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特許7530979光硬化性樹脂組成物、硬化被膜、および硬化被膜付き成形品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-31
(45)【発行日】2024-08-08
(54)【発明の名称】光硬化性樹脂組成物、硬化被膜、および硬化被膜付き成形品
(51)【国際特許分類】
   C08F 290/06 20060101AFI20240801BHJP
   C09D 4/02 20060101ALI20240801BHJP
   C09D 7/48 20180101ALI20240801BHJP
   C09D 7/47 20180101ALI20240801BHJP
   G02B 1/04 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
C08F290/06
C09D4/02
C09D7/48
C09D7/47
G02B1/04
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022539557
(86)(22)【出願日】2021-07-29
(86)【国際出願番号】 JP2021028082
(87)【国際公開番号】W WO2022025175
(87)【国際公開日】2022-02-03
【審査請求日】2023-01-27
(31)【優先権主張番号】P 2020129632
(32)【優先日】2020-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390033628
【氏名又は名称】中国塗料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100152423
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 一真
(72)【発明者】
【氏名】宮窪 建児
(72)【発明者】
【氏名】阿辻 裕美子
(72)【発明者】
【氏名】亀田 佳憲
【審査官】佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-343460(JP,A)
【文献】特開2011-219691(JP,A)
【文献】国際公開第2012/002361(WO,A1)
【文献】特開2013-234217(JP,A)
【文献】国際公開第2011/115162(WO,A1)
【文献】特開2000-063701(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106833357(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F290/00-290/14
C09D 1/00-201/10
G02B 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウレタン(メタ)アクリレート(A)(但し、芳香環を有するウレタン(メタ)アクリレートを除く)、(メタ)アクリレートモノマー(B)、光重合開始剤(C)、およびレベリング剤(D)を含有する光硬化性樹脂組成物であって、
前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)が、イソシアヌレート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートを含み、
前記(メタ)アクリレートモノマー(B)が、少なくとも、2官能(メタ)アクリレートモノマー(b1)(但し、分子内に2個のラジカル重合性の官能基を有し、かつ分子内に11個以上のオキシアルキレン基を有するモノマーを除く)および6官能(メタ)アクリレートモノマー(b2)を含み、
前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)の含有量が、前記光硬化性樹脂組成物の固形分量に対して45質量%以上75質量%以下であり、
前記(メタ)アクリレートモノマー(B)の含有量が、前記光硬化性樹脂組成物の固形分量に対して20質量%以上45質量%以下であり、
前記2官能(メタ)アクリレートモノマー(b1)の含有量が、前記(メタ)アクリレートモノマー(B)の含有量に対して35質量%以上である、光硬化性樹脂組成物(但し、芳香環を有するウレタン(メタ)アクリレートを含む光硬化性樹脂組成物を除く、分子内に2個のラジカル重合性の官能基を有し、かつ分子内に11個以上のオキシアルキレン基を有するモノマーを含む光硬化性樹脂組成物を除く)
【請求項2】
前記6官能(メタ)アクリレートモノマー(b2)の含有量が、前記(メタ)アクリレートモノマー(B)の含有量に対して5質量%以上である、請求項1に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記2官能(メタ)アクリレートモノマー(b1)が、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,9-ノナンジオールジアクリレート、および1,10-デカンジオールジアクリレートからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1または2に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)の含有量が、前記光硬化性樹脂組成物の固形分量に対して55質量%以上75質量%以下であり、
前記(メタ)アクリレートモノマー(B)の含有量が、前記光硬化性樹脂組成物の固形分量に対して20質量%以上40質量%以下である、請求項1または2に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記レベリング剤(D)の重量平均分子量(Mw)が、30,000以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
紫外線吸収剤(E)をさらに含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
光安定剤(F)をさらに含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
車両のランプレンズ用塗料として用いられる、請求項1~7のいずれか一項に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の光硬化性樹脂組成物から形成される硬化被膜。
【請求項10】
請求項9に記載の硬化被膜を表面の少なくとも一部に有する成形品。
【請求項11】
車両のランプレンズである、請求項10に記載の成形品。
【請求項12】
請求項1~8のいずれか一項に記載の光硬化性樹脂組成物を成形品の少なくとも一面に塗布する塗布工程と、
前記塗布工程の後、紫外線照射により前記光硬化性樹脂組成物を硬化させて硬化被膜を形成する硬化工程と、
を含む、成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光硬化性樹脂組成物に関する。また、本発明は、光硬化性樹脂組成物から形成される硬化被膜および該硬化被膜付き成形品にも関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ポリカーボネート樹脂は、透明性、成型性、および耐衝撃性に優れているため、エンジニアリングプラスチックとして幅広く使用されている。例えば、車両用のヘッドランプレンズ、およびサイドカバーランプレンズ等に多く用いられている。しかし、ポリカーボネート樹脂は、耐傷性や耐候性が悪いため、表面には保護膜としての硬化被膜が設けられる。硬化被膜は、コーティング剤を表面上に塗布し、硬化させることで形成される。この硬化被膜には、外観を損なわない平滑性、長期間屋外環境下に曝されても変色等が発生しない耐候性、耐クラック性、傷が付きにくい耐擦傷性、耐摩耗性が求められている。
【0003】
また、近年では、ヘッドランプ用の光源がハロゲンバルブからH.I.Dバルブへと変遷したことに伴い、ヘッドランプレンズ表面の硬化被膜が青白く曇る現象が生じていた。このような技術的課題を解決するために、1分子内に1個以上のラジカル重合性不飽和二重結合を有する特定のモノマーおよび/またはオリゴマー(A)を含有する活性エネルギー線硬化性の被覆材組成物が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
さらに、屋外耐久性、UV安定性、熱安定性、および柔軟性の等の特性を向上させるために、特定の第1及び第2のウレタンアクリレート樹脂と、特定の2官能および3官能のアクリレートモノマーとを含むUV硬化性被覆組成物が提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-238845号公報
【文献】特許第6413130号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
今後、ヘッドランプ用の光源はH.I.DバルブからLEDへとさらに変遷する傾向にある。本発明者らは、従来の硬化被膜を表面に備えたヘッドランプレンズに光源としてLEDを用いた場合には、LED照射時に硬化被膜が白く濁る現象が生じることを知見した。そのため、LED照射においても透明性に優れ、かつ、平滑性、付着性、耐摩耗性、耐擦傷性、耐クラック性、および耐候性等のヘッドランプレンズに求められる性能に優れる硬化被膜が求められている。
