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特許7531047タングステン膜に対する窒化チタン膜のエッチング選択比を調節するためのエッチング液組成物、及びこれを用いたエッチング方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-31
(45)【発行日】2024-08-08
(54)【発明の名称】タングステン膜に対する窒化チタン膜のエッチング選択比を調節するためのエッチング液組成物、及びこれを用いたエッチング方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/308 20060101AFI20240801BHJP
   C23F 1/26 20060101ALN20240801BHJP
【FI】
H01L21/308 F
C23F1/26
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023501828
(86)(22)【出願日】2021-07-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-07
(86)【国際出願番号】 KR2021008475
(87)【国際公開番号】W WO2022030765
(87)【国際公開日】2022-02-10
【審査請求日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】10-2020-0097214
(32)【優先日】2020-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】516210942
【氏名又は名称】ヨンチャン ケミカル カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】YOUNG CHANG CHEMICAL CO.,LTD
(74)【代理人】
【識別番号】100083138
【弁理士】
【氏名又は名称】相田 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100189625
【弁理士】
【氏名又は名称】鄭 元基
(74)【代理人】
【識別番号】100196139
【弁理士】
【氏名又は名称】相田 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100199004
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 洋
(72)【発明者】
【氏名】イ スンフン
(72)【発明者】
【氏名】イ スンヒョン
(72)【発明者】
【氏名】キム スンハン
(72)【発明者】
【氏名】ジン スンオ
【審査官】小▲高▼ 孔頌
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-163044(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0050278(KR,A)
【文献】国際公開第2019/235275(WO,A1)
【文献】特開2018-006715(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0257880(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0301026(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/308
C23F 1/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)硫酸、リン酸及びこれらの混合物よりなる群から選択される無機酸をエッチング液組成物の総重量に対して81~95重量%;
b)過酸化水素、硝酸、tert-ブチルヒドロペルオキシド及び2-ブタンペルオキシドよりなる群から選択される酸化剤をエッチング液組成物の総重量に対して0.1~3重量%;
