態様において、Kabat重鎖位置73のアミノ酸は、リシンである。
【0129】
ある実施形態において、VHは、Kabat位置2にイソロイシン残基を、位置30にアラニンを、位置48にイソロイシンを、位置69にロイシンを、且つ位置73にリシンを含む。
【0130】
本明細書の任意の実施形態のある態様において、Kabat軽鎖位置67のアミノ酸は、チロシンである。
【0131】
本明細書の任意の実施形態のある態様において、Kabat軽鎖位置60のアミノ酸は、セリン又はアスパラギン酸である。
【0132】
本明細書の任意の実施形態のある態様において、Kabat軽鎖位置2のアミノ酸は、バリン又はイソロイシンである。
【0133】
本明細書の任意の実施形態のある態様において、Kabat軽鎖位置87のアミノ酸は、チロシン又はフェニルアラニンである。
【0134】
ある実施形態において、VLは、Kabat位置67にチロシン残基を、位置60にセリンを、位置2にイソロイシンを、且つ位置87にチロシンを含む。
【0135】
本明細書の任意の実施形態のある態様において、Kabat重鎖位置28のアミノ酸は、スレオニン(T)である。
【0136】
本明細書の任意の実施形態のある態様において、Kabat重鎖位置66のアミノ酸は、アルギニン(R)である。
【0137】
本明細書の任意の実施形態のある態様において、Kabat重鎖位置67のアミノ酸は、バリン(V)である。
【0138】
本明細書の任意の実施形態のある態様において、Kabat重鎖位置71のアミノ酸は、アルギニン(R)である。
【0139】
本明細書のVH及びVLドメインにおける位置は、Kabat付番系(Kabat et.al.(1991)Sequences of Protein of Immunological Interest,5th ed.,United States Public Health Service,National Institute of Health,Bethesda,MD)を使用して記載される。
【0140】
ある態様において、抗CD73抗体は、配列番号37又は42のVHドメインに対して少なくとも約80%の配列同一性(例えば、少なくとも約85%、90%、95%、97%、98%若しくは99%の同一性又は100%の同一性)を有するVHドメインを含む。
【0141】
ある態様において、抗CD73抗体又は抗体断片は、配列番号33~36又は43~46のいずれかのVLドメインに対して少なくとも約80%の配列同一性(例えば、少なくとも約85%、90%、95%、97%、98%又は99%の同一性又は100%の同一性)を有するVLドメインを含む。
【0142】
ある態様において、抗CD73抗体又は抗体断片は、配列番号42のVHドメインに対して少なくとも約80%の配列同一性(例えば、少なくとも約85%、90%、95%、97%、98%若しくは99%の同一性又は100%の同一性)を有するVHドメイン及び配列番号43~46のいずれかのVLドメインに対して少なくとも約80%の配列同一性(例えば、少なくとも約85%、90%、95%、97%、98%又は99%の同一性又は100%の同一性)を有するVLドメインを含む。
【0143】
ある態様において、抗CD73抗体又は抗体断片は、H4+L1抗体の配列番号38の重鎖に対して少なくとも約80%の配列同一性(例えば、少なくとも約85%、90%、95%、97%、98%若しくは99%の同一性又は100%の同一性)を有する重鎖を含む。ある実施形態において、抗体又は抗体断片は、H4+L1抗体の配列番号39の軽鎖に対して少なくとも約80%の配列同一性(例えば、少なくとも約85%、90%、95%、97%、98%若しくは99%の同一性又は100%の同一性)を有する軽鎖を含む。
【0144】
ある態様において、抗CD73抗体又は抗体断片は、2H4+2L1抗体の配列番号47の重鎖に対して少なくとも約80%の配列同一性(例えば、少なくとも約85%、90%、95%、97%、98%若しくは99%の同一性又は100%の同一性)を有する重鎖を含む。ある実施形態において、抗体又は抗体断片は、2H4+2L1抗体の配列番号48の軽鎖に対して少なくとも約80%の配列同一性(例えば、少なくとも約85%、90%、95%、97%、98%若しくは99%の同一性又は100%の同一性)を有する軽鎖を含む。
【0145】
抗体をコードするDNAを調製し、適切な宿主への遺伝子移入のために適切な発現ベクターに入れることができる。次いで、抗体又はそれらの変異体、例えばそのモノクローナル抗体のヒト化バージョン、抗体の活性断片、抗体の抗原認識部分を含むキメラ抗体又は検出可能部分を含むバージョンの組み換え産生のために宿主を使用する。
【0146】
本開示のモノクローナル抗体をコードするDNAは、従来の手順を使用して容易に単離し、配列決定し得る(例えば、マウス抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合可能なオリゴヌクレオチドプローブを用いることによる)。ある態様において、本明細書の任意の実施形態の抗CD73抗体の重鎖又は軽鎖をコードする核酸が提供される。単離したら、DNAを発現ベクターに入れ得、次いで組換え宿主細胞においてモノクローナル抗体の合成を得るために、これを、そのままでは免疫グロブリンタンパク質を産生しない大腸菌(E.coli)細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞又は骨髄腫細胞などの宿主細胞に遺伝子導入する。多数の目的のいずれかのために、例えば抗体をヒト化する断片若しくは誘導体を作製するために、又は例えば抗体の結合特異性を最適化するために抗原結合部位において抗体の配列を修飾するために、このようなDNA配列を修飾し得る。ある実施形態において、抗体の軽鎖及び/又は重鎖をコードする単離された核酸配列並びに(例えば、そのゲノム中に)そのような核酸を含む組換え宿主細胞が提供される。抗体をコードするDNAの細菌中の組換え発現は、当技術分野で周知である(例えば、Skerra et al.,Curr.Opinion in Immunol.,5,pp.256(1993);及びPluckthun,Immunol.130,p.151(1992)を参照されたい。
【0147】
抗体の断片及び誘導体(別段の指定がない限り又は文脈と明らかに矛盾しない限り、本願で使用される場合の1つ又は複数の「抗体」という用語に包含される)は、当技術分野で公知の技術により作製され得る。「断片」は、インタクト抗体の一部分、一般的には抗原結合部位又は可変領域を含む。抗体断片の例としては、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2及びFv断片;ダイアボディ;近接アミノ酸残基の1つの連続した配列からなる一次構造を有するポリペプチド(本明細書中で「1本鎖抗体断片」又は「1本鎖ポリペプチド」と呼ぶ)である何らかの抗体断片;及び抗体断片から形成される多特異性(例えば、二特異性)抗体が挙げられる。
【0148】
典型的には、本明細書に提供される抗CD73抗体は、約10~約1011-1(例えば、約10~約1010-1)の範囲の、CD73ポリペプチド(例えば、本明細書の実施例で産生されるCD73ポリペプチド)に対する親和性を有する。例えば、特定の態様において、本開示は、例えば、(BIAcore(商標)SPR分析装置での分析などによる)表面プラズモン共鳴(SPR)スクリーニングによって決定される、CD73に関して1×10-9M未満の平均解離定数(K)を有する抗CD73抗体を提供する。より特定の例示的な態様において、本開示は、CD73について、約1×10-8M~約1×10-10M又は約1×10-9M~約1×10-11MのKを有する抗CD73抗体を提供する。
【0149】
抗体は、例えば、約100、60、10、5又は1ナノモル濃度以下(それより良好な親和性)、好ましくはナノモル濃度以下又は任意選択により約500、200、100又は10ピコモル濃度以下の平均Kによって特徴付けられ得る。KDは、例えば、組換えにより産生されたヒトCD73タンパク質をチップ表面に固定化し、続いて溶液中で試験される抗体を適用することによって決定することができる。ある実施形態において、方法は、CD73への結合について対照抗体と競合することができる(b)からの抗体を選択するステップ(d)をさらに含む。
【0150】
ある実施形態において、抗CD73抗体は、それらがヒトFcγ受容体、例えばCD16A、CD16B、CD32A、CD32B及び/又はCD64のいずれか1つ以上に実質的な結合を有しないように調製され得る。このような抗体は、Fcγ受容体に対する結合を欠くこと又は低い結合性を有することが知られている様々な重鎖の定常領域を含み得る。代替的に、Fc受容体結合を回避するために、F(ab’)2断片など、定常領域を含まない(又は部分的に含む)抗体断片を使用し得る。Fc受容体結合は、例えば、BIACOREアッセイにおけるFc受容体タンパク質への抗体の結合を試験することを含め、当技術分野で公知の方法に従い評価し得る。また、Fc受容体への結合を最小化又は除外するためにFc部分が修飾される(例えば、1、2、3、4、5つ又はそれを超えるアミノ酸置換を導入することによって)何らかの抗体IgGアイソタイプを一般に使用し得る(例えば、その開示が参照により本明細書中に組み込まれる国際公開第03/101485号パンフレットを参照されたい)。Fc受容体結合を評価するためのそのようなアッセイは、当技術分野で周知であり、例えば国際公開第03/101485号パンフレットに記載されている。
【0151】
ある実施形態において、抗体は、エフェクター細胞との最小限の相互作用を有する「Fcサイレント」抗体を生じるFc領域における1つ以上の特異的突然変異を含み得る。サイレンシングされたエフェクター機能は、抗体のFc領域における突然変異によって得ることができ、当技術分野において記載されてきた。N297A突然変異、LALA突然変異(Strohl,W.,2009,Curr.Opin.Biotechnol.Vol.20(6):685-691);D265A(Baudino et al.,2008,J.Immunol.181:6664-69)及びHeusser et al.,国際公開第2012/065950号パンフレットを参照されたい。これらの開示は、参照により本明細書に組み込まれる。ある実施形態において、抗体は、ヒンジ領域に1、2、3つ又はそれを超えるアミノ酸置換を含む。一実施形態では、抗体は、IgG1又はIgG2であり、残基233~236、任意選択により233~238(EU付番)において1つ、2つ又は3つの置換を含む。一実施形態では、抗体は、IgG4であり、残基327、330及び/又は331(EU付番)に1つ、2つ又は3つの置換を含む。サイレントFc IgG1抗体の例は、IgG1 Fcアミノ酸配列におけるL234A及びL235A突然変異を含むLALA突然変異体である。Fcサイレント突然変異の別の例は、例えば、DAPA(D265A、P329A)突然変異(米国特許第6,737,056号明細書)としてIgG1抗体において用いられる、残基D265又はD265及びP329における突然変異である。別のサイレントIgG1抗体は、残基N297における突然変異(例えば、N297A、N297S突然変異)を含み、その結果、グリコシル化/非グリコシル化抗体を生じる。他のサイレント突然変異は、残基L234及びG237における置換(L234A/G237A);残基S228、L235及びR409における置換(S228P/L235E/R409K、T、M、L);残基H268、V309、A330及びA331における置換(H268Q/V309L/A330S/A331S);残基C220、C226、C229及びP238における置換(C220S/C226S/C229S/P238S);残基C226、C229、E233、L234及びL235における置換(C226S/C229S/E233P/L234V/L235A;残基K322、L235及びL235における置換(K322A/L234A/L235A);残基L234、L235及びP331における置換(L234F/L235E/P331S);残基234、235及び297における置換;残基E318、K320及びK322における置換(L235E/E318A/K320A/K322A);残基(V234A、G237A、P238S)における置換;残基243及び264における置換;残基297及び299における置換;EU付番系によって定義される残基233、234、235、237及び238がPAAAP、PAAAS及びSAAASから選択される配列を含む置換(国際公開第2011/066501号パンフレットを参照されたい)を含む。
