(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-31
(45)【発行日】2024-08-08
(54)【発明の名称】トーションビーム接合構造
(51)【国際特許分類】
B60G 9/04 20060101AFI20240801BHJP
【FI】
B60G9/04
(21)【出願番号】P 2022197974
(22)【出願日】2022-12-12
【審査請求日】2023-09-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】592037790
【氏名又は名称】株式会社エフテック
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】石松 久嗣
(72)【発明者】
【氏名】古木 圭
(72)【発明者】
【氏名】大下 大地
【審査官】池田 晃一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-193334(JP,A)
【文献】特開2016-074318(JP,A)
【文献】特開2016-112966(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60G 1/00 - 99/00
B60B 35/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車幅方向に沿って延在して配置されるトーションビームと、前記トーションビームの左右両端部にそれぞれ連結して配置される左右一対のトレーリングアームとを有するトーションビーム式サスペンションの構造において、
前記トーションビームは、車両前後方向前方に配置される前壁部と、車両前後方向後方に配置される後壁部と、前記前壁部と前記後壁部とを跨ぐ上壁部とを備え、車両上下方向の下方側に開口部が設けられ、
前記前壁部及び前記後壁部には、車幅方向の両側部に前記各トレーリングアームと接合される複数の接合部を有し、
前記接合部は、車幅方向外側で最も下方に位置する外接合部と、車幅方向内側で最も上方に位置する内接合部とを有し、
前記内接合部は、前記外接合部よりも車両上下方向の上側に配置され
、
前記接合部は、さらに補助接合部を有し、
前記補助接合部は、前記外接合部の車両上下方向の下方と、前記内接合部の車両上下方向の下方とを結ぶ接線よりも車両上下方向の上側に配置されていることを特徴とするトーションビーム接合構造。
【請求項2】
車幅方向に沿って延在して配置されるトーションビームと、前記トーションビームの左右両端部にそれぞれ連結して配置される左右一対のトレーリングアームとを有するトーションビーム式サスペンションの構造において、
前記トーションビームは、車両前後方向前方に配置される前壁部と、車両前後方向後方に配置される後壁部と、前記前壁部と前記後壁部とを跨ぐ上壁部とを備え、車両上下方向の下方側に開口部が設けられ、
前記前壁部及び前記後壁部には、車幅方向の両側部に前記各トレーリングアームと接合される複数の接合部を有し、
前記接合部は、車幅方向外側で最も下方に位置する外接合部と、車幅方向内側で最も上方に位置する内接合部とを有し、
前記内接合部は、前記外接合部よりも車両上下方向の上側に配置され、
前記接合部は、さらに補助接合部を有し、
前記補助接合部は、前記外接合部の車両上下方向の上方と、前記内接合部の車両上下方向の上方とを結ぶ接線よりも車両上下方向の上側に配置されていることを特徴とするトーションビーム接合構造。
【請求項3】
請求項
1又は請求項
2のトーションビーム接合構造において、
前記接合部は、側面視して円形で構成されていることを特徴とするトーションビーム接合構造。
【請求項4】
車幅方向に沿って延在して配置されるトーションビームと、前記トーションビームの左右両端部にそれぞれ連結して配置される左右一対のトレーリングアームとを有するトーションビーム式サスペンションの構造において、
前記トーションビームは、車両前後方向前方に配置される前壁部と、車両前後方向後方に配置される後壁部と、前記前壁部と前記後壁部とを跨ぐ上壁部とを備え、車両上下方向の下方側に開口部が設けられ、
前記前壁部及び前記後壁部には、車幅方向の両側部に前記各トレーリングアームと接合される複数の接合部を有し、
