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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-31
(45)【発行日】2024-08-08
(54)【発明の名称】便器装置
(51)【国際特許分類】
   E03D 11/08 20060101AFI20240801BHJP
   E03D 5/01 20060101ALI20240801BHJP
   E03D 11/02 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
E03D11/08
E03D5/01
E03D11/02 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022151863
(22)【出願日】2022-09-22
(65)【公開番号】P2024046458
(43)【公開日】2024-04-03
【審査請求日】2024-03-22
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 康宏
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 祥平
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 晴生
(72)【発明者】
【氏名】小清水 謙之
【審査官】七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-265693(JP,A)
【文献】特開2018-204195(JP,A)
【文献】特開2017-061819(JP,A)
【文献】特開2009-156026(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 1/00- 7/00
E03D 11/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
便鉢を有する便器本体と、
前記便鉢の表面に洗浄水を流す吐出部と、を備え、
前記吐出部は、
前記洗浄水の表面の流速が0.5m/s以上である前記洗浄水を流し、
特定領域における前記便鉢の表面を流れる洗浄水の厚みが5.0mm以下である前記洗浄水を流す、便器装置。
【請求項2】
便鉢を有する便器本体と、
前記便鉢の表面に洗浄水を流す吐出部と、を備え、
前記吐出部は、
前記洗浄水の表面の流速が0.5m/s以上である前記洗浄水を流し、
特定領域において、前記便鉢の前記表面から1.0mmの位置における前記洗浄水の表面の流速が0.5m/s以上である前記洗浄水を流す、便器装置。
【請求項3】
便鉢を有する便器本体と、
前記便鉢の表面に洗浄水を流す吐出部と、を備え、
前記吐出部は、
前記洗浄水の表面の流速が0.5m/s以上である前記洗浄水を流し、
前記便鉢の溜水の水面まで前記洗浄水の表面の流速が0.5m/s以上が維持される前記洗浄水を流す、便器装置。
【請求項4】
前記吐出部は、前記便鉢の前記表面に対して、0°から前記表面に向かって30°の角度で前記洗浄水を吐出する、請求項1から3のいずれか一項に記載の便器装置。
【請求項5】
前記吐出部は、
前記便鉢の左右方向の中央に対して左右のいずれか一方側に配置される吐出口を備え、
前記便鉢の左右方向の中央に対して左右のいずれか他方側に流れる前記洗浄水の表面の流速が0.5m/s以上である前記洗浄水を流す、請求項1から3のいずれか一項に記載の便器装置。
【請求項6】
前記吐出部は、下方に向けて前記洗浄水を吐出する、請求項1から3のいずれか一項に記載の便器装置。
【請求項7】
前記吐出部は、前記便鉢の上端縁に沿った方向に洗浄水を吐出して、前記洗浄水を前記上端縁に流す、請求項1から3のいずれか一項に記載の便器装置。
【請求項8】
前記便器本体は、前記便鉢の底部から下方に窪んだ排水部を有し、
前記便鉢は、上下方向において前記排水部の上端から前記便鉢の溜水の水面までの溜水領域と、前記溜水領域の上端から前記便鉢の上端縁までの上部領域と、を有し、
前記便鉢の左右方向の中央における前記左右方向に垂直な断面において、前記上部領域の前記溜水領域よりも前方における表面は、下方に湾曲する形状及び前記溜水の前記水面に向かって下方に傾斜する直線形状の少なくとも一方によって構成される、請求項1から3のいずれか一項に記載の便器装置。
【請求項9】
前記便鉢を上方から見た場合に、前記便鉢に溜められている溜水の水面の第1面積と、前記溜水の前記水面以外の第2面積と、の比が、4:6から10:0である、請求項1から3のいずれか一項に記載の便器装置。
【請求項10】
前記吐出部は、
洗浄水を複数の方向に吐出して、前記便鉢の表面に洗浄水を流し、
上水経路から延びる供給管から供給される洗浄水の圧力を利用して洗浄水に前記便鉢の前記表面に流すこと、及び、ポンプによって昇圧される洗浄水を前記便鉢の前記表面に流すこと、の少なくとも一方によって、前記便鉢の前記表面に洗浄水を流し、
前記複数の方向のうちの第1方向に吐出して、前記便鉢の前記表面のうちの第1領域に前記洗浄水を流し、
前記複数の方向のうちの第2方向に吐出して、前記便鉢の前記表面のうちの前記第1領域と異なる第2領域に前記洗浄水を流す、請求項1から3のいずれか一項に記載の便器装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、便器装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ボウル内を流れる流水の向きを制御する螺旋状の誘導流路を有する水洗式便器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-265693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