【0152】
ある実施形態において、抗体は、Fc領域に1つ以上の特異的突然変異を含むことができる。例えば、そのような抗体は、ヒトIgG1起源のFcドメインを含み、Kabat残基234、235、237、330及び/又は331における突然変異を含む。そのようなFcドメインの一例は、Kabat残基L234、L235及びP331における置換(例えば、L234A/L235E/P331S又は(L234F/L235E/P331S))を含む。このようなFcドメインの別の例は、Kabat残基L234、L235、G237及びP331における置換(例えば、L234A/L235E/G237A/P331S)を含む。このようなFcドメインの別の例は、Kabat残基L234、L235、G237、A330及びP331における置換(例えば、L234A/L235E/G237A/A330S/P331S)を含む。ある実施形態において、抗体は、Fcドメイン、任意選択によりヒトIgG1アイソタイプのFcドメインを含む抗体であり、L234X置換、L235X置換及びP331X置換を含み、Xは、ロイシン以外の任意のアミノ酸残基であり、Xは、ロイシン以外の任意のアミノ酸残であり基、Xは、プロリン以外の任意のアミノ酸残基であり、任意選択により、Xは、アラニン若しくはフェニルアラニン又はその保存的置換であり;任意選択により、Xは、グルタミン酸又はその保存的置換であり;任意選択により、Xは、セリン又はその保存的置換である。別の実施形態において、抗体は、Fcドメイン、任意選択によりヒトIgG1アイソタイプのFcドメインを含む抗体であり、L234X置換、L235X置換、G237X置換及びP331X置換を含み、Xは、ロイシン以外の任意のアミノ酸残基であり、Xは、ロイシン以外の任意のアミノ酸残基であり、Xは、グリシン以外の任意のアミノ酸残基であり、Xは、プロリン以外のアミノ酸残基であり、任意選択により、Xは、アラニン若しくはフェニルアラニン又はその保存的置換であり;任意選択により、Xは、グルタミン酸又はその保存的置換であり;任意選択により、Xは、アラニン又はその保存的置換であり;任意選択により、Xは、セリン又はその保存的置換である。別の実施形態において、抗体は、Fcドメイン、任意選択によりヒトIgG1アイソタイプのFcドメインを含む抗体であり、L234X置換、L235X置換、G237X置換、G330X置換及びP331X置換を含み、Xは、ロイシン以外の任意のアミノ酸残基であり、Xは、ロイシン以外の任意のアミノ酸残基であり、Xは、グリシン以外の任意のアミノ酸残基であり、Xは、アラニン以外のアミノ酸残基であり、Xは、プロリン以外のアミノ酸残基であり、任意選択により、Xは、アラニン若しくはフェニルアラニン又はその保存的置換であり;任意選択により、Xは、グルタミン酸又はその保存的置換であり;任意選択により、Xは、アラニン又はその保存的置換であり;任意選択により、Xは、セリン又はその保存的置換であり;任意選択により、Xは、セリン又はその保存的置換である。
【0153】
本明細書で使用されている略記法では、形式は、野生型残基:ポリペプチド中の位置:突然変異体残基であり、残基位置は、KabatによるEU付番に従って示される。
【0154】
ある実施形態において、抗体は、以下のアミノ酸配列を含む重鎖定常領域又はそれらと少なくとも90%、95%若しくは99%同一のアミノ酸配列を含むが、Kabat位置234、235及び331にアミノ酸残基を保持する(下線)。
【化2】
【0155】
ある実施形態において、抗体は、以下のアミノ酸配列を含む重鎖定常領域又はそれらと少なくとも90%、95%若しくは99%同一のアミノ酸配列を含むが、Kabat位置234、235及び331にアミノ酸残基を保持する(下線)。
【化3】
【0156】
ある実施形態において、抗体は、以下のアミノ酸配列を含む重鎖定常領域又はそれらと少なくとも90%、95%若しくは99%同一のアミノ酸配列を含むが、Kabat位置234、235、237、330及び331にアミノ酸残基を保持する(下線)。
【化4】
【0157】
ある実施形態において、抗体は、以下のアミノ酸配列を含む重鎖定常領域又はそれらと少なくとも90%、95%若しくは99%同一の配列を含むが、Kabat位置234、235、237及び331にアミノ酸残基を保持する(下線)。
【化5】
【0158】
Fcサイレント抗体は、ADCC活性を生じないか又は低いADCC活性を生じ、すなわち、Fcサイレント抗体は、50%未満の特異的細胞溶解であるADCC活性を示す。好ましくは、抗体は、実質的にADCC活性を欠き、例えば、Fcサイレント抗体は、5%未満又は1%未満のADCC活性(特異的細胞溶解)を示す。Fcサイレント抗体は、CD73発現細胞の表面でのCD73のFcγR媒介性架橋の欠如も生じ得る。
【0159】
ある実施形態において、抗体は、220、226、229、233、234、235、236、237、238、243、264、268、297、298、299、309、310、318、320、322、327、330、331及び409(重鎖定常領域における残基の付番は、KabatによるEU付番に従う)からなる群から選択される任意の1、2、3、4、5つ又はそれを超える残基において重鎖定常領域に置換を有する。ある実施形態において、抗体は、残基234、235及び322における置換を含む。ある実施形態において、抗体は、残基234、235及び331における置換を含む。ある実施形態において、抗体は、残基234、235、237及び331における置換を含む。ある実施形態において、抗体は、残基234、235、237、330及び331における置換を含む。一実施形態では、Fcドメインは、ヒトIgG1サブタイプのものである。アミノ酸残基は、KabatによるEU付番に従って示される。
【0160】
ある実施形態において、抗体は、抗体のインビボ半減期を増加させるために、ヒトFcRnポリペプチドへの結合を増加させるアミノ酸置換を含むFcドメインを含む。例示的な突然変異は、Strohl,W.,2009,Curr.Opin.Biotechnol.Vol.20(6):685-691に記載され、その開示は、参照により本明細書に組み込まれる。ヒトIgG1アイソタイプの抗体で使用される置換の例は、Kabat残基M252、S254及びT256での置換;残基T250及びM428での置換;残基N434での置換;残基H433及びN434での置換;残基T307、E380及びN434での置換;残基T307、E380及びN434での置換;残基M252、S254、T256、H433、N434及び436での置換;残基I253での置換;残基P257、N434、D376及びN434での置換である。抗原結合化合物は、CD73の酵素活性を阻害する能力、特にCD73の5’-ヌクレオチダーゼ活性を遮断し、CD73発現細胞によるアデノシンの産生を減少させ、リンパ球のアデノシン媒介性阻害の活性を回復させ、且つ/又はそれを軽減する能力について、任意の望ましい段階で評価することができる。
【0161】
CD73の酵素活性を阻害する抗体の能力は、組換え可溶性ヒトCD73(二量体として)及びAMPを使用する無細胞アッセイで試験することができ、AMPのアデノシンへの変換(及び/又はその阻害)が直接的(例えば、基質及び生成物、すなわちAMP、アデノシン及び/又はリン酸の測定によって)又は間接的に検出される。一例では、AMP及び/又はアデノシンは、組換えCD73との試験化合物のインキュベーションの前後にHPLCを介して検出される。
【0162】
抗体のCD73阻害活性は、他の多くの方法のいずれかで評価することもできる。例えば、間接アッセイでは、ルシフェラーゼベースの試薬(例えば、Promegaから入手可能なCellTiter-Glo(登録商標)システム)を使用してAMPの消失を検出する。アッセイにおけるルシフェラーゼ反応は、AMPによって阻害される。CD73酵素を反応物に加えると、AMPが分解され、阻害が緩和され、検出可能なシグナルが生成される。
【0163】
可溶性CD73を使用するアッセイは、抗体がCD73ポリペプチド二量体に対して実質的なモル過剰(例えば、10倍、20倍、50倍、100倍など)で提供される条件での試験を含む。酵素に対してモル過剰で提供される場合、抗CD73抗体は、抗体とCD73二量体の多量体複合体を形成することがもはやできなくなる。次に、CD73の酵素活性の阻害を保持する抗体を選択することができる。
【0164】
CD73の5’-エクトヌクレオチダーゼ酵素活性を阻害する抗体の能力は、代替的又は追加的に、細胞アッセイ(CD73を発現する細胞を使用)で試験することもできる。有利には、抗体は、CD73の内在化を引き起こすことによってCD73を阻害する抗体を選択する可能性を低減するために、最初に無細胞アッセイで試験又はスクリーニングして、酵素の活性を遮断する抗体を同定し、次に細胞アッセイで精製抗体として試験することができる。細胞アッセイは、本明細書の実施例に示されるように、又はその開示が参照により本明細書に組み込まれるPCT公開国際公開第2016/055609号パンフレットに開示されるように実施することができる。例えば、CD73発現細胞(例えば、MDA-MB-231細胞株)は、国際公開第2016/055609号パンフレットに詳述されているように、抗CD73抗体の存在下で平底96ウェルプレートにプレーティングされ、インキュベートされる。AMPを細胞に添加し、4℃でインキュベートする(CD73のダウンモジュレーションを回避するため)。次に、プレートを遠心分離し、上清を平底の96ウェル培養プレートに移す。次に、AMPのアデノシンへの加水分解によって生成された遊離リン酸塩が定量化される。抗体の存在下でのAMPのアデノシンへの加水分解の減少は、抗体が細胞のCD73を阻害することを示す。
【0165】
ある実施形態において、抗体調製物は、CD73ポリペプチドの酵素活性の少なくとも50%の減少、好ましくはCD73ポリペプチド(例えば、可溶性ホモ二量体CD73ポリペプチド;細胞によって発現されるCD73)の酵素活性の少なくとも60%、70%又は80%の減少を引き起こす。
【0166】
抗体の活性は、例えば、リンパ球活性のアデノシン媒介性阻害を軽減するか、又はリンパ球活性の活性化を引き起こす、リンパ球の活性を調節するその能力について間接的アッセイで測定することもできる。これは、例えば、サイトカイン放出アッセイを使用して対処することができる。別の例において、抗体は、リンパ球の増殖を調節するその能力について間接アッセイで評価することができる。