前記接合部は、車幅方向外側で最も下方に位置する外接合部と、車幅方向内側で最も上方に位置する内接合部とを有し、
前記内接合部は、前記外接合部よりも車両上下方向の上側に配置され、
前記内接合部と前記外接合部とを繋ぐプレートが配置され、
前記プレートの外縁部の下方は、前記外接合部の車両上下方向の下方と、前記内接合部の車両上下方向の下方とを結ぶ接線に対して、略平行に配置されていることを特徴とするトーションビーム接合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トーションビームと、トレーリングアームとを接合するトーションビーム接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、トーションビームの左右両端部と、左右一対のトレーリングアームとを接合するトーションビーム接合構造が開示されている。
【0003】
この特許文献1では、各トレーリングアームとトーションビームの端部とを接合するために、リベット接合による複数の接合点が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されたトーションビーム接合構造では、リベットによる接合点が、トーションビームの捩り作用を妨げる部位(トーションビームの上面部)にも配置されている。
【0006】
このため、特許文献1に開示されたトーションビーム接合構造では、トーションビームの捩れ作用を阻害するおそれがあり、トーションビームの耐久性が低下するおそれがある。
【0007】
本発明は、前記の点に鑑みてなされたものであり、トーションビームの捩れ作用を阻害することがなく、捩れモード時の耐久性を向上させることが可能なトーションビーム接合構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するために、本発明は、車幅方向に沿って延在して配置されるトーションビームと、前記トーションビームの左右両端部にそれぞれ連結して配置される左右一対のトレーリングアームとを有するトーションビーム式サスペンションの構造において、前記トーションビームは、車両前後方向前方に配置される前壁部と、車両前後方向後方に配置される後壁部と、前記前壁部と前記後壁部とを跨ぐ上壁部とを備え、車両上下方向の下方側に開口部が設けられ、前記前壁部及び前記後壁部には、車幅方向の両側部に前記各トレーリングアームと接合される複数の接合部を有し、前記接合部は、車幅方向外側で最も下方に位置する外接合部と、車幅方向内側で最も上方に位置する内接合部とを有し、前記内接合部は、前記外接合部よりも車両上下方向の上側に配置され、前記接合部は、さらに補助接合部を有し、前記補助接合部は、前記外接合部の車両上下方向の下方と、前記内接合部の車両上下方向の下方とを結ぶ接線よりも車両上下方向の上側に配置されていることを特徴とする。
また、本発明は、車幅方向に沿って延在して配置されるトーションビームと、前記トーションビームの左右両端部にそれぞれ連結して配置される左右一対のトレーリングアームとを有するトーションビーム式サスペンションの構造において、前記トーションビームは、車両前後方向前方に配置される前壁部と、車両前後方向後方に配置される後壁部と、前記前壁部と前記後壁部とを跨ぐ上壁部とを備え、車両上下方向の下方側に開口部が設けられ、前記前壁部及び前記後壁部には、車幅方向の両側部に前記各トレーリングアームと接合される複数の接合部を有し、前記接合部は、車幅方向外側で最も下方に位置する外接合部と、車幅方向内側で最も上方に位置する内接合部とを有し、前記内接合部は、前記外接合部よりも車両上下方向の上側に配置され、前記接合部は、さらに補助接合部を有し、前記補助接合部は、前記外接合部の車両上下方向の上方と、前記内接合部の車両上下方向の上方とを結ぶ接線よりも車両上下方向の上側に配置されていることを特徴とする。