便鉢内の汚れを洗浄するためには、洗浄水の流速が高い方が好ましい。本明細書では、洗浄水の流速の低下を抑制する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書に開示の技術の第1の態様では、便器装置は、便鉢を有する便器本体と、前記便鉢の表面に洗浄水を流す吐出部と、を備え、前記吐出部は、前記洗浄水の表面の流速が0.5m/s以上である前記洗浄水を流してもよい。
【0006】
第2の態様では、上記第1の態様において、前記吐出部は、特定領域における前記便鉢の表面を流れる洗浄水の厚みが5.0mm以下である前記洗浄水を流してもよい。
【0007】
第3の態様では、上記第1から第2の態様のいずれか一つにおいて、前記吐出部は、特定領域において、前記便鉢の前記表面から1.0mmの位置における前記洗浄水の表面の流速が0.5m/s以上である前記洗浄水を流してもよい。
【0008】
第4の態様では、上記第1から第3の態様のいずれか一つにおいて、前記吐出部は、前記便鉢の前記表面に対して、0°から前記表面に向かって30°の角度で前記洗浄水を吐出してもよい。
【0009】
第5の態様では、上記第1から第4の態様のいずれか一つにおいて、前記吐出部は、前記便鉢の左右方向の中央に対して左右のいずれか一方側に配置される吐出口を備え、前記便鉢の左右方向の中央に対して左右のいずれか他方側に流れる前記洗浄水の表面の流速が0.5m/s以上である前記洗浄水を流してもよい。
【0010】
第6の態様では、上記第1から第5の態様のいずれか一つにおいて、前記吐出部は、前記便鉢の溜水の水面まで前記洗浄水の表面の流速が0.5m/s以上が維持される前記洗浄水を流してもよい。
【0011】
第7の態様では、上記第1から第6の態様のいずれか一つにおいて、前記吐出部は、前記下方に向けて前記洗浄水を吐出してもよい。
【0012】
第8の態様では、上記第1から第7の態様のいずれか一つにおいて、前記吐出部は、前記便鉢の上端縁に沿った方向に洗浄水を吐出して、前記洗浄水を前記上端縁に流してもよい。
【0013】
第9の態様では、上記第1から第8の態様のいずれか一つにおいて、前記便器本体は、前記便鉢の底部から下方に窪んだ排水部を有し、前記便鉢は、上下方向において前記排水部の上端から前記便鉢の溜水の水面までの溜水領域と、前記溜水領域の上端から前記便鉢の前記上端縁までの上部領域と、を有し、前記便鉢の左右方向の中央における前記左右方向に垂直な断面において、前記上部領域の前記溜水領域よりも前方における表面は、下方に湾曲する形状及び前記溜水の前記水面に向かって下方に傾斜する直線形状の少なくとも一方によって構成されてもよい。
【0014】
第10の態様では、上記第1から第9の態様のいずれか一つにおいて、前記便鉢を上方から見た場合に、前記便鉢に溜められている溜水の水面の第1面積と、前記溜水の前記水面以外の第2面積と、の比が、4:6から10:0であってもよい。
【0015】
第11の態様では、上記第1から第10の態様のいずれか一つにおいて、前記吐出部は、洗浄水を複数の方向に吐出して、前記便鉢の表面に洗浄水を流し、上水経路から延びる供給管から供給される洗浄水の圧力を利用して洗浄水に前記便鉢の前記表面に流すこと、及び、ポンプによって昇圧される洗浄水を前記便鉢の前記表面に流すこと、の少なくとも一方によって、前記便鉢の前記表面に洗浄水を流し、前記複数の方向のうちの第1方向に吐出して、前記便鉢の前記表面のうちの第1領域に前記洗浄水を流し、前記複数の方向のうちの第2方向に吐出して、前記便鉢の前記表面のうちの前記第1領域と異なる第2領域に前記洗浄水を流してもよい。
【0016】
本明細書が開示する技術の詳細とさらなる改良は以下の「発明を実施するための形態」において説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態の便器装置の斜視図を示す。
図2】左右方向中央における左右方向に垂直な断面の便器本体及び便座の断面図を示す。
図3図2のIII-III断面における便鉢の端面図を示す。
図4図2のIV-IV断面における便鉢内と上端フランジ部の断面図を示す。
図5】第1実施形態の便器本体及び便座の平面図を示す。
図6】第1実施形態の便器本体の平面図を示す。
図7】第1実施形態の第1領域を表す便器本体の平面図を示す。
図8】第1実施形態の第2領域を表す便器本体の平面図を示す。
図9】第1実施形態の第3領域を表す便器本体の平面図を示す。
図10】第1実施形態の吐出口から吐出される洗浄水の方向を説明する図を示す。
図11】第1実施形態の吐出口から吐出される洗浄水の方向を説明する図を示す。
図12】左右方向中央における左右方向に垂直な断面の便器本体及び便座の断面図を示す。
図13】第1実施形態の吐出部の概略ブロック図を示す。
図14】第2実施形態の吐出部の概略ブロック図を示す。
図15】第3実施形態の吐出口から吐出される洗浄水の方向を説明する図を示す。
図16】変形例の図12の領域ARの拡大断面図を示す。
図17】変形例の図12の領域ARの拡大断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(便器装置10の構成)
図1に示すように、便器装置10は、水洗式の大便器である。便器装置10は、床面に固定されて使用される。便器装置10は、例えば、壁に固定されるいわゆる壁掛け式の水洗式大便器であってもよい。
【0019】
便器装置10は、便器部12と、便座14と、機能部16と、タンク18(図2参照)と、吐出部40(図13参照)と、を備える。図1に示すように、便器部12は、便器本体20と、上端フランジ部30と、を備える。便器本体20は、陶器である。便器本体20は、汚物を受け止める便鉢21を備える。便器本体20には、便鉢21の下方にタンク18が収容されている。タンク18は、便鉢21を洗浄する洗浄水を貯める。便器装置10は、タンク18と電気的に接続される洗浄ボタン(図示省略)を備える。ユーザによって洗浄ボタンが操作されると、タンク18から吐出部40を介して、便鉢21に洗浄水が吐出される。機能部16は、ユーザの動作に合わせて、図示省略した便蓋を自動的に開閉する開閉機能、局部洗浄、温風乾燥、脱臭機能、等の機能を有してもよい。
【0020】