【0167】
ある実施形態において、抗体は、溶液中のホモ二量体ヒトCD73ポリペプチドの5’-エクトヌクレオチダーゼ活性を中和する。ある実施形態において、抗体は、可溶性ヒトCD73ポリペプチド、とりわけAMPのアデノシンへのCD73媒介性異化を中和する抗体に結合し、且つその酵素活性を阻害する。ある実施形態において、抗体は、二価の様式でCD73に結合する。ある実施形態において、抗体は、非枯渇抗体、例えばヒトFcγ受容体への結合を実質的に欠くFcサイレント抗体である。ある実施形態において、抗体は、CD73ポリペプチド:抗CD73抗体オリゴマーの誘導に依存することなく、溶液中のCD73を中和する。
【0168】
ある実施形態において、抗体は、細胞の表面でヒトCD73に特異的に結合し、可溶性ヒトCD73ポリペプチドの5’-エクトヌクレオチダーゼ活性を中和することができる。ある実施形態において、抗体は、可溶性CD73のオリゴマー化を誘導しない。
【0169】
ある実施形態において、抗体は、細胞の表面でヒトCD73に特異的に結合し、細胞性CD73(細胞によって発現されるCD73)の5’-エクトヌクレオチダーゼ活性を中和することができる。ある実施形態において、抗体は、細胞の表面でヒトCD73に特異的に結合し、その5’-エクトヌクレオチダーゼ活性を中和し、CD73に結合したときにCD73発現細胞に内在化されない。抗体は、CD73の多量体化及びそれに続く内在化を引き起こさない。ある実施形態において、抗体は、溶液中の組換えヒトCD73ポリペプチドに結合し、その酵素活性を阻害することができ、ここで、前記抗体は、CD73発現細胞に内在化されない。ある実施形態において、非内在化抗体は、二価の方法でCD73に結合する。ある実施形態において、抗体は、非枯渇抗体、例えばFcサイレント抗体である。抗体は、溶液中の二量体ヒトCD73ポリペプチドの5’-エクトヌクレオチダーゼ活性を中和することができ、さらにCD73ポリペプチド:抗CD73抗体オリゴマーの誘導に依存しない。
【0170】
ある実施形態において、抗体は、ヒトCD73ポリペプチドに二価で特異的に結合し、細胞性ヒトCD73(及び任意選択によりさらに組換え可溶性ヒトCD73)の酵素活性を阻害し、ここで、前記抗体は、CD73発現細胞におけるCD73の細胞内内在化を誘導又は増加させない。好ましくは、抗体は、Fcγ受容体結合(例えば、そのFcドメインを介して)を実質的に欠く。
【0171】
ある態様において、抗体は、AMPとプレインキュベートされた細胞の表面でヒトCD73に特異的に結合し、且つその5’-エクトヌクレオチダーゼ活性を中和することができる。任意選択により、5’-エクトヌクレオチダーゼ活性の中和は、AMPのアデノシンへの加水分解を定量化することにより、CD73発現細胞(例えば、MDA-MB-231細胞)における5’エクトヌクレオチダーゼ活性の中和を評価することによって決定される。
【0172】
ある態様において、細胞によって発現されるCD73の5’-エクトヌクレオチダーゼ活性の中和は、T細胞がAMP(例えば、外因的に追加されたAMP)の存在下において、(例えば、TCR共刺激、CD3及びCD28シグナル伝達の刺激を介して、例えばT細胞を、CD3アゴニスト及びCD28アゴニストで機能化されたビーズと接触させることによって)インビトロで増殖するように誘導される場合、前記T細胞の増殖を増加させる抗体の能力を評価することによって決定される。ある態様において、5’-エクトヌクレオチダーゼ活性アッセイの中和は、実施例の「方法」という名称のセクションに記載されているT細胞増殖アッセイを使用して評価される。
【0173】
抗体は、野生型CD73ポリペプチド(例えば、配列番号1)に結合する抗CD73抗体の能力と比較して、CD73変異体で遺伝子導入された細胞に結合するそれらの能力によって特徴付けることができる。抗CD73抗体と突然変異体CD73ポリペプチドとの間の結合の減少は、結合親和性の低下(例えば、特定の突然変異体を発現する細胞のFACS試験などの公知の方法又は突然変異体ポリペプチドへの結合のBiacore試験によって測定される)及び/又は抗CD73抗体の全結合能力の低下(例えば、抗CD73抗体濃度対ポリペプチド濃度のプロットにおけるBmaxの減少によって証明される)があることを意味する。結合の有意な減少は、抗CD73抗体がCD73に結合している場合、突然変異した残基が抗CD73抗体への結合に直接関与するか、又は結合タンパク質に近接していることを示す。
【0174】
いくつかの実施形態において、結合の有意な減少は、抗CD73抗体と突然変異CD73ポリペプチドとの間の結合親和性及び/又は能力が、抗体と野生型CD73ポリペプチドとの間の結合と比較して40%超、50%超、55%超、60%超、65%超、70%超、75%超、80%超、85%超、90%超又は95%超減少することを意味する。特定の実施形態において、結合は、検出可能限界未満に減少される。いくつかの実施形態において、抗CD73抗体の突然変異CD73ポリペプチドへの結合が、抗CD73抗体と野生型CD73ポリペプチドとの間に観察される結合の50%未満(例えば、45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%又は10%未満)である場合、結合の有意な減少が証明される。
【0175】
ある態様において、抗CD73抗体は、残基K136(配列番号1に関して)に突然変異を有するCD73ポリペプチドへの減少した結合を有し、任意選択により、突然変異体CD73ポリペプチドは、突然変異K136Aを有する。
【0176】
ある態様において、抗CD73抗体は、K97、E125、Q153及びK330(配列番号1に関して)からなる群から選択される残基に突然変異を有するCD73ポリペプチドへの減少した結合を有し、任意選択により、突然変異体CD73ポリペプチドは、突然変異K97A、E125A、Q153A及び/又はK330A(例えば、K97A、E125A及びK330A;K97A、E125A及び/又はQ153A)を有する。
【0177】
ある態様において、抗CD73抗体は、A99、E129、K133、E134及びA135(配列番号1に関して)からなる群から選択される残基に突然変異を有するCD73ポリペプチドへの減少した結合を有し、任意選択により、突然変異体CD73ポリペプチドは、突然変異A99S、E129A、K133A、E134N及び/又はA135Sを有する。
【0178】
任意選択により、ある態様において、抗CD73抗体は、Q70、R73、A74、A107及びR109(配列番号1に関して)からなる群から選択される残基に突然変異を有するCD73ポリペプチドへの減少した結合を有さず、任意選択により、突然変異体CD73ポリペプチドは、突然変異A99S、Q70S、R73A、A74E、A107I及び/又はR109Gを有する。
【0179】
ある態様において、抗CD73抗体は、残基K136(配列番号1に関して)を含むCD73上のエピトープに結合する。
【0180】
ある態様において、抗CD73抗体は、K97、E125、Q153及びK330(配列番号1に関して)からなる群から選択される1、2、3又は4つの残基を含むCD73上のエピトープに結合する。
【0181】
ある態様において、抗CD73抗体は、A99、E129、K133、E134及びA135(配列番号1に関して)からなる群から選択される1、2、3、4又は5つの残基を含むCD73上のエピトープに結合する。
【0182】
ある態様において、抗CD73抗体は、K97、A99、E125、E129、K133、E134、A135及びK136(配列番号1に関して)からなる群から選択される1、2、3、4、5つ又はそれを超える数の残基を含むCD73上のエピトープに結合する。ある態様において、抗CD73抗体は、K97、A99、E125、E129、K133、E134、A135、K136、Q153及びK330(配列番号1に関して)からなる群から選択される1、2、3、4、5つ又はそれを超える数の残基を含むCD73上のエピトープに結合する。
【0183】
任意選択により、ある態様において、抗CD73抗体は、Q70、R73、A74、A107及びR109(配列番号1に関して)からなる群から選択される1、2、3、4又は5つの残基を含むCD73上のエピトープに結合しない。
【0184】
1mg/mL~500mg/mLの濃度で含む医薬処方物中に抗CD73抗体が組み込まれ得、前記処方物のpHは、2.0~10.0である。本処方物は、緩衝液系、保存剤、等張化剤、キレート剤、安定化剤及び界面活性剤をさらに含み得る。ある実施形態において、医薬処方物は、水性処方物、すなわち水を含む処方物である。このような処方物は、一般に溶液又は懸濁液である。さらなる実施形態において、本医薬処方物は、水性溶液である。「水性処方物」という用語は、少なくとも50%w/wの水を含む処方物として定義される。同様に、「水溶液」という用語は、少なくとも50%w/wの水を含む溶液として定義され、「水性懸濁液」という用語は、少なくとも50%w/wの水を含む懸濁液として定義される。
【0185】
別の実施形態において、本医薬処方物は、凍結乾燥処方物であり、医師又は患者が使用前にそれに溶媒及び/又は希釈剤を添加する。
【0186】
別の実施形態において、本医薬処方物は、事前に溶解する必要がない使用準備済みの乾燥処方物(例えば、凍結乾燥又は噴霧乾燥)である。
【0187】
さらなる態様において、本医薬処方物は、このような抗体の水溶液及び緩衝液を含み、この抗体は、1mg/mL又はそれを超える濃度で存在し、前記処方物のpHは、約2.0~約10.0である。
【0188】
別の実施形態において、本処方物のpHは、約2.0~約10.0、約3.0~約9.0、約4.0~約8.5、約5.0~約8.0及び約5.5~約7.5からなる一覧から選択される範囲である。
【0189】
さらなる実施形態において、緩衝液は、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、クエン酸塩、グリシルグリシン、ヒスチジン、グリシン、リシン、アルギニン、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸ナトリウム及びトリス(ヒドロキシメチル)-アミノメタン、ビシン、トリシン、リンゴ酸、コハク酸塩、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、アスパラギン酸又はこれらの混合物からなる群から選択される。これらの具体的な各緩衝液は、代替的な実施形態を構成する。
【0190】
さらなる実施形態において、本処方物は、薬学的に許容可能な保存剤をさらに含む。さらなる実施形態において、本処方物は、等張剤をさらに含む。さらなる実施形態において、本処方物は、キレート剤も含む。さらなる実施形態において、本処方物は、安定化剤をさらに含む。さらなる実施形態において、本処方物は、界面活性剤をさらに含む。便宜上、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,19th edition,1995を参照する。
【0191】
ペプチド医薬処方物中に他の成分が存在し得る可能性がある。このようなさらなる成分としては、湿潤剤、乳化剤、抗酸化剤、充填剤、等張性調節剤、キレート剤、金属イオン、油性ビヒクル、タンパク質(例えば、ヒト血清アルブミン、ゼラチン又はタンパク質)及び双性イオン(例えば、ベタイン、タウリン、アルギニン、グリシン、リシン及びヒスチジンなどのアミノ酸)が挙げられ得る。このようなさらなる成分は、当然のことながら、医薬処方物の全体的な安定性に悪影響を与えるべきではない。
