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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-31
(45)【発行日】2024-08-08
(54)【発明の名称】ファイバレーザ
(51)【国際特許分類】
   H01S 3/067 20060101AFI20240801BHJP
   H01S 3/10 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
H01S3/067
H01S3/10 D
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023502079
(86)(22)【出願日】2021-11-30
(86)【国際出願番号】 JP2021043717
(87)【国際公開番号】W WO2022180969
(87)【国際公開日】2022-09-01
【審査請求日】2023-01-27
(31)【優先権主張番号】P 2021026988
(32)【優先日】2021-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】西村 亮一
(72)【発明者】
【氏名】市井 健太郎
【審査官】佐藤 美紗子
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-032910(JP,A)
【文献】特開2014-179404(JP,A)
【文献】特開2020-167294(JP,A)
【文献】国際公開第2021/045074(WO,A1)
【文献】特開2012-238781(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111934179(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 3/00-4/00
G02B 6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアにYbが添加されたゲインファイバと、前記ゲインファイバに入力可能な前方励起光であって、976nm帯に属する前方励起光を生成可能な前方励起光源群と、を備えており、
前記前方励起光源群は、中心波長が異なり、最小の中心波長と最大の中心波長の差が1nm以上である、複数の励起光源を含み、
前記ゲインファイバの区間であって、前記前方励起光が入射する端面を含む長さ1mの区間における前記前方励起光の吸収量として、∫P(λ)A(λ)dλに従って算出される前記前方励起光の吸収量が253W以上1100W以下であり、
前記前方励起光の総パワーが1509W以上である、
ことを特徴とするファイバレーザ。
ここで、P(λ)[W]は、前記前方励起光のパワースペクトルであり、A(λ)[%/m]は、前記ゲインファイバのコアに添加されたYbの吸収率スペクトルである。
【請求項2】
コアにYbが添加されたゲインファイバと、前記ゲインファイバに入力可能な前方励起光であって、976nm帯に属する前方励起光を生成可能な前方励起光源群と、を備えており、
前記ゲインファイバの区間であって、前記前方励起光が入射する端面を含む長さ1mの区間における前記前方励起光の吸収量として、∫P(λ)A(λ)dλに従って算出される前記前方励起光の吸収量が253W以上1100W以下であり、且つ、
前記前方励起光源群からの前記前方励起光の吸収量の値として、∫P(λ)A1(λ)dλに従って算出される当該前方励起光の吸収量の算出値もしくは当該前方励起光の吸収量の実測値/A2の値が206W以上358W以下であり、
波長978nmにおける前記ゲインファイバの単位長さあたりの励起光吸収量は、2.58dB/m以上3.07dB/m以下である、
ことを特徴とするファイバレーザ。
ここで、A1(λ)は、波長978nmにおいて規格化されたYbの標準的な吸収率スペクトルである。A2[%/m]は、前記ゲインファイバのコアに添加されたYbの波長978nmにおける吸収率である。
【請求項3】
前記吸収率スペクトルA(λ)は、A(λ)=A1(λ)×A2に従って算出されるものである、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のファイバレーザ。
ここで、A1(λ)は、波長978nmにおいて規格化されたYbの標準的な吸収率スペクトルであり、A2[%/m]は、前記ゲインファイバのコアに添加されたYbの波長978nmにおける吸収率である。
【請求項4】
コアにYbが添加されたゲインファイバと、前記ゲインファイバに入力可能な前方励起光であって、976nm帯に属する前方励起光を生成可能な前方励起光源群と、を備えており、
前記ゲインファイバの区間であって、前記前方励起光が入射する端面を含む長さ1mの区間における前記前方励起光の吸収量として、∫P(λ)A(λ)dλに従って算出される前記前方励起光の吸収量が634W以上1100W以下であり、
前記前方励起光の総パワーが1509W以上である、
ことを特徴とするファイバレーザ。
ここで、P(λ)[W]は、前記前方励起光のパワースペクトルであり、A(λ)[%/m]は、前記ゲインファイバのコアに添加されたYbの吸収率スペクトルである。
【請求項5】
