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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-31
(45)【発行日】2024-08-08
(54)【発明の名称】ステアリングホイール
(51)【国際特許分類】
   B62D 1/10 20060101AFI20240801BHJP
   B60R 21/203 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
B62D1/10
B60R21/203
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2023514521
(86)(22)【出願日】2022-03-14
(86)【国際出願番号】 JP2022011181
(87)【国際公開番号】W WO2022219982
(87)【国際公開日】2022-10-20
【審査請求日】2023-09-13
(31)【優先権主張番号】P 2021069285
(32)【優先日】2021-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】503358097
【氏名又は名称】オートリブ ディベロップメント エービー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】安部 和宏
(72)【発明者】
【氏名】石田 良太郎
(72)【発明者】
【氏名】クマール スミット
(72)【発明者】
【氏名】本間 圭祐
(72)【発明者】
【氏名】金 眞根
(72)【発明者】
【氏名】ゴー ロデル
(72)【発明者】
【氏名】浅井 宏明
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-105164(JP,A)
【文献】特開平09-254791(JP,A)
【文献】特開2014-094703(JP,A)
【文献】特開2012-086697(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 1/00
B60R 21/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリングシャフトに取付け可能に構成されたボス部を有する芯金と、
前記芯金に対して可動に設けられた、膨張展開可能なエアバッグクッションを有するエアバッグモジュールと、を備えたステアリングホイールであって、
前記芯金の前記ボス部はストッパを有し、前記エアバッグモジュールストッパ当接部を有しており、
前記ストッパは、
エアバッグ非作動状態において、前記ストッパ当接部から離間している一方、
エアバッグ作動時において、前記エアバッグクッションが膨張展開することによって前記エアバッグモジュールが移動又は変形することにより、前記ステアリングシャフトの軸方向に交差する方向において、前記ストッパ当接部と当接するように構成されている、ステアリングホイール。
【請求項2】
前記ステアリングシャフトの軸方向に直交し且つ互いに直交する二軸を縦軸及び横軸とした場合、
前記ストッパは、前記縦軸及び横軸の少なくとも一方の方向において、前記ストッパ当接部と当接する、請求項に記載のステアリングホイール。
【請求項3】
前記ストッパは、前記ステアリングシャフトの軸方向に延在するように前記ボス部に設けられている、請求項又はに記載のステアリングホイール。
【請求項4】
前記ストッパは、前記ボス部の表面から前記ステアリングシャフトの軸方向に壁状に立ち上がっている、請求項に記載のステアリングホイール。
【請求項5】
前記ボス部の表面には、前記ステアリングシャフトの軸方向に突出する凸部が形成されており、
前記ストッパは、前記ステアリングシャフトの軸方向に延在する部位の少なくとも一部が前記凸部に連結されている、請求項又はに記載のステアリングホイール。
【請求項6】
可動接点及び固定接点を有するホーン機構をさらに備え、
前記可動接点は、前記エアバッグモジュールに設けられ、
前記固定接点は、前記凸部の頂面に設けられている、請求項に記載のステアリングホイール。
【請求項7】
前記ストッパ当接部は、前記ステアリングシャフトの軸方向に延在するように前記エアバッグモジュールに設けられている、請求項からのいずれか一項に記載のステアリングホイール。
【請求項8】
前記エアバッグモジュールは、前記エアバッグ作動時に前記エアバッグクッションに膨張展開用のガスを供給するインフフレータと、前記エアバッグクッションを収容するハウジングと、前記エアバッグクッションを覆うように前記ハウジングに取り付けられたモジュールカバーと、を有しており、
前記ストッパ当接部は、前記モジュールカバーに設けられている、請求項に記載のステアリングホイール。
【請求項9】
前記ストッパ当接部は、前記モジュールカバーから突出するように延びていて、先端側が前記ストッパに対向している共に、当該先端側ではない一部が前記ハウジングに係合しており、
前記エアバッグ作動時において、前記エアバッグクッションの膨張展開による荷重によって前記ストッパ当接部が前記一部を支点として回動することにより、前記ストッパ当接部の前記先端側が前記ストッパに当接する、請求項に記載のステアリングホイール。
【請求項10】
前記エアバッグモジュールは、前記ストッパ当接部から見て前記ストッパとは反対側に、前記ストッパが前記ストッパ当接部と当接した際の前記ストッパ当接部の変形を阻止するように構成された補強部をさらに有する、請求項又はに記載のステアリングホイール。
【請求項11】
ステアリングシャフトに取付け可能に構成されたボス部を有する芯金と、
前記芯金に対して可動に設けられた、膨張展開可能なエアバッグクッションを有するエアバッグモジュールと、を備えたステアリングホイールであって、
前記芯金の前記ボス部はストッパを有し、前記エアバッグモジュールはストッパ当接部を有しており、
前記ストッパは、
エアバッグ非作動状態において、前記ストッパ当接部から離間している一方、
エアバッグ作動時において、前記エアバッグクッションが膨張展開することによって前記エアバッグモジュールが移動又は変形することにより、前記ストッパ当接部と当接するように構成され、
前記エアバッグモジュールは、前記エアバッグ作動時に前記エアバッグクッションに膨張展開用のガスを供給するインフフレータと、前記エアバッグクッションを収容するハウジングと、前記エアバッグクッションを覆うように前記ハウジングに取り付けられたモジュールカバーと、を有しており、
前記モジュールカバーは、前記ハウジングに係合して当該モジュールカバーを前記ハウジングに取り付ける複数の係合突起を有しており、
前記ストッパ当接部は、前記複数の係合突起の少なくとも一つに形成されているステアリングホイール。
【請求項12】
ステアリングシャフトに取付け可能に構成されたボス部を有する芯金と、
前記芯金に対して可動に設けられた、膨張展開可能なエアバッグクッションを有するエアバッグモジュールと、を備えたステアリングホイールであって、
前記芯金及び前記エアバッグモジュールの一方はストッパを有し、前記芯金及び前記エアバッグモジュールの他方はストッパ当接部を有しており、
前記ストッパは、前記ステアリングシャフトの軸方向に突出するように設けられ、
