(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-31
(45)【発行日】2024-08-08
(54)【発明の名称】フォトダイオードの構造
(51)【国際特許分類】
H01L 31/0232 20140101AFI20240801BHJP
H01L 31/10 20060101ALI20240801BHJP
H10K 30/60 20230101ALI20240801BHJP
H10K 30/87 20230101ALI20240801BHJP
【FI】
H01L31/02 D
H01L31/10 A
H10K30/60
H10K30/87
(21)【出願番号】P 2022129972
(22)【出願日】2022-08-17
【審査請求日】2022-08-17
(32)【優先日】2021-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514238696
【氏名又は名称】レイナジー テック インコーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】イ-ミン,チャン
(72)【発明者】
【氏名】クェン-ウェイ,サイ
【審査官】桂城 厚
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/208579(WO,A1)
【文献】特開2017-005196(JP,A)
【文献】国際公開第2020/008839(WO,A1)
【文献】特開2012-160770(JP,A)
【文献】特表2017-536698(JP,A)
【文献】特表2019-507954(JP,A)
【文献】特開2019-087727(JP,A)
【文献】台湾特許公告第001661571(TW,B)
【文献】特開2001-168354(JP,A)
【文献】特開2017-168499(JP,A)
【文献】特表2016-532301(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第113054110(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0334048(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/00-31/0392
H01L 31/08-31/119
H01L 31/18-31/20
H10K 30/00-99/00
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部光源を電流値に変換するフォトダイオードの構造であって、
基板、
前記基板上に設置されている第一電極、
前記第一電極上に設置されている電子伝達層、
前記電子伝達層上に設置され、第一エネルギーギャップ値を有する光活性層、
前記光活性層上に設置され、第二エネルギーギャップ値を有するフィルタ層、および
前記フィルタ層上に設置されている第二電極を備え、
前記第二エネルギーギャップ値は前記第一エネルギーギャップ値よりも大きく、前記第二エネルギーギャップ値と前記第一エネルギーギャップ値との比をエネルギーギャップ比とし、前記エネルギーギャップ比は1よりも大きく、且つ3以下であ
り、
前記光活性層が、P3HT、PCBM、PTB7、N2200、PM6、PBDB-T、Y6、IT4F、ZnS、CdSe、ZnSe、CdS及びInPより構成される群から選ばれる、ことを特徴とするフォトダイオードの構造。
【請求項2】
前記基板はシリコン基板、ポリイミド基板、ガラス基板、ポリエチレンテレフタレート基板、ポリエチレンテレフタラート基板、サファイア基板、石英基板或はセラミックス基板を使用する
ことを特徴とする請求項1に記載のフォトダイオードの構造。
【請求項3】
前記第一電極が透明電極または金属電極であり、前記透明電極は金属酸化物、導電性高分子、グラフェン、カーボンナノチューブ、金属ナノワイヤ、金属メッシュ、またはこれらの材料の任意の組み合わせから選択され、これらの金属電極はアルミニウム、銀、金、銅、タングステン、モリブデン、チタンまたはこれらの金属材料の異なる比率または異なる元素を組み合わせて作製される複合金属電極から選択される
ことを特徴とする請求項1に記載のフォトダイオードの構造。
【請求項4】
前記電子伝達層はSnO
2、ZnO、TiO
2、Cs
2CO
3、Nb
2O
