(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-31
(45)【発行日】2024-08-08
(54)【発明の名称】吸着装置および動力工具
(51)【国際特許分類】
B25B 23/10 20060101AFI20240801BHJP
B25F 3/00 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
B25B23/10 E
B25F3/00 Z
(21)【出願番号】P 2022038331
(22)【出願日】2022-03-11
【審査請求日】2023-09-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000227386
【氏名又は名称】日東工器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100175983
【氏名又は名称】海老 裕介
(72)【発明者】
【氏名】岡本 太志
(72)【発明者】
【氏名】初見 雅人
【審査官】マキロイ 寛済
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-539812(JP,A)
【文献】特開2005-059144(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0251094(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B 23/08 - 23/10
B23P 19/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータを有する工具本体と、前記工具本体に回転可能に保持されて前記モータによって回転軸線の周りで回転可能に駆動されるビットホルダと、前記ビットホルダの周囲に配置されて、前記ビットホルダに挿入されたドライバビットを前記ビットホルダに対して前記回転軸線の方向で固定する固定位置と、前記ドライバビットが前記ビットホルダから取り外し可能となる固定解除位置との間で操作可能とされたビット固定スリーブとを備える動力工具のための吸着装置であって、
前記工具本体に固定される吸着装置本体であって、前端開口、前記前端開口から後方に延びて前記動力工具との間に内部空間を画定する筒状壁部、及び前記内部空間と連通し外部真空発生源に接続されるようにされた接続開口部を有する吸着装置本体と、
先端吸着開口から後方に延びるビット通路を画定
する筒状の吸着ノズル、及び前記吸着ノズルを保持する保持部材を有し、前記ビットホルダに取り付けられたドライバビットが該ビット通路内に位置するようにして前記吸着装置本体に着脱可能に取り付けられる吸着先端部材
であって、前記保持部材に対する前記吸着ノズルの位置を変えて前記先端吸着開口の位置を調節可能とされた吸着先端部材と、
を備え、
前記吸着先端部材が前記吸着装置本体に取り付けられたときに、前記接続開口部から前記内部空間及び前記ビット通路を通って前記先端吸着開口にまで至る吸引流路が画定されて、前記動力工具のビット固定スリーブが前記吸引流路内に収容されるようにされ、
前記吸着先端部材が前記吸着装置本体から取り外されたときに、前記ビット固定スリーブを直接操作して前記固定解除位置としドライバビットを前記ビットホルダから取り外すことが可能となるようにされた、吸着装置。
【請求項2】
前記保持部材が内周面に雌ねじ部を有し、前記吸着ノズルが外周面に雄ねじ部を有し、前記吸着ノズルは前記雄ねじ部を前記雌ねじ部に螺合することにより前記保持部材に取り付けられており、前記吸着ノズルを前記保持部材に対して回転させることにより前記保持部材に対する前記吸着ノズルの位置が変わるようにした、請求項1に記載の吸着装置。
【請求項3】
前記吸着先端部材が、
外周面、及び前記外周面上で周方向に延びるように形成された環状係止溝を有し、
前記吸着ノズルを前記保持部材を介して保持し、前記吸着装置本体の前記筒状壁部の内側に挿入されるようにされた筒状部材、
を
さらに有し、
前記吸着装置本体が、
前記筒状壁部に形成された施錠子保持孔と、