【0192】
抗体を含有する医薬組成物は、いくつかの部位、例えば局所部位、例えば皮膚及び粘膜部位、吸収を迂回する部位、例えば動脈における、静脈における、心臓における投与及び吸収を含む部位、例えば皮膚、皮下における、筋肉における又は腹部における投与において、このような処置を必要とする患者に投与され得る。医薬組成物の投与は、このような処置を必要とする患者への、いくつかの投与経路を通した、例えば皮下、筋肉内、腹腔内、静脈内、舌、舌下、頬側、口腔における投与、経口、胃腸における投与、鼻腔、肺、例えば細気管支及び肺胞又はそれらの組み合わせを通した投与、上皮、真皮、経皮、膣、直腸、眼、例えば結膜を通した投与、ウレタル及び非経口投与であり得る。
【0193】
悪性腫瘍の診断及び処置
本明細書中に記載のような抗CD73抗体又は抗体断片を使用して、個体、とりわけヒト患者を処置する方法も提供される。ある実施形態において、本開示は、ヒト患者への投与のための医薬組成物の調製における、本明細書に記載されるような抗体又は抗体断片の使用を提供する。典型的には、患者は、癌又は感染性疾患(例えばウイルス性又は細菌性の感染症)に罹患しているか又はそのリスクがある。
【0194】
例えば、ある態様において、それを必要とする患者の免疫細胞(例えば、リンパ球)の活性を回復又は増強する方法が提供され、この方法は、前記患者に本開示の中和抗CD73抗体を投与するステップを含む。ある実施形態において、方法は、免疫細胞活性の増加及び/又は疾患部位(例えば、腫瘍環境又は感染部位)への浸潤が有益であるか、又は免疫抑制、免疫抑制細胞又は例えばCD4 T細胞、CD8 T細胞、B細胞)によって生成されるアデノシンによって引き起こされるか又はそれによって特徴付けられる、癌又は感染症などの疾患を有する患者の免疫細胞(例えば、T細胞)の活性を増加させることを目的とする。
【0195】
方法は、腫瘍微小環境(及びその中のCD73媒介性アデノシン産生)が免疫系による認識の欠如(免疫回避)に寄与し得ると疑われる腫瘍を有する個体を処置するために特に有用であろう。腫瘍環境は、例えば、CD73発現免疫細胞、例えば、CD4 T細胞、CD8 T細胞、B細胞及び/又はCD73発現腫瘍細胞によって特徴付けられ得る。
【0196】
方法及び抗CD73抗体は、様々な癌及び他の増殖性疾患の処置及び/又は予防に利用することができる。これらの方法は、リンパ球の抗腫瘍活性を阻害するアデノシンを減少させることにより、且つさらにおそらくリンパ球の抗腫瘍活性を増加させることができるATPを増加させることにより機能するため、特に腫瘍微小環境中のアデノシンが抗腫瘍免疫応答の抑制に強力な役割を果たし得る固形腫瘍を含む広範囲の癌に適用可能である。ある実施形態において、抗CD73抗体で処置されるヒト患者は、肝臓癌、骨癌、膵臓癌、皮膚癌、頭頸部の癌、乳癌、肺癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)、メラノーマ、子宮癌、結腸癌、直腸癌、肛門領域の癌、胃癌、精巣癌、子宮癌、卵管の癌腫、子宮内膜の癌腫、子宮頸部の癌腫、膣の癌腫、外陰部の癌腫、非ホジキンリンパ腫、食道癌、小腸癌、内分泌系の癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟組織の肉腫、尿道癌、陰茎癌、小児期の固形腫瘍、リンパ球性リンパ腫、膀胱癌、腎臓又は尿管の癌、腎盂の癌腫、中枢神経系(CNS)の新生物、原発性CNSリンパ腫、腫瘍の血管新生、脊髄軸腫瘍、脳幹グリオーマ、下垂体腺腫、カポジ肉腫、類表皮癌、扁平上皮癌、アスベストにより誘導されるものを含む環境誘導性の癌、例えば多発性骨髄腫、B細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫/縦隔原発性B細胞性リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、急性骨髄性リンパ腫、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、濾胞性リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、免疫芽球性大細胞型リンパ腫、前駆Bリンパ芽球性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、急性リンパ芽球性白血病、菌状息肉腫、未分化大細胞型リンパ腫、T細胞リンパ腫及び前駆Tリンパ芽球性リンパ腫を含む血液系悪性腫瘍及び前記癌のいずれかの組み合わせを有する。本開示は、転移性癌の処置にも適用可能である。患者は、処置前、処置中又は処置後に上記臨床特性の1つ以上に対して試験又は選択され得る。
【0197】
方法及び抗CD73抗体は、免疫細胞(例えば、リンパ球)の活性及び/又は浸潤を阻害するアデノシンを減少させることにより、且つさらにおそらくリンパ球の活性を増加させることができるATPを増加させることにより機能するため、好ましくはウイルス、細菌、原生動物、カビ又は真菌による感染によって引き起こされる任意の感染症を含む広範囲の感染症に適用可能である。
【0198】
ある実施形態において、抗CD73抗体は、個体において(例えば、1、2、3、4週間及び/又はその後の抗原結合化合物の投与まで)、CD73の酵素活性を中和することについて、少なくともEC50、任意選択によりEC70、任意選択により実質的にEC100の血中濃度を達成及び/又は維持するのに有効な量で投与される。ある実施形態において、抗CD73抗体の活性量は、個体の血管外組織において、CD73の酵素活性を中和することについて、EC50、任意選択によりEC70、任意選択により実質的にEC100を達成するのに有効な量である。ある実施形態において、抗CD73抗体の活性量は、個体において、CD73の酵素活性の中和の阻害について、EC50、任意選択によりEC70、任意選択により実質的にEC100を達成(又は維持)するのに有効な量である。
【0199】
ある実施形態において、抗CD73抗体は、個体において、AMPのアデノシンへのCD73媒介性異化の阻害(例えば、AMPのアデノシンへの加水分解を定量化することにより、MDA-MB-231細胞における5’エクトヌクレオチダーゼ活性の中和を評価することによる)について、少なくともEC50、任意選択によりEC70、任意選択により実質的にEC100の血中濃度を達成及び/又は維持する(例えば、1、2、3、4週間及び/又はその後の抗CD73抗体の投与まで)のに有効な量で投与される。ある実施形態において、抗CD73抗体の量は、個体の血管外組織におけるAMPのアデノシンへのCD73媒介性異化の阻害について、EC50、任意選択によりEC70、任意選択により実質的にEC100を達成(又は維持)するのに有効な量である。
【0200】
ある実施形態において、個体の癌を処置又は予防するための方法であって、疾患を有する個体に、循環中の50%、70%の又は完全な(例えば、90%)受容体飽和CD73発現細胞に必要な濃度よりも高い(例えば、PBMCで評価される)循環中の濃度を特定の期間、任意選択により目的の血管外組織(例えば、腫瘍又は腫瘍環境)において、達成又は維持する量の抗CD73抗体を投与することを含む方法が提供される。任意選択により、達成される濃度は、特定された受容体飽和に必要な濃度よりも少なくとも20%、50%又は100%高い。
【0201】
ある実施形態において、個体の癌を処置又は予防するための方法であって、個体に、CD73発現細胞への結合について、EC50、任意選択によりEC70又は任意選択によりEC100より高い(例えば、CD73発現細胞、例えばMDA-MB-231細胞で、抗CD73抗体を滴定することによって評価される)循環中の濃度を特定の期間、任意選択により目的の血管外組織(例えば、腫瘍又は腫瘍環境)において、達成又は維持する量の抗CD73抗体を投与することを含む方法が提供される。任意選択により、達成される濃度は、CD73発現細胞に結合するために、EC50、任意選択によりEC70又は任意選択によりEC100よりも、少なくとも20%、50%又は100%高い。
【0202】
任意の実施形態において、抗体は、例えば、ヒトPBMCにおけるCD73発現細胞への結合について、0.5~100ng/ml、任意選択により1~100ng/ml、任意選択により30~100ng/ml、例えば約30~90ng/mlのEC50、任意選択によりEC70又は任意選択によりEC100を有し得る(例えば、CD73発現細胞、例えばMDA-MB-231細胞で抗CD73抗体を滴定することによって評価される)。
【0203】
抗CD73抗体によるCD73の酵素活性の中和のためのEC50は、例えば、約0.01μg/ml~1μg/ml、任意選択により0.1μg/ml~10μg/ml、任意選択により0.1μg/ml~1μg/mlであり得る。例えば、EC50は、約0.1μg/ml、約0.2μg/ml又は約0.3μg/mlであり得る。したがって、この抗CD73抗体の量は、例えば、少なくとも0.1μg/ml、任意選択により少なくとも0.2μg/ml、任意選択により少なくとも1μg/ml又は任意選択により少なくとも2μg/mlの血中濃度を達成及び/又は維持するように投与される。
【0204】
血管系の外側の組織が標的とされる場合(腫瘍環境、例えば固形腫瘍の処置において)、循環中の対応する濃度を提供する用量と比較して典型的にはおよそ10倍高い用量が必要であると考えられる。約1μg/ml、2μg/ml、10μg/ml又は20μg/mlの循環(血液)濃度を達成(及び/又は維持)するために投与される抗CD73抗体の量は、それぞれ約0.1μg/ml、0.2μg/ml、1μg/ml、2μg/mlの血管外組織(例えば、腫瘍組織)濃度を達成(及び/又は維持)することが予想される。
【0205】
ある実施形態において、抗CD73抗体は、例えば、少なくとも0.1μg/ml、任意選択により少なくとも0.2μg/ml、任意選択により少なくとも1μg/ml又は任意選択により少なくとも2μg/mlの組織(例えば、腫瘍環境)濃度を達成及び/又は維持する量で投与される。抗体は、例えば、少なくとも1μg/ml、2μg/ml、10μg/ml又は20μg/ml、例えば、1~100μg/ml、10~100μg/ml、1~50μg/ml、1~20μg/ml又は1~10μg/mlの血中濃度を達成及び/又は維持する量で投与することができる。投与量は、投与後の特定の期間(例えば、1、2、3、4週間など)にわたり、所望の濃度の維持を提供するように調整することができる。
【0206】
いくつかの実施形態において、ある量の抗CD73抗体は、CD73の酵素活性の中和について、少なくともEC70又はEC100に対応する血液(血清)又は血管外組織(例えば、腫瘍環境)中の濃度を得るように投与される。抗体は、例えば、少なくとも約1μg/ml、2μg/ml、10μg/ml又は20μg/mlの血中濃度又は血管外組織(例えば、腫瘍環境)を達成及び/又は維持する量で投与することができる。
【0207】
EC50、EC70又はEC100は、例えばCD73の酵素活性の中和に関する細胞アッセイで評価できる(例えば、AMPのアデノシンへの加水分解を定量化することによるMDA-MB-231細胞の5’エクトヌクレオチダーゼ活性の中和)。CD73の酵素活性の中和に関する「EC50」は、酵素活性の中和に関し、その最大反応又は、効果の50%を生じる抗CD73抗体の有効濃度を指す)。CD73の酵素活性の中和に関する「EC70」は、その最大反応又は効果の70%を生じる抗CD73抗体の有効濃度を指す。CD73の酵素活性の中和に関する「EC100」は、酵素活性のそのような中和に関し、その実質的に最大の反応又は効果を生じる抗CD73抗体の有効濃度を指す。