c)テトラメチルアンモニウムメチルスルフェート、トリブチルメチルアンモニウムメチルスルフェート、ドデシルトリメチルアンモニウムメチルスルフェート、ドコシルトリメチルアンモニウムメチルスルフェート、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムメチルスルフェート、トリイソノニルメチルアンモニウムメチルスルフェート、ヘプタデシルトリメチルアンモニウムメチルスルフェート、トリメチルオクタデシルアンモニウムメチルスルフェート、ジメチルジオクタデシルアンモニウムメチルスルフェート、ブチルジイソオクチルメチルアンモニウムメチルスルフェート、トリス-2-ヒドロキシエチルメチルアンモニウムメチルスルフェート、テトラメチルアンモニウムスルフェート、テトラエチルアンモニウムスルフェート、テトラメチルアンモニウムヒドロゲンスルフェート、ジエチルアンモニウムスルフェート、エチレンジアンモニウムスルフェート、テトラエチルアンモニウムヒドロゲンスルフェート、トリエチルアンモニウムスルフェート、テトラブチルアンモニウムスルフェート、テトラブチルアンモニウムヒドロゲンスルフェート、アンモニウムメチルスルフェート、トリメチルアンモニウムメチルスルフェート、アンモニウムペンチルスルフェート、アンモニウムイコシルスルフェート、アンモニウムドコシルスルフェート、アンモニウムイソデシルスルフェート、アンモニウム2-エチルヘキシルスルフェート、アンモニウムオクチルスルフェート、アンモニウムデシルスルフェート、ジエチルアンモニウムオクタデシルスルフェート、ジエチルアンモニウムヘキサデシルスルフェート、エチルトリオクタデシルアンモニウムエチルスルフェート、ドデシルエチルジメチルアンモニウムエチルスルフェート、シクロヘキシルジエチルアンモニウムデシルスルフェート、2-ヒドロキシエチルアンモニウム2-エチルヘキシルスルフェート、エチルジメチルオクタデシルアンモニウムエチルスルフェート、2-ヒドロキシエチルアンモニウムドデシルスルフェート、エチルメチルジオクタデシルアンモニウムエチルスルフェート、またはこれらの混合物よりなる群から選択される添加剤をエッチング液組成物の総重量に対して0.002~0.05重量%;、及び
d)残量の水;からなるエッチング液組成物であって、
e)窒化チタン膜のエッチング速度が43~94オングストローム/minであり、タングステン膜に対する窒化チタン膜のエッチング選択比が3.8~15であることを特徴とする、エッチング液組成物
【請求項2】
請求項1に記載のエッチング液組成物を用いて化チタン膜及びタングステン膜の積層体をエッチングする段階を含む、化チタン膜及びタングステン膜の積層体をエッチングする方法。
【請求項3】
前記化チタン膜及びタングステン膜の積層体をエッチングする段階は、50℃~90℃の温度で行われることを特徴とする、請求項に記載の化チタン膜及びタングステン膜の積層体をエッチングする方法。
【請求項4】
前記化チタン膜及びタングステン膜の積層体をエッチングする段階は、前記エッチング液組成物のうち、無機酸と残りの組成成分がエッチング設備内で混合されて使用されることを特徴とする、請求項に記載の化チタン膜及びタングステン膜の積層体をエッチングする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子を製造する工程において金属膜に対する窒化金属膜のエッチング選択比を調節することが可能な組成物、及びその組成物を用いるエッチング方法に関し、特に、タングステン膜に対する窒化チタン膜のエッチング選択比を調節することが可能なエッチング液組成物、及びその組成物を用いるエッチング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体を製造する工程において、タングステン膜は、半導体デバイス及び液晶ディスプレイの薄膜トランジスタのゲート電極、配線、バリア層や、コンタクトホール又はビアホールの埋め込みなどに用いられるものである。
そして、窒化チタン膜は、プリント配線基板、半導体デバイス及び液晶ディスプレイなどに貴金属やアルミニウム、銅配線の下地層及びキャップ層として用いられるものであり、バリアメタル又はゲートメタルとして用いられる場合もある。
半導体を製造する工程において、前記タングステン膜は伝導性金属として広く用いられているが、タングステン膜はシリコン膜、酸化シリコン膜などの他の膜との接着性が良くないため、主に前記窒化チタン膜をタングステン膜の保護膜として用いるのである。
半導体を製造する工程のうち、これらの膜を除去する工程として、乾式エッチング工程、湿式エッチング工程が併用されることが多く、タングステン膜の場合には、CMP工程も使用されることがある。このとき、特定の部分の窒化チタン膜とタングステン膜を同時に同じ速度でエッチングするか、或いは2つの膜を互いに異なる速度でエッチングすることが可能なエッチング選択比を有する工程は、乾式エッチング工程では難しいため、湿式エッチング工程が必要であり、このような理由から、これらの湿式エッチング工程に適したエッチング液組成物が求められる。
【0003】
韓国公開特許公報第10-2015-050278号は、窒化チタン膜及びタングステン膜の積層体用エッチング液組成物を開示しているものであって、窒化チタン膜とタングステン膜のエッチング速度が同一であってタングステン膜に対する窒化チタン膜のエッチング選択比が1であり、高温工程としてのバッチ工程で長時間使用できるようにする技術を含んでいるものである。
