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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-31
(45)【発行日】2024-08-08
(54)【発明の名称】紫外線硬化性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/44 20060101AFI20240801BHJP
   C08F 2/50 20060101ALI20240801BHJP
   H05B 33/04 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
C08F2/44 C
C08F2/50
H05B33/04
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022550607
(86)(22)【出願日】2021-09-16
(86)【国際出願番号】 JP2021034166
(87)【国際公開番号】W WO2022059741
(87)【国際公開日】2022-03-24
【審査請求日】2023-01-24
(31)【優先権主張番号】P 2020157662
(32)【優先日】2020-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】舘野 航太郎
【審査官】尾立 信広
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-160343(JP,A)
【文献】特開2005-060519(JP,A)
【文献】特開2016-160361(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00-2/60
C08F 283/00-289/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジカル重合性化合物(A)、光重合開始剤(B)および粘着付与剤(C)を含有する、紫外線硬化性樹脂組成物であり、
前記ラジカル重合性化合物(A)は、脂環式2官能(メタ)アクリレートおよび直鎖2官能(メタ)アクリレートをいずれも含有し、
前記紫外線硬化性樹脂組成物中の前記粘着付与剤(C)の含有量は、前記紫外線硬化性樹脂組成物の全組成に対して、0.5質量%以上30質量%以下である、紫外線硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
当該紫外線硬化性樹脂組成物中の前記脂環式2官能(メタ)アクリレートの含有量は、前記ラジカル重合性化合物(A)100質量部に対して0.5質量%以上60質量%以下である、請求項に記載の紫外線硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
E型粘度計によって25℃、20rpmの条件で測定される粘度が10mPa・s以上30mPa・s以下である、請求項1または2に記載の紫外線硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記ラジカル重合性化合物(A)は、シリコン非含有の化合物である、請求項1からいずれか1項に記載の紫外線硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記光重合開始剤(B)は、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド(TPO)を含有する、請求項1からいずれか1項に記載の紫外線硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
前記粘着付与剤(C)が、石油樹脂、テルペン樹脂、フェノール樹脂、テルペンフェノール樹脂およびロジン樹脂からなる群から選ばれる、少なくとも1つの樹脂である、請求項1からいずれか1項に記載の紫外線硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
表示素子用である、請求項1からいずれか1項に記載の紫外線硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
前記表示素子が、有機エレクトロルミネッセンス素子である、請求項に記載の紫外線硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
インクジェット法による塗布に用いられる、請求項1からいずれか1項に記載の紫外線硬化性樹脂組成物。
【請求項10】
当該紫外線硬化性樹脂組成物は、界面活性剤およびレベリング剤をいずれも含まない、請求項1からいずれか1項に記載の紫外線硬化性樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線硬化性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
表示素子の分野において、封止剤の特性を向上するための検討がなされている。以下、有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置を例に挙げて説明する。
有機EL素子は、消費電力が少ないことから、ディスプレイや照明装置などに用いられつつある。有機EL素子は、大気中の水分や酸素によって劣化しやすいことから、各種シール部材で封止されて使用されており、実用化に向けては各種シール部材の水分や酸素の耐久性の向上が望まれている。
【0003】
このようなシール部材として、熱硬化型のエポキシ系材料を用いた封止剤の他、アクリル系材料を用いた封止剤も提案されている。たとえば、特許文献1(国際公開第2019/82996号)においては、非環式の炭素数6以上のアルカンジオールジ(メタ)アクリレートと、特定の環状モノマーと、光重合開始剤を含有する有機EL表示素子用封止剤が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2019/82996号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の特許文献1に記載の封止剤について本発明者が検討したところ、外部からの水分や酸素などが封止剤を介して素子内部に徐々に浸透して、ダークスポットが発生し、拡大することがあるという懸念がある点で改善の余地があった。
【0006】