前記ゲインファイバは、融着点を含まず、屈折率分布及びYb濃度が全長に亘って一様である、
ことを特徴とする請求項1~4の何れか一項に記載のファイバレーザ。
【請求項6】
コアにYbが添加されたゲインファイバと、前記ゲインファイバに入力可能な前方励起光であって、976nm帯に属する前方励起光を生成可能な前方励起光源群と、を備えており、
前記前方励起光源群は、中心波長が異なり、最小の中心波長と最大の中心波長の差が1nm以上である、複数の励起光源を含み、
前記ゲインファイバの区間であって、前記前方励起光が入射する端面を含む長さ1mの区間における前記前方励起光の吸収量として、前記前方励起光の吸収量の実測値が253W以上1100W以下であり、
前記前方励起光の総パワーが1509W以上である、
ことを特徴とするファイバレーザ。
【請求項7】
コアにYbが添加されたゲインファイバと、前記ゲインファイバに入力可能な前方励起光であって、976nm帯に属する前方励起光を生成可能な前方励起光源群と、を備えており、
前記ゲインファイバの区間であって、前記前方励起光が入射する端面を含む長さ1mの区間における前記前方励起光の吸収量として、前記前方励起光の吸収量の実測値が253W以上1100W以下であり、
前記前方励起光源群からの前記前方励起光の吸収量の値として、∫P(λ)A1(λ)dλに従って算出される当該前方励起光の吸収量の算出値もしくは当該前方励起光の吸収量の実測値/A2の値が206W以上358W以下であり、
波長978nmにおける前記ゲインファイバの単位長さあたりの励起光吸収量は、2.58dB/m以上3.07dB/m以下である、
ことを特徴とするファイバレーザ。
ここで、A1(λ)は、波長978nmにおいて規格化されたYbの標準的な吸収率スペクトルである。A2[%/m]は、前記ゲインファイバのコアに添加されたYbの波長978nmにおける吸収率である。
【請求項8】
コアにYbが添加されたゲインファイバと、前記ゲインファイバに入力可能な前方励起光であって、976nm帯に属する前方励起光を生成可能な前方励起光源群と、を備えており、
前記ゲインファイバの区間であって、前記前方励起光が入射する端面を含む長さ1mの区間における前記前方励起光の吸収量として、前記前方励起光の吸収量の実測値が634W以上1100W以下であり、
前記前方励起光の総パワーが1509W以上である、
ことを特徴とするファイバレーザ。
【請求項9】
前記ファイバレーザの最大出力が2070W以上である、
ことを特徴とする請求項1~8の何れか1項に記載のファイバレーザ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コアにYbが添加されたゲインファイバを有するファイバレーザに関する。
【背景技術】
【0002】
コアにYb(イッテルビウム)が添加されたダブルクラッドファイバをゲインファイバとするファイバレーザが広く用いられている。ガラス中のYbは、915nm帯及び976nm帯を主たる吸収帯域とする。したがって、上記のようなファイバレーザにおいては、915nm帯又は976nm帯に属する励起光をゲインファイバのクラッドに供給することで、コアに添付されたYbを励起(反転分布状態に遷移)させる構成が採用されている。上記のようなファイバレーザの高出力化を進めるためには、励起光のパワーを高くしたり、Ybの濃度を高くしたりすることによって、ゲインファイバにおいて十分な増幅が行われるようにする。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】C. Jauregui et al.,"Physical origin of mode instabilities in high-power fiber laser systems", Opt. Express 20(12) 12912-12925 (2012)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなファイバレーザにおいては、励起光のパワーを高くしたり、Ybの濃度を高くしたりすると、TMI(Transverse Mode Instability:横モード不安定性)の発生によって、ファイバレーザから出力されるレーザ光に含まれる高次モード光の割合が増加する、すなわち、ファイバレーザから出力されるレーザ光のビーム出力が低下するという問題が生じ得る(非特許文献1参照)。また、ビーム出力の低下を避けるために、高次モード光を除去するモードフィルタを用いると、ファイバレーザから出力されるレーザ光のパワーが低下するという問題が生じ得る。
【0005】
ここで、TMIの発生によりビーム出力の低下が生じる仕組みは、例えば、以下のように説明することができる。すなわち、コアを導波する基本モードと高次モードとの間でモード間干渉が生じ、その結果、信号光量がゲインファイバの長手方向に沿って空間的に変動する。これにより、誘導放出量がゲインファイバの長手方向に沿って空間的に変動し、その結果、量子欠損による発熱量がゲインファイバの長手方向に沿って空間的に変動する。そうすると、温度がゲインファイバの長手方向に沿って空間的に変動し、その結果、屈折率がゲインファイバの長手方向に沿って空間的に変動する。この屈折率の変動が基本モードから高次モードへの遷移を促進し、その結果、上述したビーム出力の低下が生じる。
【0006】
