(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-31
(45)【発行日】2024-08-08
(54)【発明の名称】電子機器及び筐体部材
(51)【国際特許分類】
G06F 1/16 20060101AFI20240801BHJP
H05K 5/02 20060101ALI20240801BHJP
F16C 11/04 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
G06F1/16 312J
G06F1/16 312E
G06F1/16 312F
H05K5/02 V
F16C11/04 F
(21)【出願番号】P 2023106785
(22)【出願日】2023-06-29
【審査請求日】2023-06-29
(73)【特許権者】
【識別番号】505205731
【氏名又は名称】レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山内 武仁
(72)【発明者】
【氏名】岡本 雅士
(72)【発明者】
【氏名】原 慎孝
【審査官】佐藤 実
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-199100(JP,A)
【文献】特開2016-139653(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 1/16
H05K 5/02
F16C 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の筐体をヒンジで連結した電子機器であって、
前記一対の筐体のうちの一方の筐体は、
プレート部と、該プレート部の縁部に接合されたフレーム部と、を有する筐体部材と、
前記筐体部材の内面に固定される固定面と、底部が前記固定面の一部を形成するカバープレートで塞がれたねじ穴が設けられ、前記ヒンジが締結されるヒンジ締結部と、を有するブラケットと、
を備え、
前記筐体部材は、前記プレート部の内面に前記フレーム部が積層された積層部を有すると共に、該積層部には前記フレーム部を貫通し前記プレート部を露出させた孔部が設けられ、
前記固定面は、前記積層部を形成する前記フレーム部に対して接着剤で固定されると共に、前記カバープレートが前記孔部に充填された接着剤によって前記プレート部及び前記フレーム部と固定されている
ことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
請求項1に記載の電子機器であって、
前記ブラケットは、前記カバープレートをその周囲の前記固定面よりも突出した位置に配置することで、前記ねじ穴の深さを拡大した突出部を有し、
前記突出部は、前記孔部に挿入され、
前記突出部は、前記孔部の底面を形成する前記プレート部と、前記孔部の内周面を形成する前記フレーム部とに対して、それぞれ接着剤で固定されている
ことを特徴とする電子機器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電子機器であって、
前記プレート部は、炭素繊維強化樹脂プレート又は金属プレートであり、
前記フレーム部は、前記プレート部の縁部に接合された樹脂部材である
ことを特徴とする電子機器。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の電子機器であって、
前記一方の筐体は、さらに、表示面を有し、前記表示面とは反対側の裏面が前記筐体部材の内面で支持されたディスプレイパネルを備え、
前記ブラケットは、前記ヒンジ締結部がディスプレイパネルの外周側面の側方に配置される
ことを特徴とする電子機器。
【請求項5】
ブラケットが固定された筐体部材であって、
前記筐体部材は、プレート部と、該プレート部の縁部に接合されたフレーム部とを有し、
前記ブラケットは、前記筐体部材の内面に固定される固定面と、底部が前記固定面の一部を形成するカバープレートで塞がれたねじ穴が設けられた筒状部と、を有し、
を備え、
前記筐体部材は、さらに、前記プレート部の内面に前記フレーム部が積層された積層部を有すると共に、該積層部には前記フレーム部を貫通し前記プレート部を露出させた孔部が設けられ、
前記固定面は、前記積層部を形成する前記フレーム部に対して接着剤で固定されると共に、前記カバープレートが前記孔部に充填された接着剤によって前記プレート部と固定されている
ことを特徴とする筐体部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器及び筐体部材に関する。
