(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-31
(45)【発行日】2024-08-08
(54)【発明の名称】高さ計測装置及び高さ計測方法
(51)【国際特許分類】
G01B 11/24 20060101AFI20240801BHJP
G01B 11/02 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
G01B11/24 A
G01B11/02 Z
(21)【出願番号】P 2022500339
(86)(22)【出願日】2021-02-02
(86)【国際出願番号】 JP2021003768
(87)【国際公開番号】W WO2021161854
(87)【国際公開日】2021-08-19
【審査請求日】2023-08-14
(31)【優先権主張番号】P 2020022724
(32)【優先日】2020-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【氏名又は名称】柴山 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100183438
【氏名又は名称】内藤 泰史
(72)【発明者】
【氏名】中村 共則
(72)【発明者】
【氏名】土屋 邦彦
【審査官】仲野 一秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-137394(JP,A)
【文献】特開2003-14422(JP,A)
【文献】特開2007-101399(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0038682(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光軸方向と交差する方向に配列された互いに波長が異なる複数の光束を含む照射光を、測定対象物の高さ方向に対して傾いた角度で前記測定対象物に照射する光照射部と、
前記照射光が照射された前記測定対象物からの光を検出し、該光の波長情報を出力する光検出部と、
前記波長情報に基づいて、前記測定対象物の高さを算出する解析部と、を備え、
前記光検出部は、
所定の波長域において波長に応じて透過率及び反射率が変化し、前記
測定対象物からの光を透過及び反射することにより分離する光学素子と、
前記光学素子において反射された光から反射光量を検出する第1の光検出器と、
前記光学素子を透過した光から透過光量を検出する第2の光検出器と、
前記反射光量と前記透過光量との比に基づいて前記波長情報を算出し出力する処理部と、を有する、高さ計測装置。
【請求項2】
前記第1の光検出器及び前記第2の光検出器は、ラインセンサである、請求項1記載の高さ計測装置。
【請求項3】
前記光照射部は、平行光である前記複数の光束を含む前記照射光を前記測定対象物に照射する、請求項1又は2記載の高さ計測装置。
【請求項4】
前記光照射部は、
白色光を出力する光源と、
前記光源から出力された前記白色光を分光することにより前記光軸方向と交差する方向において互いに波長が異なる複数の光束を含む前記照射光を出力する分光素子と、を有する、請求項1~3のいずれか一項記載の高さ計測装置。
【請求項5】
前記測定対象物に照射される光として、前記光照射部によって前記測定対象物に照射される光以外の光を遮断する暗箱を更に備える、請求項1~4のいずれか一項記載の高さ計測装置。
【請求項6】
前記測定対象物を移動させる搬送部を更に備える、請求項1~5のいずれか一項記載の高さ計測装置。
【請求項7】
光軸方向と交差する方向に配列された互いに波長が異なる複数の光束を含む照射光を、測定対象物の高さ方向に対して傾いた角度で前記測定対象物に照射する光照射ステップと、
所定の波長域において波長に応じて透過率及び反射率が変化し、前記
測定対象物からの光を透過及び反射することにより分離する光学素子、前記光学素子において反射された光から反射光量を検出する第1の光検出器、及び、前記光学素子を透過した光から透過光量を検出する第2の光検出器、によって得られる反射光量及び透過光量の比に基づいて、前記測定対象物からの光の波長情報を算出する波長算出ステップと、
前記波長情報に基づいて前記測定対象物の高さを算出する高さ算出ステップと、を含む高さ計測方法。
【請求項8】
前記光照射ステップでは、前記測定対象物を移動させることにより、前記測定対象物における前記照射光の照射ポイントを連続的に変化させ、
