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  • 特許-接合装置及び異種材接合方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-31
(45)【発行日】2024-08-08
(54)【発明の名称】接合装置及び異種材接合方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 11/20 20060101AFI20240801BHJP
   B23K 11/11 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
B23K11/20
B23K11/11 530
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2023109282
(22)【出願日】2023-07-03
【審査請求日】2024-05-16
(73)【特許権者】
【識別番号】390014672
【氏名又は名称】株式会社アマダ
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】阿部 正行
(72)【発明者】
【氏名】澤井 康男
(72)【発明者】
【氏名】福田 純平
【審査官】杉田 隼一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-136737(JP,A)
【文献】特開2011-140049(JP,A)
【文献】特開2006-181621(JP,A)
【文献】特開平9-102378(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 11/20
B23K 11/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の融点を有する第1の金属よりなる第1の被接合材の第1の端部と、前記第1の融点より低い第2の融点を有する第2の金属よりなる第2の被接合材の第2の端部とが重ね合わされている母材における、前記第1の端部と前記第2の端部とが重ね合わされた重ね合わせ領域の前記第1の端部の表面に接触させる、前記第1の金属の体積抵抗率よりも高い体積抵抗率を有する金属で形成された第1の電極と、
前記重ね合わせ領域から外れた領域の前記第1の被接合材の表面に接触させる、前記第1の金属の体積抵抗率と同じまたはそれより低い体積抵抗率を有する金属で形成された第2の電極と、
前記第1の電極が接触している前記重ね合わせ領域の箇所を加圧するよう、前記第1の電極を加圧する加圧装置と、
前記第1の電極から前記第2の電極へと電流が流れるように前記第1及び第2の電極間に通電する電源部と、
を備える接合装置。
【請求項2】
前記第1の電極は、モリブデン、タングステン、ステンレス、またはカーボンで形成されている請求項1に記載の接合装置。
【請求項3】
前記第2の電極は、クロム銅または純銅で形成されている請求項1または2に記載の接合装置。
【請求項4】
前記重ね合わせ領域における前記第1の被接合材と前記第2の被接合材との境界部の温度が、前記第1及び第2の金属の共晶点以上、前記第2の金属の融点以下のいずれかの温度となるように、前記電源部を制御する制御部をさらに備える請求項1または2に記載の接合装置。
【請求項5】
前記第1の電極の温度を計測する放射温度計をさらに備え、
前記制御部は、前記放射温度計より出力される温度データに基づいて前記第1の電極の温度を監視し、前記第1の電極の温度にエラーが発生したと判定すると、前記第1及び第2の電極間の通電を停止するよう前記電源部を制御し、かつ、前記重ね合わせ領域の箇所の加圧を解除するよう前記加圧装置を制御する
請求項4に記載の接合装置。
【請求項6】
第1の融点を有する第1の金属よりなる第1の被接合材の第1の端部と、前記第1の融点より低い第2の融点を有する第2の金属よりなる第2の被接合材の第2の端部とを重ね合わせ、
前記第1の金属の体積抵抗率よりも高い体積抵抗率を有する金属で形成された第1の電極を、前記第1の端部と前記第2の端部とが重ね合わされた重ね合わせ領域の前記第1の端部の表面に接触させ、かつ、前記第1の金属の体積抵抗率と同じまたはそれより低い体積抵抗率を有する金属で形成された第2の電極を、前記重ね合わせ領域から外れた領域の前記第1の被接合材の表面に接触させ、
加圧装置によって前記第1の電極を加圧することによって、前記第1の電極が接触している前記重ね合わせ領域の箇所を加圧し、
前記第1の被接合材を前記第1の電極と前記第2の電極との間の導通経路として前記第1の電極から前記第2の電極へと電流を流すことにより、前記第1の電極を発熱させ、
前記第1の電極の熱によって前記第1の端部を加熱し、前記第1の端部の熱によって前記第2の端部を加熱することにより、前記第1の端部と前記第2の端部とを接合する
異種材接合方法。
【請求項7】
前記第1の金属は銅または鉄であり、前記第2の金属はアルミニウムである請求項6に記載の異種材接合方法。
【請求項8】