Ybの総量を維持しつつ、TMIに起因するビーム出力の低下を避けるためには、例えば、ゲインファイバの全長を長くすることが考えられる。しかしながら、ゲインファイバの全長を長くすると、励起光源を故障させる原因となる誘導ラマン散乱が生じ易くなるという別の問題が生じ得る。
【0007】
本発明の一態様は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、TMIに起因するビーム出力の低下が生じる可能性を低減すると共に、誘導ラマン散乱が生じる可能性を低減したファイバレーザを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係るファイバレーザにおいては、コアにYbが添加されたゲインファイバと、前記ゲインファイバに入力可能な前方励起光であって、976nm帯に属する前方励起光を生成可能な前方励起光源群と、を備えており、前記ゲインファイバの区間であって、前記前方励起光が入射する端面を含む長さ1mの区間における前記前方励起光の吸収量として、∫P(λ)A(λ)dλに従って算出される前記前方励起光の吸収量が253W以上1100W以下である、という構成が採用されている。
【0009】
ここで、P(λ)[W]は、前記前方励起光のパワースペクトルであり、A(λ)[%/m]は、前記ゲインファイバのコアに添加されたYbの吸収率スペクトルである。
【0010】
本発明の別の態様に係るファイバレーザにおいては、コアにYbが添加されたゲインファイバと、前記ゲインファイバに入力可能な前方励起光であって、976nm帯に属する前方励起光を生成可能な前方励起光源群と、を備えており、前記ゲインファイバの区間であって、前記前方励起光が入射する端面を含む長さ1mの区間における前記前方励起光の吸収量として、前記前方励起光の吸収量の実測値が253W以上1100W以下である、という構成が採用されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様によれば、TMIに起因するビーム出力の低下が生じる可能性を低減すると共に、誘導ラマン散乱が生じる可能性を低減したファイバレーザを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係るファイバレーザの構成を示すブロック図である。
図2】サンプルとして用意した複数のファイバレーザについて、区間I1における励起光吸収量と不合格割合との関係を示すグラフである。
図3】Ybの標準的な吸収量スペクトル[dB/m]を示すグラフである。
図4】サンプルとして用意した複数のファイバレーザについて、波長978nmにおけるゲインファイバの単位長さあたりの励起光吸収量[dB/m]を横軸、前方励起光源からの前方励起光の吸収量(LDM前方励起光吸収量)を縦軸として、合格品と不合格品との分布を示したグラフである。
図5】表8に示す実施例について、ゲインファイバの元素濃度分布を示すグラフである。
図6】表8に示す実施例について、ゲインファイバの比屈折率分布を示すグラフである。
図7】表8に示す実施例について、クラッド吸収量スペクトルを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(ファイバレーザの構成)
本発明の一実施形態に係るファイバレーザ1の構成について、図1を参照して説明する。図1は、ファイバレーザ1の構成を表すブロック図である。
【0014】
ファイバレーザ1は、図1に示すように、ゲインファイバ11と、高反射ミラー12と、低反射ミラー13と、前方励起コンバイナ14aと、後方励起コンバイナ14bと、前方励起光源群15aと、後方励起光源群15bと、入力ファイバ16aと、出力ファイバ16bと、を備えている。
【0015】
ゲインファイバ11は、励起光のエネルギーを用いてレーザ光を増幅する機能を有する光ファイバである。本実施形態においては、ゲインファイバ11として、Yb添加ダブルクラッドファイバ、すなわち、Yb(イッテルビウム)が添加された円柱状のコアと、コアを取り囲む円筒状の内側クラッドと、内側クラッドを取り囲む円筒状の外側クラッドと、を有する光ファイバを用いている。なお、内側クラッドの断面形状は、多角形形状であってもよいし、D型形状であってもよい。これにより、ゲインファイバ11の長さが長い場合においても、励起光の吸収率を低下させずに、効率的に励起光を吸収させることができる。なお、ゲインファイバ11の屈折率分布は、1つの基本モードと、少なくとも1つの高次モードとを伝搬するように決められている。また、ゲインファイバ11は、融着点を含まず、屈折率分布及びYb濃度が全長に亘って一様である。これにより、接続損失が生じないので、ゲインファイバ11に総損失を小さく抑えることが可能になる。
【0016】
ゲインファイバ11の一方の端部には、高反射ミラー12が接続(本実施形態においては融着接続)されている。また、ゲインファイバ11の他方の端部には、低反射ミラー13が接続(本実施形態においては融着接続)されている。本実施形態においては、高反射ミラー12及び低反射ミラー13として、FBG(Fiber Bragg Grating:ファイバブラッググレーティング)を用いている。
【0017】
