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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-31
(45)【発行日】2024-08-08
(54)【発明の名称】マイクロ発光ダイオード
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/14 20100101AFI20240801BHJP
【FI】
H01L33/14
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2022574138
(86)(22)【出願日】2020-08-31
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-29
(86)【国際出願番号】 CN2020112656
(87)【国際公開番号】W WO2022041230
(87)【国際公開日】2022-03-03
【審査請求日】2023-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】523451347
【氏名又は名称】湖北三安光電有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】李 水清
(72)【発明者】
【氏名】杜 偉華
(72)【発明者】
【氏名】頼 昭序
(72)【発明者】
【氏名】▲ドン▼ 和清
【審査官】百瀬 正之
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-324280(JP,A)
【文献】特許第6696025(JP,B1)
【文献】特開2002-344015(JP,A)
【文献】米国特許第06410943(US,B1)
【文献】特開2012-222362(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110534622(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107819058(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第110635004(CN,A)
【文献】特開2017-220586(JP,A)
【文献】特開2008-053760(JP,A)
【文献】特開2003-059938(JP,A)
【文献】特開平10-247744(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0103289(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00-33/64
H01S 5/00-5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
N型層と、遷移層と、発光層と、P型層と、を少なくとも含んでいるマイクロ発光ダイオードであって、
前記遷移層の構造は、成長方向に沿って、第1遷移層と、第2遷移層と、第3遷移層と、を含んでおり、
前記遷移層のバンドギャップは、N型層のものと発光層のものとの間にあり、N型層のバンドギャップをEgnと定義し、第1遷移層のバンドギャップをEg1と定義し、第2遷移層のバンドギャップをEg2と定義し、第3遷移層のバンドギャップをEg3と定義し、発光層のバンドギャップをEgaと定義すると、以下の関係:Egn≧Eg1>Eg2>Eg3>Egaを満たしており
前記発光層においては、意図せずにドーピングされた周期数をN1と定義し、意図的にドーピングされた周期数をN2と定義し、意図的にドーピングされたドーピング濃度をc3と定義し、かつ以下の関係:N2≦N1、且つ1≦N1≦20、0≦N2<10を満たしており、
前記第3遷移層は、M組の積み重ねられた構造を少なくとも含んでおり、
前記第3遷移層におけるN型側に近い周期数をN と定義し、P型側に近い残りのM-N の周期数をN と定義し、N 周期のドーピング濃度をc1と定義し、N 周期のドーピング濃度をc2と定義し、前記発光層における意図的にドーピングされた周期数N2=0である場合、N >0、且つc2>c1となっており、前記発光層における意図的にドーピングされた周期数N2≠0である場合、N ≧0、c3≧c2≧c1となっている、
ことを特徴とする、マイクロ発光ダイオード。
【請求項2】