【0007】
したがって、本発明の目的は、平滑性、付着性、透明性、耐摩耗性、耐擦傷性、耐クラック性、および耐候性に優れる硬化被膜を形成可能な光硬化性樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意検討した結果、ウレタン(メタ)アクリレート(A)、2官能(メタ)アクリレートモノマー(b1)および6官能(メタ)アクリレートモノマー(b2)を含む(メタ)アクリレートモノマー(B)、光重合開始剤(C)、およびレベリング剤(D)を含む光硬化性樹脂組成物において、ウレタン(メタ)アクリレート(A)、(メタ)アクリレートモノマー(B)、および2官能(メタ)アクリレートモノマー(b1)の含有量を調節することにより、上記課題を解決できることを知見した。本発明は、かかる知見に基づいて完成されたものである。
【0009】
すなわち、本発明によれば、以下の発明が提供される。
[1] ウレタン(メタ)アクリレート(A)、(メタ)アクリレートモノマー(B)、光重合開始剤(C)、およびレベリング剤(D)を含有する光硬化性樹脂組成物であって、
前記(メタ)アクリレートモノマー(B)が、少なくとも、2官能(メタ)アクリレートモノマー(b1)および6官能(メタ)アクリレートモノマー(b2)を含み、
前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)の含有量が、前記光硬化性樹脂組成物の固形分量に対して45質量%以上75質量%以下であり、
前記(メタ)アクリレートモノマー(B)の含有量が、前記光硬化性樹脂組成物の固形分量に対して20質量%以上45質量%以下であり、
前記2官能(メタ)アクリレートモノマー(b1)の含有量が、前記(メタ)アクリレートモノマー(B)の含有量に対して35質量%以上である、光硬化性樹脂組成物。
[2] 前記6官能(メタ)アクリレートモノマー(b2)の含有量が、前記(メタ)アクリレートモノマー(B)の含有量に対して5質量%以上である、[1]に記載の光硬化性樹脂組成物。
[3] 前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)が、イソシアヌレート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートを含む、[1]または[2]に記載の光硬化性樹脂組成物。
[4] 前記レベリング剤(D)の重量平均分子量(Mw)が、30000以下である、[1]~[3]のいずれかに記載の光硬化性樹脂組成物。
[5] 紫外線吸収剤(E)をさらに含む、[1]~[4]のいずれかに記載の光硬化性樹脂組成物。
[6] 光安定剤(F)をさらに含む、[1]~[5]のいずれかに記載の光硬化性樹脂組成物。
[7] ランプレンズ用塗料として用いられる、[1]~[6]のいずれかに記載の光硬化性樹脂組成物。
[8] [1]~[7]のいずれかに記載の光硬化性樹脂組成物から形成される硬化被膜。
[9] [8]に記載の硬化被膜を表面の少なくとも一部に有する成形品。
[10] 車両のランプレンズである、[9]に記載の成形品。
[11] [1]~[8]のいずれかに記載の光硬化性樹脂組成物を成形品の少なくとも一面に塗布する塗布工程と、
前記塗布工程の後、紫外線照射により前記光硬化性樹脂組成物を硬化させて硬化被膜を形成する硬化工程と、
を含む、成形品の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、平滑性、付着性、透明性、耐摩耗性、耐擦傷性、耐クラック性、および耐候性に優れる硬化被膜を形成可能な光硬化性樹脂組成物を提供することができる。また、本発明によれば、このような光硬化性樹脂組成物から形成される硬化被膜および該硬化被膜付き成形品を提供することもできる。本発明の光硬化性樹脂組成物から形成される硬化被膜を表面の一部に有する成形品は、透明性に優れ、さらにはLED照射時においても白濁しづらいものである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明をより詳細に説明する。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」はアクリレートおよびメタクリレートを表し、「(メタ)アクリル」はアクリルおよびメタクリルを表し、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイルおよびメタクリロイルを表す。
「固形分」とは、光硬化性樹脂組成物から有機溶剤等の揮発成分を除いたものであり、硬化させたときに硬化被膜を構成する成分を示す。
【0012】
<光硬化性樹脂組成物>
本発明による光硬化性樹脂組成物は、少なくとも、ウレタン(メタ)アクリレート(A)、特定の(メタ)アクリレートモノマー(B)、光重合開始剤(C)、およびレベリング剤(D)を含有するものである。本発明においては、光硬化性樹脂組成物が(A)~(D)成分を含み、かつ、ウレタン(メタ)アクリレート(A)および(メタ)アクリレートモノマー(B)の含有量を調節することで、平滑性、付着性、透明性、耐摩耗性、耐擦傷性、耐クラック性、および耐候性に優れる硬化被膜を形成することができる。また、本発明による光硬化性樹脂組成物は、紫外線吸収剤(E)、光安定剤(F)、無機粒子(G)、および溶剤(H)等をさらに含んでもよい。このような硬化被膜を備える成形品は、LED照射時においても白濁しづらいため、車両のランプレンズ用塗料として好適に用いることができる。以下、光硬化性樹脂組成物を構成する各成分について詳述する。
【0013】
(ウレタン(メタ)アクリレート(A))
ウレタン(メタ)アクリレート(A)は、分子中に官能基としてアクリロイル基(CH=CHCO-)および/またはメタクリロイル基(CH=C(CH)-CO-)と、ウレタン結合(-NH・COO-)とを有するものである。ウレタン(メタ)アクリレートは、特に限定されるものではないが、例えば、ポリイソシアネートと、水酸基含有(メタ)アクリレートと、必要に応じて水酸基含有(メタ)アクリレート以外のポリオールとを反応させて得られる。ウレタン(メタ)アクリレート(A)は、オリゴマーまたはポリマーであることが好ましく、オリゴマーであることがより好ましい。
【0014】
上記ポリイソシアネートは、ポリオールとジイソシアネートとを反応させて得られる。ポリイソシアネートの合成原料であるポリオールとしては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール等が挙げられ、これらのうちの1種のみで用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0015】
ポリエステルポリオールとしては、特に製造方法の制約はなく、例えばジオールとジカルボン酸またはジカルボン酸クロライドとを重縮合反応させたり、ジオールまたはジカルボン酸をエステル化してエステル交換反応させたりする等、公知の方法にて得られるもの等を使用できる。
ポリエステルポリオールの合成に用いられるジオールとしては、特に限定されるものではないが、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジブロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、テトラプロピレングリコール等が挙げられる。
ポリエステルポリオールの合成に用いられるジカルボン酸としては、特に限定されるものではないが、例えば、アジピン酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ジマレイン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸等が挙げられる。
【0016】
ポリエーテルポリオールとしては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、エチレンオキシドープロピレンオキシドランダム共重合体等が挙げられる。
【0017】
ポリカーボネートポリオールとしては、特に限定されるものではないが、例えば、下記成分Aと成分Bを重縮合して得られる反応生成物等が挙げられる。即ち、成分Aとしては、特に限定されるものではないが、例えば、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、2-メチルプロパンジオール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール等のジオール類、または、これらジオール類と、蓚酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、ヘキサヒドロフタル酸等のジカルボン酸との反応生成物などが挙げられる。また、成分Bとしては、特に限定されるものではないが、例えば、ジフェニルカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、ジナフチルカーボネート、フェニルトルイルカーボネート、フェニルクロロフェニルカーボネート、2-トリル-4-トリルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジエチレンカーボネート、炭酸エチレン等の芳香族系カーボネートまたは脂肪族系カーボネートなどが挙げられる。
