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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-31
(45)【発行日】2024-08-08
(54)【発明の名称】金属粒子含有樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 63/00 20060101AFI20240801BHJP
   C08K 3/08 20060101ALI20240801BHJP
   C08K 9/02 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
C08L63/00 C
C08K3/08
C08K9/02
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022555290
(86)(22)【出願日】2021-08-20
(86)【国際出願番号】 JP2021030648
(87)【国際公開番号】W WO2022074945
(87)【国際公開日】2022-04-14
【審査請求日】2023-05-16
(31)【優先権主張番号】P 2020170183
(32)【優先日】2020-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000108742
【氏名又は名称】タツタ電線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003395
【氏名又は名称】弁理士法人蔦田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中園 元
(72)【発明者】
【氏名】二艘木 優充
【審査官】西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-063445(JP,A)
【文献】特開2003-147317(JP,A)
【文献】特開2017-095642(JP,A)
【文献】特開2007-227156(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00- 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂を含むバインダー成分(A)100質量部に対して、金属粒子(B)を4000~17000質量部、硬化剤(C)を50~250質量部含有し、
前記金属粒子(B)は、平均粒子径が1~20μmのフレーク状銀被覆銅粒子(B1)を1500~6800質量部、平均粒子径が1~20μmの球状銀被覆銅粒子(B2)を700~5000質量部、平均粒子径が100~500nmの銀又は銅からなる球状粒子(B3)を700~6000質量部含有し、
前記硬化剤(C)は、イミダゾール系硬化剤(C1)を5~50質量部、イソシアネート系硬化剤(C2)を45~200質量部含有する、金属粒子含有樹脂組成物。
【請求項2】
前記フレーク状銀被覆銅粒子(B1)と前記球状銀被覆銅粒子(B2)との含有割合(B1/B2)は、0.4~6.0である、請求項1に記載の金属粒子含有樹脂組成物。
【請求項3】
前記フレーク状銀被覆銅粒子(B1)と前記球状銀被覆銅粒子(B2)との合計と、前記球状粒子(B3)の含有割合((B1+B2)/(B3))は、1.5~9.2である、請求項1又は2に記載の金属粒子含有樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属粒子含有樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、金属粒子を含有する樹脂組成物を電子部品パッケージのシールドに適用することが知られている(特許文献1)。
【0003】