ファイバレーザ1においては、高反射ミラー12の反射波長帯域の少なくとも一部と低反射ミラー13の反射波長帯域の少なくとも一部とが、互いに重複している。これにより、ゲインファイバ11、高反射ミラー12、及び低反射ミラー13は、これら2つの反射波長帯域の重複部分に属する波長λのレーザ光を再帰的に増幅する共振器Oを構成する。波長λにおいて、低反射ミラー13の反射率(例えば、15%以下)は、高反射ミラー12の反射率(例えば、95%以上)よりも低い。したがって、共振器Oにて再帰的に増幅された波長λのレーザ光は、主に、低反射ミラー13を介して共振器Oの外部に出力される。
【0018】
前方励起光源群15aは、ma個(maは任意の自然数)の励起光源を含んでいる。前方励起光源群15aに含まれる各励起光源は、976nm帯に属する励起光を生成するための構成である。ここで、976nm帯とは、Ybの吸収帯域を含む、967.9nm以上983.0nm以下の波長帯域のことを指す。前方励起コンバイナ14aは、前方励起光源群15aに含まれる各励起光源にて生成された励起光をゲインファイバ11に入力するための構成である。前方励起コンバイナ14aは、少なくともma個の励起光入力ポート14a1と、少なくとも1個の可視光入力ポート14a2と、少なくとも1個の共振器側ポート14a3と、を備えている。各励起光入力ポート14a1は、前方励起光源群15aを構成する励起光源に接続されている。可視光入力ポート14a2は、入力ファイバ16aに接続(本実施形態においては、融着接続)されており、レーザ光の照射位置を視認するために用いられる。なお、可視光入力ポート14a2に可視光を入力することは必須ではなく、励起光を入力するためのポートとして用いることもできるし、加工対象物からの反射光量をモニタするためのポートとして用いることもできる。共振器側ポート14a3は、高反射ミラー12のゲインファイバ11側と反対側の端部に接続(本実施形態においては、融着接続)されている。
【0019】
前方励起光源群15aの各励起光源にて生成された前方励起光は、前方励起コンバイナ14a及び高反射ミラー12を介してゲインファイバ11のクラッドに導かれ、ゲインファイバ11のコアに添加されたYbを反転分布状態に遷移させるために利用される。ゲインファイバ11で発生した自然放出光のうち、高反射ミラー12と低反射ミラー13の反射波長に合致する波長λの光が共振器Oによってゲインファイバ11のコアにて増幅される。本実施形態においては、前方励起光源群15aとして、13個のLD(レーザダイオード)チップを含むLDモジュールを6個接続することにより得られる励起光源群を利用している(ma=78)。各LDチップは、発振波長帯域の中心波長が約975nm(Ybの吸収波長)となり、発振波長帯域の波長幅が7nm以上12nm以下となるように設計されたものである。なお、図1においては、前方励起光源群15aを構成する6個のLDモジュールを図示しており、1個のLDモジュールにつき図示しない13個のLDチップの励起光が1本の光ファイバに結合する。つまり、計78個のLDチップの励起光が前方励起コンバイナ14aで結合され、共振器側ポート14a3の1本の光ファイバに結合する。
【0020】
後方励起光源群15bは、mb個(mbは任意の自然数)の励起光源を含んでいる。後方励起光源群15bに含まれる各励起光源は、976nm帯に属する励起光を生成するための構成である。後方励起コンバイナ14bは、後方励起光源群15bに含まれる各励起光源にて生成された励起光をゲインファイバ11に入力するための構成である。後方励起コンバイナ14bは、少なくともmb個の励起光入力ポート14b1と、少なくとも1個の信号光出力ポート14b2と、少なくとも1個の共振器側ポート14b3と、を備えている。各励起光入力ポート14b1は、後方励起光源群15bを構成する励起光源に接続されている。信号光出力ポート14b2は、出力ファイバ16bに接続(本実施形態においては、融着接続)されている。共振器側ポート14b3は、低反射ミラー13のゲインファイバ11側と反対側の端部に接続(本実施形態においては、融着接続)されている。
【0021】
後方励起光源群15bの各励起光源にて生成された後方励起光は、後方励起コンバイナ14b及び低反射ミラー13を介してゲインファイバ11のクラッドに導かれ、ゲインファイバ11のコアに添加されたYbを反転分布状態に遷移させるために利用される。ゲインファイバ11のコアにて増幅された信号光(レーザ光)は、低反射ミラー13及び後方励起コンバイナ14bを介して出力ファイバ16bに導かれ、出力ファイバ16bを介して外部に出力される。本実施形態においては、後方励起光源群15bとして、13個のLD(レーザダイオード)チップを含むLDモジュールを6個接続することにより得られる励起光源群を利用している(mb=78)。各LDチップは、発振波長帯域の中心波長が約975nm(Ybの吸収波長)となり、発振波長帯域の波長幅が7nm以上12nm以下となるように設計されたものである。なお、図1においては、後方励起光源群15bを構成する6個のLDモジュールを図示しており、1個のLDモジュールにつき図示しない13個のLDチップの励起光が1本の光ファイバに結合する。つまり、計78個のLDチップの励起光が後方励起コンバイナ14bで結合され、共振器側ポート14b3の1本の光ファイバに結合する。
【0022】
なお、本実施形態において、ファイバレーザ1は、前方励起光源群15aと後方励起光源群15bとを備えた双方向励起型のファイバレーザとして実現されているが、本発明は、これに限定されない。すなわち、ファイバレーザ1は、前方励起光源群15aのみを備えた片方向励起型のファイバレーザとして実現することもできる。