前記第1の電極を、モリブデン、タングステン、ステンレス、またはカーボンで形成する請求項7に記載の異種材接合方法。
【請求項9】
前記第2の電極をクロム銅または純銅で形成する請求項7または8に記載の異種材接合方法。
【請求項10】
前記重ね合わせ領域における前記第1の被接合材と前記第2の被接合材との境界部の温度を、前記第1及び第2の金属の共晶点以上、前記第2の金属の融点以下のいずれかの温度とすることにより、前記第1の端部と前記第2の端部とを共晶溶融現象によって接合する請求項7または8に記載の異種材接合方法。
【請求項11】
放射温度計によって前記第1の電極の温度を計測し、
前記放射温度計より出力される温度データに基づいて前記第1の電極の温度を監視し、
前記第1の電極の温度にエラーが発生したと判定すると、前記第1及び第2の電極間の通電を停止し、かつ、前記重ね合わせ領域の箇所の加圧を解除する
請求項7または8に記載の異種材接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合装置及び異種材接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スポット溶接(スポット接合)の方式として、ダイレクト式、インダイレクト式、シリーズ式等の各種の方式がある。融点が異なる金属よりなる異種材を接合するとき、スポット溶接のいずれかの方式が用いられる。異種材は、一例として銅板及びアルミニウム板である。特許文献1には、シリーズ式の溶接方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-19569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
異種材が銅板及びアルミニウム板である場合を例とすると、ダイレクト式は、重ね合わされた銅板とアルミニウム板とを一対の電極で挟んで両者を接合する方式である。銅板とアルミニウム板とが重ね合わされた重ね合わせ領域において、一方の電極が銅板の表(おもて)面と接触し、他方の電極がアルミニウム板の裏面と接触する。インダイレクト式は、重ね合わせ領域における銅板の表面に一方の電極を接触させ、重ね合わせ領域から外れたアルミニウム板の表面に他方の電極を接触させて、両者を接合する方式である。ダイレクト式及びインダイレクト式では、融点の低いアルミニウム板に電極が接触しているので、アルミニウム板が溶融して電極に付着することがある。
【0005】
シリーズ式は、重ね合わせ領域における銅板の表面に一対の電極の双方を接触させて、両者を接合する方式である。シリーズ式では、電極はアルミニウム板に接触していないが、銅板及びアルミニウム板の双方に電流が流れるから、アルミニウム板が溶融することがある。重ね合わされた銅板及びアルミニウム板は、アルミニウム板を下側にしてベース上に置かれている。従って、アルミニウム板が溶融するとベースに付着することがある。電極またはベースに溶融した金属が付着することがない接合装置及び異種材接合方法の登場が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1またはそれ以上の実施形態の第1の態様は、第1の融点を有する第1の金属よりなる第1の被接合材の第1の端部と、前記第1の融点より低い第2の融点を有する第2の金属よりなる第2の被接合材の第2の端部とが重ね合わされている母材における、前記第1の端部と前記第2の端部とが重ね合わされた重ね合わせ領域の前記第1の端部の表面に接触させる、前記第1の金属の体積抵抗率よりも高い体積抵抗率を有する金属で形成された第1の電極と、前記重ね合わせ領域から外れた領域の前記第1の被接合材の表面に接触させる、前記第1の金属の体積抵抗率と同じまたはそれより低い体積抵抗率を有する金属で形成された第2の電極と、前記第1の電極が接触している前記重ね合わせ領域の箇所を加圧するよう、前記第1の電極を加圧する加圧装置と、前記第1の電極から前記第2の電極へと電流が流れるように前記第1及び第2の電極間に通電する電源部とを備える接合装置を提供する。
【0007】
1またはそれ以上の実施形態の第2の態様は、第1の融点を有する第1の金属よりなる第1の被接合材の第1の端部と、前記第1の融点より低い第2の融点を有する第2の金属よりなる第2の被接合材の第2の端部とを重ね合わせ、前記第1の金属の体積抵抗率よりも高い体積抵抗率を有する金属で形成された第1の電極を、前記第1の端部と前記第2の端部とが重ね合わされた重ね合わせ領域の前記第1の端部の表面に接触させ、かつ、前記第1の金属の体積抵抗率と同じまたはそれより低い体積抵抗率を有する金属で形成された第2の電極を、前記重ね合わせ領域から外れた領域の前記第1の被接合材の表面に接触させ、加圧装置によって前記第1の電極を加圧することによって、前記第1の電極が接触している前記重ね合わせ領域の箇所を加圧し、前記第1の被接合材を前記第1の電極と前記第2の電極との間の導通経路として前記第1の電極から前記第2の電極へと電流を流すことにより、前記第1の電極を発熱させ、前記第1の電極の熱によって前記第1の端部を加熱し、前記第1の端部の熱によって前記第2の端部を加熱することにより、前記第1の端部と前記第2の端部とを接合する異種材接合方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