【0208】
いくつかの実施形態において、特に固形腫瘍の処置について、達成される濃度は、酵素活性の中和について、少なくともEC50、任意選択により、約又は少なくとも約、EC100に対応する組織(血管系の外側、例えば、腫瘍又は腫瘍環境)における濃度をもたらすように設計される。
【0209】
ある実施形態において、抗CD73抗体の量は、1~20mg/kg体重である。ある実施形態において、その量は、毎週、2週間ごと、毎月又は2ヶ月ごとに個体に投与される。
【0210】
ある実施形態において、少なくとも1つの投与サイクル(任意選択で少なくとも2、3、4又はそれを超える投与サイクル)にわたり、有効量の本開示の抗CD73抗体を個体に投与することを含む、ヒト個体を処置する方法が提供され、ここで、サイクルは、8週間以下の期間であり、少なくとも1つのサイクルのそれぞれについて、1回、2回、3回又は4回の用量の抗CD73抗体が1~20mg/kg体重の用量で投与される。ある実施形態において、抗CD73抗体は、静脈内注入によって投与される。
【0211】
ヒトを処置するための適切な処置プロトコルは、例えば、本明細書に開示される量の抗CD73抗体を患者に投与することを含み、ここで、方法は、少なくとも1用量の抗CD73抗体が投与される少なくとも1つの投与サイクルを含む。任意選択により、少なくとも2、3、4、5、6、7又は8用量の抗CD73抗体が投与される。ある実施形態において、投与サイクルは、2週間~8週間である。
【0212】
癌を有する患者は、腫瘍微小環境内の細胞(例えば、腫瘍細胞、CD4 T細胞、CD8 T細胞、B細胞)でのCD73の発現を評価するための事前の検出ステップを伴って又は伴わずに抗CD73抗体で処置することができる。任意選択により、処置方法は、個体の腫瘍からの生物学的試料(例えば、癌組織又は癌の近位又は周辺の組織、癌隣接組織、隣接非腫瘍組織又は正常な隣接組織)中のCD73核酸又はポリペプチドを検出するステップを含むことができる。生物学的試料がCD73を発現する細胞を含むという決定(例えば、参照、例えば健常組織と比較して、抗CD73抗体による高レベルの高強度の染色でCD73を発現する)は、患者が、抗CD73抗体による処置から大きい利益を有し得る癌を有することを示す。ある実施形態において、方法は、生物学的試料中のCD73核酸又はポリペプチドの発現のレベルを決定すること及びそのレベルを健常個体に対応する参照レベルと比較することを含む。生物学的試料が、参照レベル(例えば、健常組織)と比較して増加したレベルでCD73核酸又はポリペプチドを発現する細胞を含むという決定は、本開示の抗CD73抗体で有利に処置することができる癌を患者が有することを示す。任意選択により、生物学的試料中のCD73ポリペプチドを検出することは、悪性細胞又はCD4 T細胞、CD8 T細胞又はB細胞の表面に発現されるCD73ポリペプチドを検出することを含む。
【0213】
個体が、CD73ポリペプチドを発現する細胞によって特徴付けられる癌を有するかを決定することは、例えば、癌環境(例えば、腫瘍又は腫瘍隣接組織)からの細胞を含む個体から生物学的試料を(例えば、生検を実施することによって)取得すること、前記細胞をCD73ポリペプチドに結合する抗体と接触させること及び細胞がその表面にCD73を発現するかを検出することを含み得る。任意選択により、個体がCD73を発現する細胞を有するかどうかを決定することは、免疫組織化学アッセイを実施することを含む。
【0214】
本抗体組成物は、その抗体が投与されている特定の治療目的のために通常利用される薬剤を含む1つ以上の他の治療剤と組み合わせて有利に使用され得る。さらなる治療剤は、通常、処置されている特定の疾患又は状態に対する単剤療法においてその薬剤に対して一般的に使用される量及び治療計画で投与される。このような治療剤としては、抗癌剤及び化学療法剤が挙げられるが、限定されない。
【0215】
ある実施形態において、抗CD73抗体は、ヒトPD-1の阻害活性(例えばPD-1とPD-L1との間の相互作用を阻害する)を中和する薬剤の有効性を増強する。したがって、ある実施形態において、第2の又はさらなる第2の治療剤は、ヒトPD-1の阻害活性を中和する抗体又は他の薬剤である。
【0216】
プログラム死1(PD-1)(「プログラム細胞死1」とも呼ばれる)は、CD28ファミリーの受容体の阻害性メンバーである。完全なヒトPD-1配列は、GenBank受入番号U64863に見出すことができる。PD-1の阻害活性の阻害又は中和は、PD-L1誘導PD-1シグナル伝達を妨げるポリペプチド剤(例えば、抗体、Fcドメインに融合したポリペプチド、イムノアドヘシンなど)の使用を含み得る。現在、市販又は臨床評価中のPD-1/PD-L1経路を阻止する少なくとも6つの薬剤が存在する。1つの薬剤は、BMS-936558(ニボルマブ/ONO-4538、Bristol-Myers Squibb、以前にはMDX-1106)である。ニボルマブ(商品名Opdivo(登録商標))は、PD-1及びCD80の両方へのPD-L1リガンドの結合を阻害するFDA認可完全ヒトIgG4抗PD-L1mAbであり、国際公開第2006/121168号パンフレットにおいて抗体5C4として記載され、その開示は、参照により本明細書に組み込まれる。メラノーマ患者では、3mg/kgの用量で最も有意なORが観察されたが、他の癌のタイプでは10mg/kgであった。ニボルマブは、一般に癌の進行まで3週間ごとに10mg/kgで投与される。「ヒトPD-1の阻害活性を低下させる」、「PD-1を中和する」又は「ヒトPD-1の阻害活性を中和する」という用語と、PD-1が、PD-1と、PD-L1又はPD-L2などの1つ以上のその結合パートナーとの間の相互作用から生じるシグナル伝達能力において阻害される過程を指す。PD-1の阻害活性を中和する薬剤は、PD-1と、PD-L1、PD-L2などのその結合パートナーの1つ以上との間の相互作用に起因するシグナル伝達を減少、阻止、阻害又は抑制する。したがって、このような薬剤は、増殖、サイトカイン産生及び/又は細胞傷害性などのT細胞エフェクター機能を増強するように、Tリンパ球上に発現される細胞表面タンパク質によって媒介されるか又はそれを介した負の共刺激シグナルを減少させることができる。
【0217】
ランブロリズマブ又はペンブロリズマブ(商品名Keytruda(登録商標))とも呼ばれるMK-3475(Merck社製ヒトIgG4抗PD1mAb)は、メラノーマの治療のためにFDAによって承認され、他の癌において試験されている。ペンブロリズマブは、疾患の進行まで2週間又は3週間ごとに2mg/kg又は10mg/kgで試験した。Merck3745又はSCH-900475としても知られているMK-3475は、国際公開第2009/114335号パンフレットにも記載されている。
【0218】
MPDL3280A/RG7446(アテゾリズマブ、商品名Tecentriq(商標)、Roche/Genentech社製の抗PD-L1)は、FcγR結合及びその結果としての抗体依存性細胞傷害(ADCC)を最小限に抑えることによって効力及び安全性を最適化するように設計された、操作されたFcドメインを含むヒト抗PD-L1mAbである。1、10、15及び25mg/kg以下の用量のMPDL3280Aを3週間ごとに最高1年間投与した。第3相試験では、MPDL3280AをNSCLCにおいて3週間ごとに静脈内注入により1200mgで投与する。
【0219】
AMP-224(Amplimmune及びGSK)は、Fcドメインに融合したPD-L2細胞外ドメインを含むイムノアドヘシンである。PD-1を中和する薬剤の他の例は、PD-L2に結合する抗体(抗PD-L2抗体)を含み得、PD-1とPD-L2との間の相互作用を阻止する。
【0220】
ピディリズマブ(CT-011;CureTech)(CureTech/Teva社製ヒト化IgG1抗PD1mAb)、ピディリズマブ(CT-011; CureTech)(例えば、国際公開第2009/101611号パンフレットを参照されたい)は、別の例である。薬剤は、リツキシマブ感受性再発性FLを有する30人の患者において試験され、患者は、4週間ごとの3mg/kgでの静脈内CT-011の4回にわたる注入に、CT-011の最初の注入の2週間後に始まって毎週375mg/m2で4週間にわたり投与されるリツキシマブを組み合わせて処置された。
【0221】
さらなる公知のPD-1抗体及び他のPD-1阻害剤としては、AMP-224(GSKにライセンスされたB7-DC/IgG1融合タンパク質)、国際公開第2012/145493号パンフレットに記載のAMP-514、国際公開第2011/066389号パンフレット及び米国特許出願公開第2013/034559号明細書に記載の抗体MEDI-4736(デュルバルマブ、商品名Imfinzi(商標)、AstraZeneca/Medimmuneにより開発された抗PD-L1)、国際公開第2010/077634号パンフレットに記載の抗体YW243.55.S70(抗PD-L1)、BMS-936559としても知られているMDX-1105は、国際公開第2007/005874号パンフレットに記載のBristol-Myers Squibbにより開発された抗PD-L1抗体及び国際公開第2006/121168号パンフレット、国際公開第2009/014708号パンフレット、国際公開第2009/114335号パンフレット及び国際公開第2013/019906号パンフレットに記載の抗体及び阻害剤が挙げられ、これらの開示は、参照により本明細書中に組み込まれる。抗PD1抗体のさらなる例は、国際公開第2015/085847号パンフレット(Shanghai Hengrui Pharmaceutical Co.Ltd.)に開示されており、例えばそれぞれ配列番号6、配列番号7及び/又は配列番号8の軽鎖可変ドメインCDR1、2及び3並びにそれぞれ配列番号3、配列番号4又は配列番号5の抗体重鎖可変ドメインCDR1、2及び3を有する抗体であり、配列番号は、国際公開第2015/085847号パンフレットに従った付番であり、その開示は、参照により本明細書に組み込まれる。PD-1又はPD-L1への結合についてこれらの抗体のいずれかと競合する抗体も使用することができる。いくつかの実施形態において、PD-1中和剤は、PD-L1のPD-1への結合を阻害する抗PD-L1抗体である。いくつかの実施形態において、PD-1中和剤は、PD-1のPD-L1への結合を阻害する抗PD1抗体である。代表的な抗PD-1抗体は、ペンブロリズマブである(Keytruda(商標)としてMerck&Coから市販、参照により本明細書中に組み込まれる国際公開第2009/114335号パンフレットも参照されたい)。例示的な抗PD-L1は、抗体MEDI-4736(デュルバルマブ、商品名Imfinzi(商標)、AstraZeneca/Medimmuneによって開発された抗PD-L1)である。
【0222】