しかし、最近の半導体工程中の湿式エッチング工程は、工程中のパーティクルの再汚染を防止する側面から有利なシングルタイプの工程に変更されている状況であり、バッチタイプの工程は、数十分の工程時間が要求されるのに対し、シングルタイプの工程は、数分以内に工程が完了するという利点があるため、シングルタイプでエッチング工程を行う場合が多くなっている。
このようなシングルタイプのエッチング工程で行われる場合、タングステン膜のエッチング速度に比べて窒化チタン膜のエッチング速度が非常に速くなるエッチング液組成物、すなわち、タングステン膜に対する窒化チタン膜のエッチング選択比が高選択比となるエッチング液組成物の開発が求められている。
一方、メモリの種類によっては、NANDフレッシュメモリの場合は、タングステン膜と窒化チタン膜のエッチング速度が等しいエッチング液、すなわち、タングステン膜に対する窒化チタン膜のエッチング選択比が1であるエッチング液が要求されており、これに対し、DRAMの場合は、窒化チタンのエッチング速度がタングステン膜よりも速いエッチング液、すなわち、タングステン膜に対する窒化チタン膜のエッチング選択比が大きいため高選択比となるエッチング液が要求されている状況であるので、エッチング選択比が1~高選択比に調節できるエッチング液組成物の開発が至急求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、かかる問題点を解決するためのもので、その目的は、シングルタイプでタングステン膜と窒化チタン膜に対する様々な湿式エッチング工程を行うにあたり、窒化チタン膜のエッチング速度を著しく速く維持しながらも、これと同時にタングステン膜に対する窒化チタン膜のエッチング選択比を1~高選択比の範囲で調節して使用することができるエッチング液組成物を提供することにある。
本発明の他の目的は、かかるエッチング液組成物を用いたエッチング方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るエッチング用組成物は、無機酸、酸化剤、化学式1で表される添加剤、及び残量の水を含むエッチング液組成物であって、窒化チタン膜のエッチング速度を著しく速く維持するとともに、タングステン膜に対する窒化チタン膜のエッチング選択比を1~高選択比の範囲で調節することが可能なエッチング液組成物である。
本発明のエッチング液組成物中に含まれる無機酸は、エッチング促進剤であって、硫酸、リン酸及びこれらの混合物よりなる群から選択されるいずれかであってもよい。
ここで、前記無機酸の含有量は、エッチング液組成物の総重量に対して81~95重量%であってもよい。
また、本発明のエッチング液組成物中に含まれる酸化剤は、過酸化水素、硝酸、tert-ブチルヒドロペルオキシド及び2-ブタンペルオキシドよりなる群から選択されるいずれかであってもよい。
このとき、前記酸化剤の含有量は、エッチング液組成物の総重量に対して0.1~3重量%であってもよい。
また、本発明のエッチング液組成物中に含まれる添加剤は、下記化学式1で表されるものであって、カチオン界面活性剤を含むアルキルアンモニウム塩又はアルキルアルコールアンモニウム塩を含んでもよく、アニオン界面活性剤を含むアルキルスルフェート塩を含んでもよい。
ここで、前記化学式1で表される添加剤の含有量は、エッチング液組成物の総重量に対して20~500重量ppmで含んでもよい。
【0006】
【化1】
前記化学式1中、R1、R2、R3及びR4は、互いに独立して、水素原子、炭素数1~18のアルキル基、炭素数1~20のベンジルアルキル基又は炭素数1~6のアルキルアルコール基であってもよく、R5は、1/2酸素原子、ヒドロキシ基、炭素数1~16のアルキル基である。nは1~2である。
前記エッチング液組成物は、工程で要求される窒化チタン膜のエッチング速度を著しく速く維持しながらも、タングステン膜に対する窒化チタン膜のエッチング選択比を調節するために組成物の組成成分及び組成比率を調節することができるものであり、特に、化学式1で表される添加剤のカチオンとアニオンの構造を調節することができるものであって、これにより、タングステン膜に対する窒化チタン膜のエッチング選択比を1~15(窒化チタン膜のエッチング量:タングステン膜のエッチング量=1:1~15:1)に調節することができる。
