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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-31
(45)【発行日】2024-08-08
(54)【発明の名称】磁気軸受装置および位置決めシステム
(51)【国際特許分類】
   H02K 41/02 20060101AFI20240801BHJP
   H02K 41/03 20060101ALI20240801BHJP
   F16C 32/04 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
H02K41/02 C
H02K41/03 A
F16C32/04 Z
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2023515849
(86)(22)【出願日】2021-09-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-22
(86)【国際出願番号】 EP2021074649
(87)【国際公開番号】W WO2022053480
(87)【国際公開日】2022-03-17
【審査請求日】2023-05-02
(31)【優先権主張番号】102020123634.4
(32)【優先日】2020-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】505257752
【氏名又は名称】フィジック インストゥルメント(ピーアイ)ゲーエムベーハー アンド ツェーオー.カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グース,アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ガイスラー,ダニエル
【審査官】佐藤 彰洋
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/128321(WO,A1)
【文献】特開昭61-092158(JP,A)
【文献】特表2009-516495(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105387310(CN,A)
【文献】独国特許出願公開第102012207082(DE,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0166965(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 41/02
H02K 41/03
F16C 32/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータ(2)と移動部材(3)とを備える磁気軸受装置(1)であって、
前記ステータ(2)は、
石(5)と
束誘導部材(6a~6c)と、
複数のコイル本体(4-1)を有する少なくとも1つのコイルデバイス(4)と、を有し、
前記移動部材(3)は、磁束誘導部材(7)を少なくとも有し、
前記移動部材(3)は、移動方向(x)に沿って前記ステータ(2)に対して移動可能であり、
前記ステータ(2)および前記移動部材(3)は、前記ステータ(2)と前記移動部材(3)との間に空隙を形成するために前記コイルデバイス(4)に電気エネルギーが印加されたときに前記移動部材(3)に磁力を加えることができるように構成されており、
前記コイルデバイス(4)が前記ステータ(2)にのみ配置され、
前記移動方向(x)における前記移動部材(3)の長さ前記移動方向(x)における前記ステータ(2)の長さよりも小さく、
前記移動方向(x)における前記ステータ(2)の前記長さは、前記移動方向(x)における記コイル本体(4-1)の長さに対応し、
前記コイルデバイス(4)が、前記移動方向(x)に対して垂直な方向において上下に配置されたコイル本体(4-1)を備え、
前記磁石(5)が、前記コイル本体(4-1)の間の磁力が作用する方向に対して垂直な平面(xy)内に配置されていることを特徴とする、磁気軸受装置。
【請求項2】
前記移動部材(3)の前記移動方向(x)の長さが、前記ステータ(2)の前記移動方向(x)長さの3/4未満であることを特徴とする、請求項1に記載の磁気軸受装置。
【請求項3】