前記高さ算出ステップでは、前記測定対象物における各前記照射ポイントに対応する高さを算出することにより、前記測定対象物の形状を導出する、請求項7記載の高さ計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、高さ計測装置及び高さ計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
測定対象物の高さを計測する方法として、測定対象物に対して光を照射し、該測定対象物からの光を検出することにより、高さを計測する方法が知られている(例えば特許文献1~3参照)。特許文献1~3に開示された高さ計測方法では、光軸方向と交差する方向に配列された互いに波長が異なる複数の光束を含む照射光を、測定対象物の高さ方向に対して傾いた角度で該測定対象物に照射し、該測定対象物からの反射光の波長に基づいて、該測定対象物の高さを計測している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平7-27520号公報
【文献】特開2007-101399号公報
【文献】特開2009-145279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上述した高さ計測方法においては、測定対象物からの光の波長をカラー撮像素子によって求めている。このようにして光の波長を求める場合には、光の波長の導出において測定対象物自体の色の影響を受けてしまうため、最終的な測定対象物の高さ計測結果の精度が低下するおそれがある。
【0005】
本発明の一態様は上記実情に鑑みてなされたものであり、より高精度に測定対象物の高さを計測することができる高さ計測装置及び高さ計測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る高さ計測装置は、光軸方向と交差する方向に配列された互いに波長が異なる複数の光束を含む照射光を、測定対象物の高さ方向に対して傾いた角度で測定対象物に照射する光照射部と、照射光が照射された測定対象物からの光を検出し、該光の波長情報を出力する光検出部と、波長情報に基づいて、測定対象物の高さを算出する解析部と、を備え、光検出部は、所定の波長域において波長に応じて透過率及び反射率が変化し、測定対象物からの光を透過及び反射することにより分離する光学素子と、光学素子において反射された光から反射光量を検出する第1の光検出器と、光学素子を透過した光から透過光量を検出する第2の光検出器と、反射光量と透過光量との比に基づいて波長情報を算出し出力する処理部と、を有する。
【0007】
本発明の一態様に係る高さ計測装置では、光軸方向と交差する方向に配列された互いに波長が異なる複数の光束を含む照射光が、測定対象物の高さ方向に対して傾いた角度で測定対象物に照射され、測定対象物からの光に基づいて波長情報が導出されて出力され、波長情報に基づいて測定対象物の高さが算出される。このように、光軸方向と交差する方向において互いに異なる複数の光束を含む照射光が測定対象物に対して斜めから(傾いた角度で)照射されることにより、測定対象物の高さによって測定対象物に照射される光の波長が変化することとなるので、測定対象部からの光が検出されて波長情報が導出されることにより、当該波長情報に基づき、測定対象物の高さを適切に算出することができる。ここで、本発明の一態様に係る高さ計測装置では、波長に応じて透過率及び反射率が変化する光学素子によって光が分離され、光学素子において反射された光から反射光量が検出され、光学素子を透過した光から透過光量が検出され、反射光量及び透過光量の比に基づいて波長情報が算出されている。例えば、測定対象物からの光の波長を、カラー撮像素子によって取得される光の強度に基づいて導出される等の場合には、測定対象部物自体の色の影響を受けて、カラー撮像素子によって取得される光の強度が変化してしまうため、光の波長情報の算出精度を担保できないおそれがある。この場合には、波長情報に基づく測定対象物の高さ計測精度も低下してしまう。この点、本発明の一態様に係る高さ計測装置では、上述したように、波長に応じて透過率及び反射率が変化する光学素子によって光が分離されて、分離された反射光量及び透過光量の比に基づいて波長情報が算出されているので、測定対象物自体の色の影響を受けずに、光の波長情報を高精度に算出することができる。このような高さ計測装置によれば、高精度に算出した光の波長情報に基づいて、測定対象物の高さを高精度に算出することができる。
【0008】
上記高さ計測装置において、第1の光検出器及び前記第2の光検出器は、ラインセンサであってもよい。ラインセンサが用いられることにより、例えば測定対象物を移動させて撮像ラインを変更しながら、各撮像ラインが高精度に撮像される。これにより、測定対象物の高さをより高精度に算出することができる。
