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特許7531062過冷却された液体降下物を検出する方法および装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-31
(45)【発行日】2024-08-08
(54)【発明の名称】過冷却された液体降下物を検出する方法および装置
(51)【国際特許分類】
   G01W 1/14 20060101AFI20240801BHJP
【FI】
G01W1/14 D
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2023527988
(86)(22)【出願日】2021-11-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-13
(86)【国際出願番号】 EP2021080759
(87)【国際公開番号】W WO2022101099
(87)【国際公開日】2022-05-19
【審査請求日】2023-05-26
(31)【優先権主張番号】20206578.5
(32)【優先日】2020-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】523164920
【氏名又は名称】アドルフ ティース ゲーエムベーハー ウント コンパニー カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110004015
【氏名又は名称】弁理士法人IPmarche
(72)【発明者】
【氏名】ヨアヒム バインホルン
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ ペペル
(72)【発明者】
【氏名】ハーバート ウィンドルフ
【審査官】前田 敏行
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/121805(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0116940(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第00360892(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01W 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
過冷却された液体降下物を検出する方法であって、
-降下物衝突面(2)を備えた対象物(3)の温度(12)を測定し、かつ
-降下物が前記降下物衝突面(2)上に生じているか否かを検出する、
方法において、
生じた降下物に基づき前記温度(12)が0℃未満で上昇(15)する場合に、過冷却された液体降下物に関する警告を発信することを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記降下物衝突面(2)を励起して往復運動させ、好適には振動させる意味で突き動かし、励起された前記運動と共に前記温度(12)の前記上昇(15)が始まった場合に、過冷却された液体降下物に関する前記警告の重要度の段階を引き上げることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
-前記温度(12)の前記上昇が、検出した前記降下物の量に関して設定された限界値を超えた場合、および/または
-前記温度(12)の前記上昇(15)が、0℃以下のプラトー温度を有する温度プラトーにもたらされた場合、
過冷却された液体降下物に関する前記警告の重要度の段階を引き上げることを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記対象物(3)の周囲の気温(14)を測定し、測定した気温(14)が-20℃~-2℃の範囲内、好適には-10℃~-5℃の範囲内である場合に、過冷却された液体降下物に関する前記警告の重要度の段階を引き上げることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
局所的に始まりかつ前記降下物衝突面(2)に沿って移行する、測定した前記対象物(3)の前記温度(12)の上昇(15)時に、過冷却された液体降下物に関する前記警告の重要度の段階を引き上げることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
降下物の発生時に前記温度(12)の0℃未満での前記上昇(15)を検出した後に、前記対象物(3)を所定の出力で加熱し、結果として、測定した前記対象物(3)の前記温度(12)のさらなる上昇のプラトーが0℃において生じた場合に、過冷却された液体降下物に関する前記警告の重要度の段階を引き上げることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
-別の降下物衝突面(2)を備えた基準対象物(3)を、前記対象物(3)および前記基準対象物(3)の周囲の気温(14)を上回る別の温度に保持し、前記別の降下物衝突面(2)に降下物が生じているか否かを検出し、このとき前記対象物(3)を加熱はせず、かつ
-前記対象物(3)への降下物の発生に基づく、前記温度(12)の0℃未満での前記上昇(15)時に、同時に前記基準対象物の前記別の降下物衝突面(2)上では降下物が検出されない場合、樹霜に関する警告を発信することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