1またはそれ以上の実施形態に係る接合装置及び異種材接合方法によれば、電極またはベースに溶融した金属が付着することがない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、1またはそれ以上の実施形態に係る接合装置を示すブロック図である。
図2図2は、1またはそれ以上の実施形態に係る接合装置によって異種材を接合するときの電流の流れを示す図である。
図3図3は、1またはそれ以上の実施形態に係る接合装置によって異種材を接合するときに、第1の電極と第1の被接合材との境界部において抵抗発熱している状態を示す概念図である。
図4図4は、図3に続く状態であり、1またはそれ以上の実施形態に係る接合装置によって異種材を接合するときに、第1の電極が発熱している状態を示す概念図である。
図5図5は、図4に続く状態であり、1またはそれ以上の実施形態に係る接合装置によって異種材を接合するときに、第1の電極の熱が第1の被接合材に移動した状態を示す概念図である。
図6図6は、図5に続く状態であり、1またはそれ以上の実施形態に係る接合装置によって異種材を接合するときに、第1の被接合材と第2の被接合材との境界部が発熱している状態を示す概念図である。
図7図7は、比較例であるシリーズ式の接合方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、1またはそれ以上の実施形態に係る接合装置及び異種材接合方法について、添付図面を参照して説明する。
【0011】
図1において、接合装置100は、制御部10、電源部20、第1の電極41、第2の電極42、加圧装置50、放射温度計60、測定器70を備える。ベース43上には、接合対象の母材として、異種材である第1の被接合材31及び第2の被接合材32が配置されている。第1の被接合材31は第1の融点を有する第1の金属よりなり、第2の被接合材32は第1の融点より低い第2の融点を有する第2の金属よりなる。典型的には、第1の金属は銅または鉄であり、第2の金属はアルミニウムである。第1の被接合材31及び第2の被接合材32の板厚は限定されないが、1mm以下のような薄板が好適である。
【0012】
第1の被接合材31の第1の端部31eと第2の被接合材32の第2の端部32eとが、重ね合わされている。第1の端部31e及び第2の端部32eが重ね合わされた領域を重ね合わせ領域312と称することとする。第1の電極41は、重ね合わせ領域312における第1の端部31eの表(おもて)面に接触している。第2の電極42は、重ね合わせ領域312から外れた領域において第1の被接合材31の表面に接触している。
【0013】
第1の電極41は、第1の金属の体積抵抗率よりも高い体積抵抗率を有する金属で形成されている。第2の電極42は、第1の金属の体積抵抗率と同じまたはそれより低い体積抵抗率を有する金属で形成されている。体積抵抗率とは、単位(Ω・m)で表される単位体積あたりの電気抵抗値である。第1の電極41の金属として、モリブデン、タングステン、ステンレス、またはカーボンを用いるのがよい。第2の電極42の金属として、体積抵抗率及び耐摩耗性を考慮すると、クロム銅または純銅を用いるのがよい。
【0014】
ベース43は、第2の被接合材32を重ねていない第1の被接合材31の下方に第2の被接合材32の板厚に相当する段差を設けているが、第1の被接合材31及び第2の被接合材32の板厚が薄ければ、そのような段差を設けなくてよい。ベース43の形状は限定されない。ベース43は、絶縁体または金属で形成されている。
【0015】
電源部20と第1の電極41とは導通路21で接続され、電源部20と第2の電極42とは導通路22で接続されている。電源部20は、第1の電極41を正極、第2の電極42を負極として、第1の電極41と第2の電極42との間に直流電流を流すように構成されている。電源部20は、トランスを備える電源回路で構成することができる。
【0016】
加圧装置50は、例えばエアシリンダによって第1の電極41及び第2の電極42に対して加圧する。図1及び後述する図2図7において、白抜き矢印は加圧力が付加されていることを示す。第1の電極41及び第2の電極42が加圧されると、第1の電極41及び第2の電極42が接触している第1の被接合材31の箇所が加圧される。加圧装置50は、第1の電極41及び第2の電極42の双方を加圧しているが、第1の電極41が接触している重ね合わせ領域312の箇所のみが加圧されるように、第1の電極を加圧のみを加圧してもよい。
【0017】
導通路21にはトロイダルコイルよりなる電流センサ44が取り付けられている。電流センサ44が検出する電流値は測定器70に供給される。第1の電極41及び第2の電極42と測定器70とがツイスト線またはビニル電線で接続されて、測定器70に第1の電極41と第2の電極42との間の電圧値が供給される。電流センサ44は、導通路22に取り付けられてもよい。