前記施錠子保持孔内に保持された施錠子であって、前記筒状壁部の内側に挿入された前記筒状部材の前記環状係止溝に係合するように前記筒状壁部の内周面から径方向内側に突出した係止位置と、前記環状係止溝との係合が解除される、前記係止位置よりも径方向外側の係止解除位置との間で変位可能とされた施錠子と、
前記筒状壁部の周囲に配置されて、前記施錠子を前記係止位置に保持する連結位置と、前記施錠子が前記係止解除位置に変位することを許容する連結解除位置との間で変位可能とされた連結スリーブと、
を有する、請求項1
又は2に記載の吸着装置。
【請求項4】
前記吸着装置本体が前記ビット固定スリーブを内側に収容するようにされており、前記吸着先端部材を前記吸着装置本体から取り外したときに、前記吸着装置本体の前記前端開口から前記ビット固定スリーブに直接アクセス可能となるようにされた、請求項1
乃至3の何れか一項に記載の吸着装置。
【請求項5】
ドライバビットが着脱可能に取り付けられるようにされた動力工具であって、
モータを有する工具本体と、
前記工具本体に回転可能に保持されて前記モータによって回転軸線の周りで回転可能に駆動されるビットホルダと、
前記ビットホルダの周囲に配置されて、前記ビットホルダに挿入されたドライバビットを前記ビットホルダに対して前記回転軸線の方向で固定する固定位置と、前記ドライバビットが前記ビットホルダから取り外し可能となる固定解除位置との間で操作可能とされたビット固定スリーブと、
前記工具本体に設けられた、請求項1乃至
4の何れか一項に記載の吸着装置と、
を備える、動力工具。
【請求項6】
前記ビットホルダ内に配置されて、前記ビットホルダに取り付けられたドライバビットを先端側に付勢するようにされたスプリングをさらに備える、請求項
5に記載の動力工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライバビットが着脱可能に取り付けられるようにされた動力工具のための吸着装置、及びそのような吸着装置を備えた動力工具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に示されるように、ドライバビットが着脱可能に取り付けられるようにされた電動ドライバがある。また、例えば特許文献2に示されるように、ドライバビットの先端にねじを真空吸着して保持するための吸着装置を備える電動ドライバがある。吸着装置は、通常、電動ドライバに取り付けられた本体部分と、本体部分に取り付けられた吸着ノズル(真空パイプ)とを有する。吸着ノズルは、ドライバビットを内部に収容してドライバビットに沿って延びる筒状の部材である。本体部分には外部の真空発生源に接続される接続開口部が設けられ、この接続開口部と吸着ノズルとは流体連通している。真空発生源により空気を吸引すると、吸着ノズルの先端に真空吸着力が生じてドライバビットの先端にねじが吸着保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開平5-9863号公報
【文献】特開平6-39653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ドライバビットが着脱可能に取り付けられる電動ドライバなどの動力工具は、締付対象となるねじやナットに合せてドライバビットを交換することがある。しかしながら、吸着装置を備える場合には、ドライバビットは吸着装置の吸着ノズル内に収容されているため、ドライバビットを交換するためには吸着ノズルを含む吸着装置全体を取り外す必要がある。また吸着装置を取り外す際には、真空発生源に繋がるチューブや配管を取り外す必要が生じる場合もある。そのため、ドライバビットの交換作業は時間のかかる煩雑なものとなる。
【0005】
そこで本発明は、上記従来技術の問題に鑑み、ドライバビットの交換を容易に行えるようにした吸着装置、及びそのような吸着装置を備えた動力工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明は、