5、PDMAEMA及びPFN-Brより構成される群から選ばれる
ことを特徴とする請求項1に記載のフォトダイオードの構造。
【請求項5】
更に、前記フィルタ層と前記第二電極との間に設置された正孔伝達層を含む
ことを特徴とする請求項1に記載のフォトダイオードの構造。
【請求項6】
前記正孔伝達層はPEDOT:PSS、MoO
3、NiO、V
2O
5、WO
3、CuSCN、spiro-MeOTAD及びPTAAより構成される群から選ばれる
ことを特徴とする請求項5に記載のフォトダイオードの構造。
【請求項7】
前記フィルタ層が、P3HT、PTB7、PM6、PBDB-T、CH
3NH
3PbI
3、CsPbI
3、CH
3NH
3PbBr
3、CsPbBr
3、ZnS、CdSe、ZnSe、CdS及びInPより構成される群から選ばれる
ことを特徴とする請求項1に記載のフォトダイオードの構造。
【請求項8】
前記光活性層は、CH
3NH
3PbI
3、CsPbI
3、CH
3NH
3PbBr
3、CsPbBr
3、ZnS、CdSe、ZnSe、CdS、InP、P3HT、PCBM、PTB7、N2200、PM6、PBDB-T、Y6およびIT4Fより構成される群から選ばれる
ことを特徴とする請求項1に記載のフォトダイオードの構造。
【請求項9】
前記第二電極は金属酸化物、金属、導電性高分子、炭素系導体、金属化合物、またはこれらの材料の組み合わせにより構成される導電性薄膜である
ことを特徴とする請求項1に記載のフォトダイオードの構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はある構造に関し、特に、特定の波長を有する光を自己フィルタリングするフォトダイオードの構造である。
【背景技術】
【0002】
周知の光検出器Photodetector(PD)は主にフォトダイオード(Photodiode)により構成されている。かつては主にSiliconが素材に使われていた。近年、より高い感度、より長い検出波長範囲、より高い費用対効果、低い製造コストなどのニーズが増加している。
【0003】
多くの新世代材料系から派生したフォトダイオード素子も頭角を現している。例えば有機光検出器(organic photodetector、OPD)、量子ドット光検出器(quantum dot photodetector、QDPD)、ペロブスカイト光検出器(Perovskite photodetector、PPD)などがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光検出器は映像検出器製品の素子の一つで、構造上、光検出器が発生する電流信号を効率的にデジタル信号に変換することができ、一般的には読み取り回路(readout integrated circuit、ROIC)を組み合わせる必要がある。
【0005】
応用属性の分類上で、ROICは2つに大別され、相補型金属酸化物半導体(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor、CMOS)ウェハまたは薄膜電気結晶(Thin-Film Transistor、略称:TFT)パネル、生産とサプライチェーンでは、それぞれ半導体ウェハ工場とディスプレイパネル工場に属している。映像検出器の出荷量は製品の種類の多様化に従って増加し、カメラ付き携帯電話と新しい組込み式応用の迅速な普及の推進により、映像検出器は過去10年で、成長が最も速い半導体製品の種類になった。
【0006】
将来の新たな成長は、組込みデジタル画像システムによって開始され、自動車の安全のために用いるカメラと車両中の運転者への支援機能、内蔵された自動化およびスマート化システムの機械視覚、医療応用、人間と顔の認識、ウェアラブルカメラ、3Dビデオ、仮想/増幅実世界、およびその他の用途を含む。最も重要なのは、より多くの高速高解像度映像検出装置がスマート携帯電話に内蔵されるようになったことだ。
【0007】
しかし、一般的に光検出器は需要に応じて使用することができ、目標である検知光源を分光することができ、伝統的には、白色光をそれぞれR/G/B/NIR(near infrared、略称:NIR)光源に変換するためにフィルタ(filter)を使用する必要があり、素子構造上にはフィルタプロセスを導入する必要がある。
【0008】