【0023】
(ファイバレーザの特徴)
TMI(Transverse Mode Instability:横モード不安定性)は、主に、ゲインファイバ11のうち、前方励起光が入射する端面を含む長さ1mの区間I1において発生する。なぜなら、この区間I1における前方励起光の吸収量は、この区間I1以外における前方励起光の吸収量よりも多く、その結果、この区間I1における発熱量は、この区間I1以外における発熱量よりも多いからである。したがって、TMIに起因するビーム出力の低下を抑制するためには、この区間I1における前方励起光の吸収量を少なくする必要がある。
【0024】
そこで、本願発明者らは、サンプルとして用意した436個のファイバレーザ1について、前方励起光源群15aと後方励起光源群15bの総出力によって得られるレーザ出力の最大出力が2070W以上の値が得られることを合格基準とする検査を行った。図2は、区間I1における励起光吸収量と不合格割合との関係を示すグラフである。図2に示すグラフによれば、区間I1における前方励起光の吸収量を1100W以下にすることによって、不合格率を1/2程度以下に抑え得ることが分かる。また、図2に示すグラフによれば、区間I1における前方励起光の吸収量を1050W以下にすることによって、不合格率を4/10程度以下に抑え得ることが分かる。また、図2に示すグラフによれば、区間I1における前方励起光の吸収量を1000W以下にすることによって不合格率を3/10程度以下に抑え得ることが分かる。
【0025】
また、誘導ラマン散乱を抑制するためには、ゲインファイバ11の全長を短くすることが好ましい。例えば、ゲインファイバ11の有効断面積が400μmである場合、ゲインファイバ11の全長を27m以下にすることが好ましい。ここで、有効断面積が400μmである場合、以下の(1)~(3)をより適切に両立し得る傾向にあり得る。
【0026】
(1)光の導波モード数をLP01モードの光とLP11モードの光の2つとすることができ、光の導波モード数に起因したビーム品質低減を最小限に抑制し得る、
(2)LP01モードとLP11モードの曲げ損失を小さくし得る、
(3)有効断面積が比較的大きくなり、非線形光学効果を有効に抑制し得る。
【0027】
ここで、ゲインファイバ11のコア径を大きくすれば、ゲインファイバ11の有効断面積を大きくすることができるが、コア径を大きくするとV値が大きくなり、仮にゲインファイバ11に曲げを加えたとしてもLP02モードの光が導波する。このように、ゲインファイバ11にLP02モードの光が導波するとTMI発生の原因になり得る。また、ゲインファイバ11のコアの比屈折率差を小さくしても有効断面積を大きくすることができるが、コアの比屈折率差を小さくするとゲインファイバ11の曲げ損失が大きくなり、レーザ出力光として出射され得るLP01モードの光とLP11モードの光が当該曲げ損失を受けやすくなり、LP01モードの光とLP11モードの光の伝搬損失が大きくなり得る。
【0028】
以上より、上記(1)~(3)を適切に両立し得る有効断面積の値が400μmとなり得る。また、ここで、ゲインファイバ11の全長をL、有効断面積をAeffとすると、ゲインファイバ11の有効断面積が400μmにおいて2kWのファイバレーザ1のレーザ出力を得る場合、非線形光学効果を抑制するため、非線形光学効果に比例するL/Aeffを27m/400μm以下とする必要がある。つまり、ゲインファイバ11の全長は非線形光学効果を抑制する観点から27m以下とする必要がある。
【0029】
また、各部の過熱を抑制するためには、残留励起光を少なくすること、すなわち、ゲインファイバ11における励起光の吸収量を多くすることが好ましい。例えば、後述するファイバレーザ1の実施例として、前方励起光源群15aの総出力が1611Wである場合、残留励起光に起因する発熱を抑制する長期信頼性担保の観点から残留励起光のパワーを16W以下にすること、すなわち、ゲインファイバ11における励起光吸収量を20dB以上にすることが好ましい。これは、残留励起光の出力Poutおよび前方励起光源群15aの総出力Pinを用いて、計算式10×log(Pout/Pin)から、10×log(16/1611)≒20dBと算出することにより得られる値である。ここで、上述した有効断面積として400μmの値を得るために全長が27m以下のゲインファイバ11において励起光吸収量を20dB以上にするためには、励起光の単位長さあたりの吸収量を0.74dB/m以上にする必要があり、励起光の単位長さあたりの吸収率を15.68%以上にする必要がある。これは、励起光の単位長さあたりの吸収量AA(dB/m)を用いて、計算式(1-10^(0.74/10))×100から、(1-10^(0.74/10))×100≒15.68%と算出することにより得られる値である。このとき、上述した区間I1における前方励起光の吸収量は、上述の結果を基に253W以上となる。これは、前方励起光源群15aの総出力Wおよび励起光の単位長さあたりの吸収量AB(%)を用いて、計算式W×AB/100から、1611×15.68/100≒253Wと算出することにより得られる値である。
【0030】