前記移動部材(3)が、前記ステータ(2)を挟んで配置され、少なくとも部分的に非磁性である要素によって互いに接続された少なくとも2つの磁束誘導部材(7)を備えることを特徴とする、請求項1または2に記載の磁気軸受装置。
【請求項4】
各コイル本体(4-1)が、磁力が作用する方向に対して垂直な個々の平面(xy)内に延在し、前記移動方向(x)における前記ステータ(2)の前記磁石(5)および磁束誘導部材(6)の長さは、各コイル本体(4-1)の、前記移動方向(x)に対して平行に延在する部分の長さに対応することを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の磁気軸受装置。
【請求項5】
前記ステータ(2)内の前記磁石(5)が各々、2つの磁束誘導部材(6a~6c)の間に配置されることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の磁気軸受装置。
【請求項6】
各コイル本体(4-1)が開口部を備え、各コイル本体(4-1)の前記開口部に磁束誘導部材(6a)が配置されていることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の磁気軸受装置。
【請求項7】
各コイル本体(4-1)が、平行にかつ前記移動方向(x)に延在する2つの磁束誘導部材(6b、6c)の間に配置され、前記磁束誘導部材(6c)のうちの少なくとも1つが、さらなる構造体に結合され得る結合部を備えることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の磁気軸受装置。
【請求項8】
前記ステータ(2)が、前記移動方向(x)に対して垂直な平面における断面が十字形の中央磁束誘導部材(6a)を備え、磁力が作用する方向において前記中央磁束誘導部材(6a)の対向して配置された断面が、互いに異なる前記コイル本体(4-1)の開口部内に配置されていることを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の磁気軸受装置。
【請求項9】
前記磁気軸受装置(1)が、磁が作用する方向対して垂直な平面(xy)内および前記移動方向(x)に垂直な方向(y)内で前記移動部材(3)を移動させるように構成された磁気誘導部(8)を備えることを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載の磁気軸受装置。
【請求項10】
前記磁気誘導部(8)が、前記移動部材(3)に接続された誘導移動部材(9)を備え
前記磁気誘導部(8)が、平面(xy)内に延在する一対のコイル本体(10)を有するコイルデバイスを備え、前記ステータ(2)および前記移動部材(3)が、前記一対のコイル本体(10)の上方でこの平面(xy)に垂直な方向(z)に配置され、前記誘導移動部材(9)が、前記移動部材(3)と前記一対のコイル本体(10)との間に配置され、前記誘導移動部材(9)が、永久磁石を備えることを特徴とする、請求項9に記載の磁気軸受装置。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の磁気軸受装置(1)と、ケーシング(12)と、プラットフォーム(13)とを少なくとも備え、前記ステータ(2)が前記ケーシング(12)に結合され、前記プラットフォーム(13)が前記移動部材(3)に結合されている、位置決めシステム(11)。
【請求項12】
前記プラットフォーム(13)を前記ケーシング(12)に対して前記移動方向(x)に移動させるように構成されたリニアモータ(14)をさらに備える、請求項11に記載の位置決めシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気軸受装置および位置決めシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
請求項1の前文に記載の磁気軸受装置は、Sang-Ho Leeらによる刊行物1「Design of Novel Permanent Magnet Biased Linear Magnetic Bearing and its Application to High-Precision Stage」およびDong-Chul Hanらによる刊行物2「The High Precision Linear Motion Table With a Novel Rare Earth Permanent Magnet Biased Magnetic Bearing Suspension」から知られている。