モータを有する工具本体と、前記工具本体に回転可能に保持されて前記モータによって回転軸線の周りで回転可能に駆動されるビットホルダと、前記ビットホルダの周囲に配置されて、前記ビットホルダに挿入されたドライバビットを前記ビットホルダに対して前記回転軸線の方向で固定する固定位置と、前記ドライバビットが前記ビットホルダから取り外し可能となる固定解除位置との間で操作可能とされたビット固定スリーブとを備える動力工具のための吸着装置であって、
前記工具本体に固定される吸着装置本体であって、前端開口、前記前端開口から後方に延びて前記動力工具との間に内部空間を画定する筒状壁部、及び前記内部空間と連通し外部真空発生源に接続されるようにされた接続開口部を有する吸着装置本体と、
先端吸着開口から後方に延びるビット通路を画定し、前記ビットホルダに取り付けられたドライバビットが該ビット通路内に位置するようにして前記吸着装置本体に着脱可能に取り付けられる吸着先端部材と、
を備え、
前記吸着先端部材が前記吸着装置本体に取り付けられたときに、前記接続開口部から前記内部空間及び前記ビット通路を通って前記先端吸着開口にまで至る吸引流路が画定されて、前記動力工具のビット固定スリーブが前記吸引流路内に収容されるようにされ、
前記吸着先端部材が前記吸着装置本体から取り外されたときに、前記ビット固定スリーブを直接操作して前記固定解除位置としドライバビットを前記ビットホルダから取り外すことが可能となるようにされた、吸着装置を提供する。
【0007】
当該吸着装置においては、吸着先端部材を吸着装置本体から取り外すことにより、外部真空発生源に接続される吸着装置本体を電動工具の工具本体に固定した状態のままで、ビット固定スリーブを直接操作してドライバビットを取り外すことができるようになっている。そのため、ビットホルダの交換を容易に行なうことが可能となる。
【0008】
また、
前記吸着先端部材が、
外周面、及び前記外周面上で周方向に延びるように形成された環状係止溝を有し、前記吸着装置本体の前記筒状壁部の内側に挿入されるようにされた筒状部材と、
前記筒状部材に保持され、前記ビット通路を画定する筒状の吸着ノズルと、
を有し、
前記吸着装置本体が、
前記筒状壁部に形成された施錠子保持孔と、
前記施錠子保持孔内に保持された施錠子であって、前記筒状壁部の内側に挿入された前記筒状部材の前記環状係止溝に係合するように前記筒状壁部の内周面から径方向内側に突出した係止位置と、前記環状係止溝との係合が解除される、前記係止位置よりも径方向外側の係止解除位置との間で変位可能とされた施錠子と、
前記筒状壁部の周囲に配置されて、前記施錠子を前記係止位置に保持する連結位置と、前記施錠子が前記係止解除位置に変位することを許容する連結解除位置との間で変位可能とされた連結スリーブと、
を有するようにすることができる。
【0009】
このような構成により、吸着装置本体に対する吸着先端部材の着脱を迅速且つ容易に行なうことが可能となる。
【0010】
また、前記吸着装置本体が前記ビット固定スリーブを内側に収容するようにされており、前記吸着先端部材を前記吸着装置本体から取り外したときに、前記吸着装置本体の前記前端開口から前記ビット固定スリーブに直接アクセス可能となるようにすることができる。
【0011】
本発明はさらに、
ドライバビットが着脱可能に取り付けられるようにされた動力工具であって、
モータを有する工具本体と、
前記工具本体に回転可能に保持されて前記モータによって回転軸線の周りで回転可能に駆動されるビットホルダと、
前記ビットホルダの周囲に配置されて、前記ビットホルダに挿入されたドライバビットを前記ビットホルダに対して前記回転軸線の方向で固定する固定位置と、前記ドライバビットが前記ビットホルダから取り外し可能となる固定解除位置との間で操作可能とされたビット固定スリーブと、
前記工具本体に設けられた、上述の何れかの吸着装置と、
を備える、動力工具を提供する。
【0012】
この場合には、前記ビットホルダ内に配置されて、前記ビットホルダに取り付けられたドライバビットを先端側に付勢するようにされたスプリングをさらに備えるようにすることができる。
【0013】
以下、本発明に係る吸着装置及び動力工具の実施形態を添付図面に基づき説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る電動ドライバの部分断面図である。