【0018】
放射温度計60は、第1の電極41から放射される赤外線の強度を測定することにより、第1の電極41の温度を計測する。放射温度計60は、第1の電極41の温度を示すアナログ温度データを制御部10に供給する。制御部10は、入力されたアナログ温度データをそのまま測定器70に供給する。加圧装置50には、荷重を電気信号に変換するロードセルと、変位量を測定する変位量センサが搭載されている。加圧装置50は、ロードセルによって電気信号に変換された加圧力を示すアナログ値を測定器70に供給する。加圧装置50は、変位量センサが測定した変位量を示すデジタル値を測定器70に供給する。
【0019】
制御部10は、第1の被接合材31及び第2の被接合材32の接合時に、第1の電極41から第2の電極42へと所定の電流値の電流が流れるように第1の電極41及び第2の電極42間に通電するよう電源部20を制御する。制御部10は、マイクロプロセッサで構成することができる。
【0020】
測定器70は、入力された電流値、電圧値、アナログ温度データ、加圧力を示すアナログ値、変位量を示すデジタル値を処理して、第1の被接合材31及び第2の被接合材32の接合時にこれらの情報をモニタリングするために、測定器70が備える表示部に表示することができる。測定器70は、変位量が設定値に達すると制御部10に対して接合の停止を指示する。制御部10は、接合の停止が指示されると、第1の電極41と第2の電極42との間の通電を停止するよう電源部20を制御し、加圧装置50による加圧を解除する。
【0021】
何らかの理由で、通電開始後に放射温度計60が計測する第1の電極41の温度が所定時間経過しても高くならないことがある。制御部10は、放射温度計60より出力されるアナログ温度データに基づいて第1の電極41の温度を監視することにより、放射温度計60が第1の電極41の温度を正しく計測していないと想定されるとき、計測温度にエラーが発生したと判定することが好ましい。例えば、制御部10は、通電開始後に所定の初期時間が経過した時点でアナログ温度データが示す第1の電極41の温度が最低初期温度に達していなければ、第1の電極41の温度にエラーが発生したと判定する。
【0022】
制御部10は、第1の電極41の温度にエラーが発生したと判定すると、第1の電極41と第2の電極42との間の通電を即座に停止するよう電源部20を制御する。さらに、制御部10は、第1の被接合材31及び第2の被接合材32に対する加圧を即座に解除するよう加圧装置50を制御する。これによって、第1の被接合材31及、2の被接合材32、第1の電極41、及び第2の電極42の焼損を防ぐことができる。制御部10は、第1の電極41の温度が異常に高温となったときにエラーが発生したと判定して、第1の電極41と第2の電極42との間の通電を停止し、第1の被接合材31及び第2の被接合材32に対する加圧を解除するよう、電源部20及び加圧装置50を制御してもよい。
【0023】
接合装置100において、測定器70を設けることは必須ではないが、第1の被接合材31及び第2の被接合材32の接合時に各種の情報をモニタリングすることができるから、測定器70を設けることが好ましい。
【0024】
図2図6を用いて、以上説明した接合装置100を用いて実行される異種材接合方法を詳細に説明する。図2において、第2の電極42は、重ね合わせ領域312から外れた領域において第1の被接合材31の表面に接触しているから、第1の被接合材31のみが第1の電極41と第2の電極42との間の導通経路となる。電源部20が第1の電極41と第2の電極42との間に電流を流すと、矢印線で示すように、第1の電極41から第2の電極42へと第1の被接合材31を介して電流が流れる。
【0025】
すると、図3に示すように、第1の電極41と第1の被接合材31との境界部において抵抗発熱する。境界部のハッチングを付した横長の楕円は、抵抗発熱している発熱領域h1を概念的に示している。図3以降の図面においては、第1の電極41から第2の電極42へと流れる電流を示す矢印線を省略しているが、図2と同様に第1の電極41から第2の電極42へと第1の被接合材31を介して電流が流れている。
【0026】
第1の電極41と第1の被接合材31との境界部が継続的に発熱すると、図4に示すように、第1の電極41が発熱して、第1の電極41は発熱体h2となる。すると、図5に示すように、発熱体h2の熱は第1の被接合材31へと伝達して、重ね合わせ領域312における第1の被接合材31に発熱領域h3が発生する。このとき、第1の被接合材31の第1の融点は、銅であれば約1000度、鉄であれば約1500度と高いので、第1の被接合材31は溶融しない。
【0027】
図6に示すように、発熱領域h3の熱は第2の被接合材32へと伝達するから、第1の被接合材31と第2の被接合材32との境界部に発熱領域h4が発生する。第2の被接合材32であるアルミニウムの融点は660度と低いので、発熱領域h4の温度がアルミニウムの融点付近となると、第1の端部31eと第2の端部32eとが拡散接合される。なお、第1の端部31eと第2の端部32eとは、スポット状の1か所で互いが接合される。