便器装置10では、タンク18内の洗浄水は、洗浄ボタンの操作の他に、便器装置10に配置されるレバーの操作によって、便鉢21に供給されてもよい。洗浄ボタンは、タンク18に有線及び無線の一方で電気的に接続されるリモートコントローラに配置されていてもよい。ユーザによる操作が無くても、タンク18内の洗浄水が便鉢21に供給されてもよい。例えば、センサによってユーザが非検知になった場合に、タンク18内の洗浄水が便鉢21に供給されてもよい。
【0021】
便座14は、便器本体20に開閉可能に取り付けられている。便座14は、ユーザに着座される。便座14は、開口14aを有する。
【0022】
以下では、便座14と機能部16とが並ぶ方向を前後方向と称する。前後方向において、機能部16に対して便座14が配置されている側を前後方向の前側と称し、その逆側を後側と称する。前後方向と直交する水平方向を左右方向と称する。左右方向において、図1の紙面奥側を右側と称し、図1の紙面手前方向を左側と称する。左右それぞれの向きは、便器装置10に正対したユーザから見た左右と一致する。前後方向と直交する鉛直方向を上下方向と称する。上下方向において、便器本体20に対してタンク18が配置されている側を下側と称し、その逆側を下側と称する。
【0023】
便鉢21は、全体的に下方に窪んだ形状を有する。便器本体20は、便鉢21の下端に配置される排水部32と、排水部32に連通する排水管36と、排水部32に開口する排水口34と、を備える。排水部32は、便鉢21の下端部21uから下方に窪んでいる。排水部32は、排水口34を介して排水管36に連通している。排水管36は、排水口34から上方に向かって延びる。排水部32は、湾曲位置36aで下方に曲がって、下方に向かって延びる。排水管36は、便器部12の外側まで延びている。
【0024】
排水口34は、前後方向において前記便座14の開口14aよりも後方に配置されている。排水口34は、前後方向において前記便座14の開口14aを8等分した場合の便座14の開口14aの後端から3/8の領域よりも後方に配置されていてもよい(図2参照)。排水口34を、ユーザが排泄した大便が落下する位置よりも後方に配置し得る。
【0025】
便鉢21の上端では、便鉢21の上端を画定する上端縁21eが一巡している。上端フランジ部30が配置されている。上端フランジ部30は、便器本体20の上端に載置されている。上端フランジ部30は、便鉢21の上端において、便鉢21の上端縁21eを一巡する。上端フランジ部30は、便鉢21の上端縁21eから便鉢21の表面に対向するように、上端縁21eから内周側に突出している。上端フランジ部30の下面30aは、前後方向及び左右方向に平行に配置されている。
【0026】
(便鉢の形状)
便鉢21には、便鉢21に供給された洗浄水が溜められている。溜水は、排水管36の湾曲位置36aまで溜まっている。便鉢21の表面は、溜水の水面WFよりも下方の溜水領域21bと、水面WFから上方の上部領域21cと、を有する。
【0027】
図6に示すように、上部領域21cは、水面WFの上方において、水面WFの周縁を一巡する。上部領域21cは、前方領域22と、側方領域26と、後方領域24と、を備える。前方領域22は、図6において複数の点で描かれる領域である。前方領域22は、水面WFの前端WF1よりも前の領域である。側方領域26は、図6において灰色に着色されており、前方領域22の後端から水面WFの左右両端のそれぞれに沿って後方に延びる領域である。側方領域26は、水面WFの後端WF2まで延びている。後方領域24は、図6において複数の平行な横線で描かれており、水面WFの後端WF2に沿って、左右両側の側方領域26の後端を結ぶ領域である。
【0028】
図2は、便鉢21の左右方向の中央における左右方向に垂直な断面図を示す。便鉢21の左右方向の中央における左右方向に垂直な断面では、前方領域22は、上端縁21eから下方に進むのに従って後方、即ち水面WFに向かって傾斜する直線形状22aと、直線形状22aの下端から水面WF、即ち上部領域21cの下端まで、下方に湾曲する湾曲形状22bと、を有する。「下方に湾曲する湾曲形状」では、左右方向に垂直な断面において、湾曲形状の任意の2点の間に位置する面を表す線分が、当該任意の2点を結ぶ直線よりも下方に位置する。直線形状22aは、湾曲形状22bの接線方向に延びる。直線形状22aと湾曲形状22bとの境界は、段差が無く、滑らかに連続している。図3に示すように、前方領域22は、前後方向の任意の位置における前後方向に垂直な断面において、下方に湾曲する湾曲形状を有する。前方領域22では、便鉢21の左右方向の任意の位置における左右方向に垂直な断面において、同様である。前方領域22は、上方に膨らむ形状を有していない。
【0029】
便鉢21の左右方向の中央における左右方向に垂直な断面において、前方領域22の下方に位置する溜水領域21bは、下方に進むのに従って後方、即ち水面WFに向かって傾斜する直線形状を有する。
【0030】
直線形状22aは、前後方向の任意の位置における前後方向に垂直な断面において、上端縁21eから下方に進むのに従って水面WFに向かって傾斜する平面を有する。湾曲形状22bは、前後方向の任意の位置における前後方向に垂直な断面において、直線形状22aの下端から水面WF、即ち上部領域21cの下端まで、下方に湾曲する。
【0031】
変形例では、便鉢21の左右方向の中央における左右方向に垂直な断面では、前方領域22は、直線形状22aと湾曲形状22b以外の形状を有していてもよい。例えば、前方領域22は、直線形状22aと、直線形状22aの下端から水面WFまでの中間位置において下方に湾曲する湾曲形状と、湾曲形状の下端から水面WFまで下方に進むのに従って水面WFに向かって傾斜する直線形状と、を有していてもよい。例えば、前方領域22は、上端縁21eから下方に湾曲する湾曲形状を有していてもよい。前方領域22では、曲率が異なる湾曲形状が連続して配置されていてもよい。前方領域22は、直線形状22aと湾曲形状22bとのいずれか一方の形状のみで構成されていてもよい。前後方向に垂直な断面における前方領域22も同様である。前方領域22が湾曲形状22bのみで構成されており、溜水領域21bが直線形状で構成されている場合、前方領域22の曲率半径は、溜水領域21bの曲率半径より小さい。変形例では、便鉢21の左右方向の中央における左右方向に垂直な断面において、前方領域22の下方に位置する溜水領域21bは、下方湾曲する湾曲形状を有してもよい。この場合、便鉢21の左右方向の中央における左右方向に垂直な断面における前方領域22の曲率半径は、溜水領域21bの曲率半径より小さくてもよいし、等しくてもよい。