【0003】
刊行物1には、ステータと、移動方向に沿ってステータに対して移動可能な移動部材とを備える磁気軸受装置が記載されている。磁気軸受装置は、実質的に磁束誘導部材、磁石、およびコイルから組み立てられ、コイルに電気エネルギーが印加されると、移動部材の重量力を完全に補償することを可能にする磁力を移動部材に加えることができ、それによって移動部材に持ち上げ力として作用するように構成される。特に、通電されたコイルは、磁石によって生成された磁場と相互作用する磁場を生成する。能動要素(コイル)は移動部材内に配置され、これは、電力の供給に必要なケーブルが移動部材に取り付けられなければならず、移動部材がステータに対して移動するときに一緒に運ばれなければならないという欠点を有する。あるいは、無線エネルギー伝送が提供されなければならないか、またはエネルギー支持要素が移動部材内に配置されなければならず、これは移動部材の重量の大幅な増加をもたらす。さらに、この構成では、電気的に誘導された熱入力は、空気を介して、場合によってはケーブルを介してのみ放散することができる。
【0004】
刊行物2には、同様に刊行物1の磁気軸受装置の構造の一部を備えるXYテーブルが記載されている。しかしながら、そこでは能動要素(コイル)はステータの一部であり、これは、電気エネルギーがもはや移動部材に供給される必要がないことを意味する。しかしながら、この構成の欠点は、移動部材の運動中の移動部材座標系と比較して、調整範囲が著しく短く、力印加点が変化することである。特に、力印加点は幾何学的寸法に起因して位置依存性であり、それによって位置依存性レバーアームがトルクに関して生じ、これはそのようなシステムを制御するのに不利であり、また移動方向に沿って位置依存性の出力要件をもたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明は、移動部材の単純で独立した構成、電気的に誘導される熱入力の十分に大きい放散、ならびにより大きな調整範囲にわたる位置に依存しない制御が得られるように、請求項1の前文に記載の磁気軸受装置を改善するという目的に基づく。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために、本発明は、請求項1に記載の磁気軸受装置を提供する。
この目的は、コイルデバイスがステータにのみ配置され、移動部材の移動方向の延伸が、ステータのこの方向の延伸よりも小さく、ステータの延伸が、少なくとも1つのコイル本体の長さに対応することで満たされる。
【0007】
能動素子(すなわち、コイルデバイスまたはそのコイル本体)はステータの一部であるため、エネルギーを移動部材に伝達する必要はない。したがって、移動部材は、完全に受動的なアセンブリを具体化し、これは、その寸法および重量に関して最小限に低減することができる。結果として、加速および移動に必要な力を低減することができ、またはより高い加速度を得ることができる。全体として、移動部材をステータに沿って移動させるために必要な電力入力を、結果として大幅に低減することができる。さらに、移動方向に沿って磁束誘導部材に磁気反転プロセスがほとんど生じず、これは、磁束誘導部材に非常に小さなヒステリシス損失しか生じないことを意味する。
【0008】
ステータ内のコイルデバイスの配置により、熱入力もステータ内でのみ行われる。固定部品としてのステータと隣接する構造体、特にケーシングとの間で高い熱結合を達成することができるため、熱入力をステータから効率的に放散することができる。
【0009】
この方向のステータの延伸と比較して移動方向の移動部材の延伸が小さいことにより、位置に依存しないレバーアーム長がもたらされる。結果として、電力要件は移動部材の位置とは無関係であり、システム理論の観点からより線形なシステムが作成される。加えて、これにより、生じたトルクに関して大幅に少ない変化で移動部材をステータに沿って変位させることが可能になる。その結果、本発明による磁気軸受装置は、機械誘導部と同様に、力およびトルク定数を変化させることなく、またはほとんど変化させることなく、移動部材をステータに沿って変位させることができる。
【0010】
有利なさらなる発展が、従属請求項の目的である。