【
図2】吸着装置を取り外した状態における、
図1の電動ドライバの工具本体の断面図である。
【
図4】
図1の電動ドライバの先端部分の断面図である。
【
図5】吸着先端部材を吸着装置本体から取り外した状態を示す、
図1の電動ドライバの先端部分の断面図である。
【
図6】ドライバビットを取り外した状態を示す、
図1の電動ドライバの先端部分の断面図である。
【
図7】本発明の第2の実施形態に係る電動ドライバの先端部分の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1に示すように、本発明の第1の実施形態に係る動力工具10は、工具本体11と、工具本体11に取り付けられた吸着装置50とを備える電動ドライバ10である。
【0016】
図2に示すように、電動ドライバ10の工具本体11は、基端側の第1ハウジング12aと先端側の第2ハウジング12bとからなる本体ハウジング12を有する。第1ハウジング12a内には、電動モータ14と、電動モータ14に連結された遊星歯車機構16とが設けられている。また、第2ハウジング12b内には、遊星歯車機構16を介して電動モータ14に駆動連結されたビットホルダ18が設けられている。ビットホルダ18は、工具本体11に対して回転軸線Rの周りで回転可能に配置され、電動モータ14によって回転軸線Rの周りで回転駆動されるようになっている。ビットホルダ18は、先端開口20から回転軸線Rに沿って後方(図で見て上方)に延びる挿入孔22を画定する周壁部24と、周壁部24を径方向に貫通する施錠子保持孔26とを有する。当該電動ドライバ10はさらに、施錠子保持孔26内に保持された施錠子28と、ビットホルダ18の周壁部24の外側に配置されたビット固定スリーブ30とを備える。施錠子保持孔26は、その周壁部24の周方向で整列して相互に間隔をあけて配置されている。本実施形態においては、施錠子保持孔26及び施錠子28はそれぞれ、
図3に示すように周方向で等間隔に3つ配置されている。ビットホルダ18の挿入孔22内には、回転軸線Rの方向で変位可能に配置された押圧部材32と、押圧部材32の後方に配置されて押圧部材32を先端側(図で見て下側)に向かって付勢するスプリング34が配置されている。
【0017】
ドライバビットBの先端側部分Baは断面円形の外形を有するが、ドライバビットBの後方部分Bbは
図3に示すように断面六角形の外形となっている。また、挿入孔22も先端側部分22aは断面円形であるが、後方部分22bはドライバビットBの六角形状に対応する六角形状となっている。このようにドライバビットBの六角形状の後方部分Bbが挿入孔22の対応する六角形状の後方部分22bに挿入されることにより、ドライバビットBはビットホルダ18に対して回転方向で固定され、ビットホルダ18が回転駆動したときにビットホルダ18も一緒に回転する。
【0018】
図2に示すようにドライバビットBが挿入孔22に挿入されてビットホルダ18に取り付けられた状態では、各施錠子28が周壁部24の内周面から径方向内側に突出してドライバビットBの断面円弧状の環状係止溝Bcに係止した係止位置となり、ビット固定スリーブ30が施錠子28を係止位置に保持する固定位置となる。これにより、ドライバビットBはビットホルダ18に対して回転軸線Rの方向で固定される。このとき、押圧部材32がドライバビットBの後端に当接し、スプリング34が押圧部材32を介してドライバビットBを先端側に付勢する。これにより、ドライバビットBの環状係止溝Bcが各施錠子28に後方から押し付けられた状態となり、ドライバビットBの先端Bdが回転軸線Rの方向で一定の位置となる。また、断面円弧状の環状係止溝Bcは3つの施錠子28に対して径方向でも押し付けられるため、施錠子28と係合する位置においてドライバビットBは挿入孔22に対して調芯される。
【0019】
図4に示すように、吸着装置50は、工具本体11の本体ハウジング12に止めねじ52で固定された吸着装置本体54と、吸着装置本体54に着脱可能に取り付けられた吸着先端部材56と、を備える。吸着装置本体54は、前端開口58(