さらに、本発明は、車幅方向に沿って延在して配置されるトーションビームと、前記トーションビームの左右両端部にそれぞれ連結して配置される左右一対のトレーリングアームとを有するトーションビーム式サスペンションの構造において、前記トーションビームは、車両前後方向前方に配置される前壁部と、車両前後方向後方に配置される後壁部と、前記前壁部と前記後壁部とを跨ぐ上壁部とを備え、車両上下方向の下方側に開口部が設けられ、前記前壁部及び前記後壁部には、車幅方向の両側部に前記各トレーリングアームと接合される複数の接合部を有し、前記接合部は、車幅方向外側で最も下方に位置する外接合部と、車幅方向内側で最も上方に位置する内接合部とを有し、前記内接合部は、前記外接合部よりも車両上下方向の上側に配置され、前記内接合部と前記外接合部とを繋ぐプレートが配置され、前記プレートの外縁部の下方は、前記外接合部の車両上下方向の下方と、前記内接合部の車両上下方向の下方とを結ぶ接線に対して、略平行に配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、トーションビームの捩れ作用を阻害することがなく、捩れモード時の耐久性を向上させることが可能なトーションビーム接合構造を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係るトーションビーム接合構造が適用されたトーションビーム式リヤサスペンションの概略構成斜視図である。
【
図2】
図1に示すトーションビーム式リヤサスペンションを車両後方から見た正面図である。
【
図3】
図1のIII-III線に沿った端面図である。
【
図4】(a)は、本実施形態における複数の接合部の配置関係を示す模式説明図、(b)は、第1変形例における複数の接合部の配置関係を示す模式説明図、(c)は、第2変形例における複数の接合部の配置関係を示す模式説明図である。
【
図5】(a)は、本実施形態におけるプレートの形状を示す側面図、(b)は、変形例におけるプレートの形状を示す側面図、(c)は、他の変形例におけるプレートの形状を示す側面図である。
【
図6】トーションビームの一側に捩り力が入力された状態を示す動作説明図である。
【
図7】
図6に示す捩り力が入力された状態を模式的に説明する模式説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図中において、「前後」は、車両前後方向、「左右」は、車幅方向(左右方向)、「上下」は、車両上下方向(鉛直上下方向)を、それぞれ示している。
【0012】
図1に示されるように、本発明の実施形態に係るトーションビーム接合構造が適用されたトーションビーム式リヤサスペンション10は、トーションビーム12と、左右一対のトレーリングアーム14、14とを備えて構成されている。
【0013】
トーションビーム12は、車幅方向に沿って延在するように配置されている。トーションビーム12の左右両端部には、左右一対のトレーリングアーム14、14がそれぞれ連結されている。なお、左側のトレーリングアーム14と、右側のトレーリングアーム14とは、それぞれ対称形状で構成されているため、一側(右側)のトレーリングアーム14を詳細に説明して、他側(左側)のトレーリングアーム14の説明を省略する。
【0014】
トレーリングアーム14は、アーム本体16と、前方延出部18と、ゴムブッシュ20と、ハブ装着部22と、ビーム連結部23とを備えて構成されている。アーム本体16は、平面視して、略L字状を呈する。前方延出部18は、アーム本体16から車両前方に向かって延びている。ゴムブッシュ20は、この前方延出部18の車両前方端部に設けられ、図示しない車体側部材に取り付けられる。ハブ装着部22は、アーム本体16の車両後方の上部に設けられ図示しないハブ機構が装着される。ビーム連結部23は、アーム本体16から車幅方向に沿った内側に向かって所定長だけ突出し、トーションビーム12の左右端部内にそれぞれ嵌挿される。
【0015】
図3に示されるように、トーションビーム12は、軸直断面が略コ字状(略U字状)を呈し、車両前後方向前方に配置される前壁部24と、この前壁部24と対向し車両前後方向後方に配置される後壁部26と、前壁部24の上端と後壁部26の上端とを跨ぐように懸架する上壁部28とが一体的に構成されている。トーションビーム12の車両上下方向の下方側には、前壁部24の下端と後壁部26の下端との間で開口する開口部30が設けられている。なお、前壁部24及び後壁部26の下端には、それぞれ、車両前方に向かって突出するフランジ部24a及び車両後方に向かって突出するフランジ部26bが設けられている。