前記ストッパ当接部は、前記ストッパが遊嵌される受け穴として形成され、
前記ストッパは、
エアバッグ非作動状態において、前記ストッパ当接部から離間している一方、
エアバッグ作動時において、前記エアバッグクッションが膨張展開することによって前記エアバッグモジュールが移動又は変形することにより、前記受け穴の内面と当接するように構成されているステアリングホイール。
【請求項13】
ステアリングシャフトに取付け可能に構成されたボス部を有する芯金と、
前記芯金に対して可動に設けられた、膨張展開可能なエアバッグクッションを有するエアバッグモジュールと、を備えたステアリングホイールであって、
前記芯金及び前記エアバッグモジュールの一方はストッパを有し、前記芯金及び前記エアバッグモジュールの他方はストッパ当接部を有しており、
前記ストッパは、
エアバッグ非作動状態において、前記ストッパ当接部から離間している一方、
エアバッグ作動時において、前記エアバッグクッションが膨張展開することによって前記エアバッグモジュールが移動又は変形することにより、前記ストッパ当接部と当接するように構成され、
前記エアバッグモジュールは、受入れ開口を有するタブを備え、
前記芯金は、前記ステアリングシャフトの軸方向に交差する方向において前記タブの表側から前記タブの裏側へと前記受入れ開口に挿通されたタブ係合部を備え、
前記タブ係合部は、前記タブの裏面に対向する屈曲部位に前記ストッパを有し、
エアバッグ作動時において、前記ストッパは、前記ストッパ当接部としての前記タブの裏面と当接するように構成されているステアリングホイール。
【請求項14】
ステアリングシャフトに取付け可能に構成されたボス部を有する芯金と、
前記芯金に対して可動に設けられた、膨張展開可能なエアバッグクッションを有するエアバッグモジュールと、を備えたステアリングホイールであって、
前記芯金及び前記エアバッグモジュールの一方はストッパを有し、前記芯金及び前記エアバッグモジュールの他方はストッパ当接部を有しており、
前記ストッパは、
エアバッグ非作動状態において、前記ストッパ当接部から離間している一方、
エアバッグ作動時において、前記エアバッグクッションが膨張展開することによって前記エアバッグモジュールが移動又は変形することにより、前記ステアリングシャフトの軸方向に交差する方向において、前記ストッパ当接部と当接するように構成されている、ステアリングホイール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステアリングホイールに関する。詳細には、ステアリングシャフトに取付け可能に構成されたボス部を有する芯金と、芯金に対して可動に設けられた、膨張展開可能なエアバッグクッションを有するエアバッグモジュールと、を備えたステアリングホイールに関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載されるステアリングホイールとして、車両緊急時のフロントエアバッグとしての機能を具備させたものが知られている。例えば特許文献1では、芯金のボス部にステアリングシャフトが取り付けられ、ステアリングシャフトから見て左右両側及び下側にフローティングユニットが設けられている。そして、エアバッグモジュール及びステアリングパッドからなるホーンブロックを、これら計3個のフローティングユニットによって、芯金に可動に支持させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開2015/125349号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エアバッグ作動時、エアバッグモジュールのエアバッグクッションが膨張展開すると、エアバッグモジュールは、フローティングユニットに支持されているが、フローティングユニットのフローティング分は揺動することが想定される。その一方、エアバッグクッションを支持する機能としてはリジッドで支持されていることが好ましい。
【0005】
本発明は、エアバッグ作動時におけるエアバッグモジュールの不要な揺動を抑制することができ、もってエアバッグクッションの所定の展開性能を確保することができるステアリングホイールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るステアリングホイールは、ステアリングシャフトに取付け可能に構成されたボス部を有する芯金と、芯金に対して可動に設けられた、膨張展開可能なエアバッグクッションを有するエアバッグモジュールと、を備え、芯金及びエアバッグモジュールの一方はストッパを有し、芯金及びエアバッグモジュールの他方はストッパ当接部を有しており、ストッパは、エアバッグ非作動状態において、ストッパ当接部から離間している一方、エアバッグ作動時において、エアバッグクッションが膨張展開することによってエアバッグモジュールが移動又は変形することにより、ストッパ当接部と当接するように構成されている。
【0007】
この態様によれば、エアバッグ作動時、移動又は変形したエアバッグモジュールと芯金との間で干渉(ストッパとストッパ当接部との当接)が起こる。これにより、エアバッグ作動時に芯金に対するエアバッグモジュールの不要な揺動を抑制することができる。しかも、この揺動の抑制を、エアバッグ非作動状態における芯金に対するエアバッグモジュールの可動性を確保しつつ、芯金及びエアバッグモジュールを有効に利用して達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態1に係るステアリングホイールの外観を示す斜視図である。
図2図1のステアリングホイールについて、エアバッグモジュールを芯金から取り外した状態を示す分解斜視図である。
図3図1のステアリングホイールの芯金のボス部を示す拡大斜視図である。
図4図1のステアリングホイールのエアバックモジュールを底部側から示す斜視図である。
図5図1のV-V線で切断した断面図である。
図6】エアバッグモジュールのモジュールカバーを上側から示す斜視図である。
図7】エアバッグモジュールのモジュールカバーを下側から示す斜視図である。
図8】ボス部のストッパの周りを、図3とは異なる方向から拡大して示す斜視図である。
図9】ストッパ及びストッパ当接部の周りを拡大して示す斜視図である。
図10図9とは異なる方向から、ストッパ及びストッパ当接部の周りを拡大して示す斜視図である。
図11】ストッパ及びストッパ当接部の周りを拡大して示す断面図である。
図12】ストッパ及びストッパ当接部の構造について、エアバッグ作動時における時間経過を示す図である。
図13】実施形態1の第1の例に係る補強部を示す図であり、(A)はストッパ当接部及び補強部の周りを拡大して示すエアバッグモジュールの底面図であり、(B)は(A)におけるB-B線で切断した断面図であり、(C)は(A)におけるC-C線で切断した断面図である。
図14】実施形態1の第2の例に係る補強部を示す図であり、(A)はストッパ当接部及び補強部の周りを拡大して示すエアバッグモジュールの底面図であり、(B)は(A)におけるB-B線で切断した断面図であり、(C)は(A)におけるC-C線で切断した断面図である。
図15】実施形態1の第3の例に係る補強部を示す図であり、(A)はストッパ当接部及び補強部の周りを拡大して示すエアバッグモジュールの底面図であり、(B)は(A)におけるB-B線で切断した断面図であり、(C)は(A)におけるC-C線で切断した断面図である。
