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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-31
(45)【発行日】2024-08-08
(54)【発明の名称】電池用包装材
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/134 20210101AFI20240801BHJP
   H01M 50/105 20210101ALI20240801BHJP
   H01M 50/117 20210101ALI20240801BHJP
   H01M 50/121 20210101ALI20240801BHJP
   H01M 50/129 20210101ALI20240801BHJP
   H01M 50/131 20210101ALI20240801BHJP
   B32B 27/00 20060101ALN20240801BHJP
   B32B 27/26 20060101ALN20240801BHJP
【FI】
H01M50/134
H01M50/105
H01M50/117
H01M50/121
H01M50/129
H01M50/131
B32B27/00 H
B32B27/26
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023018472
(22)【出願日】2023-02-09
(62)【分割の表示】P 2022567250の分割
【原出願日】2022-06-20
(65)【公開番号】P2023065430
(43)【公開日】2023-05-12
【審査請求日】2023-02-14
(31)【優先権主張番号】P 2021124948
(32)【優先日】2021-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501428187
【氏名又は名称】株式会社レゾナック・パッケージング
(74)【代理人】
【識別番号】100109911
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義仁
(74)【代理人】
【識別番号】100071168
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 久義
(74)【代理人】
【識別番号】100099885
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 健市
(72)【発明者】
【氏名】川北 圭太郎
【審査官】山本 雄一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-109422(JP,A)
【文献】国際公開第2020/230629(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/039505(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/10-50/198
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材保護層、基材層、バリア層、熱融着性樹脂層が順に積層された電池用包装材において、
前記基材保護層が樹脂成分と固体微粒子を含む樹脂組成物からなり、
前記基材保護層の、JIS K7127に規定された方法で測定したヤング率が50MPa~300MPaであり、
前記基材保護層における固体微粒子の含有量が0.1質量%~60質量%であり、
前記基材保護層の樹脂成分に主剤樹脂と主剤樹脂を硬化させる硬化剤が含まれ、
前記硬化剤は前記主剤樹脂100質量部に対して5質量部~30質量部を配合することを特徴とする電池用包装材。
【請求項2】
前記基材保護層の表面光沢度が6.0GU以下である請求項1に記載の電池用包装材。
【請求項3】
前記基材保護層に含まれる固体微粒子の平均粒径が1μm~10μmである請求項1または2に記載の電池用包装材。
【請求項4】
前記基材保護層に滑剤が含まれる請求項1または2に記載の電池用包装材。
【請求項5】
前記基材保護層の表面に滑剤からなる滑剤層が形成されている請求項1または2に記載の電池用包装材。
【請求項6】
前記滑剤層の滑剤量が1.0mg/m~10.0mg/mである請求項5に記載の電池用包装材。
【請求項7】
前記熱融着性樹脂層に滑剤が含まれている請求項1または2に記載の電池用包装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、車載用、定置型、ノートパソコン用、携帯電話用、カメラ用の二次電池、特に小型携帯用のリチウムイオン二次電池のケースとして好適に用いられる電池用包装材に関する。
【背景技術】
【0002】
電池の製造工程で、ケース材料である包装材の表面に傷がつくと製品の外観を損なう。このような製造過程における外観不良の発生を防止するために、包装材に保護テープを貼り付けておき、製造工程完了後に保護テープを剥がす、という方策が取られている。前記保護テープは製造工程中は剥がれない密着性が求められるが、強く接着されていると剥離後に保護テープの粘着剤が包装材に残ることがある。また、表面にカーボンブラックを含有する着色層が積層された包装材では、保護テープとともに着色層も剥離することがある。