【0016】
図1及び
図2に示されるように、トーションビーム12の前壁部24及び後壁部26の車幅方向に沿った両端部の近傍部位には、各トレーリングアーム14(ビーム連結部23)と接合される複数の接合部32がそれぞれ設けられている。この複数の接合部32は、車両前方から見てトーションビーム12の一側端部に配置された一側接合部33aと、一側端部と反対側の他側端部に配置された他側接合部33bとを有する。
【0017】
図4(a)に示されるように、複数の接合部32は、外接合部34と、内接合部36と、補助接合部38とから構成されている。外接合部34は、複数の接合部32の中において車幅方向外側で最も下方に位置している。内接合部36は、複数の接合部32の中において車幅方向内側で最も上方に位置している。補助接合部38は、外接合部34及び内接合部36以外の接合部であって、外接合部34及び内接合部36をそれぞれ補強している。この補助接合部38は、後記するように、単数又は複数のいずれであってもよい。
【0018】
複数の接合部32は、トーションビーム12の前壁部24及び後壁部26にそれぞれ設けられた貫通孔(図示せず)に挿通され、前壁部24及び後壁部26をそれぞれ貫通するボルト40(
図1参照)と、後壁部26においてボルト40のねじ部に締結されるナット41(
図2参照)とによって構成されている。
【0019】
なお、本実施形態において、複数の接合部32は、ボルト40及びナット41による締結構造によってトーションビーム12と各トレーリングアーム14とを強固に接合しているが、これに限定されるものではない。本実施形態の接合部32には、例えば、周知のリベットを用いて締結するリベット締結も含まれる。また、本実施形態において、ねじ部と反対側に設けられたボルト40の頭部は、ボルト40の軸方向から見て模式的に円形で構成されている。
【0020】
次に、
図4(a)に基づいて、複数の接合部32の配置関係について説明する。
【0021】
複数の接合部32において、一側接合部33a及び他側接合部33bは、車両前方(車両後方)から見てハの字状に傾斜して配置されている(
図1、
図2参照)。すなわち、一側接合部33a及び他側接合部33bは、相手側に向けてそれぞれ立ち上がるように傾斜して配置されている。
【0022】
また、複数の接合部32において、内接合部36は、外接合部34よりも車両上下方向の上側に配置されている(
図4(a)参照)。補助接合部38は、車両上下方向において上側の内接合部36と下側の外接合部34との間に位置し、外接合部34の車両上下方向の下方と、内接合部36の車両上下方向の下方とを結ぶ接線T1に接するように配置されている。
【0023】
さらに、
図6に示されるように、トーションビーム12には、捩り力(捩り荷重)Fが入力されたときの捩り中心Oが設定されている。このトーションビーム12の捩り中心Oは、トーションビーム12の形状を問わず、トーションビーム12に捩り力(捩り荷重)Fが入力されたときの中心となるものであり、トーションビーム式リヤサスペンション10を製造するときに予め設定されるものである。
【0024】
捩り力(捩り荷重)Fが入力されたトーションビーム12は、捩り中心Oを中心として捩られ、トーションビーム12には、
図7に示す矢印S方向に沿って最大主応力が発生する。この最大主応力方向(矢印S方向)と直交する方向(捩りせん断面)を、それぞれ仮想線L1及び仮想線L2で示している(
図6、
図7参照)。本実施形態では、仮想線L1及び仮想線L2(最大主応力方向(矢印S方向)と直交する方向;捩りせん断面)に合わせて、一側接合部33a(外接合部34、補助接合部38、内接合部36)の各中心、及び、他側接合部33b(外接合部34、補助接合部38、内接合部36)の各中心をそれぞれ配置している(
図6、
図7参照)。この結果、本実施形態では、最大主応力方向(矢印S方向)と直交する仮想線L1(捩りせん断面)及び仮想線L2(捩りせん断面)に合わせて複数の締結点を配置することで、発生する応力を効率的に分散させることができる。
【0025】
さらにまた、