図16】実施形態2に係るステアリングホイールのエアバッグモジュールを、Y軸方向マイナス側から見た側面図である。
図17図16のエアバッグモジュールを、ストッパ及びストッパ当接部が通る位置で切断した縦断面図であり、ストッパとストッパ当接部との関係を示す図である。
図18図16のエアバッグモジュールを、ストッパ及びストッパ当接部が通る位置で切断した拡大横断面図であり、ストッパとストッパ当接部との関係を示す図である。
図19】実施形態3に係るステアリングホイールの芯金を示す平面図である。
図20】実施形態3に係るステアリングホイールのエアバッグモジュールの底面図に、図19の芯金を投影したときの状況を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の好適な実施形態に係るステアリングホイールについて説明する。
【0010】
ステアリングホイールは、自動車などの車両の運転席側に配置されるものであり、複数の機能を有している。例えば、ステアリングホイールは、車両の操舵装置としての機能を有している。具体的には、ステアリングホイールは、一般に傾斜した状態で車体に備えられるステアリングシャフトの上端部に装着される。そして、運転手からの操舵力がステアリングホイールからステアリングシャフトに伝達され、ステアリングギア等を介して車輪に伝達され、車輪の向きが変更される。
【0011】
また、ステアリングホイールは、車両緊急時のフロントエアバッグとしての機能を有している。車両緊急時とは、例えば、車両の衝突が発生した時をいう。フロントエアバッグとしての機能は、主として、ステアリングホイールの芯金に設置されたエアバッグモジュールによって達成される。これらの機能に加え、ステアリングホイールは、ホーン装置としての機能を有している。また、ステアリングホイールは、車両からステアリングホイールへの振動を減衰するダイナミックダンパとしての機能を有していてもよく、かかる機能はエアバッグモジュールをダンパマスとして用いることで達成される。
【0012】
以下では、説明の便宜のために、XYZの三軸を次のとおり定義する。ステアリングシャフトの軸方向を「Z軸方向」とし、Z軸方向に直交する平面においてアナログ12時間時計の9時と3時とを結ぶ方向を「X軸」又は「横軸」の方向とし、また、同時計の12時と6時とを結ぶ方向を「Y軸」又は「縦軸」の方向とする。縦軸及び横軸は、互いに直交し且つZ軸方向に直交する。X軸(横軸)の方向は、ステアリングホイール又は車両の幅方向に相当する方向であり得る。Y軸(縦軸)の方向は、車両の前後方向(車両が直進するときの進行方向)であり得る。また、X軸及びY軸によって構成される平面を「XY面」と呼ぶ。さらに、図1においてXYZの三軸の矢印が向く方向を「プラス側」とし、その反対の方向を「マイナス側」とする。したがって、例えば、Y軸方向のプラス側とは上記のアナログ12時間時計の12時の側となり、Y軸方向のマイナス側とは同時計の6時の側となる。
【0013】
<実施形態1>
図1及び2に示すように、ステアリングホイール1は、芯金2及びエアバッグモジュール3を有している。エアバッグモジュール3は、芯金2に対して可動に設けられている。本実施形態では、ステアリングホイール1は、バネ構造を含む二種類の支持ユニット4a、4bを有している。そして、エアバッグモジュール3は、芯金2に対してZ軸方向に沿って移動可能に支持ユニット4a、4bに支持されている。また、エアバッグモジュール3は、エアバッグ作動時、支持ユニット4a、4bに支持されながら、Z軸方向に交差する方向(例えばXY面)において芯金2に対して揺動するようになっている。
【0014】
芯金2は、ステアリングホイール1の骨格を形成する。芯金2は、例えば、鉄、アルミニウム、マグネシウムなどの金属により成形される。芯金2は、ステアリングシャフト100(参照:図5)に取り付け可能に構成されたボス部20を有している。また、芯金2は、ステアリングホイール1の外周を構成するリム部21を有していると共に、ボス部20とリム部21とを連結するスポーク部22を有している。リム部21は、運転者が把持する部分であり、ここでは円環状に形成されている。スポーク部22は、複数(ここでは2つ)あり、それぞれボス部20から外方に延出してリム部21に連結されている。他の実施態様では、スポーク部22は3つ以上あってもよい。
【0015】
図3に示すように、ボス部20は、ステアリングシャフト100が取り付けられるシャフト取付け部23と、シャフト取付け部23を中央に凹状に形成したベース部24と、ベース部24のX軸方向の両端から斜めに立ち上がってスポーク部22に連結される傾斜部25、25と、シャフト取付け部23から離れた位置でベース部24のY軸方向のマイナス側においてベース部24のX軸方向の両端同士をつなぐブリッジ部26と、を有している。
【0016】
ベース部24には、シャフト取付け部23を挟んでX軸方向の両側に複数(ここでは2つ)の取付け孔27、27が貫通形成されており(参照:図5)、各取付け孔27には筒状のカラー51が装着されている。カラー51は、一端にフランジ部53を有する筒部の途中に切り欠きを有しており(参照:図5)、筒部内に支持ユニット4aの後述するピン41が挿入される。ブリッジ部26の中央部には、シャフト取付け部23に向かって突出するタブ係合部26aが形成されている。タブ係合部26aには、エアバッグモジュール3の後述するタブ39がY軸方向のプラス側に離脱可能な状態で弾性的に係合される(参照:図1及び2)。
【0017】
また、ボス部20は、Z軸方向のプラス側の面(表面)にベース面20aを有している。ベース面20aは、その大部分がエアバッグモジュール3の底部に対向している。また、ベース面20aは、取付け孔27、27よりもY軸方向マイナス側の位置に、平坦なバネ受け面28、28を有している。バネ受け面28は、支持ユニット4bの一端を受ける。バネ受け面28、28とブリッジ部26との間には、ベース面20aからZ軸方向のプラス側に突出する凸部29、29が形成されている。そして、ベース面20a及び凸部29に連結されるように、ボス部20にはストッパ200、200が形成されている(詳細は後述する)。
【0018】
図4に示すように、エアバッグモジュール3は、膨張展開可能なエアバッグクッション30を有している。また、図4及び5に示すように、エアバッグモジュール3は、エアバッグクッション30を収容するハウジング31と、エアバッグ作動時にエアバッグクッション30に膨張展開用のガスを供給するインフレータ32と、エアバッグクッション30を覆うようにハウジング31に取り付けられたモジュールカバー33と、ハウジング31に取り付けられたロックプレート34と、有している。エアバッグクッション30は、ハウジング31内で、例えば折り畳まれた状態となっている。
【0019】
ハウジング31は、XY面に沿った底面を有する底壁36と、底壁36から立ちあがる周壁37と、を有しており、全体として浅皿状に形成されている。ハウジング31は、例えば、一枚の金属プレートをプレス成形してなる。底壁36の中央にはインフレータ32が取り付けられ、底壁36の周縁部には複数の係合スリット38a、38b、38cが形成されている。係合スリット38a、38b、38cには、モジュールカバー33の後述する係合突起338a、338b、338cが挿入され、係合される。ここでは、Y軸方向のプラス側に4つの係合スリット38aが、X軸方向の両側にそれぞれ1つの係合スリット38bが、また、Y軸方向のマイナス側に2つの係合スリット38cが形成されている。