また、金属粒子を含有する樹脂組成物を、放熱材料として使用することも知られている。例えば、特許文献2では、放熱接着剤として、シリコンや熱伝導性エポキシなどを主材料とし、熱伝導率を高くするために、金属フィラーを混入することが記載されている。また、特許文献3では、熱伝導率の高い窒化アルミニウム基板に導電ペーストを回路パターン状に積層して焼成した基板が記載され、基板に接着剤を介して金属箔を積層して回路パターン状にエッチングした回路基板とは異なり、導電焼結体により構成される回路と基板との間に接着剤が無いために、回路から窒化アルミニウム基板に熱が伝わり放熱されることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-063445号公報
【文献】特開2015-126674号公報
【文献】特開2019-165155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は、シリコンウエハやガラス基板などの放熱をするために、これらの表面に金属粒子含有樹脂組成物を塗布し放熱性塗膜を形成したり、金属粒子含有樹脂組成物を用いて放熱材料をシリコンウエハやガラス基板などに接着させたりすることを試みたが、シリコンウエハやガラス基板の表面は平滑であるため、従来の金属粒子含有樹脂組成物では、充分な密着性が得られなかった。
【0006】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、優れた導電性、放熱性、及びガラス基板等の平滑な表面との密着性を兼ね備えた、金属粒子含有樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の金属粒子含有樹脂組成物は、上記課題を解決するために、エポキシ樹脂を含むバインダー成分(A)100質量部に対して、金属粒子(B)を4000~20000質量部、硬化剤(C)を50~250質量部含有し、上記金属粒子(B)は、平均粒子径が1~20μmのフレーク状銀被覆銅粒子(B1)を1500~6800質量部、平均粒子径が1~20μmの球状銀被覆銅粒子(B2)を700~5000質量部、平均粒子径が100~500nmの銀又は銅からなる球状粒子(B3)を700~6000質量部含有し、上記硬化剤(C)は、イミダゾール系硬化剤(C1)を5~50質量部、イソシアネート系硬化剤(C2)を45~200質量部含有するものとする。
【0008】
上記フレーク状銀被覆銅粒子(B1)と上記球状銀被覆銅粒子(B2)との含有割合(B1/B2)は、0.4~6.0であるものとすることができる。
【0009】
上記フレーク状銀被覆銅粒子(B1)と上記球状銀被覆銅粒子(B2)との合計と、上記球状粒子(B3)の含有割合((B1+B2)/(B3))は、1.5~9.2であるものとすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、優れた導電性、放熱性、及びガラス基板等の平滑な表面との密着性を兼ね備えた金属粒子含有樹脂組成物が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】塗布安定性の評価方法を示す模式図であり、ポリイミドテープ32~36を貼り付けたガラスエポキシ基板31の上面図である。
図2】塗布安定性の評価方法を示す模式図であり、金属粒子含有樹脂組成物を硬化させてなる硬化物A又は硬化物Bが形成されたガラスエポキシ基板31において、厚さを測定する位置(ポリイミドテープ32~36をそれぞれ剥がした部分(矢印X)と、その剥がした部分に隣接する、ガラスエポキシ基板31上に金属粒子含有樹脂組成物の硬化物41が形成された部分(矢印Y))を示すガラスエポキシ基板31の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を、より具体的に説明する。
【0013】
本実施形態に係る金属粒子含有樹脂組成物は、エポキシ樹脂を含むバインダー成分(A)100質量部に対して、金属粒子(B)を4000~20000質量部、硬化剤(C)を50~250質量部含有し、上記金属粒子(B)は、平均粒子径が1~20μmのフレーク状銀被覆銅粒子(B1)を1500~6800質量部、平均粒子径が1~20μmの球状銀被覆銅粒子(B2)を700~5000質量部、平均粒子径が100~500nmの銀又は銅からなる球状粒子(B3)を700~6000質量部含有し、上記硬化剤(C)は、イミダゾール系硬化剤(C1)を5~50質量部、イソシアネート系硬化剤(C2)を45~200質量部含有するものとする。
【0014】