本発明は、有機EL素子等の表示素子へのダメージが少ない樹脂組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、以下に示す紫外線硬化性樹脂組成物が提供される。
[1] ラジカル重合性化合物(A)、光重合開始剤(B)および粘着付与剤(C)を含有する、紫外線硬化性樹脂組成物。
[2] E型粘度計によって25℃、20rpmの条件で測定される粘度が10mPa・s以上30mPa・s以下である、[1]に記載の紫外線硬化性樹脂組成物。
[3] 前記ラジカル重合性化合物(A)は(メタ)アクリル化合物(A1)である、[1]または[2]に記載の紫外線硬化性樹脂組成物。
[4] 前記ラジカル重合性化合物(A)は、シリコン非含有の化合物である、[1]から[3]いずれか1項に記載の紫外線硬化性樹脂組成物。
[5] 前記ラジカル重合性化合物(A)は、2官能(メタ)アクリレートである、[1]から[4]いずれか1項に記載の紫外線硬化性樹脂組成物。
[6] 前記ラジカル重合性化合物(A)は、2官能アクリレートおよび2官能メタクリレートをいずれも含む、[1]から[5]いずれか1項に記載の紫外線硬化性樹脂組成物。
[7] 前記ラジカル重合性化合物(A)は、脂環式2官能(メタ)アクリレートおよび直鎖2官能(メタ)アクリレートをいずれも含有する、[1]から[6]いずれか1に項記載の紫外線硬化性樹脂組成物。
[8] 当該紫外線硬化性樹脂組成物中の前記脂環式2官能(メタ)アクリレートの含有量は、前記成分(A)100質量部に対して0.5質量%以上60質量%以下である、[7]に記載の紫外線硬化性樹脂組成物。
[9] 前記光重合開始剤(B)は、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド(TPO)を含有する、[1]から[8]いずれか1項に記載の紫外線硬化性樹脂組成物。
[10] 前記粘着付与剤(C)が、石油樹脂、テルペン樹脂、フェノール樹脂、およびロジン樹脂からなる群から選ばれる、少なくとも1つの樹脂である、[1]から[9]いずれか1項に記載の紫外線硬化性樹脂組成物。
[11] 表示素子用である、[1]から[10]いずれか1項に記載の紫外線硬化性樹脂組成物。
[12] 前記表示素子が、有機エレクトロルミネッセンス素子である、[11]に記載の紫外線硬化性樹脂組成物。
[13] インクジェット法による塗布に用いられる、[1]から[12]いずれか1項に記載の紫外線硬化性樹脂組成物。
[14] 当該紫外線硬化性樹脂組成物は、界面活性剤およびレベリング剤をいずれも含まない、[1]から[13]いずれか1項に記載の紫外線硬化性樹脂組成物。
【0008】
なお、これらの各構成の任意の組み合わせや、本発明の表現を方法、装置などの間で変換したものもまた本発明の態様として有効である。
たとえば、本発明によれば、前記本発明における紫外線硬化性樹脂組成物からなる封止剤およびその硬化物を提供することもできる。
また、たとえば、本発明によれば、基板と、前記基板上に配置された表示素子と、前記表示素子を被覆する封止層と、を含み、前記封止層が、前記本発明における紫外線硬化性樹脂組成物の硬化物により構成されている、表示装置を提供することもできる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、有機EL素子等の表示素子へのダメージが少ない樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には共通の符号を付し、適宜説明を省略する。また、本実施形態において、各成分について、それぞれ、1種を用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、数値範囲を表す「~」は、以上、以下を表し、上限値および下限値をいずれも含む。
【0011】
(紫外線硬化性樹脂組成物)
本実施形態において、紫外線硬化性樹脂組成物(以下、適宜単に「樹脂組成物」とも呼ぶ。)は、ラジカル重合性化合物(A)、光重合開始剤および粘着付与剤(C)を含む。
【0012】
樹脂組成物は、素子へのダメージを低減する観点から、好ましくは表示素子用であり、表示素子は、好ましくは有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子である。
また、樹脂組成物は、具体的には、素子の封止に好適に用いられ、また、封止材料として好適に用いられる。
【0013】
樹脂組成物の性状は限定されず、樹脂膜の硬化物のフレキシブル性および耐プラズマ性を向上させる観点、および、インクジェット法等の塗布法による硬化材料の形成に好適であるという観点から、樹脂組成物は好ましくは液状である。
【0014】
また、樹脂膜等の材料を安定的に形成する観点から、樹脂組成物は、好ましくは塗布に用いられ、より好ましくはインクジェット法による塗布に用いられる。
【0015】
E型粘度計を用いて25℃、20rpmにて測定される樹脂組成物の粘度は、インクジェット吐出性向上の観点から、好ましくは10mPa・s以上であり、より好ましくは12mPa・s以上、さらに好ましくは15mPa・s以上であり、また、好ましくは30mPa・s以下であり、より好ましくは28.5mPa・s以下、さらに好ましくは27mPa・s以下である。
次に、樹脂組成物の構成成分について具体例を挙げて説明する。
【0016】
(成分(A))
成分(A)は、重合性化合物である。成分(A)は、重合性の官能基を有する化合物であればよく、好ましくはラジカル重合性の官能基を有する化合物である。
ラジカル重合性官能基の具体例として、(メタ)アクリロイル基およびビニル基からなる群から選択される1または2以上の基が挙げられる。硬化性を向上させる観点から、成分(A)は好ましくは(メタ)アクリロイル基を含む化合物、すなわち、(メタ)アクリル化合物(A1)である。
【0017】
ここで、本明細書において、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基とメタクリロイル基のうちの少なくとも一方を意味する。(メタ)アクリルとは、アクリルまたはメタクリルのうちの少なくとも一方を意味する。また、(メタ)アクリレートとは、アクリレートとメタクリレートのうちの少なくとも一方を意味する。
【0018】
(成分(A1))
成分(A1)は、(メタ)アクリル化合物である。(メタ)アクリル化合物の具体例として、モノ(メタ)アクリル化合物、ジ(メタ)アクリル化合物、3官能以上の(メタ)アクリル化合物が挙げられる。
【0019】