【0032】
図3に示すように、側方領域26は、前後方向に垂直な断面において、前方部分で、前方領域22から連続して、下方に湾曲する湾曲形状を有する。湾曲形状は、水面WFを越えて下方まで延びて、溜水領域21bまで延びている。図4に示すように、側方領域26は、前後方向に垂直な断面において、後方部分で、上端縁21eから下方に進むのに従って水面WFに向かって傾斜する直線形状26aと、直線形状26aの下端から水面WFまでの中間位置において下方に湾曲する湾曲形状26bと、湾曲形状26bの下端から水面WFまで上方に湾曲する湾曲形状26cと、を有する。湾曲形状26cは、水面WFを越えて、溜水領域21bまで延びている。湾曲形状26cを有する部分が後方部分であり、湾曲形状26cを有していない部分が前方部分である。前方部分と後方部分との境界は、排水部32の前端であってもよい。
【0033】
変形例では、側方領域26は、全体に亘って、直線形状26aと湾曲形状26bとの少なくとも一方で構成されていてもよく、湾曲形状26cを有していなくてもよい。この場合、側方領域26の下方の溜水領域21bは、上方に湾曲する湾曲形状を有していてもよい。
【0034】
図2に示すように、便鉢21の左右方向の中央における左右方向に垂直な断面において、後方領域24は、上端縁21eから下方に進むのに従って前方、即ち水面WFに向かって傾斜する直線形状24aと、直線形状24aの下端から水面WFまでの中間位置において下方に湾曲する湾曲形状24bと、湾曲形状24bの下端から水面WFまで上方に湾曲する湾曲形状24cと、を有する。直線形状24aは、上下方向に平行であってもよい。後方領域24は、便座14の開口14aの後端縁よりも後方に位置している。これにより、ユーザから、後方領域24を視認し難くすることができる。
【0035】
(溜水の態様)
便鉢21に溜められている溜水の水面WFは、排水管36が上方に向かって延びて、下方に曲がる湾曲位置36aの下端と同じ高さで安定する。図6に示すように、溜水が安定している状態で、便器本体20を上方から観察すると、上端フランジ部30の内側において、水面WFの面積と水面WF以外の面積、即ち、上部領域21cを上方から見た場合の面積との比である水面WFの面積:水面WF以外の面積=4:6である。変形例では、水面WFの面積は、水面WF以外の面積と比して、水面WFの面積:水面WF以外の面積=4:6よりも大きくてもよい。例えば、水面WFの面積:水面WF以外の面積=4:6から10:0の間であってもよい。便鉢21の上端縁21eの内側において、水面WFの面積:水面WF以外の面積=4:6から10:0の間であってもよい。
【0036】
図12に示すように、溜水は、便鉢21の溜水領域21bから排水部32の底面まで充満している。便鉢21の左右方向の中央における左右方向に垂直な断面では、前後方向において開口14aを8等分した場合の開口14aの後端から1/8から3/8の任意の点において、便器本体20の上端、即ち上端フランジ部30の上端から鉛直下向きに位置する便器本体20の底面、即ち便鉢21の下端と排水部32の底面とのいずれか一方の位置Pまでの鉛直方向の距離D1が、位置Pから溜水の前端縁Fまでの前後方向の距離D2に等しい。変形例では、距離D1が距離D2未満であってもよい。
【0037】
図5に示すように、便座14が便器本体20の上方に載置されている状態で、便器本体20を上方から観察すると、便座14の開口において、面積の水面WFの面積:水面WF以外の面積=5:5よりも水面WFの面積が大きい。変形例では、水面WFの面積は、水面WF以外の面積と比して、水面WFの面積:水面WF以外の面積=5:5よりも大きくてもよい。例えば、水面WFの面積:水面WF以外の面積=5:5から10:0の間であってもよい。
【0038】
(吐出部の構成)
吐出部40は、タンク18内の洗浄水を、便鉢21に吐出する。図13に示されるように、吐出部40は、ポンプ52と、切替弁54と、複数の連通管56a、56b、56c、56dと、複数の吐出口42、44、46、48と、を備える。図13では、吐出部40に含まれる各部42、44、46、48、52、54、56a、56b、56c、56dの連結態様が示されている。図13では、吐出口42、44、46、48は、それぞれの位置を表している。図13では、吐出口42、44、46、48の構成は表していない。タンク18内の洗浄水が便鉢21に吐出される場合、ポンプ52によって、タンク18から洗浄水が吸引される。ポンプ52は、洗浄水を昇圧して、切替弁54に送出する。切替弁54は、ポンプ52と複数の連通管56a、56b、56c、56dのいずれかの連通管とを連通させることによって、ポンプ52からの洗浄水を、ポンプ52と連通する連通管に送出する。ポンプ52及び切替弁54は、便器本体20の後方に配置されている。
【0039】
洗浄水を流す場合、最初に、切替弁54は、左側に配置されている吐出口44に連通する連通管56bとポンプ52とを連通する状態であって、他の吐出口42、46、48に連通する連通管56a、56c、56dとポンプ52とを連通しない状態を維持する。ポンプ52によって昇圧された洗浄水は、連通管56bを通過して吐出口44から便鉢21に吐出される。
【0040】