本発明の金属粒子含有樹脂組成物に含まれるバインダー成分(A)は、エポキシ樹脂を必須の成分とするものである。バインダー成分(A)におけるエポキシ樹脂の含有割合は、5~95質量%であることが好ましく、30~90質量%であることがより好ましい。
【0015】
エポキシ樹脂は、常温で固体のエポキシ樹脂と常温で液体のエポキシ樹脂を両方含むことが好ましい。この場合のバインダー成分(A)における常温で固体のエポキシ樹脂の含有割合は、5~30質量%であることが好ましく、5~20質量%であることがより好ましい。また、バインダー成分(A)における常温で液体のエポキシ樹脂の含有割合は、20~90質量%であることが好ましく、25~80質量%であることがより好ましい。
【0016】
なお、本明細書において、「常温で固体」とは、25℃において無溶媒状態で流動性を有さない状態であることを意味し、「常温で液体」とは、25℃において無溶媒状態で流動性を有する状態であることを意味する。
【0017】
常温で固体のエポキシ樹脂を使用することにより、均一でムラの無い塗膜を形成することができる金属粒子含有樹脂組成物が得られる。常温で固体のエポキシ樹脂は、分子内に2以上のグリシジル基を有し、かつ、エポキシ当量が150~280g/eqを有するものであることが好ましい。エポキシ当量が150g/eq以上である場合、クラックや反り等の不具合が起こりにくい。エポキシ当量が280g/eq以下である場合耐熱性がより優れた硬化物が得られ易い。
【0018】
また、常温で固体のエポキシ樹脂としては、特に限定されず、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、スピロ環型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、テルペン型エポキシ樹脂、卜リス(グリシジルオキシフェニル)メタン、テ卜ラキス(グリシジルオキシフェニル)エタン等のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、テ卜ラグリシジルジアミノジフェニルメタン等のグリシジルアミン型エポキシ樹脂、テ卜ラブロムビスフェノールA型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、α-ナフ卜ールノボラック型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂等を用いることができる。これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、常温で固体のエポキシ樹脂は、後述する溶剤に溶解して使用してもよい。
【0019】
エポキシ樹脂が、常温で液体のエポキシ樹脂を含有する場合、液体グリシジルアミン系エポキシ樹脂及び液体グリシジルエーテル系エポキシ樹脂の両方を含むことが好ましい。この場合、バインダー成分(A)における液体グリシジルアミン系エポキシ樹脂の含有割合は、5~35質量%であることが好ましく、バインダー成分(A)における液体グリシジルエーテル系エポキシ樹脂の含有割合は、20~55質量%であることが好ましい。バインダー成分(A)において、液体グリシジルアミン系エポキシ樹脂及び液体グリシジルエーテル系エポキシ樹脂を上記割合で含む場合、金属粒子含有樹脂組成物の導電性、放熱性、及びガラス基板等の平滑な表面との密着性がバランスよく優れたものとなり、さらに硬化後の塗膜の反りがより少なくなりやすい。
【0020】
液体グリシジルアミン系液体エポキシ樹脂は、エポキシ当量が80~120g/eqであることが好ましい。また、液体グリシジルアミン系液体エポキシ樹脂の粘度は、1.5Pa・s以下であることが望ましく、0.5~1.5Pa・sであることがより好ましい。液体グリシジルエーテル系エポキシ樹脂は、エポキシ当量が180~220g/eqであることが好ましい。また、液体グリシジルエーテル系エポキシ樹脂の粘度は、6Pa・s以下であることが好ましく、1~6Pa・sであることがより好ましい。バインダー成分(A)が、上記エポキシ当量及び上記粘度を有する液体グリシジルアミン系エポキシ樹脂及び液体グリシジルエーテル系エポキシ樹脂を含むと、硬化後の塗膜の反りがより少なくなり、塗膜の厚さがより均一になりやすい。
【0021】