【0009】
上記高さ計測装置において、光照射部は、平行光である複数の光束を含む照射光を測定対象物に照射してもよい。平行光が照射されることにより、波長と高さとの対応関係を容易且つ適切に導出可能となり、測定対象物の高さをより高精度に算出することができる。
【0010】
上記高さ計測装置において、光照射部は、白色光を出力する光源と、光源から出力された白色光を分光することにより光軸方向と交差する方向において互いに波長が異なる複数の光束を含む照射光を出力する分光素子と、を有していてもよい。このように、可視光線を全て含む白色光が分光されて各光束が出力されることにより、互いに波長が異なる複数の光束を含む照射光を容易且つ適切に出力することができる。
【0011】
上記高さ計測装置は、測定対象物に照射される光として、光照射部によって測定対象物に照射される光以外の光を遮断する暗箱を更に備えていてもよい。このような構成によれば、高さ計測と関係が無い光を遮断して、測定対象物の高さをより高精度に算出することができる。
【0012】
上記高さ計測装置は、測定対象物を移動させる搬送部を更に備えていてもよい。このような構成によれば、測定対象物における照射光の照射ポイントを変化させながら、測定対象物全体の波長情報を導出し、測定対象物全体の高さ計測を行うことができる。
【0013】
本発明の一態様に係る高さ計測方法は、光軸方向と交差する方向に配列された互いに波長が異なる複数の光束を含む照射光を、測定対象物の高さ方向に対して傾いた角度で測定対象物に照射する光照射ステップと、所定の波長域において波長に応じて透過率及び反射率が変化し、測定対象物からの光を透過及び反射することにより分離する光学素子、光学素子において反射された光から反射光量を検出する第1の光検出器、及び、光学素子を透過した光から透過光量を検出する第2の光検出器、によって得られる反射光量及び透過光量の比に基づいて、測定対象物からの光の波長情報を算出する波長算出ステップと、波長情報に基づいて測定対象物の高さを算出する高さ算出ステップと、を含む。このような高さ計測方法によれば、高精度に算出した光の波長情報に基づいて、測定対象物の高さを高精度に算出することができる。
【0014】
上記高さ計測方法において、光照射ステップでは、測定対象物を移動させることにより、測定対象物における照射光の照射ポイントを連続的に変化させ、高さ算出ステップでは、測定対象物における各照射ポイントに対応する高さを算出することにより、測定対象物の形状を導出してもよい。このような高さ計測方法では、測定対象物における照射光の照射ポイントが連続的に変化して、測定対象物全体の高さ計測を行い、当該高さ計測の結果に基づき、測定対象物の形状を適切に導出することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一態様に係る高さ計測装置によれば、より高精度に測定対象物の高さを計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本実施形態に係る高さ計測装置を模式的に示した図である。
【
図2】測定対象物の高さ計測及び形状推定処理を説明する図である。
【
図3】
図1に示された光照射部の構成例を示す図である。
【
図4】
図1に示されたカメラシステムを模式的に示した図である。
【
図5】光のスペクトル及び傾斜ダイクロイックミラーの特性を説明する図である。
【
図6】本実施形態に係る高さ計測方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0018】
図1は、本実施形態に係る高さ計測装置1を模式的に示した図である。高さ計測装置1は、サンプル100に対して光を照射し、該サンプル100からの反射光に基づいて、サンプル100の高さを計測する装置である。高さ計測装置1は、サンプル100における光の照射ポイントを連続的に変化させることにより、サンプル100の各領域の高さを算出し、最終的に、当該各領域の高さに基づいてサンプル100の形状を導出してもよい。サンプル100は、高さを計測したいどのような物体でもよく、例えば、食品や各種加工品等である。
【0019】
図2は、サンプル100の高さ計測及び形状推定処理を説明する図である。本実施形態に係る高さ計測装置1が実施する高さ計測方法及び形状推定方法においては、