樹脂組成物により得られる樹脂材料の強度向上の観点から、好ましくは成分(A1)が2官能(メタ)アクリレートを含み、より好ましくは成分(A1)が2官能(メタ)アクリレートであり、さらに好ましくは成分(A)が2官能(メタ)アクリレートである。
同様の観点から、成分(A)は、好ましくは2官能アクリレートおよび2官能メタクリレートをいずれも含む。
【0020】
(2官能(メタ)アクリレート)
2官能(メタ)アクリレートとして、具体的には、脂環式2官能(メタ)アクリレートおよび直鎖2官能(メタ)アクリレートが挙げられる。素子へのダメージの抑制効果を高める観点から、成分(A)は、好ましくは脂環式2官能(メタ)アクリレートおよび直鎖2官能(メタ)アクリレートをいずれも含有する。
【0021】
脂環式2官能(メタ)アクリレートは、分子構造中に脂環式炭化水素構造を有する2官能(メタ)アクリレートである。脂環式炭化水素構造における炭素数は、耐熱性向上の観点から、好ましくは4以上であり、より好ましくは5以上、さらに好ましくは6以上であり、また、好ましくは14以下であり、より好ましくは12以下、さらに好ましくは10以下である。
脂環式炭化水素構造は、飽和炭化水素構造であってよいし不飽和炭化水素構造であってもよい。耐熱性向上の観点から、脂環式炭化水素構造は、好ましくは飽和炭化水素構造である。
【0022】
また、脂環式炭化水素構造は、単環式炭化水素構造であってもよいし、縮合環式炭化水素構造や橋架環式炭化水素基構造の多環式炭化水素構造であってもよい。脂環式2官能(メタ)アクリレートは、分子構造中にこれらの脂環式炭化水素構造を含む基を含んでもよく、好ましくは脂環式炭化水素構造を含む2価の基を含む。
単環式炭化水素基の具体例として、シクロヘキシレン基、シクロヘキシル基等のシクロアルカン構造を有する基;シクロデカトリエンジイル基、シクロデカトリエン基等のシクロアルケン骨格を有する基が挙げられる。
多環式炭化水素基の具体例として、トリシクロデカンジイル基、ジシクロペンタニル基、ジシクロペンテニル基等のジシクロペンタジエン骨格を有する基;ノルボルナンジイル基、イソボルナンジイル基、ノルボルニル基、イソボルニル基等のノルボルナン骨格を有する基;アダマンタンジイル基、アダマンチル基等のアダマンタン骨格を有する基などが挙げられる。
【0023】
脂環式2官能(メタ)アクリレートにおける環式炭化水素基は、耐プラズマ性向上の観点および低透湿性の観点から、好ましくはジシクロペンタジエン骨格を有する基である。
また、脂環式2官能(メタ)アクリレートは、耐プラズマ性向上の観点および低透湿性の観点から、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレートを含み、より好ましくはトリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレートである。
【0024】
紫外線硬化性樹脂組成物中の脂環式2官能(メタ)アクリレートの含有量は、耐熱性向上の観点から、ラジカル重合性化合物すなわち成分(A)100質量部に対し、好ましくは0.5質量部以上であり、より好ましくは1質量部以上、さらに好ましくは5質量部以上、さらにより好ましくは10質量部以上、よりいっそう好ましくは15質量部以上である。
また、インクジェット塗布性をより好ましいものとする観点から、紫外線硬化性樹脂組成物中の脂環式2官能(メタ)アクリレートの含有量は、成分(A)100質量部に対し、好ましくは60質量部以下であり、より好ましくは55質量部以下、さらに好ましくは50質量部以下、さらにより好ましくは45質量部以下である。
【0025】
直鎖2官能(メタ)アクリレートは、分子構造中に直鎖構造を有するとともに、(メタ)アクリル基を2個有する(メタ)アクリレートである。
直鎖構造は、インクジェット塗布性をより好ましいものとする観点から、好ましくは2価の直鎖炭化水素基を含む。2価の直鎖炭化水素基の炭素数は、モノマー入手容易性の観点から、たとえば1以上であり、好ましくは2以上、より好ましくは4以上である。また、耐熱性向上の観点から、2価の直鎖炭化水素基の炭素数は、好ましくは20以下、より好ましくは14以下である。
【0026】
直鎖2官能(メタ)アクリレートの具体例として、アルカンジオールのジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
直鎖2官能(メタ)アクリレートとして、さらに具体的には、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(たとえばA-HD-N、新中村化学工業社製)、1,9-ノナンジオールジアクリレート(たとえばA-NOD-N、新中村化学工業社製;ライトアクリレート1,9ND-A、共栄社化学社製)、1,10-デカンジオールジアクリレート(たとえばA-DOD-N、新中村化学工業社製)、エチレングリコールジアクリレート(たとえばSR206NS、アルケマ社製)、トリエチレングリコールジアクリレート(たとえばSR272、アルケマ社製)、ポリエチレングリコールジアクリレート(たとえばA-400、新中村化学工業社製)、1,3-ブタンジオールジメタクリレート(たとえばBG、新中村化学工業社製)、1,4-ブタンジオールジメタクリレート(たとえばBD、新中村化学工業社製)、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート(たとえばHD-N、新中村化学工業社製)、1,9-ノナンジオールジメタクリレート(たとえばNOD-N、新中村化学工業社製;ライトアクリレート1,9-ND-M、共栄社化学社製)、1,10-デカンジオールジメタクリレート(たとえばDOD-N、新中村化学工業社製)、1,12-ドデカンジオールジメタクリレート(たとえばSR262、アルケマ社製)が挙げられる。
耐プラズマ性向上、インクジェット法での塗布安定性向上および低誘電率の効果のバランスを高める観点から、直鎖2官能(メタ)アクリレートは、1,12-ドデカンジオールジ(メタ)アクリレートおよび1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレートからなる群から選択される1または2以上の(メタ)アクリレートである。
【0027】
樹脂組成物中の直鎖2官能(メタ)アクリレートの含有量は、インクジェット塗布性をより好ましいものとする観点から、成分(A)100質量部に対し、好ましくは10質量部以上であり、より好ましくは20質量部以上、さらに好ましくは30質量部以上、さらにより好ましくは45質量部以上、よりいっそう好ましくは60質量部以上である。