本明細書において、液体グリシジルアミン系液体エポキシ樹脂及び液体グリシジルエーテル系エポキシ樹脂の粘度は、液温25℃において、BH型粘度計(ローターNo.5、回転数10rpm)で測定した値を意味する。
【0022】
バインダー成分(A)は、さらに、金属粒子含有樹脂組成物の物性を向上させることを目的として、アルキド樹脂、メラミン樹脂、キシレン樹脂等の改質剤を含んでいてもよい。バインダー成分(A)が、改質剤を含む場合、バインダー成分(A)における改質剤の含有割合は、40質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。
【0023】
金属粒子(B)の含有量は、バインダー成分(A)100質量部に対して、4000~20000質量部であれば特に限定されないが、5000~19000質量部であることが好ましく、7000~17000質量部であることがより好ましい。金属粒子(B)の含有量が4000質量部以上である場合、優れた導電性や放熱性が得られやすい。金属粒子(B)の含有量が20000質量部以下である場合、優れた密着性が得られやすい。
【0024】
金属粒子(B)は、平均粒子径が1~20μmのフレーク状銀被覆銅粒子(B1)を1500~6800質量部、平均粒子径が1~20μmの球状銀被覆銅粒子(B2)を700~5000質量部、平均粒子径が100~500nmの銀又は銅からなる球状粒子(B3)を700~6000質量部含有するものとする。ここで、本明細書において、平均粒子径とは、レーザー回折散乱法により得られた粒度分布における積算値50%での粒径(一次粒子径)を意味する。なお、金属粒子(B)は、本発明の目的を損なわない範囲において、上記金属粒子(B1)~(B3)以外の金属粒子を含有するものであってもよい。
【0025】
平均粒子径が1~20μmのフレーク状銀被覆銅粒子(B1)の含有量は、1500~6800質量部であれば特に限定されないが、1600~6700質量部であることが好ましく、2000~6500質量部であることがより好ましく、3500~6000質量部であることがさらに好ましい。フレーク状銀被覆銅粒子(B1)の含有量が1500質量部以上である場合、金属粒子同士の接触が良好となり、優れた導電性や放熱性が得られやすい。フレーク状銀被覆銅粒子(B1)の含有量が6800質量部以下である場合、金属粒子間の空隙が少なく、優れた放熱性や密着性が得られやすい。
【0026】
平均粒子径が1~20μmの球状銀被覆銅粒子(B2)の含有量は、700~5000質量部であれば特に限定されないが、800~4900質量部であることが好ましく、1000~4500質量部であることがより好ましく、1500~4500質量部であることがさらに好ましい。球状銀被覆銅粒子(B2)の含有量が700質量部以上である場合、金属粒子間の空隙が少なくなり、優れた密着性が得られやすい。球状銀被覆銅粒子(B2)の含有量が5000質量部以下である場合、金属粒子同士の接触が良好となり、優れた導電性や放熱性が得られやすい。
【0027】
フレーク状銀被覆銅粒子(B1)および球状銀被覆銅粒子(B2)は、銅粒子とこの銅粒子の少なくとも一部を被覆する銀含有層とを有するものとする。銀被覆量は、銀被覆銅粒子中の割合で1~30質量%であることが好ましく、3~20質量%であることがより好ましい。銀被覆量が1質量%以上であると、優れた導電性が得られやすい。銀被覆層が30質量%以下であると、優れた導電性を維持しつつ、銀粒子と比較してコストを削減することができる。
【0028】
平均粒子径が100~500nmの銀又は銅からなる球状粒子(B3)の含有量は、700~6000質量部であれば特に限定されないが、球状粒子(B3)が銀からなる場合、1000~6000質量部であることがより好ましく、1500~6000質量部であることがさらに好ましく、2500~6000質量部であることが特に好ましく、球状粒子(B3)が銅からなる場合は、1000~4000質量部であることがより好ましく、1500~4000質量部であることがさらに好ましく、2500~4000質量部であることが特に好ましい。球状粒子(B3)の含有量が700質量部以上である場合、フレーク状銀被覆銅粒子(B1)と球状銀被覆銅粒子(B2)と空隙を充分に充填することができ、優れた導電性や放熱性が得られやすい。球状粒子(B3)の含有量が6000質量部以下である場合、優れた密着性が得られやすい。