【0020】
また、ハウジング31には、ばね性を有するタブ39が取り付けられている。タブ39は、図2及び4に示すように、片持ちの板バネ391と、板バネ391の自由端側に設けられたインシュレータ392と、を有している。板バネ391は、一端が周壁37のY軸方向マイナス側の面に取り付けられ、Z軸方向のマイナス側に向かって延びている。板バネ391の取付位置は、エアバッグモジュール3におけるX軸方向の中心となっている。板バネ391は、芯金2のタブ係合部26aが挿通される受入れ開口394を、インシュレータ392とともに形成している。受入れ開口394は、タブ係合部26aよりも大きく形成されており、これにより、芯金2に対するエアバッグモジュール3の可動が許容されている(参照:図1)。受入れ開口394にタブ係合部26aが挿通された状態では、インシュレータ392の受入れ開口394側の端面(上面)がタブ係合部26aの下面に当接又は対向し、また、インシュレータ392のY軸方向マイナス側の面がタブ係合部26aの根元部分(芯金2のブリッジ部26の側面)に弾性的に当接する。これにより、芯金2の振動が板バネ391の弾性作用によって減衰される。
【0021】
インフレータ32は、ガス噴出孔を有する低背の中空円盤体を有する。車両緊急時、インフレータ32が、車両のセンサから信号を受信して作動し、エアバッグクッション30にガスを瞬時に供給する。すなわち、エアバッグ非作動状態からエアバッグ作動時となる。ガスの供給を受けたエアバッグクッション30は、急速に膨張してモジュールカバー33を破裂させて、車室空間の運転者側に向かって膨張し、運転者を拘束する。
【0022】
ロックプレート34は、ハウジング31の底壁36に取り付けられている。ロックプレート34は、係合スリット38a、38b、38cから外れて位置づけられている。また、ロックプレート34は、底壁36に取り付けられる平坦部を有すると共に、底壁36から離間するように平坦部から隆起させた部位に開口部34a、34aを有しており、この各開口部34aに支持ユニット4aのピン41が挿通されている。ロックプレート34の、底壁36に取り付けられる部位には、インフレータ32用の固定プレート32aも取り付けられている。ロックプレート34は、例えば一枚の金属プレートをプレス成形してなる。
【0023】
他の実施態様では、ロックプレート34を省略することも可能である。その場合、ロックプレート34に関連する構成及び機能は、エアバッグモジュール3の別の部材、例えばハウジング31に設けられる。芯金2に対向するエアバッグモジュール3の底部は、ロックプレート34がある場合には主としてロックプレート34によって構成され、ロックプレート34がない場合には主としてハウジング31の底壁36によって構成される。
【0024】
図6及び7に示すように、モジュールカバー33は、XY面に沿った頂面331を有する頂壁332と、頂壁332から垂下する周壁333と、を有している。頂面331は、運転者がホーンを鳴らすときに押される。すなわち、モジュールカバー33は、ホーンを鳴らすときに運転者が押すホーンスイッチとして機能する。モジュールカバー33では、頂壁332の反対側が開放されており、頂壁332及び周壁333で囲まれた空間にエアバッグクッション30の一部が収容される。モジュールカバー33は、例えば樹脂により形成される。
【0025】
周壁333は、頂壁332と反対側の端に、複数の係合突起338a、338b、338cを有している。係合突起338a、338b、338cは、それぞれ、ハウジング31の底壁36の係合スリット38a、38b、38cに係合される(参照:図2及び4)。かかる係合により、モジュールカバー33がハウジング31に取り付けられる。
【0026】
係合突起338a、338b、338cは、それぞれ、周壁333からZ軸方向のマイナス側に突出するように延びており、ばね性及びフック形状を有している。例えば、係合突起338cは、周壁333からZ軸方向のマイナス側に突出したばね性を有する突片部340と、突片部340の先端部に形成した外向きのフック係止部341と、を有している。フック係止部341は、係合突起338cが係合スリット38cに挿入される際の挿入動作を案内する傾斜面344と、係合スリット38cの開口縁(底壁36のZ軸方向マイナス側の面)に接触して係止される係止面345と、を有している。
【0027】
係合突起338a、338b、338cのうち、係合突起338cは、他の係合突起338a、338bよりも長く延びている。詳細には、係合突起338cのフック係止部341は、係合突起338a、338bのフック係止部341よりもZ軸方向のマイナス側に長く延びている。ただし、係合突起338a、338b、338cでは、係止面345のZ軸方向における位置が互いに同じとなっている。そして、係合突起338a、338b、338cのうち、係合突起338cが、ボス部20のストッパ200に当接するストッパ当接部300として機能している(詳細は後述する)。
【0028】
図4及び5に戻って、支持ユニット4a、4bについて説明する。
支持ユニット4a、4bは、それぞれ複数(ここでは2つずつ)あり、エアバッグモジュール3の底部に配設されている。2つの支持ユニット4a、4aは、Y軸方向のプラス側において、また、2つの支持ユニット4b、4bは、Y軸方向のマイナス側において、それぞれ、X軸方向の両側に配設されている。別の見方をすれば、エアバッグモジュール3をZ軸方向に直交する平面においてアナログ12時間時計で見た場合、概略、2時及び10時の方向に支持ユニット4a、4aが配置され、4時及び8時の方向に支持ユニット4b、4bが配置されているとみることもできる。
【0029】
なお、支持ユニット4a、4bの数及び配置個所は、適宜設定することができる。例えば、他の実施態様では、支持ユニット4aの数を3つとし、アナログ12時間時計で見た場合に、3時、6時及び9時の方向に配置してもよい。また、支持ユニット4a及び支持ユニット4bの一方を省略してもよい。支持ユニットによって芯金2に対するエアバッグモジュール3の可動性(とりわけ、Z軸方向に沿った移動及びZ軸方向に交差する方向における揺動)を確保することができる限り、各種の支持ユニットを用いることができることに留意されたい。以下、一例として、ダンパ機能を有する支持ユニット4aと、これとは異なる支持ユニット4bについて説明する。
【0030】
支持ユニット4aは、ピン41、スプリング42及びダンパアッセンブリ43を有しており、芯金2の振動をエアバッグモジュール3に伝達するモジュールダンパを構成している。すなわち、支持ユニット4aは、車両からの振動を減衰するダイナミックダンパとして機能する。
【0031】
ダンパアッセンブリ43は、エアバッグモジュール3の底部の開口部34aに取り付けられている。ダンパアッセンブリ43は、弾性体45と、弾性体45を保持するインナースリーブ46及びアウタースリーブ47と、弾性体45の上面を覆う環状ピース48と、を有している。弾性体45は、ステアリングホイール1の振動を抑制するためのものであり、例えばゴムやシリコン等により、環体状に形成されている。インナースリーブ46、アウタースリーブ47及び環状ピース48は、例えば樹脂から形成され、これらが囲む空間に弾性体45を保持している。