前記第1遷移層は、ドーピングが異なるAセクションの半導体層を含んでおり、且つ1≦A≦30となっている、
ことを特徴とする請求項1に記載のマイクロ発光ダイオード。
【請求項3】
前記第1遷移層のドーピング濃度は、1E17~5E19/cmの範囲内にある、 ことを特徴とする請求項2に記載のマイクロ発光ダイオード。
【請求項4】
前記第1遷移層の厚さは、50Å~5000Åの範囲内にある、
ことを特徴とする請求項1に記載のマイクロ発光ダイオード。
【請求項5】
前記第1遷移層の組成材料は、AlInGa(1-a-b)N、且つ0≦a<1、0≦b≦1となっている、
ことを特徴とする請求項1に記載のマイクロ発光ダイオード。
【請求項6】
前記第2遷移層は、構造がL組のバンドギャップが異なる2種類の半導体層からなる積み重ねられた構造を少なくとも含んでおり、且つバンドギャップが異なる2種類の半導体層を、第1バンドギャップ半導体層及び第2バンドギャップ半導体層とそれぞれ定義する、
ことを特徴とする請求項1に記載のマイクロ発光ダイオード。
【請求項7】
前記Lは1~100の範囲内にある、
ことを特徴とする請求項6に記載のマイクロ発光ダイオード。
【請求項8】
前記第2遷移層のドーピング濃度は、1E17~1E19/cmの範囲内にある、
ことを特徴とする請求項1に記載のマイクロ発光ダイオード。
【請求項9】
前記第2遷移層の厚さは、100Å~5000Åの範囲内にある、
ことを特徴とする請求項1に記載のマイクロ発光ダイオード。
【請求項10】
前記第2遷移層においては、第1バンドギャップ半導体層の材料がAlInGa(1-c-d)Nであり、第2バンドギャップ半導体層の材料がAlInGa(1-e-f)Nであり、0≦c<1、0≦d<1、0≦e<1、0≦f<1、d≠f、且つc>0又はe>0である場合、c≠eとなっている、
ことを特徴とする請求項1に記載のマイクロ発光ダイオード。
【請求項11】
前記第3遷移層は、構造がM組のバンドギャップが異なる2種類の半導体層からなる積み重ねられた構造を少なくとも含んでおり、該2種類の半導体層を、第1半導体層及び第2半導体層とそれぞれ定義する、
ことを特徴とする請求項1に記載のマイクロ発光ダイオード。
【請求項12】
前記Mは、1~50の範囲内にある、
ことを特徴とする請求項11に記載のマイクロ発光ダイオード。
【請求項13】
前記第3遷移層においては、M≧2である場合、N型側に近いN個の周期の積み重ねられた構造のドーピング濃度が、P型側に近い残りのM-Nの積み重ねられた構造のドーピング濃度以下であり、残りのM-Nの周期数をNと定義すると、1≦N≦50、0≦N<50となっている、
ことを特徴とする請求項12に記載のマイクロ発光ダイオード。
【請求項14】
前記第3遷移層の厚さは、50Å~5000Åの範囲内にある、
ことを特徴とする請求項1に記載のマイクロ発光ダイオード。
【請求項15】
前記第3遷移層における第1半導体層及び第2半導体層は、それぞれの組成材料がAlInGa(1-m-n)N、InGa1-kNであり、0<k<1、0≦m<1、0≦n<1となっている、
ことを特徴とする請求項11に記載のマイクロ発光ダイオード。
【請求項16】
前記第3遷移層の構造には、第3半導体層と、第4半導体層と、が更に含まれている、
ことを特徴とする請求項13に記載のマイクロ発光ダイオード。
【請求項17】
前記第3遷移層における第3半導体層及び第4半導体層は、組成材料がAlInGa(1-p-q)Nであり、0≦p<1、0≦q<1となっている、
ことを特徴とする請求項16に記載のマイクロ発光ダイオード。
【請求項18】
3が1E17~1E20/cmの範囲内にある、
ことを特徴とする請求項に記載のマイクロ発光ダイオード。
【請求項19】
基板と、U型層と、N型層と、遷移層と、発光層と、P型層と、を少なくとも含んでいるマイクロ発光ダイオードであって、
遷移層は、N型層と発光層との間に介在しており、遷移層の総厚さをt1と定義し、発光層は、遷移層とP型層との間に介在しており、井戸層と障壁層からなる積み重ねられた構造であり、発光層の総厚さをt2と定義すると、t1>t2となり、更に、遷移層の総厚さt1の発光層の総厚さt2に対する比率をxと定義すると、xが以下の関係:5≦x≦150を満たしている、
ことを特徴とする、マイクロ発光ダイオード。
【請求項20】
発光層の総厚さは、50Å~2000Åの範囲内にある、
ことを特徴とする請求項19に記載のマイクロ発光ダイオード。
【請求項21】
遷移層の総厚さは、500Å~15000Åの範囲内にある、