技術的には、素子の設計および光学変調(optical modulation)によってフィルタの補助なしで素子を半値全幅(full width at half maximum、FWHM)にすることができ、光学スペクトルの単一の応答とすることができれば、検出器の体積を縮小することができるだけでなく、プロセスとコストの面でも多くの利点を得ることができる。フォトダイオード素子がフィルタの補助を不要となれば、つまり自己フィルタリング機能を得ることができれば、スペクトルの単一の応答とすることができれば、検出器の体積を縮小し、プロセスの複雑度とコストを下げることができる。
【0009】
現在、自己フィルタリングの半値全幅応答のフォトダイオード技術において、ほとんどの素子はITO(indium tin oxide、略称:ITO)透明基板の構造上で構築されている。現在の技術は自己フィルタリングの半値全幅の応答結果を有効に検証することができるが、この素子の構造とプロセスの順序は実際の映像検知器製品に直接応用することができない。
【0010】
架橋する自己フィルタリング層はP型分子であるため、エネルギーバンド構造上では必ず光活性層とITOとの間に配置されることになり、プロセスの順序は、素子構造の制限に影響される。一般的には、プロセスの順序によって、透明基板、透明電極 (transparent electrode)、正孔伝達層(hole transport layer、HTL)、フィルタ層(Filter layer、FL)、光活性層(photoactive layer、PAL)、電子伝達層(electrode transport layer、ETL)、上部電極(top electrode)の順に構成されているが、前述の構造はOPD/QDPD/PPDをROICに統合された構造に抵触する。OPD/QDPD/PPDは必ずROICを接続して作製しなければならず、しかもROICは一般的に良好な光透過性を持っていないので、OPD/QDPD/PPD構造上に透明上部電極を組み合わせて、いわゆる上部照光のフォトダイオード構造を形成しなければならない。
【0011】
しかし、前述した透明基板、透明電極(transparent electrode)、正孔伝達層(hole transport layer、HTL)、フィルタ層(Filter layer、FL)、光活性層(photoactive layer、PAL)、電子伝達層(electrode transport layer、ETL)、および透明上部電極(transparent top electrode)の構造を完成させても、入射光が透明上部電極(transparent top electrode)から入射すると、フィルタ層が光活性層の下方に位置することになっているため、自己フィルタリングの効果は得られない。
【0012】
このため、いかにして自己フィルタリングができ、かつフィルタ層が光活性層により覆われていることにより特定の波長の光をフィルタリングできないことを回避するフォトダイオード構造を作製できるかは、当業者が解決しようとする課題である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するために、本発明の目的の一つはフォトダイオードの構造を提供することにあり、フィルタ層を光活性層の上方に設置するフォトダイオードの構造を作製し、フィルタ層のエネルギーギャップ値と光活性層のエネルギーギャップ値との間の差異によって、フィルタ層が外部光源内の特定の波長を有する光線をフィルタリングでき、フィルタリングした後の光線を光活性層内に入らせて励起させ、自己フィルタリング効果を達成させ、且つ光検出器の体積を減少させることができる。
【0014】
上記の目的を達成するために、本発明はフォトダイオードの構造を提供する。当該構造において、基板、第一電極、電子伝達層、光活性層、フィルタ層及び第二電極を含む。前記第一電極は前記基板上に設置する。前記電子伝達層は上前記第一電極に設置する。前記光活性層は、前記電子伝達層上に設置する。前記光活性層は第一エネルギーギャップ値を有する。前記フィルタ層は前記光活性層上に設置する。前記フィルタ層は第二エネルギーギャップ値を有する。前記第二電極は前記フィルタ層上に設置する。前記第二エネルギーギャップ値は前記第一エネルギーギャップ値よりも大きく、前記第二エネルギーギャップ値と前記第一エネルギーギャップ値とはエネルギーギャップ比を有し、前記エネルギーギャップ比は1よりも大きく、且つ3以下である。
【0015】