図2に示されるように、複数の波長を含んだ光がサンプル100に対して斜めから照射され、該サンプル100からの反射光がレンズ21(後述)を介して傾斜ダイクロイックミラー22(後述)において分離され、分離された光がラインセンサ等である光検出器23,24(後述)によって検出され、それぞれの光検出器23,24において検出された光の輝度(光量)の分布に基づいて、各照射ポイントにおける光の波長情報が復元され、波長情報に基づいて各照射ポイントにおける高さが算出され、各照射ポイントの高さに基づいてサンプル100の形状が復元される。詳細については後述する。
【0020】
図1に示されるように、高さ計測装置1は、光照射部10と、カメラシステム20(光検出部)と、制御装置30(解析部)と、暗箱40と、ベルトコンベア50(搬送部)と、を備えている。
【0021】
ベルトコンベア50は、サンプル100を移動させる搬送部である。ベルトコンベア50は、サンプル100を水平方向の一方向に移動させることにより、サンプル100における照射光(光照射部10から照射される照射光)の照射ポイントを変化させる。ベルトコンベア50は、サンプル100を載置すると共に上記一方向に移動するベルト部52と、該ベルト部52を動作させるアクチュエータ51と、を有する。アクチュエータ51は、制御装置30の制御部31(後述)によって制御される。
【0022】
暗箱40は、上述した高さ計測装置1の構成のうち、少なくとも、光照射部10と、カメラシステム20と、ベルトコンベア50の一部(詳細にはベルトコンベア50において載置するサンプル100に光照射部10からの照射光が照射されるポイント)とを収容しており、収容した各構成に外部の光の影響が及ぼされることを回避するように設けられている。暗箱40は、サンプル100に照射される光として、光照射部10から照射される照射される光以外の光を遮断する。
【0023】
光照射部10は、光軸方向と交差する方向に配列された互いに波長が異なる複数の光束を含む照射光を、サンプル100(測定対象物)の高さ方向に対して傾いた角度でサンプル100に照射する。光照射部10からサンプル100に照射される照射光においては、
図1に示されるように、光軸方向と交差する方向に沿って、互いに異なる波長の扁平光束Li1、Li2、…LiX(Xは正の整数)が隙間なく配列されている。サンプル100の高さ方向に対して傾いた角度とは、垂直方向以外の角度であり、より詳細には、垂直方向及び水平方向以外の角度(斜め方向の角度)である。このような照射光がサンプル100に照射されることにより、サンプル100の一点においては、高さに応じて異なる色(扁平光束Li1、Li2、…LiXのいずれか1つのみ)が照射されることとなる。このため、サンプル100から反射される光を観察することにより、サンプル100の照射された点における高さを導出することができる。光照射部10は、平行光である複数の光束を含む照射光をサンプル100に照射する。光照射部10は、例えば、光源11と、分光素子12,13と、を有している。このように、光照射部10は、光の分光に係る素子として2つの分光素子12,13を有している。
【0024】
光源11は、例えば白色光を出力する白色光源であり、例えば白色LEDやランプ光源、スーパーコンティニウム光源、レーザ励起白色光源等である。光源11は、白色光以外の光を出力する光源であってもよい。光源11から出射される光はサンプル100において反射・散乱される波長を含む光であり、サンプル100に応じて選択される。光源11は、カメラシステム20が有する傾斜ダイクロイックミラー22(後述)の所定の波長域(傾斜ダイクロイックミラー22が、波長に応じて透過率及び反射率が変化する波長域)に含まれる波長の光を出力する。
図5は、傾斜ダイクロイックミラー22の特性と光源11から出射される光の波長との関係を説明する図である。
図5において、横軸は波長を示しており、縦軸は傾斜ダイクロイックミラー22の透過率を示している。
図5の傾斜ダイクロイックミラー22の特性X4に示されるように、傾斜ダイクロイックミラー22においては、所定の波長域X1では波長の変化に応じて光の透過率(及び反射率)が緩やかに変化し、該特定の波長域以外の波長域では波長の変化に関わらず光の透過率(及び反射率)が一定とされている。換言すれば、特定の波長帯(波長λ
1~λ
2の波長帯)では波長の変化に応じて光の透過率が単調増加(反射率が単調減少)で変化している。
図5に示されるように、光源11から出力される光X2は、上述した所定の波長域X1に含まれる波長の光を含んでいる。すなわち、光源11は、所定の波長域X1を含むブロードなスペクトルの光を出力する。
【0025】