【0003】
このような保護テープに関する問題点に対し、従来は、保護テープの剥離後の糊残りに対しては保護テープの粘着力で対応していた(特許文献1参照)。また、着色層の剥離に対しては着色層を強化すること技術が提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-155364号公報
【文献】特開2006-206805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術は包装材における糊残りの防止対策ではない。また、特許文献2の技術は、最外層がカーボンブラック含有の着色層ではない包装材については糊残りの問題の解決にはならない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した背景技術に鑑み、本発明は、電池用包装材の表面に、保護テープが不本意に剥がれず、かつテープの粘着剤を残さずに剥離できる、という相反する特性を付与することを目的とする。
【0007】
即ち、本発明は、下記[1]~[8]に記載の構成を有する。
【0008】
[1]基材保護層、基材層、バリア層、熱融着性樹脂層が順に積層された電池用包装材において、
前記基材保護層が樹脂成分と固体微粒子を含む樹脂組成物からなり、
前記基材保護層の、JIS K7127に規定された方法で測定したヤング率が50MPa~300MPaであり、JIS K7127に規定された方法で測定した40%伸張時の引張強度が5MPa~20MPaであることを特徴とする電池用包装材。
【0009】
[2]前記基材保護層の表面光沢度が6.0GU以下である前項1に記載の電池用包装材。
【0010】
[3]前記基材保護層における固体微粒子の含有量が0.1質量%~60質量%である前項1または2に記載の電池用包装材。
【0011】
[4]前記基材保護層に含まれる固体微粒子の平均粒径が1μm~10μmである前項1~3のいずれかに記載の電池用包装材。
【0012】
[5]前記基材保護層に滑剤が含まれる前項1~4のいずれかに記載の電池用包装材。
【0013】
[6]前記基材保護層の表面に滑剤からなる滑剤層が形成されている前項1~5のいずれかに記載の電池用包装材。
【0014】
[7]前記滑剤層の滑剤量が1.0mg/m~10.0mg/mである前項6に記載の電池用包装材。
【0015】
[8]前記熱融着性樹脂層に滑剤が含まれている前項1~7のいずれかに記載の電池用包装材。
【発明の効果】
【0016】
上記[1]に記載の電池用包装材は、基材保護層のヤング率および40%伸張時の引張強度が所定範囲に設定されている。このため、基材保護層が硬さすぎることによる表面割れが起きにくいので、割れ部に保護テープの粘着剤が侵入することがなく剥離時の糊残りが発生しにくい。また、柔らか過ぎて保護テープとの密着性が高くなりすぎることもなく、剥離時の膜剥がれも発生しにくい。従って、保護テープが不本意に剥がれず、かつテープの粘着剤を残さずに剥離できる、という相反する特性を得ることができる。
【0017】
上記[2]に記載の電池用包装材は、基材保護層の表面光沢度が6.0GU以下であるから、基材保護層表面に連続した凹凸が形成されている。このため、保護テープは、凸部に接触しているが凹部では離れているので、保護テープの基材保護層との実質的な接触面積が少なくなる。その結果、保護テープの剥離性が良くなり、糊残りも少なくなる。
【0018】
上記[3]に記載の電池用包装材は、基材保護層に含まれる固体微粒子の含有量が0.1質量%~60質量%であるから、所望の表面光沢度を得ることができる。
【0019】
上記[4]に記載の電池用包装材は、基材保護層に含まれる固体微粒子の平均粒径が1μm~10μmであるから、所望の表面光沢度を得ることができ、かつ基材保護層から脱落しにくい。
【0020】
上記[5]に記載の電池用包装材は、基材保護層に含まれている滑剤が表面に析出することにより、基材保護層の表面に滑剤層が形成される。この滑剤層により保護テープが剥がれ易くなり、糊残りが発生しにくくなる。
【0021】
上記[6]に記載の電池用包装材は、基材保護層の表面に滑剤からなる滑剤層が形成されているので、保護テープが剥がれ易く、糊残りが発生しにくい。
【0022】
上記[7]に記載の電池用包装材は、滑剤層の滑剤量が1.0mg/m~10.0mg/mであるから、保護テープの剥がれ性が良く糊残りを発生しにくい。
【0023】
上記[8]に記載の電池用包装材は、熱融着性樹脂層に含まれている滑剤が表面に析出し、基材保護層の表面に転写させることで滑剤層が形成される。この滑剤層により保護テープが剥がれ易くなり、糊残りが発生しにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の電池用包装材にかかる一実施形態の断面図である。
図2】本発明の電池用包装材にかかる他の実施形態の断面図である。
図3】樹脂組成物の硬化膜の応力と伸びの関係を示すS-S曲線である。
図4図1の電池用包装材を用いて作製した電池ケースの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1および図2に、本発明の電池用包装材にかかる2つの実施形態を示す。
【0026】
以下の説明において、同一符号を付した層は同一物または同等物を表しており、重複する説明を省略する。