図5(a)に示されるように、複数の接合部32には、各ボルト40が挿通される複数のボルト挿通孔(図示せず)が配置されたプレート44が含まれる。このプレート44は、車両前後方向から見て略長円状を呈する平板からなり、前壁部24の左右両側及び後壁部26の左右両側にそれぞれ配置されている。
【0026】
プレート44の外縁部の下方縁部46は、外接合部34の車両上下方向の下方と、内接合部36の車両上下方向の下方とを結ぶ接線T1に対して、平行若しくは略平行に配置されている(
図5(a)参照)。
【0027】
ここで、プレート44の変形例を
図5(b)に示す。変形例に係るプレート44aは、角が面取りされて湾曲した三角形を呈している点で相違する。プレート44aの各角部には、外接合部34と、内接合部36と、補助接合部38とがそれぞれ配置されている。補助接合部38は、車両上下方向において内接合部36よりも上方に位置している。また、このプレート44aの外縁部の下方縁部46aは、三角形の一辺からなり、外接合部34の車両上下方向の下方と、内接合部36の車両上下方向の下方とを結ぶ接線T1に対して、平行若しくは略平行に配置されている。
【0028】
次に、他の変形例に係るプレート44bを
図5(c)に示す。この他の変形例に係るプレート44bでは、略楕円形状を呈する外側下方に外接合部34を配置すると共に、内側上方に内接合部36を配置している。補助接合部38は、プレート44bの外部に位置し、プレート44bの外縁部の上方縁部46bよりも上方に配置されている。他の変形例に係るプレート44bの外縁部の下方縁部46cは、外接合部34の車両上下方向の下方と、内接合部36の車両上下方向の下方とを結ぶ接線T1に対して、平行若しくは略平行に配置されている。
【0029】
本実施形態に係るトーションビーム接合構造が適用されたトーションビーム式リヤサスペンション10は、基本的に以上のように構成されるものであり、次にその作用効果について説明する。
【0030】
本実施形態において、トーションビーム12は、軸直断面が略コ字状(略U字状)を呈し、車両前後方向前方に配置される前壁部24と、この前壁部24と対向し車両前後方向後方に配置される後壁部26と、前壁部24の上端と後壁部26の上端とを跨ぐように懸架する上壁部28とが一体的に構成されている。トーションビーム12の車両上下方向の下方側には、前壁部24の下端と後壁部26の下端との間で開口する開口部30が設けられている。
【0031】
また、トーションビーム12の前壁部24及び後壁部26の車幅方向に沿った両端部の近傍部位には、各トレーリングアーム14(ビーム連結部23)と接合される複数の接合部32がそれぞれ設けられている。この複数の接合部32は、車両前方から見てトーションビーム12の一側端部に配置された一側接合部33aと、一側端部と反対側の他側端部に配置された他側接合部33bとを有する。この一側接合部33a及び他側接合部33bは、車両前方から見てハの字状に傾斜して配置されている。すなわち、一側接合部33a及び他側接合部33bは、相手側に向けてそれぞれ立ち上がるように傾斜して配置されている。
【0032】
さらに、複数の接合部32は、該複数の接合部32の中において車幅方向外側で最も下方に位置する外接合部34と、該複数の接合部32の中において車幅方向内側で最も上方に位置する内接合部36とを有する。この複数の接合部32において、内接合部36は、外接合部34よりも車両上下方向の上側に配置されている。
【0033】
図6に示されるように、例えば、横力等の入力によって左右後輪が逆位相となった際、トーションビーム12の一側に対して捩り力Fが入力される。この捩り力Fの入力時、複数の接合部32である一側接合部33a(他側接合部33b)に対して応力集中が発生する。しかしながら、本実施形態では、トーションビーム12の捩り力Fの入力時に発生する最大主応力方向(
図7の矢印S方向)と直交する仮想線L1及び仮想線L2(捩りせん断面)に合わせて複数の接合部32を略ハの字状に配置することで(
図7参照)、トーションビーム12の捩り作用を阻害することがなく、発生する応力を分散させて耐久性を向上させることができる。この結果、本実施形態では、従来と同様の強度・剛性を保持しながら、例えば、トーションビーム12を構成する前壁部24、後壁部26、及び、上壁部28の板厚をそれぞれ減少させて軽量化を達成することができる。
【0034】