本発明は実施例を提供し、前記基板は、シリコン基板、ポリイミド基板、ガラス基板、ポリエチレンテレフタレート基板、ポリエチレンテレフタラート基板、サファイア基板、石英基板或はセラミックス基板を使用する。
【0016】
本発明は実施例を提供し、前記第一電極が透明電極または金属電極であり、前記透明電極は金属酸化物、導電性高分子、グラフェン(graphene)、カーボンナノチューブ、金属ナノワイヤ、金属メッシュ、または前記材料の任意の組み合わせから選択され、前記金属電極はアルミニウム(Al)、銀(Ag)、金(Au)、銅(Cu)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、チタン(Ti)または前記金属材料の異なる比率または異なる元素を組み合わせて作製される複合金属電極から選択される。
【0017】
本発明は実施例を提供し、前記電子伝達層はSnO2、ZnO、TiO2、Cs2CO3、Nb2O5、PDMAEMA及びPFN-Brより構成される群から選ばれる。
【0018】
本発明は実施例を提供し、更に、前記フィルタ層と前記第二電極との間に設置された正孔伝達層を含む。
【0019】
本発明は実施例を提供し、前記正孔伝達層はPEDOT:PSS、MoO3、NiO、V2O5、WO3、CuSCN、spiro-MeOTAD及びPTAAより構成される群から選ばれる。
【0020】
本発明は実施例を提供し、前記光活性層が、P3HT、PCBM、PTB7、N2200、PM6、PBDB-T、Y6、IT4F、CH3NH3PbI3、CsPbI3、CH3NH3PbBr3、CsPbBr3、ZnS、CdSe、ZnSe、CdS及びInPより構成される群から選ばれる。
【0021】
本発明は実施例を提供し、前記フィルタ層が、P3HT、PTB7、PM6、PBDB-T、CH3NH3PbI3、CsPbI3、CH3NH3PbBr3、CsPbBr3、ZnS、CdSe、ZnSe、CdS及びInPより構成される群から選ばれる。
【0022】
本発明は実施例を提供し、前記光活性層は更に少なくとも一つのドナー(donor)化合物及び少なくとも一つのアクセプター(acceptor)化合物を含む。
【0023】
本発明は実施例を提供し、前記第二電極は金属酸化物、金属、導電性高分子、炭素系導体、金属化合物、または前記材料の組み合わせにより構成される導電性薄膜である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の一実施例におけるフォトダイオードの構造の概略図である。
【
図2A】本発明の一実施例におけるフォトダイオードの外部光源の光路の概略図である。
【
図2B】本発明の一実施例におけるフォトダイオードの光フィルタリングの概略図である。
【
図3】本発明の他の実施例におけるフォトダイオードの構造の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
周知の自己フィルタリングの半値全幅応答のフォトダイオード技術において、ほとんどの素子はITO透明基板の構造上で構築されている。現在の技術では自己フィルタリングの半値全幅の応答結果を有効に検証することができるが、この素子の構造とプロセスの順序は実際の映像検知器製品に直接応用することができない。
【0026】
本発明は、フィルタ層を光活性層の上方に設置するフォトダイオードの構造を製作し、当該構造により、外部光源の特定の波長を有する光を直接フィルタリングでき、光を自己フィルタリングする効果が達成され、且つ光検出器の体積を減少させる。
【0027】
まず、
図1を参照すると、
図1は本発明の一実施例におけるフォトダイオードの構造の概略図である。図示のように、本実施例におけるフォトダイオードの構造において、基板10、第一電極20、電子伝達層30、光活性層40、フィルタ層50及び第二電極60を含む。
【0028】
本実施例におけるフォトダイオードの構造において、前記第一電極20は前記基板10の上方に設置され、前記電子伝達層30は前記第一電極20の上方に設置されている。前記基板10として、シリコン基板、ポリイミド基板、ガラス基板、ポリエチレンテレフタレート基板、ポリエチレンテレフタラート基板、サファイア基板、石英基板或はセラミックス基板を使用する。
【0029】
