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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-31
(45)【発行日】2024-08-08
(54)【発明の名称】血液浄化装置及び送液ポンプの制御方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/16 20060101AFI20240801BHJP
【FI】
A61M1/16 110
A61M1/16 150
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2024506224
(86)(22)【出願日】2023-06-28
(86)【国際出願番号】 JP2023023962
(87)【国際公開番号】W WO2024005066
(87)【国際公開日】2024-01-04
【審査請求日】2024-01-31
(31)【優先権主張番号】P 2022103782
(32)【優先日】2022-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000226242
【氏名又は名称】日機装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片山 雄貴
【審査官】沼田 規好
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-255069(JP,A)
【文献】特開平01-238870(JP,A)
【文献】特開平03-133459(JP,A)
【文献】特表平08-504116(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の血液を浄化する血液浄化器を介して前記血液を循環させる血液回路と、
前記血液浄化器に向けて透析液を供給する透析液供給流路と、前記血液浄化器からの透析液を排出する透析液排出流路と、前記透析液供給流路及び前記透析液排出流路が連通するバイパス流路とを含み、前記血液浄化器を経由して前記透析液供給流路から前記透析液排出流路に送液する第1の送液態様と、前記血液浄化器を経由せず且つ前記バイパス流路を経由して前記透析液供給流路から前記透析液排出流路に送液する第2の送液態様とのいずれかの送液態様で液体が送液される透析液回路と、
前記透析液回路に配設されると共に、前記透析液回路において液体を送液する送液ポンプと、
前記透析液回路に配設されると共に、前記第1の送液態様と前記第2の送液態様との間で送液態様を切り替える流路切替え手段と、
前記送液ポンプ及び前記流路切替え手段を制御する駆動制御部と、を備え、
前記駆動制御部は、前記流路切替え手段が前記第2の送液態様から前記第1の送液態様に送液態様を切り替える場合に、前記透析液回路の圧力が所定の閾値を超えたとき、前記血液回路と前記透析液回路との間の圧力差を縮小するように、前記送液ポンプの駆動を調整する、
血液浄化装置。
【請求項2】
前記透析液供給流路に配設され、前記透析液を送液する給液ポンプと、
前記透析液排出流路に配設され、前記透析液を送液する排液ポンプと、
前記透析液排出流路における前記排液ポンプの上流側に配設され、前記排液ポンプの送液を補助する前記送液ポンプとしての補助ポンプと、を備え、
前記駆動制御部は、前記流路切替え手段が前記第2の送液態様から前記第1の送液態様に送液態様を切り替える場合に、前記血液回路と前記透析液回路との間に前記圧力差が生じるとき、前記圧力差を縮小するように前記補助ポンプの駆動を調整する、
請求項1に記載の血液浄化装置。
【請求項3】
前記駆動制御部は、前記圧力差として前記血液浄化器における膜間圧力差を取得し、前記流路切替え手段が前記第2の送液態様から前記第1の送液態様に送液態様を切り替える場合に、前記膜間圧力差に基づいて、前記送液ポンプの駆動を調整する、
請求項1又は2に記載の血液浄化装置
【請求項4】
患者の血液を浄化する血液浄化器を介して前記血液を循環させる血液回路と、
前記血液浄化器に向けて透析液を供給する透析液供給流路と、前記血液浄化器からの透析液を排出する透析液排出流路と、前記透析液供給流路及び前記透析液排出流路が連通するバイパス流路とを含み、前記血液浄化器を経由して前記透析液供給流路から前記透析液排出流路に送液する第1の送液態様と、前記血液浄化器を経由せず且つ前記バイパス流路を経由して前記透析液供給流路から前記透析液排出流路に送液する第2の送液態様とのいずれかの送液態様で液体が送液される透析液回路と、
前記透析液回路に配設されると共に、前記透析液回路において液体を送液する送液ポンプと、
前記透析液回路に配設されると共に、前記第1の送液態様と前記第2の送液態様との間で送液態様を切り替える流路切替え手段と、
前記送液ポンプ及び前記流路切替え手段を制御し、前記第2の送液態様から前記第1の送液態様に送液態様を切り替える送液態様切替動作を行う駆動制御部と、を備え、
前記駆動制御部は、
前記血液回路の圧力及び前記透析液回路の圧力を受け付ける受付部と、
過去の前記送液態様切替動作における前記血液回路の圧力、前記透析液回路の圧力及び除水量の誤差を教師データとして機械学習させた予測モデルを用い、前記血液回路の圧力及び前記透析液回路の圧力から、前記除水量の誤差が抑制される前記送液ポンプの駆動調整量を予測する調整量予測部と、
前記第2の送液態様から前記第1の送液態様に送液態様を切り替えるとき、前記調整量予測部によって予測した前記駆動調整量によって前記送液ポンプの駆動を調整する駆動調整部と、を有する、
血液浄化装置。
【請求項5】
前記予測モデルは、過去の前記送液態様切替動作における前記血液回路の圧力、前記透析液回路の圧力及び前記除水量の誤差に加え、過去の前記送液態様切替動作における前記送液ポンプの駆動調整量を、教師データとして機械学習させた、
請求項4に記載の血液浄化装置。
【請求項6】
前記透析液供給流路に配設され、前記透析液を送液する給液ポンプと、
前記透析液排出流路に配設され、前記透析液を送液する排液ポンプと、
前記透析液排出流路における前記排液ポンプの上流側に配設され、前記排液ポンプの送液を補助する前記送液ポンプとしての補助ポンプと、を備え、
前記駆動調整部は、前記第2の送液態様から前記第1の送液態様に送液態様を切り替えるとき、前記調整量予測部によって予測した前記駆動調整量によって前記補助ポンプの駆動を調整する、
請求項4又は5に記載の血液浄化装置。
【請求項7】
患者の血液を浄化する血液浄化器を介して前記血液を循環させる血液回路と、前記血液浄化器に向けて透析液を供給する透析液供給流路、前記血液浄化器からの透析液を排出する透析液排出流路及び前記透析液供給流路と前記透析液排出流路とを連通するバイパス流路を含み、前記血液浄化器を経由して前記透析液供給流路から前記透析液排出流路に送液する第1の送液態様と、前記血液浄化器を経由せず且つ前記バイパス流路を経由して前記透析液供給流路から前記透析液排出流路に送液する第2の送液態様とのいずれかの送液態様で液体が送液される透析液回路と、前記透析液回路に配設されると共に、前記透析液回路において液体を送液する送液ポンプと、前記透析液回路に配設されると共に、前記第1の送液態様と前記第2の送液態様との間で送液態様を切り替える流路切替え手段と、前記送液ポンプ及び前記流路切替え手段を制御する駆動制御部と、を備えた血液浄化装置の、前記駆動制御部が前記送液ポンプの駆動を制御する駆動制御工程を有し、
前記駆動制御工程では、前記流路切替え手段が前記第2の送液態様から前記第1の送液態様に送液態様を切り替える場合に、前記透析液回路の圧力が所定の閾値を超えたとき、前記血液回路と前記透析液回路との間の圧力差を縮小するように、前記送液ポンプの指令値を調整する、
送液ポンプの制御方法。
【請求項8】
患者の血液を浄化する血液浄化器を介して前記血液を循環させる血液回路と、前記血液浄化器に向けて透析液を供給する透析液供給流路、前記血液浄化器からの透析液を排出する透析液排出流路及び前記透析液供給流路と前記透析液排出流路とを連通するバイパス流路を含み、前記血液浄化器を経由して前記透析液供給流路から前記透析液排出流路に送液する第1の送液態様と、前記血液浄化器を経由せず且つ前記バイパス流路を経由して前記透析液供給流路から前記透析液排出流路に送液する第2の送液態様とのいずれかの送液態様で液体が送液される透析液回路と、前記透析液回路に配設されると共に、前記透析液回路において液体を送液する送液ポンプと、前記透析液回路に配設されると共に、前記第1の送液態様と前記第2の送液態様との間で送液態様を切り替える流路切替え手段と、前記送液ポンプ及び前記流路切替え手段を制御する駆動制御部と、を備えた血液浄化装置における、前記駆動制御部が前記第2の送液態様から前記第1の送液態様に送液態様を切り替える送液態様切替動作を行う送液態様切替工程を有し、
前記送液態様切替工程では、
前記血液回路の圧力及び前記透析液回路の圧力を受け付ける受付工程と、
過去の前記送液態様切替動作における前記血液回路の圧力、前記透析液回路の圧力及び除水量の誤差を教師データとして機械学習させた予測モデルを用いて、前記血液回路の圧力及び前記透析液回路の圧力から、前記除水量の誤差が抑制される前記送液ポンプの駆動調整量を予測する調整量予測工程と、
前記第2の送液態様から前記第1の送液態様に送液態様を切り替えるとき、前記調整量予測工程によって予測した前記駆動調整量によって前記送液ポンプの指令値を調整する駆動調整工程と、を実行する、
送液ポンプの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液浄化装置及び送液ポンプの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