エッチング液組成物のエッチング工程の温度は50℃~90℃であってもよく、エッチング工程の安定性を増大させるために無機酸と残りの組成成分とを設備内で混合して使用することができ、設備外で混合する場合には、エッチング工程の直前に混合して使用することができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るエッチング用組成物は、窒化チタン膜とタングステン膜に対する湿式エッチング工程を行うにあたり、窒化チタン膜のエッチング速度を著しく速く維持しながらも、窒化チタン膜のエッチング速度がタングステン膜のエッチング速度と同一であるか、或いは窒化チタン膜のエッチング速度がタングステン膜のエッチング速度よりも15倍まで速く調節することができる顕著な効果を示すものであり、ポリシリコン又は酸化シリコン膜などの下部膜質に対する選択比も優れるため、半導体製造工程で広範囲に適用可能であるだけでなく、酸化膜表面のパーティクル吸着や窒化膜の除去不良などの問題点を改善することができるという効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明をより詳細に説明する。
まず、本発明の一実施形態に係るエッチング用組成物は、無機酸、酸化剤、化学式1で表される添加剤、及び残量の水を含むものであって、窒化チタン膜のエッチング速度を著しく速く維持しながらも、これと同時にタングステン膜に対する窒化チタン膜のエッチング選択比を1~15に調節することが可能なエッチング液組成物である。
このとき、無機酸は、エッチング促進剤であって、硫酸、リン酸及びこれらの混合物よりなる群から選択されるいずれかであり、無機酸の含有量は、エッチング液組成物の総重量に対して81~95重量%である。
ここで、無機酸の含有量が81重量%未満である場合、タングステン膜のエッチング速度があまり速くなるという問題点があり、無機酸の含有量が95重量%を超える場合、窒化チタン膜とタングステン膜のエッチング速度の両方があまり遅くなるという問題点があるので(窒化チタン膜のエッチング速度があまり遅くなるのが問題点である)、無機酸の含有量は、エッチング液組成物の総重量に対して81~95重量%であることが好ましい。
また、酸化剤は、過酸化水素、硝酸、tert-ブチルヒドロペルオキシド及び2-ブタンペルオキシドよりなる群から選択されるいずれかであり、酸化剤の含有量は、エッチング液組成物の総重量に対して0.1~3重量%である。
このとき、酸化剤の含有量が0.1重量%未満である場合、窒化チタン膜とタングステン膜のエッチング速度があまり遅くなるという問題点があり(窒化チタン膜のエッチング速度があまり遅くなるのが問題点である)、酸化剤の含有量が3重量%を超える場合、タングステン膜のエッチング速度があまり速くなるという問題点があるので、酸化剤の含有量は、エッチング液組成物の総重量に対して0.1~3重量%であることが好ましい。
また、添加剤は、下記化学式1で表されるが、カチオン界面活性剤を含むアルキルアンモニウム塩又はアルキルアルコールアンモニウム塩を含むことができ、アニオン界面活性剤を含むアルキルスルフェート塩を含むものである。
【0009】
【化1】

ここで、前記添加剤は、テトラメチルアンモニウムメチルスルフェート、トリブチルメチルアンモニウムメチルスルフェート、ドデシルトリメチルアンモニウムメチルスルフェート、ドコシルトリメチルアンモニウムメチルスルフェート、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムメチルスルフェート、トリイソノニルメチルアンモニウムメチルスルフェート、ヘプタデシルトリメチルアンモニウムメチルスルフェート、トリメチルオクタデシルアンモニウムメチルスルフェート、ジメチルジオクタデシルアンモニウムメチルスルフェート、ブチルジイソオクチルメチルアンモニウムメチルスルフェート、トリス-2-ヒドロキシエチルメチルアンモニウムメチルスルフェート、アンモニウムスルフェート、テトラメチルアンモニウムスルフェート、テトラエチルアンモニウムスルフェート、テトラメチルアンモニウムヒドロゲンスルフェート、ジエチルアンモニウムスルフェート、エチレンジアンモニウムスルフェート、テトラエチルアンモニウムヒドロゲンスルフェート、トリエチルアンモニウムスルフェート、テトラブチルアンモニウムスルフェート、テトラブチルアンモニウムヒドロゲンスルフェート、アンモニウムメチルスルフェート、トリメチルアンモニウムメチルスルフェート、アンモニウムペンチルスルフェート、アンモニウムラウリルスルフェート、アンモニウムイコシルスルフェート、アンモニウムドコシルスルフェート、アンモニウムイソデシルスルフェート、アンモニウム2-エチルヘキシルスルフェート、アンモニウムオクチルスルフェート、アンモニウムデシルスルフェート、ジエチルアンモニウムオクチルスルフェート、ジエチルアンモニウムオクタデシルスルフェート、ジエチルアンモニウムヘキサデシルスルフェート、エチルトリオクタデシルアンモニウムエチルスルフェート、ドデシルエチルジメチルアンモニウムエチルスルフェート、シクロヘキシルジエチルアンモニウムデシルスルフェート、2-ヒドロキシエチルアンモニウム2-エチルヘキシルスルフェート、エチルジメチルオクタデシルアンモニウムエチルスルフェート、2-ヒドロキシエチルアンモニウムドデシルスルフェート、エチルメチルジオクタデシルアンモニウムエチルスルフェート、ジエチルアンモニウムオクチルスルフェート及びこれらの混合物よりなる群から選択されるいずれかであり得る。ここで、化学式1で表される添加剤の含有量は、エッチング組成物の総重量に対して20~500重量ppm(0.002~0.05重量%)である。