また、素子へのダメージの抑制効果を高める観点から、樹脂組成物中の直鎖2官能(メタ)アクリレートの含有量は、成分(A)100質量部に対し、好ましくは99.5質量部以下であり、より好ましくは95質量部以下、さらに好ましくは85質量部以下である。
【0028】
(単官能(メタ)アクリレート)
単官能の(メタ)アクリレートとして、芳香環単官能(メタ)アクリレート;脂環式単官能(メタ)アクリレート;直鎖単官能(メタ)アクリレート、分岐鎖を有する単官能(メタ)アクリレート等の鎖式単官能(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0029】
単官能の(メタ)アクリレートとして、さらに具体的には、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、3,3,5-トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、4-ターシャルブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート(たとえばFA-511AS、日立化成社製)、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、3-メトキシブチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジキシルエチル(メタ)アクリレート、エチルジグリコール(メタ)アクリレート、環状トリメチロールプロパンフォルマルモノ(メタ)アクリレート、イミド(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、エトキシ化コハク酸(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ω-カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-(2-エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート(たとえばISTA、大阪有機化学工業社製)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート(たとえばLA、大阪有機化学工業社製)、イソデシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、オクチル/デシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、カプロラクトン(メタ)アクリレート、エトキシ化(4)ノニルフェノール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(350)モノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(550)モノ(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、メチルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、エトキシ化トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレートのエチレンオキサイド付加物、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレートのプロピレンオキサイド付加物、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、3-メタクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド、3-(メタ)アクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド、エトキシ化-o-フェニルフェノール(メタ)アクリレート(たとえばA-LEN-10、新中村化学工業社製)等が挙げられる。
【0030】
樹脂組成物中の単官能(メタ)アクリレートの含有量は、インクジェット吐出性をより好ましいものとする観点から、成分(A)100質量部に対し、好ましくは20質量部以下であり、より好ましくは15質量部以下、さらに好ましくは8質量部以下である。
また、樹脂組成物中の単官能(メタ)アクリレートの含有量は、成分(A)100質量部に対し、たとえば0.1質量部以上であってもよい。
【0031】
(3官能以上の多官能(メタ)アクリレート)
3官能以上の多官能(メタ)アクリル化合物の具体例として、トリメチロールプロパントリアクリレート(たとえばA-TMPT、新中村化学工業社製;ライトアクリレートTMP-A、共栄社化学社製)、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート(たとえばA-TMPT-EO、新中村化学工業社製)、エトキシ化グリセリントリアクリレート(たとえばA-GLY-6E、新中村化学工業社製)、プロポキシ化グリセリントリアクリレート(たとえばA-GLY-3P、新中村化学工業社製)等の3官能(メタ)アクリル化合物;
ペンタエリスリトールテトラアクリレート(たとえばA-TMMT、新中村化学工業社製)、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート(たとえばATM-4E、新中村化学工業社製)、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(たとえばAD-TMP-L、新中村化学工業社製)等の4官能(メタ)アクリル化合物;
ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(たとえばM-402、東亞合成社製)等の5官能(メタ)アクリレート化合物;および
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(たとえばGM66G0H、國精化學社製)等の6官能(メタ)アクリル化合物が挙げられる。
【0032】
樹脂組成物中の3官能以上の多官能(メタ)アクリレートの含有量は、樹脂組成物から得られる塗膜の引張伸びの向上の観点から、成分(A)100質量部に対し、好ましくは5質量部以下であり、より好ましくは3質量部以下、さらに好ましくは1質量部以下である。
また、樹脂組成物中の3官能以上の多官能(メタ)アクリレートの含有量は、成分(A)100質量部に対し、たとえば0.1質量部以上であってもよい。