血液浄化装置として、血液浄化器をバイパスして供給側ラインと排出側ラインとを連通するバイパス流路(バイパスライン)を具備したものがある(特許文献1参照)。この血液浄化装置(透析装置)は、血液浄化器と、血液浄化器に供給される透析液を流通する供給側ラインと、その供給した透析液を流通させる排出側ラインと、供給側ラインから排出側ラインに向かって透析液を流動させるポンプ手段と、ダイアライザをバイパスして供給側ラインと排出側ラインとを連通するバイパス流路と、ダイアライザを経由して供給側ラインから排出側ラインに透析液を送液する第1の送液態様(以下、メイン送液態様)及び、バイパス流路を経由して供給側ラインから排出側ラインに透析液を送液する第2の送液態様(以下、バイパス送液態様)の間で送液態様を切り替える流路切替え手段と、を具備している。この血液浄化装置では、透析治療時以外の任意時間帯には、バイパス送液態様に切り替えて、ダイアライザを介さずに透析液を流動させ、透析治療時には、メイン送液態様に切り替えて、透析治療を行う。このような構成によって、透析治療時以外の時間帯において供給側ライン及び排出側ラインでの透析液の滞留を回避することができると共に、透析治療を即座に再開させることができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-29376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の血液浄化装置では、バイパス送液態様からメイン送液態様に送液態様を切り替えた時、透析液回路と血液回路との間の圧力差によって、急激な圧力変動(いわゆるウォータハンマー)が生じる。この急激な圧力変動が、透析液回路の流量制御に影響することで、患者の血液の除水量に誤差が生じてしまう虞があった。
【0005】
そこで、本発明は、バイパス送液態様からメイン送液態様に送液態様を切り替えた場合の、圧力変動による悪影響を低減することができる血液浄化装置及び送液ポンプの駆動制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態による血液浄化装置は、患者の血液を浄化する血液浄化器を介して前記血液を循環させる血液回路と、前記血液浄化器に向けて透析液を供給する透析液供給流路と、前記血液浄化器からの透析液を排出する透析液排出流路と、前記透析液供給流路及び前記透析液排出流路が連通するバイパス流路とを含み、前記血液浄化器を経由して前記透析液供給流路から前記透析液排出流路に送液する第1の送液態様と、前記血液浄化器を経由せず且つ前記バイパス流路を経由して前記透析液供給流路から前記透析液排出流路に送液する第2の送液態様とのいずれかの送液態様で液体が送液される透析液回路と、前記透析液回路に配設されると共に、前記透析液回路において液体を送液する送液ポンプと、前記透析液回路に配設されると共に、前記第1の送液態様と前記第2の送液態様との間で送液態様を切り替える流路切替え手段と、前記送液ポンプ及び前記流路切替え手段を制御する駆動制御部と、を備え、前記駆動制御部は、前記流路切替え手段が前記第2の送液態様から前記第1の送液態様に送液態様を切り替える場合に、前記透析液回路の圧力が所定の閾値を超えたとき、前記血液回路と前記透析液回路との間の圧力差を縮小するように、前記送液ポンプの駆動を調整する。
【0007】
また、本発明の一実施形態による血液浄化装置は、患者の血液を浄化する血液浄化器を介して前記血液を循環させる血液回路と、前記血液浄化器に向けて透析液を供給する透析液供給流路と、前記血液浄化器からの透析液を排出する透析液排出流路と、前記透析液供給流路及び前記透析液排出流路が連通するバイパス流路とを含み、前記血液浄化器を経由して前記透析液供給流路から前記透析液排出流路に送液する第1の送液態様と、前記血液浄化器を経由せず且つ前記バイパス流路を経由して前記透析液供給流路から前記透析液排出流路に送液する第2の送液態様とのいずれかの送液態様で液体が送液される透析液回路と、前記透析液回路に配設されると共に、前記透析液回路において液体を送液する送液ポンプと、前記透析液回路に配設されると共に、前記第1の送液態様と前記第2の送液態様との間で送液態様を切り替える流路切替え手段と、前記送液ポンプ及び前記流路切替え手段を制御し、前記第2の送液態様から前記第1の送液態様に送液態様を切り替える送液態様切替動作を行う駆動制御部と、を備え、前記駆動制御部は、前記血液回路の圧力及び前記透析液回路の圧力を受け付ける受付部と、過去の前記送液態様切替動作における前記血液回路の圧力、前記透析液回路の圧力及び除水量の誤差を教師データとして機械学習させた予測モデルを用い、前記血液回路の圧力及び前記透析液回路の圧力から、前記除水量の誤差が抑制される前記送液ポンプの駆動調整量を予測する調整量予測部と、前記第2の送液態様から前記第1の送液態様に送液態様を切り替えるとき、前記調整量予測部によって予測した前記駆動調整量によって前記送液ポンプの駆動を調整する駆動調整部と、を有する。
【0008】
また、本発明の一実施形態による送液ポンプの制御方法は、患者の血液を浄化する血液浄化器を介して前記血液を循環させる血液回路と、前記血液浄化器に向けて透析液を供給する透析液供給流路、前記血液浄化器からの透析液を排出する透析液排出流路及び前記透析液供給流路と前記透析液排出流路とを連通するバイパス流路を含み、前記血液浄化器を経由して前記透析液供給流路から前記透析液排出流路に送液する第1の送液態様と、前記血液浄化器を経由せず且つ前記バイパス流路を経由して前記透析液供給流路から前記透析液排出流路に送液する第2の送液態様とのいずれかの送液態様で液体が送液される透析液回路と、前記透析液回路に配設されると共に、前記透析液回路において液体を送液する送液ポンプと、前記透析液回路に配設されると共に、前記第1の送液態様と前記第2の送液態様との間で送液態様を切り替える流路切替え手段と、前記送液ポンプ及び前記流路切替え手段を制御する駆動制御部と、を備えた血液浄化装置の、前記駆動制御部が前記送液ポンプの駆動を制御する駆動制御工程を有し、前記駆動制御工程では、前記流路切替え手段が前記第2の送液態様から前記第1の送液態様に送液態様を切り替える場合に、前記透析液回路の圧力が所定の閾値を超えたとき、前記血液回路と前記透析液回路との間の圧力差を縮小するように、前記送液ポンプの指令値を調整する。
【0009】
また、本発明の一実施形態による送液ポンプの制御方法は、患者の血液を浄化する血液浄化器を介して前記血液を循環させる血液回路と、前記血液浄化器に向けて透析液を供給する透析液供給流路、前記血液浄化器からの透析液を排出する透析液排出流路及び前記透析液供給流路と前記透析液排出流路とを連通するバイパス流路を含み、前記血液浄化器を経由して前記透析液供給流路から前記透析液排出流路に送液する第1の送液態様と、前記血液浄化器を経由せず且つ前記バイパス流路を経由して前記透析液供給流路から前記透析液排出流路に送液する第2の送液態様とのいずれかの送液態様で液体が送液される透析液回路と、前記透析液回路に配設されると共に、前記透析液回路において液体を送液する送液ポンプと、前記透析液回路に配設されると共に、前記第1の送液態様と前記第2の送液態様との間で送液態様を切り替える流路切替え手段と、前記送液ポンプ及び前記流路切替え手段を制御する駆動制御部と、を備えた血液浄化装置における、前記駆動制御部が前記第2の送液態様から前記第1の送液態様に送液態様を切り替える送液態様切替動作を行う送液態様切替工程を有し、前記送液態様切替工程では、前記血液回路の圧力及び前記透析液回路の圧力を受け付ける受付工程と、過去の前記送液態様切替動作における前記血液回路の圧力、前記透析液回路の圧力及び除水量の誤差を教師データとして機械学習させた予測モデルを用いて、前記血液回路の圧力及び前記透析液回路の圧力から、前記除水量の誤差が抑制される前記送液ポンプの駆動調整量を予測する調整量予測工程と、前記第2の送液態様から前記第1の送液態様に送液態様を切り替えるとき、前記調整量予測工程によって予測した前記駆動調整量によって前記送液ポンプの指令値を調整する駆動調整工程と、を実行する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一実施形態によれば、バイパス送液態様からメイン送液態様に送液態様を切り替えた場合の、圧力変動による悪影響を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る血液浄化装置の構造を示した概略構造図である。
図2A】バイパス送液態様からメイン送液態様への送液態様切替え時における、除水誤差低減動作を行わない場合の、血液回路及び透析液回路の圧力と除水量の誤差とを示したグラフである。
図2B】バイパス送液態様からメイン送液態様への送液態様切替え時における、除水誤差低減動作を行った場合の、血液回路及び透析液回路の圧力と加圧ポンプのポンプ速度とを示したグラフである。
図2C】バイパス送液態様からメイン送液態様への送液態様切替え時における、除水誤差低減動作を行った場合の、血液回路及び透析液回路の圧力と除水量の誤差とを示したグラフである。
図3】除水誤差低減動作を示したフローチャートである。
図4】除水誤差低減動作の変形例を示したフローチャートである。
図5】第2実施形態に係る血液浄化装置の構造を示した概略構造図である。
図6A】バイパス送液態様からメイン送液態様への送液態様切替え時における、除水誤差低減制御を行わない場合の、血液回路及び透析液回路の圧力と除水量の誤差とを示したグラフである。
図6B】第2実施形態におけるバイパス送液態様からメイン送液態様への送液態様切替え時の、血液回路及び透析液回路の圧力と加圧ポンプのポンプ速度とを示したグラフである。
図6C】第2実施形態におけるバイパス送液態様からメイン送液態様への送液態様切替え時の、血液回路及び透析液回路の圧力と除水量の誤差とを示したグラフである。
図7】第2実施形態における予測モデルを示した説明図である。
図8】第2実施形態における送液態様切替動作を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係る血液浄化装置について説明する。この血液浄化装置は、ダイアライザを用いて患者の血液を浄化する透析治療を行う医療機器であり、いわゆる血液透析装置である。特に、本血液浄化装置は、バイパス送液態様からメイン送液態様に切り替える時の除水誤差の低減が可能なポンプ制御を採用したものである。
【0013】
(血液浄化装置の構成)
図1に示すように、血液浄化装置1は、患者Cの血液を浄化するダイアライザ10と、ダイアライザ10を介して患者Cの血液を循環させる体外循環ユニット11と、ダイアライザ10に接続され、ダイアライザ10に透析液を供給すると共に、ダイアライザ10からの透析液を排出する透析液給排ユニット12と、を備えている。体外循環ユニット11と透析液給排ユニット12とは、別体で構成されており、ダイアライザ10は、固定用治具13を介して体外循環ユニット11に着脱自在に取り付けられている。
【0014】
ダイアライザ10は、血液浄化膜(中空糸型の血液透析膜、あるいは血液透析濾過膜、平膜型の血液透析膜、あるいは血液濾過膜)を内在している。また、ダイアライザ10は、血液を導入する血液導入口10a及び導入した血液を導出する血液導出口10bを有すると共に、透析液を導入する透析液導入口10c及び導入した透析液を排出する透析液排出口10dを有している。ダイアライザ10では、血液浄化膜を介して血液と透析液とを接触させることで、血液を浄化する。また、ダイアライザ10では、ダイアライザ10への給液の流量とダイアライザ10からの排液の流量とを制御することで、患者Cの血液の除水を可能とする。ダイアライザ10は、血液浄化器の一例である。