処置方法において、CD73結合化合物及び第2の治療剤は、個別に、一緒に若しくは連続して又はカクテルにして投与し得る。いくつかの実施形態において、本抗原結合化合物は、第2の治療剤の投与前に投与される。例えば、CD73結合化合物は、第2の治療剤の投与のおよそ0~30日前に投与され得る。いくつかの実施形態において、CD73結合化合物は、第2の治療剤の投与の約30分~約2週間、約30分~約1週間、約1時間~約2時間、約2時間~約4時間、約4時間~約6時間、約6時間~約8時間、約8時間~1日又は約1~5日前に投与する。いくつかの実施形態において、CD73結合化合物は、治療剤の投与と同時に投与する。いくつかの実施形態において、CD73結合化合物は、第2の治療剤の投与後に投与する。例えば、CD73結合化合物は、第2の治療剤の投与からおよそ0~30日後に投与し得る。いくつかの実施形態において、CD73結合化合物は、第2の治療剤の投与から、約30分~約2週間、約30分~約1週間、約1時間~約2時間、約2時間~約4時間、約4時間~約6時間、約6時間~約8時間,約8時間~1日又は約1~5日後に投与する。
【実施例
【0223】
方法
組換えhuCD73のクローニング、産生及び精製
分子生物学
huCD73タンパク質は、以下のプライマーTACGACTCACAAGCTTGCCGCCACCATGTGTCCCCGAGCCGCGCG(配列番号20)(フォワード)及びCCGCCCCGACTCTAGAtcaGTGATGGTGATGATGGTGcttgatccgaccttcaactg配列番号21)(リバース)を使用して、MIAPACA-2cDNAからクローン化された。次に、精製されたPCR産物を、InFusionクローニングシステムを使用して発現ベクターにクローニングした。精製ステップのために、タンパク質のC末端部分に6xHisタグを加えた。
【0224】
クローン化huCD73のアミノ酸配列:
【化6】
【0225】
huCD73タンパク質の発現及び精製
クローン化された配列の検証後、細胞をヌクレオフェクトし、次に産生プールをサブクローニングして、huCD73タンパク質を産生する細胞クローンを得た。ローラーで増殖させたhuCD73クローンからの上清を回収し、Ni-NTAカラムを使用して精製し、250mMイミダゾールを使用して溶出した。次に、精製したタンパク質をS200サイズ排除クロマトグラフィーカラムに充填した。二量体に対応する精製タンパク質は、酵素活性アッセイのためにTris 20mM pH7.5、NaCl 120mM及びCaCl2 4mM緩衝液で製剤化される一方、製剤緩衝液には20%グリセロールが補充される。
【0226】
組換えCD73タンパク質のAb KDを評価するためのSPR分析
SPR測定は、Biacore(商標)T200装置で25℃において行った。プロテイン-A(GE Healthcare)は、Sensor Chip CM5(GE Healthcare)に固定化された。チップ表面をEDC/NHS(N-エチル-N’-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩及びN-ヒドロキシスクシンイミド(Biacore(商標)、GE Healthcare)で活性化した。プロテイン-Aを結合緩衝液(10mM酢酸塩、pH5.6)中で10μg/mLに希釈し、適切な固定化レベルに達するまで(すなわち2000RU)注入した。残りの活性化された基の失活は、100mMエタノールアミンpH8(Biacore(商標)、GE Healthcare)を用いて行った。親和性研究は、製造業者(Biacore(商標)GE Healthcare kinetic wizard)によって推奨される標準的なCapture-Kineticプロトコルに従って実施した。1.23~300nMの範囲のヒト組換え可溶性CD73タンパク質の段階希釈液を、捕捉した抗CD73抗体に順次注入し、再分化前に10分間分離させた。センサーグラムセット全体を、1:1動態結合モデルを用いてフィッティングした。二価の親和性並びに動態結合速度定数及び解離速度定数が計算される。
【0227】
抗体による抗CD73認識を評価するためのフローサイトメトリー分析
FCSBに再懸濁した10個のMDA-MB-231細胞を丸底96Wマイクロプレート(ウェルあたり50μL)に分配した。抗CD73 mAbの用量範囲をプレートに加え、細胞を+5±3℃で1時間インキュベートした。プレートを400g、4℃で3分間回転させることにより、細胞をFCSBで3回洗浄した。FCSBで希釈したPE複合化ヤギF(ab’)2抗ヒトIgG(H+L)二次Abを細胞に添加し、プレートを+5±3℃でさらに30分間インキュベートした。上記のように細胞を3回洗浄し、フローサイトメーターで分析した。
【0228】
蛍光強度の中央値対mAb濃度をグラフにプロットし、GraphPad Prism(商標)プログラムを使用してEC50を計算した。
【0229】
組換えヒト又はカニクイザルCD73を用いたインビトロ酵素アッセイ
簡潔には、組換えヒト又はカニクイザルCD73を、ある用量範囲の抗CD73又はアイソタイプ対照mAbの存在下において白色の96W平底マイクロプレートでインキュベートした。プレートを+37±1℃で1時間インキュベートした。ATP(12.5μM)及びAMP(125μM)を各ウェルに添加し、プレートを+37±1℃でさらに30分間インキュベートした。ルシフェラーゼ/ルシフェリン含有CellTiter-Glo(商標)(Promega)をウェルに加え、プレートを暗所で室温において5分間インキュベートし、Enspire(商標)装置(Perkin Elmer)を使用して放出光を測定した。
・条件:
・ATP+AMP:最大ルシフェラーゼ阻害(100%)
・CD73+ATP+AMP:ルシフェラーゼ阻害なし(0%)
【0230】
GraphPad Prism7(商標)ソフトウェアを使用して、残留酵素活性と抗CD73 Ab濃度をグラフにプロットした。
【0231】
T細胞増殖アッセイ
健常ドナーから末梢血を採取し、フィコール勾配で単核細胞を単離した。リンパ球は、52%Percoll(商標)勾配(細胞ペレット)でさらに濃縮され、2μM CellTrace(商標)Violet(Thermofisher)で染色された。5×10~1×10の染色細胞を96w丸底プレートに分配し、抗CD73 Abと共に37℃で1時間インキュベートし、抗CD3/抗CD28コーティングビーズを添加して3~5日間活性化した。T細胞増殖の阻害は、200μMのAMPを添加することで達成された。T細胞増殖及びAMPの免疫抑制効果を遮断するAbの能力は、増殖するT細胞の色素希釈を定量化することによりフローサイトメトリーによって評価された。GraphPad Prism(商標)ソフトウェアを使用して、抗CD73Ab濃度に対する増殖T細胞のパーセンテージをグラフにプロットした。一部の実験は、健常ドナー又は癌患者からのPBMC全体で行われた。プロトコルは、T細胞抑制が0.5~1mMのATPの添加によって達成されたことを除いて上記のとおりであった。
【0232】
ドナー又は患者を比較するために、T細胞増殖は、以下の式を使用して正規化された。
【数1】
【0233】
同種混合リンパ球反応(MLR)アッセイ
健常ドナーからの単核細胞をフィコール勾配で単離し、単球をCD14マイクロビーズ(Miltenyi Biotec)を使用した免疫磁気選択によって精製した。単球は、GM-CSF(400ng/ml)及びIL-4(20ng/ml)の存在下で5~7日間培養することにより、樹状細胞(MoDC)に分化した。DC回復の日、同種異系ドナーからのCD4+T細胞は、非CD4+T細胞(Miltenyi Biotec)の免疫磁気枯渇によって精製され、Cell Trace(商標)Violetで染色された。DC(10細胞/ウェル)及びT細胞(5×10細胞/ウェル)を96W丸底マイクロプレートである用量範囲の抗huCD73抗体及び固定用量のATPの存在下において混合した。T細胞増殖及びATP媒介性抑制を逆転させるAbの能力は、T細胞増殖アッセイについて記載されているように評価された。
【0234】
実施例1:ヒトフレームワーク配列を用いた抗huCD73抗体のモデリング及び生成
それぞれ配列番号27及び28のVH及びVLアミノ酸配列を有する、PCT公開国際公開第2016/055609号パンフレットに記載されている親抗体3C12は、IGHJ4*01(FR4)と共に、ヒトサブグループIGHV1-3*01からの重鎖フレームワーク(FR1、FR2、FR3)のVHへの導入及びIGKJ2*01(FR4)と共に、ヒトサブグループIGKV1-33*01からの軽鎖フレームワーク(FR1、FR2、FR3)のVLへの導入によって改変された。
【0235】
異なるヒトVH及びVL遺伝子セグメントに基づく3次元モデルを重ね合わせ、全てのアミノ酸の差異を1つずつ精査した。インシリコでの分子設計は、親キメラ(HPLP)抗体及びヒト化(H0L0)抗体の両方の3Dモデルを使用して検証された。あらゆる重要な低エネルギー結合を特定し、その破壊を回避するために、残基間の鎖内及び鎖外結合も評価された。
【0236】
設計された各ドメインのVH及びVL配列は、それぞれL234A/L235E/G237A/A330S/P331S置換を有するhuIgG1由来の定常ドメイン及びhuCk定常ドメインを含むベクターにクローニングされた。得られた2つのベクターをCHO細胞株に同時導入した。確立された細胞プールを使用して、CHO培地で抗体を産生した。次に、プロテインAを使用して抗体を精製した。L234A/L235E/G237A/A330S/P331S置換(N297結合型グリコシル化を保持)を含むFcドメインを含む、ヒトIgG1定常領域を有する3C12のキメラFabバージョンのモデリングに使用された重鎖及び軽鎖配列は、以下のとおりである。
【0237】
HP Fab重鎖(可変ドメインに下線)
【化7】
【0238】
LP Fab軽鎖(可変ドメインに下線)
【化8】
【0239】
H0 Fab重鎖(可変ドメインに下線)
【化9】
【0240】
L0 Fab軽鎖(可変ドメインに下線)
【化10】
【0241】
HPLP親抗体の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域の配列を以下に示す。
【0242】
HP VH
【化11】
【0243】
LP VL
【化12】
【0244】
重鎖設計
残基I2(Kabat付番によると位置2)がCDR_H3-Y109と疎水性結合を形成し、CDR_H3の配置又は柔軟性に役割を果たすかを調べるために、位置2のバリン残基をイソロイシンに置換した。V2及びI2の側鎖は、2つのモデルで一致していない。V2もH0-Y109(Kabat Y108)と疎水性結合を形成するが、Y109の位置は、わずかに変わり、H0-Y109は、LC-Y55(Kabat Y54)と水素結合を形成する。Y55は、CDR_L2残基である。V2置換は、CDR_H3とCDR_L2との両方の位置に影響し得る。
【0245】
28位及び30位の残基(フレームワーク1、Kabatによると28位及び30位)が抗原への結合に影響を与えるかどうかを調べるために、これらの位置をアラニンで置換した。親抗体は、H0L0抗体のYTFTと比較して配列YAFAを有する。残基A28及びA30は、パラトープに近い分子表面に露出している。28位のスレオニンは、抗原への結合に悪影響を与える可能性が高いようである。一方、A30は、重要ではないようであった。
【0246】
44位(Kabat 44ともいう)の残基がVH/VL境界部で役割を果たすかどうかを調べるために、この残基を逆変異させ、それにより親抗体に存在するセリンを保存した。親抗体は、H0L0抗体のGQRと比較して配列GKSを有する。R44は、VH/VL境界部にあり、L45側鎖に非常に近い位置にある。
【0247】