[電池用包装材の第1実施形態]
図1の電池用包装材1は、バリア層11の一方の面に第1接着剤層12を介して基材層13が貼り合わされ、他方の面に第2接着剤層14を介して熱融着性樹脂層15が貼り合わされ、さらに前記基材層13に基材保護層30が積層されている。
【0027】
前記電池用包装材1は、図4に示すように、熱融着性樹脂層15同士を向かい合わせに配置して、該電池用包装材1の周囲をヒートシールすることにより電池ケースと50が作製され、電池ケース50内にベアセル51が封入される。電池ケース50において、前記基材保護層30が外側となり、前記熱融着性樹脂層15が内側となる。本明細書において、電池用包装材を構成する各層の位置を方向で説明する場合に、ケースの内外の方向に合わせて、基材保護層の方向を外側、熱融着性樹脂層の方向を内側と称する。
【0028】
電池用包装材1の外側表面は、貼り付けた保護テープが不本意に剥がれることなくしっかりと付いている必要があるが、保護テープが不要になればテープの粘着剤を残さず、かつ貼り付けた面を傷つけることなくきれいに剥がすことができる、という相反する特性が求められる。
(基材保護層)
基材保護層30は、電池用包装材の表面に良好な滑り性を付与して成形性を向上させるとともに、優れた耐薬品性、耐溶剤性、耐摩耗性を付与する層である。
【0029】
前記基材保護層30に貼る保護テープは剥がすことが前提であるから、その粘着剤は柔らかい。前記基材保護層30は樹脂成分と固体微粒子を含む樹脂組成物の硬化膜であるから、樹脂組成物の組成等によって硬軟が生じる。そして、このような基材保護層30に保護テープを貼った場合、基材保護層30が硬すぎると表面割れが起きやすくなり、割れ部分に柔らかい粘着剤が侵入して糊残りが発生する。一方、基材保護層30が柔らかくなりすぎると、保護テープの粘着剤と基材保護層30の密着性が高くなりすぎて、保護テープを剥離する際に基材保護層30(硬化膜)の一部が粘着剤に持っていかれ、膜剥がれが起きやすくなる。従って、基材保護層30を適度な硬さに設定することで、基材保護層30を傷つけず、かつテープの粘着剤を残すことなく、きれいに保護テープを剥がすことができる、と考えられる。
【0030】
本発明において、基材保護層30の硬さを、JIS K7127に規定された方法で測定したヤング率および40%伸張時の引張強度によって規定する。前記ヤング率は50MPa~300MPaであり、40%伸張時の引張強度は5MPa~20MPaである。より好ましいヤング率は70MPa~250MPaであり、より好ましい40%伸張時の引張強度は5MPa~15MPaである。
【0031】
図3は、組成の異なる5種類の樹脂組成物の硬化膜A~Eの引張強度(応力)(MPa)と伸び(歪み)(%)の関係を示すS-S曲線(応力-歪み曲線)の例である。本図に示されているように、硬化膜は様々なパターンで伸びるが、本発明においては40%伸張時(歪み量40%時)の引張強度(応力)に基づいて硬さを判定する。図示例の5種類の硬化膜の中では、AおよびBが本発明の条件を満たしている。
【0032】
また、前記基材保護層30は表面光沢度が6.0GU以下であることが好ましい。
【0033】
前記基材保護層30は固体微粒子を含んでいるので、表面に微細な凹凸が形成されている。保護テープは、凸部に接触しているが凹部では離れているので、保護テープの基材保護層30との実質的な接触面積が少なくなる。その結果、保護テープの剥離性が良くなり、糊残りも少なくなる。前記基材保護層30表面の凹凸が少なく平滑性が高くなるほど表面光沢度は高くなり、凹凸が多くなるほど表面光沢度が低くなる。凹凸が多いほど保護テープとの接触面積が少なくなるので、糊残りの度合いを表面光沢はで推し量ることができる。本発明においては、基材保護層の表面光沢度が6.0GU以下であることを推奨する。特に好ましい表面光沢度は5.0以下である。
【0034】
前記基材保護層30において、好ましい樹脂成分および固体微粒子は以下のとおりである。
【0035】
前記樹脂成分として、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、フェノキシ樹脂のうち少なくとも1種の樹脂を用いることが好ましい。これらの樹脂は高い耐薬品性、耐溶剤性を有しているため、樹脂の劣化などによる固体微粒子の脱落が起こりにくくなり、表面凹凸が確実に形成される。そして、凹凸が形成された基材保護層30の表面は保護テープとの接触面積を少なくする効果を十分に発揮して、糊残りを抑えることができる。
【0036】
また、樹脂成分は、上述した少なくとも1種の樹脂を含む主剤樹脂とこの主剤樹脂を硬化させる硬化剤とであっても良い。
【0037】
また、硬化剤は特に限定されるものではなく、主剤樹脂に応じて適宜選択すればよい。主剤樹脂がウレタン系樹脂とフェノキシ系樹脂の混合物の場合は、イソシアネート化合物を用いることが好ましい。イソシアネート化合物は、脂肪族系、脂環族系、芳香族系の各種多官能イソシアネート化合物を推奨できる。脂肪族系多官能イソシアネート化合物としてヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)等を挙げることができ、脂環族系多官能イソシアネート化合物としてイソホロンジイソシアネート(IPDI)等を挙げることができ、芳香族系多官能イソシアネート化合物としてはトリレンジイソシアネート(TDI)やジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)等が挙げることができる。また、これらの多官能イソシアネート化合物の変性体であってもよく、イソシアヌレート化、カルボジイミド化、ポリメリック化等の多量化反応による多官能イソシアネート変性体を例示できる。