ことを特徴とする請求項19に記載のマイクロ発光ダイオード。
【請求項22】
前記マイクロ発光ダイオードの水平サイズは、1μm×1μm~300μm×300μmの範囲内にある、
ことを特徴とする請求項1又は請求項19に記載のマイクロ発光ダイオード。
【請求項23】
請求項1~22のいずれか一項に記載のマイクロ発光ダイオードを含んでいる、
ことを特徴とする、発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体の光電技術分野に属し、マイクロ発光ダイオードの発光デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォン(或いは、スマートウォッチやスマートバンド)などにおけるディスプレイに用いられるマイクロ発光ダイオードは、駆動電流が通常ナノアンペア(nA)レベルにあり、電流密度が0~1A/cmの範囲内にあり、低いものでは0~0.1A/cmの範囲内にある。従来のマイクロ発光ダイオードは、光電変換効率のピーク値が通常は電流密度で5A/cmよりも大きな範囲に分布しており、電流密度が1A/cm以下にある場合、光電変換効率が非常に不安定な範囲にあり、電流の微小な変化につれて光電変換効率が急に下がることがあり、そのため従来のエピタキシャル構造は、低電流で操作されるニーズのある製品に適用されることができない。したがって、スマートフォン(或いは、スマートウォッチやスマートバンド)に用いられるマイクロ発光ダイオードのチップに対しては、光電変換効率のピーク値が低電流密度の範囲内にあり、かつ光電変換効率が安定したエピタキシャル構造を開発する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、従来技術に存在している問題を解決するために、マイクロ発光ダイオードのエピタキシャル構造及びそのマイクロ発光ダイオードを提供することを旨とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の態様として、本発明は、マイクロ発光ダイオードを提出する。該マイクロ発光ダイオードは、N型層と、遷移層と、発光層と、P型層と、を含んでいる。その中で、遷移層の構造は、成長方向に沿って、第1遷移層と、第2遷移層と、第3遷移層と、を含んでいる。前記遷移層のバンドギャップは、N型層のものと発光層のものとの間にある。N型層のバンドギャップをEgnと定義し、第1遷移層のバンドギャップをEg1と定義し、第2遷移層のバンドギャップをEg2と定義し、第3遷移層のバンドギャップをEg3と定義し、発光層のバンドギャップをEgaと定義すると、以下の関係:Egn≧Eg1>Eg2>Eg3>Egaを満たしている。
【0005】
前記第1遷移層は、ドーピングが異なるAセクションの半導体層を含んでおり、且つ1≦A≦30となっていることが好ましい。
【0006】
前記第1遷移層のドーピング濃度は、1E17~5E19/cmの範囲内にあることが好ましい。
【0007】
前記第1遷移層の厚さは、50Å~5000Åの範囲内にあることは好ましい。
【0008】
前記第1遷移層の組成材料は、AlInGa(1-a-b)N、且つ0≦a<1、0≦b≦1となっていることが好ましい。
【0009】
前記第2遷移層は、構造がL組のバンドギャップが異なる2種類の半導体層からなる積み重ねられた構造を少なくとも含んでおり、且つバンドギャップが異なる2種類の半導体層を、第1バンドギャップ半導体層及び第2バンドギャップ半導体層とそれぞれ定義することが好ましい。
【0010】
前記Lは1~100の範囲内にあることが好ましい。
【0011】
前記第2遷移層のドーピング濃度は、1E17~1E19/cmの範囲内にあることが好ましい。
【0012】
前記第2遷移層の厚さは、100Å~5000Åの範囲内にあることが好ましい。
【0013】
第2遷移層においては、第1バンドギャップ半導体層の材料がAlInGa(1-c-d)Nであり、第2バンドギャップ半導体層の材料がAlInGa(1-e-f)Nであり、その中で、0≦c<1、0≦d<1、0≦e<1、0≦f<1、d≠f、且つc>0又はe>0である場合、c≠eとなっていることが好ましい。
【0014】
前記第3遷移層は、構造がM組のバンドギャップが異なる2種類の半導体層からなる積み重ねられた構造を少なくとも含んでおり、該2種類の半導体層を、第1半導体層及び第2半導体層とそれぞれ定義することが好ましい。
【0015】
前記Mは1~50の範囲内にあることが好ましい。
【0016】