【0028】
制御部10は、発熱領域h4(第1の被接合材31と第2の被接合材32との境界部)が、550度以上660度以下のいずれかの温度となるように電流を流すよう、電源部20を制御するのがよい。銅とアルミニウムにおける共晶点が550度であるから、550度を下限とするのがよい。アルミニウムの融点は660度であるから、660度を上限として、発熱領域h4の温度は660度を超えないようにするのがよい。発熱領域h4の温度が銅の融点及びアルミニウムの融点より低い660度未満であっても、第1の端部31eと第2の端部32eとは、共晶溶融現象によって互いに接合される。
【0029】
制御部10は、発熱領域h4の直接的な温度を取得することはできないが、放射温度計60が計測する第1の電極41の温度、または第1の電極41と第2の電極42との間の通電時間等に基づいて、発熱領域h4の温度を推定することができる。制御部10は、発熱領域h4の推定温度を、550度以上660度以下のいずれかの温度とするよう電源部20を制御すればよい。
【0030】
このように、接合装置100は、第1の被接合材31のみを導通経路として第1の電極41から第2の電極42へと電流を流すことにより、第1の電極41を発熱させる。接合装置100は、第1の電極41の発熱によって第1の端部31eを加熱する。接合装置100は、第1の端部31eの熱によって第2の端部32eを加熱することにより、第1の端部31eと第2の端部32eとを拡散接合する。
【0031】
ここで、図7に示す一般的なシリーズ式の接合方法を用いて第1の被接合材31と第2の被接合材32とを接合する場合を比較例として、1またはそれ以上の実施形態に係る異種材接合方法の特徴と、その特徴が奏する作用効果を説明する。比較例で用いられる第1の電極410及び第2の電極420の金属は、例えば、クロム銅、モリブデン、タングステンから選択される。第1の電極410と第2の電極420とで形成する金属を異ならせることはない。第1の電極410及び第2の電極420を形成する金属は双方で、クロム銅、モリブデン、またはタングステンである。
【0032】
比較例においては、第1の被接合材31と第2の被接合材32とが重ね合わされる。第1の電極410及び第2の電極420の双方が、第1の被接合材31と第2の被接合材32とが重ね合わされた重ね合わせ領域における第1の被接合材31の表面に接触している。
【0033】
従って、第1の被接合材31及び第2の被接合材32の双方が第1の電極410と第2の電極420との間の導通経路となる。第1の電極410から第2の電極420へと電流を流すと、矢印線で示すように、第1の被接合材31及び第2の被接合材32を介して電流が流れる。よって、融点が低い第2の被接合材32が溶融する。すると、図7では図示を省略している第2の被接合材32の下方に位置するベースに第2の被接合材32が溶融した金属が付着することがある。なお、第1の被接合材31及び第2の被接合材32とは、スポット状の2か所で互いが接合される。
【0034】
これに対して1またはそれ以上の実施形態に係る異種材接合方法によれば、第1の被接合材31のみを導通経路として第1の電極41から第2の電極42へと電流が流れるから、第2の被接合材32の全体が溶融することはない。従って、ベース43に第2の被接合材32が溶融した金属が付着することはない。第1の電極41及び第2の電極42は第1の被接合材31のみに接触しているから、第2の被接合材32が溶融した金属が第1の電極41または第2の電極42に付着することも勿論ない。
【0035】
本発明は以上説明した1またはそれ以上の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。
【符号の説明】
【0036】
10 制御部
20 電源部
21,22 導通路
31 第1の被接合材
31e 第1の端部
32 第2の被接合材
32e 第2の端部
41 第1の電極
42 第2の電極
43 ベース
44 電流センサ
50 加圧装置
60 放射温度計
70 測定器
312 重ね合わせ領域
【要約】
【課題】電極またはベースに溶融した金属が付着することがない接合装置を提供する。
【解決手段】第1の融点を有する第1の金属よりなる第1の被接合材31の第1の端部31eと、第1の融点より低い第2の融点を有する第2の金属よりなる第2の被接合材32の第2の端部32eとが重ね合わされて、重ね合わせ領域312とされている。第1の電極41は、第1の金属の体積抵抗率よりも高い体積抵抗率を有する金属で形成され、重ね合わせ領域312の第1の端部31eの表面に接触している。第2の電極42は、第1の金属の体積抵抗率と同じまたはそれより低い体積抵抗率を有する金属で形成され、重ね合わせ領域312から外れた領域の第1の被接合材31の表面に接触している。加圧装置50は第1の電極41を加圧する。電源部20は第1の電極41及び第2の電極42間に通電する。
【選択図】図1
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図7