【0032】
インナースリーブ46の内側には、ピン41が挿通されている。インナースリーブ46は、ピン41に対してZ軸方向に摺動可能に構成されている。アウタースリーブ47は、開口部34aに取り付けられる。かかる取り付けによって、支持ユニット4aがエアバッグモジュール3の底部に固定される。したがって、エアバッグモジュール3がZ軸方向において移動すると、エアバッグモジュール3と一緒にダンパアッセンブリ43もZ軸方向に移動し、この移動の際に、ダンパアッセンブリ43のインナースリーブ46がピン41に対して摺動する。
【0033】
ピン41は、Z軸方向に延びており、インナースリーブ46の内側において開口部34aに挿通されている。ピン41のZ軸方向における一端は、フランジ状に形成されており、このフランジ部の下側にダンパアッセンブリ43の上部(インナースリーブ46の外向き縁部、環状ピース48及びアウタースリーブ47の上端)が位置している。また、ピン41のZ軸方向における他端部は、カラー51の内側に挿入されて取付け孔27に挿通されている。ピン41の先端部の係止溝44には、芯金2に取り付けられた保持スプリング52が係止されており、これにより、ピン41が芯金2に対して固定されている。
【0034】
スプリング42は、ピン41の外周を取り巻くようにして設けられたコイルスプリングからなり、エアバッグモジュール3を芯金2から離れる方向に付勢する。スプリング42は、一端がインナースリーブ46の保持部46aに保持され、他端が自由端となっており(参照:図4)、この自由端がカラー51のフランジ部53上に着座する。
【0035】
支持ユニット4bは、図4に示すように、ブッシュ61及びスプリング62を有しており、エアバッグモジュール3を芯金2から離れる方向に付勢する。ブッシュ61は、エアバッグモジュール3の底部(ロックプレート34)に固定されている。スプリング62は、コイルスプリングからなり、一端がブッシュ61に保持され、他端が自由端となっており、この自由端がボス部20のバネ受け面28に着座する。
【0036】
次に、図3及び4に戻って、ステアリングホイール1が有するホーン機構70の一例について説明する。
ホーン機構70は、可動接点71及び固定接点72を有している。可動接点71は、図4に示すように、エアバッグモジュール3に設けられている。ここでは、可動接点71は、ロックプレート34の平板部に二か所配置されている。固定接点72は、図3に示すように、芯金2のボス部20に二か所配置されている。詳細には、固定接点72、72は、凸部29、29の頂面29a、29aに設けられている。可動接点71及び固定接点72は、通電時にホーンを鳴らすホーン回路(図示省略)に接続されている。
【0037】
可動接点71及び固定接点72は、通常時、Z軸方向において互いに隙間を存して対向している。この状態からエアバッグモジュール3(モジュールカバー33)が芯金2に向けてZ軸方向のマイナス側に押されると、エアバッグモジュール3が支持ユニット4a、4bのスプリング42、62の付勢力に抗して芯金2に近づき、可動接点71が固定接点72に接触する。この接触により、ホーン機構70は、ホーン作動状態となり、ホーンを鳴らす。一方、エアバッグモジュール3の押し下げが解放されると、エアバッグモジュール3はスプリング42、62の付勢力によって元の位置に戻され、ホーン非作動状態となる。
【0038】
他の実施態様では、別の又は追加のホーン機構70を設けてもよい。例えば、図5に示すように、ホーン機構70aの可動接点71aをハウジングの底壁36に設け、ホーン機構70aの固定接点72aをピン41のZ軸方向における一端に設けてもよい。
【0039】
次に、図8~10を参照して、エアバッグモジュール3の揺動抑制構造400(ストッパ200及びストッパ当接部300)について説明する。
【0040】
エアバッグ非作動状態では、エアバッグモジュール3は、主として支持ユニット4aのスプリング42及び支持ユニット4bのコイルスプリング62によって芯金2に弾性的に支持され、芯金2に対して可動(とりわけZ軸方向に沿って移動可能)となっている。
一方、エアバッグ作動時では、膨張展開したエアバッグクッション30によって、エアバッグモジュール3は、支持ユニット4aのスプリング42及び支持ユニット4bのコイルスプリング62に支持されながら、Z軸方向に交差する方向において芯金2に対して揺動する。本実施形態では、かかる揺動を妨げるように、揺動抑制構造400によって、芯金2に対するエアバッグモジュール3のY軸方向プラス側への不要な揺動を抑制している。
【0041】
揺動抑制構造400は、ボス部20及びエアバッグモジュール3の一方が有するストッパ200と、ボス部20及びエアバッグモジュール3の他方が有するストパット当接部300と、を備えている。上記したように、ここでは、ストッパ200はボス部20に設けられ、ストッパ当接部300はエアバッグモジュール3のモジュールカバー33に設けられている。また、モジュールカバー33の係合突起338cがストッパ当接部300として機能している。
【0042】
エアバッグ非作動状態において、ストッパ200は、ストッパ当接部300から離間している。ストッパ200とストッパ当接部300とは、例えば2mm程度の隙間を存して対向している。一方、エアバッグ作動時において、エアバッグクッション30が膨張展開することによってエアバッグモジュール3が移動又は変形することにより、ストッパ200はストッパ当接部300と当接する。
【0043】
ストッパ200は、Z軸方向に延在するようにボス部20に設けられている。詳細には、ストッパ200は、ボス部20のベース面20aからZ軸方向のプラス側に壁状に立ち上がっている。また、ストッパ200は、頂面201から根元部にかけてやや末広がりに形成されている。ストッパ200は、ボス部20に一体に形成されている。例えば、芯金2を鋳造により成形する場合、ストッパ200は、芯金2のボス部20の他の部分と一緒に成形される。
【0044】
ストッパ200は、ボス部20の凸部29に連結されている。具体的には、ストッパ200は、高さ方向及び厚み方向の両者に直交する幅方向(X軸方向)において、一端が凸部29の側部につながっている。ストッパ200の幅方向における他端は、シャフト取付け部23とブリッジ部26との間の空間に面している。ストッパ200の高さ(壁高さ)は、凸部29の高さと同じとなっており、ストッパ200の頂面201と凸部29の頂面29aとは互いに面一でつながっている。
【0045】
ストッパ200は、エアバッグ作動時に、Z軸方向に交差する方向においてストッパ当接部300と当接する。ここでは、ストッパ200は、Y軸の方向においてストッパ当接部300と当接する。このため、ストッパ200は、Y軸方向のマイナス側の壁面に、ストッパ当接部300と当接する当接面202を有している。
【0046】
ストッパ200は、シャフト取付け部23(ステアリングシャフト100)から見て、Y軸方向のマイナス側に位置している。ここでは、ストッパ200は、2つあり、Y軸に対して対称配置されている(参照:図3)。より詳細には、上記のアナログ12時間時計で芯金2を見た場合、4時及び8時の方向にストッパ200、200が位置しているとみることもできる。
【0047】