【0018】
ポリイソシアネートの合成原料であるジイソシアネートとしては、特に限定されるものではないが、直鎖式、脂環式の脂肪族ジイソシアネート、または芳香族ジイソシアネートを用いることができる。具体的には、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等のイソシアネート基含有直鎖状炭化水素、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等のイソシアネート基含有分岐鎖状炭化水素、イソホロンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、水添キシレンジイソシアネート、水添トルエンジイソシアネート等のイソシアネート基含有環状炭化水素、p-フェニレンジイソシアネート、3,3’-ジメチルジフェニル-4,4’-ジイソシアネート、1,3-キシレンジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、4、4-ジフェニルメタンジイソシアネート等のイソシアネート基含有芳香族炭化水素等が挙げられる。
【0019】
上記水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、水酸基を少なくとも1個以上、好ましくは1~5個有する(メタ)アクリレートを用いることができる。また、このような水酸基含有(メタ)アクリレートは、好ましくは炭素数が2~20の炭化水素部位を有することが望ましい。ここで、炭化水素部位とは、直鎖状または分岐状の脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、あるいは芳香族炭化水素基を有する有機基をいい、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基は、飽和でも不飽和でもよい。なお、当該炭化水素部位の一部には、エーテル結合(C-O-C結合)が含まれていてもよい。
【0020】
水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートおよびそのカプロラクトン付加物(株式会社ダイセル製プラクセルFA1,FA2など)、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどのOH基末端ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、それらのエチレンオキサイド変性物(新中村化学工業株式会社製AM-90G,AM-130G,共栄社化学株式会社製ライトアクリレートEC-A、MTG-A,EHDG-ATなど)、グリセリンモノ(メタ)アクリレート(日油株式会社製ブレンマーGLMなど)、グリセリンジ(メタ)アクリレート(東亜合成株式会社製アロニックスMT3560など)、イソシアヌル酸EO変性ジ(メタ)アクリレート(東亜合成株式会社製アロニックスM-313,315など)、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート(大阪有機化学工業株式会社製ビスコート300、東亜合成株式会社製アロニックスM-305,M-306,MT-3548、共栄社化学株式会社製ライトアクリレートPE-3A、新中村化学工業株式会社製NKエステルA-TMM-3Lなど)、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート(東亜合成製アロニックスM-400,M-402,M-403,MT-3549,共栄社化学株式会社製ライトアクリレートDPE-6A、新中村化学工業株式会社製NKエステルA-DPHなど)等が挙げられる。これらの中でも、硬化被膜の耐候性、耐摩耗性、耐擦傷性の観点から、イソシアヌル酸EO変性ジアクリレートやペンタエリスリトールトリアクリレートを用いることが好ましい。このような水酸基含有(メタ)アクリレートは、1種単独でも、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0021】
必要に応じて用いられる、上記水酸基含有(メタ)アクリレート以外のポリオールとしては、ポリエーテルポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール等の公知のポリオールを用いることができる。具体的には、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物、ポリカプロラクトンポリオール、アルキレンジオール等が挙げられる。このようなポリオールは、1種単独でも、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0022】
上記のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A)の中でも、硬化被膜の耐摩耗性、耐擦傷性の観点から多官能ウレタン(メタ)アクリレートが好ましく、2官能以上12官能以下のウレタン(メタ)アクリレートがより好ましく、3官能以上10官能以下のウレタン(メタ)アクリレートがさらに好ましい。また、耐候性の観点から、脂肪族ウレタン(メタ)アクリレート、脂環式骨格を含有するウレタン(メタ)アクリレートが好ましく、イソシアヌレート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートを用いることがより好ましい。
【0023】
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A)の含有量は、硬化被膜の耐クラック性および耐候性等の観点から、光硬化性樹脂組成物の固形分量に対して、45質量%以上75質量%以下であり、好ましくは50質量%以上72質量%以下であり、より好ましくは55質量%以上70質量%以下である。
【0024】
((メタ)アクリレートモノマー(B))
(メタ)アクリレートモノマー(B)は、少なくとも1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有するモノマーであり、光硬化性樹脂組成物の粘度を調整する反応性希釈剤としての役割を有し、光硬化性樹脂組成物に対して紫外線照射した際、上記のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A)とともに硬化被膜を形成する。
【0025】
(2官能(メタ)アクリレートモノマー(b1))
(メタ)アクリレートモノマー(B)は、少なくとも、2官能(メタ)アクリレートモノマー(b1)を含む。2官能の(メタ)アクリレートモノマーとは、分子内に官能基として2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物を意味する。2官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジアクリレートおよびネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートおよびポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;テトラフルオロエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のハロゲン置換アルキレングリコールのジ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート等の脂肪族ポリオールのジ(メタ)アクリレート;水添ジシクロペンタジエニルジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート等の水添ジシクロペンタジエンまたはトリシクロデカンジアルカノールのジ(メタ)アクリレート;1,3-ジオキサン-2,5-ジイルジ(メタ)アクリレート〔別名:ジオキサングリコールジ(メタ)アクリレート〕等のジオキサングリコールまたはジオキサンジアルカノールのジ(メタ)アクリレート;ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物ジアクリレート物、ビスフェノールFエチレンオキサイド付加物ジアクリレート物等のビスフェノールAまたはビスフェノールFのアルキレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート;ビスフェノールAジグリシジルエーテルのアクリル酸付加物、ビスフェノールFジグリシジルエーテルのアクリル酸付加物等のビスフェノールAまたはビスフェノールFのエポキシジ(メタ)アクリレート;シリコーンジ(メタ)アクリレート;ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルのジ(メタ)アクリレート;2,2-ビス[4-(メタ)アクリロイルオキシエトキシエトキシフェニル]プロパン;2,2-ビス[4-(メタ)アクリロイルオキシエトキシエトキシシクロヘキシル]プロパン;2-(2-ヒドロキシ-1,1-ジメチルエチル)-5-エチル-5-ヒドロキシメチル-1,3-ジオキサン〕のジ(メタ)アクリレート;トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート;等が挙げられる。