移動部材の移動方向の延伸が、ステータのこの方向の延伸の3/4未満、好ましくは1/2未満、好ましくは1/3未満、特に好ましくは1/4以下であることが有利であることが判明し得る。上記の利点は、ステータに対する移動部材の延伸比が小さくなるほど大きくなる。延伸比を適合させることによって、様々な設置スペース要件を満たすこともできる。
【0011】
移動部材が、ステータの対向して配置された側に配置され、少なくとも部分的に非磁性である要素によって互いに接続された少なくとも2つの磁束誘導部材を備えることが有用であり得る。このような構成により、移動部材は、ステータの周囲になるべくコンパクトな構造形状で係合する。接続要素は、好ましくは、コンパクトな構造形状を実現することができるように、磁化不可能な材料で作られる。コンパクトな構造形状が重要ではない場合、接続要素に磁化可能な材料を使用することが有利であり得るが、ステータから十分に大きい間隔が存在し、その間の空隙内の磁束が低く保たれ、その後、引力がまったくまたはほとんど発生しないという条件に従う。そこで、接続要素により近いステータの磁束伝導側部材を「E字形」に構成し、その中にさらなるコイルを挿入することが考えられる。これにより、磁化可能材料で作られた接続要素に関してより小さい空隙を有しながら横方向の力を発生させることが可能になる。
【0012】
コイルデバイスの各コイル本体をその専用の平面(xy)内に延在させることも有用であり得、ステータの磁石および磁束誘導部材の長さは、好ましくは、移動方向において、平行に延在する各コイル本体の部分の長さに対応する。磁石、磁束誘導部材、および平行に延在するコイル本体の部分の長さが同じであるため、移動部材の動きに関して高度の均一性を可能にする均一な領域を作り出すことができる。
【0013】
ステータ内の磁石を各々2つの磁束誘導部材の間に配置することが有利であり得る。これにより、コイルデバイスによって発生する磁場によって磁石が消磁されることが防止される。
【0014】
コイルデバイスが上下に配置されたコイル本体を備え、磁石がコイル本体の間の平面内に配置されることが有用であることが判明し得る。この構成では、互いに選択的に、または互いに対して選択的に作用する磁場を生成することができる。
【0015】
各コイル本体が開口部を備え、各コイル本体の開口部に磁束誘導部材が配置されることが有利であり得る。
【0016】
各コイル本体を、平行に延在し、好ましくは移動方向に延在する2つの磁束誘導部材の間に配置し、好ましくはこれらの磁束誘導部材のうちの少なくとも1つが、さらなる構造体、好ましくはケーシングに結合され得る結合部を備えることが有用であり得る。この構成では、磁束誘導部は磁束を伝導するだけでなく、ステータをケーシングに接続するための構造部品としても機能する。
【0017】
ステータが、断面が十字形の中央磁束誘導部材を備え、中央磁束誘導部材の対向して配置された部分が異なるコイル本体の開口部内に配置されることも有用であり得る。これにより、コンパクトな設計で磁束を選択的に誘導することができる。しかしながら、例えば板状の形状を有するような他の断面もまた、中央磁束誘導部材について考えられる。対応する断面形状は、磁束誘導部材の製造コストを大幅に低減するという利点を有する。
【0018】
磁石および/または磁束誘導部材を一体的にまたは部分的に形成することが有用であり得る。
【0019】
磁気軸受装置は、移動部材を磁力に垂直な平面内および移動方向に垂直な方向に移動させるように構成された磁気誘導部を備えることが実用的であり得る。磁気揚力の作用方向に垂直な平面内および移動方向に垂直な方向に作用する磁気横力を発生させることによって、移動部材をこの方向に位置決めすることができる。
【0020】
磁気誘導部が、好ましくは非磁性材料によって移動部材に接続された誘導移動部材を備えることが有用であり得る。このようにして、磁気揚力と磁気横力の両方が作用するアセンブリを作成することができる。
【0021】
磁気誘導部は、平面内に延在する一対のコイル本体を有するコイルデバイスを備えることが有利であり得、ステータおよび移動部材は、一対のコイル本体の上方でこの平面に垂直な方向に配置され、誘導移動部材は、移動部材と一対のコイル本体との間に配置され、誘導移動部材は、好ましくはハルバッハ配列の構成で配置された永久磁石を備える。磁気誘導部のコイルデバイスはまた、ただ1つのコイル本体または3つ以上のコイル本体を備えることができる。誘導移動部材については、ハルバッハ配列から逸脱した永久磁石の構成も可能である。
【0022】