【0029】
フレーク状銀被覆銅粒子(B1)と球状銀被覆銅粒子(B2)との含有割合(B1/B2)は、特に限定されないが、0.4~6.0であることが好ましく、1.0~5.0であることがより好ましく、1.0~3.0であることがさらに好ましい。
【0030】
フレーク状銀被覆銅粒子(B1)と球状銀被覆銅粒子(B2)との合計と、球状粒子(B3)の含有割合((B1+B2)/(B3))は、特に限定されないが、1.5~9.2であることが好ましく、1.5~6.0であることがより好ましく、1.5~3.0であることがさらに好ましい。
【0031】
硬化剤(C)の含有量は、バインダー成分(A)100質量部に対して50~250質量部であれば特に限定されないが、60~240質量部であることが好ましく、80~200質量部であることがより好ましい。含有量が50質量部以上である場合、塗布対象物との密着性が良好になり、さらに金属粒子含有樹脂組成物を用いて形成された塗膜の導電性や放熱性が良好となる。また、含有量が250質量部以下である場合、金属粒子含有樹脂組成物の保存安定性が向上する。
【0032】
硬化剤(C)は、イミダゾール系硬化剤(C1)とイソシアネート系硬化剤(C2)を必須の成分として含有する。
【0033】
イミダゾール系硬化剤(C1)としては、例えばイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-へプタデシルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-エチル-4-メチル-イミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、2-フェニルイミダゾールが挙げられる。
【0034】
イミダゾール系硬化剤(C1)の含有量は、バインダー成分(A)100質量部に対して5~50質量部であれば特に限定されないが、5~45質量部であることが好ましく、10~45質量部であることがより好ましい。イミダゾール系硬化剤(C1)の含有量が5質量部以上である場合、金属粒子含有樹脂組成物が硬化しやすく、優れた密着性が得られやすい。イミダゾール系硬化剤(C1)の含有量が50質量部以下である場合、優れた導電性や放熱性が得られやすい。
【0035】
イソシアネー卜系硬化剤(C2)としては、例えば、ポリイソシアネー卜化合物、ブロックイソシアネー卜化合物等が挙げられる。イソシアネート系硬化剤(C2)を含有することにより、金属粒子含有樹脂組成物の保存安定性が向上する。
【0036】
イソシアネート系硬化剤(C2)の含有量は、バインダー成分(A)100質量部に対して45~200質量部であれば特に限定されないが、60~190質量部であることが好ましく、80~150質量部であることがより好ましい。イソシアネート系硬化剤(C2)の含有量が45質量部以上である場合、金属粒子含有樹脂組成物が硬化しやすく、優れた密着性が得られやすい。イソシアネート系硬化剤(C2)の含有量が200質量部以下である場合、優れた導電性や放熱性が得られやすい。
【0037】
硬化剤(C)は、本発明の目的を損なわない範囲において、イミダゾール系硬化剤(C1)やイソシアネート系硬化剤(C2)以外の硬化剤を含有するものであってもよい。このような硬化剤としては、例えば、フェノール系硬化剤、アミン系硬化剤、カチオン系硬化剤、ラジカル系硬化剤等が挙げられる。
【0038】
フェノール系硬化剤としては、例えばノボラックフェノール、ナフ卜ール系化合物等が挙げられる。カチオン系硬化剤としては、例えば、三フッ化ホウ素のアミン塩、p-メトキシベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロホスフェー卜、ジフェニルイオドニウムヘキサフルオロホスフェー卜、卜リフェニルスルホニウム、テ卜ラ-n-ブチルホスホニウムテ卜ラフェニルボレート、テ卜ラ-n-ブチルホスホニウム-o,o-ジエチルホスホロジチオエー卜等に代表されるオニウム系化合物が挙げられる。ラジカル系硬化剤としては、例えば、ジークミルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等が挙げられる。