【背景技術】
【0002】
ノート型PCのような電子機器は、ディスプレイパネルを備える第1筐体と、キーボード等を備える第2筐体とをヒンジで連結している。この種の電子機器では、第1筐体を構成する筐体部材の内面にブラケットを固定し、このブラケットにヒンジをねじ止めする構成が採用される場合がある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ブラケットは、筐体部材の内面に例えば接着剤で固定されるが、ヒンジの支持強度を担保するため高い接着強度が求められる。ところが、上記のような電子機器は筐体の薄型化や小型化が求められているため、筐体部材にブラケットの接着スペースを十分に確保することが難しいことが多い。上記した第1筐体の場合を例とすると、ディスプレイパネルの周囲を囲むベゼルの幅を可能な限り狭くして外観品質を向上することが望まれている。ここでブラケットはディスプレイパネルの側方でベゼルの裏側に配置されるため、その接着スペースの拡大は困難である。
【0005】
本発明は、上記従来技術の課題を考慮してなされたものであり、ブラケットの固定強度を確保することができる筐体部材を備える電子機器及び筐体部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様に係る電子機器は、一対の筐体をヒンジで連結した電子機器であって、前記一対の筐体のうちの一方の筐体は、プレート部と、該プレート部の縁部に接合されたフレーム部と、を有する筐体部材と、前記筐体部材の内面に固定される固定面と、底部が前記固定面の一部を形成するカバープレートで塞がれたねじ穴が設けられ、前記ヒンジが締結されるヒンジ締結部と、を有するブラケットと、を備え、前記筐体部材は、前記プレート部の内面に前記フレーム部が積層された積層部を有すると共に、該積層部には前記フレーム部を貫通し前記プレート部を露出させた孔部が設けられ、前記固定面は、前記積層部を形成する前記フレーム部に対して接着剤で固定されると共に、前記カバープレートが前記孔部に充填された接着剤によって前記プレート部及び前記フレーム部と固定されている。
【0007】
本発明の第2態様に係る筐体部材は、ブラケットが固定された筐体部材であって、前記筐体部材は、プレート部と、該プレート部の縁部に接合されたフレーム部とを有し、前記ブラケットは、前記筐体部材の内面に固定される固定面と、底部が前記固定面の一部を形成するカバープレートで塞がれたねじ穴が設けられた筒状部と、を有し、を備え、前記筐体部材は、さらに、前記プレート部の内面に前記フレーム部が積層された積層部を有すると共に、該積層部には前記フレーム部を貫通し前記プレート部を露出させた孔部が設けられ、前記固定面は、前記積層部を形成する前記フレーム部に対して接着剤で固定されると共に、前記カバープレートが前記孔部に充填された接着剤によって前記プレート部と固定されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の上記態様によれば、ブラケットの固定強度を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る電子機器を上から見下ろした模式的な平面図である。
【
図3】
図3は、
図2に示すブラケット及びその周辺部を拡大した分解斜視図である。
【
図4】
図4は、
図3に示すブラケットを筐体部材に固定した状態での斜視図である。
【
図5】
図5は、
図2中のV-V線に沿う模式的な端面図である。
【
図6】
図6は、
図5に示す筐体部材にブラケットを固定し、さらにヒンジを締結する動作を示す分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る電子機器について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
図1は、一実施形態に係る電子機器10を上から見下ろした模式的な平面図である。
図1に示すように、本実施形態の電子機器10は、クラムシェル型のノート型PCであり、第1筐体11と第2筐体12とをヒンジ14によって相対的に回動可能に連結した構成である。本実施形態では、ノート型PCの電子機器10を例示しているが、電子機器はノート型PC以外、例えば単体のディスプレイ装置、タブレット型PC、スマートフォン、又は携帯用ゲーム機等でもよい。
【0012】
第2筐体12は、扁平な箱体であり、第1筐体11と隣接している。第2筐体12の内部には、CPU等を搭載したマザーボード、バッテリ装置、メモリ、アンテナ装置等の各種電子部品が収容されている。第2筐体12の上面には、キーボード16及びタッチパッド17が臨んでいる。