前記第3遷移層においては、M≧2である場合、N型側に近いN個の周期の積み重ねられた構造のドーピング濃度が、P型側に近い残りのM-Nの積み重ねられた構造のドーピング濃度以下であり、残りのM-Nの周期数をNと定義すると、1≦N≦50、0≦N<50となっていることが好ましい。
【0017】
前記N周期のドーピング濃度をc1と定義し、前記N周期のドーピング濃度をc2と定義すると、c1≦c2、且つc1が1E17~5E18/cmの範囲内にあり、c2が1E17~1E20/cmの範囲内にあることが好ましい。
【0018】
前記第3遷移層の厚さは、50Å~5000Åの範囲内にあることが好ましい。
【0019】
前記第3遷移層における第1半導体層及び第2半導体層は、それぞれの組成材料がAlInGa(1-m-n)N、InGa1-kNであり、その中で、0<k<1、0≦m<1、0≦n<1となっていることが好ましい。
【0020】
前記第3遷移層の構造には、第3半導体層と、第4半導体層と、が更に含まれていることが好ましい。
【0021】
前記第3遷移層における第3半導体層及び第4半導体層は、組成材料がAlInGa(1-p-q)Nであり、その中で、0≦p<1、0≦q<1となっていることが好ましい。
【0022】
前記発光層においては、意図せずにドーピングされた周期数をN1とし、意図的にドーピングされた周期数をN2とすると、以下の関係:N2≦N1、且つ1≦N1≦20、0≦N2<10を満たしていることが好ましい。
【0023】
前記発光層における意図的にドーピングされた周期数N2のドーピング濃度をc3と定義すると、c3が1E17~1E20/cmの範囲内にあることは好ましい。
【0024】
前記発光層の周期数N2=0である場合、N>0、且つc2>c1となっていることが好ましい。
【0025】
前記発光層の周期数N2≠0である場合、N≧0、且つc3≧c2≧c1となっていることが好ましい。
【0026】
本発明の第2の態様として、マイクロ発光ダイオードは、基板と、U型層と、N型層と、遷移層と、発光層と、P型層と、を少なくとも含んでおり、その中で、遷移層は、N型層と発光層との間に介在しており、遷移層の総厚さをt1と定義し、発光層は、遷移層とP型層との間に介在しており、井戸層と障壁層からなる積み重ねられた構造であり、発光層の総厚さをt2と定義すると、t1>t2となり、更に、遷移層の総厚さt1の発光層の総厚さt2に対する比率をxと定義すると、xが以下の関係:5≦x≦150を満たしていることが好ましい。
【0027】
発光層の総厚さは、50Å~2000Åの範囲内にあることが好ましい。
【0028】
遷移層の総厚さは、500Å~15000Åの範囲内にあることが好ましい。
【0029】
前記マイクロ発光ダイオードの水平サイズは、1μm×1μm~300μm×300μmの範囲内にあることが好ましい。
【0030】
本発明は、マイクロ発光装置を更に提供する。前記マイクロ発光装置は、上記のマイクロ発光ダイオードを含んでいる。
【発明の効果】
【0031】
本発明が提供するマイクロ発光ダイオードのエピタキシャル構造及び発光ダイオードは、以下の有益な効果を具えている。
【0032】
(1)遷移層のバンドギャップが漸次に変化する構造によって、発光層と底層と間の不整合転位を更に低減して発光層と底層と間の応力を緩和して、発光層の結晶の成長品質を向上させて、効率のピーク値を電流密度に対して左側へ移動させて、低電流での発光効率を更に向上させることができる。
【0033】
(2)発光層の厚さを薄くして、遷移層の厚さを厚くして、遷移層と発光層との厚さの比率を調整することによって、キャリアの生成効率を向上させて、発光層と底層と間の格子不整合応力を改善させて、発光層の結晶体の品質を向上させて、放射再結合効率を向上させて、低電流での特性を改善させることができる。
【0034】
(3)発光層と遷移層との段階式ドーピングの構造によって、キャリアの局部分布を減少させて、キャリアの注入を改善させて、キャリアの均一分布を促進させて、キャリアの寿命を増加させて、放射再結合効率を向上させて、効率のピーク値を電流密度に対して左側へ移動させて、低電流での発光効率を更に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
本発明の実施例や従来技術における技術方案をより明確に説明するために、以下、実施例または従来技術の説明に用いられる添付図面に対して簡単に説明する。以下の説明における添付図面は、本発明の実施例に過ぎず、本分野における通常の知識を有する者にとって、提供された添付図面から何ら創造的な作業をせずに他の添付図面を得ることができることは明らかであろう。