図10に示すように、吐出口44は、連通管56bから上下方向の両方に広がる形状を有するノズル45の先端に配置されている。図4に示すように、便器本体20は、便鉢21に内面に沿って後方から前方に延びる管状の開口44aを有する。ノズル45は、開口44a内に配置される。吐出口44は、上下方向に延びる細長い形状を有する。吐出口44の長手方向の長さと短手方向の長さの比は、1:4である。吐出口44の長手方向の長さと短手方向の長さの比は、1:2及び1:3のいずれかであってもよい。開口44aは、上下方向に延びる細長い形状を有する。開口44aは、の長手方向の長さと短手方向の長さの比は、1:4である。開口44aは、の長手方向の長さと短手方向の長さの比は、1:2及び1:3のいずれかであってもよい。図10に示すように、連通管56bを通過してノズル45に達した洗浄水は、矢印で示されるように、ノズル45の形状に合わせて、上下方向に広がって流れる。この結果、吐出口44から吐出された洗浄水は、吐出口44から前後方向に平行に真直ぐ流れるとともに、上方及び下方に広がって流れる。上向きに流れる洗浄水は、上端フランジ部30に接触して上端フランジ部30に沿って便鉢21の上端縁21eを、前方に向かって流れる。図11に示すように、洗浄水は、矢印で示されるように、吐出口44から側方領域26に略平行に吐出される。略平行は、側方領域26に対して平行、即ち0°であってもよい。略平行に吐出される状態は、側方領域26に向かって吐出される洗浄水の流れる方向が、側方領域26に対して30°以下で吐出される状態を含む。この構成によると、吐出口44から吐出される洗浄水の圧力が、側方領域26に衝突することによって低減することを抑制することができる。吐出口44から吐出される洗浄水の流速の低下を抑制することができる。吐出口44は、便鉢21の内周面に配置されている。
【0041】
図7に示すように、吐出口44から吐出された洗浄水は、便鉢21の上部領域21cのうちの第1領域21xに流れる。複数の平行斜線で表される第1領域21xは、吐出口44から便鉢21の前端まで、上端縁21eに達している。言い換えると、第1領域21xを流れる洗浄水は、吐出口44から便鉢21の前端まで、上端フランジ部30の下面に流れる。これにより、第1領域21xを流れる洗浄水によって、左側の上端フランジ部30の下面を洗浄することができる。第1領域21xの下端は、溜水の水面WFに達する。第1領域21xは、便鉢21の前端を越えて、右側まで広がっている。
【0042】
吐出口44の形状、方向及びポンプ52による洗浄水の圧力は、吐出口44から吐出された洗浄水が、第1領域21xの全域に亘って、5.0mm以下で維持されるように調整されている。ポンプ52は、第1領域21xを流れる洗浄水の流速が、第1領域21xの全域に亘って、便鉢21の表面から1.0mmの位置において、少なくとも瞬間的に0.5m/s以上となるように昇圧する。洗浄水の厚さ方向における洗浄水の流速は、便鉢21の表面で最も遅く、便鉢21から離れるのに従って徐々に速くなる。このため、便鉢21の表面から1.0mmの位置において0.5m/s以上の洗浄水は、洗浄水の表面においても、0.5m/s以上である。
【0043】
切替弁54は、左側に配置されている吐出口44に連通する連通管56bとポンプ52とを連通する状態から、連通しない状態に切り替える。続けて、切替弁54は、後側に配置されている吐出口42に連通する連通管56aとポンプ52とを連通する状態であって、他の連通管56b、56c、56dとポンプ52とを連通しない状態を維持する。ポンプ52によって昇圧された洗浄水は、連通管56aを通過して吐出口42から便鉢21に吐出される。
【0044】
吐出口42は、後方領域24の上端部に配置されている。吐出口42には、スプレッダ42aが配置されている。スプレッダ42aは、吐出口42の前方に洗浄水が通過可能な隙間を有して配置される板状部材を有する。吐出口42から吐出される洗浄水は、スプレッダ42aに衝突することによって、上下及び左右方向に広がって流れる。
【0045】
図9に示すように、吐出口42から吐出された洗浄水は、後方領域24の全体をカバーする第3領域21zに流れる。第3領域21zの下端は、溜水の水面WFに達する。第3領域21zの上端は、上端フランジ部30の下面に達する。第3領域21zは、左右方向のそれぞれにおいて、後方領域24を越えて広がっている。第3領域21zは、第1領域21xの後端に一部と重複する領域21qを有する。領域21qの面積は、第1領域21xの面積の1/2以下である。領域21qの面積は、第1領域21xの面積の1/4以下であってもよい。領域21qの面積は、第3領域21zの面積の1/2以下である。領域21qの面積は、第3領域21zの面積の1/4以下であってもよい。
【0046】
切替弁54は、連通管56bとポンプ52とを連通しない状態に切り替えた後に、連通管56aとポンプ52とを連通する状態に切り替える。即ち、第1領域21xを流れる洗浄水の吐出が終了してから、第3領域21zに流れる洗浄水の吐出が開始される。これにより、第3領域21zを洗浄水が流れる際に、第1領域21xと重複する領域において、第1領域21xを流れる洗浄水によって、第3領域21zを流れる洗浄水の流速が低減される事態を回避することができる。
【0047】
切替弁54は、連通管56aとポンプ52とを連通する状態から、連通しない状態に切り替える。続けて、切替弁54は、右側に配置されている吐出口46に連通する連通管56cとポンプ52とを連通する状態であって、他の連通管56a、56b、56dとポンプ52とを連通しない状態を維持する。ポンプ52によって昇圧された洗浄水は、連通管56cを通過して吐出口46から便鉢21に吐出される。
【0048】
吐出口46は、吐出口44と同様のノズル47の先端に配置されている。ノズル47は、開口44aと同様の開口46aに配置されている。吐出口46と開口46aとノズル47は、吐出口44とノズル45と、便鉢21の左右方向の中央において、左右方向に垂直な面に対して、面対称に配置されている。連通管56cを通過してノズル47に達した洗浄水は、ノズル47の形状に合わせて、上下方向に広がって流れる。この結果、吐出口44から吐出された洗浄水は、吐出口46から前後方向に平行に真直ぐ流れるとともに、上方及び下方に広がって流れる。上向きに流れる洗浄水は、上端フランジ部30に接触して上端フランジ部30に沿って便鉢21の上端縁21eを、前方に向かって流れる。
【0049】