【0013】
第1筐体11は、第2筐体12よりも薄い扁平な箱体である。第1筐体11は、ディスプレイパネル18を搭載している。以下、第1筐体11及びこれに搭載された各構成要素について、ディスプレイパネル18の表示面18aを視認するユーザから見た方向を基準とし、左右方向をそれぞれX1,X2方向、上下方向をそれぞれY1,Y2方向、奥行方向をそれぞれZ1,Z2方向と呼んで説明する。X1,X2方向をまとめてX方向と呼ぶこともあり、Y1,Y2方向及びZ1,Z2方向についても同様にY方向、Z方向と呼ぶことがある。
【0014】
ディスプレイパネル18の表示面18aは、第1筐体11のZ1側表面(正面11a)を臨んでいる。第1筐体11は、Z2側表面(背面11b)を形成する筐体部材20と、正面11aの周縁部を形成するベゼル部材22とを有する。第1筐体11の上下左右の側面は、筐体部材20の四周縁部から起立した立壁23によって形成されている。ベゼル部材22は、ディスプレイパネル18の外周縁部を囲む枠状の薄いプレートである。ヒンジ14は、第1筐体11のY2側縁部(一縁部20b)に連結され、X方向に延在する棒状のヒンジカバー14dで覆われている。
【0015】
ディスプレイパネル18は、例えば液晶ディスプレイや有機ELディスプレイで構成される。ディスプレイパネル18は、例えばガラス、液晶層、及び導光板等を積層してそれぞれの層の外周縁部同士を両面テープや接着剤等で固定した構造である。ディスプレイパネル18は、筐体部材20の内面20aに対して両面粘着テープ等で固定される。
【0016】
図2は、第1筐体11の模式的な正面図である。
図3は、
図2に示すブラケット30及びその周辺部を拡大した分解斜視図である。
図4は、
図3に示すブラケット30を筐体部材20に固定した状態での斜視図である。
図5は、
図2中のV-V線に沿う模式的な端面図である。
図2は、ベゼル部材22の図示を省略し、ディスプレイパネル18は外形のみを2点鎖線で図示している。これにより
図2では、筐体部材20の内面20a(背面11bの裏面)と、この内面20aに設置された各構成要素とが図示されている。
【0017】
先ず、筐体部材20の構成を説明する。
【0018】
図2~
図5に示すように、本実施形態の筐体部材20は、中央部を含む大部分を形成する矩形状のプレート部26と、プレート部26の外周縁部に接合された枠状のフレーム部27と、を有する。
【0019】
プレート部26は、例えばプリプレグの積層板、樹脂板、又はアルミニウムやチタン等の金属板で構成される。プリプレグの積層板は、例えば炭素樹脂等の強化繊維にマトリクス樹脂(例えばエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂或いは熱可塑性樹脂)を含浸させたプリプレグを複数層積層し、仕様によってはプリプレグ層間に発泡体等の中間材を挟んだものである。本実施形態のプレート部26は、強化繊維として炭素繊維を用いた炭素繊維強化樹脂プレート(CFRPプレート)である。
【0020】
フレーム部27は、プレート部26の外周縁部に樹脂材を射出成形し、接合したものである。フレーム部27を形成する樹脂材としては、例えばポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂等であり、これらの樹脂にガラス繊維等の強化繊維を含有させた繊維強化樹脂(例えばGFRP)を用いてもよい。炭素繊維強化樹脂で形成されたプレート部26は、軽く且つ高強度であるが、機械加工や形状加工の施工性に問題がある。そこで筐体部材20は、プレート部26の周囲に樹脂材で形成されたフレーム部27を設け、このフレーム部27に形成する立壁23や後述する孔部38等の各種形状を形成している。
【0021】
一縁部20bを含む筐体部材20の外周縁部には、プレート部26の内面26aにフレーム部27を積層した積層部28が設けられている。積層部28は、プレート部26に対するフレーム部27の接合強度を高め、同時にプレート部26の内面26aの縁部にフレーム部27による突起や凹み等の形状を設けるためのものである。
【0022】
なお、本実施形態の筐体部材20は、プレート部26の中央が周囲よりも滑らかに窪んだドーム状の曲面形状20cを有する(
図5参照)。曲面形状20cは、プレート部26の一部又は全部を背面11b側に膨出させることで、内面20aを皿状に窪ませたものである。プレート部26は曲面形状20cを形成せず、全体を平面で形成してもよい。
【0023】
次に、第1筐体11に対するヒンジ14の連結構造を説明する。
【0024】