ストッパ当接部300(係合突起338c)は、Z軸方向に延在するようにモジュールカバー33に設けられている。ストッパ当接部300は、モジュールカバー33から突出するように延びていて、先端側がストッパ200に対向していると共に、先端側ではない一部(係止面345)がハウジング31の底壁36に係合している。また、ストッパ当接部300の先端は、ボス部20の表面(ベース面20a)から離間している。
【0048】
ストッパ当接部300は、ストッパ200の当接面202と対向する当接面302を有している。当接面302は、ストッパ当接部300の内側面(Y軸方向のプラス側の面)の一部であり、ここでは、フック係止部341において傾斜面344と反対側に位置する面となっている。
【0049】
ストッパ当接部300は、ストッパ200の数や配置に対応して設けることができる。ここでは、2つのストッパ200に対応して、2つのストッパ当接部300がY軸に対して対称配置されている(参照:図4)。他の実施態様では、ストッパ当接部300の個数や配置などを変更することも可能である。例えば、複数のストッパ200に対応して、1つのみのストッパ当接部とすることも可能であるし、この逆も可能である。
【0050】
図11及び12を参照して、エアバッグ作動時における、ストッパ200とストッパ当接部300との関係を説明する。図12は、エアバッグ作動時におけるストッパ200及びストッパ当接部300の状況を時間経過に沿って示したものである。図12(a)はエアバッグ作動開始前(すなわちエアバッグ非作動状態)を示し、図12(b)~(f)はエアバッグ作動開始後を時間経過に沿って示しており、例えば図12(b)はエアバッグ作動開始から3ms後の状況を示している。
【0051】
図12(a)に示すエアバッグ非作動状態においては、ストッパ200は、ストッパ当接部300から離間している。一方、図12(b)~(f)に示すエアバッグ作動時においては、ストッパ当接部300が、ストッパ200に対して動いてストッパ200に当接する。これは、エアバッグ作動時に、膨張展開したエアバッグクッション30によってエアバッグモジュール3が変形又は移動することによりなされる。
【0052】
具体的には、エアバッグクッション30が膨張展開すると、エアバッグクッション30の内圧がモジュールカバー33の周壁333に作用する。この膨張展開による荷重の作用によって、ストッパ当接部300が、ハウジング31との係合箇所(係止面345)を支点として内向きに回動する(参照:図12(b))。かかる回動によって、ストッパ当接部300の先端側(ここでは当接面302の先端側)がストッパ200の当接面202に当接する。
【0053】
エアバッグクッション30が膨張展開した際、エアバッグクッション30の内圧によって、エアバッグモジュール3は、Z軸方向に交差する方向(例えばXY面)において芯金2に対して揺動する。かかる揺動により、ストッパ当接部300が一時的にストッパ200から離間する(参照:図12(c))ものの、揺動するエアバッグモジュール3がY軸方向プラス側に移動した際には、ストッパ当接部300の先端側(ここでは当接面302の基端側)がストッパ200の当接面202に再び当接する(参照:図12(d))。その後、ストッパ当接部300とストッパ200との当接は継続されつつ、エアバッグモジュール3の揺動の方向がY軸方向マイナス側へと移り変わっていく(参照:図12(e)及び(f))。
【0054】
このように、膨張展開したエアバッグクッション30によって、まず、エアバッグモジュール3のストッパ当接部300が変形することにより、ストッパ当接部300がストッパ200に当接する。続いて、ストッパ当接部300は一時的(瞬間的)にはストッパ200から離れるものの、その直後には、エアバッグモジュール3全体が移動することにより、ストッパ当接部300がストッパ200に当接する。
【0055】
したがって、エアバッグ作動時におけるエアバッグモジュール3のY軸方向プラス側の不要な揺動を抑制することができる。すなわち、エアバッグモジュール3のY軸方向プラス側の変位量を、ストッパ当接部300とストッパ200との初期のクリアランス(2mm程度)に抑えることができる。
【0056】
なお、図12(f)に示す状態後においても、エアバッグモジュール3は、所定時間、揺動を続ける。例えば、図12(f)に示す状態後、エアバッグモジュール3は、Y軸方向マイナス側に変位し、再度Y軸方向プラス側に変位する。この再度Y軸方向プラス側に変位した際に、ストッパ当接部300がストッパ200に当接し得る。また、最初のY軸方向プラス側への変位の際にストッパ当接部300がストッパ200に当接するため(参照:図12(d)~(f))、ストッパ200及びストッパ当接部300を具備しないステアリングホイールに比べると、その後にY軸方向マイナス側へ変位を開始するタイミングを遅くすることができる。これは、エアバッグクッション30の初期展開の安定性につながる。
【0057】
以上説明した本実施形態の作用効果を説明する。
実施形態に係るステアリングホイール1は、ステアリングシャフト100に取付け可能に構成されたボス部20を有する芯金2と、芯金2に対して可動に設けられた、膨張展開可能なエアバッグクッション30を有するエアバッグモジュール3と、を備え、芯金2及びエアバッグモジュール3の一方はストッパ200を有し、芯金2及びエアバッグモジュール3の他方はストッパ当接部300を有している。そして、ストッパ200は、エアバッグ非作動状態において、ストッパ当接部300から離間している一方、エアバッグ作動時において、エアバッグクッション30が膨張展開することによってエアバッグモジュール3が移動又は変形することにより、ストッパ当接部300と当接するように構成されている。
【0058】
この態様によれば、エアバッグ作動時、移動又は変形したエアバッグモジュール3と芯金2との間で干渉(ストッパ200とストッパ当接部300との当接)が起こる。これにより、エアバッグ作動時にエアバッグモジュール3が芯金2に対して揺動した際の、エアバッグモジュール3の不要な揺動を抑制することができる。したがって、エアバッグクッション30の所定の展開性能を確保することができる。
【0059】
また、実施形態によれば、ストッパ200は、芯金2のボス部20に設けられ、ストッパ当接部300は、エアバッグモジュール3に設けられている。これにより、エアバッグモジュール3の不要な揺動の抑制を、ボス部20及びエアバッグモジュール3を有効に利用して達成することができる。
【0060】
さらに、実施形態によれば、ストッパ200は、Z軸方向に交差する方向(上記の例ではY軸方向)においてストッパ当接部300と当接する。よって、Z軸方向に交差する方向におけるエアバッグモジュール3の不要な揺動が抑制される。
【0061】
また、実施形態によれば、ストッパ200は、複数あり、Y軸に対して対称配置されている。これにより、エアバッグ作動時、バランスよく、エアバッグモジュール3の不要な揺動を抑制することができる。
【0062】
また、実施形態によれば、ストッパ200は、ボス部20の表面からZ軸方向に壁状に立ち上がっている。そして、ボス部20の表面には、Z軸方向に突出する凸部29が形成されており、凸部29には、ホーン機構70の固定接点72が設けられ、ストッパ200は、Z軸方向に延在する部位の少なくとも一部が凸部29に連結されている。これにより、ホーン機構70のための凸部29を有効に利用して、ストッパ200自体の強度を向上することができる。