降下物の発生時に前記温度(12)の0℃未満での前記上昇(15)を検出した後に、前記対象物(3)を0℃超に加熱して、このとき前記降下物衝突面(2)における前記対象物(3)の電気容量および/または導電率の増大が生じているか否かを検出し、増大が生じている場合には、雪または氷が前記降下物衝突面(2)上に存在していたことを推測することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
過冷却された液体降下物を検出する装置(1)であって、
-降下物衝突面(2)を有する対象物(3)と、
-該対象物(3)の温度(12)を測定するように形成された温度測定装置と、
-降下物が前記降下物衝突面(2)上に生じているか否かを検出するように形成された降下物検出装置と、
-評価装置と
を備えた、装置(1)において、
前記評価装置は、降下物の発生に基づく前記温度の0℃未満での上昇を検出し、かつ請求項1から8までのいずれか1項記載の方法を実施するように形成されていることを特徴とする、装置(1)。
【請求項10】
前記装置(1)のアクチュエータ(21)は、前記降下物衝突面(2)を有する前記対象物(3)に作用しかつ前記降下物衝突面(2)を励起して往復運動させるように、好適には振動させる意味で突き動かすように形成されていることを特徴とする、請求項9記載の装置(1)。
【請求項11】
前記温度測定装置は、前記降下物衝突面(2)の近傍の前記対象物(3)の前記温度(12)を局所的に測定するように形成されており、このために前記温度測定装置は、好適には前記降下物衝突面(2)に沿って延在する温度センサ(10)のアレイを有しており、前記温度センサ(10)は、面状の前記対象物(3)の、前記降下物衝突面(2)とは反対の側の下面に配置されていることを特徴とする、請求項9または10記載の装置(1)。
【請求項12】
前記温度測定装置は、前記対象物(3)の周囲の気温(14)を測定するように形成されており、前記温度測定装置は、好適には降下物から保護された気温センサ(6)を有していることを特徴とする、請求項9から11までのいずれか1項記載の装置(1)。
【請求項13】
前記装置(1)の加熱装置が、
-前記対象物(3)を所定の出力で加熱し、かつ/または
-基準対象物(3)を所定の出力で加熱する
ように形成されており、前記基準対象物は別の降下物衝突面(2)を有しており、前記基準対象物(3)の温度(12)を測定するように形成された別の温度測定装置と、前記別の降下物衝突面(2)上に降下物が生じているか否かを検出するように形成された別の降下物検出装置とが、前記評価装置に接続されていることを特徴とする、請求項9から12までのいずれか1項記載の装置(1)。
【請求項14】
前記降下物衝突面(2)は、水平線に対して10°~80°、好適には50°~70°の傾斜角に向けられていることを特徴とする、請求項9から13までのいずれか1項記載の装置(1)。
【請求項15】
前記降下物検出装置は、前記降下物衝突面(2)における前記対象物(3)の電気容量および/または導電率を検出するように形成されていることを特徴とする、請求項9から14までのいずれか1項記載の装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過冷却された液体降下物を検出する方法に関し、この方法では、降下物衝突面を備えた対象物の温度を測定し、かつ降下物が降下物衝突面上に生じているか否かを検出する。さらに本発明は、降下物衝突面を有する対象物と、対象物の温度を測定する温度測定装置と、降下物が降下物衝突面上に生じているか否かを検出する降下物検出装置と、評価装置とを備えた、過冷却された液体降下物を検出する装置に関する。
【0002】
過冷却された液体降下物の最もよくある形態は、過冷却されたまたは着氷性の雨であり、これは英語でfreezing rainと称され、METARコードFZRAを有している。本明細書で用いられるように、過冷却された液体降下物という用語は、過冷却された雨の他に、より小さな液滴サイズの過冷却された液体降下物、すなわち、例えば着氷性の霧雨を含んでおり、これは英語でfreezing drizzleと称され、METARコードFZDZを有している。
【0003】
過冷却された液体降下物は、地面に衝突する前は0℃未満の温度を有している。過冷却された液体降下物は、例えば雨が地面付近の0℃未満の温度の空気層を通って降る場合に生じる。雨滴の水が極めて純粋である場合には、水は空気中で結晶化するのではなく、相変化なしで、0℃未満の周囲空気の気温まで冷える。地面に衝突すると、過冷却された液体降下物は極めて急速に凍結すると同時に、閉じた氷面を形成することができる。よって、過冷却された液体降下物は、道路交通や航空交通において危惧されている。それゆえ、重要なのは、過冷却された液体降下物を迅速かつ確実に検出し、これにより、関連する危険を警告することができるようにすることである。
【0004】
従来技術
過冷却された液体降下物を検出する周知の方法および装置は、非着氷性の液体降下物が流れ落ちるか、または既に空気中で凍結した降下物が付着しないようになっている、降下物に晒された対象物の着氷の検出に基づいている。具体的には、例えば、有効質量が増大するにつれて減少する機械的な共振周波数、有効質量が増大するにつれて大きくなる慣性モーメント、または直接、有効質量の増大を検出することにより、有効質量の増大が、対象物の着氷の指標として検出される。追加的に、気温が測定される。それというのも、過冷却された液体降下物は、典型的には-2℃~-20℃の限られた気温範囲内でのみ生じるからである。
【0005】