前記第一電極20は、透明電極または金属電極であり、好ましくは透明電極であるが、これに限定されるものではなく、前記第一電極20として前記透明電極を使用する場合、前記透明電極は、金属酸化物(metal oxide)、導電性高分子(conducting polymer)、グラフェン(graphene)、カーボンナノチューブ(carbon nanotubes)、金属ナノワイヤ(metal nanowire)、金属メッシュ(metal mesh)、またはこれらの組み合わせから選択される。
【0030】
前記第一電極20として前記金属電極を使用する場合、前記金属電極は、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、金(Au)、銅(Cu)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、チタン(Ti)、または前記金属材料が異なる比率または異なる元素を組み合わせて作製される複合金属電極、例えば、TiNなどから選択される。
【0031】
本実施例では、前記電子伝達層30は、SnO
2、ZnO、TiO
2、Cs
2CO
3、Nb
2O
5、
【化1】
及び
【化2】
より構成される群から選ばれる。
【0032】
本実施例では、前記光活性層40は前記電子伝達層30の上方に設置され、前記フィルタ層50は前記光活性層40の上方に設置され、前記第二電極60は前記フィルタ層50の上方に設置されている。前記光活性層40は第一エネルギーギャップ値を有し、前記フィルタ層50は第二エネルギーギャップ値を有する。
【0033】
前記光活性層40が、CH
3NH
3PbI
3、CsPbI
3、CH
3NH
3PbBr
3、CsPbBr
3、ZnS、CdSe、ZnSe、CdS、InP、
【化3】
、
【化4】
、
【化5】
、
【化6】
、
【化7】
、
【化8】
、
【化9】
及び
【化10】
より構成される群から選ばれる。
【0034】
前記フィルタ層50が、P3HT、PTB7、PM6、PBDB-T、CH3NH3PbI3、CsPbI3、CH3NH3PbBr3、CsPbBr3、ZnS、CdSe、ZnSe、CdS及びInPより構成される群の一つから選ばれる。
【0035】
本実施例における前記光活性層40は、外部光源(特定の波長または全波長を有する光源であってもよい)を受け、外部光源を電流に変換する作用がある。外部光源を電流に変換することができるのは、光活性層40に使用される材料が光によって電子に対する応答を生じさせ、電荷伝達能力を有するためである。
【0036】
本実施例では、前記フィルタ層50により、入射した外部光源をフィルタリングすることができるのは、異なるエネルギーギャップ材料により外部光源内の特定の波長をフィルタリングすることができるためである。
【0037】
本実施例では、前記第二エネルギーギャップ値は前記第一エネルギーギャップ値よりも大きく、前記第二エネルギーギャップ値と前記第一エネルギーギャップ値とはエネルギーギャップ比を有し、前記エネルギーギャップ比は1よりも大きく、且つ3以下である。
【0038】
本実施例では、前記光活性層は更に少なくとも一つのドナー(donor)化合物及び少なくとも一つのアクセプター(acceptor)化合物を含む。即ち本実施例のフォトダイオードの構造における前記光活性層40は、前記材料の前記少なくとも一つのドナー(donor)化合物及び前記少なくとも一つのアクセプター(acceptor)化合物より構成される前記光活性層40を選択してもよいし、混合した前記光活性層40でもよい。
【0039】
本実施例のフォトダイオードの構造の作製方法は以下の通りである:前記基板10にスパッタ法でITO透明電極を製造或は熱蒸着法で金属電極を形成し、前記第一電極20を前記基板10の上方に設置する。そして、極性溶媒に溶解できる高分子電子伝達材料或は金属酸化物をアルコール類溶媒に溶解した後、回転塗布の方法で前記第一電極20に前記電子伝達層30を形成する。前記極性溶媒はアルコール類、水性溶媒、ジメチルスルホキシド(Dimethyl sulfoxide、略称:DMSO)或はジメチルホルムアミド(Dimethylformamide、略称:DMF)を含む。以上、アルコール類溶媒を説明したが、これに限定されない。
【0040】