これらの2官能の(メタ)アクリレートモノマーの中でも、アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリオキシアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ハロゲン置換アルキレングリコールのジ(メタ)アクリレート、脂肪族ポリオールのジ(メタ)アクリレート、水添ジシクロペンタジエンまたはトリシクロデカンジアルカノールのジ(メタ)アクリレート、ジオキサングリコールまたはジオキサンジアルカノールのジ(メタ)アクリレート、シリコーンジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルのジ(メタ)アクリレート、2,2-ビス[4-(メタ)アクリロイルオキシエトキシエトキシフェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(メタ)アクリロイルオキシエトキシエトキシシクロヘキシル]プロパン、2-(2-ヒドロキシ-1,1-ジメチルエチル)-5-エチル-5-ヒドロキシメチル-1,3-ジオキサン〕のジ(メタ)アクリレート、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレートが好ましく、アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートがより好ましく、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレートが特に好ましい。これらのモノマーは1種のみで用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
(6官能(メタ)アクリレートモノマー(b2))
(メタ)アクリレートモノマー(B)は、6官能(メタ)アクリレートモノマー(b2)をさらに含む。6官能の(メタ)アクリレートモノマーとは、分子内に官能基として6個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物を意味する。6官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、アルコキシ化ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ポリカプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのモノマーは1種のみで用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。6官能(メタ)アクリレートモノマー(b2)は、カプロラクトン変性体であることが好ましく、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0027】
(他の多官能以(メタ)アクリレートモノマー(b3))
(メタ)アクリレートモノマー(B)は、上記2官能(メタ)アクリレートモノマー(b1)および6官能(メタ)アクリレートモノマー(b2)以外の他の多官能以(メタ)アクリレートモノマー(b3)をさらに含んでもよい。他の多官能以(メタ)アクリレートモノマー(b3)としては、例えば、3官能以上5官能以下の(メタ)アクリレートモノマーを用いることが好ましい。3官能以上5官能以下の(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは1種のみで用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
(メタ)アクリレートモノマー(B)の含有量は、硬化被膜の耐擦傷性、付着性および耐候性の観点から、光硬化性樹脂組成物の固形分量に対して、20質量%以上45質量%以下であり、好ましくは21質量%以上42質量%以下であり、より好ましくは22質量%以上40質量%以下である。また、(メタ)アクリレートモノマー(B)中の2官能(メタ)アクリレートモノマー(b1)の含有量は、硬化被膜の付着性および耐候性の観点から、35質量%以上であり、より好ましくは40質量%以上95質量%以下である。(メタ)アクリレートモノマー(B)中の6官能(メタ)アクリレートモノマー(b2)の含有量は、硬化皮膜の耐擦傷性の観点から、好ましくは5質量%以上65質量%以下であり、より好ましくは10質量%以上60質量%以下である。
【0029】
(光重合開始剤(C))
光重合開始剤(C)は、特に限定されず、従来公知の紫外線硬化用の光重合開始剤を用いることができる。光重合開始剤としては、例えば、アシルフォスフィンオキサイド系重合開始剤、アセトフェノン系重合開始剤、ベンゾイルホルメート系重合開始剤、チオキサントン系重合開始剤、オキシムエステル系重合開始剤、ヒドロキシベンゾイル系重合開始剤、ベンゾフェノン系重合開始剤、α-アミノアルキルフェノン系重合開始剤等が挙げられる。
【0030】
アシルフォスフィンオキサイド系重合開始剤としては、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルエトキシフォスフィンオキサイド、およびビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。
アセトフェノン系重合開始剤としては、アセトフェノン、3-メチルアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒロドキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン等が挙げられる。
ベンゾイルホルメート系重合開始剤としては、メチルベンゾイルホルメート等が挙げられる。
チオキサントン系重合開始剤としては、イソプロピルチオキサントン等が挙げられる。
オキシムエステル系重合開始剤としては、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]およびエタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)等が挙げられる。
ヒドロキシベンゾイル系重合開始剤としては、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンおよびベンゾインアルキルエーテル等が挙げられる。
ベンゾフェノン系重合開始剤としては、ベンゾフェノン、4-クロロベンゾフェノン、および4,4’-ジアミノベンゾフェノン等が挙げられる。
α-アミノアルキルフェノン系重合開始剤としては、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1等が挙げられる。
これらの重合開始剤は1種のみで用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
光重合開始剤(C)の含有量は、硬化被膜の硬化性および透明性の観点から、光硬化性樹脂組成物の固形分量に対して、好ましくは0.1質量%以上10質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以上7.0質量%以下であり、さらに好ましくは1.0質量%以上5.0質量%以下である。
【0032】
(レベリング剤(D))
レベリング剤(D)とは、光硬化性樹脂組成物の流動性を調整し、塗布した被膜を平坦にする機能を有するものである。レベリング剤としては、フッ素系レベリング剤、シリコーン系レベリング剤、アクリルポリマー系レベリング剤等が挙げられる。
【0033】
パーフルオロアルケニルカルボン酸塩、パーフルオロアルケニルスルホン酸塩、パーフルオロアルケニルリン酸エステル、パーフルオロアルケニルベタイン等のパーフルオロアルケニル基を主鎖又は側鎖に有するフッ素系レベリング剤;パーフルオロアルキルポリオキシエチレンエーテル、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルキルベタイン等のパーフルオロアルキル基を主鎖又は側鎖に有するフッ素系レベリング剤、等が挙げられる。
【0034】
シリコーン系レベリング剤としては、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、ポリメチルハイドロジエンシロキサン、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性ポリメチルフェニルシロキサン、ポリエーテル変性ポリメチルハイドロジエンシロキサン等が挙げられる。
【0035】
アクリルポリマー系レベリング剤としては、下記一般式(1)で表されるポリエーテル変性(メタ)アクリル化合物を用いることができる。
【化1】
一般式(1)中、R~Rは同一または異なっていてもよく、R~Rの少なくとも一つは前記一般式(2)で表されるポリエーテル基を示し、かつ少なくとも一つは(メタ)アクリロイル基または(メタ)アクリロイル基を有するC1~C20の直鎖もしくは分岐のアルキル基を示す。
【化2】
一般式(2)中、RはC1~C20の直鎖もしくは分岐のアルキレン基、R10は水素原子、C1~C20の直鎖もしくは分岐のアルキル基、C2~C20の直鎖もしくは分岐のアルケニル基またはC2~C20の直鎖もしくは分岐のアルキニル基を示す。複数存在するRは同一でも異なっていてもよい。kは1以上の整数を示す。その他のR~Rは、C1~C20の直鎖もしくは分岐のアルキル基を示す。複数存在するR~Rは、それぞれ同一または異なっていてもよい。