欧州特許出願公開第3196676号明細書から、独立請求項1の前提部に記載の特徴を有する方法および独立請求項9の前提部に記載の特徴を有する装置が公知である。この公知の装置は、八木・宇田アンテナを有しており、その励起信号に対する応答信号は、その表面に堆積する降下物と共に変化する。さらに、八木・宇田アンテナの領域に配置された温度センサにより、温度が検出される。八木・宇田アンテナからの応答信号に基づく情報を温度推移と結び付けることにより、気温の低下後に初めて八木・宇田アンテナ上で凍結する液体降下物とは異なり、即座に凍結する過冷却された液体降下物の存在が推測される。
【0006】
発明の課題
本発明の根底にある課題は、過冷却された液体降下物を、既に極めて少ない降下物量に基づき、ひいては極めて早期に確実に検出する方法および装置を提供することにある。
【0007】
解決手段
本発明の課題は、独立請求項1記載の特徴を有する方法およびこの方法を実施する、請求項9記載の特徴を有する装置により解決される。本発明による方法および本発明による装置の好適な実施形態は、従属請求項2~8および10~15において定義されている。
【0008】
発明の説明
本発明による、過冷却された液体降下物を検出する方法では、降下物衝突面を備えた対象物の温度を測定すると共に、降下物が降下物衝突面上に生じているか否かを検出する。生じた降下物に基づき温度が0℃未満で上昇する場合に、過冷却された液体降下物に関する警告が発せられる。
【0009】
つまり本発明による方法では、対象物の温度が、生じた降下物に基づき0℃未満での上昇を示した場合に、過冷却された液体降下物に関する警告が発せられる。過冷却された液体降下物が対象物の降下物衝突面に衝突し、そこで凍結させられると、結晶化熱が放出される。水の結晶化熱は、1ケルビンあたりの水の熱容量のほぼ80倍である。過冷却された液体降下物の凍結時には、この大きな結晶化熱は極めて急速に放出されるので、ごく少量の過冷却された液体降下物から既に、測定される対象物の温度の著しい上昇が生じる。具体的には、過冷却された液体降下物の凍結させられた各液滴における温度、ひいては直接降下物衝突面における温度も急激に0℃に上昇し、液滴の結晶化熱が全て消費されるまで、すなわち消散するまで、そこに留まる。対象物の熱容量に基づき、対象物全体の温度の上昇、ひいては測定される対象物の温度の上昇も、あまり多くの過冷却された液体降下物が降下物衝突面上で凍結しない限りは、基本的に小さくなる。ただし、対象物の温度伝導性が有限である結果として、対象物の熱容量が極めて大きい場合でさえ、降下物衝突面の近傍の箇所において、対象物の温度の著しい上昇が生じ、この上昇は、この箇所での対象物の温度の測定時に容易に検出可能であり、かつ降下物衝突面上で凍結させられる過冷却された液体降下物を示唆するものとして評価可能である。この示唆が生じた場合には、過冷却された液体降下物に関する警告が発信される。
【0010】
降下物衝突面における、過冷却された液体降下物の発生開始時に、降下物は、過冷却されているにもかかわらず、降下物衝突面上で液状のままである場合がある。このことには例えば、霧雨において、降下物衝突面に衝突した際の振動により結晶化を生ぜしめるためには降下物の降下速度が低すぎる場合、または降下物衝突面が比較的長い雨の後には極めて清浄であり、これに相応して、過冷却された液体降下物を凍結させるための潜在的な結晶化核としての不純物がごく僅かにしか存在しない場合が当てはまる。したがって、本発明による方法では、過冷却された液体降下物を降下物衝突面上で凍結させるために、降下物衝突面を励起して往復運動させることができ、特に振動させる意味で突き動かすことができる。過冷却された液体を振動により凍結させることができるということは、基本的に周知の現象である。この基本的に周知の現象を、本発明による方法では、降下物衝突面の励起された運動と共に温度の上昇が始まった場合に、過冷却された液体降下物に関する警告の重要度の段階を引き上げるために利用することができる。降下物が、励起された運動により凍結させられ、これにより結晶化熱を放出する過冷却された液体降下物である場合にのみ、上に降下物が存在する降下物衝突面の励起された運動に基づき、測定される温度の0℃未満での上昇が生じることになる。
【0011】
本明細書および特許請求の範囲において、降下物が降下物衝突面上に生じているか否かを検出すると言う場合、このために降下物衝突面への降下物の衝突を検出することは可能ではあるが、必要とはされていない。しかしまた、例えば降下物が降下物衝突面上に存在するか否かと、特にどの程度の量の降下物が降下物衝突面上に存在しているのかとを十分に検出し、その際に確認された変化から、その間に降下物が降下物衝突面上に生じたことを推測することもできる。
【0012】
本明細書および特許請求の範囲において、発生し、この場合に検出される降下物に基づき0℃未満での温度の上昇が生じると言う場合、このことは要するに、温度の上昇が、降下物の発生と少なくともほぼいわば同時に生じる場合だけを含むわけではない。むしろ、温度の上昇は、降下物の発生に比べて遅れていることがある。なぜならば、特に降下物の凍結は遅れて始まり、場合により、最初に励起されねばならないからである。いずれにせよ、過冷却された液体降下物を検出するために、温度上昇は、本発明では降下物の発生と相関させられる。
【0013】