次に、有機光活性材料を普通の有機溶剤(例えばxylene、toluene、tetrahydrofuran、chloroform、chlorobenzene、dichlorobenzeneなど)に溶解した後、前記電子伝達層30に塗布して前記光活性層40を形成させ、前記光活性層40は前記電子伝達層30の上方に位置する。続いて、Perovskite化合物或はquantum dot化合物を使用してDMSO或はDMFに溶解した後、前記光活性層40に塗布し、前記光活性層40上に前記フィルタ層50を形成させる。最後にスパッタのコーティングプロセスを利用して前記第二電極60を形成する。前記コーティングプロセスはスパッタ(Sputtering)、蒸着(Evaporation)或は物理蒸着(Physical Vapor Deposition)を含む。以上、スパッタについて説明したが、これに限定されない。
【0041】
また、本実施例のフォトダイオードの構造では、前記光活性層40の製造において、他の方法で製造することができる。即ち前記光活性層40は、ペロブスカイト(Perovskite)化合物或は量子ドット(Quantum Dot)化合物半導体材料を光活性層の材料として、DMSO或はDMFに溶解した後、前記電子伝達層30上に塗布して前記光活性層40を形成させ、前記光活性層40は前記電子伝達層30の上方に位置する。続いて、有機材料を使用して有機溶剤に溶解した後、前記光活性層40に塗布して前記フィルタ層50を形成させる。最後にスパッタのコーティングプロセスで前記第二電極60を製造する。前記コーティングプロセスはスパッタ(Sputtering)、蒸着(Evaporation)或は物理蒸着(Physical Vapor Deposition)を含む。以上、スパッタについて説明したが、これに限定されない。
【0042】
次に、本実施例のフォトダイオードの構造によって、自己フィルタリング作用が発生し、光吸収スペクトルと光場分布方式について、
図2Aを参照して説明する。
図2Aは本発明の一実施例におけるフォトダイオードの外部光源の光路の概略図である。
図2Bもあわせて参照すると、
図2Bは本発明の一実施例におけるフォトダイオードの光フィルタリングの概略図である。本実施例において、前記フィルタ層50の効果を有効に達成するために、その材料の選択は以下の条件を満たさなければならない。
【0043】
(1)前記フィルタ層50に使用する材料溶剤系は前記光活性層40と異なり、前記フィルタ層50のプロセス溶剤は前記光活性層40に対しただちに溶解する溶解性を有しない。実施例において、前記光活性層40が有機半導体で構成される場合(多くはo-xylene、toluene、chloroform、chlorobenzene、dichlorobenzeneを溶剤として組み合わせる)、使用する前記フィルタ層50はペロブスカイト(Perovskite)格子が形成する化合物により構成され(一般的にDMSOとDMFを溶剤として組み合わせる)、或は極性溶剤(例えばアルコール類或は水性溶剤)分散性を有する量子ドット(Quantum Dot)粒子、或は他の化合物半導体を使用する。
【0044】
(2)光活性層40としてPerovskite化合物或はQuantum Dot化合物半導体材料を用いると、これらの材料は一般的な有機半導体の塗布液に対して相互に溶解性を有しないので、前記フィルタ層50として有機半導体を用いることができる。
【0045】
(3)前記フィルタ層50の電荷伝達性要求も配慮し、その材料のエネルギー次数は以下の実施原則を満たさなければならない:HOMO donor ≦ HOMO FLまたはHOMO PAL≦HOMO FL、およびHOMO FL≦HOMO HTL(HOMOの方向がvacuum levelから離れる方向)は、当該フィルタ層50と当該光活性層40との間にエネルギー次数がある状態を形成し、すなわち、当該フィルタ層のエネルギー次数の値が光活性層よりも大きいまたは等しくすることにより、本実施例のフォトダイオードの構造は、電荷伝達需要性を有効的に形成することができる。
【0046】
(4)本実施例のフォトダイオードの構造は、電荷収集制限効果(charge collection narrowing、CCN)を効果的に達成するために、前記フィルタ層50は、前記光活性層40のカットオフ波長(λ cut off)の外部光源より短い波長を有する光を吸収しなければならず、したがって、前記フィルタ層50の材料のエネルギーギャップ(Eg)の選択において、以上の説明からわかるように、前記光活性層40の前記第一エネルギーギャップ値は、前記フィルタ層50の前記第二エネルギーギャップ値よりも小さくしなければならない。すなわち、前記光活性層40および前記フィルタ層50は、Eg FL≧Eg donor および /または Eg acceptorまたはEg FL≧Eg PALという条件を満たさなければならない。