図2~
図5に示すように、ヒンジ14は、筐体部材20の一縁部20bに連結されている。筐体部材20の内面20aには、左右一対のブラケット30,30が取り付けられる。一方のブラケット30は、筐体部材20の内面20aのX1側端部とY2側端部との角部に配置され、一縁部20bに沿って延在する。他方のブラケット30は、筐体部材20の内面20aのX2側端部とY2側端部との角部に配置され、一縁部20bに沿って延在する。
【0025】
左右のブラケット30,30は、互いに左右対称構造であって基本的な構成や機能は実質的に同一であるため、以下では左右いずれのブラケット30であるかは特定せずに説明する。左右のブラケット30,30は、左右対称構造でなくてもよい。
【0026】
ブラケット30は、ステンレスやアルミニウム等の金属プレート部に削り出し加工等によって所定の形状を設けた金属部品である。ブラケット30は、積層部28を形成するフレーム部27の内面27aに対して所定の位置決めピン等で位置決めされ、接着剤31で固定される(
図5参照)。
【0027】
ブラケット30は、ベースプレート30aと、固定面30bと、ヒンジ締結部30cとを有する。
【0028】
ベースプレート30aは、ブラケット30のベースであり、一縁部20bに沿ってX方向に延在する金属プレートである。ベースプレート30aは、例えば平面視で略長方形状に形成され、X方向の幅に比べてY方向の幅が大幅に小さい。これによりブラケット30は、一縁部20bとこれに沿って延在するディスプレイパネル18の側面とのY方向のスペースを拡大させず、ベゼル部材22のY方向寸法の幅狭化に貢献する。ベースプレート30aのY1側縁部には、ディスプレイパネル18の裏側に差し入れ可能な薄肉部30dが設けられている。薄肉部30dの根本部分にはX方向に向かってY方向に凹凸した波形状30eが設けられている。波形状30eは、肉厚が変化する薄肉部30dの根本部分での応力集中を回避するためのものである。
【0029】
固定面30bは、薄肉部30dを含むベースプレート30aのZ2側表面である。固定面30bは、その全面が筐体部材20の内面20aに対して接着剤31で固定される(
図5参照)。本実施形態のブラケット30は、積層部28を形成するフレーム部27に固定される。このため、固定面30bはフレーム部27の内面27aに対して接着固定される。
【0030】
ヒンジ締結部30cは、ベースプレート30aのZ1側表面(表面30a1)からZ1方向に起立した筒状部(ボス部)であり、例えば3個が略X方向に並んでいる。各ヒンジ締結部30cにはねじ穴32が形成されている。ねじ穴32は内周面に雌ねじが形成され、その軸方向がZ方向となる。ねじ穴32にはねじ34が螺合される。これによりヒンジ締結部30cは、ヒンジ14(連結プレート14a)をねじ34で締結することができる。
【0031】
図5に示すように、ねじ穴32は、ベースプレート30aの表面30a1側、つまり固定面30bとは反対側のZ1側を向いて開口している。ねじ穴32は、固定面30b側には開口せず、その底部がカバープレート36aで塞がれている。カバープレート36aはブラケット30を形成する金属部材の一部であり、その外面が固定面30bの一部を形成する。
【0032】
ブラケット30は、カバープレート36aをその周囲の固定面30bよりもZ2方向に突出した位置に配置させる突出部36を有する。突出部36は各ヒンジ締結部30cの裏側にそれぞれ設けられている。突出部36は、ヒンジ締結部30cを固定面30b側に突出させ、ねじ穴32の深さを拡大したものである。これによりねじ穴32は、ねじ34の嵌め合い長さを十分に確保でき、ヒンジ14の締結強度を向上することができる。一方で、突出部36はヒンジ締結部30cの裏側のみに設けられ、ベースプレート30aの全体を厚肉化した構成でないため、ブラケット30の厚みの増加は一部分のみに限定されている。なお、突出部36は、カバープレート36aの外面のみならず、外周面36bも固定面30bの一部を形成する。
【0033】
例えばベースプレート30aの厚みやヒンジ締結部30cのZ1方向への突出長に対する制約が少なく、ねじ穴32の深さを十分に確保できるような構成では、突出部36は省略してもよい。この場合、カバープレート36aは周囲の固定面30bと面一又は略面一に形成されてもよい。
【0034】
図3及び
図5に示すように、積層部28は孔部38を有する。孔部38は、積層部28を形成するフレーム部27を貫通し、プレート部26の内面26aを露出させたものである。つまり孔部38は、フレーム部27に形成された板厚方向の貫通孔であり、そのZ2側開口がプレート部26で塞がれている。孔部38は、ブラケット30の突出部36が挿入されるものであり、各突出部36とオーバーラップする位置にそれぞれ設けられている。換言すれば、孔部38は一縁部20b付近での筐体部材20の板厚の増大を回避しつつ、ブラケット30の突出部36の逃げ部を形成するものである。