図5)から後方に延びて電動ドライバ10のビット固定スリーブ30との間に内部空間59を画定する筒状壁部60と、内部空間59に連通し外部真空発生源(図示しない)にチューブや配管などを介して接続される接続開口部62とを有する。吸着先端部材56は、先端吸着開口64から後方に延びるビット通路66を画定する吸着ノズル68を有し、ドライバビットBがビット通路66内に位置するようになっている。吸着先端部材56が吸着装置本体54に取り付けられている状態では、接続開口部62から内部空間59及びビット通路66を通って先端吸着開口64にまで至る吸引流路69が形成される。また、ビット固定スリーブ30は吸引流路69内に収容される。外部真空発生源により空気を吸引した状態でドライバビットBの先端Bdにねじを嵌めると、ねじが吸着されてドライバビットBの先端Bdに保持されるようになる。
【0020】
吸着装置本体54はさらに、筒状壁部60に形成された施錠子保持孔70と、施錠子保持孔70内に保持された施錠子72と、筒状壁部60の周囲に配置された連結スリーブ74とを備える。筒状壁部60にはL字状の配管部材76が取り付けられており、その端部が接続開口部62となっている。
図4の連結状態においては、吸着先端部材56の後端部分が筒状壁部60内に挿入されて吸着先端部材56が吸着装置本体54に連結されている。具体的には、施錠子72が吸着先端部材56の環状係止溝78に係合するように筒状壁部60の内周面から径方向内側に突出した係止位置にあり、その施錠子72を連結位置にある連結スリーブ74が径方向外側から押さえて係止位置に保持することにより、吸着先端部材56が吸着装置本体54に連結された状態が維持されている。
【0021】
吸着先端部材56はさらに、吸着装置本体54の筒状壁部60内に部分的に挿入される筒状部材80と、筒状部材80に対して回転軸線Rの方向で変位可能に配置されて吸着ノズル68を保持する保持部材82と、筒状部材80と保持部材82との間に配置されて保持部材82を筒状部材80に対して先端側に付勢するスプリング84と、吸着ノズル68を保持部材82に固定するためのロックナット86とを備える。環状係止溝78は、筒状部材80の外周面上で周方向に延びるように形成されている。また、筒状部材80の外周面上にはOリング88が配置されている。
図4の連結状態において、Oリング88は、吸着先端部材56の筒状部材80と吸着装置本体54の筒状壁部60との間で圧縮されてそれらの間を密封している。
【0022】
保持部材82の内周面には雌ねじ部90が形成され、吸着ノズル68の外周面には雄ねじ部92が形成されている。吸着ノズル68はその雄ねじ部92を雌ねじ部90に螺合することにより保持部材82に取り付けられている。また、吸着ノズル68の雄ねじ部92にはロックナット86が螺合されており、ロックナット86を保持部材82に締付けることにより吸着ノズル68を保持部材82に対して固定するようになっている。ロックナット86を緩めた状態とすると、吸着ノズル68を保持部材82に対して回転させて保持部材82に対する吸着ノズル68の位置を変えることができるようになる。これにより、装着されているドライバビットBに合わせて吸着ノズル68の先端吸着開口64の位置を調節することができる。また、吸着ノズル68は保持部材82を介して筒状部材80に対して変位可能に保持されているため、例えば、ねじ締め作業を行なう際にねじが螺合される部材に吸着ノズル68の先端が当たるなどして吸着ノズル68が押されたときに、吸着ノズル68はスプリング84を圧縮しながら保持部材82とともに後退することができる。これにより、ねじ締め作業時に、ねじが螺合される部材に吸着ノズル68が干渉して適切なねじ締めが行えなくなることがないようにしている。
【0023】
図5に示すように、連結スリーブ74を後方に変位させて連結解除位置とすると、施錠子72は、連結スリーブ74による径方向外側からの支持がなくなり、径方向外側に変位することが許容された状態となる。この状態で吸着先端部材56を先端側に引っ張ると施錠子72は係止位置から径方向外側に変位して環状係止溝78との係合が解除される係止解除位置となる。これにより、吸着先端部材56を吸着装置本体54から取り外すことができる。吸着先端部材56が取り外されると、吸着装置本体54の前端開口58からビット固定スリーブ30に直接アクセスすることができるようになる。