図1に戻り、分光素子12,13は、光源11から出力された白色光を波長毎に分光(虹色に分光)することにより光軸方向と交差する方向において互いに波長が異なる複数の扁平光束Li1、Li2、…LiXを含む照射光を出力する。分光素子12は、光源11から出力された白色光を受け、分光素子13に向けて光を出力する。分光素子13は、分光素子12から出力された光を受け、平行光である照射光をサンプル100に向けて出力する。
【0026】
図3は、光照射部10の構成例を示す図である。
図3(a)に示される光照射部10は、分光素子12,13として、回析格子12a,13aを有している。回析格子12a,13aは、長波長ほどよく曲がるように各波長の光束を出力する。なお、回析格子13aはレンズであってもよい。
図3(b)に示される光照射部10は、分光素子12,13として、プリズム12b,13bを有している。プリズム12b,13bは、波長毎の屈折率に依存して、短波長ほどよく曲がるように各波長の光束を出力する。なお、プリズム13bはレンズであってもよい。以下では、分光素子12,13が回析格子12a,13aであるとして説明する。
【0027】
図1に戻り、カメラシステム20は、光照射部10からの照射光が照射されたサンプル100からの光を検出し、該光の波長情報を出力する。カメラシステム20は、サンプル100からの光が検出可能な位置に配置されている。
図4は、
図1に示されたカメラシステム20を模式的に示した図である。
図4に示されるように、カメラシステム20は、レンズ21と、傾斜ダイクロイックミラー22(光学素子)と、光検出器23,24(第1の光検出器,第2の光検出器)と、バンドパスフィルタ25,26と、処理部27と、を含んで構成されている。
【0028】
レンズ21は、入射したサンプル100からの光を集光するレンズである。レンズ21は、傾斜ダイクロイックミラー22の前段(上流)に配置されていてもよいし、傾斜ダイクロイックミラー22と光検出器23,24との間の領域に配置されていてもよい。レンズ21は、有限焦点レンズであってもよいし、無限焦点レンズであってもよい。レンズ21が有限焦点レンズである場合には、レンズ21から光検出器23,24までの距離は所定値とされる。レンズ21が無限焦点レンズである場合には、レンズ21は、サンプル100からの光を平行光に変換するコリメータレンズであり、平行光が得られるように収差補正されている。レンズ21から出力された光は、傾斜ダイクロイックミラー22に入射する。
【0029】
傾斜ダイクロイックミラー22は、特殊な光学素材を用いて作成されたミラーであり、サンプル100からの光を波長に応じて透過及び反射することにより分離する光学素子である。傾斜ダイクロイックミラー22は、所定の波長域において波長に応じて光の透過率及び反射率が変化するように構成されている。
【0030】
図5は、光のスペクトル及び傾斜ダイクロイックミラー22の特性を説明する図である。
図5において横軸は波長を示しており、縦軸はスペクトル強度(光のスペクトルの場合)及び透過率(傾斜ダイクロイックミラー22の場合)を示している。
図5の傾斜ダイクロイックミラー22の特性X4に示されるように、傾斜ダイクロイックミラー22においては、所定の波長域(波長λ
1~λ
2の波長域)では波長の変化に応じて光の透過率(及び反射率)が緩やかに変化し、該所定の波長域以外の波長域(すなわち、波長λ
1よりも低波長側及び波長λ
2よりも高波長側)では波長の変化に関わらず光の透過率(及び反射率)が一定とされている。透過率と反射率とは、一方が大きくなる方向に変化すると他方が小さくなる方向に変化する、負の相関関係にあるため、以下では「透過率(及び反射率)」と記載せずに単に「透過率」と記載する場合がある。なお、「波長の変化に関わらず光の透過率が一定」とは、完全に一定である場合だけでなく、例えば波長1nmの変化に対する透過率の変化が0.1%以下であるような場合も含むものである。波長λ
1よりも低波長側では波長の変化に関わらず光の透過率が概ね0%であり、波長λ
2よりも高波長側では波長の変化に関わらず光の透過率が概ね100%である。なお、「光の透過率が概ね0%である」とは、0%+10%程度の透過率を含むものであり、「光の透過率が概ね100%である」とは、100%-10%程度の透過率を含むものである。
【0031】
図4に戻り、光検出器23,24は、傾斜ダイクロイックミラー22によって分離された光を検出する。光検出器23,24は、例えば一次元のラインセンサである。光検出器23は、傾斜ダイクロイックミラー22を透過した光から透過光量を検出する。光検出器24は、傾斜ダイクロイックミラー22において反射された光を検出する。光検出器23,24が感度を有する波長の範囲は、傾斜ダイクロイックミラー22において波長の変化に応じて光の透過率(及び反射率)が変化する所定の波長域に対応している。