【0036】
図1】実施例1に係るエピタキシャル構造を示す模式図である。
図2】実施例1に係る第1遷移層を示す構造模式図である。
図3】実施例1に係る第2遷移層を示す構造模式図である。
図4】実施例1に係る第3遷移層の第1部分のN周期を示す構造模式図である。
図5】実施例1に係る第3遷移層の第2部分のN周期を示す構造模式図である。
図6】実施例1に係る発光層を示す構造模式図である。
図7】従来のエピタキシャルを示す構造模式図である。
図8】実施例1に係るエピタキシャル構造を有するマイクロ発光ダイオードのWPE(光電変換効率)-J(電流密度)に関連するテストデータの比較を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、添付図面及び実施例を組み合わせて、本発明の実施方式について詳細に説明し、これによって本発明に対してどのように技術手段を応用すれば技術問題を解決し、且つ技術効果を得るのかといった実現過程を十分に理解して実施できるようにする。説明するべきことは、矛盾しない限り、本発明の各実施例および各実施例における各特徴は互いに組み合わせることができ、それにより形成された技術態様も全て本発明に係る請求の範囲内にあることである。
【0038】
実施例1
図1図8を参照されたい。本発明の目的に基づいて、本実施例は、マイクロ発光ダイオードのエピタキシャル構造及びその製造方法を提供する。該製造方法は、以下のステップを含んでいる。
【0039】
(1)基板1を用意する。該基板1の材料は、サファイア、酸化ガリウム(III)(Ga)、炭化ケイ素、窒化ガリウム、酸化亜鉛、シリコン、又はゲルマニウムなどを選択することができる。該基板の表面は、平面構造又はパターンを有する構造であることができる。また、基板の表面の上に、一層の窒化アルミニウム又は窒化ケイ素をメッキすることもできる。本実施例は、一層の窒化アルミニウムのメッキが行われたサファイア基板を選択することが好ましい。
【0040】
(2)基板1の上に核生成層2をエピタキシャル成長する。該核生成層は、AlGaN又はGaN材料を選択することが好ましい。エピタキシャル成長の方法は、MOCVD(有機金属気相成長法)方法と、MBE(分子線エピタキシ)方法と、CVD(化学気相成長)方法と、HVPE(ハイドライド気相成長法)方法と、PECVD(プラズマ増強化学気相成長)方法と、を採用することができ、本実施例はMOCVDを選択することが好ましいが、実施例はそれに限定されない。具体的に、基板1を、MOCVDの反応室に載置して、まず水素化処理を行なって基板の表面にある不純物を取り除き、そして温度を約500~600℃に下げて、厚さが約5~30nmである核生成層2を成長する。
【0041】
(3)核生成層2の上にU-GaN層3及びN-GaN層4を順にエピタキシャル成長する。その中で、U-GaN層3は厚さが約1~4μmにあって、底層から上に延伸した転位を減少且つ抑制することができる。N-GaN層4は、厚さが約1~4μmにあってドーピング濃度が1E17~5E19/cmの範囲内にあって、放射再結合効率の電子を提供することができる。
【0042】
(4)N-GaN層4を成長し終えた後、遷移層を成長し始める。
まず、第1遷移層5を成長する。温度を750~1000℃に下げて、第1遷移層を成長する。まず、第1ドーピング半導体層5Aを成長する。第1ドーピング半導体層は、材料がAlInGa(1-a-b)Nであり、GaNであることが好ましく、ドーピング濃度が5E18~5E19/cmの範囲内にあり、厚さが200~1000Åの範囲内にある。次に、第2ドーピング半導体層5Bを成長する。第2ドーピング半導体層5Bは材料がGaNであることが好ましく、ドーピング濃度が5E17~5E18/cmの範囲内にあり、厚さが200~1000Åの範囲内にある。そして、第3ドーピング半導体層5Cを成長する。第3ドーピング半導体層5Cは材料がGaNであることが好ましく、ドーピング濃度が5E17~5E19/cmの範囲内にあり、厚さが300~3000Åの範囲内にある。第1ドーピング半導体層と第2ドーピング半導体層と第3ドーピング半導体層との成長温度は、同じであっても異なってもよい。本実施例においては、同じ温度を採用する。第1遷移層は、発光層と底層との間の不整合転位を効果的に減少して、発光層と底層との間の応力を緩和して、発光層の結晶体の品質を向上させることができる。