【0015】
体外循環ユニット11は、ダイアライザ10を介して患者Cの血液を循環させる血液回路21と、主制御部22と、を有している。主制御部22については、後述する。
【0016】
血液回路21は、ダイアライザ10の血液導入口10aに接続され、患者Cの血管から採取した血液をダイアライザ10に導く動脈側血液流路31と、ダイアライザ10の血液導出口10bに接続され、ダイアライザ10から排出された血液を患者Cの血管に戻す静脈側血液流路32と、を有している。動脈側血液流路31には、血液を循環させる血液ポンプ34が配設されている。また、静脈側血液流路32には、静脈側血液流路32の圧力を検出する血液側圧力検出部35が配設されている。血液側圧力検出部35は、血液回路21の圧力を検出する圧力検出手段の一例であり、静脈側血液流路32の圧力を検出することで、血液回路21の圧力を検出する。
【0017】
血液回路21では、血液ポンプ34を駆動することで、患者Cからの血液が動脈側血液流路31を介してダイアライザ10に導かれ、ダイアライザ10によって血液が浄化された後、静脈側血液流路32を介して患者Cに戻される。これにより、患者Cの血液が浄化される。
【0018】
(透析液給排ユニットの構成)
透析液給排ユニット12は、ダイアライザ10に透析液を供給すると共にダイアライザ10からの透析液を排出する透析液回路41と、副制御部42と、を有している。
【0019】
透析液回路41は、透析液を精製する透析液調製部51と、ダイアライザ10の透析液導入口10cに接続され、透析液調製部51で精製された透析液をダイアライザ10に向けて供給する透析液供給流路52と、ダイアライザ10の透析液排出口10dに接続され、ダイアライザ10からの透析液を回収し排出する透析液排出流路53と、ダイアライザ10の前後で透析液供給流路52及び透析液排出流路53に接続され、ダイアライザ10をバイパス(迂回)して透析液供給流路52と透析液排出流路53とを連通するバイパス流路54と、を有している。すなわち、透析液回路41は、ダイアライザ10を経由して透析液供給流路52から透析液排出流路53に透析液を送液するメイン送液態様と、ダイアライザ10を経由せず且つバイパス流路54を経由して透析液供給流路52から透析液排出流路53に透析液を送液するバイパス送液態様とのいずれかの送液態様で透析液が送液される構成となっている。なお、メイン送液態様は、第1の送液態様の一例であり、バイパス送液態様は、第2の送液態様の一例である。
【0020】
透析液調製部51は、供給された純水と、濃縮液又は粉末からなる透析剤とから、透析液を調製する。透析液調製部51に供給される純水は、透析液給排ユニット12に搭載された純水製造部から供給される構成であってもよいし、透析液給排ユニット12の外部に設けられた純水製造装置から供給される構成であってもよい。なお、透析液調製部51も省略可能であり、例えば、外部の透析液供給装置等から、透析液給排ユニット12に透析液が供給されるよう構成してもよい。
【0021】
透析液供給流路52には、上流側から、給液ポンプ63、給液側流量計64及び第1電磁弁66が配設されている。給液ポンプ63は、透析液供給流路52の透析液を送液する送液ポンプ(容積式のダイアフラムポンプ)である。給液ポンプ63を駆動することで、透析液をダイアライザ10に供給する。
【0022】
給液側流量計64は、給液ポンプ63の下流側に配設され、透析液供給流路52の流量(すなわち、ダイアライザ10への給液の流量)を検出する流量計である。
【0023】
第1電磁弁66は、バイパス流路54が接続された接続位置よりも下流側に配設され、メイン送液態様とバイパス送液態様との間で送液態様(流路)の切替えを行うための電磁弁の1つである。
【0024】
透析液排出流路53には、上流側から、第2電磁弁71、透析液側圧力検出部72、加圧ポンプ73、排液ポンプ74及び排液側流量計75が配設されている。加圧ポンプ73は、送液ポンプ及び補助ポンプの一例である。
【0025】
第2電磁弁71は、バイパス流路54が接続された接続位置よりも上流側に配設され、メイン送液態様とバイパス送液態様との間で送液態様(流路)の切替えを行うための電磁弁の1つである。
【0026】
透析液側圧力検出部72は、透析液排出流路53の圧力を検出する。透析液側圧力検出部72は、透析液回路41の圧力を検出する圧力検出手段の一例であり、透析液排出流路53の圧力を検出することで、透析液回路41の圧力を検出する。
【0027】
排液ポンプ74は、透析液排出流路53の透析液を送液する送液ポンプ(容積式のダイアフラムポンプ)である。加圧ポンプ73は、透析液排出流路53の透析液を送液して、排液ポンプ74の送液を補助するカスケードポンプ(非容積式ポンプ)である。排液ポンプ74及び加圧ポンプ73を駆動することで、ダイアライザ10からの透析液を排出する。給液ポンプ63及び排液ポンプ74を制御して、ダイアライザ10に対する給液の流量と排液の流量とを調整することで、患者Cの血液の除水量が制御される。本血液浄化装置1では、この除水量を制御して、除水なしの透析治療と、除水ありの透析治療と、を実行することができるようになっている。
【0028】
排液側流量計75は、排液ポンプ74の下流側に配設され、透析液排出流路53の流量(すなわち、ダイアライザ10からの透析液の流量)を検出する流量計である。
【0029】
バイパス流路54は、一端が、透析液供給流路52における給液側流量計64と第1電磁弁66との間に接続され、他端が透析液側圧力検出部72と加圧ポンプ73との間に接続されている。これにより、バイパス流路54は、ダイアライザ10を介さずダイアライザ10をバイパスして、透析液供給流路52と透析液排出流路53とを連通する。また、バイパス流路54には、第3電磁弁55が配設されている。第3電磁弁55は、第1電磁弁66及び第2電磁弁71と共に、メイン送液態様とバイパス送液態様との間で送液態様の切替えを行うための電磁弁である。すなわち、第1電磁弁66、第2電磁弁71及び第3電磁弁55は、メイン送液態様とバイパス送液態様との間で送液態様を切り替える流路切替え手段の一例である。第3電磁弁55を開放しつつ、第1電磁弁66及び第2電磁弁71を閉塞することで、メイン送液態様からバイパス送液態様への送液態様の切替えを行う。一方、第3電磁弁55を閉塞しつつ、第1電磁弁66及び第2電磁弁71を開放することで、バイパス送液態様からメイン送液態様への送液態様の切替えを行う。
【0030】
副制御部42は、体外循環ユニット11の主制御部22と通信を行い、主制御部22の指令に従って、給液ポンプ63、排液ポンプ74、加圧ポンプ73及び各電磁弁55、66、71を制御する。副制御部42は、CPU等の演算素子、メモリ、ソフトウェア、インターフェイス、通信ユニット等を適宜組み合わせて実現される。
【0031】
(主制御部及びその制御の説明)
ここで、主制御部22及び当該主制御部22による制御について説明する。主制御部22は、CPU等の演算素子、メモリ、ソフトウェア、インターフェイス、通信ユニット等を適宜組み合わせて実現されるものであり、血液側圧力検出部35の検出値を受け付けると共に、血液ポンプ34の駆動を制御する。また、主制御部22は、副制御部42と通信を行い、副制御部42を介して、各流量計64、75及び透析液側圧力検出部72の検出値を受け付けると共に、給液ポンプ63、加圧ポンプ73、排液ポンプ74の駆動を制御する。さらに、主制御部22は、副制御部42と通信を行い、副制御部42を介して、各電磁弁55、66、71の開閉を制御する。主制御部22は、駆動制御部の一例である。なお、本実施形態では、体外循環ユニット11及び透析液給排ユニット12に搭載された制御部22、42の主従関係として、体外循環ユニット11に搭載された主制御部22を主とし、透析液給排ユニット12に搭載された副制御部42が主制御部22の指令に従う構成であるが、制御部22、42の主従関係として、透析液給排ユニット12に搭載された副制御部42を主とし、体外循環ユニット11に搭載された主制御部22が副制御部42の指令に従う構成であってもよいし、制御部22、42に主従関係がない構成であってもよい。
【0032】
主制御部22は、各電磁弁55、66、71の開閉によってバイパス送液態様からメイン送液態様に送液態様の切替えを行った状態で、血液ポンプ34、給液ポンプ63、加圧ポンプ73及び排液ポンプ74を駆動することで、透析治療を行う。すなわち、透析治療時には、血液ポンプ34を駆動して、ダイアライザ10を介して血液を循環すると共に、給液ポンプ63を駆動して、ダイアライザ10に透析液を供給しつつ、加圧ポンプ73及び排液ポンプ74を駆動して、ダイアライザ10からの透析液を排出する。この透析治療動作時には、給液ポンプ63、加圧ポンプ73及び排液ポンプ74を制御して、ダイアライザ10への給液(透析液の供給)の流量と、ダイアライザ10からの排液(透析液の排出)の流量とを調整することで、患者Cの血液の除水量を制御する。本実施形態では、加圧ポンプ73を設定のポンプ速度(回転速度)で駆動すると共に、給液ポンプ63を、給液側流量計64の検出値に基づくフィードバック制御によって目標流量となるように駆動し、排液ポンプ74を、排液側流量計75の検出値に基づくフィードバック制御によって目標流量となるように駆動する。ポンプ速度は、送液ポンプの指令値の一例である。
【0033】
また、主制御部22は、透析治療前の準備時及び透析治療の一時停止時に、各電磁弁55、66、71の開閉制御によって、メイン送液態様からバイパス送液態様に送液態様の切替えを行った状態で、給液ポンプ63、加圧ポンプ73及び排液ポンプ74を駆動することで、透析液回路41内で透析液を流動させる。この動作を透析液流動動作と呼称する。透析液流動動作時には、透析治療時と同様、加圧ポンプ73を設定のポンプ速度で駆動すると共に、給液ポンプ63を、給液側流量計64の検出値に基づくフィードバック制御によって目標流量となるように駆動し、排液ポンプ74を、排液側流量計75の検出値に基づくフィードバック制御によって目標流量となるように駆動する。
【0034】
(除水誤差低減動作の説明)