m、nは同一でも異なっていてもよく、0以上の整数、好ましくは1~20の整数、さらに好ましくは1~10の整数を示す。
【0036】
このようなレベリング剤としては、市販のレベリング剤を用いることもできる。例えば、フッ素系レベリング剤としては、ネオス(株)製の商品名フタージェント602A等が挙げられる。シリコーン系レベリング剤としては、BYK(株)製の商品名BYK-315N、BYK-325N等、共栄社化学(株)製、商品名ポリフローKL-401、EVONIK(株)製の商品名Tego flow 425等が挙げられる。アクリルポリマー系レベリング剤としては、共栄社化学(株)製、商品名ポリフローNo.75、BYK(株)製、商品名BYK-350、BYK-381等が挙げられる。その他のレベリング剤として、BYK(株)製の商品名BYK-399等が挙げられる。
【0037】
レベリング剤(D)の重量平均分子量(Mw)は、硬化被膜の平滑性およびLED照射時の透明性の観点から、好ましくは1,000~100,000であり、より好ましくは2000~50,000であり、さらに好ましくは3000~30,000である。なお、重量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定することができる。
【0038】
レベリング剤(D)の含有量は、硬化被膜の平滑性および耐候性の観点から、光硬化性樹脂組成物の固形分量に対して、好ましくは0.01質量%以上5質量%以下であり、より好ましくは0.05質量%以上2質量%以下であり、さらに好ましくは0.1質量%以上1質量%以下である。
【0039】
(紫外線吸収剤(E))
紫外線吸収剤(E)は、特に限定されず、従来公知の紫外線吸収剤を用いることができる。紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤等が挙げられる。これらの紫外線吸収剤は1種のみで用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、2-[2’-ヒドロキシ-5’-(メタクリロイルオキシメチル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-5’-(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-5’-(メタクリロイルオキシプロピル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-5’-(メタクリロイルオキシヘキシル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル-5’-(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-5’-tert-ブチル-3’-(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-5’-(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-5’-(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]-5-メトキシ-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-5’-(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]-5-シアノ-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-5’-(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]-5-tert-ブチル-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-5’-(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]-5-ニトロ-2H-ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、ベンゼンプロパン酸-3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-(1、1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシ-,C7~9-ブランチ直鎖アルキルエステル、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-(1-メチル-1-フェニルエチル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール等が挙げられる。
【0041】
ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤としては、例えば、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-ドデシルオキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-(2-ヒドロキシ-3-トリデシルオキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-(2-エチル)ヘキシル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(2-ヒドロキシ-4-ブチルオキシフェニル)-6-(2,4-ビス-ブチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-4-[1-オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)-4,6-ビス(4-フェニルフェニル)-1,3,5-トリアジン等が挙げられる。
【0042】
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-アセトキシエトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシ-5,5’-ジスルホベンゾフェノン・2ナトリウム塩等が挙げられる。
【0043】
紫外線吸収剤(E)の含有量は、硬化被膜の耐候性の観点から、光硬化性樹脂組成物の固形分換算100質量%を基準として、好ましくは0.1質量%以上20質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以上10質量%以下であり、さらに好ましくは1質量%以上5質量%以下である。
【0044】
(光安定剤(F))
光安定剤(F)としては、特に限定されず、従来公知の光安定剤を用いることができ、ヒンダードアミン系光安定剤を用いることが好ましい。光安定剤としては、例えば、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、1-[2-[3-(3,5-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]-4-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-ベンゾイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、8-アセチル-3-ドデシル-7,7,9,9-テトラメチル-1,3,8-トリアザスピロ[4,5]デカン-2,4-ジオン、ビス-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)-2-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2-n-ブチルマロネート、テトラキス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、(Mixed1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル/トリデシル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、Mixed{1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル/β,β,β’,β’-テトラメチル-3,9-[2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン]ジエチル}-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、(Mixed 