【0010】
添加剤の含有量が20重量ppm(0.002重量%)未満である場合、タングステン膜のエッチング速度が増加してタングステン膜のエッチング速度が窒化チタン膜のエッチング速度よりも速くなり、タングステン膜に対する窒化チタン膜のエッチング選択比が1未満となるという問題点が発生し、添加剤の含有量が500重量ppm(0.05重量%)以上である場合、タングステン膜と窒化チタン膜の両方のエッチング速度が遅くなるという問題点が発生するので(窒化チタン膜のエッチング速度があまり遅くなるのが問題点である)、添加剤の含有量は、エッチング液組成物の総重量に対して20~500重量ppm(0.002~0.05重量%)であることが好ましい。
前記エッチング液組成物は、エッチング工程で要求されるタングステン膜に対する窒化チタン膜のエッチング選択比を調節するために、化学式1で表される添加剤のカチオンとアニオンの構造を調節することができ、これによりタングステン膜に対する窒化チタン膜のエッチング選択比を1~15(窒化チタン膜のエッチング量:タングステン膜のエッチング量=1:1~15:1)に調節することができる。全体的にカチオンの大きさが大きい場合に、タングステン膜に対する窒化チタン膜のエッチング選択比が1以上であって大きく上昇し、アニオンの大きさが大きい場合に、タングステン膜に対する窒化チタン膜のエッチング選択比が1と同様になる。
【0011】
結局、本発明によるエッチング液組成物は、無機酸81~95重量%、酸化剤0.1~3重量%、化学式1で表される添加剤0.002~0.05重量%、及び残量の水を含むことが好ましい。
また、エッチング液組成物のエッチング工程が行われる温度は、50℃~90℃であることが好ましい。
また、エッチング液組成物は、エッチング工程が50℃~90℃で行われるので、エッチング工程の安定性を増大させるために無機酸と残りの組成成分とを設備内で混合して使用することが好ましく、設備外で混合する場合には、少なくともエッチング工程の直前に混合することが好ましい。
また、本発明の窒化チタン膜及びタングステン膜を、エッチング液組成物を用いて同時にエッチングする工程は、当技術分野における公知の方法によって行われることができるので、バッチ工程によって浸漬させる方法、又はシングル装備によって枚葉式で1枚ずつ工程を行いながらエッチング溶液を噴射する方法などを例として挙げることができる。エッチング工程時のエッチング液の温度は、他の工程及びその他の要因を考慮して必要に応じて変更することができるが、50℃~90℃であることが好ましい。
また、本発明のエッチング液組成物を用いる窒化チタン膜及びタングステン膜のエッチング方法は、電子素子の製造方法に適用できる。前記膜の基板は、半導体ウェーハであってもよいが、本発明は、これに限定されるものではなく、本発明の技術分野における通常用いられる基板はいずれも使用可能である。前記基板に蒸着される窒化チタン膜とタングステン膜は、通常の形成方法によって形成できる。
【0012】
以下、本発明を実施例、比較例及び実験例を用いてさらに詳細に説明する。しかし、下記の実施例、比較例、実験例及び比較実験例は、本発明を例示するためのものであって、本発明は、下記実施例、比較例、実験例及び比較実験例によって限定されず、様々に修正及び変更可能である。
【実施例
【0013】
実施例1~25及び比較例1~12
マグネットバーが設置されているそれぞれの実験用ビーカーに表1に記載の組成比で実施例及び比較例のエッチング液組成物を仕込み、ビーカーの上部を密閉させた後、常温で30分間400rpmの速度で撹拌して組成物を製造した

【表1】

A-1:硫酸
A-2:リン酸
B-1:過酸化水素
B-2:硝酸
B-3:tert-ブチルヒドロペルオキシド
B-4:2-ブタンペルオキシド
C-1:テトラメチルアンモニウムスルフェート
C-2:エチレンジアミンアンモニウムスルフェート
C-3:アンモニウムメチルスルフェート
C-4:ドデシルトリメチルアンモニウムスルフェート
C-5:アンモニウムラウリルスルフェート
C-6:ジエチルアンモニウムオクチルスルフェート
C-7:アンモニウムスルフェート