さらに、本発明は、先行する実施形態のいずれか1つによる少なくとも1つの磁気軸受装置と、ケーシングと、プラットフォームとを備える位置決めシステムを備え、ステータはケーシングに結合され、プラットフォームは移動部材に結合される。このような位置決めシステムでは、摩擦損失なしにステータに対してプラットフォームを位置決めすることが可能である。
【0023】
位置決めシステムが、移動方向にケーシングに対してプラットフォームを移動させるように構成されたリニアモータをさらに備えることが有利であり得る。リニアモータおよび磁気軸受装置の制御パラメータを選択することにより、プラットフォームの高精度な位置決めを実現することができる。
【0024】
位置決めシステムが、好ましくはセンサボードの形態の少なくとも1つのセンサを有する少なくとも1つの電子部品を含むことが有利であり得る。位置決めシステムは、さらなる電子部品、例えば、モータドライバ、モータコントローラ、および論理デジタルモジュールを含むことが考えられる。2つ以上の電子部品が共通の回路基板またはプリント回路基板上に配置されることが有利であり得る。この手段は、そうでなければ必要な供給ラインまたはケーブルによる電力損失がないため、電力入力を低減することを可能にする。さらに、電子部品の空間的統合は、位置決めシステムの非常にコンパクトな設計をもたらし、したがって、例えば、外部コントローラを省くことができる。
【0025】
用語および定義
最も単純な場合には、「コイルデバイス」という用語はコイル本体を含み、コイル本体の巻線は同心円状に配置され、共通の平面内を走る。これは、コイル本体をさらに備え、その同心円は、いくつかの異なる平面内に延在する。コイル本体の巻線は、エポキシ樹脂などの材料に埋め込むことができる。コイルデバイスの個々のコイル本体を互いに電気的に並列または直列に接続または結合することが考えられる。
【0026】
「非磁性」という用語は、非磁化可能ならびに非常に弱いまたは永久的でない磁化可能材料を表し、特に永久的な磁気特性または強磁性特性を有する材料を除外する。非磁化可能材料としては、例えば、アルミニウムが挙げられ、一方、「磁化可能材料」という用語は、鉄またはアルカリ金属などの強磁性または常磁性材料を含む。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明による磁気軸受装置の一実施形態を示す斜視図である。
図2図1による実施形態の断面斜視図である。
図3】互いに隣接して配置された一対のコイル本体の形態の磁気誘導部と誘導移動部材とを備える、図1による磁気軸受装置の実施形態のさらなる発展形態の斜視図である。
図4図3による実施形態の断面斜視図である。
図5図4による実施形態の断面図である。
図6】本発明による位置決めシステムの斜視図である。
図7】プラットフォームが例示の目的で示されていない、図6による位置決めシステムを示す図である。
図8図6による位置決めシステムの背面図であり、説明のためにケーシングおよびステータは示されていない。
【発明を実施するための形態】
【0028】
好ましい実施形態の詳細な説明
本発明の好ましい実施形態を、添付の図面を参照して以下に詳細に説明する。
【0029】
図1は、本発明による磁気軸受装置1の一実施形態を斜視図で示す。磁気軸受装置1は、ステータ2と、移動部材3とを備える。
【0030】
ステータ2は、互いに電気的に接続されておらず、z方向に上下に、したがって平行なx-y平面に配置された2つの別個のコイル本体4-1を有するコイルデバイス4を含む。コイル本体4-1の長さは、x方向に延びている。ステータ2は、磁化可能な鋼で作られた3つの磁束誘導部材6a、6b、6cと、4つの磁石5(図ではそれらのうちの2つしか見ることができない)とをさらに備え、その長さは同様にx方向に延びている。図2において、2つの磁束誘導部材6b、6cは、2つの外側磁束誘導部材6b、6cの間にy方向に配置されるように、外側磁束誘導部材6b、6cとしてコイル本体4-1に隣接していることが分かる。第3の磁束誘導部材6aは、中央磁束誘導部材6aとして、外側磁束誘導部材6b、6c間のy方向と、コイル本体4-1間のz方向に配置されている。本実施形態では、中央磁束誘導部材6aは、断面が十字形状であるため、対向配置された断面でコイル本体4-1の開口部内に突出している。一方の外側磁束部材6cには、磁束誘導部材6cに沿ってx方向に延び、さらなる構造体、特にケーシングへの接続を可能にする結合部がさらに設けられている。