以上の点に鑑みて、本実施形態に係るファイバレーザ1においては、区間I1における前方励起光の吸収量を253W以上1100W以下とする構成が採用されている。これにより、本実施形態に係るファイバレーザ1によれば、TMIに起因するビーム出力の低下が生じる可能性を低減すると共に、各部の過熱を招来することなく誘導ラマン散乱が生じる可能性を低減するという効果を奏する。
【0031】
なお、ファイバレーザ1においては、(1)区間I1における前方励起光の吸収量として、計算により求めた吸収量が253W以上1100Wであってもよいし、(2)区間I1における前方励起光の吸収量として、実測により求めた吸収量の実測値が253W以上1100Wであってもよい。いずれの場合においても、上記の効果を奏する。
【0032】
区間I1における前方励起光の吸収量X[W]は、例えば、前方励起光源群15aから出力される前方励起光のパワースペクトルP(λ)[W]、及び、ゲインファイバ11のコアに添加されたYbの吸収率スペクトルA(λ)[%/m]を用いて、X=∫P(λ)A(λ)dλに従って算出することができる。
【0033】
ここで、Ybの吸収率スペクトルA(λ)は、計算により求めてもよいし、実測により求めてもよい。計算により求める場合、Ybの吸収率スペクトルA(λ)は、例えば、波長978nmにおいて規格化されたYbの標準的な吸収率スペクトルA1(λ)(理論値)、及び、ゲインファイバ11のコアに添加されたYbの波長978nmにおける吸収率A2[%/m](実測値)を用いて、A(λ)=A1(λ)×A2に従って算出することができる。この場合、区間I1における前方励起光の吸収量X[W]は、X=∫P(λ)A1(λ)A2dλに従って算出される。Ybの標準的な吸収量スペクトル[dB/m]を図3に示す。図3に示す吸収量スペクトル[dB/m]を吸収率スペクトル[%/m]に換算し、更に、得られた吸収率スペクトル[%/m]を波長978nmにおける値が100%となるように規格化すれば、上述した標準的な吸収率スペクトルA(λ)が得られる。
【0034】
なお、波長978nmにおけるYbの吸収率を用いてYbの吸収スペクトルA(λ)を算出する構成の代わりに、他の吸収波長(966nmや915nmなど)におけるYbの吸収率を用いてYbの吸収スペクトルA(λ)を算出する構成を採用してもよい。ここで、波長978nmにおけるYbの吸収率を用いた理由は、実際に使用する前方励起光の波長との差が小さいため、他の吸収波長と比べて区間I1における前方励起光の吸収量をより正確に算出することができるからである。実際、他の吸収波長におけるYbの吸収率を用いる場合、吸収率自体の測定は波長978nmにおける吸収率を用いる場合よりも精度良く測定することができるが、実際に使用する前方励起光の波長との差が大きいため、区間I1における前方励起光の吸収量は不正確になる。なお、他の吸収波長におけるYbの吸収率が精度良く測定することが可能な理由は、波長978nmと比べて吸収量が少ないので、長いゲインファイバを用いた測定が可能になり、カットバック測定により生じる誤差の影響を小さくすることができるからである。
【0035】
また、前方励起光のパワースペクトルP(λ)は、計算により求めてもよいし、実測により求めてもよい。計算により求める場合、前方励起光のパワースペクトルP(λ)は、例えば、前方励起光源群15aに含まれる各前方励起光源の出力スペクトルPi(λ)を用いて、P(λ)=Σi=1,2,...,maPi(λ)に従って算出することができる。各前方励起光源の出力スペクトルPi(λ)としては、実測分布を用いてもよいし、近似分布(実際のパワースペクトルの中心波長と波長幅を再現するガウシアン分布)を用いてもよい。また、本実施形態のように、複数のLDチップを含むLDモジュールを前方励起光源として用いる場合には、各LDチップの中心波長の代表値(平均値や中央値など)をそのLDモジュールの中心波長と見做すと共に、各LDチップの波長幅の代表値をそのLDモジュールの波長幅と見做したうえで、その中心波長とその波長幅とを再現するガウシアン分布をそのLDモジュールの出力スペクトルPi(λ)とすればよい。
【0036】
図4は、サンプルとして用意したファイバレーザ1について、波長978nmにおけるゲインファイバ11の単位長さあたりの励起光吸収量[dB/m]を横軸(図4で示される「978nmにおけるYb吸収量」[dB/m])、前方励起光源からの前方励起光の吸収量(LDM前方励起光吸収量)を縦軸(図4で示される「前方吸収」[W])として、合格品と不合格品との分布を示したグラフである。
【0037】
図4によれば、前方励起光源からの前方励起光の吸収量(図4の「前方励起光吸収量(換言するとLDM前方励起光吸収量)」に該当)が206W以上358W以下であり、且つ、波長978nmにおけるゲインファイバ11の単位長さあたりの励起光吸収量(図4の「励起光吸収量(換言すると978nmにおけるYb吸収量)」に該当)が2.58dB/m以上3.07dB/m以下であるという条件を満たすゲインファイバ11について、不合格率を1/2程度に抑え得ることが分かる。また、この条件を満たすゲインファイバ11を有する場合における前方励起光源群15aと後方励起光源群15bの総出力によって得られるファイバレーザ1のレーザ出力の平均出力は、図4の各合格品の各出力値の平均をとって算出すると、2110Wになるのに対して、この条件を満たさないゲインファイバ11を有する場合における当該総出力によって得られるファイバレーザ1のレーザ出力の平均出力は、図4の各不合格品の各出力値の平均をとって算出すると2068Wとなる。