【0038】
前記硬化剤は前記主剤樹脂100質量部に対して5質量部~30質量部を配合することが好ましい。5質量部未満では基材層13への密着性および耐溶剤性が低下するおそれがある。また30質量部を超えると、基材保護層30が硬くなって成形性が低下するおそれがある。特に好ましい硬化剤の配合量は前記主剤樹脂100質量部に対して10~20質量部である。基材保護層30の硬さ、即ちヤング率および40%伸張時の引張強度は主剤樹脂と硬化剤の配合割合に影響を受けるので、所望の硬さが得られるように主剤樹脂と硬化剤の配合量を設定する。
【0039】
上述した樹脂成分のうち、特に好ましいのは、フェノキシ樹脂およびウレタン樹脂を含む主剤と硬化剤(イソシアネート)による化合物である。ウレタン樹脂とフェノキシ樹脂は柔らかさが異なり、さらに固体微粒子を含めると、樹脂組成物の硬化膜には3種類の硬さの異なる部分が存在する。保護テープを剥がす時、粘着剤は硬化膜の表面の硬い部分で早く離れ、柔らかい部分で遅く離れる。保護テープの粘着剤が僅かなタイミングのずれを伴いながら硬化膜から表面から離れることで、粘着剤(の層)に掛かる力が分散されると考えられ、粘着剤の凝集破壊が起こりにくくなり、その結果糊残りが発生しにくくなると考えられる。また、前記基材保護層30のヤング率および40%伸張時の応力が規定され、硬化膜表面全体が適度な硬さであるから、硬化膜表面全体において粘着剤の離れが早いことも糊残りの発生抑制に寄与していると考えられる。
【0040】
上述した粘着剤が離れるタイミングのずれを発生させるという観点から、前記フェノキシ樹脂とウレタン樹脂の比率は、質量で、フェノキシ樹脂1に対しウレタン樹脂0.5~5.0が好ましい。さらに好ましい比率は、フェノキシ樹脂1に対しウレタン樹脂1.3~4.1である。
【0041】
本発明において、固体微粒子は、上述したとおり、基材保護層30の表面に凹凸を形成することで糊残りの抑制に寄与する。さらに、固体微粒子は基材保護層30に滑り性を付与して成形性の向上、表面光沢度の調節のために添加される成分でもある。これらの効果を奏する固体微粒子としては、無機微粒子、有機微粒子のいずれでも使用でき、それらを混合して用いることもできる。無機微粒子としては、シリカ、アルミナ、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、カーボンブラック等を例示でき、有機微粒子としては、アクリル酸エステル系化合物、ポリスチレン系化合物、エポキシ系樹脂、ポリアミド系化合物、またはそれらの架橋物等の微粒子を使用しうる。前記固体微粒子は1種を使用しても、2種以上を混合して使用してもよい。
【0042】
これらの固体微粒子は、平均粒径が1μm~10μmのものが好適に用いられ、なかでも2μm~5μmが好ましい。1μm未満の粒径の小さすぎる固体微粒子を用いたときは、塗布液の中に埋もれてしまい所望の特性を得難い。一方、10μmを超える粒径の大きい固体微粒子を用いるときは、粒径が塗布厚みを超えてしまい基材保護層から脱落し易くなる。
【0043】
また、樹脂組成物における固体微粒子の含有率は、表面光沢度、滑り性、添加する微粒子の粒径、種類等に応じて、0.1質量%~60質量%の範囲で適宜に決定される。含有率が0.1質量%未満または60質量%超えでは所望の表面光沢度や滑り性が得にくい。固体微粒子の含有量の好ましい範囲は5質量%~55質量%の範囲であり、特に好ましくは20質量%~50質量%の範囲である。
【0044】
前記基材保護層30の硬化後の厚さは1~10μmが好ましい。前記下限値よりも薄い層では滑り性向上効果が少なく、滑り性を向上させるために固体微粒子量を増やすと固体微粒子が脱落し易くなったり塗膜が脆くなったりする。一方、前記上限値よりも厚い層では、硬化後の残留溶剤量が多くなるのでブロッキングし易くなったり塗膜の中心部の乾燥が不十分になって塗膜が脆くなったりする。その上、厚い層の形成はコストアップとなる。前記基剤保護層30の特に好ましい厚さは2~5μmの範囲である。
【0045】
なお、本発明は、基材保護層30を構成する樹脂組成物の成分として上述した樹脂成分および固体微粒子以外の成分を排除するものではなく、基材保護層30の特性を損なわない限り他の成分の添加が許容される。例えば、滑剤を添加することで、基材保護層30上に滑剤層を有する電池用包装材を作製できる(図2参照)。滑剤層を有する電池用包装材については、後に詳述する。
【0046】
前記電池用包装材1において基材保護層30以外の層の好ましい材料は以下のとおりである。
(バリア層)
前記バリア層11は、電池用包装材1に酸素や水分の侵入を阻止するガスバリア性を付与する役割を担うものである。前記バリア層11としては、特に限定されるものではないが、例えば、アルミニウム箔、SUS箔(ステンレス箔)、銅箔、ニッケル箔、チタン箔、クラッド箔等の金属箔が挙げられる。前記バリア層11の厚さは、20μm~100μmであるのが好ましい。20μm以上であることで金属箔を製造する際の圧延時のピンホール発生を防止できると共に、100μm以下であることで張り出し成形、絞り成形等の成形時の応力を小さくできて成形性を向上させることができる。前記バリア層11の特に好ましい厚さは25μm~85μmである。