【0063】
さらに、実施形態によれば、ストッパ当接部300は、モジュールカバー33をハウジング32に取り付ける複数の係合突起338a、338b、338cの少なくとも一つ(上記の例では2つの係合突起338c)に形成されている。これにより、モジュールカバー33をハウジング32に取り付けるための構造を有効に利用して、エアバッグモジュール3側にストッパ当接部300を設けることができる。
【0064】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
【0065】
例えば、ストッパ200の個数、配置、当接する方向などを変更することも可能である。例えば、1つのみのストッパとする場合、アナログ12時間時計の6時の方向の位置にのみストッパを設けてもよい。あるいは、上記の2つのストッパ200、200の他端同士をつないで単一のストッパとしてもよい。ただし、この場合、タブ39を避ける必要があることは言うまでもない。
【0066】
また、上記のストッパ200の構成に加え又はこれとは別に、ステアリングシャフト100から見てY軸方向のプラス側にストッパを設けてもよいし、ステアリングシャフト100から見てX軸方向のプラス側及び/又はマイナス側にストッパを設けてもよい。さらに、XYの直交座標系における一つの側(例えばY軸方向のマイナス側)に3つ以上のストッパを設けてもよい。ただし、この場合、複数のストッパは、X軸又はY軸に対して対称配置された一対のストッパを有するとよい。
【0067】
また、ストッパ当接部300を複数の係合突起338a、338b、338cに形成するのではなく、これらから独立して形成してもよい。例えば、モジュールカバー33の頂壁332の内面から垂下した部位にストッパ当接部を設けてもよい。
【0068】
また、ストッパ当接部300をモジュールカバー33以外のエアバッグモジュール3の他の部材に設けてもよい。例えば、ハウジング32又はロックプレート34に設けてもよい。
【0069】
また、ストッパ当接部300として、ばね性を有しない又は変形しない構成としてもよい。ストッパ当接部300が変形しない場合(例えば上記のように回動しない場合)、エアバッグ作動時において、膨張展開したエアバッグクッション30によって、エアバッグモジュール3全体が移動し、それによりストッパ当接部300がストッパ200に当接することになる。
【0070】
また、ストッパ200とストッパ当接部300とが互いに当接する部位(例えば、当接面202及び当接面302の両方又は一方)に、衝撃を吸収する部材(緩衝材)を設けたり、衝撃を吸収するための表面処理をしたりしてもよい。
【0071】
<変形例:補強部の追加>
次に、図13~15を参照して、上記実施形態に補強部510、520、530を追加した例について説明する。
【0072】
エアバッグモジュール3は、ストッパ当接部300から見てストッパ200とは反対側に補強部510、520、530を有している。補強部510、520、530は、ストッパ200がストッパ当接部300と当接した際の、ストッパ当接部300の変形を阻止するように構成されている。かかる変形の阻止は、とりわけ、比較的柔らかい素材からなるモジュールカバー33にストッパ当接部300が形成されている場合に有効となる。補強部510、520、530は、上記したエアバッグモジュール3に追加した別部材で構成することもできるし(参照:図13)、あるいは、エアバッグモジュール3の上記部材(ハウジング31又はロックプレート34)を利用することで構成することもできる(参照:図14図15)。
【0073】
例えば、図13に示すように、補強部510は、ハウジング31に取り付けられた補強板で構成することができる。補強板の取り付けは、ビス、リベット、ねじ又は溶接など、各種の方法を用いることができる。この中では溶接が取り付けやすい。補強部510は、ハウジング31の周壁37の下端に取り付けられ、底壁36から突出するように底壁36を超えてZ軸方向マイナス側に延在している。補強部510は、ストッパ当接部300のY軸方向マイナス側に位置し、フック係止部341のストレート面346に対向している。ストレート面346は、フック係止部341において、傾斜面344と係止面345とをつなぐ面である。
【0074】
エアバッグ作動時、ストッパ200とストッパ当接部300との当接によって、エアバッグモジュール3のY軸方向プラス側の不要な揺動が抑制される。このとき、ストッパ当接部300はストッパ200によってY軸方向マイナス側に押されるが、ストッパ当接部300は補強部510に当たる。これにより、ストッパ当接部300の弾性変形及び/又は塑性変形が阻止されるようになる。
【0075】
図14は、補強部520をハウジング31に形成した一例を示している。ここでは、補強部520は、ハウジング31の底壁36の一部を切り起すことで形成されており、底壁36から突出するようにZ軸方向マイナス側に延在している。具体的には、上述した底壁36の係合スリット38cの一部をY軸方向マイナス側にさらに切り込むように形成し、その切り込んだ部分をZ軸方向マイナス側に立ち上げることで、補強部520を形成している。ここでは、係合スリット38cのX軸方向の両端部に補強部520、520が形成され、この補強部520、520の間で係止面345がハウジング31の底壁36に係合している。補強部520は、ストッパ当接部300のY軸方向マイナス側に位置し、少なくともフック係止部341のストレート面346に対向している。
【0076】
エアバッグ作動時、ストッパ200とストッパ当接部300との当接によって、エアバッグモジュール3のY軸方向プラス側の不要な揺動が抑制される。このとき、ストッパ当接部300はストッパ200によってY軸方向マイナス側に押されるが、ストッパ当接部300は補強部520に当たる。これにより、ストッパ当接部300の弾性変形及び/又は塑性変形が阻止されるようになる。図14に示す補強部520によれば、既存の部材(ハウジング31)の底壁36の加工によってストッパ当接部300の変形を阻止することができ、図13に示す補強部510のような新たな部材が不要となる。
【0077】
図15は、補強部530をロックプレート34に形成した一例を示している。ここでは、補強部530は、ロックプレート34の平坦部の一部を切り起すことで形成されており、ロックプレート34から突出するようにZ軸方向マイナス側に延在している。具体的には、ストッパ当接部300を囲むような部分540をロックプレート34に形成し、その一部であるY軸方向マイナス側の部分にZ軸方向マイナス側に立ち上げた部分を設けている。この立ち上げた部分が補強部530となっている。補強部530は、ストッパ当接部300のY軸方向マイナス側に位置し、フック係止部341のストレート面346に対向している。
【0078】
エアバッグ作動時、ストッパ200とストッパ当接部300との当接によって、エアバッグモジュール3のY軸方向プラス側の不要な揺動が抑制される。このとき、ストッパ当接部300はストッパ200によってY軸方向マイナス側に押されるが、ストッパ当接部300は補強部530に当たる。これにより、ストッパ当接部300の弾性変形及び/又は塑性変形が阻止されるようになる。図15に示す補強部530によれば、既存の部材(ロックプレート34)の平坦部の加工によってストッパ当接部300の変形を阻止することができ、図13に示す補強部510のような新たな部材が不要となる。