C-8:2-ヒドロキシエチルアンモニウムドデシルスルフェート
C-9:アンモニウムホスフェート
C-10:アンモニウムアセテート
D-1:脱イオン水
【0014】
[実験例及び比較実験例]
窒化チタン膜及びタングステン膜のエッチング速度の測定
前記実施例1~25及び比較例1~12で製造されたエッチング液の性能を測定し、その結果を実験例1~25及び比較実験例1~12にして表2に記載した。
まず、測定のためにCVD法を用いて半導体製造過程と同様に蒸着することで、窒化チタン膜及びタングステン膜ウェーハをそれぞれ用意した。
エッチングを開始する前に、走査型電子顕微鏡を用いてエッチング前の厚さを測定した。その後、500rpmの速度で撹拌される石英材質の撹拌槽で80℃の温度に維持されているエッチング液に窒化チタン膜及びタングステン膜ウェーハを浸漬してエッチング工程を30秒間行った。
エッチング完了後に超純水で洗浄した後、乾燥装置を用いて残りのエッチング液及び水分を完全に乾燥させた。
乾燥したウェーハのクーポンは、走査型電子顕微鏡を用いてエッチング後の薄膜厚を測定した。これにより、エッチング前とエッチング後の薄膜厚の差を計算して、与えられた温度で窒化チタン膜及びタングステン膜の30秒間のエッチング量を測定した。
【表2】
【0015】
前記表2に示すように、実験例1~25の場合は、使用された各エッチング液で温度別に30秒間エッチングしたエッチング量を見ると、80℃で窒化チタン膜のエッチング量がタングステンのエッチング量より多いものであって、タングステン膜に対する窒化チタン膜のエッチング選択比が1~15(窒化チタン膜のエッチング量:タングステン膜のエッチング量=1:1~15:1)を有する顕著な効果を示すだけでなく、窒化チタン膜のエッチング量も多いものであって、エッチング速度も速いという顕著な効果を持つ。
これに対し、比較実験例1、2、3、4、6、8、9、10、12の場合は、80℃で窒化チタン膜のエッチング量がタングステンのエッチング量よりも少ないものであって、エッチング選択比が1より小さいものであるので、本発明のエッチング液として採用できない。
また、比較実験例5、7、11の場合は、エッチング選択比が1よりは大きいが、両膜質のエッチング量がいずれも非常に少なくなった結果、両膜質のエッチング速度が著しく低くなり、結局、TiNのエッチング速度が著しく低くなって工程時間が長くなるものなので、本発明のエッチング液として採用できない。
すなわち、比較実験例5では選択比が1.8:1となり、比較実験例7では選択比が1:1となり、比較実験例11では選択比が2:1となるので、エッチング選択比自体のみでは本発明のエッチング液として採用できるものであるが、このような比較実験例5、7、11の場合は、TiNのエッチング量が18、2、16となって著しく少ないものであり、それによりTiNのエッチング速度が著しく低いものであって、それにより工程時間が長くなる結果をもたらすので、本発明のエッチング液として採用できない。
上述した実施例1~25及び比較例1~12とそれによる実験例及び比較実験例の結果を総合的に評価すると、実施例1~25によるエッチング液組成物は、第一に、タングステン膜に対する窒化チタン膜のエッチング量が多いためタングステン膜に対する窒化チタン膜のエッチング速度が速いものであって、タングステン膜に対する窒化チタン膜のエッチング選択比を1~15(窒化チタン膜のエッチング量:タングステン膜のエッチング量=1:1~15:1)に調節することができるだけでなく、第二に、これと同時に窒化チタン膜及びタングステン膜の両方のエッチング量が著しく多いものであって、いずれも速いエッチング速度を有するものであり、このような結果、窒化チタン膜のエッチング速度が著しく速い。
そして、50~90℃の温度範囲でも実験を行った結果、80℃での傾向と同一の傾向を有することを確認することができた。
【0016】
結局、本発明の実施例に係るエッチング液組成物は、無機酸81~95重量%、酸化剤0.1~3重量%、化学式1で表される添加剤0.002~0.05重量%、及び残量の水を含むものであって、半導体製造工程の様々な湿式エッチング工程によって窒化チタン膜のエッチング速度を著しく速く維持しながらも、これと同時にタングステン膜に対する窒化チタン膜のエッチング選択比を1~15(窒化チタン膜のエッチング量:タングステン膜のエッチング量=1:1~15:1)に調節して使用することができる顕著な効果を示すことが確認された。
以上、本発明の内容の特定の部分を詳細に説明したが、当業分野における通常の知識を有する者にとっては、このような具体的技術は好適な実施形態に過ぎず、これにより本発明の範囲が限定されないことは明らかであろう。よって、本発明の実質的な範囲は、添付の請求の範囲とそれらの等価物によって定義されるというべきである。