【0047】
また、前記バリア層11は前記金属箔の少なくとも熱融着性樹脂層15側の面に、化成処理が等の下地処理が施されていることが好ましい。このような化成処理が施されていることによって内容物(電池の電解質等)による金属箔表面の腐食を十分に防止できる。
(基材層)
前記基材層13には電池用包装材1をヒートシールする際のヒートシール温度で溶融しない耐熱性樹脂フィルムを用いる。前記耐熱性樹脂としては、熱融着性樹脂層15を構成する樹脂の融点より10℃以上、好ましくは20℃以上高い融点を有する耐熱性樹脂を用いる。この条件を満たす樹脂として、例えば、ナイロンフィルム等のポリアミドフィルム、ポリエステルフィルム等が挙げられ、これらの延伸フィルムが好ましく用いられる。中でも、前記基材層13としては、二軸延伸ナイロンフィルム等の二軸延伸ポリアミドフィルム、二軸延伸ポリブチレンテレフタレート(PBT)フィルム、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム又は二軸延伸ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルムを用いるのが特に好ましい。前記ナイロンフィルムとしては、特に限定されるものではないが、例えば、6ナイロンフィルム、6,6ナイロンフィルム、MXDナイロンフィルム等が挙げられる。なお、前記基材層13は、単層で形成されていても良いし、或いは、例えばポリエステルフィルム/ポリアミドフィルムからなる複層(PETフィルム/ナイロンフィルムからなる複層等)で形成されていても良い。
【0048】
前記基材層13の厚さは、9μm~50μmであるのが好ましく、包装材として十分な強度を確保でき、かつ張り出し成形、絞り成形等の成形時の応力を小さくできて成形性を向上させることができる。前記基材層13のさらに好ましい厚さは9μm~30μmである。
(熱融着性樹脂層)
熱融着性樹脂層15は腐食性の強い電解質などに対しても優れた耐薬品性を具備させるとともに、電池用包装材1にヒートシール性を付与する役割を担うものである。
【0049】
熱融着性樹脂層15を構成する樹脂は、プロピレン系樹脂が好ましく、無延伸フィルムが好ましい。前記プロピレン系樹脂として、共重合成分としてエチレンおよびプロピレンを含有するエチレン-プロピレン共重合体を例示できる。前記エチレン-プロピレン共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体のいずれでもよい。また、熱融着性樹脂層15は、単層フィルム、多層フィルムのいずれのい。多層のエチレン-プロピレン共重合体フィルムとして、ランダム共重合体-ブロック共重合体-ランダム共重合体の3層フィルムを推奨できる。前記多層フィルムは共押出し等を作製することができる。
【0050】
前記熱融着性樹脂層15の厚さは20μm~100μmが好ましく、25μm~80μmであればなお一層好ましい。また、ランダム共重合体-ブロック共重合体-ランダム共重合体の3層フィルムの各層の厚みの割合は、総厚を10としたときに、1~3:4~8:1~3が好ましい。
【0051】
なお、前記熱融着性樹脂層には滑剤を含有させることができる。熱融着性樹脂層15に滑剤を添加することで、基材保護層30上に滑剤層を有する電池用包装材を作製できる(図2参照)。滑剤層を有する電池用包装材については、後に詳述する。
(第1接着剤層)
前記第1接着剤層12としては、特に限定されるものではないが、例えば、2液硬化型接着剤により形成された接着剤層等が挙げられる。前記2液硬化型接着剤としては、例えば、ポリウレタン系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール及びポリエステルウレタン系ポリオールからなる群より選ばれるポリオールの1種または2種以上からなる第1液(主剤)と、イソシアネートからなる第2液(硬化剤)とで構成される2液硬化型接着剤などが挙げられる。中でも、ポリエステル系ポリオール及びポリエステルウレタン系ポリオールからなる群より選ばれるポリオールの1種または2種以上からなる第1液と、イソシアネートからなる2液(硬化剤)とで構成される2液硬化型接着剤を用いるのが好ましい。前記第1接着剤層12の好ましい厚さは2μm~5μmである。
(第2接着剤層)
前記第2接着剤層14としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、エラストマー系樹脂、フッ素系樹脂、酸変性ポリプロピレン樹脂のうちの1種以上を含む接着剤を推奨できる。中でも、酸変性ポリオレフィンを主剤とするポリウレタン複合樹脂からなる接着剤が好ましい。前記第2接着剤層14の好ましい厚さは2μm~5μmである。
【0052】
前記第1接着剤層12および第2接着剤層14は必須の層ではなく、基材層13が直接バリア層11に貼り合わされていてもよく、また熱融着性樹脂層15が直接バリア層11に貼り合わされていてもよい。
[電池用包装材の第2の実施形態]