【0033】
樹脂組成物中の成分(A)の含有量は、硬化物の強度を向上する観点から、樹脂組成物の全組成に対し、好ましくは70質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは85質量%以上、さらにより好ましくは90質量%以上、よりいっそう好ましくは93質量%以上である。
また、封止材料の耐候性を向上する観点から、樹脂組成物中の成分(A)の含有量は、樹脂組成物の全組成に対し、好ましくは99.9質量%以下であり、より好ましくは99.5質量%以下、さらに好ましくは99質量%以下、よりいっそう好ましくは98質量%以下である。
【0034】
また、表示素子へのダメージの低減効果を向上する観点から、成分(A)は、好ましくはシリコン非含有の化合物である。ここで、シリコン非含有の化合物とは、分子構造中にSiを含まない化合物をいう。
成分(A)のうち、シリコン含有化合物の具体例として、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(たとえばKBM-5103、信越化学工業社製)、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシラン(たとえばTCI社製、製品コードM0725)等のシリコン含有単官能(メタ)アクリレートが挙げられる。
成分(A)がシリコン含有化合物を含むとき、その含有量は、樹脂組成物における相溶性向上の観点から、成分(A)100質量部に対して好ましくは12質量部以下であり、より好ましくは8質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下、さらにより好ましくは1質量部以下、よりいっそう好ましくは0.5質量部以下、さらによりいっそう好ましくは0.2質量部以下、さらに加えてよりいっそう好ましくは0.1質量部以下、さらにまた好ましくは0質量部である。
【0035】
(成分(B))
成分(B)は、光重合開始剤である。成分(B)は、具体的には、紫外線または可視光線の照射によりラジカルまたは酸を発生する化合物である。
成分(B)の具体例としては、ベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、4,4'-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、キサントン、チオキサントン、イソプロピルキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-エチルアントラキノン、アセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-4'-イソプロピルプロピオフェノン、イソプロピルベンゾインエーテル、イソブチルベンゾインエーテル、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、カンファーキノン、ベンズアントロン、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4,4'-ジ(t-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,4,4'-トリ(t-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3',4,4'-テトラ(t-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3',4,4'-テトラ(t-ヘキシルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3'-ジ(メトキシカルボニル)-4,4'-ジ(t-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,4'-ジ(メトキシカルボニル)-4,3'-ジ(t-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、4,4'-ジ(メトキシカルボニル)-3,3'-ジ(t-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2-(4'-メトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(3',4'-ジメトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(2',4'-ジメトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(2'-メトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4'-ペンチルオキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、4-[p-N,N-ジ(エトキシカルボニルメチル)]-2,6-ジ(トリクロロメチル)-s-トリアジン、1,3-ビス(トリクロロメチル)-5-(2'-クロロフェニル)-s-トリアジン、1,3-ビス(トリクロロメチル)-5-(4'-メトキシフェニル)-s-トリアジン、2-(p-ジメチルアミノスチリル)ベンズオキサゾール、2-(p-ジメチルアミノスチリル)ベンズチアゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール、3,3'-カルボニルビス(7-ジエチルアミノクマリン)、2-(o-クロロフェニル)-4,4',5,5'-テトラフェニル-1,2'-ビイミダゾール、2,2'-ビス(2-クロロフェニル)-4,4',5,5'-テトラキス(4-エトキシカルボニルフェニル)-1,2'-ビイミダゾール、2,2'-ビス(2,4-ジクロロフェニル)-4,4',5,5'-テトラフェニル-1,2'-ビイミダゾール、2,2'-ビス(2,4-ジブロモフェニル)-4,4',5,5'-テトラフェニル-1,2'-ビイミダゾール、2,2'-ビス(2,4,6-トリクロロフェニル)-4,4',5,5'-テトラフェニル-1,2'-ビイミダゾール、3-(2-メチル-2-ジメチルアミノプロピオニル)カルバゾール、3,6-ビス(2-メチル-2-モルフォリノプロピオニル)-9-n-ドデシルカルバゾール、ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタニウム、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-プロパノン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパノン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-1-プロパノン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノ-1-プロパノン、2-(ジメチルアミノ)-1-(4-モルホリノフェニル)-2-ベンジル-1-ブタノン、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン、オキシ-フェニル-酢酸2-[2-オキソ-2-フェニル-アセトキシ-エトキシ]-エチルエステル、オキシ-フェニル-酢酸2-[2-ヒドロキシ-エトキシ]-エチルエステル、ベンゾイルギ酸メチル、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィン酸エステル、1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-1,2-オクタンジオン2-(O-ベンゾイルオキシム)]、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-エタノン-1-(O-アセチルオキシム)などを挙げることができる。
【0036】
これらの中でも、硬化性を向上する観点から、成分(B)は、好ましくは、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-プロパノン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパノン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-1-プロパノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、オキシ-フェニル-酢酸2-[2-オキソ-2-フェニル-アセトキシ-エトキシ]-エチルエステル、オキシ-フェニル-酢酸2-[2-ヒドロキシ-エトキシ]-エチルエステル、ベンゾイルギ酸メチル、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(TPO)、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィン酸エステルからなる群から選択される1または2以上の化合物であり、より好ましくはTPOを含有する。
【0037】
成分(B)の市販品としては、Irgacure184、Irgacure651、Irgacure127、Irgacure1173、Irgacure500、Irgacure2959、Irgacure754、IrgacureMBF、IrgacureTPO(以上、BASF製)、Omnirad TPO H(IGM Resins社製)などが好ましい。
【0038】
樹脂組成物中の成分(B)の含有量は、硬化性を向上する観点から、樹脂組成物の全組成に対し、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上、さらにより好ましくは2質量%以上である。
また、樹脂組成物の着色を抑制する観点から、樹脂組成物中の成分(B)の含有量は、樹脂組成物の全組成に対し、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは8質量%以下、さらに好ましくは6質量%以下、さらにより好ましくは5質量%以下である。
【0039】
(成分(C))
成分(C)は、粘着付与剤である。樹脂組成物が成分(C)を含むことにより、樹脂組成物の硬化物の誘電率を大きく変化させることなく、樹脂組成物の粘度を調整することができ、さらに具体的には樹脂組成物の粘度を適度に高めることができる。
成分(C)として、具体的には、脂肪族炭化水素樹脂、脂環式炭化水素樹脂、芳香族炭化水素樹脂等の石油樹脂;テルペン樹脂;フェノール樹脂;テルペンフェノール樹脂およびロジン樹脂からなる群から選ばれる、少なくとも1つの樹脂が挙げられる。
【0040】
石油樹脂の具体例として、ペンテン、ペンタジエン、イソプレン等から得られるC5モノマーまたはそのオリゴマー;インデン、メチルインデン、ビニルトルエン、スチレン、α-メチルスチレン、β-メチルスチレン等から得られるC9モノマーまたはそのオリゴマー;C5モノマーおよびC9モノマーの共重合体(C5-C9共重合樹脂);シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン等から得られる脂環式モノマーまたはその重合体;イソプロペニルトルエン等の芳香族モノマーまたはその重合体;上記各種モノマーもしくはその重合体の水素化物;上記各種モノマーもしくはその重合体を、無水マレイン酸やマレイン酸、フマル酸、(メタ)アクリル酸、フェノール等で変性した変性石油樹脂;が挙げられる。
成分(A)との相溶性に優れる観点から、石油樹脂は、好ましくはジシクロペンタジエンを主原料に製造された石油樹脂であり、より好ましくはジシクロペンタジエンを主原料に製造され、分子内にエステル基を有している石油樹脂(たとえばQTN1500、日本ゼオン社製)である。
【0041】
テルペン樹脂として、具体的には、α-ピネン樹脂や、β-ピネン樹脂、α-ピネンモノマー、β-ピネンモノマー等のテルペン類とスチレン等の芳香族モノマーとを共重合させた芳香族変性のテルペン系樹脂が挙げられる。
【0042】
フェノール樹脂として、具体的には、フェノール類とホルムアルデヒドの縮合物が挙げられる。フェノール類として、たとえば、フェノール、m-クレゾール、3,5-キシレノール、p-アルキルフェノール、レゾルシンが挙げられる。フェノール樹脂として、たとえば、これらフェノール類とホルムアルデヒドとをアルカリ触媒で付加反応させたレゾールや、酸触媒で縮合反応させて得られるノボラックが挙げられる。また、フェノール樹脂には、ロジンにフェノールを酸触媒で付加させ熱重合することにより得られるロジンフェノール樹脂等も含まれる。
【0043】
また、テルペンフェノール樹脂として、テルペン類とフェノール類との共重合体が挙げられる。
【0044】