2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル/トリデシル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、Mixed{2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル/β,β,β’,β’-テトラメチル-3,9-[2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン]ジエチル}-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルメタクリレート、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルメタクリレート、ポリ[(6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)イミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル)][(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノール]、コハク酸ジメチルと4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジンエタノールの重合物、N,N’,N’’,N’’’-テトラキス-(4,6-ビス-(ブチル-(N-メチル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)-トリアジン-2-イル)-4,7-ジアザデカン-1,10-ジアミン、ジブチルアミン-1,3,5-トリアジン-N,N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル-1,6-ヘキサメチレンジアミンとN-(2,2,6,6-テトラメチルピペリジル)ブチルアミンの重縮合物、デカン二酸ビス(2,2,6,6-テトラメチル-1-(オクチルオキシ)-4-ピペリジニル)エステル等が挙げられる。
【0045】
光安定剤(F)の含有量は、硬化被膜の耐候性の観点から、光硬化性樹脂組成物の固形分量に対して、好ましくは0.1質量%以上5質量%以下であり、より好ましくは0.2質量%以上3質量%以下であり、さらに好ましくは0.5質量%以上2質量%以下である。
【0046】
(無機粒子(G))
無機粒子(G)としては、特に限定されず、従来公知の無機粒子を用いることができる。無機粒子は、水、有機溶剤等の分散媒にコロイド状態に分散させたものを使用することができる。
【0047】
無機粒子としては、シリカ、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、亜鉛等の金属酸化物が挙げられ、得られる硬化被膜の耐傷性の観点からシリカが好ましい。シリカとしては、粉体状またはコロイダル状のシリカ粒子を用いることができる。シリカ粒子の平均粒子径は、0.001~20μm、好ましくは0.001μm~2μm、より好ましくは0.001~0.3μm、特に好ましくは0.005~0.08μmである。また、その形状は、特に限定されず、球状、中空状、多孔質状、棒状、板状、繊維状等のいずれの形状であってもよいが、球状であることが好ましい。シリカ粒子の平均粒子径は、レーザー回折法により測定することができる。
【0048】
シリカとしては、コロイダル状のシリカ粒子を用いることがより好ましい。コロイダル状のシリカ粒子は、市販品を用いることもできる。市販品としては、例えば、日産化学株式会社製の商品名:IPA-ST、IPA-ST-L、IPA-ST-ZL、PGM-ST等が挙げられる。
【0049】
無機粒子としては、樹脂に無機粒子を化学的に結合させ、複合化した有機無機ハイブリッド樹脂である反応性無機粒子を用いることができる。
【0050】
樹脂としては、無機粒子と化学的に結合し、有機無機ハイブリッド樹脂を形成できるものであれば、特に限定されない。樹脂としては、光硬化により重合するものが好ましく、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、(メタ)アクリレート等が好ましい。これらは1種のみで用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0051】
有機無機ハイブリッド樹脂の製造方法は特に限定されず、無機粒子と樹脂とを化学的に結合し、複合化できる方法であればよい。例えば、樹脂として加水分解性シリル基を有する樹脂を用い、無機粒子としてシリカを用いた場合、樹脂の加水分解性シリル基とシリカが反応して、複合化することができる。以下、無機粒子としてシリカを用いた場合の好ましい実施形態について説明する。
【0052】
本発明の好ましい実施形態において、反応性無機粒子として、反応性(メタ)アクリロイル基を有するシリカ粒子を用いることができる。反応性シリカ粒子としては、例えば、特開平9-100111号公報に記載の反応性シリカ粒子を用いることができる。反応性シリカ粒子(B)は、シリカ粒子と、それと化学的に結合しているシラン化合物とからなり、シラン化合物は、加水分解性シリル基、および(メタ)アクリロイル基を末端に有し、さらに下記式(a)および(b):
【化3】
【化4】
(式中、Xは-NH-、-O-および-S-から選ばれ、Yは酸素原子および硫黄原子から選ばれる。但し、Xが-O-のときYは硫黄原子である。)で表わされる基を有している。
【0053】
加水分解性シリル基は、加水分解および縮合反応によりシリカ粒子の表面に存在するシラノ-ル基と結合し、また、(メタ)アクリロイル基は、活性ラジカル種により付加重合を経て分子間で化学架橋する際に用いられる。また、上記式(a)で表わされる基および(b)で表わされる基は、これら加水分解性シリル基を有する分子と、(メタ)アクリロイル基を有する分子とを直接もしくは他の分子を介して結合する構成単位であると同時に、分子間において水素結合による適度の凝集力を発生させ、硬化組成物に優れた力学的強度、基材との密着性、耐熱性等の性能を発生せしめる役割を果たすと推定される。
【0054】
このようなシラン化合物は、特開平9-100111号公報に記載されているように、例えば、末端に活性イソシアネ-ト基を有する、メルカプトアルコキシシランとポリイソシアネ-ト化合物との付加体に対し、ポリアルキレングリコ-ルを加え、片末端ヒドロキシのアルコキシシランとしたのち、これに対し別途合成した、末端に水酸基を有し他方の末端に(メタ)アクリロイル基を有する化合物とポリイソシアネ-ト化合物との付加体を反応させウレタン結合で両者をつなぐ方法、または末端に活性イソシアネ-ト基を有する、メルカプトアルコキシシランとポリシソシアネ-ト化合物との付加体に対し、別途合成した、末端に活性水酸基を有するポリアルキレングリコールポリイソシアネ-ト化合物と末端に水酸基を有し他方の末端に(メタ)アクリロイル基を有する化合物との付加体を反応させウレタン結合で両者をつなぐ方法、等により合成することができる。
【0055】
反応性シリカ粒子は、このようなシラン化合物とシリカ粒子とを用いて調製することができる。具体的には、
(1)反応性(メタ)アクリロイル基を有するシラン化合物を加水分解させた後、これとシリカ粒子とを混合し、加熱、攪拌操作を行う方法、
(2)反応性(メタ)アクリロイル基を有するシラン化合物の加水分解をシリカ粒子の存在下に行う方法、
などにより製造することができる。
【0056】
反応性シリカ粒子は、市販品を用いることもできる。市販品としては、例えば、日産化学株式会社製の商品名:PGM-AC-2140Y、PGM-AC-4130Y等が挙げられる。
【0057】
無機粒子(G)の含有量は、硬化被膜の耐擦傷性および耐摩耗性の観点から、光硬化性樹脂組成物の固形分量に対して、好ましくは0.1質量%以上10質量%以下であり、より好ましくは0.2質量%以上7質量%以下であり、さらに好ましくは0.5質量%以上5質量%以下である。
【0058】
(溶剤(H))
光硬化性樹脂組成物は、塗料として適した粘度に調整するため、必要に応じて溶剤で希釈することができる。溶剤(H)としては、光硬化性樹脂組成物中の樹脂分を溶解するものであれば特に限定されない。具体的には、芳香族炭化水素(例えば、トルエン、キシレンおよびエチルベンゼン)、エステルまたはエーテルエステル(例えば、酢酸エチル、酢酸ブチルおよびメトキシブチルアセテート)、エーテル(例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、およびジエチレングリコールモノエチルエーテル)、ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジ-n-ブチルケトンおよびシクロヘキサノン)、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、n-またはi-プロパノール、n-、i-、sec-またはt-ブタノール、2-エチルヘキシルアルコールおよびベンジルアルコール)、アミド(例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等)、スルホキシド(例えば、ジメチルスルホキシド)、水およびこれらの2種以上の混合溶剤等が挙げられる。
【0059】
(その他の成分)
本発明による光硬化性樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、上記(A)~(H)成分以外の他の成分を含んでもよい。他の成分としては、帯電防止剤、重合禁止剤、非反応性希釈剤、つや消し剤、消泡剤、分散剤、沈降防止剤、分散剤、酸化防止剤、熱安定剤、密着性向上剤、光増感剤、抗菌剤、防カビ剤、抗ウイルス剤、シランカップリング剤、可塑剤等を必要に応じて配合することができる。
【0060】
<光硬化性樹脂組成物の調製方法>
本発明による光硬化性樹脂組成物は、上記の各成分を、従来公知の混合機、分散機、撹拌機等の装置を用いて、混合・撹拌することにより得られる。このような装置としては、例えば混合・分散ミル、ホモディスパー、モルタルミキサー、ロール、ペイントシェーカー、ホモジナイザー等が挙げられる。