ところで、透析液流動動作から透析治療動作に移行する時、透析液回路41の各ポンプ63、73、74を駆動した状態で、バイパス送液態様からメイン送液態様に送液態様の切替えを行うことになるが、このとき、血液回路21の圧力と透析液回路41の圧力との差の影響で透析液回路41に急激な圧力変動が生じる。この急激な圧力変動が、透析液供給流路52及び透析液排出流路53の流量調整に影響し、図2Aに示すように、患者Cの血液の除水量に誤差が生じてしまう。すなわち、血液回路21の圧力が透析液回路41の圧力より大きい場合、バイパス送液態様からメイン送液態様に送液態様を切り替えたとき、血液回路21側の圧力が透析液回路41側に伝搬して、過除水による除水量の誤差が発生し、透析液回路41の圧力が血液回路21の圧力より大きい場合、バイパス送液態様からメイン送液態様に送液態様を切り替えたとき、透析液回路41側の圧力が血液回路21側に伝搬して、補液による除水量の誤差が発生する。これに対し、主制御部22は、透析液流動動作から透析治療動作に移行する時、バイパス送液態様からメイン送液態様への送液態様の切替え時の、圧力変動による除水量の誤差を低減する除水誤差低減動作を実行する。なお、除水誤差低減動作は、駆動制御工程及び送液ポンプの制御方法の一例である。
【0035】
除水誤差低減動作では、主制御部22は、血液回路21と透析液回路41との圧力差に基づき、圧力差を縮小するように、加圧ポンプ73のポンプ速度を調整する。本実施形態では、圧力差として、TMP(Trans Membrane Pressure、すなわち膜間圧力差)を用いる。TMPは、ダイアライザ10における透析液側の圧力と血液側の圧力との圧力差である。具体的には、主制御部22は、血液側圧力検出部35及び透析液側圧力検出部72によって血液回路21及び透析液回路41の圧力を検出し、検出した血液回路21及び透析液回路41の圧力に基づいてダイアライザ10におけるTMPを算出する。そして、算出したTMPを縮小するように、加圧ポンプ73のポンプ速度を調整する。例えば、算出したTMPに対して所定の係数を乗算して補正値を算出し、補正値分だけ加圧ポンプ73のポンプ速度を増加又は減少させる。
【0036】
なお、本実施形態では、メイン送液態様への切替え前及び流路切替え直後は、基本的に、透析液回路41の圧力よりも血液回路21の圧力の方が高くなっている。そのため、図2Bに示すように、算出した補正値分、加圧ポンプ73のポンプ速度を元の設定値から減少させる。これにより、透析液回路41の圧力を上昇させ、TMPを縮小させる。これによって、図2Cに示すように、患者Cの血液における除水量の誤差を低減することができる。
【0037】
また、本実施形態では、バイパス送液態様からメイン送液態様に送液態様の切替えを行った後、血液回路21と透析液回路41との間に一定の圧力差が生じたとき、上記加圧ポンプ73のポンプ速度の調整を行う。具体的には、透析液側圧力検出部72によって、当該圧力差と相関関係にある透析液回路41の圧力を監視し、圧力が所定の閾値(本実施形態では200mmHg若しくは26.66kPa)を超えた時、上記加圧ポンプ73のポンプ速度の調整を行う。すなわち、透析液回路41の圧力上昇をトリガーとして、加圧ポンプ73のポンプ速度の調整を行う。なお、透析液回路41の圧力上昇に代えて、TMPの上昇や、血液回路21の圧力と透析液回路41の圧力との差分の上昇をトリガーとして、加圧ポンプ73のポンプ速度の調整を行う構成でもよい。
【0038】
ここで図3を参照して、除水誤差低減動作の動作手順について説明する。図3に示すように、除水誤差低減動作は、バイパス送液態様からメイン送液態様への送液態様の切替えを行った時、これに起因して実行される。
【0039】
図3に示すように、バイパス流路54からメイン流路への流路切替えを行ったら、主制御部22は、透析液側圧力検出部72によって、透析液回路41の圧力を監視する(S1)。そして、透析液回路41の圧力が200mmHg超えたら(S1:Yes)、血液側圧力検出部35によって血液回路21の圧力を検出し(S2)、透析液側圧力検出部72によって透析液回路41の圧力を検出する(S3)。血液回路21及び透析液回路41の圧力を検出したら、検出した両圧力に基づいて、ダイアライザ10におけるTMPを算出する(S4)。その後、算出したTMPに基づき、TMPを縮小するように、加圧ポンプ73のポンプ速度を調整する(S5)。これにより、除水誤差低減動作を終了する。
【0040】
(実施形態の作用及び効果)
以上、上記実施形態の構成によれば、バイパス送液態様からメイン送液態様への送液態様の切替えを行った場合に、血液回路21と透析液回路41との間に圧力差が生じるとき、圧力差を縮小するように、加圧ポンプ73のポンプ速度を調整することで、バイパス送液態様からメイン送液態様への送液態様の切替え時の、血液回路21と透析液回路41との圧力差を縮小させる。これによって、バイパス送液態様からメイン送液態様への送液態様の切替えを行った時の圧力変動による除水誤差(除水量の誤差)を低減することができる。
【0041】
また、除水誤差低減動作において、透析液回路41に配設された複数のポンプ63、73、74のうち、加圧ポンプ73のポンプ速度を調整する構成であるため、給排液の差分となる除水量制御のために連携して駆動される給液ポンプ63及び排液ポンプ74の制御に変更を加えることなく、除水誤差を低減することができる。これにより、給液ポンプ63及び排液ポンプ74の除水量制御と、加圧ポンプ73の除水誤差低減の制御を並列で容易に実施できると共に、制御に変更を加えることで、給液ポンプ63及び排液ポンプ74の連携に不備が生じ、除水量制御に悪影響が及ぼすことを防止できる。
【0042】
(変形例)
以上、本発明の実施形態を説明したが、上記に記載した実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【0043】
例えば、上記実施形態においては、除水誤差低減動作において、血液回路21と透析液回路41との圧力差(TMP)を取得し、圧力差に基づく補正値で、加圧ポンプ73のポンプ速度を調整する構成であったが、圧力差が縮小するように、加圧ポンプ73のポンプ速度を調整する構成であれば、所定の補正値で、加圧ポンプ73のポンプ速度を調整する構成であってもよい。例えば、図4で示すように、圧力の検出(S2、S3)や圧力差の算出(S4)、圧力差に基づくポンプ速度の調整(S5)を省略し、これらに代えて、所定の補正値分、加圧ポンプ73のポンプ速度を減少させる工程(S11)を行う。かかる場合、ポンプ速度の調整(S11)の後、透析液回路41の圧力が200mmHg超えたか否かの判定を行い(S12)、透析液回路41の圧力が200mmHg超えていないと判定された場合(S12:No)には、警報を出力し(S13)、透析治療動作を停止する(S14)。
【0044】
上記実施形態においては、除水誤差低減動作において、加圧ポンプ73のポンプ速度を調整する構成であったが、透析液回路41に配設された送液ポンプの指令値を調整する構成であれば、これに限るものではない。例えば、加圧ポンプ73に代えて、給液ポンプ63及び排液ポンプ74のいずれかの送液ポンプの指令値を調整する構成であってもよい。また、単一の送液ポンプの指令値を調整するのに代えて、複数の送液ポンプの指令値を調整する構成であってもよい。
【0045】
また、上記実施形態においては、除水誤差低減動作において、血液回路21と透析液回路41と圧力差として、ダイアライザ10におけるTMPを用いる構成であったが、これに限るものではない。例えば、血液回路21の圧力と透析液回路41の圧力との差分を用いる構成であってもよい。この場合、血液回路21の圧力を血液側圧力検出部35が検出し、透析液回路41の圧力を透析液側圧力検出部72が検出してもよい。
【0046】
また、上記実施形態においては、血液回路21及び透析液回路41の圧力検出及びこれに基づく加圧ポンプ73の指令値の調整を、バイパス送液態様からメイン送液態様への送液態様の切替え時の、当該送液態様の切替え後に行う構成であったが、血液回路21及び透析液回路41の圧力検出及びこれに基づく加圧ポンプ73の指令値の調整を、バイパス送液態様からメイン送液態様への送液態様の切替え時の、当該送液態様の切替え前に行う構成であってもよい。
【0047】
また、上記実施形態においては、別体の給液ポンプ63及び排液ポンプ74を用いて、ダイアライザ10における給液及び排液の流量制御を行う血液浄化装置1に本発明を適用したが、給液ポンプ63及び排液ポンプ74を一体として成す複式ポンプを用いて、ダイアライザ10における給液及び排液の流量制御を行う血液浄化装置に本発明を適用してもよい。かかる場合、透析液回路41において、複式ポンプとは別に送液ポンプを配設し、除水誤差低減動作において、血液回路21と透析液回路41との間に圧力差が生じるとき、圧力差が縮小するように、当該送液ポンプの指令値を調整する構成とする。
【0048】
また、上記実施形態においては、除水誤差低減動作において、透析液回路41に配設された加圧ポンプ73の駆動を調整して、透析液回路41の圧力を調整する構成であったが、これに代えて、血液回路21の圧力を調整する構成であってもよい。ただし、血液回路21の圧力を積極的に変更すると、血液に負荷がかかるため(溶血等)、透析液回路41の圧力を調整する方が望ましい。
【0049】
(第2実施形態)
次に図5乃至図8を参照して、本発明の第2実施形態に係る血液浄化装置101について説明する。この血液浄化装置101は、ダイアライザ110を用いて患者Cの血液を浄化する透析治療を行う医療機器であり、いわゆる血液透析装置である。特に、本血液浄化装置101は、バイパス送液態様からメイン送液態様に切り替える時の除水誤差の低減が可能なポンプ制御を採用したものである。
【0050】
(第2実施形態の血液浄化装置の構成)
図5に示すように、血液浄化装置101は、患者Cの血液を浄化するダイアライザ110と、ダイアライザ110を介して患者Cの血液を循環させる体外循環ユニット111と、ダイアライザ110に接続され、ダイアライザ110に透析液を供給すると共に、ダイアライザ110からの透析液を排出する透析液給排ユニット112と、を備えている。体外循環ユニット111と透析液給排ユニット112とは、別体で構成されており、ダイアライザ110は、固定用治具113を介して体外循環ユニット111に着脱自在に取り付けられている。
【0051】
ダイアライザ110は、血液浄化膜(中空糸型の血液透析膜、あるいは血液透析濾過膜、平膜型の血液透析膜、あるいは血液濾過膜)を内在している。また、ダイアライザ110は、血液を導入する血液導入口110a及び導入した血液を導出する血液導出口110bを有すると共に、透析液を導入する透析液導入口110c及び導入した透析液を排出する透析液排出口110dを有している。ダイアライザ110では、血液浄化膜を介して血液と透析液とを接触させることで、血液を浄化する。また、ダイアライザ110では、ダイアライザ110への給液の流量とダイアライザ110からの排液の流量とを制御することで、患者Cの血液の除水を可能とする。ダイアライザ110は、血液浄化器の一例である。