したがって、この条件を満たすゲインファイバ11は、この条件を満たさないゲインファイバ11と比べて、平均出力が高くなる(定格出力で運用する場合は消費電力が低くなる)点で有利である。なお、図4においては、∫P(λ)A1(λ)A2dλを用いて算出した前方励起光の吸収量(前方励起光吸収量)が253Wになる曲線(図4で励起光吸収量253Wと示された曲線)を実線で示し、∫P(λ)A1(λ)A2dλを用いて算出した前方励起光の吸収量(前方励起光吸収量)が1100Wになる曲線(図4で励起光吸収量1100Wと示された曲線)を点線で示している。図4によれば、上述した条件を満たす領域が、これら2つの曲線の間に入っていることが分かる。すなわち、上述した条件が満たされていれば、「∫P(λ)A1(λ)A2dλを用いて算出した前方励起光の吸収量が253W以上1100W以下になる」という条件が自動的に満たされることが分かる。また、上述した前方励起光源からの前方励起光の吸収量(LDM前方励起光吸収量)の値は、∫P(λ)A1(λ)dλに従って算出される当該前方励起光の吸収量の算出値を用いても良いし、当該前方励起光の吸収量の実測値/A2の値を用いても良い。ここで、A1(λ)(理論値)は、波長978nmにおいて規格化されたYbの標準的な吸収率スペクトルである。A2[%/m](実測値)は、前記ゲインファイバのコアに添加されたYbの波長978nmにおける吸収率である。
【0038】
(ファイバレーザの実施例)
ファイバレーザ1の実施例及び比較例として、サンプルとして用意した436個のファイバレーザ1から選択した11個のファイバレーザ1の各々ついて、下記の量を表1~表11に示す。
【0039】
(1)前方励起光源群15aの各LDモジュールの中心波長[nm](表1~11の「LD中心波長[nm]」)、
(2)前方励起光源群15aの各LDモジュールの波長幅[nm](表1~11の「LD波長幅[nm]」)、
(3)波長978nmにおけるゲインファイバ11の単位長さあたりの励起光吸収量[dB/m](表1~11のYb「Yb978nm吸収量[dB/m]」)、
(4)前方励起光源群15aの各LDモジュールから出力された前方励起光の区間I1における吸収量[W](表1~11の「前方励起×978吸収量[W]」)、
(5)前方励起光源群15aから出力された前方励起光の区間I1における吸収量[W](∫P(λ)A1(λ)A2dλに従って算出)(表1~11の「吸収量合計[W]」)、
(6)前方励起光源群15aの出力[W](表1~11の「励起光出力[W]」)、
(7)ファイバレーザ1の出力[W](表1~11の「出力[W]」)、
(8)合否判定結果(表1~11の「合否」)。
【0040】
なお、(4)、(5)において、以下の表1~11では、前方励起光源群15aの各LDモジュールから出力された前方励起光の区間I1における各吸収量の合計値と前方励起光源群15aから出力された前方励起光の区間I1における吸収量の値とが一致しない場合がある。しかし、これは各LDモジュールから出力された前方励起光の区間I1における吸収量の値において小数点の切り上げまたは切り捨ての影響によるものである。したがって、本実施例および比較例においては、前方励起光源群15aの各LDモジュールから出力された前方励起光の区間I1における各吸収量の合計値と前方励起光源群15aから出力された前方励起光の区間I1における吸収量の値とが一致しているとして解釈して差し支えない。
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】

【表5】

【表6】

【表7】

【表8】

【表9】

【表10】

【表11】
【0041】
表1~表9に示すファイバレーザ1は、区間I1における前方励起光の吸収量が253W以上1100W以下であるという条件を満たすので、実施例である。表10~表11に示すファイバレーザ1は、区間I1における前方励起光の吸収量が253W以上1100W以下であるという条件を満たさないので、比較例である。実施例であるファイバレーザ1は、合格品であり、比較例であるファイバレーザ1は、不合格品になっていることが見て取れる。
【0042】
また、合格品であるファイバレーザ1においては、前方励起光源群15aから出力された前方励起光の区間I1における吸収量が634W以上である。したがって、これらの実施例によれば、区間I1における前方励起光の吸収量を634W以上とすることが、不合格割合を低下させる(TMIに起因するビーム出力の低下が生じる可能性を低減する)うえで好ましいことが示唆される。
【0043】
また、合格品であるファイバレーザ1においては、前方励起光の総パワー、すなわち、前方励起光源群15aの出力が1509W以上である。したがって、これらの実施例によれば、前方励起光の総パワーを1509W以上とすることが、不合格割合を低下させる(TMIに起因するビーム出力の低下が生じる可能性を低減する)うえで好ましいことが示唆される。
【0044】