【0035】
従って、突出部36は、孔部38に挿入された状態で、カバープレート36aが孔部38の底面を形成するプレート部26の内面26aと接着剤31で固定される。同時に突出部36は、孔部38に挿入された状態で、その外周面36bが孔部38の内周面38aを形成するフレーム部27にも固定される。このように孔部38は単なる突出部36の逃げ部としての機能だけでなく、ブラケット30の接着面積を拡大し、筐体部材20に対する接着強度を高める機能も有している。
【0036】
図2及び
図5に示すように、ヒンジ14は、2枚の連結プレート14a,14bと、シャフト14cと、ヒンジカバー14dとを有する。
【0037】
連結プレート14aは、第1筐体11(筐体部材20)に連結される金属プレートである。連結プレート14aは、各ヒンジ締結部30cが嵌合される貫通孔14a1が設けられ、ねじ34でブラケット30に締結される。連結プレート14bは、第2筐体12に連結される金属プレートである。シャフト14cは、ヒンジ14の回転軸となる金属シャフトであり、連結プレート14a,14b間を相対的に回動可能に支持している。
図2中の参照符号14eはシャフト14cの回転に所定の回転トルクを与えるトルク発生部である。
図2では、X1側のヒンジ14はブラケット30に固定した状態を図示し、X2側のヒンジ14はブラケット30に固定する前の分解図を示している。
【0038】
図5に示すように、連結プレート14a及びシャフト14cの一部は、一縁部20bに装着されたヒンジカバー14dに収容される。シャフト14cには、トルク発生部14eからの回転トルクが付与され、これにより連結プレート14a,14b間の回動動作、つまり筐体11,12間の回動動作に所定の回転トルクが付与される。
【0039】
ここで、筐体部材20に対するブラケット30及びヒンジ14の取付動作を説明する。
図6は、
図5に示す筐体部材20にブラケット30を固定し、さらにヒンジ14を締結する動作を示す分解図である。
【0040】
ブラケット30を筐体部材20に固定する際は、
図6に示すように、ブラケット30の固定面30bが固定される積層部28の内面27aと、孔部38の底面(内面26a)及び内周面38aとに接着剤31を塗布する。接着剤31は、カバープレート36aや外周面36bを含むブラケット30の固定面30bに塗布しておいてもよい。
【0041】
続いて、ブラケット30の固定面30bを所望の位置に位置決めしつつ、積層部28の内面27aに接着剤31で固定する。この際、突出部36は孔部38に挿入し、カバープレート36a及び外周面36bを孔部38の底面(内面26a)及び内周面38aに接着剤31で固定する。これによりブラケット30の固定面30bが筐体部材20に固定される。
【0042】
次に、ブラケット30にヒンジ14を取り付ける際は、連結プレート14aの貫通孔14a1にヒンジ締結部30cを嵌合し、両者をねじ34で締結する。これによりヒンジ14がブラケット30を介して筐体部材20に連結される。
【0043】
以上のように、本実施形態の電子機器10は、プレート部26と、プレート部26の縁部に接合されたフレーム部27とを有する筐体部材20と、筐体部材20の内面20aに固定される固定面30bと、底部が固定面30bの一部を形成するカバープレート36aで塞がれたねじ穴32が設けられ、ヒンジ14が締結されるヒンジ締結部30cとを有するブラケットと、を備える。筐体部材20は、プレート部26の内面26aにフレーム部27が積層された積層部28を有する。積層部28にはフレーム部27を貫通しプレート部26を露出させた孔部38が設けられている。そして、ブラケット30の固定面30bは、積層部28を形成するフレーム部27に対して接着剤31で固定されると共に、カバープレート36aが孔部38に充填された接着剤31によってプレート部26及びフレーム部27と固定されている。
【0044】
従って、ブラケット30は、ヒンジ締結部30cに設けたねじ穴32の底部を塞ぐカバープレート36aも含めた大きな面積を有する固定面30bを筐体部材20に固定することができる。この際、固定面30bの一部を形成するカバープレート36aの表面は、孔部38に充填された接着剤31によってプレート部26及びフレーム部27と同時に固定される。このため接着剤31は少なくとも筐体部材20に対する接着面積が孔部38によって拡大された表面積分だけ増大する。