【0024】
図6に示すように、ビット固定スリーブ30を直接操作して後方に変位させて固定解除位置とすると、施錠子28は、係止位置から径方向外側に変位してドライバビットBの環状係止溝Bcとの係合が解除される係止解除位置にまで変位可能となる。この状態でドライバビットBをビットホルダ18の挿入孔22から引き抜くことによりドライバビットBを取り外すことができる。なお、当該実施形態においては、ドライバビットBは、押圧部材32を介してスプリング34によって先端側に付勢されているため、ビット固定スリーブ30を固定解除位置とすることによりドライバビットBはスプリング34の付勢力によりビットホルダ18から押し出される。また、ドライバビットBが取り外された状態では、押圧部材32が施錠子28の径方向内側に位置して施錠子28を係止解除位置に保持する。これにより、ビット固定スリーブ30は固定解除位置に保持される。ドライバビットBを再度取り付けるときには、ドライバビットBをビットホルダ18に挿入する。そうすると、押圧部材32がドライバビットBに押されて後退し、ドライバビットBの環状係止溝Bcが施錠子28と整合する位置となったときに、施錠子28がビット固定スリーブ30に押されて係止位置となる。またこのときに、ビット固定スリーブ30はスプリング36に押圧されて固定位置となる。これにより、ドライバビットBが取り付けられた
図5の状態となる。
【0025】
このように、当該吸着装置50を備える電動ドライバ10においては、外部真空発生源にチューブ等により接続されている吸着装置本体54を本体ハウジング12から取り外すことなくドライバビットBを取り外すことができるため、ドライバビットBの交換を容易に行なうことができる。また、交換したドライバビットBに合せて吸着先端部材56の吸着ノズル68の位置を調節したり、吸着先端部材56を交換したりすることも容易になる。
【0026】
本発明の第2の実施形態に係る電動ドライバ110は、
図7に示すように、ビット固定スリーブ130の構成が第1の実施形態に係る電動ドライバ10とは異なっている。具体的には、ビット固定スリーブ130は、先端側に引っ張ることにより固定位置から固定解除位置に変位するようになっている。
【0027】
以上に本発明の実施形態について説明をしたが、本発明はこれら実施形態に限定されるものではない。例えば、スプリング34は押圧部材32を介してドライバビットを付勢しているが、スプリングがドライバビットを直接付勢するようにしてもよい。また、吸着装置は、工具本体から取り外し可能となっているが、例えば吸着装置本体の筒状壁部を工具本体の本体ハウジングと一体に形成するなどして、工具本体から取り外しできないような構成とすることもできる。また、吸着先端部材を吸着装置本体から取り外したときに、ビット固定スリーブが吸着装置本体の外側に位置するように構成することもできる。さらには、本発明の動力工具は電動ドライバに限られず、例えば電動モータに代えてエアモータを使用したエアードライバなどとすることもできる。
【符号の説明】
【0028】
10 電動ドライバ(動力工具)
11 工具本体
12 本体ハウジング
12a 第1ハウジング
12b 第2ハウジング
14 電動モータ
16 遊星歯車機構
18 ビットホルダ
20 先端開口
22 挿入孔
22a 先端側部分
22b 後方部分
24 周壁部
26 施錠子保持孔
28 施錠子
30 ビット固定スリーブ
32 押圧部材
34 スプリング
36 スプリング
50 吸着装置
52 止めねじ
54 吸着装置本体
56 吸着先端部材
58 前端開口
59 内部空間
60 筒状壁部
62 接続開口部
64 先端吸着開口
66 ビット通路
68 吸着ノズル
69 吸引流路
70 施錠子保持孔
72 施錠子
74 連結スリーブ
76 配管部材
78 環状係止溝
80 筒状部材
82 保持部材
84 スプリング
86 ロックナット
88 Oリング
90 雌ねじ部
92 雄ねじ部
110 電動ドライバ
130 ビット固定スリーブ
B ドライバビット
Ba 先端側部分
Bb 後方部分
Bc 環状係止溝
Bd 先端
R 回転軸線