【0052】
体外循環ユニット111は、ダイアライザ110を介して患者Cの血液を循環させる血液回路121と、記憶部122及び主制御部123と、を有している。記憶部122及び主制御部123については、後述する。
【0053】
血液回路121は、ダイアライザ110の血液導入口110aに接続され、患者Cの血管から採取した血液をダイアライザ110に導く動脈側血液流路131と、ダイアライザ110の血液導出口110bに接続され、ダイアライザ110から排出された血液を患者Cの血管に戻す静脈側血液流路132と、を有している。動脈側血液流路131には、血液を循環させる血液ポンプ134が配設されている。また、静脈側血液流路132には、静脈側血液流路132の圧力を検出する血液側圧力検出部135が配設されている。血液側圧力検出部135は、血液回路121の圧力を検出する圧力検出手段の一例であり、静脈側血液流路132の圧力を検出することで、血液回路121の圧力を検出する。
【0054】
血液回路121では、血液ポンプ134を駆動することで、患者Cからの血液が動脈側血液流路131を介してダイアライザ110に導かれ、ダイアライザ110によって血液が浄化された後、静脈側血液流路132を介して患者Cに戻される。これにより、患者Cの血液が浄化される。
【0055】
(第2実施形態の透析液給排ユニットの構成)
透析液給排ユニット112は、ダイアライザ110に透析液を供給すると共にダイアライザ110からの透析液を排出する透析液回路141と、副制御部142と、を有している。
【0056】
透析液回路141は、透析液を精製する透析液調製部151と、ダイアライザ110の透析液導入口110cに接続され、透析液調製部151で精製された透析液をダイアライザ110に向けて供給する透析液供給流路152と、ダイアライザ110の透析液排出口110dに接続され、ダイアライザ110からの透析液を回収し排出する透析液排出流路153と、ダイアライザ110の前後で透析液供給流路152及び透析液排出流路153に接続され、ダイアライザ110をバイパス(迂回)して透析液供給流路152と透析液排出流路153とを連通するバイパス流路154と、を有している。すなわち、透析液回路141は、ダイアライザ110を経由して透析液供給流路152から透析液排出流路153に透析液を送液するメイン送液態様と、ダイアライザ110を経由せず且つバイパス流路154を経由して透析液供給流路152から透析液排出流路153に透析液を送液するバイパス送液態様とのいずれかの送液態様で透析液が送液される構成となっている。なお、メイン送液態様は、第1の送液態様の一例であり、バイパス送液態様は、第2の送液態様の一例である。
【0057】
透析液調製部151は、供給された純水と、濃縮液又は粉末からなる透析剤とから、透析液を調製する。透析液調製部151に供給される純水は、透析液給排ユニット112に搭載された純水製造部から供給される構成であってもよいし、透析液給排ユニット112の外部に設けられた純水製造装置から供給される構成であってもよい。なお、透析液調製部151も省略可能であり、例えば、外部の透析液供給装置等から、透析液給排ユニット112に透析液が供給されるよう構成してもよい。
【0058】
透析液供給流路152には、上流側から、給液ポンプ163、給液側流量計164及び第1電磁弁166が配設されている。給液ポンプ163は、透析液供給流路152の透析液を送液する送液ポンプ(容積式のダイアフラムポンプ)である。給液ポンプ163を駆動することで、透析液をダイアライザ110に供給する。
【0059】
給液側流量計164は、給液ポンプ163の下流側に配設され、透析液供給流路152の流量(すなわち、ダイアライザ110への給液の流量)を検出する流量計である。
【0060】
第1電磁弁166は、バイパス流路154が接続された接続位置よりも下流側に配設され、メイン送液態様とバイパス送液態様との間で送液態様(流路)の切替えを行うための電磁弁の1つである。
【0061】
透析液排出流路153には、上流側から、第2電磁弁171、透析液側圧力検出部172、加圧ポンプ173、排液ポンプ174及び排液側流量計175が配設されている。加圧ポンプ173は、送液ポンプ及び補助ポンプの一例である。
【0062】
第2電磁弁171は、バイパス流路154が接続された接続位置よりも上流側に配設され、メイン送液態様とバイパス送液態様との間で送液態様(流路)の切替えを行うための電磁弁の1つである。
【0063】
透析液側圧力検出部172は、透析液排出流路153の圧力を検出する。透析液側圧力検出部172は、透析液回路141の圧力を検出する圧力検出手段の一例であり、透析液排出流路153の圧力を検出することで、透析液回路141の圧力を検出する。
【0064】
排液ポンプ174は、透析液排出流路153の透析液を送液する送液ポンプ(容積式のダイアフラムポンプ)である。加圧ポンプ173は、透析液排出流路153の透析液を送液して、排液ポンプ174の送液を補助するカスケードポンプ(非容積式ポンプ)である。排液ポンプ174及び加圧ポンプ173を駆動することで、ダイアライザ110からの透析液を排出する。給液ポンプ163及び排液ポンプ174を制御して、ダイアライザ110に対する給液の流量と排液の流量とを調整することで、患者Cの血液の除水量が制御される。本血液浄化装置101では、この除水量を制御して、除水なしの透析治療と、除水ありの透析治療と、を実行することができるようになっている。
【0065】
排液側流量計175は、排液ポンプ174の下流側に配設され、透析液排出流路153の流量(すなわち、ダイアライザ110からの透析液の流量)を検出する流量計である。
【0066】
バイパス流路154は、一端が、透析液供給流路152における給液側流量計164と第1電磁弁166との間に接続され、他端が透析液側圧力検出部172と加圧ポンプ173との間に接続されている。これにより、バイパス流路154は、ダイアライザ110を介さずダイアライザ110をバイパスして、透析液供給流路152と透析液排出流路153とを連通する。また、バイパス流路154には、第3電磁弁155が配設されている。第3電磁弁155は、第1電磁弁166及び第2電磁弁171と共に、メイン送液態様とバイパス送液態様との間で送液態様の切替えを行うための電磁弁である。すなわち、第1電磁弁166、第2電磁弁171及び第3電磁弁155は、メイン送液態様とバイパス送液態様との間で送液態様を切り替える流路切替え手段の一例である。第3電磁弁155を開放しつつ、第1電磁弁166及び第2電磁弁171を閉塞することで、メイン送液態様からバイパス送液態様への送液態様の切替えを行う。一方、第3電磁弁155を閉塞しつつ、第1電磁弁166及び第2電磁弁171を開放することで、バイパス送液態様からメイン送液態様への送液態様の切替えを行う。
【0067】
副制御部142は、体外循環ユニット111の主制御部123と通信を行い、主制御部123の指令に従って、給液ポンプ163、排液ポンプ174、加圧ポンプ173及び各電磁弁155、166、171を制御する。副制御部142は、CPU等の演算素子、メモリ、ソフトウェア、インターフェイス、通信ユニット等を適宜組み合わせて実現される。
【0068】
(記憶部及び主制御部の説明)
ここで、体外循環ユニット111の記憶部122及び主制御部123について説明する。記憶部122は、フラッシュROM等のメモリで構成され、各種データを記憶する。特に、図5に示すように、記憶部122は、切替動作データベース181を記憶する。
【0069】
切替動作データベース181は、バイパス送液態様からメイン送液態様に送液態様を切り替える送液態様切替動作について、過去の送液態様切替動作における血液回路121の圧力、透析液回路141の圧力、ポンプ速度調整係数及び除水量の誤差(以下、除水誤差)を記憶したデータベースである。すなわち、過去の送液態様切替動作について、送液態様切替動作毎の血液回路121の圧力、透析液回路141の圧力、ポンプ速度調整係数及び除水誤差を記憶する。ポンプ速度調整係数は、送液態様切替動作時に加圧ポンプ173のポンプ速度を調整する駆動調整量の一例であり、当該駆動調整量を、元のポンプ速度に対する倍率で示した数値である。詳細は後述するが、本血液浄化装置101では、バイパス送液態様からメイン送液態様に送液態様を切り替えるとき、加圧ポンプ173のポンプ速度を調整することで、除水誤差を低減させる構成を有している。つまり、ポンプ速度調整係数は、除水誤差を低減させるためのポンプ速度の調整における増減を示す係数である。また、切替動作データベース181に記憶されたこれらの情報は、送液態様切替動作における最適なポンプ速度調整係数の算出(予測)に用いられる。
【0070】
主制御部123は、CPU等の演算素子、メモリ、ソフトウェア、インターフェイス、通信ユニット等を適宜組み合わせて実現されるものであり、血液側圧力検出部135の検出値を受け付けると共に、血液ポンプ134の駆動を制御する。また、主制御部123は、副制御部142と通信を行い、副制御部142を介して、各流量計164、175及び透析液側圧力検出部172の検出値を受け付けると共に、給液ポンプ163、加圧ポンプ173、排液ポンプ174の駆動を制御する。さらに、主制御部123は、副制御部142と通信を行い、副制御部142を介して、各電磁弁155、166、171の開閉を制御する。主制御部123は、駆動制御部の一例である。なお、本実施形態では、体外循環ユニット111及び透析液給排ユニット112に搭載された制御部123、142の主従関係として、体外循環ユニット111に搭載された主制御部123を主とし、透析液給排ユニット112に搭載された副制御部142が主制御部123の指令に従う構成であるが、制御部123、142の主従関係として、透析液給排ユニット112に搭載された副制御部142を主とし、体外循環ユニット111に搭載された主制御部123が副制御部142の指令に従う構成であってもよいし、制御部123、142に主従関係がない構成であってもよい。
【0071】
主制御部123は、バイパス送液態様からメイン送液態様に送液態様を切り替える上記送液態様切替動作を行った後、その状態で、血液ポンプ134、給液ポンプ163、加圧ポンプ173及び排液ポンプ174を駆動することで、透析治療を行う。すなわち、透析治療時には、血液ポンプ134を駆動して、ダイアライザ110を介して血液を循環すると共に、給液ポンプ163を駆動して、ダイアライザ110に透析液を供給しつつ、加圧ポンプ173及び排液ポンプ174を駆動して、ダイアライザ110からの透析液を排出する。この透析治療動作時には、給液ポンプ163、加圧ポンプ173及び排液ポンプ174を制御して、ダイアライザ110への給液(透析液の供給)の流量と、ダイアライザ110からの排液(透析液の排出)の流量とを調整することで、患者Cの血液の除水量を制御する。本実施形態では、加圧ポンプ173を設定のポンプ速度(回転速度)で駆動すると共に、給液ポンプ163を、給液側流量計164の検出値に基づくフィードバック制御によって目標流量となるように駆動し、排液ポンプ174を、排液側流量計175の検出値に基づくフィードバック制御によって目標流量となるように駆動する。ポンプ速度は、送液ポンプの指令値の一例である。