図8に示すように、吐出口46から吐出された洗浄水は、便鉢21の上部領域21cのうちの第2領域21yに流れる。複数の点で描かれる第2領域21yは、吐出口46から便鉢21の前端まで、上端縁21eに達している。言い換えると、第2領域21yを流れる洗浄水は、吐出口46から便鉢21の前端まで、上端フランジ部30の下面に流れる。これにより、第2領域21yを流れる洗浄水によって、右側の上端フランジ部30の下面を洗浄することができる。第2領域21yの下端は、溜水の水面WFに達する。第2領域21yは、便鉢21の前端を越えて、左側まで広がっている。第1領域21xと第2領域yとのそれぞれは、左右方向において、便鉢21の前端を越えて反対方向に広がっている。第1領域21xと第2領域yとは、互いに重複する領域21pを有する。第2領域21yと第3領域zとは、互いに重複する領域21r(図9参照)を有する。領域21pの面積は、第1領域21xの面積の1/2以下である。領域21pの面積は、第1領域21xの面積の1/4以下であってもよい。領域21pの面積は、第2領域21yの面積の1/2以下である。領域21pの面積は、第2領域21yの面積の1/4以下であってもよい。領域21rの面積は、第2領域21yの面積の1/2以下である。領域21rの面積は、第2領域21yの面積の1/4以下であってもよい。領域21rの面積は、第3領域21zの面積の1/2以下である。領域21rの面積は、第3領域21zの面積の1/4以下であってもよい。
【0050】
吐出口46の形状、方向及びポンプ52による洗浄水の圧力は、吐出口46から吐出された洗浄水の厚みが、第2領域21yの全域に亘って、5.0mm以下で維持されるように調整されている。ポンプ52は、第2領域21yを流れる洗浄水の流速が、第2領域21yの全域に亘って、便鉢21の表面から1.0mmの位置において、少なくとも瞬間的に0.5m/s以上となるように昇圧する。
【0051】
切替弁54は、連通管56aとポンプ52とを連通しない状態に切り替えた後に、連通管56cとポンプ52とを連通する状態に切り替える。即ち、第3領域21zを流れる洗浄水の吐出が終了してから、第2領域21yに流れる洗浄水の吐出が開始される。これにより、第2領域21yを洗浄水が流れる際に、第3領域21zと重複する領域において、第3領域21zを流れる洗浄水によって、第2領域21yを流れる洗浄水の流速が低減される事態を回避することができる。同様に、第2領域21yを洗浄水が流れ始めるタイミングでは、第1領域21xへの洗浄水の供給は停止されている。第1領域21xと重複する領域において、第1領域21xを流れる洗浄水によって、第2領域21yを流れる洗浄水の流速が低減される事態を回避することができる。
【0052】
切替弁54は、連通管56cとポンプ52とを連通する状態から、連通しない状態に切り替える。続けて、切替弁54は、排水部32の前端に配置されている吐出口48に連通する連通管56dとポンプ52とを連通する状態であって、他の連通管56a、56b、56cとポンプ52とを連通しない状態を維持する。ポンプ52によって昇圧された洗浄水が吐出口48から便鉢21に吐出される。
【0053】
吐出口44から吐出される洗浄水は、第1領域21xの全域を洗浄する。吐出口44以外の吐出口42、46から吐出される洗浄水は、第1領域21xの一部を洗浄する。第1領域21xは、吐出口42、44、46のそれぞれから吐出される洗浄水によって洗浄される。第1領域21xの1/4以上の領域は、吐出口44から吐出される洗浄水のみによって洗浄される。第1領域21xの1/2以上の領域は、吐出口44から吐出される洗浄水のみによって洗浄されてもよい。同様に、第2領域21yは、吐出口42、44、46のそれぞれから吐出される洗浄水によって洗浄される。第2領域21yの1/4以上の領域は、吐出口46から吐出される洗浄水のみによって洗浄される。第2領域21yの1/2以上の領域は、吐出口46から吐出される洗浄水のみによって洗浄されてもよい。同様に、第3領域21zは、吐出口42、44、46のそれぞれから吐出される洗浄水によって洗浄される。第3領域21zの1/4以上の領域は、吐出口42から吐出される洗浄水のみによって洗浄される。第3領域21zの1/2以上の領域は、吐出口42から吐出される洗浄水のみによって洗浄されてもよい。
【0054】
吐出口48は、便器本体20に設けられた貫通孔に配置される。吐出口42、44、46から吐出された洗浄水によって洗浄された排泄物等が、排水部32に溜まっている。吐出口48から吐出される洗浄水は、排水部32に溜まっている排泄物等を、溜水とともに、排水口34から排水管36に流す。
【0055】
(効果)
吐出部40は、左右方向のそれぞれの吐出口44、46から上端縁21eに達する洗浄水を流す。吐出口44から吐出された洗浄水は、便鉢21の前端を越えて左右方向の中央よりも右側まで上端縁21eを流れる。吐出口46から吐出された洗浄水は、便鉢21の前端を越えて左右方向の中央よりも左側まで上端縁21eを流れる。この結果、吐出口44、46よりも前側の全体で、便鉢21の上端縁21eまで洗浄水によって洗浄することができる。
【0056】
吐出口44、46では、ノズル45、47によって、洗浄水に上方に向かう洗浄水が吐出される。上端縁21eに洗浄水を流すことができる。吐出口44では、ノズル45によって、洗浄水に下方に向かう洗浄水が吐出される。第1領域21xに適切に洗浄水を流すことができる。吐出口46では、ノズル47によって、洗浄水に下方に向かう洗浄水が吐出される。第2領域21yに適切に洗浄水を流すことができる。変形例では、ノズル45、47及び吐出口44、46の形状は、吐出口44、46から上下方向に向かって洗浄水が吐出される形状であればよい。
【0057】
吐出口42には、スプレッダ42aが配置されている。吐出口42から吐出される洗浄水がスプレッダ42aによって広がって流れる。吐出口42から吐出される洗浄水は、上端フランジ部30の下面に達する。これにより、吐出口44、46よりも後側の全体で、便鉢21の上端縁21eまで洗浄水によって洗浄することができる。
【0058】