【0043】
いくつかの実施例において、第1遷移層は、ドーピングが異なる3種類の半導体層における一層のみ含むことができ、それにより成長時間を短縮して、生産効率を向上させることができる。
【0044】
いくつかの実施例において、第1遷移層は、ドーピングが異なる3種類の半導体層における二層の組み合わせによる形式のみ含むことができ、高ドーピングと低ドーピングからなる差異を維持することによって、電流拡散の能力を効果的に改善させて、デバイスのESD性能を向上させることができる。
【0045】
いくつかの実施例において、第1遷移層は、A種類の異なるドーピングの半導体層からなることができ、且つAは1~30の範囲内にある。
【0046】
(5)次に、第2遷移層6を成長する。
第2遷移層は、第1バンドギャップ半導体層6A及び第2バンドギャップ半導体層6Bからなる積み重ねられた周期構造である。温度を700~950℃に下げて、まず、第1バンドギャップ半導体層6Aを成長する。第1バンドギャップ半導体層6Aは、材料がInGaNであることが好ましく、意図せずにドーピングされた層であり、厚さが10~100Åの範囲内にある。次に、第2バンドギャップ半導体層6Bを成長する。第2バンドギャップ半導体層6Bは、材料がGaNであることが好ましく、ドーピング濃度が5E17~1E19/cmの範囲内にあり、厚さが50~500Åの範囲内にある。周期数が2~30の範囲内にあることが好ましい。第1バンドギャップ半導体層と第2バンドギャップ半導体層との成長温度は、同じであっても異なってもよく、本実施例においては、同じ温度を採用する。周期内のInの成分は、同じであっても異なってもよく、本実施例において同じであることが好ましい。本実施例において、第2遷移層の周期数が3つであり、上記3つの周期のバンドギャップが同じであることは好ましい。第2遷移層のバンドギャップが、第1遷移層のものよりも小さいので、第2遷移層は底層とそれに続く高In成分の材料との不整合転位を減少して、発光層の結晶体の品質を向上させることができる。
【0047】
(6)そして、第3遷移層7を成長し始める。第3遷移層7は、隣り合うものの間でバンドギャップ、又は、ドーピングが異なる4セクションの半導体層の積み重ねられた周期構造である。
【0048】
まず、第3遷移層の第1部分のN周期を成長する。即ち、材料がGaNであることが好ましく、意図せずにドーピングされた層であり、厚さが5~30Åの範囲内にある第1半導体層7A1を成長し、次に、温度を下げて、材料がInGaNであることが好ましく、意図せずにドーピングされた層であり、厚さが10~50Åの範囲内にある第2半導体層7B1を成長し、そして、材料がAlGaNであることが好ましく、意図せずにドーピングされた層であり、厚さが10~50Åの範囲内にある第3半導体層7C1を成長し、最後に、材料がGaNであることが好ましく、意図せずにドーピングされた層であり、ドーピング濃度が1E17~1E18/cmの範囲内にあり、厚さが30~100Åの範囲内にある第4半導体層7D1を成長する。なお、周期数は1~20の範囲内にある。
【0049】
そして、第3遷移層の第2部分のN周期を成長する。即ち、材料がGaNであることが好ましく、意図せずにドーピングされた層であり、厚さが5~30Åの範囲内にある第1半導体層7A2を成長し、次に、温度を下げて、材料がInGaNであることが好ましく、意図せずにドーピングされた層であり、厚さが10~50Åの範囲内にある第2半導体層7B2を成長し、そして、材料がAlGaNであることが好ましく、意図せずにドーピングされた層であり、厚さが10~50Åの範囲内にある第3半導体層7C2を成長し、最後に、材料がGaNであることが好ましく、意図せずにドーピングされた層であり、ドーピング濃度が1E18~1E19/cmの範囲内にあり、厚さが30~100Åの範囲内にある第4半導体層7D2を成長する。なお、周期数は1~10の範囲内にある。第3遷移層の第2部分のN周期のドーピング濃度は、第3遷移層の第1部分のN周期のものよりも大きい。それは遷移層の段階式ドーピング及び続いての発光層の意図的でないドーピングの構造の組み合わせによって、キャリアの局部分布を効果的に減少させて、キャリアの注入を改善させて、キャリアの均一分布を促進させて、放射再結合効率を効果的に向上させることを目的とするものである。
【0050】