【0072】
また、主制御部123は、透析治療前の準備時及び透析治療の一時停止時に、各電磁弁155、166、171の開閉制御によって、メイン送液態様からバイパス送液態様に送液態様の切替えを行った状態で、給液ポンプ163、加圧ポンプ173及び排液ポンプ174を駆動することで、透析液回路141内で透析液を流動させる。この動作を透析液流動動作と呼称する。透析液流動動作時には、透析治療時と同様、加圧ポンプ173を設定のポンプ速度で駆動すると共に、給液ポンプ163を、給液側流量計164の検出値に基づくフィードバック制御によって目標流量となるように駆動し、排液ポンプ174を、排液側流量計175の検出値に基づくフィードバック制御によって目標流量となるように駆動する。
【0073】
ところで、透析液流動動作から透析治療動作に移行する時、透析液回路141の各ポンプ163、173、174を駆動した状態で、バイパス送液態様からメイン送液態様に送液態様の切替えを行うことになるが、このとき、血液回路121の圧力と透析液回路141の圧力との差の影響で透析液回路141に急激な圧力変動が生じる。この急激な圧力変動が、透析液供給流路152及び透析液排出流路153の流量調整に影響し、図6Aに示すように、患者Cの血液の除水量に誤差が生じてしまう。すなわち、血液回路121の圧力が透析液回路141の圧力より大きい場合、バイパス送液態様からメイン送液態様に送液態様を切り替えたとき、血液回路121側の圧力が透析液回路141側に伝搬して、過除水による除水誤差が発生し、透析液回路141の圧力が血液回路121の圧力より大きい場合、バイパス送液態様からメイン送液態様に送液態様を切り替えたとき、透析液回路141側の圧力が血液回路121側に伝搬して、補液による除水誤差が発生する。これに対し、本実施形態では、主制御部123が、送液態様切替動作において、バイパス送液態様からメイン送液態様に送液態様を切り替えるときの圧力変動による除水誤差を低減する制御を実行する。これに係り、図5に示すように、主制御部123は、当該送液態様切替動作に係る構成として、受付部191、モデル生成部192、調整量予測部193、駆動調整部194、送液態様切替部195及びデータ記録部196として機能する。
【0074】
受付部191は、血液側圧力検出部135の検出値を受け付けて、血液回路121の圧力を受け付けると共に、透析液側圧力検出部172の検出値を受け付けて、透析液回路141の圧力を受け付ける。本実施形態では、送液態様切替動作において、バイパス送液態様からメイン送液態様への送液態様の切替え前に、血液回路121の圧力及び透析液回路141の圧力を受け付ける。例えば、透析治療の開始指示が行われた時の血液回路121及び透析液回路141の圧力を受け付ける。
【0075】
モデル生成部192は、切替動作データベース181に記憶された過去の送液態様切替動作の血液回路121の圧力、透析液回路141の圧力、ポンプ速度調整係数及び除水誤差を教師データとして機械学習させ、血液回路121の圧力及び透析液回路141の圧力を入力とし、除水誤差が抑制されるポンプ速度調整係数を出力する予測モデルM(図7参照)を生成する。送液態様切替動作における除水誤差は、上記したように、血液回路121の圧力と透析液回路141の圧力との圧力差による流量変動によって生じるため、送液態様切替動作時の血液回路121の圧力及び透析液回路141の圧力と送液態様切替動作時の除水誤差との間には、強い相関関係がある。また、送液態様切替動作時の除水誤差は、メイン送液態様からバイパス送液態様に切り替えるときに、加圧ポンプ173のポンプ速度を調整することで変動する。そのため、予測モデルMは、例えば、切替動作データベース181から抽出した過去の送液態様切替動作のデータ(血液回路121の圧力、透析液回路141の圧力、ポンプ速度調整係数及び除水誤差)に基づいて、入力された血液回路121の圧力及び透析液回路141の圧力における、ポンプ速度調整係数との除水誤差との関係式を予測し、当該関係式に基づいて、除水誤差が抑制されるポンプ速度調整係数を算出し、これを出力する。例えば、予測モデルMは、血液回路121の圧力が透析液回路141の圧力より大きい場合、過除水となるため、ポンプ速度を低下させる数値(1未満)を、除水誤差が抑制されるポンプ速度調整係数と予測し、透析液回路141の圧力が血液回路121の圧力より大きい場合、補水となるため、ポンプ速度を上昇させる数値(1超)を、除水誤差が抑制されるポンプ速度調整係数と予測する。なお、予測モデルMが、除水誤差が50ml/h以下(好ましくは0)となるポンプ速度調整係数を予測することが好ましい。また、本実施形態では、入力データ及び教師データとなる血液回路121の圧力及び透析液回路141の圧力として、透析治療の開始指示が行われた時の血液回路121及び透析液回路141の圧力を用いる構成であるが、透析治療の開始指示が行われてから数秒後の血液回路121及び透析液回路141の圧力を用いる構成であっても良い。また、本実施形態では、入力データ及び教師データとなる血液回路121の圧力及び透析液回路141の圧力として、血液側圧力検出部135の検出値及び透析液側圧力検出部172の検出値を用いる構成であるが、他の検出手段の検出値や予測値を用いる構成であってもよい。また、過去の送液態様切替動作のデータは、過去一定期間(例えば1年間)のデータのみを教師データとして機械学習させることが好ましい。機械学習とは、コンピュータが大量のデータを学習し、分類や予測などのタスクを遂行するアルゴリズムやモデルを自動的に構築する技術をいい、機械学習を機能させる技術やアルゴリズムとして、例えばニューラルネットワークを用いることができる。
【0076】
また、本実施形態においては、送液態様切替動作における加圧ポンプ173の調整前のポンプ速度が一定であるとして、予測モデルMを生成する。すなわち、当該一定の調整前のポンプ速度の数値を加味して、予測モデルMが生成される。
【0077】
調整量予測部193は、モデル生成部192によって生成した予測モデルMを用い、血液回路121の圧力及び透析液回路141の圧力から、除水誤差が抑制されるポンプ速度調整係数を予測する。すなわち、調整量予測部193は、受付部191で受け付けた血液回路121の圧力及び透析液回路141の圧力を予測モデルMに入力し、予測モデルMから出力されたポンプ速度調整係数を取得する。
【0078】
駆動調整部194は、バイパス送液態様からメイン送液態様に送液態様を切り替えるとき、血液回路121と透析液回路141との間に一定の圧力差がある場合、調整量予測部193によって予測したポンプ速度調整係数によって、加圧ポンプ173の駆動を調整する。すなわち、予測したポンプ速度調整係数を、加圧ポンプ173のポンプ速度に乗算し、加圧ポンプ173のポンプ速度の設定値を、その乗算値に変更して、加圧ポンプ173のポンプ速度を増減させる。例えば、図6Bに示すように、血液回路121の圧力が透析液回路141の圧力より大きい場合、過除水となるため、予測モデルMによって、ポンプ速度を低下させる数値(1未満の数値)を、除水誤差が抑制されるポンプ速度調整係数と予測し、予測した当該ポンプ速度調整係数に基づき、加圧ポンプ173のポンプ速度の設定値を低下させる(透析液回路141の圧力を上げる)。これによって、図6Cに示すように、患者Cの血液における除水誤差を低減することができる。また、例えば、透析液回路141の圧力が血液回路121の圧力より大きい場合、補水となるため、予測モデルMによって、ポンプ速度を上昇させる数値(1超)を、除水誤差が抑制されるポンプ速度調整係数と予測し、予測した当該ポンプ速度調整係数に基づき、加圧ポンプ173のポンプ速度の設定値を上昇させる(透析液回路141の圧力を下げる)。
【0079】
送液態様切替部195は、各電磁弁155、166、171の開閉制御によって、バイパス送液態様からメイン送液態様に送液態様を切り替える。すなわち、送液態様切替部195は、各電磁弁155、166、171を制御し、第3電磁弁155を閉塞しつつ、第1電磁弁166及び第2電磁弁171を開放することで、バイパス送液態様からメイン送液態様への送液態様の切替えを行う。
【0080】
データ記録部196は、送液態様切替動作のデータ(血液回路121の圧力、透析液回路141の圧力、ポンプ速度調整係数、除水誤差)を、切替動作データベース181に記録する。すなわち、各流量計164、175の検出値を受け付け、ダイアライザ110への給液の流量とダイアライザ110からの排液の流量とを取得し、これらに基づいて除水誤差を算出する。そして、受付部191で受け付けた血液回路121の圧力及び透析液回路141の圧力と、調整量予測部193で予測したポンプ速度調整係数と、算出した除水誤差と、送液態様切替動作の実施日と、を関連付けて、切替動作データベース181に記録する。なお、除水誤差は、メイン送液態様への送液態様の切り替えを行ってから所定秒後(例えば、45秒後)までの積算流量に基づいて算出され、当該所定秒後までに蓄積した除水誤差の値を記録する。
【0081】
(送液態様切替動作の説明)
ここで図8を参照して、送液態様切替動作の動作手順について説明する。この送液態様切替動作は、透析治療の開始指示に起因して実行されるものであり、透析液流動動作が行われている状態から実行される。なお、送液態様切替動作は、駆動制御工程及び送液ポンプの制御方法の一例である。
【0082】
図8に示すように、送液態様切替動作では、まず、血液回路121の圧力及び透析液回路141の圧力を受け付ける(S101)(受付工程)。すなわち、血液側圧力検出部135の検出値を受け付けて、血液回路121の圧力を受け付けると共に、透析液側圧力検出部172の検出値を受け付けて、透析液回路141の圧力を受け付ける。
【0083】
血液回路121及び透析液回路141の圧力を受け付けたら、モデル生成部192によって、予測モデルMを生成する(S102)(モデル生成工程)。すなわち、切替動作データベース181から過去の送液態様切替動作のデータ(血液回路121の圧力、透析液回路141の圧力、ポンプ速度調整係数及び除水誤差)を抽出し、抽出した過去の送液態様切替動作のデータを教師データとして機械学習をさせて、予測モデルMを生成する。