吐出口42、44、46から吐出される洗浄水によって、便鉢21の全周に亘って上端縁21eまで洗浄することができる。上端フランジ部30の全周に亘って、上端フランジ部30の下面を洗浄することができる。変形例では、上端縁21eの全周の少なくとも1/2から1/4において、洗浄水が流れていてもよい。変形例では、上端縁21eの全周の少なくとも1/2から1/4において、0.5m/s以上の流速の洗浄水が流れていてもよい。
【0059】
便鉢21の前方領域22は、直線形状22aと湾曲形状22bとによって構成されている。前方領域22では、左右方向の任意の位置における左右方向に垂直な断面において、直線形状22aと下方に湾曲する湾曲形状22bとによって構成されている。前方領域22は、上方に膨らむ形状を有していない。前後方向の任意の位置においても同様である。前方領域22では、洗浄水の流れを妨げるような上方に突出した形状は配置されていない。この構成によると、洗浄水が上方から下方にスムーズに流れる。変形例では、前方領域22は、左右方向において排水部32の長さ範囲において、直線形状22aと湾曲形状22bとによって構成されていてもよい。この場合、前方領域22は、左右方向において排水部32の長さ範囲よりも外側の部分では、上方に膨らむ形状を有していてもよい。
【0060】
側方領域26の前方部分において、前方領域22と同様に、洗浄水の流れを妨げるような上方に突出した形状は配置されていない。この構成によると、洗浄水が上方から下方にスムーズに流れる。
【0061】
前方領域22及び側方領域26の前方部分は、排泄物等によって汚れが付着しやすい。便器装置10によると、汚れが付着しやすい前方領域22及び側方領域26の前方部分において、洗浄水の流速の低下を抑制し、洗浄水によって排泄物等を洗浄しやすくすることができる。
【0062】
第1領域21x及び第2領域21yのそれぞれの全域に亘って、洗浄水の表面における流速が0.5m/s以上の洗浄水が流れる。これにより、洗浄水によって排泄物等を洗浄しやすくすることができる。上述した前方領域22及び側方領域26の前方部分では、流速の低下が抑制されるため、吐出口44、46から吐出される洗浄水の初速を抑えることができる。変形例では、洗浄水が表面において、0.6m/s、0.7m/s、0.8m/s、0.9m/s、及び1.0m/sのいずれかの流速以上であってもよい。変形例では、第1領域21x及び第2領域21yのそれぞれの一部において、例えば上端縁21eにおいて、洗浄水の表面における流速が0.5m/s以上の洗浄水が流れてもよい。
【0063】
便鉢21の表面から1.0mmの位置において、洗浄水は、0.5m/s以上の流速が維持される。便鉢21に付着する排泄物等は、便鉢21の表面から1.0mmまでの高さが多い。便鉢21の表面から1.0mmの位置までの流速を維持することによって、便鉢21に付着する排泄物等を洗浄しやすくすることができる。変形例では、便鉢21の表面から1.0mmの位置における洗浄水が、0.6m/s、0.7m/s、0.8m/s、0.9m/s、及び1.0m/sのいずれかの流速以上であってもよい。
【0064】
便鉢21を流れる洗浄水の厚みが5.0mm以下に抑えられている。便鉢21の洗浄に使用する洗浄水量を抑制することができる。便鉢21に排泄物等の汚れが付着している場合、便鉢21との接着面付近に洗浄水を流すことによって、汚れを洗浄することができる。このため、洗浄水の厚みを5.0mm以下としても、洗浄能力の低下は回避される。変形例では、便鉢21を流れる洗浄水の厚みが3.0mm、4.0mm、6.0mm、7.0mmのいずれか以下に抑えられている。
【0065】
溜水は、上部領域21cを上方から見た場合に、水面WFの面積:水面WF以外の面積=4:6である。また、便座14の開口において、水面WFの面積と水面WF以外の面積の水面WFの面積:水面WF以外の面積=5:5である。この構成によると、水面WFの面積を大きくすることによって排泄物が便鉢21に直接的に接触して、便鉢21に付着することを抑制することができる。変形例では、便器本体20を上方から見た場合、水面WFの面積:水面WF以外の面積=4:6から10:0の間でなくてもよく、例えば、10:0に替えて、9:1、8:2、7:3、6:4及び5:5のいずれかであってもよく、4:6に替えて、5:5、6:4、7:3、8:2及び9:1のいずれかであってもよい。変形例では、便座14を便器本体20の上方に載置した状態で便座14の開口からみた場合、水面WFの面積:水面WF以外の面積=5:5から10:0の間でなくてもよく、例えば、10:0に替えて、9:1、8:2、7:3及び6:4のいずれかであってもよく、5:5に替えて、6:4、7:3、8:2及び9:1のいずれかであってもよい。
【0066】
便器本体20の上端から位置Pまでの鉛直方向の距離D1は、位置Pから溜水の前端縁Fまでの前後方向の距離D2に等しい。ユーザから排泄される大便は、ユーザから排泄されて、便鉢21及び排水部32の表面のいずれか一方に接触すると、便鉢21の形状に沿って前方に倒れる場合が多い。距離D1を距離D2以下とすることによって、大便が溜水を越えて、便鉢21に直接的に接触することを抑制することができる。
【0067】
(第2実施形態)
図14に示すように、本実施形態の便器装置10は、切替弁54に替えて、4個の開閉弁252、254、256、258を備えていてもよい。4個の開閉弁252、254、256、258のそれぞれは、4本の連通管56a、56b、56c、56dのそれぞれに配置されている。4個の開閉弁252、254、256、258のそれぞれは、4個の開閉弁252、254、256、258のそれぞれが配置されている連通管56a、56b、56c、56dを開いている状態と、閉じている状態と、に切り替える。便鉢21に洗浄水を供給する場合には、開閉弁252、254、256、258のそれぞれは、4本の連通管56a、56b、56c、56dを、順次、開いている状態から閉じている状態に切り替えることによって、吐出口44、42、46、48の順に洗浄水を吐出させる。その他の構成は、第1実施形態と同様である。
【0068】
(第3実施形態)