2つの磁石5は、各々、外側磁束誘導部材6b、6cと中央磁束誘導部材6aとの間でy方向に、コイル本体4-1の間でz方向に配置されている。z方向における磁束誘導部材6a、6b、6cの高さは、磁束誘導部材6a、6b、6cがコイル本体4-1の上端面または下端面と面一に終端するように選択される。これにより、ステータ2の略平坦な2つの主面が形成される。磁束誘導部材6a、6b、6cのコイル本体4-1の上端面または下端面との面一終端部からの逸脱が可能であり、コイル本体4-1の端面上への磁束誘導部材6a、6b、6cの明確な突出が、特定の用途、例えば、ロックを介して磁束を誘導するために真空用途において特に有利であり、ロックでは、コイル本体4-1および磁石5が真空の外側に配置されている間に、磁束誘導が真空内で行われる。磁束誘導部材6a、6b、6cがコイル本体4-1の端面よりも下方に突出している場合、例えば、コイル磁束誘導に関してE字形状を選択することができる。また、個々の磁束誘導部材6a、6b、6cのみがコイル本体4-1の端面で終端し、それに対応して相補的に形成されることも考えられる。
【0031】
移動部材3は、ステータ2の反対側に配置された2つの好ましくは同一の磁束誘導部材7と、2つの磁束誘導部材7を互いに接続する少なくとも部分的に非磁性の要素(図示せず)とを備える。したがって、移動部材3は、ステータ2の周りに係合するように構成される。磁束誘導部材7は、同様に、さらなる構造体、特にプラットフォームへの接合を可能にする結合部を備えることができる。y方向で見ると、磁束誘導部材7はステータ2の上に突出しており(特に図5を参照)、これにより、y方向の復元力が低くなり、y方向に沿った運動を生成するための磁気軸受装置への入力電力を低減することができる。さらに、磁束誘導部材7は、y方向の並進復元力およびz軸を中心とした回転復元力を得るために、特定の形状、例えば「E形状」を有することができる。移動部材3のx方向の長さは、ステータ2のx方向の長さよりも大幅に短い。本実施形態では、移動部材のx方向の長さは、ステータのこの方向の長さの1/4である。ステータ2に対する移動部材3のx方向の長さの比率は、これに限定されるものではなく、3/4未満であることが好ましい。
【0032】
一般に、ステータ2および移動部材3の磁束誘導部材6a、6b、6c、7、ならびにステータ2の磁石5は、図に示す形状に限定されず、任意の適切な形状、特に優れた構造(例えば、ケーシングおよびプラットフォーム)でステータ2および移動部材3の一体化を容易にする形状を有することができる。さらに、磁束誘導部材6a、6b、6c、7および磁石5は、一体的におよび部分的に形成することができる。特に、磁束誘導部材6a、6b、6cおよび7は、磁化可能材料の層と非導電性材料を有する層とが交互になる層状構造体または積層体として構成されることが考えられる。コイル本体4-1は、好ましくは、ワイヤコイルである。しかしながら、さらに、フィルムコイルまたはプリントコイルを使用することも可能である。
【0033】
磁気軸受装置1は、コイル本体4-1に電気エネルギーを印加することにより作動させることができる。励磁されたコイル本体4-1は、磁石5が発生させる磁場と相互作用する磁束誘導部材6a、6b、6c、7に磁場を発生させる。特に、これらの磁場は、互いにまたは互いに対して作用することができる。上側コイル本体4-1の磁場が磁束誘導部材6a、6b、6c、7の上側部分の磁石5の磁場を打ち消す場合、下側コイル本体4-1の磁場は、正しい制御パラメータ(電流方向)が選択されるという点で、磁束誘導部材6a、6b、6c、7の下側部分の磁石5の磁場を高めることができる。
【0034】
制御パラメータを適切に選択することにより、移動部材3に磁力(揚力)を作用させて、移動部材3の上側磁束誘導部材7とステータ2の上側主面との間、および移動部材3の下側磁束誘導部材7とステータ2の下側主面との間に空隙を形成することができる。特に、空隙の大きさ、すなわちステータ2の主面と移動部材3の磁束誘導部材7との間のz方向の間隔は、制御パラメータを適合させることによって調整することができる。この揚力として作用する磁力は、移動部材3の重量力を補償することができる。移動部材3がX軸周りおよびY軸周りの回転自由度に関して同時に安定することにより、移動部材3は浮揚し、x方向に沿ってステータ2に対して摩擦なしに変位することができる。
【0035】