【0084】
予測モデルMを生成したら、調整量予測部193によって、予測モデルMを用い、血液回路121及び透析液回路141の圧力から、除水誤差が抑制されるポンプ速度調整係数を予測する(S103)(調整量予測工程)。すなわち、モデル生成部192によって生成した予測モデルMに、S101で受け付けた血液回路121及び透析液回路141の圧力を入力し、これに対して予測モデルMから出力されたポンプ速度調整係数を、予測値として取得する。
【0085】
除水誤差が抑制されるポンプ速度調整係数を予測したら、駆動調整部194により、予測したポンプ速度調整係数によって、加圧ポンプ173の駆動を調整する(S104)(駆動調整工程)。すなわち、予測したポンプ速度調整係数を、加圧ポンプ173のポンプ速度に乗算し、加圧ポンプ173のポンプ速度の設定値を、その乗算値に変更して、加圧ポンプ173のポンプ速度を増減させる。その後、送液態様切替部195によって、各電磁弁155、166、171を制御し、バイパス送液態様からメイン送液態様に送液態様を切り替える(S105)。なお、調整量予測工程(S103)及び駆動調整工程(S104)は、血液回路121と透析液回路141との間に一定の圧力差がある場合のみ行う。すなわち、血液回路121と透析液回路141との間に一定の圧力差がない場合、調整量予測工程(S103)及び駆動調整工程(S104)を省略することが好ましい。
【0086】
送液態様をメイン送液態様に切り替えたら、一定秒(例えば45秒)の経過を待って、送液態様切替動作のデータを、切替動作データベース181に記録する(S106)。すなわち、各流量計164、175の検出値から除水誤差を算出し、S101で受け付けた血液回路121の圧力及び透析液回路141の圧力と、S103で予測したポンプ速度調整係数と、算出した除水誤差と、送液態様切替動作の実施日と、を関連付けて、切替動作データベース181に記録する。なお、S103を省略した場合には、ポンプ速度調整係数を1とする。これにより、本送液態様切替動作を終了する。なお、本実施形態では、送液態様切替動作を開始した後に、予測モデルMを生成する構成であったが、送液態様切替動作を開始する前に、予め予測モデルMを生成しておく構成であってもよい。例えば、送液態様切替動作の最後に、次回の送液態様切替動作に用いる予測モデルMを生成する構成であってもよい。また、複数回の送液態様切替動作において、共通の予測モデルMを用いる構成であってもよい。
【0087】
(実施形態の作用及び効果)
以上、上記第2実施形態の構成によれば、過去の送液態様切替動作のデータから生成した予測モデルMに基づいて、除水誤差が抑制されるポンプ速度調整係数を予測し、バイパス送液態様からメイン送液態様に送液態様を切り替えるとき、当該ポンプ速度調整係数によって、加圧ポンプ173の駆動を調整することで、バイパス送液態様からメイン送液態様への送液態様の切替えを行った時の圧力変動による除水誤差を低減することができる。また、予測モデルMを用い、血液回路121及び透析液回路141の圧力から、除水誤差が抑制されるポンプ速度調整係数を予測する構成であるため、配管状況や患者Cの状況を加味した最適なポンプ速度調整係数を使用することができる。
【0088】
また、過去の送液態様切替動作のデータについて、過去一定期間(例えば過去1年間)の送液態様切替動作のデータのみを予測モデルMに機械学習させる構成であるため、配管やポンプ、センサー類の経時劣化を加味したポンプ速度調整係数の予測を行うことができる。これにより、除水誤差が抑制されるポンプ速度調整係数を精度良く予測することができる。
【0089】
また、送液態様切替動作において、透析液回路141に配設された複数のポンプ163、173、174のうち、加圧ポンプ173のポンプ速度を調整する構成であるため、給排液の差分となる除水量制御のために連携して駆動される給液ポンプ163及び排液ポンプ174の制御に変更を加えることなく、除水誤差を低減することができる。これにより、給液ポンプ163及び排液ポンプ174の除水量制御と、加圧ポンプ173の除水誤差低減に係る制御を並列で容易に実施できると共に、制御に変更を加えることで、給液ポンプ163及び排液ポンプ174の連携に不備が生じ、除水量制御に悪影響が及ぼすことを防止できる。
【0090】
(第2実施形態の変形例)
以上、本発明の実施形態を説明したが、上記に記載した実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【0091】
例えば、上記第2実施形態においては、予測モデルMがポンプ速度調整係数を出力し、調整量予測部193が、予測モデルMを用いて、ポンプ速度調整係数を予測する構成であったが、これに限るものではない。例えば、元のポンプ速度にポンプ速度調整係数を乗算した調整後のポンプ速度を出力し予測する構成であってもよいし、元のポンプ速度に対し減算又は加算する調整値を出力し予測する構成であってもよい。
【0092】
また、上記第2実施形態においては、血液回路121の圧力及び透析液回路141の圧力を入力データ及び教師データとする構成であったが、これに代えて、血液回路121の圧力と透析液回路141の圧力との圧力差を示す数値(例えば、血液回路121の圧力と透析液回路141の圧力との減算値や除算値)を、入力データ及び教師データとする構成であってもよい。
【0093】
また、上記第2実施形態においては、血液浄化装置101自身の送液態様切替動作のデータを、予測モデルMの教師データとする構成であったが、血液浄化装置101自身の送液態様切替動作の実施回数が少ない場合に、これを補完するサンプルデータを、切替動作データベース181に記憶しておく構成であってもよい。
【0094】
また、上記第2実施形態においては、血液浄化装置101自身の送液態様切替動作のデータを、予測モデルMの教師データとする構成であったが、別の血液浄化装置101が実施した送液態様切替動作のデータを、予測モデルMの教師データとする構成であってもよい。ただし、装置固有の特性を加味したポンプ速度調整係数を予測することを考えるのであれば、血液浄化装置101自身の送液態様切替動作のデータのみを、予測モデルMの教師データとすることが望ましい。
【0095】
また、上記第2実施形態においては、送液態様切替動作において、送液態様をメイン送液態様に切り替える前に、ポンプ速度調整係数に基づく加圧ポンプ173のポンプ速度の調整を行う構成であったが、送液態様切替動作において、送液態様をメイン送液態様に切り替えた後に、ポンプ速度調整係数に基づく加圧ポンプ173のポンプ速度の調整を行う構成であってもよい。
【0096】
また、上記第2実施形態においては、送液態様切替動作において、加圧ポンプ173のポンプ速度を調整する構成であったが、透析液回路141に配設された送液ポンプの指令値を調整する構成であれば、これに限るものではない。例えば、加圧ポンプ173に代えて、給液ポンプ163及び排液ポンプ174のいずれかの送液ポンプの指令値を調整する構成であってもよい。また、単一の送液ポンプの指令値を調整するのに代えて、複数の送液ポンプの指令値を調整する構成であってもよい。
【0097】
また、上記第2実施形態においては、除水誤差を低減させるのに、透析液回路141に配設された送液ポンプの駆動を調整して、透析液回路141の圧力を調整する構成であったが、これに代えて、血液回路121に配設された送液ポンプ(例えば、血液ポンプ134)の駆動を調整して、血液回路121の圧力を調整する構成であってもよい。ただし、血液回路121の圧力を積極的に変更すると、血液に負荷がかかるため(溶血等)、透析液回路141の圧力を調整する方が望ましい。
【0098】
また、上記第2実施形態においては、別体の給液ポンプ163及び排液ポンプ174を用いて、ダイアライザ110における給液及び排液の流量制御を行う血液浄化装置101に本発明を適用したが、給液ポンプ163及び排液ポンプ174を一体として成す複式ポンプを用いて、ダイアライザ110における給液及び排液の流量制御を行う血液浄化装置に本発明を適用してもよい。
【0099】
(実施形態のまとめ)
次に、以上説明した実施形態から把握される技術思想について、実施形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号等は、特許請求の範囲における構成要素を実施形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0100】
《1》患者(C)の血液を浄化する血液浄化器(10)を介して前記血液を循環させる血液回路(21)と、前記血液浄化器(10)に向けて透析液を供給する透析液供給流路(52)と、前記血液浄化器からの透析液を排出する透析液排出流路(53)と、前記透析液供給流路(52)及び前記透析液排出流路(53)が連通するバイパス流路(54)とを含み、前記血液浄化器(10)を経由して前記透析液供給流路(52)から前記透析液排出流路(53)に送液する第1の送液態様と、前記血液浄化器(10)を経由せず且つ前記バイパス流路(54)を経由して前記透析液供給流路(52)から前記透析液排出流路(53)に送液する第2の送液態様とのいずれかの送液態様で液体が送液される透析液回路(41)と、前記透析液回路(41)に配設されると共に、前記透析液回路(41)において液体を送液する送液ポンプ(73)と、前記透析液回路(41)に配設されると共に、前記第1の送液態様と前記第2の送液態様との間で送液態様を切り替える流路切替え手段(55、66、76)と、前記送液ポンプ(73)及び前記流路切替え手段(55、66、76)を制御する駆動制御部(22)と、を備え、前記駆動制御部(22)は、前記流路切替え手段(55、66、76)が前記第2の送液態様から前記第1の送液態様に送液態様を切り替える場合に、前記血液回路(21)と前記透析液回路(41)との間に圧力差が生じるとき、前記圧力差を縮小するように、前記送液ポンプ(73)の駆動を調整する、血液浄化装置(1)。
これにより、バイパス送液態様からメイン送液態様への送液態様の切替えを行った時の圧力変動による除水誤差を低減することができる。
《2》前記透析液供給流路(52)に配設され、前記透析液を送液する給液ポンプ(63)と、前記透析液排出流路(53)に配設され、前記透析液を送液する排液ポンプ(74)と、前記透析液排出流路(53)における前記排液ポンプ(74)の上流側に配設され、前記排液ポンプ(74)の送液を補助する前記送液ポンプとしての補助ポンプ(73)と、を備え、前記駆動制御部(22)は、前記流路切替え手段(55、66、76)が前記第2の送液態様から前記第1の送液態様に送液態様を切り替える場合に、前記血液回路(21)と前記透析液回路(41)との間に前記圧力差が生じるとき、前記圧力差を縮小するように前記補助ポンプ(73)の駆動を調整する、《1》に記載の血液浄化装置(1)。