【0032】
バンドパスフィルタ25は、傾斜ダイクロイックミラー22及び光検出器23の間に配置されている。バンドパスフィルタ26は、傾斜ダイクロイックミラー22及び光検出器24の間に配置されている。バンドパスフィルタ25,26は、例えば、上述した所定の波長域(傾斜ダイクロイックミラー22において、波長に応じて光の透過率及び反射率が変化する波長域)以外の波長域の光を取り除くフィルタであってもよい。
【0033】
処理部27は、光検出器23によって検出された透過光量と、光検出器24によって検出された反射光量との比に基づいて、波長情報を算出し、制御装置30に出力する。本高さ計測装置1では、ベルトコンベア50によって移動するサンプル100上の一点に照射される光は単色である。すなわち、サンプル100の一点に照射される光は、互いに波長が異なる複数の光束を含む照射光におけるいずれかの光束の光のみであり、単色である。照射される光の波長(導出したい波長)をλ、透過光量をT、反射光量をRとすると、波長シフトパラメータSは、以下の(1)式で示される。
S=(T-R)/(T+R)・・・・(1)
【0034】
ここで、傾斜ダイクロイックミラー22において反射率が100%となる波長をλ1、透過率が100%となる波長をλ2とすると、変化率が波長に対して直線的に変化するという傾斜ダイクロイックミラーの特性から、透過率50%の波長λ50%は(λ1+λ2)/2となることは明らかである。このとき、波長シフトパラメータSは0となる。ここから、波長がΔλシフトしたときの変化量は波長シフトパラメータSを用いて、以下の(2)式で示される。また、波長λは以下の(3)式で示される。
Δλ=S(λ2-λ1)/2・・・・(2)
λ=λ50%+Δλ・・・・(3)
処理部27は、これらの式を用いて導出した波長(波長情報)を、制御装置30に出力する。
【0035】
図1に戻り、制御装置30は、コンピュータであって、物理的には、RAM、ROM等のメモリ、CPU等のプロセッサ(演算回路)、通信インターフェイス、ハードディスク等の格納部を備えて構成されている。制御装置30は、メモリに格納されるプログラムをコンピュータシステムのCPUで実行することにより機能する。制御装置30は、マイコンやFPGAで構成されていてもよい。
【0036】
制御装置30は、制御部31と、算出部32と、表示部33と、を有する。制御部31は、高さ計測装置1における各構成を制御する。具体的には、制御部31は、カメラシステム20を制御すると共に、ベルトコンベア50のアクチュエータ51を制御する。制御部31は、アクチュエータを制御することによってベルトコンベア50の搬送速度を調整することにより、カメラシステム20内の例えばラインセンサである光検出器23,24のラインレートを制御する。
【0037】
算出部32は、処理部27によって導出された波長情報に基づいて、サンプル100の高さ(照射光が照射されたサンプル100の一点の高さ)を算出する。算出部32は、回析格子のピッチD、波長λ、分光素子12,13間の距離Lに基づいて、サンプル100の高さを算出する。いま、回析格子である分光素子12,13によって照射光が平行光化されているため、波長毎の高さhは以下の(4)式により示され、サンプル100の高さHは以下の(5)式によって示される。なお、θは分光素子13に対する光の傾斜角度、Φは水平方向からの照射光の傾斜角度である。
h=L*tanθ=L*λ/√(D2-λ2)・・・・(4)
H=hcosΦ・・・・(5)
【0038】
算出部32は、サンプル100における各照射ポイントに対応する高さを算出することにより、サンプル100の形状を導出してもよい。例えば光検出器23,24がラインセンサである場合においては、1ライン毎に高さが計測されることとなるので、連続的に各ラインの高さを算出することによって、サンプル100の3次元的な形状を導出することができる。なお、プリズムを分光素子12,13として用いる場合、波長毎の曲がり方の差はガラスの屈折率次第となるため単純に計算することはできないため、上述したような数式ではなく、予め取得された表による換算か、あるいは、近似曲線からの近似値によって、高さが算出される。
【0039】
表示部33は、算出部32によって算出されたサンプル100の高さに係る情報を表示する。表示部33は、例えば、光検出器23,24における検出結果(撮像結果)及びサンプル100の高さを示す情報を表示する。また、表示部33は、各照射ポイントに対応する高さから導出されサンプル100の形状(復元形状)を表示部33に表示してもよい。
【0040】
次に、本実施形態に係る高さ計測装置1が実施する高さ計測方法について、