ロジン樹脂の具体例としては、ガムロジン、ウッドロジンもしくはトール油ロジンや、これらのロジンを用いて不均化もしくは水素添加処理した安定化ロジンや重合ロジン、これらのロジンを無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、(メタ)アクリル酸、フェノール等で変性した変性ロジン、さらにはこれらのエステル化物等が挙げられる。エステル化物を得るために用いるアルコールは多価アルコールが好ましい。多価アルコールとして、たとえば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコールなどの2価アルコール;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンなどの3価アルコール;ペンタエリスリトール、ジグリセリンなどの4価アルコール;ジペンタエリスリトールなどの6価アルコールからなる群から選択される1種または2種以上が挙げられる。
【0045】
樹脂組成物中の成分(C)の含有量は、樹脂組成物の粘度およびインクジェット塗布性をより好ましいものとする観点から、樹脂組成物の全組成に対して好ましくは0.5質量%以上であり、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは2質量%以上、さらにいっそう好ましくは3質量%以上であり、また、好ましくは30質量%以下であり、より好ましくは25質量%以下、さらに好ましくは20質量%、さらにより好ましくは15質量%以下、よりいっそう好ましくは10質量%以下である。
【0046】
(その他成分)
本実施形態において、樹脂組成物は、成分(A)~(C)から構成されてもよいし、これら以外の成分を含んでもよい。他の成分の具体例として、充填剤、硬化促進剤、可塑剤、熱安定剤、難燃剤、帯電防止剤、消泡剤および紫外線吸収剤からなる群から選択される1または2以上の添加剤が挙げられる。
また、加熱時のブリードアウト耐性向上の観点から、樹脂組成物は好ましくは界面活性剤およびレベリング剤をいずれも含まない。
【0047】
次に、樹脂組成物の製造方法を説明する。
樹脂組成物の製造方法は限定されず、たとえば、成分(A)~(C)、および、適宜その他の成分、たとえば必要に応じて添加する各種添加剤を混合することを含む。各成分を混合する方法として、たとえば、遊星式撹拌装置、ホモディスパー、万能ミキサー、バンバリーミキサー、ニーダー、2本ロール、3本ロール、押出機等の公知の各種混練機を単独または併用して、常温下または加熱下で、常圧下、減圧下、加圧下または不活性ガス気流下等の条件下で均一に混練する方法が挙げられる。
【0048】
また、得られた樹脂組成物を用いて樹脂膜を形成することもできる。たとえば、樹脂組成物を基材上に塗布し、乾燥してもよい。塗布には、インクジェット法、スクリーン印刷、ディスペンサー塗布等の公知の手法を用いることができる。また、乾燥は、たとえば成分(A)が重合しない温度に加熱すること等によりおこなうことができる。得られる樹脂膜の形状に制限はなく、たとえば膜状または層状とすることができる。
【0049】
また、得られる樹脂膜は、たとえば封止材料として好適に用いられる。封止材料は、たとえば本実施形態における樹脂組成物を硬化してなる硬化物であり、さらに具体的には樹脂組成物の光硬化物である。
樹脂組成物を光硬化させる方法としては、たとえば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、エキシマレーザ、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプ、ナトリウムランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、LEDランプ、蛍光灯、太陽光、電子線照射装置等の光源を使用して光照射して硬化させる方法が挙げられる。
【0050】
本実施形態においては、樹脂組成物が成分(A)~(C)を組み合わせて含むため、これを用いることにより、有機EL素子等の表示素子へのダメージを低減することができる。また、本実施形態によれば、たとえば、樹脂組成物から得られる樹脂層を封止材料として用いることにより、信頼性に優れる表示装置を得ることも可能となる。
表示装置として有機EL表示装置を例に挙げると、有機EL表示装置は、樹脂組成物の硬化物により構成された層、たとえば封止層を有する。
【0051】
また、本実施形態において得られる樹脂組成物は、たとえば表示素子、好ましくは有機EL表示素子の封止用に好適に用いられる。本実施形態によれば、樹脂層の形成時にインクジェット法で安定に塗布できるとともに、素子発光時のダークスポットの発生を効果的に抑制することができ、表示装置の製造安定性を向上することも可能となる。
【実施例
【0052】
以下、本発明を実施例および比較例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
はじめに、以下の例において用いた材料を示す。
【0053】
(ラジカル重合性化合物(A))
二官能直鎖アクリレート1:ライトアクリレート1,9ND-A(1,9-ノナンジオールジアクリレート、CAS.No.107481-28-7)、共栄社化学社製
二官能脂環式メタクリレート1:DCP(トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート、CAS.No.43048-08-4)、新中村化学工業社製
二官能直鎖メタクリレート1:SR-262(1,12-ドデカンジオールジメタクリレート、CAS.No.72829-09-5)、アルケマ社製
二官能脂環式アクリレート1:ライトアクリレートDCP-A(ジメチロール-トリシクロデカンジアクリレート、CAS.No.42594-17-2)、共栄社化学社製
単官能芳香環アクリレート1:A-LEN-10(エトキシ化-o-フェニルフェノールアクリレート、CAS.No.72009-86-0)、新中村化学工業社製
単官能脂環式アクリレート1:FA-511AS(ジシクロペンテニルアクリレート、CAS.No.33791-58-1)、日立化成社製
単官能鎖式アクリレート1:LA(ラウリルアクリレート、CAS.No.2156-97-0)、大阪有機化学工業社製
単官能シリコン含有アクリレート1:KBM5103(3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、CAS.No.4369-14-6)、信越化学工業社製
単官能鎖式アクリレート2:ISTA、(イソステアリルアクリレート、CAS.No.4813-57-4)、大阪有機化学工業社製
3官能アクリレート1:ライトアクリレートTMP-A(トリメチロールプロパントリアクリレート、CAS.No.15625-89-5)、共栄社化学社製