48位(Kabat 48ともいう)の残基が重要であるかどうかを調べるために、この残基を逆変異させ、それにより親抗体に存在する残基を保存した。親抗体は、H0L0抗体のWMGと比較して配列WIGを有する。I48及びM48は、CDR_H2の直下の重要な位置を占めているようであり、複雑な疎水性ネットワークに関与している。
【0248】
67位(Kabat位置66)及び68位(Kabat位置67)の残基の重要性を調べるために、これらの残基を逆変異させ、それにより親抗体に存在する残基を保存した。親抗体は、H0L0抗体のRVTと比較して配列KATを有する。F64(Kabat F63)とK67/R67(Kabat K66/R66)との間のループは、2つのモデルで非常に異なる立体構造を示す。A68(Kabat 67)は、バーニア残基である。
【0249】
Abnum位置70(Kabat位置69)の残基の役割を調べるために、この残基を逆変異させ、それにより親抗体に存在するロイシンを保存した。親抗体は、H0L0抗体のTITと比較して配列TLTを有する。L70及びI70(Kabat L69及びI69)は、複雑な疎水性ネットワークに関与している。
【0250】
72位(Kabat 71)の残基の役割を調べるために、この残基を逆変異させ、それにより親抗体に存在するセリンを保存した。親抗体は、H0L0抗体のTRDと比較して配列TVDを有する。V72及びR72(Kabat V71及びR71)は、CDR_H2の直下の重要な位置を占める。残基V72の遠位親水性側鎖は、分子表面に突出し、N55(Kabat N54)と水素結合を形成する。N55は、両方のモデルで同じ位置を占める。しかし、R72(Kabat R71)との水素結合は、対応するループの柔軟性を低下させ得る。したがって、H0L0で親バリンをアルギニンに置換することによる抗原結合への影響は、予測できない。
【0251】
74位(Kabat 73)の残基が抗原への結合に影響を与えるかどうかを調べるために、この残基を逆変異させ、それにより親抗体に存在するセリンを保存した。親抗体は、H0L0抗体のDTSと比較して配列DKSを有する。K74及びT74(Kabat K73及びT73)は、パラトープに近い分子表面に露出しており、抗原結合に関与している可能性がある。
【0252】
配列番号29に示されるアミノ酸配列を有する第1の重鎖変異体(H1)は、V2I及びT73K置換を有していた。配列番号30に示されるアミノ酸配列を有する第2の重鎖(H2)変異体は、置換V2I、T28A、R71V及びT73Kを有していた。配列番号31に示されるアミノ酸配列を有する第3の重鎖変異体(H3)は、置換V2I、T28A、M48I、R66K、V67A、R71V及びT73Kを有していた。配列番号32に示されるアミノ酸配列を有する第4の重鎖変異体(H4)は、置換V2I、T28A、T30A、M48I、R66K、V67A、I69L、R71V及びT73Kを有していた。置換の付番は、Kabatによる。
【0253】
軽鎖設計
親抗体は、H0L0抗体のDIQMと比較して配列DVVMを有する。残基V2は、A25と疎水性結合を形成する。残基I2は、パラトープ表面に露出している可能性があるが、パラトープの構成への影響は、予測できない。I2は、A25と疎水性結合を形成せず、これによりCDR-L1の位置がわずかに変わり得る。したがって、残基2のイソロイシンは、バリンで置換された。
【0254】
親抗体は、H0L0抗体のPSRと比較して配列PDRを有する。残基R61は、回転異性体の位置を占める。ループは、同じ方向を向いているように見えるが、重なり合っていない(ドメイン全体のグローバル翻訳に対応する横方向翻訳)。親抗体では、D60は、CDR-L2-R54と塩橋及び水素結合を形成する。H0L0抗体では、残基S60は、R54と接触しない。R54は、回転異性体の位置を占める。D60との接触は、CDR-L2残基に特定の適切な位置を課すために重要であり得る。したがって、H0L0抗体の60位のアスパラギン酸残基は、セリンで置換された。
【0255】
親抗体は、H0L0抗体のGSGと比較して配列GYGを有する。残基Y67がパラトープに寄与するかどうかを調べるために、H0L0抗体のセリンをチロシンに置換した。
【0256】
親抗体は、H0L0抗体のYYCと比較して配列YFCを有する。Y87は、隣接する残基と水素結合を形成するように見えないが、この残基の役割を調べ、H0L0の87位のチロシンをフェニルアラニンで置換した。
【0257】
配列番号33に示されるアミノ酸配列を有する第1の軽鎖変異体(L1)は、置換S67Yを有していた。配列番号34に示されるアミノ酸配列を有する第2の軽鎖(L2)変異体は、置換S60D及びS67Yを有していた。配列番号35に示されるアミノ酸配列を有する第3の軽鎖変異体(L3)は、置換I2V、S60D及びS67Yを有していた。配列番号36に示されるアミノ酸配列を有する第4の軽鎖変異体(L4)は、置換I2V、S60D、S67Y及びY87Fを有していた。
【0258】
それぞれの重鎖(表1の「H」鎖)及び軽鎖(表1の「L」鎖)可変領域のアミノ酸配列を以下の表1に示す。
【0259】
【表1】
【0260】
以下の表2に示す重鎖及び軽鎖の組み合わせを有する抗体が産生された。
【0261】
【表2】
【0262】
実施例2:SPRによる可溶性CD73タンパク質への結合
実施例1の表2の抗体の結合は、ヒト可溶性二量体CD73タンパク質への結合について試験され、クローン化され、産生され、精製された。ヒト化変異体の親和性並びに結合定数及び解離定数は、SPR分析によって評価された。表3は、計算された全ての定数をまとめたものである。
【0263】
完全ヒトIGHV1-3*01及びIGHJ4*01重鎖フレームワーク並びに完全ヒトIGKV1-33*01及びIGKJ2*01軽鎖フレームワークを有するH0L0抗体は、65nMのKDをもたらした。表3に示すように、ヒト化変異体HxL0(H1L0、H2L0、H3L0及びH4L0)は、他の変異体と同等の結合定数を示したが、より速い解離プロファイルを有する。したがって、HxL0変異体のKDは、他の全ての変異体で観察されたものよりも高かった(表3)。したがって、ヒト化変異体への完全ヒトIGKV1-33*01及びIGKJ2*01軽鎖アミノ酸配列の導入は、CD73に対するヒト化Abに対する親和性に有害であるように思われる。
【0264】
しかし、他の全てのヒト化変異体は、キメラ親3C12抗体(0.68nM)と同様のCD73に対する親和性を有していた。とりわけ、完全ヒト未修飾IGHV1-3*01及びIGHJ4*01重鎖フレームワークを含む全ての重鎖は、CD73への高親和性結合を提供した。
【0265】
【表3】
【0266】
実施例3:フローサイトメトリーによるヒトCD73を発現する細胞への結合
表2のヒト化抗体の結合は、フローサイトメトリーによってCD73発現細胞への結合について試験された。図1に示すように、試験した全てのAbは、ヒトCD73タンパク質を認識した。huCD73に対する結合の有効性は、親抗体よりも効率が低いH0L0、H2L0及びH3L0を除き、ヒト化変異体とキメラ形式との間で類似していた。これらの観察結果は、HxL0変異体(H1L0、H2L0、H3L0及びH4L0)に対する親和性がより低いことを示したSPRデータと一致している。その結果、未修飾の完全ヒトIGHV1-3*01及びIGHJ4*01重鎖フレームワークを含む全ての重鎖は、親抗体と同等のCD73発現細胞への優れた結合を提供した。
【0267】
実施例4:組換え可溶性ヒトCD73タンパク質を用いたインビトロ酵素アッセイ
組換えCD73タンパク質の酵素活性を阻害するヒト化変異体の有効性を親抗体と比較した(図2)。
【0268】
図2(パネルA)に示すように、ATP及びCTG基質を混合すると、高レベルの発光が測定された。AMPを反応ミックスに添加すると、CTG反応が阻害され、発光が減少した。AMPを加水分解するrhCD73タンパク質の存在下で発光レベルが回復した。ヒト化変異体によるCD73酵素活性の遮断を図2に示す。
【0269】
結果は、親抗体と比較して活性が低下したL0変異体(H0L0、H1L0、H2L0、H3L0及びH4L0)を除いて、全てのヒト化変異体が可溶性CD73タンパク質の酵素活性の強力な阻害を示すことを示した。しかし、驚くべきことに、ほとんどの抗体では、効力は親抗体の効力よりも幾分低かった。H1L4及び全てのH4変異体のみが親抗体と同様の効力で酵素活性を遮断した。
【0270】
これらの実験は、IGKV1-33*01及びIGKJ2*01配列をアクセプターフレームワークとして使用した場合、重鎖の逆突然変異の数とは無関係に、軽鎖に突然変異が存在しないことにより、可溶性CD73タンパク質の活性を阻害する能力が有意に減少することを示した。
【0271】
CD73タンパク質活性遮断の最高の有効性は、H1L4変異体及びH4L0以外のH4Lx変異体(すなわちH4L1、H4L2、H4L3及びH4L4)で達成された。
【0272】
実施例5:T細胞増殖アッセイ
高い抑制効果を誘導し、親3C12抗体の存在下で増殖の回復を可能にするAMPの濃度を確立するために、T細胞増殖を阻害できるAMPの濃度を2つの一連の実験で試験した。濃縮されたリンパ球画分は、抗CD3/抗CD28ビーズ及びある用量範囲のAMP(50μM~1.6mM~50μM)の存在下で3日間インキュベートされた。CD4+及びCD8+T細胞の回復の最高の割合は、2つの一連の実験において、それぞれ0.2~0.8mM及び0.2~1mMのAMPで観察された。
【0273】
ヒト化変異体及び親抗体の能力を2つの一連の実験で評価し、0.8mMのAMPによって阻害されたT細胞増殖を回復する能力を比較した。
【0274】
図3に示すように、HxL0変異体を除いて、キメラ及びヒト化抗体は、T細胞増殖を回復することができた(CD4+及びCD8+亜集団の両方について)。増殖を回復するそれらの能力にもかかわらず、ヒト化変異体の大部分の効力は、親抗体と比較して低かった。H0L4、H1L4及びH4L4変異体は、親抗体の完全な効力を達成しなかったものの、親抗体と同様のレベルの効力を示した。
【0275】
第2の実験は、L0変異体がアイソタイプ対照に置き換えられたことを除いて、同じ実験条件で実施された。結果を図4に示す。
【0276】
図3に示したものと同様に、HxL0変異体を除いて、キメラ及びヒト化抗体は、T細胞増殖を回復することができた(CD4+及びCD8+亜集団の両方について)。しかし、増殖を回復するそれらの能力にもかかわらず、ヒト化変異体の大部分の効力は、この場合にも親抗体と比較して幾分低かった。H0L4、H1L4及びH4L4変異体は、親抗体の効率に最も近づいた。
【0277】
実施例6:新しいフレームワーク及びCDR変異体の設計
驚くべきことに、前述の例は、フローサイトメトリー滴定とCD73の酵素活性の阻害における効力との間に直接的な相関関係がないことを示した。興味深いことに、H1、H2、H3及びH4変異体は、SPRアッセイ及びCD73発現細胞のフローサイトメトリーにおけるCD73組換えタンパク質への結合親和性に基づいて本質的に区別できなかったが、H2及びH3変異体は、実施例5のT細胞増殖を回復する能力において、H4変異体よりも機能アッセイにおいて効力が低かった。1つの可能性は、CD73を阻害する効力に有害であった(しかし、CD73に対する結合親和性には有害でなかった)H2及びH3フレームワークに導入された突然変異が、H4変異体フレームワークに導入された突然変異によって代償されたことである。その結果、重鎖フレームワーク及び/又はCDR残基に置換を有する新しい変異体が設計された。これらの観察に基づいて、H2、H3及びH4鎖で行われた置換は、機能に重要であると考えられる残基、機能に影響を与えない可能性が高い残基、機能に負の影響を与える残基及び機能を回復させる残基のいずれかに分類された。