【0039】
本発明の金属粒子含有樹脂組成物は、塗布方法に応じて溶剤を配合することができる。溶剤の含有量の好ましい範囲は塗布方法によっても異なるが、例えば、スプレー塗布する場合、バインダー成分(A)100質量部に対して、500~3500質量部であることが好ましい。
【0040】
溶剤としては、特に限定されず、例えば、メチルエチルケトン、アセトン、アセ卜フェノン、メチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテー卜、メチルカルビ卜ール、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テ卜ラヒドロフラン、酢酸メチル、1-メ卜キシ-2-プロパノール、3-メ卜キシ-3-メチル-1-ブチルアセテー卜等を使用してもよい。これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0041】
本発明の金属粒子含有樹脂組成物は、発明の目的を損なわない範囲内において、酸化防止剤、顔料、染料、粘着付与樹脂、可塑剤、紫外線吸収剤、消泡剤、レベリング調整剤、充填剤、難燃剤等、公知の添加剤を含んでいてもよい。
【0042】
金属粒子含有樹脂組成物の液温25℃における粘度は、塗布方法に応じて適宜調整すればよいが、スプレー塗布する場合の目安としては、50~600mPa・sであることが好ましく、60~550mPa・sであることがより好ましく、100~500mPa・sであることがさらに好ましい。金属粒子含有樹脂組成物の粘度が50mPa・s以上である場合、金属粒子含有樹脂組成物を硬化させて塗膜を形成する際に、塗布対象物における液ダレを防止して塗膜をムラなく形成させることができるとともに金属粒子の沈降を防止することができる。金属粒子含有樹脂組成物の粘度が、600mPa・s以下である場合、金属粒子含有樹脂組成物をスプレー塗布する際に、スプレーノズルの目詰まりを防ぎ、塗布対象物にムラなく塗膜を形成し易い。
【0043】
なお、本明細書において「金属粒子含有樹脂組成物の粘度」とは、円錐平板型回転粘度計を用いて回転数10rpmで測定した粘度のことを意味する。
【0044】
本実施形態の金属粒子含有樹脂組成物は、通常用いられるバンバリーミキサーやニーダー、ロール等の混合機を用いて、常法に従い混練して製造することができる。
【0045】
本実施形態の金属粒子含有樹脂組成物は、電子部品パッケージのシールドに適用してもよく、シリコンウエハやガラス基板などの表面に塗布し放熱性塗膜を形成してもよく、シリコンウエハやガラス基板などに放熱材料を接着させる接着剤として使用してもよい。
【実施例
【0046】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。なお、以下において配合割合等は、特にことわらない限り質量基準とする。
【0047】
下記表1,2に示す配合に従い、各成分を混合し、金属粒子含有樹脂組成物を調製した。
【0048】
表中に記載の化合物の詳細は次の通りである。
・バインダー成分(A):固形エポキシ樹脂(三菱化学(株)製、商品名「JER157S70」)40質量部、グリシジルアミン系エポキシ樹脂((株)ADEKA製、商品名「EP-3905S」)30質量部、及び、グリシジルエーテル系エポキシ樹脂((株)ADEKA製、商品名「EP-4400」)30質量部の混合物
・銀被覆銅粒子(B1):平均粒子径=5μm、フレーク状
・銀被覆銅粒子(B2):平均粒子径=2μm、球状
・銀粒子(B3):平均粒子径=300nm、球状
・銅粒子(B3):平均粒子径=300nm、球状
・イミダゾール系硬化剤(C1):2-エチルイミダゾール(東京化成工業(株)製)
・イソシアネート系硬化剤(C2):ポリイソシアネー卜化合物(DIC(株)製、商品名「DN-992」)
・溶剤:1-メトキシ-2-プロパノール(キシダ化学(株)製)
【0049】
得られた金属粒子含有樹脂組成物の導電性、熱伝導性、密着性、及び塗布安定性を測定し、結果を表1,2に示した。測定方法は以下に示すとおりである。
【0050】