【0047】
即ち、外部光源L(例えば、波長が300nmから1200nmまでの前記外部光源L)が、前記第二電極60から前記フィルタ層50を経由して前記光活性層40に入るときに、前記フィルタ層50の前記第二エネルギーギャップ値が前記光活性層40の前記第一エネルギーギャップ値よりも大きいため、大きいエネルギーギャップが短波長を吸収するため、前記外部光源Lが前記フィルタ層50を経由するときに、前記外部光源L内の短波長(例えば
図2A及び
図2Bに示す点線、300nmから700nmまでの波長)を有する光をフィルタリングして、前記外部光源Lの長波長(例えば
図2A及び
図2Bに示す破線、700nm以上の波長)を有する光を前記光活性層40に入らせ、前記光活性層40は前記外部光源Lを電流値に変換し、かつ前記第一電極20と第二電極60を経由して前記電流値を外へ伝送する。
【0048】
前記フィルタ層50は、前記外部光源L内の短波長を有する光をフィルタリングし、当該外部光源Lの長波長を有する光をこの光活性層40に入らせると、当該フィルタ層50は選択された材料によって、前記外部光源L内の短波長を有する光を遮断する。材料によって、前記フィルタ層50は前記外部光源L内の短波長を有する光をフィルタリングし、一方、相応する長波長を有する光を当該光活性層40に入らせることができる。以下に例を挙げて説明する。
【0049】
(A)外部光源Lのうちの300nmから750nmまでの短波長光源がフィルタ層50(CH3NH3PbI3を材料として使用)によってフィルタリングされると、外部光源Lのうちの750nm以上の光はフィルタ層50を通過して光活性層40(PM6をドナーとし、Y6をアクセプターとして組み合わせた材料を使用)内に入る。
【0050】
(B)外部光源Lのうちの250nmから620nmまでの短波長光源がフィルタ層50(使用材料はP3HT)によってフィルタリングされると、外部光源Lのうちの620nmを超える長波長光はフィルタ層50を通過して光活性層40(使用材料はCH3NH3PbI3)内に入る。
【0051】
(C)外部光源Lのうちの300nmから600nmまでの短波長光源がフィルタ層50(CdSeを材料として使用)によってフィルタリングされると、外部光源Lのうちの600nm以上の長波長光はフィルタ層50を通過し、光活性層40(PBDB-Tをドナーとし、N2200をアクセプターとして組み合わせた材料を使用)内に入る。
【0052】
(D)外部光源Lのうちの200nmから450nmまでの短波長光源がフィルタ層50(ZnSを材料として使用)によってフィルタリングされると、外部光源Lのうちの450nm以上の長波長光はフィルタ層50を通過して光活性層40(P3HTをドナーとし、PCBMをアクセプターとして組み合わせた材料を使用)内に入る。
【0053】
上記の波長帯域によれば、本実施例のフォトダイオードの構造において、フィルタリングが必要な波長の相違に応じて、当該フィルタ層50内の材料及び相応する光活性層40の材料を調整するものであるため、上記の波長に制限されず、例としてあげたのみであり、これに限定されるものではない。
【0054】
さらに、第3図を参照してください。
図3は本発明の他の実施例におけるフォトダイオードの構造の概略図であり、図示のように、本実施例のフォトダイオードの構造は、さらに正孔伝達層55を含み、正孔伝達層55は前記フィルタ層50と前記第二電極60の間に設置されるが、それ以外は前の実施例のデバイス構造と同じであるため、ここでは説明しない。
【0055】
前記正孔伝達層55はPEDOT:PSS、MoO
3、NiO、V
2O
5、WO
3、CuSCN、
【化11】
及び
【化12】
より構成される群から選ばれる。
【0056】
前記正孔伝達層55(hole transporting layer、HTL)の主な機能は正孔を前記第二電極60に伝達することを補助し、且つ電子伝達を阻止することにある。
【0057】
以上述べた実施例では、本発明は、光活性層の上方にフィルタ層を設けたフォトダイオード構造を作製し、このような構造により外部光源の特定の波長を有する光を直接フィルタリングすることができ、自己フィルタリング効果を奏することができる。また、自己フィルタリング効果を奏することができるため、従来のフォトダイオードのフィルタリングするためのカラーフィルタを減らすことができ、本発明の光検出器の体積を縮小させ、製造コストを低減させることができる。