本発明による方法では、過冷却された液体降下物に関する別のまたはさらなる示唆も認められ、過冷却された液体降下物に関する警告の重要度の段階を引き上げるために利用することができる。1つのこのような示唆は、測定した対象物の温度の上昇が、検出した降下物の量に関して設定された限界値を超えることである。基本的に、対象物よりも高い温度を有する、過冷却されていない液体降下物も、降下物衝突面に衝突した際に、対象物の温度上昇を引き起こすことがある。測定した温度が0℃超に上昇するとすぐに、過冷却された液体降下物に関する警告の重要度の段階が引き下げられる。ただし、過冷却されていない液体降下物が降下物衝突面で凍結させられ、その際に、過冷却された液体降下物の凍結時と同じ結晶化熱が放出される場合でも、検出可能な差が生じる。過冷却された液体降下物が凍結させられる速度は、過冷却されていない液体降下物が凍結させられる速度よりも極めて大幅に高い。過冷却された液体降下物の場合には、凍結は、各液滴内の樹枝状構造に沿って体積全体において自発的に始まり、過冷却されていない液体降下物の場合には、まず降下物衝突面に対するその境界面においてのみ、凍結が始まる。これにより、過冷却された液体降下物の凍結時には常に、各液滴が全て、降下物衝突面に直接に接するところまで0℃に加熱され、かつ結晶化熱が完全に消散するまで、すなわち対象物と、それ以外の各液滴の周囲とに放出されるまで、そこで保持される程度の量の結晶化熱が放出される。過冷却されていない液体降下物の場合、温度は降下物衝突面において、せいぜい一時的に0℃まで上昇する。0℃の等温線は、成長する氷の境界層と共に、降下物衝突面から離れて各液滴へと急速に移動し、降下物衝突面における温度も同様に、再び急速に0℃未満に低下する。したがって結果的に、過冷却された液体降下物の場合には、降下物の凍結中、測定される対象物の温度の、より大きな上昇が生じる。使用される温度センサの熱容量を無視した場合、上昇の速度およびレベルは実質的に、対象物の温度の測定箇所と、降下物衝突面上の降下物の凍結箇所との相対位置および降下物衝突面における温度推移に依存している。この場合、相対位置に関しては、測定箇所と、残りの対象物と、そこに作用する例えば対象物の周囲の低温の空気等のヒートシンクとの間の温度伝導率に対する、測定箇所と凍結箇所との間に結果として生じる温度伝導率が重要である。降下物衝突面における温度推移は、降下物の種類-過冷却または非過冷却-の他に、降下物の量により決定される。検出された降下物の量に関する温度の上昇が、過冷却されていない降下物は到達しない限界値を超えた場合、このことは、過冷却された液体降下物の存在を強く示唆しており、したがって、過冷却された液体降下物に関する警告の重要度の段階を引き上げる根拠になる。過冷却された降下物と過冷却されていない降下物とを区別するための高い感度を達成するために、測定箇所と凍結箇所との間の温度伝導率は、測定箇所と、残りの対象物と、そこに作用するヒートシンクとの間の温度伝導率に対して、可能な限り高いことが望ましい。
【0014】
温度の上昇が、0℃以下のプラトー温度を有する温度プラトーにもたらされた場合も、このことは、過冷却された液体降下物に関する警告の重要度の段階を引き上げるための有意な根拠になる。過冷却された液体降下物が降下物衝突面に衝突する場所で直接、凍結時に放出された結晶化熱が、0℃のプラトー温度を有する温度プラトーまで温度を上昇させる。これに対して、このことから間隔をあけて行われる温度の測定では、上記の理由から、有効温度伝導率に基づき、0℃未満のプラトー温度を有する温度プラトーが生じる。この場合、測定した温度の温度プラトーがどのくらい長く保持されるかは、対象物の有効熱容量および過冷却された液体降下物の量ならびに周囲条件に左右される。これらの周囲条件には、例えば、温度の再低下速度を決定する空気湿度および風速が含まれる。つまり、降下物の発生に基づき温度が0℃未満のプラトー温度に上昇した後に再び温度が低下した場合、このことは、過冷却された液体降下物に関する別の示唆と見なすことができ、この示唆は、警告の重要度の段階の引き上げを正当化する。
【0015】
既に述べたように、過冷却された液体降下物は、典型的な気温範囲内で生じる。したがって、本発明による方法では、対象物の周囲の気温を測定し、測定した気温が-20℃~-2℃の範囲内、特に-10℃~-5℃の範囲内である場合に、過冷却された液体降下物に関する警告の重要度の段階を引き上げることが有利である。
【0016】
測定した温度の上昇の時間的な推移および引き続く再低下の時間的な推移の他に、本発明による方法では、測定した温度の、降下物衝突面に沿った、すなわち降下物衝突面の平面における空間的な推移を検出することができる。このためには、好適には降下物衝突面に沿って分散された、対象物の複数の異なる点における温度を測定しなければならないことは自明である。この場合、局所的に始まりかつ降下物衝突面に沿って時間と共に移行する、測定した対象物の温度の上昇時に、過冷却された液体降下物に関する警告の重要度の段階が引き上げられてよい。降下物衝突面に沿った、測定した温度の上昇の空間的な移行は、降下物衝突面への降下物の衝突箇所もしくは降下物衝突面上の降下物の凍結箇所における結晶化熱の局所的な導入に関する指標である。
【0017】
本発明による方法では、降下物の発生に基づく温度の0℃未満での上昇を検出した後に、対象物を所定の出力で加熱することができる。この場合、結果として、測定した対象物の温度のさらなる上昇のプラトーが0℃において生じた場合に、このことは、降下物衝突面上で氷が解け、このためには必然的に、事前に対象物に放出された結晶化熱が融解熱として再び降下物に導入された後に、降下物衝突面が0℃超に上がることができる、ということの証拠である。これにより、警告の重要度の引き上げを正当化する、過冷却された液体降下物に関する指標が与えられることになる。
【0018】