・導電性:ガラスエポキシ基板上に幅5mmのスリッ卜を設けた厚さ55μmのポリイミドフィルムを貼り付けて印刷版とした。各実施例及び各比較例に係る金属粒子含有樹脂組成物を、ポリイミドフィルム上にライン印刷(長さ60mm、幅5mm、厚さ約100μm)し、150℃で60分間加熱することにより金属粒子含有樹脂組成物を本硬化させた。その後、ポリイミドフィルムを剥離することにより、硬化物サンプルを得た。テスターを用いて、得られた硬化物サンプルの抵抗R(Ω)を測定し、硬化物サンプルの断面積S(cm)と長さL(cm)から下記式(1)により比抵抗(Ω・cm)を計算した。比抵抗が4.0×10-5(Ω・cm)以下である場合、導電性に優れているものと判断した。
比抵抗=断面積S/長さL×抵抗R・・・・(1)
【0051】
・熱伝導性:金属粒子含有樹脂組成物の熱伝導性を、サーモウェーブアナライザ TA-33(BETHEL製)を用いて評価した。具体的には、テフロン(登録商標)シート(100mm×100mm×3mm)を用意し、その中央に、幅50mm、長さ50mmの開口部が形成されるようにポリイミドテープでマスキングし、各実施例及び各比較例に係る金属粒子含有樹脂組成物をライン印刷した。その後、150℃で60分間加熱することにより金属粒子含有樹脂組成物を硬化させ、ポリイミドテープを剥離し、塗膜(幅50mm、長さ50mm、厚さ約100μm)を形成した。得られた塗膜をテフロン(登録商標)シートから剥がし、硬化物サンプルとした。サーモウェーブアナライザを用いて熱拡散率α(m/S)を測定し、硬化物サンプルの密度ρ(kg/m)と比熱Cp(J/Kg・K)から下記式(2)により熱伝導率K(W/m・K)を計算した。熱伝導率が50W/mK以上である場合、放熱性に優れているものと判断した。
熱伝導率K=熱拡散率α×密度ρ×比熱Cp・・・(2)
【0052】
・密着性:金属粒子含有樹脂組成物とガラス基板との密着性を、ASTM D 3359(クロスカット法)に基づき評価した。具体的には、ガラス基板(MICRO SLIDE GLASS 76mm×26mm×1mm 松波硝子)を用意し、それぞれに、幅20mm、長さ50mmの開口部が形成されるようにポリイミドテープでマスキングし、各実施例及び各比較例に係る金属粒子含有樹脂組成物を、Nordson Asymtek製スプレー装置を用いてスプレー塗布した。その後、150℃で60分間加熱することにより金属粒子含有樹脂組成物を硬化させ、ポリイミドテープを剥離し、厚さ約20μmの塗膜を形成した。塗膜が形成されたガラス基板上で密着性試験を行った。
【0053】
密着性の評価は、次の基準で行った。
5B:カットの縁が完全に滑らかで、どの格子の目にも剥がれがない。
4B:カットの交差点において塗膜の小さな剥がれが生じている。ただし、クロスカット部分で影響を受けるのは明確に5%を上回ることはない。
3B:塗膜がカットの縁に沿って、及び/又は交差点において剥がれている。ただし、クロスカット部分で影響を受けるのは明確に5%を超えるが15%を上回ることはない。
2B:塗膜がカットの縁に沿って、部分的又は全面的に剥がれを生じており、及び/又は目のいろいろな部分が、部分的又は全面的に剥がれている。ただし、クロスカット部分で影響を受けるのは、明確に15%を超えるが35%を上回ることはない。
1B:塗膜がカットの縁に沿って、部分的又は全面的に大剥がれを生じており、及び/又は数カ所の目が部分的又全面的に剥がれている。ただし、クロスカット部分で影響を受けるのは、明確に65%を上回ることはない。
0B:1B以上に剥がれが生じている。
【0054】
・塗布安定性:図1,2は、塗布安定性の評価の方法を模式的に示す模式図である。各実施例及び各比較例に係る金属粒子含有樹脂組成物を、Nordson Asymtek製スプレー装置を用いて、図1に示す正方形のガラスエポキシ基板(縦100mm×横100mm×厚さ1mm)に以下の要領で噴霧塗布して、金属粒子含有樹脂組成物の塗布安定性を評価した。
【0055】
ガラスエポキシ基板31には、図1に示すように、4片のポリイミドテープ32~35をガラスエポキシ基板31の各角部近傍にそれぞれ貼り付け、ポリイミドテープ36をガラスエポキシ基板31の中央部に貼り付けた。各ポリイミドテープ32~36の面積は10mm×10mm(図1における寸法a及びbが共に10mmであり、各ポリイミドテープ32~35はガラスエポキシ基板31の各辺から10mm内側(図1における寸法c及びdが共に10mm)に、テープの辺が基板の辺に平行になるように貼り付けられている。