(光重合開始剤(B))
光ラジカル開始剤1:Omnirad TPO H(CAS.No.75980-60-8)、IGM Resins社製
(粘着付与剤(C))
脂環族系炭化水素樹脂1:Quintone1500、日本ゼオン社製
テルペンフェノール樹脂1:YSポリスターT130、ヤスハラケミカ社製
芳香族系炭化水素樹脂1:スチレンオリゴマーA;イソプロペニルトルエン(IPT)の単独重合体(重量平均分子量:1200、数平均分子量:800)
芳香族系炭化水素樹脂2:スチレン系オリゴマーB;イソプロペニルトルエン(IPT)の単独重合体(重量平均分子量:1600、数平均分子量;1100)
テルペンフェノール樹脂2:YSポリスターK125、ヤスハラケミカ社製
ロジン樹脂1:KE100、荒川化学工業社製
【0054】
(実施例1~21、比較例1~3)
表1~表3に示した配合組成となるように各成分を配合して、液状の紫外線硬化性樹脂組成物を得た。
各例で得られた樹脂組成物またはその硬化物の特性を以下の方法で測定した。測定結果を表1~表3にあわせて示す。
【0055】
(粘度)
各例で得られた紫外線硬化性組成物の粘度を、E型粘度計(LV-DV-II+ Pro、BROOKFIELD社製)を用いて25℃、20rpmにて測定した。
【0056】
(引張伸び)
以下の条件1に従って試料を作製した。
(条件1)各例で得られた紫外線硬化性組成物を、厚さ100μmのテフロン(登録商標)(MSF-100、中興化成工業社製)シートを挟み込んだ2枚のガラス中へ封入し、波長395nmのUV-LEDで照度1000mW/cm2、積算光量1500mJ/cm2にて硬化して、厚み100μmの硬化物を得た。得られた硬化物を幅10mm×長さ55mmの大きさにカットし、長さ方向に10mm毎合計5点での厚みがすべて95~105μmの範囲である硬化物を試料とした。
【0057】
得られた試料の引張伸び特性を以下の条件2にて評価した。
(条件2)試料の一端を210型万能試験機(インテスコ社製)の載荷容量50Nのロードセルに固定し、チャック間距離が30mmになるよう他端を固定した。このとき試料を何も取り付けていない状態を0mNと設定し、また、初期ひずみ解消のため、荷重が0.05Nに達するまで引っ張り、その点を開始点とした。23℃、10mm/秒(引っ張り速度)にて他端を180度方向へ引っ張り、フィルムが破断するまでの伸び率を測定し、その伸び率から以下のように評価した。
〇:n=5の平均で、伸び率0.5%以上
×:n=5の平均で、伸び率0.5%未満
【0058】
(インクジェット吐出性)
各例で得られた紫外線硬化性樹脂組成物をインクジェットカートリッジDMC-11610(富士フイルムDimatix社製)に導入した。そのインクジェットカートリッジをインクジェット装置DMP-2831(富士フイルムDimatix社製)にセットし、吐出状態の調整を行った後、塗布中、もしくは塗布後の様子から、以下のように評価した。
〇:インクジェットヘッドを30℃に加熱して、吐出した際にインクジェット装置から安定して塗布することができ、所望の厚みの印刷物を作製できた
×:インクジェットヘッドを30℃に加熱して吐出した際にインクジェットの吐出時にミストが発生した、または不吐出となった
【0059】
(有機EL素子ダメージ(OLEDダメージ))
EL素子ダメージの指標として、以下の方法で有機EL表示素子の信頼性を評価した。
ITO電極を製膜したガラス基板に対し、上記基板をUV-オゾン処理装置(セン特殊光源社製、PL21-200(S)/UVE-200J)にて処理を行った後、アルカリ水溶液、純水、アセトン、イソプロピルアルコールにてそれぞれ15分間超音波洗浄を行い、最後にアセトンにて10分間超音波洗浄を行った。
次に、この基板を真空蒸着装置の基板フォルダに固定し、素焼きの坩堝にDipyrazino[2,3-f:2',3'-h]quinoxaline-2,3,6,7,10,11,hexacarbonitrile(HAT-CN)を200mg、別の素焼き坩堝に9-Phenyl-3,6-bis(9-phenyl-9Hcarbazol-3-yl)-9H-carbazole(Tris-PCz)を200mg入れ、真空チャンバー内を1×10-4Paまで減圧した。その後、HAT-CNの入った坩堝を加熱し、HAT-CNを蒸着速度0.4Å/sで基板に堆積させ、膜厚100nmを製膜した。
続いて、Tris-PCzの入った坩堝を加熱し、蒸着速度1.0Å/sで基板に堆積させ、膜厚400nmを製膜した。次に、別の素焼き坩堝にTris(8-hydroxyquinolinato)aluminium(Alq3)を200mg入れ、真空チャンバー内を、再び1×104Paまで減圧した。次いでAlq3の入った坩堝を加熱し、蒸着速度0.5Å/sで厚膜700nmを製膜した。その後、タングステン製抵抗加熱ボートにフッ化リチウム200mgを入れ、真空チャンバーを1×10-4Paまで減圧し、フッ化リチウムを0.03Å/sの蒸着速度で5nm製膜した。
最後に、タングステン製抵抗加熱ボートにマグネシウムを1g、銀を200mg入れ、真空チャンバーを1×10-4Paまで減圧し、マグネシムを0.9Å/s、銀を0.1Å/sの蒸着速度でマグネシウム/銀=1/9の比率となるよう150nm製膜した。窒素により蒸着器内を常圧に戻し、8mm×8mm有機発光材料層を有する積層体が配置された基板を取り出した。
【0060】
この有機発光材料層を有する積層体に対し、窒素雰囲気下でシール材となる各例で得られた硬化性組成物を30mg滴下し、ガラスを被せ、UV照射装置にて395nmを400mWで4秒間照射し、シール材を硬化させた。
得られた有機EL表示素子を、温度85℃の環境下で96時間暴露した後、3Vの電圧を印加し、有機EL表示素子の発光状態を目視にて確認した。
評価基準を以下に示す。
○:素子発光時にダークスポット無し
×:素子発光時にダークスポット有り
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
【0063】
【表3】
【0064】
表1~表3より、各実施例で得られた樹脂組成物は、有機EL素子ダメージの抑制効果に優れるものであった。また、各実施例で得られた樹脂組成物は、引張伸び、インクジェット吐出性および有機EL素子ダメージ抑制の各特性のバランスに優れたものであった。
【0065】
この出願は、2020年9月18日に出願された日本出願特願2020-157662号を基礎とする優先権を主張し、その開示のすべてをここに取り込む。