図6を参照して説明する。
図6は、本実施形態に係る高さ計測方法を示すフローチャートである。
【0041】
本実施形態に係る高さ計測方法では、
図6に示されるように、ベルトコンベア50によってサンプル100が移動させられながら、斜めからサンプル100に対して照射光が照射される(ステップS1:光照射ステップ)。照射光は、光軸方向と交差する方向に配列された互いに波長が異なる複数の光束を含んでいる。
【0042】
つづいて、サンプル100からの反射光に基づき、光の波長情報が算出される(ステップS2:波長算出ステップ)。具体的には、傾斜ダイクロイックミラー22によって分離された透過光量及び反射光量の比に基づいて、波長情報が算出される。
【0043】
つづいて、波長情報に基づいて、サンプル100の高さが算出される(ステップS3:高さ算出ステップ)。高さ算出ステップでは、移動することによって照射ポイントが変化するサンプル100における各照射ポイントに対応する高さがそれぞれ算出されることにより、サンプル100の形状が復元(導出)されてもよい。以上が、高さ計測装置1が実施する高さ計測方法である。
【0044】
次に、本実施形態に係る高さ計測装置1及び高さ計測方法の作用効果について説明する。
【0045】
本実施形態に係る高さ計測装置1は、光軸方向と交差する方向に配列された互いに波長が異なる複数の光束を含む照射光を、サンプル100の高さ方向に対して傾いた角度でサンプル100に照射する光照射部10と、照射光が照射されたサンプル100からの光を検出し、該光の波長情報を出力するカメラシステム20と、波長情報に基づいて、サンプル100の高さを算出する制御装置30と、を備え、カメラシステム20は、所定の波長域において波長に応じて透過率及び反射率が変化し、サンプル100からの光を透過及び反射することにより分離する傾斜ダイクロイックミラー22と、傾斜ダイクロイックミラー22において反射された光から反射光量を検出する光検出器24と、傾斜ダイクロイックミラー22を透過した光から透過光量を検出する光検出器23と、反射光量と透過光量との比に基づいて波長情報を算出し出力する処理部27と、を有する。
【0046】
本実施形態に係る高さ計測装置1では、光軸方向と交差する方向に配列された互いに波長が異なる複数の光束を含む照射光が、サンプル100の高さ方向に対して傾いた角度でサンプル100に照射され、サンプル100からの光に基づいて波長情報が導出されて出力され、波長情報に基づいてサンプル100の高さが算出される。このように、光軸方向と交差する方向において互いに異なる複数の光束を含む照射光がサンプル100に対して斜めから(傾いた角度で)照射されることにより、サンプル100の高さによってサンプル100に照射される光の波長が変化することとなるので、サンプル100からの光が検出されて波長情報が導出されることにより、当該波長情報に基づき、サンプル100の高さを適切に算出することができる。ここで、本実施形態に係る高さ計測装置1では、波長に応じて透過率及び反射率が変化する傾斜ダイクロイックミラー22によって光が分離され、傾斜ダイクロイックミラー22において反射された光から反射光量が検出され、傾斜ダイクロイックミラー22を透過した光から透過光量が検出され、反射光量及び透過光量の比に基づいて波長情報が算出されている。例えば、測定対象物からの光の波長を、カラー撮像素子によって取得される光の強度に基づいて導出される等の場合には、測定対象部物自体の色の影響を受けて、カラー撮像素子によって取得される光の強度が変化してしまうため、光の波長情報の算出精度を担保できないおそれがある。この場合には、波長情報に基づく測定対象物の高さ計測精度も低下してしまう。この点、本実施形態に係る高さ計測装置1では、上述したように、波長に応じて透過率及び反射率が変化する傾斜ダイクロイックミラー22によって光が分離されて、分離された反射光量及び透過光量の比に基づいて波長情報が算出されているので、サンプル100自体の色の影響を受けずに、光の波長情報を高精度に算出することができる。このような高さ計測装置1によれば、高精度に算出した光の波長情報に基づいて、サンプル100の高さを高精度に算出することができる。算出精度は、例えばフィルタの特性の歪みやレンズの透過率等を補正することによって向上させることができ、例えば傾斜ダイクロイックミラー22の「所定の波長域」(波長に応じて透過率及び反射率が変化する波長域)を400nm~700nmとなるように設計した場合においては、誤差1nm程度とすることができる。
【0047】