本発明による方法の1つの実施形態では、別の降下物衝突面を備えた基準対象物を、対象物および基準対象物の周囲の気温を上回る別の温度に保持し、別の降下物衝突面に降下物が生じているか否かを検出する。別の降下物衝突面は、気温を上回って高められた別の温度において露から保護されているため、露または霜、すなわち凝縮する水蒸気、特に樹霜、すなわち再昇華する水蒸気が、別の降下物衝突面に降下することはない。この場合、加熱されていない対象物の降下物衝突面上には降下物が生じているが、別の降下物衝突面上には降下物が生じていないことが検出されると、この降下物は露、霜または樹霜である。同時に、対象物への降下物の発生に基づき、温度の0℃未満での上昇が観察されると、この降下物は樹霜である。この場合、これに相応して、本発明による方法のこの実施形態では、樹霜に関する警告が発せられる。
【0019】
本発明による方法では、対象物をさらに0℃超に加熱して、このとき降下物衝突面における対象物の電気容量および/または導電率の増大が生じているか否かを検出することができる。増大が生じている場合には、このことから、雪または氷が降下物衝突面上に存在していたことを推測することができる。加熱された降下物衝突面上の氷または雪が解けると、誘電率が高まり、これにより、降下物衝突面における対象物の電気容量が増大する。降下物衝突面における対象物の導電率も同様に高まる。
【0020】
降下物衝突面における降下物の発生の検出は、本発明による方法において様々な形式で行うことができる。このことには、降下物衝突面を含む対象物の質量の連続的な検出が含まれる。ただし本発明による方法において好適なのは、降下物衝突面における対象物の電気容量および/または導電率が変化したか否かを検出することにより、降下物衝突面上の降下物を検出することである。降下物を検出する相応する測定ユニットは、基本的に周知である。降下物衝突面における対象物の電気容量および/または導電率の変化の量から、検出された降下物により濡らされた降下物衝突面の部分、ひいては検出された降下物の量を推定することができる。この場合、降下物衝突面上で凍結させられた過冷却された液体降下物は、その量と共に連続的に変化し、さらなる降下物の追加なしでは一定の電気容量または導電率をもたらすことが判った。これに対して、特に降下物衝突面の上を流れる降下物、すなわち、降下物衝突面の上を流れる水は、これらの値を変化させる。この差も、過冷却された液体降下物に関する警告の重要度の段階を引き上げる根拠として利用することができる。
【0021】
本発明の方法では、対象物の温度が段階的に変化しているか否かを検出することにより、降下物衝突面上に降下物が生じているか否かの検出を間接的に行うこともできる。このような段階的な変化は、降下物の個々の液滴による放熱または入熱、特に降下物の過冷却された個々の液滴の凍結による結晶化熱の導入を示唆している。これとは異なり、対流熱または対流冷却ならびに気化冷却は、降下物衝突面における対象物の温度の連続的な変化をもたらす。少なくとも、過冷却された液体降下物の場合には、比較的大きな結晶化熱に基づき、対象物の温度の段階的な変化の量から、降下物衝突面上に生じる降下物の量も推測することができる。
【0022】
本発明による、過冷却された液体降下物を検出する装置は、降下物衝突面を有する対象物と、対象物の温度を測定する温度測定装置と、降下物が降下物衝突面上に生じているか否かを検出する降下物検出装置と、降下物の発生に基づく温度の0℃未満での上昇を検出し、かつ本発明による方法を実施するように形成された評価装置とを有している。
【0023】
本発明による装置の1つの実施形態では、本発明による装置は、降下物衝突面を有する対象物に作用しかつ降下物衝突面を励起して往復運動させるように形成されたアクチュエータを有している。特にアクチュエータは、降下物衝突面上に位置する過冷却された液体降下物を凍結させるために、降下物衝突面を振動させる意味で突き動かすように形成されている。アクチュエータが、対象物および/またはその支持の弾性により決定された固有周波数で対象物を励起して機械的な固有振動を生じさせると、アクチュエータは特にエネルギ効率的である。
【0024】
本発明による装置の温度測定装置は、好適には、降下物衝突面の近傍の対象物の温度を局所的に測定するように形成されている。このために温度測定装置は、降下物衝突面に沿って延在する温度センサのアレイを有していてよい。具体的には、これらの温度センサは、面状に形成された対象物の、降下物衝突面とは反対の側の下面に配置されていてよい。
【0025】
温度測定装置は追加的に、対象物の周囲の気温を測定するように形成されていてよい。このために温度測定装置は、好適には降下物から保護された気温センサを有している。この場合、この温度センサは、対象物の温度を検出する温度センサとは異なり、降下物に基づく入熱または放熱により影響を及ぼされることはない。
【0026】
本発明による装置はさらに、特に降下物の発生時に温度の0℃未満での上昇が検出された後に対象物を所定の出力で加熱するために、加熱装置を有していてよい。既に説明したように、この熱の導入の結果として生じる特性線に基づき、降下物衝突面が凍結しているか否かを推測することができる。なぜならば、0℃においてかなりの入熱が、融解熱により消費されるからである。さらに、センサ面上の雪の除雪および融雪は、センサの測定能力の回復を可能にする。
【0027】
択一的または追加的に、本発明による装置は、基準対象物を所定の出力で加熱するための加熱装置を有していてもよい。この場合、この基準対象物は完全に、降下物衝突面を備えた対象物に相当していてよい。いずれにせよ、基準対象物は、別の降下物衝突面を有しており、基準対象物の温度を測定するように形成された別の温度測定装置と、別の降下物衝突面上に降下物が生じているか否かを検出するように形成された別の降下物検出装置とが、評価装置に接続されている。本発明による方法に関して上述したように、このような基準対象物を用いて露、霜および樹霜を検出し、露と霜と樹霜とを区別することができる。