【0079】
<実施形態2>
次に、図16~18を参照して、実施形態2に係るストッパ1200及びストッパ当接部1300について説明する。実施形態2では、ストッパ1200は、Z軸方向に突出するように設けられ、ストッパ当接部1300は、ストッパ1200が遊嵌される受け穴として形成される。そして、エアバッグ作動時において、ストッパ1200が受け穴の内面1301と当接するように構成されている。
【0080】
例えば、ストッパ当接部1300は、芯金2に形成されている。詳細には、ストッパ当接部1300は、芯金2のバネ受け面28を貫通して形成されている。ストッパ1200は、ピン部材として形成され、支持ユニット4bの位置に設けられる。詳細には、ストッパ1200は、Z軸方向に延びており、支持ユニット4bのスプリング62の内側に配置される。ストッパ1200のZ軸方向の一端1210は、支持ユニット4bのブッシュ61又はエアバッグモジュール3の底部(ロックプレート34)に固定されている。ストッパ1200のZ軸方向の他端1220は、ストッパ当接部1300としての受け穴に挿入されており、受け穴の内面1310に対して周方向にわたって所定のクリアランスで離間している。このクリアランスは、例えば実施形態1におけるストッパ当接部300とストッパ200とのクリアランス(2mm程度)と同様にすることができる。
【0081】
この態様によれば、エアバッグ作動時、移動したエアバッグモジュール3と芯金2との間で干渉(ストッパ1200とストッパ当接部1300の内面1310との当接)が起こる。これにより、エアバッグ作動時にエアバッグモジュール3が芯金2に対して揺動した際の、エアバッグモジュール3の不要な揺動を抑制することができる。また、ストッパ当接部1300がストッパ1200を周方向にわたって遊嵌する穴であるため、Y軸方向だけではなく、X軸方向を含む多数の方向(Z軸方向に交差する全方向)にストッパ機能を持たせることができる。
【0082】
以上説明した実施形態2は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。技術的に可能である限り、実施形態1におけるストッパ200及びストッパ当接部300に関する配置などの構成(変形例を含む。)を実施形態2に適用することができる。また、実施形態2と実施形態1とを組み合わせることも可能である。
【0083】
<実施形態3>
次に、図19及び20を参照して、実施形態3に係るストッパ2200及びストッパ当接部2300について説明する。実施形態3では、タブ39及びタブ係合部26aを利用して、ストッパ当接部2300及びストッパ2200を構成している。
【0084】
具体的には、上記のとおり、エアバッグモジュール3は、受入れ開口394を有するタブ39を備え(参照:図1及び16)、芯金2は、Z軸方向に交差する方向(ここではY軸方向)においてタブ39の表側からタブ39の裏側へと受入れ開口394に挿通されたタブ係合部26aを備えている。タブ係合部26aは、タブ39の裏面39aに対向する屈曲部位にストッパ2200を有している。そして、エアバッグ作動時において、ストッパ2200は、ストッパ当接部2300としてのタブ39の裏面39aと当接するように構成されている。
【0085】
詳細には、タブ係合部26aは、Y軸方向に延在する係合部本体2600と、係合部本体2600の先端からX軸方向に屈曲して延在するストッパ2200と、を有している。係合部本体2600は、根元側がブリッジ部26につながっている。ストッパ2200は、先端がX軸方向の一方側(ここではマイナス側)に傾けられるように係合部本体2600につながっている。係合部本体2600及びストッパ2200は、受入れ開口394に挿通可能に構成されている。挿通させる際には、タブ39を少し捩り、タブ39の表側(Y軸方向のマイナス側)からその裏側(Y軸方向のプラス側)へとストッパ2200を受入れ開口394に通過させ、その後、捩ったタブ39を元の形に戻すようにする。この挿通された状態では、ストッパ2200は、タブ39の板バネ391の裏面39aに対向し、離間する。また、この挿通状態では、上記同様に、係合部本体2600の下面にインシュレータ392の受入れ開口394側の端面(上面)が対向し、係合部本体2600の根元部分(芯金2のブリッジ部26の側面)にインシュレータ392のY軸方向マイナス側の面が弾性的に当接する(参照:図1及び4)。
【0086】
この態様によれば、エアバッグ作動時、移動したエアバッグモジュール3と芯金2との間で干渉(ストッパ2200と、ストッパ当接部2300としての裏面39aとの当接)が起こる。これにより、エアバッグ作動時にエアバッグモジュール3が芯金2に対して揺動した際の、エアバッグモジュール3の不要な揺動を抑制することができる。とりわけ、エアバッグ作動時、エアバッグモジュール3がY軸方向のプラス側に移動すると、これとともにタブ39もY軸方向のプラス側に移動しようとするが、タブ39の裏面39aがストッパ2200に当接してひっかかり、それ以上の移動が規制されるようになる。
【0087】
以上説明した実施形態3は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。技術的に可能である限り、実施形態1及び2におけるストッパ200、1200及びストッパ当接部300、1300に関する配置などの構成(変形例を含む。)を実施形態3に適用することができる。また、実施形態1~3を適宜組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0088】
1…ステアリングホイール、2…芯金、3…エアバッグモジュール、4a、4b…支持ユニット、20…ボス部、20a…ベース面、21…リム部、22…スポーク部、23…シャフト取付け部、24…ベース部、25…傾斜部、26…ブリッジ部、26a…タブ係合部、27…取付け孔、28…バネ受け面、29…凸部、29a…頂面、30…エアバッグクッション、31…ハウジング、32…インフレータ、32a…固定プレート、33…モジュールカバー、34…ロックプレート、34a…開口部、35…底面、36…底壁、37…周壁、38a、38b、38c…係合スリット、39…タブ、39a…裏面、41…ピン、42…スプリング、43…ダンパアッセンブリ、44…係止溝、45…弾性体、46…インナースリーブ、46a…保持部、47…アウタースリーブ、48…環状ピース、51…カラー、52…保持スプリング、53…フランジ部、61…ブッシュ、62…スプリング、70、70a…ホーン機構、71、71a…可動接点、72、72a…固定接点、100…ステアリングシャフト、200…ストッパ、201…頂面、202…当接面、300…ストッパ当接部、302…当接面、331…頂面、332…頂壁、333…周壁、338a、338b、338c…係合突起、340…突片部、341…フック係止部、344…傾斜面、345…係止面、346…ストレート面、391…板バネ、392…インシュレータ、394…受入れ開口、400…揺動抑制構造、510、520、530…補強部、540…部分、1200…ストッパ、1210…一端、1220…他端、1300…ストッパ当接部(受け穴)、1310…内面、2200…ストッパ、2300…ストッパ当接部、2600…係合部本体
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