以上の第3遷移層の周期においては、Inの成分が互いに同じであっても異なってもよく、本実施例において同じであることが好ましい。第3遷移層の周期においては、バンドギャップが互いに同じであっても異なってもよく、本実施例において同じであることが好ましい。第3遷移層の平均バンドギャップは、第2遷移層のものよりも小さい。遷移層とN型層と発光層とのバンドギャップは、依然として以下の関係:Egn≧Eg1>Eg2>Eg3>Egを満たしている。第3遷移層は、発光層と底層と間の不整合転位を更に低減して、発光層の結晶の成長品質を向上させて、ひいては効率のピーク値を電流密度に対して左側へ移動させることができる。
【0051】
いくつかの実施例において、第3遷移層は、第2半導体層及び第4半導体層からなる周期構造、第2半導体層と第3半導体層と第4半導体層からなる周期構造、或いは第1半導体層と第3半導体層と第4半導体層からなる周期構造、のみ含むことができ、それにより成長時間を短縮して、生産効率を向上させることができる。
【0052】
他のいくつかの実施例において、第3遷移層における各層は、すべて同じ温度で成長され、In、Al、又はGaを入れる量を通して、In成分の漸次変化を制御して、結晶体の品質を改善すると同時に、成長時間を効果的に短縮して、生産効率を向上させることもできる。
【0053】
他のいくつかの実施例において、第3遷移層における第2部分のN周期と第1部分のN周期とのドーピング濃度は、同じであってもよく、1E17~5E18/cmの範囲内にある。この方式及び続いての発光層の高ドーピングの方式を組み合わせることによって、キャリアの局部分布を効果的に減少させて、キャリアの注入を改善させることができる。
【0054】
他のいくつかの実施例において、第3遷移層における第1部分のN周期と第2部分のN周期とのドーピング濃度は、同じであってもよく、1E18~1E19/cmの範囲内にある。この方式は、材料の抵抗値を効果的に減少して、電圧を減少させることができる。
【0055】
(7)発光層8は、単一の周期内に井戸層8Aと、障壁層8Bと、を少なくとも含んでいる。
【0056】
発光層の総厚さは、50~1000Aの範囲内にある。更に、遷移層の総厚さ、及び発光層の総厚さの比率は、5≦x≦50となっており、本実施例の厚さの比率は、約5:1~20:1にある。これは、主に発光層の厚さを薄くして、遷移層の厚さを厚くして、遷移層と発光層との厚さの比率を調整することによって、キャリアの生成効率を向上させて、発光層と底層と間の格子不整合応力を改善させて、活性領域の結晶体の品質を向上させて、放射再結合効率を向上させて、低電流での特性を改善させることができるからである。
【0057】
発光層の周期数は、1~15の範囲内にあることが好ましい。該実施例において、意図せずにドーピングされた周期数はN1であり、3~10の範囲内にあることが好ましく、意図的にドーピングされた周期数はN2であり、0であることが好ましい。意図せずにドーピングされたものとは、一般的にドーピング濃度が1E17/cmよりも低いものを指す。発光層における意図的にドーピングされた周期数N2=0である場合、第3遷移層におけるN個周期のドーピング濃度は、第3遷移層における前のN個周期のものよりも高い。この方式は、キャリアの注入を改善させるためである。
【0058】
いくつかの実施例において、発光層における意図的にドーピングされた周期数N2≠0である場合、発光層のドーピング濃度は、第3遷移層におけるすべての周期のものよりも高く、或いは、発光層のドーピング濃度は、第3遷移層におけるN個周期のドーピング濃度と同じであり、第3遷移層における前のN個周期のものよりも高い。発光層と遷移層との段階式ドーピングの構造によって、キャリアの局部分布を効果的に減少させて、キャリアの注入を改善させて、キャリアの均一分布を促進させて、キャリアの寿命を増加させて、放射再結合効率を向上させて、効率のピーク値を電流密度に対して左側へ移動させて、低電流での発光効率を向上させることができる。
【0059】
(8)発光層を成長し終えた後、低温のP型層9を成長する。これはMQWを続いての高温で破壊されないように保護することに加え、比較的に高い濃度の正孔を提供することを目的とする。
【0060】
(9)そして、温度を上げて高温のPAlGaN10及び高温のPGaN層11を成長して、表面を充填して平坦にする。
【0061】
(10)該エピタキシャル構造を有するエピタキシャルウェハーを用いて、マイクロ発光ダイオードのチップを製作する。チップの水平サイズは89μm×129μmである。単一のチップをパッケージした後、光電変換効率(WPE)の電流密度(J)に伴う変化に関するテストを行なった。図8に示されるように、光電変換効率のピーク値(peakWPE)に対応する電流密度(J)が、0.6A/cmから0.05A/cmに左側へ移動した。光電変換効率のピーク値は、約6%上がって、0.05A/cmでの注入電流密度で、光電変換効率は、従来の構造と比べて約20%上がった。