図2の電池用包装材2は、基材保護層30、基材層13、第1接着剤層12、バリア層11、第2接着剤層14、熱融着性樹脂層15が順次積層され、前記基材保護層30の外側に滑剤層40が形成されている。即ち、図1の電池用包装材1とは、最外層として滑剤層40が追加されたことが相違する。
(滑剤層)
滑剤層40を構成する滑剤は保護テープの粘着剤の粘着力を低下させる効果があり、基材保護層30と保護テープの間に滑剤層40を介在させることにより、保護テープの剥がれ性が良くなり糊残りを発生しにくくする。また、滑剤層40を形成することにより、電池用包装材2の成形性を高めることができる。なお、本発明の滑剤には、アミド等の滑剤と称されるものの他、界面活性剤と称されるものも含むものとする。前記界面活性剤も粘着剤の粘着性を低下させる作用があり、アミド等と同様に用いるできるためである。本発明の滑剤層40に適した滑剤(界面活性剤を含む)は以下のとおりである。
【0053】
飽和脂肪酸アミドとして、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミドを挙げることができる。
【0054】
不飽和脂肪酸アミドとして、オレイン酸アミド、エルカ酸アミドを挙げることができる。
【0055】
置換アミドとして、N-オレイルパルミチン酸アミド、N-ステアリルステアリン酸アミド、N-ステアリルオレイン酸アミド、N-オレイルステアリン酸アミド、N-ステアリルエルカ酸アミドを挙げることができる。
【0056】
メチロールアミドとして、メチロールステアリン酸アミドを挙げることができる。
【0057】
飽和脂肪酸ビスアミドとして、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンヒドロキシステアリン酸アミド、N,N’-ジステアリルアジピン酸アミド、N,N’-ジステアリルセバシン酸アミドを挙げることができる。
【0058】
不飽和脂肪酸ビスアミドとして、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’-ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’-ジオレイルセバシン酸アミドを挙げることができる。
【0059】
脂肪酸エステルアミドとして、ステアロアミドエチルステアレートを挙げることができる。
【0060】
芳香族系ビスアミドとして、m-キシリレンビスステアリン酸アミド、m-キシリレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、N,N’-ジステアリルイソフタル酸アミドを挙げることができる。
【0061】
界面活性剤として、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤を挙げることができる。
【0062】
前記滑剤層40は、上述した滑剤の他に濃度調整のための溶剤が含まれることがある。
【0063】
前記滑剤層40における滑剤量は1.0mg/m~10.0mg/mが好ましい。前記滑剤量が下限値よりも少ない場合は糊残りの発生防止効果および成形性向上効果が小さい。一方、上限値よりも多い場合は保護テープとの密着性が低下して不本意に剥がれるおそれがあり、成形時に白粉が発生するおそれがある。前記白粉は層の表面に析出した滑剤である。前記滑剤量は1.0mg/m~5.0mg/mであればより一層好ましい。
【0064】
前記滑剤層40の形成方法は限定されず、例えば、下記のいずれかの方法で形成することができる。
(1)基材保護層30の表面に滑剤を塗工し、乾燥させることによって滑剤層40を形成する。本形成方法のメリットは、所定量の滑剤を確実に塗布でき、かつシートタイプの積層体にも確実に滑剤層40を形成できる点である。
(2)熱融着性樹脂層15に滑剤を含有させておき、熱融着性樹脂層15から基材保護層30表面に滑剤を転写して滑剤層40を形成する。
【0065】
具体的には、熱融着性樹脂層15に滑剤を含有させておき、基材保護層30、基材層13、第1接着剤層12、バリア層11、第2接着剤層14、熱融着性樹脂層15が順に積層された中間積層物を作製し、この中間積層物をロール軸に巻き取る。ロール軸に巻いた中間積層物は熱融着性樹脂層15が基材保護層30に接触しているので、この状態でエージングし、熱融着性樹脂層15の表面に析出した滑剤を基材保護層30の表面に付着させて滑剤層40を形成する。即ち、熱融着性樹脂層15の表面に析出した滑剤を基材保護層30に転写することによって滑剤層40を形成する。本形成方法のメリットは、格別の滑剤層形成工程が必要ない点である。即ち、バリア層11、基材層13、熱融着性樹脂層15、基材保護層30を貼り合わせた後のエージングは、滑剤層を持たない従来の電池用包装材の製造において接着剤層を安定させるために行われる通常の工程であり、このエージングによって接着剤層の安定と同時に滑剤層40を形成することができる。
【0066】
上述した方法で滑剤層40を形成する場合は、熱融着性樹脂層15中の滑剤濃度を500ppm~3000ppmに設定することが好ましい。前記滑剤濃度が下限値より低い場合は基材保護層15への転写量が少なく十分な滑剤層40を形成することが難しく、熱融着性樹脂層15に滑剤を添加することによる成形性向上効果も小さい。前記滑剤濃度が上限値より高い場合は、白粉が発生し易くなり、また基材保護層30への転写量が過剰になるおそれがある。前記熱融着性樹脂層15中の滑剤濃度は700ppm~3000ppmであればより一層好ましい。