【0056】
金属粒子含有樹脂組成物をスプレー装置に投入した直後に、ガラスエポキシ基板31に対して、下記スプレー条件でスプレー塗布を行い、150℃で60分間加熱することで、厚さ20μmの金属粒子含有樹脂組成物の硬化物を形成した。さらに、金属粒子含有樹脂組成物をスプレー装置に投入後20分間経過してから上記と同じ条件でスプレー塗布を行い、同じ条件で厚さ約20μmとなるように金属粒子含有樹脂組成物の硬化物を形成した。
【0057】
以下、金属粒子含有樹脂組成物をスプレー装置に投入した直後に形成した金属粒子含有樹脂組成物の硬化物を「硬化物A」と記載し、金属粒子含有樹脂組成物をスプレー装置に投入後20分間経過してから形成した金属粒子含有樹脂組成物の硬化物を「硬化物B」と記載する。
【0058】
<スプレー条件>
Nordson Asymtek製 SL-940E
ペースト押し出し圧力:2.8Psi
アシストエアー(噴霧化エアー):5Psi
パッケージ表面の温度:22℃
パッケージ表面からノズルまでの距離:約150mm
スプレーヘッド移動ピッチ:3mm
スプレーヘッド移動スピード:250mm/秒
スプレー回数:4回
【0059】
加熱が終了してから30分間室温で放置した後にポリイミドテープ32~36をそれぞれ剥がして、図2に示すように、剥がした部分(矢印X)のガラスエポキシ基板31の厚さと、その剥がした部分に隣接する、ガラスエポキシ基板31上に金属粒子含有樹脂組成物の硬化物41が形成された部分(矢印Y)の厚さをそれぞれマイクロメータで測定し、後者から前者を引き算することによって5箇所の金属粒子含有樹脂組成物の硬化物について厚さを求めた。
【0060】
硬化物Aの厚さ及び硬化物Bの厚さから、塗布安定性の評価を行った。評価基準は以下のとおりである。評価結果を表1及び2に示す。
○:5箇所全ての硬化物Aの厚さ、及び、5箇所全ての硬化物Bの厚さが、20μm±5μmの範囲に入っていた。
×:1箇所以上で、厚さが20μm±5μmの範囲に入らない硬化物A、及び/又は、硬化物Bが形成されていた。
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
【0063】
表1に示すように、実施例1~14は、導電性、熱伝導性、密着性、及び塗布安定性がいずれも優れていた。
【0064】
比較例1は、フレーク状銀被覆銅粒子(B1)の含有量が下限値未満である例であり、導電性及び熱伝導性が劣っていた。
【0065】
比較例2は、フレーク状銀被覆銅粒子(B1)の含有量が上限値を超える例であり、導電性、熱伝導性、密着性、及び塗布安定性のいずれもが劣っていた。
【0066】
比較例3は、球状銀被覆銅粒子(B2)の含有量が下限値未満である例であり、密着性及び塗布安定性が劣っていた。
【0067】
比較例4は、球状銀被覆銅粒子(B2)の含有量が上限値を超える例であり、導電性、熱伝導性、及び密着性が劣っていた。
【0068】
比較例5は、銀粒子(B3)の含有量が下限値未満である例であり、導電性及び熱伝導性が劣っていた。
【0069】
比較例6は、銀粒子(B3)の含有量が上限値を超える例であり、密着性が劣っていた。
【0070】
比較例7は、イミダゾール系硬化剤(C1)の含有量が下限値未満である例であり、密着性が劣っていた。
【0071】
比較例8は、イミダゾール系硬化剤(C1)の含有量が上限値を超える例であり、導電性が劣っていた。
【0072】
比較例9は、イソシアネート系硬化剤(C2)の含有量が下限値未満である例であり、導電性が劣っていた。
【0073】
比較例10は、イソシアネート系硬化剤(C2)の含有量が上限値を超える例であり、導電性及び熱伝導性が劣っていた。
【0074】
比較例11は、球状銀被覆銅粒子(B)を含有しない例であり、導電性、密着性、及び塗布安定性が劣っていた。
【0075】
比較例12は、フレーク状銀被覆銅粒子(B1)を含有しない例であり、導電性、熱伝導性、密着性、及び塗布安定性のいずれもが劣っていた。
【符号の説明】
【0076】
31・・・ガラスエポキシ基板
32~36・・・ポリイミドテープ
41・・・金属粒子含有樹脂組成物の硬化物
図1
図2