本実施形態において、トーションビーム12の前壁部24及び後壁部26には、内接合部36と外接合部34とを繋ぐプレート44がそれぞれ配置されている(
図5(a)参照)。このプレート44の外縁部の下方縁部46は、外接合部34の車両上下方向の下方と、内接合部36の車両上下方向の下方とを結ぶ接線T1に対して、平行若しくは略平行に配置されている。
【0035】
本実施形態では、プレート44の外縁部の下方縁部46を、捩り力Fの入力時に発生する最大主応力方向(
図7の矢印S方向)と直交する方向(捩りせん断面)に合わせて平行若しくは略平行に配置することで、トーションビーム12の捩り作用を阻害することがなく、複数の接合部32で発生する応力を低減させて耐久性を向上させることができる。仮に、トーションビーム12全体の板厚を増大させると、トーションビーム12が捩りきれずにトーションビーム12全体の応力が増大するが、本実施形態では、複数の接合部32の周囲の領域のみをプレート44で補強することで、複数の接合部32の剛性・強度を向上させると共に、トーションビーム12全体の応力を低減することができる。さらに、複数の接合部32の周囲の領域のみを補強するプレート44を配置することで、トーションビーム12全体の軽量化を達成することができる。
【0036】
次に、本実施形態の変形例について説明する。
図4(b)は、第1変形例における複数の接合部の配置関係を示す模式説明図である。
図4(b)に示されるように、第1変形例では、第1補助接合部38aと、第2補助接合部38bとからなる2つの補助接合部によって構成されている。第1補助接合部38aは、外接合部34よりも車幅方向外側で且つ車両上下方向の上方に配置されている。また、第2補助接合部38bは、内接合部36よりも車幅方向外側で且つ車両上下方向の上方に配置されている。この第1補助接合部38a及び第2補助接合部38bは、外接合部34の車両上下方向の下方と、内接合部36の車両上下方向の下方とを結ぶ接線T1よりも車両上下方向の上側に配置されている。なお、各接合部34、36、38、38a、38bは、便宜的に側面視して円形で構成されている。
【0037】
第1変形例では、第1補助接合部38a及び第2補助接合部38bを、車両上下方向の上方側又はトレーリングアーム14側、若しくは、その両方を合せた位置に配置することで、トーションビーム12の捩り作用を阻害することがなく、トーションビーム12の耐久性を向上させることができる。この結果、第1変形例では、トーションビーム12の板厚を増大させることがなく、トーションビーム12の耐久性を向上させることができる。
【0038】
また、仮に、第1補助接合部38a及び第2補助接合部38bを、外接合部34の車両上下方向の下方と、内接合部36の車両上下方向の下方とを結ぶ接線T1よりも車両上下方向の下側の領域に配置した場合、トーションビーム12の捩り作用に支障をきたし、トーションビーム12が捩りきらない、という問題がある。この結果、第1補助接合部38a及び第2補助接合部38bを含む複数の接合部32は、接線T1よりも下側の領域に配置しないことが好ましい。
【0039】
図4(c)は、第2変形例における複数の接合部の配置関係を示す模式説明図である。
図4(c)に示されるように、第2変形例では、第1変形例と同様に、第1補助接合部38aと、第2補助接合部38bとからなる2つの補助接合部によって構成されている。この第1補助接合部38a及び第2補助接合部38bは、外接合部34の車両上下方向の上方と、内接合部36の車両上下方向の上方とを結ぶ接線T2よりも車両上下方向の上側に配置されている。
【0040】
第2変形例では、第1変形例と同様に、トーションビーム12の捩り作用を阻害することがなく、トーションビーム12の耐久性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0041】
10 トーションビーム式リヤサスペンション
12 トーションビーム
14 トレーリングアーム
24 前壁部
26 後壁部
28 上壁部
30 開口部
32 接合部
34 外接合部
36 内接合部
38、38a、38b 補助接合部
40 ボルト
41 ナット
44、44a、44b プレート
T1、T2 接線
L1、L2 仮想線
O 捩り中心
S 最大主応力方向