【0028】
本発明による装置では、降下物衝突面は、典型的には、水平線に対して所定の傾斜角に向けられており、この傾斜角は、確かに降下物の付着を可能にはするが、比較的多量の液体降下物が降下物衝突面上に残留することを防ぐ。基本的に、傾斜角は10°~80°の範囲内であってよい。好適には、傾斜角は水平線に対して50°~70°、つまり約60°である。
【0029】
本発明による装置の降下物検出装置は、降下物衝突面における対象物の電気容量および/または導電率を検出するように形成されていてよい。基本的に降下物検出装置は、既に述べたように、対象物の質量を、降下物検出装置により検出して、そこから降下物衝突面上の降下物の量を推測するように形成されていてもよい。降下物衝突面における対象物の電気容量および/または導電率による降下物の量の検出は、少なくとも、電気容量および/または導電率が降下物衝突面に沿って明確に分解されて検出される場合には、降下物衝突面にわたる降下物の分布の追加的な推測を可能にする。電気容量は特に、この容量を含むRC発振器の、容量の逆数に線形従属する振動周波数を検出することにより、検出され得る。
【0030】
本発明の有利な改良は、特許請求の範囲、明細書および図面から明らかである。
【0031】
本明細書において言及した各特徴および複数の特徴の組合せの利点は例示的なものであるに過ぎず、代替的にまたは累積的に奏功し得るものであって、これらの利点は必ずしも本発明の実施形態により達成されなくてもよい。
【0032】
当初出願書類および特許の開示内容(保護範囲ではない)に関しては、以下のことが当てはまる。すなわち、その他の特徴は、図面-特に図示された幾何学形状および複数の構成部材相互の相対的な寸法、ならびにそれらの相対的な配置および作用結合-から看取することができる。同様に、本発明のそれぞれ異なる実施形態の特徴またはそれぞれ異なる請求項に記載の特徴の組合せは、請求項において選択された引用関係とは異なっていてよいことも、ここに挙げておく。このことはまた、別個の図面に示された、またはそれらの説明において述べられる特徴にも該当する。これらの特徴は、それぞれ異なる請求項に記載の特徴と組み合わせることもできる。同様に、請求項に記載される、本発明の別の実施形態に関する特徴は省略することもできるが、このことは、特許査定される独立請求項には適用されない。
【0033】
特許請求の範囲および明細書に記載された特徴は、その数に関して、「少なくとも」という副詞の明示的な使用を必要とすることなく、ちょうどその数または記載された数よりも多くの数が存在すると解される。つまり、例えば気温センサについて言及した場合、このことは、ちょうど1つの気温センサ、2つの気温センサ、または3つ以上の気温センサが設けられていると解される。特許請求の範囲に記載された特徴は、別の特徴により補足することができるか、またはそれぞれの方法またはそれぞれの装置を有する単独の特徴であり得る。
【0034】
特許請求の範囲に含まれる符号は、特許請求の範囲により保護される対象の範囲を制限するものではない。符号は、単に特許請求の範囲を分かりやすくするためだけに用いられるに過ぎない。
【図面の簡単な説明】
【0035】
以下に、本発明を図示の好適な実施例に基づいて引き続き説明する。
図1】本発明による方法を実施する、本発明による装置の第1の実施形態を示す図である。
図2図1に示した装置のセンサ回路基板を裏から見た図である。
図3】過冷却された液状の雨がセンサ回路基板に衝突し、そこで凍結した場合に図1に示した装置により検出される様々な測定値を示すプロットである。
図4】本発明による別の装置のセンサ回路基板を示す斜視図である。
図5】本発明による装置の別の実施形態のセンサ回路基板を示す概略平面図である。
図6図5に書き込まれた断面線VI-VIに沿って図5に示したセンサ回路基板を断面した図である。
図7】本発明による装置のさらに別の実施形態のセンサ回路基板を示す概略平面図である。
図8図7に書き込まれた断面線VIII-VIIIに沿って図7に示したセンサ回路基板を断面した図である。
図9】本発明による方法の1つの実施形態を示すフローチャートである。
【0036】
図面の説明
図1にやや遠近法的な側面図で示す装置1は、特に装置1の降下物衝突面2に衝突する降下物に関する気象データを検出するために用いられる。装置1はその上面に、合計4つの降下物衝突面2の角錐状の配置を有している。各降下物衝突面2の、水平線に対する傾斜は、60°である。これにより、降下物が降下物衝突面2に付着することができるようになっている。ただし、より多量の液体降下物が、降下物衝突面2から下方に流出する。降下物衝突面2は、剛性のフレーム4の開口内に配置されていて、そこでフレーム4に支持されている複数のセンサ回路基板3の外側の表面である。剛性のフレーム4は、装置のハウジング5の上側に続いており、ハウジング5内には複数の評価装置が設けられており、ハウジング5の外面には気温センサ6が配置されている。内部にセンサ回路基板3が配置されたフレーム4により、気温センサ6は上方に対して降下物から保護されている。気温センサ6は、装置1の作動中、北に向けられることにより、太陽放射から保護される(装置1における方位表示7を参照)。風および風により運ばれた降下物から保護するために、気温センサ6はさらに、ハウジング5の周方向においてじゃま板8の間に配置されている。下方に向かってハウジング5には、機械的・電気的な接続部(ここで詳細には図示せず)を備えた装置の接続領域9が続いている。