【0061】
光硬化性樹脂組成物(樹脂溶液)の25℃における粘度は、好ましくは0.5~500mPa・sであり、より好ましくは1~250mPa・sであり、さらに好ましくは5~100mPa・sである。粘度の測定はB型粘度計を用いることができる。粘度が上記数値範囲内であれば、塗料として用い易く、加工適性に優れる。
【0062】
<硬化被膜>
本発明による硬化被膜は、上記の光硬化性樹脂組成物から形成される。硬化被膜の膜厚は特に限定されないが、耐候性、耐擦傷性、および耐摩耗性等の維持の観点から、好ましくは1~100μm、より好ましくは5~50μm、さらに好ましくは10~30μmである。本発明における膜厚とは、硬化被膜の断面を光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡(SEM)等にて観察した際の、硬化被膜の厚さを指す。このような膜厚の被膜を形成する際は、1回の塗布で、所望の厚みの被膜を形成してもよいし、複数回の塗布で、所望の厚みの被膜を形成してもよい。
【0063】
本発明による硬化被膜は、厚さ13μmの場合、JIS K-7136に準拠して測定したヘイズが、1.0%未満であることが好ましく、0.5%以下であることがより好ましく、0.3%以下であることがさらに好ましい。ヘイズが上記範囲内であれば、透明性に優れる。
【0064】
<硬化被膜付き成形品>
本発明による硬化被膜付き成形品は、成形品の表面の少なくとも一部に、上記の光硬化性樹脂組成物から形成された硬化被膜を備えるものである。成形品の素材としては特に限定されず、各種の樹脂製の成形品を用いることができる。成形品としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、アクリロニトリル-スチレン共重合樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリメチルメタクリル樹脂、ポリメタクリルイミド樹脂等の成形品を用いる。なお、本発明の光硬化性樹脂組成物から形成された硬化被膜はヘイズが低く、透明性が高いため、透明な樹脂からなる成形品を用いることが好ましい。
【0065】
成形品としては、特に限定されず、各種の樹脂製の成形品を用いることができる。特に、本発明の硬化被膜付き成形品は、LED照射時においても白濁しづらいため、例えば、LED照射用の部品に適用可能である。例えば、車両用のヘッドランプレンズ、テールランプレンズ、およびサイドカバーランプレンズ等のランプレンズ、住宅用および列車内装用の照明カバー等が挙げられる。
【0066】
<硬化被膜付き成形品の製造方法>
本発明による硬化被膜付き成形品の製造方法は、上記の光硬化性樹脂組成物を成形品の少なくとも一方の面に塗布する塗布工程と、
塗布工程の後、紫外線照射により上記の光硬化性脂組成物を硬化させて硬化被膜を形成する硬化工程と、
を含むものである。以下、各工程について、詳細に説明する。
【0067】
(塗布工程)
塗布工程は、成形品の片面に、従来公知の方法により、上記の光硬化性樹脂組成物を塗布する工程である。塗布には、例えば、スプレー、バーコーター、グラビアコーター、ロールコーター(ナチュラルロールコーターおよびリバースロールコーター等)、エアナイフコーター、スピンコーターおよびブレードコーター等の塗布機が使用できる。
【0068】
樹脂組成物を溶剤で希釈して使用する場合は、塗布後に乾燥することが好ましい。乾燥方法としては、例えば熱風乾燥(ドライヤー等)が挙げられる。乾燥温度は、好ましくは10~200℃、塗膜の平滑性および外観の観点から更に好ましい上限は150℃、乾燥速度の観点から更に好ましい下限は30℃である。
【0069】
(硬化工程)
硬化工程は、成形品の塗布面に紫外線を照射して、塗布された光硬化性樹脂組成物を硬化させて、硬化被膜を形成する工程である。紫外線で硬化させる方法としては、200~500nm波長域の光を発する高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、UV-LED等を用いて、紫外線を照射する方法等が挙げられる。紫外線の照射量は、光硬化性樹脂組成物の硬化性および硬化物の可撓性の観点から、好ましくは100~10,000mJ/cmであり、より好ましくは500~5,000mJ/cmである。
【実施例
【0070】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0071】
[ウレタン(メタ)アクリレート(A)の合成]
・ウレタンアクリレート(A1)
まず、イソシアネート化合物(a1)として、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート(水添MDI、イソシアネート基含有量31.8%)を準備した。また、水酸基および光重合性不飽和基を有する(メタ)アクリレートモノマー(a2)として、ペンタエリスリトールトリアクリレート(水酸基価110mg/KOH)を準備した。
続いて、攪拌装置、温度計、空気導入管を備えた200mL反応容器に、(a1)成分を32.8g、(a2)成分を102g、ジエチレングリコールを3.3g、p-メトキシフェノールを0.05g、ジブチルヒドロキシトルエンを0.17g、ジブチルスズジラウレートを0.17g、酢酸ブチルを17.3gを添加し、80℃で5時間反応させた。その後、プロピレングリコールモノメチルエーテルを17.3g加えて希釈をし、ウレタンアクリレートオリゴマー(A1)を得た。この(A1)成分は、官能基数が6、重量平均分子量(MW)が2,400、固形分が80%であった。
【0072】
・ウレタンアクリレート(A2)
まず、イソシアネート化合物(a1)として、ヘキサメチレンジイソシアネート(イソシアヌレート体、イソシアネート基含有量23.1%)を準備した。また、水酸基および光重合性不飽和基を有する(メタ)アクリレートモノマー(a2)として、ペンタエリスリトールトリアクリレート(水酸基価116mgKOH/g)を準備した。
続いて、攪拌装置、温度計、空気導入管を備えた200mL反応容器に、(a2)成分を100g、p-メトキシフェノールを0.01g、ジブチルヒドロキシトルエンを0.04g、ジブチルスズジラウレートを0.26g添加し、80℃まで加温した。フラスコの内部温度を80℃に保ちながら、(a1)成分34.2gを1時間かけて加え入れ、その後4時間反応させることにより、ウレタンアクリレートオリゴマー(A2)を得た。この(A2)成分は、官能基数が9、重量平均分子量(MW)が3,500であった。
【0073】
・ウレタンアクリレート(A3)
まず、イソシアネート化合物(a1)として、脂環式イソシアネートである水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート(水添MDI)を準備した。また、ポリカーボネートジオール化合物(a2)として、ETERNACOLL UM-90(3/1)(宇部興産株式会社製)を準備した。さらに、光反応性化合物(a3)としてイソシアヌル酸EO変性ジおよびトリアクリレート(東亞合成株式会社製、アロニックスM-313)を準備した。
続いて、攪拌器、還流冷却器、温度計を取り付けた4つ口フラスコに、(a2)成分を192.8g、(a3)成分を480.8g、4―メトキシフェノールを0.15g、ジブチルヒドロキシトルエンを0.45g、ジラウリン酸ジブチルスズ1.5gを入れ、オイルバスにて80℃まで加温した後、(a1)成分112.3gを1時間かけて加え入れ、その後90℃で3時間反応させた。反応終了後、PGM450gを加えることにより、ウレタンアクリレートオリゴマー(A3)を得た。なお、反応の終点は赤外吸収分析でイソシアネート基に由来したピークの消失により確認した。得られた混合物は、有機溶媒であるPGMが36.3%であり、固形分が63.7%であった。また、この(A3)成分は、官能基数が4、重量平均分子量(MW)が2,900であった。
【0074】
光硬化性樹脂組成物のために、以下の材料を用いた。
(成分(A))
・ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー1:6官能ウレタンアクリレート、上記で合成したオリゴマー(A1)
・ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー2:イソシアヌレート骨格を有する9官能ウレタンアクリレート、上記で合成したオリゴマー(A2)
・ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー3:イソシアヌレート骨格を有する4官能ウレタンアクリレート、上記で合成したオリゴマー(A3)
(成分(b1))
・2官能(メタ)アクリルモノマー1:1,10-デカンジオールジアクリレート、MIWON(株)製、商品名:MIRAMER M-2010
・2官能(メタ)アクリルモノマー2:1,9-ノナンジオールジアクリレート、共栄社化学株式会社製、商品名:ライトアクリレート1.9ND-A
・2官能(メタ)アクリルモノマー3:1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、Sartomer Chemicals Ltd社製、商品名:SR238NS
(成分(b2))
・6官能(メタ)アクリルモノマー1:ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート(DPHA)、MIWON(株)製、商品名:MIRAMER M-600