移動部材3の調整範囲は、実質的にステータ2の磁束誘導部材6a、6b、6cおよび磁石5の長さによって決まる。上述したx方向における移動部材3とステータ2との長さの比により、それに応じて大きな調整範囲を実現することができる。さらに、いくつかのステータ2をx方向に沿って直列に接続し、それらを適切な方法で作動させて、連続システムの意味で移動部材3の調整範囲をさらに増加させる可能性がある。
【0036】
図3図5は、上述の実施形態による磁気軸受装置1のさらなる発展形態を示す。このさらなる発展形態は、移動部材3をy方向に移動させるように構成された磁気誘導部8をさらに備える。特に磁気誘導部8によって、移動部材をy方向に移動させる磁力(横力)が発生する。これにより、移動部材3のy方向の位置を調整することができる。磁気誘導部8は、移動部材-ステータアセンブリの下の共通のx-y平面に配置された一対のコイル本体10を有するコイルデバイスと、コイル本体10と移動部材-ステータアセンブリとの間にz方向に配置された誘導移動部材9とを備える。誘導移動部材9は、図面からは集めることができないアルミニウム製の接続要素を介して移動部材3に接続されている。しかしながら、接続要素は、任意の他の材料から製造することができる。例えば、下側磁束誘導部材7の磁束を増加させるために磁気結合が望まれる場合、接続要素を磁化可能な材料で構成することが有利であり得る。下側磁束誘導部材7における磁束の増幅は、磁気軸受装置1の非対称な力特性または力特性のオフセットが生じ、それによって重量力の一部が補償されるように有利であり得る。本実施形態では、この接続は、誘導移動部材9と移動部材3の下側磁束誘導部材7の互いに対向する面の間に形成されることが好ましい。さらに、誘導移動部材9は、ハルバッハ配列構成で配置された永久磁石を備え、永久磁石の互いに対する異なる配置も考えられる。用途に応じて、誘導移動部材9は、移動部材3に磁気的に結合され得るか、またはそこから磁気的に切り離され得る。
【0037】
図6図8は、上述の実施形態による4つの磁気軸受装置1と、4つの磁気誘導部8と、ケーシング12と、プラットフォーム13と、リニアモータ14とを備える位置決めシステム11を示す。
【0038】
しかしながら、磁気誘導部の代わりに機械誘導部または空気軸受を使用することが考えられる。ケーシング12は、長方形のプレートとして構成され、プレートには、対向して配置された2辺に側壁が設けられている。2つの磁気軸受装置1は、各側壁に沿って連続して配置されている。各磁気軸受装置1のステータ3の外側磁束誘導部材6cのうちの1つは、その結合部を用いてそれぞれの側壁に取り付けられている。プレートの中央にはリニアモータ14のステータ部(コイルデバイス)が配置されている。
【0039】
プラットフォーム13は、4つの磁気軸受装置1の各移動部材3に連結されている。図8に示すように、プラットフォーム13は、各移動部材3の下側磁束誘導部材7および上側磁束誘導部材7に結合されている。上側磁束誘導部材への結合は、プラットフォーム表面の凹部によって行われる。下側磁束誘導部材7への結合は、プラットフォーム13の下側に配置された2つの接続ウェブ15によって行われる。各接続ウェブ15は、プラットフォーム13を、連続して配置された2つの移動部材3の下側磁束誘導部材7に連結する。また、プラットフォーム13の中央には、リニアモータ14の移動部材部(永久磁石)が配置されている。
【0040】
プラットフォーム13の6D位置決めは、上述の位置決めシステム11を用いて摩擦損失なしに実現することができる。さらに、プラットフォーム13の高精度の位置決めは、それぞれの制御パラメータの選択によって達成することができる。
【0041】
位置決めシステム11における磁気軸受装置1の数は4つに限定されず、用途や設置状況に応じて適合させることができる。最も単純な場合には、位置決めシステム11が1つの磁気軸受装置1を備えることで十分である。
【符号の説明】
【0042】
参照符号のリスト
1 磁気軸受装置
2 ステータ
3 移動部材
4 コイルデバイス
4-1 コイル本体
5 磁石
6,6a,6b,6c ステータの磁束誘導部材
7 移動部材の磁束誘導部材
8 磁気誘導部
9 誘導移動部材
10 磁気誘導部の一対のコイル本体
11 位置決めシステム
12 ケーシング
13 プラットフォーム
14 リニアモータ
15 接続ウェブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8