【0037】
図2に示す、図1に示したセンサ回路基板3の裏側には、降下物衝突面2にわたり分散されて配置された、ここでは3つの温度センサ10が認められる。温度センサ10により、降下物衝突面2を含む対象物としてセンサ回路基板3の温度が局所的に検出される。追加的に、降下物検出装置(ここには図示せず)により、降下物による降下物衝突面2の濡れ、ひいては降下物衝突面2に対する降下物の衝突が検出される。
【0038】
図3には、図2に示した温度センサとは反対の側に位置する降下物衝突面2の上側の領域において、水平線に対して60°の角度に向けられたセンサ回路基板3に、合計12滴の過冷却された液状の水が衝突した約30秒の時間にわたり、それぞれ異なる値の推移がプロットされている。この場合、12滴それぞれの衝突時点が、鉛直方向の破線により示されている。図3の上側に延びている線は、降下物衝突面2に形成された電気容量を含むRC発振器の振動周波数11の推移を示している。この電気容量は、衝突する降下物により降下物衝突面2が濡らされることにより増大し、電気的なRC発振器の振動周波数11は、これに相応して低下する。図3において上昇している線は、図2に示した3つの温度センサ10のうちの上側のセンサにより測定されたセンサ回路基板3の温度12の推移を示している。一方の水平方向の線は、降下物衝突面2に衝突する前の、過冷却された液状の水の水温を示しており、他方の水平方向の線14は、図1に示した装置1において気温センサ6により検出されるような、センサ回路基板3の周囲の気温を示している。段階的に低下する振動周波数11が示すように、降下物衝突面2に対する12の液滴それぞれの衝突に伴い、降下物衝突面2の濡れが増大する。具体的には、増大する濡れは、過冷却された液状の水が降下物衝突面2上で凍結して形成された氷を含む濡れである。この凍結は、結晶化熱を放出し、結晶化熱は、各液滴の衝突領域においてセンサ回路基板3の温度12の上昇をもたらす。これに相応して、線21は、降下物衝突面2に衝突した12の液滴それぞれの凍結後に上昇する。この上昇15は0℃未満の温度で生じ、液滴が凍結時に、このとき放出される結晶化熱により温められる温度よりも0℃に近付く。低下する振動周波数11により示された、降下物衝突面2への液滴の衝突に迅速に追従する0℃未満での上昇15は、過冷却された液体降下物の存在を表す明確な指標であり、これにより、装置1の評価装置が、相応する警告信号を発信する。
【0039】
12の液滴それぞれの衝突により、振動周波数11は基本的に段階的に低下する。ただし、12の液滴が個々に衝突した直後に、振動周波数11は、まずより大幅に低下し、その後、この初期低下を上回るレベルで安定する。このことはおそらく、各液滴により濡らされた降下物衝突面2の部分が、各液滴がその凍結前にどちらかというと疎水性の降下物衝突面2上でやや収縮する前の、液滴の衝突直後の方がやや大きいことに起因し得る。
【0040】
図3から明確に認められるのは、12の液滴それぞれの凍結により降下物衝突面2において放出される結晶化熱は、センサ回路基板3の熱容量にもかかわらず、図2に示した温度センサ10のうちの1つにより検出され得るセンサ回路基板3の裏側の温度の分解可能な上昇をもたらすためには十分である、という点である。この作用を観察するために、センサ回路基板の熱容量を制限しなければならない、ということは自明である。ただし、特別な手段、すなわち、センサ回路基板の特に少ない熱容量が必要とされることはない。
【0041】
図4には、本発明による別の装置のセンサ回路基板3が示されている。このセンサ回路基板3は、確かに別の、すなわち三角形ではなく、矩形の幾何学的な基本形状を有しているが、基本的に、図1および図2に示したセンサ回路基板3と同じ測定原理を実現する。図4に示すセンサ回路基板3は、具体的には0.2~1mmの範囲の典型的な厚さと、表面の、典型的には5~15μmの厚さのガラスパッシベーションとを有する、酸化アルミニウムから成る基板16に基づいている。降下物衝突面2のガラスパッシベーションの下には、降下物衝突面2に沿って互いに櫛状に係合し合う、ただしこの場合、互いに所定の間隔を保つ2つの電極18および19を備えたセンサユニット17が形成されている。例えば銀パラジウム合金から形成され、降下物に基づく水による降下物衝突面2の濡れにより影響を及ぼされる電極18と電極19との間の電気容量が、降下物検出装置のRC発振器(ここで詳細には図示せず)の振動周波数を決定する。基板16の下面には、複数の温度センサ10と複数の加熱素子20とが配置されている。加熱素子20は、センサ回路基板3を所定の出力で加熱することができる加熱装置の一部である。0℃未満のセンサ回路基板3を加熱したときに0℃で温度プラトーが生じた場合、このことは、降下物衝突面2が凍結していて、必要な溶融熱が導入されて初めて氷が解けることを示唆している。この必要な溶融熱は、凍結時に放出される結晶化熱とちょうど同じ量である。加熱素子20により、複数のセンサ回路基板3のうちの1つをさらに基準対象物として、気温をやや、すなわち数ケルビン上回る温度に加熱し、そこで保持することができる。したがって、これらのセンサ回路基板3には、露防止手段が設けられ、この場合、加熱素子20により気温を上回って加熱はされない別のセンサ回路基板3に降下物のみが生じると、露または霜の発生を推測することができる。降下物により、加熱素子20により加熱はされないセンサ回路基板3にのみ、それでもなお0℃未満での温度上昇15が生じた場合には、樹霜が存在する。温度センサ10は、基板16の裏面に面状の網目パターンで配置されている。これにより、降下物衝突面2のどのドットの近くにも、1つの温度センサ10が設けられていることになる。つまり、降下物衝突面2上で凍結させられる過冷却された液状の水から成る、降下物衝突面2に衝突する各液滴は、少なくとも、複数の温度センサ10のうちの1つの位置において確実に検出され得る程度の、基板16の局所的な温度上昇をもたらす。基板16の面にわたる、正確な推移が基板16の熱容量および温度伝導率に依存する温度上昇の分布も、過冷却された液体降下物の液滴が降下物衝突面2に衝突し、そこで凍結させられたことを示唆している。