【0045】
その結果、電子機器10は、筐体部材20を厚肉化し或いはベゼル部材22を幅広に形成してブラケット30の接着スペースを拡大することなく、ブラケット30の接着強度を高めることができる。特にブラケット30は、カバープレート36aを樹脂製のフレーム部27よりも高強度な炭素繊維強化樹脂製のプレート部26と直接的に接着できる。このためブラケット30の接着強度や安定性が一層向し、ブラケット30に連結されたヒンジ14による筐体11,12間の回動動作時の安定性が向上する。これにより、仮に筐体11,12間がその開き方向の回動範囲の限界角度(例えば筐体11,12の面方向が180度方向に並んだ状態)を越えた負荷、いわゆる鯖折り負荷を受けた場合であっても、ブラケット30の剥離を抑制できる。
【0046】
当該電子機器10において、ブラケット30はカバープレート36aをその周囲の固定面30bよりもZ2側に突出した位置に配置することで、ねじ穴32の深さを拡大した突出部36を有する。そして、突出部36は孔部38に挿入された状態で、孔部38の底面を形成するプレート部26、及び、孔部38の内周面38aを形成するフレーム部27に対してそれぞれ接着剤31で固定される。これによりブラケット30は、突出部36の分、固定面30bの表面積がさらに増大し、筐体部材20に対する接着強度が一層向上する。またブラケット30は突出部36の分だけねじ穴32の深さが拡大され、ねじ34の嵌め合い長さが大きくなる。その結果、電子機器10は、ブラケット30に対するヒンジ14の締結強度も向上することができる。
【0047】
このように、筐体部材20はブラケット30の突出部36が挿入される孔部38を有するため、その厚みを増大させることなく突出部36の高さを吸収でき、第1筐体11の薄型化を阻害しない。しかも孔部38は接着剤31が充填されて突出部36と固定されるため、孔部38によって筐体部材20の強度が低下することも回避できる。
【0048】
ここで、仮に筐体部材20に孔部38を設けずに、筐体部材20の薄型化とブラケット30でのねじ34の締結強度とを確保することができる構成(比較例)を考えてみる。この比較例では、孔部38がないため、ブラケット30に突出部36を設けずにねじ穴32の深さのみを拡大する必要がある。そこで、比較例では、ねじ穴32をブラケット30に対する貫通孔とし、ねじ穴32への接着剤31の浸入を防止するため、ねじ穴32の底部を薄い樹脂製のシールテープ等で封止することが考えられる。ところが、このような構成では、シールテープの部品コスト及び貼着作業コストが増加する。さらに、シールテープは筐体部材20に対しては接着剤31で強固に固定できるが、ブラケット30に対しては当該シールテープ自体の粘着強度しか持たない。このため、シールテープはブラケット30から剥がれ易く、筐体部材20とブラケット30との間の接着強度を低下させる要因となる。換言すれば、シールテープはブラケット30と筐体部材20との間で接着剤31が設けられない空白領域を形成する。
【0049】
この点、本実施形態の電子機器10は、ねじ穴32がブラケット30のベースプレート30aと一体に形成されたカバープレート36aで覆われているため、上記した比較例のような接着強度の低下を回避できるという利点がある。
【0050】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【符号の説明】
【0051】
10 電子機器
11 第1筐体
12 第2筐体
14 ヒンジ
18 ディスプレイパネル
20 筐体部材
26 プレート部
27 フレーム部
28 積層部
30 ブラケット
30b 固定面
30c ヒンジ締結部
31 接着剤
32 ねじ穴
36 突出部
36a カバープレート
38 孔部
【要約】
【課題】ブラケットの固定強度を確保することができる筐体部材を備える電子機器及び筐体部材を提供する。
【解決手段】一方の筐体は、プレート部と、該プレート部の縁部に接合されたフレーム部とを有する筐体部材と、前記筐体部材の内面に固定される固定面と、底部が前記固定面の一部を形成するカバープレートで塞がれたねじ穴が設けられ、前記ヒンジが締結されるヒンジ締結部とを有するブラケットと、を備える。筐体部材は、前記プレート部の内面に前記フレーム部が積層された積層部を有すると共に、該積層部には前記フレーム部を貫通し前記プレート部を露出させた孔部が設けられている。固定面は、前記積層部を形成する前記フレーム部に対して接着剤で固定されると共に、前記カバープレートが前記孔部に充填された接着剤によって前記プレート部及び前記フレーム部と固定されている。
【選択図】
図5