図5は、表8に示す実施例におけるゲインファイバ11の元素濃度分布を示すグラフである。図6は、表8に示す実施例におけるゲインファイバ11の屈折率分布を示すグラフである。ゲインファイバ11においては、図5に示すように、中心部にYb、Al、P、Bの添加領域があり、その外側にGeの添加領域がある部分添加構造が採用されている。これらの元素の濃度は、図5に示すようにコア全体が一定の屈折率になるように調整されている。図7は、表8に示す実施例におけるゲインファイバ11のクラッド吸収量スペクトル[dB/m]を示すグラフである。クラッド吸収量スペクトルの形状は、図3に示すYbの標準的な吸収量スペクトル[dB/m]の形状と略一致している。
【0045】
(まとめ)
本発明の態様1に係るファイバレーザにおいては、コアにYbが添加されたゲインファイバと、前記ゲインファイバに入力可能な前方励起光であって、976nm帯に属する前方励起光を生成可能な前方励起光源群と、を備えており、前記ゲインファイバの区間であって、前記前方励起光が入射する端面を含む長さ1mの区間における前記前方励起光の吸収量として、∫P(λ)A(λ)dλに従って算出される前記前方励起光の吸収量が253W以上1100W以下である、という構成が採用されている。
【0046】
ここで、P(λ)[W]は、前記前方励起光のパワースペクトルであり、A(λ)[%/m]は、前記ゲインファイバのコアに添加されたYbの吸収率スペクトルである。
【0047】
本発明の態様2に係るファイバレーザにおいては、態様1の構成に加えて、前記吸収率スペクトルA(λ)は、A(λ)=A1(λ)×A2に従って算出されるものである、という構成が採用されている。
【0048】
ここで、A1(λ)は、波長978nmにおいて規格化されたYbの標準的な吸収率スペクトルであり、A2[%/m]は、前記ゲインファイバのコアに添加されたYbの波長978nmにおける吸収率である。
【0049】
本発明の態様3に係るファイバレーザにおいては、態様1又は2の構成に加えて、前記区間における前記前方励起光の吸収量が634W以上である、という構成が採用されている。
【0050】
本発明の態様4に係るファイバレーザにおいては、態様1~3の何れか一態様の構成に加えて、前記前方励起光の総パワーが1509W以上である、という構成が採用されている。
【0051】
本発明の態様5に係るファイバレーザにおいては、態様1~4の何れか一態様の構成に加えて、前記前方励起光源群からの前記前方励起光の吸収量の値として、∫P(λ)A1(λ)dλに従って算出される当該前方励起光の吸収量の算出値もしくは当該前方励起光の吸収量の実測値/A2の値が206W以上358W以下であり、波長978nmにおける前記ゲインファイバの単位長さあたりの励起光吸収量は、2.58dB/m以上3.07dB/m以下である、という構成が採用されている。
【0052】
ここで、A1(λ)は、波長978nmにおいて規格化されたYbの標準的な吸収率スペクトルであり、A2[%/m]は、前記ゲインファイバのコアに添加されたYbの波長978nmにおける吸収率である。
【0053】
本発明の態様6に係るファイバレーザにおいては、態様1~5の何れか一態様の構成に加えて、前記ゲインファイバは、融着点を含まず、屈折率分布及びYb濃度が全長に亘って一様である、という構成が採用されている。
【0054】
本発明の態様7に係るファイバレーザにおいては、コアにYbが添加されたゲインファイバと、前記ゲインファイバに入力可能な前方励起光であって、976nm帯に属する前方励起光を生成可能な前方励起光源群と、を備えており、前記ゲインファイバの区間であって、前記前方励起光が入射する端面を含む長さ1mの区間における前記前方励起光の吸収量として、前記前方励起光の吸収量の実測値が253W以上1100W以下である、という構成が採用されている。
【0055】
本発明の態様8に係るファイバレーザにおいては、態様7の構成に加えて、前記区間における前記前方励起光の吸収量は、634W以上である、という構成が採用されている。
【0056】
本発明の態様9に係るファイバレーザにおいては、態様7又は8の構成に加えて、前記前方励起光の総パワーが1509W以上である、という構成が採用されている。
【0057】
本発明の態様10に係るファイバレーザにおいては、態様7~9の何れか一態様の構成に加えて、前記前方励起光源群からの前記前方励起光の吸収量の値として、∫P(λ)A1(λ)dλに従って算出される当該前方励起光の吸収量の算出値もしくは当該前方励起光の吸収量の実測値/A2の値が、206W以上358W以下であり、波長978nmにおける前記ゲインファイバの単位長さあたりの励起光吸収量は、2.58dB/m以上3.07dB/m以下である、という構成が採用されている。
【0058】
ここで、A1(λ)は、波長978nmにおいて規格化されたYbの標準的な吸収率スペクトルであり、A2[%/m]は、前記ゲインファイバのコアに添加されたYbの波長978nmにおける吸収率である。
【0059】
(付記事項)
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、上述した実施形態に開示された各技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0060】
1 ファイバレーザ
11 ゲインファイバ
12 高反射ミラー
13 低反射ミラー
14a 前方励起コンバイナ
14b 後方励起コンバイナ
15a 前方励起光源群
15b 後方励起光源群
16a 入力ファイバ
16b 出力ファイバ

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7