【0042】
過冷却された液体降下物が降下物衝突面2上で凍結することを保証するために、ここでは基板の側縁に作用しかつ基板16を励起して往復運動させるアクチュエータ21が設けられている。これらの運動は、降下物衝突面2と、その上に位置する過冷却された液体降下物の振動を生ぜしめ、このようにして、過冷却された液体降下物の凍結を生ぜしめる。アクチュエータ21は、微小電気機械システム(MEMS)として形成されていてよく、センサ回路基板3は、その弾性および/または弾性的な支持に基づき決定される機械的な固有の周波数で機械的な固有振動を生ぜしめるように設けられていてよい。このようにして、小さなエネルギ消費量で、降下物衝突面2上での降下物の十分な振動が達成され、これにより、降下物の凍結を生ぜしめることができる。
【0043】
図5および図6に示すセンサ回路基板3の実施形態では、基板16は、温度伝導性で十分に耐候性の、またはその表面が不動態化させられた金属から、10μm~1mmの典型的な材料厚さで形成されている。基板16の下面側には、温度センサ10のアレイが、1つの共通のプリント基板22上に配置されている。各温度センサ10の間の自由空間は、絶縁材23で満たされていてよい。加熱装置24の加熱素子20は、ここでは基板16の互いに反対の側に位置する側縁に配置されている。アクチュエータ21もやはり、基板16のこのような側縁に作用する。
【0044】
図7および図8に示すセンサ回路基板3の実施形態では、基板16は、絶縁材23から形成されている。降下物衝突面2には、温度伝導率の高い複数のコンタクトパッド25が配置されており、これらのコンタクトパッド25は、温度伝導率の高い接続部26を介して、基板16の下面に配置された複数の温度センサ10に接続されている。これにより、過冷却された降下物から成る液滴がコンタクトパッド25のうちの1つに落下し、そこで凍結すると、検出可能な温度上昇を抑えるセンサ回路基板3の熱容量が、個々のコンタクトパッド25、個々の接続部26および個々の温度センサ10の熱容量まで減らされる。
【0045】
図9にフローチャートの形式で示す本発明による方法は、ステップ27における、降下物衝突面2を含む各センサ回路基板3の温度Tの測定およびステップ28における、降下物衝突面2に生じる降下物の検出で始まる。検査29において、測定した温度Tの0℃未満での上昇が、降下物の検出と時間的に関係している場合には、ステップ30において、過冷却された液体降下物に関する警告が発信される。追加的にステップ31において、周辺条件の分析を行い、この分析に基づき、測定した温度Tの0℃未満での上昇を検出する。このとき検査32において、追加基準が満たされており、これによりさらに、過冷却された液体降下物の存在が示唆されていることが確認された場合には、ステップ33において、過冷却された液体降下物に関する警告の重要度の段階を引き上げる。このような基準が満たされる場合については、既に説明した。これに含まれるのは、測定した温度の上昇が、降下物衝突面の励起された運動により初めて生ぜしめられた場合、測定した温度の上昇が、検出した降下物の量に関して設定された限界値を超えた場合、測定した温度の上昇が、0℃以下のプラトー温度を有する温度プラトーにもたらされた場合、対象物の周囲で測定された気温が、-20℃~-2℃の範囲内、または特に-10℃~-5℃の範囲内であった場合、測定したセンサ回路基板の温度上昇が局所的に始まり、降下物衝突面に沿って移行した場合、測定した温度の0℃未満での上昇の検出後にセンサ回路基板が加熱された結果、0℃において温度プラトーを有する、センサ回路基板の測定温度のさらなる上昇が生じた場合、および降下物衝突面における電気容量および/または導電性が、測定した温度の上昇中に連続的に変化した場合、または測定した温度の上昇中に変わらなかった場合である。最終基準が満たされているか否かの検査において、降下物衝突面における電気容量および/または電気抵抗に対する、疎水性の降下物衝突面上の液体降下物から成る液滴の再収縮または親水性の降下物衝突面上で最初に行われる液体降下物の拡散により生ぜしめられる一時的な作用を考慮する必要はない。本発明による方法の1つの具体的な実施形態では、これらの基準のうちの1つの選択肢が満たされているか否かのみを検査することもできる。その他の基準は、考慮されないままであってよい。
【符号の説明】
【0046】
1 装置
2 降下物衝突面
3 センサ回路基板、対象物、基準対象物
4 フレーム
5 ハウジング
6 気温センサ
7 方位表示
8 じゃま板
9 接続領域
10 温度センサ
11 振動周波数
12 温度
13 水温
14 気温
15 上昇
16 基板
17 センサユニット
18 電極
19 電極
20 加熱素子
21 アクチュエータ
22 プリント基板
23 絶縁材
24 加熱装置
25 コンタクトパッド
26 接続部
27 ステップ
28 ステップ
29 検査
30 ステップ
31 ステップ
32 検査
33 ステップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9