【0062】
実施例2
本実施例が実施例1と異なっているのは、本実施例に係る遷移層のバンドギャップの関係が従来の構造と同じであることにある。従来の構造は、一般的にU型層と、N型層と、遷移層と、発光層と、P型層と、を含んでいる。図7に示されるように、遷移層の総厚さと発光層の厚さとの比率は、一般的に1:1~5:1の範囲内にある。従来の構造と異なっているのは、本実施例においては発光層の厚さと遷移層の厚さとの比率を調整することによって、遷移層の総厚さ及び発光層の総厚さの比率が5≦x≦50となっており、本実施例においては厚さの比率が5:1~20:1の範囲内にあることが好ましい。発光層の厚さを薄くして、遷移層の厚さを増加して、遷移層と発光層との厚さの比率を調整することによって、キャリアの生成効率を向上させて、活性領域の結晶体の品質を向上させて、放射再結合効率を向上させて、低電流での特性を改善させることができる。
【0063】
実施例3
本実施例が実施例1と異なっているのは、本実施例に係る遷移層、発光層の厚さが従来の構造と同じであることにある。従来の構造は、一般的にU型層と、N型層と、遷移層と、発光層と、P型層と、を含んでいる。図7に示されるように、遷移層は、一般的に従来のInGaN/GaNからなる交互に積み重ねられた周期構造である。従来の構造と異なっているのは、本実施例においては遷移層が複合遷移層構造となっており、発光層と遷移層との間が段階式ドーピングとなっており、且つ遷移層、N型層、及び発光層のバンドギャップが、以下の関係:Egn≧Eg1>Eg2>Eg3>Egを満たしていることにある。それにより、発光層と底層と間の不整合転位を大いに減少させて、キャリアの局部分布を減少させて、キャリアの注入を改善させて、キャリアの均一分布を促進させて、放射再結合効率を向上させて、効率のピーク値を電流密度に対して左側へ移動させて、低電流での発光効率を向上させることができる。
【0064】
実施例4
本実施例が実施例1と異なっているのは、本実施例に係る積み重ねられた層における第2遷移層において、周期ごとの各周期内でIn、Al成分が漸次に変化し、増大又は減少となり、平均バンドギャップの漸次的な減少又は増大を示すことにある。これは、格子不整合応力を更に減少させることが目的である。
【0065】
実施例5
本実施例が実施例1と異なっているのは、本実施例に係る積み重ねられた層における第3遷移層において、周期ごとにIn、Al成分が漸次に変化し、増大又は減少となり、平均バンドギャップの漸次的な減少又は増大を示すことにある。これは、格子不整合応力を更に減少させることが目的である。
【0066】
実施例6
本実施例が実施例1と異なっているのは、本実施例に係る積み重ねられた層における第2遷移層と第3遷移層において、In、Al成分の変化及びバンドギャップの変化が、実施例4と実施例5からの任意の組み合わせ方式となっていることにある。
【0067】
上述の実施例は、本発明の原理や効果を例示的に説明したものに過ぎず、本発明を限定するものではない。本技術を熟知する者であれば、本発明の精神や範囲を違反しない状態で、上述の実施例に対して修飾や変更を行なうことができる。したがって、本技術分野における通常の知識を有する者が、本発明に開示される精神や技術思想から外れない状態で完成した各種の同様な効果を奏する修飾や変更は、依然として本発明の特許請求範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0068】
1 基板
2 核生成層
3 U-GaN層
4 N-GaN層
5 第1遷移層
5A 第1ドーピング半導体層
5B 第2ドーピング半導体層
5C 第3ドーピング半導体層
6 第2遷移層
6A 第1バンドギャップ半導体層
6B 第2バンドギャップ半導体層
7 第3遷移層(第1部分:第1半導体層7A1、第2半導体層7B1、第3半導体層7C1、第4半導体層7D1、第2部分:第1半導体層7A2、第2半導体層7B2、第3半導体層7C2、第4半導体層7D2、を含む)
8 発光層(井戸層8A、障壁層8B、を含む)
9 低温のP型層
10 高温のPAlGaN層
11 高温のPGaN層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8