上記高さ計測装置1において、光検出器23,24は、ラインセンサであってもよい。ラインセンサが用いられることにより、例えばサンプル100を移動させて撮像ラインを変更しながら、各撮像ラインが高精度に撮像される。これにより、サンプル100の高さをより高精度に算出することができる。
【0048】
上記高さ計測装置1において、光照射部10は、平行光である複数の光束を含む照射光をサンプル100に照射してもよい。平行光が照射されることにより、波長と高さとの対応関係を容易且つ適切に導出可能となり、サンプル100の高さをより高精度に算出することができる。
【0049】
上記高さ計測装置1において、光照射部10は、白色光を出力する光源11と、光源11から出力された白色光を分光することにより光軸方向と交差する方向において互いに波長が異なる複数の光束を含む照射光を出力する分光素子12,13と、を有していてもよい。このように、可視光線を全て含む白色光が分光されて各光束が出力されることにより、互いに波長が異なる複数の光束を含む照射光を容易且つ適切に出力することができる。
【0050】
上記高さ計測装置1は、サンプル100に照射される光として、光照射部10によってサンプル100に照射される光以外の光を遮断する暗箱40を更に備えている。このような構成によれば、高さ計測と関係が無い光を遮断して、サンプル100の高さをより高精度に算出することができる。
【0051】
上記高さ計測装置1は、サンプル100を移動させるベルトコンベア50を更に備えていてもよい。このような構成によれば、サンプル100における照射光の照射ポイントを変化させながら、サンプル100全体の波長情報を導出し、サンプル100全体の高さ計測を行うことができる。
【0052】
本実施形態に係る高さ計測方法は、光軸方向と交差する方向に配列された互いに波長が異なる複数の光束を含む照射光を、サンプル100の高さ方向に対して傾いた角度でサンプル100に照射する光照射ステップと、所定の波長域において波長に応じて透過率及び反射率が変化し、サンプル100からの光を透過及び反射することにより分離する傾斜ダイクロイックミラー22において反射された光から反射光量を検出する光検出器24、及び、傾斜ダイクロイックミラー22を透過した光から透過光量を検出する光検出器23、によって得られる反射光量及び透過光量の比に基づいて、サンプル100からの光の波長情報を算出する波長算出ステップと、波長情報に基づいてサンプル100の高さを算出する高さ算出ステップと、を含む。このような高さ計測方法によれば、高精度に算出した光の波長情報に基づいて、サンプル100の高さを高精度に算出することができる。
【0053】
上記高さ計測方法において、光照射ステップでは、サンプル100を移動させることにより、サンプル100における照射光の照射ポイントを連続的に変化させ、高さ算出ステップでは、サンプル100における各照射ポイントに対応する高さを算出することにより、サンプル100の形状を導出してもよい。このような高さ計測方法では、サンプル100における照射光の照射ポイントが連続的に変化して、サンプル100全体の高さ計測を行い、当該高さ計測の結果に基づき、サンプル100の形状を適切に導出することができる。
【0054】
なお、測定対象物の形状(凹凸)を計測する他の技術として、ストラクチャードライトを使用する方法、及び、TOF(Time Of Flight)センサを使用する方法等がある。ストラクチャードライトを使用する方法では、測定対象物に直線のライトを照射し、斜め方向からカメラにて観察することにより、測定対象物の形状を計測する。しかしながら、当該方法は、二次元のセンサが必須となるため、ラインセンサのような一次元のセンサを利用する場合と比較して計測速度が遅く且つ処理負荷が高くなる。また、TOFセンサを使用する方法では、測定対象物にパルス光を当て、パルス光を出力したタイミングと測定対象物からパルス光が跳ね返ってくるまでに要した時間とから、測定対象物の凹凸を計測する。しかしながら、当該方法は、極めて短い時間を計測するという特性上、ピクセルを大きくしにくく、細かい形状を観察することに不向きである。この点、本実施形態に係る高さ計測装置1による形状計測方法は、これらの比較例と比較して、計測速度を早くすると共に処理負荷を軽減し、さらに、細かい形状をも適切に計測することができる。
【符号の説明】
【0055】
1…高さ計測装置、10…光照射部、11…光源、12,13…分光素子、20…カメラシステム(光検出部)、22…傾斜ダイクロイックミラー(光学素子)、23,24…光検出器(第1の光検出器,第2の光検出器)、25,26…バンドパスフィルタ、27…処理部、30…制御装置(解析部)、40…暗箱、50…ベルトコンベア(搬送部)、100…サンプル(測定対象物)。