図15に示すように、本実施形態の便器装置10は、ノズル45の向きを変えるモータ345と、ユーザによってノズル45の向きを変更するための操作ボタンと、を備える。デフォルト状態では、ノズル45は、図11に示す方向に向いている。ユーザによって操作ボタンが操作されると、図15の破線で示されるように、ノズル45は、下方に向いて移動させる。この場合、吐出口44から吐出される洗浄水は、第1領域21xの後方の一部のみに流れる。この構成によると、汚れが付着している部分に向けて洗浄水を流すことができる。ノズル47も、ノズル45と同様に向きを変えるモータが配置されていてもよい。
【0069】
(第4実施形態)
本実施形態の便器装置10では、ポンプ52が、洗浄水の圧力を調整することによって、洗浄水の流速を制御する。便器装置10は、ユーザによって洗浄水の流速を調整する操作ボタンを備える。ユーザによって操作ボタンが操作されると、ポンプ52は、ユーザによって調整済みの流速の洗浄水を、吐出口42、44、46、48の少なくとも1個の吐出口から吐出させる。この構成によると、便鉢21の汚れの程度に合わせて、洗浄水の流速を調整することができる。変形例では、ポンプ52は、洗浄水の供給開始から終了までの間で、吐出口42、44、46、48の少なくとも1個の吐出口から吐出される洗浄水の流速を変化してもよい。
【0070】
以上、本明細書が開示する技術の具体例を詳細に説明した。これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。上記の実施形態の変形例を以下に列挙する。
【0071】
(1)便器装置10に配置される吐出口の個数に制限は無い。例えば、吐出口は3個以下であってもよく、5個以上であってもよい。吐出口の位置にも制限は無い。例えば、便器本体20の前端付近に吐出口が配置されていてもよい。
【0072】
(2)上端フランジ部30は配置されていなくてもよい。この場合、便座14の下面が、上端縁21eに接触していてもよい。洗浄水は、便座14の下面に向けて流れてもよい。洗浄水によって、便座14の下面が洗浄されてもよい。本変形例では、便座14が「突出部」の一例である。突出部は、便鉢21の上端縁に一巡していてもよい。言い換えると、上端縁21eは、便器本体20の上端に配置されていてもよい。上端縁21eは、便器本体20の上端よりも下方であってもよい。例えば、便器本体20に、上端フランジ部30のように、洗浄水の流れをせき止める防水部材が配置されている場合、上端縁21eは、防水部材の下方に配置されていてもよい。例えば、便器本体20が、上端において、便鉢21に向けて下方に折り返される折返部を備える場合、折返部の下端が防水部材として機能する場合、上端縁21eは、折返部の下端と一致してもよい。折返部の下端が便鉢21と隙間を有して配置されており、折返部の上端、即ち、便器本体20の上端部分が防水部材として機能する場合、上端縁21eは、便器本体20の上端部分と一致してもよい。上端縁21eは、洗浄水が流れるように設計される領域のうちの上端部分であってもよい。
【0073】
(3)便鉢21の上端縁21e近傍の形状は、例えば、図16図17に示すように、上端縁21eの下方が、上端縁21eよりも窪んだ形状を有していてもよい。これらの変形例では、上端フランジ部30が配置されていてもよいし、配置されていなくてもよい。上端フランジ部30が配置されていない場合、変形例(2)と同様に、便座14が上端縁21eに接触していてもよい。
【0074】
(4)吐出部40は、吐出口42、44、46、48のうち少なくとも1個の吐出口を便器本体20に配置しなくてもよい。吐出部40は、機能部16から洗浄水を吐出してもよい。
【0075】
(5)吐出部40は、吐出口44からの洗浄水の吐出を開始してから、第1領域21xに流れる洗浄水の流速が、最大流速の1/2以下及び1/4以下のいずれか一方になった後に、吐出口42、46の少なくとも一方からの洗浄水の吐出を開始してもよい。吐出口42、44、46の吐出順序は、特に限定されない。
【0076】
(6)吐出部40は、吐出口44からの洗浄水の吐出中に、吐出口46からの洗浄水の吐出を開始してもよい。吐出口44から吐出される洗浄水は、吐出口46から吐出される洗浄水と、便鉢21、例えば、前方領域22において合流してもよい。
【0077】
(7)吐出部40に配置される吐出口の個数及び位置は、特に制限されない。例えば、吐出部40は、便鉢21の左右方向の中央よりも右側であって、排水部32よりも前方に配置される1個の吐出口のみを備えていてもよい。この場合、吐出口は、後方に向かって洗浄水を吐出してもよい。例えば、吐出部40は、便鉢21の左右方向の中央よりも左右側のそれぞれに1個の吐出口、合計2個の吐出口を備えていてもよい。2個の吐出口の一方の吐出口は、便鉢21の前後方向の中央より前側に配置されていてもよい。2個の吐出口の他方の吐出口は、便鉢21の前後方向の中央より後側に配置されていてもよい。2個の吐出口は、上方から見て時計回り及び反時計回りのいずれか一方に向かって、同一の方向に洗浄水を吐出してもよい。
【0078】
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0079】
10:便器装置、12:便器部、14:便座、14a:開口、20:便器本体、21:便鉢、21b:溜水領域、21c:上部領域、21e:上端縁、21u:下端部、21x:第1領域、21y:第2領域、21z:第3領域、22:前方領域、22a:直線形状、22b:湾曲形状、24:後方領域、24a:直線形状、24b:湾曲形状、24c:湾曲形状、26:側方領域、26a:直線形状、26b:湾曲形状、26c:湾曲形状、30:上端フランジ部、32:排水部、34:排水口、36:排水管、36a:湾曲位置、40:吐出部、42、44、46、48:吐出口、42a:スプレッダ、45、47:ノズル、52:ポンプ、54:切替弁、56:連通管、56a:連通管、56b:連通管、56c:連通管、56d:連通管

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17