これにより、連携して駆動される給液ポンプ及び排液ポンプの制御に変更を加えることなく、除水誤差を低減することができる。これにより、制御に変更を加えることで、給液ポンプ及び排液ポンプの連携に不備が生じるのを防止することができる。
《3》前記駆動制御部(22)は、前記圧力差を取得し、前記流路切替え手段(55、66、76)が前記第2の送液態様から前記第1の送液態様に送液態様を切り替える場合に、前記圧力差に基づいて、前記送液ポンプ(73)の駆動を調整する、《1》又は《2》に記載の血液浄化装置(1)。
《4》前記駆動制御部(22)は、前記圧力差として前記血液浄化器(10)における膜間圧力差を取得し、前記流路切替え手段(55、66、76)が前記第2の送液態様から前記第1の送液態様に送液態様を切り替える場合に、前記膜間圧力差に基づいて、前記送液ポンプ(73)の駆動を調整する、《1》又は《3》のいずれか1つに記載の血液浄化装置(1)。
これにより、除水誤差の低減をより精度良く行うことができる。
《5》前記駆動制御部(22)は、前記流路切替え手段(55、66、76)が前記第2の送液態様から前記第1の送液態様に送液態様を切り替える場合に、前記透析液回路(41)の圧力が所定の閾値を超えたとき、前記圧力差を縮小するように、前記送液ポンプ(73)の駆動を調整する、《1》乃至《4》のいずれか1つに記載の血液浄化装置(1)。
これにより、圧力差そのものに代えて、圧力差と相関関係にある透析液回路の圧力をトリガーとして、送液ポンプの駆動を調整するため、血液回路の圧力の取得を省略することができ、除水誤差低減動作をより容易に行うことができる。
《6》前記駆動制御部(22)は、前記流路切替え手段(55、66、76)が前記第2の送液態様から前記第1の送液態様に送液態様を切り替える前に、前記圧力差を縮小するように、前記送液ポンプ(73)の駆動を調整する、《1》乃至《5》のいずれか1つに記載の血液浄化装置(1)。
これにより、バイパス送液態様からメイン送液態様に送液態様の切替えを行った時の、圧力変動自体を低減することができる。
《7》患者(C)の血液を浄化する血液浄化器(110)を介して前記血液を循環させる血液回路(121)と、前記血液浄化器(110)に向けて透析液を供給する透析液供給流路(152)と、前記血液浄化器(110)からの透析液を排出する透析液排出流路(153)と、前記透析液供給流路(152)及び前記透析液排出流路(153)が連通するバイパス流路(154)とを含み、前記血液浄化器(110)を経由して前記透析液供給流路(152)から前記透析液排出流路(153)に送液する第1の送液態様と、前記血液浄化器(110)を経由せず且つ前記バイパス流路(154)を経由して前記透析液供給流路(152)から前記透析液排出流路(153)に送液する第2の送液態様とのいずれかの送液態様で液体が送液される透析液回路(141)と、前記透析液回路(141)に配設されると共に、前記透析液回路(141)において液体を送液する送液ポンプ(173)と、前記透析液回路(141)に配設されると共に、前記第1の送液態様と前記第2の送液態様との間で送液態様を切り替える流路切替え手段(155、166、176)と、前記送液ポンプ(173)及び前記流路切替え手段(155、166、176)を制御し、前記第2の送液態様から前記第1の送液態様に送液態様を切り替える送液態様切替動作を行う駆動制御部(122)と、を備え、前記駆動制御部(122)は、前記血液回路(121)の圧力及び前記透析液回路(141)の圧力を受け付ける受付部(191)と、過去の前記送液態様切替動作における前記血液回路(121)の圧力、前記透析液回路(141)の圧力及び除水量の誤差を教師データとして機械学習させた予測モデル(M)を用い、前記血液回路(121)の圧力及び前記透析液回路(141)の圧力から、前記除水量の誤差が抑制される前記送液ポンプ(173)の駆動調整量を予測する調整量予測部(193)と、前記第2の送液態様から前記第1の送液態様に送液態様を切り替えるとき、前記調整量予測部(193)によって予測した前記駆動調整量によって前記送液ポンプ(173)の駆動を調整する駆動調整部(194)と、を有する、血液浄化装置(101)。
これにより、バイパス送液態様からメイン送液態様への送液態様の切替えを行った時の圧力変動による除水量の誤差を低減することができる。
《8》前記予測モデル(M)は、過去の前記送液態様切替動作における前記血液回路(121)の圧力、前記透析液回路(141)の圧力及び前記除水量の誤差に加え、過去の前記送液態様切替動作における前記送液ポンプ(173)の駆動調整量を、教師データとして機械学習させた、《7》に記載の血液浄化装置(101)。
これにより、除水誤差が抑制される送液ポンプの駆動調整量をより精度良く予測することができる。
《9》前記透析液供給流路(152)に配設され、前記透析液を送液する給液ポンプ(163)と、前記透析液排出流路(153)に配設され、前記透析液を送液する排液ポンプ(174)と、前記透析液排出流路(153)における前記排液ポンプ(174)の上流側に配設され、前記排液ポンプ(174)の送液を補助する前記送液ポンプとしての補助ポンプ(173)と、を備え、前記駆動調整部(194)は、前記第2の送液態様から前記第1の送液態様に送液態様を切り替えるとき、前記調整量予測部(193)によって予測した駆動調整量によって前記補助ポンプ(173)の駆動を調整する、《7》又は《8》に記載の血液浄化装置(101)。
これにより、連携して駆動される給液ポンプ及び排液ポンプの制御に変更を加えることなく、除水誤差を低減することができる。これにより、制御に変更を加えることで、給液ポンプ及び排液ポンプの連携に不備が生じるのを防止することができる。
《10》患者(C)の血液を浄化する血液浄化器(10)を介して前記血液を循環させる血液回路(21)と、前記血液浄化器(10)に向けて透析液を供給する透析液供給流路(52)、前記血液浄化器(10)からの透析液を排出する透析液排出流路(53)及び前記透析液供給流路(52)と前記透析液排出流路(53)とを連通するバイパス流路(54)を含み、前記血液浄化器(10)を経由して前記透析液供給流路(52)から前記透析液排出流路(53)に送液する第1の送液態様と、前記血液浄化器(10)を経由せず且つ前記バイパス流路(54)を経由して前記透析液供給流路(52)から前記透析液排出流路(53)に送液する第2の送液態様とのいずれかの送液態様で液体が送液される透析液回路(41)と、前記透析液回路(41)に配設されると共に、前記透析液回路(41)において液体を送液する送液ポンプ(73)と、前記透析液回路(41)に配設されると共に、前記第1の送液態様と前記第2の送液態様との間で送液態様を切り替える流路切替え手段(55、66、76)と、を備えた血液浄化装置(1)の、前記送液ポンプ(73)の駆動を制御する駆動制御工程を有し、前記駆動制御工程では、前記流路切替え手段(55、66、76)が前記第2の送液態様から前記第1の送液態様に送液態様を切り替える場合に、前記血液回路(21)と前記透析液回路(41)との間に圧力差が生じるとき、前記圧力差を縮小するように、前記送液ポンプ(73)の指令値を調整する、送液ポンプ(73)の制御方法。
これにより、バイパス送液態様からメイン送液態様への送液態様の切替えを行った時の圧力変動による除水誤差を低減することができる。
《11》患者(C)の血液を浄化する血液浄化器(110)を介して前記血液を循環させる血液回路(121)と、前記血液浄化器(110)に向けて透析液を供給する透析液供給流路(152)、前記血液浄化器からの透析液を排出する透析液排出流路(153)及び前記透析液供給流路(152)と前記透析液排出流路(153)とを連通するバイパス流路(154)を含み、前記血液浄化器(110)を経由して前記透析液供給流路(152)から前記透析液排出流路(153)に送液する第1の送液態様と、前記血液浄化器(110)を経由せず且つ前記バイパス流路(154)を経由して前記透析液供給流路(152)から前記透析液排出流路(153)に送液する第2の送液態様とのいずれかの送液態様で液体が送液される透析液回路(141)と、前記透析液回路(141)に配設されると共に、前記透析液回路(141)において液体を送液する送液ポンプ(173)と、前記透析液回路(141)に配設されると共に、前記第1の送液態様と前記第2の送液態様との間で送液態様を切り替える流路切替え手段(155、166、176)と、を備えた血液浄化装置(101)における、前記第2の送液態様から前記第1の送液態様に送液態様を切り替える送液態様切替動作を行う送液態様切替工程を有し、前記送液態様切替工程では、前記血液回路(121)の圧力及び前記透析液回路(141)の圧力を受け付ける受付工程(S101)と、過去の前記送液態様切替動作における前記血液回路(121)の圧力、前記透析液回路(141)の圧力及び除水量の誤差を教師データとして機械学習させた予測モデル(M)を用いて、前記血液回路(121)の圧力及び前記透析液回路(141)の圧力から、前記除水量の誤差が抑制される前記送液ポンプ(173)の駆動調整量を予測する調整量予測工程(S103)と、前記第2の送液態様から前記第1の送液態様に送液態様を切り替えるとき、前記調整量予測工程(S103)によって予測した前記駆動調整量によって前記送液ポンプの指令値を調整する駆動調整工程(S104)と、を実行する、送液ポンプの制御方法。
これにより、バイパス送液態様からメイン送液態様への送液態様の切替えを行った時の圧力変動による除水誤差を低減することができる。
【符号の説明】
【0101】
1:血液浄化装置、 10:ダイアライザ、 21:血液回路、 22:主制御部、 41:透析液回路、 52:透析液供給流路、 53:透析液排出流路、 54:バイパス流路、 55:第3電磁弁、 63:給液ポンプ、 66:第1電磁弁、 71:第2電磁弁、 73:加圧ポンプ、 74:排液ポンプ、 101:血液浄化装置、 110:ダイアライザ、 121:血液回路、 123:主制御部、 141:透析液回路、 152:透析液供給流路、 153:透析液排出流路、 154:バイパス流路、 155:第3電磁弁、 163:給液ポンプ、 166:第1電磁弁、 171:第2電磁弁、 173:加圧ポンプ、 174:排液ポンプ、 191:受付部、 193:調整量予測部、 194:駆動調整部、 C:患者、 M:予測モデル
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7
図8