・6官能(メタ)アクリルモノマー2:カプロラクトン変性DPHA、長興化学(株)製、商品名:EM2692
(成分(b3))
・その他の(メタ)アクリルモノマー1:TMPTA(3官能)、MIWON(株)製、商品名:MIRAMER M-300
(成分(C))
・光重合開始剤1(アセトフェノン系重合開始剤、IGM Resin社製、商品名:Omnirad 184)
・光重合開始剤2(アシルフォスフィンオキサイド系重合開始剤、IGM Resin社製、商品名:Omnirad TPO-H)
(成分(D))
・レベリング剤1:非シリコンおよび非フッ素系レベリング剤(表面活性ポリマー)、Mw:7,000、BYK(株)製、商品名:BYK-399
・レベリング剤2:フッ素系レベリング剤(ノニオン系含フッ素プレポリマー、UV反応基含有)、Mw:25,000、ネオス(株)製、商品名:フタージェント602A
・レベリング剤3:シリコーン系レベリング剤(ポリエーテル変性ポリメチルアルキルシロキサン)、Mw:18,000、BYK(株)製、商品名:BYK-325N
・レベリング剤4:アクリルポリマー系レベリング剤、Mw:22,000、BYK(株)製、商品名:BYK-350
・レベリング剤5:シリコーン系レベリング剤(ポリエーテルシロキサンポリマー)、Mw:2,100、EVONIK(株)製、商品名:Tego flow 425
・レベリング剤6:シリコーン系レベリング剤(ポリエステル変性ポリメチルアルキルシロキサン)、Mw:26,700、BYK(株)製、商品名:BYK-315N
(成分(E))
・紫外線吸収剤1:BASF社製、商品名:TINUVIN 479
(成分(F))
・光安定剤1:ヒンダードアミン系光安定剤、BASF社製、商品名:TINUVIN 123)
(成分(G))
・無機粒子1:ナノシリカ、日産化学(株)製、商品名:PGM-AC2140Y
(成分(H))
・溶剤1:プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)
【0075】
[光硬化性樹脂組成物の調製]
[実施例1]
溶剤(H)1を60.3質量部に、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A)1を24.0質量部、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A)3を3.2質量部、6官能(メタ)アクリルモノマー(b2)2を1.0質量部、2官能(メタ)アクリルモノマー(b1)2を8.5質量部、成分(C)として、光重合開始剤(C)1を1.0質量部と、光重合開始剤(C)2を0.2質量部、レベリング剤(D)2を0.1質量部、紫外線吸収剤(E)1を1.4質量部、光安定剤(F)1を0.3質量部添加し、溶解させて撹拌し、光硬化性樹脂組成物を得た。
【0076】
[実施例2~15、比較例1~6]
表1および2に記載の配合に従って、成分および成分の配合量を変更した以外は、実施例1と同様にして、光硬化性樹脂組成物を得た。
【0077】
[硬化被膜付き成形品の製造]
厚さ約2mmのポリカーボネート板に、上記で調製した光硬化性樹脂組成物を乾燥膜厚が約13μmとなるようにスプレーにて塗布し、80℃に設定した乾燥機内に3分間放置した。その後、高圧水銀ランプにて紫外線を照射することで(照射量:3,000mJ/cm)、塗膜を硬化させ、硬化被膜を形成し、硬化被膜付き成形品を得た。
【0078】
[硬化被膜付き基材の評価]
(塗膜外観)
上記で得た成形品の硬化被膜の外観を目視により観察した。具体的には、硬化被膜に白化、ハジキ、平滑性不足、およびワレ等の異常が無いかを観察し、下記の基準で評価した。評価結果を表3および4に示した。
(評価基準)
○:白化、ハジキ、平滑性不足、およびワレ等の異常が無かった。
×:白化、ハジキ、平滑性不足、およびワレ等の異常が一つでもあった。
【0079】
(初期付着性)
JIS K-5400:1990に記載されている碁盤目試験の方法に準じて、上記で得た成形品の硬化被膜上にカッターで1mm幅、100マスの傷を入れ、碁盤目を付けた試験片を作製した。続いて、試験片にセロテープ(登録商標)(商品名、ニチバン株式会社製)を貼り付けた後、このセロテープを速やかに、基盤面に対して45度斜め上方の方向に引っ張って剥離させ、残った碁盤目の硬化被膜数を数え、この残存数を付着性の指標とした。初期付着性を下記の基準で評価した。評価結果を表3および4に示した。
(評価基準)
◎:碁盤目の残存数が100/100であった。
○:碁盤目の残存数が90/100以上99/100以下であった。
△:碁盤目の残存数が80/100以上89/100以下であった。
×:碁盤目の残存数が79/100以下であった。
【0080】
(透明性)
上記で得た成形品の硬化被膜の透明性をヘイズ(HZ)により評価した。具体的には、JIS K-7136に準拠して、ヘイズメーター(株式会社村上色彩技術研究所製、型番:ヘイズメーターHM-65W)を使用して硬化被膜のヘイズを測定し、下記の基準で評価した。評価結果を表3および4に示した。なお、ヘイズが1.0%未満となる場合は、硬化被膜の濁度が低く、透明性が高いものと判断した。
(評価基準)
◎:ヘイズが0.5%未満であった。
○:ヘイズが0.5%以上1.0%未満であった。
△:ヘイズが1.0%以上2.0%未満であった。
×:ヘイズが2.0%以上であった。
またヘッドランプの点灯時を想定し、上記で得た成形品の硬化被膜が形成されていない面からLED(GENTOS製 BLUSTER BR-434EG、480ルーメン)を照射し、光が照射された箇所の透明性を目視にて観察し、下記の基準で評価した。評価結果を表3および4に示した。
(評価基準)
◎:白化が非常に少なかった。
○:白化が若干見られた。
△:白化が多少見られたが、実用上は問題なかった。
×:白化が多く見られた。
【0081】
(耐摩耗性)
上記で得た成形品の硬化被膜の耐摩耗性を耐摩耗性試験前後のヘイズの変化により評価した。具体的には、テーバー式アブレーションテスター(株式会社安田精機製作所製)を使用して硬化被膜の耐摩耗性試験を行った。摩耗輪CS-10Fを使用し、500gの荷重をかけて500回転し、耐摩耗性試験前後のヘイズの差(ΔHZ)を測定し、下記の基準で評価した。評価結果を表3および4に示した。
(評価基準)
◎:ΔHZが5%未満であった。
○:ΔHZが5%以上15%未満であった。
△:ΔHZが15%以上20%未満であった。
×:ΔHZが20%以上であった。
【0082】
(耐擦傷性)
上記で得た成形品の硬化被膜の耐擦傷性を耐擦傷性試験前後のヘイズの変化により評価した。具体的には、平面摩耗試験機(PAS-400、株式会社大栄科学精器製作所製)を使用して硬化被膜の耐擦傷性試験を行った。スチールウール(#000)を使用し、125g/cmの荷重をかけて50往復し、耐擦傷性試験前後のヘイズの差(ΔHZ)を測定し、下記の基準で評価した。評価結果を表3および4に示した。
(評価基準)
◎:ΔHZが0.5%未満であった。
○:ΔHZが0.5%以上3%未満であった。
△:ΔHZが3%以上5%未満であった。
×:ΔHZが5%以上であった。
【0083】
(耐クラック性)
上記で得た成形品の硬化被膜の耐クラック性を耐クラック性試験後のクラック発生の有無により評価した。具体的には、冷熱衝撃装置(エスペック株式会社製、型番:TSA-41L-A)を使用して硬化被膜の耐クラック性試験を行った。130℃の条件下で2時間放置し、その後-40℃で2時間放置を1サイクルとし、これを4サイクル実施した。その後、硬化被膜を目視で観察し、下記の基準で評価した。クラックの発生が無いものを耐クラック性が良好と評価した。また、耐クラック性試験前後のヘイズの差(ΔHZ)を測定し、塗膜の白化(ブリードアウト)について評価した。評価結果を表3および4に示した。
(耐クラック性の評価基準)
○:クラックが発生しなかった。
×:クラックが発生した。
(塗膜の白化の評価基準)
◎:ΔHZが0.5%未満であった。
○:ΔHZが0.5%以上3%未満であった。
△:ΔHZが3%以上5%未満であった。
×:ΔHZが5%以上であった。
【0084】
(耐候性)
上記で得た成形品の硬化被膜の耐候性を耐候性試験前後の硬化被膜の外観変化、ヘイズの差(ΔHZ)、および黄変度の差(ΔYI)により評価した。具体的には、促進耐候性試験機(スガ試験機株式会社製、型番:SX2D-75)を使用して硬化被膜の耐候性試験を行った。放射照度180W/m、ブラックパネル温度63℃、純水シャワー条件120分中18分のサイクルで試験を実施した。1000時間後および2000時間後の耐候性を下記の基準で評価した。評価結果を表3および4に示した。なお、比較例3、5、6では、2000時間後の耐候性試験を行わなかったため、結果は「-」とした。
(硬化被膜の外観変化の評価基準)
○:クラックおよび剥離等の異常が無かった。
×:クラックおよび剥離等の異常が一つでもあった。
(ヘイズの差の評価基準)
◎:ΔHZが1%未満であった。
○:ΔHZが1%以上4%未満であった。
△:ΔHZが4%以上6%未満であった。
×:ΔHZが6%以上であった。
(黄変度の差の評価基準)
◎:ΔYIが0.5未満であった。
○:ΔYIが0.5以上1.0未満であった。
△:ΔYIが1.0以上1.5未満であった。
×:ΔYIが1.5以上であった。
【0085】
【表1】
【0086】
【表2】
【0087】
【表3】
【0088】
【表4】