【0067】
なお、滑剤層40は、基材保護層30に滑剤を塗工することによっても形成できるので、熱融着性樹脂層15中の滑剤の有無や好適濃度は滑剤層40の形成方法によって異なる。
(3)基材保護層30に滑剤を含有させておき、表面に滑剤を析出させて滑剤層40を形成する。
【0068】
基材保護層30を構成する樹脂組成物中の滑剤濃度を1000ppm~20000ppmに設定することが好ましい。前記滑剤濃度が下限値より低い場合は析出量が少なく、滑剤層40による糊残りの発生抑制効果が小さく、成形性向上効果も小さい。一方、滑剤濃度が上限値より大きい場合は析出量が過剰となって、保護テープの密着性が低下し、白粉が発生し易くなる。前記基材保護層30中の滑剤濃度は6000ppm~18000ppmであればより一層好ましい。
【実施例
【0069】
実施例および比較例の電池用包装材を作製した。各例に共通の材料は下記のとおりである。
(共通材料)
バリア層11として、厚さ40μmのA8021-Oからなるアルミニウム箔の両面に、リン酸、ポリアクリル酸(アクリル系樹脂)、クロム(III)塩化合物、水、アルコールからなる化成処理液を塗布した後、180℃で乾燥を行って、化成皮膜を形成したものを使用した。この化成皮膜のクロム付着量は片面当たり10mg/mである。
【0070】
基材層13として厚さ15μmの二軸延伸6ナイロンフィルムを用いた。
【0071】
熱融着性樹脂層15として、厚さ40μmの無延伸ポリプロピレンフィルムを用いた。また、実施例1~13および比較例1~3は、滑剤層形成用の滑剤としてエルカ酸アミド(EA)、オレイン酸アミド(OA)またはアニオン系界面活性剤(AN)を表1の濃度で添加した無延伸フィルムを用いた。
【0072】
第1接着剤層12として2液硬化型ウレタン系接着剤を用いた。
【0073】
第2接着剤層14として、2液硬化型マレイン酸変性プロピレン接着剤を用いた。
(実施例1~9、12、13、比較例1~2)
図2に示す積層構造の電池用包装材2を作製した。
【0074】
基材保護層30形成用の樹脂組成物を以下の方法で調製した。ポリエステルポリオール樹脂を主剤樹脂とし、トリレンジイソシアネート(TDI)とヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)を質量比で1:1で混合したものを硬化剤とし、主剤樹脂100質量部に対して硬化剤を表1に示す量を配合したものを樹脂成分とした。そして、前記樹脂成分に、平均粒径2μmのシリカを、樹脂組成物中の含有量が表1に示す含有量となるように配合して均一に分散させた。
【0075】
まず、前記バリア層11の一方の面に、厚さ3μmの第1接着剤層12を形成し、この第1接着剤層12を介して基材層13をドライラミネートした。次に、前記バリア層11の他方の面に、厚さ3μmの第2接着剤層14を形成し、この第2接着剤層14を介して熱融着性樹脂層15を重ね合わせ、ゴムニップロールと、100℃に加熱されたラミネートロールとの間に挟み込んで圧着することによりドライラミネートした。これにより3層の積層フィルムとなった。
【0076】
次に、前記3層の積層フィルムの基材層13の表面に、上記の基材保護層30形成用の樹脂組成物を塗布して乾燥させた。乾燥後の基材保護層30の厚みは4μmである。これにより、4層フィルムとり、この4層フィルムをロール軸に巻き取った。巻き取った4層フィルムは基材保護層30が熱融着性樹脂層15に接触しており、この状態40℃で10日間エージングした。
【0077】
そして、前記エージングの間に熱融着性樹脂層15から滑剤が析出し、析出した滑剤が基材保護層30の表面に転写されることで滑剤層40を形成した。
(実施例10)
図2に示す積層構造の電池用包装材2を作製した。
【0078】
基材保護層30形成用の樹脂組成物を以下の方法で調製した。ポリエステルポリオールおよびフェノキシポリオールを質量比で4:1で混合したもの主剤樹脂とし、トリレンジイソシアネート(TDI)とヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)を質量比で1:1で混合したものを硬化剤とし、主剤樹脂100質量部に対して硬化剤10質量部を配合したものを樹脂成分とした。そして、前記樹脂成分に、平均粒径2μmのシリカを、樹脂組成物中の含有量が表1に示す含有量となるように配合して均一に分散させた。
【0079】
基材保護層30の組成を除いて、実施例1と同じ手法で電池用包装材を作製した。
(実施例11)
図2に示す積層構造の電池用包装材2を作製した。
【0080】
基材保護層30形成用の樹脂組成物において、シリカを平均粒径2μmのアクリルビースに変更したことを除いて、実施例1と同じ手法で電池用包装材を作製した。
(実施例14)
図1に示す積層構造の電池用包装材1を作製した。
【0081】
熱融着性樹脂層15形成用の樹脂組成物に滑剤を添加しないことを除いて、実施例1と同じ手法で電池用包装材を作製した。従って、本例の電池用包装材は、基材保護層30の表面に滑剤層40を有さない。
(比較例3)
基材保護層30形成用の樹脂組成物を以下の方法で調製した。エポキシ樹脂化合物を主剤樹脂とし、ポリアミン化合物を硬化剤とし、主剤樹脂100質量部に対して硬化剤10質量部を配合したものを樹脂成分とした。そして、前記樹脂成分に、平均粒径2μmのシリカを、樹脂組成物中の含有量が表1に示す含有量となるように配合して均一に分散させた。