【0278】
以下に示すアミノ酸配列(配列番号37;アミノ酸置換は太字、Kabat CDRは下線)を有する「H4+」と呼ばれる新しい重鎖変異体が設計され、これは、(それぞれ配列番号33、34、35及び36の)L1、L2、L3及びL4軽鎖と組み合わされて、4つの新しい抗体、H4+L1、H4+L2、H4+L3及びH4+L4を生成した。
【0279】
H4+VH:
【化13】
【0280】
L234A/L235E/G237A/A330S/P331S置換を有するヒトIgG1 Fcドメインを含む完全なH4+重鎖のアミノ酸配列を以下に示す。
【化14】
【0281】
H4+L1抗体には、ヒトCkappaドメインを含むL1軽鎖が含まれており、その完全な配列を以下に示す。
【化15】
【0282】
同じフレームワーク置換が、重鎖と軽鎖のCDRが異なる抗体にどのように影響するかを調べるために、共通の重鎖及び4つの異なる軽鎖の1つを有する4つの抗体のシリーズをさらに産生した。「2H4+」と呼ぶ共通の重鎖は、HCDR2のKabat位置59(Q59)のグルタミン(すなわちH4+鎖と比較したL59Q置換)、HCDR2のKabat残基60(K60)のリシン(すなわちH4+鎖と比較したT60K置換)及びHCDR3のKabat位置97(N97)のアスパラギン(すなわちH4+鎖と比較したG97N置換)を有していた。2L1、2L2、2L3及び2L4と呼ぶ4つの軽鎖は、それぞれL1、L2、L3及びL4鎖と同じフレームワーク残基を有し、LCDR1のKabat位置30(T30)のスレオニン(すなわちL1~L4鎖と比較したS30T置換)及びLCDR2のKabat残基53(N53)のアスパラギン(すなわちL1-L4鎖と比較したT53N置換)の存在でL1~L4鎖からのそのCDRと異なっていた。得られた4つの新しい抗体は、以下で2H4+2L1、2H4+2L2、2H4+2L3及び2H4+2L4と呼ぶ(表4を参照されたい)。マウスフレームワークでCDRを共有する親抗体は、2HP及び2LPと呼ばれる重鎖及び軽鎖の可変領域(以下の表5に示すアミノ酸配列)で産生された。
【0283】
実施例1のように、全ての抗体は、Fc受容体結合を減少させるためにL234A/L235E/G237A/A330S/P331S置換を有するヒトIgG1アイソタイプとして産生された。
【0284】
【表4】
【0285】
【表5】
【0286】
L234A/L235E/G237A/A330S/P331S置換を有するヒトIgG1 Fcドメインを含む完全な2H4+重鎖のアミノ酸配列を以下に示す。
【化16】
【0287】
ヒトCkappaドメインを含む抗体の完全な2L1軽鎖のアミノ酸配列を以下に示す。
【化17】
【0288】
実施例7:組換えCD73タンパク質を用いたインビトロ酵素アッセイの新しい変異体の研究
実施例4に記載の方法を使用して、組換えCD73タンパク質の酵素活性を阻害するヒト化変異体の有効性を親抗体と比較した。実施例6で産生された全ての新しいヒト化変異体は、CD73タンパク質の活性を強力に阻害した。
【0289】
H4+Lx抗体は、その親抗体と同程度に効率的でであった。さらに、全ての2H4+2Lx(2H4+L1、2H4+L2、2H4+L3及び2H4+L4)変異体は、H4+Lx変異体と比較してCD73阻害の効力の増加を示した。2H4+2Lx変異体は、親2HP2LP抗体と同様の効果でCD73の活性を阻害した。
【0290】
異なる濃度のCD73タンパク質(50、100、200、400ng/mL)を使用してさらなる実験を実施した。この実験の目的は、大量のCD73タンパク質の活性を遮断するヒト化抗体の能力を研究することであった。この場合にも、2H4+2Lx変異体は、親2HP2LP抗体と同程度に強力であった。
【0291】
実施例8:カニクイザルCD73タンパク質に対する有効性に関する新しい変異体の研究
組換えrec cyCD73タンパク質に対する実験は、2H1Lx及び2H4+2Lx変異体を使用して実施された。実験条件は、使用したcyCD73タンパク質の濃度(400ng/mL)を除いて、ヒトタンパク質での実験と同じであった。
【0292】
cyCD73タンパク質の酵素活性を遮断するヒト化変異体の有効性は、親(キメラ)抗体の有効性と同じであった。
【0293】
実施例9:T細胞増殖アッセイにおける新しい変異体の研究
異なる抗体のヒト化変異体は、AMPによって阻害されたT細胞増殖を回復する能力について試験された。
【0294】
図5Aは、T細胞増殖に対するAMPの阻害効果を示す。全てのヒト化変異体は、T細胞増殖に対するAMPの阻害効果を強力に遮断した(図5B及びC)。大半のヒト化変異体は、一般に、AMP媒介性T細胞抑制を逆転させるうえでキメラ親対応物と同程度に効率的であるようであるが、2H4+2Lx変異体は、全ての変異体の中で最も強力であり、驚くべきことに、AMPの抑制効果を遮断することにおいて親2HP2LP抗体よりもさらに強力であった。
【0295】
実施例10:2人のヒトドナーでのT細胞増殖アッセイにおける新しい変異体の比較研究
以前に得られた結果によると、2H4+2Lxヒト化変異体は、さらなる一連のT細胞増殖実験でさらに特徴付けられた。
【0296】
図6A及び6Bは、それぞれ2人の健常ドナーからの細胞を使用したT細胞増殖アッセイで得られた結果を示す。以前に観察されたように、2H4+2Lx変異体は、それぞれ親2HP2LPよりも強力にT細胞増殖を回復した(図6A及びB、右パネル)。異なる2H4+2Lx変異体間で明確な違いは観察されなかった。したがって、この場合にも、2H4+2Lx変異体は、AMPの抑制効果を遮断することにおいて親の2HP2LP抗体よりもさらに強力であった。
【0297】
総合すると、T細胞増殖アッセイで得られた結果は、H4+及びH4+鎖のフレームワークを有するヒト化変異体が最も強力な抗体変異体であり、2H4+2Lx変異体が全体として全ての抗体の中で最大の効力を有することを示す。
【0298】
実施例11:同種混合リンパ球反応(MLR)アッセイにおける新しい変異体の研究
2H4+2Lx抗体変異体は、T細胞増殖アッセイで以前に得られた結果を確認するために同種MLRで試験された。T細胞増殖は、2つのヒトドナー試料について図7に示すように、100μMのATP(CD39によってADP及びAMPに分解される)を添加することによって阻害された。
【0299】
図7の左パネルに示すように、ATPの添加によりT細胞の増殖が阻害された。T細胞の増殖は、抗CD73抗体の存在下で回復した(中央及び右側のパネル)。全ての2H4+2Lxヒト化変異体は、親2HP2LP抗体と同等の又はそれより優れた有効性でT細胞増殖を回復させることができた。全ての2H4+2Lx変異体は、これらの設定でT細胞増殖を回復するために親2HP2LPよりも強力であった。これらの結果は、AMPを阻害剤として使用したT細胞増殖アッセイで得られた結果と一致していた。
【0300】
要約すると、H4+及び2H4+可変領域に導入された置換は、L1及び2L1鎖(及びL2、L3、L4、2L2、2L3、2L4鎖)に導入された置換と共に、それらの親マウス抗体の重要な機能的特性を回復し(及びさらに改善し)、さらにヒトフレームワーク領域を有するようであるため、ヒトにおける免疫原性のリスクがより低い。2H4+2Lx抗体は、全ての中で最も強力である。
【0301】
CD73に対する結合親和性がCD73活性の機能的阻害の効力と直接相関しなかったという驚くべき発見に関して、1つの考えられる説明は、これらの抗体がCD73に結合してアロステリック阻害剤として作用するという事実に関連している可能性がある。抗体は、インタクトな全長抗体とCD73二量体との間で1:1の化学量論で二量体内結合モードにおいてCD73に結合する。CD73の以前の構造研究は、その酵素活性が酵素の開放(非活性)及び閉鎖(活性、基質結合)状態を定義する広範なN末端ドメイン回転を必要とすることを示した(Knapp et al.,2012 Structure 20(12):2161-73)。CD73の外部ドメインと複合体を形成した親抗CD73F(ab)の結晶構造に基づき、無傷の抗体とCD73二量体との1:1化学量論を考慮すると、立体障害により、無傷の抗体がCD73開放配座異性体に結合する可能性が低くなること予想される。代わりに、無傷の抗体は、AMPが加水分解されない中間状態でCD73を拘束する。したがって、CD73は、エネルギー的に不安定な立体構造にあるときに抗体に結合するため、ここでの抗体構造の剛性を変更する小さい変化は、CD73二量体の立体構造の変化に適応する抗体の能力に影響を与える可能性がある。結果として、これらの変化は、基質の存在下でCD73の活性を阻害する抗体の能力に影響を与え得る。しかし、抗体構造のこれらの小さい変化は、SPR又は基質の非存在下でさらに実行される他の結合アッセイで観察されないであろう。本明細書に記載の重鎖及び軽鎖可変領域は、ヒトフレームワークを組み込んでいる間、親抗体の完全なCD73相互作用動態を捕捉することができる(さらにはそれを改善することができる)ようである。
【0302】
本明細書中で引用される、刊行物、特許出願及び特許を含む全ての参考文献は、本明細書中の他の箇所でなされる特定の文献のいずれかの個別に提供される組み込みにかかわらず、(法律によって許される最大の限度で)各参考文献が個々に及び具体的に参照により組み込まれることが示され、本明細書中でその全体において記載されているかのように、同定度に参照により全体的に本明細書に組み込まれる。
【0303】
「1つの(a)」及び「1つの(an)」並びに「その」という語及び同様の指示対象の使用は、本明細書中で別段の指示がない限り又は文脈に明らかに矛盾しない限り、単数及び複数の両方を包含するものと解釈すべきである。
【0304】
別段の指定がない限り、本明細書中で提供される全ての厳密値は、対応する近似値の代表である(例えば、特定の要因に関して提供される全ての代表的厳密値又は測定値は、必要に応じて、「約」により修飾される対応する近似測定値も提供するとみなされ得る)。
【0305】
1つ又は複数の要素に関する「含む」、「有する」、「包含する」又は「含有する」などの語を使用した本明細書における何らかの態様又は実施形態の本明細書中の記述は、別段の指定がない限り又は内容に明らかに矛盾しない限り、その特定の1つ又は複数の要素「からなる」、「から基本的になる」又はそれを「実質的に含む」、本明細書における同様の態様又は実施形態に対する支持を提供するものとする(例えば、特定の要素を含む場合の本明細書中に記載の組成物は、別段の指定がない限り又は内容に明らかに矛盾しない限り、その要素からなる組成物も記載するものとしても理解されるべきである)。
【0306】
本明細書中で提供されるあらゆる実施例又は代表的な語(例えば、「など」)の使用は、本発明を単により良好に明らかにするものとして意図され、別段の主張がない限り、本発明の範囲において限定を提起しない。本明細書中のいかなる語も、何らかの請求項に記載されていない要素を本発明の実施に必須であるものとして示すものと解釈すべきではない。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図7
【配列表】
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