【0082】
基材保護層30の組成を除いて、実施例1と同じ手法で電池用包装材を作製した。
【0083】
作製した電池用包装材について、下記の方法で、基材保護層30のヤング率および40%伸張時の引張強度、表面光沢度(GU値)、滑剤層40の滑剤量を測定し、テープ密着性およびテープ剥離後の外観を評価した。表1に結果を示す。
(基材保護層のヤング率および引張強度)
実施例、比較例で使用した各基材保護層30を構成する樹脂組成物を熱硬化させた硬化膜のヤング率(MPa)および40%伸張時の引張強度(MPa)をJIS K7127-1999に準拠して測定した。
【0084】
具体的には、各樹脂組成物をガラス板の上に50μmの厚さで塗布した後、40℃で11日間加熱エージング処理を行って、樹脂組成物を熱硬化させて厚さ48μmの硬化膜を得た。前記硬化膜をガラス板から剥がした後、幅15mm×長さ100mmの大きさに切り出して試験片を作製し、島津製作所製ストログラフ(AGS-5kNX)を使用して引張速度200mm/分で前記試験片の引張試験を行ってヤング率(MPa)および40%伸張時の引張強度(MPa)を測定した。
(滑剤層の滑剤量)
電池用包装材を10cm×10cmに裁断して試験材とした。この試験材を、滑剤層(比較例4は基材保護層)が内側となるように二つ折りにして5cm×10cmとし、5cmの2辺をPETフィルムを介して熱融着性樹脂層上からシールして袋体を作製した。この袋体内にアセトン1mLを入れて袋体の内面とアセトンが密着させた状態で3分放置した後に、袋体からアセトンと滑剤を含む液を抜き取った。
【0085】
抜き取った液をガスクロマトグラフ装置にかけ、検出データから検量線法により液中に含まれる滑剤種と滑剤量を求めた。
(表面光沢度)
測定機器として、BYK社製の「micro-TRI-gloss-s」を用いて、6
0°反射角で表面光沢度(GU値)を測定した。
(テープ密着性)
電池用包装材から幅15mm×長さ150mmの試験片を切り出した。この試験片の滑剤層(比較例4は基材保護層)に、試験片の長手方向に沿って、幅5mm×長さ80mmで粘着力が13N/cmの粘着テープ(tesa 70415)を貼り付けた。そして、この粘着テープ上に重さ2kgfのハンドロールを5往復走行させ、その後、常温で1時間静置した。
【0086】
次いで、引張試験機として島津製作所製ストログラフ(AGS-5kNX)を用い、その一方のチャックで試験片の端部を挟着固定するとともに、他方のチャックで粘着テープの端部を掴んだ。そして、JIS K6854-3(1999)に準拠して300mm/minの剥離速度で180°剥離させた時の剥離強度を測定し、この測定値が安定したところの値を試験片と粘着テープとの密着力(単位:N/5mm)とした。
【0087】
そして、試験片と粘着テープとの密着力について下記の基準で評価した。
【0088】
◎密着性が非常に高い:7N/5mm以上
〇密着性が高い :5N/5mm以上7N/5mm未満
×密着性が低い :5N/5mm未満
(テープ剥離後の外観)
電池用包装材から幅15mm×長さ150mmの試験片を切り出した。この試験片の滑剤層(比較例4は基材保護層)に試験片の長手方向に沿って、幅5mm×長さ80mmで粘着力が13N/cmの粘着テープ(tesa 70415)を貼り付けた。そして、この粘着テープ上に重さ2kgfのハンドロールを5往復走行させ、その後、常温で1時間静置した。
【0089】
次いで、庫内温度80℃×ゲージ圧-100kPaの設定にした真空乾燥機で1d(24h)静置し、80℃で500kg/mの条件で3hヒートプレスした後、45℃の恒温槽で2d(48h)静置させ試料を処理した。
【0090】
処理が終わった試験片から粘着テープを手で素早く剥がし、剥がした表面を観察し、下記の基準で評価した。
【0091】
◎:表面状態がシール貼り付け前と比べて全く変化なし
〇:軽く拭けば取れる程度の小さな断片の粘着剤が残っていた
△:拭けば取れるが、〇よりも大きい断片の粘着剤が残っていた
×:拭いても取れない程度の粘着成分がしっかりと残っていた
【0092】
【表1】
【0093】
表1より、基材保護層の物性により保護テープの密着性が良くかつ剥離後の糊残りを抑制できることを確認した。
【0094】
本願は、2021年7月30日に出願された日本国特許出願の特願2021-124948号の優先権主張を伴うものであり、その開示内容はそのまま本願の一部を構成するものである。
【0095】
ここに用いられた用語および表現は、説明のために用いられたものであって限定的に解釈するために用いられたものではなく、ここに示されかつ述べられた特徴事項の如何なる均等物をも排除するものではなく、この発明のクレームされた範囲内における各種変形をも許容するものであると認識されなければならない。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明の電池用包装材は、車載用、定置型、ノートパソコン用、携帯電話用、カメラ用の二次電池、特に小型携帯用のリチウムイオン二次電池のケース材料として好適に利用できる。
【符号の説明】
【0097】
1、2…電池用包装材
11…バリア層
12…第1接着剤層
13…基材層
14…第2接着剤層
15…熱融着性樹脂層
30…基材保護層
40…滑剤層
図1
図2
図3
図4